JP2022174019A - 相溶化剤、リサイクル助剤及び相溶化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリオレフィン等の極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体を相溶化して得られる重合体組成物の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生の低減を可能とする変性エチレン共重合体を用いた相溶化剤を提供する。【解決手段】エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体を含む相溶化剤であって、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、相溶化剤。【選択図】なし

Description

本発明は変性エチレン共重合体を用いた相溶化剤及びリサイクル助剤に関する。本発明はまた、該変性エチレン共重合体を用いた相溶化方法に関する。
プラスチック包材の廃棄量削減を目的として、以下の重合体組成物を造粒/成形し、多層包材のリグラインド層又はリサイクル層として再生利用するリサイクル技術が知られている。
ポリオレフィンのような非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)のようなバリア性の極性の重合体とを用いた多層包材を製造する際の工程中に発生する端材や製造された多層包材を回収し、粉砕等により微細化したものを溶融混練した重合体組成物。
しかし、このようにして得られる重合体組成物中のエチレン・ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンとは相溶しにくい。その結果、エチレン・ビニルアルコール共重合体がリグラインド層又はリサイクル層内で凝集し、透明性や機械強度の低下を引き起こし、リサイクル後の多層包材の品質に影響するという問題があった。このため、このようなリサイクルを繰り返す場合のリサイクル性が悪いという問題があった。
このような問題に対し、エチレン・ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンを相溶化させるための相溶化剤として、特定の無水マレイン酸変性エチレン共重合体を用いることが知られている。例えば、特許文献1,2には、無水マレイン酸変性エチレン共重合体として、具体的に無水マレイン酸変性エチレン・オクテン共重合体が記載されている。
国際公開第2014/070237号 国際公開第2016/109023号
上記したリサイクル工程において、エチレン・ビニルアルコール共重合体と、ポリオレフィンと、特許文献1や特許文献2に記載されている無水マレイン酸変性エチレン共重合体、具体的には無水マレイン酸変性エチレン・オクテン共重合体とを含む重合体組成物とすることで、得られる重合体組成物の透明性は改善される。しかし、一方で、該重合体組成物を溶融混練した後の造粒/成形する押出工程で、押出出口(ダイスヘッド)付近に異物が付着(「めやに」と呼ばれることもある)する問題が発生する場合があった。押出出口付近に異物が付着すると、これを除去するために生産性が悪化する。また、異物が造粒/成形後の重合体組成物に含有されることで造粒品/成形品の品質が低下する場合もある。また、多層包材のリグラインド層またはリサイクル層として再利用を繰り返した場合、ポリオレフィンの種類によってはリサイクル性が悪化する問題があった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリオレフィン等の極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体を相溶化して得られる重合体組成物の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生の低減を可能とする変性エチレン共重合体を用いた相溶化剤を提供することにある。
本発明の目的はまた、ポリオレフィン等の非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体とを用いた多層包材の製造工程で発生する端材をリサイクルする際に得られる重合体組成物の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生の低減を可能とする変性エチレン共重合体を用いたリサイクル助剤を提供することにある。
本発明はまた、このような変性エチレン共重合体を用いた相溶化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の変性エチレン共重合体を相溶化剤として用いることで、重合体組成物の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができることを見出し、本発明に至った。
本発明者らはまた、リサイクル工程に特定の変性エチレン共重合体をリサイクル助剤として用いることで、リサイクルにより得られる重合体組成物の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができることを見出し、本発明に至った。
本発明者らはまた、特定の変性エチレン共重合体を用いることで、極性の重合体と非極性の重合体とを効果的に相溶化することができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体を含む相溶化剤であって、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、相溶化剤。
[2] エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体を含むリサイクル助剤であって、該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、リサイクル助剤。
[3] エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した、メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分の変性エチレン共重合体の存在下で、極性の重合体と非極性の重合体とを相溶化する相溶化方法。
[4]前記変性エチレン共重合体の密度が0.855~0.895g/cmである、[1]に記載の相溶化剤。
[5] 前記変性エチレン共重合体の密度が0.855~0.895g/cmである、[2]に記載のリサイクル助剤。
[6] 前記変性エチレン共重合体の密度が0.855~0.895g/cmである、[3]に記載の相溶化方法。
[7] 前記変性エチレン共重合体のグラフト率が0.1~1.0質量%である、[1]又は[4]に記載の相溶化剤。
[8] 前記変性エチレン共重合体のグラフト率が0.1~1.0質量%である、[2]又は[5]に記載のリサイクル助剤。
[9]前 記変性エチレン共重合体のグラフト率が0.1~1.0質量%である、[3]又は[6]に記載の相溶化方法。
[10] 前記変性エチレン共重合体がエチレン・ブテン共重合体である、[1]、[4]又は[7]に記載の相溶化剤。
[11] 前記変性エチレン共重合体がエチレン・ブテン共重合体である、[2]、[5]又は[8]に記載のリサイクル助剤。
[12] 前記変性エチレン共重合体がエチレン・ブテン共重合体である、[3]、[6]又は[8]に記載の相溶化方法。
[13] 前記非極性の重合体がポリエチレン系重合体である、[3]、[6]、[8]又は[12]に記載の相溶化方法。
本発明の相溶化剤及び相溶化方法によれば、ポリオレフィン等の非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体を相溶化して得られる重合体組成物の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生の低減することができる。
また、本発明のリサイクル助剤によれば、ポリオレフィン等の非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合樹体等のバリア性の極性の重合体とを用いた多層包材の製造工程等で発生する端材をリサイクルする際に得られる重合体組成物(以下、「リサイクル組成物」又は「リグラインド組成物」と称す場合がある。)の透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができる(以下、この効果を「リサイクル性」と称す場合がある。)。
本発明に係る変性エチレン共重合体は、リサイクル材としてのポリオレフィン等の非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体とのリサイクル助剤として用いるものに何ら限定されず、これらの一方又は双方がバージン樹脂の場合に、これらの重合体を相溶化させる相溶化剤としても有効に用いることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることする。
以下において、共重合体に含まれる単量体単位を単に「単位」と称す場合がある。例えば、プロピレンに基づく単量体単位を「プロピレン単位」と称し、エチレンに基づく単量体単位、α-オレフィンに基づく単量体単位をそれぞれ「エチレン単位」、「α-オレフィン単位」と称す場合がある。
本発明において、重合体のメルトフローレート(MFR)、密度、変性重合体のグラフト率は、以下のようにして測定された値である。
<MFR>
JIS K7210に従い、190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
<密度>
JIS K7112に従い、水中置換法で測定される。
<グラフト率>
変性エチレン共重合体等の変性重合体のグラフト率(変性量、グラフト量とも称される。)は、赤外分光測定装置で測定した際の、後述の原料重合体にグラフトした不飽和カルボン酸及び/又はその無水物(以下、「不飽和カルボン酸成分」と称す場合がある。)の含有率を意味する。不飽和カルボン酸成分の含有率は、例えば、変性重合体を厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中の不飽和カルボン酸成分特有の吸収、具体的には1,900~1,600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。グラフト率は、上記の方法で、予め作成した検量線から求めることもできる。
[相溶化剤]
本発明の相溶化剤は、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体(以下、「本発明の変性エチレン共重合体」と称す場合がある。)を含み、当該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分であることを特徴とする。
相溶化剤とは、非極性材料と極性材料を相溶化させ、材料分散粒子径を小さくする効果を奏するものである。
本発明では、不飽和カルボン酸成分によりグラフト変性された変性エチレン共重合体を用いることで、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体をポリオレフィン等の非極性の重合体中に微細に分散させ、その結果、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のバリア性の極性の重合体が分散した重合体組成物やリサイクル組成物において、機械強度や透明性を向上させることができる。
相溶化させる対象がリサイクルに係る場合、本発明の相溶化剤は、リサイクル助剤と称される。例えば、ポリオレフィンのような非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体のようなバリア性の極性の重合体とを用いた多層包材を製造する際の工程中に発生する端材を回収し、粉砕等により微細化したものを、本発明の相溶化剤をリサイクル助剤として用いて、溶融混練することで、ポリオレフィンのような非極性の重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体のようなバリア性の極性の重合体とを相溶化させ、造粒/成形により、透明性の低下、異物発生を抑制して多層包材のリグラインド層として再生利用することができる。
このように、本発明の変性エチレン共重合体を主成分として含有する相溶化剤又はリサイクル助剤を用いることで、ポリオレフィンのような非極性の重合体中に存在するエチレン・ビニルアルコール共重合体のようなバリア性の極性の重合体の分散粒子径を小さくすることが可能となり、透明性や機械強度を向上させる効果が得られる。また、押出機内で生成する低分子成分の有する極性基に対しても、その相溶化効果を発現するため、低分子量成分をリグラインド組成物に混ぜ込むことができ、結果として、めやにとして付着する低分子量成分を減らすことができ、押出出口付近に付着する異物量を低減することが可能となる。
非極性の重合体としては、ポリプロピレン系重合体、ポリエチレン系重合体等のポリオレフィンが挙げられるが、特にポリエチレン系重合体と極性の重合体とを相溶化させる場合に、本発明の相溶化剤を用いることが好ましい。
<変性エチレン共重合体>
本発明の変性エチレン共重合体を構成する炭素数4~8のα-オレフィン単量体としては、例えば、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンの1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、炭素数4~6のα-オレフィン単量体が好ましく、炭素数4のα-オレフィン単量体、即ち、1-ブテンが特に好ましい。
変性エチレン共重合体としては、例えば、変性エチレン・ブテン共重合体、変性エチレン・ヘキセン共重合体、変性エチレン・オクテン共重合体が挙げられる。これらの内でも、リサイクル性の観点から、変性エチレン・ブテン共重合体、変性エチレン・ヘキセン共重合体が好ましく、変性エチレン・ブテン共重合体が特に好ましい。
更に、変性エチレン共重合体には、エチレン単量体及び上記のα-オレフィン単量体以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。
本発明の変性エチレン共重合体のMFR(190℃、荷重2.16kg)は15~39g/10分である。変性エチレン共重合体のMFRを上記範囲とすることで、透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができ、重合体組成物やリサイクル組成物を成形して得られるフィルム(以下、「リサイクルフィルム」と称す場合がある。)の外観を良好に維持できるともに、機械物性の低下も防ぐことができる。
本発明の変性エチレン共重合体の密度は、0.855~0.895g/cmであることが好ましい。変性エチレン共重合体の密度が上記範囲であれば、透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができ、リサイクルフィルムの外観を良好に維持できるとともに、機械物性の低下も防ぐことができる。
<エチレン共重合体>
不飽和カルボン酸成分による変性に供するエチレン共重合体としては、上述の変性エチレン共重合体が得られれば、特に限定されず、公知のエチレン共重合体を使用することができる。
変性に供するエチレン共重合体(以下、「原料重合体」と称す場合がある。)のMFR(190℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、18~50g/10分であることが好ましい。原料重合体のMFRを上記範囲内とすることで、変性によるMFRの変化を考慮しても、目的とする変性エチレン共重合体が得やすくなる傾向にある。
また、原料重合体としては、密度0.855~0.895g/cmのものを好適に使用できる。
本発明に好適な原料重合体としては、市販品を用いることもでき、例えば、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズの中から前記の特性に該当するものを適宜選択して用いることができる。
本発明において、原料重合体のエチレン共重合体は1種のみを用いてもよく、物性や組成等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
<グラフト変性>
エチレン共重合体をグラフト変性する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸といったα,β-エチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の無水物としては、コハク酸2-オクテン-1-イル無水物、コハク酸2-ドデセン-1-イル無水物、コハク酸2-オクタデセン-1-イル無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1-ブテン-3,4-ジカルボン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、endo-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸成分は、変性すべきエチレン共重合体や変性条件に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用しても良い。これらの不飽和カルボン酸成分は、有機溶剤などに溶解して使用することもできる。
エチレン共重合体のグラフト変性は、不飽和カルボン酸成分を添加して、好ましくはラジカル発生剤の存在下に不飽和カルボン酸成分をエチレン共重合体にグラフト重合させることで行うことができる。
ここで使用されるラジカル発生剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ-t-ブタン等のアゾ化合物;ジクミル等の炭素ラジカル発生剤が挙げられる。
上記のラジカル発生剤は、変性反応に供するエチレン共重合体の種類、変性剤としての不飽和カルボン酸成分の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ラジカル発生剤は有機溶剤などに溶解して使用することもできる。
本発明の変性エチレン共重合体を得る際に行う変性反応としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応法など公知の種々の反応方法を使用することができるが、通常は溶融混練反応法が好ましい。
溶融混練反応法よる場合は、前記の各成分を所定の配合比にて均一に混合した後に溶融混練すれば良い。混合には、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸などの多軸混練押出機などが使用される。
溶融混練は、重合体が熱劣化しないように、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上で、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の範囲で行う。
変性剤としての不飽和カルボン酸成分の配合量は、原料重合体であるエチレン共重合体100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上で、通常30質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。不飽和カルボン酸成分の配合量を上記範囲とすることで、経済的であり、十分な変性を行うことができる。
また、ラジカル発生剤の配合量は、原料重合体であるエチレン共重合体100質量部に対し、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上で、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。ラジカル発生剤の配合量を上記下限以上とすることで、十分な変性を行うことができる。また、ラジカル発生剤の配合量を上記上限以下とすることで、エチレン共重合体の変性時の高分子量化(粘度上昇)を所望の範囲に抑えることができ、目的の変性エチレン共重合体を得やすい傾向にある。
変性反応においては、エチレン共重合体に不飽和カルボン酸成分が付加するグラフト重合反応が主として起こるが、架橋反応も起こり、この架橋により、得られる変性物は分子量が増大して溶融粘度が高くなる傾向にあるため、ラジカル発生剤の使用量が多過ぎると、グラフト重合反応も起こり易いが、同時にこのような溶融粘度の増大につながる架橋反応も起こり易くなるため、好ましくない。
<グラフト率>
本発明の変性エチレン共重合体のグラフト率は0.1~1.0質量%であることが好ましく、0.6~1.0質量%であることがより好ましく、0.8~1.0質量%であることが更に好ましい。グラフト率が上記下限以上であると、良好なリサイクル性を得ることができる。ただし、グラフト率が高過ぎると焼け等が多くなり、その結果、リサイクルフィルムの外観等に悪影響を及ぼすため、変性エチレン共重合体のグラフト率は上記上限以下であることが好ましい。
<変性エチレン共重合体組成物>
本発明の変性エチレン共重合体を相溶化剤等として用いる場合、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の添加剤や重合体等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合した変性エチレン共重合体組成物として用いることもできる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
例えば、添加剤としては熱安定剤及び酸化防止剤が挙げられ、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物を用いることができる。
本発明の相溶化剤又はリサイクル助剤として、変性エチレン共重合体と必要に応じて添加されるその他の成分を用いて、変性エチレン共重合体組成物を製造するための混合方法は、実用的には溶融混練法が好ましい。この場合、その他の成分は、変性前のエチレン共重合体に添加して、その他の成分の混合と共に、前述のグラフト変性を行ってもよく、グラフト変性後の変性エチレン共重合体にその他の成分を混合してもよい。
溶融混練のための具体的な方法としては、本発明の変性エチレン共重合体又はエチレン共重合体、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、多軸混練押出機、例えば日本製鋼所の2軸混練押出機であるTEX25を用いて混練する方法が例示できる。
各成分の溶融混練の温度は、前述のグラフト変性時の温度と同様、通常100~300℃、好ましくは120~280℃、より好ましくは150~250℃である。更に、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、本発明の変性エチレン共重合体又はエチレン共重合体と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括して混練する方法、又は本発明の変性エチレン共重合体又はエチレン共重合体と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混練しておき、その後残りの成分を混練する方法でもよい。
[相溶化方法]
本発明の相溶化方法は、上述の本発明の変性エチレン共重合体である、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した、メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分の変性エチレン共重合体の存在下で、極性の重合体と非極性の重合体とを相溶化する相溶化方法である。
非極性の重合体としては、ポリプロピレン系重合体、ポリエチレン系重合体等の後述のポリオレフィン系重合体(a)が挙げられるが、特にポリエチレン系重合体と極性の重合体とを相溶化させる場合に、本発明の効果が有効に発揮される。
一方、極性の重合体としては、後述の極性重合体(b)、好ましくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のようなバリア性の重合体が挙げられる。
相溶化させる極性の重合体と非極性の重合体の量比については特に制限はなく、非極性の重合体100質量部に対して極性の重合体1~50質量部の幅広い範囲でこれらを相溶化することができる。
本発明の相溶化方法において、変性エチレン共重合体の使用量には特に制限はないが、非極性の重合体100質量部に対して0.1~25質量部、特に0.5~15質量部、とりわけ1~10質量部であることが好ましい。変性エチレン共重合体の使用量が上記下限以上であれば、変性エチレン共重合体による相溶化効果を十分に得ることができる。変性エチレン共重合体の使用量が上記上限以下であれば極性の重合体と変性エチレン共重合体による過反応を抑制し易い傾向にある。
なお、本発明の相溶化方法において、変性エチレン共重合体は、前述の変性エチレン共重合体組成物として用いてもよい。また、相溶化系内には、変性エチレン共重合体、極性の重合体及び非極性の重合体以外の他の成分が存在していてもよい。
[重合体組成物]
本発明の変性エチレン共重合体を用いて、リサイクル性に優れた重合体組成物(以下、「本発明の重合体組成物」と称す場合がある。)を得ることができる。
本発明の重合体組成物は、ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対し、エチレン・ビニルアルコール系共重合体(b1)(以下、「EVOH(b1)」と称す場合がある。)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも1つの極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有する重合体組成物であることが好ましい。
ここで、酸変性ポリオレフィン(d)は、エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性してなる、メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分の前述の本発明の変性エチレン共重合体である。
本発明の重合体組成物は、必要に応じて更に酸変性ポリオレフィン(d)とはメルトフローレートが異なる酸変性ポリオレフィン(c)を含有していてもよい。
<ポリオレフィン系重合体(a)>
ポリオレフィン系重合体(a)としては、ポリプロピレン;プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとを共重合したプロピレン系共重合体;低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン;エチレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとを共重合したエチレン系共重合体;ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などが挙げられる。
ポリオレフィン系重合体(a)は、1種類を単独で用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものの2種類以上を混合して用いてもよい。
中でも、ポリオレフィン系重合体(a)として、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのプロピレン系重合体、及びポリエチレン、エチレン系共重合体などのエチレン系重合体が好ましい。耐熱性に優れた成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン系重合体(a)として、プロピレン系重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。一方、透明性に優れた成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン系重合体(a)として、エチレン系重合体が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、高密度ポリエチレンが更に好ましい。
ポリオレフィン系重合体(a)のメルトフローレート(MFR:190℃又は210℃、2.16kg)は0.01~10g/10分であることが好ましい。ポリオレフィン系重合体(a)のMFRが0.01g/10分以上であれば、極性重合体(b)とポリオレフィン系重合体(a)の溶融粘度の差が大きくなり過ぎず、重合体組成物中の極性重合体(b)の分散性が良好となり、得られる成形品の耐衝撃性に優れる。一方、ポリオレフィン系重合体(a)のMFRが10g/10分以下であれば、得られる成形品の耐衝撃性が良好となる。ポリオレフィン系重合体(a)のMFRは、5g/10分以下がより好ましく、3g/10分以下が更に好ましく、2g/10分以下が特に好ましい。なお、ポリオレフィン系重合体(a)が複数種類の重合体の混合物である場合、それぞれの重合体のMFRを混合質量比で加重平均した値をポリオレフィン系重合体(a)のMFRとする。後述のEVOH(b1)、ポリアミド系重合体(b2)、酸変性ポリオレフィン(c)、酸変性ポリオレフィン(d)が複数種類の重合体の混合物である場合も、ポリオレフィン系重合体(a)と同様にして、それぞれのMFRを求める。
<極性重合体(b)>
極性重合体(b)は、EVOH(b1)及びポリアミド系重合体(b2)から選ばれる少なくとも一つのバリア性極性重合体である。
極性重合体(b)は、EVOH(b1)の1種又は2種以上とポリアミド系重合体(b2)の1種又は2種以上を混合して用いてもよい。EVOH(b1)とポリアミド系重合体(b2)を混合して用いる場合、その混合割合には特に制限はない。
(EVOH(b1))
EVOH(b1)は、エチレン・ビニルエステル共重合体をけん化することにより得ることができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。エチレン・ビニルエステル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等により製造され、エチレン・ビニルエステル共重合体のケン化も、公知の方法で行い得る。
EVOH(b1)のエチレン単位含有率は、ISO14663に基づいて測定される値で、20~60モル%が好ましい。エチレン単位含有率が20モル%以上であれば、重合体組成物中のEVOH(b1)の高湿時のガスバリア性、溶融成形性が良好となる。EVOH(b1)のエチレン単位含有率は23モル%以上がより好ましい。また、エチレン単位含有率が60モル%以下であればバリア性に優れる。EVOH(b1)のエチレン単位含有率は55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましく、50モル%未満が特に好ましい。
EVOH(b1)のビニルエステル単位のけん化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定される値で、バリア性、熱安定性、耐湿性の観点から、80モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましい。
EVOH(b1)のメルトフローレート(MFR:210℃、2.16kg)は0.1~100g/10分であることが好ましい。EVOH(b1)のMFRが100g/10分以下であれば、EVOH(b1)と酸変性ポリオレフィン(c)の溶融粘度の差が大きくなり過ぎず、重合体組成物中のEVOH(b1)の分散性が良好となり、熱安定性に優れる。EVOH(b1)のMFRは50g/10分以下がより好ましく、30g/10分以下が更に好ましい。一方、EVOH(b1)のMFRが0.1g/10分以上であれば、酸変性ポリオレフィン(d)との粘度差が大きくなりすぎず、重合体組成物中のEVOH(b1)の分散性が良好となり、耐衝撃性が良好となる。EVOH(b1)のMFRは0.5g/10分以上がより好ましい。
EVOH(b1)は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、エチレン及びビニルエステル以外の重合性単量体が共重合されていてもよい。このような重合性単量体としては、例えばプロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物等のヒドロキシ基含有α-オレフィン誘導体;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;不飽和カルボン酸またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸またはその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
さらに、EVOH(b1)としては、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
EVOH(b1)は1種のみを用いてもよく、ビニルエステルの種類、エチレン単位含有率や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
(ポリアミド系重合体(b2))
ポリアミド系重合体(b2)としては、公知のものを用いることができる。
具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。
また、ポリアミド系共重合体としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-p-フェニレン-3,4’-ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド系重合体をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート、あるいはこれらの末端変性ポリアミド系重合体等が挙げられる。なかでも、好ましくは末端変性ポリアミド系重合体である。
ポリアミド系重合体(b2)のメルトフローレート(MFR:210℃、2.16kg)は0.1~30g/10分であることが好ましい。ポリアミド系重合体(b2)のMFRが上記範囲であることにより、相溶化剤としての酸変性ポリオレフィン(d)と最適に反応し、分散性を向上させることが可能となる。
ポリアミド系重合体(b2)は1種のみを用いてもよく、共重合組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<酸変性ポリオレフィン(c)>
酸変性ポリオレフィン(c)としては、ポリオレフィンを酸でグラフト変性させて得られるグラフト変性ポリオレフィンや、オレフィンと酸を共重合させて得られるオレフィン系共重合体が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
なかでも、酸変性ポリオレフィン(c)としては、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体により変性された変性ポリオレフィンが好ましく、ポリオレフィン系重合体(a)との相溶性に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン(c)が、ポリオレフィン系重合体(a)と同じ種類のポリオレフィン系重合体を酸変性させたものであることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系重合体(a)がポリプロピレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(c)が酸変性ポリプロピレンであることが好ましく、ポリオレフィン系重合体(a)がポリエチレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(c)が酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン(c)のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物が挙げられる。このうち無水マレイン酸が最も好適である。
酸変性ポリオレフィン(c)のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)は0.01g/10分以上15g/10分未満であり、好ましくは0.5~10g/10分である。酸変性ポリオレフィン(c)のMFRが上記範囲であることにより、酸変性ポリオレフィン(c)と、ポリオレフィン系重合体(a)及び酸変性ポリオレフィン(d)の粘度のバランスが良好となる。その結果、極性重合体(b)の分散性が向上して、成形品としたときの耐衝撃性が向上する。
また、酸変性ポリオレフィン(c)の密度は0.855~0.955g/cmであることが好ましい。酸変性ポリオレフィン(c)の密度が上記範囲であれば、透明性を損なうことなく、押出工程での異物の発生を低減することができ、リサイクルフィルムの外観を良好に維持できるとともに、機械物性の低下も防ぐことができる。
酸変性ポリオレフィン(c)に含有される不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の量としては、酸変性ポリオレフィン(c)の0.001~3質量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体量が上記範囲内の酸変性ポリオレフィン(c)であれば、本発明の重合体組成物中の極性重合体(b)の分散性が向上して、成形性が向上する。
酸変性ポリオレフィン(c)は1種のみを用いてもよく、変性前の重合体の種類や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<配合割合>
本発明の重合体組成物は、ポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対して極性重合体(b)を0.1~20質量部、酸変性ポリオレフィン(d)を0.1~25質量部含有することが好ましい。
極性重合体(b)が0.1質量部未満では極性重合体(b)を含有することによるバリア性を十分に得ることができない。一方、極性重合体(b)が20質量部を超えると得られる成形品の耐衝撃性が低下する傾向がある。極性重合体(b)はポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対して1~15質量部含有されることがより好ましく、5~10質量部含有されることが更に好ましい。
酸変性ポリオレフィン(d)が0.1質量部未満では、重合体組成物中の極性重合体(b)の微分散の効果を十分に得ることができず、リサイクル組成物において、透明性の低下や押出工程における異物発生を十分に防止することができない。一方、酸変性ポリオレフィン(d)が25質量部を超えると押出工程における異物発生を十分に防止することができない。酸変性ポリオレフィン(d)はポリオレフィン系重合体(a)100質量部に対して0.5~15質量部含有されることがより好ましく、1~10質量部含有されることが更に好ましい。
本発明の重合体組成物が、酸変性ポリオレフィン(c)を含有する場合、酸変性ポリオレフィン(c)の含有量は、ポリオレフィン系共重合体(a)100質量部に対して0.1~20質量部、特に1~18質量部、とりわけ5~15質量部含有されていることが好ましい。酸変性ポリオレフィン(c)の含有量が上記範囲内であれば、重合体組成物中の極性重合体(b)の分散性がより良好となり、得られる成形品の耐衝撃性が高められる。
<その他の成分>
本発明の重合体組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じて、ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、酸変性ポリオレフィン(c)、酸変性ポリオレフィン(d)以外の重合体や任意の添加剤等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤を挙げることができる。本発明の重合体組成物中におけるこれらの添加剤の含有量は、その合計で通常50質量%以下であり、20質量%以下が好適であり、10質量%以下がより好適である。
<重合体組成物の製造方法>
本発明の重合体組成物を得るための各成分の混合方法について特に制限はなく、ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、及び酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて用いられる酸変性ポリオレフィン(c)及びその他の成分を一度にドライブレンドして溶融混練する方法;ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、及び酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて用いられる酸変性ポリオレフィン(c)及びその他の成分の一部を予め溶融混練してから、他の成分を配合して溶融混練する方法;ポリオレフィン系重合体(a)、極性重合体(b)、及び酸変性ポリオレフィン(d)、必要に応じて用いられる酸変性ポリオレフィン(c)及びその他の成分の一部又は全部を含有する多層構造体と、他の成分を配合して溶融混練する方法が挙げられる。
本発明の重合体組成物の製造方法として、ポリオレフィン系重合体(a)層及び極性重合体(b)層を含む多層包材の回収物、或いはポリオレフィン系重合体(a)層、極性重合体(b)層及び酸変性ポリオレフィン(c)層を含む多層包材の回収物と、酸変性ポリオレフィン(d)を含有する相溶化剤とを溶融混練する方法が好適である。ここで、多層包材の回収物とは、当該多層包材からなる成形品を製造する際に発生するバリ等のスクラップや成形時の不合格品等の回収物である。また、このような回収物を溶融混練する際に配合される添加剤を相溶化剤といい、ここでは、酸変性ポリオレフィン(d)を含有する相溶化剤が用いられる。前記相溶化剤中の酸変性ポリオレフィン(d)の含有率は、5~100質量%が好適である。酸変性ポリオレフィン(d)の含有率は、10質量%以上がより好適であり、20質量%以上がさらに好適であり、50質量%以上が特に好適である。
溶融混練のための具体的な方法としては、各成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、多軸混練押出機、例えば日本製鋼所の2軸混練押出機であるTEX25を用いて混練する方法が例示できる。
各成分の溶融混練の温度は、前述の酸変性ポリオレフィン(d)のグラフト変性時の温度と同様、通常100~300℃、好ましくは120~280℃、より好ましくは150~250℃である。
<成形品>
本発明の重合体組成物を成形することで成形品(以下、「本発明の成形品」と称す場合がある。)とすることができる。
本発明の成形品の形状としては、例えば、フィルム、シート、テープ、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物、各種不定形成形物等が例示される。
本発明の重合体組成物の成形方法には特に制限はなく、一般的な重合体組成物に適用可能な成形方法であればいずれも適用することができる。
例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形等を挙げることができる。
さらに成形においては、成形品の物性を改善したり、目的とする任意の容器形状に成形したりするために、加熱延伸処理が施されることも多い。ここで加熱延伸処理とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の成形物を、チャック、プラグ、真空力、圧空力、ブロー等により、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、フィルム状に均一に成形する操作を意味する。そして、この延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等が挙げられる。延伸は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよいが、二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は通常60~170℃であり、さらには80~160℃が好ましい。
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
以下の実施例及び比較例において、変性共重合体及びリグラインド組成物の調製に用いた原材料は次の通りである。
[変性共重合体原材料]
<成分(A):エチレン・ブテン共重合体>
・A-1:三井化学社製 タフマー(登録商標)A35070S(MFR(190℃、荷重2.16kg):35g/10分、密度:0.870g/cm
・A-2:三井化学社製 タフマー(登録商標)A4085S(MFR(190℃、荷重2.16kg):3.6g/10分、密度:0.885g/cm
・A-3:三井化学社製 タフマー(登録商標)A20085S(MFR(190℃、荷重2.16kg):18g/10分、密度:0.885g/cm
・A-4:三井化学社製 タフマー(登録商標)A70050S(MFR(190℃、荷重2.16kg):70g/10分、密度:0.893g/cm
<成分(B):ラジカル発生剤>
・有機過酸化物 日本油脂(株)製 パーヘキサ25B
<成分(C):不飽和カルボン酸成分>
・無水マレイン酸 市販品
<成分(D):エチレン・オクテン共重合体>
・D-1:Dow社製 AFFINITY(登録商標)GA1900(MFR(190℃、荷重2.16kg):1000g/10分、密度:0.870g/cm
[リグラインド組成物材料]
・ポリエチレン:日本ポリエチレン社製 ノバテック(登録商標)UF230(MFR(190℃、荷重2.16kg):1g/10分、密度:0.921g/cm
・EVOH:三菱ケミカル社製 ソアノール(登録商標)DC3203RB(MFR(210℃、荷重2.16kg):3.8g/10分、密度:1.19g/cm、エチレン単位含有率:32モル%、ケン化度:99.9モル%)
・接着性重合体:三菱ケミカル社製 モディック(登録商標)M512(MFR(190℃、荷重2.16kg):1.0g/10分、密度:0.900g/cm
[変性共重合体の作製]
<合成例1>
成分(A-1):100質量部、成分(B):0.03質量部、及び成分(C):0.15質量部をドライブレンドして混合し、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度230℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状の無水マレイン酸により変性された変性エチレン・ブテン共重合体(A’-1-1)を得た。得られた変性エチレン・ブテン共重合体(A’-1-1)について、前述の方法でMFR(190℃、2.16kg)、密度、グラフト率を測定した。測定結果を表-1に示す。
<合成例2~8>
配合組成を表-1に示したように変更した以外は合成例1と同様にして、それぞれ変性共重合体(A’-1-2)、(A’-1-3)、(A’-1-4)、(A’-2)、(A’-3)、(A’-4)、(D’-1)を得た。得られた変性共重合体を用いて、合成例1と同様に、MFR(190℃、2.16kg)、密度、グラフト率を測定した。測定結果を表-1に示す。
Figure 2022174019000001
[リグラインド組成物の作製]
<実施例1>
日本ポリエチレン社製 ノバテック(登録商標)UF230:77質量部、三菱ケミカル社製 ソアノール(登録商標)DC3203RB:10質量部、三菱ケミカル社製 モディック(登録商標)M512:10質量部に対し、合成例1の変性エチレン・ブテン共重合体(A’-1-1)を相溶化剤として3質量部、ドライブレンドして混合し、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX25αIII、D=25mmφ、L/D=52.5)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状のリグラインド組成物を得た。この得られたリグラインド組成物を1pass品とした。さらに得られた1pass品のリグラインド組成物について、上記記載の条件にて、再度2軸押出機にて溶融混練を実施し、得られたリグラインド組成物を2pass品とした。これらについて下記(1)~(4)の評価を行った。評価結果を表-2に示す。
<実施例2~4、比較例1~5>
配合組成を表-2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、1pass品および2pass品のリグラインド組成物を得た。得られたリグラインド組成物について、下記(1)~(4)の評価を行った。評価結果を表-2に示す。
[評価方法]
(1)透明性
(株)GSIクレオス社製単層Tダイフィルム成形機(押出機:50mmφ、リップ開度:0.3mm)を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数20rpmで膜厚0.1mmのフィルムを作製した。得られたフィルムを目視により比較し、透明性が高いフィルムを○、やや不透明なフィルムを△、不透明なフィルムを×とした。
(2)内部HAZE
上記にて作製した膜厚0.1mmのフィルムを用い、HAZEメーターを用いて内部ヘイズをn=3にて測定し、平均値を算出した。内部HAZEはポリエチレン中のEVOHの分散性を評価する指標であり、内部HAZE値が小さいほどEVOHが微分散しており外観が良好である。本評価では内部HAZE値が17%以下であるとEVOHの分散性が良好と評価する。
(3)引張破断強度
上記にて作製した膜厚0.1mmのフィルムを用い、JIS K7161に準拠する方法にて引張破断強度をn=3にて測定し、平均値を算出した。引張破断強度が25MPa以上であると機械特性が良好であると言える。
(4)異物付着量
上記条件で押出を実施した際の、ダイスヘッドにおける1時間の押出後の低分子量熱分解物の析出量を計量した。異物付着量が0.25g以下であると熱安定性が良好であると言える。
Figure 2022174019000002
[考察]
表-2に示すように本発明の変性エチレン共重合体を用いた実施例1~4は、透明性を損なうことなく、異物付着量を無いもしくは少なくすることができた。また、内部HAZE、機械特性、リサイクル性にも優れる結果となった。
これに対して、MFRが2g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(A’-2)を用いた比較例1、MFRが13g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(A’-3)を用いた比較例2、MFRが59g/10分の変性エチレン・ブテン共重合体(A’-4)を用いた比較例3において、異物付着量が多い結果となった。
MFRが640g/10分の変性エチレン・オクテン共重合体(D’-1)を用いた比較例4は、2pass後のリグラインド組成物を用いたフィルム評価において内部HAZEが高く、リサイクル性に劣る結果となった。
比較例5は、相溶化剤を用いない例を示しており、内部HAZE、引張破断強度、異物付着量のいずれも2passの押出工程にて大きく性能悪化がみられる結果であり、ポリエチレン、EVOH、接着性樹脂重合体から成るリグラインド組成物では再利用が困難なことを示した。

Claims (13)

  1. エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体を含む相溶化剤であって、
    該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、相溶化剤。
  2. エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した変性エチレン共重合体を含むリサイクル助剤であって、
    該変性エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分である、リサイクル助剤。
  3. エチレン単量体と炭素数4~8のα-オレフィン単量体の1種又は2種以上との共重合体を、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物により変性した、メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)が15~39g/10分の変性エチレン共重合体の存在下で、極性の重合体と非極性の重合体とを相溶化する相溶化方法。
  4. 前記変性エチレン共重合体の密度が0.855~0.895g/cmである、請求項1に記載の相溶化剤。
  5. 前記変性エチレン共重合体の密度が0.855~0.895g/cmである、請求項2に記載のリサイクル助剤。
  6. 前記変性エチレン共重合体の密度が0.855~0.895g/cmである、請求項3に記載の相溶化方法。
  7. 前記変性エチレン共重合体のグラフト率が0.1~1.0質量%である、請求項1又は4に記載の相溶化剤。
  8. 前記変性エチレン共重合体のグラフト率が0.1~1.0質量%である、請求項2又は5に記載のリサイクル助剤。
  9. 前記変性エチレン共重合体のグラフト率が0.1~1.0質量%である、請求項3又は6に記載の相溶化方法。
  10. 前記変性エチレン共重合体がエチレン・ブテン共重合体である、請求項1又は4に記載の相溶化剤。
  11. 前記変性エチレン共重合体がエチレン・ブテン共重合体である、請求項2又は5に記載のリサイクル助剤。
  12. 前記変性エチレン共重合体がエチレン・ブテン共重合体である、請求項3又は6に記載の相溶化方法。
  13. 前記非極性の重合体がポリエチレン系重合体である、請求項3又は6に記載の相溶化方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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