以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、本実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
[速度管理システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るアスファルトフィニッシャAFの速度管理システムSの全体構成を示す構成図である。速度管理システムSは、例えば、インターネット等の情報通信ネットワークNに速度管理システムSを構成する各機器が接続されることによって構成される。図1示す速度管理システムSでは、サーバ1と、搭載用情報端末2と、携帯用情報端末3と、プラント4と、現場事務所5とが情報通信ネットワークNに接続されている。
なお、図1における情報通信ネットワークNに接続される速度管理システムSは、管理の対象となるアスファルトフィニッシャAFの速度に関係する装置のみ記載している。道路工事を行う際には、例えば、ダンプ等のアスファルト混合物を運搬する運搬車両の運行管理等も行われ、プラント4からアスファルト混合物を施工現場まで運搬する運搬車両にはそれぞれ情報端末が搭載される。しかしながら、図1においては、このような運搬車両に搭載される情報端末については描画を省略している。
サーバ1は、アスファルトフィニッシャAFの速度管理を行う際に、後述するように取得した様々な情報を基に、施工現場においてどのような速度でアスファルトフィニッシャAFを動かせばアスファルト混合物を切らさずに敷き均すことができるかを示す最適速度を算出し、アスファルトフィニッシャAFに通知する。
また、アスファルト混合物を敷き均す際の各種条件やアスファルト混合物を運搬する運搬車両に関する情報といった、各種情報を記憶しても良く、運搬車両の運行管理等の各種管理を行っても良い。なお、サーバ1は、物理的な装置としてのサーバ装置であっても、或いは、情報通信ネットワークN上に置かれるクラウドサーバであっても良い。
ここで「最適速度」とは、アスファルトフィニッシャAFの速度として、アスファルト混合物を運搬してくる複数の運搬車両の運行状況に左右されず、アスファルト混合物が途切れることなく連続して敷き均すことが可能な速度として最適な速度を示している。当該最適速度については、サーバ1において算出されることになるが、この算出の流れについては、後述する。
搭載用情報端末2は、アスファルトフィニッシャAFに搭載される情報端末であり、アスファルトフィニッシャAFの速度を管理するために用いられる。また、搭載用情報端末2は、情報通信ネットワークNに接続可能とされている。図1に示すアスファルトフィニッシャAFの速度管理システムSにおいては、1台のアスファルトフィニッシャAFに2台の搭載用情報端末2が搭載されている状態が示されている。
これは、アスファルトフィニッシャAF1台につき、運転手用に1台、その他オペレータ用に1台使用されるからである。以下においては、適宜運転手用の搭載用情報端末2を第1の搭載用情報端末2Aと表し、オペレータ用の搭載用情報端末2を第2の搭載用情報端末2Bと表す。一方で、第1の搭載用情報端末2A及び第2の搭載用情報端末2Bについてまとめて表す場合には、適宜「搭載用情報端末2」と表す。
ここで第2の搭載用情報端末2Bを使用するオペレータとしては、例えば、後述するアスファルトフィニッシャAFのスクリード近傍で敷き均されるアスファルト混合物の厚みを管理するアジャスターマンと呼ばれる作業員が挙げられる。
従って図1に示すように、第1の搭載用情報端末2Aは、アスファルトフィニッシャAFの運転手用であるので、運転台に配置される。一方、第2の搭載用情報端末2Bはアジャスターマンが使用するため、スクリード近傍に配置される。
また、図1に示すアスファルトフィニッシャの速度管理システムSの全体図においては、2台のアスファルトフィニッシャAFが示されて、それぞれ第1の搭載用情報端末2A及び第2の搭載用情報端末2Bが搭載されている。なお、このように2台のアスファルトフィニッシャAFが示されているが、アスファルトフィニッシャAFの台数については特に限定されず、施工現場において適宜その台数が決定される。またここでは、いずれのアスファルトフィニッシャAFにも第1の搭載用情報端末2A及び第2の搭載用情報端末2Bが搭載される。
携帯用情報端末3は、施工現場における、例えば、作業監督等、アスファルトフィニッシャAFに乗り込む作業員以外の作業員が携帯する情報端末である。この携帯用情報端末3には、搭載用情報端末2と同じ情報を取得し表示させることが可能である。また、図1では当該携帯用情報端末3は、1台のみ描画されているが、施工現場の状況に応じて複数台使用されるようにされていても良い。
プラント4は、アスファルト混合物を製造する場所であり、プラント4に設けられる、例えば、パソコン等の機器が情報通信ネットワークNに接続される。プラント4では、アスファルト等を練り混ぜる等してアスファルト混合物を製造する。そして出来上がったアスファルト混合物は運搬車両によって施工現場に運搬される。
このようにプラント4に設置されているパソコン等も情報通信ネットワークNに接続されている。これは、プラント4においてもアスファルトフィニッシャAFの速度について確認することができるようにするためである。このようにされているのは、プラント4においてアスファルトフィニッシャAFの速度を確認することで、施工現場の状況を把握しつつ運搬車両によるアスファルト混合物の運搬間隔を検討することができ、ひいてはアスファルト混合物の製造速度等を決定する際の情報の1つとして利用することができるからである。
なお、プラント4から施工現場までアスファルト混合物を運搬した運搬車両は、アスファルトフィニッシャAFにアスファルト混合物を荷卸しした後、適宜プラント4まで戻り、改めて施工現場に向けて出発する。すなわち、運搬車両はプラント4と施工現場との間を適宜往復する。以下においては特に説明しないが、上述したようにアスファルト混合物を運搬する運搬車両については、全ての車両に対して運行管理がなされている。
現場事務所5は、施工現場に設けられる事務所であり、現場事務所5に設けられる、例えば、パソコン等の機器が情報通信ネットワークNに接続される。この現場事務所5では、施工現場の全体を管理している。そのため、施工現場において使用されるアスファルトフィニッシャAFの速度管理の情報についても把握することができるようにされている。
なお、図1におけるアスファルトフィニッシャAFの速度管理システムSにおいては、プラント4及び現場事務所5はいずれも1つのみ描画されている。但し、複数のプラント4からアスファルト混合物を調達している場合や大規模工事であることから複数の現場事務所5が設けられている場合には、それぞれの拠点にてそれぞれサーバ1にアクセスしてアスファルトフィニッシャAFの速度を把握することができるようにされていても良い。
情報通信ネットワークNは、サーバ1と、搭載用情報端末2と、携帯用情報端末3と、プラント4と、現場事務所5とをそれぞれつないでいる。これら各機器は、情報通信ネットワークNに接続されることによって、互いの間で、例えばアスファルトフィニッシャAFの速度や運搬車両の運行管理等に関する情報のやりとりを可能とされている。情報通信ネットワークNの例としては、インターネット等のネットワークやLAN(Local Area Network)を挙げることができる。
なお、図1においては、情報通信ネットワークNには、サーバ1、搭載用情報端末2、携帯用情報端末3、プラント4、現場事務所5が接続された状態が示されているが、これらの各機器以外の機器が接続されていても構わない。
また、図1に示すアスファルトフィニッシャAFの速度管理システムSでは、サーバ1、プラント4及び現場事務所5とは、それぞれ情報通信ネットワークNとの間を実線でつないで示されている。これは、これらの装置、場所がそれぞれ有線で情報通信ネットワークNに接続されていることを示している。
但し、これら各部が情報通信ネットワークNにそれぞれ無線で接続される構成としても良い。一方、搭載用情報端末2及び携帯用情報端末3については、いずれも無線で情報通信ネットワークNに接続される様子が示されている。
[サーバ及び搭載用情報端末の内部構成]
次に、以下、サーバ1及び搭載用情報端末2について、さらに詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るサーバ1の内部構成を示すブロック図である。サーバ1は、通信制御部11と、アスファルトフィニッシャ速度算出部12と、運搬車両運行管理部13と、記憶部14とを備えている。
通信制御部11は、情報通信ネットワークNを介してアスファルトフィニッシャAFの速度管理システムSを構成する各部との情報のやり取りを制御する。アスファルトフィニッシャ速度算出部12は、施工現場においてアスファルトフィニッシャAFが止まることなく連続的に舗装することを可能とする最適な速度を算出する。
アスファルトフィニッシャ速度算出部12は、計算部121と比較選択部122とを備える。計算部121は、後述する様々な情報を基にアスファルトフィニッシャAFがアスファルト混合物を敷き均す速度を算出する。比較選択部122は、計算部121において算出された複数の速度を比較して、施工現場においてアスファルトフィニッシャAFが止まることなく連続的に舗装することができる速度を選択する。
運搬車両運行管理部13は、プラント4と施工現場とを往復して施工現場にアスファルト混合物を運搬する運搬車両の運行管理を行う。記憶部14は、アスファルトフィニッシャAFの最適速度として算出された速度や運搬車両の運行管理を行うための各種情報を記憶する。
次にアスファルトフィニッシャAFに搭載される搭載用情報端末2について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る搭載用情報端末2の内部構成を示すブロック図である。
搭載用情報端末2は、例えば、スマートフォン、タブレットやPDA(Personal Digital Assistant)に含まれる各種機器が該当する。本発明の 実施の形態においては、搭載用情報端末2は、少なくとも、サーバ1において算出されたアスファルトフィニッシャAFの最適速度に関する情報を受信して後述する表示部に表示させることができる機能を備えている。
また後述するように、搭載用情報端末2を用いてアスファルトフィニッシャAFの速度の制御を行うことから、搭載用情報端末2には、アスファルトフィニッシャAFの制御を行うための制御部やアプリケーションを記憶する記憶部を備えている。
搭載用情報端末2は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23及び入出力インターフェイス24がバスBを介して接続される構成を備えている。さらに当該入出力インターフェイス24には、搭載用情報端末2を操作する者が使用する入力部25と、表示部26と、通信制御部27と、記憶部28と、速度制御部29とが接続される。
CPU21は、入力部25からの入力信号に基づいてROM22から搭載用情報端末2を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶部28に格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPU21は、入力部25や入出力インターフェイス24を介して、図2において図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいてアスファルトフィニッシャAF等の制御を行うこととされていても良い。
さらにCPU21は、RAM23や記憶部28等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM23にロードするとともに、RAM23から読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、搭載用情報端末2の管理やアスファルトフィニッシャAFの速度を自動で制御するために必要なデータの計算、加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
入力部25は、アスファルトフィニッシャAFの運転手等が各種の操作を入力する、例えばタッチパネル等の入力デバイスにより構成されている。入力部25を介した運転手等の操作に基づいて入力信号が作成されバスBを介してCPU21に送信される。また、この他、マイク、カメラ等、搭載用情報端末2に設けられている装置、または、当該搭載用情報端末2に接続可能な各種装置も入力部25の一種として挙げることができる。
表示部26は、例えばモニタである。この表示部は、CPU21からバスBを介して出力信号を受信し、例えば、アスファルトフィニッシャAFの運転速度や運転速度の最大値、最小値、或いは、運搬車両の運行管理に基づく運搬車両の到着時間等を表示し、或いは、CPUの処理結果を表示する。なお、表示部26としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、或いは、音声にて作業者に対して報知する装置も含まれる。
通信制御部27は、LANカードやモデム等の手段であり、搭載用情報端末2をインターネットやLAN等の情報通信ネットワークNに接続することを可能とする手段である。通信制御部27を介して情報通信ネットワークNと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス24及びバスBを介してCPU21に送受信される。
また、アスファルトフィニッシャAFの速度について制御を行う際には、搭載用情報端末2とアスファルトフィニッシャAFとが通信制御部27を介して、例えばブルートゥース(登録商標)を用いて速度に関する情報が送信される。
記憶部28は、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU21で実行される、例えば、アスファルトフィニッシャAFの速度制御を行うためのプログラムやデータが記憶されている。また、適宜アスファルト混合物を敷き均す際の速度等の各種情報についても記憶されていても良い。
速度制御部29は、例えば、アスファルトフィニッシャAFがアスファルト混合物を敷き均す際の設定速度が更新された新たな最適速度に更新された場合に、当該更新に伴って後述するアスファルトフィニッシャAFの速度調整部を変化させ、自動的に最適速度にする。また、当該最適速度を用いず、手動にて速度を設定し、設定された速度でアスファルトフィニッシャAFを移動させる際の制御も行う。
図4は、本発明の実施の形態に係る搭載用情報端末2の表示部26の一例を示す説明図である。ここでは、搭載用情報端末2がスマートフォンやタブレットである場合を例に挙げて説明する。
図4に示す搭載用情報端末2では、その上段に「計算速度」等の項目が表示される第1の表示部261が配置され、下段には入力部25が設けられているとともに、入力部25に囲まれる第2の表示部262が配置されている。
第1の表示部261においては、上から大きく3段に分けて様々な情報が表示されている。なお、当該第1の表示部261を含む表示部26に表示される情報や表示部26のレイアウトについては、自由に設定することができ、図4に示す搭載用情報端末2の表示部26は、あくまでも例示である。
まず、1段目には、アスファルトフィニッシャAFの移動速度、すなわち、アスファルト混合物を施工面に敷き均す際の速度について表示されている。1段目左側には、「最小」、「最大」の項目が表示されており、それぞれ「1.0」及び「3.0」と表示されている。これは、アスファルトフィニッシャAFの移動速度の最小値及び最大値を示している。なお、ここで示されるアスファルトフィニッシャAFの速度の単位は、「m/min」である。
そして、その右側に示されている「計算速度」はアスファルトフィニッシャAFがアスファルト混合物を切らさずに連続して敷き均すことが可能な速度を示しており、上述した最適速度である。この計算速度は、サーバ1において後述する様々な条件を基に計算された値であり、情報通信ネットワークNを介して搭載用情報端末2に送信され表示されるものである。
図4に示す搭載用情報端末2においては、「計算速度(最適速度)」は「1.5m/min」である。アスファルトフィニッシャAFは、第1の搭載用情報端末2Aを介して、この速度となるように自動的に制御される。或いは、アスファルトフィニッシャAFの運転手は、アスファルトフィニッシャAFの速度がこの値となるようにアスファルトフィニッシャAFの速度を制御する。
なおこのように、サーバ1において最適速度が算出され、この速度に従ってアスファルトフィニッシャAFの敷き均しが行われるが、アスファルトフィニッシャAFの速度は、上述した「最小値」及び「最大値」の範囲内で設定される。
すなわち、後述するように、アスファルトフィニッシャAFの最適速度(計算速度)は、運搬車両の運転手が運搬してきたアスファルト混合物をアスファルトフィニッシャAFに荷下ろしする際に「荷卸しボタン」を押したことをトリガーとして算出されるものである。そのため、プラント4から施工場所までの距離や施工現場における運搬車両の滞留台数等によっては、現場の作業員から見て極端な値が最適速度として算出されてしまうことも考えられる。
このような、極端な値が算出された場合に、この値を最適速度として敷き均しを行ってしまうと、次のアスファルト混合物が届く前に敷き均しが終わってしまう等の弊害が生じ施工品質の低下を招くことにつながる。
そこで、予めアスファルトフィニッシャAFの速度として「最小値」及び「最大値」を設定しておき、サーバ1において算出された最適速度がこれらの数値の範囲内にある場合に、アスファルトフィニッシャAFを最適速度で移動させる。
また、算出された最適速度の値が「最小値」及び「最大値」の範囲を超えている場合には、「最小値」或いは「最大値」として設定されている速度をもってアスファルトフィニッシャAFを移動させる。
なお、「最小値」及び「最大値」の設定は任意に行うことができる。また、最適速度の値が「最小値」及び「最大値」の範囲を超えている場合にどの速度でアスファルトフィニッシャAFを移動させるかについても任意に設定することができる。
さらに、最適速度の値が「最小値」及び「最大値」の範囲を超えている場合に、この最適速度の値を「計算速度」の欄に表示させておくことも可能である。この場合の「計算速度」は、あくまでも参考値であり、実際のアスファルトフィニッシャAFの速度は、搭載用情報端末2の第2の表示部262の「制御速度」の欄に表示される。
表示部261の2段目には、施工の予定が示されている。すなわち、ここでは、本日、或いは、区切られた時間の中で施工する予定がアスファルト混合物を運搬する運搬車両の台数で示されている。「進捗」の欄はこれまでアスファルト混合物が敷き均された完了状態を示している。一方、「予定」の欄は、予定されている必要な全運搬車両の台数を示している。
図4に示す搭載用情報端末2においては、「進捗」の台数が「4台」と表示され、「予定」は「43台」と表示されている。すなわち、予定されている敷き均し工程のうち、「4台分」完了していることを示している。
なお、ここでは「進捗」、「予定」のいずれの欄もアスファルト混合物を運搬する運搬車両の台数で示されている。但し、このような表示の仕方ではなく、例えば、敷き均された距離(進捗)、今後敷き均しが必要な距離(予定)というように、距離で表示されるようにしても良い。
2段目の右側には「設定画面」の表示がされている。これは、「設定画面」の表示をタップする等で選択すると、施工現場における敷き均しが必要な幅員やアスファルト混合物を敷き均す際の厚さ等、各種条件を設定する画面に遷移することができる。各種条件を設定、変更する場合に用いられる。
第1の表示部261の3段目には、アスファルト混合物の運搬車両の状態等が表形式で表示されている。ここでは、「No」の他、「車両No」、「到達予測」、「終了予測」及び「予定時刻」の4つの項目が示されている。「車両No」は、運搬車両に搭載されている情報端末の番号を示しており、運搬車両の番号を示している。ここでは、「1001」から順に「1009」まで9台分表示されている。なお、この項目における表示は、例えば、各運搬車両のナンバープレートの番号であっても良い。
「到達予測」は、運搬車両が施工現場に到達する時間の予測が示されている。ここでは、車両No「1001」ないし「1004」までの4台の「到達予測」については、表示がされていない。また、車両No「1005」の「到達予測」には「0:00」と表示されている。
すなわち、「到達予測」の欄に表示がない車両Noのうち、車両No「1001」ないし「1003」の3台については、次に説明する「終了予測」も表示されていない。そのため、これらの運搬車両が運んできたアスファルト混合物を用いての敷き均しは既に完了していることが読み取れる。
一方、現在この搭載用情報端末2が搭載されているアスファルトフィニッシャAFは車両No「1004」の運搬車両が運んできたアスファルト混合物を用いて敷き均しをしていることを示している。そして、この車両No「1004」を基準にして、この運搬車両以降の各運搬車両の到達予測がそれぞれ示されている。
例えば、車両No「1006」の運搬車両は10分後に、また、車両No「1008」の運搬車両は46分後に、施工現場に到着する予定であると予測されている。一方、車両No「1005」の「到達予測」は「0:00」と表示されているが、この運搬車両については、既に施工現場に到着していることを示している。
なお、各運搬車両の到達予測については、サーバ1において実行される運搬車両の運行管理情報を基に、サーバ1において算出される。この算出された到達予測が搭載用情報端末2に送信されて表示される。また、プラント4の出発時間が遅くなる、或いは、プラント4から施工現場までの経路上において発生した渋滞等の各状況によってこの「到達予測」の値は適宜変更されることとしても良い。
「終了予測」は、現在アスファルトフィニッシャAFに搭載されているアスファルト混合物を設定された条件の下で敷き均すと当該アスファルト混合物がなくなってしまう、すなわち、敷き均しが終了する時間を示している。ここでは、「17:08」に敷き均しが完了する予定であることが示されている。
但し、上述したように既に車両No「1005」の運搬車両は施工現場に到着しているので、引き続き当該車両No「1005」の運搬車両からアスファルト混合物を受け取ることによって、アスファルトフィニッシャAFは連続して敷き均しを行うことができる。
「予定時刻」は、本日、或いは、区切られた時間の中で施工する予定の工程の全てが終了する時刻を示している。ここでは、現在表示されている計算速度に従って敷き均していけば、「18:00」には全ての工程が完了する予定であることが示されている。
図4に示す搭載用情報端末2の下段には、第2の表示部262が示されている。この大の表示部262に表示されている速度は、アスファルトフィニッシャAFの「制御速度」である。つまり、実際にアスファルトフィニッシャAFを移動させる速度が示される。
具体的には、この第2の表示部262に表示されるアスファルトフィニッシャAFの速度は、第1の表示部261に表示される「計算速度」が表示される。すなわち、上述したように、「計算速度」には、サーバ1において算出される「最適速度」が表示される。
従って、アスファルトフィニッシャAFの運転手としては、当該最適速度に従ってアスファルトフィニッシャAFの速度を制御することでアスファルト混合物を切らすことなく連続的に敷き均しを進めることができる。そのため、通常はこの「計算速度」と「制御速度」とに示されるアスファルトフィニッシャAFの速度は一致する。そしてこの速度で進むように、第1の搭載用情報端末2AからアスファルトフィニッシャAFに対して指示が出される。
一方で、「計算速度」に表示されるアスファルトフィニッシャAFの速度ではなく運転手が手動でアスファルトフィニッシャAFの速度を制御したい場合も出てくる。例えば、その日初めてアスファルトフィニッシャAFを使ってアスファルト混合物を敷き均すような状況では、サーバ1において算出された「計算速度」よりもゆっくりした速度で敷き均しを始めたい場合がある。
また、敷き均しの途中で幅員が変化する等、敷き均しの条件が変化する場合にも「計算速度」よりもゆっくりした速度で敷き均しを行いたい場合が出てくる。そこでこのような場合には、運転手の経験に基づいた速度とすることができるように、計算速度とは異なる速度での手動制御を可能としている。
なお、この手動制御等に関する制御や図4に示す搭載用情報端末2の下段に示されている各入力部25の機能等については、別途後述する。
[アスファルトフィニッシャの構成]
次に、図1等に示す搭載用情報端末2が搭載されるアスファルトフィニッシャAFについて、図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態に係るアスファルトフィニッシャAFを示す説明図である。
図5に示すように、本発明の実施の形態に係るアスファルトフィニッシャAFは、車体10と、ホッパ20と、コンベア30と、スプレッダ40と、スクリード(敷均し機)50と、スクリード昇降部60と、制御部70と、速度自動制御装置80と、速度調整つまみ90とを備えている。
車体10は、二対の前輪101及び一対の後輪102を有しており、前進及び後退が可能(前後に進行可能)に形成されている。二対の前輪101は操舵輪であり、車体10の前側の下部に設けられている。また、一対の後輪102は駆動輪であり、車体10の後側の下部に設けられている。
なお、アスファルトフィニッシャAFの進行方向は図5中の矢印A1の方向である。また、この車体10の矢印A1が示す方向に基づいて(進行方向A1を向いた状態で)車体10の前後左右が規定される。
ホッパ20は、車体10の前側に設けられており、ダンプなどの運搬車両(図5においては図示せず)から投入されるアスファルト混合物を受け入れる。このホッパ20は、略L字形状の一対の受け板201がコンベア30を左右から挟むように対向配置され、車体10の幅方向(車体10の進行方向A1に水平に直交する方向)に開閉可能に構成されている。ホッパ20は、制御部70に電気的に接続されており、その駆動が制御部70により制御される。
このようなホッパ20は、各受け板201の底面が略水平となる全開状態(図5に示す状態)で、運搬車両から投入されるアスファルト混合物を荷受けして貯める。その後、ホッパ20は、投入されたアスファルト混合物がコンベア30により搬送されて減少すると閉まり、一対の受け板201の内面に存在するアスファルト混合物をホッパ20の中央、すなわちコンベア30上に集める。
コンベア30は、例えば、搬送列が二列である二条式のバーフィーダ方式のコンベアである。このコンベア30は、ホッパ20に投入されたアスファルト混合物を搬送し、スプレッダ40に供給する。
コンベア30としては、二条式のバーフィーダ方式のコンベア以外にも、搬送列が一列である一条式のバーフィーダ方式のコンベア、或いは、スクリュー式などの他の構成のコンベアを用いることが可能である。コンベア30は、制御部70に電気的に接続されており、その駆動が制御部70により制御される。
スプレッダ40は、その延伸方向が車体10の幅方向に平行になるよう、車体10の後端に設けられている。このスプレッダ40は、車体10の幅方向の長さとほぼ同じ長さを有しており、コンベア30により供給されたアスファルト混合物を被施工面に撒き広げる。スプレッダ40としては、例えば、スクリュースプレッダやそのスクリュースプレッダ以外のスプレッダを用いることが可能である。スプレッダ40は、制御部70に電気的に接続されており、その駆動が制御部70により制御される。
スクリード50は、スプレッダ40より後方に位置付けられ、その延伸方向が車体10の幅方向に平行になるよう、スクリード昇降部60により支持されている。このスクリード50は、車体10の幅方向の長さとほぼ同じ長さを有しており、スプレッダ40により撒き広げられたアスファルト混合物を敷き均す。スクリード50は、制御部70に電気的に接続されており、その駆動が制御部70により制御される。
スクリード昇降部60は、一対のレベリングアーム601、一対のレベリングシリンダ602、一対のスクリードリフトシリンダ603を備えている。このスクリード昇降部60は、一対のレベリングシリンダ602及び一対のスクリードリフトシリンダ603を用い、スクリード50を支持する一対のレベリングアーム601を昇降させる。スクリード昇降部60は、制御部70に電気的に接続されており、その駆動が制御部70により制御される。
レベリングアーム601、レベリングシリンダ602及びスクリードリフトシリンダ603は、それぞれ車体10の左右に設けられている。一対のレベリングアーム601の前端部は、それぞれレベリングシリンダ602を介して車体10に取り付けられている。また、一対のレベリングアーム601の後端部は、それぞれスクリードリフトシリンダ603を介して車体10に取り付けられている。このような一対のレベリングアーム601の後端にスクリード50が連結されている。
制御部70は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を備えている。この制御部70は、各種情報や各種プログラムに基づいてホッパ20やコンベア30、スプレッダ40、スクリード50、スクリード昇降部60などを制御する。
なお、図5には示していないが、例えば、アスファルトフィニッシャAFのホッパ20に載せられたアスファルト混合物を加熱する装置やアスファルト混合物の温度を測定するセンサ等を設け、これらを制御部70において制御するようにされていても良い。この場合、センサから送信された温度の情報は記憶部に保存される。
速度自動制御装置80は、サーバ1において算出された最適速度でアスファルトフィニッシャAFを走行させるように、速度を自動的に制御する装置である。また、速度調整つまみ90は、アスファルトフィニッシャAFの速度を調整するためのつまみである。すなわち、速度調整つまみ90を回転させることによってアスファルトフィニッシャAFの速度を変更することができる。
なお、上述したように、本発明の実施の形態におけるアスファルトフィニッシャAFには、運転席に第1の搭載用情報端末2Aが、また、スクリード50の近傍には第2の搭載用情報端末2Bが設置されている。これら搭載用情報端末2の設置の方法については、作業中に傾いたり落下することがないようにされていれば、どのように固定されていても良い。
また、図1や図5においては、例えば第1の搭載用情報端末2Aはオペレーティングパネルの上部に設置されているが、設置場所についても見やすさ、操作のしやすさ等を考慮して、いずれに設置されていても良い。
さらに、本発明の実施の形態におけるアスファルトフィニッシャAFには、図1に示すように2台の搭載用情報端末2が搭載されている。但し、アスファルトフィニッシャAFに配置される搭載用情報端末2の台数については限定されない。
図6は、本発明の実施の形態に係るアスファルトフィニッシャAFの速度自動制御装置80の内部構成を示すブロック図である。速度自動制御装置80は、通信制御部81と、駆動制御部82と、駆動部83とを備えている。通信制御部81は、上述したように、搭載用情報端末2からの駆動制御信号を受信する。
駆動制御部82は、搭載用情報端末2から受信したアスファルトフィニッシャAFの速度調整の駆動信号に基づいて駆動部83を駆動させる。駆動部83は、速度調整つまみ90と接触するように配置されており、駆動制御部82からの信号に従って駆動部83が回転することによって、速度調整つまみ90も回転する。
ここで、本発明の実施の形態におけるアスファルトフィニッシャAFにおいては、上述したように、その速度の調整を速度調整つまみ90を回転させることによって行う。従って、当該速度調整つまみ90は「速度調整部」の一例に該当する。但し、速度調整部としては、例えば、車のアクセラレータ(アクセルペダル)等、速度の調整が可能であれば、どのような機構であっても良い。
図7は、本発明の実施の形態に係るアスファルトフィニッシャAFの速度自動制御装置80の外観を示す構成図である。速度調整つまみ90は、アスファルトフィニッシャAFの運転台に設けられているオペレーティングパネルOPに設けられている。そしてこの速度調整つまみ90に駆動部83が接するように、バネによって駆動部83が速度調整つまみ90に押し当てられている。
速度自動制御装置80はこのような構成を採用していることから、例えば、速度調整つまみ90を右回転させる場合には、駆動部83は左に回転する。一方、速度調整つまみ90を左に回転させる場合には、駆動部83は右に回転する。
なお、本発明の実施の形態におけるアスファルトフィニッシャAFにおいては、速度自動制御装置80は、このような構成としたが、例えば、バネ以外の付勢部材を用いることも可能である。
また、駆動部83を速度調整つまみ90に押し当てることで駆動部83の回転力を速度調整つまみ90に伝えているが、例えば、駆動部83の形状を速度調整つまみ90を覆いつつ接触可能な形状に変更して、駆動部83の回転力を速度調整つまみ90に伝えることとしても良い。
さらに、速度自動制御装置80については、図7に示されているような位置に配置されているが、速度調整つまみ90の配置に伴ってその配置位置が決定されるのであれば、このような位置に限らずオペレーティングパネルOPのいずれに配置されていても良い。
また、ここではアスファルトフィニッシャAFの速度調整を速度調整つまみ90を利用して行うことから上述したような構成を採用したが、例えば、アスファルトフィニッシャAFの速度調整を他の方法で行う場合には、その方法に適した構成によりアスファルトフィニッシャAFの速度を自動制御とすることができる。
また、本発明の実施の形態においては、説明の都合上、上記制御部70とは別に設けた例を示しているが、速度自動制御装置80の機能を制御部70に担わせることも可能である。
ここで本発明の実施の形態におけるアスファルトフィニッシャAFにおいては、その速度の制御は、搭載用情報端末2を利用して実行される。まず、搭載用情報端末2での操作について図4を用いて説明する。
上述したように、アスファルトフィニッシャAFは、サーバ1において算出された最適速度で移動しアスファルト混合物の敷き均しを行う。そのため、サーバ1は情報通信ネットワークNを介して搭載用情報端末2に対して算出した最適速度の情報を送信する。当該情報を受信した搭載用情報端末2では、最適速度を「計算速度」として第1の表示部261に表示させる。
そして搭載用情報端末2は、この最適速度でアスファルトフィニッシャAFを移動させるべく、速度制御部29からアスファルトフィニッシャAFの速度自動制御装置80に対して当該最適速度の情報を送信する。
すなわち、サーバ1において算出された最適速度の情報を基に、速度調整つまみ90をどのくらい回転させるかの判断を搭載用情報端末2が行い、その結果を速度自動制御装置80へ送信する。
具体的には、搭載用情報端末2の速度制御部29は、アスファルトフィニッシャAFの速度を設定するに当たって、以下のような処理を行う。まず、例えば敷き均し開始時に最適速度を設定する場合、サーバ1から受信した最適速度の情報を基に、速度調整つまみ90を何度回転させるのかを算出し、この算出結果を速度自動制御装置80に送信する。
例えば、速度調整つまみ90にはノッチが刻まれており、速度調整つまみ90を1周させると16ノッチである。そのため、1ノッチ移動させると速度調整つまみ90は22.5度回転することになる。また、速度調整つまみ90を1ノッチ分回転させることによって0.1m/min分速度が増減する。
なお、ここで速度調整つまみ90に刻まれているノッチの数、及び、1ノッチ回転するごとにどのくらい速度が増減するかについては、アスファルトフィニッシャAFによって異なる。従って、設置されるアスファルトフィニッシャAFに合わせて搭載用情報端末2において設定することができる。
工事開始の際には、まだアスファルトフィニッシャAFの速度は設定されていない。従って、搭載用情報端末2は、サーバ1から受信した最適速度の情報を基に、当該最適速度が速度調整つまみ90の変化度合いとして何ノッチ分に該当するのかを算出し、これを回転角度に変換した上で、この回転角度に関する情報をアスファルトフィニッシャAFの速度自動制御装置80に送信する。
情報を受信した速度自動制御装置80では、指定された速度となるように駆動制御部82が駆動部83に対して速度調整つまみ90を必要な角度回転させるように駆動させる。このような処理が実行されることによって、アスファルトフィニッシャAFは最適速度で移動し、アスファルト混合物を切らすことなく連続的に敷き均すことができる。
一方、アスファルトフィニッシャAFの速度を変更する場合には、搭載用情報端末2の速度制御部29が変更前の速度と変更後の速度の差分を算出する。そして、算出された差分に合わせて速度調整つまみ90を何度回転させるのかを算出し、速度自動制御装置80に送信する。
従って、例えば、速度を1m/min増加させる場合には、上述した速度調整つまみ90を10ノッチ回転させる必要があり、225度分である。そこで、速度制御部29では、変更前の速度と変更後の速度の差分として1m/minを算出し、225度分速度調整つまみ90を225度回転させるように速度自動制御装置80に指示する。
速度自動制御装置80では速度制御部29から送信された情報に基づき、駆動制御部82から駆動部83に対して駆動指示を出し、速度調整つまみ90を度回転させるようにすることで、アスファルトフィニッシャAFの速度が制御される。
以上説明したような処理が実行されることによって、サーバ1において算出された最適速度がアスファルトフィニッシャAFに反映される。しかしその一方で、上述したように運転手が速度を制御したい場合も出てくる。このような場合は、以下に説明するような処理によって、アスファルトフィニッシャAFの速度を手動制御とすることもできる。
具体的には、運転手が搭載用情報端末2の第1の表示部261に表示されている計算速度とは異なる速度でアスファルトフィニッシャAFの速度を制御する場合には、第2の表示部262の両側に設けられている入力手段(図4に示す搭載用情報端末2の場合は、三角形で表示される4つの入力ボタン)を使用して所望の速度を設定する。
図4に示す搭載用情報端末2においては、第2の表示部262を挟んで4つ2組の入力ボタンが設けられている。第2の表示部262の向かって左側に設けられている入力ボタンは「整数」を入力するためのボタンであり、第2の表示部262の向かって右側の入力ボタンは「小数」を入力するためのボタンである。これらの入力ボタンを操作して制御速度として設定したい速度を入力する。
速度が入力されたら、運転手は、第2の表示部262の真上に設けられている「手動制御」のボタンを押す。これによって設定された制御速度でアスファルトフィニッシャAFを移動させることができる。
一方、手動制御の後、計算速度として表示されている最適速度でアスファルトフィニッシャAFを移動させる場合には、「手動制御」ボタンの右側に設けられている「自動制御」のボタンを押すことで、アスファルトフィニッシャAFを計算速度で移動させることができる。
なお、入力部25を構成するユーザインターフェイスについては、ここではボタン形式としたが、その他例えば、ダイヤル式、タッチパネル式等、様々な方式を採用することができる。また、スタイラスペン等の機器を使用することとしても良い。
一方、手動制御ボタンの左側に設けられている「初期速度」のボタンは、例えば、以下の場合に使用される。すなわち、例えば、手動制御によってアスファルトフィニッシャAFの速度が決定されて敷き均しが行われ、この状態のまま施工が終了すると、次に新たに施工を開始する際には、アスファルトフィニッシャAFのオペレーティングパネルに設けられている速度計には、この手動制御において設定された速度が表示されている。
一方、サーバ1においては、最適速度を算出するが、実際にアスファルトフィニッシャAFで設定されていた速度を把握することができない。また、速度調整つまみ90がどの速度を示しているのかも不明である。特に速度調整つまみ90のノッチと速度とが1対1に対応していない場合にはなおさらである。そのためこの場合、サーバ1が把握している速度(計算速度(最適速度))とアスファルトフィニッシャAFにおける実際の速度との間には差異が生じている可能性がある。
このような状況の下、サーバ1で算出された計算速度を基にアスファルトフィニッシャAFの速度を調整しようとすると、予期しない速度が設定されてしまう可能性がある。そこで、上記2つの速度を同期させる必要がある。
搭載用情報端末2に設けられている「初期速度」のボタンは、このような場合に使用されるものである。すなわち、例えば、日中の工事である場合には、その日の朝工事が始まる前に作業員が当該「初期速度」のボタンを押す。これによって、サーバ1において算出される計算速度とアスファルトフィニッシャAFにおける速度とが同期される。
具体的な処理の方法としては、例えば、アスファルトフィニッシャAFの速度を、例えば「0」にした後、「初期速度」のボタンが押されることによって、サーバ1の計算速度が「0」となるようにリセットする方法が考えられる。
また、別の方法としては、「初期速度」ボタンを押して、搭載用情報端末2の第2の表示部262に表示されている速度をアスファルトフィニッシャAFに表示されている速度に合わせる。この場合、表示部262に表示されている制御速度の数値を入力部25を用いてアスファルトフィニッシャAFの速度に修正する。
そして、当該情報を取得した搭載用情報端末2は、情報通信ネットワークNを介してサーバ1に対して当該情報を送信する。サーバ1では、アスファルトフィニッシャ速度算出部12においてアスファルトフィニッシャAFの速度に関する情報を把握し、受信した情報を基にアスファルトフィニッシャAFの速度を算出する。
[動作]
次に、サーバ1がアスファルトフィニッシャAFの最適速度を算出する処理の流れについて、図8及び図9を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態に係るサーバ1の記憶部14に格納されているアスファルトフィニッシャAFの速度管理を行う際の各種情報の一例を示す図である。また、図9は、本発明の実施の形態に係るアスファルトフィニッシャAFの最適速度を算出する流れを示すフローチャートである。
記憶部14に格納されている各種情報については、どのように格納されていても良いが、本発明の実施の形態においては、例えば、図8に示すような表形式で格納されている。図8の表では、縦軸にアスファルト混合物を運搬する運搬車両に関する項目が示されている。ここでは12の、すなわち、12台分の項目が設けられ、9番目までの(9台分の)運搬車両に関する情報が示されている。
一方、横軸には最左欄の「no」の項目から右に向けて13の項目が設けられている。ここでは以下の説明において必要な項目のみを抜き出して示している。従って、記憶部14内には、図8に示す13の項目だけではなく、その他の項目についても記憶されていても良い。
まず「端末番号」は、運搬車両に搭載される情報端末の番号である。当該情報端末は、運搬車両に搭載されて運搬車両の運行管理を行うために用いられる。また、この端末番号は、運搬車両の番号を示すものとして用いられても良い。例えば、図4に示す搭載用情報端末2の画面において、第1の表示部261に示される運搬車両に関する情報において、上記「端末番号」が搭載用情報端末2においては「車両No」として表示されている。
「出発時間」は運搬車両がプラント4を出発した時間である。この出発時間については、運搬車両の運転手が自ら情報端末を操作して出発時間を記録しても良く、或いは、運搬車両が、例えば、プラント4を中心とする半径300mの領域、といった、予め設定されたエリアを出たことを情報端末が検知して、その時間を出発時間としても良い。
「予測時間」は、アスファルト混合物が製造されるプラント4からアスファルト混合物が使用される施工現場までの、運搬車両がアスファルト混合物を運搬するのに掛かる時間の予測を示している。図8に示す表においては、プラント4から施工現場までは「30分」で到着できると予測されている。
なお、この予測時間は、事前にサーバ1に入力されて登録されていても良く、或いは、プラント4と施工現場との間における渋滞情報等を用いてリアルタイムに変更されるように設定されていても良い。
「到着予定」は、運搬車両がプラント4を出発してから施工現場に到着する予定時間を示している。上述したように、ここでは「予測時間」は「30分」とされているので、「出発時間」に予測時間である30分を加えた時間が「到着予定」時間となる。例えば、端末番号「1001」の運搬車両について見ると、出発時間は「8:02」であるので、到着予定時間は出発時間に予定時間を足した「8:32」とされる。
ここで、アスファルトの敷設に当たっては、アスファルトフィニッシャAFの前方に運搬車両が付き、運搬車両は荷台を傾けてアスファルトフィニッシャAFのホッパに向けてアスファルト混合物を荷卸ししている。そして、アスファルトフィニッシャAFが当該運搬車両に接触しつつ移動することで、ホッパ20に受けたアスファルト混合物を車両後方に送り、敷き均していく。
そのため「荷卸時刻」とは、運搬車両が施工現場に到着して、積み荷であるアスファルト混合物をアスファルトフィニッシャAFに対して荷卸しを開始した時刻である。この「荷卸時刻」の登録に当たっては、運搬車両の運転手が車両内に搭載されている情報端末に設けられている、例えば「荷卸しボタン」を押すことで登録することとしても良い。
或いは、例えば、運搬車両の荷台を傾けるアクチュエータ等にセンサを設けておき、施工現場到着後、アスファルトフィニッシャAFのホッパ20に向けてアスファルト混合物を荷卸しするために荷台が傾いたことを検知して自動的に「荷卸時刻」を登録することができるようにされていても良い。
「進捗距離」とは、アスファルトフィニッシャAFがアスファルト混合物の敷き均しを完了した距離を示している。この進捗距離については、敷き均す道路の幅員、厚みや1台の運搬車両から荷卸しされるアスファルト混合物の量等の情報から算出される。
一方、「可能距離」は、これまで敷き均しが完了した時点をゼロとして、今後どのくらいの距離アスファルト混合物を敷き均すことが可能かを示す距離である。従って、新たな運搬車両によって運搬されたアスファルト混合物を使用して敷き均しを開始する時点を境に、これまで敷き均した距離が「進捗距離」であり、今後敷き均すことができる距離を「可能距離」と表している。
次に、「到達(分)」は、施工現場に運搬車両が到着する時間を、ある基準となる運搬車両の「荷卸時刻」を基に算出されたものである。例えば、端末番号「1004」の運搬車両を基準とする。端末番号「1004」の運搬車両がアスファルトフィニッシャAFに向けてアスファルト混合物の荷卸しを開始した時刻は、「9:46」である。
この荷卸時刻よりも到着予定の時間が前となる端末番号「1005」の運搬車両は、既に施工現場に到着している。従って、「到達(分)」の部分には「0:00」と表示されている。一方、端末番号「1006」の運搬車両の到着予定の時間は「9:56」であり、荷卸時刻との差分は「10分(0:10)」である。この時刻が端末番号「1006」の運搬車両の「到達(分)」となる。すなわちここから、端末番号「1006」の運搬車両は、端末番号「1004」の運搬車両が荷卸しを開始してから10分後に施工現場に到着する予定であることがわかる。
「Fi速度」は、アスファルトフィニッシャAFがアスファルト混合物を敷き均していく際の速度を示している。具体的には、「可能距離」を「到達(分)」の時間で除した数値であり、単位は「m/min」である。この「Fi速度」は、各運搬車両が運搬してきたアスファルト混合物を使用して敷き均す場合におけるアスファルトフィニッシャAFの速度であることから、運搬車両ごとに算出される。
「最適速度」とは、上述したように、アスファルトフィニッシャAFの速度として、アスファルト混合物を運搬してくる複数の運搬車両の運行状況に左右されず、アスファルト混合物が途切れることなく連続して敷き均すことが可能な速度を示している。この最適速度の算出の流れについては、図9を用いて別途説明する。
「残距離」とは、アスファルト混合物の敷き均しが予定されている総距離から敷き均しが完了した距離を引いた距離である。すなわち、あとどのくらい敷き均す必要があるのかを示す距離である。具体的には、予め設定される敷き均しが予定されている総距離から「進捗距離」を引いて算出される。
「敷均終了」は、アスファルトフィニッシャAFの速度を「最適速度」とした場合に、敷き均しが予定されている距離に対して敷き均しが終了する時間を示す。例えば、アスファルトフィニッシャAFが端末番号「1004」の運搬車両からアスファルト混合物を受け取って、最適速度「1.6m/min」の速度で敷き均していくと、全ての工程が「17:08」に終了することを示している。
最後の「敷き均し変更距離」は、例えば、舗装対象となる道路において、途中で幅員が変更となる場合がある。この場合には、予め幅員の増減を登録しておくことで、運搬車両1台分のアスファルト混合物で敷き均すことのできる距離を変更することができる。
例えば、同じアスファルト混合物の量であれば、幅員以外の条件が全て同じである場合、幅員が広がればそれだけ敷き均し距離は減ることになる。「敷き均し変更距離」の項目は、このような幅員の変更に基づく敷き均し距離の変更を表示するものである。この点については、別途後述する。
次に、アスファルトフィニッシャAFの最適速度を算出する流れを図9に示すフローチャートを用いて説明する。また、当該説明に当たっては、適宜上述した図8の表に示されている、端末番号「1004」の運搬車両が用いる最適速度を算出する場合を例に挙げて説明する。
なお、上述したように、搭載用情報端末2には「初期速度」ボタンが設けられている。以下に説明するアスファルトフィニッシャAFの最適速度を算出するに当たっては、既に当該「初期速度」ボタンが押され、サーバ1の計算速度(最適速度)とアスファルトフィニッシャAFのオペレーティングパネルに設けられている速度計に表示されている、アスファルトフィニッシャAFの実際の速度とは同期が取れていることを前提とする。
まず、運搬車両の出発時間が記録される(ST1)。具体的には、運搬車両に搭載される情報端末がプラント4を出発したことを検出して、情報通信ネットワークNを介して出発時間に関する情報をサーバ1に送信する。サーバ1では、通信制御部11を介して受信した上記出発時間に関する情報を記憶部14に格納する。
また、アスファルトフィニッシャ速度算出部12においては、予め登録されている運搬車両がプラント4から施工現場までアスファルト混合物を運搬するのに掛かる時間(予測時間)を基に、到着予定時間を算出する(ST2)。例えば、計算部121では、端末番号「1004」の運搬車両がプラント4を出発した時間「8:57」に予測時間である30分を加え、「9:27」を算出し、到着予定時間として記憶部14に格納する。
なお、この運搬車両の出発時間の記録及び到着予定時間の算出は、運搬車両がプラント4を出発する度に上記処理実行される。従って、例に挙げている端末番号「1004」の運搬車両の後からプラント4を出発する各運搬車両についてもそれぞれの運搬車両がプラント4を出発する度に実行され、図8の表に示されているように、例えば、端末番号「1009」の運搬車両まで出発時間及び到着予定時間の記録、算出がされる。
次にサーバ1は、到着予定時間が算出された運搬車両(ここでは、端末番号「1004」の運搬車両)について、当該運搬車両が施工現場に到着して、アスファルトフィニッシャAFに対して運搬してきたアスファルト混合物の荷卸しを開始したかどうかを判断する。具体的には、運搬車両によるアスファルト混合物の荷卸し作業に開始に伴って、運搬車両に搭載されている情報端末に設けられている荷卸しボタンが押されたか否かを確認する(ST3)。
荷卸しボタンが押されていない場合には(ST3のNO)、サーバ1はそのまま待機する。これは当該運搬車両が施工現場に到着していない、或いは、施工現場には到着しているものの荷卸しができず待機中であるかを問わず、まだ当該運搬車両が運搬してきたアスファルト混合物を使用したアスファルトフィニッシャAFによる敷き均しが開始されていないことを示しているからである。
一方、例えば、運搬車両の運転手によって荷卸しボタンが押された場合(ST3のYES)、サーバ1ではその信号を受信して、アスファルトフィニッシャ速度算出部12の計算部121が、当該運搬車両の荷卸時刻と後続の各運搬車両が施工現場に到着する時間との差分を算出し、各運搬車両の施工現場到達時間を算出する(ST4)。
ここでは、端末番号「1004」の運搬車両が荷卸しボタンを押しており、その時間は「9:46」である。そこで、この荷卸時刻が登録された運搬車両以降にプラント4を出発した運搬車両の施工現場への「到達(分)」が算出される。具体的には、端末番号「1005」ないし「1009」の5台の運搬車両に関する「到達(分)」が算出されることになる。
すなわち、例えば、端末番号「1007」の運搬車両の場合、施工現場への到着予定時間は「10:15」とされている。そこで、計算部121では、端末番号「1004」の運搬車両が荷卸しボタンを押した時間との差分を計算する。ここでは、「10:15」と「9:46」との差分である「0:29」が、端末番号「1004」の運搬車両の荷卸時刻を基準とした場合における、端末番号「1007」の運搬車両の施工現場への到着時間となる。
換言すれば、端末番号「1007」の運搬車両は、端末番号「1004」の運搬車両が荷卸しを開始してから29分後に施工現場に到着し、最短でこの時間からアスファルトフィニッシャAFに対して荷卸しを開始することができることになる。
なお、端末番号「1005」の運搬車両については、端末番号「1004」の運搬車両が荷卸しボタンを押した時点で、既に施工現場に到着している。従って、この端末番号「1005」の運搬車両に関する「到達(分)」は「0:00」である。
さらに計算部121は、後続車両である端末番号「1005」ないし「1009」の各運搬車両が運搬してくるアスファルト混合物を用いることで敷き均すことのできる可能距離も算出する(ST5)。
すなわち、現在荷卸しを行っている端末番号「1004」の運搬車両が運搬してきたアスファルト混合物は除き、端末番号「1005」ないし「1009」の5台の運搬車両がそれぞれ運搬してくるアスファルト混合物を用いて敷き均すことができる可能距離が、累計して算出される。
ここでは、運搬車両1台が運搬してくるアスファルト混合物の量の場合、1台当たり19.0m敷き均すことができるため、端末番号「1005」ないし「1009」の5台分の運搬車両合計でトータル「95.0m」となる。従って、端末番号「1009」の運搬車両の「可能距離」の欄には「95.0」と示されている。
さらに計算部121は、後続各車、すなわち、端末番号「1006」ないし「1009」の5台の運搬車両ごとに、それぞれの運搬車両が運搬した合計のアスファルト混合物を用いてアスファルトフィニッシャAFが敷き均す際の速度(Fi速度)を算出する(ST6)。
例えば、端末番号「1007」の運搬車両の場合、当該運搬車両が施工現場まで運んでくるまでの合計のアスファルト混合物を使用すると、敷き均し可能距離の総距離は「57.0m」となる。一方、端末番号「1007」が施工現場に到着する予定は端末番号「1004」の運搬車両が荷卸しを開始してから29分後のことである。従って、この「57.0m」を「29分」で除すと、端末番号「1007」の運搬車両が運んでくるまでの合計のアスファルト混合物を用いてアスファルトフィニッシャAFが敷き均す際のFi速度は「2.0m/min」となる。
なお、Fi速度をどこまで細かく算出するかは任意に設定することができるが、本発明の実施の形態においては、算出されたFi速度を小数点第2位で四捨五入して小数点第1位まで示している。これは、アスファルトフィニッシャAFの調整可能な速度設定が小数点第1位までであるとされているため、当該設定に合わせたものである。
しかしながら、運搬車両ごとのFi速度は、その値がまちまちである。例えば、端末番号「1006」のFi速度と端末番号「1007」のFi速度との差は「1.8m/min」にもなる。このように運搬車両ごとのFi速度が大きく異なってしまうと、施工品質を確保することが困難となる可能性が出てくる。
すなわち、はじめから遅れが見込まれる場合に、個々の運搬車両ごとにFi速度を変化させて対応するのではなく、今後到着する予定の運搬車両が運んでくるアスファルト混合物の分も含めてFi速度を均す(平準化する)ことによって、アスファルトフィニッシャAFの速度が変化することに起因する、平らに敷き均すことができないといった、様々な弊害が生ずることを防止する。
そこで、サーバ1のアスファルトフィニッシャ速度算出部12では、計算部121において算出された各運搬車両のFi速度を基に、比較選択部122においてFi速度の比較を行い、最小値となる値を最適速度として選択する(ST7)。ここでは、比較選択部122によって、端末番号「1005」ないし「1009」のそれぞれの運搬車両ごとに算出されたFi速度の中から最小値である「1.6m/min」が最適速度として選択される。
そして、この値が、端末番号「1004」の運搬車両が運んできたアスファルト混合物を使用してアスファルトフィニッシャAFが敷き均しを行う際に採用される最適速度となる。また、この最適速度は、図8に示す表のうち、端末番号「1004」の運搬車両の「最適速度」の欄に示されている。
このように最適速度が算出されたら、アスファルトフィニッシャ速度算出部12は、この算出結果を通信制御部11を介して、随時搭載用情報端末2へ送信する(ST8)。そして、この最適速度に関する情報は、図4に示す搭載用情報端末2の第1の表示部261における「計算速度」の欄に表示される。
当該最適速度(計算速度)の情報を受けた搭載用情報端末2では、速度制御部29において最適速度に合わせた速度の自動制御を行うべく、上述したような処理を行って、速度自動制御装置80に情報を送信する。速度自動制御装置80では、受信した情報(ここでは、例えば、速度調整つまみ90の回転角度)を基に駆動制御部82が駆動部83を回転させ、当該駆動部83に接する速度調整つまみ90を回転させる。
サーバ1では、引き続き後続の運搬車両から、施工現場において運搬してきたアスファルト混合物のアスファルトフィニッシャAFへの荷卸しの開始を示す信号を受信したか否かを確認し(ST9)、荷卸しボタンが押されたことを確認した場合には(ST9のYES)、最適処理の更新処理を開始し(ST10)、ステップST4に戻って改めて最適速度の算出を実行する。
一方、荷卸しボタンが押されたことを確認しない場合には(ST9のNO)、アスファルトフィニッシャ速度算出部12は、最後に算出された最適速度でアスファルト混合物の敷き均しが行われれば足り、これ以上の最適速度の算出は不要であるとして最適速度の算出処理を終了する。
以上説明したような、アスファルトフィニッシャの速度管理システム及びアスファルトフィニッシャの速度自動制御装置を用いることによって、施工現場におけるアスファルト混合物の運搬車両がアスファルトフィニッシャに対して荷卸しを開始した時間を基にアスファルトフィニッシャがアスファルト混合物を敷き均す速度を算出することによって、途切れることなくアスファルト混合物をアスファルトフィニッシャに供給し、アスファルトフィニッシャが止まることなく連続的に舗装することが可能となる。
図10は、本発明の実施の形態に係るサーバ1の記憶部14に格納されているアスファルトフィニッシャの速度管理を行う際の各種情報の変形例を示す図である。図10に示す表は、「敷き均し変更距離」の項目に距離が記載がされている点で図8に示す表と異なっている。
具体的には、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両の「敷き均し変更距離」の欄に「15.6」と記載されている。この数字は、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両が運んでくるアスファルト混合物を用いた敷き均し工程において、可能距離の変更値を示すものである。
すなわち、上述したように、同じ量のアスファルト混合物を用いて敷き均しを行っても条件が異なれば敷き均すことのできる距離も変わってくる。ここでは、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両が運搬してくるアスファルト混合物の量は他の端末番号の運搬車両が運搬してくるアスファルト混合物の量と同じである。但し、例えば、幅員が広がる等の理由が存在すると、その他の条件が同じであっても敷き均すことのできる距離は短くなる。
ここでは、「進捗距離」や「可能距離」を見ても分かるように、1台の運搬車両が運搬するアスファルト混合物の量であれば、「19m」敷き均すことができる。しかし、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両が担当する場所は、例えば、幅員が広がる等の理由により、本来であれば「19m」敷き均すことができるところ、「15.6m」しか敷き均すことができない。
ここで、アスファルトフィニッシャAFのFi速度については、「可能距離」を「到達(分)」で除して求められるので、計算部121では変更後の可能距離の情報を用いてFi速度を算出する。なお、比較選択部122では計算部121において算出されたFi速度を比較して最小の値を選択する点については、これまで説明した通りである。
図10に示す表においては、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両が運んでくるアスファルト混合物が用いられる箇所において幅員が広がる等の条件の変更があるため、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両に関する「進捗距離」及び「可能距離」の値が図8に示す表と異なる。
従って、端末番号「1006」及び「1007」の運搬車両の「到達(分)」の時間に変更はないものの「可能距離」が異なることから算出されるFi速度も異なる。そして、比較選択部122において選択される最適速度の値も図8に示されている値とは異なる。
すなわち、敷き均しの途中で幅員が変化すると、敷き均しの幅が変化することになるため、運搬車両が運搬してくるアスファルト混合物の量に変化がない場合、敷き均しの距離が変化する。そこで、幅員に変更がある場合には、改めて1台の運搬車両に搭載されてくるアスファルト混合物の量と敷き均しの幅とから可能距離の値が算出される。
この処理は、例えば、搭載用情報端末2の第1の表示部261の2段目右側に表示されている「設定画面」のボタンをタップして設定画面へと画面を遷移させる。そして変更となる幅員を入力して改めて敷き均しが可能な距離を算出する。なお、この算出処理は、サーバ1で実行される。
そして、算出された新たな「可能距離」の情報を、図8に示す表に反映させる。この反映後の表が図10に示す表である。サーバ1のアスファルトフィニッシャAF速度算出部12の計算部121では、新たな可能距離の値を用いて最適速度の更新を行う。すなわち、幅員等、敷き均しの条件が変更された場合にも最適速度の更新が行われる。
なお、このように敷き均しの条件が変更になる箇所については、工事が開始される前に把握することが可能な場合もある。そこで、このような場合には、例えば最初から条件が変更される箇所を把握してその旨、サーバ1の記憶部14に記憶させておくことも可能である。
条件が変更されることについて事前に記憶部14に記憶させておくことによって、アスファルトフィニッシャ速度算出部12では、「進捗距離」、「可能距離」を変更後の条件をもって算出することができる。
以上説明した通り、敷き均しの条件が一部変更されていても当該変更点をサーバ1に適切に入力しておくことで、当該変更状態を反映させた最適速度を算出することができる。そのため、施工現場におけるアスファルト混合物の運搬車両がアスファルトフィニッシャに対して荷卸しを開始した時間を基に、変更された条件も反映させた上でアスファルトフィニッシャがアスファルト混合物を敷き均す速度を算出することによって、途切れることなくアスファルト混合物をアスファルトフィニッシャに供給し、アスファルトフィニッシャが止まることなく連続的に舗装することが可能となる。
なお、ここまでの説明では、アスファルトフィニッシャAFが1台であることを前提にしてきた。一方、図1に示すように、施工現場においては複数のアスファルトフィニッシャAFが稼働することも考えられる。この場合は、これまで説明したように、アスファルトフィニッシャAFごとに搭載用情報端末2を介して最適速度の設定がなされ、この最適速度をもって敷き均しが行われる。
但し、例えば、複数台のアスファルトフィニッシャAFが稼働する場合、プラント4から運搬車両によって運搬されてきたアスファルト混合物は、それぞれのアスファルトフィニッシャAFに振り分けられて荷下ろしされる。この振り分けの際には、上述したように都度運搬車両において荷卸しボタンが押されることになり、都度最適速度の更新が行われることになる。
このような状況の下では、アスファルトフィニッシャAFごとに最適速度が異なることにもなり、先行するアスファルトフィニッシャAFの後方から別のアスファルトフィニッシャAFが敷き均しを行うような場面では、後方のアスファルトフィニッシャAFにおける最適速度の方が先行するアスファルトフィニッシャAFの最適速度よりも早い速度が算出されることも考えられる。そうなると、後方のアスファルトフィニッシャAFが先行するアスファルトフィニッシャAFに追いついてしまう、接触する、といった可能性が生じ得る。
そこで、このような場合には、後方のアスファルトフィニッシャAFにおいては、最適速度での自動制御による敷き均しを行うのではなく、運転手による手動制御とすることも可能である。この場合、後方のアスファルトフィニッシャAFの搭載用情報端末2の第1の表示部261に表示される「計算速度」は、あくまでも参考速度との位置づけとなり、運転手はこの速度を参考に手動制御を行う。
本発明の実施の形態におけるアスファルトフィニッシャの速度管理システムは アスファルトフィニッシャがアスファルト混合物を敷き均す際の速度を算出するサーバと、サーバにおいて算出されたアスファルトフィニッシャの速度を表示する情報端末と、を備え、サーバは、施工現場においてアスファルト混合物を運搬する運搬車両がアスファルト混合物をアスファルトフィニッシャに対して荷卸しした時刻を基に運搬車両に後続する運搬車両ごとのアスファルトフィニッシャの速度を算出し、後続する運搬車両ごとに算出された複数の速度の中から最小値を最適速度として選択することを特徴とする。