JP2022170704A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害が生じにくいトナー。【解決手段】結着樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微粒子とを含有するトナーであって、該無機微粒子が、特定のポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有し、該シリカ微粒子のトリメチルシラノールの総量が1.0ppm以上5.0ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析法によりエステル基のイオン量の規格値を測定としたとき、該トナー粒子表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、該規格値のピークのうち最大の値A(dmax)及び該トナー粒子表面における該規格値A(0)が以下の関係を満たすトナー。1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00A(0)≧0.010【選択図】なし

Description

本開示は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーに関する。
複写機やプリンター等の電子写真技術を利用する画像形成装置は、装置の小型化とともに、さらなる高速化、高画質化、高安定化の要求が高まっている。コンパクトな装置を達成するために、例えば、トナーを紙などの記録媒体に定着させるのに使用されるローラーやフィルムといった定着部材を簡易化・簡素化することが行われている。ローラーやフィルムといった定着部材を簡易化・簡素化すると、定着ニップでトナーが十分に加熱と加圧がされにくくなるため、トナー内部の離型剤が十分染み出すことができず、トナーが定着フィルムに付着すること(以下、低温オフセットと呼ぶ)があった。このような弊害に対して、従来から、トナー粒子に離型剤として炭化水素ワックスを含有させたトナーが提案されている。
トナーにおいてはこれら要求に加えて、トナーが製造されてから消費者が使用するまでの輸送環境においても、苛酷な環境に保管される場合があり、このような輸送を経ても、影響を受けない保存性が求められている。しかし、トナー粒子内部に炭化水素ワックスを含有させたトナーを、温度や湿度が急激に変化する苛酷な環境に保管した際、トナー粒子内部の炭化水素ワックスがトナー粒子表面に染み出してくることがあった。トナー粒子表面に染み出してきた炭化水素ワックスはトナーの付着力を上昇させ、トナー凝集塊を形成させることがある。
一成分現像剤の場合、発生したトナー凝集塊はトナー担持体と帯電付与部材との摺擦領域に滞留し、画像弊害(ハーフトーン画像の縦スジ)を生じさせる。特に、温度や湿度が急激に変化する苛酷な環境に保管した後、高温高湿環境で長期間使用すると、炭化水素ワックスが染み出してくることで形成されるトナー凝集塊が成長するため、上記画像弊害が顕著に表れる。つまり、従来の炭化水素ワックスを含有したトナーは、苛酷な環境に保管した後、高温高湿環境で長時間の画像を出力した際にも影響を受けにくい保存性と耐久性の改善が求められている。
そこで、炭化水素ワックスを含有したトナーの保存性と耐久性を更に向上させる手法として、高疎水性のシリコーンオイルで被覆したシリカ微粒子を添加したトナーやトナー粒子表面に耐熱性に優れたシェルを設けたトナーが検討されている。
特許文献1には、側鎖が変性された特定の粘度を有するポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子を添加したトナーが提案されている。特許文献2には、トナー粒子が耐熱性を有する高極性の非晶性ポリエステル樹脂で被覆されており、ポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子を添加したトナーが提案されている。
特開2009-157161号公報 特開2017-044981号公報
本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載のトナーは、高疎水性のポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子をトナー粒子に添加することで、高温高湿環境
下でのトナーの流動性を向上させ、耐久性を向上させていると考えられる。しかしながら、当該トナーを温度や湿度が急激に変化する苛酷な環境で保管した際に、炭化水素ワックスの染み出しが原因と推定されるトナー凝集塊が発生し、画像弊害が生じることがわかった。つまり、温度や湿度が急激に変化する苛酷な環境での保存性に改善の余地があることがわかった。
特許文献2に記載のトナーは、トナー粒子が耐熱性を有する高極性の非晶性ポリエステル樹脂で被覆されている。また、トナーに高疎水性のポリジメチルシロキサンで処理されたシリカ微粒子を添加することでトナー粒子内部の炭化水素ワックスの染み出しを抑制しつつ、高温高湿環境下での流動性と帯電性を向上させていると考えられる。
しかしながら、特許文献1と同様に、当該トナーを温度や湿度が急激に変化する苛酷な環境で保管した際に、炭化水素ワックスの染み出しが原因と推定されるトナー凝集塊が発生し、画像弊害が生じることがわかった。
本開示は、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害が生じにくいトナーを提供する。
結着樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微粒子と、を含有するトナーであって、
該無機微粒子が、下記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び下記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
ヘッドスペース法による該シリカ微粒子の加熱温度150℃における有機揮発成分分析において、該シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算のトリメチルシラノールの総量が、1.0ppm以上5.0ppm以下であり、
飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
該トナー粒子の表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子の表面における該規格値をA(0)としたとき、
該A(dmax)及び該A(0)が、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするトナー。
1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
A(0)≧0.010 ・・・(2)
(式(B)中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子である。n及びmは平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nは30以上200以下であり、mは30以上200以下である。式(B)における側鎖のメチル基は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。)
Figure 2022170704000001
本開示によれば、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害が生じにくいトナーを提供できる。
ヒートサイクルのタイムチャート図 トナーの飛行時間型二次イオン質量分析法分析結果の模式図
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
本発明者らは、炭化水素ワックスを含有するトナーにおいて、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合でも高品位な画像を提供できるトナーについて鋭意検討した。
これまで、炭化水素ワックスを含有するトナーの保存性及び耐久性を良化させるアプローチとして、トナー粒子表面に耐熱性の高い高極性のシェルを形成させることや、トナー粒子表面に疎水化処理されたシリカ微粒子を添加したトナーが検討されてきた。トナー粒子表面に耐熱性の高い高極性のシェルを設けることで、極性の違いによりトナー粒子内部の炭化水素ワックスの染み出しを抑制することができるため、保存性を向上させることができる。また、疎水化処理されたシリカ微粒子をトナー表面に添加することで、高温高湿環境下で長期間使用した際に、トナーの流動性が低下するのを抑制できるため、耐久性を
向上させることができる。
しかし、温度や湿度が急激に変化する苛酷な環境における保存性、及び苛酷な環境に保管後の耐久性について考えると、トナー粒子内部に含有される炭化水素ワックスは結着樹脂などよりも熱による運動性が高く、昇温時や降温時にトナー粒子表面に染み出しやすい。特に、シリカ微粒子表面のポリジメチルシロキサンと炭化水素ワックスはなじみやすいため、トナー粒子表面に炭化水素ワックスが染み出しやすくなる。これにより、トナーの付着力が上昇し、トナー凝集塊が発生しやすくなる。例えば、一成分現像剤の場合、発生したトナー凝集塊はトナー担持体と帯電付与部材との接触領域に滞留する。その結果、トナーの帯電が十分行われず、濃度が低下したり、非画像領域にトナーが現像されるカブリが発生したり、ハーフトーン画像に縦スジが発生したりする。
特許文献1では、側鎖をヒドロキシ基やフェニル基で変性したポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子を添加したトナーが提案されている。特許文献1に記載のシリカ微粒子は、ポリジメチルシロキサンの側鎖に官能基を有するため、シリカとの反応性が高く、トナー粒子表面に移行するポリジメチルシロキサン量が減少する。このため、トナーの付着力が上昇し、トナーの流動性が低下するのを抑制できる。
しかしながら、当該トナーは表面にビニル樹脂を有し、ポリエステル樹脂などと比較して極性が低いため、シリカ微粒子表面のポリジメチルシロキサンとなじみやすく、シェルが持つ炭化水素ワックスに対する遮蔽能力が低下する。この結果、苛酷な環境に保管した際に炭化水素ワックスが染み出してくることを抑制できず、トナー凝集塊が生じると考えられる。このため、苛酷な環境に保管した後、高温高湿環境下で長期間使用した際に、トナー凝集塊に起因した画像弊害が発生する。
一方、特許文献2では、トナー粒子表面に耐熱性を有する高極性の非晶性ポリエステル樹脂のシェルを有し、式(A)で示されるようなポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子を有するトナーが提案されている。しかし、このようなトナーにおいても、トナー凝集塊に起因する画像弊害が生じることがわかった。
上記画像弊害が生じる理由について、本発明者らは以下のように考えている。まず、式(A)で示されるポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子は、表面処理時にポリジメチルシロキサンの一部がシリカ原体と反応し、シリカ微粒子に固着する。式(A)で示されるポリジメチルシロキサンはシリカ原体と反応する際、ポリジメチルシロキサンの末端にあるトリメチルシリル基が脱離し、末端がシラノール基に変化した後、シリカ原体と反応すると本発明者らは考えている。このため、式(A)で示されるポリジメチルシロキサンで疎水化処理されたシリカ微粒子は、副生成物であるトリメチルシラノールを含有する。
次に、トリメチルシラノールは塩基性の物質であり、極性を有する。このため、トリメチルシラノールは、静電相互作用により高極性を有するトナー粒子表面となじみやすい傾向がある。また、シリカ微粒子に含有されるポリジメチルシロキサンとトリメチルシラノールは、トリメチルシリル基を含有するため、なじみやすい傾向がある。この結果、シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量が増加すると、トリメチルシラノールがシリカ微粒子中のポリジメチルシロキサンと高極性を有するトナー粒子表面との橋渡し役になる。その結果、シリカ微粒子の式(A)で示されるポリジメチルシロキサンの一部と高極性を有するシェルがなじみやすくなる。トナー表面のシェルが疎水性を有するポリジメチルシロキサンの一部となじむことで、シェルの炭化水素ワックスに対する遮蔽性が低下する。
シェルの炭化水素ワックスに対する遮蔽性が低下した状態で、温度や湿度が急激に変化
する苛酷な環境に保管された場合、トナー粒子内部に含有される炭化水素ワックスが染み出しやすくなる。この結果、トナー表面に炭化水素ワックスが染み出すことで、トナーの付着力が上昇し、トナー凝集塊が生じやすくなる。加えて、高温高湿環境で長期間使用した際には、苛酷な環境で保管した際に発生したトナー凝集塊に起因してハーフトーン画像に縦スジが生じたりすると本発明者らは考えている。
本発明者らが鋭意検討を進めた結果、下記構成により、炭化水素ワックスを含有するトナーにおいて、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合でも高品位な画像を提供できることを見出した。
すなわち、本開示は、結着樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微粒子とを含有するトナーであって、
該無機微粒子が、下記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び下記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
ヘッドスペース法による該シリカ微粒子の加熱温度150℃における有機揮発成分分析において、該シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算のトリメチルシラノールの総量が、1.0ppm以上5.0ppm以下であり、
飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
該トナー粒子表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
Figure 2022170704000002

該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子表面における該規格値をA(0)としたとき、
下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするトナー。
1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
A(0)≧0.010 ・・・(2)
Figure 2022170704000003

(式中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子である。n及びmは平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nは30~200であり、mは30~200である。式(B)における側鎖のメチル基(-CH)は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。)
ここで、シリカ微粒子が式(A)及び(B)で示されるポリジメチルシロキサンで処理され、シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量とトナー表面近傍のエステル基濃度の分布を制御することで、上述した性能を付与しうる理由について述べる。炭化水素ワックスを含有するトナーにおいて、苛酷な環境に保管した際の炭化水素ワックスの染み出しを抑制すると共に、苛酷な環境に保管した後、高温高湿環境下で長期間使用した際の画像弊害を抑制するには、下記の点が重要であることを本発明者らは見出した。
(1-1)ポリジメチルシロキサンを含有するシリカ微粒子のトリメチルシラノール量が少なく、シリカ微粒子に含有されるポリジメチルシロキサンとトナー粒子表面がなじみにくいこと
(1-2)トナー粒子表面から深さ100nm以内のトナー粒子表面近傍領域において、トナー粒子表面及びトナー粒子表面から深さ100nmの位置よりもエステル基濃度が高い部分が存在する。すなわち、後述するエステル基のイオンフラグメントの規格値が1個以上のピークを有し、トナー内部の炭化水素ワックスの染み出しを抑制すること
上記(1-1)はシリカ微粒子の表面処理剤であるポリジメチルシロキサンの組成の影響、及びトナー粒子表面にある樹脂組成の影響を強く受ける。シリカ微粒子に含有されるトリメチルシラノールの含有量が少なく、シリカ微粒子のポリジメチルシロキサンとトナー粒子表面がなじみにくいことで、苛酷な環境に保管した際に、トナー粒子内部の炭化水素ワックスの染み出し量を抑制することができる。このため、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合でも、トナー凝集塊が生じにくくなる。
一方、上記(1-2)はトナー粒子表面近傍にある樹脂組成、及び樹脂の配向状態の影
響を強く受ける。トナー粒子表面近傍においてエステル基のイオンフラグメントの規格値が1個以上のピークを有することで、苛酷な環境に保管した際に、極性の違いにより、トナー粒子内部の炭化水素ワックスが染み出してくるのを抑制することができる。加えて、該ピークを有することは、トナー粒子表面から100nm内部の領域でのエステル基濃度よりもトナー粒子表面のエステル基濃度が低いことを意味する。そのため、(1-1)で述べた、シリカ微粒子のポリジメチルシロキサンとトナー粒子表面とのなじみやすさを低下させる効果も期待できる。このため、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合でも、トナー凝集塊が生じにくくなる。
以上、上記(1-1)及び(1-2)を満たすことで初めて、苛酷な環境に保管した後に高温高湿環境下で長時間の画像出力を行った場合でも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
具体的には、シリカ微粒子とトナー表面をなじみにくくするため、無機微粒子が式(A)で示されるポリジメチルシロキサンと、式(B)で示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有する。シリカ微粒子にポリジメチルシロキサンを表面処理することで、例えば、ポリジメチルシロキサンがシリカ微粒子に結合、及び/又はポリジメチルシロキサンがシリカ微粒子に物理的に吸着すると考えられる。
シリカ微粒子が上記2種類のポリジメチルシロキサンで処理されていることで、式(A)で示されるポリジメチルシロキサンのみで処理されたシリカ微粒子よりも、ポリジメチルシロキサンの固定化率を高めたまま、シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量を低減することができる。これは式(B)で示されるポリジメチルシロキサンのシリカ微粒子に対する反応性が高いためと考えられる。これにより、シリカ微粒子中のポリジメチルシロキサンとトナー粒子表面とをなじみにくくすることができる。
また、式(A)で示されるポリジメチルシロキサンは、反応性の官能基を有さないため、式(B)で示されるポリジメチルシロキサンよりも極性が低く、高極性を有するトナー粒子表面となじみにくい。このため、式(A)で示されるポリジメチルシロキサンと式(B)で示されるポリジメチルシロキサンを併用することで、トリメチルシラノールの発生を抑制できると共に、シリカ微粒子中のポリジメチルシロキサン自体の極性を低減できる。これにより、シリカ微粒子中のポリジメチルシロキサンと高極性を有するトナー粒子表面とをなじみにくくすることができる。
シリカ微粒子のポリジメチルシロキサンがトナー粒子表面となじみにくくなることで、トナー粒子表面の炭化水素ワックスに対する遮蔽性を維持することができる。この結果、苛酷な環境に保管した際にも、トナー粒子内部の炭化水素ワックスが染み出しにくくなることで、トナー凝集塊が生じにくくなる。
さらに、ヘッドスペース法によるシリカ微粒子の加熱温度150℃における有機揮発成分分析において、シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算のトリメチルシラノールの総量が1.0ppm以上5.0ppm以下であることが必要である。
シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量が上記範囲であることは、シリカ微粒子に含有されるポリジメチルシロキサンから脱離したトリメチルシラノール量が少ないことを意味する。このため、シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量を上記範囲内に制御することで、ポリジメチルシロキサンの極性を低くでき、ポリジメチルシロキサンとトナー粒子表面とをなじみにくくできる。このため、苛酷な環境に保管した際にも、トナー粒子内部の炭化水素ワックスが染み出しにくくなり、トナー凝集塊が生じにくくなる。この結果、
苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
シリカ微粒子中の、シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算のトリメチルシラノールの総量は、1.1ppm以上3.0ppm以下であることが好ましく、1.2ppm以上2.5ppm以下であることがより好ましい。シリカ微粒子中のトリメチルシラノールの総量は、シリカ微粒子表面の疎水化に用いる処理剤の種類、処理剤の量、及びシリカ微粒子の粒径により制御することができる。
シリカ微粒子中のトリメチルシラノールの総量が1.0ppm未満の場合、ポリジメチルシロキサンによる処理部数が少なすぎること、又はシリカ微粒子中のポリジメチルシロキサンが、式(B)で示されるポリジメチルシロキサンであることを示す。式(B)で示されるポリジメチルシロキサンは、末端や側鎖に反応性の官能基を有するため、シリカ原体に対する反応性が高く、シリカ微粒子が各種部材と接触した際に移行するポリジメチルシロキサン量が減少する。ここで、シリカ微粒子に含有されるポリジメチルシロキサンは、各種部材と接触した際に、ポリジメチルシロキサンの一部がトナーから各種部材に移行することで、トナーと各種部材との付着力を低減させていた。
しかし、ポリジメチルシロキサンによる処理部数が少なすぎる、又は反応性が高い式(B)で示されるポリジメチルシロキサンのみを使用すると、シリカ微粒子が各種部材と接触した際に移行するポリジメチルシロキサン量が減少するため、トナーと各種部材との付着力が上昇する。この結果、苛酷環境に保管した後、高温高湿環境で長期間使用した際に、トナー凝集塊が生じやすくなる。一成分現像剤の場合、発生したトナー凝集塊はトナー担持体と帯電付与部材との摺擦領域に滞留し、画像弊害(ハーフトーン画像の縦スジ)を生じさせる。
また、シリカ微粒子中のトリメチルシラノールの総量が5.0ppmより大きい場合、シリカ微粒子中のポリジメチルシロキサンが極性を持つようになるため、ポリジメチルシロキサンとトナー粒子表面がなじみやすくなる。この結果、トナー粒子表面が極性を有することでトナー内部の炭化水素ワックスの染み出しを抑制する遮蔽効果が低減し、苛酷な環境に保管した際に、トナー粒子内部の炭化水素ワックスが染み出しやすくなる。
飛行時間型二次イオン質量分析法により、トナー粒子表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量をカウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、トナー粒子表面から100nm以内の範囲に、規格値のピークが1個以上存在することが必要である。そして、規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、トナー粒子表面(すなわち深さ0nm)における規格値をA(0)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たすことが必要である。
1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
A(0)≧0.010 ・・・(2)
Figure 2022170704000004
トナー粒子表面近傍(トナー粒子表面から深さ100nmまでの領域)において、式(1)を満たすように制御することで、トナー粒子表面よりも内部に一定程度以上のエステ
ル基を存在させることができる。すなわち、トナー粒子表面よりもわずかに内側において、極性の高いポリエステル樹脂がトナー粒子表面よりも多く存在することを意味し、苛酷な環境に保管した際にも、トナー内部の炭化水素ワックスの染み出しを抑制することができる。
また、式(2)はトナー粒子表面における(深さ0m)におけるエステル基濃度がある一定以上であることを示している。トナー粒子表面近傍において、式(1)を満たすことに加えてエステル基濃度が上記式(2)を満たすように制御することで、トナー粒子表面近傍にエステル基濃度のピークが存在し、トナー粒子表面に存在するエステル基濃度を低減させつつ、ピークの大きさを一定以上にすることができる。
トナー粒子表面に存在するエステル基濃度を低減させることで、シリカ微粒子がトリメチルシラノールを含有した場合にも、シリカ微粒子とトナー粒子表面をなじみにくくすることができる。また、トナー粒子表面近傍において、エステル基濃度のピークが一定以上の大きさであることで、トナー粒子表面近傍と炭化水素ワックスとの極性の違いが大きくなり、トナー内部の炭化水素ワックスがトナー粒子表面に染み出してくるのを抑制することができる。この結果、苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
式(1)で示されるA(dmax)/A(0)は、1.08以上2.00以下であることが好ましく、1.15以上1.50以下であることがより好ましい。A(dmax)/A(0)が1.05未満の場合、トナー粒子表面のエステル基濃度よりも深さ0~100nmにおけるエステル基濃度が極端に高くないこと意味する。このため、苛酷な環境に保管した際に、トナー内部の炭化水素ワックスが染み出してくるのを抑制できず、トナー凝集塊が生じやすくなる。
また、A(dmax)/A(0)が5.00より大きい場合、トナー表面より内側の樹脂中にエステル基が過度に偏在することを意味する。上記範囲を達成するには、分子量、酸価などの物性が極端に高いもしくは低い樹脂を用いる必要があり、トナー粒子間でエステル基濃度のバラツキが大きくなりやすい。この結果、苛酷な環境に保管した際に、トナー内部の炭化水素ワックスが染み出してくるのを抑制できないトナーが存在し、トナー凝集塊が生じやすくなる。A(dmax)/A(0)は、後述の高温高pH処理工程や、トナー粒子表面の極性樹脂の組成により制御できる。
式(2)に関して、ポリエステル樹脂をトナー粒子表面から深さ100nm以内に含有し、式(1)を満たすようなトナーにおいては、トナー粒子の表面(深さ0nm)において一定量の式(C)で示される構造が存在しうる。そのため、A(0)が0.010未満のトナーの製造は困難であると考えられる。
A(0)は、好ましくは0.020以上であり、より好ましくは0.030以上であり、さらに好ましくは0.040以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは0.100以下であり、より好ましくは0.080以下であり、さらに好ましくは0.074以下である。A(0)は、後述の高温高pH処理工程や、トナー粒子表面の極性樹脂の組成により制御できる。
A(dmax)は、好ましくは0.040以上であり、より好ましくは0.050以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは0.200以下であり、より好ましくは0.120以下であり、さらに好ましくは0.100以下である。
飛行時間型二次イオン質量分析法により、トナー粒子表面から深さ100nmまで測定
し、式(C)で示される構造のイオン量をカウントした全イオン量で割った値を規格値とし、トナー粒子の表面から深さ100nmの位置における規格値をA(100)としたとき、下記式(3)を満たすことが好ましい。
1.05≦A(dmax)/A(100)≦5.00 ・・・(3)
上記式(3)を満たすことは、トナー粒子の表面から深さ100nm、すなわちトナー粒子内部の炭化水素ワックスが存在する領域の樹脂と比較して、よりトナー粒子表面に近い領域のエステル基濃度が一定以上であることを意味する。トナー粒子内部と比較してトナー粒子表面近傍のエステル基濃度が一定以上であることで、トナー粒子内部の炭化水素ワックスは極性の違いからトナー粒子内部に留まる傾向がある。
このため、トナー粒子内部の炭化水素ワックスがトナー表面に染み出してくるのを抑制することができる。この結果、苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。A(dmax)/A(100)は、より好ましくは1.10以上であり、さらに好ましくは1.20以上である。一方、上限は、より好ましくは3.00以下であり、さらに好ましくは2.00以下である。
A(dmax)/A(100)は、後述の高温高pH処理工程や、トナー粒子表面の極性樹脂の組成により制御できる。A(100)は、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.040以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは0.200以下であり、より好ましくは0.100以下であり、さらに好ましくは0.080以下である。
上記式(C)で示されるエステル基をトナー粒子表面近傍に偏在させることができるメカニズムについて、本発明者らは以下のように考えている。ポリエステル分子中で非極性基を有するモノマーユニットと極性基を有するモノマーユニットとを偏在化させるなど、特定の組成分布を有するように式(C)で示される構造の存在状態も考慮した設計をすることで制御が可能になる。
具体的な手法としては、トナー粒子表面近傍において、極性樹脂であるポリエステル樹脂の末端のカルボン酸基の配向状態をそろえる、又は極性分布が大きく異なる組成のポリマーを併用するなどによって、ポリエステル樹脂中でエステル結合部位の分布を制御することができる。さらに、例えば、式(C)で示される構造を含むポリエステル樹脂を含むトナー粒子を、水系媒体中で、ある一定以上のpHと熱で処理することで、ポリエステル樹脂中のエステル結合部位がトナー粒子表面に移行しやすくなる。一方、式(C)で示される構造を含むポリエステル樹脂がエステル結合部位の分布を有することで、配向状態にも分布が生じ、トナー粒子表面から深さ100nm以内の領域に、式(C)で示される構造を偏在させることができると考えている。
<シリカ微粒子>
以下、シリカ微粒子について説明する。前述の通り、シリカ微粒子は、式(A)及び(B)で示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されている。また、シリカ微粒子は、式(A)で示されるポリジメチルシロキサン、及び式(D)で示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子であることが好ましい。すなわち、式(B)で示されるポリジメチルシロキサンが、式(D)で示されるポリジメチルシロキサンであることが好ましい。
Figure 2022170704000005
式中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3の)アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子である。好ましくはR及びRは、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、又は水素原子である。式(B)における側鎖のメチル基は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。n、m及びpは平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nが30以上200以下(好ましくは40~100、より好ましくは50~80)であり、mが30以上200以下(好ましくは40~100、より好ましくは50~80)であり、pが30以上200以下(好ましくは40~100、より好ましくは50~80)である。
シリカ微粒子を式(A)と(D)の2種類のポリジメチルシロキサンで処理することで、式(A)と式(B)で示されるポリジメチルシロキサンで処理されたシリカ微粒子よりも、シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量を低減することができる。これは、式(D)で示されるポリジメチルシロキサンのシリカ原体に対する反応性が高いことに起因する。このため、シリカ微粒子のポリジメチルシロキサンとトナー表面がなじみにくくなる。この結果、苛酷な環境に保管した後、高温高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊が生じにくくなる。
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上30nm以下であることが好ましく、6nm以上12nm以下であることがより好ましい。シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径が上記範囲内に制御することで、シリカ微粒子を添加した際にトナーの流動性を大幅に向上させることができる。この結果、苛酷な環境に保管した後、高温高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
原体シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
、式(A)、(B)及び(D)で示されるポリジメチルシロキサンは、後述の表面処理で効率的に蒸発、除去できるような揮発性の高いものが好ましい。そのために、ポリジメチルシロキサンは分子量が比較的小さいものが好ましい。
式(A)、(B)及び(D)で示されるポリジメチルシロキサンの分子量は、例えば、数平均分子量として、好ましくは250~50000、より好ましくは250~10000、さらに好ましくは250~5000である。ポリジメチルシロキサンの分子量が50000以下であると、揮発性が適度であり、後述の表面処理で効率的に蒸散、除去してシリカ原体に反応させやすくなる。一方、ポリジメチルシロキサンの分子量が250以上であると、高疎水性の付与が容易になる。
式(A)、(B)及び(D)で示されるポリジメチルシロキサンは、適当な溶媒で、例えば、5~50質量%程度に希釈して表面処理に用いることが、均一処理の観点から好ましい。溶媒としては、ヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~8の脂肪族アルコール)、アセトンなど、又は、水若しくはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
シリカ微粒子の表面処理に供する、ポリジメチルシロキサンの使用量は、シリカ原体の種類(比表面積等)、ポリジメチルシロキサンの種類(分子量等)等によって異なり特に制限されない。通常、シリカ微粒子100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~35質量部、さらに好ましくは5~30質量部である。ポリジメチルシロキサンの使用量が上記下限以上であると、十分な表面処理を行うことができ、疎水率の高いシリカ微粒子を得ることができる。一方、上記上限以下のポリジメチルシロキサンを用いると、シリカ微粒子の疎水率を高めることができ、かつ凝集しにくくなる。
式(A)で示されるポリジメチルシロキサンの表面処理量は、表面処理前のシリカ微粒子100質量部に対して、好ましくは3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。式(B)で示されるポリジメチルシロキサンの表面処理量は、表面処理前のシリカ微粒子100質量部に対して、好ましくは1~35質量部、より好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは5~20質量部である。
表面処理における、式(A)で示されるポリジメチルシロキサンに対する式(B)で示されるポリジメチルシロキサンの質量比(B)/(A)は、好ましくは0.05~10.00であり、より好ましくは0.06~6.00であり、さらに好ましくは0.20~1.00である。
(表面処理方法)
表面処理方法は、加水分解及び酸化防止のために窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。具体的には、ヘンシェルミキサーなどの攪拌装置を備えた容器にシリ
カ原体を入れ、窒素パージ下で攪拌し、ポリジメチルシロキサンの希釈液を噴霧してシリカ原体と混合し、加熱して反応させる方法が採用される。噴霧は加熱に先立って行っても、また、処理の温度又は、それ以下の温度に加熱しながら行ってもよい。
(処理条件)
表面処理は、シリカ原体に前述の所定量のポリジメチルシロキサンを付与して攪拌下に加熱することにより、シリカ原体の表面にポリジメチルシロキサンを反応させて固定化する処理である。ここで、ポリジメチルシロキサンは前述の各種溶媒で希釈してシリカ原体に付与してもよい。
この表面処理における加熱温度は、用いたポリジメチルシロキサンの反応性等によっても異なるが、好ましくは150~380℃、より好ましくは250~350℃である。処理時間は、加熱温度や用いたポリジメチルシロキサンの反応性によっても異なるが、好ましくは5~300分、より好ましくは50~200分、さらに好ましくは80~160分である。
表面処理の処理温度及び処理時間であると、ポリジメチルシロキサンがシリカ原体と十分に反応でき、シリカ微粒子の疎水率が良好になる。また、生産効率も良好になる。
シリカ微粒子は、シリカ原体の疎水化に優れた式(A)で示されるポリジメチルシロキサンを用いて、シリカ原体を疎水化処理した後、式(B)又は(D)で示されるポリジメチルシロキサンで処理することが好ましい。上記処理順で処理することにより、シリカ微粒子に残留するトリメチルシラノール量を低減できると共に、疎水率が高いシリカ微粒子を得ることができる。
シリカ微粒子の含有量は、流動性と帯電性を向上させる観点から、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下であり、さらに好ましくは0.7質量部以上1.5質量部以下である。トナーは、トナー粒子の表面に上述したシリカ微粒子以外の無機微粒子を有してもよい。無機微粒子としては、例えば、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、またはそれらの複酸化物粒子などが挙げられる。
<結着樹脂>
トナー粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂は、特に制限されず公知のものを用いることができる。例えば、以下のものが挙げられる。重合性単量体を用いたビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。好ましくは、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、又は両者が一部反応したハイブリッド樹脂である。
<ポリエステル樹脂>
結着樹脂は好ましくはポリエステル樹脂を含有する。ポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は特に限定はないが、非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましく、例えば、以下のようなものが挙げられる。
2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が上げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸
のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸のようなアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル。
2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、ビスフェノール及びその誘導体。
ポリエステル樹脂は、上述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物以外に、1価のカルボン酸化合物、1価のアルコール化合物、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
1価のカルボン酸化合物としては、安息香酸、p-メチル安息香酸等の炭素数30以下の芳香族カルボン酸や、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数30以下の脂肪族カルボン酸等が挙げられる。また、1価のアルコール化合物としては、ベンジルアルコール等の炭素数30以下の芳香族アルコールや、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベへニルアルコール等の炭素数30以下の脂肪族アルコール等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、下記式(E)で示されるモノマーユニット、式(F)で示されるモノマーユニット及び式(G)で示されるモノマーユニットを含有することが好ましい。モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質が反応した形態をいう。ポリエステル樹脂中の式(E)で示されるモノマーユニットの含有割合が、30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂中の式(F)で示されるモノマーユニットの含有割合が、25質量%以上50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂中の式(G)で示されるモノマーユニットの含有割合が、0.4質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
式中、Rは、ベンゼン環を表し、好ましくはパラ位で結合している。Rは、それぞれエチレン基又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、x+yの平均値は2~10である。Rは、エチレン基又はプロピレン基を示し、好ましくはエチレン基である。
Figure 2022170704000006
ポリエステル樹脂中のモノマーユニットの含有割合を上記範囲内に制御することで、ポリエステル樹脂のエステル基の濃度を高め、ポリマー末端のカルボン酸基の配向状態をそろえることが容易になると本発明者らは考えている。すなわち、モノマーユニットの含有比率を上記範囲内に制御したポリエステル樹脂は、分子量の低い式(G)で示されるモノマーユニットを一定量含有するため、ポリエステル樹脂のエステル基濃度を高めることができる。また、分子量の低い式(G)で示されるモノマーユニットを一定量含有するため、柔軟性を高めることができる。そして、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度を高め、ポリエステル樹脂の柔軟性を高めることで、エステル基の極性を利用して、ポリマー末端のカルボン酸基の配向状態をそろえることが容易になると本発明者らは考えている。
この結果、トナー粒子表面近傍のエステル基濃度を上記式(1)及び(2)の範囲に制御しやすくなり、苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
ポリエステル樹脂は、下記式(H)で示されるモノマーユニットを含有することが好ましい。
Figure 2022170704000007
ポリエステル樹脂が上記式(H)で示されるイソソルビドが重合したモノマーユニットを含有することで、ポリエステル樹脂の極性を適正化できるとともに、ポリエステル樹脂
中で非極性基を有するモノマーユニットと極性基を有するモノマーユニットを偏在化させやすくなる。
この理由について、本発明者らは以下のように考えている。式(H)で示されるモノマーユニットは環状の構造中にエーテル結合を有するため、エチレングリコールなどのエーテル結合を有するモノマーユニットよりも、1ユニット当たりのエステル基成分の極性に対する影響を適度に緩和することができる。また、式(H)で示されるモノマーユニットは酸素原子が外側を向いた環状の構造を有するため、エチレングリコールなどの主鎖にアルキル鎖を含有するモノマーユニットよりも、環状構造に由来する極性を利用して、極性基を偏在化させやすくなる。このため、エステル基成分に起因した極性をポリエステル樹脂に適度に付与できるとともに、式(G)及び式(H)で示される極性基を有するアルコールモノマーユニットと式(F)で示される非極性基を有するアルコールモノマーユニットを偏在化できると本発明者ら考えている。この結果、トナー粒子表面近傍のエステル基濃度を上記式(1)、及び(2)の範囲に制御しやすくなり、苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
ポリエステル樹脂中の上記式(H)で示されるモノマーユニットの含有割合は、1.0質量%以上4.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上3.5質量%以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、6000~20000であることが好ましく、9000~15000であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は、3.0~15.0mgKOH/gであることが好ましく、4.0~10.0mgKOH/gであることがより好ましい。ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるもではなく、公知の方法を用いることができる。
(重合性単量体)
結着樹脂はビニル系樹脂を含有してもよい。ビニル系樹脂を生成しうる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系モノマーが用いられる。前記ビニル系モノマーとしては、単官能性モノマー又は多官能性モノマーを使用することができる
単官能性モノマーとしては、スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。
本重合性単量体は、上記の中でも、スチレン又はスチレン誘導体およびアクリル重合性単量体を含むことが好ましい。すなわち、結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂を含むことが好ましい。スチレンアクリル樹脂は、スチレン及びスチレン誘導体からなる群から選択される少なくとも一と、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体からなる群から選択される少なくとも一と、を含むモノマーの重合体である。スチレンアクリル樹脂は、好ましくはスチレンと、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体か
らなる群から選択される少なくとも一と、を含むモノマーの重合体である。
多官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
また重合性単量体に対して架橋剤を用いることもできる。具体的には以下のような2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。プロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物、及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。低温定着性と高温弾性の向上の両立の観点で、カルボン酸エステルを用いることが好ましい。これらの架橋剤は単独又は併用して用いることができる。
架橋剤の添加量は、結着樹脂を生成する重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.00質量部以下が好ましく、0.10質量部以上3.00質量部以下がより好ましい。
トナー粒子の製造に際し、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5~30時間のものである。また重合性単量体100質量部に対し0.5~20質量部の添加量で重合反応を行うと、通常、分子量1万~10万の間に極大値を有する重合体が得られ、適当な強度と溶融特性を有するトナー粒子を得ることができるため好ましい。
重合開始剤としては、以下の、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤等が例示できる。
重合性単量体の重合度を制御するために、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
<コアシェル構造>
トナー粒子は、コア粒子及びコア粒子表面のシェルを有するコアシェル構造を有することが好ましい。コア粒子がスチレンアクリル樹脂を含有し、シェルがポリエステル樹脂を含有することが好ましい。トナー粒子が上記構成のコアシェル構造を有することで、トナー粒子内部に含有される炭化水素ワックスがトナー粒子表面に染み出しにくくなる。これは、炭化水素ワックスはシェルのポリエステル樹脂よりも、コア粒子のスチレンアクリル樹脂との親和性が高いため、苛酷な環境に保管した際にも、トナー内部の炭化水素ワックスはコア粒子のスチレンアクリル樹脂に留まりやすくなる。この結果、苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
透過型電子顕微鏡によるトナーの断面観察において、シェルの厚みの平均値が、100nm以上200nm以下であることが好ましく、105nm以上160nm以下であることがより好ましい。トナー粒子のシェルの厚みが上記範囲内であることで、シェルに含有されるポリエステル樹脂により炭化水素ワックスの染み出しをより抑制することができる。この結果、苛酷な環境に保管した後、高湿環境で長期間使用した際にも、トナー凝集塊に起因した画像弊害を抑制することができる。
トナーは、以下の態様であることも好ましい。
スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微微粒子とを含有するトナーであって、
該無機微粒子が、上記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び上記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
該トナー粒子が、コア粒子及び該コア粒子の表面のシェルを有し、
該コア粒子が、該スチレンアクリル樹脂を有し、
該シェルが、該ポリエステル樹脂を有し、
透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該シェルの厚みの平均値が、100nm以上200nm以下であり、
飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子の表面から深さ100nmまで測定し、上記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
該トナー粒子の表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子表面における該規格値をA(0)としたとき、
下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするトナー。
1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
A(0)≧0.010 ・・・(2)
<炭化水素ワックス>
炭化水素ワックスは、好ましくは脂肪族炭化水素系ワックスである。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックスなどである。これらのワックスは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、これらの炭化水素ワックスには、上記効果に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。炭化水素ワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。炭化水素ワックスの融点は、30℃以上120℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上100℃以下である。
<着色剤>
着色剤としては、公知の顔料、染料を用いることができる。耐候性に優れる点から着色剤としては、顔料が好ましい。シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物及び塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62及び66。
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズ
イミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物などが挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221及び254、並びにC.I.ピグメントバイオレット19。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物などが挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185、191及び194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック並びに上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤及びシアン系着色剤を用いて黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。さらにはこれらを固溶体の状態で用いることができる。着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子は、公知の乾式法、乳化重合法、溶解懸濁法、懸濁重合法等いずれの製造方法も使用可能である。トナー粒子の表面近傍の式(C)の存在状態を特定範囲に制御するためには、次の処理工程を行うことが好ましい。
任意の各製造方法において得られたトナー粒子が分散した水系媒体に対し、90℃以上の温度で、pH(1)で処理した後にpH(2)で処理する処理工程を有し、
pH(1)及びpH(2)は、下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。(以下、高温高pH処理工程と記載する。)
pH(1)<pH(2) ・・・(4)
5.5≦pH(2)≦11.0 ・・・(5)
この高温高pH処理工程により、ポリエステル樹脂中に含まれる末端のカルボン酸をトナー粒子表面側に配向させ、エステル結合部位をトナー粒子表面近傍に偏在させることができると考えられる。そのため、式(C)の配向状態をより精密に制御でき、トナー粒子表面から100nm以内の深さに偏在させやすい。また、ポリエステル樹脂などの材料選択性も向上する。
温度は、95℃以上であることが好ましい。上限は、特に制限されず、例えば、110℃以下、105℃以下、100℃以下であることが好ましい。90℃以上のより高温で上記pHの範囲内の処理を行うことで、ポリエステル樹脂内の分子の配向状態を動かしやすい。式(5)において、pH(2)をpH(1)よりも大きくすることで、得られたトナー粒子中で固定化したポリエステル樹脂の配向状態を変更させやすくできる。
具体的には、式(5)においてpH(2)を5.5以上にすることでポリエステル樹脂の末端のカルボン酸が酸乖離しやすくなるため、トナー粒子表面側にポリエステル樹脂の末端のカルボン酸側が選択的に向きやすくなり、配向状態をより精密に制御しやすい。またpH(2)を11.0以下にすることで粗粒の生成を引き起こしやすい泡の発生が抑制され、生成された粗粒起因の帯電不良に伴うカブリの発生といった品質上の懸念がなく製造できる。
pH(2)は、より好ましくは6.0~10.5である。また、pH(1)は、好ましくは3.0以上5.5未満であり、より好ましくは4.5以上6.0未満である。pH(1)での処理時間は、好ましくは5分~6時間程度であり、より好ましくは30分~3時間程度である。pH(2)での処理時間は、好ましくは1分~120分程度であり、より好ましくは10分~60分程度である。
懸濁重合法、乳化凝集法など水系媒体中でトナー粒子を製造する場合には、トナー粒子が水系媒体に分散している懸濁液が得られるので、該懸濁液を用いて上記高温高pHを行うことが好ましい。粉砕法など乾式でトナー粒子を製造する場合には、得られたトナー粒子をリスラリーして懸濁液を得たのちに上記の高温高pH処理工程を経ることが好ましい。
水系媒体中で重合性単量体組成物を造粒し、重合性単量体組成物の粒子を形成する懸濁重合法により製造されることが好ましい。トナー粒子の製造方法は、重合性単量体、炭化水素ワックス及びポリエステル樹脂を含有する重合性単量体組成物の粒子を水系媒体の中で形成する造粒工程と、前記重合性単量体組成物の前記粒子に含まれる前記重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有する。重合工程後、得られたトナー粒子に対し高温高pH処理工程を行うことが好ましい。以上のようにして得られたトナー粒子に対し、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行うことで、トナー粒子を得ることができる。
以下、粉砕法によるトナー粒子の製造方法を例示して詳細に説明する。粉砕法でトナー粒子を製造するための製造方法としては、以下の例が挙げられる。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、結着樹脂、炭化水素ワックス、必要に応じてその他の添加剤等を、所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、FMミキサー、ナウターミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に炭化水素ワックス等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ株式会社製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
得られたトナー粒子は、リスラリーを行い、前記の高温高pH処理を行うことが好まし
い。その後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、トナー粒子を得ることができる。
以下、乳化凝集法によるトナー粒子の製造方法を例示して詳細に説明する。
(結着樹脂粒子分散液調製工程)
結着樹脂粒子分散液は、例えば、以下のようにして調製される。結着樹脂が、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等行うことにより、ビニル系樹脂の粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
結着樹脂が、ポリエステル樹脂などのビニル系樹脂以外の樹脂の場合には、イオン性界面活性剤や高分子電解質を溶解した水系媒体に該樹脂を混合する。その後、この溶液を樹脂の融点又は軟化点以上に加熱して溶解させ、ホモジナイザー等の剪断力の強力な分散機を用い、結着樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
分散の手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどのそれ自体公知の分散装置が挙げられ、また、分散液を調製する方法として転相乳化法を用いてもよい。転相乳化法は、結着樹脂を有機溶媒に溶解し、必要に応じて中和剤や分散安定剤を添加して、撹拌下にて、水系溶媒を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の有機溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。このとき、中和剤や分散安定剤の投入順は変更してもよい。
乳化凝集法では、必要に応じて、着色剤粒子分散液を用いることができる。着色剤粒子分散液は、少なくとも着色剤粒子を分散剤中に分散させてなるものである。乳化凝集法では、ワックス粒子分散液を用いる。ワックス粒子分散液は、少なくとも炭化水素ワックスを分散剤中に分散させてなるものである。
(凝集工程)
凝集粒子を形成する凝集工程は、結着樹脂粒子、炭化水素ワックス粒子、及び必要に応じて着色剤粒子を含む水系媒体中で、結着樹脂粒子、炭化水素ワックス粒子、及び必要に応じて添加される着色剤粒子を含む凝集粒子を形成する工程である。
(融合工程)
融合工程は、得られた凝集粒子を加熱して融着する工程である。融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、pH調整剤、極性界面活性剤、非極性界面活性剤等を適宜投入することができる。
加熱の温度としては、凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(樹脂の種類が2種類以上の場合は最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度)以上樹脂の分解温度未満であればよい。したがって、加熱の温度は、結着樹脂粒子の樹脂の種類に応じて異なり、一概に規定することはできないが、一般的には凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度以上140℃以下である。なお、加熱は、それ自体公知の加熱装置・器具を用いて行うことができる。
融着の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。すなわち、融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には30分以上10時間以下である。
上記、分散液調製工程、凝集工程、および融合工程を行うことで、トナー粒子が得られる。得られたトナー粒子をそのままトナー粒子として公知の方法によって濾過、洗浄、乾
燥など次工程に進むこともできる。得られたトナー粒子に対し、高温高pH処理を行うことが好ましい。その後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、トナー粒子を得ることができる。
得られたトナー粒子に対し、公知の方法で、シリカ微粒子を含む無機微粒子を外添混合し、トナーを得ることができる。外添混合には、FMミキサ(日本コークス社製)など公知の混合機を用いることができる。
<各種測定方法>
以下、各種の測定方法等に関して記載する。
<ヘッドスペース法によるシリカ微粒子中のトリメチルシラノール量の測定方法>
シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量はトナーから分離したシリカ微粒子を用いて測定する。
(シリカ微粒子のトナー表面からの分離方法)
トナーの表面から分離したシリカ微粒子を測定試料とする場合、シリカ微粒子のトナーからの分離は以下の手順で行う。また、下記分離方法で外添剤を除いたトナー粒子も得ることができ、得られたトナー粒子を各測定方法に用いることができる。
(非磁性トナーの場合)
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させて、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブを、いわき産業社製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、1分当たり350往復の条件で20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて、3500rpm、30分間の条件で遠心分離を行う。
遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナー粒子が存在し、下層の水溶液側にはシリカ微粒子が存在する。下層の水溶液を採取して、必要に応じて遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、シリカ微粒子を採集する。また、上層のトナー粒子を採取してろ過し、40℃に温めたイオン交換水2Lで通水洗浄し、洗浄したトナー粒子を取り出す。
(磁性トナーの場合)
イオン交換水100mLに、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6mL入れ分散媒を作製する。この分散媒に、トナー5gを添加し、超音波分散機(アズワン(株)VS-150)で5分間分散させる。その後、いわき産業(株)製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。
その後、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束する。上層の水溶液にはシリカ微粒子が存在するため、上層の水溶液を採取して、必要に応じて磁力分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、シリカ微粒子を採集する。また、ネオジム磁石を用いて拘束したトナー粒子を採取する。このトナー粒子を40℃に温めたイオン交換水2Lで通水洗浄し、洗浄したトナー粒子を取り出す。
(シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量の測定)
シリカ微粒子中のトリメチルシラノールの含有量は、ヘッドスペース法によるシリカ微粒子の加熱温度150℃における有機揮発成分分析を行い、シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算の濃度を算出することで得る。測定条件を下記に示す。
測定は、マルチプルヘッドスペース抽出法を用いた。マルチプルヘッドスペース抽出方法は、所定の容積の密閉容器中に試料を収容し、密閉容器を必要に応じて加熱し、密閉容器中の気相を抜き出す(抽出する)方法である。ヘッドスペースサンプラーは、株式会社パーキンエルマージャパン製、HS40XL、GC/MSはサーモクエスト株式会社製、TRACE GC,TRACE MSを用いて行う。サンプルバイアルは、ガスクロマトグラフィーに接続される。
(i)ヘッドスペースサンプラー条件
・サンプル量:500mg
・サンプル温度:150℃
・ニードル温度:150℃
・トランスファーライン温度:180℃
・保持時間:60min
・加圧時間:0.25min
・注入時間:0.08min
(ii)GC条件
・カラム:HP5-MS(0.25mm,60m)
・カラム温度:40℃で3min間保持、40~70℃の間は2.0℃/minで昇温、70~150℃の間は5.0℃/minで昇温、150~300℃の間は10.0℃/minで昇温
・スプリット比 50:1
(iii)器具
密閉容器として、株式会社パーキンエルマージャパン製、ヘッドスペース分析用ガラス製バイアルを使用する。
(iv)方法
1)標準サンプルの作製
まず、トリメチルシラノールの標準サンプルとして、オクタメチルトリシロキサン濃度が1000ppmのアセトン溶液を調製し、この液の5μLを、10μL容積のマイクロシリンジを用いてガラス製バイアルに入れ、高温分析用セプタムによりすばやく密栓する。
2)シリカ微粒子試料の作製
シリカ微粒子50mgをガラス製バイアルに入れ、高温分析用セプタムにより密栓しサンプルとする。
(v)解析
オクタメチルトリシロキサン溶液の標準サンプルを、定量的マルチプルヘッドスペース抽出方法を使用して測定し、オクタメチルトリシロキサン0.005μL当りの総ピーク面積を求める(なお、GCの感度は日間変動があるため、オクタメチルトリシロキサン0.005μL当りのピーク面積は測定毎に調べておく必要がある)。なお、ガス化成分をマススペクトロメーター(質量分析計)に導入し、得られたピークがオクタメチルトリシ
ロキサン由来のピークであることを確認しておく。
次に、シリカ微粒子をオクタメチルトリシロキサンと同様に測定し、マススペクトロメーターに導入し、トリメチルシラノールのピークを特定し、ピーク面積の総和を求める。オクタメチルトリシロキサン標準サンプルのピーク面積から比例計算により測定サンプル中のトリメチルシラノール量を算出し、シリカ微粒子中のトリメチルシラノール量を得る。
<飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)による、イオン量(二次イオン質量/二次イオン電荷数(m/z))の測定方法>
トナー粒子表面の式(C)で示される官能基の濃度分布は、まず、トナー粒子のポリエステル樹脂など極性樹脂に含まれる、式(C)で示される構造を特定する。次に、TOF-SIMSを用いて、極性樹脂に含まれる上記式(C)で示される構造(エステル結合)を構成するアルコール成分によるモノマーユニット及び酸成分によるモノマーユニットのうち、酸成分によるモノマーユニットのイオン量を測定する。
(1)トナー粒子の極性樹脂に含まれる、式(C)で示される構造の特定
トナー粒子約1.5gを精秤(X1[g])し、予め精秤した円筒濾紙(商品名:No.86R、サイズ28×100mm、アドバンテック東洋社製)に入れてソックスレー抽出器にセットする。
溶媒として酢酸エチル200mLを用いて18時間抽出する。その際に溶媒の抽出サイクルが約5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、抽出液を取り出して風乾した後、50℃で24時間真空乾燥する。酢酸エチルはエステル基を有しており、極性が高いため、同様にエステル基を持つポリエステル樹脂などの極性樹脂を抽出することができる。
トナー粒子の極性樹脂の組成分析は、NMRスペクトル測定から行う。
上記酢酸エチルの抽出液を乾燥させたサンプルを用いて、核磁気共鳴分光分析(H-NMR)[400MHz、CDCl、室温(25℃)]を行う。分析条件は以下の通りである。
測定装置:FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
上記した手法で測定したNMRスペクトルから、極性樹脂の組成分析を行い、極性樹脂に含まれる式(C)で示される構造を特定する。
(2)TOF-SIMSを用いたイオン量の測定
TOF-SIMSを用いたイオン量(ピーク強度)の測定には、アルバック・ファイ社製、TRIFT-IVを使用する。
分析条件は以下の通りである。
サンプル調整:トナーをインジウムシートに付着させる
サンプル前処理:なし
一次イオン:Auイオン
加速電圧:30kV
電荷中和モード:On
測定モード:Positive
ラスター:200μm
測定時間:60s
通常、TOF-SIMSは表面分析手法であり、深さ方向のデータはおよそ1nmのデータとなる。そのためトナー粒子内部の強度はアルゴンガスクラスターイオンによりトナー粒子をスパッタし、表面を削ることで測定する。スパッタ条件は以下の通りである。
加速電圧:10kV
電流:3.4nA
ラスター:600μm
照射時間:5s
深さの測定は事前に同条件でポリメチルメタクリレート(PMMA)膜をスパッタすることで照射時間と関係を確認し、300sの照射時間で100nm削れることを確認した。トナー粒子表面から深さ100nmの位置におけるイオン量は上記条件で60回スパッタした際に測定されたイオン量の値とする。また、トナー粒子の表面(深さ0nm)におけるイオン量は、外添剤を前述の方法で外したトナー粒子を用い、トナー粒子のスパッタを行わず測定されたイオン量の値とする。
規格値、A(dmax)の算出・定義:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cadense)に従い、組成分析で特定した極性樹脂に含まれる式(C)で示される構造(エステル結合)を構成するアルコール成分によるモノマーユニット及び酸成分によるモノマーユニットのうち、酸成分によるモノマーユニットの質量数の合計カウント数を式(C)で示される構造のイオン量(二次イオン質量/二次イオン電荷数(m/z))とする。そして、このイオン量の値をカウントされた全イオン量で割った値を規格値とする。
前述の通り、外添剤を外したトナー粒子の最表面における規格値をA(0)とする。また、上記スパッタ条件により5秒の照射時間でトナー粒子表面を削り、規格値を得る作業を計300秒(すなわち深さ100nm)まで繰り返し、トナー粒子表面から深さ100nmまでの各規格値を得る。そして、トナー粒子表面から深さ100nmの位置における規格値をA(100)とする。
さらに、トナー粒子表面から100nmまで測定した規格値のうち、A(0)及びA(100)の値よりも大きな値であり、かつA(0)及びA(100)と比較して1.05倍以上の値を有する規格値をピークと定義する。得られたピークの中で最大のピークを、A(dmax)とする。したがって、規格値がピークを有する場合、ピークの数は1個~58個の値を取りうる。分析結果の模式図を図2に示す。
<分子量の測定方法>
ポリエステル樹脂など樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。まず、室温でポリエステル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-8
0、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ポリエステル樹脂の酸価>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価は、JIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
0.1モル/L水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学社製)を用いて滴定を行う。上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクターは、電位差滴定装置(京都電子工業株式会社製 電位差滴定測定装置AT-510)を用いて求めることができる。0.100モル/L塩酸100mlを250mLトールビーカーに取り、上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液の量から求める。上記0.100モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
下記に酸価測定の際の測定条件を示す。
滴定装置:電位差滴定装置AT-510(京都電子工業株式会社製)
電極:複合ガラス電極ダブルジャンクション型(京都電子工業株式会社製)
滴定装置用制御ソフトウエア:AT-WIN
滴定解析ソフト:Tview
滴定時における滴定パラメーター及び制御パラメーターは下記のようにする。
(滴定パラメーター)
滴定モード:ブランク滴定
滴定様式:全量滴定
最大滴定量:20ml
滴定前の待ち時間:30秒
滴定方向:自動
(制御パラメーター)
終点判断電位:30dE
終点判断電位値:50dE/dmL
終点検出判断:設定しない
制御速度モード:標準
ゲイン:1
データ採取電位:4mV
データ採取滴定量:0.1ml
本試験;測定サンプル0.100gを250mlのトールビーカーに精秤し、トルエン/エタノール(3:1)の混合溶液150mlを加え、1時間かけて溶解する。上記電位差滴定装置を用い、上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液を用いて滴定する。
空試験;試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(3:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.611]/S
(式中、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。)
<トナー粒子中のポリエステル樹脂の各モノマーユニットの同定と含有量の定量方法>
上記分析には、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、熱分解GC/MS)及びNMRを用いる。なお、分子量1500以上の成分を測定の対象とする。分子量1500未満の領域は、ワックスの割合が高く、樹脂成分がほぼ含有されていない領域と思われるためである。
熱分解GC/MSでは、トナー中の樹脂全量の構成モノマーユニットを決定し、各モノマーユニットのピーク面積を求めることができるが、定量を行うには基準となる濃度既知のサンプルによるピーク強度の規格化が必要となる。一方、NMRでは構成モノマーユニットの決定及び定量を、濃度既知のサンプルを用いることなく求めることが可能である。そこで、状況に応じて、構成モノマーユニットの決定には、NMRと熱分解GC/MSの両方のスペクトルを比較しながら行う。具体的には、NMR測定時の抽出溶媒である、重水素化クロロホルムに溶けない樹脂成分が5.0質量%未満の場合、NMRの測定による定量を行う。
一方、NMR測定時の抽出溶媒である、重水素化クロロホルムに溶けない樹脂成分が5.0質量%以上存在した場合には、重水素化クロロホルム可溶分に対して、NMR及び熱分解GC/MSの両方の測定を行い、重水素化クロロホルム不溶分に対して、熱分解GC/MSの測定を行う。この場合は、先ず重水素化クロロホルム可溶分のNMR測定を行い、構成モノマーユニットの決定と定量を行う(定量結果1)。
次いで、重水素化クロロホルム可溶分に対して、熱分解GC/MS測定を行い、各構成モノマーユニットに帰属されるピークのピーク面積を求める。NMR測定で得られた定量結果1を用いて、各構成モノマーユニットの量と熱分解GC/MSのピーク面積との関係を求める。次いで、重水素化クロロホルム不溶分の熱分解GC/MS測定を行い、各構成モノマーユニットに帰属されるピークのピーク面積を求める。重水素化クロロホルム可溶分の測定で得られた各構成モノマーユニットの量と熱分解GC/MSのピーク面積との関係から、重水素化クロロホルム不溶分における構成モノマーユニットの定量を行う(定量結果2)。そして、定量結果1と定量結果2とを合わせて、最終的な各構成モノマーユニットの定量結果となる。具体的には、以下の操作を行う。
(1)トナー500mgを30mLのガラス製サンプル瓶に精秤し、重水素化クロロホルムを10mL加えた後、蓋をし、超音波分散機によって1時間分散し溶解させる。次いで、0.4μm径のメンブランフィルターによりろ過を行い、ろ液を回収する。この際、重水素化クロロホルム不溶分は、メンブランフィルター上に残存する。
(2)ろ液のうち3mLから分取高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、フラクションコレクターにより分子量1500未満を除き、分子量1500未満の成分が除かれた樹脂溶液を回収する。ロータリーエバポレーターを用いて回収した溶液からクロロホルムを除去し、樹脂を得る。なお、分子量1500未満については、分子量が既知のポリスチレン樹脂の測定をあらかじめ行い、溶出時間を求めておくことで決定しておく。
(3)得られた樹脂20mgを、重水素化クロロホルム1mLに溶解させ、H-NMR測定を行い、ポリエステル樹脂やビニル系樹脂など結着樹脂に使用される各構成モノマーについて、スペクトルを帰属し、定量値を求める。
(4)重水素クロロホルム不溶分の分析が必要であれば、熱分解GC/MSにて分析を行う。必要に応じて、メチル化などの誘導化処理を行う。
(NMRの測定条件)
測定装置:ブルカー・バイオスピン(株)社製 Bruker AVANCE 500
測定核:
測定周波数:500.1MHz
積算回数:16回
測定温度:室温
(熱分解GC/MSの測定条件)
熱分解装置:日本分析工業(株)社製 TPS-700
熱分解温度:400℃~600℃での適正値、本件では590℃
GC/MS装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)社製 ISQ
カラム:「HP5-MS」(アジレント/19091S-433)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
GC/MS条件
注入口条件:
InletTemp:250℃、
SplitFlow:50ml/min
GC昇温条件:40℃(5min)→10℃/min(300℃)→300℃(20min)
マスレンジ:m/z=10~550
<コアシェル構造のシェルの厚みの算出方法>
透過型電子顕微鏡(TEM)によるトナーの断面観察は以下のようにして実施することができる。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス 正方形 No.1)上に、トナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。次に、PTFE製のチューブ(内径Φ1.5mm×外径Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナー粒子の半径(重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー粒子の断面を出す。次に、磁性トナーの場合は膜厚250nmに、非磁性トナーの場合は膜厚70nmになるように切削し、トナー粒子断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー粒子中心部の断面を得ることができる。
続いて、得られたトナー粒子の断面の構成元素を、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を利用して解析し、EDXマッピング像を作製する。透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM-2800)(TEM-EDX)を用いて40000倍~50000倍の倍率で拡大し、トナーの断面からシェル層の観察及びEDXを用いた元素マッピングを行う。EDXマッピング像において、トナー粒子の断面の輪郭に、シェル材料の構成元素に由来するシグナルを確認し、シェルの有無を確認する。マッピング条件としては、保存レート:9000以上13000以下、積算回数:120回とする。
上記EDXマッピング画像において、トナー粒子断面の輪郭及び中心点をもとめる。観察するトナー粒子の断面はトナーの重量平均粒径(D4)に対して、0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たす長径R(μm)を呈するものとする。トナー粒子断面の輪郭は、上記EDXマッピング画像で観察されるトナー粒子の表面に沿ったものとする。また、トナー粒子断面の中心点は、トナー粒子断面の幾何中心とする。得られた中心点から、トナー
粒子断面の輪郭に対して線を引く。線は断面の中心点で直交する十字を描く線とする。一つのトナー粒子断面において十字の線の末端の4点でシェルの厚さを測定する。なお、トナー粒子断面において、シェル材料の構成元素に由来するシグナル部分をシェルとする。100個のトナー断面を観察し、シェルの厚さの平均値を算出する。
<シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー表面のシリカ微粒子画像から算出する。S-4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べてシリカ微粒子のチャージアップが少ないため、シリカ微粒子の粒径を精度良く測定することができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)シリカ微粒子の個数平均粒径(D1)の算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を100000(100k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー表面上の少なくとも300個のシリカ微粒子について粒径を測定して、平均粒径を求める。ここで、シリカ微粒子は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を得る。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。具体的な測定法は以下の通りである。
1.Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
2.ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
3.発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
4.前記2.のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
5.前記4.のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
6.サンプルスタンド内に設置した前記1.の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記5.の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
7.測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/個数%、グラフ/体積%と
それぞれ設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)、分析/体積統計値(算術平均)画面の「算術径」がそれぞれ個数平均粒径(D1)、重量平均粒径(D4)である。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。実施例中で使用する部は特に断りのない限り質量基準である。
<シリカ微粒子1の製造例>
フュームドシリカ(シリカ原体;球形、BET比表面積:300m/g)100部を反応容器に入れ、窒素パージ下の攪拌下に、式(A)で示されるポリジメチルシロキサン(温度25℃における動粘度:50mm/s、平均繰り返し単位数n=60)20部をヘキサン100部で希釈した溶液を添加し、攪拌を継続した状態で、まず、表1の処理条件1に示す反応温度、及び反応時間で処理を行った。その後、表1の処理条件2に記載の式(B)で示されるポリジメチルシロキサン10部をヘキサン100部で希釈した溶液を添加し、表1の処理条件2に示す反応温度、及び反応時間で処理を行った。得られたシリカ微粒子は、その後、ピン式解砕装置を用いて解砕処理し、シリカ微粒子1を得た。得られたシリカ微粒子1の一次粒子の個数平均粒径は8nmであった。シリカ微粒子1の物性を表1に示す。
<シリカ微粒子2~12の製造例>
シリカ微粒子1の製造例において、処理条件1(ポリジメチルシロキサンの添加量、反応温度、及び反応時間)、処理条件2(ポリジメチルシロキサンの種類、添加量、反応温度、及び反応時間)を表1に記載のように変更した以外は、シリカ微粒子1の製造方法と同様にしてシリカ微粒子2~12を製造した。物性を表1に示す。
Figure 2022170704000008
表中、(A)処理部数は、シリカ原体(すなわち、表面処理前のシリカ微粒子)100部に対する式(A)で示されるポリジメチルシロキサンの処理部数である。(B)処理部
数は、シリカ原体100部に対する式(B)で示されるポリジメチルシロキサンの処理部数である。粒径は、一次粒子の個数平均粒径を示す。
<ポリエステル樹脂1の製造例>
無水トリメリット酸以外の原材料モノマーを、表2に示した仕込み量で混合した混合物100部と、触媒であるジ(2-エチルヘキサン酸)錫0.52部とを、窒素導入ラインと、脱水ラインと、攪拌機と、を装備した重合タンクに入れた。次に、重合タンク内を窒素雰囲気にした後、200℃で加熱しながら6時間かけて重縮合反応を行った。更に、210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、重合タンク内を40kPaまで減圧した後で更に縮合反応を行った。得られた樹脂の酸価、分子量は表2のようになった。
<ポリエステル樹脂2~9の製造例>
ポリエステル樹脂1の製造例において、表2の原材料モノマー仕込み量にて、ポリエステル樹脂1と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂2~9を製造した。その際、逐次サンプリング及び測定を行い、所望の分子量になったところで重合反応を停止させ、重合タンクから取り出した。得られた樹脂の物性を表2に示す。
なお、ポリエステル樹脂4、ポリエステル樹脂7、及びポリエステル樹脂9においてBPAは、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物とビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物をモル比で80.0対20.0の比率で用いた。BPAについて指定がない場合、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物を用いた。
Figure 2022170704000009
※モノマー組成の表記はポリエステル組成物の質量を100としたときの質量%比を示す。酸価の単位は、mgKOH/gである。
上記表中の略号はそれぞれ、
TPA:テレフタル酸
TMA:トリメリット酸
BPA:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド付加物(詳細は前述の通り)
EG:エチレングリコール
<スチレンアクリル樹脂1の製造例>
冷却管、撹拌機、及び、窒素導入管のついた反応槽中に、以下の材料を混合し昇温撹拌しながら180℃に保持した。
・スチレン 77.0部
・アクリル酸n-ブチル 21.0部
・アクリル酸 2.0部
・キシレン 300.0部
続いて、系内に、2.0質量%のt-ブチルハイドロパーオキシドのキシレン溶液50.0部を4.5時間かけて連続的に滴下し、冷却後溶媒を分離除去し、スチレンアクリル樹脂1を合成した。重量平均分子量Mwは14,500、Tgは65℃であった。
<ポリエステル樹脂粒子分散液1の製造例>
ポリエステル樹脂7を、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水80質量%、ポリエステル樹脂の濃度が20質量%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。この分散液にイオン交換水を加えて固形分量を20質量%に調整し、これをポリエステル樹脂粒子分散液1とした。
<有機溶媒の非存在下でのポリエステル樹脂粒子分散液2の製造例>
ポリエステル樹脂7を200部、及び、水酸化ナトリウム50質量%水溶液0.2部を、二軸押出機(TEM-26SS、東芝機械(株)製)の原料投入口に投入し、また、二軸押出機の4バレル目から、界面活性剤としてドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(三洋化成工業(株)製、エレミノールMON―7)4.1部を投入し、バレル温度90℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ポリエステル樹脂と水酸化ナトリウムと界面活性剤を混合した。
二軸押出機の5バレル目から90℃に調整したイオン交換水(イオン交換水1)を150部、7バレル目から90℃に調整したイオン交換水(イオン交換水2)を150部、9バレル目から90℃に調整したイオン交換水(イオン交換水3)を150部添加し、混練してポリエステル樹脂粒子の水分散液を得た。この分散液にイオン交換水を加えて、固形分量を20質量%に調整し、これをポリエステル樹脂粒子分散液2とした。
<トナー粒子1の製造例>
下記の手順によってトナー粒子1を製造した。下記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させ、顔料マスターバッチを得た。
・スチレン 60.0部
・カーボンブラック(Orion Engineerred Carbons社製、商品名「Printex35」) 7部
・荷電制御剤(オリエント社製:ボントロンE-89) 0.10部
イオン交換水720部に0.1モル/L-Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L-CaCl水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
(重合性単量体組成物の調整)
・スチレン 14.0部
・n-ブチルアクリレート 26.0部
・1,6-ヘキサンジオールジアクリレート 0.6部
・顔料マスターバッチ 67.1部
・ポリエステル樹脂1 4.0部
上記材料をアトライター(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した後、60℃に加温し、炭化水素ワックスとしてパラフィンワックス(日本精蝋社製、HNP-51)10.0部を添加混合し、溶解して重合性単量体組成物を得た。
上記水系媒体中に上記重合成単量体組成物を投入し、60℃、N雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ重合開始剤t-ブチルパーオキシピバレート8.0部を投入し、74℃に昇温して3時間反応させた。反応終了後、前述の高温高pH処理工程として、懸濁液を100℃まで昇温させ、懸濁液のpH(1)が5.0の状態で2時間保持した。そして、懸濁液が100℃の状態のまま、0.9モル/L-NaCO水溶液を投入し、懸濁液のpH(2)を8.0に調整して30分保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥して重量平均粒径が7.1μmのトナー粒子1を得た。
<トナー粒子2~7、及び10、11の製造例>
トナー粒子1において、ポリエステル樹脂種、ポリエステル樹脂量、及び高温高pH処理工程条件を表3に示すように変更した以外は、トナー粒子1の製造例と同様の操作を行い、トナー粒子2~7、10及び11を得た。
Figure 2022170704000010
<トナー粒子8の製造例>
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液の調整)
・スチレン :77部
・n-ブチルアクリレート :23部
上記の材料を混合溶解したものに、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)1.0部をイオン交換水60部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で分散、乳化し、モノマーの乳化液を作製した。続いて、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)2.0部をイオン交換水90部に溶解させ、その中に前記モノマーの乳化液2.0部を加え、さらに、過硫酸アンモニウム1.0部を溶解したイオン交換水10部を投入した。
その後、前記モノマーの乳化液の残りを3時間かけて投入し、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を攪拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、スチレンアクリル樹脂粒子分散液を得た。スチレンアクリル樹脂粒子分散液は、イオン交換水を加えて固形分量を20質量%に調整した。
(着色剤粒子分散液の調製)
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))45部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 250部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間ほど分散して、着色剤粒子分散液を得た。この着色剤粒子分散液中の粒子の体積平均粒径D50vは、150nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調製した。
(離型剤粒子分散液の調製)
・パラフィン系ワックス(炭化水素系ワックス、日本精蝋製HNP9、融解温度75℃ワックスの2nd吸熱ピーク温度(2nd吸熱ピークは一つ)84℃) :270部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製ネオゲンRK):13.5部(有効成分60質量%、離型剤に対して3質量%)
・イオン交換水 :21.6部
上記の材料を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、分散液を得た。イオン交換水を加えて固形分量が20質量%になるように調整し、これを離型剤粒子分散液とした。
(トナー粒子の製造)
・スチレンアクリル樹脂粒子分散液 :375部
・着色剤粒子分散液 : 75部
・離型剤粒子分散液 : 15部
・イオン交換水 :750部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製Dowfax2A1):3.2部
温度計、pH計、攪拌器を備えた3リットルの反応容器に、コア部形成用材料として上記材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)にて5,000rpmで分散しながら、凝集剤として濃度2.0質量%の塩化マグネシウム水溶液を100部添加して6分間分散した。
その後、加熱用ウォーターバス中で攪拌翼を用いて、混合液が攪拌されるような回転数を適宜調整しながら53℃まで加熱した。形成された凝集粒子の体積平均粒径を、コール
ターマルチサイザーIIIにて粒径を適宜確認し、体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、シェル層形成用材料として、ポリエステル樹脂粒子分散液1:205部を5分間かけて投入した。その後、50℃に30分間保持した後、pHを9.0に調整しながら90℃まで昇温し、90℃で保持した。
その後、塩酸を加えて90℃におけるpH(1)を5.0に調整し、さらに30分攪拌した。さらに、0.9モル/L-NaCO水溶液を投入し、pH(2)を5.5に調整して30分保持した。その後、25℃まで冷却し、ろ過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、重量平均粒子径が7.2μmのトナー粒子8を得た。
<トナー粒子9の製造例>
下記材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)でよく混合した後、温度100℃に設定した二軸混練機(池貝鉄工株式会社製)で溶融混練した。
・スチレンアクリル樹脂1 95.0部
・HNP9(融点:76℃、日本精蝋社製) 5.0部
・C.I.Pigment Blue15:3 6.0部
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。次に、得られた粗砕物を、ターボ工業社製のターボ・ミルを用いて、5μm程度の微粉砕物を得た後に、さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー母粒子1を得た。
イオン交換水720部に0.1モル/L-Na3PO4水溶液450部を投入してN2雰囲気下において60℃に加温した後、1.0モル/L-CaCl水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
前記水系媒体中にトナー母粒子1を200.0部投入し、温度40℃にてT.K.ホモミクサーを用いて7000rpmで回転させながら30分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が20.0質量%になるように調整し、トナー母粒子分散液1を得た。
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液1 500.0部
・ポリエステル樹脂粒子分散液1 20.0部
次に、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを7.0に調整し、混合液の温度を30℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて200rpmで混合しながら、1.0時間保持した。その後、プロペラ撹拌翼で撹拌しながら1℃/分の速度で80℃まで上げ、2時間保持した。その後、得られた分散液をパドル撹拌翼で撹拌しつつ、前述の高温高pH処理工程として、懸濁液を90℃まで昇温させ、塩酸を加えて懸濁液のpH(1)が5.0の状態で30分保持したのちに、懸濁液が90℃の状態のまま、0.9モル/L-NaCO水溶液を投入し、懸濁液のpH(2)を5.5に調整して30分保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥して重量平均粒子径が7.1μmのトナー粒子9を得た。
<トナー粒子12の製造例>
(水系媒体の調整)
イオン交換水350.0部を入れた反応容器に、塩化マグネシウム14.7部を投入し、溶解させた後、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌した。撹拌を維持し
ながら、イオン交換水50.0部に10.4部の水酸化ナトリウムを溶解した水酸化ナトリウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、反応容器内の水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体を調製した。
(重合性単量体組成物の調整)
トナー粒子1の重合性単量体組成物のポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂4に変更した以外は同様の方法で操作を行い、重合性単量体組成物を得た。
(造粒工程)
水系媒体の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート7.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、150rpmで撹拌しながら80℃で3時間反応させた。反応終了後、前述の高温高pH処理工程として、懸濁液を100℃まで昇温させ、懸濁液のpH(1)が5.0の状態で2時間保持した。そして、懸濁液が100℃の状態のまま、0.9モル/L-NaCO水溶液を投入し、懸濁液のpH(2)を5.5に調整して30分保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥して重量平均粒径が7.4μmのトナー粒子12を得た。
<トナー粒子13の製造例>
(アンモニウム化合物の添加)
アンモニウム化合物としては、10質量%アンモニア水溶液を用いた。ポリエステル樹脂粒子分散液2: 1,000部に対してアンモニウム化合物が2.5部になるよう添加し、3分間撹拌した。
(トナー成分の分散液の調整)
アンモニウム化合物を添加した後、下記の各成分を、温度計、pH計、撹拌機、ジャケットを具備した撹拌槽に入れ、10分間撹拌した。なお、トナー粒子8の製造例に記載の着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液と同様の操作を行い、着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液を得た。
・アンモニウム化合物を添加したポリエステル樹脂粒子分散液2:635部
・着色剤粒子分散液:100部
・離型剤粒子分散液:20部
・イオン交換水:200部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):7.0部
撹拌槽に入れた上記の分散液混合物に硫酸アルミニウム水溶液125部を徐々に添加しながら、撹拌槽の底弁より混合液をキャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に導入し、10分間分散した。添加終了後、ジャケットの温度を50℃で昇温を開始し、120分間経過後マルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定したところ、体積平均粒径は5.0μmであった。その後、追加用ポリエステル樹脂粒子分散液1を312部投入し、30分間保持した。
その後、撹拌槽に4質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを9.0にした後、ジャケットの温度を上げて90℃まで昇温し、保持した。30分ごとに光学顕微鏡と走査
電子顕微鏡(FE SEM)にて凝集粒子の形状及び表面性を観察したところ、4時間目で粒子の合一が確認されたので、得られたスラリーを40℃まで冷却した。冷却後のスラリーを目開き15μmの振動篩(KGC800:(株)興和工業所製)で篩分処理した後、フィルタプレス(東京エンジニアリング工業(株)製)で濾過した。その後、トナー粒子量の10倍のイオン交換水をフィルタプレス装置内のトナー粒子に通過させ、トナー粒子を洗浄した。洗浄したトナー粒子はループ型気流式乾燥機((株)セイシン企業製 フラッシュジェットドライヤーFJD-2)を用いてサイクロン捕集で乾燥を行い、重量平均粒子径が7.5μmのトナー粒子13を得た。
<トナー1の製造例>
トナー粒子1: 100部に対して、以下の外添剤を加え、FMミキサ(日本コークス社製)で周速32m/sで10分間混合し、開口部が45μmのメッシュで粗大粒子を除去してトナー1を得た。得られたトナー1の物性を表5に示す。
・シリカ微粒子1 1.0部
<トナー2~26の製造例>
トナー1において、トナー粒子、シリカ微粒子の種類、シリカ微粒子の添加部数を表4に示すように変更した以外は、トナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー2~26を製造した。
Figure 2022170704000011
Figure 2022170704000012


トナー1~18及び20~26は、いずれも1個以上の上記規格値のピークを有していた。トナー19は上記規格値のピークを有していなかった。
(実施例1~17、比較例1~9)
上記トナー1~26を用いて、下記評価を実施した。評価結果を表6に示す。以下に、各評価方法及び評価基準について説明する。
画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP-712Ci(キヤノン製)の改造機を用いた。改造箇所として、プロセススピードを250mm/secとした。プロセスカートリッジは、市販のトナーカートリッジ040H(シアン)(キヤノン製)を用いた。カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、評価するトナーを240g充填した。なお、イエロー、マゼンタ、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタ及びブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
<苛酷環境における保存性試験>
得られたトナー1~26、それぞれ240gを上記トナーカートリッジに充填し、低温
低湿の環境下(15℃、10%RH)に24時間放置した後、24時間かけて高温高湿の環境下(55℃、95%RH)に変化させた。高温高湿の環境下に24時間放置した後、24時間かけて再び低温低湿の環境(15℃、10%RH)に変化させた。以上の操作を3サイクル繰り返したトナーを取り出した。ヒートサイクルのタイムチャートを図1に示す。
上記の苛酷条件下に放置後の画像品位の評価として、カートリッジを高温高湿環境下(32.0℃、80%RH)に1日放置した後、同環境で画像濃度、カブリ、及びハーフトーン画像上の縦スジの評価を行った。高温高湿環境下の方がトナーの流動性が低下しやすく、トナー凝集塊起因の画像濃度の低下、カブリ、及びハーフトーン画像上の縦スジが起こりやすくなるためより厳しい評価となる。
画像濃度の試験として、先端余白5mm、左右余白5mmで、ベタ黒画像を1枚出力した。画像濃度の測定は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)を使用し、SPIフィルターを用いて測定した。該ベタ黒画像における9箇所の画像濃度を測定し、その平均値を画像濃度として評価した。画像濃度の判断基準は以下の通りである。評価結果を表6に示す。C以上を良好と判断した。
(画像濃度の評価基準)
A:画像濃度が1.40以上
B:画像濃度が1.30以上1.40未満
C:画像濃度が1.20以上1.30未満
D:画像濃度が1.20未満
カブリの試験としてベタ白画像を1枚出力し、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定した。一方、ベタ白画像形成前の転写紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。ベタ白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)-白画像サンプルの反射率(%)
カブリの判断基準は以下の通りである。評価結果を表6に示す。C以上を良好と判断した。
(カブリの評価基準)
A:カブリ(反射率)が1.0%未満
B:カブリ(反射率)が1.0%以上2.0%未満
C:カブリ(反射率)が2.0%以上3.0%未満
D:カブリ(反射率)が3.0%以上
ハーフトーン画像上の縦スジの評価として、ハーフトーン画像を1枚出力し、ハーフトーン画像上のトナー凝集塊に起因する縦スジ、いわゆる現像スジ発生の有無を目視で確認した。ハーフトーン画像上の縦スジの判断基準は以下の通りである。評価結果を表6に示す。C以上を良好と判断した。
(ハーフトーン画像上の縦スジの評価基準)
A:縦スジは見られない
B:細いスジが3本以下見られる
C:細いスジが4本以上10本以下見られる
D:11本以上のスジが見られる
<苛酷環境における保存性試験後の耐久性の評価>
上記苛酷環境における保存性試験を行った後のカートリッジを用いて、高温高湿環境下(32.0℃、80%RH)にて、印字率4%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブ間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモード
で1日2500枚の画像出力試験を4日間、合計10000枚実施した。その後、画像濃度、カブリ、及びハーフトーン画像上の縦スジの評価を行った。画像濃度、カブリ、及びハーフトーン画像上に関する評価手法、及び判断基準は苛酷環境における保存性試験と同様に行った。評価結果を表6に示す。
Figure 2022170704000013
本開示は、以下の構成に関する。
(構成1)
結着樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、
無機微粒子と、
を含有するトナーであって、
該トナーが、該無機微粒子として、
下記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び
下記式(B)で示されるポリジメチルシロキサン
で表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
ヘッドスペース法による該シリカ微粒子の加熱温度150℃における有機揮発成分分析において、該シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算のトリメチルシラノールの総量が、1.0ppm以上5.0ppm以下であり、
飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子の表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
該トナー粒子の表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
Figure 2022170704000014

該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子の表面における該規格値をA(0)としたとき、
該A(dmax)及び該A(0)が、下記式(1)及び(2)を満たす
ことを特徴とするトナー。
1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
A(0)≧0.010 ・・・(2)
Figure 2022170704000015

式(B)中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子である。n及びmは、平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nが30以上200以下であり、mが30以上200以下である。式(B)における側鎖
のメチル基(-CH)は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。
(構成2)
前記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンが、下記式(D)で示されるポリジメチルシロキサンである構成1に記載のトナー。
Figure 2022170704000016

式(D)中、pは平均繰り返し単位数であり、30以上200以下である。
(構成3)
前記シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上30nm以下である構成1又は2に記載のトナー。
(構成4)
前記飛行時間型二次イオン質量分析法による分析において、前記規格値のうち前記トナー粒子の表面から深さ100nmの位置における前記規格値をA(100)としたとき、
前記A(dmax)及び該A(100)が、下記式(3)を満たす
構成1~3のいずれか一項に記載のトナー。
1.05≦A(dmax)/A(100)≦5.00 ・・・(3)
(構成5)
前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含有し、
該ポリエステル樹脂が、下記式(E)で示されるモノマーユニット、下記式(F)で示されるモノマーユニット及び下記式(G)で示されるモノマーユニットを含有し、
該ポリエステル樹脂中の下記式(E)で示されるモノマーユニットの含有割合が、30質量%以上50質量%以下であり、
該ポリエステル樹脂中の下記式(F)で示されるモノマーユニットの含有割合が、25質量%以上50質量%以下であり、
該ポリエステル樹脂中の下記式(G)で示されるモノマーユニットの含有割合が、0.4質量%以上50質量%以下である
構成1~4のいずれか一項に記載のトナー。
Figure 2022170704000017

式(E)中、Rは、ベンゼン環を表す。式(F)中、Rは、それぞれエチレン基又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、x+yの平均値は2~10である。式(G)中、Rは、エチレン基又はプロピレン基を示す。
(構成6)
前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含有し、
該ポリエステル樹脂は、下記式(H)で示されるモノマーユニットを含有する
構成1~5のいずれか一項に記載のトナー。
Figure 2022170704000018

(構成7)
前記ポリエステル樹脂中の前記式(H)で示されるモノマーユニットの含有割合が、1.0質量%以上4.0質量%以下である構成6に記載のトナー。
(構成8)
前記トナー粒子が、コア粒子及び該コア粒子の表面のシェルを有し、
該コア粒子が、スチレンアクリル樹脂を有し、
該シェルが、前記ポリエステル樹脂を有する
構成5~7のいずれか一項に記載のトナー。
(構成9)
透過型電子顕微鏡による前記トナーの断面観察において、前記シェルの厚みの平均値が、100nm以上200nm以下である構成8に記載のトナー。
(構成10)
スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微微粒子とを含有するトナーであって、
該無機微粒子が、下記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び下記式(B)で
示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
該トナー粒子が、コア粒子及び該コア粒子表面のシェルを有し、
該コア粒子が、該スチレンアクリル樹脂を有し、
該シェルが、該ポリエステル樹脂を有し、
透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該シェルの厚みの平均値が、100nm以上200nm以下であり、
飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子の表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
該トナー粒子の表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
Figure 2022170704000019

該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子の表面における該規格値をA(0)としたとき、
下記式(1)及び(2)を満たす
ことを特徴とするトナー。
1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
A(0)≧0.010 ・・・(2)
Figure 2022170704000020

式(B)中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子である。n及びmは平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nが30以上200以下、mが30以上200以下である。式(B)における側鎖のメチル基(-CH)は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。
(構成11)
前記式(A)で示されるポリジメチルシロキサンの表面処理量が、表面処理前のシリカ
微粒子100質量部に対して、3~40質量部であり、
前記表面処理における、前記式(A)で示されるポリジメチルシロキサンに対する前記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンの質量比(B)/(A)が、0.05~10.00である
構成10に記載のトナー。

Claims (11)

  1. 結着樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、
    無機微粒子と、
    を含有するトナーであって、
    該トナーが、該無機微粒子として、
    下記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び
    下記式(B)で示されるポリジメチルシロキサン
    で表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
    ヘッドスペース法による該シリカ微粒子の加熱温度150℃における有機揮発成分分析において、該シリカ微粒子の質量を基準としたオクタメチルトリシロキサン換算のトリメチルシラノールの総量が、1.0ppm以上5.0ppm以下であり、
    飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子の表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
    該トナー粒子の表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
    Figure 2022170704000021

    該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子の表面における該規格値をA(0)としたとき、
    該A(dmax)及び該A(0)が、下記式(1)及び(2)を満たす
    ことを特徴とするトナー。
    1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
    A(0)≧0.010 ・・・(2)
    Figure 2022170704000022

    式(B)中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カ
    ルボキシ基、又は水素原子である。n及びmは、平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nが30以上200以下であり、mが30以上200以下である。式(B)における側鎖のメチル基(-CH)は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。
  2. 前記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンが、下記式(D)で示されるポリジメチルシロキサンである請求項1に記載のトナー。
    Figure 2022170704000023

    式(D)中、pは平均繰り返し単位数であり、30以上200以下である。
  3. 前記シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上30nm以下である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記飛行時間型二次イオン質量分析法による分析において、前記規格値のうち前記トナー粒子の表面から深さ100nmの位置における前記規格値をA(100)としたとき、
    前記A(dmax)及び該A(100)が、下記式(3)を満たす
    請求項1又は2に記載のトナー。
    1.05≦A(dmax)/A(100)≦5.00 ・・・(3)
  5. 前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含有し、
    該ポリエステル樹脂が、下記式(E)で示されるモノマーユニット、下記式(F)で示されるモノマーユニット及び下記式(G)で示されるモノマーユニットを含有し、
    該ポリエステル樹脂中の下記式(E)で示されるモノマーユニットの含有割合が、30質量%以上50質量%以下であり、
    該ポリエステル樹脂中の下記式(F)で示されるモノマーユニットの含有割合が、25質量%以上50質量%以下であり、
    該ポリエステル樹脂中の下記式(G)で示されるモノマーユニットの含有割合が、0.4質量%以上50質量%以下である
    請求項1又は2に記載のトナー。
    Figure 2022170704000024

    式(E)中、Rは、ベンゼン環を表す。式(F)中、Rは、それぞれエチレン基又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、x+yの平均値は2~10である。式(G)中、Rは、エチレン基又はプロピレン基を示す。
  6. 前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含有し、
    該ポリエステル樹脂は、下記式(H)で示されるモノマーユニットを含有する
    請求項1又は2に記載のトナー。
    Figure 2022170704000025
  7. 前記ポリエステル樹脂中の前記式(H)で示されるモノマーユニットの含有割合が、1.0質量%以上4.0質量%以下である請求項6に記載のトナー。
  8. 前記トナー粒子が、コア粒子及び該コア粒子の表面のシェルを有し、
    該コア粒子が、スチレンアクリル樹脂を有し、
    該シェルが、前記ポリエステル樹脂を有する
    請求項5に記載のトナー。
  9. 透過型電子顕微鏡による前記トナーの断面観察において、前記シェルの厚みの平均値が、100nm以上200nm以下である請求項8に記載のトナー。
  10. スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微微粒子とを含有するトナーであって、
    該無機微粒子が、下記式(A)で示されるポリジメチルシロキサン及び下記式(B)で
    示されるポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカ微粒子を含有し、
    該トナー粒子が、コア粒子及び該コア粒子表面のシェルを有し、
    該コア粒子が、該スチレンアクリル樹脂を有し、
    該シェルが、該ポリエステル樹脂を有し、
    透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該シェルの厚みの平均値が、100nm以上200nm以下であり、
    飛行時間型二次イオン質量分析法により、該トナー粒子の表面から深さ100nmまで測定し、下記式(C)で示される構造のイオン量を、カウントした全イオン量で割った値を規格値としたとき、
    該トナー粒子の表面から100nm以内の範囲に、該規格値のピークが1個以上存在し、
    Figure 2022170704000026

    該規格値のピークのうち最大の値をA(dmax)とし、該トナー粒子の表面における該規格値をA(0)としたとき、
    下記式(1)及び(2)を満たす
    ことを特徴とするトナー。
    1.05≦A(dmax)/A(0)≦5.00 ・・・(1)
    A(0)≧0.010 ・・・(2)
    Figure 2022170704000027

    式(B)中、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、又は水素原子であり、Rは、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子である。n及びmは平均繰り返し単位数であり、それぞれ、nが30以上200以下、mが30以上200以下である。式(B)における側鎖のメチル基(-CH)は、それぞれ、カルビノール基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、又は水素原子で置換されていてもよい。
  11. 前記式(A)で示されるポリジメチルシロキサンの表面処理量が、表面処理前のシリカ
    微粒子100質量部に対して、3~40質量部であり、
    前記表面処理における、前記式(A)で示されるポリジメチルシロキサンに対する前記式(B)で示されるポリジメチルシロキサンの質量比(B)/(A)が、0.05~10.00である
    請求項10に記載のトナー。
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