JP2022169356A - 滑り軸受用摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる滑り軸受用摺動部材を提供する。【解決手段】本開示の滑り軸受用摺動部材は、金属製の基体と、上記基体の表面に形成される摺動層とを備え、上記摺動層が、多孔質の金属焼結層と、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする樹脂層とを有し、上記樹脂層が上記金属焼結層の間隙に充填されるか、又は上記金属焼結層の間隙に充填されるとともに表面を被覆している。【選択図】図2
Description
本開示は、滑り軸受用摺動部材に関する。
産業機器、輸送機器、自動車等に用いられる軸受には、転がり運動が可能な転動体が内蔵された転がり軸受と、転動体を有さない滑り軸受とがある。滑り軸受は、転動体を有さず軸と面接触するため、転がり軸受に対して摩擦抵抗は大きいが、振動に強く、構造が簡単で小型、省スペースで設計が可能といった特徴を有する。
このような滑り軸受の摺動面の耐摩耗性を向上するために、例えば高粘度油含浸型裏金付き多孔質複合焼結合金から成る軸受の摺動面に二硫化モリブデンを用いて微粒子ショットピーニングを施すことによって耐摩耗特性を向上させた滑り軸受が提案されている(特開2007-225077号公報参照)。
本開示の滑り軸受用摺動部材は、金属製の基体と、上記基体の表面に形成される摺動層とを備え、上記摺動層が、多孔質の金属焼結層と、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする樹脂層とを有し、上記樹脂層が上記金属焼結層の間隙に充填されるか、又は上記金属焼結層の間隙に充填されるとともに表面を被覆している。
[本開示が解決しようとする課題]
しかしながら、上記公報に記載のような摺動面に表面処理を施した滑り軸受では、内周面における耐摩耗性の向上に対して改善の余地があり、さらなる摺動性能の向上が求められている。
しかしながら、上記公報に記載のような摺動面に表面処理を施した滑り軸受では、内周面における耐摩耗性の向上に対して改善の余地があり、さらなる摺動性能の向上が求められている。
本開示は上記事情に基づいてなされたものであり、耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる滑り軸受用摺動部材を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る滑り軸受用摺動部材は、耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる。
本開示の一態様に係る滑り軸受用摺動部材は、耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の滑り軸受用摺動部材は、本開示の滑り軸受用摺動部材は、金属製の基体と、上記基体の表面に形成される摺動層とを備え、上記摺動層が、多孔質の金属焼結層と、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする樹脂層とを有し、上記樹脂層が上記金属焼結層の間隙に充填されるか、又は上記金属焼結層の間隙に充填されるとともに表面を被覆している。
当該滑り軸受用摺動部材においては、基体の表面に積層される摺動層が、多孔質の金属焼結層と、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分する樹脂層とを有するので、高い耐摩耗性が要求される基体の内周面の摩耗量を低減できる。また、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を摺動層に用いることで、相手材の表面の傷の発生も抑制することができる。従って、当該滑り軸受用摺動部材は、耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる。ここで、「主成分」とは、含有量の最も多い成分であり、例えば含有量が50体積%以上の成分を指す。
上記摺動層のスラスト摩耗試験において、荷重を10MPaで一定とし、段階的に速度を増やしていく条件で測定される限界PV値が、700Mpa・m/分を超えることが好ましい。上記摺動層の限界PV値が上記下限以上であることで、耐摩耗性をより向上できる。「限界PV値」とは、JIS-K7218:1986「プラスチックの滑り摩耗試験方法」に準拠して測定される値であり、数値が大きいほど耐摩耗性に代表される摺動性に優れることを示す。
上記ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点が270℃以上325℃以下であることが好ましい。当該滑り軸受用摺動部材においては、上記樹脂層の主成分であるポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点が上記範囲であることで、適正な架橋度を確保するとともに、架橋の効果を得ることができる。ここで、「融点」とは、JIS-K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点ピーク温度をいう。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材について詳説する。
以下、本開示の一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材について詳説する。
<滑り軸受用摺動部材>
本開示の一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材は、図示しない建機や自動車などの各種機械が有するハウジングに挿通された相手軸(以下、単に「軸」ともいう)を回転可能とするために用いられる。図1に示す滑り軸受用摺動部材1は、相手材である軸2と滑り軸受用摺動部材1の内周面が直接接触する構成となっている。軸2は、滑り軸受用摺動部材の中央に形成された穴を貫通するとともに、滑り軸受用摺動部材1の内周面で回転可能に支持されている。図2は、一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材1を示す模式的部分断面図である。図3は、滑り軸受用摺動部材1の模式的部分断面図である。図2及び図3に示すように、滑り軸受用摺動部材1は、金属製の基体5と、相手材との摺動面となる摺動層3とを備える。摺動層3は、基体5の内周面に積層される。摺動層3は、多孔質の金属焼結層6と、上記金属焼結層6の間隙に充填されるとともに表面を被覆する樹脂層7とを有する。
本開示の一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材は、図示しない建機や自動車などの各種機械が有するハウジングに挿通された相手軸(以下、単に「軸」ともいう)を回転可能とするために用いられる。図1に示す滑り軸受用摺動部材1は、相手材である軸2と滑り軸受用摺動部材1の内周面が直接接触する構成となっている。軸2は、滑り軸受用摺動部材の中央に形成された穴を貫通するとともに、滑り軸受用摺動部材1の内周面で回転可能に支持されている。図2は、一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材1を示す模式的部分断面図である。図3は、滑り軸受用摺動部材1の模式的部分断面図である。図2及び図3に示すように、滑り軸受用摺動部材1は、金属製の基体5と、相手材との摺動面となる摺動層3とを備える。摺動層3は、基体5の内周面に積層される。摺動層3は、多孔質の金属焼結層6と、上記金属焼結層6の間隙に充填されるとともに表面を被覆する樹脂層7とを有する。
[基体]
基体5は、金属製である。基体5に用いる金属としては、例えば、鋼、ステンレス等の鉄合金、ニッケル、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金などが挙げられる。
基体5は、金属製である。基体5に用いる金属としては、例えば、鋼、ステンレス等の鉄合金、ニッケル、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金などが挙げられる。
基体5が鋼材の場合、外表面の酸化、腐食等を抑制するために、基体5の外周面側に亜鉛、すず、クロム,ニッケルなどの金属元素を含有するめっき層8を有していてもよい。
基体5の平均厚さは使用用途により選択されるが、基体5が鋼材の場合は、例えば1mm以上3mm以下の範囲が一般的である。ここで、本発明における「平均厚さ」とは、任意の箇所の厚さを5点測定し、平均した値を意味する。
基体5がめっき層8を有する場合、めっき層8の平均厚さの下限としては、例えば0.5μm以上10μm以下が好ましい。
[摺動層]
摺動層3は、基体5の摺動面である内周面に積層される。摺動層3は、金属焼結層6と、樹脂層7とを有する。
摺動層3は、基体5の摺動面である内周面に積層される。摺動層3は、金属焼結層6と、樹脂層7とを有する。
(金属焼結層)
金属焼結層6は、基体5の内周面に積層される。金属焼結層6は、複数の金属粉末を焼成することによって得られる金属粉末の焼結体の層であり、多孔質の層である。金属焼結層6が金属粉末の焼結体の層であることにより、滑り軸受用摺動部材1の耐摩耗性、対浸食性を向上できる。焼結金属としては、例えば、鉄系焼結金属、銅系焼結金属、鉄銅合金系焼結金属等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導性、加工性の観点から、Cu系焼結金属が好ましい。
金属焼結層6は、基体5の内周面に積層される。金属焼結層6は、複数の金属粉末を焼成することによって得られる金属粉末の焼結体の層であり、多孔質の層である。金属焼結層6が金属粉末の焼結体の層であることにより、滑り軸受用摺動部材1の耐摩耗性、対浸食性を向上できる。焼結金属としては、例えば、鉄系焼結金属、銅系焼結金属、鉄銅合金系焼結金属等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導性、加工性の観点から、Cu系焼結金属が好ましい。
金属焼結層6の空隙率としては、5%以上90%以下が好ましい。金属焼結層6の空隙率が5%未満の場合、金属焼結層6に充填される樹脂層3の比率が低くなり、摺動時の耐焼き付き性が低下するおそれがある。金属焼結層6の空隙率が90%を超えると、摺動時の耐変形性が小さくなるおそれがある。
金属焼結層6における金属粉末の平均径としては、40μm以上200μm以下が好ましい。上記金属粉末の平均径が40μm未満の場合、空隙率が小さくなり、必要な樹脂層の形成が難しくなるおそれがある。上記金属粉末の平均径が200μmを超えると、金属焼結層の厚さが必要以上に大きくなるおそれがある。
金属焼結層6の平均厚さとしては、摺動特性、加工性、コスト等の観点から、0.04mm以上0.4mm以下が好ましい。
(樹脂層)
樹脂層7はポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする。樹脂層7は、金属焼結層6の空隙および表層にテトラフルオロエチレン樹脂組成物により含侵処理を行い、焼成した後に、電離放射線を照射することにより形成される。
樹脂層7はポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする。樹脂層7は、金属焼結層6の空隙および表層にテトラフルオロエチレン樹脂組成物により含侵処理を行い、焼成した後に、電離放射線を照射することにより形成される。
樹脂層7は、金属焼結層6の間隙に充填されるだけで、金属焼結層6の表面が樹脂層7により被覆されていない形態であってもよいし、図3に示すように、樹脂層7が金属焼結層6の間隙に充填されるとともに金属焼結層6の表面を被覆している形態であってもよい。
樹脂層7が、金属焼結層6の間隙に充填されるとともに表面を被覆している形態である場合、樹脂層7における金属焼結層6の表面からの平均厚さとしては、5μm以上が好ましい。上記樹脂層7の厚さが5μm以上であることで、軸受けとしての初期の使用時における相手材との馴染み性を向上できる。
なお、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物は、本開示の効果を損なわない範囲において、テトラフルオロエチレン以外の構造単位を含んでいてもよい。テトラフルオロエチレン以外の構造単位としては、例えばパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
樹脂層7におけるポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の含有量は、滑り軸受用摺動部材として使用する際の要求特性を満足させるために必要とされる添加成分、添加量を考慮し決める必要がある。樹脂層7におけるポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の含有量としては、50質量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の含有量が50質量%未満の場合、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物としての効果が小さくなるおそれがある。なお、ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、100重量%であってもよい。
樹脂層7は、架橋樹脂以外の他の成分を含有してもよい。架橋樹脂以外の他の成分としては、例えば固体潤滑剤、強化材等が挙げられる。樹脂層7が固体潤滑剤、強化材等を含有することで、摺動性をより向上できる場合がある。上記固体潤滑剤としては、例えば二硫化モリブデン等が挙げられる。また、上記強化材としては、例えばガラスファイバー(ガラス繊維)、球状ガラス等のガラスフィラー、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填材などが挙げられる。樹脂層7における上記他の成分の含有量としては、50重量%未満が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
当該滑り軸受用摺動部材1の限界PV値の下限としては、700MPa・m/min超が好ましく、1000MPa・m/minがより好ましく、1400MPa・m/minがさらに好ましい。上記限界PV値が上記範囲であることで、当該滑り軸受用摺動部材1の耐摩耗特性をより向上することができる。
上記限界PV値の測定については、具体的には、スラスト摩耗試験(リングオンディスク式摩耗評価)により滑り軸受用摺動部材の摺動面表面の限界PV値を測定する。測定は、23±2℃の温度下で調温後、荷重を10MPaで一定とし、3分毎に1ステップごとに速度を上げていく条件で行う。具体的には、リング状相手材として材質がS45C(機械構造用炭素鋼)、リング寸法(外径/内径)がφ11.6mm/φ7.4mmのものを用いる。そして、相手材にドライの潤滑条件下で所定の荷重(面圧:P)を加えた状態で、試験片を所定の速度(回転速度:V)で回転させ、相手材に生じる反動トルクにより動摩擦係数を測定する。このとき、速度については、ステップ(1)において1m/分で開始し、ステップ(2)で5m/分、ステップ(3)で10m/分と速度を上げていき、以後、1ステップ上がるごとに10m/分ずつ速度を増加させていき、限界PV値を測定する。本開示においては、基体が露出する直前のPV値を限界PV値とする。
ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点の下限としては、270℃が好ましく、300℃がより好ましい。上記ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点が上記下限未満の場合、分解が進み、摺動特性が低下するおそれがある。一方、上記ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点の上限としては、325℃が好ましく、320℃がより好ましい。上記ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点が上記上限を超えると、架橋が不十分となるおそれがある。当該は、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点が上記範囲であることで、適正な架橋度を確保するとともに、架橋の効果を得ることができる。
[滑り軸受用摺動部材の製造方法]
本開示の一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材の製造方法は、例えば基体の表面に金属粉末を塗工する工程と、金属粉末を焼成する工程と、基体表面に形成した金属焼結層内および表面にポリテトラフルオロエチレンを主成分とする層を塗工焼成する工程と、ポリテトラフルオロエチレンを架橋する工程とを備える。上記滑り軸受用摺動部材の製造方法は、上記工程を備えることで、耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる滑り軸受用摺動部材を製造できる。
本開示の一実施形態に係る滑り軸受用摺動部材の製造方法は、例えば基体の表面に金属粉末を塗工する工程と、金属粉末を焼成する工程と、基体表面に形成した金属焼結層内および表面にポリテトラフルオロエチレンを主成分とする層を塗工焼成する工程と、ポリテトラフルオロエチレンを架橋する工程とを備える。上記滑り軸受用摺動部材の製造方法は、上記工程を備えることで、耐摩耗性が高く、摺動性能に優れる滑り軸受用摺動部材を製造できる。
(基体に金属粉末を塗工する工程)
本工程では、金属製基体表面に金属粉末を塗工する。始めに、金属製の基体を準備した後、基体の表面に金属粉末を塗工して、焼成前の金属層を形成する。
本工程では、金属製基体表面に金属粉末を塗工する。始めに、金属製の基体を準備した後、基体の表面に金属粉末を塗工して、焼成前の金属層を形成する。
金属粉末を塗工する方法としては、散布装置を用いて金属粉末を散布する方法が挙げられる。
(金属粉末を焼成する工程)
本工程では、塗工工程において塗工した金属粉末を焼成する。これにより、金属粉末が焼結し相互に密着して固体接合し、基体5の表面に金属焼結層6が形成される。上記焼成は金属粉末の融点以上で行う。上記焼成温度としては、融点+10℃以上融点+100℃以下が好ましい。
本工程では、塗工工程において塗工した金属粉末を焼成する。これにより、金属粉末が焼結し相互に密着して固体接合し、基体5の表面に金属焼結層6が形成される。上記焼成は金属粉末の融点以上で行う。上記焼成温度としては、融点+10℃以上融点+100℃以下が好ましい。
なお、焼成時間については特に限定されないが、例えば10分以上60分以下の範囲で行うことができる。
(ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする層を形成する工程)
本工程では、基体の表面に樹脂層の主成分を構成するポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEともいう。)を金属焼結層6の間隙に充填するとともに、表面を被覆する。すなわち、樹脂層7と金属焼結層6との境界は、PTFEが金属焼結層6に充填処理が行われた状態で形成される。上記PTFE層を形成する方法としては、例えばPTFEを主成分とするPTFE層用樹脂組成物の塗工が挙げられる。基体の表面面にPTFE層用樹脂組成物の塗工を行う場合、PTFE層用樹脂組成物を溶剤に分散させた塗料を基体の表面に塗工する。この溶剤としては、PTFEを効率よく分散できる石油系溶剤、例えば、ナフサ、トルエン、キシレン等が用いることができる。上記塗工手段としては、特に限定されず、含侵法、スプレーコート、フローコート、ディップコート(含侵等、種々の方法を用いることができる。
本工程では、基体の表面に樹脂層の主成分を構成するポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEともいう。)を金属焼結層6の間隙に充填するとともに、表面を被覆する。すなわち、樹脂層7と金属焼結層6との境界は、PTFEが金属焼結層6に充填処理が行われた状態で形成される。上記PTFE層を形成する方法としては、例えばPTFEを主成分とするPTFE層用樹脂組成物の塗工が挙げられる。基体の表面面にPTFE層用樹脂組成物の塗工を行う場合、PTFE層用樹脂組成物を溶剤に分散させた塗料を基体の表面に塗工する。この溶剤としては、PTFEを効率よく分散できる石油系溶剤、例えば、ナフサ、トルエン、キシレン等が用いることができる。上記塗工手段としては、特に限定されず、含侵法、スプレーコート、フローコート、ディップコート(含侵等、種々の方法を用いることができる。
次に、この塗料を塗工した基体を加熱炉に入れ加熱し、上記塗料中の溶剤を飛ばすとともにPTFEを焼成する。PTFEの焼成温度としては、例えば350℃以上400℃以下とすることができる。その後、基体の内周面を冷却することでPTFE層を基体の表面に形成する。
(ポリテトラフルオロエチレンを架橋する工程)
本工程では、上記ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする層に低酸素雰囲気下かつフッ素樹脂の融点以上の温度で電離放射線を照射することにより架橋する。
本工程では、上記ポリテトラフルオロエチレンを主成分とする層に低酸素雰囲気下かつフッ素樹脂の融点以上の温度で電離放射線を照射することにより架橋する。
上記低酸素雰囲気下における酸素濃度の上限としては、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下がさらに好ましい。上記酸素濃度が上記上限を超える場合、ポリテトラフルオロエチレンの分解や被覆対象の酸化等のおそれがある。
本工程における加熱温度は、ポリテトラフルオロエチレンの融点より70℃低い257℃以上とする。この加熱温度の下限としては、ポリテトラフルオロエチレンの融点-40℃が好ましく、融点-10℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、ポリテトラフルオロエチレンの融点+60℃が好ましく、融点+40℃がより好ましく、融点+10℃がさらに好ましい。上記加熱温度が上記下限未満の場合、ポリテトラフルオロエチレンの架橋が不十分となるおそれがある。一方、上記加熱温度が上記上限を超える場合、ポリテトラフルオロエチレンが分解するおそれや、生産性が低下するおそれがある。また、上記加熱時間としては、例えば10分以上2時間以下とできる。
上記電離放射線としては、例えばγ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオン線等が挙げられる。また、電離放射線の照射線量の下限としては、1kGyが好ましく、100kGyがより好ましく、200kGyがさらに好ましい。一方、上記照射線量の上限としては、1500kGyが好ましく、1,000kGyがより好ましく、500kGyがさらに好ましい。上記照射線量が上記下限未満の場合、ポリテトラフルオロエチレンの架橋反応が十分進行しないおそれがある。一方、上記照射線量が上記上限を超える場合、ポリテトラフルオロエチレンの主鎖が切断されるおそれがある。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験No.1>
[滑り軸受用摺動部材の作製]
金属製の基体として、平均厚さ2.0mmの鋼板を準備し、錫30重量%と残部銅からなる青銅粉末を基体の内周面に一様に散布し、これを中性雰囲気又は還元性雰囲気に調整された加熱炉において、850℃の温度で30分間焼成し、上記基体の表面に平均厚さ(300)μmの多孔質の青銅焼結層を形成した。多孔質の青銅焼結層の多孔度は60体積%であった。
[滑り軸受用摺動部材の作製]
金属製の基体として、平均厚さ2.0mmの鋼板を準備し、錫30重量%と残部銅からなる青銅粉末を基体の内周面に一様に散布し、これを中性雰囲気又は還元性雰囲気に調整された加熱炉において、850℃の温度で30分間焼成し、上記基体の表面に平均厚さ(300)μmの多孔質の青銅焼結層を形成した。多孔質の青銅焼結層の多孔度は60体積%であった。
次に、青銅焼結層の間隙及び表面に、ポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂組成物を塗工した後、350℃で焼成した。次に、加熱温度340℃、酸素濃度5ppm以下、照射線量300kGyの条件で電子線架橋を行い、樹脂層を形成した。樹脂層における青銅焼結層表面からの平均厚さは5μmであった。このようにして、試験No.1の軸受用摺動部材を作製した。試験No.1の樹脂層の主成分であるポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点は、305℃であった。
<試験No.2>
電子線架橋を行わないこと以外は、試験No.1と同様にして試験No.2の軸受用摺動部材を作製した。試験No.2の樹脂層の主成分であるポリテトラフルオロエチレンの融点は、330℃であった。
電子線架橋を行わないこと以外は、試験No.1と同様にして試験No.2の軸受用摺動部材を作製した。試験No.2の樹脂層の主成分であるポリテトラフルオロエチレンの融点は、330℃であった。
[評価]
上述の方法により、スラスト摩耗試験(リングオンディスク式摩耗評価)による試験No.1及びNo.2の滑り軸受用摺動部材の摺動層表面の限界PV値を測定した。上記測定には、試験装置としてAND社製「FEM-3-1010-ADX-S」を用いた。試験No.1及びNo.2の評価結果を表1に示す。
上述の方法により、スラスト摩耗試験(リングオンディスク式摩耗評価)による試験No.1及びNo.2の滑り軸受用摺動部材の摺動層表面の限界PV値を測定した。上記測定には、試験装置としてAND社製「FEM-3-1010-ADX-S」を用いた。試験No.1及びNo.2の評価結果を表1に示す。
樹脂層がポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする試験No.1の滑り軸受用摺動部材の限界PV値は、1400MPa・m/minであり、樹脂層が架橋されていないポリテトラフルオロエチレンを主成分とする試験No.2と比較すると非常に良好な結果が得られた。
以上の結果から、当該滑り軸受用摺動部材は耐摩耗性が高く、摺動性能に優れることが示された。
1 滑り軸受用摺動部材
2 軸材
3 摺動層
5 基体
6 金属焼結層
7 樹脂層
8 メッキ層
2 軸材
3 摺動層
5 基体
6 金属焼結層
7 樹脂層
8 メッキ層
Claims (3)
- 金属製の基体と、
上記基体の表面に形成される摺動層と
を備え、
上記摺動層が、多孔質の金属焼結層と、ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物を主成分とする樹脂層とを有し、
上記樹脂層が上記金属焼結層の間隙に充填されるか、又は上記金属焼結層の間隙に充填されるとともに表面を被覆している滑り軸受用摺動部材。 - 上記摺動層のスラスト摩耗試験において、荷重を10MPaで一定とし、段階的に速度を増やしていく条件で測定される限界PV値が、700Mpa・m/分超である請求項1に記載の滑り軸受用摺動部材。
- 上記ポリテトラフルオロエチレンの電離放射線架橋物の融点が270℃以上325℃以下である請求項1または請求項2に記載の滑り軸受用摺動部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021075342A JP2022169356A (ja) | 2021-04-27 | 2021-04-27 | 滑り軸受用摺動部材 |
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