JP2022168842A - 生物材料を透明化する方法およびキット - Google Patents

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Abstract

【課題】従来技術よりも、透明化の程度および/または迅速性が向上している生物材料を透明化する方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る方法は、(i)試薬(1)および試薬(2)、(ii)試薬(2)および下記試薬(3)、または、(iii)試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)のいずれかの組合せを含んでいる混合液に、生物材料を浸漬する工程を含む。試薬(1)~(3)は、それぞれ、HSP空間における特定の球(1)~(3)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。【選択図】図2

Description

本発明は、生物材料を透明化する方法およびキットに関する。
生物材料の光透過性を向上させ、当該生物材料を透明化する技術が知られている。この技術は、生物材料内における遺伝子発現や物質の局在など、高度な観察に応用されている。今日まで、生物材料を透明化するための様々な試薬、装置、処理方法などが提案されている。
例えば特許文献1は、(i)アミノアルコールと、(ii)尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、(iii)非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液を、生物材料に浸潤させる第一浸潤工程を包含する、光透過性に優れた生物材料を調製する方法を開示している。
国際公開第2015/022883号パンフレット
しかしながら、上述のような従来技術は、透明化の程度および迅速性に関して、改善の余地が残されていた。
本発明の一態様は、従来技術よりも透明化の程度が向上している生物材料を透明化する方法を提供することを目的とする。本発明の他の態様は、従来技術よりも透明化の迅速性が向上している生物材料を透明化する方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討したところ、生体材料を浸漬する試薬のハンセン溶解度パラメータが、上記の課題を解決する上で重要になることを見出した。本発明は、以下の構成を包含している。
<1>
生物材料を透明化する方法であって、
(i)下記試薬(1)および下記試薬(2)
(ii)下記試薬(2)および下記試薬(3)
(iii)下記試薬(1)、下記試薬(2)および下記試薬(3)
のいずれかの組合せを含んでいる混合液に、上記生物材料を浸漬する工程を含む、方法:試薬(1):HSP空間において、点(δD=18.97,δP=1.61,δH=13.92)を中心とし、半径が5.7である球(1)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
試薬(2):HSP空間において、点(δD=17.77,δP=14.08,δH=7.57)を中心とし、半径が3.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
試薬(3):HSP空間において、点(δD=16.26,δP=8.87,δH=23.96)を中心とし、半径が4.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬。
<2>
上記試薬(1)、上記試薬(2)および上記試薬(3)を含んでいる混合液に、上記生物材料を浸漬する工程を含む、<1>に記載の方法。
<3>
上記生物材料は、がん組織である、<1>または<2>に記載の方法。
<4>
生物材料を透明化するためのキットであって、
(i)下記試薬(1)および下記試薬(2)
(ii)下記試薬(2)および下記試薬(3)
(iii)下記試薬(1)、下記試薬(2)および下記試薬(3)
のいずれかの組合せを備えている、キット:
試薬(1):HSP空間において、点(δD=18.97,δP=1.61,δH=13.92)を中心とし、半径が5.7である球(1)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
試薬(2):HSP空間において、点(δD=17.77,δP=14.08,δH=7.57)を中心とし、半径が3.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
試薬(3):HSP空間において、点(δD=16.26,δP=8.87,δH=23.96)を中心とし、半径が4.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬。
<5>
透明化された生物材料の製造方法であって、
<1>~<3>のいずれかに記載の方法によって生物材料を透明化する工程を含む、
方法。
<6>
生物材料の検査を補助する方法であって、
<1>~<3>のいずれかに記載の方法で生物材料を透明化する工程と、
上記生物材料に含まれる標的に可視化処理を施す工程と、
を含み、
上記生物材料は、生体から採取された生物材料であるか、または、ヒト以外の生物に由来する生物材料である、方法。
<7>
生物材料の検査を補助する方法であって、
<1>~<3>のいずれかに記載の方法で生物材料を透明化する工程と、
上記生物材料に含まれる標的に可視化処理を施す工程と、
生物材料を解析する工程と、
を含み、
上記生物材料は、生体から採取された生物材料であるか、または、ヒト以外の生物に由来する生物材料である、方法。
本発明の一態様によれば、従来技術よりも透明化の程度が向上している生物材料を透明化する方法が提供される。本発明の他の態様によれば、従来技術よりも透明化の迅速性が向上している生物材料を透明化する方法が提供される。
本発明者らが透明化作用を検討した試薬が、HSP空間においてどこに位置しているかを表す概念図である。球状の点は、透明化作用の高い試薬を表す。立方体の点は、透明化作用の低い試薬を表す。 HSP空間における球(1)、球(2)および球(3)を表す概念図である。 本発明の一実施形態に係る方法によって透明化したヒトのがん組織片の、経時的変化を表す図である。 従来技術によって透明化したヒトのがん組織片の、経時的変化を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法によって透明化したヒトのがん細胞塊の、経時的変化を表す図である。 従来技術によって透明化したヒトのがん細胞塊の、経時的変化を表す図である。 透明化したヒトのがん細胞塊を、さらに血管平滑筋マーカーで染色した様子を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法および従来技術によって透明化した、ヒトの乳がん組織を表す図である。 透明化したヒトの乳がん組織を、さらにKi67抗体で染色した様子を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法または従来技術によって透明化した、マウスの脳を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法または従来技術によって透明化した、マウスの心臓を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法または従来技術によって透明化した、マウスの肺を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法または従来技術によって透明化した、マウスの肝臓を表す図である。 本発明の一実施形態に係る方法または従来技術によって透明化した、マウスの腎臓を表す図である。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
文脈上明らかな例外を除き、本明細書においては、試薬(1)を試薬(1b)と読み換えることができる。文脈上明らかな例外を除き、本明細書においては、試薬(2)を試薬(2a)または試薬(2b)と読み換えることができる。文脈上明らかな例外を除き、本明細書においては、試薬(3)を試薬(3b)と読み換えることができる。
本発明者らは、どのような試薬に生物材料を透明化させる効果を有しているかに関して、種々の試薬を比較検討した。その結果、試薬のハンセン溶解度パラメータと、試薬の透明化作用の高低には、ある種の傾向性があることを見出した。具体的には、HSP空間において互いに近い位置にある試薬群が、高い透明化作用を示す場合があることを見出した(正確な位置関係を表す図ではないが、図1を参照)。このことから、本発明者らは、特定のハンセン球の内部または表面に位置する試薬が、高い透明化作用を示すのではないかと着想した(正確な位置関係を表す図ではないが、図2を参照)。
上記の知見に基づき、本発明者らは、生物材料の透明化作用をさらに向上させるために検討を重ねた。その結果、複数のハンセン球の内部または表面に位置する試薬を組合せた混合液に生物材料を浸漬することにより、特に高い透明化作用が得られることを見出し、本発明を完成させた。
〔1.ハンセン溶解度パラメータ〕
本発明の一態様に係る生物材料を透明化する方法は、ハンセン溶解度パラメータが特定の領域内にある試薬を組合せた混合液に生物材料を浸漬する工程を含む。
ハンセン溶解度パラメータ(δ)とは、物質の溶解性を表すパラメータである。このパラメータは、分散力項(δD)、双極子間力項(δP)および水素結合項(δH)により、「δ=(δD)+(δP)+(δH)」と表される。それゆえ、特定の物質のハンセン溶解度パラメータは、δD、δPおよびδHからなる3次元空間内の特定の点として表すことができる。本明細書では、δD、δPおよびδHからなる3次元空間をHSP空間と称する。
非常に多くの物質において、ハンセン溶解度パラメータが特定されている。異なる2種類の物質のハンセン溶解度パラメータをδおよびδとすると、HSP空間におけるδとδとの距離が近い物質同士は溶解性が高く、距離が遠い物質同士は溶解性が低い傾向にある。
HSP空間における点δ(δD,δP,δH)と点δ(δD,δP,δH)との間の距離Rは、下記式により求められる。HSP空間における球の半径も、下記式によって求められるHSP距離を表している。
R=[4×(δD-δD+(δP-δP+(δH-δH1/2
ハンセン溶解度パラメータに関する詳細は、[D.W. van Krevelen (1990) "Properties
of polymers, 3rd, completely rev. ed.", Amsterdam: Elsevier]を参照。また、物質のδD、δPおよびδHは、プログラム「HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)」によって計算できる。
[1.1.試薬(1)]
試薬(1)は、HSP空間において、点(δD=18.97,δP=1.61,δH=13.92)を中心とし、半径が5.7である球(1)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(1)は、球(1)の内部に位置する1種類以上の試薬である。好ましくは、試薬(1)には、トリクロロエタノールは含まれない。
試薬(1)の具体例としては、2-フェノキシエタノール、1-フェニル-2-プロパノール、2-o-トリルエタノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロペンチル酢酸、2-フェニル-1-プロパノール、4-フェニル-2-ブタノール、3-フェニル-1-プロパノール、ペンタエチレンヘキサミン、3-クロロ-1-プロパノール、ベンジルアミン、1-(p-トリル)エタノール、2-(m-トリル)エタノール、3-メチルベンジルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、4-フェニル-1-ブタノール、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(1)は、2-フェノキシエタノール、2-o-トリルエタノールおよびベンジルアミンからなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(1)は、2-フェノキシエタノールである。一実施形態において、試薬(1)は、2-o-トリルエタノールである。一実施形態において、試薬(1)は、ベンジルアミンである。
一実施形態において、試薬(1)は、試薬(1b)である。試薬(1b)は、HSP空間において、点(δD=18.74,δP=4.98,δH=9.86)を中心とし、半径が0.8である球(1b)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(1b)は、球(1b)の内部に位置する1種類以上の試薬である。試薬(1b)は、試薬(1)の中でも、透明化スコアがより高い試薬である。
試薬(1b)の具体例としては、2-o-トリルエタノール、ベンジルアミン、1-(p-トリル)エタノール、2-(m-トリル)エタノール、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(1b)は、2-o-トリルエタノールおよびベンジルアミンからなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(1b)は、2-o-トリルエタノールである。一実施形態において、試薬(1b)は、ベンジルアミンである。
[1.2.試薬(2)]
試薬(2)は、HSP空間において、点(δD=17.77,δP=14.08,δH=7.57)を中心とし、半径が3.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(2)は、球(2)の内部に位置する1種類以上の試薬である。好ましくは、試薬(2)には、ジメチルスルホキシドは含まれない。
試薬(2)の具体例としては、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリドン、クロロジメチルアセタミド、ε-カプロラクトン、リン酸トリス(2-クロロエチル)、テトラメチレンスルホキシド、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(2)は、1-メチル-2ピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロジメチルアセタミドおよびテトラメチレンスルホキシドからなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(2)は、1-メチル-2ピロリドンである。一実施形態において、試薬(2)は、ジメチルスルホキシドである。一実施形態において、試薬(2)は、クロロジメチルアセタミドである。一実施形態において、試薬(2)は、テトラメチレンスルホキシドである。
一実施形態において、試薬(2)は、試薬(2a)である。試薬(2a)は、HSP空間において、点(δD=17.73,δP=11.17,δH=8.25)を中心とし、半径が4.0である球(2a)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(2a)は、球(2a)の内部に位置する1種類以上の試薬である。試薬(2a)が含まれる球(2a)は、球(2)の他の態様であり、中心の座標のδPがより低い位置に位置している。
試薬(2a)の具体例としては、1-メチル-2-ピロリドン、2-メチルチアリゾン、クロロジメチルアセタミド、N-メチルホルムアニリド、ε-カプロラクトン、リン酸トリス(2-クロロエチル)、テトラメチレンスルホキシド、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(2a)は、1-メチル-2ピロリドン、クロロジメチルアセタミドおよびテトラメチレンスルホキシドからなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(2a)は、1-メチル-2ピロリドンである。一実施形態において、試薬(2a)は、クロロジメチルアセタミドである。一実施形態において、試薬(2a)は、テトラメチレンスルホキシドである。
一実施形態において、試薬(2)は、試薬(2b)である。試薬(2b)は、HSP空間において、点(δD=18.13,δP=12.03,δH=8.37)を中心とし、半径が1.3である球(2b)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(2b)は、球(2b)の内部に位置する1種類以上の試薬である。試薬(2b)は、試薬(2)の中でも、透明化スコアが特に高い試薬である。
試薬(2b)の具体例としては、1-メチル-2-ピロリドン、クロロジメチルアセタミド、テトラメチレンスルホキシド、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(2b)は、1-メチル-2ピロリドン、クロロジメチルアセタミドおよびテトラメチレンスルホキシドからなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(2b)は、1-メチル-2ピロリドンである。一実施形態において、試薬(2b)は、クロロジメチルアセタミドである。一実施形態において、試薬(2b)は、テトラメチレンスルホキシドである。
[1.3.試薬(3)]
試薬(3)は、HSP空間において、点(δD=16.26,δP=8.87,δH=23.96)を中心とし、半径が4.8である球(3)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(3)は、球(3)の内部に位置する1種類以上の試薬である。好ましくは、試薬(3)には、グリセロールは含まれない。
試薬(3)の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、チオジエチレングリコール、乳酸(dl)、乳酸(l)、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(3)は、エチレングリコールおよび乳酸(l)からなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(3)は、エチレングリコールである。一実施形態において、試薬(3)は、乳酸(l)である。
一実施形態において、試薬(3)は、試薬(3b)である。試薬(3b)は、HSP空間において、点(δD=17.77,δP=6.25,δH=24.41)を中心とし、半径が5.3である球(3b)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬である。一実施形態において、試薬(3b)は、球(3b)の内部に位置する1種類以上の試薬である。試薬(3b)は、試薬(3)の中でも、透明化スコアがより高い試薬である。
試薬(3b)の具体例としては、エチレングリコール、乳酸(dl)、乳酸(l)、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、試薬(3b)は、エチレングリコールおよび乳酸(l)からなる群より選択される1種類以上である。一実施形態において、試薬(3b)は、エチレングリコールである。一実施形態において、試薬(3b)は、乳酸(l)である。
[1.4.試薬(1)~(3)の組成]
一実施形態において、透明化方法は、試薬(1)および試薬(2)を含んでいる混合液に生物材料を浸漬する。この実施形態において、混合液における試薬(1)の配合量の下限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上または1.0以上でありうる。この実施形態において、混合液における試薬(1)の配合量の上限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、3.0以下、2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下または1.0以下でありうる。
一実施形態において、透明化方法は、試薬(2)および試薬(3)を含んでいる混合液に生物材料を浸漬する。この実施形態において、混合液における試薬(3)の配合量の下限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上または1.0以上でありうる。この実施形態において、混合液における試薬(3)の配合量の上限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下または1.0以下でありうる。
一実施形態において、透明化方法は、試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を含んでいる混合液に生物材料を浸漬する。この実施形態において、混合液における試薬(1)の配合量の下限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上または1.0以上でありうる。この実施形態において、混合液における試薬(1)の配合量の上限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下または2.0以下でありうる。この実施形態において、混合液における試薬(3)の配合量の下限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上または1.0以上でありうる。この実施形態において、混合液における試薬(3)の配合量の上限は、試薬(2)の重量を1.0とすると、3.0以下、2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下または1.0以下でありうる。
好ましい実施形態において、混合液は試薬(1)~(3)を含んでおり、試薬(1)は2-o-トリルエタノールであり、試薬(2)はクロロジメチルアセタミドであり、試薬(3)はエチレングリコールである。この実施形態では、試薬(1)~試薬(3)に該当する他の試薬は混合液に含まれていない。この実施形態において、混合液に含まれている各試薬の重量比は、試薬(1):試薬(2):試薬(3)=(0.5~1.5):1.0:(0.25~1.25)でありうる。好ましくは、混合液に含まれている各試薬の重量比は、試薬(1):試薬(2):試薬(3)=(0.75~1.0):1.0:(0.5~1.0)でありうる。
他の好ましい実施形態において、試薬(1)は2-o-トリルエタノールおよびベンジルアミンであり、試薬(2)は1-メチル-2-ピロリドンおよびテトラメチレンスルホキシドであり、試薬(3)はエチレングリコールである。この実施形態では、試薬(1)~試薬(3)に該当する他の試薬は混合液に含まれていない。この実施形態において、混合液に含まれている各試薬の重量比は、2-o-トリルエタノール:ベンジルアミン:1-メチル-2-ピロリドン:テトラメチレンスルホキシド:エチレングリコール=(1.5~2.5):(1.5~2.5):1.0:(2.5~3.5):(1.5~2.5)でありうる。好ましくは、混合液に含まれている各試薬の重量比は、2-o-トリルエタノール:ベンジルアミン:1-メチル-2-ピロリドン:テトラメチレンスルホキシド:エチレングリコール=(1.75~2.25):(1.75~2.25):1.0:(2.25~3.75):(1.75~2.25)でありうる。
さらに他の好ましい実施形態において、試薬(1)はベンジルアミンであり、試薬(2)はテトラメチレンスルホキシドであり、試薬(3)はエチレングリコールである。この実施形態では、試薬(1)~試薬(3)に該当する他の試薬は混合液に含まれていない。この実施形態において、混合液に含まれている各試薬の重量比は、試薬(1):試薬(2):試薬(3)=(1.5~2.5):(1.5~2.5):1.0でありうる。好ましくは、混合液に含まれている各試薬の重量比は、試薬(1):試薬(2):試薬(3)=(1.75~2.25):(1.75~2.25):1.0でありうる。
混合液は、試薬(1)~(3)以外のその他成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。このような成分の例としては、水、界面活性剤が挙げられる。その他成分の合計含有量は、混合液の全重量を基準として、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下でありうる。一実施形態において、混合液における水の含有量は、混合液の全重量を基準として、1重量%以下、0.5重量%以下または0.1重量%以下でありうる。一実施形態において、混合液は、水を含有していない。一実施形態において、混合液における界面活性剤の含有量は、混合液の全重量を基準として、1重量%以下、0.5重量%以下または0.1重量%以下でありうる。一実施形態において、混合液は、界面活性剤を含有していない。
その他成分のさらなる例としては、pH調整剤、浸透圧調整剤が挙げられる。
[1.5.推定作用機序]
本発明の一実施形態に係る方法では、複数の試薬を組合せた混合液に生物材料を浸漬する。これらの試薬は、HSP空間において異なる球の内部または表面に位置している。球(1)、球(2)および球(3)に重複する領域は存在しない。それゆえ、試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)は、物質の溶解性が異なっている。
ところで、生物材料を透明化においては、細胞膜などに含まれている脂質を除去することが重要である。脂質を除去することにより、生物材料の光透過性が向上し、透明化された生物材料が得られることになる。生物材料を構成する脂質には、複数のクラスが存在することが知られている。
このことから、試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)により生物材料から除去される脂質のクラスは、それぞれ異なっていると推定される。本発明の一実施形態に係る方法は、浸漬する試薬を複数種類組合せることによって、より多種の脂質を生物材料から除去できるのだと考えられる。その結果、より迅速に脂質を除去でき、あるいは高い透明化を実現できると考えられる。
この仮説を支持する知見として、生物材料を試薬(1)に浸漬した後の残留液には、トリアシルグリセロール(TG)などの脂質が多く含まれる傾向がある。生物材料を試薬(2)に浸漬した後の残留液には、遊離脂肪酸(FFA)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)などの脂質が多く含まれる傾向がある。生物材料を試薬(3)に浸漬した後の残留液には、ホスファチジルコリンなどの脂質が多く含まれる傾向にある。
ただし、上述の推定作用機序は本発明の一態様を理解するための仮説であり、本発明の範囲を拘束するものではない。
〔2.生物材料を透明化する方法〕
本発明の一態様に係る生物材料を透明化する方法は、特定のハンセン溶解度パラメータを有する試薬の組合せた混合液に、生物材料を浸漬する。一実施形態において、混合液は、試薬(1)および試薬(2)を含んでいる。一実施形態において、混合液は、試薬(2)および試薬(3)を含んでいる。一実施形態において、混合液は、試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を含んでいる。
本発明の一態様は、〔2〕節で説明する方法によって生物材料を透明化する工程を含む、透明化された生物材料の製造方法である。この製造方法は、本技術分野に関連する公知の手法を含んでいてもよい(生体から生物材料を採取する工程、生物材料を固定する工程、生物材料を薄片化する工程など)。
[2.1.生物材料]
本明細書において、生物材料とは、生物由来の材料を一般に表す。生物材料の例としては、個体(ただし、ヒトを除く)、器官、組織、細胞塊、体液が挙げられる。個体の例としては、動植物の成体、幼体、胎仔、胚が挙げられる。器官および組織の例としては、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓が挙げられる。透明化する器官または組織は、当該器官または組織の全部であってもよいし、一部であってもよい。細胞塊の例としては、生物から採取された細胞塊、培養された細胞塊が挙げられる。体液の例としては、血液、唾液、血清、血漿、尿、滑液、髄液が挙げられる。一実施形態において、生物材料は、生体から採取された生物材料である。一実施形態において、生物材料は、ヒト以外の生物に由来する生物材料である。
生物材料は、どのような生物に由来していてもよい。一実施形態において、生物材料は、ヒト由来ではない。一実施形態において、生物材料は、植物由来または動物由来である。動物の例としては、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類が挙げられる。これらの中では、哺乳類が好ましい。哺乳類の例としては、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、非ヒト霊長類など)、愛玩動物(イヌ、ネコなど)、家畜(ウシ、ウマなど)、野生生物、ヒトが挙げられる。
一実施形態において、生物材料は、がん組織である。本願実施例で示すように、特許文献1に開示されている技術によりがん組織を透明化すると、透明化が不充分であったり、透明化に時間を要したりするという難点があることを本発明者らは見出した。同技術と比較すると、本発明の一実施形態に係る方法は、(i)がん組織の透明化の程度が高い、および/または、(ii)がん組織をより迅速に透明化できる。
がん組織は、どのようながんに由来していてもよい(固形がん、血液がんなど)。一実施形態において、がん組織は、固形がんの組織である。一実施形態において、がん組織は、癌腫の組織である。一実施形態において、がん組織は、肉腫の組織である。がんの例としては、腎臓がん、前立腺がん、乳がん、肺がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、頭頸部がん、結腸がん、肝臓がん、大腸がん、食道がん、小腸がん、膀胱がん、脳腫瘍、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、皮膚がんが挙げられる。
[2.2.試薬の混合液への浸漬]
本発明の一実施形態に係る方法は、生物材料を試薬の混合液に浸漬する工程を含む。一実施形態においては、生物材料を試薬(1)および試薬(2)を含んでいる混合液に浸漬する工程を含む。一実施形態においては、生物材料を試薬(2)および試薬(3)を含んでいる混合液に浸漬する工程を含む。一実施形態においては、生物材料を試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を含んでいる混合液に浸漬する工程を含む。
生物材料を試薬(1)および試薬(2)を含んでいる混合液に浸漬する工程において、当該混合液は、試薬(1)および試薬(2)以外の成分を実質的に含んでいなくてもよい。生物材料を試薬(2)および試薬(3)を含んでいる混合液に浸漬する工程において、当該混合液は、試薬(2)および試薬(3)以外の成分を実質的に含んでいなくてもよい。生物材料を試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を含んでいる混合液に浸漬する工程において、当該混合液は、試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)以外の成分を実質的に含んでいなくてもよい。ここで、「実質的に成分Xを含んでいない」とは、成分Xの存在量が、混合液の、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下または0重量%であることを意味する。
本発明の一実施形態に係る方法は、生物材料を上述の試薬の混合液以外の試薬に浸漬する工程を含んでもよい。一実施形態において、生物材料を、上述の試薬の混合液以外の他の透明化試薬に浸漬してもよい。一実施形態においては、生物材料を、上述の試薬の混合液以外の他の透明化試薬に浸漬しない。また、生物材料を透明化試薬以外の試薬に浸漬してもよい。一例として、生物材料を固定液に浸漬してもよい。
生物材料を上述の試薬の混合液に浸漬する時間は、1時間以上が好ましく、4時間以上がより好ましい。浸漬時間が上述の範囲であれば、生物材料を充分に透明化できる。生物材料を上述の試薬の混合液に浸漬する時間は、8時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましい。浸漬時間が上述の範囲であれば、従来技術(特許文献1に開示された技術など)よりも迅速に生物材料を透明化できていると言える。
[2.3.透明化の程度の評価]
本明細書において、生物材料の透明化の程度は、透明化処理を施す前後におけるサンプルの透明度の比較によって規定する。サンプルとして組織片を採用する場合は、「透明化処理後にサンプルを透過する光の相対強度-透明化処理前にサンプルを透過する光の相対強度」を透明化の程度(透明化スコア)とすることができる。この場合、透明化スコアが高いほど、透明化の程度が高いと言える。透明化スコアの具体的な算出方法の例は、実施例1を参照。透明化スコアは、0超が好ましく、15以上がより好ましく、24以上がさらに好ましい。透明化スコアの上限値は、例えば、80以下とすることができる。
[2.4.透明化した生物材料の利用]
透明化した生物材料は、例えば、顕微鏡観察に利用できる。顕微鏡観察に先立って、生物材料に可視化処理を施してもよい(染色、マーキングなど)。可視化処理は、透明化処理前に施してもよいし、透明化処理中に施してもよいし、透明化処理後に施してもよい。可視化処理を施すことで、顕微鏡観察による生体材料の解析が容易になる。
蛍光タンパク質を用いて可視化処理を施す場合には、透明化処理に先立って、生きた状態の生物材料に蛍光タンパク質遺伝子を導入して、当該蛍光タンパク質を発現させればよい。
化学物質(蛍光化学物質など)を注入して可視化処理を施す場合には、透明化処理前または透明化処理中の生物材料に、当該化学物質を注入することが好ましい。もっとも、透明化処理後の生物材料に、当該化学物質を注入してもよい。
顕微鏡観察では、通常、光学顕微鏡を使用する。光学顕微鏡の種類は、特に限定されない。顕微鏡観察においては、三次元超分解顕微鏡技術(STED、3D PALM、FPALM、3D STORM、SIMなど)を適用してもよい。顕微鏡観察においては、1光子共焦点顕微鏡またはシート照明マクロズーム顕微鏡を用いることが好ましい。もっとも、多光子励起型(一般的には2光子励起型)の光学顕微鏡技術を用いて顕微鏡観察をしてもよい。
本発明の一態様は、〔2〕節で説明された方法により生体から採取された生物材料を透明化する工程と、当該生物材料に含まれる標的に可視化処理を施す工程と、を含む生物材料の検査を補助する方法(または、生物材料を検査する方法)である。可視化される標的の例としては、がん細胞、免疫細胞、神経細胞が挙げられる。あるいは、これらの細胞を示すマーカー(タンパク質、脂質、糖鎖、核酸など)を標的としてもよい。標的を可視化する方法は、上述した通りである。可視化処理は、透明化処理前に施してもよいし、透明化処理中に施してもよいし、透明化処理後に施してもよい。生物材料の検査を補助する方法(または、生物材料を検査する方法)は、可視化処理を施した生物材料を用いて病理検査を行う工程を含んでもよい。病理検査を行う具体的な方法は、本技術分野において周知であるため、説明を省略する。
本発明の一態様は、〔2〕節で説明された方法により生体から採取された生物材料を透明化する工程と、当該生物材料に含まれる標的に可視化処理を施す工程と、を含む疾患の診断方法である。この診断方法は、可視化処理を施した生物材料を用いて病理検査を行う工程を含んでもよい。診断方法によって診断される疾患の例としては、がん、炎症性疾患、神経変性などが挙げられる。
〔3.生物材料を透明化するためのキット〕
本発明の一態様は、生物材料を透明化するためのキットである。一実施形態において、キットは、試薬(1)および試薬(2)を備えている。一実施形態において、キットは、試薬(2)および試薬(3)を備えている。一実施形態において、キットは、試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を備えている。試薬(1)~(3)の具体例は、〔1〕節の[試薬(1)]~[試薬(3)]の項目に記載した通りであるため、本項目では記載を省略する。キットにおいて、試薬(1)~(3)は、それぞれ分離された状態で格納されていてもよいし、一部または全部が混合状態で格納されていてもよい。
本明細書において、「キット」とは、特定の要素(試薬(1)~(3)など)が格納されている容器(ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えているパッケージを表す。ここで、キットがある要素を「備えている」とは、キットを構成する容器のうち1つ以上に、当該要素が格納されている状態を表す。キットは、複数の異なる要素を1つにまとめて梱包したパッケージであってもよい。この組成物は、複数の異なる容器に格納されていてもよい。キットが複数の要素を備えている場合、複数の構成要素は、同一の容器に混合して格納されていてもよいし、異なる容器に別々に格納されていてもよい。
キットは、指示書を備えていることが好ましい。指示書は、キットに備えられている各要素を使用して、生物材料を透明化する方法を説明する。指示書は、紙などの媒体に記されていてもよいし、電子媒体(磁気テープ、コンピュータ読取り可能ディスク、CD-ROMなど)に格納されていてもよいし、通信によりインターネットから取得する形態であってもよい。
キットは、稀釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を格納した容器を備えていてもよい。キットは、生物材料を透明化するために必要な器具を備えていてもよい。
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
がん組織のスライス標本を使用して、各種試薬を1種類のみ使用した場合の透明化作用を検討した。具体的な手順は、以下の通りである。
1. ヒトがん組織(ヒト大腸がん細胞株HCT116をマウスに移植したもの)を適当な大きさに切出し、厚さ:2mmのスライス標本を作製した。
2. 得られたスライス標本を、3mLの各種試薬に浸漬してインキュベートした。インキュベート条件は、37℃にて24~48時間とした。
3. 色付きのフィルム上にスライス標本を載置し、当該フィルムの下側から光を照射した状態で画像を撮像した。
4. 得られた画像を画像処理ソフト(Image J)で処理し、モノクロ画像とした。このモノクロ画像に基づいて、一定面積における透過光の平均強度を求めた。
5. 「(スライス標本における透過光の平均強度/バックグラウンドにおける透過光の平均強度)×100」の値を、透明化度とした。さらに、それぞれの試薬に関して、「透明化処理前の透明化度-透明化処理後の透明化度」で表される値を、透明化スコアとした。透明化スコアが大きいほど、各試薬の透明化作用が大きいことになる。
結果を表1に示す。表中、「スコア」の項目は、透明化スコアの相対評価を表している。それぞれの記号の意味は、下記の通りである。
- :透明化スコアが0.1未満。
+ :透明化スコアが0.1以上15未満。
++ :透明化スコアが15以上24未満。
+++:透明化スコアが24以上。
表中、「球」の項目は、各試薬がHSP空間において球(1)、球(1b)、球(2)、球(2a)、球(2b)、球(3)または球(3b)に含まれるか否かを表している。この項目が1である試薬は球(1)の内部または表面に位置している。この項目が1bである試薬は球(1b)の内部または表面に位置している。この項目が2である試薬は球(2)の内部または表面に位置している。この項目が2aである試薬は球(2a)の内部または表面に位置している。この項目が2bである試薬は球(2b)の内部または表面に位置している。この項目が3である試薬は球(3)の内部または表面に位置している。この項目が3bである試薬は球(3b)の内部または表面に位置している。
Figure 2022168842000002
Figure 2022168842000003
Figure 2022168842000004
〔実施例2〕
がん組織のスライス標本を使用して、複数の試薬を組合せた混合液の透明化作用を検討した。具体的には、がん組織のスライス標本を表2に記載の混合液に浸漬した以外は、実施例1と同様に実験を行った。試薬(1)としては、2-フェノキシエタノールおよび2-o-トリルエタノールを使用した。試薬(2)としては、1-メチル-2ピロリドン、ジメチルスルホキシドおよびクロロジメチルアセタミドを使用した。試薬(3)としては、エチレングリコールを使用した。
Figure 2022168842000005
Figure 2022168842000006
[結果]
表2に示されている通り、(i)試薬(1)および試薬(2)、(ii)試薬(2)および試薬(3)、または、(iii)試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)の組合せを含んでいる混合液に浸漬することにより、生物材料(がん組織片)が透明化された。このときの透明化スコアは30以上であり、従来技術(特許文献1に記載された技術)と同等またはそれ以上の透明化作用を有していることになる。
〔実施例3〕
試薬(3)として、エチレングリコールに代えて乳酸(l)を使用し、透明化作用を検討した。具体的には、がん組織のスライス標本を表3に記載の混合液に浸漬した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
Figure 2022168842000007
[結果]
表3に示すように、エチレングリコールの代わりに乳酸(l)を配合した混合液も、高い透明化作用を有していた。実施例1~3の結果から、試薬(3)に該当する他の試薬を採用した場合でも、本発明の一実施形態に係る方法によれば、高い透明化作用を得られることが示唆される。
〔実施例4〕
試薬(1)として2-o-トリルエタノールおよびベンジルアミン、試薬(2)として1-メチル-2-ピロリドンおよびテトラメチレンスルホキシド、試薬(3)としてエチレングリコールを含んでいる混合液を調製した。各成分の重量比は、2-o-トリルエタノール:ベンジルアミン:1-メチル-2-ピロリドン:テトラメチレンスルホキシド:エチレングリコール=2:2:1:3:2であった。したがって、混合液全体の重量比は、試薬(1):試薬(2):試薬(3)=2:2:1であった。この混合液を透明化試薬Aと称する。透明化試薬Aによる種々の生物材料の透明化作用を検討した。
[実施例4a]
生物材料として、ヒトがん組織(ヒト大腸がん細胞株HCT116をマウスに移植したもの)のスライス(厚さ:2mm)を選択し、透明化試薬Aによる透明化作用を検討した。比較対象とする従来技術としては、市販の動物透明化試薬「CUBIC-L」(東京化成工業株式会社製)を使用した。CUBIC-Lは、特許文献1に開示された技術を利用しているアミノアルコール系試薬である。図3および図4から分かるように、本発明の一実施形態に係る方法は、従来技術よりも、透明化の程度が高く、迅速に透明化が進んだ。
[実施例4b]
生物材料として、ヒトがん組織(ヒト大腸がん細胞株HCT116をマウスに移植したもの)の細胞塊(最大径:約10mm)を選択し、透明化試薬Aによる透明化作用を検討した。比較対象とする従来技術としては、市販の動物透明化試薬「CUBIC-L」(東京化成工業株式会社製)を使用した。図5および図6から分かるように、本発明の一実施形態に係る方法は、従来技術よりも、透明化の程度が高く、迅速に透明化が進んだ。
[実施例4c]
実施例3bで透明化したがん細胞塊を血管平滑筋マーカーで染色し、蛍光顕微鏡(製品名:MVX10―LSFM、オリンパス株式会社製)で観察した。図7に示すように、良好な染色像が得られ、3Dイメージングが可能であった。
[実施例4d]
生物材料として、ヒト乳がんサンプル(カスタム品、株式会社ケー・エー・シー製)を選択し、透明化試薬Aによる透明化作用を検討した。比較対象とする従来技術としては、市販の動物透明化試薬「CUBIC-L」(東京化成工業株式会社製)を使用した。図8から分かるように、本発明の一実施形態に係る方法は、従来技術よりも、透明化の程度が高く、迅速に透明化が進んだ。
[実施例4e]
実施例3bで透明化したヒト乳がんサンプルをKi67抗体で染色し、蛍光顕微鏡(製品名:MVX10―LSFM、オリンパス株式会社製)で観察した。図9に示すように、良好な染色像が得られ、3Dイメージングが可能であった。
[実施例4f]
生物材料として種々の非がん組織を選択し、透明化試薬Aによる透明化作用を検討した。比較対象とする従来技術としては、市販の動物透明化試薬「CUBIC-L」(東京化成工業株式会社製)を使用した。図10はマウスの脳、図11はマウスの心臓、図12はマウスの肺、図13はマウスの肝臓、図14はマウスの腎臓を透明化した結果である。これらの図から分かるように、本発明の一実施形態に係る方法によれば、非がん組織においても、従来技術と同等以上に生物材料を透明化できることが分かる。このことから、本発明の一実施形態係る方法は、広汎な生物材料に応用できることが示唆される。
本発明は、生物材料の観察などに利用できる。より具体的な例を挙げると、本発明は、がんの病理診断などに利用できる。

Claims (4)

  1. 生物材料を透明化する方法であって、
    (i)下記試薬(1)および下記試薬(2)
    (ii)下記試薬(2)および下記試薬(3)
    (iii)下記試薬(1)、下記試薬(2)および下記試薬(3)
    のいずれかの組合せを含んでいる混合液に、上記生物材料を浸漬する工程を含む、方法:試薬(1):HSP空間において、点(δD=18.97,δP=1.61,δH=13.92)を中心とし、半径が5.7である球(1)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
    試薬(2):HSP空間において、点(δD=17.77,δP=14.08,δH=7.57)を中心とし、半径が3.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
    試薬(3):HSP空間において、点(δD=16.26,δP=8.87,δH=23.96)を中心とし、半径が4.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬。
  2. 上記試薬(1)、上記試薬(2)および上記試薬(3)を含んでいる混合液に、上記生物材料を浸漬する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 上記生物材料は、がん組織である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 生物材料を透明化するためのキットであって、
    (i)下記試薬(1)および下記試薬(2)
    (ii)下記試薬(2)および下記試薬(3)
    (iii)下記試薬(1)、下記試薬(2)および下記試薬(3)
    のいずれかの組合せを備えている、キット:
    試薬(1):HSP空間において、点(δD=18.97,δP=1.61,δH=13.92)を中心とし、半径が5.7である球(1)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
    試薬(2):HSP空間において、点(δD=17.77,δP=14.08,δH=7.57)を中心とし、半径が3.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬;
    試薬(3):HSP空間において、点(δD=16.26,δP=8.87,δH=23.96)を中心とし、半径が4.8である球(2)の内部または表面に位置する1種類以上の試薬。
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