JP2022165056A - 浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法および浄水処理原水の膜ろ過処理方法 - Google Patents

浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法および浄水処理原水の膜ろ過処理方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022165056000001
【課題】浄水処理において、比較的精度良く膜閉塞挙動を予測しうる膜の閉塞速度の予測方法を提供すること
【解決手段】浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法であって、ろ過膜の初期閉塞を表現する第一数式項と、初期閉塞に次いで生じる二次閉塞を表現する第二数式項と、を有する膜閉塞モデルを用いてろ過膜の膜閉塞速度を予測することを特徴とする、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法である。これにより、初期閉塞を第一数式項で表現し、二次閉塞を第二数式項で表現する膜閉塞モデルを用いることで、実際の浄水処理の膜閉塞挙動、すなわち、膜閉塞速度を従来よりも精度良く予測することができる。よって、膜の洗浄時期や交換時期のスケジュールをより正確に把握することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法および浄水処理原水の膜ろ過処理方法に関し、特に、膜閉塞モデルを用いた浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法および浄水処理原水の膜ろ過処理方法に関する。
従来、浄水処理では固液分離プロセスとして砂ろ過が主流であったが、近年では、より高度な固液分離が期待できる精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)を用いた低圧膜ろ過法の導入が進んでいる。
しかし、水道原水などを膜でろ過すると、膜供給水中のバイオポリマーやフミン物質などの有機物により膜汚染が生じ、また、色度除去のための膜前処理として凝集処理を行う場合には、凝集剤に由来するアルミニムにより、これもまた同じように膜汚染が生じることが発明者の検討によりわかってきた。
この膜汚染により膜差圧が上昇するため、長期間の安定運転を行うためには、安定運転が可能な膜ろ過流束の選択、また、運転継続ができない膜差圧になった場合、膜の薬品洗浄が必要となるが、その洗浄間隔がどの程度になるかを事前に把握する事はランニングコストを算出する上で非常に重要である。
膜汚染速度及び薬品洗浄間隔を正確に把握することを目的とした従来法として、特許文献1は、実プラントに使用している中空糸膜と膜仕様(膜材質、膜孔径)が全く同じ中空糸膜を用いてミニモジュールを作製し、両者を比較する事により実験的に最大膜ろ過流束を推定する事を提案する。
非特許文献1は、完全閉塞、標準閉塞、中間閉塞およびケーキろ過の4つの膜閉塞モデルを用いて解析する技術を開示する。
特許文献2は、膜分離活性汚泥法(MBR)の運転管理に使用する膜処理制御システム及び膜処理制御方法が提案されている。この制御システムは、MBRの運転を行いながら膜差圧の変化を連続的に解析しながら制御する。
特許文献3には、中空糸限外ろ過膜(UF膜)の膜閉塞が完全閉塞モードと標準閉塞モードの組み合わせで生じるとした膜閉塞モデルが提案されている。
特許第5072366号公報 特開2020-199472号公報 特開2001-327967号公報
入谷英司著、「膜ろ過における膜細孔閉塞のモデル化と評価」、化学工学論文集第35巻第1号pp.1-11、2009年、公益社団法人 化学工学会発行
しかし、特許文献1によれば、ミニモジュールの実験結果と導かれる膜ろ過流束の関係に関する理論的説明に欠き、膜汚染の影響因子を説明するに至っていない。
特許文献2の膜処理制御システムは、その時その時の閉塞モードを四つの閉塞モードからコンピューターのアルゴリズムにより判断するので閉塞形態の変化に追従できるようであるが、運転中の将来の閉塞挙動を予想するものであり、膜ろ過装置を設計する際に必要な膜の閉塞速度を与えるものではない。
特許文献3で提案された膜閉塞モデルでは、モデルに入力する水質項目にフミン物質の指標であるE260があり、膜閉塞原因物質としてフミン物質を言及するに止めている。しかしながら、近年の分析技術の進歩により、浄水処理における有機性の膜閉塞は、フミン物質よりも高分子のバイオポリマーが支配的である事が多くの研究者から報告されており、その点で実際の系との関係で特許文献3で提案された膜閉塞モデルには矛盾がある。
また、非特許文献1のように完全閉塞、標準閉塞、中間閉塞およびケーキろ過の4つの膜閉塞モデルを用いて解析することは多くの研究者、技術者によって行われているが、実際の系では、4つのろ過膜閉塞モデル(完全閉塞、標準閉塞、中間閉塞、ケーキろ過)のような理想的なろ過現象ではなく、複合的な閉塞ろ過が生じており、閉塞状態が理想的で離散的なろ過膜閉塞モデルで表現する事は難しい。
実際の膜閉塞挙動をろ過膜閉塞モデルを用いて予想する場合、比較的安定して膜差圧が上昇する一部の期間を合致する膜閉塞モデルを利用して予想するケースも見受けられるが、膜汚染が激しい原水などへの適用は極めて困難である。
さらに、昨今の膜ろ過設備は中・大規模化の傾向にあり、それらの浄水場の多くは、色度などの溶解性物質除去を目的として膜前処理として凝集処理を行う凝集膜ろ過法を採用している。その場合、有機物汚染もさることながら、主要な膜閉塞物質は凝集剤由来のアルミニウム汚染となることが発明者の検討によりわかってきたところであるが、従来の技術では、それらに対するアプローチは認められない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、浄水処理において、比較的精度良く膜閉塞挙動を予測しうる膜の閉塞速度の予測方法を提供することにある。
発明者は、上記目的達成に向け、膜閉塞状態を観察したところ、バイオポリマーを主成分とした有機物を主な閉塞物質とする見かけのケーキ層が形成し(このケーキ層の形成を初期閉塞という)、次いで、比較的小さいバイオポリマーやフミン物質のような有機性のナノ粒子あるいは無機凝集剤を使用する場合には残留する凝集剤に由来するアルミニウムナノ粒子が主成分となり前記みかけのケーキ層の空隙に汚染物質が堆積する二次閉塞が生じることを見出した。
そして、初期閉塞と二次閉塞では汚染の主成分物質の構成が異なるため、閉塞挙動にも違いが生じることを見出し、その現象を膜閉塞モデルで数学的に表現できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、上記目的は、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法であって、前記ろ過膜の初期閉塞を表現する第一数式項と、前記初期閉塞に次いで生じる二次閉塞を表現する第二数式項と、を有する膜閉塞モデルを用いて前記ろ過膜の膜閉塞速度を予測することを特徴とする、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法により達成されることが見いだされた。
この構成によれば、初期閉塞、すなわち、バイオポリマーを主成分とした有機物を主な閉塞物質とする見かけのケーキ層の形成を第一数式項で表現し、比較的小さいバイオポリマーやフミン物質のような有機性のナノ粒子および残留する凝集剤に由来するアルミニウムナノ粒子に起因する二次閉塞を第二数式項で表現する膜閉塞モデルを用いることで、実際の浄水処理の膜閉塞挙動、すなわち、膜閉塞速度を従来よりも精度良く予測することができる。
本発明に係る浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)膜閉塞モデルが、以下の数式(1)
Figure 2022165056000002
(式(1)中、Pはろ過時膜差圧(m)を表し、Pは初期膜差圧(m)を表し、xは単位膜面積当たりのろ過水量(m)を表し、Vsは任意の単位膜面積当たりのろ過水量(m)を表し、Kpは初期閉塞に関与する汚染物質のみかけケーキろ過定数(1/m)を表し、Kpiは初期閉塞の膜閉塞定数(1/m)を表し、Ksは二次閉塞に関与する汚染物質のみかけケーキろ過定数(1/m)を表し、Ksiは二次閉塞の膜閉塞定数(1/m)を表す。)で表される。
また、上記目的は、本発明の浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法によって得られたろ過膜の膜閉塞速度により膜ろ過の条件を決定することを特徴とする浄水処理原水の膜ろ過処理方法によっても達成することができる。
本発明によれば、初期閉塞、すなわち、バイオポリマーを主成分とした有機物を主な閉塞物質とする見かけのケーキ層の形成を第一数式項で表現し、比較的小さいバイオポリマーやフミン物質のような有機性のナノ粒子および残留する凝集剤に由来するアルミニウムナノ粒子に起因する二次閉塞を第二数式項で表現する膜閉塞モデルを用いることで、実際の浄水処理の膜閉塞挙動、すなわち、膜閉塞速度を従来よりも精度良く予測することができる。よって、膜の洗浄時期や交換時期のスケジュールをより正確に把握することができる。
実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun1の条件での膜閉塞モデルとの対比図である。縦軸は初期膜差圧P(m)に対するろ過時膜差圧P(m)の比P/Pであり、横軸は任意の単位膜面積当たりのろ過水量Vs(m/m)を示す。 実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun2の条件での膜閉塞モデルとの対比図であり、縦軸および横軸は図1と同じである。 実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun3の条件での膜閉塞モデルとの対比図であり、縦軸および横軸は図1および2と同じである。 実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun4の条件での膜閉塞モデルとの対比図であり、縦軸および横軸は図1~3と同じである。
<浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法>
本発明は、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法であって、ろ過膜の初期閉塞を表現する第一数式項と、初期閉塞に次いで生じる二次閉塞を表現する第二数式項と、を有する膜閉塞モデルを用いてろ過膜の膜閉塞速度を予測することを特徴とする。
[膜供給水]
本発明は、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法であるから、ろ過膜に供される膜供給水は浄水処理に供される水道原水であり、例えば、河川水、地下水、ダム湖水、湖沼水、伏流水が挙げられる。
これら膜供給水が清澄である場合には直接ろ過膜に供給されてもよいが、供給水中の濁度成分や色度除去のため、凝集処理を行うことが好ましい。
凝集処理は、凝集剤を添加することにより行われる。凝集剤としては、アルミニウム系無機凝集剤(ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)など)や、鉄系無機凝集剤(塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄など)が挙げられ、アルミニウム系無機凝集剤であることが好ましい。
さらに、浄水処理の分野で慣用される高分子凝集剤が添加されていてもよい。
[ろ過膜]
本発明で使用されるろ過膜はどのようなものであってもよいが、浄水処理の目的から精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)が用いられることが好ましい。その材質も高分子膜、無機膜のいずれの場合でも構わないが、高濁度原水への対応や材質の強度の観点から、浸漬型膜モジュールが使用できる高分子膜、特に、物理的にも化学的にも強いPVDFを材質とする膜が好ましく、また処理効率の観点からMF膜が好ましい。ろ過膜を含む膜ろ過装置の構造は、ケーシング型でも槽浸漬型でもよい。
[膜閉塞モデル]
次に膜閉塞モデルについて説明する。従来の膜閉塞モデルでは、膜表面は平面と仮定しているが、実際の膜は膜孔径と同程度の凹凸があり、しいて表現すれば、膜表面ではなく、“膜表層”と言える。
発明者は、鋭意、膜閉塞状態を観察したところ、膜閉塞は、この凹凸に汚染物質が堆積し、膜表層でケーキ層様(みかけケーキろ過現象によるみかけケーキ層の形成)に生じる事を見出した。
さらに、発明者が検討したところ、膜閉塞は、最初に、主に初期閉塞(Primary Blocking:P閉塞)と呼ぶみかけケーキ層が形成し、次いで、主にみかけケーキ層の空隙に汚染物質が堆積する二次閉塞(Secondary Blocking:S閉塞)が生じる事を見出した。従って、みかけケーキ層の比抵抗は、ろ過水量の増加と共に変化する。
本発明における膜閉塞モデルでは、基本的に、初期閉塞と二次閉塞がそれぞれ異なる成分から生じる二成分系の膜閉塞を仮定する。
これは、初期閉塞がバイオポリマーを主成分とした主に有機物が閉塞物質となり、二次閉塞がそれよりも小さい有機物、または、凝集膜ろ過法の場合であれば、残留凝集剤に由来するアルミニウムナノ粒子が主成分というように、主成分物質の構成が明確に異なるため、閉塞挙動にも違いが生じる事を見出し、その現象を膜閉塞モデルで数学的に表現するためである。
この膜閉塞モデルは、好ましくは、以下の数式(1)
Figure 2022165056000003
(式(1)中、Pはろ過時膜差圧(m)を表し、Pは初期膜差圧(m)を表し、xは単位膜面積当たりのろ過水量(m)を表し、Vsは任意の単位膜面積当たりのろ過水量(m)を表し、Kpは初期閉塞に関与する汚染物質のみかけケーキろ過定数(1/m)を表し、Kpiは初期閉塞の膜閉塞定数(1/m)を表し、Ksは二次閉塞に関与する汚染物質のみかけケーキろ過定数(1/m)を表し、Ksiは二次閉塞の膜閉塞定数(1/m)を表す。)で表される。
ここで、初期閉塞が疑似定常状態に至るまでのろ過水量をVp(m)とし、ろ過開始からVpまでは、二次閉塞に関与する汚染物質の一部は、みかけ初期閉塞に含まれると仮定すると、数式(1)は以下の数式(2)
Figure 2022165056000004
のように表せる。
数式(2)を積分すると、以下の数式(3)
Figure 2022165056000005
で表現できる。
一方、上記仮定を考えない場合、数式(1)を積分すると、以下の数式(4)
Figure 2022165056000006
が得られる。
新品膜、もしくは薬品洗浄回復程度が高い膜は、数式(3)を用いるが、そうでない場合は、ろ過開始初期から二次閉塞も進行するので、数式(4)で膜閉塞過程が導かれる。
次に、以上の数式において、Kp、Kpi、KsおよびKsiの4つの定数の決定方法について説明する。これら4つの定数を決定するには、使用する膜で膜ろ過試験を行う必要がある。これは、現場試験のようなパイロットレベルでも、ミニモジュールを用いた実験室レベルでも何ら構わない。この膜ろ過試験で得られたデータより、横軸にVs(単位膜面積当たりのろ過水量(m))、縦軸に任意のVsに対するP/P(P:ろ過時膜差圧(m)、P:初期膜差圧(m))をプロットする。
そして、これらデータを数式(1)に当てはめ、R値(決定係数)が最も1に近くなる時のKp、Kpi、KsおよびKsiの値を選定する。
これらの作業は、表計算ソフトなどを利用して回帰分析を行うか、あるいは、表計算ソフトなどを利用してトライアンドエラーでカーブフィッティングを行うのが一番簡単であり実用上便利である。また、以下に示す事項を考慮しながら解析作業を行うと非常に効率的に定数の選定が可能となる。
すなわち、Kpは、初期閉塞(P閉塞)の主な原因物質である膜供給水中のバイオポリマーなどの有機物の存在量を、使用する膜基準のみかけケーキろ過抵抗で表現したものである。
Kpiも初期閉塞の定数であるが、こちらは、膜の特性(材質、孔径、表面開孔率など)によって決まる閉塞し易さの程度を表しており、値の大きい方がみかけ汚染物質保持容量が高く膜差圧が上昇し難い事になる。
数式(1)を積分して得られる数式(3)及び(4)の右辺第二項に示されているKp/Kpiに1を加えた値、すなわち、1+Kp/Kpiは、初期閉塞モードのみで疑似平衡状態となった時に到達する膜差圧と初期膜差圧の比、言い換えると、初期膜差圧の何倍の膜差圧になった時に初期閉塞期が終了するかを示している。
この事から、初期閉塞期終了時付近のP/Pをデータプロットから読み取れば、Kpiは膜により決まるので、おのずと、Kpを選定することができる。
Ksは、膜供給水中の二次閉塞(S閉塞)の原因物質の存在量を使用する膜基準のみかけのケーキろ過抵抗で表した定数である。バイオポリマー成分の中でも比較的小さい成分(100kDa以下)、フミン物質、タンパク様物質などの有機物、凝集処理水中の残留アルミニウムナノ粒子が該当する。
Ksiも二次閉塞の定数であるが、これはKpiと同様に膜の特性に依存する定数である。
特徴的な事は、Ksの構成成分で有機物の割合が高くなると、Ksiの値は小さくなり、二次閉塞のプロットは直線的になる傾向が強い。いわゆる、ケーキろ過のように表現できる。
逆に、凝集処理水のような残留アルミニウムナノ粒子の影響が大きくなると、Ks≒Ksiとなり、数式(1)を積分して得られる数式(3)及び(4)の右辺第三項に示されているKs/Ksi≒1.0と考える事が可能となり、実質的に選定する定数は、Ksiのみとする事ができる。
<浄水処理原水の膜ろ過処理方法>
本発明の浄水処理原水の膜ろ過処理方法は、本発明の浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法によって得られたろ過膜の膜閉塞速度により膜ろ過の条件を決定する。
具体的には、上記浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法の膜閉塞モデルから、所定の膜ろ過条件(水道原水、凝集処理など)におけるろ過膜の閉塞速度を予測し、そこから膜差圧が上限に至る時期、あるいは上限に至る手前の時期をろ過継続時間の限界とする膜ろ過条件を決定するものである。なお、ろ過継続時間の限界に到達した場合には、ろ過膜を洗浄し、あるいは新品のろ過膜に交換し、必要であれば再度洗浄後または交換後のろ過膜で上記膜閉塞モデルを用い、新たにろ過膜の閉塞速度を予測することとなる。
そして、ろ過継続時間を決定することで、例えば、ろ過流束や凝集条件を変動させて半年持たなかったろ過継続時間を半年以上に延長させ、半年以上の洗浄間隔を確保させることも可能となる。
なお、水道原水中の有機物量は季節により変動し、したがって、KsおよびKsiの値も季節により変動する可能性がある。よって、より現実に近い膜ろ過条件を反映させるため、KsおよびKsiの値を定期的に測定し、本発明の膜閉塞モデルに当てはめてろ過膜の閉塞速度を算出し直し、ろ過継続時間の限界を再設定することが好ましい。
なお、上述のとおり、凝集処理水のような残留アルミニウムナノ粒子の影響が大きい場合には、Ks≒Ksiとなることから、定期的に測定する値はKsiのみとすることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
1.膜ろ過試験
パイロットスケール規模の膜ろ過試験を約4か月程度行い、結果を本発明の浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法の膜閉塞モデルを用いて解析した。
試験には、有機物濃度、色度の高い実際の水道原水(河川水)を用いた。
試験期間中の原水の水質(平均値)は、濁度:10.4度、色度:6.3度、TOC:3.6mg/Lであった。
処理は、水道原水に凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PACl)を注入率30mg/L(平均値)程度で添加して3分間の急速撹拌を行い(凝集処理)、得られた凝集処理水を膜供給水として膜ろ過に供する凝集膜ろ過処理であった。
ろ過膜は、三菱ケミカル社製のPVDF膜(公称孔径0.05μm)を用いた膜面積6mの膜エレメントを使用し、浸漬膜とした。浸漬膜を利用する事により、高濁度への対応も可能としている。
膜ろ過の運転条件は、膜ろ過流束:1.0m/日とし、30分間隔で物理洗浄を1分間(空気洗浄と処理水逆洗の併用)行った。処理水逆洗時には5mg/Lの塩素(NaClO)を添加した。
2.膜ろ過試験の結果への本発明の膜閉塞モデルのフィッティング
上記数式(1)で表される膜閉塞モデルに、以下の表1に示す4つの定数(Kp、Kpi、KsおよびKsi)の条件をRun1からRun4の順に入力していき、膜ろ過試験の結果をより正確に表現できる4つの定数を決定した。なお、数式(1)は、表計算ソフトを用いて計算し、膜ろ過試験の結果と比較した。
Figure 2022165056000007
図1は、実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun1の条件での膜閉塞モデルとの対比図である。縦軸は初期膜差圧P(m)に対するろ過時膜差圧P(m)の比P/Pであり、横軸は任意の単位膜面積当たりのろ過水量Vs(m/m)を示す。
図示のように、初期閉塞と二次閉塞の和として表される本発明の膜閉塞モデル(菱形符号)の予測値は膜ろ過試験の結果より小さく、仮定している定数を大きくする必要があることがわかる。
図2は、実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun2の条件での膜閉塞モデルとの対比図であり、縦軸および横軸は図1と同じである。図示のように、Run2の条件ではKpを0.5から1.0に変更したところ、初期閉塞の予測値が上昇し、膜ろ過試験の初期において、その閉塞速度が本発明の膜閉塞モデル(菱形符号)の予測値と一致し、KpとKpiを決定することができた。
図3は、実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun3の条件での膜閉塞モデルとの対比図であり、縦軸および横軸は図1および2と同じである。図示のように、KsとKsiを0.03に上昇させると、膜ろ過試験の結果よりも本発明の膜閉塞モデル(菱形符号)の予測値が大きくなり、KsとKsiの定数の仮定値が大きいことが分かり、KsとKsiの値は0.02~0.03の間にあると予想された。
図4は、実施例の膜ろ過試験の結果と本発明のRun4の条件での膜閉塞モデルとの対比図であり、縦軸および横軸は図1~3と同じである。図示のように、KsとKsiを0.025と仮定したところ、膜ろ過試験の結果と本発明の膜閉塞モデル(菱形符号)の予測値が一致した。
以上のように、凝集膜ろ過処理により浄水処理を行った膜ろ過試験(丸符号)の膜差圧上昇の様子を、初期閉塞(三角符号)と二次閉塞(四角符号)の組み合わせである本発明の膜閉塞モデル(菱形符号)により良好に表現できることがわかった。
なお、Vsが90m/mより大きくなる期間で実証試験の測定値と膜閉塞モデルの予測値に解離が観察されるが、これは、膜閉塞の進行に影響を受け物理洗浄の効果がやや不良気味となり、膜差圧の挙動に本来物理洗浄で回復するケーキ層のろ過抵抗が上乗せされたためである。
さらに、膜ろ過試験の膜差圧上昇を正確に表現する膜ろ過閉塞モデルが定まれば、膜ろ過の運転可能な膜差圧の上限と膜ろ過流束を設定することで、ろ過膜のろ過継続時間を算出することができる。したがって、例えば、膜ろ過流束条件を変動させた場合に、ろ過継続時間がどのように変動するかを予測することができる。よって、本発明の膜閉塞モデルを用いた本発明の浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度予測方法によれば、簡単に膜ろ過設備の運転条件を決定することができる。

Claims (3)

  1. 浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法であって、
    前記ろ過膜の初期閉塞を表現する第一数式項と、前記初期閉塞に次いで生じる二次閉塞を表現する第二数式項と、を有する膜閉塞モデルを用いて前記ろ過膜の膜閉塞速度を予測することを特徴とする、浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法。
  2. 前記膜閉塞モデルが、以下の数式(1)
    Figure 2022165056000008
    (式(1)中、Pはろ過時膜差圧(m)を表し、Pは初期膜差圧(m)を表し、xは単位膜面積当たりのろ過水量(m)を表し、Vsは任意の単位膜面積当たりのろ過水量(m)を表し、Kpは初期閉塞に関与する汚染物質のみかけケーキろ過定数(1/m)を表し、Kpiは初期閉塞の膜閉塞定数(1/m)を表し、Ksは二次閉塞に関与する汚染物質のみかけケーキろ過定数(1/m)を表し、Ksiは二次閉塞の膜閉塞定数(1/m)を表す。)で表されることを特徴とする請求項1に記載の浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法。
  3. 請求項1または2に記載の浄水処理用のろ過膜の膜閉塞速度の予測方法によって得られたろ過膜の膜閉塞速度により膜ろ過の条件を決定することを特徴とする浄水処理原水の膜ろ過処理方法。
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