JP7033841B2 - 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法 - Google Patents

逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7033841B2
JP7033841B2 JP2016143052A JP2016143052A JP7033841B2 JP 7033841 B2 JP7033841 B2 JP 7033841B2 JP 2016143052 A JP2016143052 A JP 2016143052A JP 2016143052 A JP2016143052 A JP 2016143052A JP 7033841 B2 JP7033841 B2 JP 7033841B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
membrane
tep
insoluble
reverse osmosis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016143052A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018012061A (ja
Inventor
秀人 松山
太郎 三好
益啓 林
和彰 島村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Swing Corp
Original Assignee
Swing Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Swing Corp filed Critical Swing Corp
Priority to JP2016143052A priority Critical patent/JP7033841B2/ja
Publication of JP2018012061A publication Critical patent/JP2018012061A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7033841B2 publication Critical patent/JP7033841B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)

Description

特許法第30条第2項適用 平成28年4月18日にウェブサイト「http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0011916416301345」で公開された論文「Desalination、390巻、2016年、第72頁~第80頁」にて公開
本発明は、逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法、特に、直接供給水の膜閉塞性を測定することなく逆浸透膜に供給される供給水の膜閉塞性を評価する逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法に関する。
従来から、海水、汽水などの塩分を含む水の脱塩処理や、電子産業や飲料産業における用水処理や、下水再生処理のために逆浸透膜が広く普及している。逆浸透膜は運転を継続するにつれて、供給水中の有機物や無機物により、膜面および膜モジュール内流路の閉塞が起こり、膜の透水性が悪化するファウリングが生じる。
膜の透水性が著しく悪化した場合、処理装置を停止して、膜の洗浄や交換を行う必要がある。
逆浸透膜を用いて水処理を行う場合、逆浸透膜に供給される供給水の膜閉塞性、すなわち、供給水がどのくらい逆浸透膜を閉塞させる潜在力を有しているかを、ASTM D4189に定義されているSilt Density Index(SDI)の値により評価することが多い。SDI値は逆浸透膜供給水を0.45μmの精密ろ過膜でろ過を行った際の、ろ過時間の変化を基に算出される値である。例えば、SDI値が4以下となるように、逆浸透膜の前段の処理方式を選択する、あるいは前段の処理の運転条件を変更するなどの対策をとることが行われている。このSDI値の推奨値は膜メーカーによって、膜の種類に合わせて設定されることが多い。
しかしながら、逆浸透膜供給水のSDI値を推奨値以下に保っていても、膜のファウリングが顕著に生じるケースもある。この理由として、SDI値の測定時に考慮される供給水中の物質は、概ね0.45μm以上の物質であり、0.45μm以下の溶存有機物などが考慮されていないことが考えられる。また、0.45μm以上の物質には、逆浸透膜のファウリングに寄与する物質も、寄与しない物質も併せて含まれていることも上記の理由として考えられる。
溶存有機物を測定する手段として、全有機炭素濃度(Total Organic Carbon;TOC)が挙げられる。しかしながら、逆浸透膜のファウリング速度とTOCは必ずしも相関しない。この理由として、TOCとして測定される有機物のすべてが、逆浸透膜のファウリングに寄与するわけではないことが考えられる。
逆浸透膜のファウリングに関与する供給水中の物質の候補としては、透明細胞外重合物質粒子(Transparent Exopolymer Particles;TEP)が挙げられる。
非特許文献1には、逆浸透膜のファウリングは、TEPが膜面に付着することにより起こることを示している。TEPは有機物のうち、ファウリングを起こしやすい微生物代謝物由来の特定の画分を捉えた有機物指標であるため、TOCよりも逆浸透膜供給水を評価する指標として適切である可能性が高いと考えられる。
また、特許文献1には、半透膜を用いた海水の淡水化に際し、砂ろ過等の前処理を行い、前処理後の処理水の多糖類の濃度を評価指標の一つとして測定し、この測定値に基づいて前処理の操作量を制御する海水淡水化システムが開示されている。
この海水淡水化システムによれば、海水に含まれる多糖類などのファウリング成分の量の大小に応じて半透膜のファウリングを低減できるように前処理を制御することが可能となる。
さらに、特許文献2には、海水又はかん水から逆浸透膜を用いて淡水を得る淡水化システムにおいて、被処理水(海水またはかん水)に凝集剤を注入して凝集処理する凝集処理装置と、凝集処理後の被処理水から塩分を除去して淡水を得る逆浸透膜モジュールと、凝集処理装置と逆浸透膜モジュールを制御する制御装置を有するシステムを開示する。
制御装置は被処理水に含まれる少なくとも20kDa以下の溶存低分子多糖類及び有機態窒素成分の濃度に基づいて凝集剤の注入率を制御することから、逆浸透膜モジュールのバイオファウリングの発生を有効に防止し得ると報告されている。
特許第5587240号公報 特開2015-047591号公報
Edo Bar-Zeevら、Environmental Science & Technology、2015年、49巻、p691-707 U. Passow.,Limnology and Oceanography、1995年、40巻7号、p1326-1355
しかしながら、非特許文献1に記載されたTEPは逆浸透膜供給水の膜閉塞性を評価する指標として適切である可能性が高いと考えられるものの、逆浸透膜供給水中のTEP濃度と逆浸透膜のファウリングに関する定量的なデータは未だ見当たらない。また、TEPと一概に言ってもその大きさは様々であり、その大きさの違いによる逆浸透膜のファウリングへの寄与度の違いも議論されていない。
特許文献1には、多糖類がファウリング原因成分として記載されているものの、「多糖類」という表現は極めて広い意味を有しており、多糖類の測定方法も明らかにされていない。したがって、多糖類のうちどのような方法で測定された多糖類が逆浸透膜ファウリングへの寄与度が大きいかについてはさらなる検討を要する。
特許文献2には、20kDa以下の溶存低分子多糖類及び有機態窒素成分の濃度に基づいて凝集剤の注入剤の制御を行うことを開示されているが、実施例によれば、20kDa以下の溶存低分子多糖類の濃度と凝集剤添加量との関係が示されているものの、当該溶存低分子多糖類の濃度と逆浸透膜ファウリングとの相関については何ら示されていない。なお、20kDa以下の溶存低分子多糖類とは、粒子径約0.07μm以下のごく小さい多糖類である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、逆浸透膜に供給される水の膜閉塞性をより的確に評価し得る逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法、及びこの膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法を提供することにある。
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、逆浸透膜に供給される供給水の膜閉塞性を評価する逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法であって、前記供給水中の粒径1.0μm超である不溶性TEP濃度を測定し、該不溶性TEP濃度の測定結果に基づいて前記供給水の膜閉塞性を評価することを特徴とする。
本願発明は、供給水中のTEPのうち、不溶性TEP濃度が逆浸透膜のファウリングと高い相関を有することを見出したことによりなされたものである。すなわち、この構成によれば、不溶性TEP濃度が逆浸透膜のファウリングと高い相関を有することから、供給水中の不溶性TEP濃度を測定することで供給水の膜閉塞性をより迅速且つ的確に評価することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法において、前記供給水中の粒径0.4μm超1.0μm以下である溶解性TEP濃度を測定し、該溶解性TEP濃度及び前記不溶性TEP濃度の和である粒径0.4μm超である総TEP濃度に対する前記不溶性TEP濃度の割合を算出し、該不溶性TEP濃度割合の算出結果に基づいて前記供給水の膜閉塞性を評価することを特徴とする。
この構成によれば、総TEP濃度に対する前記不溶性TEP濃度の割合が逆浸透膜のファウリングと高い相関を有することから、供給水中の総TEP濃度に対する前記不溶性TEP濃度の割合を算出することで、供給水の膜閉塞性をより的確に評価することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法において、前記供給水は、前記逆浸透膜に供給される前にTEP量を低下させる前処理が施されており、該前処理の条件が異なる複数の供給水の前記不溶性TEP濃度を測定するか、又は前記不溶性TEP濃度割合を算出し、且つ前記逆浸透膜で膜ろ過してファウリング速度を測定する測定工程と、該測定工程で測定した前記複数の供給水のファウリング速度と不溶性TEP濃度又は不溶性TEP濃度割合との関係から両者の近似式を算出する近似式算出工程と、ファウリング速度未測定の供給水の前記不溶性TEP濃度を測定するか、又は前記不溶性TEP濃度割合を算出し、該測定された不溶性TEP濃度の値又は算出された不溶性TEP濃度割合を前記近似式に当てはめて前記ファウリング速度未測定の供給水のファウリング速度を決定するファウリング速度決定工程と、を有し、前記供給水の膜閉塞性評価は、前記ファウリング速度未測定の供給水のファウリング速度が前記ファウリング速度決定工程において決定されることにより実現されることを特徴とする。
この構成によれば、TEP量を低減させる前処理が施され、且つその前処理条件が異なる複数の膜供給水のファウリング速度及び不溶性TEP濃度又は不溶性TEP濃度割合を測定し、不溶性TEP濃度又は不溶性TEP濃度割合とファウリング速度との相関を示す近似式を算出することができる。
これにより、ファウリング速度未測定の膜供給水の不溶性TEP濃度又は不溶性TEP濃度割合を測定又は算出し、測定又は算出された値を近似式に当てはめるだけで、当該ファウリング速度未測定の膜供給水のファウリング速度、すなわち、膜閉塞性を迅速且つ的確に決定することが可能となる。
請求項4に記載の水処理装置の運転管理方法は、前記請求項3に記載の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法により前記供給水の膜閉塞性を評価し、該膜閉塞性の評価結果に基づき前記逆浸透膜を含む水処理装置の運転条件の調整を行うことを特徴とする。
この構成によれば、供給水の膜閉塞性の評価結果に基づき逆浸透膜を含む水処理装置の運転条件の調整が行われる。したがって、供給水の膜閉塞性が高いと評価された場合には膜ファウリングを低下させる運転条件の調整が行うことができ、供給水の膜閉塞性が低いと評価された場合にはより膜処理効率を高める運転条件の調整を行うことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の水処理装置の運転管理方法において、前記水処理装置は、前記供給水のTEP量を低下させる前処理手段を前記逆浸透膜の上流位置に有し、前記水処理装置の運転条件の調整は、前記前処理手段による処理後の供給水における前記不溶性TEP濃度及び前記総TEP濃度に対する前記不溶性TEP濃度の割合の何れか一方又は双方が所定値以下となるようになされることを特徴とする。
この構成によれば、水処理装置の運転管理方法において目標とする供給水のファウリング速度が、近似式に当てはめた不溶性TEP濃度及び/又は不溶性TEP濃度割合の値が所定値以下となるようにすることで調整され、水処理装置を継続的に安定運転することができる。
本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法によれば、不溶性TEP濃度が逆浸透膜のファウリングと高い相関を有することから、供給水中の不溶性TEP濃度を測定することで供給水の膜閉塞性をより迅速且つ的確に評価することが可能となる。
また、本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法によれば、供給水の膜閉塞性が高いと評価された場合には膜ファウリングを低下させる運転条件の調整を行うことができ、供給水の膜閉塞性が低いと評価された場合にはより水処理装置全体の処理効率を高める運転条件の調整を行うことができる。したがって、逆浸透膜の透水性の悪化を事前に防止し、長期間にわたって逆浸透膜を洗浄または交換することなく、安定的な水処理装置の運転が可能となる。
本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法に用いることができる逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価装置10を示す模式図である。 TEP(不溶性TEP、溶解性TEP及び測定されないTEPを含む)の説明図である。 ファウリング速度の説明図である。 前処理条件1~4における処理水3のファウリング速度を示す図である。 ファウリング速度と供給水中の不溶性TEP濃度C>Yとの関係から算出した近似式を示す模式図である。 ファウリング速度と供給水中の総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度C>Yの割合との関係から算出した近似式を示す模式図である。 本発明に係る水処理装置の運転管理方法に用いることができる水処理装置20を示す模式図である。 実施例1の、ファウリング速度と供給水中の不溶性TEP濃度C>Yとの関係から算出した近似式を示す図である。 実施例2の、ファウリング速度と供給水中の総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度C>Yの割合との関係から作成した近似式を示す図である。 比較例の、ファウリング速度と供給水中の溶解性TEP濃度CX~Yとの関係から算出した近似式を示す図である。 参考例の、ファウリング速度と供給水中の総TEP濃度C>Xとの関係から算出した近似式を示す図である。
<逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法>
次に、本発明に係る逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法について、図1~図6に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法に用いることができる逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価装置10を示す模式図、図2はTEP(不溶性TEP、溶解性TEP及び測定されないTEPを含む)の説明図、図3はファウリング速度の説明図、図4は前処理条件1~4における処理水3のファウリング速度を示す模式図、図5はファウリング速度と供給水中の不溶性TEP濃度C>Yとの関係から作成した近似式を示す模式図、及び図6はファウリング速度と供給水中の総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度の割合との関係から作成した近似式を示す模式図である。
図1に示すように、本発明に係る逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法に用いることができる逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価装置10は、原水1を前処理する前処理手段12と、前処理手段12の下流に設けられた逆浸透膜装置14と、逆浸透膜装置14に供給される供給水3の水質を評価する水質評価手段16と、を有する。一般には、供給水3としては前処理手段12によって前処理されたものが用いられる。
原水1は、逆浸透膜装置14を用いてろ過処理する水であれば特に限定されない。例えば、海水や汽水などの塩分を含む水、電子産業や飲料産業の用水のもととなる河川水や地下水、再生処理に供される下水等が挙げられる。
前処理手段12は、原水1中のTEP量を低下させる処理が可能な手段であればどのような手段であってもよく、例えば、砂ろ過法、凝集砂ろ過法、凝集沈殿法、加圧浮上法、泡沫分離法、凝集泡沫分離法、精密膜ろ過(Microfiltration;MF)法、限外膜ろ過(Ultrafiltration;UF)法、凝集精密膜ろ過法、凝集限外膜ろ過法、活性炭吸着法、生物活性炭処理法などに用いる装置を挙げることができ、これらの装置の組み合わせであってもよい。なお、前処理手段12は、逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価装置10から取り外し可能となっている。あるいは、図示しないが、前処理手段12を迂回して原水1を直接逆浸透膜装置14に導く迂回経路が設けられていてもよい。
供給水3は、逆浸透膜装置14に供給される水のことをいい、前処理手段12により処理される場合には前処理水7であり、前処理手段12により処理されない場合には原水1が供給水3となる。
逆浸透膜装置14は、供給水3が流入する圧力容器及び圧力容器内に配設される逆浸透膜を含む。本発明において、逆浸透膜とは、ナノろ過膜(Nano filtration membrane)とRO膜(Reverse osmosis membrane)の両方を含んだ意味である。逆浸透膜の材質、逆浸透モジュールの構造に制限はない。逆浸透膜装置14によりろ過された処理水9は、飲料水、電子産業用水、再生処理水等として活用される。また、逆浸透膜によりろ過されなかった濃縮水8は、供給水3中へと循環する。
本発明において、評価される水質は供給水3中のTEP濃度であり、したがって、水質評価手段16は、TEPを分析し得る公知の装置を用いることができる。なお、手分析により供給水3中のTEP濃度を測定することも可能である。
TEPの分析は、所定の孔径を有するろ紙で供給水3をろ過し、ろ紙上の残渣をpH2.5にてアルシアンブルーで染色し、染色されたろ紙上の残渣を硫酸溶液により浸漬、振とうし、その後、溶液の特定波長の吸光度を測定することで測定される。本方法はアルシアンブルーが酸性ムコ多糖類を特異的に染色することに基づいている。ろ紙の孔径としては、非特許文献2の第1327頁に記載されるように、従来法に従って孔径0.4μmのものが用いられることが多い。したがって、TEPとは、本方法で測定される通常粒径0.4μmを超える酸性ムコ多糖であるとも言える。
ここで、図2に示すように、供給水3中のTEPは、供給水3に溶解する溶解性TEP及び供給水3に不溶性の不溶性TEPに大別することができる。溶解性TEPと不溶性TEPの区別は、通常、TEP粒子の大きさによって行われる。操作上は、区別するTEP粒子の大きさと同じ孔径を持つろ紙で供給水3をろ過することで分離する。溶解性TEPと不溶性TEPは、通常、孔径1μmのろ紙でろ過されるか否かにより区別されることが多い。
以下、TEP測定における上記所定のろ紙の孔径をXμm、溶解性TEPと不溶性TEPを区別するろ紙の孔径をYμmとし、本発明における水質評価指標であるTEP濃度の求め方を説明する。
供給水3を孔径Yμmのろ紙でろ過したろ液をさらに孔径Xμmのろ紙でろ過し、孔径Xμmのろ紙上に残った残渣をアルシアンブルー試薬で染色し、キサンタンガム換算のTEP濃度(μg/L)を得る。このTEP濃度を、溶解性TEP濃度CX~Yとする。
また、供給水3を直接孔径Xμmのろ紙でろ過した残渣をアルシアンブルー試薬で染色し、キサンタンガム換算のTEP濃度(μg/L)を得る。このTEP濃度を、溶解性TEP濃度(μg/L)及び不溶性TEP濃度(μg/L)の和である総TEP濃度C>Xとする。
さらに、総TEP濃度C>Xから溶解性TEP濃度CX~Yを差し引いた値を、不溶性TEP濃度C>Yとする。なお、不溶性TEP濃度C>Yは、供給水3を孔径Yμmのろ紙でろ過して、ろ紙上の残渣をアルシアンブルーで染色し、キサンタンガム換算のTEP濃度(μg/L)を得ることにより求めてもよい。
したがって、本発明においては、孔径Xμmと同じ粒径以下のTEPは測定法上、測定されないTEPとなり、図2に示すように、TEPとして存在しているものの、本発明の不溶性TEP濃度C>Y及び溶解性TEP濃度CX~Y(すなわち、総TEP濃度C>X)に含まれないTEPが残ることとなっている。
本発明において、溶解性TEPの画分と不溶性TEPの画分の和である総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度C>Yの割合(A)は、以下の式(1)で求めることができる。
A=C>Y÷C>X×100 式(1)
本発明において、供給水3の採取は、図1に示すように、前処理手段12から逆浸透膜装置14へと向かう流路13から分岐させた流路15を介して行うことができる。供給水3の採取は任意の間隔で行うことができ、好ましくは1日1回以上採取し、水質評価手段16による水質評価を行うことが望ましい。
次に、上記逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価装置10を用いた逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法について説明する。
[測定工程]
測定工程に先立ち、原水1に対して前処理手段12によるTEP量を低下させる前処理が施される。この前処理は、原水1に対して複数の異なる条件で施されており、したがって、測定工程に供される供給水3は、前処理の条件が異なる複数の供給水3(前処理水7)である。なお、選択される前処理条件は、前処理後の複数の供給水3間において、徐々に前処理後のTEP濃度の低下率が向上するような条件へと変えていくことが好ましい。
例えば、図4に示すように、原水1に対して4種類の条件の前処理がそれぞれ施される場合、4種類の前処理条件が異なる供給水3が測定工程に供される。後述する近似式の信頼性を判断するためには3種類の前処理条件が異なる供給水3があれば良いが、より前処理条件が異なる供給水3が多い方が近似式の精度向上のためには好ましい。さらに、本発明において、前処理条件が異なるとは、前処理条件は同一であるが原水1の性状や前処理期間等が異なるために結果として得られた供給水3のTEP濃度が異なる場合も含むものとする。
測定工程では、これら複数の供給水3の不溶性TEP濃度C>Y及びファウリング速度が測定される。なお、不溶性TEP濃度C>Yに代えて、不溶性TEP濃度C>Y及び溶解性TEP濃度CX~Yを測定し、これら不溶性TEP濃度C>Y及び溶解性TEP濃度CX~Yの和である総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度割合を算出してもよい。 ファウリング速度は、図3に示すように、X軸を逆浸透膜装置の運転経過時間、Y軸を逆浸透膜の水透過係数(m/(s・kPa) at 25℃)したときの傾き(すなわち、水透過係数の経時的な低下割合)の絶対値として定義される。なお、水透過係数とは、逆浸透膜供給水の水温や浸透膜、入口圧力の変化を考慮して、運転条件が変化しても比較可能であるように補正(標準化)したフラックス(流束)をいう。具体的には以下の式(2)
水透過係数(m/(s・kPa) at 25℃)=フラックス(m/s)/有効圧力(kPa)×温度換算係数 (2)
[但し、有効圧力(kPa)=原水側平均圧力(kPa)-透過側圧力(kPa)-浸透圧差(kPa)である。]
により表される。
供給水3のファウリング速度は、供給水3を逆浸透膜装置14で所定期間ろ過することにより得ることができる(以上、測定工程)。
[近似式算出工程]
近似式算出工程では、測定工程で測定した複数の供給水3のファウリング速度と不溶性TEP濃度C>Yとの関係(又は、測定したファウリング速度と算出された不溶性TEP濃度割合との関係)から両者の近似式を作成する。
両者の近似式の作成に先立ち、測定工程において測定した逆浸透膜の水透過係数と逆浸透膜の運転経過時間との関係を、前処理条件を変更した供給水3ごとに図4に模式的に示す。
図示のように、前処理条件1の供給水3(直線a参照)から前処理条件を変更するにつれて、水透過係数の継時的な低下割合、すなわち、ファウリング速度が小さくなっている。
近似式は、測定工程で測定したファウリング速度と不溶性TEP濃度C>Yとの関係(又は、測定したファウリング速度と算出された不溶性TEP濃度割合との関係)から、例えば、最小二乗法による回帰直線として得ることができる。近似式の算出は、TEPを分析し得る公知の装置が有する電子計算機(コンピュータ)により行われてもよく、手計算により行われてもよい(以上、近似式作成工程)。
ここでは、図4に示した前処理条件1~4の供給水3のファウリング速度及び不溶性TEP濃度C>Yの値の合計4点から近似式を算出した。算出されたファウリング速度と不溶性TEP濃度C>Yとの関係、すなわち、近似式を図5に模式的に示す。図示のように、両者の間には、前処理条件が変動し、供給水の不溶性TEP濃度C>Yが低下するほどファウリング速度が低下するという相関関係があることが示されている。
また、図6には、同じ前処理条件1~4の供給水3において不溶性TEP濃度割合を算出し、前処理条件1~4の供給水3のファウリング速度及び不溶性TEP濃度割合の値の合計4点から算出した近似式を模式的に示す。図示のように、ファウリング速度及び不溶性TEP濃度割合との間にも、供給水の不溶性TEP濃度割合が低下するほどファウリング速度が低下するという相関関係があることが示されている。
[ファウリング速度決定工程]
次に、ファウリング速度決定工程では、ファウリング速度未測定の供給水3の不溶性TEP濃度C>Yを測定するか、あるいはそのファウリング速度未測定の供給水3の不溶性TEP濃度割合を算出し、測定された不溶性TEP濃度の値又は算出された不溶性TEP濃度割合を近似式作成工程で算出された近似式に当てはめてファウリング速度未測定の供給水3のファウリング速度を決定する。
ここで、ファウリング速度未測定の供給水3とは、例えば、近似式を算出する際に用いた原水1と採水地を同じくする供給水であって、前処理等によりTEP量が変動し、したがってファウリング速度が不明となったものが挙げられる。ファウリング速度が不明となる要因は前処理のみに限られず、原水となる海水や河川水の栄養条件の変動等も挙げられる。原水性状が著しく異なる場合は、近似式を改めることが望ましい。
ここでは、例えば、ファウリング速度が未測定の供給水3の不溶性TEP濃度C>Yが測定され、図5に示すように、測定された不溶性TEP濃度の値Pが近似式に当てはめられ、ファウリング速度Qが決定されている(以上、ファウリング速度決定工程)。
したがって、本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法によれば、図5及び図6に示すように、不溶性TEP濃度C>Y及び不溶性TEP濃度割合が逆浸透膜のファウリング(ファウリング速度)と高い相関を有することから、供給水3中の不溶性TEP濃度C>Yを測定し、又は不溶性TEP濃度割合を算出することで供給水3の膜閉塞性をより迅速且つ的確に評価することが可能である。
また、TEP量を低減させる前処理が施され、且つその前処理条件が異なる複数の供給水3のファウリング速度及び不溶性TEP濃度C>Y又は不溶性TEP濃度割合を測定し、不溶性TEP濃度C>Y又は不溶性TEP濃度割合とファウリング速度との相関を示す近似式を算出することができる。
これにより、ファウリング速度未測定の供給水3の不溶性TEP濃度C>Yを測定するか、あるいはファウリング速度未測定の供給水3の不溶性TEP濃度割合を算出し、測定又は算出された値を近似式に当てはめるだけで、当該ファウリング速度未測定の供給水3のファウリング速度、すなわち、膜閉塞性を迅速且つ的確に決定することが可能となる。
<逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法>
次に、本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法について、図7を参照して説明する。
本発明の水処理装置の運転管理方法には、上記本発明に係る膜閉塞性評価装置10をそのまま本発明の水処理装置として用いることができる。すなわち、図7に示すように、本発明の水処理装置20は、本発明の膜閉塞性評価装置10と変わるところは無い。なお、前処理手段12については水処理において通常必要であることから、水処理装置20の運転の際には常に取り付けられている。
以下、本発明の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法について、水質指標として不溶性TEP濃度C>Yを選択した場合を例に説明する。本発明の水処理装置の運転方法を実施するにあたり、すでにファウリング速度と不溶性TEP濃度C>Yとの関係から近似式が算出されている。
[前処理工程]
まず、原水1の前処理を行う。前処理は、原水1の性状に合わせて適宜に選択することができる(以上、前処理工程)。
[不溶性TEP濃度C>Y測定工程]
次に、水質評価手段16により前処理後の供給水3(前処理水7)の不溶性TEP濃度C>Yを測定する(以上、不溶性TEP濃度C>Y測定工程)。
[水処理装置の運転条件の調整工程]
本発明の水処理装置の運転条件の調整は、前処理手段12による処理後の供給水3の測定された不溶性TEP濃度C>Yがキサンタンガム換算で所定値以下となるようになされる。
ここで、所定値とは、例えば、逆浸透膜装置14の運転開始時点から1000時間経過した時点での水透過係数の値が、運転開始時の値を2割以上下回らない値となるようなファウリング速度に相当する不溶性TEP濃度C>Yの値である。
供給水3の測定された不溶性TEP濃度C>Yが上記所定値以下である場合、そのまま供給水3を逆浸透膜装置14によって膜ろ過する。なお、供給水3の不溶性TEP濃度C>Yについては、適当な時間的あるいは流量的間隔でモニターすることが好ましい。
一方で、不溶性TEP濃度C>Y測定工程で測定された不溶性TEP濃度C>Yが上記所定値超となる場合、不溶性TEP濃度C>Yが当該所定値以下となるように前処理条件の変更を行う。
例えば、前処理が、砂ろ過法の場合は、砂ろ過の線速度を低下させる。または、凝集剤を用いる。
前処理が、凝集砂ろ過法の場合は、砂ろ過の凝集剤の注入量を増加させる。または、通常用いている凝集剤の他に、高分子ポリマーや有機凝結剤などを追加で使用する。または、砂ろ過の線速度を低下させる。
前処理が、凝集沈殿法の場合は、凝集剤の注入量を増加する。または、通常用いている凝集剤の他に、高分子ポリマーや有機凝結剤などを追加で使用する。または、沈殿に要する時間(前処理槽内の水理学的滞留時間)を増加させる。
前処理が、加圧浮上法の場合は、凝集剤の注入量を増加する。または、通常用いている凝集剤の他に、高分子ポリマーや有機凝結剤などを追加で使用する。または、加圧浮上に要する時間(前処理槽内の水理学的滞留時間)を増加させる。
前処理が、泡沫分離法の場合は、前処理槽内の気液比を増加させる。または、気泡径を小さくする、あるいは大きくする。または、前処理槽内の水理学的滞留時間を増加させる。または、凝集剤を用いる。
前処理が、凝集泡沫分離法の場合は、前処理槽内の気液比を増加させる。または、気泡径を小さくする、あるいは大きくする。または、前処理槽内の水理学的滞留時間を増加させる。または、凝集剤の注入量を増加する。
前処理が、MF法、凝集MF法、UF法又は凝集UF法の場合は、逆洗頻度を増加させる、または、凝集剤を用いる。
前処理が、活性炭吸着法又は生物活性炭吸着法の場合は、線速度を低下させる(以上、水処理装置の運転条件の調整工程)。
したがって、本発明に係る逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法によれば、水処理装置の運転管理方法において目標とする供給水3のファウリング速度が、近似式に当てはめた不溶性TEP濃度の値が上記所定値以下となるようにすることで調整され、水処理装置20を継続的に安定運転することができる。
なお、上記水処理装置の運転管理方法においては、近似式がファウリング速度と不溶性TEP濃度C>Yとの関係から作成されているが、ファウリング速度と不溶性TEP濃度割合との関係から作成されても良い。
また、水処理装置の運転条件の調整は、不溶性TEP濃度C>Yの目標値及び不溶性TEP濃度割合の目標値の双方を満たすように行われてもよい。
さらに、上記水処理装置の運転管理方法においては、前処理の条件を変更させることにより供給水の水質を改善し、水処理装置の継続的な安定運転を担保しているが、前処理条件を変更させることに限らず、逆浸透膜装置14自体の運転条件を変更させてもよい。
例えば、本発明の供給水3の不溶性TEP濃度>Yがキサンタンガム換算で上記所定値を超えた場合、逆浸透膜装置14の水回収率を小さくする、膜面流速を大きくする、入口圧力を低下させる、膜ファウリング防止用薬剤(スライムコントロール剤等)を添加する(又は添加量を増加させる)等により逆浸透膜装置14自体の運転条件の変更を行うことができる。かかる逆浸透膜装置14の運転条件の変更によっても、水処理装置の継続的な安定運転を担保することができる。
なお、本発明は上記の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、本発明においては、前述の不溶性TEP濃度C>Yや不溶性TEP濃度割合の他にも、供給水3の水質指標を測定し、前述の不溶性TEP濃度C>Yや不溶性TEP濃度割合と合わせて供給水3の水質評価を行ってもよい。
TEPは、酸性ムコ多糖類を測定可能である一方、中性の多糖類やフミン質などの有機物、鉄やアルミニウムなどの逆浸透膜スケールを引き起こす無機物は測定不可能である。
そこで、TOC、SDI、鉄、アルミニウム、蛍光強度、バイオポリマー、フミン質なども定期的に分析して、前述のTEPと併せて、それぞれの値が規定値以下になるよう、水処理装置の運転条件を変更することにより、更に確実に、長期にわたって安定的に水処理装置を運転することができる。
ここで、蛍光強度とは、任意の励起波長を水に照射した際に発生する蛍光の強度を言い、特に、供給水3に波長250~380nmの励起光を照射することにより、照射された供給水3より発生する波長250~380nmの蛍光強度を測定することが望ましい。
また、バイオポリマーとは、液体クロマトグラフ―有機炭素検出装置(Liquid Chromatograph-Organic Carbon Detector;LC-OCD)で測定される概ね20kDa以上の溶存性有機物を言う。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
1.前処理
原水として東京湾の海水を使用し、試験は東京湾岸に位置するパイロット規模の実験設備で行った。海水を、時期を変えながら5種類の異なる前処理条件で前処理した。
前処理条件を、以下の表1に示す。
Figure 0007033841000001
試料3を除き、重力駆動2層砂ろ過器(水ing社製)を液体流速180mL/日で連続運転した。試料2、5~8については、砂ろ過に先立ちインライン凝集処理を行った。凝集処理には、凝集剤として塩化鉄(FeCl)を用いた。塩化鉄(FeCl)の使用量は砂ろ過器からの流出液のSDI(SDI15)が4未満となるように調整した。なお、実際の塩化鉄(FeCl)の使用量は5~15mg/L as FeClの範囲であった。
砂ろ過に加えて、試料2~4ではUF膜ろ過を前処理として実施した(なお、試料3はUF膜ろ過のみを行っている)。本試験で使用したUF膜はポリフッ化ビニリデン(PVDF)製であり、150kDaの公称分画分子量を有するもの(東レ株式会社製、HFU-2008)であった。UF膜は透明な圧力容器内に配置され、UF膜による膜ろ過はポンプにより外圧を加えることで実施した。UF膜ろ過への供給水は、砂ろ過流出液であった(試料3は海水(原水)である)。UF膜の使用の際、入口圧力が55kPaに達したときに逆洗を行った。
2.RO膜ろ過
試料1~8の供給水をパイロット規模の海水RO膜ろ過装置(水ing社製)で処理し、それらの供給水により生じる膜ファウリングを評価した。海水RO膜ろ過装置に設けられた圧力容器中に二つの渦巻き型のRO膜エレメントが連続して配置されている。各RO膜エレメントは、2.5インチの直径及びエレメントあたり2.37mの表面積を有し、したがって、圧力容器中の合計膜表面積は4.74mである。本試験では、RO膜エレメントとして日東電工株式会社製のポリアミド膜(SWC-2540)を用いた。供給水のpHは硫酸で6.7に調整した。
供給水は、次亜塩素酸への暴露によってRO膜の損傷を防ぐためRO膜エレメントへの導入に先立って脱塩素し、酸化還元電位(ORP)を200mV未満に下げるように亜硫酸水素ナトリウムを供給水中に添加した。
その後、脱塩素した供給水を10μmの公称孔径を有するカートリッジフィルターに導入し、カートリッジフィルターを通過させた後、供給水を高圧ポンプ(米国ワーナーエンジニアリング社製、G10)によって膜エレメントに導入した。膜エレメントのクロスフロー速度は手動で所定の値に調節した。RO膜ろ過の間、フラックス(流束)を供給圧力の調節により固定値(0.28m/日)に維持した(すなわち、供給圧力はフラックスの低下に従って手動で増大した)。
2-1.ファウリング速度の算出
本試験において、RO膜の水透過性は、RODataXL(日東電工株式会社製)を用いて計算した水透過係数(m/(s・kPa) at 25℃)を用いて評価した。
フラックス(流束)を固定値で一定としているのであるから、各試料の水透過係数は時間の経過に伴う有効圧力の上昇につれて低下する。この低下割合の絶対値、すなわち、横軸を運転時間、縦軸を水透過係数としたときに生じる直線の傾きの絶対値がファウリング速度となる。
なお、試料1~5では、RO膜ユニットに導入した供給水を回収率25%となるように循環させた。これらの試料では、RO膜を透過しなかった有機物質の一部が再びROエレメントに導入されたため、膜表面上への実際の有機物質負荷がRO膜に導入された供給水に含まれた有機物質の濃度に基づいて計算された有機物質負荷よりも大きい。
膜表面上の有機物質負荷の上昇を、供給水及び循環水の流速の比、RO膜エレメントを通過した供給水及び濃縮液におけるそれぞれの有機画分の濃度比を考慮に入れることにより補正した。
試料6-8では供給水を循環させなかった。これにより膜表面上の有機物質負荷を供給水に含まれる有機物質の濃度によって直接算出することができた。これらの試料の回収率は13%であった。
3.TEP濃度の分析
(前処理を行っていない)海水、砂ろ過流出液、UF膜ろ過液及びRO膜ろ過濃縮液を、1週間に一度、朝9時に2L採取した。採取後、可能な限り速やかにTEP分析を行った。
3-1.
TEP濃度は、U.Passowら著、Limnol. Oceanogr. 40巻(1995年)1326~1335頁に記載された分析手法により決定した。
具体的には、試料を孔径0.4μmのポリカーボネートフィルター(アドバンテック)を通過させてろ過し、フィルター上に堆積したTEPをアルシアンブルー(和光株式会社製)で染色した。ポリカーボネートフィルター上に堆積したTEPに吸着したアルシアンブルーを続いて80%(w/w)の硫酸を用いて溶出させ、その量を787nmの吸光度をモニターすることにより分光光度法で決定した。
TEP濃度はキサンタンガム(XG)で換算し、μg-XG/Lとして表した。総TEP濃度C>X(すなわち、粒径0.4μmを超える粒子)に加えて、0.4超1.0μm以下の粒径を有する溶解性TEP濃度CX~Yを測定した。溶解性TEP濃度CX~Yは、試料を予め1.0μmの公称孔径を有するガラス繊維膜フィルターを通して予めろ過してこのガラス繊維膜フィルター上に堆積したTEP濃度(不溶性TEP濃度C>Y)を決定し、総TEP濃度C>Xと不溶性TEP濃度C>Yの差を求めることで得た。
試料1~8の不溶性TEP濃度C>Y、溶解性TEP濃度CX~Y、総TEP濃度C>X及びファウリング速度を以下の表2に示す。
Figure 0007033841000002
試料1~8の各測定値のうち、ファウリング速度をY軸の値とし、不溶性TEP濃度C>YをX軸の値としてプロットし、算出した近似式を図8に示す。
図示のように、算出された近似式のR二乗値は0.6297と高い値となっており、不溶性TEP濃度C>Yとファウリング速度、すなわち、供給水の膜閉塞性との間に高い相関があることが分かる。
[実施例2]
試料1~8の各測定値のうち、ファウリング速度をY軸の値とし、総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度C>Yの比(不溶性TEP濃度割合)をX軸の値としてプロットし、算出した近似式を図9に示す。
図示のように、算出された近似式のR二乗値は0.6725と高い値を有しており、総TEP濃度C>Xに対する不溶性TEP濃度C>Yの比とファウリング速度、すなわち、供給水の膜閉塞性との間に高い相関があることが分かる。
[比較例]
試料1~8の各測定値のうち、ファウリング速度をY軸の値とし、溶解性TEP濃度CX~YをX軸の値としてプロットし、算出した近似式を図10に示す。
図示のように、溶解性TEP濃度CX~Yとファウリング速度、すなわち、供給水の膜閉塞性との間には正の相関は得られず、溶解性TEP濃度CX~Yの増加は供給水の膜閉塞性増加の指標とはなりえないものであった。
[参考例]
試料1~8の各測定値のうち、ファウリング速度をY軸の値とし、総TEP濃度C>XをX軸の値としてプロットし、算出した近似式を図11に示す。
図示のように、算出された近似式のR二乗値は0.5453と実施例1~2には及ばないものの比較的高い値を示していた。したがって、総TEP濃度C>Xとファウリング速度、すなわち、供給水の膜閉塞性との間には相関があることが分かった。
さらに、水処理装置の運転管理方法について、試料1の供給水を用いた場合を例に説明する。 試料1の供給水を上記の通りにパイロット規模の海水RO膜ろ過装置で処理した場合、処理開始時の水透過係数は4.0×10-9m/(s・kPa) at 25℃であり、2割低下した値は3.2×10-9m/(s・kPa) at 25℃である。
ファウリング速度は、処理開始から1000時間経過時点の水透過係数の値が処理開始時の値から2割低下した値以上となるようにするためには80×10-14 m/(s・kPa) at 25℃/h)以下の値を取らねばならず、したがって、近似式に当てはめて得られる試料1の不溶性TEP濃度C>Yは63μg-XG/L以下の値をとる必要がある。
よって、本実施例にかかる海水RO膜ろ過装置において試料1を供給水とした場合に、水処理装置(前処理手段等を含む装置全体を含む)の運転条件の調整は、不溶性TEP濃度C>Yが63μg-XG/L以下の値となるようになされる。
3 供給水
7 前処理水
10 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価装置
12 前処理手段
14 逆浸透膜装置
16 水質評価手段
20 水処理装置

Claims (4)

  1. 逆浸透膜に供給される供給水の膜閉塞性を評価する前記供給水の膜閉塞性評価方法であって、
    前記供給水は、原水に対して前記逆浸透膜に供給される前にTEP量を低下させる前処理が施されたものであり、
    該前処理の条件が異なる複数の供給水の粒径1.0μm超である不溶性TEP濃度および粒径0.4μm超1.0μm以下である溶解性TEP濃度を測定し、且つ前記逆浸透膜で膜ろ過してファウリング速度を測定する測定工程と、
    該測定工程で測定した前記複数の供給水のファウリング速度と前記溶解性TEP濃度及び前記不溶性TEP濃度の和である粒径0.4μm超である総TEP濃度に対する前記不溶性TEP濃度の割合との関係から両者の近似式を算出する近似式算出工程と、
    ファウリング速度未測定の供給水の前記不溶性TEP濃度および前記溶解性TEP濃度を測定し、該測定された不溶性TEP濃度および溶解性TEP濃度の和である前記総TEP濃度に対する前記測定された不溶性TEP濃度の割合の値を前記近似式に当てはめて前記ファウリング速度未測定の供給水のファウリング速度を決定するファウリング速度決定工程と、を有し、
    前記供給水の膜閉塞性評価は、前記ファウリング速度未測定の供給水のファウリング速度が前記ファウリング速度決定工程において決定されることにより実現されることを特徴とする逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法。
  2. 逆浸透膜に供給される供給水の膜閉塞性を評価する前記供給水の膜閉塞性評価方法であって、
    前記供給水は、原水に対して前記逆浸透膜に供給される前にTEP量を低下させる前処理が施されたものであり、
    該前処理の条件が異なる複数の供給水の粒径1.0μm超である不溶性TEP濃度を測定し、且つ前記逆浸透膜で膜ろ過してファウリング速度を測定する測定工程と、
    該測定工程で測定した前記複数の供給水のファウリング速度と前記不溶性TEP濃度との関係から両者の近似式を算出する近似式算出工程と、
    ファウリング速度未測定の供給水の前記不溶性TEP濃度を測定し、該測定された不溶性TEP濃度の値を前記近似式に当てはめて前記ファウリング速度未測定の供給水のファウリング速度を決定するファウリング速度決定工程と、を有し、
    前記供給水の膜閉塞性評価は、前記ファウリング速度未測定の供給水のファウリング速度が前記ファウリング速度決定工程において決定されることにより実現されることを特徴とする逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法。
  3. 前記請求項1又は2に記載の逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法により前記供給水の膜閉塞性を評価し、該膜閉塞性の評価結果に基づき前記逆浸透膜を含む水処理装置の運転条件の調整を行うことを特徴とする水処理装置の運転管理方法。
  4. 前記水処理装置は、前記供給水のTEP量を低下させる前処理手段を前記逆浸透膜の上流位置に有し、
    前記水処理装置の運転条件の調整は、前記前処理手段による処理後の供給水における前記不溶性TEP濃度及び前記総TEP濃度に対する前記不溶性TEP濃度の割合の何れか一方又は双方が所定値以下となるようになされることを特徴とする請求項に記載の水処理装置の運転管理方法。
JP2016143052A 2016-07-21 2016-07-21 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法 Active JP7033841B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016143052A JP7033841B2 (ja) 2016-07-21 2016-07-21 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016143052A JP7033841B2 (ja) 2016-07-21 2016-07-21 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018012061A JP2018012061A (ja) 2018-01-25
JP7033841B2 true JP7033841B2 (ja) 2022-03-11

Family

ID=61019027

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016143052A Active JP7033841B2 (ja) 2016-07-21 2016-07-21 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7033841B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2598267A (en) 2018-06-08 2022-03-02 Bp Exploration Operating Co Ltd Predictive tool for monitoring RO and NF membranes
CN113177378B (zh) * 2021-05-28 2022-05-13 中煤科工集团杭州研究院有限公司 一种用于预测矿井水在反渗透膜组件内部结垢的分析方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012223723A (ja) 2011-04-21 2012-11-15 Hitachi Ltd 海水淡水化システムの制御装置及びその制御方法
JP2012250180A (ja) 2011-06-03 2012-12-20 Sumitomo Electric Ind Ltd 濾過膜の目詰まり速度の予測方法、及び濾過システム

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6381412B2 (ja) * 2014-11-07 2018-08-29 水ing株式会社 海水淡水化装置及びその方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012223723A (ja) 2011-04-21 2012-11-15 Hitachi Ltd 海水淡水化システムの制御装置及びその制御方法
JP2012250180A (ja) 2011-06-03 2012-12-20 Sumitomo Electric Ind Ltd 濾過膜の目詰まり速度の予測方法、及び濾過システム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018012061A (ja) 2018-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hoek et al. Modeling the effects of fouling on full-scale reverse osmosis processes
Guo et al. A combined ultrafiltration–reverse osmosis process for external reuse of Weiyuan shale gas flowback and produced water
Brehant et al. Comparison of MF/UF pretreatment with conventional filtration prior to RO membranes for surface seawater desalination
Wilf et al. Improved performance and cost reduction of RO seawater systems using UF pretreatment
JP5587240B2 (ja) 海水淡水化システムの制御装置及びその制御方法
JP6679439B2 (ja) 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法、及び膜閉塞性評価装置、その膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法
Norouzbahari et al. Crude oil desalter effluent treatment by a hybrid UF/RO membrane separation process
Alhadidi et al. Using SDI, SDI+ and MFI to evaluate fouling in a UF/RO desalination pilot plant
JP4793193B2 (ja) 凝集装置及び凝集方法
Carbonell-Alcaina et al. Determination of fouling mechanisms in polymeric ultrafiltration membranes using residual brines from table olive storage wastewaters as feed
Koo et al. Use and development of fouling index in predicting membrane fouling
Brehant et al. Assessment of ultrafiltration as a pretreatment of reverse osmosis membranes for surface seawater desalination
JP2016016384A (ja) 浸透膜モジュールの評価装置及び評価方法
Koo et al. Effect of cross-flow velocity on membrane filtration performance in relation to membrane properties
Uzal et al. Microfiltration/ultrafiltration as pretreatment for reclamation of rinsing waters of indigo dyeing
JP7033841B2 (ja) 逆浸透膜供給水の膜閉塞性評価方法及びその膜閉塞性評価方法を用いた水処理装置の運転管理方法
Badrnezhad et al. Ultrafiltration membrane process for produced water treatment: experimental and modeling
KR101550702B1 (ko) 높은 회수율로 정수 생산을 위한 막여과 정수 처리 시스템 및 방법
Gasia-Bruch et al. Field experience with a 20,000 m3/d integrated membrane seawater desalination plant in Cyprus
Frick et al. Evaluation of pretreatments for a blowdown stream to feed a filtration system with discarded reverse osmosis membranes
JP6441712B2 (ja) 被処理水の膜閉塞度評価方法
Mousa et al. Treatability of wastewater and membrane fouling
Remize et al. A pilot-scale comparison of granular media filtration and low-pressure membrane filtration for seawater pretreatment
JP6530996B2 (ja) 被処理水の膜閉塞性の評価方法及び膜処理装置の運転方法
Camilleri-Rumbau et al. Forward Osmosis

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20160726

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190729

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190820

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191018

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200204

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200507

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20200507

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20200519

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20200526

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20200717

C211 Notice of termination of reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C211

Effective date: 20200721

C22 Notice of designation (change) of administrative judge

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22

Effective date: 20210511

C22 Notice of designation (change) of administrative judge

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22

Effective date: 20210518

C13 Notice of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C13

Effective date: 20211019

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211202

C23 Notice of termination of proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C23

Effective date: 20211221

C03 Trial/appeal decision taken

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C03

Effective date: 20220201

C30A Notification sent

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C3012

Effective date: 20220201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220301

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7033841

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150