JP2022163484A - ポリカーボネート樹脂の製造方法、及びポリカーボネート樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】低分子量成分の残存量が少ないポリカーボネート樹脂を安定的に製造し、かつ、低分子量成分の残存量が少ないポリカーボネート樹脂を提供する。【解決手段】特定のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させる重合反応工程(A)と、工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下にする還元粘度調整工程(B)とを有するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル末端基濃度が10mol/ton以下とする。【選択図】図1

Description

本発明は、残存低分子量成分が少ないポリカーボネート樹脂を安定的に製造する方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。一方で、石油資源の枯渇や二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化が危惧されていることから、カーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたプラスチックの開発が求められている。そのような状況の中、近年、植物由来原料であるイソソルビド(以下、「ISB」と称する場合がある。)を用いて製造されたポリカーボネート樹脂が開発され、自動車部材用途や光学用途、ガラス代替用途へと使用され始めている(例えば特許文献1、2参照)。
従来の芳香族ポリカーボネート樹脂に使用されているビスフェノール類と比べて、ISBのような脂肪族ジヒドロキシ化合物は熱分解温度が低いために、溶融重縮合反応は50℃程度低い温度で実施される。また、重合反応の終盤は高真空下で行われるが、脂肪族ジヒドロキシ化合物は芳香族ジヒドロキシ化合物よりも重合反応の平衡定数が大きいことから、真空圧力が比較的に高い状態でも分子量が上昇する。そのため、重縮合反応の副生物であるフェノールなどの低分子量成分が樹脂中に多く残存しやすい。このような問題を解決するために、例えば特許文献3では、押出脱揮工程でリン系酸性化合物を添加し、重合触媒を失活した状態で真空脱揮することで、樹脂中の残存フェノールを低減する方法が提案されている。
国際公開第2004/111106号パンフレット 国際公開第2007/148604号パンフレット 特開2015-183087号公報
従来技術ではISB系ポリカーボネート樹脂のフェノール残存量は100重量ppm台であったが、食品や化粧品に接触する容器や幼児用玩具の用途では、厳しい衛生規格が設けられており、フェノールの含有量は10重量ppm程度まで低減することが求められている。また、樹脂の製造においては、分子量などの樹脂品質が安定していることや、製造コストを低減することも求められており、そのような複数の課題を同時に解決することは難しかった。
本発明の第一の態様は、低分子量成分の残存量が少ないポリカーボネート樹脂を安定的に製造することを目的とする。本発明の第二の態様は、低分子量成分の残存量が少ないポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来にする構造単位を含有するポリカーボネート樹脂の製造において、押出脱揮工程でのポリマーの熱分解反応を制御することで、低分子量成分の残存量が少なく、かつ一定の分子量に制御されたポリカーボネート樹脂を安定的に得ることができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1]下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させる重合反応工程(A)と、該工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下にする還元粘度調整工程(B)とを有するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、該工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル末端基濃度が10mol/ton以下である、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2022163484000002
[2]前記工程(B)において、押出機を用いて還元粘度の保持率を95%以下にする、[1]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[3]前記工程(A)において、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを、多段に設けられた反応器に連続的に供給して溶融重縮合を行う、[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[4]前記工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂を固化させることなく、溶融状態のまま、連続的に押出機に供給する、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5]前記工程(B)において用いられる押出機は二軸押出機であり、スクリューの周速が0.35m/sec以上、0.80m/sec以下である、[2]~[4]のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[6]前記工程(A)において、最終反応器の内温が220℃以上、250℃以下であり、真空圧力が0.3kPa以下である、[3]~[5]のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[7]前記工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下である、[1]~[6]のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[8]ポリカーボネート樹脂中の前記式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、前記工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の下記式(2)で表される末端基の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下である、[1]~[7]のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2022163484000003
[9]下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有するポリカーボネート樹脂であって、以下の条件(i)~(iv)をすべて満たすポリカーボネート樹脂。
(i)下記式(3)で表されるフェニルカーボネート末端基の含有量が0mol/ton以上、10mol/ton以下である。
(ii)フェノールの含有量が0.1重量ppm以上、45重量ppm以下である。
(iii)測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である。
(iv)ポリカーボネート樹脂中の下記式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、下記式(2)で表される末端基の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下である。
Figure 2022163484000004
Figure 2022163484000005
Figure 2022163484000006
本発明によれば、低分子量成分の残存量が少ないポリカーボネート樹脂を安定的に製造することが可能になる。本方法を用いて製造したポリカーボネート樹脂は、特に食品容器や化粧品容器、幼児用玩具など、衛生面が要求される用途に好適に用いることができる。
この発明にかかるポリカーボネート樹脂の連続重合工程の例を示すフロー図
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本明細書において「繰り返し構造単位」とは、樹脂中で同じ構造が繰り返し現れる構造単位であって、それぞれが連結することで当該樹脂を構成するような構造単位を意味する。例えば、ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基も含めて繰り返し構造単位と呼称する。また、「構造単位」とは、樹脂を構成する部分構造であって、繰り返し構造単位に含まれる特定の部分構造のことを意味する。例えば、樹脂中で隣り合う連結基に挟まれた部分構造や、重合体の末端部分に存在する重合反応性基と、該重合性反応基に隣り合う連結基とに挟まれた部分構造を言う。より具体的には、ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基が連結基であって、隣り合うカルボニル基に挟まれた部分構造のことを構造単位と呼称する。
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させる重合反応工程(A)と、該反応工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下とする還元粘度調整工程(B)とを有するポリカーボネート樹脂の製造方法である。
そして、該工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル末端基濃度を10mol/ton以下とする。
Figure 2022163484000007
重縮合反応は、高温高真空下で行われ、炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物(炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合、副生するモノヒドロキシ化合物はフェノールである。)を系外に除去することで、反応の平衡を生成物(ポリマー)側にずらし、分子量を上げていく反応である。副生するモノヒドロキシ化合物は重合工程で完全に除去することは現実的には困難であり、樹脂中に残存することになる。
炭酸ジエステル末端基は、熱分解や加水分解が生じると、モノヒドロキシ化合物が生成するため、重合反応の段階で炭酸ジエステル末端基をほぼ完全に消費させておくことで、モノヒドロキシ化合物の再生がなくなり、重合工程や後述の押出機での脱揮効率を向上させることができる。
一方、重縮合反応は、炭酸ジエステル末端とヒドロキシ末端が結合する反応であるため、前述のように、片方の末端基が完全に消費されてしまうと、その時点で分子量上昇は停止してしまうことになる。通常は重合完了時点で両方の末端基が残るように原料の仕込み比率を調整し、重合反応の温度や真空圧力、時間の調整によって、最終的に得られるポリマーの分子量を調節している。
本発明の方法では、ポリマーの分子量を制御する手段として、重合反応工程で所定の分子量よりも高く上げておき、還元粘度調整工程で意図的に熱分解を起こすことで、所定の分子量に調節する。このようにすることで、重合工程と押出脱揮工程にて、低分子量成分の残存量を最大限に減らすことができる。
本発明の方法では、例えば、二軸押出機のスクリュー回転数を変更することで、最終的に得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することができる。通常、スクリュー回転数はできるだけ低く設定することで、ポリマーの熱分解を抑制しながら、真空脱揮や、添加剤の混練を行う。本発明の方法では、前述のとおり、重合工程で所定の分子量よりも高く上げておき、還元粘度調整工程で意図的に熱分解を起こすことで所定の分子量に調節する。その際、熱分解の程度はスクリュー回転数によって制御することができる。また、本発明者らの検討の結果、この方法によると、重合反応工程で多少の分子量の変動が生じても、押出機を通過した後のポリカーボネート樹脂の分子量はほぼ一定の値になることが分かっている。その理由は、スクリューの剪断によって発生する発熱量は、樹脂の溶融粘度(分子量)と相関するため、重合反応工程で分子量が高く振れると、連動して発熱量が増加し、分子量低下が大きくなるためである。このようにすることで低分子量成分の除去効率を最大限に高めることと、分子量制御の両方の課題を同時に解決することができる。
本発明の第二の態様は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有するポリカーボネート樹脂であって、以下の条件(i)~(iv)をすべて満たすポリカーボネート樹脂である。
(i)下記式(3)で表されるフェニルカーボネート末端基の含有量が0mol/ton以上、10mol/ton以下である。
(ii)フェノールの含有量が0.1重量ppm以上、45重量ppm以下である。
(iii)測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である。
(iv)ポリカーボネート樹脂中の前記式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、下記式(2)で表される末端基の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下である。
Figure 2022163484000008
Figure 2022163484000009
[ポリカーボネート樹脂の原料]
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(以下、単に「構造単位(1)」と称する場合がある。)を含有する。前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが入手、及び製造のし易さ、得られる成形品の特性(例えば、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、カーボンニュートラル)の面から最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂中の構造単位(1)の重量比率は、特段の制限はないが、30重量%以上、90重量%以下が好ましい。下限は35重量%以上がより好ましく、40重量%以上が特に好ましい。上限は80重量%以下がより好ましく、70重量%以下が特に好ましい。前記範囲内であれば、実用的な耐熱性を備えながら、優れた機械的特性や耐薬品性が得られる。
本発明のポリカーボネート樹脂はその他の構造単位を含有してもよい。その他の構造単位を形成する化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、エーテル含有ジヒドロキシ化合物、アセタール含有ジヒドロキシ化合物、芳香族含有ジヒドロキシ化合物、ジエステル化合物が挙げられる。尚、ジエステル化合物に由来する構造単位を部分的に組み込んだポリカーボネート樹脂はポリエステルカーボネート樹脂と称される。本明細書において、ポリカーボネート樹脂とはポリエステルカーボネート樹脂を包含するものとする。
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物が挙げられる。エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物等があげられる。
前記脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物が挙げられる。1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール、又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物等があげられる。
前記エーテル含有ジヒドロキシ化合物としては、オキシアルキレングリコール類やアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。
前記アセタール含有ジヒドロキシ化合物としては、例えば、スピログリコール(別名:3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)やジオキサングリコール(別名:2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチルー1,3-ジオキサン)等を用いることができる。
前記芳香族含有ジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のジヒドロキシ化合物を用いることができる。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3-フェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)メタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等のフルオレン環を有するジヒドロキシ化合物等があげられる。
前記ジエステル化合物としては、例えば、以下に示すジカルボン酸等が挙げられる。テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等があげられる。
尚、これらのジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとしてポリエステルカーボネート樹脂の原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
上記その他の構造単位の中でも、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物が、機械的特性や溶融成形時の流動性の向上の観点から好ましい。中でも1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂におけるその他の構造単位の含有割合は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、70重量%以下が好ましく、65重量%以下がより好ましく、60重量%以下が特に好ましい。前記範囲内であると、構造単位(1)が持つ優れた特性を大きく損なわずに、他の物性のバランスを改善することができる。
ビスフェノール化合物などの芳香族含有ジヒドロキシ化合物やジエステル化合物を共重合成分に用いることで、ポリカーボネート樹脂の耐熱性を向上させることができる場合があるが、一方で、ポリカーボネート樹脂に芳香族構造が多く含まれると耐候性が低下する傾向にある。また、ビスフェノール化合物やジエステル化合物と、構造単位(1)を形成するジヒドロキシ化合物の重合反応性には大きな差異があるため、ビスフェノール化合物やジエステル化合物が末端基に残存してしまって、高い分子量のポリカーボネート樹脂が得られ難くなり、耐衝撃性などの機械的特性が低下する傾向がある。反応を促進させようとして反応温度を高く上げると、構造単位(1)が熱分解し、得られるポリカーボネート樹脂が着色する傾向にある。これらの理由により、芳香族含有ジヒドロキシ化合物やジエステル化合物に由来する構造単位の含有割合は、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。本発明の方法で用いられる炭酸ジエステルとしては、下記式(4)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2022163484000010
(4)式中のR、Rはそれぞれ、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキルエステル基である。
前記式(4)で表される炭酸ジエステルの中でも、反応性や入手のしやすさの観点から、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
重縮合反応では、炭酸ジエステルからモノヒドロキシ化合物が副生する。炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネートを用いる場合、フェノールが副生する。
[重合触媒]
重縮合反応はエステル交換反応触媒(以下、エステル交換反応触媒を「重合触媒」と称する。)の存在下で進行する。重合触媒の種類は、エステル交換反応の反応速度、及び得られるポリカーボネート樹脂の品質に大きな影響を与え得る。
重合触媒としては、得られるポリカーボネート樹脂の透明性、色調、光学特性、耐熱性、及び機械的特性を満足させ得るものであれば特に制限はない。重合触媒としては例えば、長周期型周期表における第1族、又は第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を使用することができる。中でも、重合活性が良好であること、得られるポリカーボネート樹脂の色調が良好であることから、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩及び2セシウム塩等。1族金属化合物としては、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、リチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸ストロンチウム等。2族金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物又はバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、カルシウム化合物が最も好ましい。
尚、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することがさらに好ましい。得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、2族金属化合物のみであることが最も好ましい。
前記重合触媒の使用量は、反応に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol以上が好ましく、0.5μmol以上がさらに好ましく、1μmol以上が特に好ましい。また、重合触媒の使用量は、反応に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり300μmol以下が好ましく、100μmol以下がさらに好ましく、50μmol以下が特に好ましい。重合触媒の使用量を上述の範囲に調整することにより、重合速度を高めることができるため、重合温度を低く抑えて、着色や熱分解等の品質低下を招く反応を抑制しながら、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ることが可能になる。
本発明の第一の態様は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させる重合反応工程(A)と、該反応工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下とする還元粘度調整工程(B)とを有するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、該工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル末端基濃度が10 mol/ton以下である、ポリカーボネート樹脂の製造方法である。
上述の通り、本発明の方法は、重合反応工程(A)と、還元粘度調整工程(B)を少なくとも有する。
[溶融重合法]
本発明の方法において、重合反応工程(A)は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させる工程である。本発明の方法では溶融重合法を用いる。溶融重合法は、溶媒や毒性の高い化合物を使用しないことから環境負荷を低減することができ、生産性や品質の安定性にも優れる。
溶融重合法により樹脂を製造する際は、ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを混合し、溶融下で重縮合反応を行い、脱離成分を系外に除去しながら反応率を上げていく。重合の終盤では高温、高真空の条件で所望の分子量まで反応を進める。反応が完了したら、反応器から溶融状態の樹脂を抜き出し、本発明のポリカーボネート樹脂が得られる。
重縮合反応は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物と全ジエステル化合物のモル比率を厳密に調整することで、反応速度や得られる樹脂の分子量を制御できる。通常、全ジヒドロキシ化合物に対する全ジエステル化合物のモル比率は1.00付近に調整される。本発明の方法では、重合反応の終盤で炭酸ジエステル末端基をほぼ完全に消費させるため、前記のモル比率は0.90以上、1.00以下とすることが好ましい。下限は0.95以上がより好ましく、0.97以上が特に好ましい。上限は1.00未満であることがより好ましく、0.999以下がさらに好ましく、0.998以下が特に好ましい。前記範囲とすることで、重合の最終段階で炭酸ジエステル末端基がほぼ完全に消費されるために、分子量が過剰に増大することがなくなり、最終反応器の真空圧力を高真空に保つことができる。そのようにすることで、モノヒドロキシ化合物の残存量を大幅に低減することができる。
溶融重合法は通常、2段階以上の多段工程で実施される。重合反応は、1つの重合反応器を用い、反応条件を順次変えることで2段階以上の工程で実施してもよいし、2つ以上の反応器を用いて、それぞれの反応器の条件を変えることで2段階以上の工程で実施してもよい。生産効率の観点からは、2つ以上、好ましくは3つ以上の反応器を用いて実施する。重合反応はバッチ式、連続式、或いはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれでも構わないが、本発明の方法では、生産効率と品質の安定性の観点から連続式を用いることが好ましい。
[原料調製工程]
溶融重縮合反応は、反応速度やポリカーボネート樹脂の品質を一定に制御するために、ジヒドロキシ化合物とジエステル化合物とのモル比を厳密に制御する必要がある。要求される定量精度を得るには固体を供給する方法では難しいため、ポリカーボネート樹脂の原料として使用するジヒドロキシ化合物やジエステル化合物は、通常、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式、又は連続式の攪拌槽型の装置を用いて溶融液として扱われる。
原料由来や外部からの異物の混入を防ぐため、溶融した原料はフィルターで濾過してから反応器に供給されることが好ましい。本発明においては、複数種用いる原料のうち、いずれの原料を濾過してもよいし、全てを濾過してもよく、その方法は、限定されるものではない。すべての原料の混合物を濾過してもよいし、別々に濾過した後に混合してもよい。また、重縮合反応の途中の反応液をフィルターで濾過することもできる。各原料のラインにそれぞれフィルターを設置してもよいが、設備の簡略化の観点で、すべての原料を混合してから一つのフィルターに通すことが好ましい。
[重合反応工程(A)]
重合工程では、反応系内の温度と圧力のバランスを適切に制御することが重要である。温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが反応系外に留出してしまうおそれがある。その結果、ジヒドロキシ化合物とジエステル化合物のモル比率が変化し、所望の分子量の樹脂が得られない場合がある。
重合速度は、ヒドロキシ末端基とエステル末端基とのバランスによって制御される。そのため、特に連続式で重合を行う場合は、未反応モノマーの留出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり、得られる樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。樹脂の分子量は溶融粘度と相関するため、そのようにして製造された樹脂は、成形加工する際に溶融粘度が変動し、均一な寸法の成形品が得られない等の問題を招くおそれがある。
以下において、図1に示すポリカーボネート樹脂の連続重合工程の例を示すフロー図を用いて説明する。
図1においては、第1竪型攪拌反応器1a、第2竪型攪拌反応器2a、第3竪型攪拌反応器3aの3つの竪型攪拌反応器と、第4横型攪拌反応器(最終反応器)4aの1つの横型攪拌反応器を組み合わせて4つの攪拌反応器を組み合わせた反応器を用いることができる。なお、第1竪型攪拌反応器1a、第2竪型攪拌反応器2aの上部には、還流冷却器1a、2bが設けられ、還流が行われる。また、第3竪型攪拌反応器3aの釜液は、ギアポンプ3bにより、第4横型攪拌反応器4aに送られる。そして、第1竪型攪拌反応器1a、第2竪型攪拌反応器2aの上部の還流冷却器1a、2bで分離されたガス成分や、第3竪型攪拌反応器3a及び第4横型攪拌反応器4aからのガス成分は、留出液回収タンク6aに冷却されながら回収される。
具体的に、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温は、通常130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力は、通常70kPa以下(以下、圧力とは絶対圧力を表す。)、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30kPa以下、かつ、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa以上の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。
第1段目の反応で、ジエステル化合物から副生するモノヒドロキシ化合物の大部分が反応系外へ留去される。
第1段目の反応においては、真空圧力を低くするほど重合反応を促進することができるが、一方で未反応モノマーの留出が増えてしまう。未反応モノマーの留出の抑制と、減圧による反応の促進を両立させるためには、還流冷却器を具備した反応器を用いることが有効である。特に未反応モノマーの多い反応初期に還流冷却器を用いるのがよい。
第2段目の反応は、第1段目の内温から徐々に上げ、真空圧力を徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、所望とする分子量まで重合反応を進行させる。最終的な内温は、通常210℃以上、好ましくは220℃以上、また、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは240℃以下の範囲で設定する。最終的な真空圧力は、通常5kPa以下、好ましくは3kPa以下、より好ましくは1kPa以下にする。反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。
本発明の方法では、最終反応器で炭酸ジエステル末端基をほぼ完全に消費させて、モノヒドロキシ化合物の副生を停止した上で、最終反応器と後述の脱揮押出機にて、樹脂中のモノヒドロキシ化合物を徹底的に脱揮除去する。反応工程(A)で得られた、つまり、最終反応器より排出されたポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル末端基の量は、10mol/ton以下であることを要する。上記範囲とすることで、熱分解や加水分解によるモノヒドロキシ化合物の副生がなくなり、樹脂中の残存モノヒドロキシ化合物の脱揮効率が著しく向上する。同様の観点から、上限は10mol/ton未満がより好ましく、5mol/ton以下がさらに好ましく、3mol/ton以下が特に好ましく、1mol/ton以下が最も好ましい。下限は通常0mol/tonである。尚、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合、炭酸ジエステル末端基とは前記した式(3)で表されるフェニルカーボネート末端基である。
本発明の方法では、反応工程(A)において最終反応器の内温は220℃以上、250℃以下とすることが好ましい。下限は230℃以上がより好ましく、235℃以上がさらに好ましい。上限は245℃以下がより好ましい。また、最終反応器の真空圧力は0.3kPa以下であることが好ましい。好ましくは0.2kPa以下であり、特に好ましくは0.1kPa以下である。前述のとおり、片方の末端基を消費させておくことで分子量上昇が停止するため、過剰な分子量上昇を抑制しながら、反応器を高真空に保つことができる。
攪拌動力等を指標に用いて、所定の溶融粘度(分子量)に到達したことを確認したら、反応器に窒素を導入し、圧力を常圧に戻して重合反応を停止する。連続式であれば、溶融樹脂を反応器から連続的に抜き出し、冷却することで重合反応を停止する。
このようにして反応工程(A)で得られた、つまり最終反応器より排出されたポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量は、0.1重量ppm以上、200重量ppm以下であることが好ましい。上限は150重量ppm以下がより好ましく、120重量ppm以下が特に好ましい。前述のとおりに末端基量を制御し、適切な反応条件に設定することで、最終反応器より排出されたポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量を上記範囲まで低減することが可能になる。
溶融樹脂は、ダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。必要に応じて、ペレット化する前に押出脱揮、押出混練、押出濾過の工程を加えてもよい。この工程で添加剤を樹脂に混ぜ合わせたり、真空ベントで低分子量成分を脱揮したり、ポリマーフィルターを用いて異物を除去する。
具体的には、図1のギアポンプ4bを用いて第4横型攪拌反応器(最終反応器)4aから溶融樹脂を連続的に抜き出す。そして、真空ベント式二軸押出機5aに送り、ギアポンプ5bによってポリマーフィルター5cを経由してダイス5dに送り、ストランドの形態で吐出して、冷却固化し、回転式カッター等でペレット化される。なお、前記二軸押出機5aにおいて、後記の還元粘度調整工程(B)が行われる。
[還元粘度調整工程(B)]
本発明の方法において、還元粘度調整工程(B)は、前記工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下にする工程である。尚、本明細書において、還元粘度の保持率とは、「還元粘度調製工程(B)で得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度/重合反応工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度×100」で定義される。
前記工程(B)は、前記工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂に熱を加えることで、ポリカーボネート樹脂を熱分解させて還元粘度を減少させ、結果として還元粘度の保持率を95%以下にする。この工程により、最終的に得られるポリカーボネート樹脂を所定の分子量へと調節することができる。
前記工程(B)において、前記工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂に熱を加える方法は、特に限定されない。例えば、バッチ重合の場合、反応工程(A)で十分な分子量まで反応を進行させた後、内温を上げることで反応器中のポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下にする方法が採用できる。また、バッチ重合の場合に限らず、押出機を用いて還元粘度の保持率を95%以下とする方法を採用することもできる。具体的には、例えば、反応工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂を押出機に供給し、押出機スクリューの回転による剪断発熱によって樹脂に熱を加えて、熱分解させる方法を採用することができる。ここで適度に熱分解を起こし、所定の分子量に調整すると同時に、反応器や押出機を減圧にすることで、樹脂中に残存しているモノヒドロキシ化合物を除去し、残存量を大幅に低減することが可能になる。
連続重合の場合、反応工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂を固化させることなく、溶融状態のまま、連続的に押出機に供給し、押出機による剪断発熱によって樹脂に熱を加える方法が好適に採用できる。
本発明の方法は、前記工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂、つまり最終反応器から抜き出したポリカーボネート樹脂は、固化させることなく、溶融状態を維持したまま、押出機に供給されることが好ましい。この場合には、溶融樹脂が空気(酸素)に接触することなく、押出機で前述の処理を行うことができるため、樹脂の着色を抑制することができる。
前記工程(B)において用いることができる押出機は、特に限定されないが、二軸押出機であることが好ましく、真空ベント付き二軸押出機であることがより好ましい。この場合には、スクリューの回転数によって樹脂の熱分解を調整することができるため、短時間で分子量を調整することができる。また同時に、溶融樹脂の界面更新を促しながら、真空ベントで脱揮できるため、モノヒドロキシ化合物の脱揮効率に優れる点で好ましい。
押出機のスクリューの周速は0.35m/sec以上、0.80m/sec以下とすることが好ましい。下限は0.36m/sec以上がより好ましく、0.37m/sec以上がさらに好ましく、0.38m/sec以上が特に好ましい。上限は0.70m/sec以下がより好ましく、0.60m/sec以下がさらに好ましく、0.50m/sec以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、樹脂の着色や熱劣化を抑制しながら、適度にポリマーを熱分解させることができ、低分子量成分の除去効率を高めることができる。また、熱分解の程度は押出機のスクリュー回転数によって制御することができる。スクリュー回転数を上げると熱分解が促進され、分子量の低下が大きくなる。スクリュー回転数を下げると熱分解が抑制され、分子量の低下が小さくなる。このようにして、スクリュー回転数を調整することで、最終的に得られるポリカーボネート樹脂を所定の分子量へと調節することができる。
本発明の方法の前記工程(B)において、押出機による剪断発熱によって樹脂に熱を加えて、熱分解させる場合、押出機のシリンダー温度は、好ましくは200℃以上、260℃以下であることが好ましい。この場合には、シリンダーからの伝熱による熱分解が抑制されるため、その分、スクリュー回転数を高く設定して、脱揮効率を向上させることができる点で優れる。同様の観点から、シリンダー温度の下限は、より好ましくは210℃以上、更に好ましくは215℃以上である。シリンダー温度の上限は、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは230℃以下である。押出機の真空度は、3kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましい。この範囲であると、モノヒドロキシ化合物の脱揮効率に優れる。押出機の真空度の下限は通常0.01kPaである。
本発明の方法の前記工程(B)では、前記反応工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂、つまり最終反応器より排出されたポリカーボネート樹脂の還元粘度の保持率を95%以下にする。下限は通常80%以上であり、85%以上が好ましく、88%以上が特に好ましい。前記範囲とすることで、過度の着色や熱劣化を抑制しながら、熱分解反応を利用して所定の分子量への制御することができる。
本発明の方法では、ポリカーボネート樹脂中の前記式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、前記工程(A)で得られたポリカーボネート樹脂、つまり最終反応器より排出されたポリカーボネート樹脂中の前記した式(2)で表される末端基(以下、ISB二重結合末端基と称する場合がある。)の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下であることが好ましい。
前記式(2)で表される末端基は、主鎖中のカーボネート基が熱分解して生成する構造である。本発明の方法では意図的に熱分解を起こし、分子量を調整する手段として用いる。一方で、過剰に熱分解を起こすと、所定の分子量よりも低くなってしまって、機械物性が損なわれたり、樹脂の着色を招く懸念がある。ポリカーボネート樹脂中のISB二重結合末端基の含有量の上限は、0.5mol%以下がより好ましく、0.3mol%以下が特に好ましい。前記範囲となるように重合反応や押出機の運転条件を調整することで、機械物性や色調の優れたポリカーボネート樹脂とすることができる。
このようにして本発明の方法で製造されるポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量は、0.1重量ppm以上、45重量ppm以下であることが好ましい。上限は30重量ppm以下がより好ましく、25重量ppm以下がさらに好ましく、20重量ppm以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、例えば食品容器や化粧品容器、幼児用玩具等、衛生面が要求される用途に適用することができる。
[本発明の第二の態様のポリカーボネート樹脂]
本発明の第二の態様は、前記した式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有するポリカーボネート樹脂であって、以下の条件(i)~(iv)をすべて満たすポリカーボネート樹脂である。
(i)前記した式(3)で表されるフェニルカーボネート末端基の含有量が0mol/ton以上、10mol/ton以下である。
(ii)フェノールの含有量が0.1重量ppm以上、45重量ppm以下である。
(iii)測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である。
(iv)ポリカーボネート樹脂中の前記した式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、前記した式(2)で表される末端基の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下である。
このようなポリカーボネート樹脂であることにより、衛生面が要求される用途に適用することが可能となる。加えて、樹脂中の芳香族成分(フェニルカーボネート末端基とフェノール)の含有量が極めて少ないため、紫外光による樹脂の着色がほとんど生じなくなり、耐候性に優れた樹脂となる。このようなポリカーボネート樹脂は、例えば、本発明の第一の態様の方法により、製造することができる。
[ポリカーボネート樹脂の特性]
・分子量
ポリカーボネート樹脂の分子量は例えば、還元粘度などで表すことができる。これらの測定法により得られる値は数値が高いほど分子量が大きいことを示す。本発明のポリカーボネート樹脂の還元粘度は、通常0.30dL/g以上、1.20dL/g以下が好ましい。下限は0.35dL/g以上がより好ましい。上限は1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下がさらに好ましい。前記範囲内とすることで、機械物性と溶融加工性のバランスの良好な樹脂とすることができる。
・ガラス転移温度
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、60℃以上、180℃以下が好ましい。下限は80℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限は160℃以下がより好ましく、140℃以下が特に好ましい。前記範囲内であると、十分な耐熱性を有し、成形加工も容易となる。
・溶融粘度
本発明のポリカーボネート樹脂は、測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である。下限は300Pa・s以上がより好ましく、500Pa・s以上がさらに好ましく、700Pa・s以上が特に好ましい。上限は4500Pa・s以下がより好ましく、4000Pa・s以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、機械物性と溶融加工性のバランスに優れた樹脂にすることができる。
[添加剤]
本発明の効果を損なわない範囲で、触媒失活剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、フィラーなどの充填剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤、光拡散剤等を、本発明のポリカーボネート樹脂に配合することができる。
また、樹脂の機械特性や耐溶剤性等の特性を改質する目的で、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS等の合成樹脂やゴム等の1種又は2種以上と混練してなるポリマーアロイとしてもよい。
前記の添加剤や改質剤は、本発明の樹脂に前記成分を同時に、又は任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。中でも押出機、特には二軸押出機により混練することが、分散性向上の観点から好ましい。
[本発明のポリカーボネート樹脂の用途]
本発明の樹脂、及びこれを含む樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物にすることができ、光学特性や耐熱性、機械的強度に優れた成形品を得ることができる。本発明の方法で得られた樹脂は、低分子量成分の含有量が少ないため、特に食品容器や化粧品容器、幼児用玩具等、衛生面が要求される用途に好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
[測定方法]
各種物性の測定は、下記の方法に従って行った。
・還元粘度
樹脂試料を塩化メチレンに溶解させ、0.6g/dLの濃度の溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t及び溶液の通過時間tを測定した。得られたt及びtの値を用いて次式(i)により相対粘度ηrelを求め、更に、得られた相対粘度ηrelを用いて次式(ii)により比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t … (i)
ηsp=(η-η)/η=ηrel-1 … (ii)
その後、得られた比粘度ηspを濃度c[g/dL]で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
・末端基量の分析
ポリカーボネート樹脂試料約15mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、H-NMRスペクトルを測定した。ポリカーボネート樹脂を構成する各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、各末端基に由来するシグナルの強度比より、ヒドロキシ末端基、フェニルカーボネート末端基、IISB二重結合末端基の量を定量した。用いた装置や条件は次のとおりである。
・装置:JNM-ECZ400S(日本電子(株)製)
・測定温度:30℃
・緩和時間:6秒
・積算回数:64回
実施例で例示するISBとCHDMの共重合ポリカーボネートのH-NMRの解析方法を以下に示す。まず次のピークの積分値を算出する。各積分値を、下記の通り(a)~(h)と表す。
・5.4-4.4ppm:全ISB構造単位由来(プロトン数:4、分子量:172.14) … (a)
・2.2-0.5ppm:全CHDM構造単位由来(プロトン数:10、分子量:170.21) … (b)
・7.4ppm:フェニルカーボネート末端基由来(プロトン数:2) … (c)
・6.7-6.5ppm:ISB二重結合末端基由来(プロトン数:1、分子量:155.13) … (d)
・4.4ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1) … (e)
・2.6ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1) … (f)
・3.6-3.5ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1)とCHDMのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:2) … (g)
・3.5-3.4ppm:CHDMのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:2) … (h)
次に各構造のモル数に相当する数値を算出する。算出した数値を(a´)~(h´)で表す。
・全ISB構造単位:(a)/4=(a´)
・全CHDM構造単位:(b)/10=(b´)
・フェニルカーボネート末端基:(c)/2=(c´)
・ISB二重結合末端基:(d)=(d´)
・ISBのヒドロキシ末端基:(e)+(f)=(e´)
・CHDMのヒドロキシ末端基:{(g)-(f)}/2+(h)/2=(f´)
ポリカーボネート樹脂中の各末端基の量[単位:mol/ton]は次の計算式で算出される。
・フェニルカーボネート末端基量:(c´)/(h´)×1000000
・ISB二重結合末端基量:(d´)/(h´)×1000000
・ISBのヒドロキシ末端基量:(e´)/(h´)×1000000
・CHDMのヒドロキシ末端基量:(f´)/(h´)×1000000
ただし、(h´)=(a´)×172.14+(b´)×170.21とする。
構造単位(1)の総量に対する、ISB二重結合末端基の量[単位:mol%]は次の計算式で算出される。
・(d´)/(a´)×100
・フェノール残存量の分析
試料約0.5gを精秤し、塩化メチレン5mlに溶解した後、総量が25mlになるようにアセトンを添加した。上澄み溶液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーの測定を行った。既知の濃度に調製したフェノール溶液についても同様に測定し、絶対検量線法にて樹脂中のフェノールの含有量を算出した。用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:(株)島津製作所製
システムコントローラ:CBM-20A
ポンプ:LC-10AD
カラムオーブン:CTO-10ASvp
検出器:SPD-M20A
分析カラム:Cadenza CD-18 4.6mmΦ×250mm
オーブン温度:40℃
・検出波長:260nm
・溶離液:A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A/B=40/60(vol%)からA/B=0/100(vol%)まで10分間でグ
ラジエント
・流量:1mL/min
・試料注入量:10μL
・溶融粘度
ペレット状の樹脂を、90℃で5時間以上、真空乾燥した。次いで、キャピラリーレオメータ(東洋精機社製)にて、ペレットの溶融粘度を測定した。オリフィスは1mmφ×10mmLを用いて、温度は240℃とし、剪断速度6.08~1824sec-1の範囲で測定を行った。剪断速度91.2sec-1における値を測定対象の樹脂の溶融粘度とする。
[使用原料]
以下の実施例と製造例で用いた化合物の略号、および製造元は次のとおりである。
[モノマー]
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製)
・CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール(SK Chemical社製)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱ケミカル(株)製)
[重合触媒]
・酢酸カルシウム一水和物(関東化学(株)製)
酢酸カルシウム一水和物は脱塩水に溶解させ、所定濃度の水溶液にして用いた。
[触媒失活剤]
・ホスホン酸(東京化成工業(株)製)
[熱安定剤]
・Irganox1010:ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製)
・AS2112:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製)
[離型剤]
・E-275:エチレングリコールジステアレート(日油(株)製)
[紫外線吸収剤]
・SEESORB709:2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株)製)
(実施例1-1)
図1に示した、竪型攪拌反応器3器と横型攪拌反応器1器、並びに二軸押出機からなる連続重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。ISB、CHDM、及びDPCをそれぞれタンクで溶融させ、ISB 21.4kg/hr、CHDM 21.1kg/hr、DPC 62.1kg/hr(モル比でISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/0.991)の流量で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給した。同時に、重合触媒である酢酸カルシウム一水和物の水溶液を、全ジヒドロキシ化合物1molに対して酢酸カルシウム一水和物が1.5μmolとなる添加量にて、第1竪型攪拌反応器に供給した。
各反応器の内温、真空圧力、滞留時間はそれぞれ、第1竪型攪拌反応器:190℃、25kPa、120分、第2竪型攪拌反応器:195℃、10kPa、90分、第3竪型攪拌反応器:220℃、4kPa、45分、第4横型攪拌反応器:240℃、0.01kPa、150分とした。第4横型攪拌反応器の真空圧力は0.01kPaで常に一定にした。
第4横型攪拌反応器から抜き出したポリカーボネート樹脂を、溶融状態のままベント式二軸押出機TEX30α[(株)日本製鋼所製]に供給した。押出機は3つの真空ベント口を有しており、ここで樹脂中の残存低分子量成分を脱揮除去するとともに、第1ベントの手前で触媒失活剤としてホスホン酸をポリカーボネート樹脂に対して0.65重量ppm添加し、第3ベントの手前でIrganox1010、AS2112、E-275、SEESORB709をポリカーボネート樹脂に対して、それぞれ1000重量ppm、500重量ppm、3000重量ppm、200重量ppmを添加した。押出機のシリンダー温度は220℃とした。真空ベントの真空圧力は0.1kPaであった。
最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.63dL/gとなるようにスクリュー回転数を調整し、240rpmに設定した。押出機を通過したポリカーボネート樹脂を引き続き溶融状態のまま、目開き10μmのウルチプリーツ・キャンドルフィルター[PALL社製]に通して、異物を濾過した。その後、ダイスからストランド状にポリカーボネート樹脂を押出し、水冷、固化させた後、回転式カッターで切断することによりペレット化した。
分析するペレットを採取する時に、最終反応機の出口から少量の溶融樹脂を採取した。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、前述の分析や評価を行った。
(実施例1-2)
最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.60dL/gとなるように、押出機のスクリュー回転数を調整した以外は実施例1-1と同様に実施した。スクリューの回転数は調整した結果、255rpmに設定した。
(実施例2-1)
第3竪型攪拌反応器の内温を210℃、第4横型攪拌反応器の内温を220℃とした以外は実施例1と同様に実施した。
(実施例2-2)
最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.60dL/gとなるように、押出機のスクリュー回転数を調整した以外は実施例2-1と同様に実施した。スクリューの回転数は調整した結果、255rpmに設定した。
(比較例1-1)
各原料の供給量をISB 21.1kg/hr、CHDM 20.8kg/hr、DPC 62.4kg/hr(モル比でISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.008とし、押出機内での熱分解を抑制するために、スクリュー回転数を200rpmと低速にした以外は実施例1と同様に実施した。最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.63dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の真空圧力を調整した結果、0.71kPaに設定した。
(比較例1-2)
最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.60dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の真空圧力を調整した以外は比較例1-1と同様に実施した。最終反応器の真空圧力は調整した結果、0.85kPaに設定した。
(比較例2-1)
第3竪型攪拌反応器の内温を210℃、第4横型攪拌反応器の内温を220℃とした以外は比較例1-1と同様に実施した。最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.63dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の真空圧力を調整した結果、0.55kPaに設定した。
(比較例2-2)
最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.60dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の真空圧力を調整した以外は比較例2-1と同様に実施した。最終反応器の真空圧力を調整した結果、0.75kPaに設定した。
(比較例3-1)
各原料の供給量をISB 21.3kg/hr、CHDM 21.1kg/hr、DPC 62.1kg/hr(モル比でISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/0.993)とした以外は比較例1-1と同様に実施した。最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.63dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の真空圧力を調整した結果、0.68kPaに設定した。
(比較例3-2)
最終的に得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.60dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の真空圧力を調整した以外は比較例3-1と同様に実施した。最終反応器の真空圧力を調整した結果、0.82kPaに設定した。
Figure 2022163484000011
1a:第1竪型攪拌反応器
1b:還流冷却器
2a:第2竪型攪拌反応器
2b:還流冷却器
3a:第3竪型攪拌反応器
3b:ギアポンプ
4a:第4横型攪拌反応器
4b:ギアポンプ
5a:真空ベント式二軸押出機
5b:ギアポンプ
5c:ポリマーフィルター
5d:ダイス
6a:留出液回収タンク

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させる重合反応工程(A)と、該工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂に熱を加えて還元粘度の保持率を95%以下にする還元粘度調整工程(B)とを有するポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
    該工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル末端基濃度が10mol/ton以下である、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2022163484000012
  2. 前記工程(B)において、押出機を用いて還元粘度の保持率を95%以下にする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  3. 前記工程(A)において、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを、多段に設けられた反応器に連続的に供給して溶融重縮合を行う、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  4. 前記工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂を固化させることなく、溶融状態のまま、連続的に押出機に供給する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  5. 前記工程(B)において用いられる押出機は二軸押出機であり、スクリューの周速が0.35m/sec以上、0.80m/sec以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  6. 前記工程(A)において、最終反応器の内温が220℃以上、250℃以下であり、真空圧力が0.3kPa以下である、請求項3~5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  7. 前記工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量が0.1重量ppm以上、200重量ppm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  8. ポリカーボネート樹脂中の前記式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、前記工程(A)で得られるポリカーボネート樹脂中の下記式(2)で表される末端基の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2022163484000013
  9. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有するポリカーボネート樹脂であって、以下の条件(i)~(iv)をすべて満たすポリカーボネート樹脂。
    (i)下記式(3)で表されるフェニルカーボネート末端基の含有量が0mol/ton以上、10mol/ton以下である。
    (ii)フェノールの含有量が0.1重量ppm以上、45重量ppm以下である。
    (iii)測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である。
    (iv)ポリカーボネート樹脂中の下記式(1)で表される構造に由来する構造単位の総量に対して、下記式(2)で表される末端基の含有量が0.10mol%以上、1.0mol%以下である。
    Figure 2022163484000014

    Figure 2022163484000015

    Figure 2022163484000016


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