JP2022160167A - 耐熱合金部材、これに用いる素材及びこれらの製造方法 - Google Patents

耐熱合金部材、これに用いる素材及びこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 Ni-Cr-Co-Al-W合金からなり高温機械強度に優れる耐熱合金部材、これに用いる素材及びこれらの製造方法の提供。【解決手段】 耐熱合金素材は、質量%で、C:0.001~0.050%、Cr:10.0~19.0%、Co:10.0~30.0%、W:13.0~18.0%、Al:1.8~4.5%、B:0.0010~0.0200%を含み、残部Ni及び不可避的不純物とする成分組成の合金からなり、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有し、炭化物粒子及びμ相粒子の析出物の個数密度を5×104mm-2以下とする。かかる素材を時効熱処理して得られる耐熱合金部材は、上記同様の結晶粒径で析出物を粒界に沿って析出させる一方、γ’相粒子を最大粒径800nm以下で結晶粒内に析出させている。製造方法は、熱間圧延、冷間圧延後、光輝焼鈍熱処理し、所定の成形加工後に時効熱処理する。【選択図】 なし

Description

本発明は、Ni-Cr-Co-Al-W合金からなり高温機械強度に優れる耐熱合金部材、これに用いる素材及びこれらの製造方法に関する。
700~800℃程度の高温で使用される自動車用ターボチャージャの排気系に用いられるガスケットや皿バネには、Inconel718(商品名)やNimonic263(商品名)のような耐熱性のNi基合金又はNi-Fe合金が用いられている。近年、このような自動車用ターボチャージャにおいて、より高い温度の排気ガスを利用するようになって、800℃以上に暴露されてもシール性やバネ力を維持できるガスケットや皿バネも求められるようになってきている。ここで、前出のInconel718(商品名)は800℃以上になると強化相であるγ”相やγ’相が強化に寄与しないδ相へと変態し、著しく弱化してしまう。また、Nimonic263(商品名)についても900℃では強化相であるγ’相が消失し、シール性やバネ力が維持できない。そこで、γ’-Ni(Al,Ti)と同じL1構造を有するγ’-Co(Al,W)を強化相に利用し、より高い高温機械特性を有し得るCo-Al-W合金が提案されている。
例えば、特許文献1では、ガスタービン部材、自動車エンジン部材などに用いられ、質量%で、0.1≦Cr≦20.0%、1.0≦Al≦6.0%、3.0≦W≦26.0%、Ni≦50.0mass%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなり、5.0≦Cr+Al≦20.0%を満たし、Aで表されるμ相とABで表されるラーベス相からなる第2相の体積率を10%以下とし、γ’-Co(Al,W)を強化相に利用するCo-Al-W合金を開示している。AlやWを含むCo基合金は、熱間加工性に有害な第2相を生成しやすく、特に、過剰のWを添加すると、粒内及び粒界に第2相が生成し熱間加工性を著しく低下させることを述べた上で、Al量及びW量を所定範囲にすると同時に、所定の条件下で均質化熱処理を施し、熱間加工性に有害な第2相の少ないCo基合金とするとしている。
特許文献2では、同様に自動車エンジン部材などに用いられ、γ’-(Co,Ni)(Al,W)を強化相に利用するNi-Cr-Co-Al-W合金において、Cを成分組成に添加することで、γ’相の析出に加えて粒界に炭化物を析出させ、高温部材として特に必要とされるクリープ特性(高温延性)を改善できることを開示している。ここでは、質量%で、0.001≦C<0.100%、9.0≦Cr<20.0%、2.0≦Al<5.0%、13.0≦W<20.0%、及び、39.0≦Ni<55.0%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなる成分組成とするとともに、不可避的不純物の内、Mo、Nb、Ti、及び、Taを所定に規制するとしている。
特開2009-228024号公報 特開2012-41627号公報
上記したような自動車用ターボチャージャの排気系に用いられるガスケットや皿バネ、シール部材などでは、所定の成分組成の合金を熱間圧延し続いて冷間圧延した後に、かかる合金素材を所定の部材形状に成形加工し、時効熱処理して製造される。ここで、Co-Al-W合金では、成分組成を調整することで、時効処理後に高温機械強度に優れる耐熱合金部材を得られるものの、Coを多く含むため、熱間圧延及びその後の冷間圧延ができず合金薄板及び合金細線などの合金素材への加工が難しい。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、Ni-Cr-Co-Al-W合金からなり高温機械強度に優れる耐熱合金部材、これに用いる素材及びこれらの製造方法を提供することにある。
本発明による耐熱合金素材は、時効熱処理されて耐熱合金部材を与える耐熱合金素材であって、質量%で、C:0.001~0.050%、Cr:10.0~19.0%、Co:10.0~30.0%、W:13.0~18.0%、Al:1.8~4.5%、B:0.0010~0.0200%を含み、残部Ni及び不可避的不純物とする成分組成を有する合金からなり、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有するとともに、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子について析出個数密度を5×10mm-2以下とすることを特徴とする。
かかる特徴によれば、加工性に優れ、時効熱処理されて高温機械強度、特に、900℃程度での高温機械強度に優れた部材を与えることができるのである。
また、本発明による耐熱合金素材の製造方法は、上記したような耐熱合金素材を与えるものであって、熱間圧延した後に冷間圧延し、1120~1220℃で雰囲気中にて光輝焼鈍熱処理し、結晶粒度番号を#6.5以下とすることを特徴とする。
かかる特徴によれば、加工性に優れ、時効熱処理されて高温機械強度、特に、900℃程度での高温機械強度に優れた部材を与えることが可能な耐熱合金素材を安定して供給することができるのである。
また、本発明による耐熱合金部材は、耐熱合金素材を加工してなる耐熱合金部材であって、質量%で、C:0.001~0.050%、Cr:10.0~19.0%、Co:10.0~30.0%、W:13.0~18.0%、Al:1.8~4.5%、B:0.0010~0.0200%を含み、残部Ni及び不可避的不純物とする成分組成を有する合金からなり、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有し、炭化物、γ’相及びタングステン金属間化合物であるμ相の少なくとも1種以上の析出物を結晶粒界に沿って析出させているとともに、γ’相からなる粒子を最大粒径800nm以下で結晶粒内に析出させていることを特徴とする。
かかる特徴によれば、高温機械強度、特に、900℃程度での高温機械強度に優れ、同温度域での安定した動作を得られるのである。
また、本発明による耐熱合金部材の製造方法は、前記成分組成を有する合金を熱間圧延し続いて冷間圧延した後に、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有するとともに、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子について析出個数密度を5×10mm-2以下になるように酸化防止雰囲気中にて1120~1220℃の温度で光輝焼鈍熱処理し、所定の成形加工後、γ’相を結晶粒内に析出させるとともに結晶粒界に析出物を形成させる熱処理を与える時効熱処理を有することを特徴とする。
かかる特徴によれば、高温機械強度、特に、900℃程度での高温機械強度に優れ、同温度域での安定した動作を得られる耐熱合金部材を安定して供給可能となるのである。
本発明による1実施例における耐熱合金部材の製造方法を示すフロー図である。 時効熱処理の熱処理線図である。 製造試験に用いた合金の成分組成の一覧表である。 製造試験に用いた合金のμ相等の固溶温度の一覧である。 製造試験における光輝焼鈍熱処理の条件と光輝焼鈍熱処理後の試験結果の一覧である。 製造試験における時効熱処理条件と時効処理後の試験結果の一覧である。 光輝焼鈍熱処理後の(a)実施例2及び(b)比較例8の断面組織写真である。 時効熱処理後の(a)実施例2、(b)実施例3及び(c)比較例8の断面組織写真である。
本発明による1つの実施例としての耐熱合金部材、これに用いられる耐熱合金素材及びこれらの製造方法について、図1及び図2を用いて説明する。
本実施例による耐熱合金部材及び耐熱合金素材は、質量%で、C:0.001~0.050%、Cr:10.0~19.0%、Co:10.0~30.0%、W:13.0~18.0%、Al:1.8~4.5%、B:0.0001~0.0200%を含むとともに、任意にFe:5.0%以下、Mo:3.0%以下、Nb:2.0%以下、Ta:2.0%以下、Ti:2.0%以下、V:1.0%以下、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以下、Zr:0.05%以下、Cu:1.0%以下、Si:0.15%以下、S:0.005%以下、Mn:0.50%以下で含み得て残部をNiとする成分組成を有するNi-Cr-Co-Al-W系合金によって得られる。
ここでは、図1を参照しつつ、耐熱合金素材のうち形状を板状とする板状体を製造する場合について説明する。上記したNi-Cr-Co-Al-W系合金は、熱間鍛造などによってスラブやビレットとされ(熱間鍛造:S1)、さらに、熱間圧延によって帯状に成形され帯状合金体とされる(熱間圧延:S2)。その後、かかる帯状合金体は、中間焼鈍処理によって軟化され(中間焼鈍:S3)、冷間圧延によって所定の厚さに成形される(冷間圧延:S4)。
冷間圧延(S4)では、例えば、帯状合金体の厚さを5.0mm以下とする。他方、後述する耐熱合金部材として使用される高温環境中での高温酸化や高温腐食による板厚減少による部材強度の低下を抑制するよう0.05mm以上の板厚とされることが好ましい。後工程での冷間加工性を良好なものとする場合、0.15~2.0mmの範囲内の板厚とされることが好ましい。さらに好ましくは、0.15~1.5mmの範囲内である。なお、冷間圧延(S4)は複数回に分けて行い、冷間での高い加工性を維持するようにそれぞれの圧延の前に中間焼鈍処理を行うようにしてもよい。
最後に、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有するとともに、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子について析出個数密度を5×10mm-2以下とする組織となるように連続光輝焼鈍熱処理を行う(光輝焼鈍:S5)。析出個数密度は、帯状合金体の断面組織写真から測定することができる。なお、結晶粒度番号は、JIS G0551に基づき、帯状合金体の板幅方向の断面(TD断面)において厚さ方向の中央部で測定する。線状合金体においては線径方向の断面中心部で測定する。
かかる連続光輝焼鈍熱処理は、処理温度を1120~1220℃の範囲内に制御された酸化防止雰囲気中に所定時間保持されるように連続処理炉内に帯状合金体を通過させる熱処理である。連続光輝焼鈍熱処理では、連続処理とする関係上、帯状合金体を加熱保持できる時間が単位長さ当たり1~5分程度と比較的短時間となる。そこで、上記した結晶粒度を有する組織を得るために1120℃以上の処理温度を必要とする。一方、熱処理炉等の設備やコストの制約から処理温度の上限は1220℃に定められる。また、連続光輝焼鈍熱処理において、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子の析出物を十分に固溶させるよう成分組成が設計され、上記したような析出個数密度を得ることができるようにされる。併せて、後述する時効熱処理で炭化物及びμ相粒子を十分に析出させることができるように成分組成が設計される。
連続光輝焼鈍熱処理によって、得られる耐熱合金素材の金属組織において圧延組織を消失させて結晶粒の方向性を有さないようにするとともに、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径となるようにする。これによって、後述する時効熱処理の後において高い高温クリープ強度を確保することができる。ここで、連続光輝焼鈍熱処理後の未固溶の炭化物や金属間化合物の残存は、上記したように、炭化物粒子及びμ相粒子の析出個数密度において5×10mm-2以下で許容される。炭化物粒子及びμ相粒子の析出個数濃度をこれ以下とすることで、連続光輝焼鈍熱処理後の結晶粒を十分に粗大化させて結晶粒度番号を上記した範囲にさせるとともに、後述する時効熱処理によって炭化物や金属間化合物を十分に析出させることができる。
なお、連続光輝焼鈍熱処理において、処理温度に加熱された酸化防止雰囲気を通過後の帯状合金体は、冷却中にγ’相を析出させて硬さを増大させてしまうことがある。これによって、板状の耐熱合金素材から後述する耐熱合金部材を得るための加工において十分な加工性を確保できない場合がある。このような場合、連続光輝焼鈍熱処理における帯状合金体の冷却速度を例えば3℃/s以上とするように熱処理炉内を帯状合金体の通過する通板速度を調整し、再度、連続光輝焼鈍熱処理を行うことで、加熱によって固溶したγ’相の析出を抑制し、硬さの増大を抑制することが可能である。耐熱合金部材を得るための冷間加工において良好な冷間加工性を得るための耐熱合金素材の硬さとしては、420Hv以下であることが好ましい。
以上のようにして、上記した板状の耐熱合金素材を製造することができる。かかる耐熱合金素材は、後述するように、高温機械強度に優れる耐熱合金部材の製造に用いることができる。また、形状を線状とする線状体からなる耐熱合金素材を製造する場合には、上記した板状の耐熱合金素材と同様の条件で製造すればよい。なお、線径については、例えば5.0mm以下とすることができるが、後工程での冷間加工性を良好なものとするには、0.15~2.0mmの範囲内とすることが好ましく、0.15~1.5mmの範囲内とすることがより好ましい。
そして、耐熱合金部材を製造する場合には、まず、上記した耐熱合金素材をガスケットや板バネ、皿バネ、コイルバネ等の耐熱合金部材としての所定の形状に成形加工する(成形加工:S6)。成形加工(S6)においては、光輝焼鈍(S5)によって予め耐熱合金素材を軟化させておいたことで加工性を確保し、成形加工を容易とし得る。
そして、耐熱合金素材を成形加工後、時効熱処理して耐熱合金部材を得る(時効熱処理:S7)。時効熱処理(S7)では、光輝焼鈍(S5)において固溶させた炭化物やタングステン金属間化合物を十分析出させるとともに、結晶粒度番号で#6.5以下となる結晶粒径を有する金属組織を得る。ここでは、炭化物、γ’相及びタングステン金属間化合物であるμ相の少なくとも1種以上の析出物を結晶粒界に沿って析出させるとともに、γ’相からなる粒子を最大粒径800nm以下で結晶粒内に析出させる。なお、γ’相の粒子の径は走査型電子顕微鏡で測定する。
結晶粒径は、使用環境となる800℃以上の温度、例えば900℃程度の温度におけるクリープ強度を高く保つために比較的大きくすることが必須であり、上記した範囲とする。好ましくは、結晶粒度番号で#5.0以下である。なお、結晶粒度番号は、JIS G0551に基づき、板状の耐熱合金部材については板幅方向の断面(TD断面)において厚さ方向の中央部で測定し、線状の耐熱合金部材については線径方向の断面中心部にて測定する。
結晶粒内へ析出するγ’相粒子は、上記した最大粒径を満たすことで素地の強化に効率的に寄与できる。かかる最大粒径を超える場合は素地の強化へ寄与しづらくなるからである。なお、過度に小さい析出物粒子も析出強化に寄与しづらいため、かかるγ’相粒子の最小粒径は5nm以上であることが好ましい。
他方、結晶粒界に析出する上記した粒子は、少なくとも結晶粒界に沿って析出しており、さらに結晶粒界を緻密に被覆するように析出していると好ましい(図8(a)及び(b)参照)。これによって粒界の移動を抑制し、結晶粒を安定化させ、上記した結晶粒径を維持し得る。なお、粒界への析出物はγ’相、準安定な析出物、Crを含む炭化物等でもよいが、拡散の遅いWを含む炭化物や高温において安定なタングステン金属間化合物であるμ相によるものであることが望ましい。このような析出物であれば、長時間に亘って高温に曝されても安定的であり、結晶粒界の移動の抑制を維持し得る。これによって、高い高温クリープ強度を安定して維持することができる。Wを含む炭化物の析出形態としては、MC型に限らず、M12C型などの異なる形態でもよい。なお、Crを含む炭化物の析出形態としては、M23型などがある。
図2を参照すると、このような組織を得るために、時効熱処理では結晶粒内にγ’相を析出させる温度T2で保持する熱処理H2に先立って、より高温で結晶粒界に上記したような析出物を形成させる温度T1で保持する熱処理H1を与える。
例えば、図2(a)に示すように、時効熱処理は、結晶粒界に析出物を形成させる温度域の温度T1まで昇温後、温度T1で保持し、その後空冷する熱処理H1の後、γ’相を結晶粒内に析出させる温度域の温度T2まで昇温後、温度T2で保持し、その後空冷する熱処理H2を行うこととし得る。つまり、二段階熱処理とする。このような一段階目を二段階目よりも高温とする二段階熱処理によって析出物を良好に制御することができる。より具体的には、例えば、熱処理H1を900℃で24時間保持後、空冷する熱処理とし、熱処理H2を800℃で24時間保持後、空冷する熱処理とすることができる。なお、保持後の冷却については空冷の他に、炉冷、油冷、水冷、ガス冷却など他の方法も使用し得る。
他方、図2(b)に示すように、時効熱処理は連続熱処理とすることもできる。すなわち、結晶粒界に析出物を形成させる温度域の温度T1で保持後、続いて連続的に、γ’相を結晶粒内に析出させる温度域の温度T2で保持した後に冷却するのである(熱処理H3)。温度T1での保持は、かならずしも一定の温度で保持する必要はなく、結晶粒界に析出物を形成させる温度域を所定時間かけて通過させればよい。同様に温度T2での保持も、必ずしも一定の温度で保持する必要はなく、γ’相を結晶粒内に析出させる温度域に所定時間曝せばよい。連続熱処理とすることで耐熱合金部材を効率よく製造することができる。
また、図2(C)に示すように、時効熱処理については、さらに短時間の熱処理とすることもできる。この場合、1000~700℃の範囲内の所定の温度T3で4~8時間保持の後空冷とする(熱処理H4)。特に、上記した二段階熱処理の代替でもあるので、保持温度は比較的高温な1000~900℃の範囲とすることが好ましく、これによって、上記したような析出物を得ることが可能である。但し、時効熱処理の保持温度はWを含む炭化物及びμ相の固溶温度を超えない範囲で設定すべきである。
ところで、上記したように、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子の析出物を連続光輝焼鈍熱処理において十分に固溶させるように、且つ、時効熱処理において十分に析出させるように成分組成が設計される。かかる成分組成の設計においては、γ’相、Wを含む炭化物であるWC及びタングステン金属間化合物であるμ相の固溶温度を後述するように設定する。ここで、固溶温度は、例えば、熱力学計算ソフトウェアThermo-Calc2020aを用い、熱力学データベースとしてTTNi8を使用して算出することができる。
γ’相は、結晶粒内に析出することでクリープ強度の向上に大きく寄与する。そして、析出するγ’相の体積率はγ’相の固溶温度におおよそ比例する。そのため、γ’相の固溶温度は940℃以上とされることが好ましく、これによってγ’相を連続光輝焼鈍熱処理において十分固溶させるとともに、時効熱処理で十分析出させることができる。一方、γ’相の固溶温度が過剰に高くなると、合金の熱間加工性が低下する。そのため、γ’相の固溶温度は1000℃以下とされることが好ましい。なお、γ’相の固溶温度は、γ’相を構成するNi、W、Al、Ti、Nb、Taのそれぞれの添加量により調整される。
炭化物やタングステン金属間化合物であるμ相は、結晶粒界に析出することで粒界を強化して耐熱合金部材の使用される高温環境においても高いクリープ強度を安定的に維持できるようにする。また、前述の通り、炭化物としてはWを含むものが望ましい。そのため、WCの固溶温度及びμ相の固溶温度は耐熱合金部材の使用温度よりも高くすることが望ましい。そこで、熱力学計算によって算出される固溶温度は、WCについて910℃以上とされ、μ相については900℃以上とされる。一方、WC及びμ相の固溶温度が過剰に高くなると、熱間加工性及び冷間加工性を低下させるほか、連続光輝焼鈍処理において未固溶の炭化物粒子またはμ相粒子を増大させて結晶粒径を十分に大きくすることができなくなってしまう。さらに、固溶温度が連続光輝焼鈍熱処理の保持温度を上回ってしまった場合、固溶せずに残存してしまう粒子としてWCに比べてμ相によるものが多くなりやすい傾向にある。そのため、μ相の固溶温度は、WCの固溶温度よりも低く設計されることが望ましい。具体的には、連続光輝焼鈍熱処理の保持温度を1120~1220℃程度とする場合、熱力学計算において算出される固溶温度は、WCについて1310℃以下とされ、μ相について1150℃以下とされることが好ましい。また、同固溶温度は、WCについて1280℃以下であるとより好ましい。
以上のようにして、得られる耐熱合金部材は、高温機械強度、特に、900℃程度での高温機械強度に優れる。また、同温度域での安定した動作を得られる耐熱合金部材を安定して供給可能となる。
[製造試験]
次に、耐熱合金素材、及び耐熱合金部材を実際に製造して、耐熱合金素材の結晶粒度、炭化物等の析出個数密度など、耐熱合金部材の高温クリープ強度などを調査した結果について図3乃至図8を用いて説明する。
まず、図3の実施例1~17及び比較例1~11に示す各成分組成の合金を用い、上記と同様に板状の耐熱合金素材を得た。但し、比較例1、2、7については、加工性が悪く、熱間圧延(S2)が困難であったため、この時点で製造を終えた。
ここで、図4に示すように、μ相、Wを含む炭化物であるMC、γ’相のそれぞれの固溶温度を求めた。固溶温度は、熱力学計算ソフトウェアThermo-Calc2020aを用い、熱力学データベースとしてTTNi8を使用して算出した。実施例1~17においてμ相の固溶温度は上記した1150℃以下となった。また、γ’相の固溶温度は、上記した1000℃以下となった。なお、括弧書きの数字については算出される計算上の固溶温度を示すが、実験的にはその相自体がいかなる温度でも析出しないことを示す。
さらに、図5に示すように、連続光輝焼鈍熱処理においては、同図に示す各温度で帯状合金体が単位長さ当たり5分間加熱されるような速度で連続処理炉内を通過させた。
なお、同図に示すように、熱間加工性については、熱間圧延(S2)において帯状合金体の耳部に発生したクラックによってその良否を判定した。詳細には、かかるクラックの圧延幅方向の最大長さが15mm以下である場合に良と判定して「〇」を記録し、15mmを超えて30mm以下である場合に可と判定して「△」を記録し、それ以外を不可と判定して「×」を記録した。
同図に示すように、耐熱合金薄板としての実施例1~17は、いずれも結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有することが判った。なお、実施例7及び17を除いては、#5.0以下であった。また、μ相粒子の析出個数密度は実施例1~17のいずれも5×10mm-2以下となった。熱間加工性については実施例5及び17の可(△)を除いて全て良好であった。
また、図6に示すように、実施例1~17及び比較例1~11において、上記したように耐熱合金薄板を製造した後に、同図に示す時効熱処理条件での時効熱処理を行って、耐熱合金部材の相当材を製造した。なお、上記したように比較例1、2及び7については、熱間圧延(S2)において製造を中止したために、ここでも時効熱処理は行っておらず、試験結果も記録されなかった。
同図に示すように、実施例1~17においては、いずれもγ’相の粒径は最大粒径で800nm以下となり、クリープ強度は900℃で110MPaの負荷において300時間以上の破断時間を得た。なお、破断時間を300時間以上とするものを良好と判定し「〇」を記録し、300時間未満100時間以上とするものを可と判定して「△」を記録し、100時間未満のものを不可と判定して「×」を記録した。なお、「可」の判定であっても耐熱合金部材の使用環境での長時間の使用には不向きであり、ここでは「良好」以外の判定を不合格とした。
これに対し、比較例1、2、7は、上記したように熱間圧延が困難であり、圧延不可との結果であった。いずれもγ’固溶温度が1000℃以上と高過ぎた(図4参照)ため、熱間圧延(S2)の加工中においてγ’相の析出物により素地が強化されてしまったものと考えられた。なお、比較例1及び2では、Alの含有量を他に比べて少なくするとともにTiの含有量を他に比べて多くしており、比較例7ではAlの含有量を他に比べて多くしていた。これらによって、それぞれにおいてγ’相の固溶温度を高くしてしまったものと考えられた。
比較例3は、Crの含有量が他に比べて少なかった。その結果、時効熱処理(S7)において粒界に析出させるべき炭化物の絶対量が不足し、クリープ強度において「可」の判定、すなわち不合格であった。
比較例4は、Crの含有量が他に比べて多かった。その結果、炭化物の絶対量を必要以上に多くしてしまい、例えば光輝焼鈍(S5)時において炭化物を大量に析出させていたものと考えられる。そして、光輝焼鈍(S5)において結晶粒を十分に粗大化させることができず、クリープ強度を低下させてしまったものと考えられる。そして、実際に、結晶粒度番号は#9となり、クリープ強度は「不可」の判定であった。これは、光輝焼鈍(S5)後の析出個数密度が1×10個/mmと高かったことからも裏付けられる。
比較例5は、Coの含有量が他に比べて多かった。その結果、γ’相の固溶温度を低くしてしまい、時効熱処理において十分な量のγ’相を析出させることができず、クリープ強度を低下させてしまったものと考えられた。そして、クリープ強度は、実際に「不可」の判定であった。
比較例6は、Wの含有量が他に比べて多かった。その結果、μ相の固溶温度を必要以上に高くしてしまい、結晶粒を十分粗大化させることができず、クリープ強度を低下させてしまったものと考えられた。そして、クリープ強度は、実際に「不可」の判定であった。
比較例8は、光輝焼鈍(S5)における処理温度を他に比べて低くしたものである。そのため、炭化物やμ相を十分固溶できず、結晶粒を十分粗大化させることができなかったものと考えられた。実際に、結晶粒度番号は#10であった。その結果、クリープ強度において「不可」の判定であった。
比較例9は、Bを含有していなかった。その結果、熱間加工性及び冷間加工性、さらにクリープ強度を低下させてしまったものと考えられた。実際に熱間加工性は「可」の判定であり、クリープ強度において「可」の判定(不合格)であった。
比較例10はWを含有せず、比較例11はCo及びWを含有していなかった。そのため、γ’相の固溶温度を低くしてしまい、その結果、γ’相の析出物を十分生成することができずにクリープ強度を低下させてしまったものと考えられた。
ここで、図7には、連続光輝焼鈍後の(a)実施例2及び(b)比較例8の光学顕微鏡による断面組織写真を示した。実施例2では、結晶粒径が結晶粒度番号で#3.5となり、炭化物粒子及びμ相粒子は析出個数密度で5×10個/mmと比較的少なかった(図5参照)。一方、比較例8においては、結晶粒度番号で#10となる比較的小さな結晶粒が観察され、析出個数密度で1.5×10個/mmとなる多数の炭化物粒子及びμ相粒子の析出が観察された。なお、析出個数密度は、画像解析ソフトImageJを用いて断面組織写真から算出した。
また、図8には時効熱処理後の(a)実施例2、(b)実施例3及び(c)比較例8の断面組織写真を示した。実施例2においては、結晶粒内にγ’相の粒子1が観察され、粒界にμ相又はW炭化物の粒子2及びCr炭化物の粒子3が観察される。特に、粒界の析出物は粒界に沿って析出していることが判る。実施例3においても同様に、結晶粒内にγ’相の粒子1が観察され、結晶粒界にμ相又はW炭化物の粒子2が観察された。実施例2及び3の結晶粒界の析出物は結晶粒界を緻密に被覆するように析出しており、クリープ強度の向上に大きく寄与しているものと考えられた。一方、比較例8においては、粒内にγ’相の粒子1が観察されることは同様であるが、μ相又はW炭化物の粒子2は、結晶粒内にも結晶粒界にも観察された。また、結晶粒界におけるこれらの粒子は不連続に析出していた。つまり、比較例8のクリープ強度は実施例2や実施例3よりも劣ることが組織観察の上から推定された。
以上のように、実施例1~17では高いクリープ強度を有する耐熱合金部材と、かかる耐熱合金部材を得るための耐熱合金薄板を製造することができた。つまり、実施例1~17によれば、900℃程度での高温機械強度に優れた耐熱合金部材を得ることができる。これに対し、比較例1~11においては、圧延を不可としたり、十分なクリープ強度を得ることができなかったりして、高温機械強度に優れた部材を得ることができなかった。
ところで、上記した実施例を含む高温機械強度に優れる耐熱合金部材及びかかる耐熱合金部材を得るための耐熱合金薄板とほぼ同等の機械的性質を与え得る合金の組成範囲は以下のように定められる。
まず、必須添加元素について説明する。
Cは、Cr、W、Ti、Nb、Ta等と結合し、種々の炭化物を形成する。これらの炭化物は時効熱処理により粒界に析出すると、粒界を強化させて合金のクリープ強度や高温での延性を向上させる。一方で、過剰に含有させると、炭化物の固溶温度を過剰に上昇させ、合金の熱間加工性を低下させるのみならず、光輝焼鈍熱処理において結晶粒径を十分に粗大化させることを困難にさせて、クリープ強度を低下させる。これらを考慮して、Cは、質量%で、0.001から0.050%の範囲内、好ましくは0.005~0.030%、より好ましくは、0.005~0.020%の範囲内である。
Crは、Oと結合して表層に緻密なCr層を不働態皮膜として形成するため、耐酸化性の向上及び熱間加工性の維持に有効である。さらに、Cと結合することで炭化物として粒界に析出し、クリープ強度を向上させる。一方で、過剰に含有させると、炭化物の固溶温度を過剰に上昇させ、光輝焼鈍熱処理において結晶粒を十分に粗大化させることを困難とし、クリープ強度を低下させてしまう。これらを考慮して、Crは、質量%で、10.0~19.0%の範囲内、好ましくは11.0~18.0%の範囲内、より好ましくは12.0~17.0%の範囲内である。
Coは、L1型金属間化合物相であるγ’-(Ni,Co)(Al,W,Ti,Nb,Ta)の固溶温度を低下させる効果を有し、熱間加工性の向上に有効である。一方で、過剰に含有すると、γ’相の固溶温度を過剰に低下させて時効により析出するγ’相の量を減少させるため、クリープ強度を低下させてしまう。これらを考慮して、Coは、質量%で、10.0~30.0%の範囲内である。
Wは、L1型金属間化合物相γ’-(Ni,Co)(Al,W,Ti,Nb,Ta)を安定化させるほか、母相であるγ相の固溶強化にも寄与する。さらに、Wは金属間化合物μ-(Co,Cr,Ni,Fe)(W,Mo,Nb,Ta)を形成し得るとともにCと結合してMC型等の炭化物も形成し得る。これらのμ相や炭化物は時効処理によって結晶粒界に粒状に析出しクリープ強度の向上に寄与する。なお、μ相は高温において比較的安定な化合物であり、長時間の組織安定性に優れるため、粒界には炭化物よりもμ相を析出させることが好ましい。一方で、Wを過剰に含有させると、μ相や炭化物の固溶温度を過剰に上昇させて、光輝焼鈍熱処理において結晶粒を十分粗大化させることが困難となり、クリープ強度を低下させてしまう。これらを考慮して、Wは、質量%で、13.0~18.0%の範囲内、好ましくは14.0~17.0%の範囲内である。
Alは、L1型金属間化合物相γ’-(Ni,Co)(Al,W,Ti,Nb,Ta)を安定化させ、クリープ強度を向上させる。一方で、過剰に含有させると、γ’相の固溶温度を過剰に上昇させて熱間加工性及び冷間加工性を低下させてしまう。これらを考慮して、Alは、質量%で、1.8~4.5%の範囲内、好ましくは2.0~4.0%の範囲内、さらに好ましくは3.5~4.0%の範囲内である。
Bは、粒界に偏析して粒界強化に寄与して熱間加工性及び冷間加工性を向上させるほか、炭化物やμ相の粒界への析出を促進させ、クリープ強度の向上に有効である。一方で、過剰に含有すると、熱間加工性及び冷間加工性を低下させてしまう。これらを考慮して、Bは、質量%で、0.0010~0.0200%の範囲内である。
次に、副構成元素として任意に添加可能な元素について説明する。上記した合金は、上記した必須添加元素に加えて、以下のいずれか1種以上の元素をさらに含んでもよい。これらの任意添加元素の含有量は以下のように定められる。
Feは、Coと置換することで同等の効果を得られるため、コスト低減に有効である。但し、過剰な含有はクリープ強度及び耐酸化性を低下させる。これらを考慮して、Feは、質量%で、5.0%以下の範囲内、好ましくは1.0%以下の範囲内である。
Moは、母相であるγ相の固溶強化に寄与するとともに、μ相を安定化させるため、Wと併せて添加することも有効である。但し、過剰な含有は耐酸化性を低下させる。これらを考慮して、Moは、質量%で、3.0%以下の範囲内である。
Nb及びTaは、γ’-(Ni,Co)(Al,W,Ti,Nb,Ta)を安定化させる。但し、過剰な含有は金属間化合物δ-Ni(Nb,Ta)を粒界に板状に析出させてクリープ強度を低下させてしまう。これらを考慮して、Nb及びTaはそれぞれ、質量%で、2.0%以下の範囲内である。
Tiは、Nb及びTaと同様にγ’-(Ni,Co)(Al,W,Ti,Nb,Ta)を安定化させる。但し、過剰な含有は、金属間化合物η-NiTiを粒界に板状に析出させてクリープ強度を低下させてしまう。これらを考慮して、Tiは、質量%で、2.0%以下の範囲内である。
Vは、Cと結合して炭化物を形成し、クリープ強度の向上に寄与する。但し、過剰な含有は、耐酸化性を低下させる。これらを考慮して、Vは、質量%で、1.0%以下の範囲内である。
Mg及びCaは、Sを固定して熱間加工性の向上を促す。但し、過剰な含有は、各元素との化合物を生成し、熱間加工性を低下させる原因となってしまう。これらを考慮して、Mg及びCaのそれぞれは、質量%で、0.01%以下の範囲内である。
Zrは、微量の含有でクリープ強度の向上に寄与するほか、Sを固定するはたらきも有する。但し、過剰の含有は、熱間加工性を低下させてしまう。これらを考慮して、Zrは、質量%で、0.05%以下の範囲内である。
また、その他、不可避的に含有される不純物元素について説明する。
Cuは、高温脆化を引き起こし合金の熱間加工性を低下させる。そのため、Cuは、質量%で1.0%以下にその含有量を制限される。
Siは、耐酸化性の向上に有効であるものの、過剰な含有は合金の熱間加工性を低下させる。そのため、Siは、質量%で、0.6%以下にその含有量を制限される。
Sは、粒界に偏析して熱間加工性を著しく低下させる。そのため、Sは、質量%で、0.005%以下にその含有量を制限される。
Mnは、Sを固定する効果を有するものの、過剰な含有は熱間加工性を低下させる。そのため、Mnは、質量%で、0.50%以下にその含有量を制限される。
その他の不可避的な不純物元素としては、N、O、P、Te、As、Sn、Sb、Se、Ce、Bi等が挙げられる。これらの元素は過剰に含有されると合金の熱間加工性及び高温強度を著しく低下させる。そのため、これらの含有量は、それぞれの元素について、質量%で、0.0050%以下に制限される。
以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。

Claims (13)

  1. 時効熱処理されて耐熱合金部材を与える耐熱合金素材であって、
    質量%で、
    C:0.001~0.050%、
    Cr:10.0~19.0%、
    Co:10.0~30.0%、
    W:13.0~18.0%、
    Al: 1.8~4.5%、
    B:0.0010~0.0200%を含み、残部Ni及び不可避的不純物とする成分組成を有する合金からなり、
    結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有するとともに、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子について析出個数密度を5×10mm-2以下とすることを特徴とする耐熱合金素材。
  2. 前記成分組成において、任意に、質量%で、Fe:5.0%以下、Mo:3.0%以下、Nb:2.0%以下、Ta:2.0%以下、Ti:2.0%以下、V:1.0%以下、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以下、Zr:0.05%以下、Cu:1.0%以下、Si:0.6%以下、S:0.005%以下、Mn:0.50%以下で1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の耐熱合金素材。
  3. 熱力学計算によって算出される固溶温度を、WCについて910℃以上1310℃以下とし、かつ、μ相について900℃以上1150℃以下とする前記成分組成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱合金素材。
  4. γ’相の固溶温度を940℃以上、1000℃以下とする前記成分組成であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の耐熱合金素材。
  5. 厚さが1.5mm以下の板状体又は線径が1.5mm以下の線状体であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の耐熱合金素材。
  6. 請求項1乃至5のうちの1つに記載の耐熱合金素材の製造方法であって、
    熱間圧延した後に冷間圧延し、1120~1220℃で雰囲気中にて光輝焼鈍熱処理し、結晶粒度番号を#6.5以下とすることを特徴とする耐熱合金素材の製造方法。
  7. 耐熱合金素材を加工してなる耐熱合金部材であって、
    質量%で、
    C:0.001~0.050%、
    Cr:10.0~19.0%、
    Co:10.0~30.0%、
    W:13.0~18.0%、
    Al:1.8~4.5%、
    B:0.0010~0.0200%を含み、残部Ni及び不可避的不純物とする成分組成を有する合金からなり、
    結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有し、
    炭化物、γ’相及びタングステン金属間化合物であるμ相の少なくとも1種以上の析出物を結晶粒界に沿って析出させているとともに、γ’相からなる粒子を最大粒径800nm以下で結晶粒内に析出させていることを特徴とする耐熱合金部材。
  8. 前記成分組成において、任意に、質量%で、Fe:5.0%以下、Mo:3.0%以下、Nb:2.0%以下、Ta:2.0%以下、Ti:2.0%以下、V:1.0%以下、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以下、Zr:0.05%以下、Cu:1.0%以下、Si:0.6%以下、S:0.005%以下、Mn:0.50%以下で1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項7記載の耐熱合金部材。
  9. 厚さが1.5mm以下の板状体又は線径が1.5mm以下の線状体であることを特徴とする請求項7又は8に記載の耐熱合金部材。
  10. 請求項7乃至9のうちの1つに記載の耐熱合金部材の製造方法であって、
    前記成分組成を有する合金を熱間圧延し続いて冷間圧延した後に、結晶粒度番号で#6.5以下の結晶粒径を有するとともに、炭化物粒子及びタングステン金属間化合物であるμ相粒子について析出個数密度を5×10mm-2以下になるように酸化防止雰囲気中にて1120~1220℃の温度で光輝焼鈍熱処理し、所定の成形加工後、γ’相を結晶粒内に析出させるとともに結晶粒界に析出物を形成させる熱処理を与える時効熱処理を有することを特徴とする耐熱合金部材の製造方法。
  11. 前記時効熱処理は、γ’相を結晶粒内に析出させる温度域で保持する熱処理に先立って、より高温で保持し結晶粒界に析出物を形成させる二段階熱処理であることを特徴とする請求項10記載の耐熱合金部材の製造方法。
  12. 結晶粒界に析出物を形成させる温度域に昇温し保持後、冷却し、γ’相を結晶粒内に析出させる温度域に昇温し保持後、冷却することを特徴とする請求項11記載の耐熱合金部材の製造方法。
  13. 前記時効熱処理は、結晶粒界に析出物を形成させる温度域を所定時間かけて通過させ、続いて、γ’相を結晶粒内に析出させる温度域に所定時間曝した後に冷却する連続熱処理であることを特徴とする請求項10記載の耐熱合金部材の製造方法。
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