JP2022159795A - 3次元成型品加飾用積層フィルム及び3次元成型品加飾方法 - Google Patents

3次元成型品加飾用積層フィルム及び3次元成型品加飾方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ホログラム層を層内に有するため、安定に良好な立体意匠性を長期間保持することができる3次元成型品加飾用積層フィルムを提供する。【解決手段】基材フィルム層(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)、及び、接着層(E)を有し、前記保護層(C)は、反応性樹脂及び硬化剤を含み、前記金属蒸着層(D)は、少なくともクリヤー塗膜層(B)側にホログラムパターンの凹凸模様を有することを特徴とする3次元成型品加飾用積層フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、3次元成型品加飾用積層フィルム及び3次元成型品加飾方法に関する。
プラスチック、金属その他の各種材料から得られた成型品においては、表面に意匠性を付与したり、表面を保護したりする目的で表面への加飾が一般的に行われている。
このような加飾の方法の一つとして積層フィルムを用いたフィルム加飾法が知られている。これは、成型品を加飾するための層をフィルムとして作成し、これを成型品上に貼着させることによって加飾を行うものである。このような加飾シートにおいて、ホログラムパターンと呼ばれる微細な凹凸模様を形成することによって新たな立体意匠性を付与することが検討されている。
特許文献1及び2には、表層に凹凸模様を有する三次元加飾用フィルムが開示されている。
しかしながら、これらの三次元加飾用フィルムは、金属層を有するものではないため、ホログラム外観を有するものではない。さらに、表層に凹凸模様を有することから、加飾成型時に凹凸模様が消失しやすいものである。
特許文献3には、表面に凹凸を有する接着層保護シートと、前記接着層保護シートの凹凸を有する面上に備えられた接着層と、着色剤と合成樹脂とを含有する加飾層と、合成樹脂を含有し、前記加飾層側とは反対側の表面に凹凸が形成された表皮層と、を備える合成樹脂加飾フィルムが開示されている(請求項1)。
しかし、金属加飾層を有することで、ホログラム外観を有するものではない。
特許文献4及び5には、表層ではなく、層内に凹凸層を有する加飾フィルムが開示されているが、充分な硬度と延伸性を両立したものではなかった。
特許文献6には、金属蒸着層を有する3次元成型品加飾用積層フィルムが開示されている。しかし、ホログラム外観を有するための凹凸形状を有するものではない。
特開2019-202448号公報 特開2018-12279号公報 特開2018-149725号公報 特開2020-28981号公報 特開2020-104467号公報 国際公開2016/080423号
本発明は、上記に鑑み、ホログラム層を層内に有するため、安定に良好な立体意匠性を長期間保持することができる3次元成型品加飾用積層フィルムを提供する。
本発明は、基材フィルム層(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)、及び、接着層(E)を有し、
上記保護層(C)は、反応性樹脂及び硬化剤を含み、
上記金属蒸着層(D)は、少なくともクリヤー塗膜層(B)側にホログラムパターンの凹凸模様を有することを特徴とする3次元成型品加飾用積層フィルムに関する。
上記クリヤー塗膜層(B)は、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものであることが好ましい。
上記保護層(C)に含まれる反応性樹脂は、水酸基を有する、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂であることが好ましい。
上記保護層(C)に含まれる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤であることが好ましい。
本発明は、上述の3次元成型品加飾用積層フィルムを加熱条件下で接着層を3次元成型品上に接着させることを特徴とする3次元成型品加飾方法でもある。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムによって、長期にわたってホログラム意匠を有する3次元成形体を得ることができる
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムの積層構造の一例を示す模式図である。 本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムの積層構造の一例を示す模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(3次元成型品加飾用積層フィルム)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、3次元成型品の加飾成形において使用するフィルムである。すなわち、意匠性を有するフィルムを各種成型品に接着させて、成型品に意匠性を付与したり、表面保護機能を付与したりするものである。
その際に、3次元形状の表面に沿った形に変形させて密着させるものである。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、基材フィルム層(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)、更に、積層フィルムを成型品に接着させるための接着層(E)を有するものである。また、必要に応じて、離形層(F)、意匠層(G)、紫外線吸収層(H)等を有するものであってもよい。これらの層を必要に応じて種々の積層形態としたものとすることができる。
本発明において、上記金属蒸着層(D)は、少なくともクリヤー塗膜層(B)側の面にホログラムパターンの微細な凹凸形状を有することを特徴としたものである。
すなわち、3次元成型品加飾用積層フィルム内部で微細な凹凸形状が形成されたものであるため、成型品に密着させる際にゆがみや亀裂等が生じにくいという利点がある。また、通常よりも小さい凹凸であるホログラムパターンを内部に形成することからホログラムによる特異な意匠性を付与することができる。
さらに、凹凸模様が最表面にこないため、汚れが凹部に付着することなく、また、凸部が摩耗することもなく、凹凸形状の劣化が生じにくいという利点もある。
上記層構成を有する3次元成型品加飾用積層フィルムは、金属蒸着層(D)を挟んで、その上下に保護層(C)及び接着層(E)を有するものであり、保護層(C)は、反応性樹脂を含有しており、更に、硬化剤を含有することを特徴とするものである。
従来の3次元成型品加飾用積層フィルムにおいては、加飾成形後の硬度が不足したり、耐水性が低下したり、また、金属蒸着界面で密着不良が起きたりすることがあり、十分な性能が得られないことがあった。保護層や接着層に、硬化剤を配合し、各層を硬化させることによって、このような課題は解決できるが、硬化剤を必要充分量配合すると、真空成形工程において延伸性(300%超)が確保できず、フィルムが破断したり膜の延伸歪により外観不良が発生したりしてしまう。
そこで、保護層(C)に、反応性樹脂を配合し、更に、特定の硬化剤を用いることで、加飾成形時の延伸性を確保しつつ、加飾成形後、硬度、耐水性等の問題が生じにくくなった。
さらに、本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、真空成形に好適に適用しうるものである。射出成形により3次元成型品加飾用積層フィルムを成型品に接着する場合、高温で処理するため凹凸模様にゆがみや亀裂等が生じるおそれがあった。一方、真空成形は高温での処理を必要としないためこのような問題はないものの、充分な延伸性が求められる。本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、硬化前に、40~130℃で30~500%の破断伸びを有するため、真空成形にも好適に適用しうるだけの延伸性を示すものである。
以下、図を参照しつつ、具体的な積層構造の態様について説明する。
図1に示した第一の積層構造は、基材フィルム(A)上に、離形層(F)、クリヤー塗膜層(B)、保護層(C)、金属蒸着層(D)、接着層(E)をこの順で積層した積層フィルムである。当該第一の積層構造においては、使用時に基材フィルム(A)を離形層(F)とともに剥離し、クリヤー塗膜層(B)、保護層(C)、金属蒸着層(D)、接着層(E)の四層からなる積層フィルムとして、これを成型品上に接着させ、硬化を行って使用するものである。
図2に示した第二の積層構造は、基材フィルム(A)上にクリヤー塗膜層(B)を積層し、反対の面に保護層(C)、金属蒸着層(D)、接着層(E)をこの順で積層した積層フィルムである。図2のように、基材フィルム層(A)が金属蒸着層(D)と隣接し、基材フィルム層(A)を剥離せずに使用する態様の場合は、基材フィルム層(A)と金属蒸着層(D)との間に保護層(C)を有するものとしてもよい。
(基材フィルム層(A))
基材フィルム層(A)は、本発明の積層フィルムを製造する際のキャリアフィルムとしての働きをもなすものである。すなわち、本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムの製造時に、各層を形成するための基材として使用されるものである。
基材フィルム層(A)を形成するフィルムとしては、特に限定されず、例えば、軟質塩化ビニルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、フッ素フィルム等の従来公知のフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルおよび/またはポリオレフィンにより形成されるフィルムが好ましく、特に省エネ低温加工性の点からは無延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。上記基材フィルム層(A)の厚みは、0.01~0.5mmであることが好ましく、0.02~0.3mmであることがより好ましい。この範囲を外れると、キャリアフィルムとしての働きや、電磁線硬化の際の経済性の点で好ましくない。
(クリヤー塗膜層(B))
本発明で使用するクリヤー塗膜層(B)は、エネルギー線硬化性塗膜であり、その具体的な組成は、積層フィルムとしての物性を害するものでない限り特に限定されるものではなく、公知のエネルギー線硬化性塗膜とすることができる。
エネルギー線硬化性塗膜は、3次元成型品加飾用積層フィルムの状態で、被加飾物の形状に変形させた後でエネルギー線照射によって樹脂を硬化させることができる。このため、容易に被加飾物の形状に変形させることができつつ、加飾後の塗膜層の強度、外観、耐薬品性等において優れた性能を示すものである。
なかでも、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものであることが好ましい。このような組成のものとすることによって、使用時の延伸が容易になされ、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。また、ブロッキングを生じにくいものとすることができるという利点も有する。
上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、組成物中の固形分全量に対して、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)の合計量が40~98重量%の割合であることが好ましい。このように、特定の配合割合とすることで、所定の効果を得ることができる点で好ましい。
更に、上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内となるように含有するものであることが好ましい。これによって、硬化前の耐ブロッキング性、深絞り性(延伸性)を有することができる。さらに硬化後の高い耐擦傷性、表面硬度、耐薬品性、耐衝撃性を有することができる。
以下、(B1)~(B3)について詳細に説明する。
(ポリウレタンアクリレート(B1))
ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレタン結合を分子内に有し、かつ(メタ)アクリレート基を分子中に有する化合物である。これを使用することによって、加飾成形を行う際の延伸性が向上し、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)としては、特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。例えば、
i)分子内に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物に、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物とを当量反応させて得られる化合物、
ii)ポリオールと1塩基酸及び/又は多塩基酸及び/又はその酸無水物との縮合物に、分子内に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物を反応させたのち、さらに分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物を反応させて得られる化合物、
iii)ポリオールに、分子内に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物を反応させたのち、さらに分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物を反応させて得られる化合物、
等が挙げられる。
上記i)~iii)において、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等や、市販品では、プラクセルC(M)Aシリーズ(ダイセル化学社の商品名)等が挙げられる。また、上記ii)~iii)において、多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン等や、市販品では、プラクセルジオールシリーズ(ダイセル化学社の商品名)、プラクセルトリオールシリーズ(ダイセル化学社の商品名)等が挙げられる。
上記ポリオールとしては特に限定されず、公知のアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。また、エチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等の各種低分子量ジオール等も必要に応じて使用することができる。
上記ポリオールとしては、ポリカーボネート濃度:0.5~75wt%(ポリウレタンアクリレート(B1)全量に対するポリカーボネートの割合。なお、原料として配合した成分の割合にもとづく計算値である)となる割合でポリカーボネートジオール骨格を有することが好ましい。ポリカーボネートジオール骨格を有するものを使用することで、強靭性が発現し、加飾成形時の膨れ防止、意匠外観保持(ワレ防止)が可能となる利点を有する。
上記ポリカーボネートジオールは、2~70重量%であることがより好ましい。
上記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のもの;イソホロンジイソシアネート等の脂環族のもの;その単量体及びそのビューレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネートの市販品としては、デュラネート24A-90PX(NCO:23.6%、商品名、旭化成社製)、スミジュールN-3200-90M(商品名、住友バイエルウレタン社製)、タケネートD165N-90X(商品名、三井化学社製)、スミジュールN-3300、スミジュールN-3500(いずれも商品名、住友バイエルウレタン社製)、デュラネートTHA-100(商品名、旭化成社製)等を挙げることができる。また、必要に応じてこれらをブロックしたブロックイソシアネートを使用することもできる。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、一部にウレア結合を有するものであってもよい。
ウレア結合を有するものとするためには、ポリウレタンアクリレートの合成において、一部にポリアミン化合物を使用すればよい。使用できるポリアミン化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;1,2-及び1,3-シクロブタンジアミン、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンビスシクロヘキサン2,4′-及び/又は4,4′-ジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマー等を挙げることができる。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、2重結合当量が130~600g/eqであることが好ましく、150~300g/eqであることがさらに好ましい。2重結合等量が130g/eq未満であると、硬化膜の耐クラック性、耐衝撃性に劣るという問題を生じるおそれがある。2重結合等量が600g/eqを超えると、擦傷性、表面硬度、耐薬品性に劣るという問題を生じるおそれがある。なお、上記2重結合等量は、樹脂の製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出した値である。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、重量平均分子量が3000~200000であることが好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、耐ブロッキング性に劣るという問題を生じるおそれがある。重量平均分子量が200000を超えると、得られるポリウレタンアクリレート(B1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)等との相溶性が低下する。加えて重量平均分子量が200000を超えるとクリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。なお、本明細書において、重量平均分子量は後述の方法により測定した。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレタン濃度が300~2000g/eqであることが好ましい。ウレタン濃度が300g/eq未満であると、得られるポリウレタンアクリレート(B1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)等との相溶性が低下する。加えてウレタン濃度が300g/eq未満であると、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。ウレタン濃度が2000g/eqを超えると、耐ブロッキング性、耐衝撃性に劣るという問題を生じるおそれがある。なお、ウレタン濃度は、樹脂の重量平均分子量をウレタン結合数で除した数値をあらわすものであり、樹脂の製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出した値である。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレア濃度が500~1000g/eqであることが好ましい。ウレア濃度が500g/eq未満であると、得られるポリウレタンアクリレート(B1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)等との相溶性が低下する。加えてウレア濃度が500g/eq未満であると、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。ウレア濃度が1000g/eqを超えると、耐ブロッキング性に劣るという問題を生じるおそれがある。なお、ウレア濃度は、樹脂の重量平均分子量をウレア結合数で除した数値をあらわすものであり、樹脂の製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出した値である。
ポリウレタンアクリレート(B1)は、フッ素及び/又はシリコーンで変性されたものであってもよい。すなわち、フッ素やシリコーン単位を含有する単量体を使用して上述した方法によってポリウレタンアクリレート(B1)を合成するものであってもよいし、上述した方法によって得られたポリウレタンアクリレート(B1)が有する官能基をフッ素及び/又はシリコーンを有する化合物と反応させたものであってもよい。
(不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2))
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)としては、公知の任意のものを使用することができ、例えば、以下の化合物を使用することができる。なお、上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)は、重量平均分子量が3000以下のものであることが好ましい。すなわち、上述したポリウレタンアクリレート(B1)の性能を補完するために、不飽和2重結合を有する比較的低分子量のモノマー・オリゴマーを使用するものである。なお上記ポリウレタンアクリレート(B1)に該当するものは、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)には該当しない。
上記不飽和二重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)を所定量配合することで、高架橋密度の被膜を形成することができ、これによって、クリヤー塗膜層の物性を向上させることができる点で好ましいものである。
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させて得ることができる。
これらの(メタ)アクリル系オリゴマーは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、また、上記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)としては、日本合成化学工業社製UV 1700B等の市販のものも使用することができる。
(重合開始剤(B3))
上記重合開始剤(B3)としては、紫外線(UV)や電子線等の電磁線によって重合が開始されるエネルギー線重合開始剤を使用することができる。これらのエネルギー線重合開始剤は特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。
具体的には、上記エネルギー線重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン系化合物;2-エチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ジフェニルスルフィド等のスルフィド系化合物;2,4-ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィノキサイド等のホスフィノキサイド系化合物;イルガキュア(登録商標)-184,イルガキュア-819(いずれもBASC社製)等の紫外線(UV)硬化用重合開始剤等を挙げることができる。これらの化合物は、重合開始剤として、1種又は2種以上を用いることができる。
((B1)~(B3)の配合量)
(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内となるように含有するものであることが好ましい。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)の含有量が50重量部未満であると、耐ブロッキング性が低下するという点で好ましいものではない。上記ポリウレタンアクリレート(B1)の含有量が99重量部を超えると、耐擦傷性、表面硬度が不充分となる点で好ましいものではない。上記下限は、55重量部以上であることがより好ましく、65重量部以上であることが更に好ましい。上記上限は、98重量部以下であることがより好ましく、95重量部以下であることが更に好ましい。
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)の含有量が1重量部未満であると、耐擦傷性、表面硬度が不充分となる点で好ましいものではない。上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)の含有量が50重量部を超えると、耐ブロッキング性が低下するという点で好ましいものではない。上記下限は、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが更に好ましい。上記上限は、45重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。
上記重合開始剤(B3)の含有量が0.5重量部未満であると、クリヤー層を十分に硬化させることができず、得られるクリヤーの耐擦傷性、表面硬度、耐薬品性、耐衝撃性の塗膜物性を得られない可能性がある。上記重合開始剤(B3)の含有量が20重量部を超えると、クリヤー塗膜内に未反応の重合開始剤(B3)が残存し、屋外での太陽光等によって、クリヤー塗膜が劣化し、耐候性が悪化する可能性がある。
上記クリヤー塗料組成物は、チオール化合物及び/又はアミン化合物を0.5~20重量部含有することが好ましい。
上記チオール化合物及び/又はアミン化合物としては、特に限定されず、通常使用されるチオール化合物、及び、アミン化合物を挙げることができる。
上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、等の脂肪族ポリアミン:1,2-及び1,3-シクロブタンジアミン、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンビスシクロヘキサン2,4′-及び/又は4,4′-ジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン:フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタンなどの芳香族アミン:及びダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化したダイマー酸ジアミン、末端にアミノ基を有するデンドリマー、アミンを繰返し構造として有するポリアミンを用いることもできるがこれらに限定されない。
上記チオール化合物としては、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、ジエチレングリコールジメルカプトプロピオネート、4-t-ブチル-1,2-ベンゼンジチオール、ビス-(2-メルカプトエチル)スルフィド、4,4′-チオジベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、グリコールジメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトプロピオネート、エチレンビス(3-メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジメルカプトアセテート、ポリエチレングリコールジ-(3-メルカプトピロピオネート)、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、ビスフェノフルオレンビス(エトキシ-3-メルカプトプロピオネート)、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、2-メルカプトメチル-2-メチル-1,3-プロパンジチオール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、チオグリセロールビスメルカプト-アセテート等の2官能チオール:トリメチロールプロパン(トリスメルカプトプロピオネート)(TMPTMP)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタン トリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトアセテート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、及びトリス(3-メルカプトプロピオネート)トリエチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、等の3官能チオール:ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン(PMPMS)、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオールペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトアセテート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)等の多官能チオールを含むが、これらに限定されない。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムにおいて使用されるクリヤー塗膜層(B)は、上述したようなものであるが、更に好ましくは、ポリウレタンアクリレート(B1)が
2重結合当量:130~600g/eq
分子量Mw:3000~200000
ウレタン濃度:300~2000g/eq、
である塗料組成物によって形成されたものであることが好ましい。これらの性質を満たすものを使用することが好ましい。このようなクリヤー塗料組成物によってクリヤー塗膜層(B)を形成することによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度,耐薬品性を備え,良好な耐衝撃性を付与することができる点で好ましいものである。さらに、上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレア濃度:500~1000g/eqであることが好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量は、東ソー(株)製HLC-82220GPCを用いて測定した。測定条件は下記の通りである。
カラム:TSKgel Super Multipore HZ-M 3本
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム注入口オーブン 40℃
流量:0.35 ml/min.
検出器:RI
標準ポリスチレン:東ソー (株)PSオリゴマーキット
(その他の成分)
クリヤー塗料組成物は、通常、塗料材料として添加される化合物が、その他の成分として含まれていてもよい。この場合、その他の成分の配合量は、塗料中の固形分全量に対して60重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることが最も好ましい。その他の成分としては、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(HALS)、バインダー用樹脂や架橋剤、顔料、表面調整剤、消泡剤、導電性充填剤、溶剤等を挙げることができる。
更に、クリヤー塗料組成物に含まれる各成分の混合や粘度調整のために溶剤を用いてもよい。該溶剤としては、例えば、エステル系、エーテル系、アルコール系、アミド系、ケトン系、脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系等、塗料に用いられる従来公知の有機溶媒を、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記溶剤を用いる場合、積層フィルムに揮発性物質が残存すると、基材への加飾に際して、揮発性物質が揮散して、ピンホールや膨れが生じることがある。そのため、積層フィルムに含まれる揮発性物質を十分に低減することが好ましい。
更に、上記クリヤー塗料組成物は、更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機フィラーや有機フィラーを0.5~60重量部(塗料中の固形分比)含有することが好ましい。これによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度を改善することができる。上記配合量の下限は、1重量%であることがより好ましく、上限は50重量%であることがより好ましい。
上記無機フィラーとしては、シリカ、微粉末ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、セピオライト(マグネシウム珪酸塩)、タルク(珪酸マグネシウム)、マイカ(珪酸アルミ)、ゾノトライト(珪酸カルシウム)、硼酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)、チタン酸カリウム、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、イットリア、セリア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、あるいはこれらの共融混合物、又は成型、焼成などを経て得られる非金属無機材料いわゆるセラミックスフィラーが挙げられる。その中で価格と効果の面からシリカ、アルミナ、ジルコニア、あるいはこれらの共融混合物が好ましい。
上記有機フィラーとしては、アクリル、スチレン、シリコーン、ポリウレタン、アクリルウレタン、ベンゾグアナミン、ポリエチレンの各樹脂のビーズが挙げられる。
また、市販のものとして、オルガノシリカゾルMIBK-ST, MEK-ST-UP、MEK-ST-L,MEK-AC-2140Z (日産化学工業製)、SIRMIBK15ET%-H24、 SIRMIBK15ET%-H83、ALMIBK30WT%-H06(CIKナノテック)等を使用することができる。
クリヤー塗料組成物は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量%(塗料中の固形分比)含有するものであってもよい。ポリイソシアネート化合物を配合することによって、成形性(延伸性)と耐擦傷性を付与できる点で好ましい。上記配合量の下限は、2重量%であることがより好ましく、上限は18重量%であることがより好ましい。
上記クリヤー塗料組成物は、着色顔料を含有した有色透明なものであってもよい。すなわち金属蒸着層とこのような着色透明であるクリヤー層との組み合わせによって、着色した金属蒸着を有する加飾を行うことができる。上記クリヤー塗料組成物において使用できる着色顔料は特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。
クリヤー塗膜層の膜厚としては特に限定されないが、3~60μmであることが好ましい。
表面硬度や耐擦り傷性などの性能を維持するためには、所定の膜厚を確保することが好ましい。塗膜を形成する工法にもよるが、50mPa・s~5000mPa・sが好ましく、100mPa・s~3000mPa・sがより好ましい。粘度がこれより低いと膜厚を確保することが困難となり、また作業性が劣ることとなる。粘度がこれより高いと、塗工が困難になり、外観が低下するおそれがある。また、空気が内在しやすくなるため、成形時に膨れなどの不具合が発生する。
(保護層(C))
本発明に係る3次元成型品加飾用積層フィルムは、クリヤー塗膜層(B)と金属蒸着層(D)との間に保護層(C)を形成する。すなわち、金属蒸着層(D)を、クリヤー塗膜層(B)と接する位置に設けた場合、未硬化状態での延伸によって未硬化状態のクリヤー塗膜層(D)が動く際に、金属蒸着層(D)が動いてしまい、これによって外観の悪化を生じる場合がある。そこで、保護層(C)を設けることによって、金属蒸着層(D)の外観乱れが生じにくくなる。
また、未硬化状態のクリヤー塗膜層(B)上に金属蒸着層(B)を形成する場合には、金属蒸着層(D)の形成が困難となることがある。よって、このような問題を軽減させるという観点からも、蒸着性が良好であるような保護層(C)を設けることで、このような問題を改善する。
また、金属蒸着層(D)は、他の層との接着性が悪い場合もある。このため、他素材との接着性に優れた素材による保護層(C)を形成し、金属蒸着層(D)上に、当該保護層(C)を設けることによって、他層との接着性を向上させることも好ましい。これによって、例えば、クリヤー塗膜層(B)や下記意匠層(G)との接着性を改善させることができる。
保護層(C)に使用される樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等を使用することができ、中でも、ウレタン樹脂が好ましく、ウレア結合含有ウレタン樹脂が更に好ましい。樹脂は、1種単独で又は2種以上を併用して配合することができる。
本発明においては、上記保護層(C)は、反応性樹脂と硬化剤を含有することを特徴とするものである。
上記反応性樹脂は、硬化剤と反応して架橋構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、水酸基を有する、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を使用することができる。中でも、水酸基を有する、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
水酸基を有する、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を用いると、金属蒸着層との密着性、耐薬品性、耐水性、成型時の延伸性などの性能をそれぞれ満足することができるといった利点がある。
(水酸基を有するエポキシ樹脂)
上記水酸基を有するエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを必要に応じてアルカリ触媒等の触媒存在下で高分子量まで縮合させてなる樹脂;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;及びノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記ビスフェノールとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、p-(4-ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4-ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4-ヒドロキシフェニル)、4,4´-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
また、水酸基を有する反応性樹脂として好適なエポキシ樹脂である上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
上記水酸基を有するエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の変性物であってもよい。エポキシ樹脂の変性物としては、例えば、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂を挙げることができる。例えば、アクリル変性エポキシ樹脂を例に挙げると、これは、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は上記ノボラック型エポキシ樹脂に、アクリル酸又はメタクリル酸等を含む重合性不飽和モノマー成分を反応させて調製することができる。また、ウレタン変性エポキシ樹脂を例に挙げると、これは、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は上記ノボラック型エポキシ樹脂にポリイソシアネート化合物を反応させて調製することができる。
水酸基を有するエポキシ樹脂として、例えば、荒川化学工業株式会社製のアラキード9201N、9203N、9205、9208、KA-1439、モビテクス401、三菱ケミカル社製のjER1004、jER1007、1255HX30(ビスフェノールA骨格)、YX8100BH30、DIC株式会社製のエピクロンH-301-35PX、エピクロンH-303-45M、エピクロンH-353、エピクロンH-360等を挙げることができる。
水酸基を有するエポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000以上100,000以下であることが好ましく、2,000以上80,000以下であることがより好ましく、2,000以上50,000以下であることが特に好ましい。本発明において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算した値である。
具体的には、TOSOH製のHLC-8200にて、カラムにTSKgel SuperMultiporeHZ―Mを用いて、カラムの温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。
水酸基を有するエポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)が上記範囲内であることにより、加飾成型品の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できるという利点を有する。
水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。また、水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上である。 例えば、水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上120℃以下の範囲であることができる。本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、Reogel-E4000(株式会社ユービーシー製)等を用いて測定することができる。
水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、加飾成型品の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の加熱時に成型フィルムの軟化と同調し優れた延伸性を確保できるという利点を有する。
(水酸基を有するポリウレタン樹脂)
上記水酸基を有するポリウレタン樹脂は、常法に従い、得ることができる。例えば、ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを、水酸基過剰の条件下で反応させる方法等が挙げられる。
ポリエステルポリオール(a1)は、常法に従い、得ることができる。例えば、反応槽中に多価アルコールと多塩基酸を仕込み、加熱、撹拌しながら180~250℃にて反応することにより得られる。
<多価アルコール>
上記多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1 ,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサド付加物などの飽和および不飽和の低分子グリコール類、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類やバーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類である。
更には、環状エステル化合物を開環重合させてポリエステルポリオールを得ることもできる。
<多塩基酸>
上記多塩基酸の例としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸、および、これらの無水物が挙げられる。
<ポリイソシアネート化合物(a2)>
ポリイソシアネート化合物(a2)としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知の種々のジイソシアネート類や、3官能のイソシアネート類も必要に応じて使用することが出来る。例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が、脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が、脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4、4′-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。また、3官能イソシアネート類としては、上記ジイソシアネート類をトリメチロールプロパン等で3官能化したアダクト体、イソシアヌレート体、ビューレット体等が挙げられる。
<鎖伸長剤>
水酸基を有するポリウレタン樹脂を得る際に用いられる鎖伸長剤としては、各種公知の多価アルコールを使用できる。 当該多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5- ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチルジオール、ジプロピレングリコール等の飽和および不飽和の各種公知の低分子グリコール類およびダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が代表例として挙げられる。
水酸基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000~150,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、5,000~50,000が更に好ましい。
水酸基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)が上記範囲であると、加飾成型品の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できるという利点がある。
なお、数平均分子量(Mn)は、樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。上記と同様にして得られる。
水酸基を有するポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃以上80℃ 以下が好ましく、-30℃以上60℃以下がより好ましく、-30℃以上50℃以下であることが更に好ましい。
水酸基を有するポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、加飾成型品の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の加熱時に成型フィルムの軟化と同調し優れた延伸性を確保できる。
本発明に用いる反応性樹脂の酸価は0.5~300mgKOH/gであることが好ましい。
反応性樹脂の酸価が上記範囲であることで、加飾成型品の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できる架橋密度を得ることができるという利点がある。
反応性樹脂の酸価の下限は、2.0mgKOH/gであることがより好ましい。反応性樹脂の酸価の上限は、250mgKOH/gであることがより好ましい。
本明細書において、酸価はJIS K 0070-1992(電位差滴定方法)に準じて評価した。すなわち、ジエチルエーテルとエタノールを体積比で4:1に混合した溶剤にフェノールフタレイン溶液を指示薬として加え、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で中和した。ビーカーに試料約5gを精秤採取し、溶剤50mLを加え、パネルヒーター(80℃)上で完全に撹拌溶解し、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で、電位差滴定を行って求めた値である。
保護層(C)において、反応性樹脂の配合量は、保護層(C)中、10~70重量%であることが好ましい。この範囲であれば、加飾成型品の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できる架橋密度を得ることができる。また、耐候性能などの耐久性や耐水耐熱以外の必要性能、塗工性能などと両立することができる。
また、反応性樹脂の配合量の下限は、20重量%であることがより好ましい。反応性樹脂の配合量の上限は、50重量%であることがより好ましい。
(硬化剤)
更に、本発明においては、保護層に硬化剤を用いることが必要である。
硬化剤を用いることにより、真空成形時の3次元成型品加飾用積層フィルムの成形時における金属蒸着層の流動性を抑止し、ホログラムパターンが歪むなどの外観不良を抑止しながら延伸性を確保し、更に、成形後の硬度を確保し、耐水剥離等の問題も生じにくいものとすることができる。
本発明において、硬化剤は、イソシアネートモノマー、ポリイソシアネート、ブロック型イソシアネート等が挙げられる。中でも、ポリイソシアネートを用いることが好ましい。硬化剤として、ポリイソシアネートを用いることで、求める反応性を得ることができ成型時における金属蒸着層の流動性を抑止や成型後の必要な物性を得ることができる。また、塗料製造、塗工時の安全性の観点からも好ましいという利点がある。
本発明において用いる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤であることが好適である。
1級イソシアネート基は、イソシアネート基(-NCO)が結合している炭素原子(C )に、水素原子(H)が2つ結合している1価の官能基(-CHNCO)と定義される。
本発明において、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤(IA)は、当該1級イソシアネート基が、ブロック剤によりブロックされているものは含まない。
1級イソシアネート基のみを有する硬化剤(IA)としては、1級イソシアネート基のみを有するイソシアネート、例えば、1級イソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート、1級イソシアネート基を有する脂環式イソシアネート、1級イソシアネート基を有する芳香脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
1級イソシアネート基のみを有する脂肪族イソシアネートは、1級イソシアネート基を有する鎖状(直鎖状または分岐鎖状:非環式)脂肪族イソシアネートであって、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、へプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
1級イソシアネート基のみを有する脂環式イソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
1級イソシアネート基のみを有する芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
これら1級イソシアネート基のみを有するイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用してもよい。
1級イソシアネート基のみを有するイソシアネートとして、耐光性、ハンドリング性の観点から、好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート、1級イソシアネート基を有する脂環式イソシアネートが挙げられ、耐薬品性の観点から、より好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
1級イソシアネート基を有する脂肪族イソシアネートとして、入手容易性の観点と成型時の延伸性の観点から、好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられ、より好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
上記1級イソシアネート基のみを有するイソシアネートの市販品としては、デスモジュールN3800(商品名、住化コベストロウレタン社製)、タケネートD-178NL、スタビオD-370N、D-376N(三井化学株式会社)、デスモジュールH、N75MPA/X、N3200、N3300、N3390EA、N3400、N3600、N3790BA、N3800、N3900、XP2580、XP2840、スミジュールHT(住化コベストロウレタン)、デュラネート24A-100、22A-75P、TPA-100、TKA-100、P301-75E、D101、D201(旭化成)等を挙げることができる。
イソシアネートの配合量は、保護層(C)中の反応性樹脂のOH当量およびイソシアネートのNCO当量によって適宜決めることが好適である。イソシアネート(IA)は、その比率(OH:NCO)が1:0.8~1:2.0で混合することが好ましい。保護層(C)の全量に対して、イソシアネート(IA)は0.5~10重量部であることが好ましい。
上記イソシアネートは、2種類に限らず、目的を達成する範囲で、適宜2種類以上用いるようにしてもよい。
(硬化触媒)
上記水酸基を有する反応性樹脂と硬化剤とを反応硬化させるにあたり、硬化触媒を添加してもよい。
硬化触媒としては、例えば、スズ触媒、アミン触媒、鉛触媒等を挙げることができ、中でも、有機スズ化合物が好ましく用いられる。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTL)、ジブチルスズオキサイド、テトラ-n-ブチル-1,3-ジアセトキシスタノキサン等を用いることができる。
硬化触媒の配合量は、反応性樹脂及びイソシアネート化合物の固形分の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。硬化触媒の量が0.1重量部未満であると(IA)の硬化が困難となり加飾成形時の金属蒸着層の流動性が抑止できず外観が不良になる傾向にある。10重量部を超えると塗工前に塗料がゲル化してしまったり、加飾成形時に硬化が進みすぎ延伸性が不足し塗膜が割れたりする傾向にある。
上記保護層(C)は、厚みを特に限定されるものではないが、例えば、10~50μmであることが好ましい。上記下限は、15μmであることがより好ましい。上記上限は、30μmであることがより好ましい。
10μm未満だと延伸部における耐水遮断性が十分に確保できない可能性があり、50μmより大きいと塗工及び乾燥が困難となり、またコストの面で不利となる傾向にある。
また、金属蒸着層表面の凹凸に十分入り込む必要があるため、保護層(C)を形成する保護層塗料の粘度は低い方が好ましい。
(接着層(E))
接着層(E)は、3次元成型品を積層フィルムにて加飾する際に、積層フィルムを3次元成型品表面に密着させて接着させるために用いられる。
接着層(E)に含まれる接着樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、塩ビ・酢ビ樹脂、エポキシ樹脂及びブチラール樹脂からなる群から選択され、軟化温度が20~100℃である少なくとも1の接着樹脂を含有するものが好ましい。
例えば、バイロンUR-3200(東洋紡社製)、ダイフェラミンMAU-2600(大日精化工業製)、UR-1361ET(東亜合成製)、Xp012N35(三井化学製)等を挙げることができる。
また、上記接着層(E)は、全光線透過率が20%以下とすることが好ましい。特に、可視光領域(波長380~810nm)における透過率を低下させることが好ましい。全光線透過率は15%以下であることが好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
このように、接着層(E)が全光線透過率の低いものであることによって、基材表面における反射が低減され、金属蒸着層におけるレイリー散乱やミー散乱が低減され、これによって意匠性が向上する。レイリー散乱やミー散乱は、金属蒸着層が白化した場合に反射光が当たることによって生じるものである。したがって、金属表面からの反射光の量を低減することができれば、レイリー散乱やミー散乱による意匠性の低下を抑制することができるものである。また、接着層(E)が上記全光線透過率を有するものとすることで、光透過性が低下するため、基材の耐光性が向上するという点でも好ましい。
なお、本明細書における全光線透過率は、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ)により、波長380.0nm~810.0nmの範囲で、積分球を用い、全光線透過率を測定した。光源はハロゲンランプを使用する、という方法によって測定した値である。全光線透過率は、接着層(E)のみの透過率である。したがって、3次元成型品加飾用積層フィルムの接着層(E)を測定する場合は、剥離して接着層(E)のみとしてこれの全光線透過率を測定する方法、接着層(E)の組成を明らかにして、同等の組成・厚みを有する単一フィルムを作製し、当該単一フィルムの全光線透過率を測定するものであってもよい。
上記接着層(E)の光透過率を低下させるためには、各種の着色顔料等を配合する。着色顔料としては特に限定されず、例えば、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料などの光輝性顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンなどの無機着色顔料;カオリン、クレー、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料等を使用することができる。
上記着色顔料は、カーボンブラックであることが最も好ましい。カーボンブラックは、下層塗膜に対する光線遮断、隠蔽性という点で特に好ましいものである。カーボンを配合する場合、接着層(E)の固形分全量に対して0.4~20重量%の割合で配合することが好ましい。
上記カーボンブラックとしては、カーボンブラックMA100、#2650(三菱ケミカル株式会社製)、CORAX N660(オリオン エンジニアド カーボンズ株式会社製)、カラー ブラック CW200P(エボニックデグサジャパン株式会社製)、モナーク 1300(Cabot製)、ラーベン 1255P、ラーベン 5000ULTRA3(Columbian製)等を挙げることができる。
これらの市販の公知の接着剤に対して、全光線透過率が20%以下となるようにカーボン等の各種着色剤を配合して使用することができる。
本発明は、上述した観点から、特に、金属基材上に意匠性を付与することに使用することが好ましい。更に、自動車用ホイール等のように、形状が複雑であり、変形による問題を生じやすい分野において、上述した効果はより顕著なものとなる。
接着層(E)に使用する接着剤は、顔料分散樹脂、着色顔料、および溶媒、そして任意の成分を、任意の順序で加えて混合することによって調製することができる。また、必要に応じて添加剤を含んでもよい。添加剤として、例えば、上記顔料分散樹脂以外の樹脂成分、増粘剤、消泡剤、造膜助剤、凍結防止剤、タレ防止剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
上記接着剤を調整するための分散機としては、SGミル、ボールミル、ビーズミル、スパイクミル、パールミル、ダイノミル、2本または3本のロールミル、エクストルーダー、ペイントシェーカー、超音波処理、ホモジナイザー、ニーダー、フラッシング処理などが挙げられる。分散させる際のメディアとしては、ジルコンビーズ、ジルコニアビーズ、ソーダー石灰ガラスビーズ、無アルカリビーズ、アルミナビーズ、シリコンビーズなどが挙げられる。
接着層(E)は、上記接着剤を塗布・乾燥することにより形成したものであっても、接着剤シートをラミネートして形成したものであってもよい。
接着層(E)は、厚みを特に限定されるものではないが、例えば、10~50μmであることが好ましい。上記上限は、30μmであることがより好ましく、25μmであることが最も好ましい。
10μm未満だと延伸部における接着が十分に確保できない可能性があり、50μmより大きいと塗工及び乾燥が困難となり、またコストの面で不利となる。
(インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D))
蒸着とは、真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱・気化して、離れた位置に置かれた基材の表面に付着させ、薄膜を形成する工法である。本発明において、蒸着に使用される金属は、スズ、インジウムである。蒸着には10-3~10-4Pa程度の真空度が必要なため、一旦、容器を真空状態にする必要がある。それゆえ、蒸着は完全なバッチ処理となり、連続的な処理が不可能である。
また、フィルムへの蒸着工法は一般的に、(1)チャンバー内にフィルムロール及びターゲット金属をセットし、(2)チャンバー内を真空排気(10-3~10-4Pa)し、フィルムの走行をスタート、(3)ターゲット加熱、蒸気発生でフィルム表面に蒸着され、(4)蒸着完了で、チャンバーを大気開放する工程からなる。部品への直接蒸着に比べ、バッチ処理でありながら、フィルム1ロール分が連続して加工されるため、経済効率が高い。また、蒸着膜の厚みや質が制御しやすいという利点がある。ただし、フィルムのままでは3次元形状物へ適用できないものである。
本発明における上記インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)は、これらの金属を使用した通常の蒸着法によって形成することができる。インジウム又はスズを使用することによって、伸びが良好な金属層とすることができるため、3次元形状への成形を行う場合にワレや白化を生じることがなく、外観に悪影響を生じることもない。これらのなかでもインジウムが特に好ましい。
本発明においては、金属蒸着層(D)として、インジウム又はスズを使用することで、不連続蒸着という作用によって、ワレや白化が生じにくいという利点を有するものである。更に、金属蒸着層(D)の上下に存在する保護層(C)と接着層(E)とが一部架橋することが可能となり、保護層(C)と接着層(E)と層間密着性を高め、加飾成形後の積層フィルムの硬度を保つことができる。
金属蒸着層(D)は、光学濃度が0.6~1.4であることが好適である。
金属蒸着層の光学濃度が上記0.6未満であると、蒸着された金属の量が不十分であることから、延伸部において充分な金属光沢が得られない。さらに光学濃度が1.4を超えると、延伸部においてマイクロクラックによる白化が顕著になり、良好な金属光沢が得られないという点で好ましくない。
本発明において、金属蒸着層(D)の光学濃度は、カラー透過濃度計(大日本スクリーン製造株式会社製、DM-500を用いて測定されたものである。また、金属蒸着層(D)の厚さはFE-SEM HITACHI製 S4800(acceleration voltage 5kV)によりフィルム断面を観察し測定した。
このような金属蒸着層(D)を形成する場合、その厚みは、0.02~5μmであることが好ましい。このような厚みとすることで、上述した目的を良好に達成することができる。なお、金属蒸着層(D)の厚みと光学濃度は、密接な関係を有するものであり、厚みが大きいほど光学濃度が高い金属蒸着層となる。被蒸着層の材質にもよるが、一般的には光学濃度が0.6~1.4の場合、その金属蒸着層の厚みは、0.02μm~0.08μmとなる。
上記厚みの下限は、0.03μmであることがより好ましい。上記厚みの上限は、0.1μmであることがより好ましく、0.05μmであることが更に好ましい。
本発明において、上記金属蒸着層は、ホログラムパターンの凹凸模様を有するものである。ホログラムパターンの凹凸模様とは、ナノオーダーの凹凸模様であり、このような凹凸模様を有する金属蒸着層表面に入射した光と、金属蒸着層表面から反射した光とが干渉することにより、ホログラム意匠が発現される。
本発明においては、金属蒸着層(D)の少なくともクリヤー塗膜層(B)側に上記凹凸模様を有するものである。すなわち、クリヤー塗膜層(B)側が外側となることから、こちらの面にホログラム意匠を有する面を形成することで、良好な外観を得ることができる。ホログラム意匠を発現する凹凸模様は、全面に設けられたものであってもよいし、面のうち一部にのみ形成されたものであってもよい。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、上述のように、金属蒸着層の少なくともクリヤー塗膜層(B)側に上記凹凸模様を有するものである。上記積層フィルムを用いて3次元成型品に加飾を行った場合、クリヤー塗膜層が表層近くに存在し、凹凸模様の下層に金属蒸着面が存在する構造となる。ホログラム意匠を発現するには反射光強度が必要とされるため、凹凸模様の下層に金属蒸着層が必要である。
上記凹凸模様について、以下詳述する。
金属蒸着層は、複数の凸部(突起)が可視光の波長(780nm)以下のピッチ(隣接する凸部の頂点間の距離)で設けられる凹凸構造を表面に有していることが好ましい。このようにすることで、良好なホログラム意匠を示すことができる。
凸部の形状としては、例えば、柱状の下部と半球状の上部とによって構成される形状(釣鐘状)、錐体状(コーン状、円錐状)等の、先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)が挙げられる。凸部の間隙の底辺は水平な形状であっても、傾斜した形状であってもよい。
複数の凸部の平均ピッチは、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生を充分に防止する観点から、好ましくは100~5000nm、より好ましくは200~2000nmである。このような構成によれば、外観上の問題の発生が防止される。複数の凸部の平均ピッチは、具体的には、走査型電子顕微鏡で撮影された平面写真の1μm角の領域内における、すべての隣接する凸部のピッチの平均値を指す。
複数の凸部の平均高さは、後述する複数の凸部の好ましい平均アスペクト比と両立させる観点から、好ましくは10~2000nm、より好ましくは50~1000nmである。このような構成によれば、ホログラム意匠性が不充分となることが防止される。複数の凸部の平均高さは、具体的には、走査型電子顕微鏡で撮影された断面写真における、連続して並んだ10個の凸部の高さの平均値を指す。但し、10個の凸部を選択する際は、欠損や変形した部分(測定用試料を準備する際に変形させてしまった部分等)がある凸部を除く。
複数の凸部の平均アスペクト比は、好ましくは0.1以上、1.5以下、より好ましくは0.2以上、1.0以下である。複数の凸部の平均アスペクト比が0.1未満である場合、優れたホログラム意匠性が得られないことがある。複数の凸部の平均アスペクト比が1.5よりも大きい場合、凹凸構造の加工性が低下し、スティッキングが発生したり、凹凸構造を形成する際の転写具合が悪化したりすることがある。複数の凸部の平均アスペクト比は、上述した複数の凸部の平均高さと平均ピッチとの比(高さ/ピッチ)を指す。
このような表面の凹凸の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、金属ロール表面、平板表面又はフィルム上のUV硬化樹脂表面に加工されたホログラム凹凸パターンを、蒸着面に形状転写する方法等を挙げることができる。このような方法としては一般的に広く知られた周知の方法を適用することができる。上記ホログラム凹凸パターンを表面に有する基材は、周知の方法によって得たものを使用することができる。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、更に、上記各層に加えて、必要に応じて離形層(F)や印刷によって形成された意匠層(G)を形成したものであってもよい。印刷によって形成された意匠層(G)を設けた場合は、印刷による意匠性と金属蒸着層による意匠性が組み合わされた特異的な意匠外観を得ることができる点で好ましい。
また、印刷によって形成された意匠層(G)が、エネルギー線硬化型インクを使用した印刷である場合は、紫外線吸収層(H)を設けることが好ましい。すなわち、エネルギー線硬化型インクをフィルム作成時に硬化させる必要が生じるが、このインクの硬化の際に、クリヤー塗膜層(B)が同時に硬化することを防ぐことが好ましいためである。紫外線吸収層(H)は、上述した目的で設けられるものであることから、印刷によって形成された意匠層(G)とクリヤー塗膜層(B)との間に設けられることが好ましい。
(離形層(F))
本発明において離形層(F)を設ける場合は、公知の任意のものを使用することができ、例えば、シリコーン系離型剤等によって形成することができる。
離形層(F)とクリヤー塗膜層(B)の剥離強度は、0.05~8.0N/25mmであることが好ましく、0.1~5.0N/25mmであることがさらに好ましい。0.05N/25mm未満であると、フィルム製造時、加飾成形時に基材フィルム層(A)が剥離するなど、作業性が悪く、また、8.0N/25mmを超えると、成形後フィルムを剥離する場合に、剥離が困難となるおそれがある。
(印刷によって形成された意匠層(G))
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、印刷によって形成された意匠層(G)を有するものであってもよい。このような層を設けることによって、印刷層と金属蒸着層との組み合わせによる特異的な外観が得られる点で好ましい。印刷の方法は特に限定されず、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷又はフレキソ印刷等の公知の方法によって形成することができる。特に、インクジェット印刷を使用することで、安価に種々の印刷層を形成することができる点で好ましい。また、印刷に際しては、エネルギー線硬化型のインクを使用した印刷を行うものであってもよい。
(紫外線吸収層(H))
紫外線吸収層(H)を設ける場合は、強度40℃~130℃で3~1000N/cm、表面張力20~60mN/m、及び、紫外線透過率290nm~430nmで20%以下を満たすものであることが好ましい。
強度が低いと、成形時膨れを生じ、高いと成形性が不十分になる。また、表面張力が低いとインクがにじみ、高いとインクがハジキ、いずれも良好な印刷画像を得られなくなる。また、紫外線透過率が高いと、十分な紫外線遮断効果が得られなくなる。
すなわち、インクジェット印刷を行うのに十分な表面張力を有し、クリヤー塗膜層の硬化を防ぐのに十分な紫外線遮蔽能を有し、かつ、成形において不具合を生じないだけの強度を有するものとしたものである。
上記紫外線吸収層(H)の強度は、紫外線吸収層単独で島津製作所製オートグラフAG-ISを用い60℃の温度条件下、50mm/minの引張速度にて、伸び200%の時の膜強度を測定したものである。
上記紫外線吸収層(H)の表面張力は、自動接触角計DSA20(クルツ社製)を用い、水およびヨウ化メチレンの接触角を測定し、算出されたものである。
上記紫外線吸収層(H)の紫外線透過率は、紫外可視分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ)を用い、波長290.0nm~430.0nmの範囲で測定されたものである。
また、紫外線吸収層(H)は、紫外線は吸収するが、可視光は透過しやすいものであることが好ましい。可視光が透過しなければ、意匠層が外部から見にくいものになってしまうためである。
上記紫外線吸収層(H)は、バインダー樹脂(H1)及び紫外線吸収剤(H2)を含有する塗料組成物によって形成されたものであることが好ましい。そして、これらの成分の配合や組み合わせを調整することによって、上述したパラメータを満たす層を形成すことができる。
上記バインダー樹脂(H1)としては、特に限定されず、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を使用することができ、ウレタン樹脂が好ましく、ウレア結合含有ウレタン樹脂がさらに好ましい。1種単独でまたは2種以上を併用して配合することができる。
紫外線吸収層(H)全量に対して85~99重量%の範囲内であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤(H2)としては、特に限定されず、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等を使用することができる。
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチルフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-s-トリアジン、2-〔2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル〕-4,6-ジフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロー2-ヒドロキシベンゾフェノン2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジエトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジプロポキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジブトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシー4′-プロポキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシー4-メトキシ-4′-ブトキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジ(2-ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメトキシ-5,5′-ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメトキシ-5,5′-ジ(2-ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-5′-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-〔2′-ヒドロキシ-5′-(ヒドロキシメチル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、2-〔2′-ヒドロキシ-5′-(2-ヒドロキシエチル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、2-〔2′-ヒドロキシ-5′-(3-ヒドロキシプロピル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、2-〔2′-ヒドロキシ-3′-メチル-5′-(ヒドロキシメチル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート、等が挙げられる。
上記ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサルシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、4-t-ブチルフェニルサルシレート、2,5-t-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸n-ヘキサデシルエステル、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3′,5-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-アミルフェニル-3′,5-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3′,5-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤(H2)としては、短波長域から長波長域に渡る広範囲の波長(約280~360nm)の紫外線吸収性が高い点で、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
紫外線吸収剤は上記化合物を1種単独で又は2種以上を併用して配合することができる。
具体的には、チヌビン400、900、447、1130(BASF社製)を使用することができる。紫外線吸収剤(H2)の配合量は使用する紫外線吸収剤によって相違し、上述した紫外線透過率を満たすものであれば特に限定されないが、紫外線吸収層(H)全量に対して1~15重量%の範囲内であることが好ましく、3~10重量%の範囲内であることがさらに好ましい。1重量%未満であると紫外線遮断効果が不十分になる可能性がある。15重量%を超えると紫外線吸収層の強度が低下し成形性が不十分になる可能性があり、またコストの面で不利となる。
上記紫外線吸収層(H)は、表面調整剤(H3)を含有するものであってもよい。すなわち、紫外線吸収層(H)において使用する樹脂種によっては、表面張力を上述したような範囲内のものとすることが困難となる場合がある。この場合は、表面調整剤(H3)を配合することによって、上述した範囲内の表面張力とすることができる。
上記表面調整剤(H3)としては特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン等を使用することができる。具体的には、例えば、BYK-300、BYK-342、BYK-349(ビックケミージャパン社製)などが挙げられる。
上記表面調整剤(H3)の配合量は特に限定されず、紫外線吸収層(H)全量に対して0.01~5重量%の範囲内であることが好ましい。
上記紫外線吸収層(H)は、その厚みを特に限定するものではないが、例えば、3~30μmであることが好ましく、5~25μmであることがより好ましい。薄すぎる場合は、紫外線遮蔽性能や強度を充分に得ることが困難となりやすく、厚すぎても特に性能が向上するわけではなく、コスト上不利になってしまうばかりか、塗工および乾燥が困難となる。
(易接着層(J))
図2のように、基材フィルム層(A)が金属蒸着層(D)と隣接し、基材フィルム層(A)を剥離せずに使用する態様の場合は、基材フィルム層(A)の片面あるいは両面にコロナ処理する、あるいは、易接着層(J)を設けることが好ましい。これにより、基材フィルム層(A)とクリヤー塗膜層(B)、あるいは、基材フィルム層(A)と金属が蒸着された接着層または保護層(C)との密着が良好になる。
上記易接着層(J)は、具体的には、東洋インキ株式会社 PET用ポリエステル樹脂系易接着コートPET134アンカー等からなる層であることが好ましい。
(破断伸度)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、硬化前に、40~130℃で30~500%の破断伸びを有するものである。すなわち上記の温度範囲で、このような破断伸度を有するものとすることで、真空成形に容易に対応できるものとなり、本発明の効果を好適に得ることができる。このような数値範囲内のものとすることは、フィルムを形成する各層の成分を調製することで可能となる。本発明において、「40~130℃で30~500%の破断伸びを有する」とは、破断伸びが30~500%を示す温度領域が40~130℃内にあり、その温度で成形することで、十分な延伸性が得られる。という意味である。
なお、破断伸度は、基材フィルム層(A)を含む状態で島津製作所製オートグラフAG-ISを用い、40~130℃の温度範囲内で、50mm/minの引張速度にて測定し、いずれかの層が破断した時点の伸びを測定して得られた値である。フィルムの性質に応じて、40~130℃の範囲内のいずれかの任意の温度において、破断伸びが上述した範囲のものとなればよい。
(積層フィルムの製造方法)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムを構成する基材フィルム層(A)及び金属蒸着層(D)以外の各層は、各層を構成する成分を溶剤に溶解した塗料組成物を調製し、これを基材フィルム層(A)又は離形層(F)上に塗布・乾燥することで、形成することができる。
以下に、具体的な方法の例を提示する。
例えば、基材フィルム層(A)上に、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)及び保護層(C)を順次形成する工程(1-1)、
別途、カバーフィルム上に、接着層(E)及びインジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)を順次形成する工程(1-2)、並びに、
上記工程(1-1)で得られたフィルムと上記工程(1-2)で得られたフィルムとを、保護層(C)と金属蒸着層(D)とが接するようにラミネート法により積層する工程(1-3)を有することを特徴とする製造方法によって得ることが好ましい。
上記各層を形成するための塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレーによる吹付け塗布、アプリケーターや、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラブラシ、はけ、へら等を用いて塗布すればよい。上記塗布方法にて、塗料溶液を塗布した後、該塗料溶液中の溶剤を除去するために、加温乾燥を行って、形成することができる。
また、接着層(E)に関しては、塗布・乾燥という方法ではなく、ラミネート法によって接着するものであってもよい。そして、このようにして形成された接着層(E)上に金属蒸着層(D)を形成し、これを基材フィルム層(A)上に必要な層を形成した多層フィルムにラミネートによって接着させる方法で形成してもよい。
また、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)の形成方法は特に限定されるものではなく、通常の公知の方法によって行うことができる。
上記のように、カバーフィルム上に形成された接着層(E)上に金属蒸着層(D)を形成させ保護層(C)とラミネート法により積層する工程は、耐熱性のカバーフィルムを用いることにより塗工時の乾燥性を高め、真空蒸着時のアウトガスの発生を抑え金属外観を良好なものにする利点がある。
上記金属蒸着層(D)上の凹凸模様の形成方法としては特に限定されず、公知の転写方法により形成することができる。
例えば、まず、接着層(E)上に金属蒸着層(D)を形成する。得られた積層フィルムの金属蒸着層(D)表面に、ホログラムパターンの凹凸模様が形成された平板又はフィルムを押下し、凹凸模様を転写することができる。また、得られた積層フィルムを巻回し、凹凸模様を有する金属ロールに圧着させながら巻き取ることで凹凸模様を転写することもできる。
さらに、基材フィルム層(A)上に、離形層(E)、クリヤー塗膜層(B)及び保護層(C)を順次形成し、得られた積層フィルムの保護層(C)面と、接着層(E)上に形成された凹凸模様を形成した金属蒸着層(D)面とを、圧着することで本発明の加飾用積層フィルムを得ることができる。
また、工程(1-1)を行う際に、印刷によって意匠層(G)を形成する工程も有するものであってもよい。
(加飾成型品の製造方法)
上記3次元成型品加飾用積層フィルムを加熱条件下で接着層(E)を3次元成型品上に接着させる3次元成型品加飾方法も本発明の一つである。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムを用いて成型品を加飾する場合には、真空成形により、3次元成型品上に接着層(E)を接着させる方法が好適である。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、上述した構成を有するものであることから、真空成形においては、所定の加熱方法に従って加飾を行うことが好ましい。
3次元成型品加飾用積層フィルムを用いて成型品を加飾するにおいては、真空圧空成形機を用いることが好適である。
上記真空圧空成形機は、一般に使用されているものでよいが、それぞれ上下駆動し、互いに対面する開口を有する上ボックス及び下ボックスを備えるものである。更に、上記下ボックス上部に設置された、3次元成型品加飾用積層フィルムを支持するシートクランプ枠と、上記上ボックスに配された近赤外線ヒーターと、上記下ボックス内を上下駆動するテーブルとを備えるものが好適である。
すなわち、必要に応じて積層フィルムから基材フィルム層(A)を剥離し、接着層が基材表面に面するようにして、基材表面に積層フィルムを密着するように、該積層フィルムを圧着させて加飾する。その後、電磁波照射又は加熱を行い、各層を硬化させて、塗膜を得る。また、圧着、硬化後に基材フィルム層(A)を剥離してもよい。
真空成形完了後、紫外線等のエネルギー線放射により、得られた加飾成型品のクリヤー塗膜層(B)の硬化を行うことで、クリヤー塗膜層(B)がエネルギー硬化した加飾成型品が得られる。
上記加飾成型品の製造にあたり、カバーフィルムを剥離し、接着層(E)が成型品表面に面するようにして、成型品表面に積層フィルムを密着するように、該積層フィルムを圧着させて加飾する。
また、基材フィルム層(A)は、硬化前に剥離してもよいし、硬化後に剥離してもよい。
なお、本発明の積層フィルムによって好適に加飾を施すことができる3次元成型品は、特に限定されないが、例えば、ホイール、バンパー、フロントアンダースポイラー、リヤーアンダースポイラー、サイドアンダースカート、サイドガーニッシュ、ドアミラー等の自動車外装部品、インパネ、センターコンソール、ドアスイッチパネル等の自動車内装部品、携帯電話やオーディオ製品、冷蔵庫、ファンヒータ、照明器具等の家電製品の筐体、洗面化粧台等を挙げることができる。
本発明の積層フィルムは、上述した用途のなかでも、金属ホイールの加飾において特に好適に使用することができる。アルミホイール等のような自動車外装部品においては、耐熱性、耐水性といった性能要件が求められるところ、本発明の積層フィルムは、加飾成形後の硬度が高く、熱、水分による白化が生じないものである。
また、金属ホイールは、表面が光を反射するものであることから、レイリー散乱やミー散乱による外観悪化を生じやすい。更に、形状が複雑であることから、高延伸となる場所が多く存在し、このような場所における外観悪化が生じやすいものであった。さらに、良好な外観が要求される物品であることから、レイリー散乱やミー散乱による外観悪化を抑制することが特に好ましい。本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムを金属ホイールに適用すると、このような問題が解決される。
以下、本発明を実施例によって説明する。実施例中、配合割合において%とあるのは特に言及がない限り重量%を意味する。本発明は以下に記載した実施例に限定されるものではない。なお、使用した化合物は表1に示した通りである。
<合成例1 ポリウレタンアクリレート(B1)の調製>
攪拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量による数平均分子量=1,000)200.0g、1,4-ブタンジオール80.0g、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合体(水酸基価102.9mgKOH/g)120.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)238.1gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃で4,4′-メチレンビス-シクロヘキシルジイソシアネート314.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ポリウレタンを含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の粘度は200dPa・s/20℃、固形分は45%、2重結合当量は600g/eqであった。また、GPCにより測定したポリウレタンの重量平均分子量は44,000であった。
<クリヤー塗料溶液の調整>
攪拌機を備えた容器に、上記のように得られたポリウレタンアクリレート(B1)、モノマー・オリゴマー(B2)を入れ、攪拌しながら最終の塗料がNV=40%となる量のMEKを入れ、さらに重合開始剤(B3)を入れ、30分間攪拌し、クリヤー塗料溶液を得た。
<保護層塗料の調製>
水酸基変性ウレタン樹脂(三井化学株式会社・商品名 タケラックTE-5430、水酸基価22、固形分濃度35%)を25.75重量部、1%ジブチルチンラウリレート溶液を0.36重量部、MEK6.43部を混合後、均一になるように撹拌し均質にした。
これに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)プレポリマー(住化コベストロウレタン株式会社製・商品名 デスモジュールN3800)を1.8重量部加え、均一になるように撹拌し保護層塗料を得た。
得られた保護層塗料の粘度は、900mPa.sであった。
〔積層フィルムの製造例〕
<基材フィルムの調製>
離形層ありの場合は、基材フィルムの塗膜層を形成する片方の面にフッ素系の離型剤を塗布し、離形層を形成した。
<積層フィルムの作製1>
基材フィルム層(A)上に、乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmのクリヤー塗膜層(B)が得られるように、上記クリヤー塗料溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させてクリヤー塗膜層(B)を形成した。なお、以下では、基材フィルム層(A)上にクリヤー塗膜層(B)が形成されてなるものを、(A+B)層フィルムと記載する。
次いで、上記(A+B)層フィルムのクリヤー塗膜層(B)上に、上記保護層塗料をアプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させて乾燥膜厚が20μmの保護層(C)を形成した。
別途、カバーフィルム上に、乾燥膜厚が20μmの接着層が得られるように、接着剤(バイロンUR-3200、東洋紡社製)を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させ、接着層(E)を形成した。続いて接着層(E)上に、インジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)を形成した。
さらに、得られた金属蒸着層(D)上に工法A、B、Cのいずれかの方法によりエンボス加工を行った。
上述のように得られた各フィルムを、保護層(C)と金属蒸着層(D)とが接するようにラミネート法により積層し、積層フィルムを得た。
<積層フィルムの作製2>
基材フィルム層(A)上に、乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmのクリヤー塗膜層(B)が得られるように、上記クリヤー塗料溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させてクリヤー塗膜層(B)を形成した。なお、以下では、基材フィルム層(A)上にクリヤー塗膜層(B)が形成されてなるものを、(A+B)層フィルムと記載する。
次いで、上記(A+B)層フィルムのクリヤー塗膜層(B)とは反対側に、上記保護層塗料をアプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させて乾燥膜厚が20μmの保護層(C)を形成した。
別途、カバーフィルム上に、乾燥膜厚が20μmの接着層が得られるように、接着剤(バイロンUR-3200、東洋紡社製)を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させ、接着層(E)を形成した。続いて接着層(E)上に、インジウムからなる金属蒸着層(D)を形成した。
さらに、得られた金属蒸着層(D)上に工法Aによりエンボス加工を行った。
上述のように得られた各フィルムを、保護層(C)と金属蒸着層(D)とが接するようにラミネート法により積層し、積層フィルムを得た。
<金属蒸着層(D)のエンボス加工>
金属蒸着層(D)エンボス加工は、以下の3通りで行った。
工法A:エンボス平板
工法B:エンボスロール
工法C:エンボスフィルム
<保護層の積層>
乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmの保護層(C)が得られるように、上述の保護層塗料を、アプリケーターを用いて塗布し、その後、80℃にて15分間乾燥させて保護層(C)を形成した。
〔積層フィルムによって加飾された成形体の製造例〕
上下ボックスからなる両面真空成形装置(商品名NGF-0709、布施真空(株)社製)内に装備された上下昇降テーブル上に、ABS製基材(成型品)を載置した。その後、上記両面真空成形装置の成型基材(成型品)の上部にあるシートクランプ枠に、上記にて得た積層フィルムをセットした。続いて、上下ボックス内の真空度が1.0kPaになるように減圧し、近赤外線ヒータを用いて積層フィルムの温度が90℃になるまで加熱し、成型基材を上昇させて、成型基材と積層フィルムとを圧着、その後、上ボックスにのみ200kPaの圧縮空気を導入し、35秒間保持した。上下ボックスを大気圧に開放し、積層フィルムで加飾された加飾成形体を得た。さらに、上記加飾成形体のクリヤー塗膜層(B)側から、120W/cmの高圧水銀灯を用いて、2000mJ/cmの光量の紫外線を照射し、クリヤー塗膜層(B)のクリヤー塗料を硬化させ、UV(紫外線)硬化成形体を得た。
なお、以下に示す各表中で、以下の成分を使用した。
UV 1700B (日本合成化学工業):ウレタンアクリレートオリゴマー
ルシリンTPO(BASF):2, 4, 6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド
ノバクリアSG007(三菱樹脂):A-PETシート
HBA007P(三菱ケミカル):アクリル樹脂フィルム アクリプレン
得られた積層フィルム及び成形体について、下記の基準に基づき評価を行った。結果を表に示す。
(破断伸度)
基材込みにて島津製作所製オートグラフAG-ISを用い80℃の温度条件下、50mm/minの引張速度にて測定した。いずれかの層が破断した時点で、伸びを判定した。
○:200%以上
△:30%以上
×:30%未満
(成形性)
布施真空(株)製両面真空成形機NGF-0709を用いて、TOM成形にて確認した。
◎:基材に高延伸部まで追随し成形可能
○:基材に中延伸部まで追随し成形可能
△:基材に低延伸部まで追随し成形可能
×:成形不可
(ホログラム感)
目視評価にてホログラム感を評価した。
○:ホログラム感が明瞭で良好
△:ホログラム感がやや不明瞭
×:ホログラム感なし
(成形後耐SW性)
耐スチールウール性試験機を用いて、100g/cm荷重にて#0000のスチールウールを10往復した。
◎:傷なし
○:2~3本の傷
△:数えられる程度の傷
×:傷が無数
(成形後耐衝撃性)
デュポン耐衝撃試験機を用い、高さ20cmから重さ500gの重りを落下させ、塗膜のワレを確認した。
○:ワレなし
△:塗膜にわずかなひび
×:塗膜に顕著なひび
(成形後耐薬品性)
内径38mm 高さ15mmの円筒のポリリングを塗膜に固定し、下記の溶液を滴下。各条件下にてフタをして静置。試験後、水洗いして塗膜の状態初期と比較する。
耐酸 0.1N HSO溶液 5ml 20℃×24h
耐アルカリ 0.1N NaOH溶液 5ml 55℃×4h
耐水 蒸留水 5ml 55℃×4h
◎:塗膜に変化なし
○:塗膜外観がわずかに変化(しわ、クラック)
△:塗膜外観が明らかに変化(しわ、クラック)
×:塗膜外観が著しく変化(しわ、クラック)
Figure 2022159795000002
表1より、実施例の3次元成型品加飾用積層フィルムは加飾成形時の延伸性や成形性を確保しつつ、塗膜として充分な耐SW性、耐衝撃性、耐薬品性を有することが示された。また、良好なホログラム感を発揮することが示された。
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムを用いて加飾することにより、汚れ付着や経時劣化を生じることなく、各種の3次元成型品に対して、特徴的なホログラム意匠を安定に長期間発現することができる。
(A) 基材フィルム層
(B) クリヤー塗膜層
(C) 保護層
(D) 金属蒸着層
(E) 接着層
(F) 離形層

Claims (5)

  1. 基材フィルム層(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)、及び、接着層(E)を有し、
    前記保護層(C)は、反応性樹脂及び硬化剤を含み、
    前記金属蒸着層(D)は、少なくともクリヤー塗膜層(B)側にホログラムパターンの凹凸模様を有することを特徴とする3次元成型品加飾用積層フィルム。
  2. クリヤー塗膜層(B)は、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものである請求項1記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。
  3. 保護層(C)に含まれる反応性樹脂は、水酸基を有する、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂である請求項1又は2に記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。
  4. 保護層(C)に含まれる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤である請求項1、2又は3に記載の3次元成型品加飾用積層フィルム。
  5. 請求項1、2、3又は4記載の3次元成型品加飾用積層フィルムを加熱条件下で接着層を3次元成型品上に接着させることを特徴とする3次元成型品加飾方法。
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