JP2022100644A - 3次元成型体加飾用積層フィルム、それを用いた加飾成型体の製造方法及び加飾成型体 - Google Patents

3次元成型体加飾用積層フィルム、それを用いた加飾成型体の製造方法及び加飾成型体 Download PDF

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【課題】 真空成形時の成形性(延伸性)に優れると共に、成形後の外観耐久性(熱や水分による白化の防止)を有する金属調の3次元成型体加飾用積層フィルム及びそれを用いた加飾成型体の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】 成型フィルム層(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、インジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)及び接着層(E)を順次有するものであり、前記保護層(C)と接着層(E)とに反応性樹脂を含み、かつ、保護層(C)に硬化性が異なる2種類以上の硬化剤を含む3次元成型体加飾用積層フィルム。【選択図】 図1

Description

本発明は、3次元成型体加飾用積層フィルム、それを用いた加飾成型体の製造方法及び加飾成型体に関する。
プラスチック、金属その他の各種材料から得られた成型体に対して、3次元成型体加飾用積層フィルムを使用して金属調の加飾を行うことが行われている(特許文献1~2)。このような方法においては、金属蒸着層や蒸着アルミ顔料を含有する塗膜等からなる金属蒸着層を有する加飾用積層フィルムを使用して、成形品に加飾を行うことが公知である。
このような金属蒸着層を有する3次元加飾用積層フィルムによる加飾成形においては、3次元形状に沿うようにフィルムを延伸することが必要となる。けれども、このようなフィルムの延伸においては、金属蒸着層が樹脂層に充分に追随せず、金属蒸着層のワレや白化を生じることがしばしばであった。一般的に汎用されているアルミニウム蒸着層は、延伸特性が十分ではなく、複雑な形状を有する物品の加飾には適さない。一方、インジウムやスズによる金属蒸着層は、アルミニウム蒸着層とは異なり不連続蒸着となるために、比較的高倍率に延伸することができる。
特許文献3には、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層と蒸着金属層とを有する3次元加飾用積層フィルムが開示されている。ここでは、スズやインジウムを使用した場合の延伸時の白化を防止することができる旨も開示されている。しかしながら、例えば、アルミホイール等のような自動車外装部品においては、耐熱性、耐水性といった性能要件が求められるところ、加飾成形後の積層フィルムの硬度不足により、耐熱、耐水試験において白化したり、また、金属蒸着界面で密着不良が起きたりするといった問題が生じることがある。
特許文献4には、熱可塑性樹脂フィルム層と金属蒸着層の間に、反応率75~85%の範囲で反応させた硬化性樹脂層を設けた熱形成用積層シートが開示されている。しかしながら、金属蒸着層を挟んだ2層の架橋反応が行われないため、加飾成形時の延伸性と初期の外観は確保できるものの、自動車用外装部品に求められるような、熱や水分によって問題が生じることのない層間の密着性を満足することはできない。
特許文献5には、基材フィルムと金属蒸着層との間に、ウレタン系樹脂とケトン系樹脂を混合したものにイソシアネートを添加したものを2液硬化性樹脂としてなるアンカー層を設けた成型用シートが開示されている。しかしながら、初期の外観は確保できるものの、延伸性との両立が困難である。また、金属蒸着層を挟んだ2層の架橋反応が行われないため、加飾成形時の延伸性や初期の外観は確保できるものの、自動車用外装部品に求められる、長期に亘る暴露性能を満足するような白化防止や密着性能を満足することができない。
特開平10-735号公報 特開2008-55688号公報 国際公開第2016/080423号 特開2007-190702号公報 特開2016-153210号公報
本発明は、上記に鑑み、真空成形時の成形性(延伸性)と成形後の外観耐久性(熱や水分による白化の防止)とを両立させることができる3次元成型体加飾用積層フィルムを提供することを目的とするものである。
また、本発明は、真空成形時の成形性に優れると共に、成形後の外観耐久性を有する金属調の3次元成型体加飾用積層フィルムが得られる加飾成型体の製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、外観耐久性に優れた加飾成型体を提供することを目的とするものである。
本発明は、成型フィルム層(A)、
エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、
金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、
インジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)及び
接着層(E)
を順次有するものであり、
前記保護層(C)と接着層(E)とに反応性樹脂を含み、かつ、保護層(C)に2種類以上の硬化剤を含む3次元成型体加飾用積層フィルムである。
上記保護層(C)と接着層(E)とに含まれる反応性樹脂は、水酸基を有する、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂であることが好ましい。
上記保護層(C)に含まれる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤と、少なくとも1種の、2級イソシアネート基、3級イソシアネート基またはブロック型イソシアネート基を有する硬化剤であることが好ましい。
また、上記保護層(C)及び/または接着層(E)に、金属カップリング剤を含むことが好ましい。
本発明は、真空圧空成形機を用いて、加飾用積層フィルムを被加飾成型体に加飾する加飾成型体の製造方法であって、
前記3次元成型体加飾用積層フィルムを、常圧で加熱する工程(1)、
減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを更に加熱する工程(2)、
途中減圧を停止し、停止時の真空度を維持した状態で前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(3)及び
再度減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(4)
を有し、
前記3次元成型体加飾用積層フィルムは、
成型フィルム層(A)、
エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、
金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、
インジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)及び
接着層(E)
を順次有するものであり、
前記保護層(C)と接着層(E)とに反応性樹脂を含み、かつ、保護層(C)に、2種類の硬化剤を含むものである、加飾成型体の製造方法でもある。
上記保護層(C)と接着層(E)とに含まれる反応性樹脂は、水酸基を有する、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂であることが好ましい。
上記保護層(C)に含まれる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤と、少なくとも1種の、2級イソシアネート基、3級イソシアネート基またはブロック型イソシアネート基を有する硬化剤であることが好ましい。
保護層(C)及び/または接着層(E)に金属カップリング剤を含むことが好ましい。
更に、本発明は、上記加飾成型体の製造方法によって得られる加飾成型体でもある。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、真空成形時の成形性(延伸性)と成形後の外観耐久性(熱や水分による白化の防止)とを両立させるものである。
また、本発明の加飾成型体の製造方法は、真空成形時の成形性に優れると共に、成形後の外観耐久性を有する加飾成型体が得られるものである。
また、本発明の加飾成型体は、外観耐久性に優れるものである。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムの積層構造の一例を示す模式図である。 本発明の加飾成型体の製造方法に係る、積層フィルム温度と真空度との関係の一例を示すグラフである。 従来の加飾成型体の製造方法に係る、積層フィルム温度と真空度との関係の一例を示すグラフである。 本発明の被加飾成型体の一例を示す模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルム(以下、積層フィルムと記すことがある。)は、3次元成型体の加飾成形において使用するフィルムである。すなわち、意匠性を有するフィルムを各種成型体に接着させて、成型体に意匠性を付与したり、表面保護機能を付与したりするものである。その際に、3次元形状の表面に沿った形に変形させて密着させるものである。
本発明において、成型体に密着させる方法としては、真空成形によって密着させる方法が好適である。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、成型フィルム(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、保護層(C)、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)及び接着層(E)を順次有するものである。
すなわち、金属調の外観を有する層を有しつつ、エネルギー線硬化性塗膜からなる塗膜層を形成することによって、これらの組み合わせで良好な金属外観を有し、ハードコート性、フレキシブル性、耐薬品性、耐候性等の各種性能においても優れた加飾を行うことができるものである。
上記層構成を有する3次元成型体加飾用積層フィルムは、金属蒸着層(D)を挟んで、その上下に保護層(C)及び接着層(E)を有するものであり、保護層(C)及び接着層(E)は、反応性樹脂を含有しており、更に、保護層(C)は、硬化性が異なる2種類以上の硬化剤を含有することを特徴とするものである。
従来の3次元成型体加飾用積層フィルムにおいては、加飾成形後の硬度が足りずに、耐熱、耐水試験において白化したり、また、金属蒸着界面で密着不良が起きたりすることがあり、十分な性能が得られないことがあった。保護層や接着層に、硬化剤を配合し、各層を硬化することによって、このような課題は解決できるが、硬化剤を必要充分量配合すると、真空成形工程において延伸性(300%超)が確保できず、フィルムが破断したり、チルマークが発生したりしてしまう。
そこで、保護層(C)と接着層(E)との両層に、反応性樹脂を配合し、更に、保護層(C)に、硬化性の異なる硬化剤を少なくとも2種類用いることで、加飾成形時の延伸性を確保しつつ、加飾成形後、金属蒸着層(D)を介して保護層(C)と接着層(E)とが強固に接着するものとなり、金属蒸着界面で密着不良等の問題が生じにくくなった。
更に、加飾成型体の製造方法において、特定の加熱と減圧を行うことにより、保護層(C)と接着層(E)との硬化を段階的に行いながら、真空成形することで、真空成形時の3次元成型体加飾用積層フィルムにおける成型時の金属蒸着層の流動性を抑止しチルマークなどの外観不良を抑止しながら延伸性を確保することができ、更に、成形後の熱や水分による白化や金属蒸着界面で密着不良等の問題もより生じにくいものとすることができた。
上記特定の加熱と減圧とは、減圧時に、3次元成型体加飾用積層フィルムの加熱を行うものであり、具体的には、3次元成型体加飾用積層フィルムを、常圧で加熱する工程(1)の後、減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを更に加熱する工程(2)、
途中減圧を停止し、停止時の真空度を維持した状態で前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(3)及び
再度減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(4)
を有するものである。
すなわち、工程(2)及び(3)の加熱により、2種類以上の硬化剤のうちの少なくとも一種の硬化剤による硬化を促進し、保護層(C)の一部硬化を行うとともに、不連続蒸着である金属蒸着層(D)を介して保護層(C)と接着層(E)とを一部硬化・接着させる。この際の加熱温度は、最終的な加熱温度よりも低温とし、より低温で硬化する硬化剤による硬化が生じる。このような硬化によって、保護層内部及び保護層と接着層との間での一部の硬化が生じる。
この硬化は、一部の硬化剤のみによる硬化であることから、架橋密度が高くなりすぎることなく、保護層(C)の層内、及び保護層(C)と接着層(E)との間で結合が生じるものである。また、工程(3)における加熱は、途中減圧を適正な真空度で停止することにより、塗膜内の塗工時の乾燥工程にて除去できなかった溶剤を徐々に拡散させ、最大真空時における急激な溶剤の拡散に伴う塗膜内で発生する泡やリフティングによる成型不良や加飾後の塗膜外観不良を防止するうえで有用である。
更に、工程(4)において、最大真空度への減圧と、更なるフィルムの加熱を行うことにより、保護層(C)や金属蒸着層(D)の延伸を妨げるほどに架橋密度を上げることのない状態で加飾成形時の延伸を行うことができる。また、金属蒸着層の流動による外観の低下を抑止しつつ、複雑な3次元形状にも追随できる十分な延伸性を3次元加飾用積層フィルムに与えることができる。
そして、工程(4)の後、後述する工程(5)において、前記3次元成型体加飾積層フィルムを被加飾成型体に貼合し、更に、加圧と、前記3次元成型体加飾積層フィルムの加熱とを行い、前記3次元成型体加飾積層フィルムを被加飾成型体に更に密着させることで、延伸し加飾された積層フィルム温度を高いまま保持し、他の硬化剤を硬化させ、硬化反応が完了するようにする。これによって、接着層の基材への密着性を確保するとともに、金属蒸着層を介した接着層と保護層の充分な架橋密度を有することによる、良好な膜物性を有する加飾を行うことができるものである。
以下、本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムを構成する各層について詳述する。
(保護層(C))
本発明に係る3次元成型体加飾用積層フィルムは、クリヤー塗膜層(B)と金属蒸着層(D)との間に保護層(C)を形成する。すなわち、金属蒸着層(D)を、クリヤー塗膜層(B)と接する位置に設けた場合、未硬化状態での延伸によって未硬化状態のクリヤー塗膜層(D)が動く際に、金属蒸着層(D)が動いてしまい、これによって外観の悪化を生じる場合がある。そこで、保護層(C)を設けることによって、金属蒸着層(D)の外観乱れが生じにくくなる。
また、未硬化状態のクリヤー塗膜層(B)上に金属蒸着層(B)を形成する場合には、金属蒸着層(D)の形成が困難となることがある。よって、このような問題を軽減させるという観点からも、蒸着性が良好であるような保護層(C)を設けることで、このような問題を改善する。
また、金属蒸着層(D)は、他の層との接着性が悪い場合もある。このため、他素材との接着性に優れた素材による保護層(C)を形成し、金属蒸着層(D)上に、当該保護層(C)を設けることによって、他層との接着性を向上させることも好ましい。これによって、例えば、クリヤー塗膜層(B)や下記意匠層(G)との接着性を改善させることができる。
保護層(C)に使用される樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等を使用することができ、中でも、ウレタン樹脂が好ましく、ウレア結合含有ウレタン樹脂が更に好ましい。樹脂は、1種単独で又は2種以上を併用して配合することができる。
本発明においては、上記保護層(C)は、反応性樹脂と硬化性の異なる硬化剤を少なくとも2種類とを含有することを特徴とするものである。
上記反応性樹脂は、硬化剤と反応して架橋構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、水酸基を有する、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を使用することができる。中でも、水酸基を有する、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
水酸基を有する、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を用いると、金属蒸着層との密着性、耐薬品性、耐水性、成型時の延伸性などの性能をそれぞれ満足することができるといった利点がある。
(水酸基を有するエポキシ樹脂)
上記水酸基を有するエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを必要に応じてアルカリ触媒等の触媒存在下で高分子量まで縮合させてなる樹脂;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;及びノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記ビスフェノールとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、p-(4-ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4-ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4-ヒドロキシフェニル)、4,4´-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
また、水酸基を有する反応性樹脂として好適なエポキシ樹脂である上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
上記水酸基を有するエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の変性物であってもよい。エポキシ樹脂の変性物としては、例えば、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂を挙げることができる。例えば、アクリル変性エポキシ樹脂を例に挙げると、これは、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は上記ノボラック型エポキシ樹脂に、アクリル酸又はメタクリル酸等を含む重合性不飽和モノマー成分を反応させて調製することができる。また、ウレタン変性エポキシ樹脂を例に挙げると、これは、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は上記ノボラック型エポキシ樹脂にポリイソシアネート化合物を反応させて調製することができる。
水酸基を有するエポキシ樹脂として、例えば、荒川化学工業株式会社製のアラキード9201N、9203N、9205、9208、KA-1439、モビテクス401、三菱ケミカル社製のjER1004、jER1007、1255HX30(ビスフェノールA骨格)、YX8100BH30、DIC株式会社製のエピクロンH-301-35PX、エピクロンH-303-45M、エピクロンH-353、エピクロンH-360等を挙げることができる。
水酸基を有するエポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000以上100,000以下であることが好ましく、2,000以上80,000以下であることがより好ましく、2,000以上50,000以下であることが特に好ましい。本発明において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算した値である。
具体的には、TOSOH製のHLC-8200にて、カラムにTSKgel SuperMultiporeHZ―Mを用いて、カラムの温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。
水酸基を有するエポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)が上記範囲内であることにより、加飾成型体の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できるという利点を有する。
水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。また、水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上である。 例えば、水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上120℃以下の範囲であることができる。本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、Reogel-E4000(株式会社ユービーシー製)等を用いて測定することができる。
水酸基を有するエポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、加飾成型体の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の加熱時に成型フィルムの軟化と同調し優れた延伸性を確保できるという利点を有する。
(水酸基を有するポリウレタン樹脂)
上記水酸基を有するポリウレタン樹脂は、常法に従い、得ることができる。例えば、ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを、水酸基過剰の条件下で反応させる方法等が挙げられる。
ポリエステルポリオール(a1)は、常法に従い、得ることができる。例えば、反応槽中に多価アルコールと多塩基酸を仕込み、加熱、撹拌しながら180~250℃ にて反応することにより得られる。
<多価アルコール>
上記多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1 ,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサド付加物などの飽和および不飽和の低分子グリコール類、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類やバーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類である。
更には、環状エステル化合物を開環重合させてポリエステルポリオールを得ることもできる。
<多塩基酸>
上記多塩基酸の例としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸、および、これらの無水物が挙げられる。
<ポリイソシアネート化合物(a2)>
ポリイソシアネート化合物(a2)としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知の種々のジイソシアネート類や、3官能のイソシアネート類も必要に応じて使用することが出来る。例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が、脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が、脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4、4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。また、3官能イソシアネート類としては、上記ジイソシアネート類をトリメチロールプロパン等で3官能化したアダクト体、イソシアヌレート体、ビューレット体等が挙げられる。
<鎖伸長剤>
水酸基を有するポリウレタン樹脂を得る際に用いられる鎖伸長剤としては、各種公知の多価アルコールを使用できる。 当該多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5- ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチルジオール、ジプロピレングリコール等の飽和および不飽和の各種公知の低分子グリコール類およびダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が代表例として挙げられる。
水酸基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000~150,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、5,000~50,000が更に好ましい。
水酸基を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)が上記範囲であると、加飾成型体の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できるという利点がある。
なお、数平均分子量(Mn)は、樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。上記と同様にして得られる。
水酸基を有するポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃以上80℃ 以下が好ましく、-30℃以上60℃以下がより好ましく、-30℃以上50℃以下であることが更に好ましい。
水酸基を有するポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、加飾成型体の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の加熱時に成型フィルムの軟化と同調し優れた延伸性を確保できる。
本発明に用いる反応性樹脂の水酸基価は0.5~300mgKOH/gであることが好ましい。
反応性樹脂の水酸基価が上記範囲であることで、加飾成型体の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できる架橋密度を得ることができるという利点がある。
反応性樹脂の水酸基価の下限は、2.0mgKOH/gであることがより好ましい。反応性樹脂の水酸基価の上限は、250mgKOH/gであることがより好ましい。
本明細書において、水酸基価は、JIS K 1557-1(A法)に準じて評価した。
保護層(C)において、反応性樹脂の配合量は、保護層(C)中、10~70重量%であることが好ましい。この範囲であれば、加飾成型体の塗膜に必要な耐水遮断性や耐熱性を維持し、加飾成型時の延伸性を確保できる架橋密度を得ることができる。また、耐候性能などの耐久性や耐水耐熱以外の必要性能、塗工性能などと両立することができる。
また、反応性樹脂の配合量の下限は、20重量%であることがより好ましい。反応性樹脂の配合量の上限は、50重量%であることがより好ましい。
(硬化剤)
更に、本発明においては、硬化性の異なる硬化剤を少なくとも2種類用いることが必要である。
硬化性の異なる硬化剤を用いることにより、真空成形時に、温度を経時的に上昇させ、2段階の塗膜硬化を行うことが可能となり、真空成形時の3次元成型体加飾用積層フィルムの成形時における金属蒸着層の流動性を抑止しチルマークなどの外観不良を抑止しながら延伸性を確保し、更に、成形後の保護層(C)と接着層(E)との架橋を行うことで、成形後の硬度を確保し、熱や水分による白化等の問題も生じにくいものとすることができる。
本発明において、硬化剤は、イソシアネートモノマー、ポリイソシアネート、ブロック型イソシアネート等が挙げられる。中でも、ポリイソシアネートを用いることが好ましい。硬化剤として、ポリイソシアネートを用いることで、求める反応性を得ることができ成型時における金属蒸着層の流動性を抑止や成型後の必要な物性を得ることができる。また、塗料製造、塗工時の安全性の観点からも好ましいという利点がある。
本発明のおいて用いる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤(IA)と、少なくとも1種の、2級イソシアネート基、3級イソシアネート基またはブロック型イソシアネート基を有する硬化剤(IB)とであることが好適である。
1級イソシアネート基は、イソシアネート基(-NCO)が結合している炭素原子(C )に、水素原子(H)が2つ結合している1価の官能基(-CHNCO)と定義される。
2級イソシアネート基は、イソシアネート基(-NCO)が結合している炭素原子(C) に、水素原子(H)が1つ結合している2価の官能基(-CHR-NCO(Rは置換基を示す。))と定義される。
また、3級イソシアネート基は、イソシアネート基(-NCO)が結合している炭素原子(C)に、水素原子(H)が結合していない3価の官能基(-CR-NCO(RおよびRは同種または異種の置換基を示す。))と定義される。
本発明において、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤(IA)は、当該1級イソシアネート基が、ブロック剤によりブロックされているものは含まない。
1級イソシアネート基のみを有する硬化剤(IA)としては、1級イソシアネート基のみを有するイソシアネート、例えば、1級イソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート、1級イソシアネート基を有する脂環式イソシアネート、1級イソシアネート基を有する芳香脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
1級イソシアネート基のみを有する脂肪族イソシアネートは、1級イソシアネート基を有する鎖状(直鎖状または分岐鎖状:非環式)脂肪族イソシアネートであって、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、へプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
1級イソシアネート基のみを有する脂環式イソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
1級イソシアネート基のみを有する芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
これら1級イソシアネート基のみを有するイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用してもよい。
1級イソシアネート基のみを有するイソシアネートとして、耐光性、ハンドリング性の観点から、好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート、1級イソシアネート基を有する脂環式イソシアネートが挙げられ、耐薬品性の観点から、より好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
1級イソシアネート基を有する脂肪族イソシアネートとして、入手容易性の観点と成型時の延伸性の観点から、好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられ、より好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
上記1級イソシアネート基のみを有するイソシアネートの市販品としては、デスモジュールN3800(住化コベストロウレタン社製)、タケネートD-178NL、スタビオD-370N、D-376N(三井化学社製)、デスモジュールH、N75MPA/X、N3200、N3300、N3390EA、N3400、N3600、N3790BA、N3800、N3900、XP2580、XP2840、スミジュールHT(住化コベストロウレタン社製)、デュラネート24A-100、22A-75P、TPA-100、TKA-100、P301-75E、D101、D201(旭化成社製)等を挙げることができる。
本発明で用いる他の一種の硬化剤(IB)は、2級イソシアネート基、3級イソイアネート基またはブロック型イソシアネート基を有する硬化剤であることが好ましい。これらを使用すると、硬化温度が高くなりやすいため、低温硬化するイソシアネート化合物に対して、ブロックイソシアネート化合物を好適に使用することができる。
硬化剤(IB)である、2級イソシアネート基を有するイソシアネートは、少なくとも1つ、2級イソシアネート基を有していればよく、他のイソシアネート基として、1級イソシアネート基等を有していてもよい。
当該イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、リシンジイソシアネート、トリメチロールプロパン1モル-リシンジイソシアネート3モル付加物、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)等が挙げられる。
2級イソシアネート基を有するイソシアネートとしては、入手容易性の観点と加飾後の塗膜Tgの確保の観点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
上記2級イソシアネート基を有するイソシアネートの市販品としては、デスモジュールZ4470 SN、デスモジュールI、W、Z4470BA、Z4470MPA/X、Z4470SN、XP2565、XP2838(住化コベストロウレタン社製)、コスモネートNBDI(三井化学社製)等を挙げることができる。
硬化剤(IB)として、3級イソシアネート基を有するイソシアネートを使用するものであってもよい。3級イソシアネート基を有するイソシアネートは、少なくとも1つ、3級イソシアネート基を有していればよく、他のイソシアネート基として、1級イソシアネート基等を有していてもよい。
上記3級イソシアネートとしては、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びそのアダクト体、イソシアヌレート体等を挙げることができる。
上記3級イソシアネート基を有するイソシアネートの市販品としては、TMXDI(商品名、allnex(オルネックス)社製)等が挙げることができる。
硬化剤(IB)として、イソシアネート基をブロックしたブロック型イソシアネート基を有するイソシアネートを使用するものであってもよい。
ブロック方法としては特に限定されず、イソシアネートとブロック剤とを反応させて調製する方法等が挙げられる。反応は、両者を混合して所定温度に加熱することにより行い、例えば、ポリイソシアネートを加熱しておき、これにブロック剤を滴下する等の一般的な方法を適用することができる。
ブロック剤としては、アミン系、オキシム系、カプロラクタム系、アルコール系、フェノール系、活性メチレン系、ピラゾール系、酸アミド系等のブロック剤が挙げられる。
上記イソシアネート基をブロックしたブロック型イソシアネート基を有するポリイソシアネートの市販品としては、スミジュールBL3175、デスモジュールBL3272MPA、BL3370MPA、BL3475BA/SN、BL3575/1/MPA/SN、BL4265SN、BL5375MPA/SN、VP LS2078/2、PL340、PL350(住化コベストロウレタン社製)、デュラネートMF-K60B、SBB-70P、SBN-70D、MF-B60B、17B-60P、TPA-B80E、E402-B80B、WM44-L70G(旭化成社製)等を挙げることができる。
上記硬化剤(IA)は、硬化温度が、60℃~120℃であることが好適である。他の硬化剤(IB)は、硬化剤(IA)より硬化温度が高いものが好ましく、その硬化温度が、80℃~170℃であることが好適である。特に、硬化剤(IA) の硬化温度は、真空成形に必要な積層フィルム温度より低いことが好ましい。真空成形に先立って保護層(C)内の一部架橋や金属蒸着層(D)を介した保護層(C)と接着層(E)との一部架橋による金属蒸着層(D)の流動抑止により外観向上が図られる。
また、上記硬化剤の硬化温度の差は、20℃~50℃であることが好ましい。このような硬化温度差を設けることで、工程(1)、(2)、(3)及び(5)の加熱工程を用いて加飾成形時における金属蒸着層の流動性を抑止し外観を向上することや成形後の性能に必要な物性を得ることができる。
イソシアネートの配合量は、保護層(C)中の反応性樹脂のOH当量およびイソシアネートのNCO当量によって適宜決めることが好適である。イソシアネート(IA)は、その比率が1:0.8~1:2.0で混合することが好ましい。保護層(C)の全量に対しては、0.5~10重量部であることが好ましい。
また、硬化剤(IA)と(IB)との配合比(重量比)は、1:0.5~1:2.0であることが好ましい。硬化剤(IA)と(IB)との配合比を上記範囲とすることで、加飾成形時における金属蒸着層の流動性を抑止し外観を向上することや成形後の性能に必要な物性を調整することができる。
上記イソシアネートは、2種類に限らず、目的を達成する範囲で、適宜3種類以上用いるようにしてもよい。
(硬化触媒)
上記水酸基を有する反応性樹脂と硬化剤とを反応硬化させるにあたり、硬化触媒を添加してもよい。
硬化触媒としては、例えば、スズ触媒、アミン触媒、鉛触媒等を挙げることができ、中でも、有機スズ化合物が好ましく用いられる。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTL)、ジブチルスズオキサイド、テトラ-n-ブチル-1,3-ジアセトキシスタノキサン等を用いることができる。
硬化触媒の配合量は、反応性樹脂及びイソシアネート化合物の固形分の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。硬化触媒の量が0.1重量部未満であると(IA)の硬化が困難となり加飾成形時の金属蒸着層の流動性が抑止できず外観が不良になる傾向にある。また、(IB)の硬化が困難になり加飾成形後の性能に必要な物性を得ることが難しくなる。10重量部を超えると塗工前に塗料がゲル化してしまったり、加飾成形時に(IA)、(IB)の硬化が進みすぎ延伸性が不足し塗膜が割れたりする傾向にある。
上記保護層(C)は、厚みを特に限定されるものではないが、例えば、10~50μmであることが好ましい。上記下限は、15μmであることがより好ましい。上記上限は、30μmであることがより好ましい。
10μm未満だと延伸部における耐水遮断性が十分に確保できない可能性があり、50μmより大きいと塗工及び乾燥が困難となり、またコストの面で不利となる傾向にある。
(接着層(E))
接着層(E)は、3次元成型体を積層フィルムにて加飾する際に、積層フィルムを3次元成型体表面に密着させて接着させるために用いられる。
接着層(E)に含まれる接着樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、塩ビ・酢ビ樹脂、エポキシ樹脂及びブチラール樹脂からなる群から選択され、軟化温度が20~100℃である少なくとも1の接着樹脂を含有するものが好ましい。
例えば、バイロンUR-3200(東洋紡社製)、ダイフェラミンMAU-2600(大日精化工業製)、UR-1361ET(東亜合成社製)、Xp012N35(三井化学社製)等を挙げることができる。
また、接着層(E)は、上記保護層(C)と同様に、反応性樹脂を含有するものであることが必要である。接着層(E)も反応性樹脂を含有することにより、真空成形時の加熱により、保護層(C)及び接着層(E)の2層間において、より強固な接着を達成することができる。
接着層(E)において含有する反応性樹脂は、上記保護層(C)において用いられるものと同様のものを使用することが好ましい。
接着層(E)において、反応性樹脂の配合量は、接着層(E)中、10~70重量%であることが好ましい。この範囲であれば、基材と蒸着金属との密着性を損なうことなく加飾成形に必要な延伸性と性能に必要な物性を得ることができる。
また、反応性樹脂の配合量の下限は、20重量%であることがより好ましい。反応性樹脂の配合量の上限は、50重量%であることがより好ましい。
また、上記接着層(E)は、上記のような硬化剤を含有してもよい。硬化剤を含有する場合、硬化剤としては、ポリイソシアネートを使用することが好ましい。使用することができるポリイソシアネートとしては、上記保護層(C)において使用することができるとして例示するもの等を使用することができる。
また、接着層(E)において、上記硬化触媒を配合してもよい。硬化触媒の配合量は、反応性樹脂及び硬化剤の固形分の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。硬化触媒の量がこのような範囲内であることにより、保護層と保護層に配合された硬化剤による架橋を促進し、層間密着性を高める。
また、上記接着層(E)は、全光線透過率が20%以下とすることが好ましい。特に、可視光領域(波長380~810nm)における透過率を低下させることが好ましい。全光線透過率は15%以下であることが好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
このように、接着層(E)が全光線透過率の低いものであることによって、基材表面における反射が低減され、金属蒸着層におけるレイリー散乱やミー散乱が低減され、これによって意匠性が向上する。レイリー散乱やミー散乱は、金属蒸着層が白化した場合に反射光が当たることによって生じるものである。したがって、金属表面からの反射光の量を低減することができれば、レイリー散乱やミー散乱による意匠性の低下を抑制することができるものである。また、接着層(E)が上記全光線透過率を有するものとすることで、光透過性が低下するため、基材の耐光性が向上するという点でも好ましい。
なお、本明細書における全光線透過率は、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)により、波長380.0nm~810.0nmの範囲で、積分球を用い、全光線透過率を測定した。光源はハロゲンランプを使用する、という方法によって測定した値である。全光線透過率は、接着層(E)のみの透過率である。したがって、3次元成型体加飾用積層フィルムの接着層(E)を測定する場合は、剥離して接着層(E)のみとしてこれの全光線透過率を測定する方法、接着層(E)の組成を明らかにして、同等の組成・厚みを有する単一フィルムを作製し、当該単一フィルムの全光線透過率を測定するものであってもよい。
上記接着層(E)の光透過率を低下させるためには、各種の着色顔料等を配合する。着色顔料としては特に限定されず、例えば、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料などの光輝性顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンなどの無機着色顔料;カオリン、クレー、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料等を使用することができる。
上記着色顔料は、カーボンブラックであることが最も好ましい。カーボンブラックは、下層塗膜に対する光線遮断、隠蔽性という点で特に好ましいものである。カーボンを配合する場合、接着層(E)の固形分全量に対して0.4~20重量%の割合で配合することが好ましい。
上記カーボンブラックとしては、カーボンブラックMA100、#2650(三菱ケミカル株式会社製)、CORAX N660(オリオン エンジニアド カーボンズ株式会社製)、カラー ブラック CW200P(エボニックデグサジャパン株式会社製)、モナーク 1300(Cabot製)、ラーベン 1255P、ラーベン 5000ULTRA3(Columbian製)等を挙げることができる。
これらの市販の公知の接着剤に対して、全光線透過率が20%以下となるようにカーボン等の各種着色剤を配合して使用することができる。
本発明は、上述した観点から、特に、金属基材上に意匠性を付与することに使用することが好ましい。更に、自動車用ホイール等のように、形状が複雑であり、変形による問題を生じやすい分野において、上述した効果はより顕著なものとなる。
接着層(E)に使用する接着剤は、顔料分散樹脂、着色顔料、および溶媒、そして任意の成分を、任意の順序で加えて混合することによって調製することができる。また、必要に応じて添加剤を含んでもよい。添加剤として、例えば、上記顔料分散樹脂以外の樹脂成分、増粘剤、消泡剤、造膜助剤、凍結防止剤、タレ防止剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
上記接着剤を調整するための分散機としては、SGミル、ボールミル、ビーズミル、スパイクミル、パールミル、ダイノミル、2本または3本のロールミル、エクストルーダー、ペイントシェーカー、超音波処理、ホモジナイザー、ニーダー、フラッシング処理などが挙げられる。分散させる際のメディアとしては、ジルコンビーズ、ジルコニアビーズ、ソーダー石灰ガラスビーズ、無アルカリビーズ、アルミナビーズ、シリコンビーズなどが挙げられる。
接着層(E)は、上記接着剤を塗布・乾燥することにより形成したものであっても、接着剤シートをラミネートして形成したものであってもよい。
接着層(E)は、厚みを特に限定されるものではないが、例えば、10~50μmであることが好ましい。上記上限は、30μmであることがより好ましく、25μmであることが最も好ましい。
10μm未満だと延伸部における接着が十分に確保できない可能性があり、50μmより大きいと塗工及び乾燥が困難となり、またコストの面で不利となる。
また、上記保護層(C)及び/又は接着層(E)に、金属カップリング剤を含むことが好ましい。特に、保護層(C)に含まれることが好ましい。金属カップリング剤を含むことで、接着層(E)に積層された金属蒸着層(D)と保護層(C)のラミネート界面の密着性を向上させることができる。
金属カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤及びジルコニウム系カップリング剤が挙げられる。これらカップリング剤としては、従来公知のものを使用することができる。好適に用いられるカップリング剤の具体例として、ダウ・東レ社製 Z-6011、Z-6040、信越シリコーン社製 KBM-402、403、KBE-402、403等のシラン系カップリング剤;松本ファインケミカル社製 オルガチックスTC-401、オルガチックスTC-750等のチタン系カップリング剤;松本ファインケミカル社製 オルガチックスZC-580、オルガチックスZC-700等のジルコニウム系カップリング剤が挙げられる。なかでも、シラン系カップリング剤が好ましく用いられる。
カップリング剤の配合量は、保護層(C)又は接着層(E)中において、反応性樹脂及び硬化剤の固形分の合計100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下が好ましく、1.0重量部以上10重量部以下がより好ましい。カップリング剤の配合量がこのような範囲内であることにより、積層フィルムの接着層に蒸着された金属蒸着層と保護層の層間の密着性を向上させることができる。
(インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D))
蒸着とは、真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱・気化して、離れた位置に置かれた基材の表面に付着させ、薄膜を形成する工法である。本発明において、蒸着に使用される金属は、スズ、インジウムである。蒸着には10-3~10-4Pa程度の真空度が必要なため、一旦、容器を真空状態にする必要がある。それゆえ、蒸着は完全なバッチ処理となり、連続的な処理が不可能である。
また、フィルムへの蒸着工法は一般的に、(1)チャンバー内にフィルムロール及びターゲット金属をセットし、(2)チャンバー内を真空排気(10-3~10-4Pa)し、フィルムの走行をスタート、(3)ターゲット加熱、蒸気発生でフィルム表面に蒸着され、(4)蒸着完了で、チャンバーを大気開放する工程からなる。部品への直接蒸着に比べ、バッチ処理でありながら、フィルム1ロール分が連続して加工されるため、経済効率が高い。また、蒸着膜の厚みや質が制御しやすいという利点がある。ただし、フィルムのままでは3次元形状物へ適用できないものである。
本発明における上記インジウム又はスズからなる金属蒸着層(B)は、これらの金属を使用した通常の蒸着法によって形成することができる。インジウム又はスズを使用することによって、伸びが良好な金属層とすることができるため、3次元形状への成形を行う場合にワレや白化を生じることがなく、外観に悪影響を生じることもない。これらのなかでもインジウムが特に好ましい。
本発明においては、金属蒸着層(D)として、インジウム又はスズを使用することで、不連続蒸着という作用によって、ワレや白化が生じにくいという利点を有するものである。更に、金属蒸着層(D)の上下に存在する保護層(C)と接着層(E)とが一部架橋することが可能となり、保護層(C)と接着層(E)と層間密着性を高め、加飾成形後の積層フィルムの硬度を保つことができる。
金属蒸着層(D)は、光学濃度が0.6~1.4であることが好適である。
金属蒸着層の光学濃度が上記0.6未満であると、蒸着された金属の量が不十分であることから、延伸部において充分な金属光沢が得られない。さらに光学濃度が1.4を超えると、延伸部においてマイクロクラックによる白化が顕著になり、良好な金属光沢が得られないという点で好ましくない。
本発明において、金属蒸着層(D)の光学濃度は、カラー透過濃度計(大日本スクリーン製造株式会社製、DM-500を用いて測定されたものである。また、金属蒸着層(D)の厚さはFE-SEM HITACHI製 S4800(acceleration voltage 5kV)によりフィルム断面を観察し測定した。
このような金属蒸着層(D)を形成する場合、その厚みは、0.02~5μmであることが好ましい。このような厚みとすることで、上述した目的を良好に達成することができる。なお、金属蒸着層(D)の厚みと光学濃度は、密接な関係を有するものであり、厚みが大きいほど光学濃度が高い金属蒸着層となる。被蒸着層の材質にもよるが、一般的には光学濃度が0.6~1.4の場合、その金属蒸着層の厚みは、0.02μm~0.08μmとなる。
上記厚みの下限は、0.03μmであることがより好ましい。上記厚みの上限は、0.3μmであることがより好ましい。
(クリヤー塗膜層(B))
本発明で使用するクリヤー塗膜層(B)は、エネルギー線硬化性塗膜であり、その具体的な組成は、積層フィルムとしての物性を害するものでない限り特に限定されるものではなく、公知のエネルギー線硬化性塗膜とすることができる。
エネルギー線硬化性塗膜は、3次元成形品加飾用積層フィルムの状態で、被加飾物の形状に変形させた後でエネルギー線照射によって樹脂を硬化させることができる。このため、容易に被加飾物の形状に変形させることができつつ、加飾後の塗膜層の強度、外観、耐薬品性等において優れた性能を示すものである。
なかでも、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものであることが好ましい。このような組成のものとすることによって、使用時の延伸が容易になされ、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。また、ブロッキングを生じにくいものとすることができるという利点も有する。
上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、組成物中の固形分全量に対して、ポリウレタンアクリレート(B1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)及び重合開始剤(B3)の合計量が40~98重量%の割合であることが好ましい。このように、特定の配合割合とすることで、所定の効果を得ることができる点で好ましい。
更に、上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内となるように含有するものであることが好ましい。これによって、硬化前の耐ブロッキング性、深絞り性(延伸性)を有することができる。さらに硬化後の高い耐擦傷性、表面硬度、耐薬品性、耐衝撃性を有することができる。
以下、(B1)~(B3)について詳細に説明する。
(ポリウレタンアクリレート(B1))
ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレタン結合を分子内に有し、かつ(メタ)アクリレート基を分子中に有する化合物である。これを使用することによって、加飾成形を行う際の延伸性が向上し、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)としては、特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。例えば、
i)分子内に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物に、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物とを当量反応させて得られる化合物、
ii)ポリオールと1塩基酸及び/又は多塩基酸及び/又はその酸無水物との縮合物に、分子内に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物を反応させたのち、さらに分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物を反応させて得られる化合物、
iii)ポリオールに、分子内に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物を反応させたのち、さらに分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物を反応させて得られる化合物、
等が挙げられる。
上記i)~iii)において、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等や、市販品では、プラクセルC(M)Aシリーズ(ダイセル化学社の商品名)等が挙げられる。また、前記ii)~iii)において、多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン等や、市販品では、プラクセルジオールシリーズ(ダイセル化学社の商品名)、プラクセルトリオールシリーズ(ダイセル化学社の商品名)等が挙げられる。
上記ポリオールとしては特に限定されず、公知のアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。また、エチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等の各種低分子量ジオール等も必要に応じて使用することができる。
上記ポリオールとしては、ポリカーボネート濃度:0.5~75wt%(ポリウレタンアクリレート(B1)全量に対するポリカーボネートの割合。なお、原料として配合した成分の割合にもとづく計算値である)となる割合でポリカーボネートジオール骨格を有することが好ましい。ポリカーボネートジオール骨格を有するものを使用することで、強靭性が発現し、加飾成形時の膨れ防止、意匠外観保持(ワレ防止)が可能となる利点を有する。
上記ポリカーボネートジオールは、2~70重量%であることがより好ましい。
上記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のもの;イソホロンジイソシアネート等の脂環族のもの;その単量体及びそのビューレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネートの市販品としては、デュラネート24A-90PX(NCO:23.6%、商品名、旭化成社製)、スミジュールN-3200-90M(商品名、住友バイエルウレタン社製)、タケネートD165N-90X(商品名、三井化学社製)、スミジュールN-3300、スミジュールN-3500(いずれも商品名、住友バイエルウレタン社製)、デュラネートTHA-100(商品名、旭化成社製)等を挙げることができる。また、必要に応じてこれらをブロックしたブロックイソシアネートを使用することもできる。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、一部にウレア結合を有するものであってもよい。
ウレア結合を有するものとするためには、ポリウレタンアクリレートの合成において、一部にポリアミン化合物を使用すればよい。使用できるポリアミン化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;1,2-及び1,3-シクロブタンジアミン、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンビスシクロヘキサン2,4’-及び/又は4,4’-ジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマー等を挙げることができる。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、2重結合当量が130~600g/eqであることが好ましく、150~300g/eqであることがさらに好ましい。2重結合等量が130g/eq未満であると、硬化膜の耐クラック性、耐衝撃性に劣るという問題を生じるおそれがある。2重結合等量が600g/eqを超えると、擦傷性、表面硬度、耐薬品性に劣るという問題を生じるおそれがある。なお、上記2重結合等量は、樹脂の製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出した値である。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、重量平均分子量が3000~200000であることが好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、耐ブロッキング性に劣るという問題を生じるおそれがある。重量平均分子量が200000を超えると、得られるポリウレタンアクリレート(B1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)等との相溶性が低下する。加えて重量平均分子量が200000を超えるとクリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。なお、本明細書において、重量平均分子量は後述の方法により測定した。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレタン濃度が300~2000g/eqであることが好ましい。ウレタン濃度が300g/eq未満であると、得られるポリウレタンアクリレート(B1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)等との相溶性が低下する。加えてウレタン濃度が300g/eq未満であると、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。ウレタン濃度が2000g/eqを超えると、耐ブロッキング性、耐衝撃性に劣るという問題を生じるおそれがある。なお、ウレタン濃度は、樹脂の重量平均分子量をウレタン結合数で除した数値をあらわすものであり、樹脂の製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出した値である。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレア濃度が500~1000g/eqであることが好ましい。ウレア濃度が500g/eq未満であると、得られるポリウレタンアクリレート(B1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)等との相溶性が低下する。加えてウレア濃度が500g/eq未満であると、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。ウレア濃度が1000g/eqを超えると、耐ブロッキング性に劣るという問題を生じるおそれがある。なお、ウレア濃度は、樹脂の重量平均分子量をウレア結合数で除した数値をあらわすものであり、樹脂の製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出した値である。
ポリウレタンアクリレート(B1)は、フッ素及び/又はシリコーンで変性されたものであってもよい。すなわち、フッ素やシリコーン単位を含有する単量体を使用して上述した方法によってポリウレタンアクリレート(B1)を合成するものであってもよいし、上述した方法によって得られたポリウレタンアクリレート(B1)が有する官能基をフッ素及び/又はシリコーンを有する化合物と反応させたものであってもよい。
(不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2))
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)としては、公知の任意のものを使用することができ、例えば、以下の化合物を使用することができる。なお、上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)は、重量平均分子量が3000以下のものであることが好ましい。すなわち、上述したポリウレタンアクリレート(B1)の性能を補完するために、不飽和2重結合を有する比較的低分子量のモノマー・オリゴマーを使用するものである。なお上記ポリウレタンアクリレート(B1)に該当するものは、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)には該当しない。
上記不飽和二重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)を所定量配合することで、高架橋密度の被膜を形成することができ、これによって、クリヤー塗膜層の物性を向上させることができる点で好ましいものである。
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させて得ることができる。
これらの(メタ)アクリル系オリゴマーは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、また、上記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)としては、日本合成化学工業社製UV 1700B等の市販のものも使用することができる。
(重合開始剤(B3))
上記重合開始剤(B3)としては、紫外線(UV)や電子線等の電磁線によって重合が開始されるエネルギー線重合開始剤を使用することができる。これらのエネルギー線重合開始剤は特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。
具体的には、上記エネルギー線重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン系化合物;2-エチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ジフェニルスルフィド等のスルフィド系化合物;2,4-ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィノキサイド等のホスフィノキサイド系化合物;イルガキュア(登録商標)-184,イルガキュア-819(いずれもBASC社製)等の紫外線(UV)硬化用重合開始剤等を挙げることができる。これらの化合物は、重合開始剤として、1種又は2種以上を用いることができる。
((B1)~(B3)の配合量)
(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内となるように含有するものであることが好ましい。
上記ポリウレタンアクリレート(B1)の含有量が50重量部未満であると、耐ブロッキング性が低下するという点で好ましいものではない。上記ポリウレタンアクリレート(B1)の含有量が99重量部を超えると、耐擦傷性、表面硬度が不充分となる点で好ましいものではない。上記下限は、55重量部以上であることがより好ましく、65重量部以上であることが更に好ましい。上記上限は、98重量部以下であることがより好ましく、95重量部以下であることが更に好ましい。
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)の含有量が1重量部未満であると、耐擦傷性、表面硬度が不充分となる点で好ましいものではない。上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)の含有量が50重量部を超えると、耐ブロッキング性が低下するという点で好ましいものではない。上記下限は、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが更に好ましい。上記上限は、45重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。
上記重合開始剤(B3)の含有量が0.5重量部未満であると、クリヤー層を十分に硬化させることができず、得られるクリヤーの耐擦傷性、表面硬度、耐薬品性、耐衝撃性の塗膜物性を得られない可能性がある。上記重合開始剤(B3)の含有量が20重量部を超えると、クリヤー塗膜内に未反応の重合開始剤(B3)が残存し、屋外での太陽光等によって、クリヤー塗膜が劣化し、耐候性が悪化する可能性がある。
上記クリヤー塗料組成物は、チオール化合物及び/又はアミン化合物を0.5~20重量部含有することが好ましい。
上記チオール化合物及び/又はアミン化合物としては、特に限定されず、通常使用されるチオール化合物、及び、アミン化合物を挙げることができる。
上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、等の脂肪族ポリアミン:1,2-及び1,3-シクロブタンジアミン、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンビスシクロヘキサン2,4’-及び/又は4,4’-ジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン:フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタンなどの芳香族アミン:及びダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化したダイマー酸ジアミン、末端にアミノ基を有するデンドリマー、アミンを繰返し構造として有するポリアミンを用いることもできるがこれらに限定されない。
上記チオール化合物としては、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、ジエチレングリコールジメルカプトプロピオネート、4-t-ブチル-1,2-ベンゼンジチオール、ビス-(2-メルカプトエチル)スルフィド、4,4’-チオジベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、グリコールジメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトプロピオネート、エチレンビス(3-メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジメルカプトアセテート、ポリエチレングリコールジ-(3-メルカプトピロピオネート)、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、ビスフェノフルオレンビス(エトキシ-3-メルカプトプロピオネート)、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、2-メルカプトメチル-2-メチル-1,3-プロパンジチオール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、チオグリセロールビスメルカプト-アセテート等の2官能チオール:トリメチロールプロパン(トリスメルカプトプロピオネート)(TMPTMP)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタン トリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトアセテート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、及びトリス(3-メルカプトプロピオネート)トリエチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、等の3官能チオール:ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン(PMPMS)、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオールペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトアセテート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)等の多官能チオールを含むが、これらに限定されない。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムにおいて使用されるクリヤー塗膜層(B)は、上述したようなものであるが、更に好ましくは、ポリウレタンアクリレート(B1)が
2重結合当量:130~600g/eq
分子量Mw:3000~200000
ウレタン濃度:300~2000g/eq、
である塗料組成物によって形成されたものであることが好ましい。これらの性質を満たすものを使用することが好ましい。このようなクリヤー塗料組成物によってクリヤー塗膜層(B)を形成することによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度,耐薬品性を備え,良好な耐衝撃性を付与することができる点で好ましいものである。さらに、上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、ウレア濃度:500~1000g/eqであることが好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量は、東ソー(株)製HLC-82220GPCを用いて測定した。測定条件は下記の通りである。
カラム:TSKgel Super Multipore HZ-M 3本
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム注入口オーブン 40℃
流量:0.35 ml/min.
検出器:RI
標準ポリスチレン:東ソー (株)PSオリゴマーキット
(その他の成分)
クリヤー塗料組成物は、通常、塗料材料として添加される化合物が、その他の成分として含まれていてもよい。この場合、その他の成分の配合量は、塗料中の固形分全量に対して60重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることが最も好ましい。その他の成分としては、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(HALS)、バインダー用樹脂や架橋剤、顔料、表面調整剤、消泡剤、導電性充填剤、溶剤等を挙げることができる。
更に、クリヤー塗料組成物に含まれる各成分の混合や粘度調整のために溶剤を用いてもよい。該溶剤としては、例えば、エステル系、エーテル系、アルコール系、アミド系、ケトン系、脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系等、塗料に用いられる従来公知の有機溶媒を、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記溶剤を用いる場合、積層フィルムに揮発性物質が残存すると、基材への加飾に際して、揮発性物質が揮散して、ピンホールや膨れが生じることがある。そのため、積層フィルムに含まれる揮発性物質を十分に低減することが好ましい。
更に、上記クリヤー塗料組成物は、更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機フィラーや有機フィラーを0.5~60重量部(塗料中の固形分比)含有することが好ましい。これによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度を改善することができる。上記配合量の下限は、1重量%であることがより好ましく、上限は50重量%であることがより好ましい。
上記無機フィラーとしては、シリカ、微粉末ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、セピオライト(マグネシウム珪酸塩)、タルク(珪酸マグネシウム)、マイカ(珪酸アルミ)、ゾノトライト(珪酸カルシウム)、硼酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)、チタン酸カリウム、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、イットリア、セリア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、あるいはこれらの共融混合物、又は成型、焼成などを経て得られる非金属無機材料いわゆるセラミックスフィラーが挙げられる。その中で価格と効果の面からシリカ、アルミナ、ジルコニア、あるいはこれらの共融混合物が好ましい。
上記有機フィラーとしては、アクリル、スチレン、シリコーン、ポリウレタン、アクリルウレタン、ベンゾグアナミン、ポリエチレンの各樹脂のビーズが挙げられる。
また、市販のものとして、オルガノシリカゾルMIBK-ST,MEK-ST-UP、MEK-ST-L,MEK-AC-2140Z(日産化学工業製)、SIRMIBK15ET%-H24、SIRMIBK15ET%-H83、ALMIBK30WT%-H06(CIKナノテック)等を使用することができる。
クリヤー塗料組成物は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量%(塗料中の固形分比)含有するものであってもよい。ポリイソシアネート化合物を配合することによって、成形性(延伸性)と耐擦傷性を付与できる点で好ましい。上記配合量の下限は、2重量%であることがより好ましく、上限は18重量%であることがより好ましい。
上記クリヤー塗料組成物は、着色顔料を含有した有色透明なものであってもよい。すなわち金属蒸着層とこのような着色透明であるクリヤー層との組み合わせによって、着色した金属蒸着を有する加飾を行うことができる。上記クリヤー塗料組成物において使用できる着色顔料は特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。
(成型フィルム(A))
成型フィルム(A)は、本発明の積層フィルムを製造する際のキャリアフィルムとしての働きをなすものである。すなわち、本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムの製造時に、各層を形成するための基材として使用されるものである。
成型フィルム(A)を形成するフィルムとしては、特に限定されず、例えば、軟質塩化ビニルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、フッ素フィルム等の従来公知のフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル及び/又はポリオレフィンにより形成されるフィルムが好ましく、特に省エネ低温加工性の点からは無延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。上記成型フィルム(A)の厚みは、0.01~0.5mmであることが好ましく、0.02~0.3mmであることがより好ましい。この範囲を外れると、キャリアフィルムとしての働きや、電磁線硬化の際の経済性の点で好ましくない。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、上記各層(A)~(E)が順次積層されているものであり、上記金属蒸着層(D)は、接着層(E)と、保護層(C)を介したクリヤー塗膜層(B)との間に存在するものである。これによって、加飾成形を行った後、金属調を有する金属蒸着層(C)の外側にクリヤー塗膜層(B)が形成されることとなるため、ハードコート性、耐薬品性、耐候性等の点においてすぐれた効果を得ることができる。
上述したような効果を得られる3次元成型体加飾用積層フィルムの層構成としては、例えば、図1に示したようなものを挙げることができる。
図1に示した3次元成型体加飾用積層フィルムは、成型フィルム(A)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、保護層(C)、金属蒸着層(D)、接着層(E)及び離形フィルム層(F)をこの順で積層したフィルムである。
このような構成の積層フィルムは、接着層(E)により3次元成型体に接着し、加飾成形後に成型フィルム(A)を剥離することによって、加飾を行う。これによって、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、保護層(C)、金属蒸着層(D)及び接着層(E)の4層からなる加飾層が3次元成型体上に形成されるものである。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、更に、上記各層に加えて、必要に応じて離形層(X)や印刷によって形成された意匠層(G)を形成したものであってもよい。印刷によって形成された意匠層(G)を設けた場合は、印刷による意匠性と金属蒸着層による意匠性が組み合わされた特異的な意匠外観を得ることができる点で好ましい。
また、印刷によって形成された意匠層(G)が、エネルギー線硬化型インクを使用した印刷である場合は、紫外線吸収層(H)を設けることが好ましい。すなわち、エネルギー線硬化型インクをフィルム作成時に硬化させる必要が生じるが、このインクの硬化の際に、クリヤー塗膜層(B)が同時に硬化することを防ぐことが好ましいためである。紫外線吸収層(H)は、上述した目的で設けられるものであることから、印刷によって形成された意匠層(G)とクリヤー塗膜層(B)との間に設けられることが好ましい。
(離型層(X))
本発明における離型層(X)は、公知の任意のものを使用することができ、例えば、シリコーン系離型剤等によって形成することができる。
離型層(X)とクリヤー層(B)の剥離強度は、0.05~8.0N/25mmであることが好ましく、0.1~5.0N/25mmであることが更に好ましい。0.05N/25mm未満であると、フィルム製造時、加飾成形時に基材フィルム層(A)が剥離するなど、作業性が悪くなるおそれがあり、また、8.0N/25mmを超えると、成形後フィルムを剥離する場合に、剥離が困難となるおそれがある。
(印刷によって形成された意匠層(G))
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、印刷によって形成された意匠層(G)を有するものであってもよい。このような層を設けることによって、印刷層と金属蒸着層との組み合わせによる特異的な外観が得られる点で好ましい。印刷の方法は特に限定されず、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷又はフレキソ印刷等の公知の方法によって形成することができる。特に、インクジェット印刷を使用することで、安価に種々の印刷層を形成することができる点で好ましい。また、印刷に際しては、エネルギー線硬化型のインクを使用した印刷を行うものであってもよい。
(紫外線吸収層(H))
上記紫外線吸収層(H)は、バインダー樹脂(H-1)及び紫外線吸収剤(H-2)を含有する塗料組成物によって形成されたものであることが好ましい。
上記バインダー樹脂(H-1)としては、特に限定されず、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を使用することができ、ウレタン樹脂が好ましく、ウレア結合含有ウレタン樹脂がさらに好ましい。1種単独で又は2種以上を併用して配合することができる。
紫外線吸収層(H)全量に対して85~99重量%の範囲内であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤(H-2)としては、特に限定されず、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等を使用することができる。
(破断伸度)
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、硬化前に、40~130℃で30~500%の破断伸びを有するものであることが好ましい。すなわち上記の温度範囲で、このような破断伸度を有するものとすることで、深絞り成形に容易に対応できるものとなり、本発明の効果を好適に得ることができる。このような数値範囲内のものとすることは、フィルムを形成する各層の成分を調製することで可能となる。本発明において、「40~130℃で30~500%の破断伸びを有する」とは、破断伸びが30~500%を示す温度領域が40~130℃内にあり、その温度で成形することで、十分な延伸性が得られる。という意味である。
なお、破断伸度は、成型フィルム(A)及び離形フィルム層(F)を含む状態で島津製作所製オートグラフAG-ISを用い、40~130℃の温度範囲内で、500mm/minの引張速度にて測定し、いずれかの層が破断した時点の伸びを測定して得られた値である。フィルムの性質に応じて、40~130℃の範囲内のいずれかの任意の温度において、破断伸びが上述した範囲のものとなればよい。
また、縦横300mmの正方形の成型枠を用いて、図4に示すアルミ製の台形治具に実際に3次元成型体加飾用積層フィルムを加飾成型し、各面の塗膜割れやひびがないことを確認することにより評価することもできる。この場合、何れの面においても割れ、ひびがないものが十分な延伸性が得られるいという意味である。
(積層フィルムの製造方法)
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムを構成する成型フィルム(A)、金属蒸着層(D)及び離形フィルム層(F)以外の各層は、各層を構成する成分を溶剤に溶解した塗料組成物を調製し、これを成型フィルム(A)又は離形フィルム層(F)上に順次塗布・乾燥することで、形成することができる。
以下に、具体的な方法の例を提示する。
例えば、成型フィルム(A)上に、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)及び保護層(C)を順次形成する工程(1-1)、
別途、離形フィルム層(F)上に、接着層(E)及びインジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)を順次形成する工程(1-2)、並びに、
上記工程(1-1)で得られたフィルムと上記工程(1-2)で得られたフィルムとを、保護層(C)と金属蒸着層(D)とが接するようにラミネート法により積層する工程(1-3)を有することを特徴とする製造方法によって得ることが好ましい。
上記各層を形成するための塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレーによる吹付け塗布、アプリケーターや、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラブラシ、はけ、へら等を用いて塗布すればよい。上記塗布方法にて、塗料溶液を塗布した後、該塗料溶液中の溶剤を除去するために、加温乾燥を行って、形成することができる。
また、インジウム又はスズからなる金属蒸着層(D)の形成方法は特に限定されるものではなく、通常の公知の方法によって行うことができる。
上記のように、離形フィルム層(F)に形成された接着層(E)上に金属蒸着層(D)を形成させ保護層(C)とラミネート法により積層する工程は、耐熱性の離型フィルム層を用いることにより塗工時の乾燥性を高め、真空蒸着時のアウトガスの発生を抑え金属外観を良好なものにする利点がある。
また、工程(1-1)を行う際に、印刷によって意匠層(G)を形成する工程も有するものであってもよい。
(加飾成型体の製造方法)
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムを用いて成型体を加飾する場合には、真空成形により、3次元成型体上に接着層(A)を接着させる方法が好適である。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、上述した構成を有するものであることから、真空成形においては、所定の加熱方法に従って加飾を行うことが好ましい。
すなわち、複数の硬化剤のうち、より低温で硬化反応を生じる硬化剤を硬化させる工程を有し、その後、3次元への加飾成形を行い、加飾成形後に、より高温で硬化反応を生じる硬化剤を硬化させることとすることが好ましい。
3次元成型体加飾用積層フィルムを用いて成型体を加飾するにおいては、真空圧空成形機を用いることが好適である。
上記真空圧空成形機は、一般に使用されているものでよいが、それぞれ上下駆動し、互いに対面する開口を有する上ボックス及び下ボックスを備え、更に、前記下ボックス上部に設置された、3次元成型体加飾用積層フィルムを支持するシートクランプ枠と、前記上ボックスに配された近赤外線ヒーターと、前記下ボックス内を上下駆動するテーブルとを備えるものが好適である。
加飾を行うには、例えば、以下のような工程を有する製造方法が挙げられる。すなわち、
前記3次元成型体加飾用積層フィルムを、常圧で加熱する工程(1)、
減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを更に加熱する工程(2)、
途中減圧を停止し、停止時の真空度を維持した状態で前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(3)及び
再度減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(4)
を有する製造方法である。
上記工程(1)、(2)及び(3)の加熱により、少なくとも2種類の硬化剤のうちの一種の硬化剤を主とする硬化を促進し、金属蒸着層の流動性を抑制しつつ、延伸性を確保するようにする加飾方法を採用することが好ましい。
更に、前記上ボックスの減圧を開放し、前記3次元成型体加飾積層フィルムを被加飾成型体に貼合し、更に上ボックスへの加圧と、前記3次元成型体加飾積層フィルムの加熱とを行い、前記3次元成型体加飾積層フィルムを被加飾成型体に更に密着させた後、上下ボックスの圧を大気開放する工程(5)を、工程(4)の後で行うものであってもよい。
上記工程(5)にて、残る硬化剤含めた硬化を完了させる方法を採用することが好ましい。
公知の真空成形においては、真空成形に必要な真空度まで減圧した後に積層フィルムの真空成形に必要なフィルム温度まで連続して加熱することが一般的であった。しかし、このような方法に従うと、真空成形に必要なフィルム温度より硬化温度が低い硬化剤の硬化に必要な時間が不十分であり、その硬化剤の潜在的な効果を有効に利用することが難しい。一方、上記本発明のような工程を有する真空成形を行うと、真空成形に必要なフィルム温度よりも低い硬化温度の硬化剤の硬化を十分に行うことができ、フィルム塗工時の乾燥工程やフィルムのエージングにおいて不足していた加熱工程を補完、追加することができる。すなわち、一つは保護層内の架橋や金属蒸着層を介した保護層と接着層の架橋による金属蒸着層の流動抑止による外観向上であり、もう一つは塗工時の乾燥工程で残留した不必要な溶剤の適度な減圧、加熱下での緩やかな拡散、放出による層内からの除去である。このことにより、従来の工程での減圧、加熱化で発生し得る溶剤の急激な拡散、放出によるフィルム層内のフクレを抑制することができる。また、このことにより、工程の歩留まり向上や外観維持に貢献できる。
なお、本発明の3次元成型体加飾積層フィルムを用いた加飾を、上記公知の真空成形の方法により行ってもよい。保護層(C)と接着層(E)とに反応樹脂を含み、保護層(C)に硬化性が異なる2種類以上の硬化剤を含む3次元成型体加飾積層フィルムであれば、上記公知の真空成形の方法によっても、成形時の延伸性や密着度は満たされ、成形後の外観耐久性もある程度満足できるものが得られる。
本発明の工程においては、工程(2)及び(3)において、低温で硬化する硬化剤を反応させる時間を確保することが好適である。更に、工程(5)において、高温で硬化する硬化剤の硬化温度に達したところで積層フィルムを変形させ、変形後に高温硬化側の硬化剤による硬化反応が完了するような、加熱ステップとすることが好ましい。
具体的には、例えば、上記のような真空圧空成形機を用い、まず、真空圧空成形機の上下ボックスが上下に開放された状態で、下ボックス内の上下昇降テーブルに、予備加熱された成型体を設置し、一方、下ボックス上部に設置されたシートクランプ枠に積層フィルムを装着する。
次いで、上ボックスを下降させ、下ボックスと合わせる。
まず、減圧に先立ち、常圧で前記近赤外線ヒーターにより、積層フィルムを所望の温度(設定1温度(T1))まで加熱する(工程(1))。
この設定1温度(T1)は、40℃~100℃とすることが好ましい。保護層(C)が含有する硬化剤(IA)の硬化が開始する温度とすることが好適である。この工程により、保護層(C)内の架橋と金属蒸着層を介した保護層(C)と接着層(A)との架橋の一部を行うものである。
また、工程(1)の時間は、加熱時のヒーター出力にて調整することができる。ヒーター出力は積層フィルムを均一に加熱するとともに設定1温度(T1)を過昇温させない出力で、さらに量産性を阻害しない時間で昇温できる出力が好ましい。工程(1)の時間は具体的には10秒間~60秒間とすることが好ましい。
次に、設定1温度(T1)に達した後、更に加熱を継続しながら、減圧を開始し、所望の真空度(設定1真空度)になるまで減圧を継続し、所望の真空度(設定1真空度)にて排気を休止する(工程(2))。
設定1真空度は5kPaから90kPaとなるように排気するのが好ましい。このときの真空度を調整することにより、積層フィルムに残存した不要な溶剤の拡散、放出速度を調整し、急激な拡散、放出による積層フィルム内のフクレを抑制することができる。
次に、設定1真空度を維持し、積層フィルムが所望の温度(設定2温度(T2))となるまで積層フィルムの加熱を継続する(工程(3))。
この設定2温度(T2)は、60℃~120℃の範囲内とすることが好ましい。保護層(C)が含有する硬化剤(IA)が硬化する温度にすることが好適である。
また、工程(2)及び(3)の加熱時間は、設定1温度(T1)から設定2温度(T2)までの加熱時のヒーター出力にて調整することができる。この時間は加飾成形時の金属蒸着層の流動性を抑制し、良好な外観を得るための硬化剤(IA)による硬化反応に必要な時間で、30秒間から60分間が好ましい。より好ましくは60秒間から300秒間である。
工程(2)及び(3)においては、低温で硬化する側の硬化剤による硬化を充分に進行させる必要がある。また、積層フィルム内にフクレを発生させる原因となる残留溶剤を緩やかに確実に除去する必要がある。このため、真空度(設定1真空度)と積層フィルム温度と時間とのバランスを適度に取る必要がある。
次に、再度、排気を開始し、加飾成形に必要な最大真空度まで減圧し、更に積層フィルムが軟化し、十分な延伸性を得る温度(圧空開始温度(T3))に、積層フィルムがなるよう加熱する(工程(4))。
最大真空度は、0.3kPa以下とすることが好ましい。
圧空開始温度(T3)は、積層フィルムの軟化点付近であることが好ましい。軟化点以下では十分な延伸性が得られず、軟化点以上では積層フィルムが加飾成形前に変形や溶融が発生し正常な加飾成型が行えない。積層フィルムとして伸びが30~500%となるような温度範囲内から選定して行うことが好ましい。具体的には、80℃~170℃の範囲内とすることが好適である。
工程(4)の時間も、加熱時のヒーター出力にて調整することができる。ヒーター出力は積層フィルムを均一に加熱するとともに圧空開始温度(T3)を過昇温させない出力で、さらに量産性を阻害しない時間で昇温できる出力が好ましい。工程(4)の時間は具体的には10秒間~60秒間とすることが好ましい。
次に、積層フィルム温度が圧空開始温度(設定3温度)に到達した時点で、上ボックスを大気開放し、前記上下昇降テーブルを上昇させ、上下ボックスの圧力差により積層フィルムを変形させ、積層フィルムと成型体とを圧着させて貼合し、加飾成型体を得る。更に、上ボックスにのみに圧縮空気を導入し、再度積層フィルムを加熱しながら所望の時間保持し、積層フィルムを成型体に更に密着させる。
このとき、圧空開始温度(T3)に到達後、上ボックスの大気開放までは速やかに行うことが必要である。圧空開始温度(T3)は、硬化剤(IB)が硬化する温度でもある。よって、長時間保持すると、硬化剤(IB)の硬化が進み、積層フィルムの加飾成形に必要な延伸性が損なわれる。
また、上ボックスの大気開放後、上ボックスにのみへの圧縮空気の導入も速やかに行うことが好適である。
また、圧空は130kPa以上、好ましくは150kPa以上の圧縮空気で加圧することが好適である。
このときの加熱によって、加飾後積層フィルムの温度(T4)は、80℃~170℃とすることが好適である。加熱により、加飾後積層フィルムの温度を、圧空開始温度(T3)以上に保持することで、硬化剤(IB)による硬化を十分に行うことができる。
このときの加熱時間は10秒間~60分間であることが好ましく、この時間と加飾後積層フィルム温度(T4)は成形機のヒーター出力にて調整することができる。より好ましくは30秒間~350秒間である。
この工程により、成型体と積層フィルムの接着層(E)との密着をより強固なものとすると共に、積層フィルムの保護層内、及び、金属蒸着層を介した保護層と接着層の硬化剤(IA)及び(IB)による架橋を確実にし、求められる耐水、耐熱時の白化抑制や密着性に必要な物性を得ることができる。
最後に、上下ボックスを大気圧に開放し、積層フィルムで加飾された加飾成型体が得られる(工程(5))。
真空成形完了後、紫外線等のエネルギー線放射により、得られた加飾成型体のクリヤー塗膜層(D)の硬化を行うことで、クリヤー塗膜層(D)がエネルギー硬化した加飾成型体が得られる。
上記加飾成型体の製造にあたり、離形フィルム層(F)を剥離し、接着層(E)が成型体表面に面するようにして、成型体表面に積層フィルムを密着するように、該積層フィルムを圧着させて加飾する。
また、成型フィルム(A)は、硬化前に剥離してもよいし、硬化後に剥離してもよい。
なお、本発明の積層フィルムによって好適に加飾を施すことができる3次元成型体は、特に限定されないが、例えば、ホイール、バンパー、フロントアンダースポイラー、リヤーアンダースポイラー、サイドアンダースカート、サイドガーニッシュ、ドアミラー等の自動車外装部品、インパネ、センターコンソール、ドアスイッチパネル等の自動車内装部品、携帯電話やオーディオ製品、冷蔵庫、ファンヒータ、照明器具等の家電製品の筐体、洗面化粧台等を挙げることができる。
本発明の積層フィルムは、上述した用途のなかでも、金属ホイールの加飾において特に好適に使用することができる。アルミホイール等のような自動車外装部品においては、耐熱性、耐水性といった性能要件が求められるところ、本発明の積層フィルムは、加飾成形後の硬度が高く、熱、水分による白化が生じないものである。
また、金属ホイールは、表面が光を反射するものであることから、レイリー散乱やミー散乱による外観悪化を生じやすい。更に、形状が複雑であることから、高延伸となる場所が多く存在し、このような場所における外観悪化が生じやすいものであった。さらに、良好な外観が要求される物品であることから、レイリー散乱やミー散乱による外観悪化を抑制することが特に好ましい。本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムを金属ホイールに適用すると、このような問題が解決される。
以下、本発明について実施例を挙げて説明する。実施例中、配合割合において%、部とあるのは特に言及がない限り重量%、重量部を意味する。本発明は以下に記載した実施例に限定されるものではない。
(黒色顔料ペーストの製造)
ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製・商品名 ダイフェラミンMAU-2600、固形分濃度40%)に、カーボンブラック(Thai Carbon Black Pubric Co.,Ltd.製・Carbon Black N-660)および溶剤(メチルエチルケトン)を加えて、固形分濃度が34.5%、PWCが12.5%になるように予備混合をおこなった後、卓上SGミル中でガラスビーズ媒体を加え、30℃以下で1時間撹拌分散し、粒度5μm以下であることをグラインドゲージにて確認して黒色顔料ペーストを得た。
(接着層塗料の作製1)
黒色顔料ペーストを18.42重量部、ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製・商品名 ダイフェラミンMAU-2600、固形分濃度40%)を52.11重量部、水酸基変性ウレタン樹脂(三井化学株式会社・商品名タケラックTE-5430、水酸基価22、固形分濃度35%)を25.15重量部、1%ジブチルチンラウリレート溶液を0.36重量部、メチルエチルケトン(MEK)3.96重量部を混合後、均一になるように撹拌し接着層塗料を得た。
(接着層塗料の作製2)
黒色顔料ペーストを18.42重量部、ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製・商品名 ダイフェラミンMAU-2600、固形分濃度40%)を52.11重量部、水酸基変性エポキシ樹脂(荒川化学工業株式会社・商品名アラキード9203N、水酸基価206、固形分濃度40%)を22.00重量部、1%ジブチルチンラウリレート溶液を0.36重量部、MEK7.11重量部を混合後、均一になるように撹拌し接着層塗料を得た。
(保護層塗料の作製1)
ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製・商品名 ダイフェラミンMAU-2600、固形分濃度40%)を67.55重量部、水酸基変性ウレタン樹脂(三井化学株式会社・商品名 タケラックTE-5430、水酸基価22、固形分濃度35%)を25.75重量部、1%ジブチルチンラウリレート溶液を0.36重量部、MEK6.43部を混合後、均一になるように撹拌し均質にした。
これに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)プレポリマー(住化コベストロウレタン株式会社製・商品名 デスモジュールN3800)を1.8重量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(住化コベストロウレタン株式会社製・商品名 デスモジュールZ4470 SN)を1.8重量部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製・商品名 KBM-403)を3.6重量部加え、均一になるように撹拌し保護層塗料を得た。
(保護層塗料の作製2)
ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製・商品名 ダイフェラミンMAU-2600、固形分濃度40%)を67.5重量部、水酸基変性エポキシ樹脂(荒川化学工業株式会社・商品名アラキード9203N、水酸基価206、固形分濃度40%)を22.5重量部、1%ジブチルチンラウリレート溶液を0.36重量部、MEKを9.64重量部混合後、均一になるように撹拌し均質にした。
これに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)プレポリマー(住化コベストロウレタン株式会社製・商品名 デスモジュールN3800)を1.8重量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(住化コベストロウレタン株式会社製・商品名 デスモジュールZ4470 SN)を1.8重量部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製・商品名 KBM-403)を3.6重量部加え、均一になるように撹拌し保護層塗料を得た。
(クリヤー層塗料の作製)
ウレタンアクリレート樹脂(大日精化工業株式会社製・商品名 ダイフェラミンMAU-7002H33-50、固形分濃度50%)を80.0重量部、1%ジブチルチンラウリレート溶液を0.40重量部、光重合開始剤(10%Omnirad TPOH)溶液を4.0重量部加え、均一になるように撹拌した。
これに、三井化学株式会社・商品名 タケネートD-178NLを3.6重量部加えて均一になるように撹拌しクリヤー層塗料を得た。
<3次元成型体加飾用積層フィルムの作製>
(プライマーフィルムの作製)
離形PETフィルム(帝人フィルムソリューション製・商品名 ピューレックスA54)の離型面に20μmの膜厚になるように上記接着層塗料を、アプリケーターを用いて塗布し、120℃にて5分間乾燥させてプライマーフィルム(図1のE-F)を得た。
(蒸着プライマーフィルムの作製)
上記で得た、プライマーフィルムのプライマー塗膜面にインジウムを用いた蒸着層を真空蒸着法により、厚み200nmになるように形成し、蒸着プライマーフィルム(図1のD-F)を得た。
なお、厚みは、FE-SEM HITACHI製 S4800(acceleration voltage 5kV)によりフィルム断面を観察し測定した。
(クリヤーフィルムの作成)
成型フィルム(東レ製・商品名 デコフィット16CK)の平滑面に35μmの膜厚になるようにクリヤー層塗料を、アプリケーターを用いて塗布し、95℃にて5分間乾燥させてクリヤフィルム(図1のA-B)を得た。次に、保護層塗料をクリヤー層側に20μmの膜厚になるように、アプリケーターで塗布し、95℃にて5分間乾燥させてクリヤーフィルム(図1のA-C)を得た。
(積層フィルムの作成)
上記蒸着プライマーフィルム(D-F)の蒸着面(D)とクリヤーフィルム(A-C)の保護層面(C)とを合わせるようにして、80℃のロール温度でラミネーションを行った後、40℃にて15.5時間エージングを行い、積層フィルム(図1のA-F)を作成した。
(加飾成型体の製造方法1:先加熱)
上下ボックスからなる両面真空成形装置(商品名NGF-0709、布施真空(株)社製)の上下ボックスが上下に開放された状態で、下ボックス内上面に移動された上下昇降テーブル上に、130℃に予備加熱された粉体塗装済み金属部品(成型体)を設置した。その後、上下昇降テーブルを下降し金属部品(成型体)を下ボックス内部に移動させた後、下ボックス上部に設置されたシートクランプ枠に上記にて得た積層フィルム(A-E)をセットした。続いて、上ボックスを下降させた後、近赤外線ヒーターを用いて積層フィルムの温度が設定温度1(T1)になるまで加熱した。
次に、設定2温度(T2)になるように更に加熱した。設定2温度(T2)に達するまでの時間はヒーター出力で調整した。同時に設定1温度(T1)に達したときに上下ボックス内の真空度が設定1真空度になるように減圧した。設定1真空度に達したところで真空ポンプと上下ボックスのバルブを閉じ真空度を維持した。
設定2温度(T2)に達したところで最大真空度まで減圧を再開した。最後に、圧空開始温度(T3)まで加熱したところで、上下昇降テーブルを上昇させ成型体と積層フィルムとを圧着させた。その後、上ボックスにのみ大気開放し、続けて、150kPaの圧縮空気を導入し、近赤外線ヒーターを用いて再加熱しながら所定の時間保持した。このとき、ヒーター出力を調整し圧空後の加飾後積層フィルム温度(T4)を調整した。
上下ボックスを大気圧に開放し、積層フィルムで加飾された加飾成型体を得た。
更に、上記加飾成型体のクリヤー塗膜層(B)側から、120W/cmの高圧水銀灯を用いて、3,000mJ/cmの光量の紫外線を照射し、クリヤー塗膜層(B)のクリヤー塗料を硬化させ、UV(紫外線)硬化加飾成型体を得た。
なお、上記加飾成型体の製造方法の積層フィルム温度と真空度との関係を、図2に示す。
(加飾成型体の製造方法2:先排気)
上下ボックスからなる両面真空成形装置(商品名NGF-0709、布施真空(株)社製)の上下ボックスが上下に開放された状態で下ボックス内上面に移動された上下昇降テーブル上に、130℃に予備加熱された粉体塗装済み金属部品(成型体)を設置した。その後、上下昇降テーブルを下降し金属部品(成型体)を下ボックス内部に移動させた後、下ボックス上部に設置されたシートクランプ枠に上記にて得た積層フィルムをセットした。続いて、上ボックスを下降させ、上下ボックス内の真空度が1.0kPaになるように減圧したところで、上ボックス内に設置された近赤外線ヒーターを用いて積層フィルムの温度が圧空開始温度120℃になるまで減圧を継続しながら120秒間かけて加熱した。加熱後、上下昇降テーブルを上昇させ成型体と積層フィルムとを圧着させ、その後、上ボックスにのみ大気開放し、続けて、150kPaの圧縮空気を導入し、再加熱しながら30秒間保持した。上下ボックスを大気圧に開放し、積層フィルムで加飾された加飾成型体を得た。
自然に放冷させ、さらに、上記加飾成形体のクリヤー塗膜層(B)側から、120W/cmの高圧水銀灯を用いて、2,000mJ/cmの光量の紫外線を照射し、クリヤー塗膜層(B)のクリヤー塗料を硬化させ、UV(紫外線)硬化加飾成型体を得た。
なお、上記加飾成型体の製造方法の積層フィルム温度と真空度との関係を、図3に示す。
<評価方法>
(加飾成形時延伸性)
縦横300mmの正方形の成型枠を用いて、図4に示すアルミ製の台形治具に3次元成型体加飾用積層フィルムを加飾成形し、各面の塗膜割れやひびがないことを確認することにより評価した。
○:いずれの面においても塗膜に割れ、ひびがない。
△:90°面のみに割れ、ひびが発生する。
×:90°面及び、その他の面に割れ、ひびが発生する。または、工程(4)以前に積層フィルムが破断する。
(加飾成型体の作成)
8mm×70mm×150mmのリン酸亜鉛処理が施された冷延鋼板に、粉体塗料(日本ペイント・インダストリアルコーティングス製・商品名 HB4000)を70±20μmの膜厚になるように静電塗装し、165℃にて25分間乾燥し、硬化させた。このテストパネルを130℃に予備過熱し、真空成型機内に設置されたアルミ治具により保温された状態で、図2、図3に示すような上記工程にて上記積層フィルム(A-E)を真空・圧空成形し、積層フィルムで加飾された加飾成型体を得た。自然に放冷させ、積層フィルム側から120W/cmの高圧水銀灯を用いて、3,000mJ/cmの光量の紫外線を照射し、クリヤー層塗膜を硬化させ、成型フィルムを剥離し、UV硬化加飾成型体を得た。
(成形後外観)
UV硬化加飾成型体のクリヤー層側から目視で外観を評価した。
◎:外観不良なし
○:わずかに蒸着層の干渉模様、あるいは白化、割れ、ひびが観察される(不良面積0~5%未満)。
△:わずかに蒸着層の干渉模様、あるいは白化、割れ、ひびが観察される(不良面積5%以上30未満%)。
×:著しい外観不良(不良面積30%以上)
(耐水試験)
UV硬化加飾成型体の冷延鋼板側をポリエステープにてマスキングし、40±1℃の脱イオン水に10日間浸漬させたのちに取り出し後、水滴、汚れをふき取り、取り出し後、室温で1時間以内に碁盤目試験方法にて評価した。
なお、耐水試験は、下記耐水白化性及び密着性試験を実施するために行ったものである。
(耐水白化性)
耐水試験前のUV硬化加飾成型体の初期60°グロスをグロス計(micro-Tri-gloss BYK)にて測定しておき、耐水試験後のUV硬化加飾成型体の耐水試験後60°グロスについて初期グロスとの保持率%を評価した。
◎:グロス保持率95%以上
○:グロス保持率90%以上95%未満
△:グロス保持率85%以上90%未満
×:グロス保持率85%未満
(密着性試験)
耐水試験後のUV硬化加飾成型体にカッターナイフ(NTカッターS型)を用いて、UV硬化塗膜に冷延鋼板まで達するように2mm間隔の100の正方形ができるようにカットした。セロテープ(登録商標、ニチバン社製)を圧着させ急激に引っ張り、UV硬化加飾成型体からセロテープをはがした。このときにUV硬化塗膜のうち50%以上UV硬化加飾成型体から剥離した正方形の数を剥離数とした。
○:剥離なし
△:~50%剥離
×:~100%剥離
〔実施例1~3、比較例1~11〕
加飾成型体の製造方法2により、表1に示す保護層及び接着層の組成で、UV硬化加飾成型体を得た。
評価の結果を、表1に併せて示す。
〔実施例4~7、比較例12~13〕
加飾成型体の製造方法1により、表2に示す保護層及び接着層の組成、加熱条件(温度、時間)で、UV硬化加飾成型体を得た。
評価の結果を、表2に併せて示す。
Figure 2022100644000002
Figure 2022100644000003
表1、2の結果より、実施例の積層フィルムは、目的とする性能を有するものであった。
また、表2の結果より、真空成形において、特定の加熱と減圧を行い、積層フィルムの温度を段階的に上げていくことによって、成形時の延伸性と形成後の性能とに優れる加飾成型体が得られることがわかる。
本発明の3次元成型体加飾用積層フィルムは、各種の3次元成型体に対して3次元的形状面を有する金属調の加飾を好適に行うことができる。
本発明の加飾成型体の製造方法は、各種の3次元成型体に対して3次元的形状面を有する金属調の加飾成型体の製造に好適である。
(A)成型フィルム
(B)クリヤー塗膜層
(C)保護層
(D)金属蒸着層
(E)接着層
(F)離形層フィルム層

Claims (9)

  1. 成型フィルム層(A)、
    エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、
    金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、
    インジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)及び
    接着層(E)
    を順次有するものであり、
    前記保護層(C)と接着層(E)とに反応性樹脂を含み、かつ、保護層(C)に硬化性が異なる2種類以上の硬化剤を含む3次元成型体加飾用積層フィルム。
  2. 保護層(C)と接着層(E)とに含まれる反応性樹脂は、水酸基を有する、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂である請求項1に記載の3次元成型体加飾用積層フィルム。
  3. 保護層(C)に含まれる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤と、少なくとも1種の、2級イソシアネート基、3級イソシアネート基またはブロック型イソシアネート基を有する硬化剤である請求項1または2に記載の3次元成型体加飾用積層フィルム。
  4. 保護層(C)及び/または接着層(E)に、金属カップリング剤を含む、請求項1、2または3いずれか1項に記載の3次元成型体加飾用積層フィルム。
  5. 真空圧空成形機を用いて、加飾用積層フィルムを被加飾成型体に加飾する加飾成型体の製造方法であって、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを、常圧で加熱する工程(1)、
    減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを更に加熱する工程(2)、
    途中減圧を停止し、停止時の真空度を維持した状態で前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(3)及び
    再度減圧しながら、前記3次元成型体加飾用積層フィルムを加熱する工程(4)
    を有し、
    前記3次元成型体加飾用積層フィルムは、
    成型フィルム層(A)、
    エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(B)、
    金属蒸着面をラミネートする保護層(C)、
    インジウム若しくはスズからなる金属蒸着層(D)及び
    接着層(E)
    を順次有するものであり、
    前記保護層(C)と接着層(E)とに反応性樹脂を含み、かつ、保護層(C)に、2種類以上の硬化剤を含むものである、加飾成型体の製造方法。
  6. 保護層(C)と接着層(E)とに含まれる反応性樹脂は、水酸基を有する、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂である請求項5に記載の加飾成型体の製造方法。
  7. 保護層(C)に含まれる硬化剤は、少なくとも1種の、1級イソシアネート基のみを有する硬化剤と、少なくとも1種の、2級イソシアネート基、3級イソシアネート基またはブロック型イソシアネート基を有する硬化剤である請求項5または6に記載の加飾成型体の製造方法。
  8. 保護層(C)及び/または接着層(E)に金属カップリング剤を含む、請求項5、6または7いずれか1項に記載の加飾成型体の製造方法。
  9. 請求項5~8の加飾成型体の製造方法によって得られる加飾成型体。

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