JP2022159210A - 凍結接着性幹細胞の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、凍結保存液の組成を改良することで、凍結及び融解後の接着性幹細胞の品質及び生存率を向上させることである。【解決手段】ジメチルスルホキシドを2~10体積%、ヒドロキシエチルデンプンを4~10質量%、ヒト血清アルブミンを3.5質量%以上及び血小板溶解物を含有する溶液中で接着性幹細胞を凍結保存して凍結接着性幹細胞を製造する方法を提供する。【選択図】なし
Description
本発明は保存用の凍結接着性幹細胞の製造方法に関する。
近年、様々な幹細胞を用いた再生医療等製品の開発が進んでいるが、それらを治療用製剤として提供するためには、細胞の品質を長期間にわたって安定的に維持できる保存方法が不可欠である。一般的に、治療用細胞製剤やその中間製品及び原料細胞の保存方法としては、凍結保存が行われているが、細胞を凍結・融解すると細胞内氷晶形成により細胞に大きな損傷が加わり、細胞の品質低下や生存率低下を引き起こす。そこで、凍結・融解による損傷から細胞を保護する凍結保存液の開発が進んでおり、その一つとしてジメチルスルホキシド及びヒドロキシエチルデンプンを有効成分とする凍結保存液(商品名:CP-1、極東製薬工業株式会社製)が販売されている(特許文献1)。また、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルデンプン及びヒト血清アルブミンを含有する凍結保存液を用いて間葉系細胞の凍結を行うことで従来の凍結保存液を用いた場合よりも解凍後の間葉系細胞の生存率や増殖性が向上することも報告されている(特許文献2)。
上述したような凍結保存液中に添加されているジメチルスルホキシドは、凍結時及び融解時のダメージから細胞を保護する役割を果たす一方で、非凍結状態においては細胞への毒性を示すということが知られている。しかし、研究段階や試験的な治験段階におけるラボスケールでの調製では、凍結保存液に細胞を懸濁してから凍結を開始するまでの時間が数分以内であるため、非凍結状態におけるジメチルスルホキシドの毒性はほとんど問題とならなかった。ところが、細胞加工業や、社会実装を前提とする企業治験における大スケールの製造においては、凍結保存液に細胞を懸濁してから凍結を開始するまでの待機時間が数十分から数時間に及ぶことがある。この期間は非凍結状態となるため、ジメチルスルホキシドの毒性が細胞に与える影響は看過できず、細胞の品質や生存率を低下させる要因の一つとして問題となっている。
そこで、本発明では凍結保存液の組成の改良により、接着性幹細胞の品質を改善する製造方法、及びそれにより得られる細胞治療組成物を提供する。
本発明者らは上記新たな課題を解決するために鋭意検討した結果、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルデンプン及びヒト血清アルブミンを含有する凍結保存液にさらに血小板溶解物を添加することで、非凍結状態におけるジメチルスルホキシドの細胞毒性を抑制し、かつ凍結・融解後の増殖性を高める凍結保存液が得られることを見出だした。すなわち、本発明によれば、以下の方法が提供される。
(1)接着性幹細胞を、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含有する溶液中で凍結保存する工程を有する、凍結接着性幹細胞の製造方法。
(2)前記溶液中の血小板溶解物の濃度が2~10体積%である、(1)に記載の製造方法。
(3)前記溶液中の血小板溶解物の濃度が乾燥重量換算で1mg/mL~10mg/mLである、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記接着性幹細胞が羊膜由来細胞である、(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)(1)~(4)いずれかに記載の方法により得られる凍結接着性幹細胞。
(6)(5)の凍結接着性幹細胞を有効成分として含む細胞治療組成物。
(7)接着性幹細胞を、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含有する溶液中で凍結保存する工程を有する、接着性幹細胞の凍結保存方法。
(8)2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び1mg/mL~10mg/mLの血小板溶解物を含む、接着性幹細胞の凍結保存溶液。
(2)前記溶液中の血小板溶解物の濃度が2~10体積%である、(1)に記載の製造方法。
(3)前記溶液中の血小板溶解物の濃度が乾燥重量換算で1mg/mL~10mg/mLである、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記接着性幹細胞が羊膜由来細胞である、(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)(1)~(4)いずれかに記載の方法により得られる凍結接着性幹細胞。
(6)(5)の凍結接着性幹細胞を有効成分として含む細胞治療組成物。
(7)接着性幹細胞を、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含有する溶液中で凍結保存する工程を有する、接着性幹細胞の凍結保存方法。
(8)2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び1mg/mL~10mg/mLの血小板溶解物を含む、接着性幹細胞の凍結保存溶液。
本発明の製造方法を用いることによって、凍結・融解後の細胞生存率を維持し、また細胞の増殖性を高めることができる。したがって、本発明は再生医療等製品の品質向上に寄与し、再生医療等製品の利用促進につながることが期待できる。
[1]用語の説明
本明細書において「接着性幹細胞」とは、下記の定義i)及びii)を満たす幹細胞を指す。さらに、「間葉系間質細胞 (Mesenchymal stromal cells)」及び「間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSC)」も本発明の接着性幹細胞に含まれる。
本明細書において「接着性幹細胞」とは、下記の定義i)及びii)を満たす幹細胞を指す。さらに、「間葉系間質細胞 (Mesenchymal stromal cells)」及び「間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSC)」も本発明の接着性幹細胞に含まれる。
本明細書における接着性幹細胞の定義
i)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す幹細胞である。ここでいう「標準培地」とは、基礎培地(例:αMEM培地)に血清、血清代替試薬又は増殖因子(例:血清代替試薬であるヒト血小板溶解物)を添加した培地である。
ii)表面抗原のCD73、CD90が陽性であり、CD45、CD326が陰性の幹細胞である。
i)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す幹細胞である。ここでいう「標準培地」とは、基礎培地(例:αMEM培地)に血清、血清代替試薬又は増殖因子(例:血清代替試薬であるヒト血小板溶解物)を添加した培地である。
ii)表面抗原のCD73、CD90が陽性であり、CD45、CD326が陰性の幹細胞である。
本明細書において「凍結接着性幹細胞」とは、凍結保存用として調製された接着性幹細胞の凍結細胞をいう。凍結状態を経た細胞であればよく、必ずしも凍結状態である必要はない。したがって、本明細書における凍結接着性幹細胞は、凍結後、融解した状態の細胞も含み得る。本発明の凍結接着性幹細胞は、凍結・融解後も接着性幹細胞の生存率を維持し、かつ細胞増殖能が向上する特徴を有する。
本発明における接着性幹細胞の由来は、特には制限されず、胎児付属物(羊膜、臍帯、胎盤等)、骨髄液、脂肪組織、歯髄等に由来するものを用いることができるが、好ましくは羊膜由来である。
本明細書における「細胞(への)毒性」とは、細胞死を引き起こす性質をいう。本明細書において細胞毒性は、細胞生存率の低下度合いを用いて評価することができる。
本明細書における「(細胞)増殖能」とは、細胞分裂を行うことにより細胞が増加する能力のことをいう。本明細書において「(細胞)増殖能が高い」とは、「(細胞)増殖性が高い」と区別なく用いることができる。接着性幹細胞集団の増殖能は、比増殖速度、倍加回数、倍加時間、及び/又は継代回数を用いて評価することができる。比増殖速度の測定方法は、本明細書にて後述の通りである。
本明細書における「血小板溶解物」とは、血液由来の血小板の溶解物であり、その成分として複数の増殖因子やケモカインを多量に含む細胞培養用添加物のことをいう。血小板溶解物の由来となる動物種は特に限定しないが、好ましくはヒトである。上記の増殖因子としては、platelet derived growth factor isoforms(PDGF-AA、-AB、-BB)、transforming growth factor-b(TGF-b)、insulin-like growth factor-1 (IGF-1)、brain derived neutrophic factor(BDNF)、 vascular endothelial growth factor(VEGF)、epidermal growth factor(EGF)、basic fibroblast growth factor(bFGF 又は FGF-2)、 hepatocyte growth factor(HGF)、connective tissue growth factor(CTGF)、morphogenetic protein -2、-4 、-6(BMP-2、-4、-6)等が挙げられる。上記のケモカインとしては、Interleukin-8(IL-8)、neutrophil-activating peptide-2(NAP-2)、regulated on activation, normal T cell expressed and secreted(TANTES)、monocyte chemotactic protein-1、-3(MCP-1、3)、macrophage inflammatory proteins-1 alpha(MIP-1α)、beta-thromboglobulin等が挙げられる。血小板溶解物の製造方法には、バフィーコート法や多血小板血漿法、アフェレーシス法等があるが、特に限定されない。血小板溶解物としては、UltraGRO-Advanced(AvenataCell BioMedical社)、Stemulate(Cook Reagent社)、PLTMax/PLTGold(Mill Creek Life Sciences社)、PLUS(Compass Biomedical社)、Multi PL‘(Macopharma社)、PL SOLUTION (PL BioScience GmbH社)、CRUX RUFA GMP(Trinova Biochem社)等を使用できるが特に限定されない。
[2]接着性幹細胞の凍結保存方法
本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法(本明細書では、しばしば単に「製造方法」と表記する)、及び接着性幹細胞の凍結保存方法において、使用する凍結保存液は、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含む。接着性幹細胞を前記凍結保存液に懸濁する方法は、特に制限されない。接着性幹細胞を直接に懸濁しても良い。また、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清アルブミンを含有する溶液と血小板溶解物を含む細胞懸濁液を任意の割合で混合することで、本発明の範囲内の溶液となるよう調整することもできる。例えば、4~20体積%のジメチルスルホキシド、8~20質量%のヒドロキシエチルデンプン、7質量%以上のヒト血清アルブミンを含有する溶液と、血小板溶解物を含む細胞懸濁液を1:1の割合で混合することで調製しても良いし、細胞懸濁液に2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、血小板溶解物を添加することで調製してもよい。
本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法(本明細書では、しばしば単に「製造方法」と表記する)、及び接着性幹細胞の凍結保存方法において、使用する凍結保存液は、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含む。接着性幹細胞を前記凍結保存液に懸濁する方法は、特に制限されない。接着性幹細胞を直接に懸濁しても良い。また、ジメチルスルホキシド、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清アルブミンを含有する溶液と血小板溶解物を含む細胞懸濁液を任意の割合で混合することで、本発明の範囲内の溶液となるよう調整することもできる。例えば、4~20体積%のジメチルスルホキシド、8~20質量%のヒドロキシエチルデンプン、7質量%以上のヒト血清アルブミンを含有する溶液と、血小板溶解物を含む細胞懸濁液を1:1の割合で混合することで調製しても良いし、細胞懸濁液に2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、血小板溶解物を添加することで調製してもよい。
上記凍結保存液中の細胞濃度(終濃度)は特に制限されないが、2×108cells/mL以下、又は5×107cells/mL以下であれば、本発明の効果がより有効に発揮される。
上記凍結保存液が含有するジメチルスルホキシドの濃度は2~10体積%の範囲であれば特に限定されないが、4体積%以上であればより高い凍結保護効果を示し、好ましくは8体積%以下、又は6体積%以下であれば細胞毒性をより軽減することができる。
上記凍結保存液が含有するヒドロキシエチルデンプンの濃度は4~10質量%の範囲であれば特に限定されないが、8質量%以下であれば凍結保存液の粘性を低下させ、操作性を向上することができる。
上記凍結保存液が含有するヒト血清アルブミンの濃度は、3.5質量%以上の範囲であれば特に限定されないが、3.5~10質量%、又は3.5~7質量%であれば、本発明の効果がより強く発揮される。
上記凍結保存液が含有する血小板溶解物の濃度は、特に限定されないが、液状の血小板溶解物を使用する場合、好ましくは2~10体積%、又は2~6体積%であればよい。血小板溶解物の乾燥重量換算としては、1mg/mL~10mg/mL、1mg/mL~8mg/mL、又は1mg/mL~6mg/mLであればよい。この濃度範囲であれば、コストを低減でき、費用対効果を高めることができる。
本発明において、接着性幹細胞を上記凍結保存液に懸濁してから凍結を開始するまでの時間は特に制限されないが、凍結を開始するまでの時間が24時間以内、12時間以内、又は6時間以内であればよい。解凍後の接着性幹細胞の生存率を維持し、かつ増殖性をより向上させることができる。
凍結保存は、例えば、プログラムフリーザーによる緩慢凍結法や、ディープフリーザーによる簡易式凍結法により行うことができる。プログラムフリーザーによる緩慢凍結法においては、例えば予め設定された1~3℃/分の速度で冷却する、すなわち1~3℃/分の速度で温度を低下させることができる。一方、簡易式凍結法においては、例えば、細胞懸濁液を充填したクライオバイアルや凍結バッグを、細胞凍結用容器や発泡スチロール容器に入れた状態でディープフリーザーに入れて緩慢凍結させることができる。また、上記凍結保存方法で凍結後に、細胞を液体窒素中で保存してもよい。凍結時に細胞を充填する容器としては、Nuncクライオチューブ1.8mLインナーキャップ(Thermo Fisher Scientific社製)、バーコード付き内ネジクライオジェニックバイアル(Corning社製)、フローズチューブTー1.5(ニプロ社製)、フローズバッグ(ニプロ社製)等を挙げることができるが、特に限定されない。簡易式凍結法に用いる細胞凍結容器としては、例えば、BICELL(日本フリーザー株式会社製)やCoolCell(Corning社製)を用いることができる。
なお、本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法で製造した凍結接着性幹細胞は、解凍後に1回以上の培養を行った後に最終製品としてもよく、また凍結したままの状態で最終製品として医療機関等に提供しても良い。本発明の目的と効果を十分に発揮する観点においては、本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法、又は接着性幹細胞の凍結保存方法は、細胞製剤の製造の中間工程で実施されるのが好ましい。
本発明において凍結保存の期間は本発明の効果にほとんど影響を与えないことから、工程上所望する任意の凍結保存期間を選択することができる。したがって、特に限定されないが、下限は例えば、1日以上、2日以上、3日以上、1週間以上、10以上、20日以上、1ヶ月以上であり、上限は例えば、5年以下、3年以下、2年以下、1年以下、6ヶ月以下である。
本発明の製造方法で得られた凍結接着性幹細胞の解凍方法は、例えば、35~37℃の湯浴で容器ごと凍結細胞を解凍することによって実施できる。また、細胞解凍装置を用いてもよい。細胞解凍装置としては、例えば、ThawSTAR (BIOLIFE SOLUTIONS製)、VIA Thaw CB1000(cytiva社製)、凍結細胞融解装置YSシリーズ(ストレックス株式会社)を用いることができる。
[3]凍結保存工程を有する凍結接着性幹細胞の製造方法
本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法は、前記凍結保存する工程を有することを特徴とし、その他の条件及び構成は何ら制限されない。
本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法は、前記凍結保存する工程を有することを特徴とし、その他の条件及び構成は何ら制限されない。
本発明の製造方法は、例えば、羊膜等の胎児付属物を酵素処理することにより、接着性幹細胞を含む細胞集団を取得する、又は羊膜を帝王切開により取得する「細胞集団取得工程」を含んでいてもよい。さらに、上記の細胞集団取得工程後は、接着性幹細胞を含む生体試料を洗浄する「洗浄工程」を含んでいてもよい。
本発明における接着性幹細胞を含む細胞集団は、限定はしないが、好ましくは胎児付属物から採取した上皮細胞層と接着性幹細胞層とを含む生体試料を少なくともコラゲナーゼで処理して得た細胞集団である。
胎児付属物から採取した生体試料(好ましくは上皮細胞層と接着性幹細胞層とを含む生体試料)の酵素処理は、例えば、胎児付属物の細胞外基質層に含まれる接着性幹細胞を遊離することができ、かつ上皮細胞層を分解しない酵素(又はその組み合わせ)による処理である。かかる酵素としては、特に限定されないが、例えば、コラゲナーゼ及び/又は金属プロテイナーゼを挙げることができる。金属プロテイナーゼとしては、非極性アミノ酸のN末端側を切断する金属プロテイナーゼであるサーモリシン及び/又はディスパーゼを挙げることができるが、特に限定されない。
コラゲナーゼの活性濃度は、50PU/ml以上、又は100PU/ml以上、又は200PU/ml以上である。また、コラゲナーゼの活性濃度は、特に限定されないが、例えば、1000PU/ml以下、900PU/ml以下、800PU/ml以下、700PU/ml以下、600PU/ml以下、500PU/ml以下である。ここで、PU(Protease Unit)とは、pH7.5、30℃において、FITC-collagen 1ugを1分間で分解する酵素量と定義する。
金属プロテイナーゼ(例えば、サーモリシン及び/又はディスパーゼ)の活性濃度は、50PU/ml以上、100PU/ml以上、又は200PU/ml以上である。また、金属プロテイナーゼの活性濃度は、好ましくは1000PU/ml以下、900PU/ml以下、800PU/ml以下、700PU/ml以下、600PU/ml以下、又は500PU/ml以下である。ここで、金属プロテイナーゼとしてディスパーゼを用いた態様において、PU(Protease Unit)とは、pH7.5、30℃において、乳酸カゼインから1分間に1ugのチロシンに相当するアミノ酸を遊離する酵素量と定義される。上記の酵素濃度の範囲において、胎児付属物の上皮細胞層に含まれる上皮細胞の混入を防止しながら、細胞外基質層に含まれる接着性幹細胞を効率よく遊離させることができる。コラゲナーゼ及び/又は金属プロテイナーゼの好ましい濃度の組み合わせは、酵素処理後の胎児付属物の顕微鏡観察や、取得した細胞のフローサイトメトリーにより決定することができる。
生細胞を効率的に回収する観点から、コラゲナーゼ及び金属プロテイナーゼを組み合わせて胎児付属物を処理することが好ましい。さらに好ましくは、前記組み合わせによって胎児付属物を同時一括に処理する。この場合の金属プロテイナーゼとしては、サーモリシン及び/又はディスパーゼを使用することができるが、これらに限定されない。コラゲナーゼ及び金属プロテイナーゼを含有する酵素液を用いて胎児付属物を一回のみ処理することにより、接着性幹細胞を簡便に取得することができる。また、同時一括に処理することにより、細菌やウィルス等のコンタミネーションのリスクを低減することができる。
胎児付属物の酵素処理は、生理食塩水やハンクス平衡塩溶液等の洗浄液を用いて洗浄した羊膜を酵素液に浸漬し、攪拌手段によって攪拌しながら処理することが好ましい。かかる攪拌手段としては、羊膜の細胞外基質層に含まれる接着性幹細胞を効率よく遊離させる観点から、例えば、スターラー又はシェーカーを使用することができるが、これらに限定されない。スターラー又はシェーカーを用いた場合の攪拌速度の下限は、特に限定されないが、あまりに攪拌速度が遅いと酵素処理効率が低下するため、好ましくは5rpm、又は10rpmである。上限は、特に限定されないが、攪拌速度が速すぎると細胞に損傷を与えうるため、好ましくは100rpm、又は60rpmである。酵素処理時間の下限は、特に限定されないが、短すぎる場合には十分に羊膜に含まれる接着性幹細胞を分離できないため、好ましくは30分、又は45分である。また、酵素処理時間の上限は、特に限定されないが、長すぎる場合は分離した細胞の生存率が低下する可能性があるため、好ましくは6時間、3時間、又は90分である。酵素処理温度の下限は、特に限定されないが、効率よく酵素反応を進行させるために、好ましくは15℃、25℃、又は35℃である。また、酵素処理温度の上限は、特に限定されないが、温度が高すぎると羊膜細胞の死滅や、酵素の失活が引き起こされるため、好ましくは40℃である。
本発明の製造方法において、所望により、遊離した接着性幹細胞を酵素溶液からフィルター、遠心分離や中空糸分離膜、セルソーター等の公知の方法を用いて分離及び/又は回収することができる。好ましくは、フィルターによって濾過、回収する方法である。フィルターによって濾過する態様においては、遊離した接着性幹細胞のみがフィルターを通過し、分解されなかった上皮細胞層はフィルターを通過できずにフィルター上に残る。それにより、遊離した接着性幹細胞を容易に分離及び/又は回収することができるだけでなく、細菌やウィルス等のコンタミネーションのリスクも低減することができる。フィルターとしては、特に限定されないが、例えば、メッシュフィルターを挙げることができる。メッシュフィルターのポアサイズ(メッシュの大きさ)は、特に限定されないが、例えば、40μm以上、60μm以上、80μm以上、又は90μm以上である。また、メッシュフィルターのポアサイズは、特に限定されないが、例えば、200μm以下、180μm以下、160μm以下、140μm以下、120μm以下、又は100μm以下である。濾過速度に関しては特に限定されないが、メッシュフィルターのポアサイズを上記の範囲とすることにより、接着性幹細胞を含む酵素溶液を自然落下により濾過することができ、また、これにより細胞生存率の低下を防止することができる。
メッシュフィルターの材質としては、ナイロンが好ましく用いられる。研究用として汎用されるFalconセルストレーナー等の40μm、70μm、95μm又は100μmのナイロンメッシュフィルターを含有するチューブが利用可能である。また、血液透析等で使用されている医療用メッシュクロス(ナイロン及びポリエステル)が利用できる。さらに、体外循環時に使用される動脈フィルター(ポリエステルメッシュフィルター、ポアサイズ:40μm以上120μm以下)も利用可能である。他の材質、例えば、ステンレスメッシュフィルター等も用いることが可能である。
接着性幹細胞をフィルター通過させる場合、自然落下(自由落下)が好ましい。ポンプ等を用いた吸引等強制的なフィルター通過も可能であるが、細胞に損傷を与えることを避けるため、できるだけ弱い圧力とすることが望ましい。
フィルターを通した接着性幹細胞は、倍量又はそれ以上の培地又は平衡塩緩衝液で濾液を希釈した後、遠心分離により回収することができる。平衡塩緩衝液としては、生理食塩液、ダルベッコリン酸バッファー(DPBS)、アール平衡塩溶液(EBSS)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、リン酸バッファー(PBS)等を用いることができるが、これらに限定されない。
本発明の凍結接着性幹細胞の製造方法は、接着性幹細胞を含む細胞集団を培養する「培養工程」を含むものでもよい。
接着性幹細胞を含む細胞集団の培養する工程における細胞の播種密度は、特に限定されないが例えば、例えば500~10,000細胞/cm2の密度で播種することができる。前記播種密度の下限としては、例えば好ましくは500細胞/cm2、750細胞/cm2、又は1,000細胞/cm2である。また、前記播種密度の上限としては、特に限定されないが、好ましくは10,000細胞/cm2、7,000細胞/cm2、又は5,000細胞/cm2である。
なお、上記培養する工程は、継代工程を含んでもよいし、異なる培養条件で複数回培養を繰り返す工程を含んでもよい。
上記1回の培養の培養期間としては、例えば2~15日間を挙げることができ、より具体的には、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、又は15日間を挙げることができる。
上記の培養に用いる培地は、任意の動物細胞培養用液体培地を基礎培地とし、必要に応じて他の成分(血清、血清代替試薬、増殖因子等)を適宜添加することにより調製することができる。なお、前記基礎培地に増殖因子を添加する態様においては、増殖因子を培地中で安定化させるための試薬(ヘパリン等)を、増殖因子に加えて、さらに添加することにより調製してもよいし、増殖因子をあらかじめゲルや多糖類等で安定化しておき、その後、安定化した増殖因子を前記基礎培地に対して添加することで調製してもよい。
基礎培地としては、上述の羊膜を保存する溶液で例示した基礎培地を使用することができるが、特に限定されない。好ましい基礎培地としてはαMEM培地が例示できる。
基礎培地に添加し得る他の成分としては例えば、アルブミン、ウシ血清、血清代替試薬又は増殖因子等が挙げられ、血清代替試薬が好ましく、特に血小板溶解物が好ましい。なかでも、血清代替試薬を含み、且つ、アルブミン、ウシ血清及び増殖因子を含まない基礎培地中で培養を行うことが好ましい血小板溶解物の培地中の濃度の下限としては例えば、終濃度として1体積%以上、2体積%以上、3体積%以上を挙げることができる。また、血小板溶解物の培地中の濃度の上限としては例えば、20体積%以下、10体積%以下、7体積%以下が好ましい。
また、上記の培養に用いる培地は、一般的に市販されている無血清培地を用いても良い。例えば、STK1やSTK2(DSファーマバイオメディカル社)、EXPREP MSC Medium(バイオミメティクスシンパシーズ社)、Corning stemgroヒト間葉系幹細胞培地(コーニング社)等が挙げられるが、特に限定されない。
接着性幹細胞を含む細胞集団の培養は、例えば、以下のような工程にて行うことができる。まず、細胞懸濁液を遠心分離し、上清を除去し、得られた細胞ペレットを培地にて懸濁する。次に、プラスチック製培養容器に細胞を播種し、3%以上5%以下のCO2濃度、37℃環境にて、培地を用いて培養する。上記のような培養により取得した細胞は、1回培養した細胞である。
上記の1回培養した細胞は、例えば、以下のようにさらに継代し、培養することができる。まず、1回培養した細胞を、細胞剥離手段にて処理してプラスチック製培養容器から剥離させる。次に、得られた細胞懸濁液を遠心分離し、上清を除去し、得られた細胞ペレットを培地にて懸濁する。最後に、プラスチック製培養容器に細胞を播種し、3%以上、5%以下のCO2濃度、37℃環境にて、培地を用いてコンフルエント率95%以下となるように培養する。上記の培地としては、例えば、αMEM、M199、或いはこれらを基礎とする培地を挙げることができるが、これらに限定されない。上記のような継代及び培養により取得した細胞は、1回継代した細胞である。同様の継代及び培養を行うことにより、n回継代した細胞を取得することができる(nは1以上の整数を示す)。継代回数nの下限は、細胞を大量に製造する観点から、例えば、1回以上、好ましくは2回以上である。また、継代回数nの上限は、細胞の老化を抑える観点から、例えば、20回以下、10回以下であることが好ましい。上記の細胞剥離手段として、例えば、細胞剥離剤を使用してもよい。細胞剥離剤としては、トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を使用することができるが、特に限定されない。細胞剥離剤として、市販の細胞剥離剤を用いてもよい。例えば、トリプシン-EDTA溶液(Thermo Fisher Scientific社製)、TrypLE Select(Thermo Fisher Scientific社製)、Accutase(Stemcell Technologies社製)、Accumax(Stemcell Technologies社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。また、細胞剥離手段として、物理的な細胞剥離手段を使用してもよく、例えば、セルスクレーパー(Corning社製)を使用することができるが、これに限定されない。細胞剥離手段は、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
[4]細胞治療組成物
本発明の製造方法で製造した凍結接着性幹細胞は、疾患、特に難治性疾患に対する治療組成物の有効成分として利用が可能である。
本発明の製造方法で製造した凍結接着性幹細胞は、疾患、特に難治性疾患に対する治療組成物の有効成分として利用が可能である。
本発明の凍結接着性幹細胞は、例えば、免疫関連疾患、虚血性疾患、下肢虚血、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、神経性疾患、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、放射線腸炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、膠原病、脳卒中、脳梗塞、脳内血腫、脳血管麻痺、肝硬変、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、乾癬、表皮水疱症、糖尿病、菌状息肉腫、強皮症、軟骨等の結合組織の変性及び/又は炎症から起こる疾患、関節軟骨欠損、半月板損傷、離弾性骨軟骨症、無腐性骨壊死、変形性膝関節症、炎症性関節炎、関節リウマチ、眼疾患、血管新生関連疾患、虚血性心疾患、冠動脈性心疾患、心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、弁膜症、創傷、上皮損傷、線維症、肺疾患、及び癌から選択される疾患の治療組成物の有効成分として利用することが可能である。
本発明の細胞治療組成物は、製薬上許容し得る媒体により希釈したものでもよい。上記の製薬上許容し得る媒体は、患者又は被験者に投与し得る溶液であれば特に限定されない。製薬上許容し得る媒体は、輸液製剤であってもよく、例えば、注射用水、生理食塩液、5%ブドウ糖液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液、アミノ酸液、開始液(1号液)、脱水補給液(2号液)、維持輸液(3号液)、術後回復液(4号液)、Plasma-Lyte A(登録商標)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書における「患者又は被験者」とは、典型的にはヒトであるが、他の動物であってもよい。他の動物としては、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、サル(カニクイザル、アカゲザル、コモンマーモセット、ニホンザル)、フェレット、ウサギ、げっ歯類(マウス、ラット、スナネズミ、モルモット、ハムスター)等の哺乳動物、ニワトリ、ウズラ等の鳥類が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書における「治療」とは、例えば、患者又は被験者の生命予後、機能予後、生存率、体重減少、貧血、下痢、下血、腹痛、発熱、食欲低下、栄養失調、嘔吐、疲労、発疹、炎症、潰瘍、びらん、瘻孔、狭窄、腸閉塞、内出血、直腸出血、痙攣、疼痛、肝機能低下、心機能低下、肺機能低下、又は血液検査項目のうち、少なくとも1つを有意に改善することが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の細胞治療組成物は、患者又は被験者の治療の際に用いられる任意の成分を含んでもよい。上記の成分としては、例えば、塩類(例えば、生理食塩液、リンゲル液、ビカネイト輸液)、多糖類(例えば、ヒドロキシルエチルデンプン、デキストラン等)、タンパク質(例えば、アルブミン等)、ジメチルスルホキシド、アミノ酸、培地成分(例えば、RPMI1640培地に含まれる成分等)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の細胞治療組成物は、保存安定性、等張性、吸収性及び/又は粘性を増加するための種々の添加剤、例えば、乳化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、抗酸化剤、キレート剤、増粘剤、ゲル化剤、pH調整剤等を含んでもよい。前記増粘剤としては、例えば、ヒドロキシルエチルデンプン、デキストラン、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤の濃度は、選択される増粘剤によるが、患者又は被験者に投与した場合に安全であり、かつ所望の粘性を達成する濃度の範囲で、任意に設定することができる。
本発明の細胞治療組成物は、接着性幹細胞以外に、1つ又は複数の他の医薬を含んでもよい。上記の他の医薬としては、例えば、抗生物質、アルブミン製剤、ビタミン製剤、抗炎症剤等が挙げることができるが、これらに限定されない。上記の抗炎症剤としては、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド製剤、免疫抑制剤、生物学的製剤等が挙げられるが、これらに限定されない。上記の5-アミノサリチル酸製剤としては、例えば、サラゾスルファピリジン、メサラジン等を挙げることができるが、これらに限定されない。上記のステロイド製剤としては、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン等を挙げることができるが、これらに限定されない。上記の免疫抑制剤としては、例えば、タクロリムス、シクロスポリン、メトトレキサート、アザチプリン、6-メルカプトプリン等を挙げることができるが、上記の生物学的製剤としては、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブ、セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、トシリズマブ、ベドリズマブ、フィルゴチニブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、アバタセプト、エタネルセプト等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、上記の他の医薬は、投与可能な他の細胞であってもよい。投与可能な他の細胞としては、血液由来細胞(白血球、赤血球、単核球等)、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、周皮細胞、血管壁細胞、線維芽細胞、骨格筋芽細胞、上皮細胞、間質細胞、成熟脂肪細胞等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明の細胞治療組成物のpHは、中性付近のpH、例えば、pH5.5以上、6.5以上又はpH7.0以上とすることができ、またpH10.5以下、pH9.5以下、pH8.5以下又はpH8.0以下とすることができるが、これらに限定されない。
本発明の細胞治療組成物の細胞濃度としては、患者又は被験者に投与した場合に、投与していない患者又は被験者と比較して疾患に対して治療効果を得ることができるような細胞の濃度である。具体的な細胞濃度は、投与形態、投与方法、使用目的、及び患者又は被験者の年齢、体重及び症状等によって適宜決定することができる。本発明の細胞治療組成物の細胞濃度の下限は、特に限定されないが、例えば、1.0×105個/mL以上、1.0×106個/mL以上、1.2×106個/mL以上、1.4×106個/mL以上、1.6×106個/mL以上、1.8×106個/mL以上、2.0×106個/mL以上、3.0×106個/mL以上、4.0×106個/mL以上、5.0×106個/mL以上、6.0×106個/mL以上、7.0×106個/mL以上、8.0×106個/mL以上、9.0×106個/mL以上、9.5×106個/mL以上、又は1.0×107個/mL以上である。本発明の細胞治療組成物の細胞濃度の上限は、特に限定されないが、例えば、1.0×1010個/mL以下、1.0×109個/mL以下、8.0×108個/mL以下、6.0×108個/mL以下、4.0×108個/mL以下、2.0×108個/mL以下、又は1.0×108個/mL以下である。
本発明の細胞治療組成物は、限定はしないが液剤であればよい。好ましくは注射用液剤である。注射用液剤としては、例えば、国際公開WO2011/043136号、特開2013-256510号公報等において、注射に適した液体調製物が知られている。本発明の細胞治療組成物も、上記文献に記載されている注射用液剤とすることができる。
また、上記液剤は細胞の懸濁液でもよく、細胞が液剤中に分散した液体調製物でもよい。さらに前記液剤に含まれる細胞の形態は特に限定されないが、例えばシングルセルでもよいし、細胞凝集塊でもよい。
本発明の細胞治療組成物が注射用液剤である場合、注射用液剤の細胞濃度の下限は、疾患に対する治療効果を高める観点から、1.0×106個/mL以上、1.2×106個/mL以上、1.4×106個/mL以上、1.6×106個/mL以上、1.8×106個/mL以上、2.0×106個/mL以上、3.0×106個/mL以上、4.0×106個/mL以上、5.0×106個/mL以上、6.0×106個/mL以上、7.0×106個/mL以上、8.0×106個/mL以上、9.0×106個/mL以上、9.5×106個/mL以上、又は1.0×107個/mL以上であることが好ましい。また、注射用液剤の細胞濃度の上限は、注射用液剤の調製と投与を容易にする観点から、1.0×109個/mL以下、8.0×108個/mL以下、6.0×108個/mL以下、4.0×108個/mL以下、2.0×108個/mL以下、又は1.0×108個/mL以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様によれば、本発明の細胞治療組成物は、移植用製剤であってもよい。移植用製剤は、固体状又はゲル状の製剤であり、例えば、固体状の移植用製剤としては、シート状構造又はペレット構造の移植用製剤が挙げられる。また、ゲル状構造の移植用製剤としては、例えば、国際公開WO2017/126549号において、分離された細胞を接着剤(例えば、フィブリノーゲン)により接着させることにより得られるゲルを含む移植用製剤が知られている。また、本発明の一態様によれば、本発明の医薬組成物は、細胞と任意のゲルを混合したゲル製剤であってもよい。ゲル製剤としては、例えば、特表2017-529362号公報において、接着性幹細胞-ヒドロゲル組成物より構成される細胞治療組成物が知られている。本発明の医薬組成物も、例えば上記文献に記載されている方法を用いることにより、ゲル製剤とすることができる。
また、シート状構造の移植用製剤としては、例えば、国際公開WO2006/080434号、特開2016-52272号公報等において、温度応答性培養皿(例えば、UpCell(登録商標)(セルシード社製))を用いて培養することにより得られる細胞シートや、シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体、細胞懸濁液をシート状の基材に塗布した細胞塗布シート等が知られている。本発明の医薬組成物も、例えば上記文献に記載されている方法を用いることにより、各種のシート状構造の移植用製剤とすることができる。
本発明の細胞治療組成物の投与方法は、特に限定されないが、例えば、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、リンパ節内注射、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内注射、胸腔内注射、局所への直接注射、直接貼付、又は局所に直接移植すること等が挙げられる。本発明の一態様によれば、注射用液剤を注射器に充填して、注射針やカテーテルを通じて静脈内、動脈内、心筋内、間節腔内、肝動脈内、筋肉内、硬膜外、歯肉、脳室内、皮下、皮内、腹腔内、門脈内に投与することができるが、これらに限定されない。細胞治療組成物の投与方法については、例えば、特開2015-61520号公報、Onken JE,et al.American College of Gastroenterology Conference 2006 Las Vegas,NV,Abstract 121.、Garcia-Olmo D,et al.Dis Colon Rectum 2005;48:1416-23.等において、静脈内注射、点滴静脈注射、局所への直接注射、局所への直接移植等が知られている。本発明の細胞治療組成物も、上記文献に記載されている各種方法により投与することができる。
本発明の細胞治療組成物の用量としては、患者又は被験者に投与した場合に、投与していない患者又は被験者と比較して疾患に対して治療効果を得ることができるような細胞の量である。具体的な用量は、投与形態、投与方法、使用目的、及び患者又は被験者の年齢、体重及び症状等によって適宜決定することができる。ヒトへの接着性幹細胞の1回の用量は、特に限定されないが、例えば、1×104個/kg体重以上、1×105個/kg体重以上、5×105個/kg体重以上、1×106個/kg体重以上、2×106個/kg体重以上、4×106個/kg体重以上、6×106個/kg体重以上、又は8×106個/kg体重以上である。また、ヒトへの接着性幹細胞の1回の用量は、特に限定されないが、例えば、1×1012個/kg体重以下、1×1011個/kg体重以下、1×1010個/kg体重以下、1×109個/kg体重以下、5×108個/kg体重以下、1×108個/kg体重以下、8×107個/kg体重以下、6×107個/kg体重以下、4×107個/kg体重以下、又は2×107個/kg体重以下である。
本発明の細胞治療組成物が注射用液剤である場合、注射用液剤のヒトへの接着性幹細胞の1回の用量は、疾患に対する治療効果を高める観点から、1×105個/kg体重以上、5×105個/kg体重以上、1×106個/kg体重以上、2×106個/kg体重以上、4×106個/kg体重以上、6×106個/kg体重以上、又は8×106個/kg体重以上であることが好ましい。また、注射用液剤のヒトへの接着性幹細胞の1回の用量は、注射用液剤の調製と投与を容易にする観点から、1×109個/kg体重以下、5×108個/kg体重以下、1×108個/kg体重以下、8×107個/kg体重以下、6×107個/kg体重以下、4×107個/kg体重以下、又は2×107個/kg体重以下であることが好ましい。
本発明の細胞治療組成物の投与頻度は、患者又は被験者に投与した場合に、疾患に対して治療効果を得ることができるような頻度である。具体的な投与頻度は、投与形態、投与方法、使用目的、及び患者又は被験者の年齢、体重及び症状等によって適宜決定することができるが、例えば、4週間に1回、3週間に1回、2週間に1回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回である。
本発明の細胞治療組成物の投与期間は、患者又は被験者に投与した場合に、疾患に対して治療効果を得ることができるような期間である。具体的な投与期間は、投与形態、投与方法、使用目的、及び患者又は被験者の年齢、体重及び症状等によって適宜決定することができるが、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、又は8週間である。
本発明の細胞治療組成物を患者又は被験者に投与するタイミングは、特に限定されないが、例えば、発症直後、発症からn日以内(nは1以上の整数を示す)、診断直後、診断からn日以内(nは1以上の整数を示す)、寛解の前、寛解の間、寛解の後、再燃の前、再燃の間、再燃の後等が挙げられる。
以下の実施例にて、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
<工程1:羊膜の酵素処理及び接着性幹細胞の回収>
インフォームドコンセントを得た待機的帝王切開症例の妊婦から、羊膜を含む卵膜及び胎盤を無菌的に採取した。得られた卵膜及び胎盤を生理食塩水が入った滅菌バットに収容し、卵膜の断端から羊膜を用手的に剥離した。羊膜をハンクス平衡塩溶液(Ca・Mg不含)にて洗浄し、付着した血液及び血餅を除去した後に、240PU/mLコラゲナーゼ及び200PU/mLディスパーゼIを含有するハンクス平衡塩溶液(Ca・Mg含有)に浸し、37℃にて60分間、10rpmの条件にて振盪攪拌することにより羊膜を酵素処理した。酵素処理後の溶液を目開き95μmのナイロンメッシュでろ過することにより羊膜の未消化物を取り除き、接着性幹細胞を含む細胞懸濁液を回収した。
<工程1:羊膜の酵素処理及び接着性幹細胞の回収>
インフォームドコンセントを得た待機的帝王切開症例の妊婦から、羊膜を含む卵膜及び胎盤を無菌的に採取した。得られた卵膜及び胎盤を生理食塩水が入った滅菌バットに収容し、卵膜の断端から羊膜を用手的に剥離した。羊膜をハンクス平衡塩溶液(Ca・Mg不含)にて洗浄し、付着した血液及び血餅を除去した後に、240PU/mLコラゲナーゼ及び200PU/mLディスパーゼIを含有するハンクス平衡塩溶液(Ca・Mg含有)に浸し、37℃にて60分間、10rpmの条件にて振盪攪拌することにより羊膜を酵素処理した。酵素処理後の溶液を目開き95μmのナイロンメッシュでろ過することにより羊膜の未消化物を取り除き、接着性幹細胞を含む細胞懸濁液を回収した。
<工程2:接着性幹細胞の培養、回収>
工程1で得られた、接着性幹細胞を含む細胞集団を培養容器の75cm2U字型カントネック細胞培養フラスコ(ベントキャップ)(Corning社製)に1,000cells/cm2の密度で播種し、終濃度が5体積%のヒト血小板溶解物を含むαMEMを用いて培養した。 細胞がサブコンフルエントに達するまで培養を行ったのちに、トリプシン-EDTA溶液を用いて細胞をフラスコから剥離した。剥離した細胞を生理食塩水で洗浄した。
工程1で得られた、接着性幹細胞を含む細胞集団を培養容器の75cm2U字型カントネック細胞培養フラスコ(ベントキャップ)(Corning社製)に1,000cells/cm2の密度で播種し、終濃度が5体積%のヒト血小板溶解物を含むαMEMを用いて培養した。 細胞がサブコンフルエントに達するまで培養を行ったのちに、トリプシン-EDTA溶液を用いて細胞をフラスコから剥離した。剥離した細胞を生理食塩水で洗浄した。
<工程3:凍結保存液への細胞の懸濁>
工程2で得た接着性幹細胞を10体積%のヒト血小板溶解物を含有する生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製した。10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、8質量%ヒト血清アルブミンを含む溶液(A)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合した。
工程2で得た接着性幹細胞を10体積%のヒト血小板溶解物を含有する生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製した。10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、8質量%ヒト血清アルブミンを含む溶液(A)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合した。
<工程4:凍結>
工程4で調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で6時間静置した後に、1mLずつNuncクライオチューブ1.8mLインナーキャップ(Thermo Fisher Scientific社製)に充填した。その後すぐに、細胞懸濁液を充填したクライオバイアルをCoolCell(Corning社製)に入れた状態で、-80℃のディープフリーザーに12時間静置して凍結した。凍結後は液体窒素保管容器内に細胞を移し、液体窒素液相中で10日間保管した。
工程4で調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で6時間静置した後に、1mLずつNuncクライオチューブ1.8mLインナーキャップ(Thermo Fisher Scientific社製)に充填した。その後すぐに、細胞懸濁液を充填したクライオバイアルをCoolCell(Corning社製)に入れた状態で、-80℃のディープフリーザーに12時間静置して凍結した。凍結後は液体窒素保管容器内に細胞を移し、液体窒素液相中で10日間保管した。
(比較例1-1)
工程3において接着性幹細胞を何も添加しない生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
工程3において接着性幹細胞を何も添加しない生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(比較例1-2)
工程3において、溶液(A)の代わりに10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、6質量%ヒト血清アルブミン、8体積%ヒト血小板溶解物を含む溶液(B)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合する以外は比較例1-1と同様の操作を行った。
工程3において、溶液(A)の代わりに10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、6質量%ヒト血清アルブミン、8体積%ヒト血小板溶解物を含む溶液(B)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合する以外は比較例1-1と同様の操作を行った。
(比較例1-3)
工程3において、溶液(A)の代わりに10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、4質量%ヒト血清アルブミン、16体積%ヒト血小板溶解物を含む溶液(C)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合する以外は比較例1-1と同様の操作を行った。
工程3において、溶液(A)の代わりに10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、4質量%ヒト血清アルブミン、16体積%ヒト血小板溶解物を含む溶液(C)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合する以外は比較例1-1と同様の操作を行った。
(比較例1-4)
工程3において、溶液(A)の代わりに10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、32体積%ヒト血小板溶解物を含む溶液(D)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合する以外は比較例1-1と同様の操作を行った。
工程3において、溶液(A)の代わりに10体積%ジメチルスルホキシド、12質量%ヒドロキシエチルデンプン、32体積%ヒト血小板溶解物を含む溶液(D)を調製し、細胞懸濁液と1:1の割合で混合する以外は比較例1-1と同様の操作を行った。
(比較例1-5)
工程3において接着性幹細胞を10体積%のウシ胎児血清を含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
工程3において接着性幹細胞を10体積%のウシ胎児血清を含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(比較例1-6)
工程3において接着性幹細胞を10質量%のヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
工程3において接着性幹細胞を10質量%のヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(実施例2-1)
工程3において接着性幹細胞を5体積%のヒト血小板溶解物を含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製することと、工程4において調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で1時間静置した後に充填を行うこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
工程3において接着性幹細胞を5体積%のヒト血小板溶解物を含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製することと、工程4において調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で1時間静置した後に充填を行うこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(実施例2-2)
工程3において接着性幹細胞を10体積%のヒト血小板溶解物を含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製することと、工程4において調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で1時間静置した後に充填を行うこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
工程3において接着性幹細胞を10体積%のヒト血小板溶解物を含む生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製することと、工程4において調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で1時間静置した後に充填を行うこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(比較例2)
工程3において接着性幹細胞を何も添加しない生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製することと、工程4において調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で1時間静置した後に充填を行うこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
工程3において接着性幹細胞を何も添加しない生理食塩水に懸濁して、細胞濃度2×107cells/mLの細胞懸濁液を調製することと、工程4において調製した細胞懸濁液を22℃温度条件下で1時間静置した後に充填を行うこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(凍結保存液の組成)
上記の実施例1、2-1、2-2及び比較例1-1~1-6、2の凍結保存液の組成を表1に示した。表中の略称の意味は次の通り。
上記の実施例1、2-1、2-2及び比較例1-1~1-6、2の凍結保存液の組成を表1に示した。表中の略称の意味は次の通り。
DMSO:ジメチルスルホキシド、HES:ヒドロキシエチルデンプン、HSA:ヒト血清アルブミン、hPL:ヒト血小板溶解物、FBS:ウシ胎児血清
(増殖性評価)
上記の実施例1、2-1、2-2及び比較例1-1~1-6、2-1の凍結保存液を用いて凍結した接着性幹細胞の解凍後の比増殖速度を評価した。具体的には、まず凍結した接着性幹細胞を37℃の湯浴で解凍し、U型フラスコ75cm2カントネックベントキャップ(Corning社製)に1000生細胞/cm2の密度で細胞用培地を用いて播種した。137時間(実施例1、比較例1-1~1-6)又は141時間(実施例2-1、2-2、比較例2-1)培養後に、フラスコ内に接着している接着性幹細胞を回収し、回収細胞数を測定し、下記の式を用いて比増殖速度を求めた(n=3)。
比増殖速度(h-1)=LN(回収細胞数/播種生細胞数)/総培養時間
上記の実施例1、2-1、2-2及び比較例1-1~1-6、2-1の凍結保存液を用いて凍結した接着性幹細胞の解凍後の比増殖速度を評価した。具体的には、まず凍結した接着性幹細胞を37℃の湯浴で解凍し、U型フラスコ75cm2カントネックベントキャップ(Corning社製)に1000生細胞/cm2の密度で細胞用培地を用いて播種した。137時間(実施例1、比較例1-1~1-6)又は141時間(実施例2-1、2-2、比較例2-1)培養後に、フラスコ内に接着している接着性幹細胞を回収し、回収細胞数を測定し、下記の式を用いて比増殖速度を求めた(n=3)。
比増殖速度(h-1)=LN(回収細胞数/播種生細胞数)/総培養時間
得られた結果を図1、図2に示す。図1の*、**は実施例1-1に対してそれぞれ有意水準0.05、0.01で有意差があることを示し、図2の†は実施例2-1に対して有意水準0.05で有意差があることを示す。図1の結果より、実施例1の凍結保存液で凍結した接着性幹細胞の増殖性は、比較例1-1~1-6の凍結保存液で凍結した接着性幹細胞の増殖性よりも高いことが示された。また、図2の結果より、実施例2-1、2-2の凍結保存液で凍結した接着性幹細胞の増殖性は、比較例2-1で凍結した接着性幹細胞の増殖性よりも高いことが示された。
(凍結保存液の細胞毒性評価)
上記の実施例1及び比較例1-1、1-2、1-3の工程1~3の操作によって凍結保存液に懸濁した接着性幹細胞を、22℃温度条件下に静置し、静置後0、6、30、34時間における各接着性幹細胞の生存率を測定した。0時間の生存率を100%とした際の静置後6、30、34時間の相対生存率について表2及び図3に示した。表2及び図3に示すように、実施例1では34時間経過後においても生存率の低下が3%に抑えられていたが、比較例では5~8%の生存率の低下がみられた。この結果より、実施例1の凍結保存液は比較例と比べて毒性の低い凍結保存液であることが示された。
上記の実施例1及び比較例1-1、1-2、1-3の工程1~3の操作によって凍結保存液に懸濁した接着性幹細胞を、22℃温度条件下に静置し、静置後0、6、30、34時間における各接着性幹細胞の生存率を測定した。0時間の生存率を100%とした際の静置後6、30、34時間の相対生存率について表2及び図3に示した。表2及び図3に示すように、実施例1では34時間経過後においても生存率の低下が3%に抑えられていたが、比較例では5~8%の生存率の低下がみられた。この結果より、実施例1の凍結保存液は比較例と比べて毒性の低い凍結保存液であることが示された。
Claims (8)
- 接着性幹細胞を、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含有する溶液中で凍結保存する工程を有する、凍結接着性幹細胞の製造方法。
- 前記溶液中の血小板溶解物の濃度が2~10体積%である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記溶液中の血小板溶解物の濃度が乾燥重量換算で1mg/mL~10mg/mLである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記接着性幹細胞が羊膜由来細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1~4いずれか1項に記載の方法により得られる凍結接着性幹細胞。
- 請求項5に記載の凍結接着性幹細胞を有効成分として含む細胞治療組成物。
- 接着性幹細胞を、2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び血小板溶解物を含有する溶液中で凍結保存する工程を有する、接着性幹細胞の凍結保存方法。
- 2~10体積%のジメチルスルホキシド、4~10質量%のヒドロキシエチルデンプン、3.5質量%以上のヒト血清アルブミン、及び1mg/mL~10mg/mLの血小板溶解物を含む、接着性幹細胞の凍結保存溶液。
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JP2022058959A Pending JP2022159210A (ja) | 2021-03-31 | 2022-03-31 | 凍結接着性幹細胞の製造方法 |
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- 2022-03-31 JP JP2022058959A patent/JP2022159210A/ja active Pending
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