JP2022157220A - はだ焼鋼および浸炭部品 - Google Patents

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正樹 貝塚
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Abstract

【課題】コストを抑えつつ結晶粒粗大化の抑制効果を達成でき、かつ優れた耐摩耗性を有するはだ焼鋼を提供する。【解決手段】C:0.10質量%以上、0.30質量%以下、Si:0.60質量%以上、2.00質量%以下、Mn:0.10質量%以上、2.00質量%以下、Cr:0.10質量%以上、2.00質量%以下、Al:0.010質量%以上、0.100質量%以下、N:0.0010質量%以上、0.0500質量%以下、および、Ti:0.010質量%以上、0.100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、TiCまたはTiCNと、AlNとの複合析出物を含み、円相当径が0.04μm以下の前記複合析出物の面積率が0.200%以上である、はだ焼鋼である。【選択図】なし

Description

本開示は、結晶粒粗大化の抑制効果と耐摩耗性に優れたはだ焼鋼および浸炭部品に関する。
自動車、建設機械、産業機械において、歯車(例えば軸付き歯車)、シャフト、軸受け、プーリなどの機械部品は、疲労強度改善のために浸炭および浸炭窒化(ガス浸炭、高濃度浸炭、真空浸炭窒化など)などの表面硬化処理が施される(例えば特許文献1~2)。
歯車のように耐摩耗性および高疲労強度が要求される部品は、JIS規格で定められたSCr、SCM、SNCMなどのはだ焼鋼を、鍛造、切削などの機械加工により所望の形状に成形した後、表面硬化処理を施し、仕上げ加工を経て製造される。
近年、部品の製造コストの低減とCO排出削減を背景に、特にコストのかかる表面硬化処理について高温短時間化が進められている。様々なメーカーにおいて、これまで主流であったガス浸炭に代えて、高温短時間で表面硬化処理できる真空浸炭が導入されている。
また、製造時間を短縮するために、部品成形方法を、従来の熱間鍛造および切削から、温間鍛造または冷間鍛造に変更されつつある。
特許文献2では、さらに摺動部材の耐摩耗性について検討されており、摺動面の硬さと摺動面近傍における残留γ量を制御することにより、亀裂伝播を遅らせることが提案されている。
特開2012-72427号公報 特開2009-68609号公報
表面硬化処理を高温短時間化すると、高温下に曝された鋼中において結晶粒の成長が促進されて、結晶粒の粗大化を招く。また、温間鍛造および冷間鍛造は、鍛造によって鋼に加工歪が導入される。この加工歪は、表面硬化処理時に結晶粒の粗大化を招く。結晶粒粗大化は、機械部品の疲労強度、衝撃特性など種々の機械特性を低下させる原因となるため、結晶粒粗大化を抑制できる鋼が求められている。
また、大型車の部品などでは摺動時の負荷が高く、摺動部材には従来より厳しい摺動環境での耐摩耗性が求められている。特に、摺動摩擦によって摺動部材の温度が上昇したときには、摺動部材の表面の物性が変化して、耐摩耗性が低下する恐れがある。
特許文献1および2は、結晶粒粗大化を抑制するために、Nb系およびTi系の析出物を用いている。
ここで、特許文献1では、冷間鍛造性を確保するためにMnSを固溶させないようにすることが重要であるとして、分塊圧延前の加熱(均熱)温度を1100~1200℃としている。Nb系およびTi系の析出物は融点が高く、1200℃以下では鋼材への固溶量が少ないため、結晶粒粗大化抑制効果について改善の余地がある。
また、結晶粒粗大化抑制効果を改善するために、Nb、Tiよりも安価なAlの析出物を有効に利用して、製造コストを抑制することが望まれる。しかしながら、一般的に、Al系析出物のピンニング効果は、Nb系析出物およびTi系析出物に比べると低いという問題がある。
また、耐摩耗性については、特許文献1では検討されていない。特許文献2では、厳しい摺動環境での部品の耐摩耗性、例えば高温状態にある部品の耐摩耗性については検討されておらず、そのような摺動環境下では十分な耐摩耗性が達成できないおそれがある。
そこで、本発明の一実施形態は、コストを抑えつつ結晶粒粗大化の抑制効果を達成でき、かつ優れた耐摩耗性を有するはだ焼鋼およびそれを用いて製造された浸炭部品を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、
C :0.10質量%以上、0.30質量%以下
Si:0.60質量%以上、2.00質量%以下
Mn:0.10質量%以上、2.00質量%以下
Cr:0.10質量%以上、2.00質量%以下
Al:0.010質量%以上、0.100質量%以下
N :0.0010質量%以上、0.0500質量%以下、および
Ti:0.010質量%以上、0.100質量%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
TiCまたはTiCNと、AlNとの複合析出物を含み、
円相当径が0.04μm以下の前記複合析出物の面積率が0.200%以上である、はだ焼鋼である。
本発明の態様2は、
Mo:0.01質量%以上、1.00質量%以下、および
B :0.0005質量%以上、0.0100質量%以下
のうちの1種または2種をさらに含有する態様1に記載のはだ焼鋼である。
本発明の態様3は、
V :0.01質量%以上、0.50質量%以下、および
Nb:0.005質量%以上、0.100質量%以下
のうちの1種または2種をさらに含有する態様1または2に記載のはだ焼鋼である。
本発明の態様4は、
Cu:0.01質量%以上、2.00質量%以下、および
Ni:0.01質量%以上、2.00質量%以下
のうちの1種または2種をさらに含有する態様1~3のいずれか1つに記載のはだ焼鋼である。
本発明の態様5は、
P:0.001質量%超、0.100質量%以下、および
S:0.001質量%超、0.100質量%以下
のうちの1種または2種をさらに含有する態様1~4のいずれか1つに記載のはだ焼鋼である。
本発明の態様6は、
態様1~5のいずれかに記載の成分組成を有し、
表面から深さ50μm位置の結晶粒の粒度番号が9.0以上であり、
下記の式(1)で定義されるビッカース硬さの差ΔAが104HV以下であり、
下記の式(2)を満たす、浸炭部品である。

ΔA(HV)=HV-HV300 (1)
HV≧700Hv (2)

ここで、
HV :表面から深さ50μm位置(測定位置)での初期硬さ、
HV300:300℃で焼戻した後の前記測定位置での硬さ
である。
本発明の一実施形態によれば、コストを抑えつつ結晶粒粗大化の抑制効果を達成でき、かつ優れた耐摩耗性を有するはだ焼鋼およびそれを用いて製造された浸炭部品を提供することができる。
図1は、ΔAと摩耗面積との関係をプロットしたグラフである。 図2は、実施例の摩耗試験に使用した小ローラの寸法形状を示す正面図である。 図3は、実施例の摩耗試験後の小ローラの正面図である。
浸炭処理等の加熱処理時の鋼中での結晶粒粗大化抑制のためには、ピンニング効果を有するAl系、Nb系およびTi系の炭化物および窒化物の析出物が利用できる。それらの析出物を生成する合金元素を鋼に添加し、析出物を鋼中に分散させることで、結晶粒の粗大化を抑制している。AlはNb、Tiに比べて安価であるが、Al系析出物のピンニング効果は、Nb系析出物およびTi系析出物に比べると低い。
そこで本発明者らは、Al系析出物を含む析出物のピンニング効果を向上して、Nb、Tiの使用量を低減し得るはだ焼鋼を提供することを目的として鋭意検討した。その結果、AlNを、TiCまたはTiCNとの複合析出物(本明細書では「Al,Ti複合析出物」と称することもある)として含むことにより、AlNとして存在する場合に比べて高温でも溶融しにくくなるため、ピンニング効果を発揮しやすいこと、特に、複合析出物が微細(円相当径が0.04μm以下)であるとピンニング効果が高い、との知見を得た。そして、微細な複合析出物の含有量を、面積率で0.200%以上とすることにより、結晶粒粗大化の抑制効果が高いことを初めて見出した。
また、本発明者らは、厳しい摺動環境における浸炭部品の耐摩耗性を向上することも併せて検討し、耐摩耗性が低下する要因の1つが、摺動時に生じる発熱により摺動部材の表層が焼き戻されることにあるとの結論に至った。そこで、浸炭部品について焼き戻し模試を行い、焼き戻し前後の表層硬さと耐摩耗性との関係を調べたところ、表層の硬さが700HV以上のはだ焼鋼の場合、焼き戻し前後の表層硬さの差(ΔA)と耐摩耗性との間に相関性を有していることを初めて見いだした。この結論に基づいて、ΔAを制御する方法をさらに検討したところ、はだ焼鋼のSi含有量を制御することにより、ΔAを所望の範囲にすることができ、結果として耐摩耗性を向上できることを見いだした。さらに、表層の結晶粒の粒度番号が9.0以上に制御することにより、表層に生じる亀裂を抑制して、耐摩耗性をさらに向上することができることも見いだした。ΔAの制御と表層の結晶粒の粒度番号の制御による相乗効果により、耐摩耗性を著しく向上することができる。
これらの知見に基づいて、結晶粒粗大化の抑制効果と耐摩耗性低下の抑制効果が共に高いレベルにある、本発明の実施形態に係るはだ焼鋼および浸炭部品を完成するに至った。
(実施形態1:はだ焼鋼)
以下に、本発明に係るはだ焼鋼の成分組成、金属組織およびはだ焼鋼の製造方法について順に説明する。
1.成分組成
本発明の実施形態1に係るはだ焼鋼の成分組成について、まず、基本となる元素について説明し、さらに選択的に添加してよい元素について説明する。
[C :0.10質量%以上、0.30質量%以下]
Cは、鋼材硬さを確保するために有効な元素である。Cの含有量が少ないと、硬さが不足して、浸炭部品を製造したときの静的強度が不足するため、0.10質量%以上とする。Cの含有量は、好ましくは0.11質量%以上、より好ましくは0.12質量%以上、特に好ましくは0.16質量%以上である。一方、Cの含有量が多いと、鋼材硬さが高くなり過ぎて冷間鍛造性が低下するため、0.30質量%以下とする。Cの含有量は、好ましくは0.27質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、特に好ましくは0.24質量%以下である。
[Si:0.60質量%以上、2.00質量%以下]
Siは焼戻し硬さ(焼戻し軟化特性)を高めるのに有効であり、後述するΔA(表面から深さ50μm位置(測定位置)での初期硬さHVと、300℃で焼戻した後の前記測定位置での硬さHV300との差)に影響を及ぼす。ΔAを所望の値(104HV以下)とするためには、Siの含有量は0.60質量%以上とし、好ましくは0.65質量%以上、より好ましくは0.70質量%以上、特に好ましくは0.75質量%以上である。ただし、Siの含有量が多いと、鋼材硬さが高くなり過ぎて冷間鍛造性が低下するため、2.00質量%以下とし、好ましくは1.90質量%以下、より好ましくは1.80質量%以下、特に好ましくは1.10質量%以下である。
[Mn:0.10質量%以上、2.00質量%以下]
Mnは、浸炭処理時の焼入れ性を高めるのに必要な元素である。また、脱酸材としても作用し、鋼中の酸化物系介在物量を低減して内部品質を高める作用を有する元素である。こうした作用を有効に発揮するために、Mnの含有量は0.10質量%以上とし、好ましくは0.20質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上、特に好ましくは0.50質量%以上である。一方、Mnの含有量が多いと、縞状の偏析が顕著となって冷間鍛造性が悪化するため、2.00質量%以下とし、好ましくは1.90質量%以下、より好ましくは1.80質量%以下、特に好ましくは1.50質量%以下である。
[Cr:0.10質量%以上、2.00質量%以下]
Crは、鋼材の焼入れ性を向上する元素であり、安定した硬化層深さや芯部硬さを十分に確保する作用を有し、機械部品としての静的強度や疲労強度を確保する上で有効である。このような効果を有効に発揮するために、Crの含有量は0.10質量%以上とし、好ましくは0.20質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。一方、Crの含有量が多いと、鋼材硬さが高くなり過ぎて冷間鍛造性が低下するため、2.00質量%以下とし、好ましくは1.90質量%以下、より好ましくは1.80質量%以下である。
[Al:0.010質量%以上、0.100質量%以下]
Alは脱酸作用として有用な元素であり、またNと結合して、結晶粒粗大化抑制に有効なAlNを形成する、重要な元素である。このような効果を発揮するために、Alの含有量は0.010質量%以上とし、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上、特に好ましくは0.030質量%以上である。一方、Alの含有量が多いと、鋼材硬さが増加して冷間鍛造時の変形抵抗が増大するので、0.100質量%以下とし、好ましくは0.090質量%以下、より好ましくは0.080質量%以下、特に好ましくは0.050質量%以下である。
[N :0.0010質量%以上、0.0500質量%以下]
NはAlと結合して、結晶粒粗大化抑制に有効なAlNを形成する、重要な元素である。結晶粒粗大化抑制の効果を発揮するために、Nの含有量は0.0010質量%以上とし、好ましくは0.0050質量%以上、より好ましくは0.0100質量%以上とする。一方、Nの含有量が多いと、鋳造時に生じる割れの原因となる。したがって、Nの含有量は0.0500質量%以下とし、好ましくは0.0450質量%以下、より好ましくは0.0400質量%以下、特に好ましくは0.0250質量%以下である。
[Ti:0.010質量%以上、0.100質量%以下]
Tiは、AlNと複合析出物を形成して、AlNを有効に働かせるために重要な元素である。少なすぎるとAl,Ti複合析出物の量が十分に確保できないため、Tiの含有量は0.010質量%以上とし、好ましくは0.013質量%以上であり、より好ましくは0.016質量%以上である。一方、Tiの含有量が多いと、コスト増加を招くとともに、粗大なTiNが析出してしまい、硬質なTiNにより冷間鍛造性が低下する。したがって、Tiの含有量は0.100質量%以下とし、好ましくは0.090質量%以下、より好ましくは0.080質量%以下である。
[残部]
好ましい1つの実施形態では、残部はFeおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)の混入が許容される。
なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について下記のように別途規定している元素がある。そのような元素の場合は、含有量が0.03質量%を超える場合には意図的に添加したものとし、0.03質量%以下の場合は不可避不純物として含まれたものとして取り扱う。
本発明のはだ焼鋼は、上記元素と、残部のFeおよび不可避不純物とからなる形態に限定されるものではない。本発明のはだ焼鋼の特性を維持できる限り、任意のその他の元素を更に含んでよい。そのように選択的に含有させることができるその他の元素を以下に例示する。
[Mo:0.01質量%以上、1.00質量%以下、および
B :0.0005質量%以上、0.0100質量%以下のうちの1種または2種]
Moは、浸炭後に形成される軟質な不完全焼入れ組織を抑制し、軟化抵抗を高めるために有効な元素である。Moの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上である。一方、Moの含有量が多いと、鋼材硬さが高くなり過ぎて冷間鍛造性が低下し、また鋼材コストの向上を招く。よって、Moの含有量は、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.90質量%以下、特に好ましくは0.80質量%以下である。
Bは、浸炭処理時の焼き入れ性改善に有効な元素である。上記作用を有効に発揮するために、Bの含有量は、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.0006質量%以上、特に好ましくは0.0006質量%以上とする。一方、Bの含有量が多くなっても、上記効果が飽和するため含有量を増加させることには意義がない。したがって、Bの含有量は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0090質量%以下、特に好ましくは0.0080質量%以下である。
[V:0.01質量%以上、0.50質量%以下、および
Nb:0.005質量%以上、0.100質量%以下のうちの1種または2種]
Vは、鋼材中のCおよびNと結合して炭窒化物を形成し、浸炭時の結晶粒粗大化を抑制するのに有効である。こうした作用を有効に発揮するため、Vの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上である。一方、Vの含有量が多くなっても、上記効果が飽和するため含有量を増加させることには意義がなく、また鋼材コストの増加を招く。したがって、Vの含有量は、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.49質量%以下、特に好ましくは0.48質量%以下である。
NbもVと同様に、鋼材中のCおよびNと結合して炭窒化物を形成し、浸炭時の結晶粒粗大化を抑制するのに有効である。こうした作用を有効に発揮するため、Nbの含有量は好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.007質量%以上、特に好ましくは0.010質量%以上である。一方、Nbの含有量が多くなっても、上記効果が飽和するため含有量を増加させることには意義がなく、また鋼材コストの増加を招く。したがって、Nbの含有量は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.090質量%以下、特に好ましくは0.080質量%以下である。
[Cu:0.01質量%以上、2.00質量%以下、および
Ni:0.01質量%以上、2.00質量%以下のうちの1種または2種]
Cuは、浸炭処理時の焼入れ性を高めることができる元素である。こうした作用を有効に発揮するために、Cuの含有量は、好ましくは0.01質量%以上とする。一方、Cuの含有量が多いと鋼材コストの増加を招くため、Cuの含有量は、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.70質量%以下、特に好ましくは1.50質量%以下である。
Niは、Cuと同様に、浸炭処理時の焼入れ性を高めることができる元素である。こうした作用を有効に発揮するために、Niの含有量は、好ましくは0.01質量%以上とする。一方、Niの含有量が多いと鋼材コストの増加を招くため、Niの含有量は、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.90質量%以下、特に好ましくは1.80質量%以下である。
[P:0.001質量%超、0.100質量%以下、および
S:0.001質量%超、0.100質量%以下のうちの1種または2種]
Pは、結晶粒界に偏析して機械部品の衝撃特性が低下させる。そのため、Pの含有量は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.095質量%以下、特に好ましくは0.090質量%以下である。一方、Pは鋼中に不可避的に含まれる元素であり、純度を高めるほど製造コストが増加する。そのため、Pの含有量は、好ましくは0.001質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、特に好ましくは0.005質量%以上である。なお、上述の通り、Pの含有量が0.03質量%以下の場合は意図的に添加したものではなく、不可避不純物である。
Sは、Pと同様に、結晶粒界に偏析して機械部品の衝撃特性が低下させる。そのため、Sの含有量は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.095質量%以下、特に好ましくは0.090質量%以下である。一方、Sは鋼中に不可避的に含まれる元素であり、純度を高めるほど製造コストが増加する。そのため、Sの含有量は、好ましくは0.001質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、特に好ましくは0.005質量%以上である。なお、上述の通り、Sの含有量が0.03質量%以下の場合は意図的に添加したものではなく、不可避不純物である。
2.金属組織
はだ焼鋼は、TiCまたはTiCNと、AlNとの複合析出物を含んでいる。本明細書では、この複合析出物を「Al,Ti複合析出物」または単に「複合析出物」と称することがある。
本発明者らがAl系析出物(AlN)によるピンニング効果が低い理由を検討したところ、高温での浸炭処理を行ったときに大半のAlNは固溶して、ピンニング効果を発揮できていないことが分かった。そこで、高温で浸炭処理をした場合でも、AlNを有効に機能させる方法を検討した結果、Tiを添加してAlNと複合析出物を形成させることが有効であることを見出した。Tiは融点が高いため、AlNは、Tiと複合化することで融点が高くなり、高温の浸炭処理でもピンニング効果を発揮できることを発見した。Tiは、TiCまたはTiCNとして、AlNと複合化する。
複合析出物は、微細であるとピンニング効果が高い。実施形態1では、円相当径が0.04μm以下の複合析出物を、面積率0.200%以上含んでおり、これにより、結晶粒粗大化を効果的に抑制できる。
鋼に含まれる複合析出物の測定は、TEM-Mappingによって行い、AlとTiが検出された析出物を複合析出物とする。TEM-Mappingでは、抽出レプリカ法により作製したレプリカ膜を用いることができる。
円相当径が0.04μm以下の複合析出物の面積率は、TEM-Mappingの結果を粒子解析ソフトで解析して求める。視野範囲の全面積を100%としたときに、視野範囲内において、対象となる(つまり、円相当径が0.04μm以下の)Al,Ti複合析出物の粒子が占める面積の割合を求め、それを「円相当径が0.04μm以下の複合析出物の面積率」とする。
3.製造方法
次に本発明の実施形態1に係るはだ焼鋼の製造方法について説明する。なお、ここに記載する製造方法は一例であって、当業者であれば、これらの方法を改変して実施形態1に係るはだ焼鋼を製造し得ることに留意されたい。
上記の成分組成を有する鋼となるように転炉または電炉で所定の成分範囲に調整し、連続鋳造により鋳造する。得られた鋼片を1200℃以上(好ましくは1200℃~1300℃)で60分以上(好ましくは60分~300分)保持する(これを「分塊加熱」と称する)。次いで分塊圧延または分塊鍛造(熱間圧延または熱間鍛造)を行う。その後、10.0℃/分以上の冷却速度で室温まで冷却する。ここで「平均冷却速度」は、冷却開始温度(分塊圧延または分塊鍛造終了時の温度)から冷却停止温度(室温)までの温度差を、冷却にかかった時間で割って求める。さらに、必要に応じて、鍛造(熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造など)または圧延(熱間圧延、冷間圧延など)を行ってもよい。
これにより、はだ焼鋼を製造することができる。
TiCまたはTiCNと、AlNとの複合析出物を生成し、かつ円相当径が0.04μm以下の複合析出物を、面積率0.200%以上に制御するためには、熱履歴の制御が重要である。Ti系析出物(TiCまたはTiCN)は融点が高温であるので、Ti系析出物を含むAl,Ti複合析出物もまた融点が高温となる。そのため、分塊加熱では、加熱温度を1200℃以上の高温にし、かつその温度で60分以上保持する。さらに、分塊圧延または分塊鍛造した後の冷却速度はオストワルド成長に影響するため、「円相当径が0.04μm以下の複合析出物を、面積率0.200%以上」を達成するために、10.0℃/分以上の速い冷却速度で冷却する。
(実施形態2:浸炭部品)
実施形態2に係る浸炭部品は、上述したはだ焼鋼と同様の成分組成を有し、表面から深さ50μm位置の結晶粒の粒度番号が9.0以上であり、下記の式(1)で定義されるビッカース硬さの差ΔAが104HV以下であり、かつ下記の式(2)を満たす。

ΔA(HV)=HV-HV300 (1)
HV≧700Hv (2)

ここで、
HV :表面から深さ50μm位置(測定位置)での初期硬さ、
HV300:300℃で焼戻した後の前記測定位置での硬さ
である。
本明細書においては、浸炭部品の表面から深さ50μm位置は「表層」である。つまり、実施形態2の浸炭部品は、表層の結晶粒(例えば旧γ結晶粒)の粒度番号が9.0以上であり、表層の硬さHVが700HV以上である。また、浸炭部品を300℃で焼戻しした後の当該浸炭部品の表層の硬さHV300と、焼戻しする前の浸炭部品の表層の硬さHVとの差ΔAが104HV以下である。
本明細書では、焼戻しする前の浸炭部品の硬さHVを「初期硬さHV」とも称する。
また、表面から深さ50μm位置(表層)は、硬さ測定等を行う位置でもあるため、本明細書では、「測定位置」とも称する。
実施形態2の浸炭部品の金属組成および物性(表層硬さ等)について詳しく説明する。
(表層の結晶粒の結晶粒の粒度番号が9.0以上)
結晶粒が粒度9.0以上であると、以下の理由から浸炭部品の摩耗を低減できると考えられる。
疲労摩耗により亀裂が発生し、亀裂が伝播して剥離することで摩耗が進行する。複合析出物を微細分散させた実施形態1のはだ焼鋼から浸炭部品を製造すると、浸炭部品の表層の結晶粒(例えば旧γ結晶粒)を粒度9.0以上と微細にすることができ、その結果、亀裂の伝播を抑制して摩耗を低減できる。
粒度測定では、浸炭部品を切断し、その切断面をナイタール液で腐食させる。表面から深さ50μm位置近傍において、光学顕微鏡(倍率200倍)により結晶粒を観察する。結晶粒の粒度を、JIS G 0551:2020の標本図を参考に粒度番号を算出する。
視野範囲内におけるすべての結晶粒を標本図と照らし合わせて粒度番号を求め、それらの平均値を算出して、その浸炭部品の表層の結晶粒の粒度とする。
(表層の硬さHVが700HV以上)
HVが700HV以上(つまり、上記の式(2)を満たす)ことにより、耐摩耗性を高めることができる。このような硬さは、実施形態1のはだ焼鋼を浸炭処理することにより達成できる。
HVの測定は、浸炭部品を切断し、その切断面において、表面から深さ50μmの位置(測定位置)でビッカース硬さを測定する。
(表層の初期硬さHVと300℃焼き戻し後の硬さHV300との差が104HV以下)
浸炭部品を焼戻しすると硬さが低下する。ΔAは、焼き戻しによって、表層がどの程度軟化したかを示す指標である。
本発明者らは、ΔAを制御することにより、浸炭部品の耐摩耗性を向上できることを見いだした。図1は、実施例の表2に記載した試料No.1、2、5~8のΔAと摩耗面積をプロットした図であり、それらの間に相関性があることが分かる。摩耗面積は摩耗が進むと大きくなるため、摩耗面積が小さいほど、耐摩耗性が高いといえる。摩耗試験の結果が摩耗面積0.028μm以下であれば十分な耐摩耗性を有しているといえ、その値を達成するためには、ΔAを104HV以下に制御することが有効である。
使用するはだ焼鋼のSi含有量(浸炭部品のSi含有量とほぼ一致)を0.60質量%以上にすることにより、浸炭して得られる浸炭部品のΔAを104HV以下に制御することができる。
ΔAを算出するための「表層の初期硬さHV」は、上述した「表層の硬さHV」と同一であり、上述した方法で測定する。
「300℃焼き戻し後の硬さHV300」の測定は、浸炭部品に300℃で2時間の焼き戻し処理を行い、焼き戻し後の浸炭部品を切断し、その切断面において、表面から深さ50μmの位置(測定位置)でビッカース硬さを測定する。なお、先に切断し、その後に焼き戻し処理を行ってもよい。
実施形態2で行う「ビッカース硬さ」の測定は、全て、JIS Z 2244-1:2020に準拠して行う。
浸炭部品は、実施形態1のはだ焼鋼を用いて、以下の方法で製造することができる。
肌焼き鋼を熱間鍛造または冷間鍛造で粗成形する。冷間鍛造の前後に、必要に応じて焼鈍・焼準処理を追加しても良い。粗成形した部品を浸炭または真空浸炭により表面硬化処理を実施する。その後、研磨や切削などによって仕上加工を実施して、浸炭部品を得る。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す各成分組成を有するインゴットを鋼塊法により作製した。得られたインゴットを1200~1300℃で60分以上加熱し、その後に熱間圧延または熱間鍛造で分塊圧延または分塊鍛造して鋼片を作製した。その鋼片を、表1に記載した平均冷却速度で室温まで冷却した。次いで800~1000℃まで加熱して熱間圧延または熱間鍛造して、直径24mm、長さ1000mmの棒鋼(φ24棒鋼)と、直径32mm、長さ1000mmの棒鋼(φ32棒鋼)をそれぞれ得た。
表1で線(-)を記載したものは、その成分組成が検出されなかったことを意味する。なお、表1において、下線を付した数値は、本発明の実施形態の範囲から外れていることを示している。ただし、「-」については、本発明の範囲から外れていても下線を付していないことに留意されたい。
Figure 2022157220000001
得られた棒鋼について、以下の測定および実験を行った。測定および実験の結果を表2に示す。
[結晶粒粗大化抑制特性の評価]
棒鋼に浸炭模擬熱処理(焼き入れ)を行って、浸炭処理による結晶粒粗大化について検討した。
φ24棒鋼の端部から、長手方向(軸方向)に20mmの位置で切断して、長さ20mmの棒鋼サンプルを得た。棒鋼サンプルを大気中で960℃まで加熱し、その温度で3時間保持し、その後に水冷して焼き入れした。焼入れした棒鋼サンプルを、端面から約10mm(軸方向の長さの中央付近)において軸方向と直交する面で切断し、切断面(円形断面)をナイタール液(エタノールと3%硝酸との混合液)で腐食させた。腐食後の切断面の全体(約452mm)を光学顕微鏡によって確認し、視野範囲の中で最大粒径を有する旧γ結晶粒を特定した。その後、その最大粒径の旧γ結晶粒を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察し、JIS G 0551:2020の標本図を参考に粒度番号を算出した。最大直径を有する旧γ結晶粒が粒度4.0以上のときは「可(○)」とし、4.0未満のときは「不可(×)」と判定した。判定結果を表2に示す。
[析出物の確認]
抽出レプリカ法によりレプリカ膜を作製して、析出物を確認した。
φ24棒鋼を樹脂に埋め込み、D/4を中心とした縦断面が露出するように電解研磨した。研磨面をナイタール液で腐食させ、C蒸着後に剥離液に浸漬することにより、レプリカ膜を作製した。透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、レプリカ膜における上記D/4と対応する位置を14000倍で観察してTEM像を得た(視野範囲:77.4μm)。観察された析出物の構成元素はEDSによるMapping分析により同定した。TiとAlのピークが共に現れた測定箇所にはAl,Ti複合析出物が存在すると判断した。TEM像と各構成元素のMapping写真とを、住友金属テクノロジー社製粒子解析Ver3.0を用いて解析して、Al,Ti複合析出物の面積率(%)を導出した。なお、実施形態では、面積率は円相当径が0.04μm以下の粒子を対象として求めるが、実施例ではTEM装置による制限のため、円相当径が0.036μm~0.386μmの範囲にある粒子を対象とした。Al,Ti複合析出物の面積率は、視野範囲の面積(77.4μm)を100%としたときに、視野範囲内において、対象となるAl,Ti複合析出物の粒子が占める面積の割合である。
[硬さ測定、粒度測定および摩耗試験]
硬さ測定、粒度測定および摩耗試験に用いる試料として、図2に示す浸炭試験片(小ローラ10)を作製した。
φ32棒鋼を用いて、旋盤による粗加工により、図2に示す寸法より少し大きい寸法の試験片(粗加工片)を作製し、真空雰囲気で930℃まで加熱し、その温度で105分保持した後、浸炭処理を実施し、油焼き入れをした。その後に仕上げ加工を行って、図2の寸法形状の浸炭試験片(小ローラ10)を得た。小ローラ10は、硬さ測定・粒度測定用と、摩耗試験用にそれぞれ1個(合計2個)作製した。
(硬さ測定、粒度測定)
小ローラ10の摺動部11(図2のφ26mmの部分)を、軸方向と直交方向(横断方向)に切断して2つの試験片を得た。
一方の試験片は、切断面が測定面となるように樹脂に埋め込み、切断面を研磨した。JIS Z 2244-1:2020に準拠して、表面から50μmの測定位置でビッカース硬さ(HV)を測定した。
次いで、同じ試験片を用いて、表層の結晶粒の粒度を測定した。樹脂に埋め込んだ状態の試験片について、切断面をナイタール液で腐食させた。ビッカース硬さを測定した圧痕のある部分を避けて、表面から5μmの位置(表層)を光学顕微鏡にて倍率200倍で観察した。視野範囲内におけるすべての旧γ結晶粒を標本図と照らし合わせて粒度番号を求め、それらの平均値を、試料片の表層の結晶粒の粒度として表2に示す。
他方の試験片は、大気中で300℃に加熱し、120分の保持を実施して、熱処理サンプルを作製した。熱処理サンプルを、切断面が測定面となるように樹脂に埋め込み、切断面を研磨した。表面から50μmの測定位置でビッカース硬さ(HV300)を測定した。
ビッカース硬さ測定は、ミツトヨ製AAV502型自動ビッカース硬さ試験機を用いて、荷重300gで測定した。異なる3カ所で測定を行って、その平均を各試験片のビッカース硬さとした。
(摩耗試験)
摩耗試験の相手材として、高炭素クロム軸受鋼SUJ2を調質して、旋盤加工にて、外径130mm、幅18mmのディスク状の相手材(大ローラ)を作製した。小ローラ10と大ローラをローラーピッチング試験機に設置し、小ローラ10の摺動部11の幅方向のほぼ中央に大ローラの外周が接触するように小ローラ10と大ローラの相対位置を決めた。面圧3.0GPa、回転数1500rpm、すべり率40%、油温110℃、油量2L/minの試験条件でローラーピッチング試験を行った。小ローラ10の回転回数が5.0×10回となった時点で摩耗試験を終了した。図3に示すように、小ローラ10の摺動部は、大ローラが接していた部分(摺動領域SR)が、大ローラとの摩擦により摩耗して凹部Cが生じており、大ローラと接触していなかった部分(非摺動領域NSR)よりもくぼんでいた。
摩耗試験を行った後の小ローラ10(図3参照)について、ミツトヨ製表面粗さ・輪郭測定機CS-3200を用いて、摺動部領域SRと、その両側の非摺動領域NSRとを含む範囲について、表面輪郭を測定した。図3に示すように小ローラ10を正面視したときに、両側の非摺動領域NSRの表面を結んだ線(摩耗前の小ローラ10の表面に相当)を基準線Rとし、基準線Rと、摺動領域SRの凹部Cとで囲まれた範囲の面積を専用ソフトで算出して、小ローラ10の摩耗面積とした。
これらの測定結果を表2に示す。なお、表2において、下線を付した数値は、本発明の実施形態の規定範囲から外れていることを示している。また、表2で線(-)を記載している部分、例えば、試料No.3~4の「耐摩耗性」、試料No.6の「結晶粒粗大化抑制特性」、試料No.7の「耐摩耗性(表層結晶粒度のみ)」および「結晶粒粗大化抑制特性(浸炭処理前のみ)」は、その測定を行わなかったことを意味している。
Figure 2022157220000002
表1および表2の結果から以下のことがわかる。
試料No.1~3は、いずれも本発明の実施形態で規定する条件を満たしていたため、耐摩耗性および結晶粒粗大化抑制特性がいずれも優れている。なお、試料No.3は、耐摩耗性の測定を行っていないが、試料No.2と成分組成が同じで、平均冷却速度が試料No.2よりも大きいので、耐摩耗性が優れていると考えられる。
これに対して、試料No.4は、製造時の分塊鍛造後の冷却速度が遅いため、浸炭処理前における微細なAl,Ti複合析出物の面積率が小さく、その結果、浸炭処理後の旧γ結晶粒が粗大化した。
試料No.5は、Ti含有量が所定量より少ないため、浸炭処理前における微細なAl,Ti複合析出物の面積率が小さく、その結果、浸炭処理後の鋼材全体における旧γ結晶粒が粗大化した。
試料No.7も、Ti添加量が所定量より少ないので、浸炭処理前における微細なAl,Ti複合析出物の面積率が小さかったと想定される。その結果、浸炭処理後の鋼材全体における旧γ結晶粒が粗大化した。
試料No.6、8は、Si含有量が少ないため、ΔAが104HVを超えていた。さらに、Tiを含まないので、Al,Ti複合析出物が形成されなかった。その結果、ピンニング効果が得られず、表層の結晶粒度が小さくなった。ΔAおよび表層の結晶粒度が本願実施形態で規定する条件を見たさなさいため、摩耗試験における摩耗面積は0.028μmを超えて、耐摩耗性が低かった。
また、Al,Ti複合析出物が形成されなかったため、浸炭処理後の鋼材全体における旧γ結晶粒が粗大化した。

Claims (6)

  1. C :0.10質量%以上、0.30質量%以下
    Si:0.60質量%以上、2.00質量%以下
    Mn:0.10質量%以上、2.00質量%以下
    Cr:0.10質量%以上、2.00質量%以下
    Al:0.010質量%以上、0.100質量%以下
    N :0.0010質量%以上、0.0500質量%以下、および
    Ti:0.010質量%以上、0.100質量%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    TiCまたはTiCNと、AlNとの複合析出物を含み、
    円相当径が0.04μm以下の前記複合析出物の面積率が0.200%以上である、はだ焼鋼。
  2. Mo:0.01質量%以上、1.00質量%以下、および
    B :0.0005質量%以上、0.0100質量%以下
    のうちの1種または2種をさらに含有する請求項1に記載のはだ焼鋼。
  3. V :0.01質量%以上、0.50質量%以下、および
    Nb:0.005質量%以上、0.100質量%以下
    のうちの1種または2種をさらに含有する請求項1または2に記載のはだ焼鋼。
  4. Cu:0.01質量%以上、2.00質量%以下、および
    Ni:0.01質量%以上、2.00質量%以下
    のうちの1種または2種をさらに含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のはだ焼鋼。
  5. P:0.001質量%超、0.100質量%以下、および
    S:0.001質量%超、0.100質量%以下
    のうちの1種または2種をさらに含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のはだ焼鋼。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の成分組成を有し、
    表面から深さ50μm位置の結晶粒の粒度番号が9.0以上であり、
    下記の式(1)で定義されるビッカース硬さの差ΔAが104HV以下であり、
    下記の式(2)を満たす、浸炭部品。

    ΔA(HV)=HV-HV300 (1)
    HV≧700Hv (2)

    ここで、
    HV :表面から深さ50μm位置(測定位置)での初期硬さ、
    HV300:300℃で焼戻した後の前記測定位置での硬さ
    である。
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