JP2022155943A - 熱中症対策システム - Google Patents

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宏典 田中
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Abstract

【課題】コストや消費電力を抑制しつつ、建物の一の階層全体で熱中症の発生を抑制することができる熱中症対策システムを提供する。【解決手段】住宅H一階部分に設けられ、当該一階部分のうちLDK11へ除湿された調整空気を供給可能なエアコン51と、住宅Hの二階部分に設けられ、当該二階部分のうち主寝室21へ前記調整空気を誘引して外部へ排出可能な換気装置53と、主寝室21の温湿度を取得する温湿度センサ5と、温湿度センサ52により取得された温湿度を用いてWBGT(暑さ指数)を算出すると共に、算出したWBGT(暑さ指数)に基づいてエアコン51及び換気装置53の運転を制御する制御部54と、を具備する。【選択図】図1

Description

本発明は、建物での熱中症の発生を抑制する熱中症対策システムの技術に関する。
従来、建物での熱中症の発生を抑制する熱中症対策システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1には、建物において、室内機に設けられた人体検知センサにより人の在否を検知して運転を制御する空気調和機と、被調和室の室温を検知する室温検知手段を有するシステムが開示されている。
前記システムにおいては、被調和室において、人体検知センサによって人の存在が確認された場合であって、さらに被調和室が所定以上の室温となっていることが確認された場合に、空気調和機が停止状態であっても、強制的に室温が所定温度以下になるように運転を行う。これにより、被調和室に存在する人の熱中症の発生を抑制することができる。
しかしながら、特許文献1の技術では、空気調和機が設置された被調和室での熱中症の発生を抑制することができるものの、空気調和機が設置されていない部屋での熱中症の発生を抑制することができない。また、全ての部屋に空気調和機を設置するのは、コストがかかる上に、消費電力も大きくなる。
特開2012-237481号公報
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、コストや消費電力を抑制しつつ、建物の一の階層全体で熱中症の発生を抑制することができる熱中症対策システムを提供することである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、2階以上の階層を有する建物の一の階層に設けられ、当該一の階層の複数の空間のうち一部の空間へ少なくとも除湿された調整空気を供給可能な空調装置と、前記建物の前記一の階層より上方の他の階層に設けられ、当該他の階層の複数の空間のうち一部の空間へ前記調整空気を誘引して外部へ排出可能な排気装置と、前記他の階層の前記一部の空間の温湿度を取得する温湿度取得手段と、前記温湿度取得手段により取得された温湿度を用いて暑さ指数を算出すると共に、算出した前記暑さ指数に基づいて前記空調装置及び前記排気装置の運転を制御する制御部と、を具備するものである。
請求項2においては、前記制御部は、算出した前記暑さ指数が第一の閾値以上であった場合に、前記空調装置及び前記排気装置を共に運転させるものである。
請求項3においては、前記制御部は、前記温湿度取得手段により取得された温度を第二の閾値と比較した結果に基づいて、前記調整空気の温度が異なるように前記空調装置の運転を異ならせるものである。
請求項4においては、前記空調装置の運転には、再熱除湿運転が含まれ、前記制御部は、前記温湿度取得手段により取得された温度が前記第二の閾値よりも低い場合に、前記空調装置の運転を前記再熱除湿運転とするものである。
請求項5においては、前記空調装置の運転には、冷房運転が含まれ、前記制御部は、前記温湿度取得手段により取得された温度が前記第二の閾値以上である場合に、前記空調装置の運転を前記冷房運転とするものである。
請求項6においては、前記建物は、2階建ての住宅であるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、コストや消費電力を抑制しつつ、建物の一の階層全体で熱中症の発生を抑制することができる。
請求項2においては、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
請求項3においては、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
請求項4においては、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
請求項5においては、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
請求項6においては、2階建ての住宅での熱中症の発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る熱中症対策システムが設けられた住宅の全体的な構成を示した概略図。 同じく、二階部分の平面概略図。 熱中症対策システムの構成を示したブロック図。 対策制御の処理を示したフローチャート。 (a)対策制御の実行前における二階部分の環境情報の一例を示した平面模式図。(b)対策制御の実行後における二階部分の環境情報の一例を示した平面模式図。
以下では、まず図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る熱中症対策システム(以下では単に「対策システム」と称する)1が設けられた住宅Hの概略について説明する。
住宅Hは、対策システム1が設けられる建物の一例である。本実施形態において、住宅Hは、2階建ての戸建住宅である。住宅Hの一階部分には、LDK11、玄関12、一階廊下13、図示せぬ洗面室、和室等の複数の空間が設けられる。一階部分においては、LDK11や玄関12等の複数の空間が一階廊下13によりそれぞれ接続される。
また、住宅Hの二階部分には、主寝室21、2つの洋室(以下では「第一洋室22」及び「第二洋室23」と称する)、トイレ24及び二階廊下25等の複数の空間が設けられる。主寝室21は、二階部分の南西側に設けられる。第一洋室22及び第二洋室23は、二階部分の東側に北南に互いに隣接して設けられる。トイレ24は、第一洋室22の西側に隣接して設けられる。二階廊下25は、二階部分の概ね中央において南北方向に延びるように設けられる。こうして、二階部分においては、主寝室21、第一洋室22、第二洋室23及びトイレ24等の複数の空間が二階廊下25によりそれぞれ接続される。
また、住宅Hには、一階部分及び二階部分を互いに接続する階段30が設けられる。階段30は、住宅Hの北西側に設けられる。階段30は、一階部分において、一階廊下13と接続される。また、階段30は、二階部分において、二階廊下25と接続される。こうして、住宅Hにおいては、一階廊下13と二階廊下25とが、階段30を介して連続した(空気が流通し易い)空間となるように形成される。
また、一階部分及び二階部分において、互いに隣接する空間の間には開閉可能なドアDが設けられる。ドアDにはアンダーカットやガラリが設けられ、当該ドアDを介した空気の出入り(換気)を可能としている。
また、住宅Hにおいては、所定のサッシ等を介して一階部分から取り込んだ空気を、階段30を介して二階部分へと案内し、当該二階部分から屋外へ取り出すという一連の空気の流れができるように、気密ラインが形成される。こうして、住宅Hは、一階部分から取り込んだ空気により、室内の空気が万遍なく入れ替わるように構成される。
以下では、図1から図3を用いて、対策システム1の構成について説明する。
対策システム1は、住宅H(本実施形態では、特に2階部分)での熱中症の発生を抑制するためものである。対策システム1は、エアコン51、温湿度センサ52、換気装置53及び制御部54等を具備する。
エアコン51は、室内の空気の温度や湿度等を調整可能な装置である。エアコン51は、一階部分のLDK11に設けられる。エアコン51は、図示せぬ室外機と接続され、当該室外機との間で冷媒を循環する。エアコン51は、吸い込んだ空気と冷媒との間で熱交換を行うことで、温度や湿度を調整する。エアコン51は、調整後の空気をLDKに吹き出す(供給する)。なお、エアコン51は、温度や湿度の調整に関して複数種類の制御(運転)を実行することができる。前記複数種類の運転には、冷房運転と、再熱除湿運転と、が含まれる。
冷房運転とは、温度を下げることを主目的とする運転である。冷房運転を実行すると、冷却された空気がLDK11に吹き出される。こうして、冷房運転が実行されると、室内の温度を下げることができる。なお、冷却された空気は、温度だけでなく湿度も下げられている。
再熱除湿運転とは、湿度を下げることを主目的とした運転である。再熱除湿運転を実行すると、除湿された空気がLDK11に吹き出される。なお、除湿された空気は、エアコン51から吹き出される前に加熱されており、温度の低下が抑制されている。こうして、再熱除湿運転が実行されると、室内の温度が低下するのを抑制しつつ、湿度を下げることができる。
温湿度センサ52は、室内の温度及び湿度を計測するためのものである。温湿度センサ52は、二階の主寝室21に設けられる。温湿度センサ52は、主寝室21の温度及び湿度(相対湿度)を常時計測している。
換気装置53は、ファンを回転させることにより、室内の空気を屋外へ排出するためのものである。すなわち、換気装置53は、室内の熱を屋外へ排出(排熱)することができる。換気装置53は、二階の主寝室21(より詳細には、主寝室21の小屋裏)に設けられる。換気装置53は、ファンの回転数を制御することにより、強運転と弱運転とを切り替え可能に構成される。本実施形態において、換気装置53の強運転は、風量が600m/hに設定される。また、換気装置53の弱運転は、風量が300m/hに設定される。
制御部54は、対策システム1の制御を実行するためのものである。制御部54は、RAM、ROM、HDD等の記憶部や、CPU等の演算処理部等を具備する。制御部54の記憶部には、各種の情報やプログラム等が記憶されている。また、制御部54には、各種の操作が可能な操作部(例えば、ボタン、キーボード等)、各種の情報の表示が可能な表示部(例えば、ランプ、モニター等)、操作部及び表示部の機能を有するタッチパネル等が適宜設けられる。
また、図3に示すように、制御部54は、エアコン51と接続され、互いに信号を送受信可能に構成される。こうして、制御部54は、エアコン51の運転状態を取得することができる。また、制御部54は、エアコン51の運転を制御することができる。具体的には、制御部54は、エアコン51のオンオフや運転の種類を切り替えることができる。
また、制御部54は、温湿度センサ52と接続され、当該温湿度センサ52からの信号を受信可能に構成される。こうして、制御部54は、温湿度センサ52の計測結果(主寝室21の温度及び相対湿度)を取得することができる。
また、制御部54は、換気装置53と接続され、当該換気装置53に信号を送信可能に構成される。こうして、制御部54は、換気装置53の運転を制御することができる。具体的には、制御部54は、換気装置53のオンオフや運転の種類を切り替えることができる。
以下では、図1を用いて、対策システム1のエアコン51及び換気装置53を同時に運転した場合の、住宅H内の空気の流通態様について説明する。
なお、本実施形態に係る対策システム1は、熱中症が発生しないように対策するためのものであり、例えば梅雨時期を含む夏場に使用することを想定している。そこで以下の説明では、夏場であることを前提としている。例えばエアコン51は、冷房運転又は再熱除湿運転が実行される。また各空間のドアDは、開いた(空気が出入りし易い)状態となっている。
図1に示すように、一階部分のLDK11のエアコン51が運転(冷房運転又は再熱除湿運転)を開始した場合、エアコン51からLDK11内に温度等が調整された後の空気が吹き出される。なお以下では、温度等が調整された後の空気を「空調空気」と称する場合がある。
一方、二階部分の主寝室21の換気装置53が運転(例えば、弱運転)を開始した場合、主寝室21内の空気が小屋裏を介して屋外へ排出される。またこれに伴い、二階部分の他の空間の空気が、開いた状態のドアD(仮に閉じた状態であれば、ドアDのアンダーカット等)を介して主寝室21へと引き込まれる(誘引される)。またこれに伴い、一階部分のLDK11を含む各空間の空気が、階段30を介して二階部分へと引き込まれる。
すなわち、換気装置53が運転を開始した場合、一階部分のLDK11に吹き出された空調空気は、一階廊下13及び階段30を介して二階廊下25へと引き込まれる。そして、二階廊下25へと引き込まれた空調空気は、主寝室21へと引き込まれた後、最終的に換気装置53により屋外へ排出される。
ここで、二階廊下25は、上述の如く、二階部分において主寝室21、第一洋室22、第二洋室23及びトイレ24等の複数の空間をそれぞれ接続している(図2参照)。すなわち、二階部分において、二階廊下25に引き込まれた空調空気は、主寝室21に引き込まれる前に、他の第一洋室22等の各空間内の空気と接触することとなる。
以下では、二階部分において、第一洋室22等の各空間内の空気がエアコン51の空調空気と触れた場合の、住宅H内の空気の状態遷移について説明する。
ここで、相対湿度の高い夏場においては、空気中に含まれる水蒸気量が比較的多くなっている。また、特に住宅Hのうち二階部分においては、一階部分よりも温度も高くなり易いため、それに伴って水蒸気量も一階部分よりも多くなり易い。
これに対して、エアコン51の空調空気は、当該エアコン51の運転が冷房運転又は再熱除湿運転のどちらであっても、除湿された湿度の低い空気である。すなわち、二階廊下25に引き込まれた空調空気が、第一洋室22等の各空間内の空気と接触した場合、第一洋室22等の各空間内の水蒸気量の多い空気が、二階廊下25の除湿された湿度の低い空気と接触することとなる。
こうして、第一洋室22等の各空間内の空気に含まれる水蒸気は、湿度の低い空調空気と接触することにより、当該水蒸気の拡散性により空調空気内へと拡散していく。なお上述の如く、二階廊下25に引き込まれた空調空気は、主寝室21へと引き込まれた後、屋外へ排出される。すなわち、エアコン51及び換気装置53が同時に運転している限り、継続して(次々と)一階部分から二階廊下25へと湿度の低い空気が供給されてくる。これにより、第一洋室22等の各空間内の空気に含まれる水蒸気量は、時間の経過と共に減少していく。つまり、第一洋室22等の各空間内の湿度は、空調空気の湿度に近づくように減少していく。
このように、対策システム1の構成により、二階部分の第一洋室22等の各空間に、例えばエアコン51のような空調装置が設置されていなくとも、当該各空間の湿度を効果的に下げることができる。これにより、空調装置の設置や運転に関するコストや消費電力を抑制しつつ、住宅H(特に、二階部分)での熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
なお、エアコン51の空調空気が冷房運転によるものである場合、二階部分の各空間の湿度だけではなく、温度も効果的に下げることができる。また、エアコン51の空調空気が再熱除湿運転によるものである場合、二階部分の各空間の温度をそれ程下げることなく、温度を優先して下げることができる。
このように、対策システム1においては、エアコン51の運転の種類に応じて、住宅H内の空気の状態遷移を異ならせることができる。また、対策システム1においては、所定の条件に基づいてエアコン51や換気装置53の運転を制御部54が制御することにより、熱中症の発生を好適に抑制することができる。以下では、制御部54による上述の如き制御を「対策制御」と称する。
以下では、図4のフローチャートを用いて、制御部54による対策制御の処理について説明する。
制御部54による対策制御は、所定の間隔(例えば5分等)ごとに繰り返し実行される。
ステップS11において、制御部54は、温湿度センサ52の計測結果(主寝室21の温度及び相対湿度)を取得する。制御部54は、ステップS11の処理の後、ステップS12へ移行する。
ステップS12において、制御部54は、ステップS11で取得した計測結果に基づいてWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)を算出する。WBGTとは、別名を暑さ指数とも称され、JIS Z8504に規格化された指標である。制御部54は、以下の数(1)を用いて、WBGTを算出する。
(数1)
Figure 2022155943000002
ここで、「Rk」は、相対湿度(%)である。また、「Tk」は温度(℃)である。
制御部54は、ステップS12の処理の後、ステップS13へ移行する。
ステップS13において、制御部54は、ステップS12で算出したWBGTが所定の第一の閾値(本実施形態では、30℃)以上であるか否かを判断する。制御部54は、算出したWBGTが30℃以上であると判断すると(ステップS13でYES)、ステップS14へ移行する。一方、制御部54は、算出したWBGTが30℃よりも小さいと判断すると(ステップS13でNO)、対策制御を一旦終了する。
ステップS14において、制御部54は、ステップS11で取得した計測結果に基づいて主寝室21の室温が所定の第二の閾値(本実施形態では、30℃)以上であるか否かを判断する。制御部54は、主寝室21の室温が30℃以上であると判断すると(ステップS14でYES)、ステップS15へ移行する。一方、制御部54は、主寝室21の室温が30℃よりも小さいと判断した場合(ステップS14でNO)、ステップS17へ移行する。
ステップS15において、制御部54は、エアコン51をオンすると共に、冷房運転を開始する。制御部54は、ステップS15の処理の後、ステップS16へ移行する。
ステップS16において、制御部54は、換気装置53をオンすると共に、弱運転を開始する。制御部54は、ステップS16の処理の後、対策制御を一旦終了する。
またステップS14でNOにより移行したステップS17において、制御部54は、エアコン51をオンすると共に、再熱除湿運転を開始する。制御部54は、ステップS17の処理の後、ステップS18へ移行する。
ステップS18において、制御部54は、換気装置53をオンすると共に、弱運転を開始する。制御部54は、ステップS18の処理の後、対策制御を一旦終了する。
このように、対策制御においては、WBGTが第一の閾値(本実施形態では、30℃)以上である場合(ステップS13でYES)に、エアコン51及び換気装置53の運転を開始する(ステップS15及びステップS16、又は、ステップS17及びステップS18)。
ここで、第一の閾値の30℃は、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.3に示される「WBGTと気温、湿度の関係」の表に基づいて設定されたものである。すなわち、この表によれば、WBGTが31℃であれば「危険」(危険性が大きい)と判断され、WBGTが30℃であれば「厳重警戒」(室温の上昇に注意する)と判断されている。したがって、本実施形態において、第一の閾値の30℃は、危険と判断される一歩手前の段階でエアコン51等の運転を開始することにより、熱中症の発生をより好適に抑制することができる。
また、第一の閾値としてWBGTの値を用いることにより、温度(暑さ)だけでなく相対湿度も考慮して熱中症の発生を抑制することができる。すなわち、一般的に温度が低い場合には熱中症に対する注意が低くなる傾向にあるが、WBGTの値を考慮することにより、温度が低いため(例えば熱中症に対する注意が低いため)エアコン51を自ら使用しない居住者に対しても、熱中症の発生をより好適に抑制することができる。
なお、第一の閾値のWBGT30℃は一例であり、任意の値を採用することができる。
ここで、例えば第一の閾値を、本実施形態に係る値とは異なり、32℃とした場合(すなわち「危険」と判断される値のうち比較的「厳重警戒」に近い値とした場合)について考えてみる。またこの際、例えば主寝室21のWBGTが32℃(ステップS13でYES)、室温が29℃(ステップS14でNO)となったものと仮定する。
この場合、室温は下げる必要がないと判断されるため、エアコン51は再熱除湿運転を行う(ステップS17)。すなわち、この場合、(温度を下げずに)湿度だけを下げることによりWBGTの値を下げることとなるため、相対湿度を大きく(例えば10%)低下させる必要が生じる。しかしながら、一般的に市販されている空調装置において、相対湿度を大きく低下させることは、性能的に困難であったり、消費電力が増大したりする可能性がある。そのため、第一の閾値としては、WBGTが30℃以下であることが望ましい。
また、対策制御においては、主寝室21の室温が第二の閾値(本実施形態では、30℃)よりも小さい場合(ステップS14でNO)、エアコン51の再熱除湿運転及び換気装置53の弱運転を開始するものである(ステップS17及びステップS18)。
このように、室温がそれ程高くない場合には、(温度を下げずに)湿度だけを下げることによりWBGTの値を下げる(すなわち、熱中症の発生の抑制を図る)。これにより、例えば主寝室21(さらには、二階部分の他の空間)にいる居住者に、冷えにより身体に負担がかかるのを抑制することができる。また例えば、再熱除湿運転ではなく、一般的に市販されている空調装置の弱冷房運転を実行した場合には、湿度と共に温度が下がってしまうため、エアコン51が自ら運転を停止してしまう可能性がある。これに対して本実施形態においては、再熱除湿運転を実行することにより、温度を下げずにエアコン51の運転を継続して実行することができる。
また、対策制御においては、主寝室21の室温が第二の閾値(本実施形態では、30℃)以上である場合(ステップS14でYES)、エアコン51の冷房運転及び換気装置53の弱運転を開始するものである(ステップS15及びステップS16)。
このように、室温が比較的高い場合には、温度と湿度を共に下げることにより、WBGTの低下(すなわち、熱中症の発生の抑制)を速やかに図ることができる。
なお、第二の閾値の室温30℃は一例であり、任意の値を採用することができる。
また、対策制御においては、エアコン51の運転の種類にかかわらず、換気装置53は弱運転を実行するものである(ステップS16及びステップS18)。
こうして、主寝室21のように居住者が就寝する空間において、換気装置53による動作音を極力控えると共に、消費電力の抑制を図ることができる。なお、換気装置53の弱運転では、風量が300m/hに(それ程大きくなく)設定されるが、住宅H内における一連の空気の流れを作るには十分である。すなわち、換気装置53は、強運転ではなく弱運転にであっても、対策システム1における所望の効果を得ることができる。
以下では、図5を用いて、対策制御を実行した場合の、住宅H内の空気の状態遷移の具体例について説明する。
図5においては、二階部分以外の空気の状態として、外気及びLDK11のそれぞれの温度、湿度及びWBGTと、小屋裏(図1参照)の温度及び湿度を取得している。また、二階部分の空気の状態として、主寝室21、第一洋室22、第二洋室23及び二階廊下25のそれぞれの温度、湿度及びWBGTを取得している。
ここで、図5(a)は、対策制御を実行する前の、住宅Hにおける空気の状態を示している。図5(a)では、一階部分のLDK11においてWBGTが20.1℃であるため、比較的熱中症の発生の危険性が低いことが分かる。その一方で、二階部分では、(第一洋室22以外の)主寝室21、第二洋室23及び二階廊下25のそれぞれにおいてWBGTが30℃を越えているため、熱中症の発生の危険性が高いことが分かる。
このような場合、対策システム1においては、制御部54により対策制御が実行される。具体的には、主寝室21においてWBGTが30℃(第一の閾値)以上であり(ステップS13でYES)、また室温が32.4℃なので30℃(第二の閾値)以上であるため(ステップS14でYES)、エアコン51の冷房運転が実行される(ステップS15)と共に、換気装置53の弱運転が実行される(ステップS16)。
ここで、図5(b)は、対策制御を実行する後の、住宅Hにおける空気の状態を示している。図5(b)では、二階部分で、主寝室21、第一洋室22、第二洋室23及び二階廊下25のそれぞれにおいて未だ室温が30℃を上回っているものの、それぞれ湿度が減少したことにより、WBGTが30℃を下回っている。こうして、図5(b)に示すように、対策システム1の対策制御により、二階部分全体において、熱中症の発生の危険性が減少したことが分かる。
以上の如く、本実施形態に係る対策システム1は、
2階以上の階層を有する住宅H(建物)の一階部分(一の階層)に設けられ、当該一階部分(一の階層)の複数の空間のうちLDK11(一部の空間)へ少なくとも除湿された調整空気を供給可能なエアコン51(空調装置)と、
前記住宅H(建物)の前記一の階層より上方の二階部分(他の階層)に設けられ、当該二階部分(他の階層)の複数の空間のうち主寝室21(一部の空間)へ前記調整空気を誘引して外部へ排出可能な換気装置53(排気装置)と、
前記他の階層の前記主寝室21(一部の空間)の温湿度を取得する温湿度センサ52(温湿度取得手段)と、
前記温湿度センサ52(温湿度取得手段)により取得された温湿度を用いてWBGT(暑さ指数)を算出すると共に、算出した前記WBGT(暑さ指数)に基づいて前記エアコン51(空調装置)及び前記換気装置53(排気装置)の運転を制御する制御部54と、
を具備するものである。
このような構成により、二階部分に一階部分のエアコン51の空調空気を誘引して当該二階部分全体のWBGTの低下を図ることができる。すなわち、二階部分に(さらに言えば、根熱中症の発生を抑制する対象の空間全てに対して)空調装置を設置する必要がないため、コストや消費電力を抑制しつつ、住宅H(建物)の一階部分(一の階層)全体で熱中症の発生を抑制することができる。
また、対策システム1においては、
前記制御部54は、
算出した前記WBGT(暑さ指数)が30℃(第一の閾値)以上であった場合に、
前記エアコン51(空調装置)及び前記換気装置53(排気装置)を共に運転させるものである。
このような構成により、例えば居住者等の人による判断ではなく、制御部54により熱中症の発生の危険性を有すると判断し得る場合に、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
また、対策システム1においては、
前記制御部54は、
前記温湿度センサ52(温湿度取得手段)により取得された温度を30℃(第二の閾値)と比較した結果に基づいて、前記調整空気の温度が異なるように前記エアコン51(空調装置)の運転を異ならせるものである。
このような構成により、室温に応じてエアコン51の運転を異ならせるため、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
また、対策システム1においては、
前記エアコン51(空調装置)の運転には、再熱除湿運転が含まれ、
前記制御部54は、
前記温湿度センサ52(温湿度取得手段)により取得された温度が前記30℃(第二の閾値)よりも低い場合に、
前記エアコン51(空調装置)の運転を前記再熱除湿運転とするものである。
このような構成により、室温の低下に伴ってエアコン51が停止するのを抑制し、当該エアコン51の運転を継続して実行させることができるため、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
また、対策システム1においては、
前記エアコン51(空調装置)の運転には、冷房運転が含まれ、
前記制御部54は、
前記温湿度センサ52(温湿度取得手段)により取得された温度が前記30℃(第二の閾値)以上である場合に、
前記エアコン51(空調装置)の運転を前記冷房運転とするものである。
このような構成により、室温が比較的高い場合にWBGTを速やかに低下させることができるため、熱中症の発生を効果的に抑制することができる。また、例えば主寝室21等の各空間にいる居住者に、冷えにより身体に負担がかかるのを抑制することができる。
また、対策システム1においては、
前記住宅H(建物)は、2階建ての住宅であるものである。
このような構成により、二階部分に一階部分のエアコン51の空調空気が誘引し易いため、2階建ての住宅Hでの熱中症の発生を効果的に抑制することができる。
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、建物は住宅に限定するものではなく、マンション、オフィスビル、商業施設、学校等であってもよい。また、建物を住宅とする場合、本実施形態のように2階建てに限定するものではなく、3階建て等でもよい。また、3階建て以上の建物である場合、エアコン51を設ける階層(フロア)は一階部分に限定するものではない。また、換気装置53を設ける階層は二階部分に限定するものではない。すなわち、エアコン51を設ける階層は、換気装置53を設ける階層よりも下位の階層であればよい。また、エアコン51を設ける階層及び換気装置53を設ける階層は、互いに上下に連続した階層ではなく、互いの間に他の階層が設けられてもよい。
また、本実施形態において、エアコン51は、一階部分の複数の空間のうち1つの空間(LDK11)に設けられるものとしたが、複数の空間に設けられてもよい。また、換気装置53は、二階部分の複数の空間のうち1つの空間(主寝室21)から空気を排出するものとしたが、複数の空間から空気を排出するものとしてもよい。また、エアコン51及び換気装置53が設けられる空間は、それぞれ任意の空間を採用することができる。
また、エアコン51の複数種類の運転には、冷房運転と、再熱除湿運転と、が含まれるとしたが、これに限定されず例えば弱冷房運転や、暖房運転等が含まれるものであってもよい。このように、エアコン51としては、一般的に市販されている任意の空調装置を採用することができる。
また、本実施形態においては、住宅Hの一階部分と二階部分とが階段30を介して空気が流れ易いように構成されていたが、例えば吹き抜け等を用いてもよい。
また、対策制御を実行する場合、各空間のドアDは開いた状態でもよいし、閉じた状態でもよい。また、対策制御を実行した場合であって、エアコン51及び換気装置53が運転を開始した場合、運転の停止は居住者の判断(操作)により行われる。なお、エアコン51及び換気装置53の運転の停止は、制御部54の制御により行われてもよい。この場合、エアコン51及び換気装置53の運転は、例えばWBGTの値が所定の閾値を下回った際に停止させることができる。
また、制御部の構成は本実施形態に係るものに限定しない。また例えば、WBGTの算出とエアコン51及び換気装置53の制御とは、同一の制御部ではなく、互いに異なる制御部により実行されてもよい。
1 熱中症対策システム
11 LDK
21 主寝室
51 エアコン
52 温湿度センサ
53 換気装置
54 制御部
H 住宅

Claims (6)

  1. 2階以上の階層を有する建物の一の階層に設けられ、当該一の階層の複数の空間のうち一部の空間へ少なくとも除湿された調整空気を供給可能な空調装置と、
    前記建物の前記一の階層より上方の他の階層に設けられ、当該他の階層の複数の空間のうち一部の空間へ前記調整空気を誘引して外部へ排出可能な排気装置と、
    前記他の階層の前記一部の空間の温湿度を取得する温湿度取得手段と、
    前記温湿度取得手段により取得された温湿度を用いて暑さ指数を算出すると共に、算出した前記暑さ指数に基づいて前記空調装置及び前記排気装置の運転を制御する制御部と、
    を具備する熱中症対策システム。
  2. 前記制御部は、
    算出した前記暑さ指数が第一の閾値以上であった場合に、
    前記空調装置及び前記排気装置を共に運転させる、
    請求項1に記載の熱中症対策システム。
  3. 前記制御部は、
    前記温湿度取得手段により取得された温度を第二の閾値と比較した結果に基づいて、前記調整空気の温度が異なるように前記空調装置の運転を異ならせる、
    請求項1又は請求項2に記載の熱中症対策システム。
  4. 前記空調装置の運転には、再熱除湿運転が含まれ、
    前記制御部は、
    前記温湿度取得手段により取得された温度が前記第二の閾値よりも低い場合に、
    前記空調装置の運転を前記再熱除湿運転とする、
    請求項3に記載の熱中症対策システム。
  5. 前記空調装置の運転には、冷房運転が含まれ、
    前記制御部は、
    前記温湿度取得手段により取得された温度が前記第二の閾値以上である場合に、
    前記空調装置の運転を前記冷房運転とする、
    請求項3または請求項4に記載の熱中症対策システム。
  6. 前記建物は、2階建ての住宅である、
    請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の熱中症対策システム。
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