JP2022155872A - 数値制御装置と数値制御装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、機械構造の振動特性などを精度よく演算できる数値制御装置と数値制御装置の制御方法を提供する。【解決手段】数値制御装置のCPUは、互いに異なる加工条件を設定する。前記加工条件毎に被削材の加工時の加工条件と機械構造のコンプライアンスとの関係で発生する振動の振動データを計測する(S7)。CPUは、計測した振動データ毎に周波数特性を解析する(S9)。CPUは、解析結果毎びびり振動が発生したびびり周波数を決定する(S11)。CPUは、決定したびびり周波数と加工条件毎に、びびり振動の位相差を演算する(S13)。CPUは、演算したびびり振動の位相差毎に、機械構造のコンプライアンスの位相を演算する(S15)。CPUは演算したコンプライアンスの位相と決定したびびり周波数毎に、減衰比と機械構造の共振周波数との関係である振動特性を導出する(S24)。【選択図】図2
Description
本発明は、数値制御装置と数値制御装置の制御方法に関する。
特許文献1は、安定限界線図を表示し、且つ、安定な回転速度領域を知らせる工作機械を開示する。工作機械は、振動センサにより被削材の加工に伴う振動を検出する。工作機械は、振動センサが検出した振動からびびり振動の発生を検知し、びびり振動周波数を検知する。工作機械は、びびり振動周波数と、主軸の回転速度に基づき、最適回転速度を算出する。工作機械は、加工が不安定になると予測される予め設定した位相情報に基づき、加工が不安定となる不安定回転速度を算出する。工作機械は、最適回転速度と不安定回転速度との間の安定限界線図を作成して表示部に表示する。
上記工作機械は、びびり振動周波数を、びびり振動の原因となり得る機械構造の共振周波数と同一であるとして不安定回転速度を算出するので、作成する安定限界線図等に誤差が生じる可能性があった。故に、工作機械は、機械の振動特性に基づく最適回転速度などを精度よく演算できないという問題点があった。
本発明の目的は、機械構造の振動特性などを精度よく演算できる数値制御装置と数値制御装置の制御方法を提供することである。
請求項1の数値制御装置は、被削材の加工時において、互いに異なる加工条件を設定する設定手段と、前記設定手段が設定した前記加工条件毎に、前記加工条件と機械構造のコンプライアンスとの関係で発生する振動の振動データを計測する振動データ計測手段と、前記振動データ計測手段が計測した複数の前記振動データ毎に周波数特性を解析する周波数特性解析手段と、前記周波数特性解析手段の複数の解析結果毎に、びびり振動が発生したびびり周波数を決定するびびり周波数決定手段と、前記びびり周波数決定手段が決定した前記びびり周波数と対応する前記加工条件毎に、前記びびり振動の位相差を演算する位相差演算手段と、前記位相差演算手段が演算した前記びびり振動の位相差毎に、前記機械構造のコンプライアンスの位相を演算する位相演算手段と、前記位相演算手段が演算した前記コンプライアンスの位相と前記びびり周波数決定手段が決定した前記びびり周波数毎に、前記機械構造の減衰比と、前記機械構造の共振周波数との関係である振動特性を導出する振動特性導出手段とを備えたことを特徴とする。数値制御装置は、コンプライアンスの位相とびびり周波数とに基づき、減衰比と共振周波数の関係、即ち振動特性を導出する。故に、数値制御装置は、工作機械の振動特性を精度よく演算できる。更に数値制御装置は、コンプライアンスの位相を演算することにより、コンプライアンスに複数の共振周波数が含まれる場合にも対応でき、正確な共振周波数と減衰比の関係を取得できる。故に、数値制御装置は、複数の振動データに基づき、複数の振動特性を精度よく演算することができる。
請求項2の数値制御装置は、前記振動特性導出手段が導出した前記振動特性に基づき、前記減衰比と、前記共振周波数を演算する第一演算手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、複数の振動データを取得することで、振動特性と、複数のびびり周波数と、複数のコンプライアンスの位相に基づき、減衰比と共振周波数を演算できる。
請求項3の数値制御装置は、前記第一演算手段が演算した前記減衰比及び前記共振周波数のうち、少なくとも前記共振周波数に基づき、前記びびり振動を抑制する為の安定回転速度を演算する安定回転速度演算手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、自励振動であるびびり振動を抑制する為の安定回転速度を特定できる。
請求項4の数値制御装置は、前記第一演算手段が演算した前記減衰比と前記共振周波数に基づき、伝達関数の相対的な形である相対伝達関数を演算する相対伝達関数演算手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、演算した減衰比と共振周波数に基づき、相対伝達関数を演算することにより、伝達関数の形をより正確に演算できる。
請求項5の数値制御装置は、前記第一演算手段が演算した前記共振周波数及び前記減衰比のうち、少なくとも前記共振周波数に基づき、強制振動を予測する強制振動予測手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、自励振動であるびびり振動だけでなく、少なくとも共振周波数に基づいて、強制振動を予測できる。故に、数値制御装置は、強制振動に対して好ましくない主軸の回転速度が分かる。
請求項6の数値制御装置は、前記相対伝達関数演算手段が演算した前記相対伝達関数に基づき、安定限界線図の相対的な形である相対安定限界線図を作成する相対安定限界線図作成手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、演算した相対伝達関数に基づき、相対安定限界線図を作成できるので、安定限界線図の横軸の回転速度と縦軸の臨界切込み量の安定限界の相対値を正確に取得できる。
請求項7の数値制御装置は、前記第一演算手段が演算した前記減衰比と前記共振周波数の少なくとも何れか一つを表示部に表示する表示手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、演算した減衰比と共振周波数をユーザに対して提示できる。
請求項8の数値制御装置は、前記安定回転速度演算手段が演算した前記安定回転速度を表示部に表示する表示手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、特定した安定回転速度をユーザに対して提示できる。
請求項9の数値制御装置は、前記相対伝達関数演算手段が演算した前記相対伝達関数を表示部に表示する表示手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、演算した相対伝達関数をユーザに対して提示できる。
請求項10の数値制御装置は、前記相対安定限界線図作成手段が作成した前記相対安定限界線図を表示部に表示する表示手段を備えてもよい。故に、数値制御装置は、作成した相対安定限界線図をユーザに対して提示できる。
請求項11の数値制御装置は、前記加工条件を取得する加工条件取得手段と、現在の加工における前記コンプライアンスの位相と、次回の加工における前記コンプライアンスの位相とのコンプライアンスの位相差を設定する位相差設定手段と、予め記憶部に記憶した前記減衰比又は前記第一演算手段が演算した前記減衰比と、前記加工条件取得手段が取得した前記現在の前記加工条件と、前記位相差設定手段が設定した前記コンプライアンスの位相差とに基づき、前記設定手段は、次回の加工条件を設定し、前記振動データ計測手段は、前記設定手段が設定した前記次回の加工条件に基づく加工の実行時の前記振動データを計測してもよい。故に、数値制御装置は、設定した次回の加工条件に基づく被削材の加工を実行することにより、振動データを計測する。これにより、数値制御装置は、減衰比と共振周波数をより正確に演算できる。
請求項12の数値制御装置の制御方法は、被削材の加工時において、互いに異なる加工条件を設定する設定ステップと、前記設定ステップが設定した前記加工条件毎に、前記加工条件と機械構造のコンプライアンスとの関係で発生する振動の振動データを計測する振動データ計測ステップと、前記振動データ計測ステップが計測した複数の前記振動データ毎に、周波数特性を解析する周波数特性解析ステップと、前記周波数特性解析ステップの複数の解析結果毎に、びびり振動が発生したびびり周波数を決定するびびり周波数決定ステップと、前記びびり周波数決定ステップが決定した前記びびり周波数と対応する前記加工条件毎に、前記びびり振動の位相差を演算する位相差演算ステップと、前記位相差演算ステップが演算した前記びびり振動の位相差毎に、前記機械構造のコンプライアンスの位相を演算する位相演算ステップと、前記位相演算ステップが演算した前記コンプライアンスの位相と、前記びびり周波数決定ステップが決定した前記びびり周波数毎に、前記機械構造の減衰比と、前記機械構造の共振周波数との関係である振動特性を導出する振動特性導出ステップとを備えたことを特徴とする。数値制御装置は上記ステップを実行することにより、請求項1に記載の数値制御装置と同じ効果を得ることができる。
本発明の実施形態を説明する。図1に示す数値制御装置29は、工作機械1の動作を制御することで、テーブル(図示略)上面に保持した被削材(図示略)の切削加工を行う。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は、夫々X軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
図1を参照し、工作機械1の構成を説明する。工作機械1は、例えばテーブル上面に保持した被削材に対し、Z軸方向に延びる主軸に装着した工具をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動して加工(例えばドリル加工、タップ加工、側面加工等)を行う縦型工作機械である。工作機械1は図示しない主軸機構、主軸移動機構、工具交換装置等を備える。主軸機構は主軸モータ51を備え、工具を装着した主軸を回転する。主軸移動機構は、Z軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54を更に備え、テーブル(図示略)上面に支持した被削材に対し相対的に主軸をXYZの各送り軸の方向に夫々移動する。工具交換装置はマガジンモータ55を備え、複数の工具を収納する工具マガジン(図示略)を駆動し、主軸に装着した工具を他の工具と交換する。加速度センサ41は、主軸機構に設け、工作機械1に発生した振動を検出する。
工作機械1の電気的構成を説明する。工作機械1は操作盤15、数値制御装置29、駆動回路51A~55A、主軸モータ51、Z軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、マガジンモータ55等を備える。操作盤15はカバー(図示略)に設ける。操作盤15は、入力部15Aと表示部15Bを備える。入力部15Aは各種動作の設定等を工作機械1に入力する為に、ユーザが使用する。表示部15Bは、加工プログラムの選択、加工プログラムの加工条件の設定等を行う為の各種設定画面を表示する。ユーザは表示部15Bを確認しながら入力部15Aを操作することで、工作機械1の各種動作、被削材の加工条件等を設定する。
数値制御装置29はCPU31、ROM32、RAM33、記憶装置39、インタフェイス35を備える。CPU31は工作機械1の制御を司る。ROM32は後述の振動特性取得処理を行うプログラムを記憶する。RAM33は種々のデータ等を一時的に記憶する。記憶装置39は、被削材の加工を行う加工プログラム等を記憶する。記憶装置39は、後述の振動特性取得処理で使用するパラメータとして質量係数m、減衰係数c、剛性係数k等を記憶する。また、記憶装置39は、後述する減衰比ζ、共振周波数fn等を記憶する。加速度センサ41は、主軸機構の振動データをCPU31に送信する。
入力部15A、表示部15Bはインタフェイス35を介してCPU31に接続する。CPU31はインタフェイス35を介して駆動回路51A~55Aに接続する。駆動回路51A~55Aは制御対象である主軸モータ51、Z軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、マガジンモータ55に接続する。主軸モータ51、Z軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、マガジンモータ55はエンコーダ51B~55Bを備える。
エンコーダ51B~55Bは主軸モータ51、Z軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、マガジンモータ55の駆動軸の回転位置等を検出し、検出結果を駆動回路51A~55Aに出力する。CPU31は駆動回路51Aによるエンコーダ51Bの回転位置等の検出結果に基づき主軸モータ51の回転位置を検出可能である。CPU31は駆動回路52A~54Aによるエンコーダ52B~54Bの回転位置等の検出結果に基づきZ軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54のX、Y、Z軸の座標値を検出可能である。X、Y、Z軸の座標値は、主軸の位置情報である。CPU31は、該位置情報等に基づき、各駆動回路51A~54Aを制御して被削材の加工を行う。
図2~図5を参照し、実施形態の振動特性取得処理について説明する。ユーザが操作盤15を操作して振動特性取得モードを設定すると、CPU31は、ROM32に記憶したプログラムを読み出して振動特性取得処理を実行する(図2参照)。振動特性取得処理を実行時、CPU31は、ユーザが加工条件を設定したか否か判断する(S1)。加工条件は、主軸の回転速度、工具の刃数、半径方向切り込み量、工具の直径等であり、記憶装置39に記憶する。
加工条件のうち、工具の回転速度は、加工プログラムで定義するが、別途ダイヤル(図示略)で調整することも可能である。例えば、一回目の加工では、回転速度n1は、4250[min-1]とする。半径方向切込み量は、予め記憶されてはいないので、ユーザにより入力する必要がある。本実施形態では、半径方向切込み量の入力タイミングは、加工の実行前に実行するが、後述する演算処理を実行する直前に入力されてもよい。また、工具の直径は予め記憶されているので入力しなくともよい。なお、工具の直径が記憶装置39に記憶されていない場合には、ユーザにより入力すればよい。
なお、後述するが、同一の加工プログラム内で複数のびびり振動を計測させるため、ユーザは、S1の処理において、他の異なる加工条件も設定してもよい。例えば回転速度n2として、4750[min-1]とする。なお、後述のS45~S51の処理のように、1回目の加工から2回目の加工条件を導いてもよい。つまり、CPU31は、2回目以降の加工条件を、事前に設定してもよいし、計算で導いてもよい。
CPU31は、記憶装置39に記憶した加工プログラムのうち、ユーザが選択した加工プログラムを受け付けたか否か判断する(S3)。加工プログラムを受け付けていないと判断した場合(S3:NO)、CPU31は、加工プログラムを受け付けるまで待機する。ユーザは、入力部15Aを操作して加工プログラムを入力し、決定ボタン(図示略)を押す。
ユーザの入力部15Aの操作により加工プログラムを受け付けると(S3:YES)、CPU31は、受け付けた加工プログラムの一行を解釈して被削材の加工を開始する(S5)。加工中、工作機械1が振動することがある。該振動は、加工条件、機械構造のコンプライアンス、被削材の関係で発生している。なお、機械構造とは、工作機械1の機械構造のみならず、工具、被削材、冶具等を含む概念である。
CPU31は、主軸機構に設けた加速度センサ41により加工中の振動データを計測する(S7)。CPU31は、フーリエ変換等を用いて取得した振動データの周波数特性を解析する(S9)。CPU31は、びびり振動が発生しているか否か判断する(S10)。なお、CPU31は、一例として、振動振幅が最も大きい周波数成分であって、回転周波数又は刃先通過周波数と同期しない成分が有る時、びびり振動が発生とみなす。びびり振動は、再生型、モードカップリング型等の振動である。
びびり振動が発生していないと判断した場合(S10:NO)、CPU31は、被削材の加工が完了したか否か判断する(S41)。加工が完了していないと判断した場合(S41:NO)、CPU31は、被削材の加工を継続し、S7~S10の処理を実行する。
びびり振動が発生していると判断した場合(S10:YES)、CPU31は、解析した振動の周波数特性から、びびり振動のびびり周波数fcを決定する(S11)。CPU31は、式(1-1)を用いて、びびり振動の位相差εを演算する(S13)。なお、CPU31は、式(1-1)に対して、決定したびびり周波数fc、加工プログラムで定義されている主軸の回転速度n、入力された工具の刃数N、びびり振動の位相差εを代入して演算する。主軸の回転速度nは加工時の実測値を用いてもよい。
次いで、CPU31は、式(1-2)を用いて、コンプライアンスの位相γを演算する(S15)。実施例で用いる式は、社本英二著、「技術解説>切削加工におけるびびり振動の発生機構と抑制、」電気製鋼第82巻2号、2011年、P143-P155に開示されている。式(1-2)は、コンプライアンスの位相γとびびり振動の位相差εの関係性を示す式である。CPU31は、式(1-2)に演算したびびり振動の位相差εを代入し、コンプライアンスの位相γについて解く。なお、式(1-2)はコンプライアンスの位相γとびびり振動の位相差εの関係性を示す式の一例であり、他の式を用いてもよい。例えば、工具の刃数、半径方向と接線方向の切削力の間の比である分力比、切削開始角度、切削終了角度を用いるとよい。
式(1-8)は、式(1-6)に式(1-7)を代入することで導出される。ここで、式(1-8)のびびり周波数fc、コンプライアンスの位相γは、S11、S15の処理で演算したので既知である。式(1-8)は、機械構造の減衰比ζと共振周波数fnの関係、即ち振動特性を示す。式(1-8)において、例えば減衰比ζと共振周波数fnの何れか一方が分かれば、他方を演算できる。後述する本実施形態では、減衰比ζと共振周波数fnを両方演算できる。
式(1-9)は、式(1-8)の右辺をゼロとするように式変形したものである。式(1-9)は、コンプライアンスの位相γ、びびり周波数fc、減衰比ζが既知なので、共振周波数fnに関する二次方程式とみなすことができる。
CPU31は、減衰比ζと共振周波数fnとの関係である振動特性、即ち式(1-8)~式(1-10)を導出する(S24)。CPU31は式(1-11)を用いて、減衰比ζと共振周波数fnとの関係である振動特性を導出する(S24)。式(1-11)は、式(1-8)を減衰比ζについて解いた関係式である。式(1-11)に、S11、S15の処理で取得したびびり周波数fc、コンプライアンスの位相γを代入し、減衰比ζと共振周波数fnとの関係である振動特性を導出する。なお、CPU31は、導出した振動特性を、主軸の回転速度等の加工条件と関連付けて記憶装置39に記憶する。
次いで、CPU31は、複数の振動特性を記憶しているか否かを判断する(S25)。複数の振動特性を記憶していないと判断した場合(S25:NO)、CPU31は、被削材の加工が完了したか否か判断する(S41)。被削材の加工が完了していないと判断した場合(S41:NO)、CPU31は、被削材の加工を継続し、S7~S10の処理を実行する。この場合、再度びびり振動が発生しなければ(S10:NO)、CPU31は、加工プログラムの完了まで被削材の加工を継続し、被削材の加工を完了する。
同一の加工プログラム内において、再度びびり振動が発生した場合(S10:YES)、CPU31は、S11~S15の処理を実行する。この場合には、S1の処理で二以上の加工条件が設定されている場合に、同一の加工プログラム内で、びびり周波数の異なるびびり振動が発生する可能性がある。びびり周波数の異なるびびり振動が発生した場合、CPU31は、式(1-11)を用いて、減衰比ζと共振周波数fnとの関係である振動特性を再び演算する(S24)。既に振動特性が記憶装置39に記憶されているので(S25:YES)、CPU31は、処理をS29に進める。
CPU31は、記憶している複数の振動特性のうち、二つの振動特性に基づき、減衰比ζと共振周波数fnを演算する(S29)。CPU31は、二つの振動特性(式(1-11)に得た値を代入したもの)について、減衰比ζと共振周波数fnを変数とした二元二次連立方程式を解く。これにより、CPU31は、減衰比ζ及び共振周波数fnを演算する。減衰比ζ及び共振周波数fnは、一例として一つ目のコンプライアンスの位相γが-134deg、びびり周波数fcが114Hz、二つ目のコンプライアンスの位相γが-177deg、びびり周波数fcが144Hzである場合、0.0128及び112.6Hzとなる(図5(a)参照)。
CPU31は、演算した減衰比ζと演算した共振周波数fnに基づき、相対伝達関数(図3参照)を演算する(S31)。ここで、相対伝達関数とは、横軸は周波数を示し、縦軸は数値が不明なコンプライアンスの絶対値(図3(a)参照)と、数値が正確なコンプライアンスの位相(図3(b)参照)を示している。つまり、演算した相対伝達関数は、縦軸のコンプライアンスの絶対値(大きさ)は不明であるが、位相については正確に値を示すことが出来る。CPU31は、2次遅れ系の伝達関数に、取得した減衰比ζと共振周波数fnを代入して演算する。図3(a)に示すように、コンプライアンスの共振周波数f1は、演算した共振周波数fnである112.6Hz付近でピークがある。図3(b)に示すように、コンプライアンスは、共振周波数fnに相当する112.6Hz付近で急峻に位相γが変化する。
CPU31は、演算した相対伝達関数に基づき、相対安定限界線図(図4(a))を描画可能なデータを作成する(S33)。相対安定限界線図とは、安定限界線図の臨界軸方向切込み量Apの相対的な値に対する形を言う。また、相対安定限界線図は、横軸の値が正確な値を示しており、縦軸数値が不明な安定限界線図の形をいう。図4(a)に示す相対安定限界線図は、縦軸が臨界軸方向切込み量Apを示し、横軸が主軸の回転速度を示している。曲線Thは、回転速度に対応する臨界軸方向切込み量Apの閾値を示している。つまり、曲線Thは、びびり振動が発生するか否かの閾値を示している。曲線Thよりも上の領域で加工を実行した場合はびびり振動が発生し、曲線Thよりも下の領域で加工を実行した場合はびびり振動が発生しない。曲線Thは、1100mm-1、1250mm-1、1650mm-1、2300mm-1、3300mm-1、6000mm-1にピークがある。なお、図4(b)は、主軸の回転速度毎のびびり周波数fcを示し、図4(c)は、主軸の回転速度毎のびびり振動の位相差εを示す。
CPU31は、主軸の安定回転速度を演算する(S35)。CPU31は、例えば相対安定限界線図(図4(a))の形から、主軸の安定回転速度を判断する。具体的には、描写可能なデータから、臨界軸方向切込み量Apが所定の閾値より大きい回転速度の範囲を決定する。図4(a)に示すように、CPU31が演算した主軸の安定回転速度の範囲は、例えば、2000~2200min-1、3000~3500min-1、5300~6000min-1である(図5(b)参照)。CPU31は、安定回転速度の範囲で主軸を回転した場合、びびり振動の発生を抑えつつ、臨界軸方向切込み量Apを大きく設定可能となる。なお、CPU31は、安定限界線図の概形を共振周波数fnから求めてもよい。また、CPU31は、減衰比ζ及び共振周波数fnから相対安定限界線図を求めてもよい。この場合、CPU31は、共振周波数fnのみから求めた場合に比して、縦軸の相対的な関係がより正確な安定限界線図の形を作成できる。
CPU31は、びびり振動の一例である強制振動を予測する(S37)。CPU31は、式(1-12)を用いて強制振動を予測する。ここで、k1は整数を示し、Nは工具の刃数を示す。工具の刃数に関する情報は、S3の処理において、記憶装置39に記憶している。例えば、演算した共振周波数fnが112.6Hz、工具の刃数を1刃とした場合、強制振動が大きい主軸の回転速度は、6756[min-1]、3378[min-1]、2252[min-1]と演算できる(図5(c)参照)。故に、ユーザは、強制振動が大きいと予想した上記回転速度を避けて加工条件を設定可能となる。
CPU31は、例えば、共振周波数fn(図5(a)参照)、減衰比ζ(図5(a)参照)、相対伝達関数(図3参照)、相対安定限界線図等(図4参照)、及び安定回転速度(図5(b)参照)、強制振動が大きい回転速度(図5(c)参照)、相対伝達関数の数式等を、表示部15Bに表示する(S39)。なお、CPU31は、表示部15Bの一画面に表示できない場合、切替表示してもよい。つまり、CPU31は、共振周波数fn、減衰比ζ、相対伝達関数、相対安定限界線図、主軸の安定回転速度、予測した強制振動が大きい回転速度の少なくとも何れか一つを表示部15Bに表示すればよい。
一方で、被削材の加工が完了したと判断した場合(S41:YES)、CPU31は、加工条件を変更して被削材の加工を行うか否かを判断する(S43)。なお、次回の加工を実行するか否かは、ユーザにより決定してもよいし、予め決定されていてもよい。なお、S1の処理で、加工条件が二以上設定され、既にS29~S39の処理が実行されている場合には、処理を終了してもよい。次の加工条件で加工すると判断した場合(S43:YES)、CPU31は、記憶装置39に記憶した減衰比ζを取得する(S45)。なお、CPU31は、2回目の加工における回転速度n2を求める場合は、例えば、記憶装置39に予め記憶した減衰比ζを用いる。なお、S45の処理では、三回目以降の回転速度を求める場合には、CPU31は、S29の処理で演算した減衰比ζを用いる。
CPU31は、現在の加工プログラムで定義されている主軸の回転速度を取得する(S47)。例えば、二回目の加工においては、回転速度n1を取得する。CPU31は、コンプライアンスの位相差Δγを設定する(S49)。コンプライアンスの位相差Δγは、ユーザにより予め設定してもよいし、予め定められた値を記憶装置39に記憶していてもよい。コンプライアンスの位相差Δγは、今回の切削から得たコンプライアンスの位相γから、次回の切削で変化するコンプライアンスの位相γの差を予測している。
CPU31は、次回の被削材の加工における主軸の回転速度n2を設定する(S51)。次回の加工における回転速度n2は、式(1-13)~式(1-15)を用いて演算する。この場合、次の加工では、コンプライアンスの位相γ2がγ1+Δγ、びびり周波数fcがびびり周波数fc2となるような回転速度n2を求める。なお、式(1-15)において、Nは工具の刃数を示す。CPU31は、式(1-13)~式(1-15)に対して、前回の加工時の回転速度n1、びびり振動のコンプライアンスの位相γ1、びびり周波数fc1等を代入する。これにより、CPU31は次の加工の回転速度を得る。
CPU31は、演算した主軸の回転速度n2で被削材の加工を実行する(S5)。主軸を回転速度n2で回転して被削材を切削することで、前回の加工に比べて、異なるびびり周波数fcのびびり振動が起きることが予測される。びびり振動が発生していないと判断した場合(S10:NO)、CPU31は、上記したように被削材の加工を継続する。一方、2回目以降の加工において、びびり振動が発生したと判断した場合(S10:YES)、CPU31は、S11~S15の処理を実行して、異なる回転速度でのびびり周波数fc、びびり振動の位相差ε、コンプライアンスの位相γを演算する。CPU31は、例えば回転速度n2の振動データに基づき、びびり周波数fc2、びびり振動の位相差ε2、コンプライアンスの位相γ2を演算する。
CPU31は、上記したように、式(1-11)を用いて振動特性を導出する(S24)。複数の振動特性を記憶していない場合(S25:NO)、CPU31は、処理をS41に進める。一方、複数の振動特性を記憶している場合には(S25:YES)、CPU31は、上記したように、任意の二つの振動特性の二元二次連立方程式を解くことで、減衰比ζと共振周波数fnについて演算を実行する(S29)。なお、S29の処理では、CPU31は、上記したように同一の加工プログラム内で得た複数の振動特性から演算する場合と、異なる複数の加工プログラムで得た複数の振動特性と、現在得た複数あるいは単一の振動特性の二元二次連立方程式を解く場合もある。CPU31は、演算した減衰比ζと共振周波数fnに基づき、S31~S39の処理を実行する。CPU31は、回転速度を変更した被削材の加工が終了したか否か判断する(S41)。
被削材の加工が終了していないと判断した場合(S41:NO)、CPU31は、処理をS7に戻して、被削材の加工を継続する。一方、被削材の加工が終了したと判断した場合(S41:YES)、CPU31は、次の加工条件で加工するか否か判断する(S43)。CPU31は、次の加工を行うと判断した場合(S43:YES)、CPU31は、処理をS45に進める。次の加工条件で加工しないと判断した場合(S43:NO)、CPU31は、処理を終了する。
なお、上記説明では、図3(a)に示すように、コンプライアンスに1つの共振周波数ωnが含まれる場合を説明したが、上記実施形態は、工作機械1の機械構造に二つの共振周波数が含まれる場合も適用可能である。以下、二つの共振周波数の演算について説明する。
例えば、CPU31は、複数回にわたりS10~S15の処理を実行し、例えば、6回のびびり振動を計測し(S10:YES)、夫々のびびり振動のびびり周波数を演算する(S11)。CPU31は、6個のびびり周波数の夫々について、コンプライアンスの位相を演算する(S15)。
この場合、CPU31は、コンプライアンスの位相に対して、後述する回帰分析を実行する。CPU31は、回帰分析した結果から、二つの共振周波数を演算される場合がある。ここで、演算した二つの共振周波数は、工作機械1の機械構造が有する二つの共振周波数と略等しい。故に、CPU31は、計6回のびびり振動の計測結果より、二つの共振周波数を演算できる。また、CPU31は、取得した共振周波数の何れかを、例えば、式(1-10)に代入することで、二つの共振周波数の何れかと減衰比ζとの関係式を示すことが可能である。
以上説明したように、振動特性取得処理では、CPU31は、互いに異なる加工条件を設定可能である。CPU31は、設定した加工条件に基づき実行する被削材の加工毎に振動データを計測する。CPU31は、計測した振動データ毎に、加工振動の振動データの周波数特性を解析する。CPU31は、解析した複数の周波数特性の解析結果毎に、びびり周波数fcを決定する。CPU31は、各々の振動データに対応するびびり周波数fcと加工条件毎に、びびり振動の位相差εを演算する。CPU31は、複数のびびり振動の位相差毎に、コンプライアンスの位相γを演算する。CPU31は、減衰比ζと共振周波数fnとの関係である複数の振動特性、つまり複数の式(1-11)を導出する。
CPU31は、複数のびびり周波数fc1、fc2と、複数のコンプライアンスの位相γ1、γ2に基づき、減衰比ζと共振周波数fnの関係である複数の振動特性を導出する。CPU31は、複数の加工条件で被削材の加工を実行することで、複数のびびり周波数fc、複数のコンプライアンスの位相γに基づき、減衰比ζと共振周波数fnとの関係である複数の振動特性を導出できる。更に、CPU31は、コンプライアンスの位相γを演算することにより、コンプライアンスに複数の共振周波数が含まれる場合にも対応でき、正確な共振周波数fnと減衰比ζの関係を取得できる。
CPU31は、導出した複数の振動特性に基づき、減衰比ζと、共振周波数fnを演算する。故に、CPU31は、複数の振動データを取得することで、振動特性と、複数のびびり周波数fc1、fc2と、複数のコンプライアンスの位相γに基づき、減衰比ζと共振周波数fnを演算できる。
CPU31は、演算した減衰比ζ及び共振周波数fnのうち、少なくとも共振周波数fnに基づき、びびり振動を抑制する為の安定回転速度を特定する。故に、CPU31は、自励振動であるびびり振動を抑制する為の安定回転速度を特定できる。
CPU31は、演算した減衰比ζと演算した共振周波数fnに基づき、伝達関数の相対的な形である相対伝達関数を演算する。故に、CPU31は、演算した減衰比ζと演算した共振周波数fnに基づき、相対伝達関数を演算することにより、伝達関数の形を正確に提示できる。即ち、CPU31は相対伝達関数を正確に演算できる。
CPU31は、演算した減衰比ζ及び共振周波数fnのうち、少なくとも共振周波数fnに基づき、強制振動を予測する。故に、CPU31は、自励振動であるびびり振動だけでなく、共振周波数fn及び減衰比ζのうち少なくとも共振周波数fnに基づいて、強制振動を予測できる。故に、CPU31は、強制振動に対して好ましくない主軸の回転速度が分かる。故に、CPU31は、自励振動であるびびり振動だけでなく、共振周波数fn及び減衰比ζのうち少なくとも共振周波数fnに基づいて、強制振動が大きい/小さい回転速度を予測できる。
CPU31は、演算した相対伝達関数に基づき、安定限界線図の相対的な形である相対安定限界線図を作成する。故に、CPU31は、演算した相対伝達関数に基づき安定限界線図の概形を作成できるので、安定限界線図の横軸の回転速度と縦軸の臨界軸方向切込み量Apの安定限界の相対値を正確に取得できる。故に、CPU31は、安定限界線図の概形と、横軸との関係性を正確に取得できる。
CPU31は、演算した減衰比ζと共振周波数fnの少なくとも何れか一つを表示部15Bに表示する。故に、CPU31は、減衰比ζと共振周波数fnをユーザに対して提示できる。
CPU31は、特定した安定回転速度を表示部15Bに表示する。故に、CPU31は、特定した安定回転速度をユーザに対して提示できる。
CPU31は、演算した相対伝達関数を表示部15Bに表示する。故に、CPU31は、演算した相対伝達関数をユーザに対して提示できる。
CPU31は、作成した相対安定限界線図を表示部15Bに表示する。故に、CPU31は、作成した相対安定限界線図をユーザに対して提示できる。
CPU31は、被削材を加工する現在の加工条件を取得する。CPU31は、予め記憶装置39に記憶した減衰比ζ又は演算した減衰比ζを取得する。CPU31は、現在の加工におけるコンプライアンスの位相γ1と、次回の加工におけるコンプライアンスの位相γ2とのコンプライアンスの位相差Δγを設定する。CPU31は、取得した減衰比ζと、設定した加工条件と、設定したコンプライアンスの位相差Δγに基づき、次回の加工の加工条件を設定する。CPU31は、設定した次回の加工条件に基づく被削材の加工を実行時の振動データを計測する。CPU31は、設定した次回の加工条件に基づく被削材の加工を実行することにより、複数の振動データを計測する(S7)。CPU31は、計測した複数の振動データから複数のびびり振動を解析し(S11~S15)、振動特性を演算する(S24)。これにより、CPU31は、減衰比ζと共振周波数fnをより正確に演算できる。
本発明は上記実施形態に限らない。上記実施形態の工作機械1は、主軸がZ軸方向に延びる縦型工作機械であるが、本発明は主軸が水平方向に延びる横型工作機械にも適用できる。また、上記実施形態は、旋盤等への適用も可能であり、工作機械であれば何れの種類でも適用が可能である。上記実施形態の工作機械1は、被削材をテーブル上面に支持して加工を行うものであるが、例えば、テーブルの代わりに、180°旋回可能なロータリーテーブルであってもよい。CPU31は、数値制御装置29に設けられたが、これに限らず、別途CPUを設けて振動特性取得処理を実行する機能を実装してもよい。
振動データは、主軸機構に設けた加速度センサ41を用いて取得したが、音、サーボのフィードバック情報、速度センサ、変位センサ、加工後のワークの表面の凹凸(粗さ)などと時間情報を組み合わせたものを、振動データとして計測してもよい。加速度センサ41は、主軸機構ではなく工作機械1の振動を計測可能な他の箇所に設けてもよい。この場合、加速度センサ41は、例えば、送り機構に設けられ、送り機構の振動を検出してもよい。
振動特性取得処理は、必ずしもユーザが操作して実行する必要はなく、所定の周期で自動的に実行されてもよい。また、振動特性の演算は、加工プログラムが実行され、被削材の加工中に実行されてもよい。また、安定回転速度が演算されたら加工中に安定回転速度へ自動に変化させてもよい。また、刃数は、ユーザによる入力したものではなく、振動分析結果から推定するなどの公知の推定法を活用してもよい。
上記実施形態では、記憶装置39に減衰比ζを記憶している場合を想定し、共振周波数fnを演算したが、これに限らない。例えば、記憶装置39が共振周波数fnを記憶している場合、CPU31は、共振周波数fnを読み出して、取得した振動特性に共振周波数fnを代入することで、減衰比ζを演算してもよい。上記実施形態では、振動特性の演算は、被削材の加工の完了前に終了したがこれに限らない。例えば、S11~S39の処理の間で加工の完了が判断され、加工が完了した後に演算が終了するような場合においても、上記実施形態の演算方法を適用できる。上記実施形態では、相対安定限界線図の説明において、臨界軸方向切込み量Apが安定限界となる場合を説明したが、フェイスミリング等の加工では、工具の径方向に振動しやすい構造となる。この場合、臨界半径方向切込み量が安定限界となる場合もある。
上記実施形態では複数回の試行結果に基づき式(1-11)を使用して、共振周波数fnと減衰比ζを演算したがこれに限らない。CPU31は、減衰比ζを使用せずに共振周波数fnを求めることも可能である。以下の説明では、上記実施形態と同様の箇所は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上被削材の加工を二回行った場合を用いて説明する。
以下の式(2-6)は、式(2-5)をfnについての二次方程式として、共振周波数fnについて解くことで求める。ここで、二次方程式の解は、二つ得ることができるが、±で演算される項のうち+の項を含む解を有効とする。ここで、式(2-6)に対して、コンプライアンスの位相γ1、γ2、びびり周波数fc1、fc2を代入することで、工作機械1の共振周波数fnを求めることができる。故に、CPU31は、式(2-6)を使用することで、減衰比ζを用いることなく共振周波数fnを演算できる。
上記実施形態では、CPU31は、式(1-11)を使用して、2元二次連立方程式を解くなどして減衰比ζ及び共振周波数fnを演算したがこれに限らない。CPU31は、回帰分析を用いて共振周波数fnを演算してもよい。以下、図6(b)を参照して回帰分析を用いて、共振周波数fnと減衰比ζを特定する方法を説明する。
図6(a)では、例えば七回の加工においてびびり振動が発生した場合の演算結果を示している。図6(a)では、回転速度n1~n7での加工に対応するびびり周波数fc1~fc7、コンプライアンスの位相γ1~γ7の演算結果を示している。一例として、3回目の加工における回転速度n3は6350min-1であり、びびり周波数fc3は1062.7Hz、コンプライアンスの位相γ3は170.807degである。
CPU31は、びびり周波数fc1~fc7とコンプライアンスの位相γ1~γ7を、縦軸がコンプライアンスの位相γ、横軸がびびり周波数fcの図にプロットする(図6(b)参照)。CPU31は、プロットした点に対して、回帰分析を実行して、曲線cal1を描画する。CPU31は、描画した曲線cal1により、最適化した共振周波数fnが856Hzであり、最適化した減衰比ζが0.08であると判断する。
回帰分析では、振動特性の関係式を、テーラー展開等により多項式で表現し、重回帰分析する。また別の回帰分析の手法では、減衰比ζ及び共振周波数fnを変数として、最急降下法を用いてもよい。
また、回帰分析を使わずとも、CPU31は、共振周波数fnと減衰比ζをある範囲で限定し、共振周波数fnと減衰比ζを変化させながら網羅的に曲線を描いてもよい。CPU31は、その中でプロットした点からの距離が一番近くなるものを選択する。つまり、CPU31は、夫々の手法を用いて得られた曲線から減衰比ζと共振周波数fnを演算計算してもよいし、描画結果から読み取ってもよい。
CPU31は、ヒストグラムを利用することで、共振周波数fnと減衰比ζの演算を実行してもよい。また、CPU31は、式(1-9)に対して、例えば一回目の計測データ、二回目の計測データを夫々代入した二次方程式を二つ演算してもよい。この場合、CPU31は、共振周波数fnと減衰比ζを2変数とした式が二つあるので、共振周波数fnと減衰比ζの演算が可能である。CPU31は、適宜、演算した振動特性を組み合わせることで(例えば、図6(a)における一回目と三回目、一回目と七回目)、二元二次連立方程式を解けばよい。CPU31は、考えうる全ての組み合わせで減衰比ζと、共振周波数fnを演算し、夫々平均値、中央値等を真値としてもよい。
上記実施形態では、強制振動の予測を、式(1-12)により演算したがこれに限らない。CPU31は、減衰比ζと共振周波数fnに基づき強制振動を予測してもよい。この場合、CPU31は、他の回転速度で発生した強制振動に対して何倍増大するかという関係も予想できる。
更に、例えば、CPU31は、送り速度、回転速度、工具の刃数、工具の直径、軸方向切込み量、半径方向切込み量の加工条件が既知の場合、以下の方法を用いて強制振動の予測可能である。CPU31は、加工条件のうち、工具の直径、工具の刃数、工具のねじれ角、主軸が延びる軸方向への切込み量である軸方向切込み量、軸方向に直角に延びる径方向への切込み量である半径方向切込み量、半径方向と接線方向の切削力Fの間の比である分力比を取得する。ただし、ここでの切削力Fは、刃先の丸みによって被削材を押しならす際に発生するエッジフォース(押しならし力)を差し引いた力であることが好ましい。例えば、図7において、加工条件は、切削方向がダウンカット、送り速度が240mm/min、回転速度が1000min-1、工具の刃数が4枚、工具の直径が10mm、軸方向切込み量が5mm、半径方向切込み量が2mmとなる。また、図8において、加工条件は、切削方向がダウンカット、送り速度が240mm/min、回転速度が1687min-1、工具の刃数が4枚、工具の直径が10mm、軸方向切込みが5mm、半径方向切込み量が2mmである。
図7(a)、図8(a)に示すように、CPU31は、時間領域の切削力Fx1、Fx2を得る。切削力Fx1、Fx2は、X軸方向への力である。図7(b)、図8(b)に示すように、CPU31は、切削力Fx1、Fx2を、夫々、例えば高速フーリエ変換することにより切削力Fx1、Fx2のフーリエ変換結果Fx1'、 Fx2'を得る。CPU31は、切削力Fx1、Fx2のフーリエ変換結果Fx1'、Fx2'に相対伝達関数(図3参照)を夫々乗ずることで、図7(c)、図8(c)に示す振動変位のフーリエ変換結果X1、X2を取得する。図7(c)、図8(c)の振動変位のフーリエ変換結果は、次回加工した場合を予測した変位を示しており、80Hz、110Hz付近で夫々ピークを観測できる。図7(c)は、共振周波数fnと切削条件が一致しない場合の解析結果であり、振動変位のフーリエ変換結果X1は、ピークが小さいものの、80Hzで強制振動が起きる。一方、図8(c)は共振周波数fnと切削条件が一致した場合の解析結果であり、振動変位のフーリエ変換結果X2は、110Hz付近でピークが大きく、強制振動が大きいと判断できる。従って、CPU31は、X軸方向への強制振動を予測できる。故に、CPU31は、自励振動であるびびり振動だけでなく、相対伝達関数と、加工条件に基づいて、強制振動を予測できる。
S7の処理を実行するCPU31は本発明の振動データ計測手段の一例である。S9の処理を実行するCPU31は本発明の周波数特性解析手段の一例である。S11の処理を実行するCPU31は本発明のびびり周波数決定手段の一例である。S24の処理を実行するCPU31は本発明の振動特性導出手段の一例である。S26の処理を実行するCPU31は本発明の第一取得手段の一例である。S28の処理を実行するCPU31は本発明の共振周波数演算手段の一例である。S31の処理を実行するCPU31は本発明の相対伝達関数演算手段の一例である。S33の処理を実行するCPU31は本発明の相対安定限界線図作成手段の一例である。S37の処理を実行するCPU31は本発明の強制振動予測手段の一例である。S47の処理を実行するCPU31は本発明の加工条件取得手段の一例である。S49の処理を実行するCPU31は本発明の位相差設定手段の一例である。S51の処理を実行するCPU31は本発明の設定手段の一例である。
1 :工作機械
29 :数値制御装置
31 :CPU
32 :ROM
33 :RAM
39 :記憶装置
fc、fc1、fc2、fc3、fc4、fc5、fc6、fc7 :びびり周波数
ε、ε1、ε2、ε3、ε4、ε5、ε6、ε7 :位相差
γ、γ1、γ2、γ3、γ4、γ5、γ6、γ7 :コンプライアンスの位相
fn :共振周波数
Δγ :コンプライアンスの位相差
29 :数値制御装置
31 :CPU
32 :ROM
33 :RAM
39 :記憶装置
fc、fc1、fc2、fc3、fc4、fc5、fc6、fc7 :びびり周波数
ε、ε1、ε2、ε3、ε4、ε5、ε6、ε7 :位相差
γ、γ1、γ2、γ3、γ4、γ5、γ6、γ7 :コンプライアンスの位相
fn :共振周波数
Δγ :コンプライアンスの位相差
Claims (12)
- 被削材の加工時において、互いに異なる加工条件を設定する設定手段と、
前記設定手段が設定した前記加工条件毎に、前記加工条件と機械構造のコンプライアンスとの関係で発生する振動の振動データを計測する振動データ計測手段と、
前記振動データ計測手段が計測した複数の前記振動データ毎に、周波数特性を解析する周波数特性解析手段と、
前記周波数特性解析手段の複数の解析結果毎に、びびり振動が発生したびびり周波数を決定するびびり周波数決定手段と、
前記びびり周波数決定手段が決定した前記びびり周波数と対応する前記加工条件毎に、前記びびり振動の位相差を演算する位相差演算手段と、
前記位相差演算手段が演算した前記びびり振動の位相差毎に、前記機械構造のコンプライアンスの位相を演算する位相演算手段と、
前記位相演算手段が演算した前記コンプライアンスの位相と前記びびり周波数決定手段が決定した前記びびり周波数毎に、前記機械構造の減衰比と、前記機械構造の共振周波数との関係である振動特性を導出する振動特性導出手段とを備えたことを特徴とする数値制御装置。 - 前記振動特性導出手段が導出した前記振動特性に基づき、前記減衰比と、前記共振周波数を演算する第一演算手段
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。 - 前記第一演算手段が演算した前記減衰比及び前記共振周波数のうち、少なくとも前記共振周波数に基づき、前記びびり振動を抑制する為の安定回転速度を演算する安定回転速度演算手段
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。 - 前記第一演算手段が演算した前記減衰比と前記共振周波数に基づき、伝達関数の相対的な形である相対伝達関数を演算する相対伝達関数演算手段
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。 - 前記第一演算手段が演算した前記共振周波数及び前記減衰比のうち、少なくとも前記共振周波数に基づき、強制振動を予測する強制振動予測手段
を備えたことを特徴とする請求項2の何れか一つに記載の数値制御装置。 - 前記相対伝達関数演算手段が演算した前記相対伝達関数に基づき、安定限界線図の相対的な形である相対安定限界線図を作成する相対安定限界線図作成手段
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。 - 前記第一演算手段が演算した前記減衰比と前記共振周波数の少なくとも何れか一つを表示部に表示する表示手段
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。 - 前記安定回転速度演算手段が演算した前記安定回転速度を表示部に表示する表示手段
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の数値制御装置。 - 前記相対伝達関数演算手段が演算した前記相対伝達関数を表示部に表示する表示手段
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。 - 前記相対安定限界線図作成手段が作成した前記相対安定限界線図を表示部に表示する表示手段
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の数値制御装置。 - 前記加工条件を取得する加工条件取得手段と、
現在の加工における前記コンプライアンスの位相と、次回の加工における前記コンプライアンスの位相とのコンプライアンスの位相差を設定する位相差設定手段と、
予め記憶部に記憶した前記減衰比又は前記第一演算手段が演算した前記減衰比と、前記加工条件取得手段が取得した前記現在の前記加工条件と、前記位相差設定手段が設定した前記コンプライアンスの位相差とに基づき、前記設定手段は、次回の加工条件を設定し、
前記振動データ計測手段は、前記設定手段が設定した前記次回の加工条件に基づく加工の実行時の前記振動データを計測する
ことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。 - 被削材の加工時において、互いに異なる加工条件を設定する設定ステップと、
前記設定ステップが設定した前記加工条件毎に、前記加工条件と機械構造のコンプライアンスとの関係で発生する振動の振動データを計測する振動データ計測ステップと、
前記振動データ計測ステップが計測した複数の前記振動データ毎に、周波数特性を解析する周波数特性解析ステップと、
前記周波数特性解析ステップの複数の解析結果毎に、びびり振動が発生したびびり周波数を決定するびびり周波数決定ステップと、
前記びびり周波数決定ステップが決定した前記びびり周波数と対応する前記加工条件毎に、前記びびり振動の位相差を演算する位相差演算ステップと、
前記位相差演算ステップが演算した前記びびり振動の位相差毎に、前記機械構造のコンプライアンスの位相を演算する位相演算ステップと、
前記位相演算ステップが演算した前記コンプライアンスの位相と前記びびり周波数決定ステップが決定した前記びびり周波数毎に、前記機械構造の減衰比と、前記機械構造の共振周波数との関係である振動特性を導出する振動特性導出ステップとを備えたことを特徴とする数値制御装置の制御方法。
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JP2021059307A JP2022155872A (ja) | 2021-03-31 | 2021-03-31 | 数値制御装置と数値制御装置の制御方法 |
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