JP2022155414A - 密封型転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】低トルク性と高い耐水性、および防錆性を両立できる密封型転がり軸受を提供する。【解決手段】ハブベアリング1は、軸受空間9を密封し、固定側部材12に固定され、回転側部材15に摺接するシール部材13を備え、シール部材13は回転側部材15に摺接するシールリップを有し、シールリップの摺接面、および該シールリップが摺接する回転側部材15の摺接面の少なくとも一方の面にグリースが塗布されており、グリースは、40℃における動粘度が6mm2/s~45mm2/sの基油と、増ちょう剤と、防錆剤と含み、JIS K 2220に準拠して測定される混和ちょう度が220~280である。【選択図】図1

Description

本発明は、シール部材を備えた密封型転がり軸受に関し、特に、ハブベアリングなどの車軸を支持する密封型転がり軸受に関する。
一般に、転がり軸受の内部には、潤滑用のグリース組成物が封入されている。グリース組成物が封入された軸受は、長寿命で外部の潤滑ユニットなどが不要で、かつ、安価であるため、自動車や産業用機器などの汎用用途によく利用される。特に、高いシール性が要求される場合には、軌道輪などの相手部材の摺動面に、シール部材のシールリップを接触させて軸受空間を密封する接触型の密封型転がり軸受が使用されている。
例えば、特許文献1には、密封型転がり軸受として、所定の組成からなるグリース組成物が封入されたハブユニット軸受が記載されている。このグリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、3種の防錆剤と、摩耗防止剤とを含むことで、耐水性などに優れるとされている。
ここで、軸受からのグリース漏れは、外部の機械部品を汚損させるおそれがある。また、外部からの水などの異物混入は、軸受の耐久性(耐摩耗性や軸受寿命)を著しく低下させるおそれがある。そのため、密封型転がり軸受においてシール性の確保は重要である。一方で、省エネルギーや省資源の観点から、シールリップの摺動には低トルク性も求められる。
従来、シールリップの摺動抵抗を低く抑えるとともに、シールリップにおけるシール性を確保するため、シールリップまたはその相手部材にグリースを塗布する技術が知られている。例えば、特許文献2には、シールリップの先端部の片側面で、使用時にハブ輪の表面と摺接する部分にグリースが予め塗布された転がり軸受が記載されている。また、特許文献3には、シールリップが摺接する相手部材の表面に、グリースが予め塗布された転がり軸受が記載されている。
特許第5110843号公報 特許第4475055号公報 特許第4997532号公報
上記特許文献2では、シール部材の形状(シールリップの寸法など)を検討することで、シールリップに塗布されたグリースが事前に剥がれてしまうことを防止している。これにより、摩擦抵抗の増大とシール不良の低減を図っている。しかし、シールリップに予め塗布されるグリース自体の摩擦抵抗やその他の特性などは考慮されていない。また、上記特許文献3では、グリースの基油の動粘度を規定することで回転トルクの低減を図っているが、基油の動粘度を規定するだけでは、シール性の確保と回転トルクの低減の両立を図ることは困難であると考えられる。また、自動車電装補機に用いられる転がり軸受やハブベアリングなどは、雨水や道路上の水などが軸受内に侵入しやすいため、水の侵入や発錆を抑えることが重要になる。しかし、上記特許文献2や特許文献3で塗布されるグリースは、このような特性について何ら検討されていない。
また従来、上記特許文献1のように、軸受の内部に封入されるグリース組成物については種々のグリース組成物が検討されているが、シールリップやその相手部材に塗布されるグリースについてはほとんど検討されていない。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、シールリップやその相手部材に塗布されるグリースを改良することにより、低トルク性と高い耐水性、および防錆性を両立できる密封型転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の密封型転がり軸受は、軸受空間を密封し、固定側部材に固定され、回転側部材に摺接するシール部材を備える密封型転がり軸受であって、上記シール部材は上記回転側部材に摺接するシールリップを有し、上記密封型転がり軸受において、上記シールリップの摺接面、および該シールリップが摺接する上記回転側部材の摺接面の少なくとも一方の面にグリースが塗布されており、上記グリースは、40℃における動粘度が6mm/s~45mm/sの基油と、増ちょう剤と、防錆剤とを含み、JIS K 2220に準拠して測定される混和ちょう度が220~280であることを特徴とする。
上記増ちょう剤が、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物であることを特徴とする。
上記基油が、合成炭化水素油のみからなるか、または、上記合成炭化水素油とエステル油との混合油であることを特徴とする。
上記防錆剤が、エステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする。
上記グリースは、上記防錆剤としてエステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤を含み、上記基油および上記増ちょう剤の合計量に対して上記防錆剤を0.5質量%以上1.5質量%未満含むことを特徴とする。
上記シール部材は、ニトリルゴムで形成され、上記シールリップとして、上記軸受空間の内方側から順に、第1のシールリップと、第2のシールリップと、第3のシールリップとを有し、これらシールリップの上記摺接面に上記グリースが塗布されていることを特徴とする。
上記密封型転がり軸受が車軸を回転可能に支持する軸受であることを特徴とする。
本発明の密封型転がり軸受は、固定側部材に固定され、回転側部材に摺接するシール部材を備え、シールリップの摺接面および回転側部材の摺接面の少なくとも一方の面にグリースが塗布されており、そのグリースは、40℃における動粘度が6mm/s~45mm/sの基油と、増ちょう剤と、防錆剤とを含み、JIS K 2220に準拠して測定される混和ちょう度が220~280であるので、シールリップの摺接面や回転側部材の摺接面に塗布された場合において、チャンネリング性を確保し低トルクになり、かつ、高い耐水性および防錆性を得ることができる。
上記増ちょう剤が、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物であるので、低トルク化に一層寄与する。
上記グリースは、防錆剤としてエステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤を含み、グリース全体に対して防錆剤を0.5質量%以上1.5質量%未満含むので、優れた防錆性を発揮させるとともに、防錆剤の含有量を抑えることで、水との接触時でもグリースの形状を保持しやすくなり、耐水性を向上できる。
上記シール部材は、ニトリルゴムで形成され、シールリップとして、軸受空間の内方側から順に3つのシールリップを有し、これらシールリップの摺接面にグリースが塗布されているので、低トルク性を確保しつつ、シール性を一層向上できる。
上記密封型転がり軸受が車軸を回転可能に支持する軸受であるので、ハブベアリングなどの車軸用軸受の高機能(低燃費)化に貢献することができる。
本発明の密封型転がり軸受の一例を示す縦断面図である。 図1のインボード側の軸受密封装置を示す拡大断面図である。 図1のアウトボード側の軸受密封装置を示す拡大断面図である。 本発明の密封型転がり軸受の他の例を示す縦断面図である。 図4の密封型転がり軸受の拡大断面図である。 グリースの作製方法を示す概略図である。
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、本発明の密封型転がり軸受の一例であるハブベアリングを示す縦断面図である。図1に示すハブベアリング1は、車軸を回転可能に支持する駆動輪側の車軸用軸受である。
図1に示すように、ハブベアリング1は、外周に車体(図示省略)に取り付けられる車体取付フランジ2bを一体に有し、内周に複列の外側軌道面2a、2aが形成された外方部材2と、一端部に車輪(図示省略)が取り付けられる車輪取付フランジ4bを一体に有し、外周に上記複列の外側軌道面2a、2aに対向する一方の内側軌道面4a、および該内側軌道面4aから軸方向に延びる円筒状の小径段部4cが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション6が形成されたハブ輪4と、小径段部4cに圧入され、外周に他方の内側軌道面5aが形成された内輪5とを備えている。
複列の外側軌道面2a、2aと、これらに対向する内側軌道面4a、5a間には複列の転動体(ボール)7が保持器8によって転動自在に収容されている。また、ハブ輪4と内輪5とからなり、回転側部材となる内方部材3と、固定側部材となる外方部材2との間に形成される環状空間には軸受密封装置11、16がそれぞれ装着され、軸受空間9に封入されたグリース組成物の漏洩と、外部から雨水やダストなどが軸受空間9に侵入するのを防止している。これらの軸受密封装置11、16のうち外方部材2と内輪5間に装着されたインボード側(図中右側)の軸受密封装置11について、図2を用いて説明する。
図2に示すように、軸受密封装置11は、外方部材2に内嵌され、断面L字状に形成された芯金12と、この芯金12に一体に加硫接着されたシール部材13とからなるシールリング14と、内輪5に外嵌され、同じく断面L字状に形成されたスリンガ15とを備えている。このスリンガ15およびシールリング14の芯金12は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系など)、または、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系など)をプレス加工にて形成されている。
シール部材13の材質には、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどが用いられる。図2において、シール部材13は、軸受空間の内方側から順に、内側、中間、外側の3本のシールリップ13a、13b、13cを有し、外側シールリップ13cの先端縁をスリンガ15の立板部15bの内側面に摺接させ、残りの中間シールリップ13bおよび内側シールリップ13aの先端縁を、スリンガ15の円筒部15aに摺接させている。この構成において、芯金12は固定側部材に相当し、スリンガ15は回転側部材に相当する。
図2の構成では、シール部材のシールリップの摺接面にグリースが塗布されている。具体的には、図2に示すように、スリンガ15に対して摺接するシールリップ13a、13b、13cの摺接面にグリースGが塗布されている。この場合、グリースGは、少なくともシールリップの摺接面に塗布されていればよく、シールリップの全体に塗布されていてもよい。本発明では、グリースGは、40℃における動粘度が6mm/s~45mm/sの基油と、増ちょう剤と、防錆剤とを含み、混和ちょう度が220~280であることを特徴としている。以下には、このグリースについて説明する。
グリースに用いる基油は、40℃における動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度、以下同じ)が6mm/s~45mm/sであり、通常、グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリ-α-オレフィン(PAO)油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、ポリフェニル油、合成ナフテン油、ポリブテン油などの合成炭化水素油(非極性油)、エステル油、エーテル油、シリコーン油、フッ素油などが挙げられる。これらの基油は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記の中でも、基油が合成炭化水素油およびエステル油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらに、基油が合成炭化水素油のみからなるか、または、合成炭化水素油とエステル油との混合油であることがより好ましい。該混合油の場合、合成炭化水素油が基油(混合油)全体の60質量%以上であることが好ましく、65質量%~90質量%であることがより好ましい。
合成炭化水素油であるPAO油は、α-オレフィンまたは異性化されたα-オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α-オレフィンの具体例としては、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラドコセンなどが挙げられ、通常はこれらの混合物が使用される。
エステル油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペートなどのジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどの芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトールエステル油などのポリオールエステル油、炭酸エステル油、りん酸エステル油などが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールエステル油が好ましい。
グリースに用いる基油の40℃における動粘度は、低トルク化の観点から、6mm/s~31mm/sが好ましく、6mm/s~20mm/sがより好ましく、9mm/s~17mm/sがさらに好ましい。
また、グリースに用いる増ちょう剤は、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、リチウム石けんなどが挙げられ、複合金属石けんとしては、複合リチウム石けんなどが挙げられる。これらの中でも、ジウレア化合物を使用することが好ましい。
ジウレア化合物は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られる。ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。また、モノアミン成分は、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミンおよび芳香族モノアミンを用いることができる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。脂環族モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。芳香族モノアミンとしては、アニリン、p-トルイジンなどが挙げられる。
これらのジウレア化合物の中でも、低トルク性により優れることから、ポリイソシアネート成分として芳香族ジイソシアネートを用い、モノアミン成分として脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンの少なくともいずれかを用いることが好ましい。特に、ポリイソシアネート成分として芳香族ジイソシアネートを用い、モノアミン成分として、炭素数6~12の脂肪族モノアミン、および脂環族モノアミンを用いて作製される、脂肪族・脂環族ジウレア化合物を増ちょう剤として用いることがより好ましい。この脂肪族・脂環族ジウレア化合物の作製に用いられる脂肪族モノアミンと脂環族モノアミンの割合は、特に限定されないが、モル比で、脂肪族モノアミン:脂環族モノアミン=(3:1)~(1:3)が好ましく、該モル比が(2:1)~(1:2)がより好ましい。
ジウレア化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中で上記ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製する。
本発明に用いるグリースにおいて、増ちょう剤は、基油と増ちょう剤との合計量(100質量%)に対して、10質量%~30質量%含まれることが好ましく、10質量%~20質量%含まれることがより好ましく、15質量%~20質量%含まれることがさらに好ましい。増ちょう剤の量を比較的少なくすることで、その分基油の割合を多くすることができ、低トルク化に繋がりやすくなる。
本発明に用いるグリースは防錆剤を必須成分とする。防錆剤の配合量は、基油および増ちょう剤からなるベースグリース全体(100質量%)に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満であることが好ましい。この範囲内にすることで、防錆性を発揮させつつ、水との接触時でもグリースの形状を保持しやすくなる。防錆剤の配合量は、ベースグリース全体に対して0.5質量%以上1.5質量%未満であることがより好ましい。
防錆剤の種類は特に限定されず、エステル系防錆剤;スルホネート系防錆剤;ラウリン酸、ステアリン酸などの直鎖脂肪酸や、コハク酸、アルキルコハク酸などのカルボン酸系防錆剤;脂肪酸、ナフテン酸などの各金属塩(コバルト、マンガン、亜鉛)などのカルボン酸塩系防錆剤;アルコキシフェニルアミンなどのアミン系防錆剤などを用いることができる。これらの防錆剤の中でも、エステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤から選ばれた少なくとも一種を用いることが好ましい。
エステル系防錆剤としては、ソルビタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ショ糖、グリセリンなどの多価アルコールと、オレイン酸、ラウリル酸などのカルボン酸との部分エステルや、アルキルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸ハーフエステルなどのコハク酸ハーフエステルなどを用いることができる。これらのエステル系防錆剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エステル系防錆剤の中でもソルビタン脂肪酸エステルがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートなどのソルビタン脂肪酸モノエステルや、ソルビタントリオレエートなどが挙げられる。エステル系防錆剤を用いる場合、その配合量はベースグリース全体に対して1質量%未満であることが好ましい。
スルホネート系防錆剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などのアルキル芳香族スルホン酸や、石油留出成分の芳香族成分をスルホン化して得られる石油系スルホン酸の、各種金属塩やアミン塩などを用いることができる。金属塩を構成する金属としては、バリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属や、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属、亜鉛などが挙げられる。アミン塩を構成するアミンとしては、エチルアミン、トリメチルアミンなどが挙げられる。これらのスルホネート系防錆剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
特に、防錆剤として、エステル系防錆剤とスルホネート系防錆剤を組み合わせて用いることが好ましい。これら2種の防錆剤を組み合わせることで、1種を単独で用いる場合よりも防錆性を向上させることができる。
また、上記グリースには、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤などが挙げられる。なお、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤は含まないことが好ましい。
本発明に用いるグリースの混和ちょう度(JIS K 2220)は、220~280の範囲であり、240~280の範囲であることが好ましい。
上記グリースの特に好ましい形態は、40℃における動粘度が6mm/s~20mm/sの基油と、増ちょう剤として、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物と、防錆剤として、エステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤を含み、上記グリースの混和ちょう度が220~280の範囲である。さらにこの場合、防錆剤の配合量が、ベースグリース全体に対して、0.5質量%以上1.5質量%未満であることが好ましい。
次に、軸受密封装置16について、図3を用いて説明する。軸受密封装置16は、外方部材2に内嵌され、円環状に形成された芯金17と、この芯金17に一体に加硫接着されたシール部材18とからなる。芯金17は、上述のスリンガなどと同様に形成される。シール部材18はニトリルゴムなどの弾性部材からなり、2本のサイドリップ(ダストシール)18b、18cと単一のラジアルリップ(グリースシール)18aを備え、それぞれの先端縁をハブ輪4の表面、具体的には、車輪取付フランジ4bのインボード側基部の円弧状に形成された摺接面19に直接摺接させている。
図3に示すように、軸受密封装置16においても、ハブ輪4に対して摺接する各シールリップ18a、18b、18cの表面、具体的には、各シールリップの先端部の片側面にグリースGが塗布されている。これにより、シール性の確保と回転トルクの低減の両立を図っている。
図4は、本発明の密封型転がり軸受の他の例である深溝玉軸受を示す縦断面図であり、図5はその一部拡大図である。転がり軸受21は、外周面に内輪軌道面を有する内輪22と内周面に外輪軌道面を有する外輪23とが同心に配置され、内輪軌道面と外輪軌道面との間に複数個の転動体24が配置される。この転動体24は、保持器25により保持される。また、内・外輪の軸方向両端開口部には軸受密封装置27が装着され、少なくとも転動体24の周囲にグリース組成物26が封入される。内輪22、外輪23および転動体24は鉄系金属材料からなり、グリース組成物26が転動体24との軌道面に介在して潤滑される。
図5に示すように、軸受密封装置27は、冷間圧延鋼鈑などをプレス加工にて形成された円板状の芯金28と、この芯金28に一体に加硫接着されたシール部材29とで構成される。シール部材29は、内輪22側の端部において、先端が二股状に分岐して形成されたメインリップ29aと、そのメインリップ29aよりも軸受空間の外方側に位置するダストリップ29bとを有する。シール部材29は、その一部が固定側部材である外輪23の端部内周のシール溝に固定されるとともに、各シールリップが回転側部材である内輪22の端部外周に形成された断面略U字形をなすシール溝などに摺接する。図5に示すように、軸受密封装置27においても、内輪22に対して摺接する各シールリップ29a、29bの表面、具体的には、各シールリップの先端部の片側面にグリースGが塗布されている。
上記図4~図5の例では、密封型転がり軸受として深溝玉軸受を例示したが、本発明の軸受密封装置は、上記以外の円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などとしても使用できる。
なお、上記図1~図5の密封型転がり軸受では、本発明に用いるグリースをシール部材のシールリップの摺接面に予め塗布する形態としたが、これに代えてまたは加えて、該グリースを、回転側部材のシールリップが摺接する面に予め塗布してもよい。
本発明の密封型転がり軸受の用途は特に限定されないが、後述の実施例で示すように、低速回転でも油膜切れを防止でき、低トルクになることから、低速回転用途に特に適している。本発明の密封型転がり軸受は、例えば2000min-1以下の回転速度域で使用される軸受に適用される。ここで、2000min-1以下の回転速度域で使用されるとは、その軸受の使用状態の主な回転速度(定常状態の回転速度)が2000min-1以下であることをいう。該回転速度は1500min-1以下であってもよく、1000min-1以下であってもよい。
まず、表1~表3に示す組成のグリースをそれぞれ作製した。表1~表3中、基油と増ちょう剤と防錆剤の質量%は、ベースグリース(基油+増ちょう剤)に対する含有率を示している。また、表1下記の1)~9)は、表2および表3においても同じである。
実施例に用いたグリースは、図6(a)に示すようにして作製した。
まず、イソシアネート(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、MDI)および基油の半量を60℃で混合した油相Aと、アミンおよび基油の半量を所定の温度(室温から60℃)で混合した油相Bとを準備した。続いて、油相Aを撹拌しながら、油相Bを添加して混合し、100℃で30分加熱した(ウレア反応)。なお、反応の完了はIR(赤外分光装置)などにより確認した。その後、130℃で1時間加熱し(反応安定化)、室温まで徐冷した。その後、均一化処理を行い、グリースを3本ロールミルによって滑らかにした。図6(b)は得られたグリースの顕微鏡写真である。
得られたグリースについて、混和ちょう度(JIS K 2220)を測定した。
<シールトルク試験>
得られたグリースをニトリルゴム製のシール部材(φ60~70mm)の3つのシールリップの先端部の片側面に合計で0.6g塗布した。ハブ外輪を模擬した部材に上記シール部材を装着し、ハブ内輪を模擬した部材にSUS430製のスリンガを装着して、シールリップとスリンガが接触するように組付けた。
回転速度600min-1、室温雰囲気、内輪回転として、試験開始30分後、シールリップの摺接によるトルク(N・m)を1分間測定した。この試験において、0.20以上を不合格とした。
<耐水度試験>
上記グリースを6204ステンレス軸受の内輪の外周および外輪の内周に形成されたシール溝に合計で0.4g塗布して、その内輪のシール溝にシールリップが接触するようにニトリルゴム製のシール部材を装着した。軸受空間に公知のグリース組成物(表1~表3で作製したグリースとは組成が異なる)を0.05g封入した。この試験軸受を用いて、JIS K 2220に規定される水洗耐水度試験を改変した以下の試験を行った。
試験軸受を水洗耐水度試験機のハウジングに組み込んだ後、該試験軸受を79℃の温水中に水没させた。そして、試験軸受を水没させた状態で、回転速度600min-1で回転させながら、79℃の温水を6ml/sの水量で噴射ノズルから試験軸受に120分噴射した。試験後に試験軸受内への水侵入量を下記の式より求めた。
水侵入量(g)=(運転後の軸受重量-運転前の軸受重量)
水侵入量の評価について、0.5g未満を◎印、0.5g以上1.0g未満を○印、1.0g以上を×印として表1~表3に併記する。
<錆試験>
上記グリースを塗布した円錐ころ軸受を1質量%の塩水に10秒間浸漬させ、高湿環境下で静置させた。試験後に軸受を取り出し、外輪転走面を目視で観察した。評価は外輪転走面を32区画に分割し、そのうち何区画に錆が発生しているかで、錆発生率を算出した。
軸受 : 4T-30204
グリース封入量: 2.1g
試験温度 : 40℃
試験湿度 : 100%RH
試験時間 : 48h
錆発生率の評価について、25%未満を◎印、25%以上75%未満を○印、75%以上を×印として表1~表3に併記する。
Figure 2022155414000002
Figure 2022155414000003
Figure 2022155414000004
表1~表2に示すように、40℃における動粘度が6mm/s~45mm/sの基油と、増ちょう剤と、防錆剤とを含み、混和ちょう度が220~280であるグリースを用いた実施例1~実施例16は、いずれの試験でも良好な結果を示した。
表1~表3の結果より、基油の40℃における動粘度が6mm/s~45mm/sの範囲において動粘度が低くなると、シールトルク試験においてより低トルクを示す傾向が見られた(実施例1、実施例14~16)。一方、比較例4(動粘度47mm/s)は、トルクの上昇が確認された。
水侵入量(耐水性)の結果は、特に、グリースの混和ちょう度および防錆剤の配合量が影響することが分かった。混和ちょう度が220~280の範囲外である比較例1および比較例2はいずれも水侵入量が増大した。比較例2(混和ちょう度300)は、ちょう度が高く軟質であるため、リップ付近からグリースが流出し、その結果シール性が低下したと考えられる。一方、比較例1(混和ちょう度200)は、硬質で流動性に乏しいことから、隙間が生じやすくなり、シール性が低下したと考えられる。
また、防錆剤の配合量が増加すると、水侵入量が増加する傾向が見られた(実施例4~5、実施例9~10)。防錆剤は、防錆性の観点では有効であるが、水の侵入に対するグリースのシール性の観点では、不利に働く可能性が示唆された。防錆剤の配合量が多くなることで、グリースが水と馴染みやすくなり、リップ付近に存在するグリースの形状が保持しにくくなったと推察される。
錆発生率については、エステル系防錆剤、スルホネート系防錆剤をそれぞれ単独で用いるよりも、これらを組み合わせて用いた方が防錆性が向上する結果になった(実施例3~8)。
表1~表3の結果より、本実施例では、適切なちょう度および基油の粘度と、適切な防錆剤(特に、エステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤の組み合わせ)を組み合わせることにより、チャンネリング性を確保し、低トルクになり、かつ、高い耐水性および防錆性を得ることができる。また、低粘度の基油を用いつつ、ちょう度を適切な数値範囲にしやすいことから、実施例では、所定の基油(合成炭化水素油のみ、合成炭化水素油とエステル油の混合油)と、所定の増ちょう剤(脂肪族・脂環族ジウレア化合物)とを組み合わせている。
本発明の密封型転がり軸受は、低トルク性と高い耐水性、および防錆性を両立できるので、密封型転がり軸受として広く利用できる。
1 ハブベアリング(密封型転がり軸受)
2 外方部材
3 内方部材
4 ハブ輪
5 内輪
6 セレーション
7 転動体
8 保持器
9 軸受空間
11 軸受密封装置
12 芯金
13 シール部材
14 シールリング
15 スリンガ
16 軸受密封装置
17 芯金
18 シール部材
19 摺接面
21 転がり軸受(密封型転がり軸受)
22 内輪
23 外輪
24 転動体
25 保持器
26 グリース組成物
27 軸受密封装置
28 芯金
29 シール部材
G グリース

Claims (7)

  1. 軸受空間を密封し、固定側部材に固定され、回転側部材に摺接するシール部材を備える密封型転がり軸受であって、
    前記シール部材は前記回転側部材に摺接するシールリップを有し、前記密封型転がり軸受において、前記シールリップの摺接面、および該シールリップが摺接する前記回転側部材の摺接面の少なくとも一方の面にグリースが塗布されており、
    前記グリースは、40℃における動粘度が6mm/s~45mm/sの基油と、増ちょう剤と、防錆剤とを含み、JIS K 2220に準拠して測定される混和ちょう度が220~280であることを特徴とする密封型転がり軸受。
  2. 前記増ちょう剤が、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物であることを特徴とする請求項1記載の密封型転がり軸受。
  3. 前記基油が、合成炭化水素油のみからなるか、または、前記合成炭化水素油とエステル油との混合油であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の密封型転がり軸受。
  4. 前記防錆剤が、エステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の密封型転がり軸受。
  5. 前記グリースは、前記防錆剤としてエステル系防錆剤およびスルホネート系防錆剤を含み、前記基油および前記増ちょう剤の合計量に対して前記防錆剤を0.5質量%以上1.5質量%未満含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の密封型転がり軸受。
  6. 前記シール部材は、ニトリルゴムで形成され、前記シールリップとして、前記軸受空間の内方側から順に、第1のシールリップと、第2のシールリップと、第3のシールリップとを有し、これらシールリップの前記摺接面に前記グリースが塗布されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の密封型転がり軸受。
  7. 前記密封型転がり軸受が車軸を回転可能に支持する軸受であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の密封型転がり軸受。
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