JP2023050040A - 潤滑剤組成物および密封型転がり軸受 - Google Patents

潤滑剤組成物および密封型転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】転がり軸受などの潤滑に用いられ、低トルク性および防錆性を両立できる潤滑剤組成物、および、該潤滑剤組成物を用いた密封型転がり軸受を提供する。【解決手段】グリース16は、基油と防錆剤とを含み、レオメータを用いた時間依存測定法により、10s-1のせん断速度で30分せん断を与えて定常になった粘度が30Pa・s未満であり、防錆剤は、多価アルコールエステル系防錆剤と、それ以外の他の防錆剤とを含み、グリース16は、該潤滑剤組成物全体に対して防錆剤を0.5質量%~3質量%含む。【選択図】図2

Description

本発明は、潤滑剤組成物および該潤滑剤組成物を用いた密封型転がり軸受に関し、特に、ハブベアリングなどの車軸を支持する密封型転がり軸受に関する。
一般に、転がり軸受の内部には、潤滑油やグリースなどの潤滑剤組成物が封入されている。潤滑剤組成物が封入された軸受は、長寿命で外部の潤滑ユニットなどが不要で、かつ、安価であるため、自動車や産業用機器などの汎用用途によく利用される。特に、高いシール性が要求される場合には、軌道輪などの相手部材の摺動面に、シール部材のシールリップを接触させて軸受空間を密封する接触型の密封型転がり軸受が使用されている。
例えば、特許文献1には、密封型転がり軸受として、所定の組成からなるグリースが封入されたハブユニット軸受が記載されている。このグリースは、基油と、増ちょう剤と、3種の防錆剤と、摩耗防止剤とを含むことで、耐水性などに優れるとされている。
ここで、軸受からのグリース漏れは、外部の機械部品を汚損させるおそれがある。また、外部からの水などの異物混入は、軸受の耐久性(耐摩耗性や軸受寿命)を著しく低下させるおそれがある。万が一、水などの異物がシール摩耗などでシール内に混入した場合、グリースにも防錆性が必要になる。防錆性は、親水性のものやグリース粘度に影響を与えるものもある。このように、密封型転がり軸受においてシール性の確保は重要である。一方で、省エネルギーや省資源の観点から、シールリップの摺動には低トルク性も求められる。
従来、シールリップの摺動抵抗を低く抑えるとともに、シールリップにおけるシール性を確保するため、シールリップまたはその相手部材にグリースを塗布する技術が知られている。例えば、特許文献2には、シールリップの先端部の片側面で、使用時にハブ輪の表面と摺接する部分にグリースが予め塗布された転がり軸受が記載されている。また、特許文献3には、シールリップが摺接する相手部材の表面に、グリースが予め塗布された転がり軸受が記載されている。
特許第5110843号公報 特許第4475055号公報 特許第4997532号公報
上記特許文献2では、シール部材の形状(シールリップの寸法など)を検討することで、シールリップに塗布されたグリースが事前に剥がれてしまうことを防止している。これにより、摩擦抵抗の増大とシール不良の低減を図っている。しかし、シールリップに予め塗布されるグリース自体の摩擦抵抗やその他の特性などは考慮されていない。また、上記特許文献3では、グリースの基油の動粘度を規定することで回転トルクの低減を図っているが、基油の動粘度を規定するだけでは、シール性の確保と回転トルクの低減の両立を図ることは困難であると考えられる。また、自動車電装補機に用いられる転がり軸受やハブベアリングなどは、雨水や道路上の水などが軸受内に侵入しやすいため、水の侵入や発錆を抑えることが重要になる。しかし、上記特許文献2や特許文献3のグリースは、このような特性について何ら検討されていない。
また、上記特許文献1では、ハブベアリングなどに封入されるグリースの耐水性の向上を図っているが、回転トルクの低減については検討されていない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、転がり軸受などの潤滑に用いられ、低トルク性および防錆性を両立できる潤滑剤組成物、および、該潤滑剤組成物を用いた密封型転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の潤滑剤組成物は、基油と防錆剤とを含む潤滑剤組成物であって、上記潤滑剤組成物は、レオメータを用いた時間依存測定法により、10s-1のせん断速度で30分せん断を与えて定常になった粘度が30Pa・s未満であり、上記防錆剤は、多価アルコールエステル系防錆剤と、それ以外の他の防錆剤とを含むことを特徴とする。
上記潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物全体に対して上記防錆剤を0.5質量%~3質量%含むことを特徴とする。
上記他の防錆剤が、スルホネート系防錆剤またはカルボン酸塩系防錆剤であることを特徴とする。
上記基油は、合成炭化水素油、エステル油、およびエーテル油から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
上記潤滑剤組成物はグリースであり、上記基油は、40℃における動粘度が15mm/s以下であり、上記グリースは、JIS K2220に準拠して測定される混和ちょう度が260~300であることを特徴とする。
上記グリースの増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物であるか、または、複合リチウム石けんであることを特徴とする。
本発明の密封型転がり軸受は、軸受空間を密封し、固定側部材に固定され、回転側部材に摺接するシール部材を備える密封型転がり軸受であって、上記密封型転がり軸受において、本発明の潤滑剤組成物が潤滑に供されることを特徴とする。
上記シール部材は上記回転側部材に摺接するシールリップを有し、上記密封型転がり軸受において、上記シールリップの摺接面、および該シールリップが摺接する上記回転側部材の摺接面の少なくとも一方の面に上記潤滑剤組成物が塗布されていることを特徴とする。
上記シール部材は、ニトリルゴムで形成され、上記シールリップとして複数のシールリップを有し、これらシールリップの上記摺接面に上記潤滑剤組成物が塗布されていることを特徴とする。
本発明の潤滑剤組成物は、レオメータを用いた時間依存測定法により、10s-1のせん断速度で30分せん断を与えて定常になった粘度が30Pa・s未満であり、防錆剤が、多価アルコールエステル系防錆剤と、それ以外の他の防錆剤とを含む。防錆剤がこれらの組み合わせからなるので、所定の回転条件下(特に低速回転)における潤滑剤組成物の粘度を好適に低粘度化できる。また、単独の防錆剤を用いた場合よりも防錆剤を組み合わせて用いることで、防錆性を向上させることができる。これにより、低トルク性と防錆性を両立した潤滑剤組成物になる。
潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物全体に対して上記防錆剤を0.5質量%~3質量%含むので、防錆性を好適に発揮させつつ、潤滑剤組成物の低粘度化を図りやすい。
また、上記他の防錆剤が、スルホネート系防錆剤またはカルボン酸塩系防錆剤であるので、防錆性を好適に発揮させつつ、潤滑剤組成物の低粘度化を図りやすい。
上記潤滑剤組成物はグリースであり、基油は、40℃における動粘度が15mm/s以下であり、グリースは、JIS K2220に準拠して測定される混和ちょう度が260~300であるので、例えば、密封型転がり軸受において潤滑剤組成物がシールリップの摺接面などに塗布された場合において、チャンネリング性の確保と低速時の油膜切れを防止し、低トルクになり、かつ高いシール性を得ることができる。
上記グリースの増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物であるか、または、複合リチウム石けんであるので、低トルク化に一層寄与する。
本発明の密封型転がり軸受は、本発明の潤滑剤組成物が軸受空間に封入などされ、潤滑に供されるので、低トルク性と防錆性を両立することができる。特に、密封型転がり軸受において、シールリップの摺接面、および該シールリップが摺接する回転側部材の摺接面の少なくとも一方の面に潤滑剤組成物が塗布されて、潤滑に供されるので、低トルク性と高いシール性、および防錆性を得ることができる。
上記シール部材は、ニトリルゴムで形成され、シールリップとして複数のシールリップを有し、これらシールリップの摺接面に潤滑剤組成物が塗布されているので、低トルク性を確保しつつ、シール性を一層向上できる。
また、密封型転がり軸受が車軸を回転可能に支持する軸受である場合には、ハブベアリングなどの車軸用軸受の高機能(低燃費)化に貢献することができる。
回転式レオメータの一例を示す概要図である。 本発明の密封型転がり軸受の一例を示す縦断面図である。 本発明の密封型転がり軸受の他の例を示す一部縦断面図である。 本発明の密封型転がり軸受の他の例を示す縦断面図である。 図4のインボード側の軸受密封装置を示す拡大断面図である。 図4のアウトボード側の軸受密封装置を示す拡大断面図である。
本発明の潤滑剤組成物は、転がり軸受などの転動部品の潤滑に使用されるものである。例えば、転がり軸受では、軸受空間に封入されて軌道面の潤滑に供されてもよく、シール部材のシールリップなどに塗布されて当該シールリップと回転側部材(軌道輪など)との間の潤滑に供されてもよい。
本発明の潤滑剤組成物の態様には、(A)基油と、防錆剤を必須構成とする潤滑油と、(B)基油と、増ちょう剤と、防錆剤を必須構成とするグリースとの2種類がある。
本発明の潤滑剤組成物では、防錆剤として、多価アルコールエステル系防錆剤と、それ以外の防錆剤(以下、「他の防錆剤」という)を組み合わせて用いている。防錆剤として、多価アルコールエステル系防錆剤を少なくとも含む2種以上の防錆剤を用いることで、潤滑剤組成物を好適に低粘度化させることができ、さらに防錆性を向上させることができる。
潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物全体に対して防錆剤(多価アルコールエステル系防錆剤および他の防錆剤の合計量)を0.5質量%~3質量%含むことが好ましく、0.5質量%~2質量%含むことがより好ましい。上記の範囲内にすることで、潤滑剤組成物の低粘度化や防錆性を発揮させつつ、水との接触時でも潤滑剤組成物の形状を保持しやすくなり、耐水性に優れる。
防錆剤の配合量について言えば、潤滑剤組成物を潤滑油として使用する場合、基油全体(100質量部)に対して、防錆剤が0.5質量部~3質量部(好ましくは0.5質量部~2質量部)配合されることが好ましい。また、潤滑剤組成物をグリースとして使用する場合、基油と増ちょう剤の合計量(100質量部)に対して、防錆剤が0.5質量部~3質量部(好ましくは0.5質量部~2質量部)配合されることが好ましい。
本発明に用いる多価アルコールエステル系防錆剤は、多価アルコールの部分エステルであり、これは、多価アルコール中の水酸基の少なくとも1以上がエステル化されておらず、水酸基のまま残っているエステルである。
上記多価アルコールとしては、例えば、分子中の水酸基の数が2~10であり、かつ、炭素数が2~20の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ショ糖、グリセリンなどが挙げられる。上記カルボン酸としては、例えば、炭素数が6~24のカルボン酸が挙げられる。このカルボン酸は、分子中の炭素鎖が直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、飽和カルボン酸でもよく、不飽和カルボン酸でもよい。具体的には、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸などの飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。
本発明において、多価アルコールエステル系防錆剤として、ソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートなどのソルビタン脂肪酸モノエステルや、ソルビタントリオレエートなどが挙げられる。
上記多価アルコールエステル系防錆剤と併用される他の防錆剤としては、スルホネート系防錆剤;ラウリン酸、ステアリン酸などの直鎖脂肪酸や、コハク酸、アルキルコハク酸などのカルボン酸系防錆剤;脂肪酸、ナフテン酸、アルキルサリチル酸などの各金属塩であるカルボン酸塩系防錆剤;アルコキシフェニルアミンなどのアミン系防錆剤などを用いることができる。他の防錆剤として、これらの中から1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、他の防錆剤として、スルホネート系防錆剤およびカルボン酸塩系防錆剤から選ばれた少なくとも一種を用いることが好ましく、スルホネート系防錆剤を用いることがより好ましい。
スルホネート系防錆剤としては、アルキル基で置換されていてもよいベンゼンスルホン酸の塩、アルキル基で置換されていてもよいナフタレンスルホン酸の塩、石油留出成分の芳香族成分をスルホン化して得られる石油系スルホン酸の塩などが用いられる。これらの中でも、アルキル基で置換されていてもよいベンゼンスルホン酸の塩、石油系スルホン酸の塩が好ましい。なお、石油系スルホン酸の塩(石油系スルホネート)と区別して、それ以外のものを合成系ともいう。上記塩としては、バリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、エチレンジアミンなどのアミン塩などが挙げられる。これらの中でも塩としてはアルカリ土類金属塩が好ましい。なお、スルホネート系防錆剤は、中性のスルホン酸塩でもよく、塩基性のスルホン酸塩でもよい。
カルボン酸塩系防錆剤としては、アルキルサリチル酸の金属塩が好ましい。当該金属塩としては、バリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。なお、カルボン酸塩系防錆剤は、中性のカルボン酸塩でもよく、塩基性のカルボン酸塩でもよい。
なお、他の防錆剤としては、後述の実施例に示すように、潤滑剤組成物の低粘度化の観点から分子中にナフタレン環を含む防錆剤(例えばナフタレンスルホン酸の塩)は用いないことが好ましい。
潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物全体に対して、多価エステル系防錆剤を0.5質量%~1.5質量%含み、かつ、他の防錆剤を0.5質量%~1.5質量%含むことがより好ましい。また、潤滑剤組成物において、多価エステル系防錆剤の含有量(質量%)は、他の防錆剤の含有量(質量%)と同じであってもよく、他の防錆剤の含有量(質量%)よりも少なくてもよい。
ここで、本発明の潤滑剤組成物は、レオメータを用いた時間依存測定法により、10s-1のせん断速度で30分せん断を与えて定常になった粘度が30Pa・s未満であることを特徴としている。潤滑剤組成物の上記粘度は20Pa・s以下が好ましく、15Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。なお、上記粘度の下限は、例えば5Pa・sである。
潤滑剤組成物の上記粘度は、レオメータを用いて算出することができる。レオメータとして、コーンプレート型のセルを有するものを用いることが好ましい。このようなレオメータの概要を図1に示す。図1に示すように、回転式レオメータ1は、コーンプレート型のセル2と、水平円盤プレート3とから構成されており、セル2とプレート3とは1点で接する(僅かなギャップあり)ように配置され、これらの間に試料である潤滑剤組成物4を配置する。このレオメータでは、潤滑剤組成物4に加わるせん断速度が、セル中心からの距離に依存せずに、どの位置においても同一となる。本発明では、一定温度・一定方向回転で30分回転させ、せん断応力が一定(定常)になった際のせん断応力を測定し、そのせん断応力を用いて潤滑剤組成物の粘度を算出する。時間依存測定の条件として、好ましくは、周波数1Hz、温度25℃の条件である。
上記粘度の算出には、例えば、非ニュートン流体の一般的な流動方程式であるハーシェル・バークレイ式(Herschel-Bulkley’s equation)が用いられる。ハーシェル・バークレイ式は下記式で表される。
Figure 2023050040000002
なお、上記式における降伏応力と各定数は、レオメータを用いた潤滑剤組成物のレオロジー特性の評価などに基づき特定できる。
本発明の潤滑剤組成物に用いる基油は、通常、グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリ-α-オレフィン(PAO)油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、ポリフェニル油、合成ナフテン油、ポリブテン油などの合成炭化水素油(非極性油)、エステル油、エーテル油、シリコーン油、フッ素油などが挙げられる。これらの油は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記の中でも、基油が合成炭化水素油、エステル油、およびエーテル油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、少なくとも合成炭化水素油を含むことがより好ましい。例えば、基油に、合成炭化水素油と、エステル油またはエーテル油との混合油を用いる場合、合成炭化水素油が基油(混合油)全体の60質量%以上であることが好ましく、65質量%~90質量%であることがより好ましい。
合成炭化水素油であるPAO油は、α-オレフィンまたは異性化されたα-オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α-オレフィンの具体例としては、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラドコセンなどが挙げられ、通常はこれらの混合物が使用される。
エステル油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペートなどのジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどの芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトールエステル油などのポリオールエステル油、炭酸エステル油、りん酸エステル油などが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールエステル油が好ましい。
本発明の潤滑剤組成物の基油の40℃における動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度、以下同じ)は、40mm/s以下であることが好ましく、30mm/s以下であることがより好ましく、15mm/s以下であることがさらに好ましい。なお、上記基油の40℃における動粘度の下限は、例えば7mm/sである。
本発明の潤滑剤組成物をグリースとして使用する場合、さらに増ちょう剤が含まれる。増ちょう剤は特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、リチウム石けんなどが挙げられ、複合金属石けんとしては、複合リチウム石けんなどが挙げられる。これらの中でも、ジウレア化合物または複合リチウム石けんを使用することが好ましい。
ジウレア化合物は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られる。ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。また、モノアミン成分は、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミンおよび芳香族モノアミンを用いることができる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。脂環族モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。芳香族モノアミンとしては、アニリン、p-トルイジンなどが挙げられる。
これらのジウレア化合物の中でも、低トルク性により優れることから、ポリイソシアネート成分として芳香族ジイソシアネートを用い、モノアミン成分として脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンの少なくともいずれかを用いることが好ましい。特に、ポリイソシアネート成分として芳香族ジイソシアネートを用い、モノアミン成分として、炭素数6~12の脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンを用いて作製される、脂肪族・脂環族ジウレア化合物を増ちょう剤として用いることがより好ましい。この脂肪族・脂環族ジウレア化合物の作製に用いられる脂肪族モノアミンと脂環族モノアミンの割合は、特に限定されず、モル比で、例えば、脂肪族モノアミン:脂環族モノアミン=(3:1)~(1:3)であり、該モル比が(2:1)~(1:2)が好ましい。また、脂肪族モノアミンのモル数が脂環族モノアミンのモル数よりも多くてもよい。
ジウレア化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中で上記ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製する。
複合リチウム石けんは、水酸化リチウムと、脂肪族モノカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸などの二塩基酸とから合成されるものである。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシラウリン酸、16-ヒドロキシパルミチン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
複合リチウム石けんの中でも、炭素数10以上の脂肪酸モノカルボン酸と、炭素数10未満の脂肪酸ジカルボン酸を組み合わせて用いることが好ましい。特に、炭素数10以上の脂肪酸モノカルボン酸として12-ヒドロキシステアリン酸がより好ましく、炭素数10未満の脂肪酸ジカルボン酸としてアゼライン酸がより好ましい。
上記グリースにおいて、増ちょう剤は、基油と増ちょう剤との合計量(100質量%)に対して、10質量%~30質量%含まれることが好ましく、10質量%~20質量%含まれることがより好ましく、12質量%~18質量%含まれることがさらに好ましい。増ちょう剤の量を比較的少なくすることで、その分基油の割合を多くすることができ、低トルク化に繋がりやすくなる。
上記グリースの場合、その混和ちょう度(JIS K2220)は、例えば220~300の範囲であり、240~300の範囲であることが好ましく、260~300の範囲であることがより好ましい。
上記潤滑剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物の特に好ましい形態は、当該潤滑剤組成物が基油と増ちょう剤と防錆剤を含むグリースであって、レオメータを用いた時間依存測定法により、10s-1のせん断速度で30分せん断を与えて定常になった粘度が30Pa・s未満であり、防錆剤は、多価アルコールエステル系防錆剤とスルホネート系防錆剤とを含み、該潤滑剤組成物全体に対してこれら防錆剤を0.5質量%~3質量%含み、基油は、40℃における動粘度が15mm/s以下であり、JIS K2220に準拠して測定される混和ちょう度が260~300であるグリースである。
以下、本発明の潤滑剤組成物が潤滑に供される密封型転がり軸受について説明する。
図2には、本発明の潤滑剤組成物を軸受空間に封入してなる密封型転がり軸受の一例を示す。図2は深溝玉軸受の断面図である。転がり軸受11は、外周面に内輪軌道面を有する内輪12と内周面に外輪軌道面を有する外輪13とが同心に配置され、内輪軌道面と外輪軌道面との間に複数個の転動体14が配置される。この転動体14は、保持器15により保持される。また、内・外輪の軸方向両端開口部が軸受密封装置17によりシールされ、少なくとも転動体14の周囲に上述の潤滑剤組成物としてのグリース16が封入される。内輪12、外輪13および転動体14は鉄系金属である軸受鋼からなり、グリース16が転動体14との軌道面に介在して潤滑される。これにより、回転トルクの低減と軸受内の防錆性の向上を図っている。
図3には、本発明の潤滑剤組成物がシール部材のシールリップに塗布された密封型転がり軸受の一例を示す。図3の密封型転がり軸受の基本的な軸受構成は、図2と同様である。図2に示すように、軸受密封装置27は、冷間圧延鋼鈑などをプレス加工にて形成された円板状の芯金28と、この芯金28に一体に加硫接着されたシール部材29とで構成される。シール部材29の材質には、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどが用いられる。
シール部材29は、内輪22側の端部において、先端が二股状に分岐して形成されたメインリップ29aと、そのメインリップ29aよりも軸受空間の外方側に位置するダストリップ29bとを有する。シール部材29は、その一部が、固定側部材である外輪23の端部内周のシール溝に固定されるとともに、各シールリップが、回転側部材である内輪22の端部外周に形成された断面略U字形のシール溝などに摺接する。図3の構成では、内輪22に対して摺接する各シールリップ29a、29bの表面、具体的には、各シールリップの先端部の片側面に上述の潤滑剤組成物としてのグリース30が塗布されている。この場合、グリース30は、少なくともシールリップの摺接面に塗布されていればよく、シールリップの全体に塗布されていてもよい。その結果、シールトルクの低減と、優れた防水性および防錆性を実現できる。
図3において、軸受空間に封入されるグリース26(または潤滑油)は、本発明の潤滑剤組成物であってもよく、公知の潤滑剤組成物であってもよい。
なお、上記図3の密封型転がり軸受では、本発明の潤滑剤組成物をシール部材のシールリップの摺接面に予め塗布する形態としたが、これに代えてまたは加えて、該グリースを、回転側部材のシールリップが摺接する面に予め塗布してもよい。
上記図2および図3では、密封型転がり軸受として深溝玉軸受について例示したが、本発明の密封型転がり軸受は、上記以外の円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などとしても使用できる。
図4~図6には、本発明の密封型転がり軸受の他の例としてハブベアリングの縦断面図を示す。このハブベアリングは、本発明の潤滑剤組成物がシール部材のシールリップに塗布されている。図4に示すハブベアリング31は、車軸を回転可能に支持する駆動輪側の車軸用軸受である。
図4に示すように、ハブベアリング31は、外周に車体(図示省略)に取り付けられる車体取付フランジ32bを一体に有し、内周に複列の外側軌道面32a、32aが形成された外方部材32と、一端部に車輪(図示省略)が取り付けられる車輪取付フランジ34bを一体に有し、外周に上記複列の外側軌道面32a、32aに対向する一方の内側軌道面34a、および該内側軌道面34aから軸方向に延びる円筒状の小径段部34cが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション36が形成されたハブ輪34と、小径段部34cに圧入され、外周に他方の内側軌道面35aが形成された内輪35とを備えている。
複列の外側軌道面32a、32aと、これらに対向する内側軌道面34a、35a間には複列の転動体(ボール)37が保持器38によって転動自在に収容されている。また、ハブ輪34と内輪35とからなり、回転側部材となる内方部材33と、固定側部材となる外方部材32との間に形成される環状空間には軸受密封装置41、46がそれぞれ装着され、軸受空間39に封入されたグリースの漏洩と、外部から雨水やダストなどが軸受空間39に侵入するのを防止している。なお、この軸受空間39に封入されるグリース(または潤滑油)は、本発明の潤滑剤組成物であってもよく、公知の潤滑剤組成物であってもよい。上記軸受密封装置41、46のうち外方部材32と内輪35間に装着されたインボード側(図中右側)の軸受密封装置41について、図5を用いて説明する。
図5に示すように、軸受密封装置41は、外方部材に内嵌され、断面L字状に形成された芯金42と、この芯金42に一体に加硫接着されたシール部材43とからなるシールリング44と、内輪に外嵌され、同じく断面L字状に形成されたスリンガ45とを備えている。このスリンガ45およびシールリング44の芯金42は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系など)、または、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系など)をプレス加工にて形成されている。
シール部材43の材質には、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどが用いられる。図5において、シール部材43は、軸受空間の内方側から順に、内側、中間、外側の3本のシールリップ43a、43b、43cを有し、外側シールリップ43cの先端縁をスリンガ45の立板部45bの内側面に摺接させ、残りの中間シールリップ43bおよび内側シールリップ43aの先端縁を、スリンガ45の円筒部45aに摺接させている。この構成において、芯金42は固定側部材に相当し、スリンガ45は回転側部材に相当する。
図5の構成では、シール部材のシールリップの摺接面にグリースが塗布されている。具体的には、図5に示すように、スリンガ45に対して摺接するシールリップ43a、43b、43cの摺接面にグリースGが塗布されている。この場合、グリースGは、少なくともシールリップの摺接面に塗布されていればよく、シールリップの全体に塗布されていてもよい。
次に、ハブベアリングのアウトボード側に装着される軸受密封装置について、図6を用いて説明する。軸受密封装置46は、外方部材32に内嵌され、円環状に形成された芯金47と、この芯金47に一体に加硫接着されたシール部材48とからなる。芯金47は、上述のスリンガなどと同様に形成される。シール部材48はニトリルゴムなどの弾性部材からなり、2本のサイドリップ(ダストシール)48b、48cと単一のラジアルリップ(グリースシール)48aを備え、それぞれの先端縁をハブ輪34の表面、具体的には、車輪取付フランジのインボード側基部の円弧状に形成された摺接面49に直接摺接させている。
図6に示すように、軸受密封装置46においても、ハブ輪34に対して摺接する各シールリップ48a、48b、48cの表面、具体的には、各シールリップの先端部の片側面にグリースGが塗布されている。その結果、シールトルクの低減と、優れた防水性および防錆性を実現できる。
なお、本発明の潤滑剤組成物は、ハブベアリングの軸受空間に封入される潤滑剤として用いられてもよく、本発明の潤滑剤組成物が封入されたハブベアリングを本発明の密封型転がり軸受としてもよい。
本発明の密封型転がり軸受の用途は特に限定されないが、後述の実施例で示すように、低速回転時の油膜切れを防止でき、低トルクになることから、低速回転用途に特に適している。本発明の密封型転がり軸受は、例えば2000min-1以下の回転速度域で使用される軸受に適用される。ここで、2000min-1以下の回転速度域で使用されるとは、その軸受の使用状態の主な回転速度(定常状態の回転速度)が2000min-1以下であることをいう。該回転速度は1500min-1以下であってもよく、1000min-1以下であってもよい。
まず、表1~表2に示す組成のグリースをそれぞれ作製した。表1~表2中、基油と増ちょう剤の質量%は、ベースグリース(基油+増ちょう剤)に対する含有量を示している。また、防錆剤の質量部は、ベースグリース100質量部に対する配合量を示している。
なお、表1下記の1)~12)は、表2においても同じである。なお、表1中の6)は、石油系スルホン酸のバリウム塩であり、表中の7)は、アルキルベンゼンスルホン酸のバリウム塩であり、表1中の8)は、石油系スルホン酸のカルシウム塩であり、表1中の10)~12)は、アルキルナフタレンスルホン酸の各種金属塩(カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩)である。
実施例に用いたグリースは、以下のようにして作製した。
表1および表2に示した基油の半量に、イソシアネート(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、MDI)を該表に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にモノアミンを溶解した。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃~120℃で30分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させベースグリースを得た。これに各防錆剤を表1および表2に示す配合割合で加えてさらに十分撹拌した。その後、三本ロールで均質化し、試験用のグリースを得た。
得られたグリースを用いて、以下の物性測定および試験を行った。
<混和ちょう度>
JIS K2220に準拠して、グリースの60回混和ちょう度を測定した。
<粘度>
コーンプレート型(直径20mm、ギャップ間距離53μm)のレオメータを用い、各グリースに対して、温度25℃、周波数1Hzで、せん断速度を10s-1で30分回転させ、その定常流となったせん断応力を求めた。さらに、上述のハーシェル・バークレイ式のn=1として、粘度を算出した。この粘度の評価について、10Pa・s未満を◎印、10Pa・s以上30Pa・s未満を○印、30Pa・s以上を×印として表1~表2に併記する。
<シールトルク試験>
グリースをニトリルゴム製のシール部材(φ60~70mm)の3つのシールリップの先端部の片側面に合計で0.6g塗布した。ハブ外輪を模擬した部材に上記シール部材を装着し、ハブ内輪を模擬した部材にSUS430製のスリンガを装着して、シールリップとスリンガが接触するように組付けた。
回転速度600min-1、室温雰囲気、内輪回転として、試験開始30分後、シールリップの摺接によるトルク(N・m)を1分間測定した。この試験において、0.1N・m未満を◎印、0.1N・m以上0.15N・m未満を○印、0.15N・m以上を×印として表1~表2に併記する。
<軸受トルク試験>
グリースをニトリルゴム製のシール部材(φ25~40mm)の2つのシールリップの先端部の片側面に合計で0.4g塗布した。深溝玉軸受(6204LLU)に上記シール部材を装着し、シールリップと内輪が接触するように組付けた。なお、軸受空間には鉱油グリース(40℃における動粘度100mm/s)を0.05%封入した。
回転速度1800min-1、室温雰囲気、内輪回転として、試験開始30分後、軸受トルク(N・mm)を1分間測定した。この試験において、25N・mm未満を◎印、25N・mm以上30N・mm未満を○印、30N・mm以上を×印として表1~表2に併記する。
<耐水度試験>
上記グリースを6204ステンレス軸受LLHの内輪の外周および外輪の内周に形成されたシール溝に0.1g、0.3g塗布して、その内輪のシール溝にシールリップが接触するようにニトリルゴム製のシール部材を装着した。軸受空間に公知のグリース組成物(表1~表2で作製したグリースとは組成が異なる)を0.05g封入した。この試験軸受を用いて、JIS K2220に規定される水洗耐水度試験を改変した以下の試験を行った。
試験軸受を水洗耐水度試験機のハウジングに組み込んだ後、該試験軸受を79℃の温水中に水没させた。そして、試験軸受を水没させた状態で、回転速度600min-1で回転させながら、79℃の温水を6ml/sの水量で噴射ノズルから試験軸受に120分噴射した。試験後に試験軸受内への水侵入量を下記の式より求めた。
水侵入量(g)=(運転後の軸受重量-運転前の軸受重量)
水侵入量の評価について、0.5g未満を◎印、0.5g以上1.0g未満を○印、1.0g以上を×印として表1~表2に併記する。
<錆試験>
上記グリースを塗布した円錐ころ軸受を1質量%の塩水に10秒間浸漬させ、高湿環境下で静置させた。試験後に軸受を取り出し、外輪転走面を目視で観察した。評価は外輪転走面を32区画に分割し、そのうち何区画に錆が発生しているかで、錆発生率を算出した(ASTM D1743修正)。
軸受 : 4T-30204
グリース封入量: 2.0g
試験温度 : 40℃
試験湿度 : 100%RH
試験時間 : 48h
錆発生率の評価について、30%未満を◎印、30%以上60%未満を○印、60%以上を×印として表1~表2に併記する。
Figure 2023050040000003
Figure 2023050040000004
表1~表2に示すように、グリース粘度が30Pa・s未満であり、多価アルコールエステル系防錆剤と他の防錆剤を組み合わせて用いた実施例1~実施例7は、いずれの試験でも良好な結果を示した。
また、グリース粘度の評価と、シールトルク試験および軸受トルク試験の評価との間には、非常に相関した結果が見られた。グリース粘度が30Pa・s未満である実施例1~7などは、シールトルク試験および軸受トルク試験において、低トルクを示したのに対して、グリース粘度が30Pa・s以上である比較例2~4は、シールトルク試験および軸受トルク試験において、トルクが上昇した。多価アルコールエステル系防錆剤と組み合わせられる他の防錆剤によっては、粘度に影響を及ぼすことが示唆された。また、防錆剤の配合量が多くなると、粘度が高くなり、その結果トルクが上昇する傾向が見られた(実施例1、2、5、6)。
水侵入量(耐水性)の結果は、特に、グリースの混和ちょう度および防錆剤の配合量が影響することが分かった。混和ちょう度が他と比較して低い比較例9(混和ちょう度200)、および混和ちょう度が他と比較して高い比較例10(混和ちょう度320)は、いずれも水侵入量が増大した。比較例10は、ちょう度が高く軟質であるため、リップ付近からグリースが流出し、その結果シール性が低下したと考えられる。一方、比較例9は、硬質で流動性に乏しいことから、隙間が生じやすくなり、シール性が低下したと考えられる。
また、防錆剤の配合量が増加すると、水侵入量が増加する傾向が見られた(実施例3、5、比較例5、7)。防錆剤は、防錆性の観点では有効であるが、水の侵入に対するグリースのシール性の観点では、不利に働く可能性が示唆された。防錆剤の配合量が多くなることで、グリースが水と馴染みやすくなり、リップ付近に存在するグリースの形状が保持しにくくなったと推察される。
錆発生率については、多価アルコールエステル系防錆剤を単独で用いるよりも、他種の防錆剤を組み合わせて用いた方の防錆性が向上する結果になった(実施例1~7、比較例1、6)。
表1~表2の結果より、本実施例では、グリースにおいて、グリース粘度、防錆剤の種類およびその配合量、ちょう度などを、適切に組み合わせることにより、チャンネリング性の確保と低速時の油膜切れを防止し低トルクになり、漏洩性、高い耐水性および防錆性を得ることができた。また、適切な防錆剤により、万が一、シール摩耗などにより泥水などが侵入した場合であっても、シール内の防錆性を保ち、発錆を防ぐことが可能である。また、低粘度の基油を用いつつ、ちょう度を適切な数値範囲にしやすいことから、実施例では、所定の基油(合成炭化水素油とエステル油の混合油)と、所定の増ちょう剤(脂肪族・脂環族ジウレア化合物)とを組み合わせている。
本発明の潤滑剤組成物は、低トルク性および防錆性を両立でき、特に、当該潤滑剤組成物がシールリップなどに塗布された密封型転がり軸受は、低トルク、耐漏洩性に優れ、当該転がり軸受の軸受の高機能(低燃費)化に繋がるので、密封型転がり軸受として広く利用できる。特に、防錆性にも優れるので、泥水などが侵入しやすいハブベアリングなどに好適に利用できる。
1 レオメータ
2 コーンプレート型セル
3 水平円盤プレート
4 潤滑剤組成物
11 転がり軸受(密封型転がり軸受)
12 内輪
13 外輪
14 転動体
15 保持器
16 グリース(潤滑剤組成物)
17 軸受密封装置
18 芯金
19 シール部材
21 転がり軸受(密封型転がり軸受)
22 内輪
23 外輪
24 転動体
25 保持器
26 グリース
27 軸受密封装置
28 芯金
29 シール部材
30 グリース(潤滑剤組成物)
31 ハブベアリング(密封型転がり軸受)
32 外方部材
33 内方部材
34 ハブ輪
35 内輪
36 セレーション
37 転動体
38 保持器
39 軸受空間
41 軸受密封装置
42 芯金
43 シール部材
44 シールリング
45 スリンガ
46 軸受密封装置
47 芯金
48 シール部材
49 摺接面
G グリース(潤滑剤組成物)

Claims (9)

  1. 基油と防錆剤とを含む潤滑剤組成物であって、
    前記潤滑剤組成物は、レオメータを用いた時間依存測定法により、10s-1のせん断速度で30分せん断を与えて定常になった粘度が30Pa・s未満であり、
    前記防錆剤は、多価アルコールエステル系防錆剤と、それ以外の他の防錆剤とを含むことを特徴とする潤滑剤組成物。
  2. 前記潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物全体に対して前記防錆剤を0.5質量%~3質量%含むことを特徴とする請求項1記載の潤滑剤組成物。
  3. 前記他の防錆剤が、スルホネート系防錆剤またはカルボン酸塩系防錆剤であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の潤滑剤組成物。
  4. 前記基油は、合成炭化水素油、エステル油、およびエーテル油から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
  5. 前記潤滑剤組成物はグリースであり、前記基油は、40℃における動粘度が15mm/s以下であり、前記グリースは、JIS K2220に準拠して測定される混和ちょう度が260~300であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
  6. 前記グリースの増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分と、脂肪族モノアミンおよび脂環族モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミン成分とを反応して得られるウレア化合物であるか、または、複合リチウム石けんであることを特徴とする請求項5記載の潤滑剤組成物。
  7. 軸受空間を密封し、固定側部材に固定され、回転側部材に摺接するシール部材を備える密封型転がり軸受であって、
    前記密封型転がり軸受において、請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の潤滑剤組成物が潤滑に供されることを特徴とする密封型転がり軸受。
  8. 前記シール部材は前記回転側部材に摺接するシールリップを有し、
    前記密封型転がり軸受において、前記シールリップの摺接面、および該シールリップが摺接する前記回転側部材の摺接面の少なくとも一方の面に前記潤滑剤組成物が塗布されていることを特徴とする請求項7記載の密封型転がり軸受。
  9. 前記シール部材は、ニトリルゴムで形成され、前記シールリップとして複数のシールリップを有し、これらシールリップの前記摺接面に前記潤滑剤組成物が塗布されていることを特徴とする請求項8記載の密封型転がり軸受。
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