JP2022154980A - 干し蕎麦 - Google Patents

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Abstract

【課題】小麦粉を用いず蕎麦粉を多く含有しながらも、安定的に大量製造することが可能で、蕎麦本来の風味に優れる干し蕎麦を提供すること。【解決手段】穀粉原料として蕎麦粉のみを含有し、蛋白質の含量が10~15質量%であり、前記蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合が35質量%以上である干し蕎麦。好ましくは、該干し蕎麦は、形状が麺線状であり、麺線の直交断面形状が、厚み0.9~1.1mm、幅1.2~1.5mmである。【選択図】なし

Description

本発明は、原料に小麦粉を用いない干し蕎麦に関し、詳細には、蕎麦に由来する風味が非常に高い干し蕎麦に関する。
蕎麦は、蕎麦の実を粉砕した蕎麦粉に練り水を添加し混捏して生地とし、該生地を麺線状などに成形した食品であり、独特の風味を有していて人気がある。同様に、穀粉を原料として用いた麺線状の食品としては、うどんやそうめんのような小麦粉を用いたものが広く食されている。小麦粉は、加水・混捏するだけで粘弾性を有する生地が得られる特性があり、成形性や結着性等の観点から極めて汎用性が高い。これに対し、蕎麦粉には小麦粉のような性質が欠けているため、蕎麦粉を用いても、小麦粉と同様にして単に加水・混捏しただけでは生地は得られ難い。そのため、一般的な蕎麦は、蕎麦粉につなぎとして小麦粉を加えた混合物を原料粉として製造されており、例えば蕎麦粉:小麦粉=8:2の混合物から製造された蕎麦は二八蕎麦などと呼ばれている。しかし当然ながら、原料粉に占めるつなぎの割合が多くなると、相対的に蕎麦粉の割合が低減する結果、蕎麦の風味が得られにくくなる。
一方で小麦に対してアレルギーを有する人は、小麦粉を配合した蕎麦を喫食することができないため、蕎麦を食べるならば、穀粉として蕎麦粉のみを用い、つなぎとして山芋などを用いた蕎麦や、原料として蕎麦粉のみを用いた十割蕎麦を食する必要がある。十割蕎麦の製造では通常、生地の製造を可能にするために、蕎麦粉に添加する練り水として水ではなくお湯を用い、蕎麦粉に含まれる澱粉を糊化させ、糊化澱粉の粘りを利用している。また、予め糊化した蕎麦粉を用いて製麺を行うこともある。しかしながらこのような製造方法によって得られる十割蕎麦では、蕎麦に含まれる成分が変性していて、本来の蕎麦粉の風味が得られない場合が少なくない。
例えば十割蕎麦であっても、技量の高い職人がお湯を使って手早く製造し、その場で喫食するようにすれば、ある程度は蕎麦の風味を楽しむことができる。しかし工業的に十割蕎麦を製造する場合、製造量が大量になるため、手作りの場合に比較して製造工程に時間がかかり、その間に蕎麦の風味はどんどん減少することになる。そのため、特に大量製造された市販の十割蕎麦では、蕎麦の風味に乏しいものが少なくなく、この傾向は、製造した蕎麦を乾燥させて保存性を高め、流通しやすいようにした干し蕎麦で特に顕著であった。従って、つなぎを用いた蕎麦であっても、十割蕎麦であっても、市販されている蕎麦は風味が物足りないという課題がある。
このような課題に関して、蕎麦の風味を向上させる技術が提案されている。特許文献1に記載の技術では、蕎麦粉を小麦粉の重量以上に使用することで蕎麦の風味を向上させる一方、このように蕎麦粉を多量に使用することで懸念される生地の製造困難の問題を、蕎麦粉の結着材として粉末状小麦粉蛋白(粉末状グルテン)を使用すると共に、生地を圧延機にかけて麺帯を得る際の該生地の温度を特定範囲に調整することで解決している。特許文献2には、玄蕎麦を粉砕して蛋白質含量16質量%以上の画分を得、該画分をさらに微粉砕して10~60μmにした蕎麦粉を用いると、蕎麦の風味が高まることが記載されている。
特開2001-128633号公報 特開2009-112253号公報
本発明の課題は、小麦粉を用いず蕎麦粉を多く含有しながらも、安定的に大量製造することが可能で、蕎麦本来の風味に優れる干し蕎麦を提供することである。
本発明は、穀粉原料として蕎麦粉のみを含有し、蛋白質の含量が10~15質量%であり、前記蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合が35質量%以上である干し蕎麦である。
また、本発明は、前記干し蕎麦を6分以内で茹でることにより、干し蕎麦100g当たり茹で蕎麦210~275gになるように調理する蕎麦の調理方法である。
本発明によれば、穀粉原料として蕎麦粉のみを含有し、蕎麦本来の風味に優れる蕎麦を安定的に大量製造することが可能である。また、本発明の蕎麦は、穀粉原料として蕎麦粉のみを含有し、アレルギーを起こす可能性がある小麦粉を含まないため、小麦アレルギーの人でも安全に蕎麦を食することができる。
本発明の干し蕎麦は、蕎麦用生地を麺線状などの所定形状に成形し、乾燥して得られる。一般に、干し蕎麦の含水率は好ましくは14質量%以下、より好ましくは12.5~13.5質量%である。なお、含水率は、絶乾法に準じて、試料を105℃で定質量になるまで乾燥し、乾燥前後の質量差を、乾燥前の試料における水分質量とみなして、乾燥前の試料の質量における該水分質量を百分率で表したものである。
本発明の干し蕎麦には、原料として固形原料と液体原料を用いる。本発明の干し蕎麦は、固形原料の主要成分として、蕎麦粉を用いる。蕎麦粉としては、蕎麦の実を挽いたものが利用でき、市販されている一番粉、二番粉、三番粉、全層粉およびこれらの混合物等を例示できる。本発明の干し蕎麦の固形原料において、蕎麦粉の含量は、固形原料の全質量に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。さらに好ましくは、100質量%蕎麦粉のみを固形原料として用いて本発明の干し蕎麦を製造する、すなわち、さらに好ましくは本発明の干し蕎麦は十割蕎麦である。
本発明の干し蕎麦に用いる固形原料には、上述した蕎麦粉以外に穀粉原料を含まない。言い換えれば、本発明の干し蕎麦は、穀粉原料として蕎麦粉のみを含有する。一般に食品に用いることができる蕎麦粉以外の穀粉原料としては、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉等があり、中でも小麦粉は蕎麦に用いられることが多いが、本発明の干し蕎麦は、蕎麦粉以外に、不可避不純物を除いて、これらの穀粉原料を含まない。つまり、本発明の干し蕎麦は、蕎麦粉以外の穀粉原料を製造上不可避的に含むことは許容される。
また、本発明の干し蕎麦に用いる固形原料には、本発明の効果を阻害しない限り、蕎麦粉以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、澱粉類、糖類、卵粉、ヤマイモ粉、抹茶、ふのり、そばの葉粉末、乳化剤、色素、香料、調味料等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。澱粉類には、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の未加工澱粉、及びこれら未加工澱粉に油脂加工、α化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理の1つ以上を施した加工澱粉が含まれる。固形原料中における他の成分の含量は、固形原料の全質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは、他の成分は使用しない。
本発明の干し蕎麦に用いる液体原料は、蕎麦粉を用いて蕎麦生地を製造する際の練り水としての役割を果たすものであり、水を主要成分とする。また液体原料は、水と共に、所望に応じて、液体香料、液体調味料、油脂等の液体の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含んでもよい。液体原料中における水の含量は、液体原料の全質量に対して、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上であり、さらに好ましくは、100質量%水のみを液体原料として用いて本発明の干し蕎麦を製造する。
本発明の干し蕎麦に用いる固形原料及び液体原料の使用比率は、通常の干し蕎麦の場合と同様とすることができ、例えば、両者は固形原料1kg当たり液体原料0.2~0.5Lの比率で用いることができる。
本発明の干し蕎麦は、このように固形原料として多量の蕎麦粉を用いて製造される点に加えて、干し蕎麦中の蛋白質の含量及び該蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合がそれぞれ特定の範囲である点で特徴付けられる。
尚、ここでいう「蛋白質の含量」及び「該蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合」並びに後に詳述する「可溶性蛋白質の含量」は、前述のような乾燥状態にある干し蕎麦の質量基準での値であり、より具体的には、好ましくは含水率14質量%以下、より好ましくは含水率12.5~13.5質量%の干し蕎麦の質量基準での値である。
本発明の干し蕎麦は、蛋白質の含量が10~15質量%、好ましくは11~14質量%である。蕎麦における蛋白質の含量が10~15質量%であると、後述する可溶性蛋白質の割合と相俟って、本発明の干し蕎麦の風味を高いものとすることができる。
ここでいう蛋白質の含量とは、燃焼法(改良デュマ法)により求めたものである。具体的には、質量既知の干し蕎麦試料を用意し、燃焼法(改良デュマ法)の標準法により、この干し蕎麦試料に含まれる窒素量を測定し、所定の係数を用いて窒素量を蛋白質量に変換する。{(蛋白質量)/(干し蕎麦試料の質量)×100(%)}が、干し蕎麦の蛋白質含量である。
本発明の干し蕎麦は、蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合が35質量%以上、好ましくは40質量%以上である。この可溶性蛋白質の割合が35質量%未満であると、焦げ臭い風味が蕎麦に生じる。蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合の上限は、特に制限されないが、蕎麦粉の成分組成を鑑みれば、通常、多くても50質量%程度である。
ここでいう可溶性蛋白質の割合は、燃焼法(改良デュマ法)により求めた可溶性蛋白質の含量の、上述の蛋白質の含量に対する比率である。具体的には、まず、質量既知の干し蕎麦試料から0.08Mリン酸緩衝溶液によって可溶性蛋白質を抽出して、可溶性蛋白質画分を得る。次に、燃焼法(改良デュマ法)の標準法により、この可溶性蛋白質画分に含まれる窒素量を測定し、所定の係数を用いて窒素量を可溶性蛋白質量に変換する。{(可溶性蛋白質量)/(抽出に供した干し蕎麦試料の質量)×100(%)}より、干し蕎麦の可溶性蛋白質含量を求める。そして、{(可溶性蛋白質含量)/(蛋白質含量)×100(%)}が「蛋白質中に占める可溶性蛋白質量の割合」である。
本発明の干し蕎麦は、前述の固形原料と液体原料を用いて、蛋白質含量が10~15質量%、該蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合が35質量%以上となるように製造する。本発明者らが検討したところ、蕎麦生地製造工程の際の、混捏における熱や、液体原料(練り水)として湯を用いた場合の熱により、可溶性蛋白質の量が減少することが判明した。この知見に基づき、本発明の干し蕎麦は、干し蕎麦の固形原料の蛋白質含量を10~15質量%超とし(好ましくは、固形原料を蕎麦粉100質量%とし、且つ該蕎麦粉の蛋白質含量を10~15質量%超とし)、さらに、可溶性蛋白質量が減少しないように生地製造工程の際の品温に留意することにより、製造することができる。言い換えると、干し蕎麦の固形原料の蛋白質含量を10~15質量%超とし、さらに、可溶性蛋白質量が減少しないように生地製造工程の際の品温に留意することにより、得られる干し蕎麦における蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合を35質量%以上とすることができる。なお、ここで「固形原料の蛋白質含量を10~15質量%『超』」とするのは、干し蕎麦の製造プロセスにおいて様々な要因(例えば、加水による水和、乾燥時の加熱等)によって蛋白質量が僅かに減少する場合があり、そのような製造上不可避のわずかな減少を見込んで固形原料を用意することを意図している。また、上記品温とは、固形原料及び液体原料並びに混捏中の生地(固形原料と液体原料との混合物)の温度を指す。
可溶性蛋白質量が減少しないようにしながら蕎麦生地を製造する具体的な手法としては、以下の(1)及び(2)を例示できるが、これらに限定されるものではない。
(1)本発明者らの検討の結果、可溶性蛋白質は、70℃以上で減少することが明らかになった。一方で蕎麦に含まれる澱粉は60℃程度で糊化する。そのため、蕎麦生地を調製する際の品温を60~66℃とすると、澱粉が糊化して生地がつながりやすくなるとともに、可溶性蛋白質は減少しにくい。従って、可溶性蛋白質量が減少しないようにしながら蕎麦生地を製造する好ましい手法の一例は、固形原料と液体原料とを混合して生地を調製する際、品温を60~66℃とすることである。品温の調整は、例えば、混捏に用いるミキサーの温度を調整すること、及び固形原料に加える際の液体原料の温度を調整することにより可能である。
(2)蕎麦粉には、蛋白質の含量が異なるものがある。日本食品標準成分表2015年版(七訂)によれば、一番粉(内層粉)、二番粉(中層粉)、三番粉(表層粉)、全層粉の蛋白質含量はそれぞれ、6.0%、10.2%、15.0%、12.0%である。また、蕎麦の収穫年や収穫地によっても、蛋白質量は変化する。これらの中で、蛋白質量が比較的少ない蕎麦粉(低蛋白蕎麦粉)を加熱して澱粉を糊化させた加熱蕎麦粉に、蛋白質量が比較的多い蕎麦粉を非加熱のまま加えて混合物とし、該混合物を固形原料(原料粉)として用いることで、蛋白質と可溶性蛋白質との比率を確保しながら、澱粉を固化させてつながりの良い蕎麦生地を製造することが可能になる。従って、可溶性蛋白質量を減少させずに蕎麦生地を製造する好ましい手法の別の一例は、蛋白質量が比較的少ない蕎麦粉を加熱処理した加熱蕎麦粉と、蛋白質量が比較的多い非加熱の蕎麦粉との混合物を固形原料として用いて蕎麦生地を調製することである。
(2)の手法において、加熱蕎麦粉の元となる低蛋白蕎麦粉としては、例えば蛋白質含量7.0質量%以下の蕎麦粉を用いればよいが、これより高い蛋白質含量であっても構わない。低蛋白蕎麦粉における蛋白質含量の下限も特に制限されないが、通常、蕎麦粉の蛋白質含量は低い場合でも5.0質量%程度ある。このような低蛋白蕎麦粉に、澱粉を糊化させるため、水を加えて加熱することにより、加熱蕎麦粉を得ることができる。水の添加量は、低蛋白蕎麦粉100質量部に対して20~120質量部が好ましい。糊化を促進するため、水が低蛋白蕎麦粉全体に均一に行き届くように水を添加することが好ましく、例えば、バットなどに低蛋白蕎麦粉を薄く広げ、霧吹き等を使って水を吹きかけるとよい。水を加えた後の加熱は、澱粉が糊化される条件下で行えばよく、加熱温度は60~120℃が好ましく、加熱時間は5~120分が好ましい。
一方、非加熱蕎麦粉としては、蛋白質含量12質量%以上の蕎麦粉を用いるとよい。非加熱蕎麦粉における蛋白質含量の上限は制限されないが、通常、蕎麦粉の蛋白質含量は高い場合でも16質量%程度である。
このような加熱蕎麦粉と非加熱蕎麦粉とを混合するところ、両者の混合比率は、最終的に干し蕎麦の蛋白質含量が10~15質量%で且つ該蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合が35質量%以上となる限り特に制限されないが、目安として、加熱蕎麦粉:非加熱蕎麦粉=15:85~40:60(質量比)とすることができる。
また、(2)の手法においては、加熱蕎麦粉中の澱粉が既に糊化されているため、蕎麦生地製造に用いる液体原料は、湯のように高い温度である必要はなく、例えば室温であってよい。寧ろ、比較的高い温度の液体原料を用いると、非加熱蕎麦粉に含まれる可溶性蛋白質の量が減少してしまうため、液体原料の温度は、70℃以下であることが好ましい。
本発明の干し蕎麦は、上述のような手法を取り入れながら、常法の干し蕎麦の製造方法に従って製造することができる。常法の干し蕎麦の製造方法は、典型的には、固形原料に液体原料を添加し、混捏して、蕎麦生地を製造する生地製造工程と、該生地を所定形状(典型的には麺線状)に成形して蕎麦とする成形工程と、成形した蕎麦を乾燥する乾燥工程を有する。従って、本発明の干し蕎麦を製造するには、生地製造工程に上述の(1)又は(2)の手法を取り入れることが好ましい。そして、成形工程及び乾燥工程においても、生地や蕎麦にできるだけ熱をかけないことが好ましく、具体的には40℃以下で成形工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。生地の成形方法としては、例えば、生地を圧延して得た麺帯を麺線状に切り出す方法、エクストルーダ等を用いて生地を麺線状に押し出す方法が挙げられる。また蕎麦の乾燥方法としては、通風乾燥や減圧乾燥が挙げられる。
本発明の干し蕎麦の形状が麺線状である場合、干し蕎麦としての麺線の直交断面形状が、厚み0.9~1.1mm、幅1.2~1.5mmであると、蕎麦の風味を一層強く感じることができるため好ましい。このような直交断面形状にするためには、例えば、乾燥工程における乾燥による収縮を考慮して、上記成形工程において、圧延ロールにて麺帯を1.0~1.2mmの厚みに調整し、幅1.3~1.7mmに切り出すとよく、その際18~24番の角刃を用いるとよい。
また、本発明の干し蕎麦を茹で調理する際には、可溶性蛋白質量をできるだけ低下させない観点から、6分以内、好ましくは5分以内で茹でることが好ましい。その際、この茹で時間で、干し蕎麦100g当たり茹で蕎麦210~275gになるよう茹で上げることが好ましい。茹であがりが干し蕎麦100g当たり茹で蕎麦210g未満であると、中心部分に強い芯が残る粉っぽい食感となる場合があり、干し蕎麦100g当たり茹で蕎麦275g超であるとやわらかく、茹でている間に麺が千切れやすくなる。
通常、十割の干し蕎麦は、茹で調理のあと数分間蒸らし工程を行う必要があるが、この蒸らし工程は、切れやすい十割蕎麦の茹で時間を短くし、蒸らし中によく湯を浸透させるために行われている。しかしながら蒸らし工程を設けると、ぼそぼそとした食感が生じる場合が少なくない。本発明の干し蕎麦は、このような蒸らし工程を設けずとも、茹で調理だけで蕎麦の中心部にまで湯が浸透し、食感の良い十割蕎麦を製造することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量の測定は、次の方法により行った。
(蛋白質含量の測定方法)
干し蕎麦試料を用意し、その質量を測定した。燃焼法によるタンパク質測定装置(デュマサームN Pro;ゲルハルトジャパン社)を用いて標準法により、この干し蕎麦試料に含まれる窒素量を測定し、所定の係数を用いて窒素量を蛋白質量に変換した。蛋白質量を、干し蕎麦試料の質量で除することにより、干し蕎麦試料の蛋白質含量を求めた。
(可溶性蛋白質含量の測定方法)
干し蕎麦試料から以下の手順で可溶性蛋白質の抽出を行うことにより可溶性蛋白質画分を得た。干し蕎麦試料の質量を測定し、干し蕎麦試料1g当たり0.08Mリン酸緩衝溶液を10mL加えて分散させ、2時間振盪して干し蕎麦試料から可溶性蛋白質を抽出した後、10000rpmで遠心分離して沈殿を除き、上清を常法により凍結乾燥して可溶性蛋白質画分とした。
燃焼法によるタンパク質測定装置(デュマサームN Pro;ゲルハルトジャパン社)を用いて標準法により、得られた可溶性蛋白質画分に含まれる窒素量を測定し、所定の係数を用いて窒素量を可溶性蛋白質量に変換した。可溶性蛋白質量を、抽出に供した干し蕎麦試料の質量で除することにより、干し蕎麦試料の可溶性蛋白質含量を求めた。
以下の実施例及び比較例で用いた原料は次の通りである。
蛋白質量の多い蕎麦粉A(高蛋白蕎麦粉A): 徳梅:石森製粉製(蛋白質含量15.2%)
蛋白質量の多い蕎麦粉B(高蛋白蕎麦粉B):銀えびす:石森製粉製(蛋白質含量12.2%)
蛋白質量の少ない蕎麦粉(低蛋白蕎麦粉):(特)金寿:日穀製粉製(蛋白質含量6.0%)
(実施例1)
高蛋白蕎麦粉Bの5kgを製麺機(坂東太郎;大和製作所社)のミキサーに入れ、ミキサーの周囲をジャケットで65℃に温度維持しながら、65℃の水2Lをミキサーに入れ、3分間ミキシングして生地を製造した。
生地をプレス、圧延して伸ばしを行い、厚さ1.1mmの生地とした。この生地を折り畳み、幅1.45mmで切断して、生蕎麦を得た。この成形工程は、室温にて行った。
生蕎麦を竿掛けして30℃の恒温室で12時間乾燥して、干し蕎麦を得た。
得られた干し蕎麦を試料として、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量を測定し、蛋白質に占める可溶性蛋白質の割合を求めた。また、得られた干し蕎麦の直交断面形状の厚み及び幅を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例1)
ミキサーを75℃に維持しながら、75℃の水を加えてミキシングした以外は、実施例1と同様にして干し蕎麦を製造した。得られた干し蕎麦を試料として、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量を測定し、蛋白質に占める可溶性蛋白質の割合を求めた。また、得られた干し蕎麦の直交断面形状の厚み及び幅を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例2)
ミキサーを85℃に維持しながら、85℃の水を加えてミキシングした以外は、実施例1と同様にして干し蕎麦を製造した。得られた干し蕎麦を試料として、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量を測定し、蛋白質に占める可溶性蛋白質の割合を求めた。また、得られた干し蕎麦の直交断面形状の厚み及び幅を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例3)
ミキサーを55℃に維持しながら、55℃の水を加えてミキシングした以外は、実施例1と同様にして干し蕎麦を製造した。しかしながら生地がつながらず、蕎麦を製造することができなかった。
(実施例2)
低蛋白蕎麦粉をバットに薄く広げ、霧吹きで低蛋白蕎麦粉100質量部に対して30質量部の量で水を均一に吹きかけた後、バットを90℃のオーブンに入れ、低蛋白蕎麦粉を60分間加熱処理して、加熱処理低蛋白蕎麦粉を得た。加熱処理後、バットをオーブンから取り出し、加熱処理低蛋白蕎麦粉を室温になるまで冷却した。
この加熱処理低蛋白蕎麦粉20質量部と、高蛋白蕎麦粉A80質量部をミキサーで均一になるまで混合した。この混合粉5kgを製麺機(坂東太郎;大和製作所社)のミキサーに入れ、水2Lをミキサーに入れ、3分間ミキシングして生地を製造した。生地をプレス、圧延して伸ばしを行い、厚さ1.1mmの生地とした。この生地を折り畳み、幅1.45mmで切断し、生蕎麦を得た。なお、加熱処理低蛋白蕎麦粉と高蛋白蕎麦粉との混合から生蕎麦を得るまでの工程は、すべて室温で行った。得られた生蕎麦を竿掛けして30℃の恒温室で12時間乾燥して、干し蕎麦を得た。
得られた干し蕎麦を試料として、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量を測定し、蛋白質に占める可溶性蛋白質の割合を求めた。また、得られた干し蕎麦の直交断面形状の厚み及び幅を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例4)
加熱処理低蛋白蕎麦粉のみを用いて製造した以外は、実施例2と同様にして干し蕎麦を製造した。得られた干し蕎麦を試料として、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量を測定した。また、得られた干し蕎麦の直交断面形状の厚み及び幅を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例5)
高蛋白蕎麦粉Bをバットに薄く広げ、霧吹きで高蛋白蕎麦粉B100質量部に対して30質量部の量で水を均一に吹きかけた後、バットを90℃のオーブンに入れ、高蛋白蕎麦粉Bを60分間加熱処理して、加熱処理高蛋白蕎麦粉Bを得た。加熱処理後、バットをオーブンから取り出し、加熱処理高蛋白蕎麦粉Bを室温になるまで冷却した。
この加熱処理高蛋白蕎麦粉B20質量部と、低蛋白蕎麦粉80質量部をミキサーで均一になるまで混合した混合粉を用いた以外は、実施例2と同様にして、干し蕎麦を製造した。得られた干し蕎麦を試料として、蛋白質含量及び可溶性蛋白質含量を測定し、蛋白質に占める可溶性蛋白質の割合を求めた。また、得られた干し蕎麦の直交断面形状の厚み及び幅を測定した。それらの結果を表1に示す。
なお、実施例1~2及び比較例1~5で得られた干し蕎麦はいずれも、含水率が13.2~13.6質量%の範囲にあった。
(試験例1)
各実施例及び比較例の蕎麦の製造時、プレス、圧延して伸ばしを行う際の生地の操作性を評価した。評価は、蕎麦の工業的製造の経験がある10名の専門パネラーに、下記評価基準に従って実施してもらった。評価結果をパネラー10名の評価点の平均値として表1に示す。なお、室温で、全層粉5kgを製麺機(坂東太郎;大和製作所社)のミキサーに入れ、水2Lをミキサーに入れて3分間ミキシングして生地とし、この生地をプレス、圧延して伸ばしを行う際及びこの生地を折り畳む際の操作性を1点とした。
<生地の操作性の評価基準>
5点:生地のつながりが非常によく、生地を返す際も切れることが無く、極めて良好。
4点:生地のつながりがよく、生地を返す際も切れることがあまり無く、良好。
3点:圧延中に生地が切れることはないが、生地を返す際に切れることがあり、やや良好。
2点:圧延中に生地が切れることがあって補修が必要であり、生地を返す際も切れやすく、不良。
1点:圧延中に生地が切れやすく、生地を返す際もばらばらになりやすいため折り畳みも困難であり、極めて不良。
(試験例2)
実施例及び比較例の干し蕎麦100gを沸騰水で4分間茹で、水洗して冷却を行い、水をよく切って茹で蕎麦を得た。得られた茹で蕎麦の質量を測定した。この茹で蕎麦を、訓練された10名の専門パネラーにつゆを付けずに食してもらい、その際の蕎麦の風味を下記評価基準に従って評価してもらった。評価結果をパネラー10名の評価点の平均値として表1に示す。
<蕎麦の風味の評価基準>
5点:全層粉のみで手打ち製麺したての生蕎麦のような、蕎麦の風味が非常に感じられ、極めて良好。
4点:全層粉のみで手打ち製麺したての生蕎麦には劣るが、蕎麦の風味が感じられ、良好。
3点:市販の二八蕎麦と同様の風味であり、やや良好。
2点:蕎麦の風味があまり感じられず、やや焦げ臭さがあり、不良。
1点:蕎麦の風味がほとんど感じられず、焦げ臭さが感じられ、極めて不良。
Figure 2022154980000001
(実施例3~10)
乾燥による収縮を考慮して生地の厚みと切り幅を変え、干し蕎麦の厚みと幅を表2のように変更した以外は、実施例2と同様にして、干し蕎麦を製造し、試験例1及び2と同様に評価した。それらの結果を表2に示す。
なお、実施例3~10で得られた干し蕎麦はいずれも、含水率が13.2~13.8質量%の範囲にあった。
Figure 2022154980000002

Claims (4)

  1. 穀粉原料として蕎麦粉のみを含有し、蛋白質の含量が10~15質量%であり、前記蛋白質中に占める可溶性蛋白質の割合が35質量%以上である干し蕎麦。
  2. 十割蕎麦である請求項1に記載の干し蕎麦。
  3. 形状が麺線状であり、麺線の直交断面形状が、厚み0.9~1.1mm、幅1.2~1.5mmである請求項1又は2に記載の干し蕎麦。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の干し蕎麦を6分以内で茹でることにより、干し蕎麦100g当たり茹で蕎麦210~275gになるように調理する蕎麦の調理方法。
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