JP2022154248A - セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末 - Google Patents

セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末 Download PDF

Info

Publication number
JP2022154248A
JP2022154248A JP2021057176A JP2021057176A JP2022154248A JP 2022154248 A JP2022154248 A JP 2022154248A JP 2021057176 A JP2021057176 A JP 2021057176A JP 2021057176 A JP2021057176 A JP 2021057176A JP 2022154248 A JP2022154248 A JP 2022154248A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silicon nitride
sintered body
ceramic sintered
nitride powder
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021057176A
Other languages
English (en)
Inventor
脩平 野中
Shuhei Nonaka
北斗 栗山
Hokuto Kuriyama
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denka Co Ltd
Original Assignee
Denka Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Denka Co Ltd filed Critical Denka Co Ltd
Priority to JP2021057176A priority Critical patent/JP2022154248A/ja
Publication of JP2022154248A publication Critical patent/JP2022154248A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Ceramic Products (AREA)

Abstract

【課題】優れた加工性を有するセラミックス焼結体を提供すること。【解決手段】窒化ホウ素と窒化ケイ素とを含むセラミックス焼結体であって、窒化ホウ素と窒化ケイ素の合計含有量が85~95質量%であり、表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき、380μm×500μmの視野に含まれる、粒子径が50μm以上である窒化ケイ素粒子の個数平均値が1個以下である、セラミックス焼結体を提供する。【選択図】図3

Description

本開示は、セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末に関する。
加工性に優れるセラミックス焼結体として、窒化ケイ素と窒化ホウ素を主成分とするセラミックス焼結体が知られている。例えば、特許文献1では、ノズル等の複雑な形状に加工するためのセラミックス焼結体として、窒化ホウ素と窒化ケイ素の合計含有量が80~90質量%であり、窒化ホウ素と窒化ケイ素の合計に対する窒化ホウ素の質量比率が35~45質量%であるセラミックス焼結体が提案されている。
国際公開第2020/158882号
窒化ケイ素と窒化ホウ素を含むセラミックス焼結体は、他のセラミックス焼結体に比べて加工しやすいものの、切削加工を行う工具には相応の負荷がかかる。このため、加工の際、工具の摩耗及び欠損が生じることがあり、その都度工具の交換が必要となる。工具の摩耗及び欠損を抑制するためには、セラミックス焼結体を、乾式ではなく湿式で加工することが有効である。ただし、湿式加工では、特許文献1に記載されるように、油分及び無機酸塩等がセラミックス焼結体の表面に付着したり、内部の気孔に侵入したりすることが懸念される。
そこで、本開示では、優れた加工性を有するセラミックス焼結体を提供する。本開示では、このようなセラミックス焼結体の焼結原料として好適に用いられる窒化ケイ素粉末を提供する。本開示では、優れた加工性を有するセラミックス焼結体を製造することが可能な製造方法を提供する。
本開示は、窒化ホウ素と窒化ケイ素とを含むセラミックス焼結体であって、窒化ホウ素と窒化ケイ素の合計含有量が85~95質量%であり、表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したとき、380μm×500μmの視野に含まれる、粒子径が50μm以上である窒化ケイ素粒子の個数平均値が1個以下である、セラミックス焼結体を提供する。
上記セラミックス焼結体は、粒子径50μm以上の窒化ケイ素粒子(粗大粒子)の個数が十分に少ない。このため、乾式加工であっても、加工に用いられる工具の摩耗及び欠損を十分に抑制することができる。また、切削加工の際に、加工面において粗大粒子の欠落が抑制されるため、高い寸法精度で加工することができる。したがって、上記セラミックス焼結体は優れた加工性を有する。ただし、加工方法は乾式加工に限定されず、湿式加工であってもよい。
上記視野に含まれる粒子径20μm以上の粒子の個数平均値が5個以下であってよい。これによって、切削加工に用いられる工具の摩耗及び欠損を一層抑制することができる。また、このようなセラミックス焼結体は一層高い寸法精度で加工することができる。したがって、一層優れた加工性を有する。
上記セラミックス焼結体のフッ素の含有量は50質量ppm以下であってよい。このようにフッ素の含有量が低いセラミックス焼結体は、高い寸法精度及び純度が求められる半導体製造装置の部材として好適に用いることができる。
上記セラミックス焼結体の鉄の含有量は250質量ppm以下であってよい。このようなセラミックス焼結体は、黒点の発生が抑制できるため、外観に優れる。
上記セラミックス焼結体の窒化ホウ素の含有量は25~75質量%であり、窒化ケイ素の含有量は25~70質量%であってよい。このようなセラミックス焼結体は、加工性と強度とを十分に高い水準で両立することができる。
本開示は、窒化ホウ素粉末、窒化ケイ素粉末、及び焼結助剤を含む混合物を焼成してセラミックス焼結体を得る工程を有するセラミックス焼結体の製造方法であって、窒化ケイ素粉末に含まれる、目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率が1質量%以下であり、窒化ケイ素粉末の、1300℃以上1450℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)と、1450℃以上1550℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)の濃度比(O/O)は、1.0以上である、セラミックス焼結体の製造方法を提供する。
上記製造方法では、窒化ケイ素粉末に含まれる、目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率が十分に低減されている。また、窒化ケイ素粉末は、大きい濃度比(O/O)を有する。このような窒化ケイ素粉末を用いることによって、セラミックス焼結体に含まれる粗大粒子の個数を十分に低減することができる。したがって、この製造方法で得られるセラミックス焼結体は、優れた加工性を有する。
上述の製造方法で得られるセラミックス焼結体の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき、380μm×500μmの視野に含まれる、粒子径が50μm以上である窒化ケイ素粒子の個数平均値が1個以下であってよい。
上記窒化ケイ素粉末のフッ素の含有量は80質量ppm以下であってよい。このような窒化ケイ素粉末を用いることによって、セラミックス焼結体のフッ素の含有量を十分に低くすることができる。このようなセラミックス焼結体は、加工性に優れるとともに、フッ素の含有量が十分に低い。このため、例えば、半導体製造装置の部材用に好適に用いることができる。
上記窒化ケイ素粉末の鉄の含有量は300質量ppm以下であってよい。このような窒化ケイ素粉末を用いることによって、セラミックス焼結体に生じる黒点を低減することができる。これによって、外観に優れるセラミックス焼結体を製造することができる。
本開示は、目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率が1質量%以下であり、1300℃以上1450℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)と、1450℃以上1550℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)の濃度比(O/O)は、1.0以上である窒化ケイ素粉末を提供する。この窒化ケイ素粉末を焼結原料として用いることによって、粗大粒子の形成を抑制することができる。このため、優れた加工性を有するセラミックス焼結体の焼結原料として好適に用いることができる。
上記窒化ケイ素粉末の粒子径分布におけるD90が5μm以下であり、D90に対するD100の比が3.5以下であってよい。このような窒化ケイ素粉末を焼結原料として用いると、セラミックス焼結体に含まれる粗大粒子の個数を一層低減することができる。したがって、一層優れた加工性を有するセラミックス焼結体を得ることができる。
優れた加工性を有するセラミックス焼結体を提供することができる。このようなセラミックス焼結体の焼結原料として好適に用いられる窒化ケイ素粉末を提供することができる。優れた加工性を有するセラミックス焼結体を製造することが可能な製造方法を提供することができる。
セラミックス焼結体に含まれる窒化ケイ素粒子の一例を示す図である。 セラミックス焼結体の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察画像に含まれる窒化ケイ素粒子を模式的に示す図である。 実施例1のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例2のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例3のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例4のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例5のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例6のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例7のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 実施例8のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 比較例1のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。 比較例2のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
図1は、一実施形態に係るセラミックス焼結体の斜視図である。セラミックス焼結体10は、窒化ホウ素と窒化ケイ素と焼結助剤とを含んでよい。セラミックス焼結体10における窒化ホウ素と窒化ケイ素の合計含有量は85~95質量%であり、90~95質量%であってよい。これによって、加工性と強度とを高い水準で両立することができる。セラミックス焼結体10における窒化ホウ素及び窒化ケイ素の合計含有量は、X線回折によって求めることができる。
セラミックス焼結体10における窒化ホウ素の含有量は、25~75質量%であってよく、30~70質量%であってもよい。セラミックス焼結体10における窒化ケイ素の含有量は、25~70質量%であってよく、30~65質量%であってもよい。このようなセラミックス焼結体は、優れた耐熱性、優れた加工性及び高い強度を兼ね備える。セラミックス焼結体10は、主成分として窒化ホウ素と窒化ケイ素を含むことから複合セラミックス焼結体ということもできる。
セラミックス焼結体10に含まれる窒化ホウ素と窒化ケイ素の合計に対する窒化ホウ素の質量比率は30~75質量%であってよく、35~70質量%であってよく、35~50質量%であってもよい。これによって、優れた加工性を維持しつつ、相対密度を高くして強度及び弾性率を十分に高くすることができる。
セラミックス焼結体10は、窒化ホウ素及び窒化ケイ素の他に、焼結助剤に由来する副成分を含んでいてもよい。副成分としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム等の希土類酸化物、及び、スピネル等の複合酸化物が挙げられる。また、セラミックス焼結体10を製造する際に焼結助剤と酸化物との反応によって生成するガラス質の粒界相を含んでいてもよい。
セラミックス焼結体10の相対密度は、十分な曲げ強度と優れた加工性を高い水準で両立する観点から、76~98%であってよく、79~95%であってよい。相対密度は、アルキメデス法によって測定することができる。
図2は、セラミックス焼結体の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察画像に含まれる窒化ケイ素粒子を模式的に示す図である。本実施形態のSEMの観察画像は、セラミックス焼結体の表面を250倍に拡大した画像である。図2では説明のため一つの窒化ケイ素粒子20を示しており、他の粒子は描かれていない。窒化ケイ素粒子20の粒子径L1は、図2に示すような250倍に拡大された画像において測定される。具体的には、もっとも間隔が大きくなるように窒化ケイ素粒子20の外縁上の2点を選択する。この2点を結ぶ線分の長さが粒子径L1となる。本明細書では、この粒子径L1が50μm以上である窒化ケイ素粒子を、粗大粒子と称する。
本実施形態のセラミックス焼結体は、380μm×500μmの視野に含まれる粗大粒子の個数平均値が1個以下である。ここで、個数平均値は、任意に選択される少なくとも15箇所の視野(380μm×500μm)のそれぞれに含まれる粗大粒子の個数平均値として求められる。個数平均値の信頼性を向上する観点から、視野は、セラミックス焼結体の表面全体から万遍なく選択されることが好ましい。例えば、図1のような六面体の焼結体である場合は、各面(X-Y面に平行な2つの面、Y-Z面に平行な2つの面、Z-X面に平行な2つの面)のそれぞれから2~3箇所の視野を選択することが好ましい。選択した各視野において粗大粒子の個数を測定し、少なくとも15個の測定値を得る。この測定値の算術平均値が、粗大粒子の個数平均値となる。
視野に粗大粒子の一部のみが映し出されている場合は、映し出されている部分で、もっとも間隔が大きくなるように外縁上の2点を選択し、当該2点を結ぶ線分の長さが粒子径L1であると仮定して測定する。この測定値が50μm以上である場合は1個の粗大粒子としてカウントする。一方、この測定値が50μm未満である場合は粗大粒子としてカウントしない。
セラミックス焼結体10の加工性を一層向上する観点から、粒子径が50μm以上である粗大粒子の個数平均値は、0.6個以下であってよく、0.2個以下であってよく、0個であってもよい。同様の観点から、上述の視野に含まれる粒子径20μm以上の窒化ケイ素粒子の個数平均値が5個以下であってよく、3個以下であってよく、1個以下であってもよい。粒子径20μm以上の窒化ケイ素粒子が含まれていなくてもよい。
セラミックス焼結体10のフッ素の含有量は50質量ppm以下であってよく、10質量ppm以下であってよく、0質量ppmであってもよい。このようなセラミックス焼結体10は優れた加工性を有するうえに、フッ素の含有量も十分に低いことから、半導体製造装置の部材として好適に用いることができる。
セラミックス焼結体10の鉄の含有量は250質量ppm以下であってよく、200質量ppm以下であってよく、100質量ppm以下であってよく、0質量ppm以下であってもよい。このようなセラミックス焼結体10は、優れた加工性を有するうえに、黒点の発生が十分に抑制されているため、優れた外観を有する。
セラミックス焼結体10の曲げ強度は、信頼性向上の観点から、100MPa以上であってよく、200MPa以上であってよく、300MPa以上であってもよい。本明細書における曲げ強度は、JIS R1601:2008に準拠して市販の万能試験機を用いて測定される3点曲げ強さである。曲げ強度は、例えば100~400MPaであってよい。
セラミックス焼結体10の弾性率は、加工精度向上の観点から、25GPa以上であってよく、60GPa以上であってもよい。本明細書における弾性率は、JIS R1601:1995に準拠して市販の万能試験機を用いて測定される。弾性率は、例えば25~100GPaである。
セラミックス焼結体10の密度は、1.9~2.8g/cmであってよく、2.0~2.7g/cmであってよい。これによって、快削性と耐摩耗性を両立できる。
セラミックス焼結体の形状は、図1のような形状に限定されない。例えば、円板形状であってもよいし、リング形状であってもよい。どのような形状であっても、表面全体から万遍なく少なくとも15箇所の視野を選択すればよい。
本実施形態のセラミックス焼結体10は、加工性に優れる。このため、乾式加工であっても、切削加工に用いられる工具の摩耗及び欠損を十分に抑制することができる。これによって、寸法精度に優れ、湿式加工に伴う油分及び無機酸塩等の不純物も十分に低減できる。したがって、半導体製造装置の部材用のセラミックス焼結体として好適に用いることができる。
セラミックス焼結体の製造方法の一例を以下に説明する。本例の製造方法は、窒化ホウ素粉末、窒化ケイ素粉末、及び焼結助剤を含む混合物(焼結原料)を焼成してセラミックス焼結体を得る工程を有する。
上記混合物に含まれる窒化ケイ素粉末は、目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率が1質量%以下である。このような窒化ケイ素粒子を用いることによってセラミックス焼結体に含まれる粗大粒子の個数を十分に低減することができる。同様の観点から、当該比率は0.1質量%以下であってよく、0.05質量%以下であってよく、0.02質量%以下であってもよい。このような窒化ケイ素粉末は、通常の方法で得られる窒化ケイ素粉末を、例えば、粉砕及び/又は篩い分けすることによって得ることができる。
粉砕及び/又は篩い分け前の窒化ケイ素粉末(原料粉末)の平均粒子径(D50)は0.5~3.0μmであってよい。この範囲の窒化ケイ素粉末を用いて、粉砕及び/又は篩い分けによって目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率を調整する。これによって、D50及びD90等も調整しやすくなる。
粉砕前の窒化ケイ素粉末の全酸素量は0.8~2.2質量%であってよい。全酸素量がこの範囲にあり、且つ粉砕前の窒化ケイ素粉末の平均粒子径(D50)を0.5~3.0μmにすることで、下記のとおり、焼結原料として用いる窒化ケイ素粉末の濃度比(O/O)を、例えば1.0以上、好ましくは1.3以上に調整しやすくなる。なお、焼結原料として用いる窒化ケイ素粉末の全酸素量は、例えば、窒化ケイ素粉末を製造する際の焼成工程で用いる、原料のケイ素粉末の酸素量によって調整してもよいし、焼結工程の雰囲気の成分によって調整してもよい。ケイ素粉末の酸素量が高い場合には、例えば、フッ化水素酸を含む前処理液を用いて、ケイ素粉末に含まれる酸素量を低減することができる。
最大酸素濃度(O)及び最大酸素濃度(O)の測定には、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析装置(商品名:EMGA-920)を用いることができる。市販の酸素・窒素分析装置を用いる。測定手順は以下のとおりである。測定用の試料を、ヘリウムガスの雰囲気中、8℃/秒の昇温速度で20℃から2000℃まで昇温する。昇温に伴って脱離する酸素を赤外線吸収法によって検知する。昇温当初は、窒化ケイ素粉末の表面に結合している酸素が脱離する。更に加熱し、窒化ケイ素が分解する温度になると、窒化ケイ素粉末の内部にある酸素が脱離する。
最大酸素濃度(O)は、1300℃以上且つ1450℃未満の温度範囲において検出される酸素濃度の最大値である。最大酸素濃度(O)は、1450℃以上1550℃未満の温度範囲において検出される酸素濃度の最大値である。最大酸素濃度(O)に対する最大酸素濃度(O)の比(濃度比:O/O)は、例えば1.0以上であり、好ましくは1.3以上である。このような範囲することで、粗大粒子の形成を抑制できる。その理由は、以下のとおり推察される。
1300℃以上1450℃未満の温度範囲で検出される酸素は、主に、窒化ケイ素粉末の表面に存在する酸素であると考えられる。一方、1450℃以上1550℃未満の温度範囲で検出される酸素は、主に窒化ケイ素粉末の内部(表面より内側)の酸素であると考えられる。窒化ケイ素粉末の内部の酸素の比率が大きいと焼結時に凝集して粗大化する傾向にある。したがって、濃度比(O/O)が上記範囲であれば、表面酸素の比率が高くなり、焼結時に粗大粒子が形成することを抑制できると考えられる。
窒化ケイ素粉末を粉砕すれば、窒化ケイ素粒子の内部に存在していた酸素が表面に現れる。これによって、濃度比(O/O)を高くすることができる。したがって、粉砕することを前提にして粉砕前の窒化ケイ素粉末(原料粉末)の大きさを設定すればよい。粉砕前の窒化ケイ素粉末の平均粒子径(D50)が0.5~3.0μmである場合、ボールミルによる粉砕時間は数時間であってよい。ボールミルによる粉砕時間は、例えば3~6時間であってよい。
焼結原料に用いられる窒化ケイ素粉末の鉄の含有量は300質量ppm以下であってよく、250質量ppm以下であってもよい。このように鉄の含有量が低い窒化ケイ素粉末を用いることによって、黒点の発生を抑制し、優れた外観を有するセラミックス焼結体を得ることができる。鉄の含有量は酸処理により調整することができる。酸処理に用いる酸としてはフッ酸、塩酸、硝酸、及び硫酸等が挙げられる。酸濃度を高くすることでより多くの鉄を除去することができる。窒化ケイ素粒子の表面の鉄酸化被膜を十分に除去するためには、フッ酸による酸処理を行うことが好ましい。酸処理に用いる酸の酸濃度は5~15質量%であってよい。
焼結原料に用いられる窒化ケイ素粉末のフッ素の含有量は、80質量ppm以下であってよく、60質量ppm以下であってよく、10質量ppm以下であってもよい。このような窒化ケイ素粉末を用いることによって、セラミックス焼結体におけるフッ素の含有量を十分に小さくすることができる。フッ酸を用いて窒化ケイ素粉末の酸処理を行う場合には、酸処理後に加熱による脱フッ素処理を行ってもよい。加熱による脱フッ素処理を行うことによって、フッ素の含有量を低減することができる。加熱条件は適宜設定することが可能であり、例えば1000~1500℃、3~10時間であってよい。よりシビアな加熱条件にすることによって、窒化ケイ素粉末のフッ素の含有量を低減することができる。
液相焼結を促進しつつ過剰な粒成長を抑制する観点から、焼結原料に用いられる窒化ケイ素粉末の全酸素量は、0.5~2.5質量%であってよく、1.3~2.0質量%であってもよい。窒化ケイ素粉末の全酸素量は、最大酸素濃度(O)及び最大酸素濃度(O)を測定する際の積算値として求めることができる。すなわち、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析装置(商品名:EMGA-920)を用い、最大酸素濃度(O)及び最大酸素濃度(O)を測定する時と同じ条件で測定することができる。
窒化ケイ素粉末の平均粒子径(D50)は、異常粒成長を十分に抑制してセラミックス焼結体に含まれる粗大粒子を低減する観点から、0.3~2μm以下であってよく、0.4~1.5μmであってもよい。であってよく、0.5~1.0μmであってもよい。
本開示における粒子径分布は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定される。このようにして測定される個数基準の粒子径分布の累積分布において、小粒径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径が平均粒子径(D50)である。この累積分布において、小粒径からの積算値が全体の90%に達したときの粒子径がD90であり、小粒径からの積算値が全体の100%に達したときの粒子径がD100である。粒子径分布の測定には、マイクロトラック(日機装株式会社製、商品名:MT3300EXII)を用いることができる。
窒化ケイ素粉末の粒子径分布におけるD90は5μm以下であり、D90に対するD100の比は3.5以下であってよい。このような窒化ケイ素粉末は粒径の大きな粒子が十分に低減されているため、セラミックス焼結体における粗大粒子を十分に低減することができる。また、窒化ケイ素粉末の粒子径分布におけるD10は、0.2~0.6μmであってよい。D100は3~10μmであってよい。
窒化ケイ素粉末のα化率(Si全体に対するα-Siの相比率)は、80%以上であってよく、85%以上であってもよい。このようなα化率を有する窒化ケイ素粉末を用いることによって、焼成の際の異常粒成長が抑制され、窒化ケイ素粒子が粗大化することを抑制することができる。窒化ケイ素粉末のα化率は、X線回折の回折線強度によって求めることができる。
窒化ホウ素粉末としては、例えば、平均粒子径(D50)が、5.0μmのものを用いることができる。窒化ホウ素粉末は、アモルファスであってもよいし、結晶化していてもよい。結晶化している六方晶系(h-BN)の窒化ホウ素粉末を用いると、窒化ホウ素粒子の鱗片形状によって、セラミックス焼結体に異方性が生じやすくなる。このため、窒化ホウ素粉末は、結晶化していないアモルファスの窒化ホウ素粉末であってよい。窒化ホウ素粉末がアモルファスである場合、以下の要領で求められる黒鉛化指数(GI)が5.0以上であることが好ましい。
黒鉛化指数(GI:Graphitization Index)は、X線回折図の(100)面、(101)面及び(102)面の積分強度比、すなわち面積比を次式によって算出して求める。
GI=[面積{(100)+(101)}]/[面積(102)]
窒化ホウ素粒子は、完全に結晶化すると、GIは1.60になるとされている。ただし、高結晶性でかつ粒子が十分に成長した鱗片形状の六方晶窒化ホウ素粉末の場合、粒子が配向しやすいためGIはさらに小さくなる。すなわち、GIは鱗片形状の六方晶窒化ホウ素粉末の結晶性の指標であり、この値が小さいほど結晶性が高くなる。GIが5.0以上である窒化ホウ素粉末は、窒化ホウ素の一次粒子の結晶性が低い。このため、このような窒化ホウ素粉末を用いるセラミックス焼結体の異方性を低減することができる。GIは結晶化温度によって制御することができる。
GIの測定は、例えば、「D8 ADVANCE Super Speed」(ブルカー・エイエックスエス社製)を用いて測定できる。測定の前処理として、必要に応じて窒化ホウ素粉末を、メノウ乳鉢等を用いて粉砕する。そして、窒化ホウ素粉末をプレス成型し成形体を作製する。X線は、成形体の面内方向の平面の法線に対して、互いに対称となるように照射する。測定のX線源にはCuKα線を用い、管電圧は45kV、管電流は360mAである。
焼結助剤との反応サイトの減少を抑制して液相焼結を促進する観点から、窒化ホウ素粉末の全酸素量の下限は1.0質量%であってよい。窒化ホウ素粉末の全酸素量の上限は、入手の容易性の観点から3.0質量%であってよく、2.6質量%であってもよい。窒化ホウ素粉末の全酸素量は、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析装置(商品名:EMGA-920)を用い測定することができる。
焼結助剤としては、酸化物系のものを用いることができる。例えば、Y3、MgO及びAl等が挙げられる。窒化ケイ素粉末、窒化ホウ素粉末及び焼結助剤を配合して混合物を調製する。混合物における、窒化ホウ素粉末と窒化ケイ素粉末の合計に対する窒化ホウ素の質量比率は30~75質量%であってよく、35~70質量%であってもよく、35~50質量%であってもよいこれによって、優れた耐熱性、優れた加工性及び高い強度を兼ね備えるセラミックス焼結体を得ることができる。
混合物における窒化ホウ素粉末と窒化ケイ素粉末の合計含有量は85~95質量%であってよく、90~95質量%であってよい。これによって、焼結助剤の含有量を適度な範囲に調整し、加工性と強度とを高い水準で兼ね備えるセラミックス焼結体を製造することができる。
混合物の調製は乾式粉砕及び乾式混合によって行ってよいし、ボールミル等を用いて湿式粉砕及び湿式混合によって行ってもよい。また、ビーズミル等の高い分散力を有する装置を用いてよい。湿式粉砕及び湿式混合に用いる液媒は有機溶媒であってよく、例えば、アルコール類であってもよい。成形性をさらに向上するために、有機バインダーを固形分に対して3質量%以下の割合で配合し、スプレードライヤーにより造粒を行ってもよい。
得られた混合物の焼成は、ホットプレスによって行ってよい。また、金型及び/又はCIPによって所定の形状の成形体を作製し、当該成形体を焼成してもよい。成形体の形状は特に限定されない。
ホットプレスは、例えば、不活性ガス雰囲気下、10~30MPaの加圧しながら、1650~1850℃の温度範囲まで加熱して行う。当該温度範囲での保持時間は、1~10時間であってよい。成形体を焼成する場合は、不活性雰囲気中、常圧(大気圧)で焼成する。焼成温度は、例えば1650~1850℃であってよく、1700~1800℃であってもよい。これによって、窒化ケイ素の分解を抑制しつつ、十分に緻密化したセラミックス焼結体を得ることができる。上述の焼成温度に保持する時間は、1~10時間であってよく、2~8時間であってもよい。なお、造粒を行った混合物を用いる場合には、上述の焼成前に400~600℃の温度範囲に加熱して脱脂を行ってよい。
このようにして、セラミックス焼結体10を得ることができる。セラミックス焼結体10は加工性に優れるため、乾式加工で加工することができる。湿式加工でも加工することは可能であるが、加工時のクーラント等に含まれる油分及び有機・無機酸塩が、セラミックス焼結体10の表面に付着したり、内部の気孔に侵入したりする傾向にある。洗浄等では、これらの成分を完全に除去することは困難である。このような成分がセラミックス焼結体の表面又は内部に残存していると、半導体製造装置の部材等に使用した場合に溶融金属と反応したり、不純物として混入したりすることが懸念される。このため乾式加工でも加工が可能なセラミックス焼結体10は、不純物の混入が低減できる点で種々の用途に好ましく用いることができる。
以上、幾つかの実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、セラミックス焼結体10は、加工がしやすく、且つ高い寸法精度で加工することができるため、半導体製造装置の部材に限定されず、種々の用途に用いることができる。
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
[セラミックス焼結体の作製]
(実施例1)
市販の窒化ケイ素の粉末(α化率:84.7%、平均粒子径D50:0.91μm、全酸素量:1.512質量%)を、原料粉末として準備した。所望の粒子径分布に調整するため、この原料粉末をボールミルによって粉砕し、篩を用いて篩い分けを行った。このようにして、焼結原料となる窒化ケイ素粉末Aを調製した。窒化ケイ素粉末Aの粒子径分布、α化率、フッ素含有量、全酸素量、酸素濃度比、Fe含有量、及びAl含有量の測定を以下の手順で行った。なお、実施例1で用いた窒化ケイ素粉末はFe含有量が少ないため、酸処理を行わなかった。
窒化ケイ素粉末Aの粒子径分布を測定するため、ヘキサメタリン酸ナトリウムの20質量%水溶液2mlと純水200mlとを混合して混合溶媒を調製した。この混合溶媒中に、窒化ケイ素粉末Aの測定サンプル60mgを投入した。そして、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、商品名:US-300)で3分間混合及び分散を行った。その後、マイクロトラック(日機装株式会社製、商品名:MT3300EXII)を用いて、個数基準の粒度分布を測定した。マイクロトラックの循環器の溶媒には純水を使用した。この純水を使用して、測定サンプルにおける窒化ケイ素粉末Aの濃度を調節した。粒子径分布の累積分布において、小粒径からの個数基準の積算値が、10%、50%,90%及び100%となる粒子径をそれぞれ求めた。これらの結果を、それぞれ、D10、D50、D90及びD100として表1に示す。
目開き20μmの篩を用いて、10gの窒化ケイ素粉末Aの篩い分けを行った。篩上に残った窒化ケイ素粉末の質量比率、表1に「篩上の比率」として示した。
窒化ケイ素粉末Aのα化率は、以下の手順で測定した。X線回折装置(リガク製、装置名:Ultima IV)を用い、CuKα線で窒化ケイ素粉末のX線回折を行った。α相には、(102)面の回折線強度Ia102と、(210)面の回折線強度Ia210を用いた。β相には、(101)面の回折線強度Ib101と、(210)面の回折線強度Ib210を用いた。これらの回折線強度を用いて、以下の式によってα化率を算出した。結果は表1に示すとおりであった。
α化率(%)=
(Ia102+Ia210)/(Ia102+Ia210+Ib101+Ib210)×100
窒化ケイ素粉末Aのフッ素の含有量を、以下の要領で測定した。自動試料燃焼装置(三菱化学株式会社製、装置名:AQF-2100H型)を用いて窒化ケイ素粉末Aを加熱し、発生したガスを水に溶解させた。イオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、装置名:ICS-2100)を用いて、水中に溶解したフッ素を測定した。この測定値に基づいて、窒化ケイ素粉末Aのフッ素の含有量を算出した。結果は表1に示すとおりであった。
窒化ケイ素粉末Aの全酸素量、最大酸素濃度(O)及び最大酸素濃度(O)の測定には、酸素・窒素分析装置(株式会社堀場製作所製、装置名:EMGA-920)を用いた。濃度比(O/O)は、最大酸素濃度(O)及び最大酸素濃度(O)の測定値から算出した。窒化ケイ素粉末AのFe及びAlの含有量は以下の手順で分析した。窒化ケイ素粉末のブリケットを成形して測定試料を調製した。蛍光X線(XRF)分析装置(株式会社リガク製、商品名:PrimusII)を用いて測定試料のFe及びAlの含有量を測定した。結果は表1に示すとおりであった。
窒化ホウ素粉末としては、アモルファスのものを用いた。窒化ホウ素粉末の全酸素量は1.60質量%であり、GIは5.0以上であった。焼結助剤としては、酸化アルミニウムと酸化イットリウムを用いた。焼結助剤全体に対する酸化アルミニウムの比率は、24質量%であった。
窒化ケイ素粉末A、窒化ホウ素粉末及び焼結助剤を配合して配合物を得た。なお、窒化ホウ素粉末と窒化ケイ素粉末の合計に対する窒化ホウ素粉末の質量比率は35質量%とした。
上述の配合物を混合して混合物を調製した。窒素雰囲気下でこの混合物のホットプレスを行って、セラミックス焼結体を作製した。ホットプレスは、18MPaで加圧しながら、1700℃の温度で3時間保持することによって行った。セラミックス焼結体における窒化ケイ素、窒化ホウ素、及び、焼結助剤由来の成分、の各含有割合は、各原料の配合割合と同じであった。
(実施例2)
窒化ホウ素粉末と窒化ケイ素粉末の合計に対する窒化ホウ素粉末の質量比率を70質量%に変更し、ホットプレスの条件を1800℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。
(実施例3)
ホットプレスの条件を1750℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。
(実施例4)
市販の窒化ケイ素の粉末(α化率:85.7%、平均粒子径D50:2.52μm、全酸素量:1.089質量%)を、原料粉末として準備した。所望の粒子径分布に調整するため、この原料粉末をボールミルによって粉砕し、篩を用いて篩い分けを行った。このようにして、焼結原料となる窒化ケイ素粉末Bを調製した。窒化ケイ素粉末Bの各測定を実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。この窒化ケイ素粉末Bを焼結原料として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。なお、実施例4で用いた窒化ケイ素粉末はFe含有量が低いため、酸処理を行わなかった。
(実施例5)
ホットプレスの条件を1650℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。
(実施例6)
市販の窒化ケイ素の粉末(α化率:91.4%、平均粒子径D50:1.18m、全酸素量:1.116質量%)を、原料粉末として準備した。所望の粒子径分布に調整するため、この原料粉末をボールミルによって粉砕し、篩を用いて篩い分けを行った。その後、表2に示すFe含有量になるようにフッ酸による酸処理を行った。その後、脱フッ素処理として、1100℃で3時間の加熱を行った。このようにして、焼結原料となる窒化ケイ素粉末Cを調製した。窒化ケイ素粉末Cの各測定を実施例1と同様にして行った。結果を表2に示す。
このようにして得られた窒化ケイ素粉末Cを焼結原料として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。窒化ケイ素粉末の評価結果は表2に示すとおりであった。
(実施例7)
ホットプレスの条件を1725℃に変更したこと以外は、実施例6と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。
(実施例8)
ホットプレスの条件を1650℃に変更したこと以外は、実施例6と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。
(比較例1)
市販の窒化ケイ素粉末(α化率:91.24%、平均粒子径D50:0.92μm、全酸素量:0.752質量%)の粉砕及び篩い分けを行わずに、そのまま焼結原料として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。この窒化ケイ素粉末Dの濃度比(O/O)は実施例6~8と異なり、1.0であった。窒化ケイ素粉末Dのその他の評価結果は表2に示すとおりであった。
(比較例2)
市販の窒化ケイ素粉末(α化率:91.2%、平均粒子径D50:0.92μm、全酸素量:0.752質量%)を、原料粉末として準備した。所望の粒子径分布に調整するため、この原料粉末をボールミルによって粉砕し、篩を用いて篩い分けを行った。その後、表2に示すFe含有量になるようにフッ酸による酸処理を行った。その後、脱フッ素処理として、1300℃で6時間の加熱を行った。このようにして、焼結原料となる窒化ケイ素粉末Eを調製した。窒化ケイ素粉末Eの各測定を実施例1と同様にして行った。結果を表2に示す。
このようにして得られた窒化ケイ素粉末Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス焼結体を作製した。窒化ケイ素粉末の評価結果は表2に示すとおりであった。
[セラミックス焼結体の評価]
以下のとおり、各実施例及び各比較例で得られたセラミックス焼結体の評価を行った。
[セラミックス焼結体の評価]
<粗大粒子の個数の評価>
リング形状のセラミックス焼結体から、任意に15箇所を選択し、表面のSEM観察(倍率:250倍)を行った。15箇所は、表面全体からなるべく万遍なく選択し、選択される位置が集中しないようにした。
図3~図10は、実施例1~実施例8のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。図11、図12は、比較例1及び比較例2のセラミックス焼結体の表面のSEM写真である。図3~図12には、各セラミックス焼結体の2箇所の画像のSEM写真が示されている。これらの写真に示すような画像において、250粗大粒子の個数をカウントした。
380μm×500μmの視野において、粒子径が50μm以上の窒化ケイ素粒子の個数を測定した。測定は、各実施例及び各比較例において、それぞれ15箇所で行った。そして、各視野で検出された個数の算術平均値を求めた。また、同じ視野において、粒子径が20μm以上の窒化ケイ素粒子の個数を測定した。そして、50μm以上の窒化ケイ素粒子の場合と同様にして、粒子径が20μm以上の窒化ケイ素粒子の個数の算術平均値を求めた。これらの結果は、小数点以下を四捨五入して、表1及び表2に示した。表1及び表2では、粒子径が50μm以上の窒化ケイ素粒子の個数平均値を「粒子数(≧50)」の欄に、粒子径が20μm以上の窒化ケイ素粒子の個数平均値を「粒子数(≧20)」の欄にそれぞれ示した。
<密度>
アルキメデス法によって各セラミックス焼結体の密度を測定した。結果は表1及び表2に示すとおりであった。
<曲げ強度>
各セラミックス焼結体を所定形状に加工して測定用の試験片を準備した。市販の万能試験機(株式会社島津製作所製、装置名:オートグラフ AG2000D)を用い、JIS R 1601:2008に準拠して3点曲げ強度を測定した。3点曲げ強度は、ホットプレスの加圧方向に対して平行方向に荷重をかけたときの強度とした。結果は表1及び表2に示すとおりであった。
<弾性率>
各セラミックス焼結体を所定形状に加工して測定用の試験片を準備した。市販の万能試験機(株式会社島津製作所製、装置名:オートグラフ AG2000D)を用い、JIS R1601:1995に準拠して弾性率を測定した。弾性率は、ホットプレスの加圧方向に対して平行方向に荷重をかけたときの弾性率とした。結果は、表1及び表2に示すとおりであった。
<ショア硬度>
各セラミックス焼結体を所定形状に加工して測定用の試験片を準備した。市販のショア硬度計(株式会差島津製作所製、装置名:ショア硬度計 D型)を用い、JIS Z 2246:2000に準拠してショア硬度を測定した。ショア硬度は、ホットプレスの加圧方向に対して平行方向に荷重をかけたときの強度とした。結果は、表1及び表2に示すとおりであった。
<加工性の評価>
各セラミックス焼結体の端部に、厚さ方向(ホットプレスの加圧方向)に沿ってドリル状の工具(φ=2.5mm、1mm)を用いて溝を形成した。溝を形成した後に、ドリル状の工具の摩耗及び欠損の有無を目視によって以下の基準で評価した。結果は、表1及び表2に示すとおりであった。
A:工具の欠損は発生せず、工具の摩耗も小さい。
B:工具の欠損は発生しなかったが、工具の摩耗が大きい。
C:工具の欠損が発生した。
Figure 2022154248000002
Figure 2022154248000003
実施例1~実施例5の加工性の評価は「A」、実施例6~8の加工性の評価は「B」であった。これに対し、粒径が50μmを超える窒化ケイ素の粗大粒子を含んでいた比較例1,2の加工性の評価は「C」であった。また、実施例1~5と実施例6,7との対比から、粒径が20μmを超える窒化ケイ素の粒子の個数が少ない方が、加工性に一層優れることが確認された。
本開示によれば、優れた加工性を有するセラミックス焼結体を提供することができる。優れた加工性を有するセラミックス焼結体を製造することが可能な製造方法を提供することができる。
10…セラミックス焼結体、20…窒化ケイ素粒子。

Claims (8)

  1. 窒化ホウ素と窒化ケイ素とを含むセラミックス焼結体であって、
    前記窒化ホウ素と前記窒化ケイ素の合計含有量が85~95質量%であり、
    表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき、380μm×500μmの視野に含まれる、粒子径が50μm以上である窒化ケイ素粒子の個数平均値が1個以下である、セラミックス焼結体。
  2. 前記視野に含まれる粒子径20μm以上の窒化ケイ素粒子の個数平均値が5個以下である、請求項1に記載のセラミックス焼結体。
  3. フッ素の含有量が50質量ppm以下である、請求項1又は2に記載のセラミックス焼結体。
  4. 鉄の含有量が250質量ppm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体。
  5. 前記窒化ホウ素の含有量が25~75質量%であり、前記窒化ケイ素の含有量が25~70質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体。
  6. 窒化ホウ素粉末、窒化ケイ素粉末、及び焼結助剤を含む混合物を焼成してセラミックス焼結体を得る工程を有するセラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記窒化ケイ素粉末に含まれる、目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率が1質量%以下であり、
    前記窒化ケイ素粉末の、1300℃以上1450℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)と、1450℃以上1550℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)の濃度比(O/O)は、1.0以上である、セラミックス焼結体の製造方法。
  7. 目開き20μmの篩上の窒化ケイ素粒子の比率が1質量%以下であり、
    1300℃以上1450℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)と、1450℃以上1550℃未満の温度範囲で測定される酸素濃度の最大値(O)の濃度比(O/O)は、1.0以上である、窒化ケイ素粉末。
  8. 粒子径分布におけるD90が5μm以下であり、D90に対するD100の比が3.5以下である、請求項7に記載の窒化ケイ素粉末。
JP2021057176A 2021-03-30 2021-03-30 セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末 Pending JP2022154248A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021057176A JP2022154248A (ja) 2021-03-30 2021-03-30 セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021057176A JP2022154248A (ja) 2021-03-30 2021-03-30 セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022154248A true JP2022154248A (ja) 2022-10-13

Family

ID=83557748

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021057176A Pending JP2022154248A (ja) 2021-03-30 2021-03-30 セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022154248A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Liang et al. Mechanical properties and thermal conductivity of Si3N4 ceramics with YF3 and MgO as sintering additives
JP4869070B2 (ja) 高熱伝導性窒化ケイ素焼結体及び窒化ケイ素構造部材
Zhou et al. Effects of intergranular phase chemistry on the microstructure and mechanical properties of silicon carbide ceramics densified with rare‐earth oxide and alumina additions
KR101794410B1 (ko) 고 열전도도 질화규소 소결체 및 이의 제조 방법
JP5242529B2 (ja) 快削性セラミックスの製造方法
WO2017057552A1 (ja) 透明アルミナ焼結体の製法
JP4723127B2 (ja) アルミナセラミックス焼結体及びその製造方法並びに切削工具
US11059753B2 (en) Oriented ALN sintered body and method for producing the same
WO2016068222A1 (ja) 立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体
JP4325824B2 (ja) 高熱伝導性窒化珪素焼結体の製造方法
US10541064B2 (en) SiC powder, SiC sintered body, SiC slurry and manufacturing method of the same
JPH11314969A (ja) 高熱伝導性Si3N4焼結体及びその製造方法
JP2022154248A (ja) セラミックス焼結体及びその製造方法、並びに窒化ケイ素粉末
US11111182B2 (en) Ceramic sintered body
JP7027338B2 (ja) 透明AlN焼結体及びその製法
JP2003313079A (ja) 窒化ケイ素質焼結体および窒化ケイ素質焼結体の製造方法、並びにそれを用いた回路基板
JP2004262756A (ja) 窒化ケイ素質粉末、窒化ケイ素質焼結体及びこれを用いた電子部品用回路基板
KR102206446B1 (ko) 질화규소계 세라믹 및 이의 제조 방법
JP2008273753A (ja) 炭化硼素質焼結体および防護部材
JPH05301762A (ja) 靭性のすぐれた酸化アルミニウム基セラミックス製切削工具の製造法
JP2008156142A (ja) 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法
JP2008297134A (ja) 炭化硼素質焼結体および防護部材
JP2008297135A (ja) 炭化硼素質焼結体およびその製法ならびに防護部材
WO2020158882A1 (ja) セラミックス焼結体及びその製造方法、並びにノズル部材
JP2005097016A (ja) 高強度ガラス・フッ素金雲母系マシナブルセラミックス及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231127