JP2022150510A - 導電膜および導電デバイス - Google Patents

導電膜および導電デバイス Download PDF

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Junko KAWAHARA
大輔 中曽根
Daisuke Nakasone
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Abstract

【課題】本発明の目的は、優れた導電性、耐久性を有する導電膜を提供することである。【解決手段】上記課題は、導電性炭素材料(A)とバインダー樹脂(B)とを含む導電膜あって、X線回折(XRD)で測定した、炭素(002)面における配向度が70%以上である導電膜、または、60°光沢が4~30である前記導電膜、密度が1.2~2.0g/ccである前記導電膜、または、導電性炭素材料(A)が、平均粒子径の異なる二種類以上の炭素材料を含む前記導電膜により解決できる。【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、導電膜および導電デバイスに関する。
近年、エレクトロニクスの発達は目覚ましいものがあり、各種電子機器で使用される導電性材料についても製品の小型・軽量化、低コスト化、様々な使用環境下での高寿命化が求められるようになってきている。例えば、電子機器の基盤配線や電子機器を接続する配線を製造する場合、導電性が良好な導電性組成物が必要となるが、銀や銅等の金属フィラーを用いる導電性組成物が一般的であり、コストや耐久性などの点で大きな課題が今なお解決できていない。一方、金属を用いない導電性のカーボン材料を用いた導電性組成物も様々な検討がなされているが、導電性が不十分なため、帯電防止用途等の半導電性用途での使用に限られてきた。
また、導電性の炭素材料は、今日までに様々な黒鉛やカーボンナノチューブ等の体積抵抗率の低い良好な導電材料も検討されてきた。これら導電性の良好な炭素材料の体積抵抗率は、10-2Ω・cm未満と高い導電性を示すが、樹脂や溶剤に均一混合・分散することが困難なこともあり、導電性の炭素材料や樹脂、溶剤等を含む導電性組成物から得られた塗膜や成形物中の炭素材料間の接触に不良が生じ、その導電性を十分に発現できないことが課題であった。
特許文献1では、膨張化黒鉛と熱可塑性樹脂中を加熱しながら混錬する方法が記載されている。加熱により、黒鉛粒子と熱可塑性樹脂が流動状態において混錬されるため、黒鉛粒子を適度に分散することができるが、黒鉛材料が成形物中に均一に分布されているとは言い難く、導電性および耐久性が不十分である問題があった。
特許文献2では、アスペクト比が3以下の黒鉛と熱可塑性樹脂を混錬することで、剛性が高く、かつ導電性の異方性が小さい樹脂組成物を提供する方法が記載されている。アスペクト比の小さな黒鉛を使用することで組成物の等方性は向上するものの、黒鉛粉を乾式粉砕しているため、微細化による構造破壊と黒鉛粉間の接触に不良が生じ、導電性が低下する問題があった。
特許文献3では、特定の芳香族ビニル共重合体を備える板状黒鉛と樹脂とを含む組成物に配向処理をして、黒鉛粉を一定方向に配向させる方法が記載されている。加圧成形および磁場や電場印加等の配向工程を導入することで、黒鉛本来の特性を損ねずに、黒鉛粒子間の接触を良化することができるが、この操作に伴ったランニングコストや成形物の長期保管における導電性が低下する問題があった。
特開平2-204317号公報 特開2001-60413号公報 特開2013-119577号公報
本発明の目的は、前記問題点を鑑み、優れた導電性、耐久性を有する導電膜を提供することである。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、下記〔1〕~[7]に関する。
すなわち、本発明は、導電性炭素材料(A)とバインダー樹脂(B)とを含む導電膜あって、X線回折(XRD)で測定した、炭素(002)面における配向度が70%以上である導電膜に関する。
また、本発明は、60°光沢が4~30である前記導電膜に関する。
また、本発明は、密度が1.2~2.0g/ccである前記導電膜に関する。
また、本発明は、導電性炭素材料(A)が、平均粒子径の異なる二種類以上の炭素材料を含む前記導電膜に関する。
また、本発明は、導電性炭素材料(A)が、ホウ素含有炭素材料を含むことを特徴とする前記導電膜に関する。
また、本発明は、ホウ素含有炭素材料のホウ素の含有量が0.005~15mol%である前記導電膜に関する。
また、本発明は、前記導電膜を含む導電デバイスに関する。
本発明では、導電性炭素材料(A)とバインダー樹脂(B)から形成される導電膜であって、導電膜の配向度を選択的に制御することで、炭素材料間で優れた導電ネットワーク形成を可能にし、優れた導電性、耐久性を両立することできる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<導電性炭素材料(A)>
本発明における導電性炭素材料(A)としては、無機炭素材料を用いることができる。例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、黒鉛、繊維状炭素(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンを2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さから、黒鉛、カーボンブラック、繊維状炭素およびグラフェンが好ましく、カーボンブラック、黒鉛、繊維状炭素およびグラフェンを2種類以上併用するとより好ましい。
黒鉛とは、炭素の六角板状結晶であるが、例えば、人造黒鉛や天然黒鉛を使用することができる。人造黒鉛とは、無定形炭素の熱処理により、不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般的には石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として製造される。天然黒鉛としては、土状黒鉛、塊状黒鉛、鱗状黒鉛等が挙げられる。さらに、膨張化黒鉛、薄片化により成型性、導電性を向上させた薄片化黒鉛、球状化粉砕加工により配向性を抑えた球状化黒鉛、溶けた銑鉄が溶銑予備処理等で温度低下するのに伴い析出した、平面的に結晶化した炭素であるキッシュ黒鉛等も挙げられる。なお、膨張化黒鉛とは、例えば、天然黒鉛等を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末である。特に導電性の観点から、天然黒鉛を使用することが好ましい。
市販の黒鉛としては、例えば、鱗状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のJ-CPB、MCP-10、MCP-15、CPB、CB-150、FB-150、CB-100、FB-100、F#2、F#1、JB-5、ACP-1000、ACP、ACB-150、ACB-100、ACB-50、伊藤黒鉛社製のSRP7、SRP-150、SRP10、1500M-Aが挙げられる。薄片状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛社製のCX-3000、FBF、BF、CBR、SSC-3000、SSC-600、SSC-3、SSC、CX-600、CPF-8、CPF-3、CPB-6S、CPB、96E、96L、96L-3、90L-3、CPC、S-87、K-3、CF-80、CF-48、CF-32、CP-150、CP-100、CP、HF-80、HF-48、HF-32、SC-120、SC-80、SC-60、SC-32、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-6R、CGB-60R、CGB-90Rが挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、S-3、AP-6、300Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のRA-3000、RA-15、RA-44、GX-600、G-6S、G-3、G-150、G-100、G-48、G-30、G-50、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせてもよい。
また、黒鉛の平均粒子径は、0.5~500μmが好ましく、特に、2~200μmが好ましい。
本発明でいう導電性炭素材料(A)の平均粒子径とは、導電膜について、光学顕微鏡や電子顕微鏡等で無作為に抽出した炭素粒子(アグリゲート;一次凝集体)の平均値から算出することができ、画像解析等を用いて算出することも可能である。導電膜における粒子径は、例えば、使用する導電性炭素材料(A)や、導電膜を形成するための導電性組成物における分散状態の影響を受ける。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005~1μmが好ましく、特に、0.01~0.2μmが好ましい。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、ConductexSCULTRA、Conductex975ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、デンカ社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものがよいが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。また、カーボンナノチューブには、グラフェンシートが一層でナノメートル領域の直径を有するチューブを形成する単層カーボンナノチューブと、グラフェンシートが多層である多層カーボンナノチューブがある。そのため、多層カーボンナノチューブの直径は、典型的な単層カーボンナノチューブの0.7-2.0nmに対して、30nmと大きい値を示す。
市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.0,EC1.5,EC2.0,EC1.5-P等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube9100、FloTube9110、FloTube9200、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T等が挙げられる。
市販のグラフェン系炭素としては、XGSciences社製グラフェンナノプレートレットxGnP-C-300、xGnP-C-500、xGnP-C-750、xGnP-M-5、xGnP-M-15、xGnP-M-25、xGnP-H-5、xGnP-H-15、xGnP-H-25等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
導電性炭素材料(A)は、平均粒子径の異なる二種類以上の炭素材料を含むことが好ましい。平均粒子径の異なる二種類以上の炭素材料としては、特に限定されず、同種類の炭素材料からなる異径粒子を用いてもよいし、異種類の炭素材料からなる異径粒子を組み合わせてもよい。平均粒子径の異なる二種類以上の炭素材料、例えば、導電性炭素材料(A-1)に対して、導電性炭素材料(A-1)よりも平均粒子径が小さい導電性炭素材料(A-2)を組み合わせることで、導電膜のパッキング性が向上し、粒子間の接触抵抗を低減できるため、炭素材料間の導電ネットワークを高めることができる。
<ホウ素含有炭素材料>
導電性炭素材料(A)は、ホウ素元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされているホウ素含有炭素材料であることが好ましい。ホウ素含有炭素材料とは、炭素原子が六角網状に共有結合した網平面を形成した炭素六角網面を基本骨格とした炭素材料からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用(結合)を有し、少なくともホウ素元素が炭素元素の一部を置換するようにドープされている。ホウ素含有炭素材料は、場合によって窒素元素や鱗元素などのヘテロ元素や、卑金属元素などが含まれていてもよい。
ホウ素含有炭素材料は、後述するように、ホウ素ドープすることによってキャリア密度及び/または移動度が向上するため、粉体の体積抵抗率はホウ素ドープされていない炭素材料に比較して小さくなる。また、ホウ素ドープされていない炭素材料に比較して、表面状態が変化し、例えば、樹脂および溶剤に対する濡れ性が高くなる傾向にある。そのため、良好に分散することができ、さらに、優れた導電ネットワークの形成と、強度に優れた樹脂被膜の形成とを両立することができる。
導電性および耐久性の観点から、導電性炭素材料(A)がホウ素含有炭素材料であることが好ましい。ホウ素含有炭素材料は、導電性炭素材料(A)100質量を基準とした場合に、0.1~100質量%の範囲で含むことが好ましい。また、20~100質量%の範囲で含むことがより好ましく、50~100質量%が特に好ましい。
ホウ素含有炭素材料中のホウ素元素の含有量(炭素材料全体におけるホウ素の含有量)は、特に制限はないが、0.005~15mol%が好ましく、0.01~2.5mol%がより好ましく、0.01~1mol%が特に好ましい。ホウ素の含有量が0.005mol%未満だと、ホウ素のドープ効果が得られにくく、ホウ素の含有量が15mol%以上だと、過剰なホウ素により電子の移動を阻害してしまい、導電性の低下が起こる場合がある。0.005~15mol%の範囲にあると、良好な導電性を発現できる。また、ホウ素を含有することにより、有機溶媒や分散剤、樹脂などとの親和性が高まり、分散液の分散性が向上する。一方、ホウ素含有量が多いと炭素材料の硬さが増加する傾向が見られ、衝撃などの外力に対する耐久性や塗膜強度の改善ができるが、含有量が2.5mol%を超えると分散が難しくなる傾向にあり、炭素材料の強度や分散性の観点からもホウ素含有量は2.5mol%以下であることが好ましく、1mol%以下であることがより好ましい。
ホウ素含有炭素材料中のホウ素の含有量は、ICP発光分光分析、ICP質量分析などの方法により求めることができる。一例として、JIS-R7223に準拠した測定方法が挙げられる。また、ホウ素含有炭素材料中のホウ素の形態は特に限定されない。例えば、炭素骨格内の炭素元素の位置にホウ素元素が置換されている置換型ホウ素元素(BC3型)、炭化ホウ素型及びホウ素クラスター型ホウ素元素(B4C型、Bc型)、完全又は部分的に酸化された状態の酸化ホウ素型ホウ素元素(BC2O型、BCO2型、B2O3型)等が挙げられる。
ホウ素含有炭素材料は、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料の表面のホウ素元素の割合が0.01~10mol%が好ましく、0.01~1mol%がより好ましい。ホウ素元素の割合が0.01~10mol%にあることで導電性に優れた炭素材料を得ることができる。
また、ホウ素含有炭素材料は、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料の表面の置換型ホウ素元素(BC3型)の割合が0.01~6mol%が好ましく、0.01~1mol%がさらに好ましい。置換型ホウ素元素(BC3型)はキャリア密度を向上させる効果があるため、導電性に優れた炭素材料を得ることができる。炭素材料の表面の置換型ホウ素元素の割合は、XPSによって測定した炭素材料表面の全元素のスペクトル面積に対する全ホウ素元素のスペクトル面積の割合Bとし、XPSのB1sスペクトルより求めた、炭素材料表面の全ホウ素元素のスペクトル面積に対する置換型ホウ素元素のピーク面積の割合をBRとしたとき、B×BRで表される。
XPS測定で得られるホウ素のB1sスペクトルは、ホウ素元素のB1s電子の結合エネルギー範囲(185~197eV付近)に現れ、大別すると4つの成分からなることが知られている。各成分の結合エネルギーの値(ピークトップ)は、ホウ素クラスターが186~187eV、炭化ホウ素が187~188eV、六角網面を基本骨格とした炭素元素と置換するようにドープされているホウ素(BC3)が188~189.3eV、各種酸化ホウ素であるBC2Oが189.5~190.5eV、BCO2が191.5~192eV、B2O3が192.5~193eVに現れる。これらのピークが重なっている場合には、各成分をガウス関数としてピーク強度、ピーク位置、ピーク半値全幅をパラメーターとして最適化することにより、フィッティングを行ってピークを分離することにより割合を求めることができる。従って、B1sのピーク分離を行い、ホウ素ドープ炭素材料の表面のホウ素の状態を分析することができる。
ホウ素含有炭素材料の導電性は下記式で表される。
σ=μ×n×e (式1) μ:移動度、n:キャリア密度、e:電気素量(定数)
上記(式1)より導電性を向上させるためには移動度及び/またはキャリア密度の向上が必要となる。炭素材料へホウ素をドープすることにより、キャリア密度及び/または移動度が向上し、導電性の高い炭素材料が得られる。
ホウ素含有炭素材料としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、炭素繊維等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
<ホウ素含有炭素材料の製造方法>
本発明のホウ素含有炭素材料の製造方法としては特に限定されないが、炭素系原料(炭素源)と、ホウ素を含む化合物(ホウ素源)とを混合する工程と、前期混合物を1000℃以上の高温で熱処理する工程を含む方法が好ましい。
ホウ素含有炭素材料を製造するための炭素系原料とホウ素を含む化合物の原料組成比は、特に限定されるものではないが、炭素系原料100質量部に対してホウ素を含む化合物の割合が好ましくは0.01~300質量部であり、さらに好ましくは0.1~100質量部である。
前記混合物の作製方法としては、炭素系原料と、ホウ素を含む化合物を少なくとも含んでいればよく、混合法としては乾式混合及び湿式混合が挙げられる。混合装置としては、以下のような乾式混合装置や湿式混合装置を使用できる。
乾式混合装置としては、例えば、2本ロールや3本ロール等のロールミル、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速攪拌機、マイクロナイザーやジェットミル等の流体エネルギー粉砕機、アトライター、ホソカワミクロン社製粒子複合化装置「ナノキュア」、「ノビルタ」、「メカノフュージョン」、奈良機械製作所社製粉体表面改質装置「ハイブ
リダイゼーションシステム」、「メカノマイクロス」、「ミラーロ」等が挙げられる。
又、乾式混合装置を使用する際、2種以上の原料を粉体のまま直接混合してもよいが、より均一な混合物を作成するために、前もって1種以上の原料を少量の溶媒に溶解、又、分散させておき、混合する方法を用いてもよい。更に処理効率を上げるために、加温してもよい。
湿式混合装置としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類、エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社製「フィルミックス」等のホモジナイザー類、レッドデビル社製ペイントコンディショナー、ボールミル、シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等のサンドミル類、アトライター、若しくはコボールミル等のメディア型分散機、 ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等の湿式ジェットミル類、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械製作所社製「マイクロス」等のメディアレス分散機類、又は、その他ロールミル、ニーダー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、湿式混合装置としては、装置からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい場合がある。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。又、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用してもよいし、複数種の装置を組み合わせて使用してもよい。
又、原料が均一に溶解した系でない場合、各原料の溶媒への濡れ性、分散性を向上させるために、一般的な分散剤を一緒に添加し、分散、混合してもよい。
分散剤は、各原料に対して分散剤として有効に機能し、その凝集を緩和することができる。凝集を緩和させる効果があれば特に限定されることはなく、従来公知のものを使用することができる。例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤、顔料誘導体などの分散剤を用いることができる。
樹脂型分散剤としては、ポリビニル系樹脂やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、ホルマリン縮合物、シリコン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの樹脂型分散剤は2種類以上を併用してもよい。ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースなどが好ましい。
前記混合物を熱処理する方法においては、原料となる炭素系原料やホウ素を含む化合物の種類や量によって異なるが、加熱温度は1000~3200℃が好ましく、1500~3000℃がより好ましい。
加熱時間は特に限定されないが、通常は30分から10時間であることが好ましい。
熱処理工程における雰囲気に関しては、原料の酸化を防ぐため、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気や、真空雰囲気が好ましい。
また、熱処理工程に関しては、一定の雰囲気及び温度下において1段階で処理を行う方
法だけでなく、雰囲気や温度下を都度変更し多段階で行ってもよい。
<炭素系原料>
ホウ素含有炭素材料を製造するための炭素系原料としては、無機炭素系原料が好ましい。具体的な無機炭素系原料としては、黒鉛、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、炭素繊維、木炭等が挙げられる。上記炭素系原料の中でも、種類やメーカーによって、炭素六角網面の大きさや積層構造は様々で、結晶性、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性などの様々な物性や、コストが異なるため、使用する用途や要求性能に合わせて最適な材料を選択することができる。
炭素系材料は特に限定されないが、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェンナノプレートレット、グラフェンから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
<ホウ素を含む化合物>
次に、ホウ素含有炭素材料の製造に用いられるホウ素を含む化合物について説明する。ホウ素を含む化合物は、特に限定されるものではないが、炭化ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素、金属ホウ化物、ホウ素オキソ酸、ボラン、ホウ素含有有機化合物等が挙げられる。
具体的には、炭化ホウ素では、BC(B12)、B12(BC)等、
酸化ホウ素では、BCO、BCO、B、B 、B、B等、
窒化ホウ素では、BN等、
金属ホウ化物では、AlB、CoB、FeB、MgB、NiB、TiB等、
ホウ素オキソ酸では、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等、
ボランでは、モノボラン、ジボラン、デカボラン等、
ホウ素含有有機化合物では、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル類、トリエチルボラン、トリフェニルボラン等の置換ボラン類、フェニルボロン酸、フェニルボロン酸エステル等のボロン酸類等が挙げられる。
<バインダー樹脂(B)>
バインダー樹脂(B)と導電性炭素材料(A)との質量比は、特に限定されないが、5:95~95:5であることが好ましく、40:60~10:90であることがさらに好ましい。上記範囲であると、優れた密着性を有する導電膜を得ることができ、また、バインダー樹脂が導電膜中の炭素材料間の接触を阻害することなく高い導電性および膜強度を有する導電膜が得られる。
バインダー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、EVA系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂等からなる群から選ばれる1種類以上を含むことができる。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではない。バインダー樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
バインダー樹脂としては、体積抵抗率と基材への密着性および耐久性の観点からポリウレタン系、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリウレタン系樹脂がより好ましい。また、バインダー樹脂は、導電性組成物を基材上に印刷または塗工した後、プレスまたは熱プレス(以下、(熱)プレスと記載する)する際、適度に軟化または流動するものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、樹脂が導電膜の平面的なパターン形状をほぼ維持しつつ厚み方向に流動し、導電膜中の空隙が減少して導電性炭素材料(A)同士の接触点が増加するため、体積抵抗率が低い導電膜を得ることができる。
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレンタン樹脂の合成方法としては特に限定はされないが例えば、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とを反応させたり、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とを反応させてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得たり、前記ウレタンプレポリマー(d)にポリアミノ化合物(e)をさらに反応させたり、あるいは前記3つの場合において、必要に応じて反応停止剤を反応させて得られるものなどが挙げられる。
ポリオール化合物(a)としては、一般にポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として知られている、各種のポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、またはこれらの混合物等が使用できる。
ポリエーテルポリオール類としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などが挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ダイマージオール等の飽和および不飽和の低分子ジオール類、ならびにn-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類、またはこれらの無水物類を、脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類や、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類としては、1)ジオールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応物、および、2)ジオールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンとの反応物が使用できる。炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。また、ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル、2,2,8,10-テトラオキソスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。また、ビスフェノールとしては、ビスフェノールAやビスフェノールF、ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等が挙げられる。
上記ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、導電性組成物を製造する際のポリウレタン樹脂の溶解性、形成される導電膜の耐久性や基材に対する接着強度等を考慮して適宜決定されるが、通常は580~8000の範囲が好ましく、さらに好ましくは1000~5000である。
上記ポリオール化合物は、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。更に、ポリウレタン樹脂の性能が失われない範囲内で、上記ポリオール化合物の一部を低分子ジオール類、例えば前記ポリオール化合物の製造に用いられる各種低分子ジオールに替えることもできる。
ジイソシアネート化合物(b)としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族イソシアネート、またはこれらの混合物を使用できるが、特にイソホロンジイソシアネートが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′-ベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
カルボキシル基を有するジオール化合物(c)としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。特に反応性、溶解性の点からジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得る際の条件は、イソシアネート基を過剰にする他にとくに限定はないが、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.05/1~3/1の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは1.2/1~2/1である。また、反応は通常常温~150℃の間で行なわれ、更に製造時間、副反応の制御の面から好ましくは60~120℃の間で行なわれる。
ポリアミノ化合物(e)は、鎖延長剤として働くものであり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジアミン、ノルボルナンジアミンの他、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類も使用することができる。なかでも、イソホロンジアミンが好適に使用される。
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)とポリアミノ化合物(e)を反応させてポリウレタン樹脂を合成するときに、得られるポリウレタン樹脂の分子量を調整する為に反応停止剤を併用することができる。反応停止剤としては、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のジアルカノールアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が使用できる。
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)と、ポリアミノ化合物(e)、および必要に応じて反応停止剤を反応させる際の条件はとくに限定はないが、ウレタンプレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基を1当量とした場合、ポリアミノ化合物(e)および反応停止剤中のアミノ基の合計当量が0.5~1.3の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは0.8~0.995の範囲内である。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、塗工性や取扱い性の観点から、5000~200000の範囲が好ましい。
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂は、二塩基酸とジアミンの重縮合、アミノカルボン酸の重縮合、或いはラクタムの開環重合などの各種反応で得られるアミド結合を有する高分子の総称であり、各種の変性ポリアミドをはじめ、一部水素添加された反応物で製造されたものであり、他のモノマーが一部共重合された重合体、或いは各種添加剤などの他の物質が混合されたものを用いることができる。
ポリアミド樹脂は、特に限定されないが、ダイマー酸を主成分とする二塩基酸とポリアミン類とを縮合重合させて得られるダイマー酸変性ポリアミド樹脂が好ましい。ダイマー酸変性ポリアミド樹脂を製造する際のダイマー酸としては、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸などに含まれる天然の一塩基性不飽和脂肪酸を重合したダイマー酸が工業的に広く用いられるが、原理的には、飽和脂肪族、不飽和脂肪族、脂環式、或いは芳香族などの各種ジカルボン酸などであってもよい。当該ダイマー酸の市販品としては、ハリダイマー200、300(ハリマ化成社製)、バーサダイム228、216、エンポール1018、1019、1061、1062(コグニス社製)などが挙げられる。さらに、水素添加されたダイマー酸も使用でき、水添ダイマー酸の市販品としてはプリポール1009(クローダジャパン株式会社製)、エンポール1008(コグニス社製)などが挙げられる。
上記ダイマー酸以外に、適当な柔軟性を有するポリアミド樹脂にするため、二塩基酸として各種のジカルボン酸を用いることができる。ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、(無水)コハク酸、(無水)マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸などが用いられる。
さらに、二塩基酸としてフェノール性水酸基を有するものも使用できる。フェノール性水酸基を有する二塩基酸を使用することによって、ポリアミド樹脂の側鎖にフェノール性水酸基を導入することができ、硬化剤との反応に利用することができる。
フェノール性水酸基を有する二塩基酸としては、 2-ヒドロキシイソフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸等のヒドロキシイソフタル酸、 2,5-ジヒドロキシイソフタル酸、2,4-ジヒドロキシイソフタル酸、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸等のジヒドロキシイソフタル酸、 2-ヒドロキシテレフタル酸、2,3-ジヒドロキシテレフタル酸、2,6-ジヒドロキシテレフタル酸等のジヒドロキシテレフタル酸、 4-ヒドロキシフタル酸、3-ヒドロキシフタル酸等のヒドロキシフタル酸、 3,4-ジヒドロキシフタル酸、3,5-ジヒドロキシフタル酸、4,5-ジヒドロキシフタル酸、3,6-ジヒドロキシフタル酸等のジヒドロキシフタル酸などが挙げられる。
更にこれらの酸無水物や例えば多塩基酸メチルエステルのようなエステル誘導体なども挙げられる。
なかでも、共重合性、入手の容易さなどの点から、5-ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。
さらに、加熱時に適当な流動性を有するポリアミド樹脂にするため、必要に応じて各種のモノカルボン酸を用いる。モノカルボン酸としては、具体的には、プロピオン酸、酢酸、カプリル酸(オクタン酸)、ステアリン酸、オレイン酸などが用いられる。
上記ダイマー酸変性ポリアミド樹脂を製造する際の反応物としてのポリアミン類は、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族などの各種ジアミン、トリアミン、ポリアミンなどである。
上記ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p-又はm-キシレンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,2-ビス-(4-シクロヘキシルアミン)、ポリグリコールジアミン、イソホロンジアミン、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-ビス-(2’-アミノエチル)ベンゼン、N-エチルアミノピペラジン、ピペラジンなどが挙げられる。
また、トリアミンにはジエチレントリアミンなどが挙げられ、ポリアミンにはトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。さらに、二量体化された脂肪族のニトリル基を変換して水素還元して得られたダイマージアミンも使用することができる。
また、ポリアミン化合物としては、炭素数20~48の環状または非環状の炭化水素基を有する多塩基酸化合物のカルボシキル基をアミノ基に転化した化合物が挙げられ、市販品の例としては例えば、クローダジャパン株式会社製の「プリアミン1071」「プリアミン1073」「プリアミン1074」「プリアミン1075」や、コグニスジャパン株式会社製の「バーサミン551」などが挙げられる。
ジアミンにはアルカノールアミンを併用してもよい。アルカノールアミンにはエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ブタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。また、酸素を骨格に有するポリエーテルジアミンを用いることができる。このポリエーテルは一般式H2N-R1-(RO)n-R2-NH2 (式中、nは2~100であり、R1、R2は炭素原子数が1~14個であるアルキル基または脂環式炭化水素基であり、Rは炭素原子数が1~10個であるアルキル基または脂環式炭化水素基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。)で表すことができる。このエーテルジアミンとしてはポリオキシプロピレンジアミン等が挙げられ、市販品としてはジェファーミン類(サンテクノケミカル社製)がある。また、ビス-(3-アミノプロピル)-ポリテトラヒドロフランも挙げることができる。
上記ポリアミン類とダイマー酸或いは各種ジカルボン酸とは常法により加熱縮合され、脱水を伴ったアミド化工程によりダイマー酸変性ポリアミド樹脂をはじめとする各種ポリアミド樹脂が製造される。一般に、反応温度は100~300℃程度、反応時間は1~8時間程度である。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂は、単量体として多価カルボン酸と多価アルコールより構成される重合体である。ポリエステル樹脂は、公知のものが採用でき、具体的には、樹脂の凝集力の確保の点から、重量平均分子量が1000~100000であることが好ましい。また、密着の観点から、ガラス転移温度が-10℃~200℃であることが好ましい。多価カルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択し使用できる。一方、多価アルコール成分としては、脂肪族グリコール、エーテルグリコール類、3価以上のポリアルコール等が挙げることができ、これらの中から1種、又はそれ以上を選び使用できる。
ポリエステル樹脂の市販品としてはバイロン(東洋紡株式会社製、「バイロン」は登録商標)、ポリエスター(日本合成化学工業株式会社製、「ポリエスター」は登録商標)、テスラック(日立化成ポリマー株式会社製、「テスラック」は登録商標)などが挙げられる。
バインダー樹脂としては、加熱時の流動性、体積抵抗率と基材への密着性および耐久性の観点から、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体を含むことも好ましい。側鎖の導入方法は特に限定されず、各種の合成方法により得ることができる。
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基等が挙げられるが、反応性の点で水酸基が好適である。
イソシアネート基と反応可能な官能基は、ビニル系重合体の側鎖または主鎖に導入することができ、導入方法は特に限定されず各種の合成方法により導入することができる。高い強靱性、耐久性を必要とする用途に用いる場合には、ビニル系重合体の主鎖に直接、イソシアネートと反応可能な官能基を導入することが望ましく、これにより樹脂の架橋密度を向上できる。
ビニル系重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5,000~500,000、更に好ましくは10,000~100,000である。重合体(A1)の重量平均分子量が500,000以下の場合には、溶剤への溶解性が向上し、5,000以上の場合には、(熱)プレス後に十分な塗膜強度が得られる。
バインダー樹脂は、バインダー樹脂が基材に適用された後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性樹脂を用いることもできる。
硬化性樹脂に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されないが、屋外で使用する場合には、塗膜が経時で劣化することを防ぐために、脂環族または脂肪族の化合物のみを用いることが好ましい。
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、上記化合物とグリコール類またはジアミン類との両末端イソシアネートアダクト体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体を用いても構わない。
特に、ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性体、特にイソシアヌレート環含有トリイソシアネートを含む場合には、熱プレス後に十分な塗膜強度が得ることができるため、好ましい。イソシアヌレート環含有トリイソシアネートとして具体的には、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュールZ4470)、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールN3300)、イソシアヌレート変性トルイレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールFL-2、FL-3、FL-4、HLBA)が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は、要求性能に応じて、バインダー樹脂官能基の総数に対して、イソシアネート基の総数が、好ましくは0.1倍~5.0倍、更に好ましくは0.5倍~3.0倍、特に好ましくは0.8~2.0倍となるような比率で、1種、または2種以上を混合して用いることができる。
バインダー樹脂は、後述する溶剤に溶解する溶解性樹脂、および溶剤中で溶解せずに、微粒子の状態で存在する分散型樹脂微粒子(エマルション)のいずれであってもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
分散型樹脂微粒子の粒子構造は、多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、またはシェル部に官能基を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。樹脂微粒子の平均粒子径は、結着性や粒子の安定性の観点から、10~1000nmであることが好ましく、10~300nmであることが好ましい。また、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると粒子の安定性が損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5%以下であることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子の固形分に応じて、分散媒と同じ分散液で200~1000倍に希釈しておく。該希釈分散液約5mlを測定装置(日機装社製ナノトラック)のセルに注入し、サンプルに応じた分散媒および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークによって測定することができる。
分散型樹脂微粒子としては、架橋型樹脂微粒子を含むことが好ましい。架橋型樹脂微粒子とは、内部架橋構造(三次元架橋構造)を有する樹脂微粒子を示し、粒子内部で架橋していることが重要である。また、架橋型樹脂微粒子が特定の官能基を含有することにより、基材との密着性に寄与することができる。さらには架橋構造や官能基の量を調整することで、優れた耐久性の塗膜を得ることができる。
環境負荷などの観点では、水系の溶剤、好ましくは水中で使用することができる水溶性樹脂および水性樹脂微粒子が好ましい。また、樹脂組成物のスラリー安定性や塗工性等の観点から、水溶性樹脂および水性樹脂微粒子を併用することがさらに好ましい。
<水溶性樹脂>
水溶性樹脂とは、25℃の水99g中に樹脂1gを入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で完全に溶解可能な樹脂である。
水溶性樹脂には、炭素材料の分散性を高める効果があるため、少ない樹脂量で安定な組成物が得られる。
水溶性樹脂は、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂、アニオン性とカチオン性の性質を併せ持つ両性樹脂、またそれ以外のノニオン性樹脂に大別され、更にその樹脂が複数の単量体から構成されてもよい。また、水溶性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2 種以上併用してもよい。
アニオン性樹脂としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基およびそれらを一部あるいは全てを中和した骨格を含有する樹脂が挙げられる。例示すると、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2-スルホエチルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの重合性単量体の単独重合物、または他の重合性単量体との共重合物、カルボキシメチルセルロース、およびそれらのアルカリ中和物等が挙げられる。
カチオン性樹脂としては、環状を含むアミノ基およびアミノ基の一部あるいは全て中和
した骨格や4級アンモニウム塩を含有する樹脂等が挙げられる。例示すると、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどの重合性単量体の単独重合物、または他の重合性単量体との共重合物およびそれらの酸中和物が挙げられる。
両性樹脂としては、前記アニオン性骨格と前記カチオン性骨格を共に含有する樹脂が挙
げられる。例示すると、スチレン-マレイン酸-N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの共重合物などが挙げられる。
ノニオン性樹脂は、前記アニオン性、カチオン性および両性樹脂以外の樹脂である。例
示すると、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
水溶性樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは質量平均分子量が5,000~2,500,000である。質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリエチレンオキサイド換算分子量を示す。
<水性樹脂微粒子>
水性樹脂微粒子(水性エマルション)は、樹脂が水中で溶解せずに微粒子の状態で存在する分散型樹脂微粒子であり、例えば、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ポリオレフィン系エマルション、フッ素系エマルション(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など)、ジエン系エマルション(スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等)等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、メタクリルまたはアクリルを意味する。
水性樹脂微粒子を含む樹脂組成物は、塗膜形成された場合、粒子間及び基材との密着性に優れ、強度の高い塗膜を提供できる。更に、密着性に優れることから必要な水性樹脂微粒子は少量で済むため、結果、樹脂組成物の導電性が向上する。上述のような効果を得るため、水性樹脂微粒子としては、粒子間の結着性と柔軟性(膜の可とう性)に優れる(メタ)アクリル系エマルションやウレタン系エマルションが好ましい。
(メタ)アクリル系エマルションとは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を10質量部以上含有する乳化重合物であり、好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上含有されているとよい。アクリロイル基を有する単量体は反応性に優れるため、樹脂微粒子を比較的容易に作製することができる。したがって、水性樹脂微粒子として、(メタ)アクリル系エマルションは特に好ましい。
<導電性組成物>
本発明の導電膜は、導電性炭素材料(A)と、バインダー樹脂(B)と、必要に応じて溶剤とを含有する導電性組成物から形成することが好ましい。
<溶剤>
炭素材料と、バインダーとを均一に混合する場合、溶剤を適宜用いることができる。そのような溶剤としては、樹脂を溶解できるものや、樹脂微粒子エマルションを安定に分散できるものであれば特に限定されず、水や有機溶剤を挙げることができる。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1、3-ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等から、必要に応じて適宜選択することができる。有機溶剤としては、好ましくは、トルエンとプロパノールの混合溶剤、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンであり、より好ましくはトルエンとプロパノールの混合溶剤である。
また、溶剤は水と有機溶剤、または有機溶剤を2種以上用いてもよい。
水溶性樹脂や水性樹脂微粒子を用いる場合、溶解性や分散性の観点から、溶剤として水を使用することが好ましく、必要に応じて、水と相溶する液状媒体を添加してもよい。水と相溶する液状媒体としては、炭素数が4以下のアルコール系溶剤が好ましい。
また、導電性組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
<分散機・混合機>
導電性組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用してもよいし、複数種の装置を組み合わせて使用してもよい。
本発明の導電膜は、導電膜単独でもよいし、基材上に積層して使用することもできる。
基材に導電性組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、基材の形状は特に限定されないが、一般的には平板上の基材が用いられるが、平板上のフィルムが用いられるが、表面を粗面化したものや、プライマー処理したもの、穴あき状のもの、及びメッシュ状の基材も使用できる。
<導電膜の配向度>
本発明の導電膜のX線回折(XRD)で測定した、炭素(002)面における配向度は、70%以上であり、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは92%である。
導電膜の配向度が、70%以上であることで、グラファイト構造を有する炭素粒子を一定方向に配向させることができるため、sp2混成軌道からなるπ共役系電子の電荷キャリア移動が促進され、高い導電性を発現できる。一方、配向度が70%未満だと、組成物中の炭素粒子の配列が不均一となり、粒子間の導電ネットワークが阻害されるため導電性が低下する。
導電膜の配向度は、炭素材料の種類やその組み合わせ、組成比、分散方法等を調整することにより、所望の値を達成することができる。また、必要に応じて、磁場、電場、プレス等の外部処理を併用することによっても調整することができる。
<導電膜の光沢>
本発明の導電膜の60°光沢値は、4~30が好ましく、より好ましくは4~20、更に好ましくは4~15である。60°光沢値と導電性炭素材料の分散状態に相関があり、光沢値が高いほど均一且つ微細に導電性炭素材料が分散できていることを示す。導電膜の60°光沢値が4~30であると、導電性炭素材料が均一に分布し、導電ネットワークが良好となる。60°光沢値が4未満では、導電層中の導電性の炭素材料間の接触が不十分となり、導電層の導電性が不良となるおそれがある。また、60°光沢値が30を超す場合は、導電性炭素材料の微細化が進むことによるグラファイト構造の部分破壊が起き、構造欠陥が生じる可能性があり、導電性が低下する場合がある。
<導電膜の密度>
本発明の導電膜における密度は、1.2~2.0g/ccが好ましく、より好ましくは1.4~1.8g/ccである。
導電膜の密度が1.2~ 2.0g/ccであると、導電層中の導電性の炭素材料間の接触が良好となり、導電層中の導電ネットワークが良好となるため、優れた導電性を確保しながら、基材への密着性も良好な導電膜を得ることができる。
<導電デバイス>
本発明の導電膜は、導電性に優れているため、導電性を必要とするデバイスに好適に使用することができる。例えば、リチウムイオン電池やキャパシタなどの畜電デバイス、水素燃料電池やバイオ発電といった発電デバイスや、導電配線、RFID、トランジスタやセンサ電極などの半導体デバイスとして適用することができる。特に、本発明の導電膜は耐久性にも優れているため、導電配線において好適に適用できる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」を表し、Mwは重量平均分子量を意味する。
<ホウ素含有炭素材料の製造>
<製造例1>
鱗状黒鉛F#2(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)を、質量比90/10(黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、乳鉢で混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2050℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(A-1-1)を得た。
<製造例2>
鱗状黒鉛F#2(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)を、質量比80/20(黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し粒子複合化装置メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)で混合複合化を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2050℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(A-1-2)を得た。
<製造例3>
鱗状黒鉛F#2(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)を、質量比95/5(黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、粒子複合化装置メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)で混合複合化を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2050℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(A-1-3)を得た。
<製造例4>
薄片化黒鉛UP-20(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)を、質量比95/5(黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、粒子複合化装置メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)で混合複合化を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2050℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(A-2-1)を得た。
<製造例5>
ケッチェンブラックEC300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)を、質量比95/5(ケッチェンブラック/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、粒子複合化装置メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)で混合複合化を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2050℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(A-2-2)を得た。
実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
・鱗状黒鉛F#2(日本黒鉛工業社製、以下「F#2」と略記する。)
・薄片化黒鉛UP-20(日本黒鉛工業社製、以下「UP-20」と略記する。)
・球状黒鉛CGB-50(日本黒鉛工業社製、以下、「CGB-50」と略記する。)
・鱗状黒鉛F#1(日本黒鉛工業社製、以下「F#1」と略記する。)
・人造黒鉛PAG-120(日本黒鉛工業社製、以下「PAG-120」と略記する。)
・鱗状黒鉛J-CPB(日本黒鉛工業社製、以下「J-CPB」と略記する。)
・ケッチェンブラックEC-300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、以下「EC300J」と略記する。)
・デンカブラックHS-100(デンカ社製、以下「HS100」と略記する。)
・トーカブラック#5500(東海カーボン社製、以下「#5500」と略記する。)
・グラフェンナノプレートレットxGnP-M-5(XGscience社製、以下「GNP-M」と略記する。)
(溶媒)
・トルエン/イソプロピルアルコール(重量比1/1の混合物)(以下「トルエン/IPA」と略記する。)
・イオン交換水(以下「水」と略記する。)
実施例および比較例に用いた材料の評価については、以下の通り行った。
<導電性炭素材料のホウ素元素含有量>
ICP発光分光分析(SPECTRO社製 SPECTROARCOS FHS12)を用いて、炭素材料中のホウ素元素の含有量を測定した。得られた値は、炭素材料の全体に含有するホウ素元素の量を示す。
<導電性炭素材料の平均粒子径>
導電膜の一部を、ArイオンミリングまたはGaイオンビーム加工にて切り出し、透過型電子顕微鏡(日本電子データム社製 JEM-1010)を用いて、加速電圧100kVにて炭素導電膜の撮影を行った。視野や倍率を適宜調整し、アグリゲート(一次凝集体)を形成する粒子の直径を測長し、得られた100個の測定値を平均化して求めた。
<バインダー樹脂(B)の合成>
<製造例6>
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP-2011」、Mn=2011)455.5部、ジメチロールブタン酸16.5部、イソホロンジイソシアネート105.2部、トルエン140部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン360部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン19.9部、ジ-n-ブチルアミン0.63部、2-プロパノール294.5部、トルエン335.5部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液969.5部を添加し(ウレタンプレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基に対してアミノ基の合計当量は0.98である)、50℃で3時間続いて70℃2時間反応させ、トルエン126部、2-プロパノール54部で希釈し、Mw=61,000、酸価=10mgKOH/gであるポリウレタン樹脂の溶液を得た。
<製造例7>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、多塩基酸化合物としてプリポール1009を156.2g、5-ヒドロキシイソフタル酸を5.5g、ポリアミン化合物としてプリアミン1074を146.4g、イオン交換水を100g仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空下で、1時間保持し、温度を低下させた。最後に、酸化防止剤を添加し、重量平均分子量24000、酸価13.2KOHmg/g、水酸基価5.5KOHmg/g、ガラス転移温度―32℃のポリアミド樹脂を得た。
なお、樹脂の評価は下記の通りに行った。
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。GPCは溶剤(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/Sただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
<バインダー樹脂の調整>
実施例、比較例で使用するバインダー樹脂を以下に示す溶剤を使用して固形分率20%の溶液に調整した。
・ウレタン樹脂の溶液:製造例(6)で得られたポリウレタン樹脂をトルエン/イソプロピルアルコール(質量比:1/1)で希釈してポリウレタン樹脂の溶液を得た。
・ポリアミド樹脂の溶液:製造例(7)で得られたポリアミド樹脂をトルエン/イソプロピルアルコール(質量比:2/1)で希釈してポリアミド樹脂の溶液を得た。
・ポリエステル樹脂の溶液:バイロン200(東洋紡社製、ポリエステル樹脂)をトルエン/メチルエチルケトン(質量比:1/1)で希釈してポリエステル樹脂の溶液を得た。
<導電膜>
(実施例1)
導電性炭素材料(A)のうち、導電性炭素材料(A-1)として鱗状黒鉛F#2(日本黒鉛工業社製)を60部、導電性炭素材料(A-2)として薄片化黒鉛UP-20(日本黒鉛工業社製)を10部、バインダー樹脂(1)の溶液を150部(樹脂固形分30部)、溶剤としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比:Tol/IPA=1/1)を137部、をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルで6時間分散を行い、導電性組成物(1)を得た。そして、この導電性組成物(1)を、シート状基材となる厚さ100μmのPETフィルム上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、導電膜の厚みが30μmとなる導電膜(1)を作製した。
得られた導電膜は以下の方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
(導電膜の配向度)
配向度は、X線回折装置リガク社製Smartlabを用い、平行ビーム反射法である極点測定にて評価した。具体的には、予備測定(2θスキャン)を行い、得られた測定プロファイルを用いて、黒鉛の002反射である回折角度(2θ=25°)を固定し、ステップ幅1°、走査スピード200°/分にて、試料を面内方向へ360°回転させながら、試料あおり角方向に0~90°までステップ幅1°にて回折強度の方位分布を測定した。さらにバックグラウンド補正を行い、次式から配向度を算出した。
W=(180-Wi)/180×100
A:配向度(%)
Wi:強度測定の結果得られたピークの半値全幅の面内方向平均値
(導電膜の光沢)
導電膜の光沢は、micrо-TRI-Glоss(BYK Additives & Instruments製)で評価した。具体的には、導電層面にmicrо-TRI-Glоssを接触させ、3ヶ所の60°光沢値を測定し、その平均値を60°光沢値として算出した。
(導電膜の密度)
導電膜の密度は、導電膜の質量と体積から評価した。具体的には、10cm角の、導電膜が積層されたPETフィルム(面積:100cm)の質量と厚みと、10cm角のPETフィルム(面積:100cm)の質量と厚みを測定し、10cm角の導電膜(面積:100cm)の質量と厚みを算出した。次に、導電膜の質量を体積(面積×厚み)で割ることにより導電膜の密度を算出した。
(導電膜の体積抵抗率)
導電膜の体積抵抗率は、ロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子法で測定(JIS-K7194)して判定した。

(評価基準)◎◎:体積抵抗率が3×10-3Ω・cm未満(極めて良好)
◎:体積抵抗率が3×10-3Ω・cm以上、1×10-2Ω・cm未満(良好)
○:体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以上、5×10-2Ω・cm未満(使用可能)
△:体積抵抗率が5×10-2Ω・cm以上、1×10-1Ω・cm未満(不良)
×:体積抵抗率が1×10-1Ω・cm以上(極めて不良)
(導電膜の導電維持率)

導電膜の導電維持率は、温度80℃オーブンに一か月静置した前後の体積抵抗率の変化率(オーブン静置前の体積抵抗率/オーブンへ一か月静置後の体積抵抗率の比の百分率)から判定した。なお、体積抵抗率は上述の方法と同四湯に測定した。
(評価基準)
◎:変化率が120%以下(良好)
○:変化率が120%より高く、200%以下(使用可能)
△:変化率が200%より高く、300%以下(不良)
×:変化率が300%以上(極めて不良)
(導電膜の耐久性)
上記で作製した導電膜の耐久性を引っかき硬度(鉛筆法)により評価した(JIS K5600-5-4:1999法準拠)。硬度がHBの鉛筆を用いて各塗膜の耐久性を評価した。

(評価基準)◎:塑性変形及び凝集破壊が起こらない(良好)
〇:塑性変形及び凝集破壊が一部起こっている(使用可能)
△:塑性変形または凝集破壊が半分程度起こっている(不良)
×:塑性変形及び凝集破壊がほとんどの部分で起こっている (極めて不良)
(実施例2~実施例22)
表1に示す材料および組成比で、導電膜(1)と同様の方法により、導電膜(2)~(22)を得た。
(実施例23)
導電性炭素材料(A)のうち、導電性炭素材料(A-1)としてホウ素含有炭素材料(A-1-3)を50部、導電性炭素材料(A-2)としてホウ素含有炭素材料(A-2-1)を10部、ホウ素含有炭素材料(A-2-2)を10部、バインダー樹脂として、水溶性樹脂であるPVP K-30(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン社製)を10部、水を237部、をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、分散体を得た。この分散体に更にバインダー樹脂として、水性樹脂微粒子であるポリアクリルエマルション W-168(固形分50質量%、トーヨーケム社製)を40部(樹脂固形分20部)追加しサンドミルにて分散を行い、導電性組成物(21)を得た。そして、この導電性組成物(21)を、シート状基材となる厚さ100μmのPETフィルム上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、導電膜の厚みが30μmとなる導電膜(23)を作製した。
(比較例1)
表1に示す材料および組成比で、サンドミルの分散時間を30分に変更した以外は、導電性組成物(1)と同様の方法により、導電組成物(24)を作製した。そして、この導電性組成物(24)を、シート状基材となる厚さ100μmのPETフィルム上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、導電膜の厚みが30μmとなる導電膜(24)を作製した。
(比較例2)
表1に示す材料および組成比で、導電性組成物(24)と同様の方法により、導電性組成物(25)を作製した。そして、この導電性組成物(25)を、シート状基材となる厚さ100μmのPETフィルム上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、導電膜の厚みが30μmとなる導電膜(25)を作製した。さらに、50℃のホットプレスをして、導電膜の密度が1.9g/cc、光沢が42となるよう調整した。
Figure 2022150510000001
表1に示すように、本発明の導電膜では、従来以上に導電性と耐久性を改善し、両立することができた。
一方、比較例1、2では、導電性と耐久性に不良が見られた。比較例1では、炭素材料が凝集し分布状態が不均一であるため、導電膜の配向度が低く、光沢や密度の低下を招き、導電性および耐久性が悪化することが確認された。また、比較例2では、光沢および密度は改善され、耐久性は良化傾向にあるが、依然として導電性は低い。導電異方性の高い炭素粒子の配列が不揃いであるため、粒子間の導電ネットワークが阻害され、導電性が低下したと考えられる。このことから、導電性向上のためには、配向度が重要であることがわかる。また、長期保管すると、導電性が低下することも確認された。これは、プレスによる外部圧力で、炭素材料間の接点を形成しているため、長期保管すると接点が離れ、導電性を維持できなくなったためと考えられる。
それに対し、配向度の高い実施例1~23では、従来以上に導電性、耐久性を両立できる導電膜を得ることができた。特に、炭素材料を3種類組み合わせた実施例9~13では、導電性が良好であることがわかる。粒径の異なる炭素材料を組み合わせることで、配向度が向上し、粒子間の導電ネットワークが良好となり、改善に繋がったものと予想される。また、ホウ素含有炭素材料を含む実施例14~23では、塗膜の導電性及び耐久性が更に向上した。これはホウ素ドープによる導電性向上の効果に加えて、樹脂の吸着率が向上したことで炭素材料間の導電ネットワークを強化できたためであると考えられる。
以上の通り、バインダー樹脂と導電性炭素材料を含む導電膜においては、導電膜の配向性を制御することで、炭素材料間で優れた導電ネットワーク形成を可能にし、優れた導電性、耐久性を発現することが分かった。

Claims (7)

  1. 導電性炭素材料(A)とバインダー樹脂(B)とを含む導電膜あって、X線回折(XRD)で測定した、炭素(002)面における配向度が70%以上である導電膜。
  2. 60°光沢が4~30である請求項1に記載の導電膜。
  3. 密度が1.2~2.0g/ccである請求項1または2記載の導電膜。
  4. 導電性炭素材料(A)が、平均粒子径の異なる二種類以上の炭素材料を含む請求項1~3いずれかに記載の導電膜。
  5. 導電性炭素材料(A)が、ホウ素含有炭素材料を含むことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の導電膜。
  6. ホウ素含有炭素材料のホウ素の含有量が0.005~15mol%である請求項5に記載の導電膜。
  7. 請求項1~6いずれかに記載の導電膜を含む導電デバイス。




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