JP2021165224A - ホウ素含有炭素材料、導電性組成物、及び導電膜 - Google Patents

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寛人 渡部
Hiroto Watabe
順幸 諸石
Yoriyuki Moroishi
有花 宮房
Yuka Miyafusa
淳子 川原
Junko KAWAHARA
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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、導電性に優れるホウ素含有炭素材料を実現することにより、優れた導電性材料を提供することである。
【解決手段】前記課題は、ホウ素元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされているホウ素含有炭素材料であって、レーザーラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドとの強度比[G/D]が1.0以上であり、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合が、0.0001以上であるホウ素含有炭素材料によって解決される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホウ素含有炭素材料、導電性組成物、及び導電膜に関する。
近年、エレクトロニクスの発達は目覚ましいものがあり、各種電子機器で使用される導電性材料について、製品の小型・軽量化、低コスト化、様々な使用環境下での高寿命化が求められている。
例えば、電子機器の基盤配線や電子機器を接続する配線を製造する場合、導電性に優れる導電性組成物が必要となるが、銀や銅等の金属フィラーを用いる一般的な導電性組成物は、コストや耐久性などの点で大きな課題があり、今なお解決できていない。
一方、金属を用いずに導電性のカーボン材料を用いた導電性組成物について様々な検討がなされているが、導電性が不十分なため、帯電防止用途等の半導電性用途での使用に限られてきた。
導電性のカーボン材料としては、グラファイトやカーボンナノチューブ等の高導電性カーボンも検討されてきた。これら高導電性カーボンの体積抵抗率は、10−2Ω・cm未満であり、従来に比べ導電性の課題を改善できることが報告されている(特許文献1〜2参照)。
しかしながら、これらカーボン材料の体積抵抗率は、金属フィラーに比べると桁違いに高く、導電性カーボン単独で導電用途に十分な特性を発現できているとは言い難い。
他方、炭素材料の導電性の課題を解決することを目的として、結晶性の高い炭素材料の研究がなされている。例えば、カーボンナノチューブの製造方法に関し、原料ガスの流速や濃度を改善し結晶性を向上させること(特許文献3参照)、並びに、液体Gaの触媒作用によって炭素繊維表面のグラフェン同士を接合させた構造を形成すること(特許文献4参照)、といった報告がされている。
しかしながら、導電性の改善が十分とは言い難く、さらなる高導電性炭素材料の開発が求められている。
特開平3−7740号公報 特開2008−293821号公報 特開2010−006663号公報 特開2009−179915号公報
本発明は前記問題点に鑑み、導電性に優れるホウ素含有炭素材料を実現することにより、優れた導電性材料を提供することを目的とする。
本発明者は、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、ホウ素元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされているホウ素含有炭素材料であって、レーザーラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドとの強度比[G/D]が1.0以上であり、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合が0.0001以上である、ホウ素含有炭素材料に関する。
また、本発明は、黒鉛系炭素材料、グラフェン系炭素材料、及びカーボンナノチューブ系炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記ホウ素含有炭素材料に関する。
また、本発明は、GバンドとDバンドとの強度比[G/D]が1.25〜5.0である、上記ホウ素含有炭素材料に関する。
また、本発明は、表面置換型ホウ素元素の割合が0.0004以上である、上記ホウ素含有炭素材料に関する。
また、本発明は、結晶子径(La)が28〜80nmである、上記ホウ素含有炭素材料に関する。
また、本発明は、上記ホウ素含有炭素材料と、バインダー樹脂又は溶媒の少なくとも一方と、を含む導電性組成物に関する。
また、本発明は、さらに導電助剤を含む、上記導電性組成物に関する。
また、本発明は、導電性組成物の総固形分に占めるホウ素含有炭素材料の割合を50〜60質量%、導電助剤の割合を10〜18質量%の範囲で含む、上記導電性組成物に関する。
また、本発明は、上記導電性組成物から形成されてなる導電膜に関する。
本発明によれば、導電性に優れるホウ素含有炭素材料を提供することができる。
図1は、XPSにおけるB1sスペクトルのピーク、及びビーク分離の例を示す図である。
本発明のホウ素含有炭素材料は、ホウ素元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされているホウ素含有炭素材料であって、レーザーラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドとの強度比[G/D]が1.0以上であり、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合が、0.0001以上であることを特徴とする。
上記を全て満たすことで、適切なホウ素結合状態のホウ素元素のドープと、高い結晶性や低欠陥の炭素材料となり、優れた導電性を発揮することができる。そして、該炭素材料を含む組成物は、導電性に優れるため、電池の電極、集電体や電池、電子機器の配線等に利用することができる。
以下、詳細に本発明について説明する。尚、本明細書では、「ホウ素含有炭素材料」を、「炭素材料」と略記する場合がある。
<ホウ素含有炭素材料>
本発明において、ホウ素元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされているホウ素含有炭素材料とは、炭素原子が六角網状に共有結合した網平面を形成した炭素六角網面を基本骨格とした炭素材料からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用(結合)を有し、少なくともホウ素元素が炭素元素の一部を置換するようにドープされている炭素材料である。本発明のホウ素含有炭素材料は、場合によって、窒素元素、リン元素などのヘテロ元素、又は卑金属元素などが含まれていてもよい。
ホウ素含有炭素材料は、励起レーザー波長532nmのレーザーラマンスペクトルにおけるDバンド(1330〜1370cm−1)とGバンド(1560〜1620cm−1)のピーク強度の比(IG/ID)である[G/D]比が1.0以上であることが重要である。[G/D]比が1.0以上であると、炭素表面の欠陥や結晶界面が少なく、電子伝導に優れる。[G/D]比は、好ましくは1.25以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.3以上である。[G/D]比は、好ましくは7.0以下、より好ましくは5.0以下である。
また、ホウ素含有炭素材料の[G/D]比の好ましい範囲は、1.7〜5.0、より好ましくは2.0〜5.0であり、上記範囲であると、導電性組成物を作製する際に、導電性が良好なだけでなく、溶媒やバインダー樹脂への濡れ性が高まり、硬さが増加する傾向にある。これにより、衝撃などの外力に対する耐久性が向上し、分散安定性や膜強度が改善する。
ホウ素含有炭素材料の表面のホウ素元素の形態は特に限定されないが、炭素骨格内の炭素元素の位置にホウ素元素が置換されている置換型ホウ素元素(BC型)、炭化ホウ素型及びホウ素クラスター型ホウ素元素(BC型、Bc型)、完全又は部分的に酸化された状態の酸化ホウ素型ホウ素元素(BCO型、BCO型、B型)等が挙げられる。
ホウ素含有炭素材料は、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合が、0.0001以上であることが重要である。これにより、ホウ素元素ドープによるキャリア密度が向上する。表面置換型ホウ素元素の割合は、XPSによって測定した炭素材料表面の全元素のスペクトル面積に対する全ホウ素元素のスペクトル面積の割合Bとし、XPSのB1sスペクトルより求めた、炭素材料表面の全ホウ素元素のスペクトル面積に対する置換型ホウ素元素のピーク面積の割合をBRとしたとき、B×BRで表される。より好ましくは0.0002以上であり、更に好ましくは0.0004以上である。
また、ホウ素含有炭素材料の表面置換型ホウ素元素の割合の好ましい範囲は、0.0001〜0.01、より好ましくは0.0004〜0.005であり、上記範囲であると、導電性組成物を作製する際に、導電性が良好なだけでなく、溶媒やバインダー樹脂への濡れ性が高まり、硬さが増加する傾向にある。これにより、衝撃などの外力に対する耐久性が向上し、分散安定性や膜強度が改善する。
XPS測定で得られるホウ素のB1sスペクトルは、ホウ素元素のB1s電子の結合エネルギー範囲(185〜197eV付近)に現れ、大別すると4つの成分からなることが知られている。各成分の結合エネルギーの値(ピークトップ)は、ホウ素クラスターが186〜187eV、炭化ホウ素が187〜188eV、六角網面を基本骨格とした炭素元素と置換するようにドープされているホウ素(BC3)が188〜189.3eV、各種酸化ホウ素であるBC2Oが189.5〜190.5eV、BCO2が191.5〜192eV、B2O3が192.5〜193eVに現れる。これらのピークが重なっている場合には、各成分をガウス関数としてピーク強度、ピーク位置、ピーク半値全幅をパラメーターとして最適化することにより、フィッティングを行ってピークを分離することにより割合を求めることができる。従って、B1sのピーク分離を行い、ホウ素ドープ炭素材料の表面のホウ素の状態を分析することができる。
ホウ素含有炭素材料の導電性は下記式で表される。
σ=μ×n×e (式1)
μ:移動度、n:キャリア密度、e:電気素量(定数)
上記(式1)より、導電性を向上させるためには移動度及び/又はキャリア密度の向上が必要となる。炭素材料へのホウ素ドープの主な狙いは、ホールの導入によるキャリア密度の向上である。一方、炭素材料へのホウ素ドープは、炭素の結晶構造や電子状態などに大きく影響を与え、炭素の結晶構造の乱れを誘発し移動度を低下させる要因ともなる。そのため、適切なホウ素結合状態のホウ素元素のドープと、高い表面結晶状態(G/D比)を保つことが、キャリア密度を増加させながら移動度の低下を抑え、高い導電性を発現するために重要となる。
ホウ素含有炭素材料は特に限定されないが、例えば、黒鉛系炭素材料、カーボンナノチューブ系炭素材料、グラフェン系炭素材料、カーボンブラック系炭素材料が挙げられる。ホウ素含有炭素材料は、[G/D]比など結晶性が高くなりやすいため、好ましくは、黒鉛系炭素材料、グラフェン系炭素材料、及びカーボンナノチューブ系炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むものである。
本発明のホウ素含有炭素材料は、高結晶性で、粒子が大きい方が電子伝導性に有利となるため好ましい。ホウ素含有炭素材料の厚みは、50nmより大きい方が好ましく、より好ましくは100nmより大きく、更に好ましくは250nmより大きいものである。
ホウ素含有炭素材料の粒子の厚みは、例えば電子顕微鏡などを用いて、無作為に抽出した粒子の厚みの平均値を用いることができる。
ホウ素含有炭素材料のa軸方向の結晶子径(La)は、好ましくは28〜80nmであり、より好ましくは30〜70nmであり、さらに好ましくは35〜65nmである。結晶子径(La)が28〜80nmの範囲であると、ホウ素含有炭素材料の導電性や分散性が向上し、導電性組成物において導電性が向上する。
なお、結晶子径(La)は、X線回折(XRD)測定を行うことにより、算出できる。XRD測定では、CuKα線をX線源として得られるホウ素含有炭素材料のXRD図において、回折角(2θ)が77.0〜78.5°付近に現れる(110)面回折のピーク位置、及び半値幅から結晶子径(La)を算出する。算出方法は、例えば、学振法に基づき求めることができる。
<ホウ素含有炭素材料の製造方法>
本発明のホウ素含有炭素材料の製造方法として好ましくは、あらかじめ炭化された炭素源に対してホウ素をドープする方法である。ここでいう「炭化」とは、「結晶化」又は「黒鉛化」と同様の事象を表す。
例えば、炭化されていない炭素源とホウ素源を用いて、炭化しながらホウ素をドープしてホウ素ドープ炭素を得る方法や、事前に仮焼成処理を行った炭素源を用いる方法では、結晶化又は黒鉛化が不十分な場合がある。このため、炭化しながらホウ素をドープする方法よりも、あらかじめ炭化された炭素源に対してホウ素をドープするような、炭化の後にホウ素ドープ反応を行う方法を用いる方が、ホウ素の分布状態が好ましい炭素材料を製造することができるため好ましい。
すなわち、優れた導電性、分散性、耐久性の両立を可能とする本発明のホウ素含有炭素材料を得るためには、炭素源の選択、及び、ホウ素ドープ反応が起こる際の炭素源とホウ素源の混合状態等も重要である。
本発明のホウ素含有炭素材料の製造方法は特に限定されないが、好ましくは、炭素系原料とホウ素を含む化合物とを混合する工程と、前記混合物を1000℃以上の高温で熱処理する工程と、を含む方法である。
ホウ素含有炭素材料を製造するための炭素系原料とホウ素を含む化合物の原料組成比は、特に限定されないが、炭素系原料100質量部に対するホウ素を含む化合物の割合は、好ましくは0.01〜300質量部であり、より好ましくは0.1〜100質量部である。
前記炭素系原料とホウ素を含む化合物との混合方法は特に制限されず、例えば、乾式混合及び湿式混合が挙げられる。混合装置としては、以下のような乾式混合装置や湿式混合装置を使用できる。
乾式混合装置としては、例えば、2本ロールや3本ロール等のロールミル、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速攪拌機、マイクロナイザーやジェットミル等の流体エネルギー粉砕機、アトライター、ホソカワミクロン社製粒子複合化装置「ナノキュア」、「ノビルタ」、「メカノフュージョン」、奈良機械製作所社製粉体表面改質装置「ハイブリダイゼーションシステム」、「メカノマイクロス」、「ミラーロ」等が挙げられる。
また、乾式混合装置を使用する際、2種以上の原料を粉体のまま直接混合してもよいが、より均一な混合物を作成するために、前もって1種以上の原料を少量の溶媒に溶解、また、分散させておき、混合する方法を用いてもよい。更に処理効率を上げるために、加温してもよい。
湿式混合装置としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類、エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社製「フィルミックス」等のホモジナイザー類、レッドデビル社製ペイントコンディショナー、ボールミル、シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等のサンドミル類、アトライター、若しくはコボールミル等のメディア型分散機、ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等の湿式ジェットミル類、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械製作所社製「マイクロス」等のメディアレス分散機類、又は、その他ロールミル、ニーダー、超音波分散機等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、湿式混合装置としては、装置からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい場合がある。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。
分散装置は、1種のみを使用してもよいし、複数種の装置を組み合わせて使用してもよい。
また、原料が均一に溶解又は分散しない場合、各原料の溶媒への濡れ性、分散性を向上させるために、必要に応じて複数の溶媒を併用してもよく、分散剤を添加して、分散、混合してもよい。
特に炭化(黒鉛化)された炭素源に対して、ホウ素源は均一に混合しにくいため、ホウ素ドープ反応が起こる際の炭素源とホウ素源の混合(接触)状態が重要であり、炭素源とホウ素源を均一に処理することが好ましい。
分散剤は、各原料に対して分散剤として有効に機能し、その凝集を緩和することができる。分散剤は、凝集を緩和させる効果があれば特に限定されることはなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤、顔料誘導体を用いることができる。
樹脂型分散剤としては、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、ホルマリン縮合物、シリコン系樹脂、及びこれらの複合系ポリマーが挙げられる。好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等である。これらの樹脂型分散剤は、2種類以上を併用してもよい。
前記混合物を熱処理する工程において、加熱温度は、原料となる炭素系原料やホウ素を含む化合物の種類や量によって異なるが、好ましくは1000〜3200℃であり、より好ましくは1800〜3000℃である。加熱時間は特に限定されないが、通常は30分から10時間であることが好ましい。
熱処理工程は、原料の酸化を防ぐため、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気や、真空雰囲気下で行うことが好ましい。また、熱処理工程は、一定の雰囲気及び温度下において1段階で処理を行う方法だけでなく、雰囲気や温度下を都度変更し、多段階で行ってもよい。
[炭素系原料]
本発明のホウ素含有炭素材料を製造するための炭素系原料としては、無機炭素系原料が好ましい。上記無機炭素系原料としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、炭素繊維、木炭が挙げられる。
上記炭素系原料は、炭素六角網面の大きさや積層構造が様々なものが存在し、結晶性、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性などの様々な物性や、コストが異なるため、使用する用途や要求性能に応じて、最適な材料を選択することができる。
市販の炭素系原料としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
市販の黒鉛としては、例えば、日本黒鉛工業社製のCMX、UP−5、UP−10、UP−20、UP−35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB−150、CB−100、ACP、ACP−1000、ACB−50、ACB−100、ACB−150、SP−10、SP−20、J−SP、SP−270、HOP、GR−60、LEP、F#1、F#2、F#3、CGC−20、CGC−50、CGB−20、CGB−50、PAG−60、PAG−80、PAG−120、PAG−5、HAG−10W、HAG−150、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、中越黒鉛社製のCX−3000、FBF、BF、CBR、SSC−3000、SSC−600、SSC−3、SSC、CX−600、CPF−8、CPF−3、CPB−6S、CPB、96E、96L、96L−3、90L−3、CPC、S−87、K−3、CF−80、CF−48、CF−32、CP−150、CP−100、CP、HF−80、HF−48、HF−32、SC−120、SC−80、SC−60、SC−32、RA−3000、RA−15、RA−44、GX−600、G−6S、G−3、G−150、G−100、G−48、G−30、G−50、SECカーボン社製のSGP−100、SGP−50、SGP−25、SGP−15、SGP−5、SGP−1、SGO−100、SGO−50、SGO−25、SGO−15、SGO−5、SGO−1、SGX−100、SGX−50、SGX−25、SGX−15、SGX−5、SGX−1、西村黒鉛社製の10099M、PB−99が挙げられる。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製のケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD、ライオナイトEC−200L、三菱化学社製のファーネスブラック#2350、#2600、#3050B、#3030B、#3230B、#3400B、デンカ社製のデンカブラックHS−100、FX−35が挙げられる。
市販のカーボンナノチューブとしては、例えば、昭和電工社製VGCF−H、VGCF−X、名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ、NTP社製NTP3003、NTP3021、NTP3121、NTP8012、NTP8022、NTP9012、NTP9112、OCSiAl社製TUBALLが挙げられる。
市販のグラフェン系炭素としては、例えば、XGSciences社製グラフェンナノプレートレットxGnP−C−300、xGnP−C−500、xGnP−C−750、xGnP−M−5、xGnP−M−15、xGnP−M−25、xGnP−H−5、xGnP−H−15、xGnP−H−25が挙げられる。
中でも導電性やコストの観点から、市販の炭素系原料としては黒鉛が好ましい。
本発明のホウ素含有炭素材料を製造するための炭素系原料としては、熱処理後に炭素粒子となる有機炭素系原料を使用することができる。このような有機炭素系原料としては、例えば、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアニリン系樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂系樹脂、ポリイミダゾール系樹脂、ポリピロール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、メラミン系樹脂、ピッチ、コークス、褐炭、ポリカルボジイミド、バイオマス、タンパク質、フミン酸や、それらの誘導体が挙げられる。中でも黒鉛の原料としても使われるコークスやピッチの使用が好ましい。
[ホウ素を含む化合物]
次に、ホウ素含有炭素材料の製造に用いられるホウ素を含む化合物について説明する。
ホウ素を含む化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、BC(B12)、B12(BC)等の炭化ホウ素;BCO、BCO、B、B 、B
等の酸化ホウ素;BN等の窒化ホウ素;AlB、CoB、FeB、MgB
NiB、TiB等の金属ホウ化物;オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ素オキソ酸;モノボラン、ジボラン、デカボラン等のボラン;ホウ酸エステル類、置換ボラン類、ボロン酸類等のホウ素含有有機化合物;が挙げられる。
ホウ酸エステル類としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等が挙げられ、置換ボラン類としては、トリエチルボラン、トリフェニルボラン等が挙げられ、ボロン酸類としては、フェニルボロン酸、フェニルボロン酸エステル等が挙げられる。
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、上述したホウ素含有炭素材料と、バインダー樹脂又は溶媒の少なくとも一方と、を含有するものである。導電性組成物は、異なる二種以上の炭素材料を併用してもよいし、必要に応じて導電助剤を含有してもよい。
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、特に制限されず、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、EVA系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことができる。
上記バインダー樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂は、体積抵抗率、基材への密着性及び耐久性の観点から、ポリウレタン系、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリウレタン系樹脂を含むことがより好ましい。バインダー樹脂は、導電性組成物を基材上に印刷又は塗工した後、プレス又は熱プレス(以下、(熱)プレスと記載する)する際、適度に軟化又は流動するものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、導電性組成物が塗膜の平面的なパターン形状を維持しつつ厚み方向に流動し、膜中の空隙が減少して炭素材料同士の接触点が増加するため、体積抵抗率が低い導電膜を得ることができる。
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレンタン樹脂の合成方法は特に限定はされないが、例えば、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とを反応させる方法、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とを反応させてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得る方法、前記ウレタンプレポリマー(d)にポリアミノ化合物(e)をさらに反応させる方法、あるいは前記3つの方法において、必要に応じて反応停止剤を反応させる方法、が挙げられる。
ポリオール化合物(a)としては、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として公知の各種のポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、又はこれらの混合物等が使用できる。
ポリエーテルポリオール類としては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体又は共重合体が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ダイマージオール等の飽和及び不飽和の低分子ジオール類、ならびにn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類、又はこれらの無水物類を、脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類や、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類としては、(1)ジオール又はビスフェノールと炭酸エステルとの反応物、及び、(2)ジオール又はビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンとの反応物が使用できる。炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2,2,8,10−テトラオキソスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。また、ビスフェノールとしては、ビスフェノールAやビスフェノールF、ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等が挙げられる。
上記ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、導電性組成物を製造する際のポリウレタン樹脂の溶解性、形成される導電膜の耐久性や基材に対する接着強度等を考慮して適宜決定されるが、通常は580〜8,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,000〜5,000の範囲である。
上記ポリオール化合物は、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。更に、ポリウレタン樹脂の性能が失われない範囲内で、上記ポリオール化合物の一部を低分子ジオール類、例えば前記ポリオール化合物の製造に用いられる各種低分子ジオールに替えることもできる。
ジイソシアネート化合物(b)としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、又はこれらの混合物を使用できる。好ましくは脂環族ジイソシアネートであり、より好ましくはイソホロンジイソシアネートである。芳香族ジイソシアネートとしては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
カルボキシル基を有するジオール化合物(c)としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。特に反応性、溶解性の点からジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得る際の条件は、イソシアネート基を過剰にすればよく、その他は特に制限されないが、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.05/1〜3/1の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは1.2/1〜2/1である。また、反応は通常常温〜150℃の間で行なわれ、更に製造時間、副反応の制御の面から好ましくは60〜120℃の間で行なわれる。
ポリアミノ化合物(e)は、鎖延長剤として働くものであり、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン、ノルボルナンジアミンの他、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類を使用することができる。なかでも、イソホロンジアミンが好適に使用される。
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)とポリアミノ化合物(e)を反応させてポリウレタン樹脂を合成する際、得られるポリウレタン樹脂の分子量を調整する目的で反応停止剤を併用することができる。反応停止剤としては、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のジアルカノールアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が使用できる。
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)と、ポリアミノ化合物(e)、及び必要に応じて反応停止剤を反応させる際の条件は特に制限されないが、ウレタンプレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基を1当量とした場合、ポリアミノ化合物(e)及び反応停止剤中のアミノ基の合計当量が0.5〜1.3の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは0.8〜0.995の範囲内である。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、塗工性や取扱い性の観点から、5,000〜200,000の範囲が好ましい。
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂は、二塩基酸とジアミンの重縮合、アミノカルボン酸の重縮合、或いはラクタムの開環重合などの各種反応で得られるアミド結合を有する高分子の総称であり、各種の変性ポリアミドをはじめ、一部水素添加された反応物で製造されたものであり、他のモノマーが一部共重合された重合体、或いは各種添加剤などの他の物質が混合されたものを用いることができる。
ポリアミド樹脂は、特に限定されないが、ダイマー酸を主成分とする二塩基酸とポリアミン類とを縮合重合させて得られるダイマー酸変性ポリアミド樹脂が好ましい。ダイマー酸変性ポリアミド樹脂を製造する際のダイマー酸としては、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸などに含まれる天然の一塩基性不飽和脂肪酸を重合したダイマー酸が工業的に広く用いられるが、原理的には、飽和脂肪族、不飽和脂肪族、脂環式、或いは芳香族などの各種ジカルボン酸などであってもよい。当該ダイマー酸の市販品としては、ハリダイマー200、300(ハリマ化成社製)、バーサダイム228、216、エンポール1018、1019、1061、1062(コグニス社製)などが挙げられる。さらに、水素添加されたダイマー酸も使用でき、水添ダイマー酸の市販品としてはプリポール1009(クローダジャパン株式会社製)、エンポール1008(コグニス社製)などが挙げられる。
上記ダイマー酸以外に、適当な柔軟性を有するポリアミド樹脂にするため、二塩基酸として各種のジカルボン酸を用いることができる。ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、(無水)コハク酸、(無水)マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸などが用いられる。
さらに、二塩基酸としてフェノール性水酸基を有するものも使用できる。フェノール性水酸基を有する二塩基酸を使用することによって、ポリアミド樹脂の側鎖にフェノール性水酸基を導入することができ、硬化剤との反応に利用することができる。
フェノール性水酸基を有する二塩基酸としては、2−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等のヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシイソフタル酸、2,4−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸等のジヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、2,3−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシテレフタル酸等のジヒドロキシテレフタル酸、4−ヒドロキシフタル酸、3−ヒドロキシフタル酸等のヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3,5−ジヒドロキシフタル酸、4,5−ジヒドロキシフタル酸、3,6−ジヒドロキシフタル酸等のジヒドロキシフタル酸などが挙げられる。
更にこれらの酸無水物や例えば多塩基酸メチルエステルのようなエステル誘導体なども挙げられる。
なかでも、共重合性、入手の容易さなどの点から、5−ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。
さらに、加熱時に適当な流動性を有するポリアミド樹脂にするため、必要に応じて各種のモノカルボン酸を用いる。モノカルボン酸としては、具体的には、プロピオン酸、酢酸、カプリル酸(オクタン酸)、ステアリン酸、オレイン酸などが用いられる。
上記ダイマー酸変性ポリアミド樹脂を製造する際の反応物としてのポリアミン類は、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族などの各種ジアミン、トリアミン、ポリアミンなどである。
上記ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−又はm−キシレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,2−ビス−(4−シクロヘキシルアミン)、ポリグリコールジアミン、イソホロンジアミン、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ビス−(2’−アミノエチル)ベンゼン、N−エチルアミノピペラジン、ピペラジンなどが挙げられる。
また、トリアミンにはジエチレントリアミンなどが挙げられ、ポリアミンにはトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。さらに、二量体化された脂肪族のニトリル基を変換して水素還元して得られたダイマージアミンも使用することができる。
また、ポリアミン化合物としては、炭素数20〜48の環状又は非環状の炭化水素基を有する多塩基酸化合物のカルボシキル基をアミノ基に転化した化合物が挙げられ、市販品の例としては例えば、クローダジャパン株式会社製の「プリアミン1071」「プリアミン1073」「プリアミン1074」「プリアミン1075」や、コグニスジャパン株式会社製の「バーサミン551」などが挙げられる。
ジアミンにはアルカノールアミンを併用してもよい。アルカノールアミンにはエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。また、酸素を骨格に有するポリエーテルジアミンを用いることができる。このポリエーテルは一般式 HN−R−(RO)−R−NH (式中、nは2〜100であり、R、Rは炭素原子数が1〜14個であるアルキル基又は脂環式炭化水素基であり、Rは炭素原子数が1〜10個であるアルキル基又は脂環式炭化水素基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。)で表すことができる。このエーテルジアミンとしてはポリオキシプロピレンジアミン等が挙げられ、市販品としてはジェファーミン類(サンテクノケミカル社製)がある。また、ビス−(3−アミノプロピル)−ポリテトラヒドロフランも挙げることができる。
上記ポリアミン類とダイマー酸或いは各種ジカルボン酸とは常法により加熱縮合され、脱水を伴ったアミド化工程によりダイマー酸変性ポリアミド樹脂をはじめとする各種ポリアミド樹脂が製造される。一般に、反応温度は100〜300℃程度、反応時間は1〜8時間程度である。
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、単量体として多価カルボン酸と多価アルコールより構成される重合体である。ポリエステル樹脂は、公知のものが採用でき、具体的には、樹脂の凝集力の確保の点から、重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。また、密着の観点から、ガラス転移温度が−10℃〜200℃であることが好ましい。
多価カルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を選択し使用できる。一方、多価アルコール成分としては、脂肪族グリコール、エーテルグリコール類、3価以上のポリアルコール等が挙げあられ、これらの中から1種、又はそれ以上を選び使用できる。
ポリエステル樹脂の市販品としてはバイロン(東洋紡株式会社製、「バイロン」は登録商標)、ポリエスター(日本合成化学工業株式会社製、「ポリエスター」は登録商標)、テスラック(日立化成ポリマー株式会社製、「テスラック」は登録商標)などが挙げられる。
バインダー樹脂としては、加熱時の流動性、体積抵抗率、基材への密着性及び耐久性の観点から、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体を含むことも好ましい。側鎖の導入方法は特に限定されず、各種の合成方法により得ることができる。
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基等が挙げられるが、反応性の点で水酸基が好適である。
イソシアネート基と反応可能な官能基は、ビニル系重合体の側鎖又は主鎖に導入することができ、導入方法は特に限定されず各種の合成方法により導入することができる。高い強靱性、耐久性を必要とする用途に用いる場合には、ビニル系重合体の主鎖に直接、イソシアネートと反応可能な官能基を導入することが望ましく、これにより樹脂の架橋密度を向上できる。
ビニル系重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量が500,000以下の場合には、溶媒への溶解性が向上し、5,000以上の場合には、(熱)プレス後に十分な塗膜強度が得られる。
バインダー樹脂は、バインダー樹脂が基材に適用された後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性樹脂を用いることもできる。
硬化性樹脂に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されないが、屋外で使用する場合には、塗膜が経時で劣化することを防ぐために、脂環族又は脂肪族の化合物のみを用いることが好ましい。
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、上記化合物とグリコール類又はジアミン類との両末端イソシアネートアダクト体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体を用いても構わない。
特に、ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性体、特にイソシアヌレート環含有トリイソシアネートを含む場合には、熱プレス後に十分な塗膜強度が得ることができるため、好ましい。イソシアヌレート環含有トリイソシアネートとして具体的には、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュールZ4470)、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールN3300)、イソシアヌレート変性トルイレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールFL−2、FL−3、FL−4、HLBA)が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は、要求性能に応じて、バインダー樹脂官能基の総数に対して、イソシアネート基の総数が、好ましくは0.1倍〜5.0倍、更に好ましくは0.5倍〜3.0倍、特に好ましくは0.8〜2.0倍となるような比率で、1種、又は2種以上を混合して用いることができる。
バインダー樹脂は、溶剤に溶解する溶解性樹脂、及び溶剤中で溶解せずに、微粒子の状態で存在する分散型樹脂微粒子(エマルション)のいずれの形態であってもよい。
分散型樹脂微粒子の粒子構造は、多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、又はシェル部に官能基を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。樹脂微粒子の平均粒子径は、結着性や粒子の安定性の観点から、10〜1000nmであることが好ましく、10〜300nmであることが好ましい。また、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると粒子の安定性が損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5%以下であることが好ましい。
なお、上記の平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子の固形分に応じて、分散媒と同じ分散液で200〜1000倍に希釈しておく。該希釈分散液約5mlを測定装置(日機装社製ナノトラック)のセルに注入し、サンプルに応じた分散媒及び樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークによって測定することができる。
分散型樹脂微粒子としては、架橋型樹脂微粒子を含むことが好ましい。架橋型樹脂微粒子とは、内部架橋構造(三次元架橋構造)を有する樹脂微粒子を示し、粒子内部で架橋していることが重要である。また、架橋型樹脂微粒子が特定の官能基を含有することにより、基材との密着性に寄与することができる。さらには架橋構造や官能基の量を調整することで、優れた耐久性の塗膜を得ることができる。
環境負荷などの観点では、水系の溶剤、好ましくは水中で使用することができる水溶性樹脂及び水性樹脂微粒子が好ましい。また、導電性組成物のスラリー安定性や塗工性等の観点から、水溶性樹脂及び水性樹脂微粒子を併用することがさらに好ましい。
[水溶性樹脂]
水溶性樹脂とは、25℃の水99g中に樹脂1gを入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で完全に溶解可能な樹脂である。水溶性樹脂には、炭素材料の分散性を高める効果があるため、少ない樹脂量で安定な組成物が得られる。
水溶性樹脂は、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂、アニオン性とカチオン性の性質を併せ持つ両性樹脂、またそれ以外のノニオン性樹脂に大別され、更にその樹脂が複数の単量体から構成されてもよい。また、水溶性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
アニオン性樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基及びそれらを一部あるいは全てを中和した骨格を含有する樹脂が挙げられる。例示すると、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−スルホエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの重合性単量体の単独重合物、又は他の重合性単量体との共重合物、カルボキシメチルセルロース、及びそれらのアルカリ中和物等が挙げられる。
カチオン性樹脂としては、例えば、環状を含むアミノ基及びアミノ基の一部あるいは全て中和した骨格や4級アンモニウム塩を含有する樹脂等が挙げられる。例示すると、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどの重合性単量体の単独重合物、又は他の重合性単量体との共重合物及びそれらの酸中和物が挙げられる。
両性樹脂としては、例えば、前記アニオン性骨格と前記カチオン性骨格を共に含有する樹脂が挙げられる。例示すると、スチレン−マレイン酸−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの共重合物などが挙げられる。
ノニオン性樹脂は、前記アニオン性、カチオン性及び両性樹脂以外の樹脂である。例示すると、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
水溶性樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは質量平均分子量が5,000〜2,500,000である。質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリエチレンオキサイド換算分子量を示す。
[水性樹脂微粒子]
水性樹脂微粒子(水性エマルション)は、樹脂が水中で溶解せずに微粒子の状態で存在する分散型樹脂微粒子であり、例えば、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ポリオレフィン系エマルション、フッ素系エマルション(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など)、ジエン系エマルション(スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等)が挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを意味する。
水性樹脂微粒子を含む導電性組成物は、塗膜形成された場合、粒子間及び基材との密着性に優れ、強度の高い塗膜を提供できる。更に、密着性に優れることから必要な水性樹脂微粒子は少量で済むため、結果、導電性組成物の導電性が向上する。上述のような効果を得るため、水性樹脂微粒子としては、粒子間の結着性と柔軟性(膜の可とう性)に優れる(メタ)アクリル系エマルションやウレタン系エマルションが好ましい。
(メタ)アクリル系エマルションとは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を10質量部以上含有する乳化重合物であり、好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上含有されているとよい。アクリロイル基を有する単量体は反応性に優れるため、樹脂微粒子を比較的容易に作製することができる。したがって、水性樹脂微粒子として、(メタ)アクリル系エマルションは特に好ましい。
<溶媒>
本発明の導電性組成物は、炭素材料を分散させる場合や、炭素材料と、バインダー樹脂とを均一に混合する場合に、溶媒を適宜用いることができる。このような溶媒としては、樹脂を溶解できるものや、樹脂微粒子エマルションを安定に分散できるものであれば特に限定されず、水や有機溶剤を挙げることができる。
有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から導電性組成物の組成に応じ適当なものが使用できる。
また、溶媒は水と有機溶剤とを組み合わせて用いてもよく、2種以上の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。
水溶性樹脂や水性樹脂微粒子を用いる場合、溶解性や分散性の観点から、溶媒として水を使用することが好ましく、必要に応じて、水と相溶する液状媒体を添加してもよい。水と相溶する液状媒体としては、炭素数が4以下のアルコール系溶剤が好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
<異なる二種以上の炭素材料>
本発明の導電性組成物は、前述のとおり、本発明の炭素材料の中から異なる二種以上の炭素材料を含むことができる。
上記異なる二種以上の炭素材料の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくは、比表面積の異なる二種以上の炭素材料の併用;黒鉛と黒鉛、黒鉛とカーボンナノチューブ、黒鉛とグラフェン(グラフェンナノプレートレット)のような炭素の種類が異なる二種以上の炭素材料の併用;又はそれらの組み合わせである。
比表面積の異なる二種以上の炭素材料を併用する場合、比表面積が最も大きな炭素材料の比表面積は、好ましくは5〜1500m/gである。
本発明の異なる二種以上の炭素材料を含む導電性組成物から形成された導電膜は、均一で炭素材料間のパッキング性が高く、密度の高い導電膜であるため、膜中の炭素材料間の導電性ネットワーク及び導電膜の耐久性が向上すると推察される。さらに、二種以上の炭素材料を併用することで濡れ性が向上し、バインダー樹脂との相互作用が変化し、バインダー樹脂が炭素材料表面を被覆しにくくなることで、炭素材料間の接点にバインダー樹脂が存在しにくくなり、炭素材料の接触抵抗が低減すると推察される。さらに、二種以上の炭素材料を併用すると、分散性の向上によって粘度が低下する傾向があり、分散体の取り扱いが容易になる効果が見られ、さらには塗工性も向上する。
これらの作用により、異なる二種以上の炭素材料を用いることで、極めて導電性に優れた導電膜を形成することができると推察している。
<導電助剤>
本発明の導電性組成物は、必要に応じてさらに、本発明の炭素材料以外の導電助剤を含有してもよい。導電助剤は、本発明の特定のホウ素含有炭素材料に該当しないものであればよく、例えば、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等)、カーボンナノホーン、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボンのような炭素助剤、及び金属ナノ粒子(銀、銅等)のような金属助剤が挙げられる。上記導電助剤は、ホウ素を含んでいてもよく、ホウ素をドープしたものであってもよい。導電助剤がホウ素を含む場合は、導電助剤中のホウ素の含有量は、好ましくは0.01〜2mol%であり、より好ましくは、0.1〜1.1mol%である。導電助剤中のホウ素の含有量が、0.01〜2mol%であると、溶媒やバインダー樹脂に対する濡れ性が高まったり、導電助剤の硬さが増加するため、導電性組成物の分散性が向上したり、衝撃などの外力に対する耐久性が向上するため、分散安定性や膜強度が改善する。
比表面積及び粒子径の観点から、導電助剤として好ましくはカーボンブラックである。尚、炭素助剤として使用できるもの、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等)、カーボンナノホーン、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボンは上述で説明したものを使用することができる。
導電助剤は、導電主剤である本発明の炭素材料より比表面積が大きいことが好ましい。導電助剤の好ましい比表面積は、好ましくは5〜1500m/g、より好ましくは20〜1300m/g、さらに好ましくは110〜900m/gである。導電助剤の比表面積が1500m/g以下であると、導電性組成物の分散性が良く、比表面積が5m/g以上であると、導電膜中の導電主剤間の隙間を効率良く埋めることができ、導電性や耐久性に優れた導電膜を得ることができる。
尚、本発明の比表面積は、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)を指す。
導電性組成物の総固形分に占めるホウ素含有炭素材料の割合は、好ましくは60〜99質量%であり、より好ましくは65〜80質量%である。
導電性組成物がさらに導電助剤を含む場合、導電性組成物の総固形分に占めるホウ素含有炭素材料の割合は、好ましくは40〜85質量%であり、より好ましくは45〜75質量%であり、さらに好ましくは50〜60質量%である。
一方、導電性組成物の総固形分に占める導電助剤の割合は、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜20質量%であり、さらに好ましくは10〜18質量%である。導電性組成物の総固形分に占める炭素材料、導電助剤の割合が、それぞれ50〜60質量%、10〜18質量%であると、導電性組成物の分散性が非常に良く、導電性や耐久性にとりわけ優れた導電膜を得ることができる。
導電性組成物の粘度は、導電性組成物の塗工方法によって適宜調整できるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。上記粘度は、例えば、B型粘度計を用いて測定することができる。
導電助剤としてホウ素含有炭素助剤を含む分散体の粘度は、上述したように炭素助剤の表面状態が変化しているため、ホウ素を含まない炭素助剤として分散体を作製した場合に比べ、粘度が低下する傾向があり、分散体の取り扱いが容易になる効果が見られる。
(分散機・混合機)
導電性組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;又は、その他ロールミル、ニーダー、超音波分散機等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用してもよいし、複数種の装置を組み合わせて使用してもよい。
<導電膜>
本発明の導電膜は、導電性組成物から形成されてなる膜であり、基材上に導電性組成物を塗工し、必要に応じて乾燥することで形成することができる。
(基材)
導電膜成形に使用する基材の形状は特に限定されず、用途にあったものを適宜選択することができる。基材は、好ましくはシート状であり、より好ましくは絶縁性の樹脂フィルムである。
基材の材質は特に限定されず、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリ塩ビニル、ポリアミド、ナイロン、OPP(延伸ポリプロピレン)、CPP(未延伸ポリプロピレン)が挙げられる。
また、形状としては、一般的には平板上のフィルムが用いられるが、表面を粗面化したものや、プライマー処理したもの、穴あき状のもの、及びメッシュ状の基材も使用できる。
基材上に導電性組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。このような塗工方法としては、例えば、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、放置乾燥、送風乾燥、温風乾燥、赤外線加熱、遠赤外線加熱が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行ってもよく、導電膜を軟化させてプレスしやすくするため、圧延処理は加熱しながら行ってもよい。
導電膜の厚みは、一般的には0.1μm以上、1mm以下であり、好ましくは1μm以上、200μm以下である。
(導電膜の体積抵抗率)
本発明の導電膜の体積抵抗率は、好ましくは5×10−3Ω・cm未満であり、より好ましくは2×10−3Ω・cm未満であり、さらに好ましくは1×10−3Ω・cm未満である。体積抵抗率が5×10−3Ω・cm未満であることで、非常に導電性の高い組成物として、電池の電極、集電体や電池、電子機器の配線等に利用することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例及び比較例における「部」は「質量部」、%は質量%を表す。
<ホウ素含有炭素材料の製造>
[実施例1]ホウ素含有炭素材料(1)
薄片化黒鉛UP−20(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)とを、質量比80/20(薄片化黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、乳鉢で混合し混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2200℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(1)を得た。
cmであった。
[実施例2]ホウ素含有炭素材料(2)
球状黒鉛CGB−50(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)とを、質量比80/20(球状黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、溶媒として水を加え自転公転ミキサーで混合し、大気下80℃のオーブンで乾燥させ混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2200℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(2)を得た。
[実施例3]ホウ素含有炭素材料(3)
球状黒鉛CGB−50(日本黒鉛工業社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)とを、質量比99/1(球状黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、溶媒として水を加え自転公転ミキサーで混合し、大気下80℃のオーブンで乾燥させ混合物を得た。上記混合物をグラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2200℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(3)を得た。
[比較例1]ホウ素含有炭素材料(4)
球状黒鉛CGB−50(日本黒鉛社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)とを、質量比80/20(球状黒鉛/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、溶媒として水を加え自転公転ミキサーで混合し、大気下80℃のオーブンで乾燥させ混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、1000℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(4)を得た。
[比較例2]ホウ素含有炭素材料(5)
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)NTP3003(NTP社製)とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)とを、質量比80/20(MWCNT/ホウ酸)となるようにそれぞれ秤量し、乳鉢で混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2000℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(5)を得た。
[比較例3]ホウ素含有炭素材料(6)
グラフェンナノプレートレット(GNP)xGnP−C−750(XGSciences社製)と炭化ホウ素(富士フィルム和光純薬社製)とを、質量比96/4(GNP/炭化ホウ素)となるようにそれぞれ秤量し、乳鉢で混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2800℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(6)を得た。
[実施例4]ホウ素含有炭素材料(7)
膨張化黒鉛GR−60(日本黒鉛工業社製)99部、炭化ホウ素(富士フィルム和光純薬社製)1部、溶媒としてトルエン300部、メタノール100部と、をハイシアミキサー(L5M−A、SILVERSON製)を用いて分散を行った後、溶媒を乾燥させて、前駆体を作製した。次に、前駆体をグラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、2200℃で1時間熱処理を行い、ホウ素含有炭素材料(7)を得た。
[実施例5〜12]ホウ素含有炭素材料(8)〜(15)
表2に示す原料、加熱温度条件を用いた以外はホウ素含有炭素材料(7)と同様にして、ホウ素含有炭素材料(8)〜(15)を得た。
<ホウ素含有炭素材料の評価>
作製したホウ素含有炭素材料について、下記の方法で物性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
[G/D比]
G/D比は、日本分光社製レーザーラマン分光光度計NRS−3100を用いて評価した。励起レーザー波長532nmの条件下で測定し、得られた各サンプルのラマンスペクトルのDバンド(1330〜1370cm−1)とGバンド(1560〜1620cm−1)のピーク強度の比(IG/ID)からG/D比を算出した。
[ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合]
表面全ホウ素元素の割合及び表面置換型ホウ素元素の割合は、X線光電子分光装置ThermoFisher scientific社製K−Alphaを用いて求めた。詳細には、ホウ素B1sスペクトルピークから得られた全スペクトル面積から表面全ホウ素元素の割合Bを算出した。また、前記ホウ素の全スペクトル面積に対する188〜189.3eVのピーク面積の割合から表面置換型ホウ素元素の割合BRを算出し、B×BRにより、ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合を求めた。
なお、比較例1の炭素材料は、B1sスペクトルにおいて、188〜189.3eVの領域にスペクトルが確認されなかったため、表面置換型ホウ素元素は検出できなかった。
[結晶子径(La)]
X線回折装置(リガク社製、Smartlab)を用いて、CuKα線をX線源とした測定により、2θ=77.0〜78.5°付近に黒鉛骨格由来の(110)面のピーク位置、及び半値幅から結晶子径(La)を算出した。
[体積抵抗率]
体積抵抗率は、三菱ケミカルアナリテック社製粉体抵抗測定システムMCP−PD51型を用いて評価した。低抵抗用粉体プロープを用いて四探針方式にて測定を行い、各サンプルに20kNの荷重を加えた際の体積抵抗率を値として使用した。
Figure 2021165224
Figure 2021165224
表1及び表2によれば、実施例のホウ素含有炭素材料はいずれも、比較例に比べて体積抵抗率が大きく低下し、低抵抗化が確認された。これは置換型ホウ素によるキャリアドープと、高G/D比による移動度の維持との両立により、電子伝導性が向上したためと考えられる。
このようにG/D比と置換型ホウ素元素量が本発明の範囲内であるホウ素含有炭素材料は、顕著な高導電性を発現した。
また、ホウ素含有炭素材料のG/D比の違いが、導電性に大きな影響を及ぼすことが判明した。G/D比の異なる実施例4−7の結果を対比すると、G/D比が2.0〜5.0の範囲にある炭素材料(9)及び(10)は、顕著に優れた導電性を示した。
また、ホウ素含有炭素材料の結晶子径(La)の違いが、導電性に大きな影響を及ぼすことが判明した。結晶子径(La)の異なる実施例6、8−12の結果を対比すると、Laが30〜70nmの範囲にある炭素材料(9)、(11)、(12)及び(15)は、顕著に優れた導電性を示した。
<バインダー樹脂の製造>
[製造例1]ポリウレタン樹脂溶液
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2,011)455.5部、ジメチロールブタン酸16.5部、イソホロンジイソシアネート105.2部、トルエン140部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン360部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次に、イソホロンジアミン19.9部、ジ−n−ブチルアミン0.63部、2−プロパノール294.5部、トルエン335.5部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液969.5部を添加し(ウレタンプレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基に対してアミノ基の合計当量は0.98である)、50℃で3時間反応させた後、続いて70℃2時間反応させ、トルエン126部、2−プロパノール54部で希釈し、重量平均分子量61,000、酸価10mgKOH/gであるポリウレタン樹脂の溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂の溶液を、トルエン/メチルエチルケトン/2−プロパノール(質量比:1/1/1)で希釈して、固形分20質量%のポリウレタン樹脂溶液を得た。
[製造例2]ポリアミド樹脂溶液
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、及び温度計を備えた4口フラスコに、多塩基酸化合物としてプリポール1009(水添ダイマー酸、クローダジャパン株式会社製)を156.2部、5−ヒドロキシイソフタル酸を5.5部、ポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン株式会社製)を146.4部、イオン交換水を100部仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になった後、その温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空下で1時間保持し、温度を低下させた。最後に、酸化防止剤を添加し、重量平均分子量24,000、酸価13.2mgKOH/g、水酸基価5.5mgKOH/g、ガラス転移温度−32℃のポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂を、トルエン/2−プロパノール(質量比:2/1)で希釈して、固形分20質量%のポリアミド樹脂溶液を得た。
[製造例3]ポリエステル樹脂溶液
バイロン200(東洋紡社製、ポリエステル樹脂)をトルエン/メチルエチルケトン(質量比:1/1)で希釈して、固形分20質量%ポリエステル樹脂溶液を得た。
なお、樹脂の評価は以下の通りに行った。
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量の測定は、東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶剤(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
(酸価(AV))
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/Sただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
(水酸基価(OHV))
水酸基価は、水酸基含有樹脂1g中に含まれる水酸基の量を、水酸基をアセチル化させたときに水酸基と結合した酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量(mg)で表したものである。水酸基価は、JISK0070に準じて測定し、本発明においては、下記式に示す通り、酸価を考慮して求めた。
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により水酸基価を求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.05}/S]+D
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
(ガラス転移温度(Tg))
樹脂のガラス転移温度は、溶剤を乾燥除去した樹脂を用い、メトラー・トレド(株)製「DSC−1」を使用し、−80〜150℃まで2℃/分で昇温して測定した。
<導電助剤の製造>
[製造例4]CB(4)
EC−600J(ケッチェンブラック、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)93部とホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)7部とに、溶媒であるトルエン800部とエタノール100部とを加え、自転公転ミキサーで混合し、大気下80℃のオーブンで乾燥させて混合物を得た。上記混合物を、グラファイト製るつぼに充填し、多目的高温炉にてアルゴン雰囲気下、1700℃で1時間熱処理を行い、CB(4)を得た。
CB(4)のG/D比は0.75であり、ホウ素含有量は1.03質量%であった。ホウ素含有量は、ICP発光分光分析(SPECTRO社製 SPECTROARCOS FHS12)を用いて、炭素材料中を測定した値である。
[製造例5]CB(5)
EC−600Jを88部とホウ酸12部とを用いた以外は、製造例4と同様にしてCB(5)を得た。CB(5)のG/D比は0.71であり、ホウ素含有量は1.81質量%であった。
[製造例6]CB(6)
EC−600Jを86.5部とホウ酸13.5部とを用いた以外は、製造例4と同様にしてCB(6)を得た。CB(6)のG/D比は0.66であり、ホウ素含有量は2.02質量%であった。
<導電性組成物、導電膜の製造>
[実施例A1]
炭素材料(7)85部、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂溶液75部(樹脂固形分15部)、溶媒としてトルエン/メチルエチルケトン/2−プロパノール(質量比:1/1/1)170部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、導電性組成物(1)を得た。次に、この導電性組成物(1)を、厚み100μmのPETフィルム基材上にドクターブレードを用いて塗布した後、オーブンの中で乾燥させた。その後、線圧300kg/cmの条件でロールプレスを行い、導電膜(1)を得た。
[実施例A2〜A4、比較例A1〜A3]
表3に示す配合組成に変更した以外は実施例A1と同様の方法により、導電性組成物(2)〜(7)、導電膜(2)〜(7)を得た。
[実施例A5]
炭素材料(13)61部、導電助剤としてCB(1)9部、バインダー樹脂としてポリアミド樹脂溶液150部(樹脂固形分30部)、溶媒としてトルエン/メチルエチルケトン/2−プロパノール(質量比:1/1/1)を組成物中の固形分が30質量%となるようにミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、導電性組成物(8)を得た。次に、この導電性組成物(8)を、厚み100μmのPETフィルム基材上にドクターブレードを用いて塗布した後、オーブンの中で乾燥させて、導電膜(8)を得た。
[実施例A6〜A23、比較例A4〜A6]
表3に示す配合組成に変更した以外は実施例A5と同様の方法により、導電性組成物(9)〜(26)、(30)〜(32)、導電膜(9)〜(26)、(30)〜(32)を得た。
[実施例A24]
炭素材料(10)57部、導電助剤としてCB(2)(アセチレンブラック HS−100、デンカ社製)18部、バインダー樹脂として水溶性樹脂CMC(ダイセルミライズ社製、カルボキシメチルセルロース#1240)を2質量%溶解した水溶液250部(樹脂固形分5部)、をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。
次に、バインダー樹脂として水性樹脂微粒子(ポリアクリルエマルション W−168、トーヨーケム社製、固形分50質量%)を40部(樹脂固形分20部)追加してミキサーで混合し、導電性組成物(27)を得た。
次に、この導電性組成物(27)を、厚み100μmのPETフィルム基材上にドクターブレードを用いて塗布した後、オーブンの中で乾燥させて、導電膜(27)を得た。
[実施例A25、A26]
表3に示す配合組成に変更した以外は実施例A24と同様の方法により、導電性組成物(28)、(29)、導電膜(28)、(29)を得た。
<導電性組成物、導電膜の評価>
得られた導電性組成物及び導電膜について以下の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
[分散安定性評価]
分散安定性は、導電性組成物を25℃にて7日間静置して保存した後の、液性状の変化から評価した。液性状の変化は、ヘラで撹拌した際の撹拌しやすさから判断した。
判定基準
○:液性状の変化がない(良好)
△:粘度上昇しているが、ゲル化はしていない(可)
×:ゲル化している(不良)
[塗工性評価]
得られた導電膜を、ビデオマイクロスコープVHX−900(キーエンス社製)にて500倍で観察し、塗工ムラ及びピンホールについて、下記の基準で判定した。塗工ムラは、膜表面の濃淡により判断した。ピンホールは、膜中の塗布されていない欠陥の有無により判断した。
《塗工ムラ》
○:膜表面の濃淡が確認されない(良好)
△:膜表面の濃淡が2〜3箇所あるが極めて微小領域である(可)
×:膜表面の濃淡が多数確認される、又は濃淡の縞の長さが5mm以上のものが1個以上確認される(不良)
《ピンホ−ル》
○:ピンホールが確認されない(良好)
△:ピンホールが2〜3個あるが極めて微小である(可)
×:ピンホールが多数確認される、又は直径1mm以上のピンホールが1個以上確認される(不良)
[膜の体積抵抗率]
導電膜の体積抵抗率は、JIS−K7194に準拠して、ロレスターGP(日東精工アナリテック社製)を用いて4端子法で測定した。
[膜の耐久性]
導電膜の耐久性は、JIS K5600−5−4:1999に準拠して、硬度がHBの鉛筆を用いて引っかき硬度(鉛筆法)により評価した。
〇:塑性変形及び凝集破壊が起こらない(良好)
△:塑性変形又は凝集破壊が部分的に起こっている(可)
×:塑性変形及び凝集破壊が起こっている (不良)
Figure 2021165224
表3の結果によれば、本発明のホウ素含有炭素材料を用いた導電性組成物は、優れた分散安定性及び塗工性を有しており、該導電性組成物から形成された導電膜は、高い導電性と耐久性とを両立した。
また、実施例A1〜A4を比較することにより、炭素材料のG/D比の違いが、導電性組成物や導電膜の特性に大きな影響を及ぼすことが判明した。
また、実施例A14〜A19の比較から、炭素材料の結晶子径(La)の違いが、実施例A24〜A26の比較から、炭素材料の表面置換型ホウ素元素の割合の違いが、導電性組成物や導電膜の特性に大きな影響を及ぼすことが判明した。
一方、導電助剤に着目すると、実施例A5、A6、A9、A11の比較から、導電性組成物中の導電助剤の組成比により、導電性組成物の分散安定性、塗工性や導電膜の特性が異なることが判明した。
また、実施例A20〜A23を比較することにより、導電助剤のホウ素含有量によっても、導電性組成物の塗工性や導電膜の特性に影響を及ぼすことが判明した。
従って、これらの結果は、炭素材料に起因する導電性以外の要因が関与していることを示唆する。現段階では詳細は不明だが、本発明の導電性組成物は、ホウ素含有炭素材料自体が導電性に優れるだけでなく、分散性及び分散安定性が良好であり、さらには塗工性も良好なため、膜中で炭素材料が効率的に導電ネットワークを形成することにより、優れた導電性を発現していると推察される。また、炭素材料の均一なネットワークにより、導電膜の耐久性改善にも繋がったものと推察される。
また、本発明のホウ素含有炭素材料は、溶媒やバインダー樹脂に対する濡れ性が向上するだけでなく、炭素材料の硬さが硬くなる傾向にあり、分散性や塗工性まで影響を及ぼしていると考えられる。これにより、該ホウ素含有炭素材料を含む導電性組成物は、分散性や塗工性が向上し、優れた導電性を発揮したと考察している。

Claims (9)

  1. ホウ素元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされているホウ素含有炭素材料であって、
    レーザーラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドとの強度比[G/D]が1.0以上であり、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、ホウ素含有炭素材料表面の全元素に対する表面置換型ホウ素元素の割合が0.0001以上である、ホウ素含有炭素材料。
  2. 黒鉛系炭素材料、グラフェン系炭素材料、及びカーボンナノチューブ系炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載のホウ素含有炭素材料。
  3. GバンドとDバンドとの強度比[G/D]が1.25〜5.0である、請求項1又は2に記載のホウ素含有炭素材料。
  4. 表面置換型ホウ素元素の割合が0.0004以上である、請求項1〜3いずれか一項に記載のホウ素含有炭素材料。
  5. 結晶子径(La)が28〜80nmである、請求項1〜4いずれか一項に記載のホウ素含有炭素材料。
  6. 請求項1〜5いずれか一項に記載のホウ素含有炭素材料と、バインダー樹脂又は溶媒の少なくとも一方と、を含む導電性組成物。
  7. さらに導電助剤を含む、請求項6に記載の導電性組成物。
  8. 導電性組成物の総固形分に占めるホウ素含有炭素材料の割合を50〜60質量%、導電助剤の割合を10〜18質量%の範囲で含む、請求項7に記載の導電性組成物。
  9. 請求項6〜8いずれか一項に記載の導電性組成物から形成されてなる導電膜。
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