JP2022149631A - アクチュエータ、配管内移動体の固定部、及び配管内移動体 - Google Patents
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Abstract
【課題】内径が2倍以上異なる配管が含まれる配管経路内で、配管内移動体に必要な定位置保持力を発揮させる。【解決手段】アクチュエータ10は、長さ方向に伸びる第1面材40と周方向に伸びる第2面材42とが、周方向に接合されて筒状をなす拘束部材30が、内部の加圧により膨張可能なチューブ状部材20に対して、周方向にねじり回された状態で被覆されている。拘束部材30は、ねじり回される前の筒状における第1面材40の周長40Lと第2面材42の周長42Lとの比が、2.5:1~6:1になっている。これにより、チューブ状部材20の加圧時に、螺旋形状への変形と太さの拡大とをバランスよく行わせることができ、アクチュエータ10の螺旋外径の大きさが増大される。このため、内径が2倍以上異なる配管が含まれる配管経路内でも、配管内移動体の固定部として必要な定位置保持力を発揮することができる。【選択図】図1
Description
本発明は、アクチュエータ、アクチュエータが用いられた配管内移動体の固定部、及びその固定部が利用された配管内移動体に関するものである。
近年、チューブ状部材の側面に伸び易い領域と伸び難い領域とを設け、チューブ状部材を内部から加圧したときのチューブ状部材の変形を制御することで動作する、アクチュエータが開発されている。例えば、特許文献1に開示されているアクチュエータは、チューブ状部材が2種類の布帛で覆われることで構成されており、一方の布帛には所定の1方向のみに伸び易い布帛が用いられ、もう一方の布帛には全方向に伸び難い布帛が用いられている。そして、チューブ状部材の長手方向に対して、伸縮性を有する布帛の伸び易い所定の1方向が所定角度をなすように配置することで、チューブ状部材を内部から加圧したときに、アクチュエータを螺旋形状に変形させている。
ここで、上記のようなアクチュエータは、例えば、配管経路内を移動する移動体の一部を構成する、配管経路内での移動体の位置を保持するための固定部として利用される。そのような配管内移動体は、内径が一定の配管経路内だけではなく、内径が異なる配管同士が接続された配管経路内を移動する必要もあり、場合によってはそこに内径が2倍以上異なる配管が含まれていることがある。このような配管経路では、内径が大きい配管に対しては、アクチュエータのチューブ状部材の径を大きくすれば定位置保持力は増す傾向にあるが、チューブ状部材の径が大きすぎると、内径が小さい配管へ移動したときに配管内面に引っ掛かり、途中で動かなくなってしまうことがある。このため、内径が2倍以上異なる双方の配管の内部で、配管内移動体の位置を保持するための十分な定位置保持力を発揮することは困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内径が2倍以上異なる配管が含まれる配管経路内で、配管内移動体に必要な定位置保持力を発揮させることにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)内部の加圧により膨張可能なチューブ状部材に対して、筒状の拘束部材がその長さ方向の一端と他端との間で周方向にねじり回された状態で被覆されているアクチュエータであって、前記拘束部材は、前記チューブ状部材に対してねじり回される前の状態で、前記長さ方向に伸びる第1面材と、前記周方向に伸びる第2面材とが、前記周方向に接合されることで前記筒状をなし、該筒状における前記第1面材の周長と前記第2面材の周長との比が、2.5:1~6:1であるアクチュエータ。
本項に記載のアクチュエータは、内部の加圧により膨張可能なチューブ状部材と、このチューブ状部材を被覆する拘束部材とを備えたものであり、拘束部材によってチューブ状部材が膨張したときの変形を制御することで動作するものである。そのために、拘束部材は、第1面材と第2面材とが周方向に接合された筒状をなすと共に、その筒状の長さ方向の一端と他端との間で周方向にねじり回された状態で、チューブ状部材を被覆している。すなわち、筒状の拘束部材は、その周方向に、第1面材により構成される領域と、第2面材により構成される領域との、2つの領域を有している。又、第1面材は、筒状の拘束部材の長さ方向に伸びるものであって、その他の方向には伸び難い異方的な伸張性を有し、第2面材は、筒状の拘束部材の周方向に伸びるものであって、その他の方向には伸び難い異方的な伸張性を有している。
そして、拘束部材がねじり回されてチューブ状部材を被覆している状態では、拘束部材がねじり回されているねじり角度(ねじり量)に応じて、チューブ状部材に対する第1面材及び第2面材の伸び易い方向が変化する。すなわち、第1面材は、拘束部材がねじり回される前は、拘束部材の長さ方向とチューブ状部材の長さ方向とが平行であるため、チューブ状部材の長さ方向への膨張を許容するような方向に、異方的な伸び易さが発揮される状態にある。しかしながら、拘束部材がねじり回されると、第1面材によりチューブ状部材の膨張を許容する方向が、チューブ状部材の長さ方向から、ねじり角度に応じた角度だけ変化する。これにより、主に第1面材によって、チューブ状部材の内部が加圧されたときの、螺旋形状へのアクチュエータの変形が促されることになる。しかも、拘束部材のねじり角度の調整、換言すれば、第1面材によりチューブ状部材の膨張を許容する方向の調整によって、アクチュエータが変形する螺旋形状の調整が行われるものである。
一方、第2面材は、拘束部材がねじり回される前は、拘束部材の周方向とチューブ状部材の周方向とが平行であるため、チューブ状部材の周方向への膨張を許容するような方向に、異方的な伸び易さが発揮される状態にある。そして、拘束部材がねじり回されると、第2面材によりチューブ状部材の膨張を許容する方向が、チューブ状部材の周方向から、ねじり角度に応じた角度だけ変化する。しかしながら、その変化した後の方向も、チューブ状部材の長さ方向よりは周方向に近いため、主に第2面材によって、チューブ状部材の内部が加圧されたときの、アクチュエータの太さの拡大が促されることになる。
更に、本項に記載のアクチュエータは、ねじり回される前の筒状の拘束部材における、第1面材の周長と第2面材の周長との比が、2.5:1~6:1となっており、これは上述した2つの領域の大きさの比でもある。すなわち、アクチュエータの主に螺旋変形を促す第1面材と、アクチュエータの主に太さの拡大を促す第2面材との大きさの比が、上記の範囲に設定されることで、螺旋形状への変形と太さの拡大とが、バランスよく行われるものとなる。これにより、チューブ状部材の内部が加圧される前のアクチュエータ(拘束部材)の太さなどと比較した、チューブ状部材の内部が加圧されて螺旋変形したアクチュエータの、螺旋形状の外径の大きさが、従来よりも大幅に増大されるものとなる。このため、例えば配管内移動体の固定部に利用される場合に、内径が2倍以上異なる配管が含まれる配管経路内であっても、配管内移動体に必要な良好な定位置保持力が発揮されるものとなる。なお、本明細書における「定位置保持力」とは、配管の内部で変形したアクチュエータ(配管内移動体の固定部)が、配管の内壁に接触しながら位置を保持するための力であり、延いては配管内移動体の位置を保持するための力を示している。
(2)配管内移動体の一部であって、上記(1)項記載のアクチュエータからなり、前記チューブ状部材が加圧されて螺旋変形することで、配管経路内で固定される配管内移動体の固定部。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、配管経路内で配管内移動体の位置を固定するためのものであって、上記(1)項記載のアクチュエータからなる。すなわち、配管経路内でチューブ状部材が加圧されてアクチュエータが螺旋変形することで、アクチュエータが配管の内壁に接触した状態となり、配管内移動体の一部として配管経路内で位置が固定される。このとき、配管経路内で従来よりも外径が大きな螺旋形状に変形するため、配管経路内で安定して位置が固定されるものである。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、配管経路内で配管内移動体の位置を固定するためのものであって、上記(1)項記載のアクチュエータからなる。すなわち、配管経路内でチューブ状部材が加圧されてアクチュエータが螺旋変形することで、アクチュエータが配管の内壁に接触した状態となり、配管内移動体の一部として配管経路内で位置が固定される。このとき、配管経路内で従来よりも外径が大きな螺旋形状に変形するため、配管経路内で安定して位置が固定されるものである。
(3)上記(2)項において、前記チューブ状部材が加圧される前の状態で、前記拘束部材の太さが、前記配管経路を構成する複数の配管のうち、最小内径を有する配管の内径の60%未満の太さである配管内移動体の固定部。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材が加圧される前の状態での拘束部材の太さ(外径)が、配管経路を構成する複数の配管のうち、最小内径を有する配管の内径の60%未満の太さになっているものである。ここで、チューブ状部材が加圧される前の状態の拘束部材(アクチュータ)の太さが、配管の内径の60%を超えていると、そのような非変形時であるにも関わらず、配管の内壁にアクチュエータが引っ掛かってしまい、配管内移動体の移動を阻害する虞がある。しかしながら、本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材が加圧される前の状態の拘束部材の太さが、配管経路を構成する複数の配管の中で最小内径を有する配管の内径の60%未満の太さであるため、配管経路内で配管内移動体の移動が阻害されることなく、特に老朽化した配管が傷つけられるようなこともなく、配管内移動体が円滑に移動するものである。なお、本明細書における「配管経路を構成する複数の配管」とは、配管内移動体が移動する必要のある配管経路を構成している配管であって、そのような配管経路に接続されていても、配管内移動体が移動する必要のない配管であれば、「配管経路を構成する複数の配管」には含まれないものとする。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材が加圧される前の状態での拘束部材の太さ(外径)が、配管経路を構成する複数の配管のうち、最小内径を有する配管の内径の60%未満の太さになっているものである。ここで、チューブ状部材が加圧される前の状態の拘束部材(アクチュータ)の太さが、配管の内径の60%を超えていると、そのような非変形時であるにも関わらず、配管の内壁にアクチュエータが引っ掛かってしまい、配管内移動体の移動を阻害する虞がある。しかしながら、本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材が加圧される前の状態の拘束部材の太さが、配管経路を構成する複数の配管の中で最小内径を有する配管の内径の60%未満の太さであるため、配管経路内で配管内移動体の移動が阻害されることなく、特に老朽化した配管が傷つけられるようなこともなく、配管内移動体が円滑に移動するものである。なお、本明細書における「配管経路を構成する複数の配管」とは、配管内移動体が移動する必要のある配管経路を構成している配管であって、そのような配管経路に接続されていても、配管内移動体が移動する必要のない配管であれば、「配管経路を構成する複数の配管」には含まれないものとする。
(4)上記(2)(3)項において、前記チューブ状部材が加圧されることで拡大した、前記拘束部材の太さが、前記配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径の28%以上の太さである配管内移動体の固定部。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材が加圧されることで拡大する拘束部材の太さ(外径)を、配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径の28%以上の太さに規定するものである。すなわち、その状態での拘束部材(アクチュエータ)の太さが配管の内径の28%未満であると、配管の内壁に対する十分な定位置保持力が得られず、配管内移動体が固定されずに滑ってしまう虞がある。このため、拘束部材の太さが、上記の複数の配管の中で最大内径を有する配管の内径の28%以上の太さであることで、配管経路を構成する全ての配管の内壁に対する十分な定位置保持力が得られるものとなり、そのような複数の配管に内径が2倍以上異なる配管が含まれていたとしても、配管内移動体が配管経路内で安定して固定されるものである。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材が加圧されることで拡大する拘束部材の太さ(外径)を、配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径の28%以上の太さに規定するものである。すなわち、その状態での拘束部材(アクチュエータ)の太さが配管の内径の28%未満であると、配管の内壁に対する十分な定位置保持力が得られず、配管内移動体が固定されずに滑ってしまう虞がある。このため、拘束部材の太さが、上記の複数の配管の中で最大内径を有する配管の内径の28%以上の太さであることで、配管経路を構成する全ての配管の内壁に対する十分な定位置保持力が得られるものとなり、そのような複数の配管に内径が2倍以上異なる配管が含まれていたとしても、配管内移動体が配管経路内で安定して固定されるものである。
(5)上記(2)から(4)項において、前記配管経路の外側で前記チューブ状部材が加圧されたときに、螺旋形状に変形した前記アクチュエータにおいて、前記螺旋形状の螺旋軸を上下方向とする正面視で、前記拘束部材の変形前の長さ方向の中央点を挟んで両側に位置する、前記拘束部材の両側縁部間の距離が、前記配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径以上の距離である配管内移動体の固定部。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、配管経路の外側でチューブ状部材が加圧されたとき、換言すれば、変形が制約されないフリーの状態でチューブ状部材が加圧されたときの、螺旋変形したアクチュエータの螺旋形状の外径の大きさを規定するものである。すなわち、螺旋形状に変形したアクチュエータにおいて、螺旋形状の螺旋軸を上下方向とする正面視で、拘束部材の変形前の長さ方向の中央点を挟んで両側に位置する、拘束部材の両側縁部間の距離を、螺旋形状の外径の大きさとする。そして、そのような拘束部材の両側縁部間の距離を、配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径以上の距離へと規定するものである。これにより、配管経路を構成する内径が2倍以上異なるなどの何れの配管においても、チューブ状部材が加圧されると、螺旋変形したアクチュエータが配管の内壁に接触するものとなり、配管内移動体が安定して固定されるものである。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、配管経路の外側でチューブ状部材が加圧されたとき、換言すれば、変形が制約されないフリーの状態でチューブ状部材が加圧されたときの、螺旋変形したアクチュエータの螺旋形状の外径の大きさを規定するものである。すなわち、螺旋形状に変形したアクチュエータにおいて、螺旋形状の螺旋軸を上下方向とする正面視で、拘束部材の変形前の長さ方向の中央点を挟んで両側に位置する、拘束部材の両側縁部間の距離を、螺旋形状の外径の大きさとする。そして、そのような拘束部材の両側縁部間の距離を、配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径以上の距離へと規定するものである。これにより、配管経路を構成する内径が2倍以上異なるなどの何れの配管においても、チューブ状部材が加圧されると、螺旋変形したアクチュエータが配管の内壁に接触するものとなり、配管内移動体が安定して固定されるものである。
(6)上記(2)から(5)項において、前記チューブ状部材の加圧前の太さは、前記チューブ状部材が加圧されることで拡大した前記拘束部材の太さの45%以上の太さである配管内移動体の固定部。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材の加圧前の太さ(外径)を、チューブ状部材が加圧されることで拡大する拘束部材(アクチュエータ)の太さ(外径)の、45%以上の太さに規定するものである。ここで、チューブ状部材の加圧前の太さが、チューブ状部材が加圧された状態の拘束部材の太さの45%未満であると、チューブ状部材が加圧されたときに、拘束部材の内部でチューブ状部材が座屈してしまい、必要な定位置保持力が発揮されなくなる虞がある。
本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材の加圧前の太さ(外径)を、チューブ状部材が加圧されることで拡大する拘束部材(アクチュエータ)の太さ(外径)の、45%以上の太さに規定するものである。ここで、チューブ状部材の加圧前の太さが、チューブ状部材が加圧された状態の拘束部材の太さの45%未満であると、チューブ状部材が加圧されたときに、拘束部材の内部でチューブ状部材が座屈してしまい、必要な定位置保持力が発揮されなくなる虞がある。
これは、加圧変形前のチューブ状部材の太さに対して、加圧後の太さの変化が大き過ぎるのと同時に、その分長さ方向の変化も大きいため、チューブ状部材の長さの変化に拘束部材が対応できず、それによってチューブ状部材が部分的に伸びなくなることに起因するものである。しかしながら、本項に記載の配管内移動体の固定部は、チューブ状部材の加圧前の太さが、チューブ状部材が加圧された状態の拘束部材の太さの45%以上の太さであるため、上記のようなチューブ状部材の座屈が発生することはない。このため、加圧変形したアクチュエータにより、固定部として必要な定位置保持力が問題なく発揮されるものとなり、配管経路内で滑ることなく、配管内移動体が円滑に推進するものとなる。
(7)上記(2)から(6)のいずれか1項記載の配管内移動体の固定部と、前記配管経路内で伸縮する推進部とが組み合わされてなる配管内移動体。
本項に記載の配管内移動体は、上記(2)から(6)のいずれか1項に記載した固定部と、配管経路内で伸縮する推進部とが組み合わされてなるものである。すなわち、配管経路内での位置の固定を固定部が担い、配管経路内での伸縮による位置の移動を推進部が担うものである。このように、各部位が役割を分担した変形を行いながら、配管経路内を円滑に移動するものである。
本項に記載の配管内移動体は、上記(2)から(6)のいずれか1項に記載した固定部と、配管経路内で伸縮する推進部とが組み合わされてなるものである。すなわち、配管経路内での位置の固定を固定部が担い、配管経路内での伸縮による位置の移動を推進部が担うものである。このように、各部位が役割を分担した変形を行いながら、配管経路内を円滑に移動するものである。
本発明は上記のような構成であるため、内径が2倍以上異なる配管が含まれる配管経路内で、配管内移動体に必要な定位置保持力を発揮させることが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1~図3は、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10の構成の一例を示しており、まず図1を参照すると、図示のアクチュエータ10は、内部の加圧によって膨張するチューブ状部材20と、チューブ状部材20を被覆する大略筒状の拘束部材30とを含んでいる。チューブ状部材20は、例えば合成ゴムや天然ゴム等の素材で形成され、何れの方向にも高い伸び率を有することが好ましい。
図1~図3は、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10の構成の一例を示しており、まず図1を参照すると、図示のアクチュエータ10は、内部の加圧によって膨張するチューブ状部材20と、チューブ状部材20を被覆する大略筒状の拘束部材30とを含んでいる。チューブ状部材20は、例えば合成ゴムや天然ゴム等の素材で形成され、何れの方向にも高い伸び率を有することが好ましい。
拘束部材30は、第1面材40と第2面材42とが、2箇所の接合部分44において周方向に接合されることで、図1のような筒状をなしている。すなわち、図2に示すように、本実施形態では、チューブ状部材20に対応した長さを有する矩形の第1面材40と、同じくチューブ状部材20に対応した長さを有する矩形の第2面材42とが、向かい合うように配置される。そして、この状態で、図2における夫々の上下端に位置する、チューブ状部材20の長さ方向に延在する第1面材40の端縁近傍と第2面材42の端縁近傍とが接合されて、筒状に加工される。第1面材40と第2面材42とを接合する方法は、夫々を形成する素材に応じた適切な方法が採用され、例えば縫製や熱溶着によって接合される。図1では、2箇所の接合部分44において縫製により接合されており、接合部分44から第1面材40及び第2面材42の余剰部分が外側へ突出している。なお、接合部分44が、第1面材40や第2面材42の端縁に位置していてもよく、図1に示す接合部分44の位置からそのような端縁まで広がっていてもよい。又、接合の際の第1面材40及び第2面材42の端縁の重ね方等は任意であり、端部同士を突き合わせてもよく、端縁を折り曲げた状態で重ねてもよい。
又、第1面材40は、図2に矢印で示すように、チューブ状部材20の長さ方向と平行な方向に伸び易く、その他の方向には伸び難い、異方的な伸張性を有している。これに対し、第2面材42は、図2に矢印で示すように、チューブ状部材20の周方向と平行な方向に伸び易く、その他の方向には伸び難い、異方的な伸張性を有している。このため、それらが図1のように筒状に接合されると、第1面材40の伸び易い方向は、筒状の拘束部材30の長さ方向となり、第2面材42の伸び易い方向は、筒状の拘束部材30の周方向となる。第1面材40及び第2面材42には、上記のような異方的な伸張性を有する任意の素材、例えば織ゴムや、織布、編布、不織布などの布帛、それらの布帛が合成樹脂と組み合わされた複合面材といったものが用いられる。
又、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10は、図1(b)に矢印で示すように、筒状の拘束部材30における第1面材40の周長(周方向の長さ)40Lと、第2面材42の周長(周方向の長さ)42Lとの比が、2.5:1~6:1の範囲に収まるようになっている。換言すれば、第1面材40によって占められる拘束部材30の領域の大きさが、第2面材42によって占められる拘束部材30の領域の大きさの、2.5~6倍になっている。このような関係は、接合前の第1面材40及び第2面材42の大きさや、第1面材40と第2面材42との2つの接合部分44の位置調整などによって実現される。なお、第1面材40の周長40Lと、第2面材42の周長42Lとの合計が、筒状の拘束部材30の円周長に相当する。
更に、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10の拘束部材30は、図1に示された状態から、図3に示されるように、チューブ状部材20に対してねじり回された状態で被覆するように取り付けられる。すなわち、拘束部材30の長さ方向の一端30aが、図3では図示されていない固定手段64(図7参照)によりチューブ状部材20の外周に固定されると共に、拘束部材30の長さ方向の他端30bが、同じく固定手段64によりチューブ状部材20の外周に着脱可能に取り付けられている。拘束部材30の一端30a及び他端30bを固定及び取り付けるための固定手段64には、拘束部材30の素材等に応じた任意のものが利用でき、この際、拘束部材30の他端30bだけでなく一端30aについても、チューブ状部材20に対して着脱可能に取り付けられるものを使用してもよい。ここで、着脱可能に取り付けるとは、取り外すときに拘束部材30を構成する面材等が破壊されない程度に取り付けられていることであり、その際に特定の工具、方法を用いることを除外するものではない。更に、拘束部材30の一端30aから他端30bまでの間は、図3(a)における右側からの側面視で、図3(b)にも矢印で示すように、チューブ状部材20の外周面に沿って反時計回りの周方向にねじり回されている。
図3の実施形態では、拘束部材30の一端30aと他端30bとの間が、約180°のねじり角度TAでねじり回されている。すなわち、拘束部材30は、少なくともその他端30bが、チューブ状部材20に着脱可能に取り付けられていることで、一端30aが固定された状態のまま、一端30aと他端30bとの間のねじり角度TAが、自在に調整されるようになっている。このため、拘束部材30は、180°の他にも、45°~540°の範囲の任意のねじり角度TAでねじり回されてもよく、そのねじり方向も図3の方向と反対であってもよい。なお、図3及び後述する図7では、拘束部材30がねじり回されている様子を明確に示すために、接合部分44を1箇所のみ有する仮想的な形態を例にして図示している。
ここで、本明細書におけるねじり角度TAは、以下のように定義される。すなわち、まず、非ねじり状態の拘束部材30において同じ周方向位置にある、拘束部材30の一端30aの基準点P1と他端30bの基準点P2とを設定する。そして、例えば図3に示すように、拘束部材30がねじり回された状態における、一端30aの基準点P1の周方向位置と、他端30bの基準点P2の周方向位置とを比較する。そして、それらの基準点P1とP2との間の、ねじりの回転軸(チューブ状部材20の中心軸C)を基準とした、ねじりの回転方向に異なる角度差を、ねじり角度TAとしている。
なお、図3では、アクチュエータ10を模範的に示しており、全くねじれていない状態のチューブ状部材20に対して、ねじり回された状態の拘束部材30が取り付けられている。しかしながら、チューブ状部材20及び拘束部材30を構成する素材によっては、ねじり回された状態の拘束部材30の両端30a、30bがチューブ状部材20に取り付けられると、拘束部材30のねじれが僅かに戻り、その戻り分だけチューブ状部材20が拘束部材30とは反対方向にねじれることがある(図7(a)参照)。このような状態であっても、チューブ状部材20に対する拘束部材30のねじり角度TA(ねじり量)は、拘束部材30のねじりの戻り角度が、チューブ状部材20の反対方向のねじり角度に等しいと考え、ねじれが戻る前と変わらないものとして扱うこととする。
ここで、拘束部材30は、チューブ状部材20に対してねじり回される前の図1のような状態では、第1面材40の伸び易い方向がチューブ状部材20の長さ方向と平行であり、第2面材42の伸び易い方向がチューブ状部材20の周方向と平行になっている。このような状態から、例えば図3に示すように、拘束部材30の一端30aから他端30bまでの間が、チューブ状部材20に対して所望のねじり方向及び所望のねじり角度TAにねじり回され、このねじり回された状態が維持されるようにチューブ状部材20に取り付けられる。
すると、ねじり回される前はチューブ状部材20の長さ方向と平行であった、第1面材40の伸び易い方向が、拘束部材30のねじれに伴ってねじられたように変化し、拘束部材30のねじり角度TAに応じた大きさで、チューブ状部材20の長さ方向に対して角度をなす態様となる。そして、そのように変化した第1面材40の伸び易い方向は、第1面材40によってチューブ状部材20の膨張が許容される方向となる。このため、このような状態のアクチュエータ10は、例えば従来のアクチュエータのように、チューブ状部材20の内部の加圧によって螺旋形状への変形が促されることになる。
又、これと同時に、ねじり回される前はチューブ状部材20の周方向と平行であった、第2面材42の伸び易い方向が、拘束部材30のねじれに伴ってねじられたように変化し、拘束部材30のねじり角度TAに応じた大きさで、チューブ状部材20の周方向に対して角度をなす態様となる。そして、そのように変化した第2面材42の伸び易い方向は、第2面材42によってチューブ状部材20の膨張が許容される方向となり、チューブ状部材20の周方向に対して角度をなしてはいるものの、概ねチューブ状部材20の周方向の膨張を許容するように作用する。このため、このような状態のアクチュエータ10は、チューブ状部材20の内部の加圧によって太さの拡大が促されることになる。
更に、アクチュエータ10は、図3のように、拘束部材30がねじり回された状態でチューブ状部材20に取り付けられた後に、チューブ状部材20の両端に、管状のコネクタ60(図7(b)参照)が接続される。ここで、上記のような構成のアクチュエータ10を動作させるためには、チューブ状部材20の内部の圧力を制御する必要があり、それは任意の圧力供給手段によってチューブ状部材20の少なくとも一方の端部から空気等の流体が供給されることで実現される。コネクタ60は、そのような圧力供給手段と接続するため、或いは、チューブ状部材20の一方の端部側を塞ぐ何等かの手段と接続するためのコネクタである。
次に、図4及び図5を参照して、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10を利用した、本発明の実施の形態に係る配管内移動体の固定部50と、更にこの固定部50を利用した、本発明の実施の形態に係る配管内移動体54とについて説明する。なお、配管内移動体54は、例えば、ガス管や排水管等の配管経路を対象として、亀裂等の問題の調査や堆積物の洗浄等を行うためのものであり、そのような配管経路を構成する複数の配管には、様々な内径を有する配管が含まれることが想定される。まず、図4に示すように、本発明の実施の形態に係る配管内移動体54は、アクチュエータ10からなる2つの固定部50と、これら2つの固定部50の間に連結された推進部52とで大略構成されている。
2つの固定部50の各々は、図4及び図5での図示は簡略化されているが、図1や図2に示した構成の拘束部材30が、図3や図7に示したようにチューブ状部材20に対してねじり回された状態で被覆している、アクチュエータ10からなるものである。一方、本実施形態の推進部52は、大略的にはアクチュエータ10に類似した構成を有しており、ゴムチューブなどの内部の加圧により膨張するチューブ状部材に、筒状の拘束部材が被覆されている。しかしながら、推進部52の拘束部材は、アクチュエータ10の拘束部材30と異なり、チューブ状部材の長さ方向への膨張を許容するようになっており、例えば、何れの方向にも伸び難い素材で形成された面材が、チューブ状部材よりも長い筒状に加工されて、たぐまった状態でチューブ状部材を被覆していてもよい。或いは、チューブ状部材の長さ方向と平行な方向に伸び易い異方的な伸張性を有する面材が筒状に加工され、チューブ状部材を被覆していてもよい。
このため、上記のような構成の推進部52を動作させるには、固定部50をなすアクチュエータ10と同様に、チューブ状部材の内部の圧力を制御する必要があり、それは任意の圧力供給手段によってチューブ状部材の少なくとも一方の端部から空気等の流体が供給されることで実現される。従って、配管内移動体54には、2つの固定部50の各々と推進部52との合計で3箇所に、圧力供給手段から流体を個別に供給して加圧し、動作を制御する必要があるが、図4及び図5ではそのための供給チューブなどの図示は省略している。そして、図5には、配管内移動体54を構成する各部位の動作を制御しながら、配管58内で配管内移動体54を上方へと移動させる様子を示している。
まず、図5(a)において、配管58内の配管内移動体54は、2つの固定部50の双方が加圧されると共に、推進部52が加圧されずに解放された状態である。これにより、2つの固定部50の双方が螺旋変形して、2つの固定部50の各々で位置が固定され、その間で推進部52が通常の長さまで収縮している。そこから、図5(b)の配管内移動体54は、上側の固定部50が加圧から解放されて、その固定部50の螺旋変形が解除されることで、上側の固定部50での固定が解除されている。このとき、配管内移動体54は、下側の固定部50でのみ位置が固定された状態にある。更に、図5(c)の配管内移動体54は、推進部52が加圧されることで伸長し、それによって上側の固定部50が配管58内で上方へと移動されている。
そして、図5(d)の配管内移動体54は、上方へ移動された上側の固定部50が加圧されることで螺旋変形し、そこで位置が固定されている。更に、図5(e)の配管内移動体54は、下側の固定部50が加圧から解放されて、その固定部50の螺旋変形が解除されることで、下側の固定部50での固定が解除されている。このとき、配管内移動体54は、上側の固定部50でのみ位置が固定された状態にある。そして、図5(f)の配管内移動体54は、推進部52が加圧から解放され、上側の固定部50の位置が固定された状態で推進部52が元の長さへと収縮することで、下側の固定部50が配管58内で上方へと引き上げられている。その後、図5(g)の配管内移動体54は、上方へ移動された下側の固定部50が加圧されることで螺旋変形し、そこで位置が固定されている。
以降は、図5(a)~(g)の動作を繰り返し行うことで、配管内移動体54が配管58内を推進していく。なお、図5では上方へ延びる配管58内を移動しているが、何れの方向に延びる配管58内を移動する場合であっても、移動のための動作は同様である。このように、アクチュエータ10からなる固定部50は、配管58内で螺旋変形して配管58の内壁に接触することで、配管58内での位置を固定するものであり、推進部52は、一方の固定部50のみで位置が固定されている状態で伸長或いは収縮することで、配管58内で他方の固定部50を移動させるものである。
ここで、上記のように動作する配管内移動体54の固定部50(アクチュエータ10)は、使用が想定される配管経路での推進を安定して行うために、下記のような条件を満たすことが好ましい。
条件A:チューブ状部材20が加圧される前の状態の拘束部材30の太さ(外径)が、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最小内径を有する配管58の内径の60%未満の太さであること。
条件B:チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ(外径)が、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最大内径を有する配管58の内径の28%以上の太さであること。
条件C:配管経路の外側でチューブ状部材20が加圧されたときの、螺旋変形したアクチュエータ10の螺旋形状の外径(両側縁部間の距離)が、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最大内径を有する配管58の内径以上の大きさであること。
条件D:チューブ状部材20の加圧前の太さ(外径)は、チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ(外径)の45%以上の太さであること。
条件A:チューブ状部材20が加圧される前の状態の拘束部材30の太さ(外径)が、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最小内径を有する配管58の内径の60%未満の太さであること。
条件B:チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ(外径)が、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最大内径を有する配管58の内径の28%以上の太さであること。
条件C:配管経路の外側でチューブ状部材20が加圧されたときの、螺旋変形したアクチュエータ10の螺旋形状の外径(両側縁部間の距離)が、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最大内径を有する配管58の内径以上の大きさであること。
条件D:チューブ状部材20の加圧前の太さ(外径)は、チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ(外径)の45%以上の太さであること。
条件Aに含まれる「チューブ状部材20が加圧される前の状態の拘束部材30の太さ」は、図8(a)に符号30Dで示されており、条件B及びDに含まれる「チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ」は、図8(b)に符号30D´で示されている。条件Dに含まれる「チューブ状部材20の加圧前の太さ」は、図8(a)に符号20Dで示されており、それに対応する「チューブ状部材20の加圧時の太さ」が、図8(b)に符号20D´で示されている。なお、図8(a)からは、チューブ状部材20が加圧されていない状態では、チューブ状部材20の太さ20Dと拘束部材30の太さ30Dとに差があることが分かる。これに対し、図8(b)からは、加圧によってチューブ状部材20が膨張すると、それによって拘束部材30の主に第2面材42が周方向に伸び、チューブ状部材20の太さ20D´と拘束部材30の太さ30D´とに、殆ど差がないことが分かる。又、条件A~Cに含まれる「配管58の内径」は、図5(a)や後述する図9(a)に符号58Iで示されており、条件Cに含まれる「螺旋変形したアクチュエータ10の螺旋形状の外径」は、図7(b)に符号SDで示されているが、この螺旋形状の外径SDの詳細については後述する。
次に、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10(配管内移動体の固定部50)について、実施例を挙げて説明するが、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10(配管内移動体の固定部50)は、実施例の内容に限定されるものではない。
下記の表1及び表2に示すような構成のチューブ状部材20及び拘束部材30を用いて、表3及び表4に示すような実施例1~6及び比較例1~4のアクチュエータを準備した。なお、実施例1~6及び比較例1~4のアクチュエータは、何れも、例えば図3に示したように、チューブ状部材20に対して拘束部材30をねじり回した状態で被覆させており、その拘束部材30の一端30aと他端30bとの間のねじり角度TAは、何れも同じ方向に360°である。なお、図3では接合部分44が1箇所のみの場合を示しているが、実施例1~6及び比較例1、2においては、接合箇所44を2箇所有するものであった。
下記の表1及び表2に示すような構成のチューブ状部材20及び拘束部材30を用いて、表3及び表4に示すような実施例1~6及び比較例1~4のアクチュエータを準備した。なお、実施例1~6及び比較例1~4のアクチュエータは、何れも、例えば図3に示したように、チューブ状部材20に対して拘束部材30をねじり回した状態で被覆させており、その拘束部材30の一端30aと他端30bとの間のねじり角度TAは、何れも同じ方向に360°である。なお、図3では接合部分44が1箇所のみの場合を示しているが、実施例1~6及び比較例1、2においては、接合箇所44を2箇所有するものであった。
表1及び表2において、「タイプ」~「加圧時円周長」までの項が拘束部材30について、「加圧前の太さ」及び「加圧変形前の太さに対する比率」の項がチューブ状部材20について示している。「タイプ」が「面材接合」の拘束部材30は、チューブ状部材20に対してねじり回されて取り付けられる前の状態が、図1に示した実施形態に対応するものである。すなわち、表内の「第1面材」及び「第2面材」の項に示された「織ゴム」を、第1面材40及び第2面材42として用い、この「織ゴム」は、特定の方向に伸び易い異方的な伸張性を有するものである。そして、伸び易い方向をチューブ状部材20の長さ方向に合わせた第1面材40と、伸び易い方向をチューブ状部材20の周方向に合わせた第2面材42とを、周方向に縫製により接合して筒状に加工したものである。
これに対し、「タイプ」が「一周」の拘束部材30は、チューブ状部材20に対してねじり回されて取り付けられる前の状態が、図6に示すように、筒状に丸めた第3面材74の、チューブ状部材20の長さ方向に延在する2つの端縁の近傍同士を接合して構成しており、このとき、第3面材74の2つの端縁近傍の間に第4面材76を挟み込んだ状態で接合している。第3面材74及び第4面材76の素材は、表2の「第1面材(第3面材)」及び「第2面材(第4面材)」の項に示されたものであり、接合部分78において縫製により接合されている。第3面材74は、「織ゴム」の伸び易い方向がチューブ状部材20の長さ方向になる向きで使用され、第4面材76は、素材が「織ゴム」の場合はその伸び易い方向がチューブ状部材20の長さ方向になる向きで使用されている。「非伸縮布」は、何れの方向に伸び難い特性を有するものである。
「加圧前比率」の項は、「面材接合」タイプの拘束部材30について、図1に示したような拘束部材30がねじり回される前かつチューブ状部材20が加圧される前の、第1面材40の周長40Lと、第2面材42の周長42Lとの比率に相当するものを示している。「加圧前円周長」の項は、拘束部材30がねじり回される前かつチューブ状部材20が加圧される前の、拘束部材30の円周長を示している。「加圧時円周長」の項は、拘束部材30がチューブ状部材20に対してねじり回された状態で取り付けられ、更にチューブ状部材20が加圧されたて膨張したときの、拘束部材30の円周長を示している。
チューブ状部材20の「加圧前の太さ」の項は、図8(a)に示すチューブ状部材20の加圧前の太さ20Dに相当するものであって、チューブ状部材20として用いたゴムチューブの加圧前の太さ(直径)を示している。実施例1~6及び比較例1~4では、チューブ状部材20として、表1及び表2に示す「11.6mm」、「17mm」、或いは「25mm」の何れかの外径を有する、宗田ゴム社製の商品名「ネオラバーチュービング」を用いている。「加圧変形時の太さに対する比率」の項は、後述する表3及び表4のアクチュエータにおける拘束部材30の「加圧変形時の太さ」に対する、チューブ状部材20の「加圧前の太さ」の割合を示しており、これは上述した固定部50の条件Dに関するものである。
続いて表3及び表4に移り、「加圧変形前の太さ」の項は、図8(a)に示すアクチュエータ10における拘束部材30の加圧前の太さ30Dに相当するものであって、チューブ状部材20が加圧されずに変形する前の、拘束部材30の太さ(直径)を示している。この大きさは、例えば、図1及び図2に示した拘束部材30の「加圧前円周長」に示した値を、円周率πで除することで求められる。その下の「配管内径に対する割合」の項は、アクチュエータが図4に及び図5に示したような配管内移動体54の固定部50に用いられたときに、その配管内移動体54が移動するものと想定した、内径が異なる3種の配管58の内径58Iに対する、「加圧変形前の太さ」の割合を示しており、これは上述した固定部50の条件Aに関するものである。それら3種の配管58の内径58Iは、表3及び表4に示すように、51mm、77mm、及び107mmであって、特に51mmと107mmとでは、内径に2倍以上の差がある。
「加圧変形時の太さ」の項は、図8(b)に示すチューブ状部材20が加圧された状態のアクチュエータ10における拘束部材30の太さ30D´に相当するものであって、チューブ状部材20が加圧されることで変形したときの、拘束部材30の太さ(直径)を示している。この大きさは、例えば、ノギスなどを用いて測定することで求められる。その下の「配管内径に対する割合」の項は、上述した内径が異なる3種の配管58の内径58Iに対する、「加圧変形時の太さ」の割合を示しており、これは上述した固定部50の条件Bに関するものである。又、「フリー変形時螺旋外径」の項は、アクチュエータが制約を受けていないフリーの状態で螺旋変形したときの、螺旋形状の外径を示しており、上述した固定部50の条件Cに関するものである。
より詳しくは、まず図7(a)に示すように、各試料の拘束部材30の、ねじり回される前の状態で周方向について同じ位置にあって長さ方向に延在する、例えば第1面材40の周方向についての中央線などを、標線Lとして記し、更に、標線Lの長さ方向の中央点LCを記す。なお、図7(a)には、拘束部材30がねじり回された状態でチューブ状部材20に取り付けられることで、チューブ状部材20及び拘束部材30に用いられた素材の強度の関係上、チューブ状部材20と拘束部材30との双方が、互いに反対方向にねじり回った状態のアクチュエータを図示している。このため、図7(a)のチューブ状部材20は、真直ぐではなく僅かにねじり回った状態で図示されている。
そして、上記のように標線L及び中央点LCを記したアクチュエータに対し、図7(b)に示すように、フリーの状態で、管状のコネクタ60からチューブ状部材20へ空気を注入すると、螺旋形状(又は湾曲した棒状)に変形した。このときに変形した形状を、図3及び図4の「フリー変形時形状」の項に示している。更にこの変形時に、螺旋形状の螺旋軸Sを上下方向とする図7(b)のような正面視で、中央点LCを挟んで左右両側に位置する、拘束部材30の両側縁部30c、30dに、螺旋形状の螺旋軸Sと平行な接線を引き、両接線間の距離を螺旋外径(両側縁部間距離)SDとして計測した。この螺旋外径SDが、表3及び表4の「フリー変形時螺旋外径」に示されている。なお、「フリー変形時螺旋外径」の項の値は、固定部50の条件Cに関連して、特に3種の配管58の内径58I(51mm、77mm、及び107mm)と比較されるものである。
上記のような構成の実施例1~6及び比較例1~4のアクチュエータを試料として、定位置保持力及び配管内動作性を評価するための試験を行い、更にその結果から総合評価を行った。それらの評価結果を、以下の表5及び表6に示している。
定位置保持力の試験では、上述したように内径が異なる配管58として、内径が51mm、77mm、及び107mmの3種の塩ビ製配管を準備し、各配管58内にアクチュエータを配置した状態で、チューブ状部材20内の圧力が0.3MPaになるように、空気供給装置から空気を注入した。次に、図9に示すように、プッシュプルゲージ84を使用して、加圧状態のアクチュエータを水平に配した配管58内から引き抜くのに必要な力(「G1(N)」とする)と、配管58外でアクチュエータを水平に動かすのに必要な力(「G2(N)」とする)とを測定した。そして、それらの差(G1-G2)から定位置保持力(N)を算出し、算出した値が8N以上なら「○」、0Nを超えて8N未満なら「△」、0Nなら「×」と評価した。表5及び表6の「定位置保持力」の項には、定位置保持力の算出値と評価結果とを示している。
配管内動作性の試験では、各アクチュエータを図4に示したような固定部50として使用し、推進部52と連結させて配管内移動体54を準備した。更に、配管58としての長さ1mの3種の塩ビ製配管(内径51mm、77mm、107mm)を内径別に連結して、全長10mの模擬配管経路を水平に設置した。そして、各模擬配管経路の配管58内に配管内移動体54を設置して、図5に示したような動作による動作試験を行い、以下の通り評価した。その評価結果を、表5及び表6の「配管内動作性」の項に示している。
〇:固定部での滑りがなく移動体が推進できた
△:固定部での滑りがあり/又は太すぎて引っ掛かりながらも推進できた
×:固定部での滑りがあり/又は太すぎて引っ掛かり、移動体が推進できなかった
〇:固定部での滑りがなく移動体が推進できた
△:固定部での滑りがあり/又は太すぎて引っ掛かりながらも推進できた
×:固定部での滑りがあり/又は太すぎて引っ掛かり、移動体が推進できなかった
更に、上記の定位置保持力及び配管内動作性の評価結果から、各アクチュエータの固定部50としての総合評価を行った。総合評価では、定位置保持力及び配管内動作性の評価結果が、内径が異なる3種の塩ビ製配管全てにおいて「〇」だったものを「〇」、一つでも「△」で「×」がなかったものを「△」、一つでも「×」だったものを「×」と評価した。その結果を、表5及び表6の「固定部としての総合評価」の項に示している。
表5及び表6から、実施例1~6に係るアクチュエータ10は、何れも総合評価が「○」又は「△」であって、良好又は比較的良好な結果となっている。これに対し、比較例1~4に係るアクチュエータは、何れも総合評価が「×」となっており、何かしらの問題点があることが分かる。
表5及び表6から、実施例1~6に係るアクチュエータ10は、何れも総合評価が「○」又は「△」であって、良好又は比較的良好な結果となっている。これに対し、比較例1~4に係るアクチュエータは、何れも総合評価が「×」となっており、何かしらの問題点があることが分かる。
表1~表6をより細かく見ていくと、まず、実施例1は、表1における拘束部材30の「加圧前比率」が「2.5:1」であると共に、表3の内容から上記の固定部50の条件A~Cを満たしていることが分かる。しかしながら、実施例1は、表1におけるチューブ状部材20の「加圧前の太さ」の、「加圧変形時の太さに対する比率」が「32」%であるため、「チューブ状部材20の加圧前の太さは、チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さの45%以上の太さであること」という、固定部50の条件Dを満たしていない。このため、実施例1に係るアクチュエータ10は、表3の「フリー変形時形状」に「螺旋(座屈)」と示されているように、フリー変形時に座屈が発生し、その影響で、配管内移動体54の固定部50として用いられたときに、配管内移動体54が推進するものの滑り易くなる。その結果が、表5の特に内径が107mmの配管58における、「定位置保持力」及び「配管内動作性」の評価結果の双方に表れている。
又、実施例2~4及び6は、表1及び表2における拘束部材30の「加圧前比率」が、何れも2.5:1~6:1の範囲にあると共に、チューブ状部材20の「加圧前の太さ」の「加圧変形時の太さに対する比率」から、固定部50の条件Dを満たしていることが分かる。更に、表3及び表4の内容から、固定部50の条件A~Cを満たしていることも分かる。一方、実施例5は、表1における拘束部材30の「加圧前比率」が「2.5:1」であると共に、チューブ状部材20の「加圧前の太さ」の「加圧変形時の太さに対する比率」から、固定部50の条件Dを満たしていることが分かる。更に、表3の内容から、固定部50の条件B、Cを満たしていることも分かるが、「加圧変形前の太さ」の「配管内径に対する割合」が、内径51mmの配管58について「63」%となっている。すなわち、実施例5は、「チューブ状部材20が加圧される前の状態の拘束部材30の太さが、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最小内径を有する配管58の内径の60%未満の太さであること」という、固定部50の条件Aを満たしていない。このため、実施例5に係るアクチュエータ10は、内径が小さい配管58内で引っ掛かり易くなり、その結果が、表5の内径が51mmの配管58における「配管内動作性」の評価結果に表れている。
他方、比較例1は、表2から、実施例1~6と同様に「面材接合」タイプの拘束部材30が用いられているものの、その「加圧前比率」が「1:1」であり、2.5:1~6:1の範囲から外れている。その影響で、チューブ状部材20を加圧しても螺旋形状とはならず、表4の「フリー変形時形状」が「湾曲した棒状」となってしまい、当然ながら「フリー変形時螺旋外径」が測定できなかった。更に、表2のチューブ状部材20の「加圧前の太さ」の、「加圧変形時の太さに対する比率」が「25」%であるため、固定部50の条件Dを満たしていない。このため、比較例1に係るアクチュエータは、表6に示されるように、特に内径が大きい(77mm、107mm)配管58において定位置保持力を発揮できず、配管内移動体54を推進させることができなかった。
又、比較例2は、表2から、実施例1~6と同様に「面材接合」タイプの拘束部材30が用いられているものの、その「加圧前比率」が「7:1」であり、2.5:1~6:1の範囲から外れている。その影響で、チューブ状部材20を加圧すると螺旋形状になるがその大きさが小さく、表4の「フリー変形時螺旋外径」が「90」mmとなってしまい、固定部50の条件Cを満たすことができない。更に、表2のチューブ状部材20の「加圧前の太さ」の、「加圧変形時の太さに対する比率」が「39」%であるため、固定部50の条件Dを満たしていない。このため、比較例2に係るアクチュエータは、表6に示されるように、内径が小さい(51mm、77mm)配管58に対しては定位置保持力を発揮できるが、内径が大きい(107mm)配管58に対して定位置保持力を発揮できず、配管内移動体54を推進させることができなかった。
又、比較例3、4は、表2から、図6に示したような「一周」タイプの拘束部材30を用いたものである。比較例3の拘束部材30は、接合部分78以外が第3面材74の伸び易い方向(ねじり回される前の長さ方向)に伸び、比較例4の拘束部材30は、比較例3の拘束部材30と比較して、更に接合部分78も第4面材76の伸び易い方向(ねじり回される前の長さ方向)に僅かに伸びるようになっている。そして、表2及び表4から、比較例3は、固定部50の条件A、Dを満たしているものの、固定部50の条件B、Cは満たしていないことが分かる。すなわち、比較例3に係るアクチュエータは、拘束部材30によってチューブ状部材20の周方向への膨張が許容されず、太さ30D´や螺旋外径SDが小さくなっている。このため、比較例3は、表6に示されるように、特に内径が大きい(107mm)配管58に対して定位置保持力を発揮できず、配管内移動体54を推進させることができなかった。
更に、表2及び表4から、比較例4は、固定部50の条件A、C、Dを満たしているものの、固定部50の条件Bは満たしていないことが分かる。すなわち、比較例3と比較して、比較例4に係るアクチュエータは、接合部分78における伸びが許容される分、螺旋外径SDが大きくなるものの、チューブ状部材20の周方向への膨張は許容されないため、太さ30D´は変わらず小さいままとなっている。このため、比較例4は、表6に示されるように、内径が大きい(107mm)配管58に対して定位置保持力を発揮できず、配管内移動体54を推進させることができなかった。更に、内径が77mmの配管58においても、良好な定位置保持力を発揮することができず、配管内移動体54が滑りながら推進する結果となった。
以上のことから、拘束部材30の「加圧前比率」に関連して、第1面材40の比率が小さくなると、螺旋外径SDは大きくなる傾向にあるが、比較例1のように比率が小さ過ぎると、螺旋形状に変形しなくなってしまうことが分かる。又、これとは反対に、第2面材42の比率が小さくなると、螺旋外径SDが小さくなる傾向にあり、比較例2のように比率が小さ過ぎると、内径が大きい配管58で利用できなくなってしまうことが分かる。更に、実施例1~6は、第2面材42によってチューブ状部材20の周方向への膨張が許容されるため、それが許容されない比較例3、4と比較して、チューブ状部材20の加圧時に螺旋形状に変形しながら、その太さ30D´も拡大される。このため、螺旋外径SDが大きくなり、良好な定位置保持力が発揮されている。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10は、図1~図3に示すように、内部の加圧により膨張可能なチューブ状部材20と、このチューブ状部材20を被覆する拘束部材30とを備えたものであり、拘束部材30によってチューブ状部材20が膨張したときの変形を制御することで動作するものである。そのために、拘束部材30は、第1面材40と第2面材42とが周方向に接合された筒状をなすと共に、その筒状の長さ方向の一端30aと他端30bとの間で周方向にねじり回された状態で、チューブ状部材20を被覆している。すなわち、筒状の拘束部材30は、その周方向に、第1面材40により構成される領域と、第2面材42により構成される領域との、2つの領域を有している。又、第1面材40は、筒状の拘束部材30の長さ方向に伸びるものであって、その他の方向には伸び難い異方的な伸張性を有し、第2面材42は、筒状の拘束部材30の周方向に伸びるものであって、その他の方向には伸び難い異方的な伸張性を有している。
そして、拘束部材30がねじり回されてチューブ状部材20を被覆している状態では、拘束部材30がねじり回されているねじり角度(ねじり量)TAに応じて、チューブ状部材20に対する第1面材40及び第2面材42の伸び易い方向が変化する。すなわち、第1面材40は、拘束部材30がねじり回される前は、拘束部材30の長さ方向とチューブ状部材20の長さ方向とが平行であるため、チューブ状部材20の長さ方向への膨張を許容するような方向に、異方的な伸び易さが発揮される状態にある。しかしながら、拘束部材30がねじり回されると、第1面材40によりチューブ状部材20の膨張を許容する方向が、チューブ状部材20の長さ方向から、ねじり角度TAに応じた角度だけ変化する。これにより、主に第1面材40によって、チューブ状部材20の内部が加圧されたときの、螺旋形状へのアクチュエータ10の変形を促すことができる。しかも、拘束部材30のねじり角度TAの調整、換言すれば、第1面材40によりチューブ状部材20の膨張を許容する方向の調整によって、アクチュエータ10が変形する螺旋形状の調整を行うこともできる。
一方、第2面材42は、拘束部材30がねじり回される前は、拘束部材30の周方向とチューブ状部材20の周方向とが平行であるため、チューブ状部材20の周方向への膨張を許容するような方向に、異方的な伸び易さが発揮される状態にある。そして、拘束部材30がねじり回されると、第2面材42によりチューブ状部材20の膨張を許容する方向が、チューブ状部材20の周方向から、ねじり角度TAに応じた角度だけ変化する。しかしながら、その変化した後の方向も、チューブ状部材20の長さ方向よりは周方向に近いため、主に第2面材42によって、チューブ状部材20の内部が加圧されたときの、アクチュエータ10の太さ(拘束部材30の太さ30D´)(図8(b)参照)の拡大を促すことができる。
更に、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10は、ねじり回される前の筒状の拘束部材30における、第1面材40の周長40Lと第2面材42の周長42Lとの比が、2.5:1~6:1となっており、これは上述した2つの領域の大きさの比でもある。すなわち、アクチュエータ10の主に螺旋変形を促す第1面材40と、アクチュエータ10の主に太さの拡大を促す第2面材42との大きさの比を、上記の範囲に設定することで、螺旋形状への変形と太さの拡大とを、バランスよく行わせることができる。これにより、チューブ状部材20の内部が加圧される前のアクチュエータ10の太さ(拘束部材30の太さ30D、図8(a)参照)などと比較した、チューブ状部材20の内部が加圧されて螺旋変形したアクチュエータ10の、螺旋形状の外径SD(図7(b)参照)の大きさを、従来よりも大幅に増大させることができる(表3、4の実施例1~6と比較例3との「フリー変形時螺旋外径」の項を比較)。このため、例えば図4や図5に示すような配管内移動体54の固定部50に利用される場合に、内径が2倍以上異なる配管58が含まれる配管経路内であっても、配管内移動体54に必要な良好な定位置保持力を発揮することが可能となる(表5、6の実施例1~6の「定位置保持力」の項を参照)。
又、本発明の実施の形態に係る配管内移動体の固定部50は、図4及び図5に示すように、配管経路内で配管内移動体54の位置を固定するためのものであって、上述した本発明の実施の形態に係るアクチュエータ10からなる。すなわち、配管経路内でチューブ状部材20が加圧されてアクチュエータ10が螺旋変形することで、アクチュエータ10が配管58の内壁に接触した状態となり、配管内移動体54の一部として配管経路内で位置を固定することができる。このとき、配管経路内で従来よりも外径SDが大きな螺旋形状に変形するため、配管経路内で安定して位置を固定することが可能となる。
更に、本発明の実施の形態に係る配管内移動体の固定部50は、チューブ状部材20が加圧される前の状態での拘束部材30の太さ30Dが、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最小内径を有する配管58の内径58Iの60%未満であると好ましいものである(表3、4の実施例1~4、6の「加圧変形前の太さ」の「配管内径に対する割合」の項を参照)。ここで、チューブ状部材20が加圧される前の状態の拘束部材30の太さ30Dが、配管58の内径58Iの60%を超えていると、そのような非変形時であるにも関わらず、配管58の内壁にアクチュエータ10が引っ掛かってしまい、配管内移動体54の移動を阻害する虞がある(表5の実施例5の「配管内動作性」の項を参照)。しかしながら、本発明の実施の形態に係る、例えば実施例1~4、6の配管内移動体の固定部50は、チューブ状部材20が加圧される前の状態の拘束部材30の太さ30Dが、配管経路を構成する複数の配管58の中で最小内径を有する配管58の内径58Iの60%未満の太さである。このため、配管経路内で配管内移動体54の移動を阻害することなく、特に老朽化した配管58を傷つけるようなこともなく、配管内移動体54を円滑に移動させることができる。
又、本発明の実施の形態に係る配管内移動体の固定部50は、チューブ状部材20が加圧されることで拡大する拘束部材30の太さ30D´を、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最大内径を有する配管58の内径58Iの28%以上に規定するものである(表3、4の実施例1~6の「加圧変形時の太さ」の「配管内径に対する割合」の項を参照)。すなわち、その状態での拘束部材30の太さ30D´が配管58の内径58Iの28%未満であると、配管58の内壁に対する十分な定位置保持力が得られず、配管内移動体54が固定されずに滑ってしまう虞がある。このため、拘束部材30の太さ30D´が、上記の複数の配管58の中で最大内径を有する配管58の内径58Iの28%以上であることで、配管経路を構成する全ての配管58の内壁に対する十分な定位置保持力を得ることができ、そのような複数の配管58に内径が2倍以上異なる配管58が含まれていたとしても、配管内移動体54を配管経路内で安定して固定することができる(表5、6の実施例1~6の「定位置保持力」の項を参照)。
加えて、本発明の実施の形態に係る配管内移動体の固定部50は、配管経路の外側でチューブ状部材20が加圧されたとき、換言すれば、変形が制約されないフリーの状態でチューブ状部材20が加圧されたときの、螺旋変形したアクチュエータ10の螺旋形状の外径SDの大きさを規定するものである。すなわち、図7(b)に示すように、螺旋形状に変形したアクチュエータ10において、螺旋形状の螺旋軸Sを上下方向とする正面視で、拘束部材30の変形前の長さ方向の中央点LCを挟んで両側に位置する、拘束部材30の両側縁部30c、30d間の距離を、螺旋形状の外径SDの大きさとする。そして、そのような拘束部材30の両側縁部間の距離SDが、配管経路を構成する複数の配管58のうち、最大内径を有する配管58の内径58I以上になっているものである(表3、4の実施例1~6の「フリー変形時螺旋外径」の項と、3種の配管58の内径58Iとを比較)。これにより、配管経路を構成する内径が2倍以上異なるなどの何れの配管58においても、チューブ状部材20が加圧されると、螺旋変形したアクチュエータ10が配管58の内壁に接触することができ、配管内移動体54を安定して固定することが可能となる(表5、6の実施例1~6の「配管内動作性」の項を参照)。
又、本発明の実施の形態に係る配管内移動体の固定部50は、チューブ状部材20の加圧前の太さ20D(図8(a)参照)が、チューブ状部材20が加圧された状態における拘束部材30の太さ30D´の45%以上の太さであると好ましいものである(表1、2の実施例2~6の「加圧変形時の太さに対する比率」の項を参照)。ここで、チューブ状部材20の加圧前の太さ20Dが、チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ30D´の45%未満であると、チューブ状部材20が加圧されたときに、拘束部材30の内部でチューブ状部材20が座屈してしまい、必要な定位置保持力が発揮されなくなる虞がある(表1、2の実施例1及び比較例1、2の「加圧変形時の太さに対する比率」の項、表3、4の実施例1及び比較例1、2の「フリー変形時形状」の項、及び表5、6の実施例1及び比較例1、2の「定位置保持力」の項を参照)。
これは、加圧変形前のチューブ状部材20の太さ20Dに対して、加圧後の太さ20D´(図8(b)参照)の変化が大き過ぎるのと同時に、その分長さ方向の変化も大きいため、チューブ状部材20の長さの変化に拘束部材30が対応できず、それによってチューブ状部材20が部分的に伸びなくなることに起因するものである。しかしながら、本発明の実施の形態に係る、実施例2~6の配管内移動体の固定部50は、チューブ状部材20の加圧前の太さ20Dが、チューブ状部材20が加圧された状態の拘束部材30の太さ30D´の45%以上の太さであるため、上記のようなチューブ状部材20の座屈が発生することはない。このため、加圧変形したアクチュエータ10により、固定部50として必要な定位置保持力を問題なく発揮することができ、配管経路内で滑ることなく、配管内移動体54を円滑に推進させることが可能となる(表5、6の実施例2~6の「定位置保持力」及び「配管内動作性」の項を参照)。
一方、本発明の実施の形態に係る配管内移動体54は、図4及び図5に示すように、上述したような固定部50と、配管経路内で伸縮する推進部52とが組み合わされてなるものである。すなわち、配管経路内での位置の固定を固定部50が担い、配管経路内での伸縮による位置の移動を推進部52が担うものである。このように、各部位が役割を分担した変形を行うことで、配管経路内を円滑に移動することができる。
10:アクチュエータ、20:チューブ状部材、20D:加圧前のチューブ状部材の太さ、30:拘束部材、30a:拘束部材の一端、30b:拘束部材の他端、30D:加圧前の拘束部材の太さ、30D´:加圧時の拘束部材の太さ、40:第1面材、40L:第1面材の周長、42:第2面材、42L:第2面材の周長、50:固定部、52:推進部、54:配管内移動体、58:配管、58I:配管の内径、SD:螺旋形状の外径(両側縁部間の距離)
Claims (7)
- 内部の加圧により膨張可能なチューブ状部材に対して、筒状の拘束部材がその長さ方向の一端と他端との間で周方向にねじり回された状態で被覆されているアクチュエータであって、
前記拘束部材は、前記チューブ状部材に対してねじり回される前の状態で、前記長さ方向に伸びる第1面材と、前記周方向に伸びる第2面材とが、前記周方向に接合されることで前記筒状をなし、
該筒状における前記第1面材の周長と前記第2面材の周長との比が、2.5:1~6:1であることを特徴とするアクチュエータ。 - 配管内移動体の一部であって、請求項1記載のアクチュエータからなり、前記チューブ状部材が加圧されて螺旋変形することで、配管経路内で固定されることを特徴とする配管内移動体の固定部。
- 前記チューブ状部材が加圧される前の状態で、前記拘束部材の太さが、前記配管経路を構成する複数の配管のうち、最小内径を有する配管の内径の60%未満の太さであることを特徴とする請求項2記載の配管内移動体の固定部。
- 前記チューブ状部材が加圧されることで拡大した、前記拘束部材の太さが、前記配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径の28%以上の太さであることを特徴とする請求項2又は3記載の配管内移動体の固定部。
- 前記配管経路の外側で前記チューブ状部材が加圧されたときに、螺旋形状に変形した前記アクチュエータにおいて、前記螺旋形状の螺旋軸を上下方向とする正面視で、前記拘束部材の変形前の長さ方向の中央点を挟んで両側に位置する、前記拘束部材の両側縁部間の距離が、前記配管経路を構成する複数の配管のうち、最大内径を有する配管の内径以上の距離であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の配管内移動体の固定部。
- 前記チューブ状部材の加圧前の太さは、前記チューブ状部材が加圧されることで拡大した前記拘束部材の太さの45%以上の太さであることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の配管内移動体の固定部。
- 請求項2から6のいずれか1項記載の配管内移動体の固定部と、前記配管経路内で伸縮する推進部とが組み合わされてなることを特徴とする配管内移動体。
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