JP2022149405A - ハブユニット軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーキロータが取り付けられる車輪取付フランジのアンバランスを補正可能なハブユニット軸受を提供する。【解決手段】車輪取付フランジ36は、全周に亘って形成される薄肉部40と、薄肉部40から軸方向に膨出するとともに、ハブ輪31の中心O側から周方向等間隔で径方向外側に張り出し、その周方向中央にハブボルト孔38が形成される、3以上の奇数個の張出部37と、薄肉部40から軸方向に膨出するとともに、互いに隣接するブレーキロータを締結するための止めネジまたは押しネジ用の張出部37の周方向中央の位置に形成され、その周方向中央に雌ネジ孔42が形成される厚肉部41と、を備える。雌ネジ孔42と180°位相が異なる位置に設けられた張出部37Aの周方向幅Aは、他の張出部37の周方向幅Bより大きい。【選択図】図1

Description

本発明は、ハブユニット軸受に関し、特に、ブレーキロータが取り付けられる車輪取付フランジのアンバランスを補正可能なハブユニット軸受に関する。
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するハブユニット軸受は、路面反力に基づく大きなモーメント荷重を支承する軸受であり、また、懸架装置を構成するバネよりも路面側に設けられる、所謂、バネ下荷重でもある。このため、ハブユニット軸受には、低燃費や乗り心地向上のための軽量化や回転バランスが求められる。また、ハブユニット軸受には、アライメントを保ち、操安性を向上するための剛性も求められる。
一方、ハブユニット軸受のハブフランジには、ブレーキロータやホイールが取り付けられ、特にブレーキロータに関しては、ホイールを取り付ける際にブレーキパイロットからブレーキロータが落下することを防止するための止めネジや、ハブフランジに固着したブレーキロータを取り外すための押しネジを必要とすることがある。しかしながら、そのための雌ネジ孔がハブフランジに設けられると、該雌ネジ孔によりハブフランジの回転バランスが崩れてしまう場合がある。
特許文献1には、ブレーキロータを固定するボルト用の雌ネジ孔が設けられた部分に、雌ネジ穴穿孔で除去される重量と同じ重量の突起状の肉厚部を設け、雌ネジ孔が設けられる部分での重量増減をなくすことにより、雌ネジ孔による回転バランスの崩れを防止するようにした車輪用軸受装置が開示されている。
特開2007-307933号公報
しかしながら、回転バランスは、質量と、回転中心から質量の重心までの距離との積で決まるため、特許文献1に記載の車輪用軸受装置のように、重量変化を抑えただけではアンバランスを除去できない。また、ハブユニット軸受単体ではアンバランスが除去できたとしても、ハブフランジにブレーキロータを取り付けた状態では、雌ネジ孔にボルトが螺合されて中実状態となるので、雌ネジ孔に螺合する部分のボルト重量分が、そのままアンバランス荷重となってしまう問題があった。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレーキロータが取り付けられる車輪取付フランジのアンバランスを補正可能なハブユニット軸受を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
軸方向一方側に車輪取付フランジを有し、軸方向他方側に小径段部が形成されたハブ輪、及び前記ハブ輪の前記小径段部に圧入固定された少なくとも一つの内輪を備え、外周面に前記複列の外輪軌道に対向する複列の内輪軌道が形成されたハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の転動体と、を備えるハブユニット軸受であって、
前記車輪取付フランジは、
全周に亘って形成される薄肉部と、
前記薄肉部から軸方向に膨出するとともに、前記ハブ輪の中心側から周方向等間隔で径方向外側に張り出し、その周方向中央にハブボルト孔が形成される、3以上の奇数個の張出部と、
前記薄肉部から軸方向に膨出するとともに、互いに隣接する前記張出部の周方向中央の位置に形成され、その周方向中央にブレーキロータを締結するための止めネジまたは押しネジ用の雌ネジ孔が形成される厚肉部と、を備え、
前記雌ネジ孔と180°位相が異なる位置に設けられた前記張出部の周方向幅Aは、他の前記張出部の周方向幅Bより大きい、
ハブユニット軸受。
本発明のハブユニット軸受によれば、雌ネジ孔と180°位相が異なる位置に設けられた張出部の周方向幅Aは、他の張出部の周方向幅Bより大きいので、雌ネジ孔側に厚肉部を設けても、車輪取付フランジのアンバランスを補正することができる。
本発明の第1実施形態に係るハブユニット軸受の断面図である。 図1に示すハブユニット軸受から外輪を外して示すハブの右側面図である。 本発明の第2実施形態に係るハブユニット軸受の断面図である。 図3に示すハブユニット軸受から外輪を外して示すハブの右側面図である。
以下、本発明に係るハブユニット軸受の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の駆動輪用のハブユニット軸受10は、駆動輪である車輪をナックル等の懸架装置に対して回転自在に支持するもので、静止輪である外輪20の内径側には、複数個の転動体14を介して回転輪であるハブ30が回転自在に支持されている。
外輪20は、外周面に懸架装置を構成する図示しないナックルに結合固定される取付フランジ22を有し、内周面に複列の外輪軌道21a、21bを有している。取付フランジ22には、外輪20をナックルに結合するための雌ねじ穴23が設けられている。
ハブ30は、ハブ輪31の小径段部34に内輪32を外嵌し、かしめ部33により結合固定して成るもので、外周面に複列の内輪軌道35a、35bを有している。ハブ輪31の軸方向一方側で、外輪20の軸方向一方側の端部開口よりも軸方向一方側に突出した部分には、車輪を構成するホイール25及びブレーキロータ26を取り付けるための車輪取付フランジ36が設けられている。ハブ輪31の径方向中心部には、図示しない等速ジョイントの駆動軸を、軸方向他方側から挿入してスプライン係合させるためのスプライン孔39が設けられている。そして、各外輪軌道21a、21bと、各内輪軌道35a、35bとの間に、それぞれ複数個ずつ転動体14が設けられている。
なお、ここで言う軸方向一方側とは、ハブユニット軸受の軸方向に関し、ハブユニット軸受10を車両に組み付け状態で車体の幅方向外側となる側であり、軸方向他方側とは、車体の幅方向内側となる側である。
外輪20の内周面とハブ30の外周面との間で各転動体14を設置した軸受空間12の軸方向一方側の端部開口、及び軸方向他方側の端部開口は、それぞれシールリング13により塞がれている。
図2も参照して、ハブ30の車輪取付フランジ36は、全周に亘って形成される薄肉部40と、薄肉部40から軸方向に膨出し、ハブ輪31の中心O側から周方向等間隔で径方向外側に張り出し、その周方向中央にハブボルト孔38が形成された肉厚の5つの張出部37,37Aと、を備えた、所謂、スキャロップフランジである。
5つの張出部37,37Aのうち、1つの張出部37Aは、4つの張出部37より周方向幅が広く形成されており、これについては、後に詳述する。
ホイール25及びブレーキロータ26は、図示しないハブボルトとハブナットにより共締めされて車輪取付フランジ36に結合固定されている。
周方向で互いに隣接する張出部37の周方向中央には、薄肉部40から軸方向に膨出するとともに、周方向中央に雌ネジ孔42が形成された1つの厚肉部41が設けられている。雌ネジ孔42が厚肉部41に形成されることにより、雌ネジ孔42の有効ネジ長さが確保される。本実施形態では、雌ネジ孔42は、車輪取付フランジ36に固着したブレーキロータ26を取り外すための押しネジ用として使用される。
図1に示す雌ネジ孔42には、軸方向一方側から雌ネジ孔42の谷径より大径のザグリ穴43が連続して形成されており、ブレーキロータ26を取り外すための押しネジに好適な形状となっている。これにより、車輪取付フランジ36に強く固着したブレーキロータ26を図示しない押しネジで押す際、ブレーキロータ26の車輪取付フランジ36との当接面側に盛り上がりを伴う疵が発生しても、再組付けの際に同位相でブレーキロータ26を組み付ければ、該疵はザグリ穴43の中に収容されるので、再組付け後のブレーキロータ26の振れ(ブレーキジャダの原因となる)を防ぐことができる。
次に、厚肉部41と張出部37、37Aとの関係について説明する。
張出部37Aと180°位相が異なる位置に設けられた厚肉部41は、中心線CLに対して線対称に形成される。図2に示すように、厚肉部41は、両側の張出部37に連続して略3角形に形成されているが、その形状は任意であり、例えば、張出部37から独立した島状に形成されてもよい。図2は、厚肉部41の領域R1を網掛けで示す。
即ち、張出部37Aは、雌ネジ孔42と180°位相が異なる位置に設けられた張出部であり、その周方向幅Aは、他の張出部37の周方向幅Bより周方向幅Cだけ大きくなっている(A=B+C)。
張出部37Aの周方向幅Cは、ハブボルト孔38の中心O1と、ハブ輪31の中心Oとを結ぶ中心線CLに対して線対称に形成され、張出部37の周方向幅Bの両側にC/2ずつ分割して設けられている。また、張出部37Aの軸方向厚さは、張出部37と同じであり、本実施形態では、厚肉部41とも同じである。図2には、周方向幅Bの両側に設けられた周方向幅Cの領域R2を斜線で示す。
厚肉部41、及び周方向幅Cは、中心線CLに対して線対称に設けられているので、厚肉部41、及び周方向幅Cの質量の重心位置は、中心線CL上にある。
このように、厚肉部41を設けることにより発生するアンバランスは、同じ大きさのアンバランス量を、雌ネジ孔42と180°位相が異なる位置の張出部37Aに周方向幅Cとして付加することで相殺することができ、車輪取付フランジ36のバランスが維持される。
詳細には、車輪取付フランジ36の半径方向に沿うアンバランス量は、ハブ輪31の中心Oから半径riの位置に質量miがあるとすると、質量mi×半径riをハブ輪31の中心Oから外周まで半径方向に積分することで求められる。従って、周方向幅Cの領域R2の質量に関する質量mi×半径riの積分値が、厚肉部41の領域R1の質量に関する質量mi×半径riの積分値と等しくなるように周方向幅Cを決定することで、車輪取付フランジ36のバランスを調整することができる。
なお、張出部37Aでは、張出部37の周方向幅Bに周方向幅Cを付加することでバランスを調整している。これは、軸方向に肉厚を増やすと軸方向のアンバランスが発生して2面バランスで調整しなければならない場合があるため、本実施形態では、軸方向には肉厚を増やさず、周方向幅だけを変更して調整している。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のハブユニット軸受10について、図3及び図4を参照して説明する。第2実施形態のハブユニット軸受10では、雌ネジ孔42を有する厚肉部41と、周方向幅A(A=B+C)の張出部37Aとが、それぞれ円周方向に2箇所に設けられている。
本実施形態では、雌ネジ孔42は、軸方向一方側の端面に設けられた面取り部44から連続して形成されており、ブレーキロータ26を車輪取付フランジ36に固定するための止めネジに好適な形状となっている。この場合、止めネジには引っ張り力が作用する。
本実施形態のハブユニット軸受10では、2箇所に設けられた厚肉部41によるアンバランス量は、それぞれの厚肉部41と180°位相が異なる位置に設けた2箇所の張出部37Aの周方向幅Aを周方向幅Cだけ増加することにより、補正することができ、良好なバランスが保たれる。
なお、本実施形態では、張出部37Aの周方向幅Aは、雌ネジ孔42に止めネジが螺合された状態で算出するのがよい。これにより、実機でのさらに良好なバランスを得ることができる。
また、周方向幅Aの張出部37Aは全体の周方向幅を増やしているが、一部分のみの周方向幅を増やすこともできる。その場合も、増やした部分の質量の重心が中心線CL上に位置するように、中心線CLに対して線対称に設けることが好ましい。
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態では、5つの張出部37を有するスキャロップフランジとして説明したが、張出部37の数は5つに限定されず、3以上の奇数個であれば任意である。
また、本発明のハブは、内輪とハブ輪がそれぞれ内輪軌道を有する構成としているが、これに限らず、内輪軌道を有する一対の内輪をハブ輪の小径段部に嵌合して加締め固定してもよい。
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
軸方向一方側に車輪取付フランジを有し、軸方向他方側に小径段部が形成されたハブ輪、及び前記ハブ輪の前記小径段部に圧入固定された少なくとも一つの内輪を備え、外周面に前記複列の外輪軌道に対向する複列の内輪軌道が形成されたハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の転動体と、を備えるハブユニット軸受であって、
前記車輪取付フランジは、
全周に亘って形成される薄肉部と、
前記薄肉部から軸方向に膨出するとともに、前記ハブ輪の中心側から周方向等間隔で径方向外側に張り出し、その周方向中央にハブボルト孔が形成される、3以上の奇数個の張出部と、
前記薄肉部から軸方向に膨出するとともに、互いに隣接する前記張出部の周方向中央の位置に形成され、その周方向中央にブレーキロータを締結するための止めネジまたは押しネジ用の雌ネジ孔が形成される厚肉部と、を備え、
前記雌ネジ孔と180°位相が異なる位置に設けられた前記張出部の周方向幅Aは、他の前記張出部の周方向幅Bより大きい、
ハブユニット軸受。
この構成によれば、厚肉部により生じるアンバランスを、180°位相が異なる位置に設けられた張出部の周方向幅を増加することで補正することができる。
(2) 前記雌ネジ孔と180°位相が異なる位置に設けられた前記張出部の前記周方向幅Aは、
他の前記張出部の前記周方向幅Bに周方向幅Cを加算した周方向幅であり、
前記周方向幅Cは、
周方向幅Cによる付加質量と、該付加質量の重心から前記車輪取付フランジの回転中心までの距離と、の積の半径方向の積分であるアンバランス量が、前記厚肉部の質量と、該質量の重心から前記回転中心までの距離と、の積の半径方向の積分であるアンバランス量とを等しくする周方向幅である、
(1)に記載のハブユニット軸受。
この構成によれば、厚肉部及び張出部のアンバランス量を、該厚肉部及び張出部の質量と、該質量の重心から回転中心までの距離と、の積としてそれぞれ求め、両アンバランス量が同じ大きさになるように、張出部の周方向幅Cを決定するのでアンバランスを正確に補正することができる。
(3) 前記雌ネジ孔は、前記ブレーキロータを締結するための止めネジ用の孔であり、
前記張出部の周方向幅Aは、前記雌ネジ孔に前記止めネジが螺合された状態で求められる、
(1)又は(2)に記載のハブユニット軸受。
この構成によれば、ブレーキロータが締結された状態でアンバランスをより正確に補正することができる。
10 ハブユニット軸受
14 転動体
20 外輪
21a,21b 外輪軌道
30 ハブ
31 ハブ輪
32 内輪
34 小径段部
35a,35b 内輪軌道
36 車輪取付フランジ
37、37A 張出部
38 ハブボルト孔
40 薄肉部
41 厚肉部
42 雌ネジ孔
A、B、C 周方向幅
mi 質量
ri 半径(質量の重心から車輪取付フランジの回転中心までの距離)

Claims (3)

  1. 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
    軸方向一方側に車輪取付フランジを有し、軸方向他方側に小径段部が形成されたハブ輪、及び前記ハブ輪の前記小径段部に圧入固定された少なくとも一つの内輪を備え、外周面に前記複列の外輪軌道に対向する複列の内輪軌道が形成されたハブと、
    前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の転動体と、を備えるハブユニット軸受であって、
    前記車輪取付フランジは、
    全周に亘って形成される薄肉部と、
    前記薄肉部から軸方向に膨出するとともに、前記ハブ輪の中心側から周方向等間隔で径方向外側に張り出し、その周方向中央にハブボルト孔が形成される、3以上の奇数個の張出部と、
    前記薄肉部から軸方向に膨出するとともに、互いに隣接する前記張出部の周方向中央の位置に形成され、その周方向中央にブレーキロータを締結するための止めネジまたは押しネジ用の雌ネジ孔が形成される厚肉部と、を備え、
    前記雌ネジ孔と180°位相が異なる位置に設けられた前記張出部の周方向幅Aは、他の前記張出部の周方向幅Bより大きい、
    ハブユニット軸受。
  2. 前記雌ネジ孔と180°位相が異なる位置に設けられた前記張出部の前記周方向幅Aは、
    他の前記張出部の前記周方向幅Bに周方向幅Cを加算した周方向幅であり、
    前記周方向幅Cは、
    周方向幅Cによる付加質量と、該付加質量の重心から前記車輪取付フランジの回転中心までの距離と、の積の半径方向の積分であるアンバランス量が、前記厚肉部の質量と、該質量の重心から前記回転中心までの距離と、の積の半径方向の積分であるアンバランス量とを等しくする周方向幅である、
    請求項1に記載のハブユニット軸受。
  3. 前記雌ネジ孔は、前記ブレーキロータを締結するための止めネジ用の孔であり、
    前記張出部の周方向幅Aは、前記雌ネジ孔に前記止めネジが螺合された状態で求められる、
    請求項1又は2に記載のハブユニット軸受。
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