JP2022148087A - 減速機、保持器、軸受 - Google Patents

Abstract

【課題】軸受の潤滑性を確保できる減速機の技術を提供することを目的の一つとする。【解決手段】減速機１００は、複数の転動体２５を保持する保持器４０を有する軸受を備えた減速機であって、保持器４０は、複数の転動体２５の周方向移動を規制する柱部４３と、柱部４３に形成され、転動体２５の脱落を防止するための脱落防止部４４と、を有し、脱落防止部４４は、内径側において柱部４３の延伸方向の片側に偏って配置されている。【選択図】図３

Description

本発明は、減速機、保持器および軸受に関する。

転動体を有する主軸受を備えた減速機が知られている。特許文献１には、キャリアが軸受を介してケースに支持される歯車伝動装置が記載されている。この軸受は、キャリアに設けられるインナーレースと、ケースに設けられるアウターレースと、複数のローラと、リテーナとを備えている。ケースとキャリアのいずれか一方には、リテーナの大径側の端部を収容する溝が設けられている。

特開２０１５－１３７７０５号公報

本発明者らは、軸受を備える減速機について検討し下記の認識を得た。
軸受は、転動体と、転動体の周囲を取り囲む保持器を有している。減速機の信頼性を確保するためには、軸受の転動体に潤滑材を安定的に供給して潤滑性を確保することが重要である。しかし、特許文献１の減速機は、軸受の潤滑性を確保する観点で十分な対応がなされたものでなく、改良の余地があった。

本発明は、こうした状況に鑑みてなされたもので、軸受の潤滑性を確保できる減速機の技術を提供することを目的の一つとしている。

上記課題を解決するために、本発明のある態様の減速機は、複数の転動体を保持する保持器を有する軸受を備えた減速機であって、保持器は、複数の転動体の周方向移動を規制する複数の柱部と、転動体の脱落を防止するために柱部に形成される脱落防止部と、を有する。脱落防止部は、内径側において柱部の延伸方向の片側に偏って配置される。

本発明の別の態様は、保持器である。この保持器は、複数の転動体を保持する軸受の保持器であって、複数の転動体の周方向移動を規制する複数の柱部と、転動体の脱落を防止するために柱部に形成される脱落防止部と、を有する。脱落防止部は、内径側において柱部の延伸方向の片側に偏って配置される。

本発明のさらに別の態様は、軸受である。この軸受は、複数の転動体を保持する保持器を有する軸受であって、保持器は、複数の転動体の周方向移動を規制する複数の柱部と、転動体の脱落を防止するために柱部に形成される脱落防止部と、を有する。脱落防止部は、内径側において柱部の延伸方向の片側に偏って配置される。

なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。

本発明によれば、軸受の潤滑性を確保できる減速機の技術を提供できる。

実施形態に係る減速機を示す側面断面図である。 図１の減速機のＡ－Ａ線断面図である。 図１の主軸受を拡大して示す断面図である。 図１の保持器の一例を示す側面図と正面図である。 図４の保持器の柱部を拡大して示す図である。 図５の矢視Ｂから視た保持器を示す図である。 図５の矢視Ｃから視た保持器を示す図である。 図５のＤ－Ｄ線に沿った断面図である。

以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。

また、第１、第２などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。

［実施形態］
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係る減速機１００の構成を説明する。図１は、本実施形態の減速機１００を概略的に示す側面断面図である。図２は、図１のＡ－Ａ線断面図である。減速機１００の用途に制限はないが、この例の減速機１００は例えば多関節ロボットの関節に使用できる。

減速機１００の全体構成を説明する。減速機１００は、主に、偏心体軸１２と、外歯歯車１４と、内歯歯車１６と、キャリヤ１８、２０と、ケーシング２２と、主軸受２４、２６と、偏心体軸受３０と、内ピン３２と、偏心体軸軸受３３、３４とを備える。主軸受２４、２６は、内輪２７と、外輪２８と、保持器４０と、複数の転動体２５とを含む。主軸受２４、２６は、軸受を例示している。

以下、内歯歯車１６の中心軸線Ｌａに沿った方向を「減速機の軸方向」、あるいは単に「軸方向」といい、その中心軸線Ｌａを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸方向の一方側（図中右側）を入力側といい、他方側（図中左側）を反入力側という。このような方向の表記は、減速機１００の使用姿勢を制限するものではなく、減速機１００は、任意の姿勢で使用されうる。

キャリヤ１８、２０は、外歯歯車１４の反入力側に配置される第１キャリヤ１８と、外歯歯車１４の入力側に配置される第２キャリヤ２０とを含む。主軸受２４、２６は、外歯歯車１４の反入力側に配置される第１主軸受２４と、外歯歯車１４の入力側に配置される第２主軸受２６とを含む。偏心体軸軸受３３、３４は、外歯歯車１４の反入力側に配置される第１偏心体軸軸受３３と、外歯歯車１４の入力側に配置される第２偏心体軸軸受３４とを含む。

本実施形態の減速機１００は、偏心体軸１２が内歯歯車１６の中心軸線Ｌａと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。減速機１００は、中央部に軸方向に貫通するホロー部Ｈを有する。ホロー部Ｈは、偏心体軸１２に設けられる。

ケーシング２２は、減速機１００の外殻を構成する。キャリヤ１８、２０は、ケーシング２２の内側に配置され、ケーシング２２と相対回転する。偏心体軸１２は、中心にホロー部Ｈを有する中空円筒状を有する。例えば、偏心体軸１２の入力側の端部にモータ軸がボルトなどの連結具により連結される。

偏心体軸１２は、複数の偏心部１２８を有し、外歯歯車１４を揺動させる偏心体として機能する。この例では、偏心体軸１２は、位相が１８０°ずれた２つの偏心部１２８を有する。偏心体軸１２の両端部は、偏心体軸軸受３３、３４を介してキャリヤ１８、２０に支持される。なお、偏心部１２８の数は、２つに限られず、１つまたは３つ以上であってもよい。

偏心体軸軸受３３、３４の構成に制限はない。この例では、反入力側に配置される第１偏心体軸軸受３３は、転動体がボール（球体）である深溝玉軸受である。転動体は、内輪と、外輪との間で転動する。入力側に配置される第２偏心体軸軸受３４は、転動体がころ（円筒体）であるころ軸受である。第２偏心体軸軸受３４は、内輪、外輪を有せず、転動体は、偏心体軸１２の外周面と、第２キャリヤ２０の内周面との間で転動する。

本実施形態では、偏心体軸受３０は、円筒ころ形状の転動体３０２とリテーナとを有する。転動体３０２は、偏心部１２８の周りに所定の間隔で複数（例えば、３８個）配置される。リテーナは、複数の転動体３０２を回転可能に所定位置に保持する。偏心体軸受３０は、内輪および外輪を有しておらず、転動体３０２は偏心部１２８の外周面と外歯歯車１４の中心孔１４ｃの内周面との間で転動する。

図２に示すように、外歯歯車１４は、偏心体軸受３０を介して対応する偏心部１２８に回転自在に支持される。外歯歯車１４には、中心孔１４ｃと、複数の内ピン孔１４ｈとが形成されている。中心孔１４ｃは、外歯歯車１４の中心に設けられる貫通孔である。複数の内ピン孔１４ｈは、外歯歯車１４の中心からオフセットされた位置に設けられる貫通孔である。図２の例では、１０個の内ピン孔１４ｈが周方向に３６°間隔で配置されている。内ピン孔１４ｈには内ピン３２が挿通される。外歯歯車１４の外周に形成された歯が、内歯歯車１６の歯と噛み合いながら回転することで、外歯歯車１４が揺動する。

図２に示すように、内歯歯車１６は、外歯歯車１４と噛み合う。本実施形態の内歯歯車１６は、ケーシング２２と一体化された内歯歯車本体と、この内歯歯車本体に回転自在に支持される外ピン１６ｐ（ピン部材）とで構成されている。外ピン１６ｐは、内歯歯車１６の内歯を構成する。内歯歯車１６の内歯数（外ピン１６ｐの数）は、外歯歯車１４の外歯数よりも僅かだけ（この例では１だけ）多い。

図１に示すように、第１キャリヤ１８および第２キャリヤ２０は、主軸受２４、主軸受２６を介してケーシング２２に回転自在に支持されている。第１キャリヤ１８は、第１偏心体軸軸受３３を介して偏心体軸１２を支持する。第２キャリヤ２０は、第２偏心体軸軸受３４を介して偏心体軸１２を支持する。

第１キャリヤ１８と第２キャリヤ２０とは、内ピン３２を介して連結される。内ピン３２は、外歯歯車１４の軸芯から径方向にオフセットした位置において、外歯歯車１４の内ピン孔１４ｈを軸方向に貫通する。

キャリヤ１８、２０とケーシング２２の一方は、被駆動装置に回転動力を出力する出力部材として機能し、他方は減速機１００を支持するための外部部材に固定される被固定部材として機能する。本実施形態において、出力部材は第１キャリヤ１８および第２キャリヤ２０であり、被固定部材はケーシング２２である。

図２の例では、内ピン３２は、周方向に３６°間隔で１０個配置される。図１では、１つの内ピン３２を示す。内ピン３２は、反入力側が第１キャリヤ１８に固定され、入力側が第２キャリヤ２０に固定される。内ピン３２は、第１キャリヤ１８と第２キャリヤ２０とを連結する。図１の例では、内ピン３２は、第１キャリヤ１８と一体的に形成されており、入力側が第２キャリヤ２０にボルトＢ１によって固定されている。内ピン３２の外周にはスリーブ３２ｓが設けられる。内ピン３２は、内ピン孔１４ｈに隙間を有する状態で挿通される。内ピン３２は、スリーブ３２ｓを介して内ピン孔１４ｈの一部と当接している。内ピン３２は、外歯歯車１４の自転を拘束しその揺動のみを許容している。

主軸受２４、２６は、第１キャリヤ１８とケーシング２２の間および第２キャリヤ２０とケーシング２２の間に配置される。主軸受２４、２６の構成に制限はないが、この例の主軸受２４、２６は、転動体２５が円筒ころであるころ軸受けである。保持器４０は、複数の転動体２５を保持する。主軸受２４、２６の外輪２８は、ケーシング２２に支持される。第１主軸受２４の内輪は、キャリヤ１８と一体的に形成されている。第２主軸受２６の内輪は、キャリヤ２０と一体的に形成されている。

ケーシング２２は、キャリヤ１８、２０を環囲する中空円筒状の部材である。図１に示すように、ケーシング２２と、第１キャリヤ１８との間には、第１主軸受２４からの潤滑材をシールするオイルシール３６が設けられている。

以下、本実施形態の特徴構成を説明する。

本発明者らは、主軸受を備える減速機を研究し、以下の知見を得た。
研究の結果、減速機の主軸受の軸受寿命を確保するためには、転動体の潤滑性を高めることが有効であることがわかった。主軸受は、複数の転動体を所定の位置に保持する保持器を有している。保持器は、転動体を保持するために、転動体の周囲を取り囲む部分を有している。この転動体を囲む部分は、潤滑材の流路を狭くして潤滑性を低下させる要因になりうる。また、減速機では、組み立て性を高める観点で、主軸受を組み立てるときに転動体を支持して落下を防止するように、保持器に転動体支持部を設けることが考えられる。しかし、このような転動体支持部は、潤滑材の流路を狭くして潤滑性を低下させる可能性がある。

これらから、本発明者らは、組み立て性を確保しつつ、潤滑性を確保可能な保持器を案出した。この保持器は、複数の転動体の周方向移動を規制する柱部と、柱部に形成され、転動体の脱落を防止するための脱落防止部と、を有し、脱落防止部は、内径側にあり柱部の片側に偏って配置されている。脱落防止部を有することにより、組み立て時に転動体の落下を防止可能であり、脱落防止部を片側に偏って配置することにより、潤滑材の流路が確保され、潤滑性の低下を抑制できる。この保持器を有することにより主軸受の軸受寿命を確保可能な減速機を提供できる。以下、具体的に説明する。

図１、図３を参照して、主軸受２４、２６を説明する。ここでは、第１主軸受２４を説明するが、この説明は第２主軸受２６にも適用される。図３は、図１の第１主軸受２４を拡大して示す断面図である。前述したように、第１主軸受２４は、外輪２８と、保持器４０と、複数の転動体２５とを含む。第１主軸受２４には、潤滑材Ｇが注入される。転動体２５の中心軸線Ｌｂに沿った方向を「転動体の軸方向」といい、その中心軸線Ｌｂを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「転動体の周方向」、「転動体の径方向」という。

図１、図３、図４、図５を参照して、保持器４０を説明する。図４（Ａ）は、保持器４０の側面図であり、図４（Ｂ）は、保持器４０の正面図である。この図では、柱部４３の一部を破断して示している。図５は、保持器４０の柱部４３を拡大して示す図である。

保持器４０は、主に、大端部４１と、小端部４２と、複数の柱部４３と、複数の脱落防止部４４と、嵌合部４５とを有する。保持器４０は、全体として略円錐台形状の外形輪郭を有する中空円環状の部材である。保持器４０の外径側は外輪２８に環囲され、保持器４０の内径側に内輪２７が収容される。保持器４０の柱部４３の延伸方向両端の内、外径が大きい方の端面を大端面（図３で反入力側の端面）といい、保持器４０の柱部４３の延伸方向両端の内、外径が小さい方の端面を小端面（図３で入力側の端面）という。つまり、複数の転動体の軸心が描く円の外径が大きい方が大端面側といい、つまり、複数の転動体の軸心が描く円の外径が小さい方が小端面側ともいえる。保持器４０は、大端面側に大端部４１を有し、小端面側に小端部４２を有する。大端部４１および小端部４２は、中心軸線Ｌａに略同軸の円環状の部材である。

図６～図８も参照する。図６は図５の矢視Ｂから視た図であり、図７は図５の矢視Ｃから視た図であり、図８は図５のＤ－Ｄ線に沿った断面図である。これらの図は保持器４０のポケットＰｋを示す。

複数の柱部４３は、複数の転動体２５の周方向移動を規制する。この例では、複数の柱部４３は、中心軸線Ｌａの周りに所定の間隔で複数の転動体２５と同数（例えば、６１個）放射状に配列されている。柱部４３は、中心軸線Ｌａを通る面において、中心軸線Ｌａに対して傾斜する延伸方向に延伸している。柱部４３の延伸方向は、大端部４１に近づくに従って中心軸線Ｌａから離れる方向である。柱部４３の外径側は大端部４１に接続され、柱部４３の内径側は小端部４２に接続される。図６に示すように、周方向に隣り合う２つの柱部４３－Ａ、４３－Ｂと、大端部４１と、小端部４２とは、略矩形の空間を有するポケットＰｋを構成する。このポケットＰｋに転動体２５が収容される。

保持器４０は、転動体２５のポケットＰｋからの脱落を防止するために柱部４３に形成される脱落防止部４４を有する。脱落防止部４４は、例えば爪形状を有する。脱落防止部４４の形状に制限はないが、この例では、脱落防止部４４は、内径側において柱部４３の大端部４１側と小端部４２側のいずれか片側に偏って配置されている。この場合、脱落防止部４４を内径側に配置することにより、転動体２５を外径側からポケットＰｋに挿入したとき、転動体２５は、脱落防止部４４に支持され、内径側への脱落を防止できる。なお、脱落防止部４４が、柱部４３の片側に偏って配置されているとは、柱部４３の延伸方向中心を挟んで一方側に位置する脱落防止部４４の延伸方向の長さが、他方側に位置する脱落防止部４４の長さよりも大きい場合をいう。したがって、脱落防止部４４が、柱部４３の片側に偏って配置されていることには、脱落防止部４４全体の面積が軸方向において偏っている場合は含まれない。また、脱落防止部４４が、柱部４３の片側に偏って配置されていることには、一方側にのみ脱落防止部４４が存在し、他方側の脱落防止部４４の長さがゼロである場合も含まれる。

脱落防止部４４は、柱部４３の小端部４２側に偏って配置されてもよいが、この例では、脱落防止部４４は、柱部４３の大端部４１側に偏って配置されている。この場合、大端部４１側で転動体２５を支持し、小端部４２側で隙間を大きくして、潤滑材Ｇの流れをスムーズにすることができる。

脱落防止部４４の形状は、転動体２５の脱落を防止できるものであれば限定されない。図６の例では、脱落防止部４４は、転動体２５の曲面と接触する部分に円弧形状等の曲面形状を有する。この場合、脱落防止部４４の中央付近で張出量を増加させて転動体２５の脱落を防止しつつ、周辺部での張出量を減らして隙間を形成し、その部分に潤滑材Ｇの流路を確保できる。

また、図６の例では、周方向の厚さにおいて、柱部４３の脱落防止部４４がある側の脱落防止部４４を除いた部分の最大厚さＴ１は、脱落防止部４４がない側の最大厚さＴ２よりも大きい。この場合、転動体２５を支持する側の剛性を高めて変形を抑制できる。この例では、最大厚さＴ１は、柱部４３の脱落防止部４４がある大端部４１側の脱落防止部４４を除いた部分の最大厚さであり、最大厚さＴ２は、柱部４３の脱落防止部４４がない小端部４２側の最大厚さである。

また、図５の例では、柱部４３の延伸方向および周方向の両方に直交し中心軸線Ｌｂを通る方向の厚さにおいて、柱部４３の脱落防止部４４がある側の厚さＨ１は、柱部４３の脱落防止部４４がない側の厚さＨ２よりも大きい。この場合、転動体２５を支持する側の剛性を高めて変形を抑制できる。この例では、厚さＨ１は、柱部４３の脱落防止部４４がある大端部４１側の最大厚さであり、厚さＨ２は、柱部４３の脱落防止部４４がない小端部４２側の最大厚さである。

嵌合部４５を説明する。図３の例では、保持器４０は、第１主軸受２４の外輪２８の凹部２８２に嵌合する嵌合部４５を有する。この場合、大端部４１を下向きにした保持器４０に転動体２５をセットし、外輪２８を載せて、嵌合部４５を凹部２８２に嵌合させることにより、これらを一体的なユニットとして取り扱うことが可能になる。

例えば、凹部２８２は、外輪２８の内周面に凹設された周状凹部であってもよい。例えば、嵌合部４５は、大端部４１から径方向に突出する凸部であってもよい。嵌合部４５は、周方向に連続して設けられてもよいが、本実施形態では、嵌合部４５は、周方向に断続的に所定の間隔で設けられている。特に、嵌合部４５は、大端部４１において複数の柱部４３のうち周方向に並んで配置される第１の柱部４３－Ａと第２の柱部４３－Ｂとの間に設けられる。この場合、嵌合部４５を凹部２８２に容易に嵌め込むことができる。

本実施形態では、嵌合部４５は、弾性変形によって外輪２８の凹部２８２に嵌合する。この場合、弾性変形により、保持器４０が外輪２８に仮着されるため、これらを一体的なユニットとして容易に取り扱いできる。例えば、このユニットにおいて、外輪２８を下向にして自重で外れない程度の嵌合強度が得られるように、嵌合部４５と凹部２８２の形状を設定できる。

柱部４３の段部４３３を説明する。図３の例では、柱部４３の転動体２５に対向する面に段部４３３が設けられる。この場合、柱部４３により転動体２５との間に隙間が形成され、潤滑性が向上する。柱部４３の転動体２５に対向する面は周方向に直交する面であってもよい。

図３の例では、段部４３３は、柱部４３の延伸方向と、当該延伸方向および周方向の両方に直交する方向に対して傾斜する方向に延びる。この場合、転動体２５との隙間が延伸方向および直交方向に拡がるので、広い範囲で潤滑性が向上する。

図３の例では、段部４３３は、減速機１００の軸方向（中心軸線Ｌａに沿った方向）に平行に延びる。この場合、転動体２５との隙間を中心軸線Ｌａに沿った方向に長くできる。また、保持器４０を樹脂成形する金型を加工しやすい。

図３を参照して、内輪２７を説明する。第１主軸受２４の内輪２７は、転動体２５の軸方向外側への移動を規制する移動規制部２７３を有する。この場合、転動体２５の軸方向外側への抜け出しを防止できる。図３の例では、移動規制部２７３は、転動体２５の大端部４１側の端部と対向する鍔形状を有する。

図３を参照して、外輪２８を説明する。第１主軸受２４の外輪２８は、保持器４０の軸方向内側への移動を規制する保持器移動規制部２８３を有する。この場合、保持器４０の抜け出しを防止できるので、保持器４０を外輪２８に仮着したユニットの取り扱いが容易になる。図３の例では、保持器移動規制部２８３は、径方向内側に張り出した中空円盤形状を有する張出部である。

このように構成された減速機１００の動作を説明する。モータ等から偏心体軸１２に回転が伝達されると、偏心体軸１２の偏心部１２８が偏心体軸１２を通る回転中心線周りに回転し、偏心体軸受３０を介して外歯歯車１４が揺動する。外歯歯車１４が揺動すると、外歯歯車１４と内歯歯車１６の噛合位置が順次ずれる。この結果、偏心体軸１２が一回転する毎に、外歯歯車１４と内歯歯車１６との歯数差に相当する分、外歯歯車１４および内歯歯車１６の一方の自転が発生する。本実施形態においては、外歯歯車１４が自転し、内ピン３２を介して第１キャリヤ１８および第２キャリヤ２０から減速回転が出力される。

このように構成された減速機１００の特徴を説明する。減速機１００は、複数の転動体２５を保持する保持器４０を有する軸受（主軸受２４、２６）を備えた減速機であって、保持器４０は、複数の転動体２５の周方向移動を規制する柱部４３と、柱部４３に形成され、転動体２５の脱落を防止するための脱落防止部４４と、を有し、脱落防止部４４は、内径側において柱部４３の延伸方向の片側に偏って配置されている。

この構成によれば、脱落防止部４４が片側に偏って配置されることにより、脱落防止部４４がない方から主軸受２４、２６に潤滑材Ｇを供給しやすくなる。また、脱落防止部４４がない部分に隙間が形成され、その隙間に潤滑材Ｇの流路を確保できる。

以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。

以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。

［変形例］
実施形態の説明では、減速機１００が、いわゆるセンタークランクタイプの偏心揺動型減速機である例を示したが、本発明はこれに限定されない。減速機は、主軸受を有するものであればよく、減速機構の種類は特に限定されない。例えば、減速機は、中心からオフセットした位置に複数のクランク軸が配置されるいわゆる振り分けタイプの偏心揺動型減速機であってもよいし、筒型、カップ型、シルクハット型等の撓み噛合い式減速機であってもよいし、単純遊星歯車型減速機であってもよいし、平行軸減速機、同心軸減速機、直交軸減速機等の公知の様々な減速機であってもよい。

実施形態の説明では、主軸受２４、２６の内輪が、キャリヤ１８、２０と一体的に形成される例を示したが、主軸受の内輪は、キャリヤとは別体であってもよい。

実施形態の説明では、主軸受２４、２６の転動体２５が円筒ころである例を示したが、主軸受の転動体は、テーパころ等の円筒ころとは別の形状を有してもよい。

実施形態の説明では、外歯歯車１４の数が２である例を示したが、外歯歯車の数は、１または３以上であってもよい。

実施形態の説明では、キャリヤ１８、２０を接続するためのピン部材として、外歯歯車１４の駆動力の伝達に寄与する内ピン３２を備える例を示した。キャリヤ１８、２０を接続するためのピン部材として内ピン３２とは別に駆動力の伝達に寄与しないキャリヤピンを備えてもよい。

実施形態の説明では、内ピン３２が第１キャリヤ１８と一体的に形成される例を示したが、内ピン３２は、第１キャリヤ１８と別体に形成されてボルト等の固定具によって連結されてもよい。

実施形態の説明では、偏心体軸受３０が内輪、外輪を有しない例を示したが、偏心体軸受３０は、内輪または外輪を有してもよい。

実施形態の説明では、請求項に記載の軸受として主軸受２４、２６を例示したが、請求項に記載の軸受は、偏心体軸受など減速機の他の軸受であってもよい。

上述の各変形例は実施形態と同様の作用・効果を奏する。

上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。

１００ 減速機、 ２５ 転動体、 ２７ 内輪、 ２８ 外輪、 ４０ 保持器、 ４１ 大端部、 ４３ 柱部、 ４４ 脱落防止部、 ４５ 嵌合部、 ２７３ 移動規制部、 ２８２ 凹部、 ２８３ 保持器移動規制部、 ４３３ 段部。

Claims (15)

1. 複数の転動体を保持する保持器を有する軸受を備えた減速機であって、
   前記保持器は、前記複数の転動体の周方向移動を規制する複数の柱部と、前記転動体の脱落を防止するために前記柱部に形成される脱落防止部と、を有し、
   前記脱落防止部は、内径側において前記柱部の延伸方向の片側に偏って配置されることを特徴とする減速機。
2. 前記脱落防止部は、前記複数の転動体の軸心が描く円の外径が大きい大端部側に偏って配置されることを特徴とする請求項１に記載の減速機。
3. 前記脱落防止部は、前記転動体の曲面と接触する部分に曲面形状を有することを特徴とする請求項１または２に記載の減速機。
4. 周方向の厚さにおいて、前記柱部の前記脱落防止部がある側の最大厚さは、前記脱落防止部がない側の最大厚さよりも大きいことを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載の減速機。
5. 本減速機の中心軸線を通り、前記柱部の延伸方向および周方向の両方に直交する方向の厚さにおいて、前記柱部の前記脱落防止部がある側の厚さは、前記脱落防止部がない側の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項１から４のいずれか１項に記載の減速機。
6. 前記保持器は、前記軸受の外輪の凹部に嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項１から５のいずれか１項に記載の減速機。
7. 前記嵌合部は、前記複数の柱部のうち周方向に並んで配置される２つの柱部の間において、前記保持器の大端部に設けられ、弾性変形によって前記外輪の凹部に嵌合することを特徴とする請求項６に記載の減速機。
8. 前記柱部の前記転動体に対向する面に段部が設けられることを特徴とする請求項１から７のいずれか１項に記載の減速機。
9. 前記段部は、前記柱部の延伸方向と、当該延伸方向および周方向の両方に直交する方向に対して傾斜する方向に延びることを特徴とする請求項８に記載の減速機。
10. 前記段部は、本減速機の軸方向に平行に延びることを特徴とする請求項９に記載の減速機。
11. 前記軸受の内輪は、前記転動体の軸方向外側への移動を規制する移動規制部を有することを特徴とする請求項１から１０のいずれか１項に記載の減速機。
12. 前記軸受の外輪は、前記保持器の軸方向内側への移動を規制する保持器移動規制部を有することを特徴とする請求項１から１１のいずれか１項に記載の減速機。
13. ケーシングに設けられる内歯歯車と、前記内歯歯車に噛合う外歯歯車と、前記外歯歯車の軸方向側部に配置されるキャリヤと、を備え、
    前記軸受は、前記ケーシングと前記キャリヤの間に配置される請求項１から１２のいずれか１項に記載の減速機。
14. 複数の転動体を保持する軸受の保持器であって、
    前記複数の転動体の周方向移動を規制する複数の柱部と、
    前記転動体の脱落を防止するために前記柱部に形成される脱落防止部と、
    を有し、
    前記脱落防止部は、内径側において前記柱部の延伸方向の片側に偏って配置されることを特徴とする保持器。
15. 複数の転動体を保持する保持器を有する軸受であって、
    前記保持器は、前記複数の転動体の周方向移動を規制する複数の柱部と、前記転動体の脱落を防止するために前記柱部に形成される脱落防止部と、を有し、
    前記脱落防止部は、内径側において前記柱部の延伸方向の片側に偏って配置されることを特徴とする軸受。

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