JP2022147351A - フォイル軸受 - Google Patents

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Motohisa Fujiwara
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Abstract

【課題】軸受面の形状を変更することなくフォイルの剛性を調整する。【解決手段】フォイル軸受20は、軸受面Sが形成された複数のフォイル22を有する。各フォイル22の下流側の端部に、上流側に隣接する領域よりも肉厚が薄い薄肉部22gを設けることで、この部分の剛性を低下させる。【選択図】図11

Description

本発明は、フォイル軸受に関する。
ガスタービンやターボチャージャの主軸は超高速で回転し、タービン翼は高温環境下に晒される。主軸は、油潤滑の転がり軸受や油動圧軸受によって支持されることも多いが、潤滑油などの液体による潤滑が困難な場合や、エネルギー効率の観点から潤滑油循環系の補機を別途設けることが困難な場合、あるいは液体のせん断による抵抗が問題になる場合には、空気動圧軸受の一種であるフォイル軸受が使用されることがある。
フォイル軸受は、曲げに対して剛性の低い可撓性を有する薄膜(フォイル)で軸受面を構成し、フォイルのたわみを許容して荷重を支持する軸受である。軸の回転時には、軸とフォイルの軸受面との間に流体膜(空気膜)が形成され、この流体膜を介して軸が非接触で支持される。フォイル軸受では、フォイルの可撓性により、軸の回転速度や荷重、周囲温度等の運転条件に応じた適切な軸受隙間が自動的に形成される。そのため、フォイル軸受は、軸の支持の安定性に優れており、高速回転する軸にも使用できる。
フォイル軸受で軸を安定して支持するためには、軸受面が形成されたフォイルを軸の変位や熱膨張などに追従して変形させる必要がある。そのため、フォイル軸受では、フォイルの剛性の管理が重要となる。
例えば下記の特許文献1には、複数のフォイルを一部が重なり合うように設置して、その重なりの部分で軸受面にばね性を与える、いわゆるリーフ型のフォイル軸受が示されている。このフォイル軸受では、隣接する3枚のフォイルのうちの最も下流側のフォイルの上流端と最も上流側のフォイルの下流端との間に周方向の隙間を形成している。これにより、各フォイルの下流側の端部の剛性が低下するため、軸の変位等に追従して各フォイルの下流側の端部が軸受隙間を広げる方向に変位しやすくなり、フォイルの下流側の端部と回転部材との接触を防止することができる。
また、下記の特許文献2に示されたリーフ型のスラストフォイル軸受では、各フォイルの内径側の端部に、周方向中間部を外径側に後退させた(凹ませた)後退部を設けている。リーフ型のスラストフォイル軸受では、隣接するフォイル間の周方向ピッチが内径側に行くほど小さくなるため、各フォイルの内径側の剛性が外径側の剛性よりも高くなる。従って、剛性の高い内径側の端部に後退部を設け、回転部材と接触しやすい部分が除去することで、フォイルの内径側の端部と回転部材との接触を回避できる。
特開2017-82913号公報 特開2020-34085号公報
しかし、上記特許文献1のようにフォイルの間に周方向隙間を設けたり、上記特許文献2のようにフォイルの内径側の端部に後退部を設けたりすると、フォイルに形成された軸受面の面積が減少するため、負荷容量が低下してしまう。
そこで、本発明は、負荷容量を低下させることなくことなくフォイルの剛性を調整することで、より大きな荷重を安定して支持できるフォイル軸受を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、軸受面が形成されたフォイルを有するフォイル軸受において、前記フォイルの端部に、前記端部の縁と反対側に隣接する領域よりも肉厚が薄い薄肉部を設けたフォイル軸受を提供する。
このように、本発明では、フォイルの端部に薄肉部を設けることで、この部分の剛性を低下させている。これにより、支持すべき回転部材の回転時に、回転部材とフォイルの軸受面との間の軸受隙間に生じる流体圧により、フォイルの端部が回転部材から離反する側に変位しやすくなる。このため、回転部材の変位や熱膨張に対するフォイルの端部の追従性が確保され、フォイルの端部と回転部材との接触を防止できる。この場合、薄肉部の厚さを調整するだけで、各フォイルの軸受面の面積を低減することなく、フォイルの端部の剛性を調整することができる。
薄肉部は、肉厚を均一にするのではなく、端部の縁に近づくほど肉厚を徐々に薄くすることが好ましい。これにより、薄肉部のうち、縁から離れた領域の肉厚を比較的厚くしてこの部分の剛性をある程度確保することができるため、この部分が、軸受隙間の流体圧により屈曲する事態を回避できる。
薄肉部の範囲が広すぎると、薄肉部の剛性が過小となり、この部分が軸受面として機能せず、負荷容量が低下するおそれがある。従って、薄肉部の、端部の縁の延在方向と直交する方向の寸法は1mm以下とすることが好ましい。
本発明は、例えば、リーフ型のフォイル軸受に適用することができる。すなわち、本発明は、支持すべき回転部材の回転方向に並べて配された複数のフォイルを有し、各フォイルの下流側の端部を含む領域が、下流側に隣接するフォイルの上に重ねて配され、この領域に軸受面が形成されたフォイル軸受において、各フォイルの下流側の端部に、上流側に隣接する領域よりも肉厚が薄い薄肉部を設けたフォイル軸受としても特徴づけることができる。
上記のリーフ型のフォイル軸受において、隣接する3枚のフォイルのうち、最も下流側のフォイルの上流側の端部と最も上流側のフォイルの下流側の端部との間に、回転方向の隙間を形成することで、各フォイルの下流側の端部の剛性を低下させることができる。この隙間を大きくしすぎると負荷容量が低下するおそれがあるが、本発明では、各フォイルの下流側の端部に薄肉部を設けて剛性を低下させているため、上記の隙間をそれほど大きくする必要は無く、例えば0.5mm以下にすることができる。
フォイル軸受は、起動停止の際にフォイルと回転部材とが摺動するため、フォイルの表面(軸受面)に潤滑被膜を設けることがある。この場合、回転部材との摺動によって、潤滑被膜が基材から剥がれることが懸念される。そこで、前記フォイルが、基材と、前記基材の表面に形成され、前記軸受面が設けられた潤滑被膜とを有し、前記薄肉部における基材の表面の面粗度が、隣接する領域の基材の表面の面粗度よりも大きいことが好ましい。このように、薄肉部における基材の表面の面粗度を大きくすることで、基材の表面に微小凹部が形成され、この微小凹部に潤滑被膜が入り込むことで、潤滑被膜と基材との密着性を高めることができる。
潤滑被膜には、潤滑成分(フッ素や二硫化モリブデンなど)を基材に定着させるために、樹脂系や無機系のバインダーが用いられる。樹脂系バインダーは、フォイルとの密着性は高いが、変形しにくいため、フォイルの追従性を低下させる懸念がある。一方、無機系バインダーは、フォイルの特性(剛性)を変化させにくいが、樹脂系バインダーよりもフォイルとの密着性が低い。そこで、上記のように薄肉部における基材の表面の面粗度を大きくし、この表面に無機系バインダーを含む潤滑被膜を設けることで、基材と潤滑被膜との密着性の低下やフォイルの追従性の低下を回避しながら、軸受面の摺動性を高めることができる。
以上のように、フォイルの端部に薄肉部を設けるにより、軸受面の面積を低減することなく、すなわち負荷容量を低下させることなく、フォイルの端部の剛性を調整することができる。これにより、フォイルと回転部材との接触を防止しながら、大きな荷重を安定して支持することができる。
ガスタービンの構成を概念的に示す図である。 上記ガスタービンにおけるロータの支持構造を示す断面図である。 ラジアルフォイル軸受の断面図である。 スラストフォイル軸受を軸受面側から見た平面図である。 スラストフォイル軸受のフォイルホルダおよび一枚のフォイルを示す平面図である。 図4中のX-X線断面図である。 (A)(B)は、複数のフォイルを連結してなるフォイル部材の平面図である。 2枚のフォイル部材を仮組みした状態を示す平面図である。 仮組みした2枚のフォイル部材をフォイルホルダの上に配置した状態を示す平面図である。 図11のフォイルホルダに固定部材を取り付けた状態を示す平面図である。 (A)~(F)は、フォイルの下流側の端部(図6のY部)の断面図である。 (A)(B)は、他の実施形態に係るフォイルの下流側の端部の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に、ターボ機械の一種であるガスタービンの構成を概念的に示す。このガスタービンは、それぞれに翼列を形成したタービン1および圧縮機2と、発電機3と、燃焼器4と、再生器5とを主に備える。タービン1、圧縮機2、および発電機3には、水平方向に延びる共通の軸6が設けられ、この軸6と、タービン1および圧縮機2とで一体回転可能のロータが構成される。
吸気口7から吸入された空気は、圧縮機2で圧縮され、再生器5で加熱された上で燃焼器4に送り込まれる。この圧縮空気に燃料を混合して燃焼させ、高温、高圧のガスでタービン1を回転させる。タービン1の回転力が軸6を介して発電機3に伝達され、発電機3が回転することにより発電し、この電力がインバータ8を介して出力される。タービン1を回転させた後のガスは比較的高温であるため、このガスを再生器5に送り込んで燃焼前の圧縮空気との間で熱交換を行うことで、燃焼後のガスの熱を再利用する。再生器5で熱交換を終えたガスは、排熱回収装置9を通ってから排ガスとして排出される。
図2に、ロータの支持構造、特に、タービン1と圧縮機2との軸方向間における軸6の支持構造を示す。この領域は高温、高圧のガスで回転されるタービン1に隣接しているため、ここでは空気動圧軸受、特にフォイル軸受が好適に使用される。具体的には、ラジアルフォイル軸受10により軸6がラジアル方向に支持されると共に、一対のスラストフォイル軸受20により軸6に設けられたスラストカラー6aが両スラスト方向に支持される。
ラジアルフォイル軸受10は、例えばリーフ型のフォイル軸受で構成される。本実施形態では、図3に示すように、内周に軸6が挿入され、ハウジング50に固定された円筒状の外方部材11と、外方部材11の内周面11aに固定され、円周方向等間隔に配された複数のフォイル12とで構成される。
フォイル12は、ばね性に富み、かつ加工性のよい金属、例えば鋼材料や銅合金からなる厚さ20μm~200μm程度の箔材で形成される。本実施形態のように流体膜として空気を用いる空気動圧軸受では、雰囲気に潤滑油が存在しないため、油による防錆効果は期待できない。この場合、フォイル12としては、ステンレス鋼もしくは青銅製のものを使用するのが好ましい。
各フォイル12は、軸6の回転方向(図3の矢印参照)下流側の端部12aが自由端とされ、回転方向上流側の端部12bが外方部材11に固定される。フォイル12の上流側の端部12bは、外方部材11の内周面11aに形成された軸方向溝11bに嵌合固定される。フォイル12の下流側の端部12aを含む領域は、下流側に隣接するフォイル12の上(内径側)に重ねて配され、この領域の内径側の面がラジアル軸受面12cとなる。各フォイル12に形成されたラジアル軸受面12cと軸6の外周面6bとの間には、下流側へ向けて半径方向幅を狭めた楔状のラジアル軸受隙間Grが形成される。
スラストフォイル軸受20は、軸6をスラスト方向に支持するものであり、図示例では、軸6に設けられたスラストカラー6aの軸方向両側に、それぞれスラストフォイル軸受20が配される(図2参照)。
スラストフォイル軸受20は、図4に示すように、フォイルホルダ21と、フォイルホルダ21の端面に周方向に並べて取り付けられた複数のフォイル22と、フォイル22をフォイルホルダ21に固定する固定部材23とを備える。
フォイルホルダ21は、円盤状をなし、軸心に軸6が挿通される貫通孔が形成される(図5参照)。フォイルホルダ21の、スラストカラー6aと対向する端面に、複数のフォイル22が取り付けられる。
図4に示すように、フォイル22は、フォイルホルダ21の周方向(すなわち、軸6の回転方向)に等ピッチで配置される。図5は、周方向に並べた複数のフォイル22のうち、一つのフォイル22のみを図示して他のフォイルの図示を省略したものである。同図に示すように、各フォイル22は、後述するトップフォイル部Tfおよびバックフォイル部Bfを構成する本体部22aと、本体部22aから外径側に延びる延在部22bとを一体に備える。
フォイル22の本体部22aは、回転方向(図4、5の矢印方向)の下流側端部の縁(下流端縁)22cと、回転方向の上流側端部の縁(上流端縁)22dと、下流端縁22cおよび上流端縁22dの内径端同士を接続する内径端縁22eと、下流端縁22cおよび上流端縁22dの外径端同士をつなぐ外径端縁22fとを有する。図示例では、各フォイル22の内径端縁22eおよび外径端縁22fの双方が軸心を中心とする円弧で形成されている。下流端縁22cは、半径方向中間部を下流側に突出させた凸形状をなし、上流端縁22dは、半径方向中間部を下流側に凹ませた凹形状をなしている。図示例では、下流端縁22cおよび上流端縁22dが同形状の曲線であるため、一枚のフォイルから複数のフォイル22を効率よく切り出すことができる。
延在部22bは、本体部22aから外径側に延びている。フォイルホルダ21の端面上に複数のフォイル22を周方向に並べて配し、各フォイル22の延在部22bの外径部分(図5にクロスハッチングで示す領域)をフォイルホルダ21と固定部材23とで挟み込み、これらをボルト等で締め付け固定することで、各フォイル22がフォイルホルダ21に固定される(図4参照)。
フォイル22は、ラジアルフォイル軸受10のフォイル12と同様の材質で形成される。フォイル22の材質の具体例はフォイル12と同様であるため、説明を省略する。
なお、図4、5には、スラストカラー6aの軸方向一方側に配されたスラストフォイル軸受20を示している。スラストカラー6aの軸方向他方側に配されたスラストフォイル軸受20は、軸受面側から見た平面図が図4、5と鏡像対称であり、同図における軸6の回転方向(矢印)が逆向きであることを除いて、上記のスラストフォイル軸受20と同様の構成を有する。
図6に示すように、スラストフォイル軸受20の各フォイル22は、フォイルホルダ21の端面21a上に、概ね半ピッチずつ位相をずらしながら周方向に並べて配置されている。各フォイル22の下流端縁22cを含む領域は、下流側に隣接するフォイル22の上(スラストカラー6a側)に乗り上げ、この領域がトップフォイル部Tfを構成する。また、各フォイル22の上流端縁22dを含む領域は、上流側に隣接するフォイル22のトップフォイル部Tfの下(フォイルホルダ21側)に配され、この領域が、当該トップフォイル部Tfを背後から弾性的に支持するバックフォイル部Bfを構成する。各フォイル22のトップフォイル部Tfの表面に、スラストカラー6aの一方の端面6a1と対向するスラスト軸受面Sが形成される。
図6では、隣接する任意の3枚のフォイル22を、それぞれフォイル22(1)、22(2)、22(3)と表す。これらの3枚のフォイルのうち、最も上流側のフォイル22(1)の下流端縁22c(1)と最も下流側のフォイル22(3)の上流端縁22d(3)との間には、回転方向(周方向)の隙間Cが設けられる。本実施形態では、隙間Cが半径方向全域で均一に設けられる。上記のような隙間Cを設けることにより、各フォイル22の下流側端部(下流端縁22cおよびその近傍)のバネ性が高められ、この部分の剛性を小さくすることができる。上記の隙間Cを大きくしすぎると、フォイル22の下流側端部のバネ性が過度に低下して、負荷容量が不足するおそれがある。従って、上記の隙間Cは、0<C≦2mmの範囲とすることが好ましい。
スラストフォイル軸受20は、以下の手順で製作することができる。まず、図7(A)及び(B)に示すような同形状の2枚のフォイル部材60を製作する(図7~10では、理解しやすいように、一方のフォイル部材60に散点を付して示している)。各フォイル部材60には、複数のフォイル22と、その外径端を連結する環状の連結部61とが一体に形成される。各フォイル部材60には、スラストフォイル軸受20に組み込まれるフォイル22の半数のフォイル22が周方向に沿って等間隔に設けられる。隣接するフォイル22の本体部22aは切り込み62で分断され、隣接するフォイル22の延在部22bの周方向間には空間63が設けられる。各フォイル22の延在部22bは、接合部61aを介して連結部61に一体化されている。
次に、図8に示すように、一方のフォイル部材60と他方のフォイル部材60を重ねる。この際、二枚のフォイル部材60をフォイル22の半ピッチ分だけずらした状態とし、一方のフォイル部材60の各フォイル22(本体部22a)の下流側部分を、切り込み62を介して他方のフォイル部材60のフォイル22(本体部22a)の上流側部分の上に配置する。
その後、上記のように仮組みした2枚のフォイル部材60を、フォイルホルダ21の端面21a上に配置する(図9参照)。このとき、各フォイル22の延在部22bの外径端が、フォイルホルダ21の端面21aの外径端に沿って配される。また、フォイル部材60の連結部61は、フォイルホルダ21よりも外径側に配される。この状態で、図10に示すように、フォイルホルダ21と固定部材23とで各フォイル22の延在部22bを挟持し、フォイルホルダ21と固定部材23を図示しないボルト等により固定する。これにより、各フォイル22がフォイルホルダ21に固定され、フォイル軸受の中間製造体80が完成する。
その後、フォイルホルダ21および固定部材23よりも外径側に食み出た接合部61aを切断し、連結部61を各フォイル22から分離する。以上により、図4に示すスラストフォイル軸受20が完成する。
以上のようなラジアルフォイル軸受10およびスラストフォイル軸受20で支持された軸6が回転すると、ラジアルフォイル軸受10のフォイル12のラジアル軸受面12cと軸6の外周面6bとの間のラジアル軸受隙間Grに空気膜が形成され、この空気膜を介して軸6がラジアル方向に非接触支持される(図3参照)。これと同時に、各スラストフォイル軸受20のフォイル22のスラスト軸受面Sと、これに対向するスラストカラー6aの端面との間のスラスト軸受隙間Gtに空気膜が形成され、この空気膜を介してスラストカラー6aが両スラスト方向に非接触支持される(図6参照)。
このとき、ラジアルフォイル軸受10のフォイル12及びスラストフォイル軸受20のフォイル22の有する可撓性により、各フォイル12、22の軸受面が、荷重や軸6の回転速度、周囲温度等の運転条件に応じて任意に変形するため、ラジアル軸受隙間Gr及びスラスト軸受隙間Gtは運転条件に応じた適切幅に自動調整される。そのため、高温、高速回転といった過酷な条件下でも、ラジアル軸受隙間Gr及びスラスト軸受隙間Gtを最適幅に管理することができ、軸6を安定して支持することが可能となる。尚、実際のラジアル軸受隙間Grおよびスラスト軸受隙間Gtの幅は数十μm程度の微小なものであるが、図3および図6ではその幅を誇張して描いている。
また、本実施形態では、スラストフォイル軸受20のフォイル22の上流端縁22dが、半径方向中間部を下流側に凹ませた凹形状(ヘリングボーン形状)であるため、その上に重ねられたフォイル22のトップフォイル部Tfに、凹形状の上流端縁22dに倣った段差が形成される。軸6の回転に伴って下流側に流れるスラスト軸受隙間Gtの空気が、上記の段差に沿って半径方向中央領域に引き込まれることで、スラスト軸受隙間Gtの空気圧が高まりやすくなり、スラストフォイル軸受20の負荷容量を高めることができる。
以下、本発明の特徴的構成である、スラストフォイル軸受20のフォイル22の端部の構成について説明する。
スラストフォイル軸受20の各フォイル22の下流側の端部(下流端縁22cおよびその近傍)には、下流端縁22cと反対側(本実施形態では上流側)に隣接する領域よりも肉厚の薄い薄肉部22gが設けられる(図5に、薄肉部22gとその上流側に隣接する領域との境界を点線で示す)。本実施形態では、薄肉部22gが、各フォイル22の下流端縁22cの全域に設けられる。各フォイル22のうち、薄肉部22gを除く領域は、肉厚が一定である。薄肉部22gを含むトップフォイル部Tfの全域に、軸受面Sが形成される。
薄肉部22gの形状の具体例を、図11(A)~(F)に示す。これらの例では、薄肉部22gの肉厚が、下流端縁22cに近づくほど徐々に薄くなっている。図11(A)~(C)に示す例では、薄肉部22gが厚さ方向で非対称形状を成している。具体的に、薄肉部22gの軸受面S側の面(図11の上面)に、下流端縁22cに近づくにつれてスラストカラー6aから離反する側(図11の下方)に変位した傾斜面が設けられる。例えば、このような傾斜面として、下に凸の凹曲面{図11(A)参照}や、上に凸の凸曲面{図11(B)参照}、あるいは平坦な傾斜面{図11(C)参照}が形成される。薄肉部22gの軸受面Sと反対側の面(図11の下面)は、上流側に隣接する領域と連続した平坦面で構成される。
図11(D)~(F)に示す例では、薄肉部22gが厚さ方向で対称形状を成している。具体的に、薄肉部22gの厚さ方向両側の面に、下流端縁22cに近づくにつれてフォイル22の厚さ方向中央側に変位した傾斜面が設けられる。例えば、このような傾斜面として、厚さ方向中央側に凸の凹曲面{図11(D)参照}や、厚さ方向外側に凸の凸曲面{図11(E)参照}、あるいは平坦な傾斜面{図11(F)参照}が形成される。このように、薄肉部22gが厚さ方向で対称形状であれば、フォイル22を表裏反転させることで、回転方向が逆向きのスラストフォイル軸受に使用することができる。すなわち、スラストカラー6aの両側に設けられた一対のスラストフォイル軸受20(図2参照)に、共通のフォイル22を使用することができる。
薄肉部22gの幅(下流端縁22cの延在方向と直交する方向の寸法)Aが大きすぎると、スラスト軸受面Sの下流側端部の剛性が過小となり、負荷容量が不足するおそれがある。このため、薄肉部22gの幅Aは1mm以下とすることが好ましい。
なお、薄肉部22gは、図5に示すように各フォイル22の下流側端部の全域に設ける他、各フォイル22の下流側端部の一部領域、例えば、下流端縁22cの頂部(最も下流側に配された部分)を含む一部領域に設けてもよい。また、薄肉部22gの幅Aや肉厚を場所によって異ならせてもよい。
軸6の回転時には、図6に示すように、各フォイル22の下流側端部が最もスラストカラー6aに接近する。本実施形態では、各フォイル22の下流側端部に薄肉部22gを設けることで、この領域の剛性{スラストカラー6aから遠ざかる側(図6の下側)への変位しにくさ}を低下させている。これにより、スラスト軸受隙間Gtの空気膜の圧力により、各フォイル22の下流側端部(薄肉部22g)が容易に変位してスラストカラー6aから遠ざかるため、各フォイル22の下流側端部とスラストカラー6aとの接触を防止することができる。この場合、各フォイル22の薄肉部22gの厚さを調整するだけで、各フォイル22の下流側端部の剛性を調整することができるため、各フォイル22の軸受面Sの面積は変わらず、負荷容量が維持される。
また、図示例では、薄肉部22gの肉厚が、下流端縁22c側(図11の左側)ほど薄くなっている。これにより、薄肉部22gの上流側部分(下流端縁22cから離れた領域)の肉厚を厚めにしてこの部分の剛性をある程度確保することができる。このため、薄肉部22gの上流側部分が、スラスト軸受隙間Gtの流体圧で屈曲することを防止することができる。
図6に示すように、本実施形態では、隣接する3枚のフォイル22(1),22(2),22(3)のうち、最も上流側のフォイル22(1)の下流端縁22c(1)と最も下流側のフォイル22(3)の上流端縁22d(3)との間に周方向の隙間Cを設けることで、各フォイル22の下流側端部の剛性を低下させている。しかし、この隙間Cが大きすぎると、負荷容量が低下するため好ましくない。本実施形態では、上記のようにフォイル22の薄肉部22gの厚さでバネ性を低下させているため、上記の隙間Cを小さくすることができ、例えばC≦0.5mmとすることができる。なお、特に必要が無ければ、上記の隙間Cを省略してもよい。
次に、上記のような薄肉部22gを有するフォイル22の製造方法、特にフォイル部材60(図7参照)の加工方法について説明する。
フォイル部材60は、一枚の箔材(フォイル)から形成される。箔材の加工方法としては、例えばワイヤーカットやレーザ加工が挙げられるが、何れの加工方法でも加工面にバリが発生する。フォイル22に形成されたバリが脱落してスラスト軸受隙間Gtに混入すると、最悪の場合、フォイル22の破損を招くおそれがある。また、ワイヤー径やレーザ径には制約があるため、フォイル22間の切り込み62の幅(すなわち、図6に示すスラストフォイル軸受20のフォイル22間の回転方向隙間C)は、それ程小さくすることはできない。
そこで、箔材にエッチングを施してフォイル部材60を形成することが好ましい。エッチングは、箔材の不要部分を溶解する加工方法であり、加工面にバリが発生しない。また、エッチングでは、箔材のうち、除去しない面にマスキングを施すだけで、所望の形状のフォイル部材60が得られるため、フォイル22間の切り込み62の幅(すなわち、図6の隙間Cの大きさ)を自由に設定することができる。
本実施形態では、箔材にマスキングを施してエッチングすることにより、図7に示す形状を有するフォイル部材60を形成する。このときのフォイル部材60は、全域で肉厚が均一である。その後、フォイル部材60のうち、各フォイル22の薄肉部22gの形成領域(図5参照)を除く全ての領域にマスキングを施して、エッチングすることにより、各フォイル22の下流端端部に薄肉部22gを形成する。エッチングで加工した薄肉部22gの表面には、通常、図11(A)あるいは(D)に示すような凹曲面が形成される。フォイルに対して片面のみからエッチングを施すことで、図11(A)に示すような凹曲面が設けられ、フォイルに対して両面からエッチングを施すことで、図11(D)に示すような凹曲面が設けられる。
なお、薄肉部22gは、エッチングに限らず、型成形(プレス成形)や機械加工により形成することもできる。図11(B),(C),(E),(F)に示すような断面形状の薄肉部22gは、型成形や機械加工で形成する他、エッチングの処理条件を工夫して形成することもできる。
本発明の上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
スラストフォイル軸受20は、起動停止の際にフォイル22の軸受面Sとスラストカラー6aとが摺動する。そこで、各フォイル22の軸受面Sに潤滑被膜を設けることで、軸受面Sの摺動性が高められる。例えば、図12(A)や図12(B)に示す例では、各フォイル22が、基材24と、基材24の表面に形成された潤滑被膜25とを有し、潤滑被膜25に軸受面Sが設けられる。潤滑被膜25は、フォイル22の本体部22aのうち、少なくとも下流側端部に設けられ、例えば、トップフォイル部Tf(軸受面S)の全域に設けられる。
潤滑被膜25としては、樹脂系バインダーを用いたものや、無機系バインダーを用いたものを使用することができる。潤滑被膜25に求められる機能として、スラストカラー6aに対する摺動性(低摩擦性)や、フォイル22の基材24との密着性が挙げられる。樹脂系バインダーを用いた潤滑被膜25は、基材24との密着性や耐摩耗性に優れているが、被膜厚さの影響によりフォイル22の基材24の元々の特性(可撓性)を変えてしまい、それによりフォイル22の追従性が低下する場合がある。一方、無機系バインダーを用いた潤滑被膜25は、フォイル22の基材24の特性を変化させにくいが、基材24との密着性が低く、基材24から剥がれやすいという問題がある。
そこで、本実施形態では、各フォイル22の薄肉部22gにおける基材24の表面の面粗度を、上流側に隣接する領域における基材24の表面の面粗度よりも大きくした。具体的には、例えば、薄肉部22gをエッチングで加工することにより、薄肉部22gの表面の面粗度は、エッチングを施していない面の面粗度よりも大きくなる。従って、図7に示す形状の基材(フォイル部材60)を形成した後、各フォイル22の下流側端部のみにエッチングを施すことにより、この領域に薄肉部22gを形成すると同時に、この領域の基材24の表面を粗面化して無数の微小凹部24aを形成することができる。こうして形成された微小凹部24aに、潤滑被膜25の一部が入り込むことにより、基材24と潤滑被膜25との密着性が改善される。
スラストフォイル軸受20をガスタービンに組み込んだ後、慣らし運転を行うことにより、各フォイル22の軸受面Sとスラストカラー6aとが摺動し、フォイル22の下流側端部を含む領域に荷重が加わる。この荷重により、余分な潤滑被膜25が削り取られて潤滑被膜25の厚さのバラつきが低減されると共に、フォイル22の薄肉部22gの基材24の表面に形成された微小凹部24aに潤滑被膜25が押し込まれ、基材24と潤滑被膜25との密着性が高められる。なお、樹脂系バインダーを用いた潤滑被膜25も使用可能であるが、被膜が硬く、慣らし運転に時間がかかるため、生産性の面でも無機系バインダーを用いた潤滑被膜25が有利である。
以上の実施形態では、スラストフォイル軸受20の各フォイル22の下流側端部に薄肉部22gを設けた場合を示したが、薄肉部22gを設ける場所はこれに限られない。例えば、各フォイル22の内径側端部(内径端縁22eおよびその近傍)に薄肉部22gを設けてもよい。あるいは、各フォイル22の下流側端部および内径側端部の双方に薄肉部22gを設けてもよい。
また、上記のスラストフォイル軸受は一例であり、フォイルやフォイルホルダの構成を上記と異ならせてもよい。例えば、上記の実施形態では、ラジアルフォイル軸受10の複数のフォイル12を一つずつ別体に形成しているが、複数のフォイル12のいくつかあるいは全部を、連結部で連結した状態で一枚のフォイルから一体に形成してもよい。また、スラストフォイル軸受20の全てのフォイル22を別体に形成した後、各フォイル22をフォイルホルダ21に取り付けてもよい。
本発明は、リーフ型のフォイル軸受に限らず、他のフォイル軸受に適用することも可能である。例えば、波型のバンプフォイルでフォイルを背後(軸受面と反対側)から支持することでフォイルにバネ性を付与する、いわゆるバンプ型のフォイル軸受に、本発明を適用することもできる。この場合、フォイルのうち、回転部材と摺動しやすい端部(例えば、下流側の端部)を含む領域に薄肉部を設けることで、この端部におけるバネ性を低下させて、回転部材との摺動を防止することができる。
また、本発明は、スラストフォイル軸受に限らず、ラジアルフォイル軸受に適用することも可能である。例えば、図3に示すラジアルフォイル軸受10の各フォイル12の下流側端部に、上流側に隣接する領域よりも薄い薄肉部を設けることができる。
6 軸
6a スラストカラー
10 ラジアルフォイル軸受
11 外方部材
12 フォイル
20 スラストフォイル軸受
21 フォイルホルダ
22 フォイル
22a 本体部
22b 延在部
22g 薄肉部
23 固定部材
24 基材
24a 微小凹部
25 潤滑被膜
60 フォイル部材
Bf バックフォイル部
Tf トップフォイル部
Gr ラジアル軸受隙間
Gt スラスト軸受隙間
S スラスト軸受面

Claims (8)

  1. 軸受面が形成されたフォイルを有するフォイル軸受において、
    前記フォイルの端部に、前記端部の縁と反対側に隣接する領域よりも肉厚が薄い薄肉部を設けたフォイル軸受。
  2. 前記薄肉部の肉厚が、前記端部の縁に近づくほど徐々に薄くなっている請求項1に記載のフォイル軸受。
  3. 前記薄肉部の、前記端部の縁の延在方向と直交する方向の寸法を1mm以下とした請求項1又は2に記載のフォイル軸受。
  4. 支持すべき回転部材の回転方向に並べて配された複数のフォイルを有し、各フォイルの下流側の端部を含む領域が、下流側に隣接するフォイルの上に重ねて配され、この領域に軸受面が形成されたフォイル軸受において、
    各フォイルの下流側の端部に、上流側に隣接する領域よりも肉厚が薄い薄肉部を設けたフォイル軸受。
  5. 隣接する3枚のフォイルのうち、最も下流側のフォイルの上流側の端部と最も上流側のフォイルの下流側の端部との間に、回転方向の隙間が形成された請求項4に記載のフォイル軸受。
  6. 前記回転方向の隙間が0.5mm以下である請求項5に記載のフォイル軸受。
  7. 前記フォイルが、基材と、前記基材の表面に形成され、前記軸受面が設けられた潤滑被膜とを有し、
    前記薄肉部における基材の表面の面粗度が、隣接する領域の基材の表面の面粗度よりも大きい請求項1~6の何れか1項に記載のフォイル軸受。
  8. 前記潤滑被膜が、無機バインダーを含む請求項7に記載のフォイル軸受。
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