JP2022147136A - トリシクロデカンジメタノールの製造方法 - Google Patents

トリシクロデカンジメタノールの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022147136A
JP2022147136A JP2021048263A JP2021048263A JP2022147136A JP 2022147136 A JP2022147136 A JP 2022147136A JP 2021048263 A JP2021048263 A JP 2021048263A JP 2021048263 A JP2021048263 A JP 2021048263A JP 2022147136 A JP2022147136 A JP 2022147136A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reaction
tricyclodecanedimethanol
hydroformylation
weight
tricyclodecane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021048263A
Other languages
English (en)
Inventor
善幸 田中
Yoshiyuki Tanaka
和志 木戸場
Kazushi Kidoba
直登 田島
Naoto Tajima
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2021048263A priority Critical patent/JP2022147136A/ja
Publication of JP2022147136A publication Critical patent/JP2022147136A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによって、高純度のトリシクロデカンジメタノールを効率的にかつ高収率で製造する方法を提供する。【解決手段】ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによってトリシクロデカンジメタノールを製造する方法において、該水素化を、特定量の水およびルテニウム触媒の存在下で行う、トリシクロデカンジメタノールの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによってトリシクロデカンジメタノールを製造するトリシクロデカンジメタノールの製造方法に関する。
ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化することにより、トリシクロデカンジカルバルデヒドを得、これを水素化(水添)することによってトリシクロデカンジメタノールを製造する方法はよく知られている。
ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応後の精製工程において、しばしば抽出による精製が行われる。例えば、特許文献1ではヒドロホルミル化反応液に、炭素数2~6の多価アルコールからなる抽出溶媒を添加して抽出する方法が記載されている。また、特許文献2では、ヒドロホルミル化反応液に第一アルカノールおよび水を添加して抽出する方法が記載されている。
このように、抽出溶媒には主にアルコールが用いられるが、アルコールはトリシクロデカンジカルバルデヒドとアセタールを形成することが知られている。しかし、アセタールは水素化による還元反応速度が著しく遅いため、トリシクロデカンジカルバルデヒド中にアセタールが混入していると、水素化によりトリシクロデカンジメタノールを製造する工程の生産性が著しく低下してしまう問題がある。また、アセタールが水素化されずにアセタール体のまま残存すると、アセタール体はトリシクロデカンジメタノールと沸点差がないことから、蒸留分離が困難であるため、最終製品であるトリシクロデカンジメタノールに残存し、その純度低下の原因となる。
特許文献1には、アセタールの生成を抑制するためにアミンを添加することが記載されているが、添加したアミンによりトリシクロデカンジメタノールが汚染されるおそれがある。
特許文献3には、水およびNi触媒の存在下、トリシクロデカンジカルバルデヒドを水素化すると、水を存在させない場合に比べてトリシクロデカンジメタノールの収率を高めることができることが記載されているが、水素化前の原料中にアセタールが含まれる場合、反応速度が非常に遅くなることから、所定の反応時間で高い収率を得ることはできない。
特開2001-10999号公報 特表平6-501958号公報 特開2005-350462号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによって、高純度のトリシクロデカンジメタノールを効率的にかつ高収率で製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らが、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、トリシクロデカンジカルバルデヒド類の水素化を、水およびルテニウム触媒の存在下で行うことにより、トリシクロデカンジカルバルデヒドの水素化反応中にアセタール化合物を速やかにトリシクロデカンジカルバルデヒドに変換し、アセタール化合物から変換したトリシクロデカンジカルバルデヒドを水素化することでトリシクロデカンジメタノールを高収率で製造することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによってトリシクロデカンジメタノールを製造する方法において、該水素化を、含水率2重量%以上の反応液中で、かつルテニウム触媒の存在下で行う、トリシクロデカンジメタノールの製造方法。
[2] 前記トリシクロデカンジカルバルデヒド類がアセタール化合物を含有する[1]に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
[3] 前記トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のトリシクロデカンジカルバルデヒドに対するアセタール化合物の割合が0.1~50重量%である[1]又は[2]に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
[4] 前記トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のトリシクロデカンジカルバルデヒドに対するアセタール化合物の割合が1~25重量%である[3]に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
[5] 前記水素化反応液中の水の含有率が10~20重量%である[1]~[4]のいずれかに記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
本発明によれば、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによってトリシクロデカンジメタノールを製造する方法において、水素化を、水およびルテニウム触媒の存在下で行うことにより、トリシクロデカンジカルバルデヒド類に含まれるアセタール化合物を水素化反応中に速やかにトリシクロデカンジカルバルデヒドに変換し、アセタール化合物から変換したトリシクロデカンジカルバルデヒドを水素化することで、トリシクロデカンジメタノールを高収率で製造することができる。
本発明では、アミン等のトリシクロデカンジメタノールの汚染物質となるような化合物を添加することなく、トリシクロデカンジカルバルデヒド類および目的物のトリシクロデカンジメタノール中のアセタール化合物を低減することができるため、不純物の少ない高純度のトリシクロデカンジメタノールを効率的に得ることができる。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明のトリシクロデカンジメタノールの製造方法は、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによってトリシクロデカンジメタノールを製造する方法において、該水素化を、水およびルテニウム触媒の存在下で行うことを特徴とする。ここで、トリシクロデカンジカルバルデヒド類とは、トリシクロデカンジカルバルデヒドとトリシクロデカンジカルバルデヒドがアセタール化したアセタール化合物とからなる混合物のことである。
<ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応>
本発明において、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化の方法には特に制限はなく、常法に従って行うことができる。
例えば、前掲の特許文献1に記載の方法に従って、炭化水素化合物からなるヒドロホルミル化反応溶媒中、ロジウム化合物および有機リン化合物からなる触媒の共存下に、水素と一酸化炭素を用いて、下記反応式(I)の通り、ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化してトリシクロデカンジカルバルデヒドを製造することができる。
Figure 2022147136000001
このヒドロホルミル化工程で使用されるロジウム化合物は有機リン化合物と錯体を形成し、水素と一酸化炭素存在下でヒドロホルミル化活性を示すものであればその前駆体の形態によらない。すなわち、Rh(acac)(CO),Rh,Rh(CO)12,Rh(CO)16,Rh(NOなどの触媒前駆体物質を有機リン化合物と共に反応混合物中に導入し反応容器内で触媒活性を持つロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を形成させてもよいし、あらかじめロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体触媒を調製してそれを反応容器内に導入してもよい。
本発明の好ましい具体例では、Rh(acac)(CO)をロジウム前駆体物質として使用して溶媒の存在下に有機リン化合物と反応させた後、過剰の遊離有機リン化合物と一緒に反応器に導入し、触媒活性を持つロジウム-有機リン錯体触媒とする。いずれにしても、本発明の目的に対しては、ヒドロホルミル化反応で使用される一酸化炭素および水素の存在する条件下で活性ロジウム-有機リン触媒が反応混合物中に存在すれば充分である。
ロジウム化合物とヒドロホルミル化反応の触媒を形成する有機リン化合物としてはホスファイトおよびホスフィンが挙げられる。このうち、ホスファイトとしては、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応に有効であることから、一般式P(-OR)(-OR)(-OR)(式中、R,RおよびRはそれぞれ置換されていてもよいアリール基又はアルキル基を表す。)で示される化合物が好ましい。R,RおよびRの具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、メトキシ基などで置換されていてもよいフェニル基およびナフチル基などのアリール基;メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの脂肪族アルキル基;メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの低級アルキル基で置換されていてもよいシクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基等が挙げられる。
好適なホスファイトの具体例としては、トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3-メトキシ-6-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2-t-ブチルフェニル)(t-ブチル)ホスファイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのホスファイトは単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用しても良い。
一方、ホスフィンとしては、特に立体障害アルキルホスフィンがジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応に有効である。その代表例としてはトリシクロプロピルホスフィン、トリシクロブチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘプチルホスフィン、トリシクロオクチルホスフィンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのホスフィンは単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用しても良い。
有機リン化合物の使用量は、ヒドロホルミル化反応液中において有機リン化合物がロジウム金属に対し1~400モル倍の範囲、好ましくは3~200モル倍の範囲で存在すれば、十分なヒドロホルミル化反応速度でトリシクロデカンジカルバルデヒドを得ることができる。ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応は、溶媒を用いずに実施することも可能であるが、反応に不活性な有機溶媒を用いるとより好適に実施できる。
後述の通り、ヒドロホルミル化反応終了後、トリシクロデカンジカルバルデヒドを含有する反応生成液をアルコールと接触させ、触媒成分をジヒドロホルミル化反応溶媒層に残したまま、トリシクロデカンジカルバルデヒドをアルコールからなる抽出溶媒層に抽出し、層分離を行う。そのためヒドロホルミル化反応溶媒はアルコールと層分離するものが好ましい。このような溶媒としては芳香族炭化水素化合物、脂肪族炭化水素化合物、脂環式炭化水素化合物が挙げられる。
芳香属炭化水素化合物としては、ベンゼンおよびトルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメンなどのメチルベンゼン類、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼンなどのエチルベンゼン類、イソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼンなどのプロピルベンゼン類、またこれら以外の各種アルキルベンゼン類も好適に使用できる。
脂肪族炭化水素化合物としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ドデカン、デカンが例示され、標準温度および圧力で液体であればこれらに限定されない。
脂環式炭化水素化合物としてはシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、デカリン、メチルシクロヘキサンなどが好適に使用される。
ロジウム触媒の使用量は、原料のジシクロペンタジエンに対して、ロジウム金属として通常50~5000ppmであり、より好ましくは50~2000ppmである。ロジウムを50ppm以上で用いる場合には、触媒の回収が必要になる。
ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応の温度および圧力は、通常40~160℃、好ましくは80~140℃の反応温度、通常1~15MPaの反応圧力である。温度が40℃より低い場合はヒドロホルミル化の反応が遅く、160℃より高い場合は反応液中におけるジシクロペンタジエンやヒドロホルミル化反応生成物からの副反応が進行しアルデヒドの収率が低下する。また、圧力が1MPaより低い場合はヒドロホルミル化の反応が遅く、15MPaより高い場合は高圧の反応装置を使用するため装置費用が高くなってしまう。
反応に用いる水素/一酸化炭素混合ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比は導入ガス組成(水素/一酸化炭素)として0.2~5.0の範囲から選ぶことができる。水素/一酸化炭素混合ガスがこの範囲を外れるとヒドロホルミル化反応の反応活性あるいはアルデヒド選択率が低下する。
ヒドロホルミル化の反応方式としては、ロジウム-有機リン錯体触媒、溶媒、及び水素と一酸化炭素との混合ガスの存在する反応器へ、原料のジシクロペンタジエン単独で、又はジシクロペンタジエンと溶媒との混合溶液として供給しながら行う連続フィード方式が採用される。この方法を用いると、反応器中でジシクロペンタジエンが熱分解してヒドロホルミル化反応を阻害するシクロペンタジエンの生成を低減でき、良好な反応速度と収率を維持できる。ジシクロペンタジエンの流動性を保持するため前述の溶媒で希釈し、これらが解重合しシクロペンタジエンを生成しない温度で反応器に供給することが好ましい。
<トリシクロデカンジカルバルデヒドの抽出>
ヒドロホルミル化反応終了後、反応生成液をそのまま、又は、ヒドロホルミル化反応溶媒として反応で使用した炭化水素化合物もしくは他の炭化水素化合物で希釈した後、アルコールと接触させて、触媒成分をヒドロホルミル化反応溶媒層に残したまま、生成物であるトリシクロデカンジカルバルデヒドをアルコールに抽出し、層分離を行う。
アルコールとしては炭素数1~3の第1級アルコールや炭素数2~6の多価アルコールが挙げられる。第1級アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、炭素数2~6の多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ペンタンジオールの各異性体、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが使用される。この中で、メタノールやエチレングリコール、プロパンジオール類、ブタンジオール類が比較的沸点が低く、価格も安く、液体として取扱もしやすいので好適に使用される。これらの抽出溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用しても良い。
また、アルコールに水を共存させて抽出を行ってもよい。水の添加によりアルデヒドや触媒成分が各層へ分配し易くなる。
ヒドロホルミル化反応に使用される反応溶媒と抽出溶媒は効果的な層分離を実現するため密度に差があるほうが好ましいが、トリシクロデカンジカルバルデヒドを含むヒドロホルミル化反応溶媒と抽出溶媒の組合わせでひとつの好適な例はメチルシクロヘキサンとエチレングリコールやメチルシクロヘキサンとメタノール、水との組合わせである。
ヒドロホルミル化反応溶媒と抽出溶媒との間のトリシクロデカンジカルバルデヒドの分配は平衡である。それに対して、触媒成分であるロジウムと有機リン化合物は実質的にヒドロホルミル化反応溶媒にのみ存在し抽出溶媒中には分析限界以下しか存在しない。用いる抽出溶媒と反応生成液との体積比率は、トリシクロデカンジカルバルデヒドの抽出溶媒に対する溶解度、抽出すべきトリシクロデカンジカルバルデヒド類の量によって決まる。例えば、分離すべきトリシクロデカンジカルバルデヒドが抽出溶媒に対し高い溶解度を示し、反応生成液に低濃度で存在する場合には、低い体積比率(抽出溶媒/反応生成液)の抽出溶媒の使用でトリシクロデカンジカルバルデヒド類の実用的抽出が可能である。生成物の濃度が高いほど、反応生成液からトリシクロデカンジカルバルデヒド類を抽出するための体積比率(抽出溶媒/反応生成液)は高くなる。トリシクロデカンジカルバルデヒド類が抽出溶液に比較的低い溶解度を示す場合は、体積比率は10:1~1:10の範囲で変動し得る。また、少ない抽出溶媒使用量でトリシクロデカンジカルバルデヒドの抽出量を多くするため、抽出溶媒を分け、数回の抽出操作を行うことが有効である。また、最終段階の抽出操作では、メチルシクロヘキサン等のヒドロホルミル化反応溶媒を反応生成液に対して5~20重量%程度添加してもよく、ヒドロホルミル化反応溶媒の添加で触媒の除去率を向上させることができる。
抽出操作を行う温度は特に制限はないが、ヒドロホルミル化反応温度以下で実施するのが実用的である。ヒドロホルミル化反応器に反応後、抽出溶媒を添加し抽出操作を実施してもよいし、ヒドロホルミル化反応器からヒドロホルミル化反応生成液を抜出し、抽出槽で操作を実施してもよい。ヒドロホルミル化反応器に直接抽出溶媒を添加し抽出操作を実施し、触媒成分をヒドロホルミル化反応器にそのまま保持して次のヒドロホルミル化反応を実施することもできる。ヒドロホルミル化反応生成液を抜出し、抽出槽で操作を実施する場合は、触媒を含有する炭化水素溶媒層はヒドロホルミル化反応器に戻され、再度反応に使用される。本プロセスは、バッチプロセスでも連続プロセスでも実施可能である。
上記のような抽出操作では、トリシクロデカンジカルバルデヒド類10~90重量%、抽出溶媒10~90重量%、反応溶媒を添加した場合はトリシクロデカンジカルバルデヒド類5~90重量%、抽出溶媒5~90重量%、反応溶媒5~90重量%のトリシクロデカンジカルバルデヒド含有溶液を得ることができる。なお、抽出溶媒のアルコールは、ヒドロホルミル化生成物であるトリシクロデカンジカルバルデヒドの一部と反応してトリシクロデカンジカルバルデヒドをアセタール化したアセタール化合物を生成する。
トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のアセタール化合物の含有率は、通常0.1~50重量%程度であり、更に1~25重量%程度である。
<水素化反応>
上記の抽出操作により得られたトリシクロデカンジカルバルデヒド類を含む抽出液(トリシクロデカンジカルバルデヒド含有溶液)は、次いで、水およびルテニウム(Ru)触媒の存在下に水素化を行って、下記反応式(II)の通り、トリシクロデカンジメタノールを製造する。
Figure 2022147136000002
Ru触媒としては、Ru金属単体であってもよく、Ru酸化物等のRu化合物であってもよく、これらがシリカやアルミナ、ケイソウ土やカーボンなどの無機担体に担持された形態、あるいはRu錯体などの形態でも使用できる。
水素化反応において存在する水は、水素化反応液中のアセタール化合物量以上であって、反応液が相分離しない量であることが好ましく、反応液全体に対して含水率が2重量%以上、好ましくは2~30重量%、更に好ましくは5~25重量%、特に10~20重量%とすることが好ましい。含水量が前記範囲である場合、水と反応溶媒とが層分離することなく、また、本発明において、水素化反応系に水を存在させることによる前述の効果を有効に得ることができる。本発明においては、ヒドロホルミル化反応生成液からの触媒成分とジアルデヒド類の分離を行う抽出工程で水を添加してもよいし、水素反応直前に反応系に水を添加してもよい。
反応形態としては、撹拌式反応器に触媒をスラリーとして仕込み、回分式で反応を実施し、反応後触媒を沈降濾過し生成液と分離する方法や、成形された触媒を管型反応器に仕込み、生成液と水素ガスを触媒上に流す灌液型反応が適時採用される。使用される触媒量は工業的に有利な生産性でトリシクロデカンジメタノールを製造できれば特に制限はない。
水素化反応の反応温度および圧力は通常40~200℃、好ましくは70~150℃の温度、および通常10MPa以下の反応圧力である。温度が40℃より低い場合は水素化反応が遅く、200℃より高い場合は目的物であるトリシクロデカンジメタノールからの副反応が進行しトリシクロデカンジメタノールの収率が低下する。また、圧力が10MPaより高い場合は高圧の反応装置を使用するため装置費用が高くなってしまう。
このようにして得られたトリシクロデカンジメタノールを含む粗反応液は、容易なハンドリング操作により回収、精製を行うことができる。例えば溶媒を留去して得られた粗生成物から薄膜蒸発、蒸留などの操作によりトリシクロデカンジメタノールを分離精製することで製品とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
<ヒドロホルミル化反応>
ステンレス鋼オートクレーブにRh(acac)(CO) 50.1mg(0.194mmol)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト3.78g(5.83mmol)、ジシクロペンタジエン91.7g、メチルシクロヘキサン62.4gを窒素雰囲気下で仕込んだ。オートクレーブを密栓後、電気炉にて70℃に加熱したのち、ガス導入バルブより速やかに水素・一酸化炭素混合ガス(混合比:1/1)をオートクレーブ内の圧力が5MPaとなるまで導入し、上下式撹拌機により撹拌をしながら、0.5時間反応させた。その後電気炉で100℃まで加熱し、さらに1.5時間反応させた。なお、反応中は反応で消費された分の混合ガスは自動調圧弁を介して自動的にオートクレーブ内に導入され、常にオートクレーブ内の圧力は5MPaを維持するようにして反応を実施した。
反応終了後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧し191.1gのヒドロホルミル化反応生成液を得た。ガスクロマトグラフィーにて反応生成液を解析した結果、トリシクロデカンジカルバルデヒドの収率は98%であった。
<抽出操作>
上記で得られたヒドロホルミル化反応生成液77.8gに対し、エチレングリコール46.3gを加え、窒素雰囲気下撹拌した。その後、10分静置し2相に分離させ抽出操作を行った。得られた下相(a1)にメチルシクロヘキサンを7.0g加え撹拌した。その後、10分静置し2相に分離させ抽出操作を行い103gの下相(a2)を得た。
ガスクロマトグラフィーにより分析したところ得られた下相(a2)の組成は、トリシクロデカンジカルバルデヒド類48重量%、エチレングリコール45重量%、メチルシクロヘキサン7重量%であった。
また、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のアセタール化合物の含有率は、トリシクロデカンジカルバルデヒドに対して23重量%であった。
<水素化反応>
ステンレス鋼オートクレーブに、抽出操作によって得られた下層(a2)22.7g、水5.2g、Ru/C(Ru含有率5重量%、含水率57.6重量%)を0.55g仕込んだ(反応液中の水の含有率は18重量%)。オートクレーブを密栓後、電気炉にて100℃に加熱したのち、ガス導入バルブより速やかに水素ガスをオートクレーブ内の圧力が5MPaとなるまで導入し、誘導撹拌機による撹拌をしながら、1時間反応させた。なお、反応中は反応で消費された分の水素ガスは自動調圧弁を介して自動的にオートクレーブ内に導入され、常にオートクレーブ内の圧力は5MPaを維持するようにして反応を実施した。
反応終了後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧して反応生成液24.2gを得た。ガスクロマトグラフィーにて反応生成液を解析した結果、トリシクロデカンジメタノールの収率は96%であった。また、トリシクロデカンジメタノールに対するアセタール化合物の比率は1重量%であった。
[実施例2]
<抽出操作>
実施例1で得られたヒドロホルミル化反応生成液116.0gに対し、メタノール31.5g、水18.0gを加え、窒素雰囲気下撹拌した。その後、10分静置し2相に分離させ抽出操作を行った。得られた下相(b1)にメチルシクロヘキサンを2.2g加え撹拌した。その後、10分静置し2相に分離させ抽出操作を行い136gの下相(b2)を得た。実施例1におけると同様に分析を行ったところ、得られた下相(b2)の組成はトリシクロデカンジカルバルデヒド類56重量%、メタノール23重量%、水13重量%、メチルシクロヘキサン7重量%であった。また、トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のアセタール化合物の含有率はトリシクロデカンジカルバルデヒドに対して8重量%であった。
<水素化反応>
ステンレス鋼オートクレーブに、抽出操作によって得られた下層(b2)97.5g、Ru/C(Ru含有率5重量%、含水率57.6重量%)を1.15g仕込んだ(反応液中の含有率は13重量%)。オートクレーブを密栓後、電気炉にて120℃に加熱したのち、ガス導入バルブより速やかに水素ガスをオートクレーブ内の圧力が5MPaとなるまで導入し、誘導撹拌機による撹拌をしながら、2時間反応させた。なお、反応中は反応で消費された分の水素ガスは自動調圧弁を介して自動的にオートクレーブ内に導入され、常にオートクレーブ内の圧力は5MPaを維持するようにして反応を実施した。水素ガスの消費が止まり、反応が終了したことを確認後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧した後、ガスクロマトグラフィーにて反応生成液を解析した。その結果、トリシクロデカンジメタノールの収率は96%であった。また、アセタール化合物は残存していなかった。
[比較例1]
実施例1における水素化反応において、Ru/Cの代わりにラネーニッケルを用いて以下の通り同様の操作を行った。
25重量%水酸化ナトリウム水溶液15.9gにラネーニッケル2.5gを0℃の冷却下少量ずつ添加した。全量添加後、50℃で50分加熱した。室温まで冷却後、得られた固体を水で洗浄液が中性になるまで洗浄した。
ステンレス鋼オートクレーブに、得られたラネーニッケル、抽出操作によって得られた下層25.3g、水5.2gを仕込んだ。オートクレーブを密栓後、電気炉にて100℃に加熱したのち、ガス導入バルブより速やかに水素ガスをオートクレーブ内の圧力が5MPaとなるまで導入し、誘導撹拌機による撹拌をしながら、1時間反応させた。なお、反応中は反応で消費された分の水素ガスは自動調圧弁を介して自動的にオートクレーブ内に導入され、常にオートクレーブ内の圧力は5MPaを維持するようにして反応を実施した。
反応終了後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧して反応生成液24.6gを得た。ガスクロマトグラフィーにて反応生成液を解析した結果、トリシクロデカンジメタノールの収率は84%となった。また、トリシクロデカンジメタノールに対するアセタール化合物の比率は17重量%であった。
[比較例2]
実施例1において、反応液の含水率が本願の規定の範囲未満である条件で以下の通り反応を行った。
ステンレス鋼オートクレーブに、抽出操作によって得られた下層25.2g、Ru/C(Ru含有率5重量%、含水率57.6重量%)を0.55g仕込んだ(反応液の含水率は1.2重量%)。オートクレーブを密栓後、電気炉にて100℃に加熱したのち、ガス導入バルブより速やかに水素ガスをオートクレーブ内の圧力が5MPaとなるまで導入し、誘導撹拌機による撹拌をしながら、1時間反応させた。なお、反応中は反応で消費された分の水素ガスは自動調圧弁を介して自動的にオートクレーブ内に導入され、常にオートクレーブ内の圧力は5MPaを維持するようにして反応を実施した。
反応終了後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧して反応生成液24.2gを得た。ガスクロマトグラフィーにて反応生成液を解析した結果、トリシクロデカンジメタノールの収率は69%であった。また、トリシクロデカンジメタノールに対するアセタール化合物の比率は40重量%であった。
以上の実施例1,2と比較例1,2の結果から、本発明によれば、トリシクロデカンジカルバルデヒド類の水素化反応において、Ru触媒と水の存在下に反応を行うことで、水素化反応中にアセタール化合物を速やかにトリシクロデカンジカルバルデヒドに変換し、アセタール化合物から変換したトリシクロデカンジカルバルデヒドを水素化することでトリシクロデカンジメタノールを高収率で製造することができることが分かる。
これに対して、Ru触媒ではなくNi触媒を用いた比較例1や、反応液の含水率が本願の規定の範囲未満である比較例2では、このような効果は得られない。

Claims (5)

  1. ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化によって得られるトリシクロデカンジカルバルデヒド類を水素化することによってトリシクロデカンジメタノールを製造する方法において、該水素化を、含水率2重量%以上の反応液中で、かつルテニウム触媒の存在下で行う、トリシクロデカンジメタノールの製造方法。
  2. 前記トリシクロデカンジカルバルデヒド類がアセタール化合物を含有する請求項1に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
  3. 前記トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のトリシクロデカンジカルバルデヒドに対するアセタール化合物の割合が0.1~50重量%である請求項1又は2に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
  4. 前記トリシクロデカンジカルバルデヒド類中のトリシクロデカンジカルバルデヒドに対するアセタール化合物の割合が1~25重量%である請求項3に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
  5. 前記水素化反応液中の水の含有率が10~20重量%である請求項1~4のいずれか1項に記載のトリシクロデカンジメタノールの製造方法。
JP2021048263A 2021-03-23 2021-03-23 トリシクロデカンジメタノールの製造方法 Pending JP2022147136A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021048263A JP2022147136A (ja) 2021-03-23 2021-03-23 トリシクロデカンジメタノールの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021048263A JP2022147136A (ja) 2021-03-23 2021-03-23 トリシクロデカンジメタノールの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022147136A true JP2022147136A (ja) 2022-10-06

Family

ID=83462899

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021048263A Pending JP2022147136A (ja) 2021-03-23 2021-03-23 トリシクロデカンジメタノールの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022147136A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP4340004A1 (en) 2022-09-15 2024-03-20 Resonac Corporation Sic epitaxial wafer and method for manufacturing sic epitaxial wafer

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP4340004A1 (en) 2022-09-15 2024-03-20 Resonac Corporation Sic epitaxial wafer and method for manufacturing sic epitaxial wafer

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US3687981A (en) Process for making a dioxane
EP1065194B2 (en) Production of tricyclodecane dicarbaldehyde, pentacyclopentadecane dicarbaldehyde and corresponding dimethanols
JP5396470B2 (ja) ネオペンチルグリコールの製造方法
WO2015147242A1 (ja) ノルボルナン骨格を有する二官能性化合物およびその製造方法
EP3696160B1 (en) Extraction process for high-boiling aldehyde product separation and catalyst recovery
KR20180117656A (ko) 테르피넨-4-올의 제조 방법
JP7250039B2 (ja) ノルマルブタノール、イソ-ブタノール、及び2-アルキルアルカノールを供給する方法
KR101200288B1 (ko) Tcd-알코올 dm의 제조방법
JP4573003B2 (ja) トリシクロデカンジメタノール及び/又はペンタシクロペンタデカンジメタノールの製造法
CN1890203A (zh) 制备三环癸烷二醛的方法
KR20190072568A (ko) 2-알킬알칸올의 제조 방법
GB2046251A (en) Process for producing polycylinic diols
JP2022147136A (ja) トリシクロデカンジメタノールの製造方法
US7638656B2 (en) Hydroformylation process
US7683219B1 (en) Hydroformylation process
JP4573002B2 (ja) トリシクロデカンジカルバルデヒド及び/又はペンタシクロペンタデカンジカルバルデヒドの製造法
JP2672473B2 (ja) α−位においてアルキル残基により置換されたアルデヒドの製法
JP7501778B2 (ja) 多価アルコール類の製造方法
JP4431844B2 (ja) ジオールの製造方法
KR100231644B1 (ko) 네오펜틸글리콜의 제조 방법
JP2003146931A (ja) トリシクロデカンジカルバルデヒドおよびペンタシクロペンタデカンジカルバルデヒドの製造方法
JP2005281255A (ja) 精製アルコールの製造方法
JP7320200B2 (ja) ノルボルナン骨格を有する二官能性化合物の製造方法
JP4983879B2 (ja) ジオールの製造方法
JP4779294B2 (ja) アルコールの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231023

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240619

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240702