以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下の説明では、「データベース」、「テーブル」、「リスト」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」と呼ぶことがある。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いた場合、これらについてはお互いに置換が可能である。
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit))によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)および/またはインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit))を含んでいてもよい。
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
図1は、本実施例における債権流通システム1000の構成例を示す図である。図1に示すように、債権流通システム1000は、債権管理システム100と、サプライヤ端末200と、バイヤ端末300と、受発注履歴管理システム400とを有し、これらが一般的なネットワークNを介して接続されている。
債権管理システム100は、サプライチェーンに関する情報から未確定債権を発生させ、発生させた当該未確定債権に基づく資金化申請の可否を提示し、資金化を支援するためのシステムである。未確定債権とは、債権売却時に価格が確定していない債権であり、例えば、売掛発生前に発行され、将来的に価格が決まる未確定の債権が挙げられる。通常の債権売却では、金額が確定した確定債権を電子記録債権として金融機関に譲渡することで資金を得ることができるが、本実施例では、製品や部品、材料等の取引対象を発注する最初の段階から未確定債権として電子記録債権を発生させる。これにより、受注時点において金融の対象とすることを可能とし、更に、受注時から停止条件付きの電子記録債権を取り扱えるようになる。
「未確定債権」による資金調達は、金融機関等が提供する融資サービスの中でもABL(Asset Based Lending)とPO(Purchase Order)ファイナンスの間に位置するものであると定義することができる。ABLとは、動産/債権担保融資の事で、顧客の保有する在庫や売掛債権などの流動資産を担保して融資を行うものである。POファイナンスとは、注文書を担保に融資を受ける仕組みで、近年の電子記録債権の台頭とEDIの連携によって普及が進められている。掛け取引を慣習とする多くの企業間では、受注後に請求書等の情報から売掛を手形化し、それを金融機関や消費者金融に割引(資金化)してもらうことによって資金調達を行う方法が有る。近年はその売掛手形が電子化され、電子記録債権として割引(債権譲渡融資)や、ファクタリング(債権売却)を行うことによって資金を確保している。未確定債権との違いを明示化する為、請求金額やその価格が確定していて割引対象である債権を「確定債権」とする。
しかしながら、従来の資金調達方法では、資金力のない企業は恒常的に受注が見込めるにも関わらず、発注情報や請求書が無ければ資金を調達できず運転資金が得られないまま黒字倒産しかねないという課題が有る。この課題を鑑み、以下では、恒常的に受注が見込めるサプライチェーン上に位置するサプライヤ企業が資金調達したい時、そのサプライヤ企業に直接受注がなくても、所属しているサプライチェーンの上流で受発注が発生したことを検知した場合に未確定債権を発生させることによって、資金調達の利便性を向上させることができる。金融機関では、融資を希望する中小企業を1社ずつ審査するのではなく、サプライチェーンの活動実績を利用して融資を実現することで、融資処理業務の効率向上を図ることができる。また、未確定債権という形で、仮にでも担保を設定しておくことができるため、償還を行う際の作業効率化を見込むことができる。
以下具体的に説明するが、本実施例における債権管理システム100では、サプライチェーンの上流で発生した受発注情報から下流企業への受発注の発生を予測し、その予測結果を用いて未確定債権の発生可否を判断する。したがって、サプライチェーンの活動実態に即した未確定債権の発行可否を提示することができるようになる。債権管理システム100の具体的な構成や債権管理システム100で行われる具体的な処理については後述する。
サプライヤ端末200は、バイヤ企業から注文を受けるサプライヤ企業に設けられた端末である。サプライヤ企業には、未確定債権の発生を申請し、当該未確定債権を売却して資金を得たい企業が含まれる。
バイヤ端末300は、将来的にサプライヤ企業に発注を行う企業に設けられた端末である。バイヤ企業には、未確定債権の設定時に、期日までに上記資金を払う債務を負う債務者として、仮に設定される仮債務者となる企業が含まれる。
受発注履歴管理システム400は、サプライヤ企業とバイヤ企業との間における受発注とその履歴を管理するシステムである。
金融機関端末500は、上記未確定債権を買取る銀行等の金融機関や債権買取企業に設けられた端末である。金融機関端末500は、個人投資家が有する端末であってもよい。
図1に示したこれらのシステムや端末は、例えば、図2(コンピュータ概略図)に示すような、CPU1601と、メモリ1602と、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置1603と、CD(Compact Disk)やUSBメモリ等の可搬性を有する記憶媒体1608に対して情報を読み書きする読書装置1607と、キーボードやマウス等の入力装置1606と、ディスプレイ等の出力装置1605と、通信ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)等の通信装置1604と、これらを連結するシステムバス等の内部通信線(システムバスという)1609と、を備えた一般的なコンピュータ1600により実現できる。
各システムや装置に記憶され、あるいは処理に用いられる様々なデータは、CPU1601がメモリ1602または外部記憶装置1603から読み出して利用することにより実現可能である。また、各システムや装置が有する各機能部(例えば、受発注履歴管理システム400の受発注管理部401、債権管理システム100のサプライチェーン分析部101、未確定債権発生可否判定部102、資金化可能範囲判定部103、未確定債権生成部104、残高確認部105、確定債権生成部106、資金化履歴管理部107)は、CPU1601が外部記憶装置1603に記憶されている所定のプログラムをメモリ1602にロードして実行することにより実現可能である。
上述した所定のプログラムは、読書装置1607を介して記憶媒体1608から、あるいは、通信装置1604を介してネットワークから、外部記憶装置1603に記憶(ダウンロード)され、それから、メモリ1602上にロードされて、CPU1601により実行されるようにしてもよい。また、読書装置1607を介して、記憶媒体1608から、あるいは通信装置1604を介してネットワークから、メモリ1602上に直接ロードされ、CPU1601により実行されるようにしてもよい。
以下では、債権管理システム100や受発注履歴管理システム400が、ある1つのコンピュータにより構成される場合を例示するが、これらの機能の全部または一部が、クラウドのような1または複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して互いに通信することにより同様の機能を実現してもよい。
図3は、債権管理システム100および受発注履歴管理システム400の機能的な構成の一例を示す図である。図3では、図1に示したサプライヤ端末200、バイヤ端末300については省略している。まず、受発注履歴管理システム400について説明する。
図3に示すように、受発注履歴管理システム400は、受発注管理部401と、受発注データベース(以下、DB)402とを有している。受発注履歴管理システム400は、サプライヤ企業とバイヤ企業との間における受発注および過去の受発注履歴を管理するシステムである。
受発注管理部401は、バイヤ企業によるサプライヤ企業への発注、サプライヤ企業におけるバイヤ企業からの受注を管理する。具体的には、受発注管理部401は、バイヤ端末300から発注された発注情報と、サプライヤ端末200が受注した受注情報とを対応付けた受発注情報を、受発注DB402に格納し、蓄積する。
図4は、受発注DB402の一例を示す図である。受発注DB402は、サプライヤ企業とバイヤ企業との間の受発注情報を記憶したデータベースである。図4に示すように、受発注DB402には、時系列に、製品や部品、材料等の取引対象の注文日と、注文を識別するための注文番号と、上記取引対象の発注者(バイヤ企業)と、上記取引対象の受注者(サプライヤ企業)と、受発注の金額とが対応付けて記憶されている。これらの項目は、受発注管理部401が、様々な形式で行われる企業間の受発注情報の中から抽出して格納される。図4では、例えば、8月19日に、注文番号041で識別される、バイヤ企業B1は、サプライヤ企業Aに対して金額2000円の発注を行っている(言い換えると、サプライヤ企業Aは、バイヤ企業B1から金額2000円の受注を受けている)ことがわかる。図4で示されている受注日サイクルとは、あるバイヤ企業とあるサプライヤ企業との間で行われる受発注のサイクルである。受注日サイクルの具体的な説明については後述する。続いて、図3に戻り、債権管理システム100について説明する。
図3に示すように、債権管理システム100は、サプライチェーン分析部101と、未確定債権発生可否判定部102と、資金化可能範囲判定部103と、未確定債権生成部104と、残高確認部105と、確定債権生成部106と、資金化履歴管理部107と、未確定債権DB108と、確定債権DB109と、資金化履歴DB110と、受注サイクルDB111とを有している。債権管理システム100は、主に、受発注履歴管理システム400の受発注DB402に格納されている受発注情報から得られるサプライチェーンストリームおよびサプライチェーンネットワーク(以下、それぞれ、SCストリーム、SCネットワーク)を用いて未確定債権の発生可否を判定し、発生可能と判定した未確定債権に基づく資金化可能金額を算出し、ユーザに提示する。
SCストリームは、未確定債権に基づく資金化の申請者であるサプライヤ企業からみて直接的に受発注があるバイヤ企業のほか、さらに、当該バイヤ企業からみて直接的に受発注がある上位バイヤ企業(すなわち、上記サプライヤ企業からみて間接的に受発注があるバイヤ企業)…、のように、上記サプライヤ企業と直接的および間接的に受発注関係にある企業を繋げていった商流である。また、SCネットワークは、SCネットワークを構成するそれぞれのSCストリームの始点となる最上位のバイヤ企業からみて直接的に受発注があるサプライヤ企業のほか、さらに、当該サプライヤ企業からみて直接的に受発注がある下位サプライヤ企業(すなわち、上記バイヤ企業からみて間接的に受発注があるサプライヤ企業)…、のように、上記バイヤ企業と直接的および間接的に受発注関係にある企業を繋げていったネットワークである。上記始点となる最上位のバイヤ企業は、未確定債権に基づく資金化の申請者であるサプライヤ企業が属するSCストリームの上流に位置するバイヤ企業の中で、当該サプライヤ企業が最後に受注した日時を含む受注日サイクルよりも後の受注日サイクルに発注しているバイヤ企業であって、SCストリーム上でサプライヤ企業から時間的に最も近い企業、と言い換えてもよい。
サプライチェーン分析部101は、未確定債権に基づく資金化の申請者であるサプライヤ端末200からの処理要求に従って、受発注DB402に格納されている受発注情報を読み出して、未確定債権に基づいて資金化するための各種処理の実行指示等を行う。サプライチェーン分析部101が行う具体的な処理については、フローチャート(図9等)を用いて後述する。
未確定債権発生可否判定部102は、サプライチェーン分析部1001が上記受発注情報を読み出すと、SCストリームを生成し、SCネットワークを定義する処理等を行う。未確定債権発生可否判定部102が行う具体的な処理については、フローチャート(図10等)を用いて後述する。
資金化可能範囲判定部103は、未確定債権に基づく資金化の申請者であるサプライヤ企業が属するSCストリームの上流で受発注があるバイヤ企業があると判定された場合に、上記サプライヤ企業がバイヤ企業から過去に受注した金額と、当該バイヤ企業による上記サプライヤ企業への発注割合とにより定められる、未確定債権に基づく資金化可能範囲を算出する等の処理を行う。資金化可能範囲判定部103が行う具体的な処理については、フローチャート(図12等)を用いて後述する。
未確定債権生成部104は、資金化可能範囲判定部103により資金化可能範囲が算出されると、その内容をサプライヤ端末200に提示し、未確定債権DBに登録する。未確定債権生成部104が行う具体的な処理については、フローチャート(図9等)を用いて後述する。
残高確認部105は、金融機関端末500から、資金化履歴DB110に登録されている仮債務者についての資金化金額を資金化した旨の通知を受けると、資金化履歴DB110と確定債権DB109とを参照し、仮債務者から確定債務者となったバイヤ企業の確定債権金額から、未確定債権化され資金化済の金額を差し引き、確定債権の残高を算出し、確定債権DB109に登録する。残高確認部105が行う具体的な処理については、フローチャート(図9等)を用いて後述する。
確定債権生成部106は、資金化履歴DB110に格納されている債権者ごとに資金化金額を算出し、確定債権DB109の確定債権金額に登録する。確定債権生成部106が行う具体的な処理については、フローチャート(図9等)を用いて後述する。
資金化履歴管理部107は、サプライヤ企業が未確定債権に基づいて資金化を申請した金融機関の金融機関端末500から、実際に資金化可能であると判断された資金化金額を受信すると、その資金化金額を含む資金化に関する情報を、資金化履歴情報として資金化履歴DB110に登録する。資金化履歴管理部107が行う具体的な処理については、フローチャート(図9等)を用いて後述する。
未確定債権DB108は、発生させた未確定債権に関する情報を蓄積するデータベースである。未確定債権DB108の具体的な構成については図5を用いて後述する。
確定債権DB109は、仮債務者から確定債務者となったバイヤ企業の確定債権金額や残高を含む確定債権に関する情報を蓄積するデータベースである。確定債権DB109の具体的な構成については図6を用いて後述する。
資金化履歴DB110は、未確定債権を資金化した履歴に関する資金化履歴情報を蓄積するデータベースである。資金化履歴DB110の具体的な構成については図7を用いて後述する。
受注サイクルDB111は、注文の受注サイクルを格納したデータベースである。受注サイクルDB111の具体的な構成については図8を用いて後述する。
図5は、未確定債権DB108の構成の一例を示す図である。図5に示すように、未確定債権DB108は、未確定債権を識別するための債権番号と、当該債権番号で識別される未確定債権の発生日と、当該未確定債権の消滅期限と、当該未確定債権の仮債務者と、当該未確定債権の債権者と、当該未確定債権の金額と、当該未確定債権の金額のうち資金化可能と判定された資金化可能額とが対応付けて記憶されている。図5では、例えば、債権番号10101で識別される未確定債権は、資金化申請者であるサプライヤ企業Aを債権者として、当該サプライヤ企業Aと受発注関係があるバイヤ企業B1を仮債務者として設定され、未確定債権として2000円の金額が設定されていることを示している。この金額は、当該サプライヤ企業Aと受発注関係があるバイヤ企業B1との受発注履歴に基づいて定められる。また、当該金額に対して、後述する処理において資金化可能と判定された金額が1500円であるとして設定されている。また、当該サプライヤ企業Aに未確定債権の資金化候補を提示するための判定結果を表示した画面上で選択された日である8月22日が、当該未確定債権の発生日として設定される。消滅期限は、受注サイクルDB11に記憶される受注日サイクルに基づいて定められる(例えば、受注日サイクルの終期である9月19日)。
図6は、確定債権DB109の構成の一例を示す図である。図6に示すように、確定債権DB109は、確定債権を識別するための確定債権番号と、当該確定債権番号で識別される確定債権の発生日と、当該確定債権のもととなった注文を識別するための注文番号と、当該確定債権の金額と、当該確定債権の債権者と、当該確定債権の確定債務者と、当該確定債権の金額から上記資金化可能額を差し引いた金額である残高とが対応付けて記憶されている。図6では、例えば、確定債権番号20101で識別される確定債権は、資金化申請者であるサプライヤ企業Aを当該確定債権の債権者として、未確定債権から実際に資金化された資金化金額の合算値である2000円が設定されている。また、未確定債権が資金化されたことにより確定債権となるため、未確定債権の消滅期限と同日である9月19日に、発生日が設定されている。また、資金化された未確定債権を発生させる元となった受発注情報に含まれる注文番号が「043」として設定されている。さらに、仮債務者として設定されていたバイヤ企業B1の未確定債権が確定債権となったため、確定債務者として当該バイヤ企業B1が設定され、未だ確定していない未確定債権についての資金化金額が残高500円として算出され、設定されている。
図7は、資金化履歴DB110の構成の一例を示す図である。図7に示すように、資金化履歴DB110は、資金化済みの未確定債権を識別するための資金化済未確定債権番号と、当該資金化済未確定債権番号で識別される未確定債権を資金化した資金化日と、当該未確定債権の消滅期限と、当該未確定債権を資金化した資金化金額と、当該未確定債権の債権者(および振込先情報)と、当該未確定債権の仮債務者とが対応付けて記憶されている。図7では、例えば、資金化済未確定債権番号10101により識別される未確定債権は、8月30日に、資金化申請者であるサプライヤ企業Aによる申請に従って金融機関の金融機関端末500により実際に資金化され、その旨の通知を受けたことを示している。また、当該未確定債権は、未確定債権DB108と同様、受注サイクルDB11に記憶される受注日サイクルに基づいて定められる9月19日が消滅期限であることを示している。また、資金化申請に対して実際に資金化された金額は1500円であり、債権者は申請者であるサプライヤ企業A、仮債務者はB1として設定されている。振込先情報は、金融機関により設定される。
図8は、受注サイクルDB111の構成の一例を示す図である。図8に示すように、受注サイクルDB111は、受注サイクルを識別するためのサイクル管理番号と、当該サイクル管理番号で識別される受注サイクル(受注日サイクル)と、当該受注サイクルで発注する発注者および受注者と、当該発注および受注の金額とが対応付けて記憶されている。図8では、例えば、サイクル管理番号「11」で識別される受注日サイクルは、バイヤ企業E1、サプライヤ企業D1とした金額10000円の受発注の受注日サイクルであり、毎月20日を1つのサイクルとしている。これらの項目はあらかじめ設定されているものとするが、受発注DB402を所定のタイミング(例えば、毎月末)で解析する等して、受注日サイクルの変更などを反映させてもよい。
続いて、債権流通システム1000で行われる処理について説明する。図9は、債権流通システム1000で行われるメイン処理の処理手順を示すフローチャートである。債権管理システム100のサプライチェーン分析部101は、資金化申請者であるサプライヤ企業のサプライヤ端末200から、未確定債権の生成・登録依頼を含む処理要求を受信する(S901)。
サプライチェーン分析部101は、上記サプライヤ端末200から受信した処理要求に従って、受発注DB402に格納されている受発注情報を読み出す。処理要求には、当該サプライヤ企業の企業名等の識別情報が含まれる。サプライチェーン分析部101は、未確定債権発生可否判定部102に、処理要求したサプライヤ企業を始点とした上流の受発注情報を含むSCストリームを検索するSCストリーム検索処理を実行する指示をする(S902)。SCストリーム検索処理の具体的な処理については後述する。
続いて、未確定債権発生可否判定部102は、上記SCストリームで受発注があるバイヤ企業があるか否かを判定し(S903)、上記SCストリームで受発注があるバイヤ企業がないと判定した場合(S903;No)、当該サプライヤ企業について未確定債権を発生させることができない旨を、サプライヤ端末200に送信する(S904)。未確定債権を発生させることができない場合とは、例えば、未確定債権の発生を依頼したサプライヤ企業が、バイヤ企業と受発注がない場合、未確定債権の発生を依頼したタイミングでは始点となるバイヤ企業を特定できていない場合等である。
サプライチェーン分析部101は、上記SCストリームで受発注があるバイヤ企業があると判定した場合(S903;Yes)、資金化可能範囲判定部103に、始点となるバイヤ企業から下流の受発注情報を含むSCネットワークを検索し、未確定債権に基づく資金化可能範囲および発注割合を算出する資金化算出処理を実行する指示をする(S905)。資金化算出処理の具体的な処理については後述する。
続いて、資金化可能範囲判定部103は、受発注情報から得られる過去の取引の金額に、S905で算出した資金化可能範囲および発注割合を適用し、S905で生成依頼された未確定債権に基づく資金化可能額を算出する(S906)。当該ステップの処理についても、資金化算出処理とともに後述する。
未確定債権生成部104は、S906までの処理が行われると、S901で処理要求したサプライヤ企業のサプライヤ端末200に、未確定債権の資金化候補とその内容を示す判定結果を送信し、サプライヤ端末200は、図示しないディスプレイ等の表示装置に、当該判定結果を表示する(S907)。判定結果を示す画面例については、図14を用いて後述する。続いて、未確定債権生成部104は、上記判定結果が送信されたサプライヤ端末200から選択された未確定債権に関する債権情報を、未確定債権DB108に登録する(S908)。
資金化履歴管理部107は、上記サプライヤ企業により、上記選択された未確定債権に関する債権情報に基づいて資金化を申請した金融機関の金融機関端末500から、実際に資金化の申請が通った資金化金額、資金化日、仮債務者を含む資金化に関する情報を受信する。資金化履歴管理部107は、未確定債権DB108を参照して、受信した当該資金化に関する情報を、資金化履歴情報として資金化履歴DB110に登録する(S909)。
資金化した履歴に関する情報が資金化履歴DB110に登録されると、確定債権生成部106は、登録された資金化履歴DB110と、未確定債権DB108とを参照して、債権者ごとに、資金化履歴DB110に登録された資金化金額を算出し、当該債権者についての確定債権金額として、確定債権DB109に登録する(S910)。
そして、残高確認部105は、確定債権金額が登録されると、資金化履歴DB110を参照し、既に資金化された未確定債権の資金化金額を、S910で登録した確定債権金額から差し引いた金額を、残高として確定債権DB109に登録する。このとき、残高確認部105は、資金化履歴DB110に登録された仮債務者のなかから、資金化した仮債務者を除いた債務者を確定債務者として確定債権DB109に登録する(S911)。以上の処理により、図9に示した処理が終了する。
続いて、S902のSCストリーム検索処理について説明する。図10は、SCストリーム検索処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、未確定債権発生可否判定部102は、S902で読み出された受発注情報の中から、処理要求したサプライヤ企業(資金化申請者)が受注した履歴があるバイヤ企業を特定し、特定した当該バイヤ企業を含む受発注情報をリストアップする(S1001)。
未確定債権発生可否判定部102は、上記受発注情報が抽出できたか否か、すなわちリストが空であるか否かを判定し(S1002)、上記受発注情報が抽出できなかったと判定した場合(S1002;No)、処理要求したサプライヤ企業がバイヤ企業からの受注実績がなく、SCストリームに基づく未確定債権を発生させることができないと判断し、その旨を出力する(S1003)。
一方、未確定債権発生可否判定部102は、上記受発注情報が抽出できたと判定した場合(S1002;Yes)、S1004~S1009までの各処理を、リストアップした受発注情報に含まれるすべてのバイヤ企業について行う。
未確定債権発生可否判定部102は、リストアップした受発注情報と受注サイクルDB111とから、バイヤ企業とサプライヤ企業の間の受注日サイクルを取得する(S1005)。例えば、図4では、資金化申請者であるサプライヤ企業Aはバイヤ企業B1およびB2から受注を受けており、図8では、サプライヤ企業Aとバイヤ企業B1との間の受発日サイクルは毎月19日(金額2000円)、サプライヤ企業Aとバイヤ企業B2との間の受発日サイクルは毎月18日(金額2000円)であることがわかる。
未確定債権発生可否判定部102は、受注日サイクルを取得したバイヤ企業がサプライヤ企業となり、当該受注日サイクル内で受注を受けている上流のバイヤ企業を特定し、特定した当該上流のバイヤ企業から受注を受けているか否かを判定する(S1006)。例えば、バイヤ企業B1は、受注日サイクル内で上流のバイヤ企業C2から2000円の受注を8月15日に受けている。また、バイヤ企業B2は、受注日サイクル内で上流のバイヤ企業C2から2000円の受注を8月13日に受けている。したがって、この場合は、未確定債権発生可否判定部102は、受注日サイクルを取得したバイヤ企業が上流のバイヤ企業から受注を受けていると判定する(S1006;Yes)。
未確定債権発生可否判定部102は、受注日サイクルを取得したバイヤ企業が上流のバイヤ企業から受注を受けていると判定した場合(S1006;Yes)、そのバイヤ企業をサプライヤ企業とした受発注情報を、S901で読み出された受発注情報の中から読み出し、S1001でリストアップしたリストに追加する(S1008)。例えば、バイヤ企業B1がサプライヤ企業となって上流のバイヤ企業C1から8月15日に受けた受発注情報を、S1001でリストアップしたリストに追加する。同様に、バイヤ企業B2がサプライヤ企業となって上流のバイヤ企業C2から8月13日に受けた受発注情報を、S1001でリストアップしたリストに追加する。
未確定債権発生可否判定部102は、S1008でこれらの受発注情報をS1001でリストアップしたリストに追加すると、S1005に戻り、以降の処理を繰り返す。例えば、S1005において、資金化申請者であるサプライヤ企業Aとバイヤ企業B1との間の受発日サイクル(毎月19日)を取得し、さらにS1006において、S1008でリストに追加したバイヤ企業がサプライヤ企業となり、当該受注日サイクル内でさらに上流のバイヤ企業から受注を受けているか否かを判定する。例えば、バイヤ企業C1は、受注日サイクル内で上流のバイヤ企業D1から5000円の受注を8月11日に受けている。また、バイヤ企業C2は、受注日サイクル内で上流のバイヤ企業D1から5000円の受注を8月10日に受けている。さらに、バイヤ企業C2は、受注日サイクル内で上流のバイヤ企業D2から5000円の受注を8月5日に受けている。したがって、この場合は、未確定債権発生可否判定部102は、上流のバイヤ企業さらに上流のバイヤ企業から受注を受けていると判定する(S1006;Yes)。
未確定債権発生可否判定部102は、受注日サイクルを取得したバイヤ企業がさらに上流のバイヤ企業から受注を受けていると判定した場合(S1006;Yes)、そのバイヤ企業をサプライヤ企業とした受発注情報を、S902で読み出された受発注情報の中から読み出し、S1001でリストアップしたリストに追加する(S1008)。例えば、バイヤ企業C1がサプライヤ企業となってさらに上流のバイヤ企業D1から8月11日に受けた受発注情報を、S1001でリストアップしたリストに追加する。同様に、バイヤ企業C2がサプライヤ企業となって上流のバイヤ企業D1から8月10日に受けた受発注情報と、バイヤ企業C2がサプライヤ企業となって上流のバイヤ企業D2から8月5日に受けた受発注情報とを、S1008で追加したリストにさらに追加する。そして、S1005に戻り、以降の処理を繰り返す。
このように、未確定債権発生可否判定部102は、資金化申請者であるサプライヤ企業Aと直接的に受発注関係にあるバイヤ企業B1およびバイヤ企業B2との間の受発日サイクル(この例では毎月19日と毎月18日のうち、より長い受注日サイクルである毎月19日)以内で、サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業をリストアップする。
そして、未確定債権発生可否判定部102は、受注日サイクルを取得したバイヤ企業がさらに上流のバイヤ企業から受注を受けていないと判定した場合(S1006;No)、当該受注日サイクル内でさらに上流のバイヤ企業は存在しないと判断し、その時点でリストアップされた受発注情報を読み出してSCストリームを生成し、SCネットワークを定義する(S1007、S1010)。例えば、未確定債権発生可否判定部102は、全てのバイヤ企業について、最後のS1004~S1009の繰り返しにおいてリストに追加された受発注情報に含まれるサプライヤ企業を最上位とし、資金化申請者であるサプライヤ企業Aを最下位とするSCストリームを生成する。
このように、本実施例では、未確定債権発生可否判定部102は、起点となるサプライヤ企業と直接受発注があるバイヤ企業を特定する第1の特定処理(例えば、S1001の処理)を行い、さらに、当該第1の特定処理で特定したバイヤ企業をサプライヤ企業として受発注がある上流のバイヤ企業を特定する第2の特定処理(例えば、S1004~S1009の処理)を行い、当該第2の特定処理を所定のサイクル(例えば、受注サイクルDB111に記憶された受注日サイクル)内で繰り返し行うことにより、サプライチェーンストリームを生成する。したがって、資金化申請者であるサプライヤ企業が直接受注するバイヤ企業との間の受注日サイクルに応じて、未確定債権を資金化するためのサプライチェーンストリームを生成することができる。
図11は、未確定債権発生可否判定部102が生成したSCストリームの例を示す図である。図11では、図4に示した受発注DB402に格納されている受発注情報のうち、資金化申請者であるサプライヤ企業Aとバイヤ企業B1との間の受発日サイクル(図8では毎月19日)におけるSCストリームを示している。図11に示すように、未確定債権発生可否判定部102は、図10に示した処理を行うことにより、(1)未確定債権の申請者であるサプライヤ企業Aを起点として、当該サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業B1、C1、D1から構成されるSCストリーム、(2)上記サプライヤ企業Aを起点として、当該サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業B1、C2、D1から構成されるSCストリーム、(3)上記サプライヤ企業Aを起点として、当該サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業B1、C2、D2から構成されるSCストリーム、(4)上記サプライヤ企業Aを起点として、当該サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業B2、C2、D1から構成されるSCストリーム、(5)上記サプライヤ企業Aを起点として、当該サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業B2、C2、D2から構成されるSCストリーム、(6)上記サプライヤ企業Aを起点として、当該サプライヤ企業Aと直接的または間接的に受発注があるバイヤ企業B2、C3、D2から構成されるSCストリーム、の計6つのSCストリームを生成する。そして、未確定債権発生可否判定部102は、資金化申請者であるサプライヤ企業Aとバイヤ企業B1との間の受発日サイクル(毎月19日)内で生成されたこれらのSCストリームをまとめて1つのSCネットワークとして定義する。
続いて、S905の資金化算出処理について説明する。図12は、資金化算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下では、ある1つの始点となるバイヤ企業について説明しているが、複数の始点となるバイヤ企業がある場合は、その各々について図12の処理が行われる。
まず、資金化可能範囲判定部103は、始点となるバイヤ企業の発注先となるサプライヤ企業を、図10でリストアップした受発注情報のリストの中から特定し、特定した当該サプライヤ企業を含む受発注情報をリストアップする(S1201)。本例では、図10でリストアップした受発注情報のリストを用いたが、受発注DB402に格納されている受発注情報を用いてもよい。資金化可能範囲判定部103は、例えば、始点となるバイヤ企業D1からの発注ルートの分岐はサプライヤ企業C1、C2であるため、これらをリストアップする。
続いて、資金化可能範囲判定部103は、リストアップしたサプライヤ企業の数をカウントする(S1202)。例えば、資金化可能範囲判定部103は、発注ルートの分岐数は「2」であり、リストアップしたサプライヤ企業はC1、C2の2つであるため、サプライヤ企業の数を「2」とカウントする。
資金化可能範囲判定部103は、カウントしたサプライヤ企業の数に基づいて、バイヤ企業からの発注割合を算出する(S1203)。例えば、資金化可能範囲判定部103は、S1202ではサプライヤ企業の数を「2」とカウントしたため、発注割合を1/2ずつであると算出する。当該発注割合については、サプライヤ企業の事業規模や受注規模、受注頻度、市場リスク等の情報を外部のシステムからネットワークNを介して取得し、当該取得した情報を用いて発注割合を按分して定めてもよい。
さらに、資金化可能範囲判定部103は、S1201でリストアップしたサプライヤ企業に、資金化申請者であるサプライヤ企業Aが含まれているか否かを判定する(S1204)。資金化可能範囲判定部103は、S1201でリストアップしたサプライヤ企業に、資金化申請者であるサプライヤ企業Aが含まれていないと判定した場合(S1204;No)、S1201でリストアップしたサプライヤ企業のそれぞれについて、さらに発注先となるサプライヤ企業を、図10でリストアップした受発注情報のリストの中からリストアップし(S1205)、S1202に戻る。
S1202に戻ると、資金化可能範囲判定部103は、新たにS1205でリストアップしたサプライヤ企業の数をカウントし(S1202)、S1203において上記のように発注割合を算出する。資金化可能範囲判定部103は、これらの処理を、S1201でリストアップしたサプライヤ企業に、資金化申請者であるサプライヤ企業Aが含まれていると判定するまで(S1204;Yes)、繰り返す。
資金化可能範囲判定部103は、S1201またはS1205でリストアップしたサプライヤ企業に、資金化申請者であるサプライヤ企業Aが含まれていると判定した場合(S1204;Yes)、図12に示す処理を終了する。
図13は、図12に示した処理で資金化可能範囲となる資金化金額の算出例を説明するための図である。図13では、資金化申請者であるサプライヤ企業Aは、バイヤ企業B1、B2から受注を受けており、受発注情報では、受注金額は、それぞれ2000円であることがわかる。ここでは、バイヤ企業D1を始点としたSCネットワークを処理の対象とし、図10の処理で生成したSCストリームにおいて、バイヤ企業D1を始点とするSCネットワークでは、当該バイヤ企業D1はサプライヤ企業C1、C2に発注していることがわかる。したがって、資金化可能範囲判定部103は、サプライヤ企業C1、C2が当該バイヤ企業D1から受注する確率である発注割合は1/2であるとして資金化可能範囲を設定する。
これと同様の考え方で、例えば、サプライヤ企業C1はサプライヤ企業B1に対するバイヤ企業であるため、当該バイヤ企業C1はサプライヤ企業B1以外への発注はない。このため、資金化可能範囲判定部103は、サプライヤ企業B1が当該バイヤ企業C1から受注する確率である発注割合は1/1であるとして資金化可能範囲を設定する。以下、資金化可能範囲判定部103は、資金化申請者であるサプライヤ企業Aに到達するまで、同様の方法で発注割合を算出する。この例では、始点となるバイヤ企業D1からサプライヤ企業B1が受注する確率は、1/2×1/1(D1→C1→B1)と、1/2→1/2(D1→C2→B1)との和として表すことができる。したがって、資金化可能範囲判定部103は、上記サプライヤ企業Aがバイヤ企業B1から受注する金額(2000円)の3/4である1500円(1000円+500円)を資金化可能額とする。
これと同様の考え方で、始点となるバイヤ企業D1からサプライヤ企業B2が受注する確率は、1/2×1/2(D1→C2→B2)として表すことができる。したがって、資金化可能範囲判定部103は、上記サプライヤ企業Aがバイヤ企業B2から受注する金額(2000円)の1/4である500円を資金化可能額とする。このように、資金化可能範囲および発注割合を算出し、資金化可能額を定めることにより、未確定債権に対する評価を、資金化申請者であるサプライヤ企業Aの受発注実績に応じて適切に行うことができる。
このように、本実施例では、資金化可能範囲判定部103は、サプライチェーンネットワークの始点となるバイヤ企業と直接受発注があるサプライヤ企業を特定する第3の特定処理(例えば、S1201の処理)を行い、さらに、当該第3の特定処理で特定したサプライヤ企業をバイヤ企業として受発注がある下流のサプライヤ企業を特定する第4の特定処理(例えば、S1202~S1205の処理)を行い、当該第4の特定処理を資金化申請者であるサプライヤ企業に達するまで繰り返し行うことにより、資金化可能額を算出する。したがって、直接的であるか間接的であるかを問わず、資金化申請者であるサプライヤ企業の上流のバイヤ企業との過去の受発注の実績に基づいて、資金化可能額を算出できる。
資金化可能範囲判定部103が、S906において未確定債権に基づく資金化可能額を算出すると、サプライチェーン分析部101は、S902で処理要求したサプライヤ企業のサプライヤ端末200に、未確定債権の資金化候補とその内容を示す判定結果を送信し、サプライヤ端末200の表示装置に、当該判定結果を表示する。
図14は、サプライヤ端末200の表示装置に表示される判定結果の例を示す図である。図14に示すように、サプライチェーン分析部101は、発生する未確定債権に対して直接的に受注関係があるバイヤ企業である仮債務者と、当該仮債務者から受注する予定金額(過去の受発注実績に基づいて定められる金額)と、上記発注割合と、上記資金化可能額とが対応付けた判定結果を出力する。図14では、これまで説明したバイヤ企業B1、B2のほかに、これらと同様に発注割合や資金化可能額が算出された複数のバイヤ企業について、一覧形式で表示されている。当該判定結果では、どの未確定債権に基づいて資金化するかを選択するための資金化選択欄が、これらの情報に対応付けられている。したがって、資金化申請者であるサプライヤ企業Aの担当者は、サプライヤ端末200の表示装置に表示されている判定結果の中から選択した所望の未確定債権に基づいて資金化を申請することができる。図14では、未確定債権を資金化する仮債務者として、バイヤ企業B1、B2のほかに、バイヤ企業D、E、Fが選択されていることがわかる。そして、S908で説明したように、未確定債権生成部104は、選択されたこれらの情報を、未確定債権に関する債権情報として、未確定債権DB108に登録する。その後、図9のS909~S911で説明したように、確定債権発生時には、資金化履歴DBを参照して、残高分が確定債権としてされることとなる。
このように、本実施例では、コンピュータが管理する債権流通システム1000において、バイヤ企業とサプライヤ企業とにより行われた受発注履歴を示す受発注情報を記憶した受発注DB402と、当該受発注情報を読み出して、債権売却時に価格が確定していない債権である未確定債権の申請者であるサプライヤ企業(例えば、サプライヤ企業A)を起点とした、所定のサイクル(例えば、受注サイクルDB111に記憶された受注日サイクル)における1または複数のサプライチェーンストリームが生成可能か否かを判定することにより、未確定債権を発生させるか否かを判定する未確定債権発生可否判定部102と、未確定債権を発生させると判定した場合に、1または複数のサプライチェーンストリームをまとめたサプライチェーンネットワークにおいて、始点となるバイヤ企業からサプライヤ企業に発注されるルートの分岐数に基づいて、上記申請者であるサプライヤ企業に対する資金化可能額を算出する資金化可能範囲判定部103と、を有するので、当事者間で実際に受発注が発生する前の状態でも融資を受けることができる。また、債権買取企業や金融機関、投資家にとっては、融資を行うか否かの判断を企業ごとで実施しなくてよくなるため、従来より多くの融資案件に対応できる。サプライチェーン上の発注機会の増減が可視化されるため、金融機関が投資先企業を容易に見つけることが可能となる。さらに、サプライチェーンを構成する様々な情報を考慮して、未確定債権の発行可否を判断できる。また、サプライチェーンにおける上流の受発注情報の発生を検知して、未確定債権の資金化でき、融資対象となる受発注とその支払いに充てる確定債権との紐づけを自動化できるようになる。
また、本実施例では、上述したようなサプライチェーン上の受発注履歴と受発注発生情報を利用して、あるバイヤ企業が売掛債権を発生させるより前に資金調達を行いたいサプライヤ企業が未確定債権を生成し、その未確定債権を金融機関に譲渡もしくは売却することによって資金調達を行うことが可能となる。そして、バイヤ企業の後日支払いによって未確定債権が消滅することを管理することができる。