JP2022144613A - 吸音材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 吸音性能の制御が容易なシート状の吸音材を提供する。【解決手段】 吸音材100aは、内部に気体を封じた気室20が配置された可撓性シート10と、気室20を囲む壁の一部に積層された粘弾性層30と、を有する。【選択図】図1
Description
この発明は、シート状の吸音材およびその製造方法に関する。
居住空間、車室内の空間等では、空間を囲う壁面への設置が可能なシート状の吸音材が有用である。特許文献1は、空気を包摂した突起を有する吸音材層を遮音材層間に挟んだ透明防音シートを開示している。この透明防音シートでは、空気伝搬音が表層の遮音材層を振動させ、その振動が吸音材層により熱エネルギーに変換される。また、特許文献2は、特許文献1に開示されたものと同様な空気を包摂した突起を有する吸音材層を開示している。
特許文献1に開示された透明防音シートは、吸音材層を遮音材層間に挟んだものであるため、構成が複雑であり、また、柔軟性が損なわれる問題がある。また、特許文献1および2に開示された吸音材層は、必要な吸音性能を得るために、突起に包摂される空気(気泡)のサイズを適切なものにする必要があり、製造が難しい問題があった。
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸音性能の制御が容易なシート状の吸音材を提供することにある。
この発明は、内部に気体を封じた気室が配置された可撓性シートと、前記気室を囲む壁の全部、または一部に積層された粘弾性層と、を有する吸音材を提供する。
また、この発明は、内部に気体を封じた気室が配置された可撓性シートの前記気室を囲む壁の全部、または一部に粘弾性層を積層する、吸音材の製造方法を提供する。
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態である吸音材100aの構成を示す断面図である。吸音材100aは、居住空間、車両内の空間等、吸音対象となる空間の壁面に貼り付けられ、吸音を行う。図1に示すように、吸音材100aは、内部に気体を封じた気室20が配置された可撓性シート10と、気室20を囲む壁の一部に積層された粘弾性層30と、を有する。この例では、気室20は、可撓性シート10の表面から突出した突起内に設けられている。また、気室20およびそれを取り囲む壁は、円柱状をなしている。しかし、気室20およびそれを取り囲む壁は、角柱状をなしていてもよく、ドーム状をなしていてもよい。吸音材として中低域の周波数領域で効果を発揮させる場合、気室20の直径は35mm以上であり、高さは8mm以上12mm以下である。そして、気室20は、空気で充たされている。
可撓性シート10は、ビニル素材を含む。具体的には、可撓性シート10は、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。また、可撓性シート10の厚さは、5μm~20μmである。
粘弾性層30は、アクリル系の液体ゴムを凝固させた層である。粘弾性層30は、ゲル状のゴムを凝固させた層であってもよい。この例では、可撓性シート10において、気室20を囲む壁の一部、具体的には側壁の外表面と天井壁の外表面に粘弾性層30が積層されている。しかし、粘弾性層30は、気室20を囲む壁のうちの他の壁に積層させてもよく、気室20を囲む壁の全部に積層させてもよい。好ましい態様において、粘弾性層30の質量は、1個の気室20について1~10gである。
図2は本実施形態における吸音材100aの製造方法を示す図である。本実施形態では、シート状で可撓性のある第1部材1上に、第2部材2を配設する。この第2部材2は、シート状で可撓性のある部材である。この第2部材2の表面には、中空領域2bを各々有する複数の突起2aが第2部材2の裏面から表面の方向に突出している。そして、複数の突起2aの中空領域2bは、第2部材2の裏面において開口している。本実施形態では、この第2部材2の裏面を第1部材1上に配設する。また、本実施形態では、第2部材2の表面から突出した複数の突起2aに、液状またはゲル状の弾性体3を塗布する。また、本実施形態では、第1部材1の表面に液状またはゲル状の弾性体4を塗布し、この弾性体4の上に第2部材2を載せることにより、第2部材1を第1部材1に接着する。ここで、液状の弾性体3および4は、微粒子を粘着性のある液体に混ぜたものであってもよい。
液状またはゲル状の弾性体3および4が凝固することにより図1に示す吸音材100aが得られる。図2における第1部材1、弾性体4および第2部材2が図1における可撓性シート10となり、図2における中空領域2bが図1における気室20となり、図2における弾性体3が図1における粘弾性層30となる。気室20は、気密性が高く、気室20内に封じ込められた空気は空気バネとして機能する。
図1に示す吸音材100aの可撓性シート10において、気室20内の空気バネと、気室20を取り囲む壁の質量および粘弾性とにより構成される共振系は、例えば図1の上方から到来する音波により共振する。このように音のエネルギーは、気室20内の空気を振動させる運動エネルギーに変換され、気室20において消費される。また、弾性体3が持つ粘弾性は、分子間に摩擦を持つ。弾性体3が凝固した粘弾性層30が音のエネルギーを得ると変形し、その時に分子間に摩擦を生じる。その摩擦によって、エネルギーを消費する効果が期待できる。本実施形態による吸音材100aでは、気室20を囲む壁に積層された粘弾性層30により、共振系の質量および粘弾性が従来の吸音材よりも高められている。このため、本実施形態による吸音材100aでは、従来の吸音材よりも高い吸音性能が得られる。吸音材100aの吸音性能は、粘弾性層30の厚さに依存する。従って、液状の弾性体3の塗布の方法としては、塗布量の制御が容易な方法、例えば刷毛で塗る方法や、微粒子状にして噴射する方法等が好ましい。
また、本実施形態では、ベース部分と気室を形成する壁部分を含む可撓性シート10において、気室20を囲む壁の一部に液状またはゲル状の弾性体3を塗布することにより粘弾性層30を積層するので、可撓性シート10の壁部分が本来持っている気密性を保ちつつ、液状またはゲル状の弾性体3の持つ質量および粘弾性を可撓性シート10に与えることができる。また、粘弾性体層30が積層された後も、可撓性シート10における気室20を囲む壁は元の柔軟性を保つ。
図3は本実施形態による吸音材100aの第1設置例を示す図である。この第1設置例では、吸音対象である空間の壁201に対し、吸音材100aの裏面、すなわち、可撓性シート10において粘弾性層30と反対側の面を貼り付けている。この第1設置例は、最も基本的な設置例であり、設置が簡単であるという利点がある。
図4は本実施形態による吸音材100aの第2設置例を示す図である。この第2設置例では、吸音対象である空間の壁201に対し、多孔質吸音材202が貼り付けられ、この多孔質吸音材202の表面に対し、吸音材100aの裏面が貼り付けられている。すなわち、第2設置例は、吸音材100aと、壁201との間に多孔質吸音材202の空気層が挿入された吸音構造体となっている。第2設置例は、吸音材100aと壁201との間に空気層を挿入することで、共振系の共振周波数が下がるという利点がある。また、第2設置例は、吸音材100aにより吸音することができない帯域の音を多孔質吸音材202が吸音可能であるという利点がある。
図5は本実施形態による吸音材100aの第3設置例を示す図である。この第3設置例では、吸音対象である空間の壁201に対し、本実施形態による吸音材100aと同じ構成の吸音材100a’の裏面が貼り付けられ、さらにこの吸音材100a’の表面に対し、吸音材100aの裏面が貼り付けられている。この第3設置例は、吸音材100aと、壁201との間に吸音材100a’の空気層(気室30)が挿入された吸音構造体となっている。従って、第2設置例と同様、共振系の共振周波数が下がるという利点がある。
図6は本実施形態による吸音材100aの吸音特性、具体的には垂直入射吸音率の周波数特性を示す図である。この図6に示される垂直入射吸音率は、規格ISO 10534-2、JIS A 1405-2に準拠した測定方法により測定されたものである。図6において横軸は垂直入射音の周波数、縦軸は垂直入射音の音のエネルギーに対する吸音される音のエネルギーの比率である垂直入射吸音率である。本願発明者は、第1設置例(図3)、第2設置例(図4)および第3設置例(図5)の各々において、図3~図5の上方から下方の吸音材100aに向けて音を放射し、吸音材100aにより吸音される音のエネルギーの放射される音のエネルギーに対する比率である垂直入射吸音率A1~A3を各々測定した。また、比較例として、不織布素材により構成された吸音材の垂直入射吸音率A0を測定した。図6はこの垂直入射吸音率A0~A3の測定結果を示すものである。
第1設置例の垂直入射吸音率A1から分かるように、本実施形態による吸音材100aによれば、概ね1~2kHzの帯域の吸音が可能であり、1~2kHzの帯域においては比較例並みの吸音性能が得られる。また、第2設置例の垂直入射吸音率A2、第3設置例の垂直入射吸音率A3から分かるように、本実施形態によれば、吸音材100aと壁201との間に空気層を挟むことにより、概ね700Hz~2kHzの帯域の吸音が可能になる。これは、吸音材100aと壁201との間に空気層を挟むと、吸音材100aおよび空気層の全体が共振系を構成し、この共振系の共振周波数が吸音材100a単独の共振系の共振周波数より低くなるためであると考えられる。
本実施形態において、吸音材100aを構成する可撓性シート10は、柔軟かつ薄手のシート素材であり、粘弾性層30も柔軟な素材であるので、吸音材100aを緩やかな曲面にも設置できる。また、本実施形態によれば、粘弾性層30の持つ物性と、粘弾性層30となる液状の弾性体の塗布量により、気室20の質量、弾性を制御できる。これより、吸音性能、吸音できる帯域を制御できる。粘弾性層30となる液状の弾性体が疎水性の場合、水が掛かる場所、湿度の高い場所にも使用できる。また、本実施形態による吸音材100aは、土台となる可撓性シート10に気室20を配置する構成なので、構成が簡単で製造が容易である。
また、本実施形態によれば、吸音材100aと壁201との間に空気層を挟むことにより吸音を行う共振系の共振周波数を下げ、低域での吸音性能を高めることができる。従って、本実施形態による吸音材100aは、低域での吸音が必要とされる用途に適用可能である。例えば車室内に発生する定在波の周波数は、車室の大きさ(長さ、幅、高さ)に依存する低域の周波数である。そこで、車室において発生する定在波の周波数帯域において高い吸音性能が得られるように、吸音材100aと車室の壁との間に空気層を挿入し、共振周波数を下げて定在波の吸音を行ってもよい。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば次の通りである。
(1)吸音材100aの第3設置例の変形例として図7に示す第4設置例が考えられる。この第4設置例でも、第3設置例と同様、2枚の吸音材100aおよび100a’が壁201に対して積層されている。しかし、この第4設置例では、上層である吸音材100aの表裏が第3設置例に対して反転している。すなわち、第4設置例では、上層の吸音材100aの表面に積層された粘弾性層30が下層の吸音材100a’の表面に積層された粘弾性層30に貼り付けられている。そして、上層の吸音材100aは粘弾性層30が積層されていない裏面を吸音対象である空間に向けている。この第4設置例も、第3設置例と同様、吸音材100aと壁201との間に空気層が挿入された吸音構造体であるので、第3設置例と同様、共振周波数が低下し、低域での吸音効果が増す効果が得られる。
(2)上記実施形態では、可撓性シート10の表面から突出した突起内に気室20を配置し、この気室20を囲む壁のうちの側壁と天井壁の外表面に粘弾性層30を積層した。しかし、粘弾性層30の積層態様はこれに限定されるものではない。
図8に示す吸音材100bでは、可撓性シート10において、気室20を囲む側壁と天井壁の外表面の他、気室20が配置されていない領域をも含む可撓性シート10の全表面領域に粘弾性層30が積層されている。この態様においても、気室20を囲む側壁と天井壁の外表面に積層された粘弾性層30が共振系の質量と粘弾性を増加させるので、吸音性能を増加させる効果が得られる。
図9に示す吸音材100cでは、可撓性シート10において、気室20を囲む壁のうち天井壁の外表面のみに粘弾性層30が積層されている。この態様においても、気室20の天井壁の外表面に積層された粘弾性層30が共振系の質量と粘弾性を増加させるので、吸音性能を増加させる効果が得られる。
図10に示す吸音材100dでは、可撓性シート10において、気室20を囲む壁のうち側壁の外表面のみに粘弾性層30が積層されている。この態様においても、気室20の側壁の外表面に積層された粘弾性層30が共振系の質量と粘弾性を増加させるので、吸音性能を増加させる効果が得られる。
図11に示す吸音材100eでは、可撓性シート10において、気室20を囲む壁のうち天井壁の内表面のみに粘弾性層30が積層されている。この態様においても、気室20の天井壁の内表面に積層された粘弾性層30が共振系の質量と粘弾性を増加させるので、吸音性能を増加させる効果が得られる。
(3)上記実施形態では、可撓性シート10の表面から突出した突起内に気室20を配置した。しかし、気室20の配置態様はこれに限定されるものではない。図12に示す吸音材100fおよび図13に示す吸音材100gでは、可撓性シート10のシート厚内に収まる気室20が可撓性シート10内に配置されている。そして、吸音材100fでは、気室20の天井壁の内表面に粘弾性層30が積層され、吸音材100gでは、気室20の天井壁および床壁の内表面に粘弾性層30が積層されている。これらの態様においても、積層された粘弾性層30が共振系の質量と粘弾性を増加させるので、吸音性能を増加させる効果が得られる。
(4)可撓性シート10の気室20に空気を封じ込め、その際、気室20内の空気に圧力を掛け、気室20内の空気バネを調整してもよい。
(5)中空の音響菅の内部および外部、あるいはそのいずれかに、本発明に係る吸音材を配置し、この音響管を吸音対象である空間内に配置してもよい。この場合、音響管の長さを調整することで、空間内において減衰させる音の周波数を調整する。また、音響管の数を調整することで、減衰させる音圧を設定する。
(6)この発明において、内部に気体を封じた気室が配置された可撓性シートの製造方法は上記実施形態の製造方法に限定されるものではない。この発明は、内部に気体を封じた気室が配置された可撓性シートの前記気室を囲む壁の全部、または一部に粘弾性層を積層する吸音材の製造方法として実施され得る。
100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g……吸音材、10……可撓性シート、20……気室、30……粘弾性層、1……第1部材、2……第2部材、2a……突起、2b……中空領域、3,4……弾性体、201……壁、202……多孔質吸音材。
Claims (11)
- 内部に気体を封じた気室が配置された可撓性シートと、
前記気室を囲む壁の全部、または一部に積層された粘弾性層と、
を有する吸音材。 - 前記可撓性シートがビニル素材を含む、
請求項1に記載の吸音材。 - 前記可撓性シートがポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1または2に記載の吸音材。 - 前記可撓性シートの厚さは5μm~20μmである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸音材。 - 前記粘弾性層は、アクリル系の液体ゴムを凝固させた層である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸音材。 - 前記気室は円柱状またはドーム状である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸音材。 - 前記気室の直径は35mm以上であり、高さは8mm以上12mm以下である、
請求項6に記載の吸音材。 - 前記気室は空気で充たされている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の吸音材。 - シート状で可撓性のある第1部材上に、
シート状で可撓性がある第2部材であって、中空領域を各々有する複数の突起が表面にあり、前記中空領域が裏面において開口した第2部材の裏面を配設し、
前記第2部材の表面から突出した複数の突起に、液状またはゲル状の弾性体を塗布する、
吸音材の製造方法。 - 前記第2部材を液状またはゲル状の弾性体により前記第1部材に接着する
請求項9に記載の製造方法。 - 内部に気体を封じた気室が配置された可撓性シートの前記気室を囲む壁の全部、または一部に粘弾性層を積層する、
吸音材の製造方法。
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