JP2021189212A - 遮音システムおよび遮音方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シートと支持部とを含む音響メタマテリアル(音反射材)による音量の低減効果を十分に発揮する手段を提供する。【解決手段】音反射材構造体を用い、乗員の耳等の集音手段により集音される音の音量を低減させる遮音方法であって、集音手段と、音反射材構造体の音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上となるように配置する。ここで、音反射材は、弾性を有するシートと、シートを支持し区画部に区画する支持部とを備える。区画部におけるシートの面剛性(k)およびシートの面密度(m)は、下記数式1の関係を満足する。【選択図】なし

Description

本発明は、遮音システムおよび遮音方法に関する。
自動車内には多くの音源がある。車内および車外における騒音からの静粛性が要求されることから、自動車には様々な遮音対策が施されている。特に、エンジンやトランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)については、発生源に近い位置で遮音対策が必要である。このため、これらの音源に対しては吸遮音性能に優れる専用の遮音カバーが使用されている。ここで、相次ぐ法改正による車外騒音レベル規制の強化や、車内騒音の静粛化が車の価値(高級感)に直結する点も相俟って、自動車における低騒音化部品の要求は非常に高い。特に、2013年度に欧州連合(EU)において導入された車外騒音規制は、最終的に従来規制値に対して−3dB(音圧エネルギーとして1/2に低減が必要)と厳しいものとなっている。これにはエンジンルーム内の主騒音発生源としてのエンジン本体およびトランスミッション等固有音源への騒音低減対策が不可欠である。これまでも、エンジン上面側のエンジントップカバー等の様々な遮音部品が使用されているが、さらなる性能の向上が求められている。また、低燃費化の観点から、遮音対策は軽量化の要請にも応えられるものであることが好ましい。
遮音を狙った遮音構造体の構成は種々知られているが、なかでも「音響メタマテリアル」と称される材料がある。「音響メタマテリアル」とは、自然界に存在する物質が通常示さないような音響的性質を示すように設計された人工媒質である。従来、所望の遮音効果を示す音響メタマテリアルの開発が鋭意行われており、各種の提案がなされている。
ここで、均質な材料からなる一重壁にある周波数の音波が垂直に入射したときの当該一重壁による透過損失(TL;Transmission Loss)の値は、上記周波数(f)および上記一重壁の面密度(m)を用いて、TL≒20log10(m・f)−43[dB]と算出されることが知られている(質量則)。すなわち一般に、遮音材料が軽量であるほど、また、音波の周波数が小さいほど、透過損失(TL)は小さくなり、遮音性能が低下することとなる。例えば500Hzの音波の場合、20dBのSTLを達成するには、コンクリート壁では12cm、ウレタンフォーム遮音材では35cm超ものサイズが必要となる。
このような状況に鑑み、例えばNi Sui et al., Applied Physics Letters 106, 171905 (2015)では、連続的に形成された複数の筒状セルを有するアラミド繊維シート製ハニカムによってラテックスゴム製の膜が気密に支持されてなる格子状構造体からなる音響メタマテリアルが提案されている。ここで、Ni Sui et al., Applied Physics Letters 106, 171905 (2015)に開示されている格子状構造体においては、ラテックスゴム製の膜が複数の筒状セルによって正六角形(一辺の長さが3.65mm)の形状を有する区画部に区画されている。
非特許文献1(Ni Sui et al., Applied Physics Letters 106, 171905 (2015))によれば、このような音響メタマテリアルを用いることで、軽量でも特に低周波数の音波に対する遮音性能に優れた材料を提供できるとされており、実験によって500Hz未満の周波数の音波については25dBを超えるSTLを達成可能であることも開示されている。
しかしながら、非特許文献1に記載されているような上記音響メタマテリアルを遮音材として用いた場合には、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって十分な遮音性能を発揮することができるわけではないことが本発明者らの検討により判明した。
そこで本発明者らは、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い遮音性能を発揮することを可能とする手段を提供することを目的として検討を行った。その結果、Ni Sui et al., Applied Physics Letters 106, 171905 (2015)に開示されているような、弾性を有するシートと、当該シートを支持するとともに当該シートを区画部に区画する支持部とを有する音響メタマテリアルにおいて、当該区画部を構成するシートの面剛性および面密度が所定の関係を満足するように制御することによって400〜1000Hzの周波数域の広い範囲にわたって高い遮音性能が発揮されうることを見出し、その発明について特許出願を行っている(PCT/JP2018/028326)。なお、本発明者らによる検討により、上記音響メタマテリアルは吸音材としての性能(吸音性能)を有しておらず、専ら入射音を反射することによって音反射性能を発揮していることが判明している。
しかしながら、本発明者らによるさらなる検討の結果、上述したようなシートと支持部とを含む音響メタマテリアル(音反射材)を用いた場合であっても、当該音響メタマテリアル(音反射材)の近傍では十分に音量を低減することができず、十分な音量の低減効果が得られるのは当該音響メタマテリアル(音反射材)からある程度離れた領域のみに限られることが判明した。
そこで本発明は、シートと支持部とを含む音響メタマテリアル(音反射材)による音量の低減効果を十分に発揮させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、上述したような音響メタマテリアル(音反射材)を用いた場合に音量の低減効果が十分に得られる領域を探索した。その結果、本発明者らは、驚くべきことに、当該音反射材からの、当該音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm未満の領域では十分な音量の低減効果が得られないのに対し、当該距離が80mm以上の領域では十分な音量の低減効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、音反射材と、集音手段と、を含む遮音システムが提供される。ここで、前記音反射材は、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足するものである。
Figure 2021189212
また、本形態に係る遮音システムは、前記音反射材の表面に対する法線方向の前記集音手段と前記音反射材との距離が80mm以上となるように前記集音手段および前記音反射材が配置されている点に特徴がある。
本発明によれば、シートと支持部とを含む音響メタマテリアル(音反射材)による音量の低減効果を十分に発揮させることが可能となる。
本発明の一実施形態に係る音反射構造体の外観を示す側面図である。 本発明の一実施形態に係る音反射材の外観を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る音反射材の上面図である。 本発明の一実施形態に係る音反射材を構成する筒状セルの断面形状およびそのサイズを説明するための拡大断面図である。 本発明に係る音反射材の音反射性能を、従来公知の遮音材における性能トレンドと対比して説明するためのグラフである。 遮音材の面密度を大きくした場合における質量則に従った遮音性能(透過損失)の変化を説明するためのグラフである。 本発明に係る音反射材の音反射性能(透過損失)を、ハニカム構造を有する格子状構造体(支持部)のみからなる音反射材、一重壁のみからなる音反射材、および鉄板からなる音反射材と対比して説明するためのグラフである。 剛性則に従う音反射性能について説明するための図である。 本発明に係る音反射材の音反射性能に質量則(図5)および剛性則(図7)の双方が関与していると仮定した場合のモデル式を、透過損失の実測値と対比して示すグラフである。 本発明の一形態に係る遮音システムを自動車に適用した例を示す概略図である。 後述する実施例の欄において作製した音反射材について、JIS A1409に規定される「残響室法吸音率の測定方法」に準拠した手法により残響室法吸音率を測定した結果を示すグラフである。 後述する実施例の欄において作製した音反射材について、残響室と無響室を組み合わせた方法を用いて音響強度を測定することにより音響透過損失(透過率)を測定した結果を示すグラフである。 後述する実施例の欄において遮音性能を評価するのに用いた測定系(遮音ボックスおよびマイクロフォン)の配置を説明するための写真である。 後述する実施例の欄において作製した音反射材(遮音材)について遮音性能を測定した結果を示すグラフである。
本発明の一形態は、音反射材と、集音手段と、を含む遮音システムであって、
前記音反射材は、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、
前記音反射材の表面に対する法線方向の前記集音手段と前記音反射材との距離が80mm以上となるように前記集音手段および前記音反射材が配置されている、遮音システムである:
Figure 2021189212
数式1における面剛性(k)および面密度(m)の算出方法については、後述する。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
本明細書では、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部とを含み音を反射する部材を「音反射材」と称し、当該音反射材が基板の表面に配置されてなる構造体(積層体)を「音反射構造体」と称する。図1は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体の外観を示す側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体を構成する音反射材の外観を示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体を構成する音反射材の上面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体を構成する音反射材の支持部の断面形状およびそのサイズを説明するための拡大断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る音反射構造体1は、音反射材10と、基板20とを有する。図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る音反射材10は、連続的(規則的)に配列された筒状セルから構成される格子状構造体100(支持部)と、弾性を有するラテックスゴムから構成されるラテックスゴムシート200とを備えている。このラテックスゴムシート200は、格子状構造体100の両側の開口部のうち一方の側を塞ぐように当該格子状構造体100に気密に接合されており、シート状基材として機能する。なお、本実施形態におけるラテックスゴムシート200の厚さは0.25mm(250μm)である。一方、本実施形態において、格子状構造体100は、ポリ塩化ビニル樹脂から構成されている。そして、格子状構造体100は、連続的(規則的)に形成された多数の筒状セル110を有している。
また、図1に示すように、本実施形態に係る音反射構造体1においては、音反射材10を構成する格子状構造体100(支持部)の開口断面(ラテックスゴムシート200が配置されている側とは反対側の面)が基板に接触するように、音反射材10が基板20上に配置されている。言い換えれば、ラテックスゴムシート200が基板20と離隔するように(直接接触しないように)、音反射材10が基板20上に配置されている。ここで、本明細書において、「音反射材が基板上に配置される」とは、音反射材が基板の鉛直上方に配置されることのみを意味するわけではなく、音反射材は基板に対して任意の方向に配置されうる。例えば、図1に示すように、音反射材10が基板20の鉛直下方に配置されてもよい。また、本実施形態においては、上述したようにラテックスゴムシート200が基板20と離隔するように(直接接触しないように)音反射材10が基板20上に配置されているが、ラテックスゴムシート200が基板20と直接接触するように音反射材10が基板20上に配置されてもよい。さらに、音反射材10と基板20との間には、アクリル板などからなる振動分離層が、音反射材と基板との間の領域(例えば、四隅)に配置されてもよい。ここで、本明細書において、「振動分離層」とは、音反射材と基板との間に配置されて音反射の振動と基板の振動とを分離し、これらの振動が互いに干渉することを抑制する層を意味し、外部からの衝撃を吸収することによって耐衝撃性を向上させる目的で従来用いられている緩衝材などとは異なるものである。振動分離層の配置により、振動分離層が配置されていない場合と比較して音反射性能を向上させることが可能となる。
なお、図2および図3に示すように、本実施形態に係る音反射材10において、格子状構造体100の延在方向に垂直な断面(図3の紙面)における筒状セル110の断面形状は正六角形である。すなわち、格子状構造体100はいわゆるハニカム構造を有している。これにより、本実施形態に係る格子状構造体100は、シート状基材としてのラテックスゴムシート200を支持するとともに、ラテックスゴムシート200を複数の(図2および図3では多数の)区画部に区画している。そして、当該複数の区画部は、同一の外郭形状を有する当該複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成している。
また、ハニカム構造を構成する1つの筒状セル(図4に示す110a)のセルサイズ(断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離;図4に示す距離w)は4mmである。このような構成とすることにより、非常に簡単な構成で優れた遮音性能を実現することができる。さらに、図4に示すように、格子状構造体100は、周囲に壁を有する多数の筒状セル110が連結されることにより構成されているとみなすことができる。本実施形態において、この筒状セルの壁の厚さ(図4に示す距離t)は0.07mm(70μm)である。なお、格子状構造体(筒状セル)の延在方向の高さ(図2に示す距離h)は25mmであり、高さが均一な単一の構造体から構成されている。
上述したように、図2および図3に示すような構成を有する音反射材は、非常に簡単な構成で優れた音反射性能を実現することができる。特に、軽量かつ簡便な構成であるにもかかわらず1500〜2500Hzの周波数域において高い音反射性能を発揮することができるという従来の技術では達成し得なかった特性を発現することができる。
本発明者らは、上述した実施形態のような音反射材がこのように優れた音反射性能を示すメカニズムについて精力的に検討を進めた。その結果、車両等に従来適用されていた遮音材とは異なるメカニズムが関与していることを突き止め、本発明を完成させるに至った。そして、最終的に見出されたメカニズムは、車両等に適用される遮音材に関する従来の常識を覆すものであった。以下、本実施形態に係る音反射材が優れた音反射性能を発揮するメカニズムと、本発明者らによって解明された当該メカニズムに基づき完成された本願発明の構成について、順を追って説明する。
まず、本発明に係る音反射材の音反射性能を、従来公知の遮音材における性能トレンドと対比する形で図5に示す。図5に示すように、従来公知の遮音材では、構成材料の密度が大きくなるにつれて遮音性能(透過損失)が向上するという性能トレンドが存在していた。このような従来公知の遮音材における性能トレンドは「質量則」として知られているものである。この質量則に従う遮音材における透過損失の理論値(TL)は、対象とする音波の周波数(f)および遮音材の面密度(m;単位面積当たりの質量)を用いて、下記数式2に従って算出される。
Figure 2021189212
このため、遮音材の面密度を大きくすれば遮音性能(透過損失(TL))を向上できるが、その一方で、遮音性能を向上させるには遮音材の面密度を大きくせざるを得ない、というのが質量則に基づく従来技術における常識であった(図6)。言い換えれば、1500〜2500Hzの周波数域の広い範囲にわたって高い遮音性能を発揮する遮音材を軽量の材料から構成することは不可能であると信じられていたのである。これに対し、本発明に係る音反射材は、この性能トレンドから大きく外れるようにして優れた音反射性能を示す(すなわち、低密度(軽量)でも相対的に高い音反射性能を示す)ものである(図7)。
より詳細に説明すると、図7に示すように、ハニカム構造を有する格子状構造体(支持部)のみでは音反射性能はまったく発揮されない。また、一重壁からなる音反射材の場合、弾性を有するシート(ゴム膜)のみでは質量則に従った音反射性能(高周波数域では透過損失が増大するものの低周波数域では透過損失が低減する)が発揮されるに留まる。したがって、低周波数域(特に1500〜2500Hzの領域)での音反射性能を発揮させるためには、例えば鉄板のように面密度が非常に大きい(つまり、重い)材料を用いる必要があった。これに対し、上述したような構成を有する本発明に係る音反射材は、高周波数域においては質量則に沿った音反射性能を発揮し、周波数の減少に伴って透過損失の値も減少する。一方、本発明に係る音反射材は軽量であるにもかかわらず、ある周波数(共振周波数)を境に低周波数域(特に1500〜2500Hz以下の領域)側においても優れた音反射性能を発揮することができる。
このような低周波数域における音反射性能の著しい向上は、質量則によっては説明することができない。そこで、本発明者らは、従来の技術からは説明のつかないこのような現象を説明するためのモデルとして、種々のパターンについて鋭意検討を行った。その過程で、本発明者らは、驚くべきことに、低周波数域における音反射性能が、質量則とは異なる遮音原理である「剛性則」に従って発揮されていることを発見した。以下、この点について説明する。
剛性則に従う音反射材における透過損失の理論値(TL)は、対象とする音波の周波数(f)、音反射材の面密度(m;単位面積当たりの質量)および音反射材の面剛性(K)を用いて、下記数式3に従って算出される。なお、面剛性(K)は、支持部(格子状構造体)によって区画されたシートの区画部の1つを、質量mのマスを有し、音波の入射に対して振動するマスバネモデルに近似したときのバネ定数であり、Kが大きいほど入力に対する変形しにくさが大きいことに相当する。
Figure 2021189212
そして、この式をTLが極小値をとる条件で周波数(f)について解くと、共振周波数(f)の値は、下記数式4のように表される(図8)。
Figure 2021189212
このことに基づき、本発明者らは、質量則(図6)および剛性則(図8)の双方が音反射性能の発現に関与していると仮定した場合のモデル式の作成を試みた。そして、このモデル式が実際に測定された透過損失(TL)の結果と整合することを確認し、本形態に係る音反射材による音反射性能の発揮メカニズムには質量則および剛性則の双方が関与していることを検証するに至ったのである(図9)。
本形態に係る音反射材による音反射性能の発揮メカニズムにおいて、質量則のみならず剛性則も関与している理由については完全には明らかとはなっていないが、弾性を有するシートの区画部はそれぞれ、支持部(筒状セルを有する格子状構造体)によって区画されていることによりシートの剛性が向上している(すなわち、振動しにくくなっている)と考えられる。したがって、本発明者らは、上述したマスバネモデルによる近似によって、メカニズムがうまく説明されうるのではないかと推測している。
以上のようなメカニズムを前提として、本発明者らは、音反射材の音反射特性の設計に必要な要素についてさらに検討を進めた。その過程で、本発明者らは、弾性を有するシートの区画部のそれぞれを面積が等しくなる半径aの円板で近似し、荷重pが入力されたときの当該区画部の面剛性(k;本明細書では、本近似に従う場合の面剛性の値を小文字のkで表すものとする)を、当該円板が周辺固定・等分布荷重モードで振動するときの平均たわみ(wave)を用いて下記数式5のように算出した。本明細書では、このkの値が数式1において用いられるのである。
Figure 2021189212
なお、数式5において、νは区画部におけるシートのポアソン比であり、Eは区画部におけるシートのヤング率[Pa]であり、hは区画部におけるシートの膜厚[m]である。また、区画部を円板に近似した際の半径aは、区画部の面積等価円半径[m]である。一例として、区画部が1辺の長さがl(エル)の六角形である場合、当該区画部(六角形)の面積Shexは、下記数式6のように算出される。
Figure 2021189212
そうすると、この区画部(六角形)の等価円半径aeq(区画部(六角形)の面積と等しい面積を有する円の半径)は、下記数式7のように算出される。
Figure 2021189212
そして、このようにして算出された面剛性(k)の値を、上述した数式4における面剛性(K)の値として採用すると、共振周波数(f)の値は、下記数式8のように表すことができる。
Figure 2021189212
なお、区画部におけるシートの面密度(m)は、下記数式9のように表すことができる。
Figure 2021189212
数式9において、ρは前記区画部におけるシートの密度[kg/m]であり、hは前記区画部におけるシートの膜厚[m]である。
このため、数式8と数式9とから、共振周波数(f)の値は、区画部におけるシートの密度(ρ;単位体積当たりの質量;kg/m)の値と、上述した区画部におけるシートの膜厚[m]の値を用いて、下記数式10のように表すことができる。このことは、区画部のサイズや形状、区画部におけるシートの材質および膜厚を種々変更することにより、音反射材が示す共振周波数(f)の値を制御可能であることを意味する。
Figure 2021189212
上述したように、本発明が解決しようとする課題は、1500〜2500Hzの周波数域においてよりいっそう高い音反射性能を発揮しうる手段を提供するというものである。そして、図8および図9に示すように、共振周波数(f)を境にして、周波数が小さくなるほど剛性則に従う音反射性能(透過損失の値)は優れたものとなる。したがって、本発明者らは、共振周波数(f)をある程度以上の値に設定することで、2500Hz以下の周波数域の音に対する音反射性能を向上させることができるのではないかと考えた。そして、この考えのもと、上述した数式10に従い、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部とを備える音反射材において、区画部のサイズや形状、区画部におけるシートの材質および膜厚を種々変更することにより、異なる共振周波数(f)を有する音反射材を多数作製し、そのそれぞれについて音反射性能を評価した。その結果、上記区画部におけるシートの面剛性(k;上記数式5により算出される)およびシートの面密度(m;上記数式9により算出される)が下記数式1の関係を満足することで、特に2500Hz以下の周波数域においても優れた音反射性能を発揮しうることを確認した。下記数式1は、上述した近似に基づき算出される共振周波数(f)が900[Hz]よりも大きいことを意味している。
Figure 2021189212
ここで、数式1における左辺の値の形態は特に制限されず、音反射材に対して音反射性能を発揮させたい周波数領域に応じて適宜設定することができる。一般に、数式1における左辺の値を大きくするほど共振周波数は高周波数側にシフトすることから、このことを考慮して適宜設定すればよい。一例として、数式1における左辺の値は、好ましくは1400Hz以上であり、より好ましくは2000Hz以上であり、さらに好ましくは3000Hz以上であり、いっそう好ましくは4000Hz以上であり、特に好ましくは5000Hz以上である。数式1における左辺の値は、例えば10000Hz以上であり、例えば50000Hz以上であり、例えば100000Hz以上である。なお、本発明に係る技術的思想の範囲内で音反射性能を発揮する音反射材において、数式1における左辺の値の上限値としては、好ましくは1000000Hz以下であり、より好ましくは800000Hz以下であり、さらに好ましくは600000Hz以下である。
上述したように、本発明に係る音反射構造体によれば、音反射材の区画部を構成するシートの面剛性および面密度が所定の関係を満足するように制御するとともに、当該音反射材と基板との間に振動分離層をさらに配置することで、特に1500〜2500Hzの周波数域における音反射性能をよりいっそう向上させることが可能である。したがって、本発明に係る音反射構造体は、ホワイトノイズに対する挿入損失曲線が1500〜2500[Hz]の周波数域に極大値を有するものであることが好ましい。また、この際の挿入損失曲線の極大値は、50[dB]以上であることがより好ましい。
ところで、非特許文献1に開示された技術においては、セルサイズが大きすぎる結果、弾性を有するシートの面剛性が小さくなり、(k/m)1/2/2πの値が900Hz以上とはならないため、特に2500Hz以下の周波数域において優れた音反射性能を発揮することができないと考えられる。
以下、音反射材10の構成要素について、より詳細に説明する。
(弾性を有するシート)
弾性を有するシート(図1および図2に示すラテックスゴムシート200に相当)の構成材料について特に制限はなく、弾性を有する材料であれば種々の材料が用いられうる。本明細書において、ある材料が「弾性を有する」とは、ヤング率の値が0.001〜70[GPa]の範囲内の値である材料から構成されていることを意味する。なお、ヤング率の値は、樹脂についてはJIS K7161−1(2014年)により測定されうる。また、金属のヤング率についてはJIS Z2241(2011年)により測定されうる。そして、ゴムのヤング率についてはJIS Z6251(2010年)により測定されうる。弾性を有するシートの構成材料については、上述した実施形態において用いられているラテックスゴムのほか、国際公開第2019/022245号パンフレットの開示が適宜参照されうる。
弾性を有するシートの膜厚は、音反射材の音反射効果の観点から、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは100〜500μmである。
(支持部(格子状構造体))
支持部は、上述した弾性を有するシートを支持するとともに当該シートを(気密的に区画された)区画部に区画するものである。このような機能を発現可能な構成を有するものであれば、支持部の具体的な構成について特に制限はない。図1〜図3は多数の区画部が存在するように記載されているが、区画部は1つのみであっても本発明の範囲内のものである。
支持部の構成材料について特に制限はなく、上述した実施形態において用いられているポリ塩化ビニル樹脂のほか、国際公開第2019/022245号パンフレットの開示が適宜参照されうる。
上述したように、支持部は、連続的に形成された多数の筒状セルを有する格子状構造体であることが好ましい。この場合、支持部は、弾性を有するシートを複数の区画部に区画することとなる。そしてさらに、当該複数の区画部の少なくとも一部は、同一の外郭形状を有する複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成するものであることがより好ましい。このような構成とすることにより、製造が容易で、かつ同一形状の多数の区画部の存在によって所望の周波数域の音波に対する音反射性能を特異的に発現させることができる。この際、音反射性能をよりいっそう発揮させるという観点から、弾性を有するシートの面積に占める上記規則配列構造の面積の割合は、好ましくは80〜100%であり、より好ましくは90〜100%であり、さらに好ましくは95〜100%であり、いっそう好ましくは98〜100%であり、特に好ましくは99〜100%であり、最も好ましくは100%である。なお、1つの上記シートに対して少なくとも1つの格子状構造体(支持部)が、複数の部材に分割されていてもよい。このような構成とすることにより、本形態に係る音反射材は、全体として可撓性を有するものであることが好ましい。ただし、支持部が複数の部材に分割されていない形態であっても、音反射材が全体として可撓性を有することは好ましい実施形態である。このように音反射材が可撓性を有することで、種々の形状の音源に追従させた形で音反射材を配置することが可能となるため、好ましい。
上述した規則配列構造における区画部の外郭形状(格子状構造体の延在方向に垂直な断面における筒状セルの断面形状)は、図2〜図4に示すような正六角形に限定されず、その他の形状であってもよい。同一の断面形状を有する正多角形を連続的に形成することによって多数の筒状セルを配置するのであれば、断面形状としては正六角形のほか、国際公開第2019/022245号パンフレットに開示された断面形状や配置パターンが適宜参照されうる。
格子状構造体を構成する筒状セルのサイズについても、上述した数式1を満足するものであれば具体的な値について特に制限はなく、格子状構造体がハニカム構造を有する場合における筒状セルの好ましいサイズについては、国際公開第2019/022245号パンフレットの開示が適宜参照されうる。
また、筒状セルの壁の厚さ(図4に示す距離t)は、好ましくは10〜150μmであり、より好ましくは30〜100μmである。
図1〜図4に示す実施形態において、格子状構造体(支持部)は弾性を有するシートの片面のみに設けられている。ただし、少なくとも1つの弾性を有するシートの両面に、格子状構造体(支持部)が設けられた形態であっても、やはり同様にして優れた音反射性能を発揮することが可能である。この場合、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(支持部)の形態は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。なかでも、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(支持部)の形態は互いに異なるものであることが好ましい。また、この際、格子状構造体(支持部)の筒状セルの形状が弾性を有するシートの両面でちょうど重なり合うようにそれぞれの格子状構造体を配置することがより好ましい。このような構成とすることで、特に優れた音反射性能が発揮されうるという利点がある。
本形態においては、格子状構造体(支持部)の延在方向の高さが大きいほど、2000Hz以下の低周波数域の広い範囲にわたって特に優れた音反射性能が発揮されうる傾向にある。このような観点から、格子状構造体(支持部)は高さが均一な単一の構造体であることが好ましい。また、この場合において、格子状構造体の延在方向の高さ(図2に示す距離h)は、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは6mm以上であり、さらに好ましくは13mm以上であり、いっそう好ましくは19mm以上であり、特に好ましくは22mm以上であり、最も好ましくは25mm以上である。
本形態に係る音反射材は、上述したように、軽量であることが好ましい。この観点から、本形態に係る音反射材の全体としての面密度は、好ましくは3.24kg/m未満であり、より好ましくは2.0kg/m以下であり、さらに好ましくは1.5kg/m以下であり、特に好ましくは1.0kg/m以下である。
上述したように、本発明者らの検討によれば、本形態に係る音反射材は吸音材としての性能(吸音性能)を有しておらず、専ら入射音を反射することによって音反射性能を発揮していることが判明している。このことについては、後述する実施例の欄において図11および図12を参照しつつ詳細に説明している。
本形態に係る音反射材は、図1等に示す実施形態のように、基板上に配置されて音反射構造体を構成することで、種々の音源由来の騒音を遮蔽する用途に好適に用いられうる。
音反射構造体を構成する基板としては、基本的に通気性のない金属板(鉄板、アルミニウム板など)や樹脂板などが用いられうる。基板の厚さは、金属板の場合には0.5〜2.0mmの範囲が好ましく、樹脂板の場合には0.5〜20mmの範囲が好ましい。
なお、本形態に係る音反射構造体を音源に対して配置する際の配置形態について特に制限はない。本形態に係る音反射構造体を音源に対して配置する際には、格子状構造体(支持部)を構成する筒状セルの延在方向に音源が位置するように配置することが好ましい。また、このように配置する際には、音反射材を構成する弾性を有するシートが音源側に位置するように配置してもよいし、音反射材を構成する筒状セルの開口部が音源側に位置するように配置してもよいが、より音反射性能に優れるという観点からは、前者の配置形態がより好ましい。
本形態に係る音反射材は非常に軽量に構成することが可能である。本形態に係る音反射材は、このように軽量化が可能であることから、車両等の移動体に搭載されて用いられることが好ましい。特に、自動車等の車両において、エンジンやトランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)から発生する騒音に対する音反射用途に適用されることが最も好ましい。
上述したように、本発明の一形態に係る遮音システムは、上記で詳細を説明した音反射材と、集音手段とを含むものである。そして、本形態に係る遮音システムは、前記音反射材の表面に対する法線方向の前記集音手段と前記音反射材との距離が80mm以上となるように前記集音手段および前記音反射材が配置されている点に特徴がある。
ここで、「集音手段」とは、周囲の音を収集することができる手段を意味する。集音手段の例としては、人間の耳またはマイクロフォンが挙げられる。上述したように、本発明に係る音反射材を用いると、当該音反射材からの、当該音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上の領域では十分な音量の低減効果が得られる。したがって、音反射材の表面に対する法線方向の集音手段と音反射材との距離が80mm以上となるように集音手段および音反射材を配置することで、人間の耳やマイクロフォンによって認識される音量を有意に低減させることが可能となる。
このような効果が得られるように音反射材と集音手段とを配置する具体的な実施形態について特に制限はなく、これらの間の(音反射材の表面に対する法線方向の)距離が80mm以上となるように配置されていればよい。そのような実施形態の一例として、本形態に係る遮音システムを自動車に適用した例を図10に示す。
図10に示す実施形態においては、車両2のキャビンの前方に位置するダッシュパネル(エンジンルームとキャビンとの隔壁板;基板10として機能する)に、本発明に係る音反射材20が配置されている。これにより、基板10としてのダッシュパネルと音反射材20との積層体は、音反射構造体1を構成している。このような構成とすることにより、固有音源であるエンジンルームにおいて発生した音のキャビン側への伝達が抑制される。ここで、自動車2の乗員の座席のヘッドレスト30の、音反射材からの音反射材の表面に対する法線方向の距離は80mm以上となるように構成されている。そして、乗員の乗車時に当該乗員の耳はヘッドレスト部分に位置することになる(図10に示す想定位置30’)。したがって、乗車した乗員の耳の、音反射材からの音反射材の表面に対する法線方向の距離もまた、80mm以上となるはずである。その結果、集音手段として機能する乗員の耳によって集音されるエンジンルームからの騒音の音量は有意に低減されるのである。
さらに、図10に示す実施形態においては、車両2のキャビンの天井内側には、マイクロフォン40(集音手段として機能する)が設置されている。このマイクロフォン40は、乗員が発した音声による指示を集音して、カーナビゲーションシステムを操作したり、電話機を持たずに会話が可能なハンズフリーテレフォンの音声入力手段として用いられうる。ここで、自動車2のキャビンの天井内側に設置されたマイクロフォン40の、音反射材からの音反射材の表面に対する法線方向の距離は80mm以上となるように構成されている。その結果、集音手段として機能するマイクロフォン40によって集音されるエンジンルームからの騒音の音量は有意に低減されるのである。
なお、図10に示す実施形態においては、自動車2のダッシュパネルを基板10として用いて音反射構造体1を構成した遮音システムについて説明したが、本発明の技術的範囲はこのような形態のみには限定されない。例えば、ダッシュパネルに代えて、フロアパネル、ドアパネル、トランクルームとのセパレータ、ラゲッジルームセパレータ、フロアカーペット、内装トリム部品、内装カバー部品などを基板10として用いて音反射構造体1を構成し、遮音システムとしてもよい。この際、音反射構造体1を構成する際の基板10と音反射材20との配置形態は特に制限されないが、取り付けが簡便であるという観点からは、基板10に対してキャビン側に音反射材20が位置するように配置することが好ましい。
また、遮音システムの適用対象として、図10では自動車を例に挙げて説明したが、自動車に限らず、区画構造によって内部空間と外部空間とを密閉可能なように区画する区画構造体の内部に集音手段が配置されるものであればいかなる対象にも適用可能である。これにより、集音手段によって認識される、上記区画構造(例えば、自動車のボデー)中に位置する音源(例えば、自動車のエンジン)や外部空間(例えば、自動車の外部の環境)に存在する音源からの騒音の音量を音反射材によって優位に低減することが可能となる。すなわち、本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、集音手段は、区画構造によって内部空間と外部空間とを密閉可能なように区画する区画構造体の内部に配置されており、音反射材は、当該区画構造中の音源または外部空間に存在する音源と当該集音手段との間に配置されている。この好ましい実施形態が適用される対象としては、自動車のほか、トラック、バスなどの四輪車、バイクなどの二輪車、三輪車、列車、航空機、船舶などの移動体が好ましい。ただし、本発明に係る遮音システムの適用対象は移動体に限定されるわけではなく、例えば、家屋、ビル、工場、工事現場などの種々の騒音が問題となりうる場所に適用されてもよい。
なお、本発明のさらに他の形態によれば、用途を限定した音反射材、および、遮音方法もまた、提供されうる。具体的に、本発明の他の形態によれば、集音手段により集音される音の音量を低減させるのに用いられる音反射材であって、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、上述した数式1の関係を満足し、前記集音手段との間の前記音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上となるように配置されて用いられる音反射材が提供される。また、本発明のさらに他の形態によれば、集音手段により集音される音の音量を低減させる遮音方法であって、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足する音反射材を、前記集音手段との間の前記音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上となるように配置することを含む遮音方法もまた、提供される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
《音反射材の作製》
[製造例1]
弾性を有するシート(ラテックスゴムからなるシート;膜厚0.25mm)と、ポリ塩化ビニル(PVC)からなるハニカム構造体(多数の正六角形断面を有するハニカム支持体)(支持体厚さ25mm)とを準備した。ここで、ハニカム構造体を構成する筒状セルのサイズ(ハニカム構造体の断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離;図4に示す距離W)を4mmとした。次いで、上記シートの一方の面に、上記ハニカム構造体の開口断面を気密的に接着して、図2に示す構造を有する音反射材を作製した。
[製造例2]
ハニカム構造体(支持体)の厚さを12.5mmとしたこと以外は、上述した製造例1と同様にして、本製造例の音反射材を作製した。
Figure 2021189212
《吸音特性の有無の評価》
上記製造例1で作製した音反射材について、吸音特性の有無を評価した。
具体的には、まず、上記音反射材について、400〜5000Hzの周波数域の入射音に対する残響室法吸音率をJIS A1409に規定される「残響室法吸音率の測定方法」に準拠して測定した。なお、残響室法吸音率の測定時には、敷き詰めた粘土の表面に格子状構造体の開口断面が向き合うように配置することで、背後空気層の影響を排除した。一方、同様の入射音に対する透過率を、残響室と無響室を組み合わせた方法を用いて音響強度を測定することにより、音響透過損失(透過率)を測定した。この音響透過損失の測定においては、まず、残響室と無響室との間の開口に試料(音反射材)をセットする。次いで、残響室内のスピーカーから入射音を発生させ、残響室内の平均音圧レベルを試料(音反射材)に入射する音源側のパワーとして計測する。一方、受音側は、無響室内の試料(音反射材)の近傍にセットしたインテンシティープローブを用いて分割した測定面を測定し、試料から透過するパワーを推定する。そして、このようにして得られた入射パワーおよび透過パワーと、試料(音反射材)の面積とから音響透過損失を算出する。その結果、音響透過損失と各測定値との関係は、次式で表される。
TL=SPL−PWL+10logS−6
式中、TLは音響透過損失[dB]であり、SPLは残響室内の平均音圧レベル[dB]であり、PWLは透過音のパワーレベル[dB]であり、Sは試料(音反射材)の面積[m]である。
これらの測定結果のうち、吸音率の測定結果を図11に示し、透過率の測定結果を図12に示す。図11に示す吸音率の測定結果を示すグラフにおいて、縦軸(残響室法吸音率)が0.3以上となる周波数域については吸音性能が発現していると一般的には解釈される。しかしながら、図12に示す透過率の測定結果によれば、図11においてピークが生じている1000〜3000Hzの周波数域における透過率が上昇していることがわかる。ここで、入射音の帰趨としては反射されるか、吸収されて消失するか、透過するかのいずれかが考えられる。そして、このうち吸音率の測定においては、吸収された音のみを選択的に測定することはできず、吸収されて消失した音と透過した音との合計が入射音に対して占める割合としてしか測定することができない。この事実と、図12において1000〜3000Hzの周波数域において透過率が上昇しているという結果に鑑みれば、図11における吸音ピークは実際には吸音率の上昇を反映しているわけではなく、透過率が上昇していることを反映しているに過ぎないということがわかる。
以上のことから、本発明に係る音反射材は、吸音材としての性能(吸音性能)を有しておらず、専ら入射音を反射することによって音反射性能を発揮していることが理解される。
《音反射材の遮音性能の評価》
[比較例1]
従来公知の遮音材であるタカポール(日本特殊塗料株式会社製;フェルト+ゴムシート)を、そのまま本比較例の遮音材として用いた。この際、フェルトがマイクロフォンとは反対の側に位置するようにタカポールを配置して評価を行った。
[比較例2]
鉄板(厚さ1mm)を、そのまま本比較例の遮音材として用いた。
[実施例1]
上記製造例1において作製した音反射材を、本実施例の音反射材として用いた。この際、支持部(ハニカム構造体)がマイクロフォンとは反対の側に位置するように音反射材を配置して評価を行った。
[実施例2]
上記製造例2において作製した音反射材を、本実施例の音反射材として用いた。この際、支持部(ハニカム構造体)がマイクロフォンとは反対の側に位置するように音反射材を配置して評価を行った。
上記の各比較例および各実施例の音反射材(遮音材)について、遮音性能を評価した。具体的には、図13に示すような塩化ビニル樹脂板からなる遮音ボックスの内部にスピーカー(音源)を配置し、遮音ボックスの開口部(サイズ170mm×170mm)にサンプル(音反射材)を配置した。また、遮音ボックスの開口部におけるサンプル(音反射材)の周囲からの音漏れを防止するために、サンプル(音反射材)の周囲にゴムシートを配置した。そして、遮音ボックスの内部に設置したスピーカー(音源)から音を発生させて、サンプル(音反射材)を配置しない場合(コントロール)と比較してどの程度の遮音性能が得られているかを評価した。なお、サンプルのサイズは200mm×200mmとし、サンプルの中心部の鉛直上方にマイクロフォンをセットした。また、サンプル(音反射材または遮音材)の表面からマイクロフォンまでの距離を10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、80mm、100mm、120mm、140mm、160mm、180mm、200mm、250mm、300mm、350mm、400mm、450mmおよび500mmで変化させて音圧レベル[dB]を測定した。なお、音圧レベルとしては、400〜2000[Hz]における各周波数の騒音レベルの総和をとった合成レベル(オーバーオール(OA)値)を採用した。
上記の各比較例および各実施例について遮音性能を評価した結果を図14に示す。図14に示す結果からわかるように、比較例で用いた従来公知の遮音材(タカポール、鉄板)の場合には、予測された通り、サンプル表面からマイクロフォンまでの距離が増加するにつれて、音響ノイズのOAレベルも線形的に低下していることがわかる。一方、実施例で用いた本発明に係る音反射材の場合には、サンプル表面からマイクロフォンまでの距離が増加しても当該距離が80mm未満の領域では音響ノイズのOAレベルの低下は確認されなかった。これに対し、本発明に係る音反射材を用いた場合には、サンプル表面からマイクロフォンまでの距離が80mm以上の領域では距離の増加に伴って音響ノイズのOAレベルが徐々に低下することがわかる。
以上のことから、本発明に係る音反射材による音量の低減効果を十分に発揮させるためには、音反射材の表面に対する法線方向の当該音反射材からの距離が80mm未満の領域に集音手段(人間の耳またはマイクロフォン)が配置されないようにすることが有効であることが示された。
1 音反射構造体、
2 自動車、
10 音反射材、
20 基板、
30 ヘッドレスト、
30’ 乗員の耳の想定位置、
40 マイクロフォン、
100 格子状構造体(支持部)、
110、110a 筒状セル、
200 ラテックスゴムシート(弾性を有するシート)、
300 アクリル板、
400 ウレタンフォーム、
h 支持体(筒状セル)の延在方向の高さ、
w 筒状セルのサイズ(断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離)、
a 筒状セルの断面形状である正六角形の一辺の長さ、
t 筒状セルの内壁(格子壁)の厚さ。

Claims (13)

  1. 音反射材と、集音手段と、を含む遮音システムであって、
    前記音反射材は、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
    前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、
    前記音反射材の表面に対する法線方向の前記集音手段と前記音反射材との距離が80mm以上となるように前記集音手段および前記音反射材が配置されている、遮音システム:
    Figure 2021189212
  2. 前記集音手段が人間の耳またはマイクロフォンである、請求項1に記載の遮音システム。
  3. 前記集音手段は、区画構造によって内部空間と外部空間とを密閉可能なように区画する区画構造体の内部に配置されており、
    前記音反射材は、前記区画構造中の音源または前記外部空間に存在する音源と前記集音手段との間に配置されている、請求項1または2に記載の遮音システム。
  4. 前記区画構造体が移動体である、請求項3に記載の遮音システム。
  5. 前記移動体が車両である、請求項4に記載の遮音システム。
  6. 前記車両の乗員の座席のヘッドレストから前記音反射材までの、前記音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上である、請求項5に記載の遮音システム。
  7. 前記面剛性(k)および前記面密度(m)が、(1/2π)*(k/m)1/2≧1400の関係を満足する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮音システム。
  8. ホワイトノイズに対する挿入損失曲線が1500〜2500[Hz]の周波数域に極大値を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遮音システム。
  9. 前記極大値が50[dB]以上である、請求項8に記載の遮音システム。
  10. 前記支持部は前記シートを複数の区画部に区画しており、前記複数の区画部の少なくとも一部は、同一の外郭形状を有する前記複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の遮音システム。
  11. 前記支持部は、高さが均一な単一の構造体である、請求項10に記載の遮音システム。
  12. 集音手段により集音される音の音量を低減させるのに用いられる音反射材であって、
    弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
    前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、
    前記集音手段との間の前記音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上となるように配置されて用いられる、音反射材:
    Figure 2021189212
  13. 集音手段により集音される音の音量を低減させる遮音方法であって、
    弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足する音反射材を、前記集音手段との間の前記音反射材の表面に対する法線方向の距離が80mm以上となるように配置することを含む、遮音方法:
    Figure 2021189212
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