JP2022143908A - グルテン改良用酵素 - Google Patents

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Abstract

【課題】 グルテン改良用酵素、およびそのような酵素を用いた改良グルテンの製造方法、グルテン含有食品の物性改良方法を提供することにある。【解決手段】特定のアミノ酸配列を含有する酵素を用いることで、グルテン改良効果に優れた組成物が得られる。【選択図】 なし

Description

本発明は、食品の生地におけるグルテンを改良することのできる酵素及び当該酵素を用いた改良グルテンの製造方法、グルテン含有食品の物性改良方法に関する。
小麦やライ麦等より得ることができるタンパク質の1種であるグルテンは、柔軟性及び粘弾性を併せ持ち、その量や構造は、食品の形状、容積、食感を決定する重要なファクターである。よって、小麦粉等自体のグルテン強度の強化は、生地物性の改良を行うためのひとつの手段となり、具体的には、生地や生地原料へのビタミンC(L-アスコルビン酸)や塩分の添加、生地の水分量やpHの調整、生地の糖分や油脂量の調整などによって行われる。
しかしながら、上記の方法は、小麦粉等中のグルテン量によっては、効果が出にくいこともあり、小麦粉等とは別に、グルテン自体を添加して、強化する方法もある。また、添加するグルテン自体を改良し効果を高める方法が、従来、検討されている。例えば、特許文献1には、グルテンを酸性水溶液に添加してグルテン分散物を調製し、加熱処理することにより吸水性と乳化性を備えたグルテン改質物を製造する方法が開示され、乳酸水溶液を用いて調製したグルテン改質物を生地に添加した食品は伸展性に優れ、ソフトな食感であることが記載されている。また、特許文献2には、pHが2.0より大きく5.0未満
であるグルテンの酸性分散液に、電荷を有する増粘剤を加えて、グルテンとの凝集物を得た後、該凝集物を乾燥、粉砕することよって改質グルテン粉末を製造する方法が開示され、当該改質グルテン粉末をパンや麺などに用いると、低pHでも弾力性のある食感が保持できることが記載されている。また、特許文献3には、グルテンをpH2.0~6.0の酸性溶液中で分散させたものを60~160℃で加熱変性処理を施した後、乾燥することにより、加工特性の高いグルテン乾燥粉末を製造する方法が開示されている。また、グルテンをプロテアーゼで処理して加水分解グルテンを製造する方法(特許文献5)や酸化剤による酸化で少なくとも部分的に不活性化されたプロテアーゼを含有するベーキング用酵素組成物(特許文献6)、トランスグルタミナーゼ、L-アスコルビン酸及びパン類用乳化剤を含有する冷凍生地用パン品質改良剤(特許文献7)などが知られている。
一方で、特定のアミノ酸配列を含有するポリペプチドにタンパク質の分解活性を有すること(特許文献8)などが知られている。
しかしながら、特定のアミノ酸配列を含有する酵素にグルテンを改質させること、およびそのような酵素にグルテン含有食品の物性を改良できることは知られていなかった。
特開2014-198037号公報 特許第4168102号公報 特公昭52-24579号公報 特開昭63-079552号公報 特開平03-143355号公報 特開平10-004958号公報 WO2014/157577号公報 特開2019-187269号公報
京都女子大学食物學會誌18(1966)、1-5 吉野精一、「パンの科学」、講談社、2018、p53
本発明の目的は、特定のアミノ酸配列を含有するグルテン改良用酵素、およびそのような酵素を用いた改良グルテンの製造方法、グルテン含有食品の物性改良方法を提供することにある。
本発明は、以下の(a)~(d)に関する。
(a)グルテン改良用酵素であって、
前記酵素が下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドであるグルテン改良用酵素。
(1)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と同一配列を有するポリペプチド
(2)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)本発明のポリペプチドが、ストレプトマイセス属に由来するものである、(a)記載のグルテン改良用酵素、
(c)グルテンと、酵素を接触させる工程を含む、改良グルテンの製造方法であって、
前記酵素が下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドである改良グルテンの製造方法。
(1)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と同一配列を有するポリペプチド
(2)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(d)上記(a)または(b)記載のグルテン改良用酵素を用いた食品の物性改良方法、などを提供するものである。
本発明によれば、グルテンを改良させることのできる酵素、そのような酵素を用いた食品の生地における改良グルテンおよびその製造方法が提供される。さらに、本発明の改良グルテンを例えば食品生地に添加することで、これらのグルテン含有食品における物性改良方法が提供される。
グルテンの分解性 グルテンの凝集外観観察 走査電子顕微鏡観察(条件:200倍(上段)、800倍(下段)) 顕微ラマン分光装置によるスペクトル図 顕微ラマン分光装置による励起波長の棒グラフ エクステンソグラフの結果
本発明は、グルテン改良用酵素であって、前記酵素が下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドであるグルテン改良用酵素である。
(1)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と同一配列を有するポリペプチド
(2)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
本発明はまた、グルテンと、酵素を接触させる工程を含む、改良グルテンの製造方法であって、前記酵素が、下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる改良グルテンの製造方法である。
(1)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と同一配列を有するポリペプチド
(2)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
また本発明は、前記グルテン改良用酵素を用いたグルテン含有食品の物性改良方法である。当該グルテン改良用酵素は、パン生地改良剤、麺生地改良剤として好適に用いられる。
本発明におけるグルテンは、小麦やライ麦などの穀物粉に水を加えて混捏すると、グリアジンとグルテニンの相互作用により形成されるタンパク質であり、粘弾性、吸水性、伸展・伸長性を有することを特徴とする。本発明のグルテンは、小麦粉に水を加え混捏することによって調製した生地からデンプン質を洗い流すことによって分離することができる。本発明において用いるグルテンは、いかなるグルテンであってもよく、由来となる穀物も分離方法も特に限定されないが、小麦由来のグルテンが好ましい。また、分離されたグルテンは、分離したままのウェットタイプ(生グルテン)であっても、また、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)などの各種乾燥方法を用いて乾燥させて粉末状にした活性グルテン(vital gluten)のいずれであってもよいが、活性グルテンが好ましい。活性グルテンを用いる場合、その水分含量は、好ましくは10%未満、より好ましくは9%未満、さらに好ましくは8%未満、最も好ましくは6%未満である。
本発明の酵素は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、約18kDa、約14kDa、約11kDaの分子量をしめし、単体の分子量組成としても良いが、約18kDa及び約14kDa及び約11kDa、約18kDa及び約14kDa、18kDa及び11kDa、14kDa及び11kDa等の複合分子量を組成物としても良い。
本発明の酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を含むものである。本発明のポリペプチドは、配列番号1アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。
本発明の酵素は、分子量約18kDa、約14kDa、約11kDaを示し、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。配列同一性は、例えば、配列番号1の配列に対して、クエリー配列( 評価対象の配列) を、適切にアラインメントし、算出された値である。具体的には、本願においては、配列同一性は、CLUSTALアルゴリズムで算出された値である。
本発明のグルテン分解活性を有する酵素は、遺伝子工学的に製造することができる。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、配列番号1をコードする塩基配列、又は配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列から選択し、利用することができる。塩基配列の配列同一性は、CLUSTA L アルゴリズムで算出された値である。
本発明のグルテン分解活性を有する酵素は、当該ポリペプチドの発現用担体を用いて、例えば、Streptomyces属などの放線菌を宿主として、製造することができる。使用するベクターは、放線菌用ベクターであれば利用でき、特開2014-207898に記載のベクターなどを利用することができる。宿主とする放線菌は、一般に入手可能な放線菌を利用することができるが、特にStreptomyces属に属する放線菌を利用することが望ましい。具体的には、例えば、Streptomyces erythraeus、Streptomyces griseus、Streptomyces omiyaensis、Streptomyces fradiae、Streptomyces roseoflavus、Streptomyces septatus、Streptomyces lividans、Streptomyces lavendulae、Streptomyces virginia、Streptomyces coelicolor などがある。本発明の組み換えポリペプチドの製造では、培地組成、培地pH、培養温度、培養時間などは、適宜最適条件を決定することで効率よく製造することができる。
本発明の酵素は、組み換えによる遺伝学的製造以外に、Streptomyces属の微生物から単離することができる。例えば、Streptomyces erythraeus、Streptomyces griseus、Streptomyces omiyaensis、Streptomyces fradiae、Streptomyces roseoflavusなどがある。当該微生物から、一般的なタンパク質を分離し、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、且つ分子量約18kDa、約14kDa、又は約11kDaを示すポリペプチドを単離する。
培養工程で用いる培地は、本発明で使用する細胞が資化できる炭素源、窒素源、無機塩類を含有する培地を使用することができる。天然培地、合成培地のいずれを用いても良い。
培養条件は、培地の種類、培養方法などにより適宜選択すればよく、細胞が増殖し、本発明の酵素を産生できる条件であれば特に制限はない。
培養後、培養上清を得る。培養上清は、細胞と培地成分を分離することで得られる。分離方法は、遠心分離、フィルタープレスなど、一般的な方法でよい。
培養上清を酵素液として使用することもできるが、UF濃縮、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等により処理し、精製し、酵素液を得ても良い。
酵素液は、そのままグルテン分解酵素として使用できるが、乾燥してもよい。乾燥方法に制限はないが、酵素活性を損なわない乾燥方法を適宜選択する。
前段までの方法により得られた本発明の酵素は、従来のグルテンを分解する方法により得られた酵素と異なるため、従来の方法とは、異なる分解活性を示す。
本発明において、グルテンと、酵素を接触させる際は、酵素を液体の媒体に溶解させた状態で用いることが好ましく、その媒体となる液体は、水が好ましい。グルテンと酵素を含む溶液の調製方法は、グルテンを液体に分散させた後、酵素や酵素の溶解液を添加する方法、グルテンに対して、酵素の溶解液を添加する方法、グルテンと酵素を混合したものに、液体を添加する方法、グルテンと酵素を混合したものを、液体に添加する方法のいずれであってもよい。
グルテンと、酵素を接触する際、グルテンに対する酵素の量は、例えばグルテン100重量部に対し、0.5重量部以上、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上、さらに好ましくは4.0重量部以上である。また、グルテンに対する酵素の量の上限は、特に限定されないが、例えば、グルテン100重量部に対し、100重量部未満、好ましくは50重量部未満、より好ましくは15重量部未満、さらに好ましくは13.5重量部未満、さらにより好ましくは12重量部未満、11重量部未満、最も好ましくは10重量部以下である。
本発明のグルテンと、酵素を接触させる際のpHは、4.0~10.0、より好ましくは5.0~7.5である。
本発明のグルテンと、酵素を接触させる際の温度は、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。40℃では、グルテン等がダマになり、目的の改良されたグルテンを得ることができない。また、加熱処理の温度の上限は特にないが、水溶液での反応であり、反応物が熱変性を受けるタンパク質ということを考慮すると、100℃以下、好ましくは100℃未満、より好ましくは95℃未満、さらに好ましくは40℃以下である。
上記接触させる際の時間は、温度により適宜調整すればよいが、30分以上、好ましくは60分以上、より好ましくは90分以上、さらに好ましくは120分以上、さらにより好ましくは150分以上である。上記加熱処理の時間は、特に、上限を定めないが、工業的な生産性を考慮すると、好ましくは1440分以下、より好ましくは1080分以下、さらに好ましくは720分以下、さらにより好ましくは600分以下、最も好ましくは480分以下である。
上記グルテンと、酵素を接触させることにより得られたグルテン(以下、「改良グルテン」と呼ぶ)は、そのまま用いてもよいし、乾燥させて、固形化や粉末化して用いてもよい。乾燥方法は特に限定されず、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、ドラム乾燥法(ドラムドライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)などの各種乾燥方法を用いることができる。
本発明の改良グルテンは、グルテンを用いた麩菓子、餃子の皮、グルテンミート等の食品の原料として用いることもできる。また、グルテンネットワークを強化するために、例えば、麺類などの食感の改良剤としても用いることもできるが、パン生地改良剤として用いてもよい。
本発明の改良グルテンは、ジスルフィド結合などグルテンの高次構造の形成が促進されており、ネットワーク構造が細かく形成されていることが特徴である。このため、本発明の改良グルテンを食品の生地に添加することで、生地におけるグルテンネットワークの劣化を抑制することもできる。
本発明のグルテン改良用酵素は、食品の生地改良剤として単独で用いることもできるが、食品を製造する際に一般的に使用する、他の食品材料や、添加物、香料、色素などを混合して、製剤化してもよい。例えば、当該食品生地改良剤には、各種食用油脂、乳製品、果汁、穀物粉等や、モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウムやステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ(ペントサナーゼ)、セルラーゼ、グルコースオキシダーゼ、プロテアーゼ等の酵素、システイン、シスチン、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸、グリシン等のアミノ酸、コラーゲンや大豆タンパクやペプチド等、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸2水素カルシウム等の無機塩、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC(L-アスコルビン酸)、ビタミンE等のビタミン、エタノール、グリセロール等のアルコール、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖等の糖類、アラビアガム、アルギン酸、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドガム、ペクチン等の増粘多糖類、デキストリン、各種澱粉等の賦形剤等を含有させてもよい。また、食品生地改良剤の形態は特に限定されず、液状、顆粒状、ペースト状、乳液状のいずれの形状であってもよい。
本発明のグルテン改良用酵素を用いた生地の調製と食品の製造は、食品用の穀粉生地原料に、本発明のグルテン改良用酵素を添加する以外は通常の方法で行なうことができる。また、事前に、本発明のグルテン改良用酵素を小麦粉等と混合し、ミックス粉としてもよい。
食品生地の調製に用いられる穀粉としては、グルテンを含有していれば特に限定されるものではないが、小麦、大麦、ライ麦等の穀類から得られる穀粉があげられ、好ましくは小麦粉が用いられる。小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉および薄力粉のいずれの種類ならびに等級のものを用いてもよい。
本発明のグルテン改良用酵素の穀粉生地に対する添加量は、穀粉100重量部に対して通常0.1~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~5重量部である。
本発明において製造される食品の種類は、グルテンを含有していれば特に限定されず、麺類(そば、うどん、ラーメン、パスタ等)、餃子の皮、煎餅、クッキー等のスナック菓子類、食パン、ロールパン、硬焼きパン、菓子パン(チョコレートペースト入りコロネ、ジャム入りパン等)、調理パン(サンドイッチ、ハンバーガー、カレーパン等)、むしパン等のパンのほか、まんじゅう、ドーナツ、クッキー、クラッカー、パイ、ピザ、ホットケーキ、スポンジケーキ等の菓子類も含む。
生地の原料には、主原料として穀粉(小麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉等)、副材料として水、酵母(イースト)、食塩、糖類、油脂(ショートニング、ラード、マーガリン、バターなど)、乳製品(牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、練乳等)、卵、イーストフードなどが含まれる。
本発明のグルテン改良用酵素の添加は、食品を製造する工程のいずれの時期であってもよい。例えば、食品生地原料中に添加して生地を作製してもよいし、原料を混合して生地を混捏(ミキシング)する際に添加してもよい。また、グルテン改良用酵素の生地原料や生地への添加方法は、乾燥させたグルテン改良用酵素の場合は穀粉と混合する方法でもよく、水等の液体に溶解または分散させてから添加する方法でもよい。
以下に、本発明の内容について実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(酵素の製造)
(1)Streptomyces nanshensis(JCM 16226)の胞子懸濁液(10個/ml以上)1白金耳を種培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、硫酸アンモニウム1g/l 、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに接種し200ml容三角フラスコで28℃、200rpmで12時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液1mlを主培地(可溶性コーンスターチ300g/l、コーン・スティープ・リカー150g/l 、脱脂大豆粉250g/l 、硫酸アンモニウム10g/l 、硫酸マグネシウム5g/l 、炭酸カルシウム30g/l、pH7.0)2000mlに移植し、10l容フラスコで28℃ 、200rpmで40時間培養し、主培養終了液を得た。
(3)酵素処理液をフィルタープレス濾過により、菌体等の固形分を除去し、分画分子量6000のUF膜で処理を行い、濃縮液画分を回収し、これをスプレードライ乾燥してポリペプチドを得た。
(酵素活性)
精製した酵素をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分子量を検討した。電気泳動後、クマシーブリリアントブルー染色法(シグマ社製) により染色した。得られた酵素は、約18kDa、約14kDa、又は約11kDaの付近にバンドが確認された。
(活性発現)
約18kDa、約14kDa、又は約11kDaのタンパク質は常法により内部アミノ酸配列、N末端アミノ酸配列を解析した結果、すべて同一のタンパク質がN末端よりプロセッシングを受けて短くなっていたタンパク質であった。
(基質特性の検討)
グルテンの分解性について実施例1で調製した酵素を用いて検討を行った。グルテン分解活性はグルテン(三菱商事ライフサイエンス社製)を基質として用いて、1時間に495 nmの吸光度を1変化させる酵素活性を1Uとした。??その結果、図1で示すように市販の中性、アルカリプロテアーゼ4種(ビオプラーゼOP、ビオプラーゼSP-20FG(以上ナガセケムテックス社製)、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、プロチンSDNY10(天野エンザイム社製))、アマノA(天野エンザイム社製)、アマノP(天野エンザイム社製)、オリエンターゼ(エイチビィアイ社製)よりもグルテンの分解性が弱いことが明らかになった。
(グルテンの改質検討)
(1) 試料の調製
蒸留水1mLに、実施例1で調製した酵素7.00mgを添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液100μlに、活性グルテン水溶液20mg/mlを900μl添加し、十分に撹拌しながら、反応pH:6.0、反応温度:25℃、反応時間:3.0hの条件で活性グルテンと酵素を反応させた。得られた反応液を30分間静置し、グルテンの凝集を外観観察した。また、得られた反応液中のグルテンについて、走査電子顕微鏡観察(日立ハイテクノロジーズ社製、条件:200倍、800倍)、ラマン顕微鏡観察(レニショー社製、条件:100倍、励起波長:785nm)を行った。
以下に、本発明の比較例を説明するが、添加した酵素量は、上記で測定したグルテンの分解活性(図1)を合わせて添加した。
(比較例1)
上記実施例1で調製した酵素7.00mgをオリエンターゼ(エイチビィアイ社製)2.5mgに変更する以外は同様にした。
(比較例2)
上記実施例1で調製した酵素7.00mgをファンガルプロテアーゼ(新日本化学社製)2.5mgに変更する以外は同様にした。
(比較例3~8)
上記実施例1で調製した酵素7.00mgを市販のアルカラーゼ(ノボザイムズ社製)2.5mg(比較例3)、ビオプラーゼOP(ナガセケムテックス社製)2.5mg(比較例4)、ビオプラーゼSP-20FG(ナガセケムテックス社製)2.5mg(比較例5)、プロチンSDNY10(天野エンザイム社製)2.5mg(比較例6)、アマノA(天野エンザイム社製)2.5mg(比較例7)またはアマノP(天野エンザイム社製)2.5mg(比較例8)に変更する以外は同様にした。
(2) 評価結果
外観観察の結果を図2に、走査電子顕微鏡観察の結果を図3に、顕微ラマン分光装置によるスペクトル図および励起波長の棒グラフの結果を図4、5にそれぞれ示す。
図2に示すように、グルテン分解活性をあわせても、市販酵素にはグルテンの凝集は見られなかったのに対し、本願発明の酵素処理区では、明らかなグルテンの凝集が発生していた。また、図3、図4および図5より、本願発明の酵素処理区は、グルテンのネットワーク構造が細かく形成されていることが確認され、αヘリックスとβシートに相当するスペクトルが、コントロールより強度が高くなっていた。これは分子量大きく切断されたグルテンが何らかの作用でジスルフィド結合などグルテンの高次構造の形成が促進されていると推察された。
(小麦生地の物性評価の検討)
実施例1で調製した酵素の小麦粉生地に対する物性改質を評価するため、ファリノグラフ(登録商標:Brabender社製)およびエクステンソグラフ(登録商標:Brabender社製)を用いた。ファリノグラフは、小麦粉と試験液を一定温度に保持したミキサー内で混合し、ミキサーに付帯されたミキサーブレードにかかる抵抗力で生地の粘性を測定したり、調節したりすることが出来る。エクステンソグラフは、混捏後、一定時間が経過した小麦粉生地について、伸張抵抗力と伸長度を測定することが出来る。
(1) 生地の調製
生地の調製は以下の手順で行った。
1) 強力粉(カメリヤ;日清製粉社製)300gを30℃に設定したファリノグラフのミキサーに入れ、1分間混合した。強力粉に含まれるグルテン量は、日本食品標準成分表(8訂)及び非特許文献2の記載より、約30gと推測される。
2)強力粉に30℃に加温した2%NaCl水溶液を生地のかたさが500BU(BU:ブラベンダーユニット)になる量添加した。
3)NaCl水溶液の添加と同時に、1%酵素水溶液を本発明の酵素は31 ppm、オリエンターゼは6 ppmになるようそれぞれ添加した。
4)1分ミキシング後、ミキサーを5分間止めて強力粉を水和させてから、9分ミキシングを行った。
5)生地を150gに分割し、エクステンソグラフ付属の丸め機及び成形機にて生地を棒状に成形した。
6)生地をエクステンソグラフ付属の30℃の醗酵室に入れた。
7)45分後1回目の測定を実施した。その後、同じ生地を使って45分おきに2回測定を繰り返した。(生地作成後90分、135分の結果になる)
(2) 評価結果
エクステンソグラフの結果を図6に示す。各図の縦軸は伸張抵抗力を、横軸は伸長度を示し、エクステンソグラムは生地が一定の長さに伸びた時に発生する生地の抵抗力を表すことから、縦軸のBU値が大きくなるほど生地物性の強度が高いと評価した。
図6に示すように、市販酵素では時間とともに生地物性強度が低下したのに対し、本発明の酵素処理区では、生地の物性強度が時間をおいても低下しなかった。
以上のように、本願発明の酵素により、改質されたグルテンを得ることができる。本発明の改良グルテンを食品生地に含有させることによって、グルテンネットワークの劣化が抑制され、ボリュームがあり、もちもちとした食感の食品が得られる。また、本発明の改良グルテンを食品生地に含有することによって、吸水量を増やすことができるので、コストダウンといった効果も得られる。また、本発明の改良グルテンは、グルテンのネットワーク構造が細かく形成さており、生地の伸展性や弾力は良好に保たれる。本発明の改良グルテンは、グルテンを用いた麺類、パン、麩菓子、餃子の皮、グルテンミート等の食品の原料として用いることもできる。
本発明によれば、グルテンを改良させることのできる酵素、そのような酵素を用いた改良グルテンの製造方法、およびグルテン含有食品における物性改良方法が提供される。

Claims (4)

  1. グルテン改良用酵素であって、
    前記酵素が下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドであるグルテン改良用酵素。
    (1)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と同一配列を有するポリペプチド
    (2)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
  2. 前記ポリペプチドが、ストレプトマイセス属に由来するものである、請求項1記載のグルテン改良用酵素。
  3. グルテンと、酵素を接触させる工程を含む、改良グルテンの製造方法であって、
    前記酵素が下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドである改良グルテンの製造方法。
    (1)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と同一配列を有するポリペプチド
    (2)配列番号1から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
  4. 請求項1または2記載のグルテン改良用酵素を用いた食品の物性改良方法。
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