JP2022142378A - レジスト塗布装置の洗浄方法、レジスト組成物の品質検査方法、レジスト組成物の製造方法 - Google Patents

レジスト塗布装置の洗浄方法、レジスト組成物の品質検査方法、レジスト組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、レジスト塗布装置を用いて形成されるレジスト膜におけるレジスト塗布装置由来の欠陥の発生を抑制できる、レジスト塗布装置の洗浄方法を提供することにある。また、本発明の課題は、レジスト組成物の品質検査方法、及び、レジスト組成物の製造方法を提供することにある。【解決手段】 レジスト塗布装置の洗浄方法であって、上記レジスト塗布装置を、SP値が16.0~21.5MPa1/2の溶剤Aを用いて洗浄する工程1と、上記工程1の後、上記レジスト塗布装置を、SP値が21.5MPa1/2超30.0MPa1/2以下の溶剤Bを用いて洗浄する工程2とを有する、洗浄方法。【選択図】なし

Description

本発明は、レジスト塗布装置の洗浄方法、レジスト組成物の品質検査方法、及び、レジスト組成物の製造方法に関する。
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法としては、レジスト塗布装置を用いて半導体基板の表面にレジスト組成物の塗膜(レジスト膜)を形成した後、得られた膜を露光して、その後、現像する方法が挙げられる。
リソグラフィーに使用されるレジスト組成物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)を含む組成物が用いられることが多い。
例えば、特許文献1には、エステル側鎖部に所定の官能基を有し、かつ(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、有機溶剤(C)とを含むポジ型レジスト組成物が開示されている。
特開2003-241385号公報
一方で、レジスト組成物の品質管理として、レジスト膜の形態にして、形成されるレジスト膜の欠陥の数によりレジスト組成物の品質を評価する欠陥検査の手法を行う場合があった。本発明者らは、上記のレジスト組成物の品質管理方法について検討を行ったところ、レジスト組成物由来の欠陥に加えて、レジスト膜の形成に用いるレジスト塗布装置由来と推定される欠陥が発生してしまい、レジスト組成物の品質管理を厳密に行うことができない場合があり、レジスト組成物の品質管理方法において更なる改善の余地があることを知見した。
本発明は、上記実情に鑑みて、レジスト塗布装置を用いて形成されるレジスト膜におけるレジスト塗布装置由来の欠陥の発生を抑制できる、レジスト塗布装置の洗浄方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、レジスト組成物の品質検査方法、及び、レジスト組成物の製造方法を提供することも課題とする。
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
〔1〕 レジスト塗布装置の洗浄方法であって、SP値が16.0~21.5MPa1/2の溶剤Aを用いて上記レジスト塗布装置を洗浄する工程1と、上記工程1の後、SP値が21.5MPa1/2超30.0MPa1/2以下の溶剤Bを用いて上記レジスト塗布装置を洗浄する工程2とを有する、洗浄方法。
〔2〕 上記溶剤AのSP値が18.5~21.5MPa1/2である、〔1〕に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔3〕 上記溶剤A及び上記溶剤Bの少なくとも一方が、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔4〕 上記工程1が、上記溶剤Aに含まれる溶剤A1を用いて上記レジスト塗布装置を洗浄する工程1-1と、上記工程1-1の後、上記溶剤Aに含まれ、上記溶剤A1とはSP値が異なる溶剤A2を用いて上記レジスト塗布装置を洗浄する工程1-2とを有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔5〕 上記溶剤A2のSP値が、上記溶剤A1のSP値よりも高い、〔4〕に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔6〕 上記溶剤A1が、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含む、〔4〕又は〔5〕に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔7〕 上記工程1の前に上記工程1に用いる上記溶剤Aをフィルターでろ過する工程X、及び、上記工程2の前に上記工程2に用いる上記溶剤Bをフィルターでろ過する工程Yからなる群より選択される少なくとも1つの工程を更に有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔8〕 上記工程1及び上記工程2で使用された溶剤の少なくとも1つを、上記レジスト塗布装置を用いて基板上に塗布する工程4と、上記工程4の後、上記基板上の欠陥の数を欠陥検査装置を用いて測定する工程5と、を更に有し、上記工程5により測定された欠陥の数が基準値を超えている場合、上記工程1及び上記工程2からなる群より選択される少なくとも1つの工程を再度実施する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の洗浄方法により洗浄されたレジスト塗布装置を用いてレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、上記レジスト膜の欠陥の数を欠陥検査装置を用いて測定する欠陥測定工程と、を有する、レジスト組成物の品質検査方法。
〔10〕 〔9〕に記載の品質検査方法に従ってレジスト組成物の品質検査を実施し、上記品質検査により得られた結果に応じて、レジスト膜の欠陥の数が低減されるレジスト組成物を製造する、レジスト組成物の製造方法。
〔11〕 〔10〕に記載の製造方法より製造されるレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、上記レジスト膜を用いて電子デバイスを製造する工程と、を有する、電子デバイスの製造方法。
本発明によれば、レジスト塗布装置を用いて形成されるレジスト膜におけるレジスト塗布装置由来の欠陥の発生を抑制できる、レジスト塗布装置の洗浄方法を提供できる。
また、本発明によれば、レジスト組成物の品質検査方法、及び、レジスト組成物の製造方法を提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、本発明の趣旨に反しない限り、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を含む基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中において、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
置換基としては、特に断らない限り、1価の置換基が好ましい。
本明細書において、「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び、電子線(EB:Electron Beam)を意味する。
本明細書において、「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書において、「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及び、EUV光等による露光のみならず、電子線、及び、イオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく、「X-O-CO-Z」であってもよい。
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分散度(以下「分子量分布」ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。
ソフトウェアパッケージ1:Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
また、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、水溶液中におけるH解離自由エネルギーを計算することで算出する手法が挙げられる。H解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算することができるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
本明細書中において、pKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
本明細書中において、pKaは、上述した通り「水溶液中でのpKa」を指すが、水溶液中でのpKaが算出できない場合には、「ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中でのpKa」を採用するものとする。
「固形分」とは、レジスト膜を形成する成分を意味し、溶剤は含まれない。また、レジスト膜を形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
本明細書において、「ガロン」との表記は「米国液量ガロン」を意味し、1ガロンは3.785412リットルに等しいものとする。
本発明に係るレジスト塗布装置の洗浄方法(以下「本洗浄方法」ともいう。)は、レジスト塗布装置を、SP値が16.0~21.5MPa1/2の溶剤Aを用いて洗浄する工程1と、工程1の後、レジスト塗布装置を、SP値が21.5MPa1/2超30.0MPa1/2以下の溶剤Bを用いて洗浄する工程2とを有することを特徴とする。
上記工程1及び工程2を有する洗浄方法により、レジスト膜におけるレジスト塗布装置由来の欠陥の発生を抑制できる詳細なメカニズムは不明であるが、本発明者らは、以下の通り推定している。
本発明者らは、レジスト膜において発生する欠陥の原因の1つとして、レジスト塗布装置に付着していたレジスト組成物に由来する残渣物が影響している可能性があることを見出している。レジスト組成物を基板表面に塗布してレジスト膜を形成する際には、所定のレジスト塗布装置を繰り返し使用することが多い。そして、レジスト組成物の塗布を繰り返すうちに、レジスト塗布装置のレジスト組成物を通過させる配管(以下「レジストライン」ともいう。)内には、レジスト組成物に含まれるいずれかの成分の残渣物が付着する。そのため、レジスト組成物の残渣物が新たにレジストライン内を通過するレジスト組成物に混入しないように、レジスト塗布装置を洗浄することが望ましい。
本洗浄方法では、所定のSP値を有し、レジスト組成物の主成分である樹脂(例えば、酸の作用により極性が増大する樹脂)等の成分と比較的相溶しやすい溶剤Aを用いて、レジスト塗布装置を洗浄した後、溶剤Aよりも高い所定のSP値を有し、光酸発生剤等の高極性成分と比較的相溶しやすい溶剤Bを用いて、レジスト塗布装置を洗浄する。ここで、レジスト組成物の残渣物由来の欠陥が発生する原因としては、光酸発生剤等の高極性成分の凝集物が挙げられる。高極性成分が一旦凝集すると、その凝集物は溶剤に溶解し難くなり、レジスト膜において欠陥を発生させる可能性があると推測される。そこで、先に溶剤Aを用いて付着した残渣物の大部分を除去した後、残った高極性成分を、高極性成分との相溶性が高い溶剤Bを用いて洗浄することにより、残渣物の新たなレジスト組成物への混入を抑え、レジスト膜における欠陥の発生を抑制できたものと本発明者らは推測している。
以下、レジスト膜における欠陥の発生を抑制する効果がより優れることを、「本発明の効果がより優れる」とも記載する。
〔レジスト塗布装置〕
本洗浄方法により洗浄されるレジスト塗布装置(以下、単に「塗布装置」ともいう。)は、レジスト組成物を移送して、基板の表面にレジスト組成物を付与する機能を有する装置であれば、特に制限されない。
レジスト塗布装置としては、例えば、レジスト組成物を収容する容器と、レジスト組成物を移送する配管と、レジスト組成物を吐出するノズルとを備える装置が挙げられる。
容器は、レジスト組成物を収容する機能を有するものであれば、特に制限されない。容器を構成する材料としては、例えば、樹脂、ガラス、金属、及び、これらの複合物が挙げられる。容器の材料は、収容するレジスト組成物の種類に応じて任意に選択できる。
容器としては、ガロン瓶及びコート瓶等の公知の容器が挙げられる。ガロン瓶はガラス材料で構成されていてもよく、ガラス以外の材料で構成されていてもよい。
配管は、容器とノズルとを接続する部材である。配管の上流側の端部は、例えば、容器の頂部を貫通して、容器の底部近傍にまで延在していてもよい。配管の下流側の端部は、ノズルに接続している。この配管を通って、容器に貯留されたレジスト組成物はノズルへと移送される。
配管内におけるレジスト組成物の移送方法は特に制限されず、後述するように、容器内にガスを導入してレジスト組成物を加圧することにより行ってもよいし、ポンプを用いてレジスト組成物を吐出することにより行ってもよい。
配管には、レジスト組成物を移送するためのポンプが設けられていてもよい。ポンプの種類としては、例えば、電動式水中ポンプ(エレクトリカルポンプ)、ダイアフラムポンプ、及び、遠心式ポンプ(マグネットポンプ等)が挙げられる。
配管には、レジスト組成物に含まれ得る粒子又はゲル化成分を除去するため、レジスト組成物をろ過するフィルタを設けてもよい。フィルタ及びフィルタを収容するフィルタカートリッジとしては、公知のフィルタ及びフィルタカートリッジが使用できる。
次いで、配管内を移送されたレジスト組成物は、ノズルを通って基板上に吐出される。レジスト組成物が備えるノズルは特に制限されず、レジスト組成物を吐出する機能を有する公知のノズルが使用できる。
レジスト塗布装置は上記の構成を有する装置に制限されず、少なくともレジスト組成物が移送される配管を有していればよい。
レジスト塗布装置内の接液部(液と接する個所)は、ガラスもしくはフッ素樹脂等の耐性を有する材料でライニング又はコーティングされていてもよい。
〔レジスト塗布装置の洗浄方法〕
本洗浄方法は、レジスト塗布装置を洗浄する方法であり、下記の工程1及び工程2をこの順に有する。
・工程1:塗布装置を、SP値(溶解度パラメータ)が16.0~21.5MPa1/2のの溶剤Aを用いて洗浄する工程。
・工程2:工程1の後、塗布装置を、SP値が21.5MPa1/2超30.0MPa1/2以下の溶剤Bを用いて洗浄する工程。
<工程1>
工程1は、塗布装置を上記溶剤Aを用いて洗浄する工程である。上述したように、本工程を実施することにより、塗布装置に付着するレジスト組成物由来の残渣物(例えば、樹脂由来の残渣物)の大部分を除去できると推測される。
本工程で使用される溶剤Aは、SP値が16.0~21.5MPa1/2の範囲に含まれる溶剤であれば、特に制限されない。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、SP値が18.5~21.5MPa1/2である溶剤が好ましい。
本発明のSP値は、「Properties of Polymers、第二番、1976出版」に記載のFedors法を用いて計算されたものである。用いた計算式及び各置換基のパラメーターを以下の表1に示す。
SP値(Fedors法)=[(各置換基の凝集エネルギーの和)/(各置換基の体積の和)]0.5
Figure 2022142378000001
溶剤Aとしては、上記条件を満たしていれば特に制限されないが、例えば、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤(置換基を有するグリコールエーテル系溶剤を含む)、ケトン系溶剤、脂環式エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族エーテル系溶剤、及び、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
なかでも、溶剤Aは、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
表2及び表3に、溶剤Aの具体例を示す。なお、表2には、SP値が16.0MPa1/2以上18.5MPa1/2未満の溶剤Aを記載し、表3には、SP値が18.5~21.5MPa1/2の溶剤Aを記載する。
Figure 2022142378000002
Figure 2022142378000003
Figure 2022142378000004
Figure 2022142378000005
Figure 2022142378000006
溶剤Aとしては、上記表2及び表3に記載の溶剤以外に、2,2,4-トリメチルペンタン、及び、2-メチルペンタン等も挙げられる。
溶剤Aとしては1種のみを用いてもよく、2種以上の溶剤を混合した混合溶剤を用いてもよい。
なお、混合溶剤のSP値は、各溶剤のSP値を各溶剤の混合比(質量比)に基づいて平均した質量平均値と定義する。SP値の質量平均値が16.0~21.5MPa1/2である混合溶剤は、溶剤Aとして使用できる。
工程1では、溶剤Aを用いて塗布装置が洗浄される。塗布装置の洗浄では、塗布装置のうち、少なくともレジスト組成物を供給する際にレジスト組成物が接触する部位(以下「接液部」ともいう。)を溶剤によって洗浄する。
より具体的には、上記のレジスト塗布装置におけるレジスト組成物を収容する容器に代えて各溶剤を収容する容器を設置し、上記の移送方法に準じて各溶剤を送出し、ノズルから排出させることにより、塗布装置のレジストラインが洗浄される。
工程1における塗布装置の洗浄回数は特に制限されず、1回のみでもよく、複数回であってもよい。なお、工程1~3において、種類及び組成が同じ溶剤を連続的又は断続的に使用して塗布装置を洗浄する場合、洗浄回数を「1回」と数える。即ち、工程1においては、1種の溶剤Aを用いて洗浄を1回のみ行ってもよいし、それぞれ種類又は組成が異なる2種以上の溶剤を用いて洗浄を2回以上行ってもよい。
本発明の効果がより優れる点で、工程1は、溶剤Aに含まれる溶剤A1を用いてレジスト塗布装置を洗浄する工程1-1と、工程1-1の後、溶剤Aに含まれ、溶剤A1とは異なる溶剤A2を用いてレジスト塗布装置を洗浄する工程1-2とを少なくとも有することが好ましい。
溶剤A1及び溶媒A2は、SP値が16.0~21.5MPa1/2の範囲に含まれ、かつ、互いに異なる溶剤であれば、いずれも使用できる。
なかでも、本発明の効果が更に優れる点で、溶剤A2のSP値が、溶剤A1のSP値よりも高いことが好ましい。
溶剤A1及び溶剤A2の具体例は、上記の溶剤Aの具体例と同じである。
なかでも、溶剤A1及び溶剤A2は、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
洗浄中、溶剤Aが通過する配管の途中にフィルターを配置してもよい。フィルターを配置することにより、洗浄により配管内から剥がれた残渣物を再度配管内に付着させることなく確実に除去できる。使用されるフィルターとしては、後述する工程Xで使用されるフィルターが挙げられる。
洗浄中の溶剤Aの液温は、特に制限されず、例えば20℃以上であってよい。溶剤Aの液温の上限は、溶剤Aの引火点及び設備の耐熱性等の安全上の点から適宜選択される。
工程1の1回の洗浄における溶剤の使用量は特に制限されず、塗布装置の規模及び接液部の材質、並びに、レジスト組成物の組成により適宜選択でき、例えば2ガロン以上であり、4ガロン以上が好ましい。上限値は特に制限されず、溶剤の使用量は多いほど好ましいが、時間及びコストの点で、例えば10ガロン以下である。
工程1において、溶剤の送液を停止し、塗布装置内の接液部を溶剤に浸漬する時間を設けてもよい。
溶剤Aは、使用前にフィルターでろ過されることが好ましい。つまり、本洗浄方法は、工程1の前に、溶剤Aをフィルターでろ過する工程Xを有することが好ましい。
工程1が、上記の溶剤A1を用いる工程1-1と、上記の溶剤A2を用いる工程1-2とを有する場合、工程Xとして、工程1-1の前に溶剤A1をフィルターでろ過する工程、及び、工程1-2の前に溶剤A2をフィルターでろ過する工程を実施することが好ましい。
工程Xにおいて使用されるフィルターの種類は特に制限されず、公知のフィルターが用いられる。
フィルターの孔径(ポアサイズ)としては、0.20μm以下が好ましく、0.10μm以下がより好ましく、0.05μm以下が更に好ましく、0.01μm以下が最も好ましい。
工程Xで用いられるフィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド及びエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー等のフッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド樹脂、並びに、ポリイミド樹脂(ポリイミドフィルターとしては、例えば、特開2017-064711号公報、及び、特開2017-064712号公報に記載されるポリイミドフィルターが挙げられる。)が挙げられ、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
フィルターは、有機溶剤で予め洗浄したものを用いてもよい。また、特開2016-201426号公報に開示されるような溶出物が低減されたフィルターも好ましい。
フィルターでろ過する際には、複数のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数のフィルターを用いる場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、フィルターでろ過する際には、循環ろ過を実施してもよい。循環ろ過の方法としては、例えば、特開2002-062667号公報に開示されるような手法が好ましい。
なお、上記フィルターろ過の後、更に、吸着材を用いて溶剤Aから不純物を除去してもよい。
<工程2>
工程2は、工程1の後、塗布装置を溶剤Bを用いて洗浄する工程である。本工程を実施することにより、塗布装置に付着するレジスト組成物由来の残渣物のうち、光酸発生剤等の高極性成分由来の残渣物がより除去できると推測される。
本工程で使用される溶剤Bは、SP値が21.5MPa1/2超30.0MPa1/2以下の範囲に含まれる溶剤であれば特に制限されない。なかでも、SP値が21.5MPa1/2超25.0MPa1/2以下である溶剤が好ましい。
溶剤Bとしては、上記条件を満たしていれば特に制限されないが、例えば、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤(置換基を有するグリコールエーテル系溶剤を含む)、ケトン系溶剤、脂環式エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族エーテル系溶剤、及び、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
なかでも、溶剤Bは、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
表4に、溶剤Bの具体例を示す。
Figure 2022142378000007
溶剤Bとしては1種のみを用いてもよく、2種以上の溶剤を混合した混合溶剤を用いてもよい。
溶剤Aと溶剤Bとの組み合わせは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、溶剤A及び溶剤Bの少なくとも一方が、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、溶剤A及び溶剤Bの両者がエステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
工程2では、溶剤Bを用いて塗布装置が洗浄される。
工程2における塗布装置の洗浄方法、回数、並びに、条件(液温及び使用量等)は、その好ましい態様も含めて、上記の工程1と同じであってよい。
溶剤Bは、使用前にフィルターでろ過されることが好ましい。つまり、本洗浄方法は、工程2の前に、溶剤Bをフィルターでろ過する工程Yを有することが好ましい。
上記フィルターとしては、工程Xで説明したフィルターが挙げられる。
工程Yで用いられるフィルターは、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
工程Yの手順としては、工程Xで説明した手順が挙げられる。
<他の工程>
本洗浄方法は、工程1及び工程2以外の他の工程を有していてもよく、例えば、溶剤A及び溶剤BのいずれともSP値が異なる溶剤Cを用いて塗布装置を洗浄する工程3を更に有していてもよい。
即ち、溶剤Cは、SP値が16.0MPa1/2未満である溶剤、及び、SP値が30.0MPa1/2超である溶剤のいずれかである。
溶剤Cとしては、上記のSP値を有するものであれば特に制限されない。
表5に、溶剤Cの具体例を示す。
Figure 2022142378000008
溶剤Cとしては1種のみを用いてもよく、2種以上の溶剤を混合した混合溶剤を用いてもよい。
工程3では、溶剤Cを用いて塗布装置が洗浄される。
工程3における塗布装置の洗浄方法、回数、並びに、条件(液温及び使用量等)は、その好ましい態様も含めて、上記の工程1と同じであってよい。
溶剤Cは、使用前にフィルターでろ過されることが好ましい。つまり、本洗浄方法が工程3を有する場合、本洗浄方法は、工程3の前に、工程3に用いる溶剤Cをフィルターでろ過する工程Zを有することが好ましい。
使用されるフィルターとしては、工程Xで説明したフィルターが挙げられる。
工程Zで用いられるフィルターは、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
工程Zの手順としては、工程Xで説明した手順が挙げられる。
本洗浄方法は、上記工程X及び上記工程Yからなる群より選択される少なくとも1つの工程を更に有することが好ましく、工程X及び工程Yの両者を有することがより好ましい。
工程3を有する場合、上記工程X、上記工程Y及び上記工程Zからなる群より選択される少なくとも1つの工程を行うことが好ましく、工程X、工程Y及び工程Zをいずれも行うことがより好ましい。
なお、各洗浄工程(工程1、工程2及び工程3)においては、洗浄に使用した後の溶剤を回収して、溶剤に含まれる残渣物由来の成分の量を確認してもよい。
確認手法は特に制限されず、特定する成分によって手法を選択できる。確認手法としては、例えば、GC(ガスクロマトグラフィー)による残存溶剤の評価、UV(紫外線)照射評価による低分子成分の残存物量の評価、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリマー残存物量の評価、液中パーティクルカウンターによる含有パーティクル数の評価、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)によるメタル含有量の評価、及び、洗浄溶剤をウェハ上に塗布して欠陥検査を行う評価が挙げられる。
<工程4、工程5>
なかでも、本洗浄方法は、各洗浄工程を行った後、下記工程4及び工程5を行うことが好ましい。
・工程4:工程1及び工程2(又は工程1~3)で使用された溶剤の少なくとも1つを、レジスト塗布装置を用いて基板上に塗布する工程。
・工程5:工程4の後、基板上の欠陥の数を欠陥検査装置を用いて測定する工程。
その上で、工程5により測定された欠陥の数が基準値を超えている場合、工程1及び工程2(又は工程1~3)からなる群より選択される少なくとも1つの工程を再度実施することが好ましい。
上記工程4及び工程5により、測定対象の溶剤を使用した洗浄工程による塗布装置内の残渣物除去の成果が確認できる。また、工程5により測定された欠陥の数が基準値を下回るまで、工程1及び工程2(又は工程1~3)の少なくとも1つ(より好ましくは工程1及び工程2の両者(又は工程1~3の全て))を繰返し実施することにより、次に塗布装置を用いて塗布されるレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜の欠陥発生をより確実に抑制できる。
工程4において使用する基板としては、集積回路素子の製造に使用されるような基板が挙げられ、シリコンウエハが好ましい。
検査精度がより向上する点で、工程4に適用する以前から基板上に存在する欠陥の数(より好ましくは19nm以上の大きさの欠陥の数)が1.20個/cm以下である基板が好ましく、0.75個/cm以下である基板がより好ましく、なお、下限値としては、例えば、0.00個/cm以上である。
工程4への適用前における基板上の欠陥数、及び、工程5における基板上の欠陥数は、欠陥検査装置(例えば、ケーエルエーテンコール社製の暗視野欠陥検査装置SP5等)で測定できる。
工程4における溶剤の塗布は、塗布装置を用いて行われる。塗布装置については既に説明した通りである。
基板への溶剤の供給量(塗布量)は、0.2~10.0mL/sが好ましく、0.5~3.0mL/sがより好ましい。溶剤の供給時間は、3~300秒間が好ましく、5~60秒間がより好ましい。
工程4では、基板上に溶剤を塗布した後、基板を乾燥することが好ましい。
乾燥方法としては、例えば、加熱して乾燥する方法が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて実施してもよい。加熱温度は80~250℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。加熱時間は30~1000秒間が好ましく、60~800秒間がより好ましい。一態様としては、100℃にて60秒間の加熱が好ましい。
工程5により、溶剤が塗布された基板上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する。測定する欠陥の大きさは特に制限されないが、検査の精度がより優れる点で、19nm以上の大きさの欠陥の数を測定することが好ましい。
上記工程5を実施することにより、溶剤の塗布後に基板上に存在する欠陥の数が測定される。
工程5により測定された欠陥数と基準値との比較に際しては、予め測定された、工程4で溶剤を塗布する前の基板上に存在する欠陥数を工程5で測定された欠陥数から差し引くことにより算出された欠陥数の増加分を、洗浄に使用された溶剤由来の欠陥数として比較に用いることが好ましい。
工程5における基準値は、レジスト塗布装置の構成、レジスト組成物の組成、及び、形成されるレジストパターンに要求される精度等の条件に応じて、適宜設定される。
工程5により測定された欠陥数(好ましくは上記方法で算出された溶剤由来の欠陥数)が多い場合、塗布装置の接液部に付着した残渣物が残存している可能性が示唆される。残渣物が残存していると、塗布装置を用いて供給される新たなレジスト組成物に残存物が混入し、形成されるレジスト膜の欠陥の原因になる場合がある。
そこで、上記の欠陥数が基準値を超えている場合、工程1及び工程2(又は工程1~3)からなる群より選択される少なくとも1つの工程を再度実施することが好ましい。なかでも、工程1及び工程2の両者を行うことがより好ましい。
塗布装置に対して上記の工程1及び工程2(又は工程1~3)のいずれかを再度実施した後、上記工程4及び工程5を再度実施することが好ましく、工程5により測定された欠陥数が基準値以下になるまで、工程1及び工程2(又は工程1~3)のいずれか、並びに、工程4及び工程5を繰り返すことがより好ましい。
本洗浄方法は、クリーンルーム内で実施することが好ましい。クリーン度としては、国際統一規格ISO 14644-1におけるクラス6以下が好ましく、クラス5以下がより好ましく、クラス4以下が更に好ましい。
本洗浄方法で洗浄されたレジスト塗布装置は、レジスト組成物を用いる基板表面の塗布に使用される。
以下、本洗浄方法で洗浄されたレジスト塗布装置に用いられるレジスト組成物について説明し、次いで、レジスト塗布装置によるレジスト組成物の塗布方法について説明する。
〔レジスト組成物の組成〕
レジスト組成物に含まれる成分は特に制限されないが、樹脂(好ましくは、酸の作用により極性が増大する樹脂)、光酸発生剤、及び、溶剤を含むことが好ましい。
以下、レジスト組成物に含まれる成分について詳述する。
<樹脂>
レジスト組成物は、樹脂を含んでいてもよい。
樹脂としては、酸の作用により極性が増大する樹脂(以下「樹脂(A)」とも記載する。)が好ましい。
なお、樹脂は、ケイ素原子を有する繰り返し単位を有さず、(メタ)アクリル基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有することが好ましい。
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位(A-a)(以下、単に「繰り返し単位(A-a)」とも記載する)を有することが好ましい。
酸分解性基とは、酸の作用により分解し、極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(A-a)を有する。この繰り返し単位(A-a)を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
中でも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx
式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環もしくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又はアリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
中でも、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
レジスト組成物が、例えば、EUV露光用レジスト組成物である場合、Rx~Rxで表されるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、及び、Rx~Rxの2つが結合して形成される環は、更に、置換基として、フッ素原子又はヨウ素原子を有しているのも好ましい。
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
Figure 2022142378000009
ここで、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L及びLのうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員又は6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、Lが2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基、及び、アダマンタン環基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
繰り返し単位(A-a)としては、式(A)で表される繰り返し単位も好ましい。
Figure 2022142378000010
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表し、Rは水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表し、Rは酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。ただし、L、R、及び、Rのうち少なくとも1つは、フッ素原子又はヨウ素原子を有する。
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。中でも、本発明の効果がより優れる点で、Lとしては、-CO-、又は、-アリーレン基-フッ素原子もしくはヨウ素原子を有するアルキレン基-が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子もしくはヨウ素原子が有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
は、酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。
脱離基としては、式(Z1)~(Z4)で表される基が挙げられる。
式(Z1):-C(Rx11)(Rx12)(Rx13
式(Z2):-C(=O)OC(Rx11)(Rx12)(Rx13
式(Z3):-C(R136)(R137)(OR138
式(Z4):-C(Rn)(H)(Ar
式(Z1)及び式(Z2)中、Rx11~Rx13は、それぞれ独立に、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基(単環もしくは多環)を表す。なお、Rx11~Rx13の全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx11~Rx13のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx11~Rx13は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい点以外は、上述した式(Y1)及び式(Y2)中のRx~Rxと同じであり、アルキル基及びシクロアルキル基の定義及び好適範囲と同じである。
式(Z3)中、R136~R138は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよい1価の置換基を表す。R137とR138とは、互いに結合して環を形成してもよい。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の置換基としては、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアリール基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアラルキル基、及び、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)が挙げられる。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、フッ素原子及びヨウ素原子以外に、酸素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。つまり、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Z3)としては、下記式(Z3-1)で表される基が好ましい。
Figure 2022142378000011
ここで、L11及びL12は、それぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;又は、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;アミノ基;アンモニウム基;メルカプト基;シアノ基;アルデヒド基;又は、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
式(Z4)中、Arは、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい芳香環基を表す。Rnは、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
繰り返し単位(A-a)としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
Figure 2022142378000012
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環、又は、多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又はアリール(単環若しくは多環)基を表す。ただし、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、シクロアルキル基(単環もしくは多環)を形成してもよい。
Xaにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の置換基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xaとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、又は、-(CH-基がより好ましい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
樹脂(A)は、繰り返し単位(A-a)を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
繰り返し単位(A-a)の含有量(2種以上の繰り返し単位(A-a)が存在する場合は合計含有量)は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましい。
樹脂(A)は、繰り返し単位(A-a)として、下記一般式(A-VIII)~(A-XII)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2022142378000013
一般式(A-VIII)中、Rは、tert-ブチル基、又は、-CO-O-(tert-ブチル)基を表す。
一般式(A-IX)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。1価の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。
一般式(A-X)中、pは1~5を表し、1又は2が好ましい。
一般式(A-X)~(A-XII)中、Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~3のアルキル基を表す。
一般式(A-XII)中、R10は、炭素数1~3のアルキル基又はアダマンチル基を表す。
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。
酸基としては、pKaが13以下の酸基が好ましい。上記酸基の酸解離定数は、上記のように、13以下が好ましく、3~13がより好ましく、5~10が更に好ましい。
酸分解性樹脂が、pKaが13以下の酸基を有する場合、酸分解性樹脂中における酸基の含有量は特に制限されないが、0.2~6.0mmol/gの場合が多い。なかでも、0.8~6.0mmol/gが好ましく、1.2~5.0mmol/gがより好ましく、1.6~4.0mmol/gが更に好ましい。酸基の含有量が上記範囲内であれば、現像が良好に進行し、形成されるパターン形状に優れ、解像性にも優れる。
酸基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、又はスルホンアミド基等が好ましい。
また、上記ヘキサフルオロイソプロパノール基において、フッ素原子の1つ以上(好ましくは1~2つ)がフッ素原子以外の基で置換されてなる基も酸基として好ましい。このような基としては、例えば、-C(CF)(OH)-CF-を含む基が挙げられる。なお、上記-C(CF)(OH)-CF-を含む基は、-C(CF)(OH)-CF-を含む環基であってもよい。
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
Figure 2022142378000014
は、水素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよい1価の置換基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の置換基としては、-L-Rで表される基が好ましい。Lは、単結合、又は、エステル基を表す。Rは、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環式炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環式炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、Rが水酸基の場合、Lは(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
Figure 2022142378000015
一般式(I)中、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。中でも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基が好ましい。
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Arとしては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
Figure 2022142378000016
Figure 2022142378000017
Figure 2022142378000018
(ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1))
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位として、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1)を有することが好ましい。
ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1)としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
Figure 2022142378000019
一般式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表し、bは0~(5-a)の整数を表す。
繰り返し単位(A-1)としては、下記一般式(A-I)で表される繰り返し単位が好ましい。
Figure 2022142378000020
繰り返し単位(A-1)を有する樹脂(A)を含むレジスト組成物は、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用として好ましい。この場合の繰り返し単位(A-1)の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
(ラクトン構造、スルトン構造、カーボネート構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2))
樹脂(A)は、ラクトン構造、カーボネート構造、スルトン構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2)を有していてもよい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位におけるラクトン構造又はスルトン構造は、特に制限されないが、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましく、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、国際公開第2016/136354号の段落0094~0107に記載の繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
カーボネート構造を有する繰り返し単位としては、国際公開第2019/054311号の段落0106~0108に記載の繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)で表される繰り返し単位が挙げられる。
Figure 2022142378000021
一般式(AIIa)中、Rcは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。Rc~Rcは、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表す。但し、Rc~Rcのうちの少なくとも1つは、水酸基を表す。Rc~Rcのうちの1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子であることが好ましい。
(フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を有していてもよい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号公報の段落0080~0081に記載の繰り返し単位が挙げられる。
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記以外の繰り返し単位として、放射線の照射により酸を発生する基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
このような繰り返し単位としては、例えば、下記式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
Figure 2022142378000022
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合、又は2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。R40は、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
光酸発生基を有する繰り返し単位を以下に例示する。
Figure 2022142378000023
Figure 2022142378000024
そのほか、式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、特開2014-041327号公報の段落[0094]~[0105]に記載された繰り返し単位、及び国際公開第2018/193954号公報の段落[0094]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、酸分解性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましい。また、その上限値としては、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましい。
光酸発生基を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号公報の段落0092~0096に記載の繰り返し単位が挙げられる。
(アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、及び、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することにより、コンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位が挙げられる。なお、連結基は、単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が好ましい。
(酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位)
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有してもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環式炭化水素を有することが好ましい。
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開第2016/0026083号明細書の段落0236~0237に記載された繰り返し単位、及び、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0433に記載された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、及び、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
(樹脂(A)の特性)
樹脂(A)としては、繰り返し単位のすべてが、エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する繰り返し単位で構成されることが好ましい。特に、樹脂(A)としては、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系モノマー((メタ)アクリル基を有するモノマー)に由来する繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系モノマーに由来するもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系モノマーに由来するもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系モノマー及びアクリレート系モノマーに由来するもののいずれの樹脂でも用いることができる。アクリレート系モノマーに由来する繰り返し単位が、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
レジスト組成物がフッ化アルゴン(ArF)露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、芳香族基を有する繰り返し単位が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。
また、レジスト組成物がArF露光用であるとき、樹脂(A)は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましく、また、フッ素原子及び珪素原子のいずれも含まないことが好ましい。
レジスト組成物がフッ化クリプトン(KrF)露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、上記ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位(A-1)、及び、ヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を挙げることができる。
また、レジスト組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有する繰り返し単位を有することも好ましい。
レジスト組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)に含まれる芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
樹脂(A)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成できる。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、3,000~20,000がより好ましく、5,000~15,000が更に好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を、1,000~200,000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、更に、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。なお、樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、上述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.1~2.0がより好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状が優れ、更に、パターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
レジスト組成物において、樹脂(A)の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、50~99.9質量%が好ましく、60~99.0質量%がより好ましい。
また、樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、固形分とは溶剤を除いたレジスト膜を構成し得る成分を意味する。上記成分の性状が液状であっても、固形分として扱う。
<光酸発生剤(B)>
レジスト組成物は、光酸発生剤(B)を含んでいてもよい。光酸発生剤(B)は、放射線の照射により酸を発生する化合物であれば特に制限されない。
光酸発生剤(B)は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤(B)が、低分子化合物の形態である場合、重量平均分子量(Mw)が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
光酸発生剤(B)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
本発明において、光酸発生剤(B)は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤(B)としては、公知のものであれば特に制限されないが、放射線の照射により、有機酸を発生する化合物が好ましく、分子中にフッ素原子又はヨウ素原子を有する光酸発生剤がより好ましい。
上記有機酸として、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及び、カンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及び、アラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチド酸等が挙げられる。
光酸発生剤(B)より発生する酸の体積は特に制限されないが、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し、解像性を良好にする点から、240Å以上が好ましく、305Å以上がより好ましく、350Å以上が更に好ましく、400Å以上が特に好ましい。なお、感度又は塗布溶剤への溶解性の点から、光酸発生剤(B)より発生する酸の体積は、1500Å以下が好ましく、1000Å以下がより好ましく、700Å以下が更に好ましい。
上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求める。上記体積の値の計算にあたっては、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM(Molecular Mechanics)3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM(Parameterized Model number)3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算できる。
光酸発生剤(B)より発生する酸の構造は特に制限されないが、酸の拡散を抑制し、解像性を良好にする点で、光酸発生剤(B)より発生する酸と樹脂(A)との間の相互作用が強いことが好ましい。この点から、光酸発生剤(B)より発生する酸が有機酸である場合、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボニルスルホニルイミド酸基、ビススルホニルイミド酸基、及び、トリススルホニルメチド酸基等の有機酸基、以外に、更に極性基を有することが好ましい。
極性基としては、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、アシル基、スルホ基、スルホニルオキシ基、スルホンアミド基、チオエーテル基、チオエステル基、ウレア基、カーボネート基、カーバメート基、ヒドロキシル基、及び、メルカプト基が挙げられる。
発生する酸が有する極性基の数は特に制限されず、1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましい。ただし、過剰な現像を抑制する観点から、極性基の数は、6個未満であることが好ましく、4個未満であることがより好ましい。
中でも、本発明の効果がより優れる点で、光酸発生剤(B)は、アニオン部及びカチオン部からなる光酸発生剤であることが好ましい。
光酸発生剤(B)としては、特開2019-045864号公報の段落0144~0173に記載の光酸発生剤が挙げられる。
光酸発生剤(B)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、レジスト組成物の全固形分に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、10~35質量%が更に好ましい。
光酸発生剤(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。光酸発生剤(B)を2種以上併用する場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
レジスト組成物は、光酸発生剤(B)として、化合物(I)及び(II)で定義される特定光酸発生剤を含んでもよい。
(化合物(I))
化合物(I)は、1つ以上の下記構造部位X及び1つ以上の下記構造部位Yを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、下記構造部位Xに由来する下記第1の酸性部位と下記構造部位Yに由来する下記第2の酸性部位とを含む酸を発生する化合物である。
構造部位X:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、且つ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される第1の酸性部位を形成する構造部位
構造部位Y:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、且つ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される第2の酸性部位を形成する構造部位
但し、化合物(I)は、下記条件Iを満たす。
条件I:上記化合物(I)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M 及び上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1と、上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2を有し、且つ、上記酸解離定数a1よりも上記酸解離定数a2の方が大きい。
以下において、条件Iをより具体的に説明する。
化合物(I)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を1つと、上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位を1つ有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIは「HAとHAを有する化合物」に該当する。
このような化合物PIの酸解離定数a1及び酸解離定数a2とは、より具体的に説明すると、化合物PIの酸解離定数を求めた場合において、化合物PIが「A とHAを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1であり、上記「A とHAを有する化合物」が「A とA を有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a2である。
また、化合物(I)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと、上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位を1つ有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIは「2つのHAと1つのHAとを有する化合物」に該当する。
このような化合物PIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIが「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数、及び「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」が「2つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数が、上述の酸解離定数a1に該当する。また、「2つのA と1つのHAとを有する化合物」が「2つのA とA を有する化合物」となる際の酸解離定数が酸解離定数a2に該当する。つまり、このような化合物PIの場合、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、複数の酸解離定数a1のうち最も大きい値よりも、酸解離定数a2の値の方が大きい。なお、化合物PIが「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数をaaとし、「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」が「2つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数をabとしたとき、aa及びabの関係は、aa<abを満たす。
酸解離定数a1及び酸解離定数a2は、上述した酸解離定数の測定方法により求められる。
上記化合物PIとは、化合物(I)に活性光線又は放射線を照射した場合に、発生する酸に該当する。
化合物(I)が2つ以上の構造部位Xを有する場合、構造部位Xは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2つ以上の上記A 、及び2つ以上の上記M は、各々同一であっても異なっていてもよい。
また、化合物(I)中、上記A 及び上記A 、並びに、上記M 及び上記M は、各々同一であっても異なっていてもよいが、上記A 及び上記A は、各々異なっているのが好ましい。
形成されるパターンのLWR性能がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1(酸解離定数a1が複数存在する場合はその最大値)と酸解離定数a2との差は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましい。なお、酸解離定数a1(酸解離定数a1が複数存在する場合はその最大値)と酸解離定数a2との差の上限値は特に制限されないが、例えば、16以下である。
また、形成されるパターンのLWR性能がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a2は、例えば、20以下であり、15以下が好ましい。なお、酸解離定数a2の下限値としては、-4.0以上が好ましい。
また、形成されるパターンのLWR性能がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1は、2.0以下が好ましく、0以下がより好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-20.0以上が好ましい。
アニオン部位A 及びアニオン部位A は、負電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位であり、例えば、以下に示す式(AA-1)~(AA-3)及び式(BB-1)~(BB-6)からなる群から選ばれる構造部位が挙げられる。アニオン部位A としては、酸解離定数の小さい酸性部位を形成し得るものが好ましく、なかでも、式(AA-1)~(AA-3)のいずれかであるのが好ましい。また、アニオン部位A としては、アニオン部位A よりも酸解離定数の大きい酸性部位を形成し得るものが好ましく、式(BB-1)~(BB-6)のいずれかから選ばれるのが好ましい。なお、以下の式(AA-1)~(AA-3)及び式(BB-1)~(BB-6)中、*は、結合位置を表す。
式(AA-2)中、Rは、1価の有機基を表す。Rで表される1価の有機基としては、シアノ基、トリフルオロメチル基、及びメタンスルホニル基等が挙げられる。
Figure 2022142378000025
Figure 2022142378000026
また、カチオン部位M 及びカチオン部位M は、正電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位であり、例えば、電荷が1価の有機カチオンが挙げられる。なお、有機カチオンとしては特に制限されないが、後述する式(Ia-1)中のM11 及びM12 で表される有機カチオンと同様のものが挙げられる。
化合物(I)の具体的な構造としては特に制限されないが、例えば、後述する式(Ia-1)~式(Ia-5)で表される化合物が挙げられる。
以下において、まず、式(Ia-1)で表される化合物について述べる。式(Ia-1)で表される化合物は以下の通りである。
11 11 -L-A12 12 (Ia-1)
化合物(Ia-1)は、活性光線又は放射線の照射によって、HA11-L-A12Hで表される酸を発生する。
式(Ia-1)中、M11 及びM12 は、各々独立に、有機カチオンを表す。
11 及びA12 は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。
は、2価の連結基を表す。
11 及びM12 は、各々同一であっても異なっていてもよい。
11 及びA12 は、各々同一であっても異なっていてもよいが、互いに異なっているのが好ましい。
但し、上記式(Ia-1)において、M11 及びM12 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa(HA11-L-A12H)において、A12Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、HA11で表される酸性部位に由来する酸解離定数a1よりも大きい。なお、酸解離定数a1と酸解離定数a2の好適値については、上述した通りである。また、化合物PIaと、活性光線又は放射線の照射によって式(Ia-1)で表される化合物から発生する酸は同じである。
また、M11 、M12 、A11 、A12 、及びLの少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
式(Ia-1)中、M 及びM で表される有機カチオンについては、後述の通りである。
11 で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。また、A12 で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。
11 及びA12 で表される1価のアニオン性官能基としては、上述した式(AA-1)~(AA-3)及び式(BB-1)~(BB-6)のいずれかのアニオン部位を含む1価のアニオン性官能基であるのが好ましく、式(AX-1)~(AX-3)、及び式(BX-1)~(BX-7)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基であるのがより好ましい。A11 で表される1価のアニオン性官能基としては、なかでも、式(AX-1)~(AX-3)のいずれかで表される1価のアニオン性官能基であるのが好ましい。また、A12 で表される1価のアニオン性官能基としては、なかでも、式(BX-1)~(BX-7)のいずれかで表される1価のアニオン性官能基が好ましく、式(BX-1)~(BX-6)のいずれかで表される1価のアニオン性官能基がより好ましい。
Figure 2022142378000027
式(AX-1)~(AX-3)中、RA1及びRA2は、各々独立に、1価の有機基を表す。*は、結合位置を表す。
A1で表される1価の有機基としては、シアノ基、トリフルオロメチル基、及びメタンスルホニル基等が挙げられる。
A2で表される1価の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又はアリール基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子又はシアノ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。上記アルキル基が置換基としてフッ素原子を有する場合、パーフルオロアルキル基であってもよい。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はシアノ基が好ましく、フッ素原子、ヨウ素原子、又はパーフルオロアルキル基がより好ましい。
式(BX-1)~(BX-4)及び式(BX-6)中、Rは、1価の有機基を表す。*は、結合位置を表す。
で表される1価の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又はアリール基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基として特に制限されないが、置換基としては、フッ素原子又はシアノ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。上記アルキル基が置換基としてフッ素原子を有する場合、パーフルオロアルキル基であってもよい。
なお、アルキル基において結合位置となる炭素原子(例えば、式(BX-1)及び(BX-4)の場合、アルキル基中の式中に明示される-CO-と直接結合する炭素原子が該当し、式(BX-2)及び(BX-3)の場合、アルキル基中の式中に明示される-SO-と直接結合する炭素原子が該当し、式(BX-6)の場合、アルキル基中の式中に明示されるNと直接結合する炭素原子が該当する。)が置換基を有する場合、フッ素原子又はシアノ基以外の置換基であるのも好ましい。
また、上記アルキル基は、炭素原子がカルボニル炭素で置換されていてもよい。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、シアノ基、アルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はアルコキシカルボニル基(例えば、炭素数2~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましい。)が好ましく、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基、アルキル基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基がより好ましい。
式(Ia-1)中、Lで表される2価の連結基としては特に制限されず、-CO-、-NR-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
で表される2価の連結基としては、なかでも式(L1)で表される2価の連結基であるのが好ましい。
Figure 2022142378000028
式(L1)中、L111は、単結合又は2価の連結基を表す。
111で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-NH-、-O-、-SO-、-SO-、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1~6がより好ましい。直鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよい)、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、置換基を有していてもよいアリール(好ましくは炭素数6~10)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。置換基としては特に制限されず、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
pは、0~3の整数を表し、1~3の整数を表すのが好ましい。
vは、0又は1の整数を表す。
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、各々独立に、水素原子、置換基としてフッ素原子を有していてもよいアルキル基、又はフッ素原子を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。Xfとしては、なかでも、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表すのが好ましく、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基がより好ましい。
なかでも、Xf及びXfとしては、各々独立に、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、Xf及びXfが、いずれもフッ素原子であることが更に好ましい。
*は結合位置を表す。
式(Ia-1)中のL11が式(L1)で表される2価の連結基を表す場合、式(L1)中のL111側の結合手(*)が、式(Ia-1)中のA12 と結合するのが好ましい。
(Ia-1)中、M11 及びM12 で表される有機カチオンの好ましい形態について詳述する。
11 及びM12 で表される有機カチオンは、各々独立に、式(ZaI)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI))又は式(ZaII)で表される有機カチオン(カチオン(ZaII))が好ましい。
Figure 2022142378000029
上記式(ZaI)において、
201、R202、及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202、及びR203としての有機基の炭素数は、通常1~30であり、1~20が好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基及びペンチレン基)、及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
式(ZaI)における有機カチオンの好適な態様としては、後述する、カチオン(ZaI-1)、カチオン(ZaI-2)、式(ZaI-3b)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI-3b))、及び式(ZaI-4b)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI-4b))が挙げられる。
まず、カチオン(ZaI-1)について説明する。
カチオン(ZaI-1)は、上記式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、又は-CH-CH-O-CH-CH-)が挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及びアリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等がより好ましい。
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子(例えばフッ素、ヨウ素)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルキルチオ基、及びフェニルチオ基等が好ましい。
上記置換基は可能な場合更に置換基を有していてもよく、例えば、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基となっていることも好ましい。
また、上記置換基は任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
なお、酸分解性基とは、酸の作用により分解して酸基を生じる基を意図し、酸の作用により脱離する脱離基で酸基が保護された構造であるのが好ましい。上記の酸基及び脱離基としては、既述の通りである。
次に、カチオン(ZaI-2)について説明する。
カチオン(ZaI-2)は、式(ZaI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表すカチオンである。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
201~R203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、並びに、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
また、R201~R203の置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
次に、カチオン(ZaI-3b)について説明する。
カチオン(ZaI-3b)は、下記式(ZaI-3b)で表されるカチオンである。
Figure 2022142378000030
式(ZaI-3b)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基(t-ブチル基等)、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
また、R1c~R7c、並びに、R及びRの置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、この環は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族のヘテロ環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。このアルキレン基中のメチレン基が酸素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基等が挙げられる。
1c~R5c、R6c、R7c、R、R、並びに、R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRがそれぞれ互いに結合して形成する環は、置換基を有していてもよい。
次に、カチオン(ZaI-4b)について説明する。
カチオン(ZaI-4b)は、下記式(ZaI-4b)で表されるカチオンである。
Figure 2022142378000031
式(ZaI-4b)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基等の上記基を表す。
15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成するのが好ましい。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、及び上記ナフチル基、並びに、2つのR15が互いに結合して形成する環は置換基を有してもよい。
式(ZaI-4b)において、R13、R14、及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
また、R13~R15、並びに、R及びRの各置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成するのも好ましい。
次に、式(ZaII)について説明する。
式(ZaII)中、R204及びR205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204及びR205のアリール基は、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基は、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はペンチル基)、又は炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はノルボルニル基)が好ましい。
204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。また、R204及びR205の置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
次に、式(Ia-2)~(Ia-4)で表される化合物について説明する。
Figure 2022142378000032
式(Ia-2)中、A21a 及びA21b は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。ここで、A21a 及びA21b で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。A21a 及びA21b で表される1価のアニオン性官能基としては特に制限されないが、例えば、上述の式(AX-1)~(AX-3)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基等が挙げられる。
22 は、2価のアニオン性官能基を表す。ここで、A22 で表される2価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む2価の基を意図する。A22 で表される2価のアニオン性官能基としては、例えば、以下に示す式(BX-8)~(BX-11)で表される2価のアニオン性官能基等が挙げられる。
Figure 2022142378000033
21a 、M21b 、及びM22 は、各々独立に、有機カチオンを表す。M21a 、M21b 、及びM22 で表される有機カチオンとしては、上述のM と同義であり、好適態様も同じである。
21及びL22は、各々独立に、2価の有機基を表す。
また、上記式(Ia-2)において、M21a 、M21b 、及びM22 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-2において、A22Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、A21aHに由来する酸解離定数a1-1及びA21bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-2よりも大きい。なお、酸解離定数a1-1と酸解離定数a1-2は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、A21a 及びA21b は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M21a 、M21b 、及びM22 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M21a 、M21b 、M22 、A21a 、A21b 、L21、及びL22の少なくとも1つが、の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
式(Ia-3)中、A31a 及びA32 は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。なお、A31a で表される1価のアニオン性官能基の定義は、上述した式(Ia-2)中のA21a 及びA21b と同義であり、好適態様も同じである。
32 で表される1価のアニオン性官能基は、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。A32 で表される1価のアニオン性官能基としては特に制限されないが、例えば、上述の式(BX-1)~(BX-7)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基等が挙げられる。
31b は、2価のアニオン性官能基を表す。ここで、A31b で表される2価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む2価の基を意図する。A31b で表される2価のアニオン性官能基としては、例えば、以下に示す式(AX-4)で表される2価のアニオン性官能基等が挙げられる。
Figure 2022142378000034
31a 、M31b 、及びM32 は、各々独立に、1価の有機カチオンを表す。M31a 、M31b 、及びM32 有機カチオンとしては、上述のM と同義であり、好適態様も同じである。
31及びL32は、各々独立に、2価の有機基を表す。
また、上記式(Ia-3)において、M31a 、M31b 、及びM32 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-3において、A32Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、A31aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-3及びA31bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-4よりも大きい。なお、酸解離定数a1-3と酸解離定数a1-4は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、A31a 及びA32 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M31a 、M31b 、及びM32 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M31a 、M31b 、M32 、A31a 、A32 、L31、及びL32の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
式(Ia-4)中、A41a 、A41b 、及びA42 は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。なお、A41a 及びA41b で表される1価のアニオン性官能基の定義は、上述した式(Ia-2)中のA21a 及びA21b と同義である。また、A42 で表される1価のアニオン性官能基の定義は、上述した式(Ia-3)中のA32 と同義であり、好適態様も同じである。
41a 、M41b 、及びM42 は、各々独立に、有機カチオンを表す。
41は、3価の有機基を表す。
また、上記式(Ia-4)において、M41a 、M41b 、及びM42 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-4において、A42Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、A41aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-5及びA41bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-6よりも大きい。なお、酸解離定数a1-5と酸解離定数a1-6は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、A41a 、A41b 、及びA42 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M41a 、M41b 、及びM42 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M41a 、M41b 、M42 、A41a 、A41b 、A42 、及びL41の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
式(Ia-2)中のL21及びL22、並びに、式(Ia-3)中のL31及びL32で表される2価の有機基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-NR-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の有機基が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
式(Ia-2)中のL21及びL22、並びに、式(Ia-3)中のL31及びL32で表される2価の有機基としては、例えば、下記式(L2)で表される2価の有機基であるのも好ましい。
Figure 2022142378000035
式(L2)中、qは、1~3の整数を表す。*は結合位置を表す。
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-O-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
式(L2)で表される2価の有機基としては、例えば、*-CF-*、*-CF-CF-*、*-CF-CF-CF-*、*-Ph-O-SO-CF-*、*-Ph-O-SO-CF-CF-*、及び*-Ph-O-SO-CF-CF-CF-*、*-Ph-OCO-CF-*等が挙げられる。なお、Phとは、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、1,4-フェニレン基であるのが好ましい。置換基としては特に制限されないが、アルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はアルコキシカルボニル基(例えば、炭素数2~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましい。)が好ましい。
式(Ia-2)中のL21及びL22が式(L2)で表される2価の有機基を表す場合、式(L2)中のL側の結合手(*)が、式(Ia-2)中のA21a 及びA21b と結合するのが好ましい。
また、式(Ia-3)中のL31及びL32が式(L2)で表される2価の有機基を表す場合、式(L2)中のL側の結合手(*)が、式(Ia-3)中のA31a 及びA32 と結合するのが好ましい。
式(Ia-4)中のL41で表される3価の有機基としては特に制限されず、例えば、下記式(L3)で表される3価の有機基が挙げられる。
Figure 2022142378000036
式(L3)中、Lは、3価の炭化水素環基又は3価の複素環基を表す。*は結合位置を表す。
上記炭化水素環基は、芳香族炭化水素環基であっても、脂肪族炭化水素環基であってもよい。上記炭化水素環基に含まれる炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましい。上記複素環基は、芳香族複素環基であっても、脂肪族複素環基であってもよい。上記複素環は、少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環であることが好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。
としては、なかでも、3価の炭化水素環基が好ましく、ベンゼン環基又はアダマンタン環基がより好ましい。ベンゼン環基又はアダマンタン環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
また、式(L3)中、LB1~LB3は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。LB1~LB3で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-NR-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
B1~LB3で表される2価の連結基としては、上記のなかでも、-CO-、-NR-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が好ましい。
B1~LB3で表される2価の連結基としては、なかでも式(L3-1)で表される2価の連結基であるのがより好ましい。
Figure 2022142378000037
式(L3-1)中、LB11は、単結合又は2価の連結基を表す。
B11で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-O-、-SO-、-SO-、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。置換基としては特に制限されず、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
rは、1~3の整数を表す。
Xfは、上述した式(L2)中のXfと同義であり、好適態様も同じである。
*は結合位置を表す。
B1~LB3で表される2価の連結基としては、例えば、*-O-*、*-O-SO-CF-*、*-O-SO-CF-CF-*、*-O-SO-CF-CF-CF-*、及び*-COO-CH-CH-*等が挙げられる。
式(Ia-4)中のL41が式(L3-1)で表される2価の有機基を含み、且つ、式(L3-1)で表される2価の有機基とA42 とが結合する場合、式(L3-1)中に明示される炭素原子側の結合手(*)が、式(Ia-4)中のA42 と結合するのが好ましい。
次に、式(Ia-5)で表される化合物について説明する。
Figure 2022142378000038
式(Ia-5)中、A51a 、A51b 、及びA51c は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。ここで、A51a 、A51b 、及びA51c で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。A51a 、A51b 、及びA51c で表される1価のアニオン性官能基としては特に制限されないが、例えば、上述の式(AX-1)~(AX-3)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基等が挙げられる。
52a 及びA52b は、2価のアニオン性官能基を表す。ここで、A52a 及びA52b で表される2価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む2価の基を意図する。A22 で表される2価のアニオン性官能基としては、例えば、例えば、上述の式(BX-8)~(BX-11)からなる群から選ばれる2価のアニオン性官能基等が挙げられる。
51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b は、各々独立に、有機カチオンを表す。M51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b で表される有機カチオンとしては、上述のM と同義であり、好適態様も同じである。
51及びL53は、各々独立に、2価の有機基を表す。L51及びL53で表される2価の有機基としては、上述した式(Ia-2)中のL21及びL22と同義であり、好適態様も同じである。
52は、3価の有機基を表す。L52で表される3価の有機基としては、上述した式(Ia-4)中のL41と同義であり、好適態様も同じである。
また、上記式(Ia-5)において、M51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-5において、A52aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2-1及びA52bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2-2は、A51aHに由来する酸解離定数a1-1、A51bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-2、及びA51cHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-3よりも大きい。なお、酸解離定数a1-1~a1-3は、上述した酸解離定数a1に該当し、酸解離定数a2-1及びa2-2は、上述した酸解離定数a2に該当する。
なお、A51a 、A51b 、及びA51c は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、A52a 及びA52b は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M51b 、M51c 、M52a 、M52b 、A51a 、A51b 、A51c 、L51、L52、及びL53の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
(化合物(II))
化合物(II)は、2つ以上の上記構造部位X及び1つ以上の下記構造部位Zを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つ以上と上記構造部位Zとを含む酸を発生する化合物とを含む酸を発生する化合物である。
構造部位Z:酸を中和可能な非イオン性の部位
化合物(II)中、構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義は、上述した化合物(I)中の構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義と同義であり、好適態様も同じである。
上記化合物(II)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIにおいて、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1の好適範囲については、上記化合物PIにおける酸解離定数a1と同じである。
なお、化合物(II)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと上記構造部位Zとを有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIIは「2つのHAを有する化合物」に該当する。この化合物PIIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIIが「1つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数、及び「1つのA と1つのHAとを有する化合物」が「2つのA を有する化合物」となる際の酸解離定数が、酸解離定数a1に該当する。
酸解離定数a1は、上述した酸解離定数の測定方法により求められる。
上記化合物PIIとは、化合物(II)に活性光線又は放射線を照射した場合に、発生する酸に該当する。
なお、上記2つ以上の構造部位Xは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2つ以上の上記A 、及び2つ以上の上記M は、各々同一であっても異なっていてもよい。
構造部位Z中の酸を中和可能な非イオン性の部位としては特に制限されず、例えば、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基を含む部位であることが好ましい。
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基としては、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又はπ共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基等が挙げられる。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
Figure 2022142378000039
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基の部分構造としては、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられ、なかでも、1~3級アミン構造が好ましい。
化合物(II)としては特に制限されないが、例えば、下記式(IIa-1)及び下記式(IIa-2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022142378000040
上記式(IIa-1)中、A61a 及びA61b は、各々上述した式(Ia-1)中のA11 と同義であり、好適態様も同じである。また、M61a 及びM61b は、各々上述した式(Ia-1)中のM11 と同義であり、好適態様も同じである。
上記式(IIa-1)中、L61及びL62は、各々上述した式(Ia-1)中のLと同義であり、好適態様も同じである。
式(IIa-1)中、R2Xは、1価の有機基を表す。R2Xで表される1価の有機基としては特に制限されず、例えば、-CH-が、-CO-、-NH-、-O-、-S-、-SO-、及び-SO-よりなる群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで置換されていてもよい、アルキル基(好ましくは炭素数1~10。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、又はアルケニル基(好ましくは炭素数2~6)等が挙げられる。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、及び上記アルケニレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
また、上記式(IIa-1)において、M61a 及びM61b で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIIa-1において、A61aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-7及びA61bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-8は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、上記化合物(IIa-1)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M61a 及びM61b をHに置き換えてなる化合物PIIa-1は、HA61a-L61-N(R2X)-L62-A61bHが該当する。また、化合物PIIa-1と、活性光線又は放射線の照射によって式(IIa-1)で表される化合物から発生する酸は同じである。
また、M61a 、M61b 、A61a 、A61b 、L61、L62、及びR2Xの少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
上記式(IIa-2)中、A71a 、A71b 、及びA71c は、各々上述した式(Ia-1)中のA11 と同義であり、好適態様も同じである。また、M71a 、M71b 、M71c は、各々上述した式(Ia-1)中のM11 と同義であり、好適態様も同じである。
上記式(IIa-2)中、L71、L72、及びL73は、各々上述した式(Ia-1)中のLと同義であり、好適態様も同じである。
また、上記式(IIa-2)において、M71a 、M71b 、M71c で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIIa-2において、A71aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-9、A71bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-10、及びA71cHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-11は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、上記化合物(IIa-1)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M71a 、M71b 、M71c をHに置き換えてなる化合物PIIa-2は、HA71a-L71-N(L73-A71cH)-L72-A71bHが該当する。また、化合物PIIa-2と、活性光線又は放射線の照射によって式(IIa-2)で表される化合物から発生する酸は同じである。
また、M71a 、M71b 、M71c 、A71a 、A71b 、A71c 、L71、L72、及びL73の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
以下に、特定光酸発生剤が有し得る、有機カチオン及びそれ以外の部位を例示する。
上記有機カチオンは、例えば、式(Ia-1)~式(Ia-5)で表される化合物における、M11 、M12 、M21a 、M21b 、M22 、M31a 、M31b 、M32 、M41a 、M41b 、M42 でM51a 、M51b 、M51c 、M52a 、又はM52b として使用できる。
上記それ以外の部位とは、例えば、式(Ia-1)~式(Ia-5)で表される化合物における、M11 、M12 、M21a 、M21b 、M22 、M31a 、M31b 、M32 、M41a 、M41b 、M42 でM51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b 以外の部分として使用できる。
以下に示す有機カチオン及びそれ以外の部位を適宜組み合わせて、特定光酸発生剤として使用できる。
まず、特定光酸発生剤が有し得る、有機カチオンを例示する。
Figure 2022142378000041
Figure 2022142378000042
Figure 2022142378000043
次に、特定光酸発生剤が有し得る、有機カチオン以外の部位を例示する。
Figure 2022142378000044
Figure 2022142378000045
特定光酸発生剤の分子量は100~10000が好ましく、100~2500がより好ましく、100~1500が更に好ましい。
レジスト組成物が特定光酸発生剤を含有する場合、その含有量(化合物(I)及び(II)の合計含有量)は、レジスト組成物の全固形分に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、その上限値としては、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
特定光酸発生剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が、上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
(化合物(III))
レジスト組成物は、光酸発生剤(B)として、下記化合物(III)を有してもよい。
化合物(III)は、2つ以上の下記構造部位Xを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、下記構造部位Xに由来する2つの酸性部位を発生する化合物である。
構造部位X:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、且つ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される酸性部位を形成する構造部位
化合物(III)に含まれる2つ以上の構造部位Xは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2つ以上の上記A 、及び2つ以上の上記M は、各々同一であっても異なっていてもよい。
化合物(III)中、構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義は、上述した化合物(I)中の構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義と同義であり、好適態様も同じである。
光酸発生剤は、「M」で表される化合物であることが好ましい。Mは、有機カチオンを表す。
上記有機カチオンは、上述した式(ZaI)で表されるカチオン(カチオン(ZaI))又は上述した式(ZaII)で表されるカチオン(カチオン(ZaII))が好ましい。
<酸拡散制御剤(C)>
レジスト組成物は、酸拡散制御剤(C)を含んでいてもよい。
酸拡散制御剤(C)は、露光時に光酸発生剤(B)等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。酸拡散制御剤(C)としては、例えば、塩基性化合物(CA)、放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(CB)、光酸発生剤(B)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(CC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(CD)、及び、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(CE)等が使用できる。
レジスト組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190号明細書の段落[0403]~[0423]、及び、米国特許出願公開2016/0274458号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を、酸拡散制御剤(C)として好適に使用できる。
塩基性化合物(CA)としては、特開2019-045864号公報の段落0188~0208に記載の繰り返し単位が挙げられる。
レジスト組成物では、光酸発生剤(B)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(CC)を酸拡散制御剤(C)として使用できる。
光酸発生剤(B)と、光酸発生剤(B)から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤(B)から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散を制御できる。
光酸発生剤(B)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、特開2019-070676号公報の段落0226~0233に記載のオニウム塩が挙げられる。
レジスト組成物に酸拡散制御剤(C)が含まれる場合、酸拡散制御剤(C)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
レジスト組成物において、酸拡散制御剤(C)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<疎水性樹脂(D)>
レジスト組成物は、疎水性樹脂(D)として、上記樹脂(A)とは異なる疎水性の樹脂を含んでいてもよい。
疎水性樹脂(D)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂(D)を添加することの効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びに、アウトガスの抑制等が挙げられる。
疎水性樹脂(D)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含まれたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。また、疎水性樹脂(D)は、炭素数5以上の炭化水素基を有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
疎水性樹脂(D)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
疎水性樹脂(D)がフッ素原子を有している場合、フッ素原子を有する部分構造としては、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基が好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、及び、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、米国特許出願公開2012/0251948号明細書の段落0519に例示されたものが挙げられる。
また、上記したように、疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH部分構造を有することも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH部分構造は、エチル基、及び、プロピル基等を有するCH部分構造を含む。
一方、疎水性樹脂(D)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα-メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂(D)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造に含まれないものとする。
疎水性樹脂(D)に関しては、特開2014-010245号公報の段落0348~0415の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、疎水性樹脂(D)としては、特開2011-248019号公報、特開2010-175859号公報、特開2012-032544号公報に記載された樹脂も、好ましく用いることができる。
レジスト組成物が疎水性樹脂(D)を含む場合、疎水性樹脂(D)の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
<界面活性剤(E)>
レジスト組成物は、界面活性剤(E)を含んでいてもよい。界面活性剤(E)を含むことにより、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成できる。
界面活性剤(E)としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落0276に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301又はEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431又は4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120又はR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105又は106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300又はGF-150(東亞合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802又はEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320又はPF6520(OMNOVA社製);KH-20(旭化成(株)製);FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D又は222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
また、界面活性剤(E)は、上記に示すような公知の界面活性剤の他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤(E)として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-090991号公報に記載された方法によって合成できる。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、及び、ポリ(オキシブチレン)基が挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー、及び、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)等を同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
例えば、市販の界面活性剤としては、メガファックF178、F-470、F-473、F-475、F-476、F-472(DIC(株)製)、C13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
これら界面活性剤(E)は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤(E)の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
<溶剤(F)>
レジスト組成物は、溶剤(F)を含んでいてもよい。
レジスト組成物がEUV用のレジスト組成物である場合、溶剤(F)は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合の溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
成分(M1)又は(M2)を含む溶剤は、上述した樹脂(A)とを組み合わせて用いると、レジスト組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となるため、好ましい。
また、レジスト組成物がArF用のレジスト組成物である場合、溶剤(F)としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を含んでいてもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
レジスト組成物中の溶剤(F)の含有量は、固形分濃度が0.5~40質量%となるように定めることが好ましい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、固形分濃度は10質量%以上であることが好ましい。
<その他の添加剤>
レジスト組成物は、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物を更に含んでいてもよい。
レジスト組成物中における水分の含有量は特に制限されないが、0.10質量%以下が好ましい。上記水分の含有量の下限は特に制限されないが、0.01質量%以上の場合が多い。
レジスト組成物中における水分の含有量の測定方法としては、カールフィッシャー水分測定装置を用いる方法が挙げられる。
レジスト組成物は、EUV光用感光性組成物としても好適に用いられる。
EUV光は波長13.5nmであり、ArF(波長193nm)光等に比べて、より短波長であるため、同じ感度で露光された際の入射フォトン数が少ない。そのため、確率的にフォトンの数がばらつく“フォトンショットノイズ”の影響が大きく、LERの悪化及びブリッジ欠陥を招く。フォトンショットノイズを減らすには、露光量を大きくして入射フォトン数を増やす方法があるが、高感度化の要求とトレードオフとなる。
下記式(1)で求められるA値が高い場合は、レジスト組成物より形成されるレジスト膜のEUV光及び電子線の吸収効率が高くなるなり、フォトンショットノイズの低減に有効である。A値は、レジスト膜の質量割合のEUV光及び電子線の吸収効率を表す。
式(1):A=([H]×0.04+[C]×1.0+[N]×2.1+[O]×3.6+[F]×5.6+[S]×1.5+[I]×39.5)/([H]×1+[C]×12+[N]×14+[O]×16+[F]×19+[S]×32+[I]×127)
A値は0.120以上が好ましい。上限は特に制限されないが、A値が大きすぎる場合、レジスト膜のEUV光及び電子線透過率が低下し、レジスト膜中の光学像プロファイルが劣化し、結果として良好なパターン形状が得られにくくなるため、0.240以下が好ましく、0.220以下がより好ましい。
なお、式(1)中、[H]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の水素原子のモル比率を表し、[C]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の炭素原子のモル比率を表し、[N]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の窒素原子のモル比率を表し、[O]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の酸素原子のモル比率を表し、[F]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来のフッ素原子のモル比率を表し、[S]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の硫黄原子のモル比率を表し、[I]は、レジスト組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来のヨウ素原子のモル比率を表す。
例えば、レジスト組成物が酸の作用により極性が増大する樹脂(酸分解性樹脂)、光酸発生剤、酸拡散制御剤、及び溶剤を含む場合、上記樹脂、上記光酸発生剤、及び上記酸拡散制御剤が固形分に該当する。つまり、全固形分の全原子とは、上記樹脂由来の全原子、上記光酸発生剤由来の全原子、及び上記酸拡散制御剤由来の全原子の合計に該当する。例えば、[H]は、全固形分の全原子に対する、全固形分由来の水素原子のモル比率を表し、上記例に基づいて説明すると、[H]は、上記樹脂由来の全原子、上記光酸発生剤由来の全原子、及び上記酸拡散制御剤由来の全原子の合計に対する、上記樹脂由来の水素原子、上記光酸発生剤由来の水素原子、及び上記酸拡散制御剤由来の水素原子の合計のモル比率を表すことになる。
A値の算出は、レジスト組成物中の全固形分の構成成分の構造、及び含有量が既知の場合には、含有される原子数比を計算し、算出できる。また、構成成分が未知の場合であっても、レジスト組成物の溶剤成分を蒸発させて得られたレジスト膜に対して、元素分析等の解析的な手法によって構成原子数比を算出可能である。
〔レジスト組成物の製造方法〕
レジスト組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、攪拌手段を備える攪拌槽にレジスト組成物を構成する各種成分を加えて、これらを混合して、レジスト組成物を製造する方法が挙げられる。
攪拌槽に添加されるレジスト組成物の構成成分については、既に説明した通りである。
攪拌槽に上記成分を投入する手順は特に制限されない。
例えば、攪拌槽の材料投入口から、各種成分を投入する方法が挙げられる。各種成分を投入する際には、成分を順次投入してもよいし、一括して投入してもよい。また、1種の成分を投入する際、複数回に分けて投入してもよい。
また、攪拌槽内に各成分を順次投入する場合、投入する順序は特に制限されない。
溶剤以外の成分を攪拌槽内に投入する際には、成分を溶剤中に溶解させた溶液として攪拌槽内に投入してもよい。その際、溶液中の不溶物を除去するために、上記溶液をフィルターでろ過した後、攪拌槽内に投入してもよい。
また、溶剤を攪拌槽内に投入する際には、溶剤をフィルターろ過した後、攪拌槽内に投入してもよい。上記で使用されるフィルターとしては、上述した工程Xで使用されるフィルターが挙げられる。
レジスト組成物の製造においては、各成分の混合物の攪拌混合を実施することが好ましい。攪拌混合の方法は特に制限されず、攪拌翼等の公知の攪拌手段を用いて行えばよい。
攪拌混合する混合物の温度は特に制限されないが、15~32℃が好ましく、20~24℃がより好ましい。
攪拌混合時間は特に制限されないが、得られるレジスト組成物の均一性、及び、生産性のバランスの点から、1~48時間が好ましい。
攪拌槽から配管にレジスト組成物を送液する方法は特に制限されず、重力を利用する送液方法、レジスト組成物の液面側から圧力を加える方法、配管側を負圧にする方法、及び、これらを2つ以上組み合わせた方法が挙げられる。
レジスト組成物の液面側から圧力を加える方法の場合、送液で生じる流液圧を利用する方法、及び、ガスを用いて加圧する方法が挙げられる。
流液圧は、例えば、ポンプ(送液ポンプ、及び、循環ポンプ等)等により発生させることが好ましい。ポンプとしては、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、定量ポンプ、ケミカルポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ、ギアポンプ、真空ポンプ、エアーポンプ、及び、液体ポンプが挙げられ、そのほかにも適宜、市販のポンプが挙げられる。ポンプが配置される位置は特に制限されない。
加圧に用いるガスとしては、レジスト組成物に対して不活性又は非反応性のガスが好ましく、具体的には、窒素、並びに、ヘリウム及びアルゴン等の希ガス等が挙げられる。ガスを用いて加圧する場合、配管側は減圧せず、大気圧であることが好ましい。
配管側を負圧にする方法としては、ポンプによる減圧が好ましく、真空にまで減圧することがより好ましい。
製造されたレジスト組成物に対してろ過処理を施してもよい。
ろ過処理としては、レジスト組成物をフィルターでろ過する方法が挙げられる。フィルターが循環配管上に設けられた製造装置を用いて、製造されたレジスト組成物をフィルターに複数回通過させる循環ろ過を実施してもよい。
フィルターとしては、工程Xで説明したフィルターろ過の際に使用されるフィルターが挙げられる。
フィルターにかかる差圧(上流側と下流側との圧力差)は200kPa以下が好ましく、100kPa以下がより好ましい。また、フィルターでろ過する際には、ろ過中における差圧の変化が少ないことが好ましい。
フィルターでろ過する際には、線速度は3~150L/(hr・m)の範囲が好ましく、5~120L/(hr・m)がより好ましく、10~100L/(hr・m)が更に好ましい。
攪拌槽にて製造されたレジスト組成物は、所定の容器に収容してもよい。
容器としては、例えば、ブルーム処理されたガラス容器、及び、接液部がフッ素樹脂となるよう処理された容器が挙げられる。
容器内にレジスト組成物を収容した場合、容器内の空間部(レジスト組成物が占有していない容器内の領域)を所定のガスで置換してもよい。ガスとしてはレジスト組成物に対して不活性又は非反応性のガスが好ましく、例えば、窒素、並びに、ヘリウム及びアルゴン等の希ガスが挙げられる。
なお、容器中にレジスト組成物を収容する前に、レジスト組成物中の溶存ガスを除去するための脱気処理を実施してもよい。脱気方法としては、超音波処理、及び、脱泡処理が挙げられる。
<レジスト組成物の品質検査>
製造されたレジスト組成物は、本洗浄方法で洗浄されたレジスト塗布装置を用いて基板等の部材に塗布され、レジスト膜の製造に用いられる。
本洗浄方法によるレジスト膜における欠陥発生抑制の効果を確認するため、本洗浄方法により洗浄されたレジスト塗布装置を用いてレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、形成されたレジスト膜の欠陥の数を欠陥検査装置を用いて測定する欠陥測定工程とを有する、レジスト組成物の品質検査を実施することが好ましい。
上記品質検査における、本洗浄方法、レジスト塗布装置、検査用の基板、及び、レジスト組成物については、既に説明した通りである。また、レジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程については、後述する〔レジスト膜及びレジストパターンの形成〕の項の工程Aとして記載する通りである。
上記の欠陥測定工程は、公知のレジスト膜の欠陥測定方法に従って実施できる。
測定対象となるレジスト膜に存在する欠陥の大きさは特に制限されず、例えば、40nm以上の大きさの欠陥の数が測定される。
レジスト膜に存在する欠陥数は、欠陥検査装置(例えば、ケーエルエーテンコール社製の暗視野欠陥検査装置SP5等)で測定できる。
塗布装置に対して実施した洗浄方法により塗布装置の接液部に付着した残渣物がより多く除去されるほど、上記品質検査により測定されるレジスト膜の欠陥数が少なくなる。よって、上記品質検査により、塗布装置に対して実施する洗浄方法による残渣物の除去性能を確認できる。本発明に係る洗浄方法は、塗布装置内に付着するレジスト組成物由来の残渣物を短時間で効率よく低減し、レジスト膜における欠陥の発生をより抑制する効果を有する。
レジスト組成物の製造方法としては、上記の品質検査を実施した後、品質検査により得られた結果に応じて、レジスト膜の欠陥の数が低減されるレジスト組成物を製造することが好ましい。即ち、上記品質検査を実施した結果、測定されたレジスト膜における欠陥数が所定の基準値以下である場合、その結果が得られるような製造方法に従って、レジスト組成物を製造することが好ましい。これにより、品質が優れるレジスト組成物を製造できるためである。
上記基準値は、レジスト塗布装置の構成、レジスト組成物の組成、及び、形成されるレジストパターンに要求される精度等の条件に応じて、適宜設定できる。
〔レジスト膜及びレジストパターンの形成〕
レジスト組成物は、例えば、レジスト膜の形成、及び、レジストパターンの形成に用いられる。レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する方法は特に制限されず、例えば、レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程を有する方法が挙げられる。
レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成する方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有することが好ましい。
・工程A:上記レジスト塗布装置を用いてレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程
・工程B:レジスト膜を露光する工程
・工程C:現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
<工程A:レジスト膜形成工程>
工程Aは、レジスト塗布装置を用いてレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程である。
レジスト塗布装置及びレジスト組成物については、既に説明した通りである。
なお、塗布前に、必要に応じてレジスト組成物をフィルターろ過してもよく、フィルターろ過することが好ましい。フィルターのポアサイズとしては、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製が好ましい。
上記のフィルターは、レジスト塗布装置の配管上に設置することが好ましい。
レジスト組成物を塗布する基板としては、集積回路素子の製造に使用される基板であれば特に制限されず、例えば、シリコンウエハ、及び、二酸化シリコンで被覆されたシリコンウエハが挙げられる。
レジスト組成物は、上記レジスト塗布装置のノズルから基板表面に塗布される。塗布方法は特に制限されず、スピナー及びコーター等の塗布手段が適用でき、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。
レジスト組成物の塗布後、塗膜を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、又は、反射防止膜)を形成してもよい。
乾燥方法としては、塗膜を有する基板を加熱する方法(プリベーク:PB)が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は30~1000秒間が好ましく、40~800秒間がより好ましい。
レジスト膜の膜厚は、特に制限されないが、KrF露光用のレジスト膜の場合、0.2~12μmが好ましく、0.3~5μmがより好ましい。
また、ArF露光用又はEUV露光用のレジスト膜の場合、30~700nmが好ましく、40~400nmがより好ましく、40~200nmがさらに好ましい。
レジスト膜の厚みは、例えば、レジスト組成物の組成及び粘度、並びに、塗布するレジスト組成物の温度及びスピンコータの回転速度等の条件を制御することにより、調整できる。
なお、レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートの膜厚は、10~200nmが好ましく、20~100nmがより好ましい。
トップコートについては、特に制限されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落0072~0082の記載に基づいてトップコートを形成できる。
<工程B:露光工程>
工程Bは、レジスト膜を露光する工程である。
露光の方法としては、形成したレジスト膜に所定のマスクを通して放射線を照射する方法が挙げられる。
放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、及び、EB(Electron Beam)が挙げられ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、更に好ましくは1~200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、及び、EBが挙げられる。
露光後、現像を行う前にベーク(ポストエクスポージャーベーク:PEB)を行うことが好ましい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は10~1000秒間が好ましく、10~180秒間がより好ましい。
加熱は通常の露光機、及び/又は現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークとも記載する。
<工程C:現像工程>
工程Cは、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
現像方法としては、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静置することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒間が好ましく、20~120秒間がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
現像液としては、アルカリ現像液、及び、有機溶剤現像液が挙げられる。
アルカリ現像液としては、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いることが好ましい。中でも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であることが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
有機溶剤現像液とは、有機溶剤を含む現像液である。
有機溶剤現像液に用いられる有機溶剤としては、公知の有機溶剤が挙げられ、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤が挙げられる。
<他の工程>
上記パターン形成方法は、工程Cの後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程Cにて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に制限されないが、工程Cで形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。
ドライエッチングは、1段のエッチングであっても、複数段からなるエッチングであってもよい。エッチングが複数段からなるエッチングである場合、各段のエッチングは同一の処理であっても異なる処理であってもよい。
エッチングは、公知の方法をいずれも用いることができ、各種条件等は、基板の種類又は用途等に応じて、適宜、決定される。例えば、国際光工学会紀要(Proc.of SPIE)Vol.6924,692420(2008)、特開2009-267112号公報等に準じて、エッチングを実施できる。また、「半導体プロセス教本 第四版 2007年刊行 発行人:SEMIジャパン」の「第4章 エッチング」に記載の方法に準ずることもできる。
中でも、ドライエッチングとしては、酸素プラズマエッチングが好ましい。
本洗浄方法及びレジスト組成物において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。ここで、金属不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Mo、Zr、Pb、Ti、V、W、及び、Zn等が挙げられる。
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いたろ過が挙げられる。フィルター孔径としては、0.20μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01μm以下が更に好ましい。
フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド樹脂が好ましい。フィルターは、有機溶剤で予め洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数又は複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよく、複数回ろ過する工程が循環ろ過工程であってもよい。循環ろ過工程としては、例えば、特開2002-062667号公報に開示されるような手法が好ましい。
フィルターとしては、特開2016-201426号公報に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルターろ過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルターろ過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、特開2016-206500号公報に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、又は、装置内をフッ素樹脂等でライニング若しくはコーティングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルターろ過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、特開2015-123351号公報、及び、特開2017-013804号公報等に記載された容器に保存されることが好ましい。
各種材料はレジスト組成物に使用する溶剤により希釈し、使用してもよい。
〔電子デバイスの製造〕
レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜及びレジストパターンは、電子デバイスの製造に用いられてもよい。
電子デバイスの好適態様としては、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に搭載される態様が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
〔原料〕
<樹脂(A)>
実施例及び比較例において、樹脂(A)として、樹脂A-1及びA-2を用いた。樹脂A-1及びA-2はいずれも、公知技術に基づいて合成したものを用いた。
以下に、樹脂A-1及びA-2の構造を示すとともに、樹脂A-2中の各繰り返し単位の組成比(モル比)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を示す。樹脂A-1中の各繰り返し単位の組成比(モル比)は、左から順に「60/30/10」であり、樹脂A-1の重量平均分子量(Mw)は23000であり、分散度(Mw/Mn)は1.51であった。
樹脂A-1及びA-2、並びに、後述する樹脂D-1の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、上述のGPC法(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定したポリスチレン換算値である。また、各樹脂中の繰り返し単位の組成比(モル%比)は、13C-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)により測定した。
Figure 2022142378000046
<光酸発生剤(B)>
実施例及び比較例において光酸発生剤(B)として使用した化合物B-1及びB-2の構造を以下に示す。
Figure 2022142378000047
<酸拡散制御剤(C)>
実施例及び比較例において酸拡散制御剤として、下記化合物C-1及びC-2を使用した。
Figure 2022142378000048
C-2:ジシクロヘキシルメチルアミン
<疎水性樹脂(D)>
実施例及び比較例において疎水性樹脂(D)として、下記の樹脂D-1を使用した。樹脂D-1は、公知技術に基づいて合成した。
樹脂D-1の構造、各繰り返し単位の組成比(モル比)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)は、下記の通りである。
Figure 2022142378000049
<界面活性剤(E)>
実施例及び比較例において使用した界面活性剤を以下に示す。
E-1:メガファックF176(DIC(株)製)
<溶剤(F)>
実施例及び比較例において使用した溶剤を以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
〔レジスト組成物の製造〕
温度22.0℃、湿度58%、気圧102.6kPaである、クラス6(国際統一規格ISO 14644-1のクラス表記)のクリーンルーム内において、以下の操作を実施し、レジスト組成物を製造した。
<レジスト組成物ArF-1>
以下に示す各成分を混合することにより、レジスト組成物ArF-1を調製した。
・樹脂A-1(酸分解性樹脂(A)) 1,267g
・化合物B-1(光酸発生剤(B)) 101g
・化合物C-1(酸拡散制御剤(C)) 22g
・化合物D-1(疎水性樹脂(D)) 10g
・PGMEA(溶剤(F)) 38,600g
上記手順で調製されたレジスト組成物ArF-1に対して、以下に示す異なる2種のろ過処理を実施することで、ArF-1A、及び、ArF-1Bの2種のレジスト組成物を調製した。
(レジスト組成物ArF-1A)
レジスト組成物ArF-1(18000g)を、Entegris社製ポアサイズ100nmのポリエチレンフィルタでろ過し、レジスト組成物ArF-1Aを得た。
(レジスト組成物ArF-1B)
レジスト組成物ArF-1(18000g)を、Entegris社製ポアサイズ3nmのポリエチレンフィルタでろ過し、レジスト組成物ArF-1Bを得た。
<レジスト組成物KrF-1>
以下に示す各成分を混合することにより、レジスト組成物KrF-1を調製した。
・樹脂A-2(酸分解性樹脂(A)) 3,914g
・化合物B-2(光酸発生剤(B)) 80g
・化合物C-2(酸拡散制御剤(C)) 4g
・化合物E-1(界面活性剤(E)) 2g
・PGMEA(溶剤(F)) 36,000g
上記手順で調製されたレジスト組成物KrF-1に対して、以下に示す異なる2種のろ過処理を実施することで、KrF-1A、及び、KrF-1Bの2種のレジスト組成物を調製した。
(レジスト組成物KrF-1A)
レジスト組成物KrF-1(18000g)をEntegris社製ポアサイズ200nmのポリエチレンフィルタでろ過し、レジスト組成物KrF-1Aを得た。
(レジスト組成物KrF-1B)
レジスト組成物KrF-1(18000g)をEntegris社製ポアサイズ20nmのポリエチレンフィルタでろ過し、レジスト組成物KrF-1Bを得た。
〔実施例1~10、比較例1~8(レジスト塗布装置の洗浄)〕
表6に、各実施例及び各比較例において実施したレジスト塗布装置の洗浄方法を示す。
表中、「工程1」及び「工程2」の「溶剤」欄には、各工程でレジスト塗布装置の洗浄に用いた溶剤を示す。
実施例及び比較例においては、「工程1」及び「工程2」の順に、レジスト塗布装置の洗浄を実施した。ただし、各欄に溶剤が記載されていない場合(「-」と表記されている場合)、その工程を実施しなかったことを意味する。また、「工程1」として2種の溶剤が使用されている実施例1~5では、左側に記載された溶剤を用いてレジスト塗布装置を洗浄する工程(工程1-1)を実施した後、右側に記載された溶剤を用いてレジスト塗布装置を洗浄する工程(工程1-2)を実施したことを意味する。
表中、「PGMEA」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表し、「PGME」はプロピレングリコールモノメチルエーテルを表し、「混合溶剤A1」はPGMEAとPGMEの混合溶剤(PGMEA/PGME=30/70(質量比))を表す。
表中、「SP値」欄は、その左隣の欄に記載された溶剤のSP値(単位:MPa1/2)を示す。
実施例及び比較例において、各溶剤は、レジスト塗布装置の洗浄に使用する前に、Entegris社製3nmポリエチレンフィルタを用いて濾過した。なお、濾過手順については、特開2016-075920に記載の手法を参考とした。
Figure 2022142378000050
〔評価〕
実施例及び比較例の各洗浄方法について、下記の方法でレジスト塗布装置の洗浄性を評価した。
<実施例A-1~A-10、比較例A-1~A-8>
まず、「洗浄前レジスト」として1ガロンの上記レジスト組成物ArF-1Aが充填されたガロン瓶に、レジスト塗布装置(東京エレクトロン社製「クリーントラックACT12」)(以下、単に「塗布装置」ともいう。)のコーターのレジストラインを接続した(なお、接続の際、接続配管にフィルタは接続させず、ダミーのカプセルを使用した)。続いて、ガロン瓶に充填されたレジスト組成物を、上記レジストラインを通して、コーターのレジストノズルの先端から吐出するダミーディスペンスを行った。これにより、上記コーターのレジストラインに全てのレジスト組成物を通過させた。
続いて、後述する表7に記載の洗浄方法にて、塗布装置のレジストラインの洗浄を行った。
各工程では、上記表に記載した各溶剤を2ガロンずつ用意し、使用した。各工程において、まず、1ガロンの溶剤をポンプ駆動にてガロン瓶からレジストノズルの先端まで送液するダミーディスペンスを行うことにより、塗布装置のレジストラインを洗浄した。次いで、残る1ガロンの溶剤について窒素加圧により送液するダミーディスペンスを行うことにより、塗布装置のレジストラインを洗浄した。
レジストラインの洗浄において、各洗浄方法の最後の工程の2ガロン目(窒素加圧による送液)のダミーディスペンスでは、溶剤の全量を排出せず、一部の溶剤を残してダミーディスペンスを停止した。次いで、直径12インチ(300mm)のシリコンウエハの表面に、残った溶剤を塗布装置のレジストノズルから1mL/sの流量で10秒間吐出した。その後、溶剤が表面に塗布されたシリコンウエハを、100℃にて60秒間ベークした。
実施例1の洗浄方法を例に挙げると、まず、2ガロンの酢酸ブチルを用いてレジストラインを洗浄する工程1-1を行い、次いで、2ガロンのシクロヘキサノンを用いてレジストラインを洗浄する工程1-2を行い、最後に、2ガロンのγ-ブチロラクトンを用いてレジストラインを洗浄する工程2を行った。実施例1の工程2においては、1ガロンのγ-ブチロラクトンをポンプ駆動にて送液してダミーディスペンスを行い、続いて、1ガロンのγ-ブチロラクトンの大部分を窒素加圧にて送液してダミーディスペンスを行った後、残る少量のγ-ブチロラクトンを上記シリコンウエハに塗布した。次いで、γ-ブチロラクトンが塗布されたシリコンウエハを上記の通りベークした。
上記手順で得られたシリコンウエハに対して、ケーエルエーテンコール社製の暗視野欠陥検査装置SP5を使用して、シリコンウエハの表面に存在する19nm以上の大きさの欠陥の数(欠陥数)を測定した。
なお、評価試験に用いるシリコンウエハは、溶剤を塗布する前に予め上記検査装置を用いて表面における欠陥数を測定した。また、シリコンウエハ表面の欠陥数の測定、及び、後述するレジスト膜表面の欠陥数の測定においては、上記シリコンウエハの同心円であって、面積が660cmの円の円内領域を測定領域とした。
溶剤塗布前後の測定により得られたそれぞれの欠陥数から導出された、溶剤塗布により増加した欠陥数の結果に基づいて、実施例及び比較例の各洗浄方法の洗浄性能を、下記基準に従って評価した。評価結果を「溶剤欠陥評価」として表7に示す。
(評価基準(溶剤欠陥評価))
A:シリコンウエハ表面における欠陥の増加数が200個未満。
B:シリコンウエハ表面における欠陥の増加数が200個以上300個未満。
C:シリコンウエハ表面における欠陥の増加数が300個以上400個未満。
D:シリコンウエハ表面における欠陥の増加数が400個以上500個未満。
E:シリコンウエハ表面における欠陥の増加数が500個以上。
次に、「洗浄後レジスト」として1ガロンの上記レジスト組成物ArF-1Bが充填されたガロン瓶に、上記の方法で洗浄された塗布装置のレジストラインを接続した(接続の際、接続配管にフィルタは接続させず、ダミーのカプセルを使用した)。
ガロン瓶に充填された0.5ガロンのレジスト組成物ArF-1Bについて、上記レジストラインを通してコーターのレジストノズルの先端から吐出するダミーディスペンスを行った。次いで、上記の溶剤が塗布されたシリコンウエハの表面に、レジスト組成物ArF-1Bを上記塗布装置のレジストノズルから1mL/sの流量で3秒間吐出して塗膜を形成した後、100℃にて60秒間ベークして、シリコンウエハの表面にレジスト膜を形成した。このとき、形成されたレジスト膜の膜厚を100nmに調整した。
上記手順で得られたシリコンウエハに対して、ケーエルエーテンコール社製の暗視野欠陥検査装置SP5を使用して、レジスト膜の表面に存在する40nm以上の大きさの欠陥の数(欠陥数)を測定した。
測定されたレジスト膜表面の欠陥数の測定結果に基づいて、実施例及び比較例の各洗浄方法の洗浄性能を、下記基準に従って評価した。評価結果を「レジスト欠陥評価」として表7に示す。このレジスト膜表面の欠陥数の評価では、各実施例及び各比較例において使用した洗浄前レジスト及び洗浄後レジストが同じであることから、各実施例及び各比較例の洗浄方法の洗浄性能について相対評価を行うことができる。即ち、レジスト膜表面において測定された欠陥数が少ないほど、上記欠陥数が多い場合に比較して、実施した洗浄方法の洗浄性能がより優れることを意味する。
(評価基準(レジスト欠陥評価))
A:レジスト膜表面における欠陥数が20個未満。
B:レジスト膜表面における欠陥数が20個以上40個未満。
C:レジスト膜表面における欠陥数が40個以上70個未満。
D:レジスト膜表面における欠陥数が70個以上100個未満。
E:レジスト膜表面における欠陥数が100個以上。
下記表7に、実施例A-1~A-10及び比較例A-1~A-8において行ったレジストラインの洗浄方法、使用した各レジスト組成物、並びに、溶剤欠陥評価、及び、レジスト欠陥評価の各評価結果を示す。
Figure 2022142378000051
<実施例K-1~K-10、比較例K-1~K-8>
「洗浄前レジスト」及び「洗浄後レジスト」として、上記のレジスト組成物KrF-1A及びレジスト組成物KrF-1Bをそれぞれ用いたこと、洗浄後レジストを用いて形成された塗膜を、130℃にて60秒間ベークして膜厚400nmのレジスト膜を形成したこと、並びに、レジスト膜の表面に存在する100nm以上の大きさの欠陥の数(欠陥数)を測定したこと以外は、実施例A-1~A-10及び比較例A-1~A-8に記載の方法に従って、実施例及び比較例の洗浄方法の評価を行った。
下記表8に、実施例K-1~K-10及び比較例K-1~K-8において行ったレジストラインの洗浄方法、使用したレジスト組成物、並びに、溶剤欠陥評価、及び、レジスト欠陥評価の各評価結果を示す。
Figure 2022142378000052
表7及び表8に示すように、本発明の洗浄方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、実施例6~10の比較より、工程1において用いた溶剤AのSP値が18.5~21.5MPa1/2である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
また、実施例1~8の比較より、工程1として、SP値がそれぞれ異なる溶剤Aを用いて工程1-1及び工程1-2を実施する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
また、実施例1~5の比較より、工程1-2で用いる溶剤A2のSP値が工程1-1で用いる溶剤A1のSP値よりも高い場合、本発明の効果が更に優れることが確認された。

Claims (11)

  1. レジスト塗布装置の洗浄方法であって、
    SP値が16.0~21.5MPa1/2の溶剤Aを用いて前記レジスト塗布装置を洗浄する工程1と、
    前記工程1の後、SP値が21.5MPa1/2超30.0MPa1/2以下の溶剤Bを用いて前記レジスト塗布装置を洗浄する工程2とを有する、洗浄方法。
  2. 前記溶剤AのSP値が18.5~21.5MPa1/2である、請求項1に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  3. 前記溶剤A及び前記溶剤Bの少なくとも一方が、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  4. 前記工程1が、前記溶剤Aに含まれる溶剤A1を用いて前記レジスト塗布装置を洗浄する工程1-1と、
    前記工程1-1の後、前記溶剤Aに含まれ、前記溶剤A1とはSP値が異なる溶剤A2を用いて前記レジスト塗布装置を洗浄する工程1-2とを有する、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  5. 前記溶剤A2のSP値が、前記溶剤A1のSP値よりも高い、請求項4に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  6. 前記溶剤A1が、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項4又は5に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  7. 前記工程1の前に前記工程1に用いる前記溶剤Aをフィルターでろ過する工程X、及び、前記工程2の前に前記工程2に用いる前記溶剤Bをフィルターでろ過する工程Yからなる群より選択される少なくとも1つの工程を更に有する、
    請求項1~6のいずれか1項に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  8. 前記工程1及び前記工程2で使用された溶剤の少なくとも1つを、前記レジスト塗布装置を用いて基板上に塗布する工程4と、
    前記工程4の後、前記基板上の欠陥の数を欠陥検査装置を用いて測定する工程5と、を更に有し、
    前記工程5により測定された欠陥の数が基準値を超えている場合、前記工程1及び前記工程2からなる群より選択される少なくとも1つの工程を再度実施する、
    請求項1~7のいずれか1項に記載のレジスト塗布装置の洗浄方法。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の洗浄方法により洗浄されたレジスト塗布装置を用いてレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
    前記レジスト膜の欠陥の数を欠陥検査装置を用いて測定する欠陥測定工程と、を有する、レジスト組成物の品質検査方法。
  10. 請求項9に記載の品質検査方法に従ってレジスト組成物の品質検査を実施し、前記品質検査により得られた結果に応じて、レジスト膜の欠陥の数が低減されるレジスト組成物を製造する、レジスト組成物の製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法より製造されるレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を用いて電子デバイスを製造する工程と、を有する、電子デバイスの製造方法。
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