JP2022138965A - ボルトの製造方法 - Google Patents

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崇文 清水
Takafumi Shimizu
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Abstract

【課題】降伏および水素脆化割れを抑制できるボルトの製造方法を提供すること。【解決手段】先端部分にねじ部を有するボルトの製造方法であって、前記ボルトの元となる元部材の全体に対して浸炭処理を行う第1浸炭工程と、前記元部材に形成された浸炭層のうち、前記ねじ部となる予定のねじ部予定部に形成された浸炭層を切削する切削工程と、前記ねじ部予定部に雄ネジを転造し、前記ねじ部を形成する転造工程と、前記元部材の全体に対して再度浸炭処理を行う第2浸炭工程と、を有する。【選択図】図7

Description

本開示は、ボルトの製造方法に関する。
従来、頭部、円筒部、ねじ部を備え、それら各部に浸炭処理が施されたボルトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006-29534号公報
上記ボルトを、例えば、シリンダヘッドをシリンダブロックに固定するヘッドボルトとして用いた場合、漏洩した燃焼ガス中の水素により、ねじ部において水素脆化割れが起こるおそれがある。水素脆化割れは、硬度を低くすることで抑制できる。その一方で、降伏を防ぐために、頭部の硬度は確保されることが好ましい。
本開示の一態様の目的は、降伏および水素脆化割れを抑制できるボルトの製造方法を提供することである。
本開示の一態様に係るボルトの製造方法は、先端部分にねじ部を有するボルトの製造方法であって、前記ボルトの元となる元部材の全体に対して浸炭処理を行う第1浸炭工程と、前記元部材に形成された浸炭層のうち、前記ねじ部となる予定のねじ部予定部に形成された浸炭層を切削する切削工程と、前記ねじ部予定部に雄ネジを転造し、前記ねじ部を形成する転造工程と、前記元部材の全体に対して再度浸炭処理を行う第2浸炭工程と、を有する。
本開示によれば、降伏および水素脆化割れを抑制できる。
本開示の実施の形態に係るボルトの外観を示す図 本開示の実施の形態に係るボルトによりシリンダヘッドがシリンダブロックに締結された状態を模式的に示す部分断面図 本開示の実施の形態に係るボルトの元となる元部材を模式的に示す断面図 本開示の実施の形態に係る第1浸炭工程後の元部材を模式的に示す断面図 本開示の実施の形態に係る切削工程後の元部材を模式的に示す断面図 本開示の実施の形態に係る転造工程後の元部材を模式的に示す断面図 本開示の実施の形態に係る第2浸炭工程後の元部材(本開示の実施の形態に係るボルト)を模式的に示す断面図
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態のボルト10の外観を示す図である。図1に示すボルト10は、金属により構成されている。この金属としては、例えば、機械構造用炭素鋼S10C~S20C、または、クロムモリブデン鋼SCM415H~SCM420H等が挙げられるが、これらに限定されない。
図1に示すように、ボルト10は、頭部1、円筒部2、ねじ部3を有する。円筒部2の径と、ねじ部3の径とは同じ長さである。
ねじ部3には、雄ネジ5が形成されている。なお、本実施の形態では、頭部1がハット状である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。
図1に示すボルト10は、例えば、シリンダヘッドをシリンダブロックに固定するヘッドボルトとして用いられる。このときの例を図2に示す。図2は、ボルト10によりシリンダヘッド20がシリンダヘッドガスケット40を介してシリンダブロック30に締結された状態を模式的に示す部分断面図である。
シリンダヘッド20、シリンダブロック30、およびシリンダヘッドガスケット40のそれぞれには、ボルト穴(符号および図示略)が設けられている。シリンダブロック30のボルト穴の内周面には、ねじ部3の雄ネジ5と螺合する雌ネジ(符号および図示略)が形成されている。
ボルト10は、上記各ボルト穴に挿入され、ねじ部3の雄ネジ5がシリンダブロック30のボルト穴の雌ねじと螺合する。これにより、シリンダヘッド20とシリンダブロック30とはシリンダヘッドガスケット40を挟持した状態で固定される。
なお、図2では、1本のボルト10の締結部分のみを図示したが、実際には、シリンダヘッド20、シリンダブロック30、およびシリンダヘッドガスケット40のそれぞれには、複数のボルト穴が設けられており、各ボルト穴に対応してボルト10が設けられる。
以下、ボルト10の製造方法について、図3~図7を用いて説明する。ボルト10の製造方法は、第1浸炭工程、切削工程、転造工程、第2浸炭工程の順に行われる。
なお、第1浸炭工程、第2浸炭工程の手法としては、例えば、ガス浸炭、液体浸炭、個体浸炭が存在するが、これら浸炭手法の種類、組み合わせは限定しないものとする。また、一般的に、浸炭工程の後には焼戻し工程が付随するが、切削工程や転造工程、その他工程の難易度を考慮して、焼戻し工程の有無を選択する必要があるため、以下の説明には明記しないものとする。
ボルト10の製造にあたり、その元となる部材(以下、元部材という)が用意される。
図3を用いて、元部材100の構成について説明する。図3は、元部材100の軸方向(長さ方向と言ってもよい)の断面を模式的に示す図である。
図3に示すように、元部材100は、頭部1、円頭部予定部12、ねじ部予定部13を有する。頭部1、円頭部予定部12、ねじ部予定部13は、一体的に形成されている。元部材100は、金属により構成されている。
図3に示す頭部1は、図1、図2に示した頭部1と同じサイズ、同じ形状である。
図3に示す円筒部予定部12は、図1、図2に示した円筒部2となる予定の部分(換言すれば、加工されて最終的に円筒部2となる部分)である。
図3に示すように、円筒部予定部12は、元部材100の先端に向かうにつれ徐々に拡径した拡径部4を有する。
図3に示す径bは、円筒部予定部12における最小径であり、円筒部2の径(ねじ部3の径と言ってもよい)と同じ長さである。なお、径bは、拡径部4における最小径でもある。
図3に示すねじ部予定部13は、図1、図2に示したねじ部3となる予定の部分(換言すれば、加工されて最終的にねじ部3となる部分)である。
図3に示す径aは、ねじ部予定部13の径であり、径bより大きい。径bは、ねじ部3の径と同じであるため、ねじ部予定部13は、図1、図2に示したねじ部3の径よりも大きい径を有する円筒形と言える。なお、径aは、拡径部4における最大径でもある。
径aの長さは、径bの長さに、後述する第1浸炭工程によってねじ部予定部13に形成される浸炭層の厚み(例えば、図4に示す厚みc参照)を加算した長さ以上であればよい。
以上の構成を有する元部材100を用いて、ボルト10の製造が行われる。
まず、第1浸炭工程が行われる。この工程では、図3に示した元部材100の全体に対して浸炭処理が行われる。浸炭処理の各種条件としては、ヘッドボルトを製造する際の公知の条件を適用することができる。浸炭処理により、図3に示した元部材100の表面には、炭素が浸透した層(以下、第1浸炭層Aという)が形成される。
図4は、第1浸炭工程後の元部材100を模式的に示す断面図である。図4に示すように、頭部1、円筒部予定部12、およびねじ部予定部13のそれぞれには、第1浸炭層Aが形成されている。図4に示す長さcは、第1浸炭層Aの厚みである。
このように第1浸炭層Aが形成された元部材100では、表面が内部よりも硬くなる。
次に、切削工程が行われる。この工程では、図4に示した元部材100の円筒部予定部12およびねじ部予定部13それぞれの一部が切削される。具体的には、円筒部予定部12およびねじ部予定部13それぞれの径が図4に示した径bとなるように、円筒部予定部12およびねじ部予定部13それぞれの表面が切削される。これにより、円筒部予定部12の拡径部4が削り取られ、円筒部予定部12は、図1、図2に示した円筒部2となる。また、ねじ部予定部13における第1浸炭層Aが全て削り取られる。
図5は、切削工程後の元部材100を模式的に示す断面図である。図5に示すように、円筒部2およびねじ部予定部13はともに、径bを有する円筒形である。また、円筒部2における第1浸炭層Aの厚みは、元部材100の先端に向かうにつれ徐々に小さくなっている(図中の点線の囲み部分参照)。また、ねじ部予定部13には、第1浸炭層Aが存在しない。
以上のことから、切削工程は、ねじ部予定部13に形成された第1浸炭層Aを全て削り取るととともに、円筒部予定部12が、均一な径を有する円筒部2となるように、かつ、拡径部4に形成された第1浸炭層Aの厚みが、元部材100の先端に向かうにつれ徐々に小さくなるように、拡径部4を削り取る工程である、と言える。
次に、転造工程が行われる。この工程では、図5に示した元部材100のねじ部予定部13に図1に示した雄ネジ5が転造される。これより、ねじ部予定部13は、図1、図2に示したねじ部3となる。
図6は、転造工程後の元部材100を模式的に示す断面図である。図6に示すように、ねじ部3は、雄ネジ5を有する。
次に、第2浸炭工程が行われる。この工程では、図6に示した元部材100の全体に対して、再度、浸炭処理が行われる。ここでの浸炭処理は、第1浸炭工程における浸炭処理と同様であってよいし、他の手法による浸炭処理でもよい。浸炭処理により、図6に示した元部材100の表面には、炭素が浸透した層(以下、第2浸炭層Bという)が形成される。
図7は、第2浸炭工程後の元部材100を模式的に示す断面図である。図7に示すように、頭部1、円筒部2、およびねじ部3のそれぞれには、第2浸炭層Bが形成されている。頭部1および円筒部2では、第2浸炭層Bは、第1浸炭層Aに重複して設けられている。なお、第2浸炭層Bの厚みは、例えば、第1浸炭工程で形成された第1浸炭層Aの厚み(例えば、図4に示した厚みc)と同じである。
図7に示した第2浸炭工程後の元部材100は、図1、図2に示したボルト10として用いられる。
以上説明したように、ボルト10は、頭部1および円筒部2に対しては2度の浸炭処理(第1浸炭工程および第2浸炭工程)が行われ、ねじ部3に対しては1度の浸炭処理(第2浸炭工程)が行われることにより、製造される。よって、ボルト10では、頭部1および円筒部2の硬度は、ねじ部3の硬度よりも高くなる(換言すれば、ねじ部3の硬度は、頭部1および円筒部2の硬度よりも低くなる)。したがって、ボルト10では、頭部1が降伏しにくくなる一方で、ねじ部3において水素脆化割れが起こりにくくなる。すなわち、ボルト10は、降伏および水素脆化割れを抑制することができる。
一般的に浸炭処理の範囲を部分的に限定したい場合、防炭薬剤塗布や液体冷却、マスキングといった手法が採用されるが、これら手法では浸炭領域と防炭領域の境界が明確であるため、材料の化学的組成の変化が境界において急激に生じ、応力集中の懸念がある。これに対し、ボルト10では、円筒部2における第1浸炭層の厚みが、ボルト10の先端に向かうにつれ徐々に小さくなる(図5参照)ため、ヤング率、引張強さを連続的に低下させることができ、上記応力集中を回避できる。
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
実施の形態では、ボルト10において円筒部2の径とねじ部3の径とが同じである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、円筒部2の径がねじ部3の径よりも大きくてもよい。よって、本開示は、例えばリーマボルト等にも適用することができる。
本開示のボルトの製造方法は、浸炭処理を用いるボルトの製造方法に有用である。
1 頭部
2 円筒部
3 ねじ部
4 拡径部
5 雄ネジ
10 ボルト
12 円筒部予定部
13 ねじ部予定部
20 シリンダヘッド
30 シリンダブロック
40 シリンダヘッドガスケット
100 元部材
A 第1浸炭層
B 第2浸炭層

Claims (3)

  1. 先端部分にねじ部を有するボルトの製造方法であって、
    前記ボルトの元部材の全体に対して浸炭処理を行う第1浸炭工程と、
    前記元部材に形成された浸炭層のうち、前記ねじ部となる予定のねじ部予定部に形成された浸炭層を切削する切削工程と、
    前記ねじ部予定部に雄ネジを転造し、前記ねじ部を形成する転造工程と、
    前記元部材の全体に対して再度浸炭処理を行う第2浸炭工程と、を有する、
    ボルトの製造方法。
  2. 前記第1浸炭工程が行われる前の前記元部材は、
    頭部と、前記ねじ部予定部と、前記頭部と前記ねじ部予定部との間にあり、前記ボルトの円筒部となる予定の円筒部予定部と、を有し、
    前記円筒部予定部は、
    前記元部材の先端に向かうにつれ徐々に拡径した拡径部を有し、
    前記切削工程では、さらに、
    前記円筒部予定部が、均一な径を有する前記円筒部となるように、かつ、前記第1浸炭工程により前記拡径部に形成された浸炭層の厚みが、前記元部材の先端に向かうにつれ徐々に小さくなるように、前記拡径部を切削する、
    請求項1に記載のボルトの製造方法。
  3. 前記第1浸炭工程が行われる前の前記ねじ部予定部の径は、
    前記円筒部の径に、前記第1浸炭工程により前記ねじ部予定部に形成される浸炭層の厚みを加算した長さ以上である、
    請求項1または2に記載のボルトの製造方法。
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