JP2022138873A - 信号伝送ケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】外部導体をめっき層で形成した信号伝送ケーブルにおいて、段剥加工を容易にでき、かつ電気的な接続の際にめっき層の割れを抑制する。【解決手段】内部導体と、内部導体の外周に設けられる第1絶縁体層と、第1絶縁体層の外周に設けられる第2絶縁体層と、第2絶縁体層の外周に設けられるめっき層と、を備え、第2絶縁体層の線膨張係数が第1絶縁体層よりも小さい、信号伝送ケーブルである。【選択図】図1
Description
本発明は、信号伝送ケーブルに関する。
信号伝送ケーブルは、例えば電子機器間で信号を伝送するために用いられ、外部からの電磁波の影響を低減するため芯線(内部導体)の周囲に、電磁シールドとして作用する外部導体が設けられて構成される。具体的には、信号伝送ケーブルは、内部導体の周囲に絶縁体層、外部導体およびシースを順に積層させて構成される。
信号伝送ケーブルを電子機器へ接続する際は、信号伝送ケーブルの端末を段剥加工し、内部導体および外部導体を例えば半田付けにより、それぞれ電子機器へと電気的に接続する。このとき、内部導体の接続箇所と外部導体の接続箇所とは、絶縁性を確保すべく、一定の距離をおいて配置される。
外部導体の形成方法としては、例えば導電性テープを絶縁体層の周囲に巻き付ける方法がある。また例えば、めっき法により外部導体を絶縁体層上に直接形成する方法もある(例えば特許文献1を参照)。めっき法によれば、導電性テープを巻き付ける方法と比較して、信号伝送ケーブルを細径化・高性能化することができる。
しかし、外部導体をめっき層で形成する場合、以下のような問題が生じることがあった。すなわち、めっき層を半田付けにより電気的に接続する際等において、めっき層の下地である絶縁体層が熱膨張することがあり、めっき層がその熱膨張に追従できずに割れたりすることがあった。
本発明は、上記課題を解決し、外部導体をめっき層で形成した信号伝送ケーブルにおいて、電気的な接続の際等にめっき層の割れを抑制できる技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、
内部導体と、
前記内部導体の外周に設けられる第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の外周に設けられる第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の外周に設けられるめっき層と、を備え、
前記第2絶縁体層の線膨張係数が前記第1絶縁体層よりも小さい、信号伝送ケーブルである。
内部導体と、
前記内部導体の外周に設けられる第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の外周に設けられる第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の外周に設けられるめっき層と、を備え、
前記第2絶縁体層の線膨張係数が前記第1絶縁体層よりも小さい、信号伝送ケーブルである。
本発明によれば、外部導体をめっき層で形成した信号伝送ケーブルにおいて、電気的な接続の際等にめっき層の割れを抑制することができる。
本発明者等は上記課題について検討を行い、絶縁体層からめっき層のみを剥離することは容易ではないことから、絶縁体層を、内部導体側の第1絶縁体層と、めっき層側の第2絶縁体層の2層で構成することに着目した。この構成によれば、第1絶縁体層から第2絶縁体層を剥離することで、めっき層を第2絶縁体層とともに第1絶縁体層から剥離し、段剥加工を容易に行うことができる。
しかも、絶縁体層を2層構造とすることにより、それぞれを異なる樹脂材料で形成することも可能になる。そして、各絶縁体層を形成する樹脂材料についてさらに検討を行い、めっき層の下地となる第2絶縁体層を、第1絶縁体層よりも熱膨張しにくい樹脂材料で形成するとよいことを見出した。この構成によれば、めっき層を半田付けするときに、第2絶縁体層を過度に熱膨張させることなく、その上に設けられるめっき層の割れを抑制することができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
<一実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る信号伝送ケーブルについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号伝送ケーブルの長手方向に垂直な断面図を示す。図2は、本発明の一実施形態に係る信号伝送ケーブルの端末を段剥加工した状態を説明するための図である。
以下、本発明の一実施形態に係る信号伝送ケーブルについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号伝送ケーブルの長手方向に垂直な断面図を示す。図2は、本発明の一実施形態に係る信号伝送ケーブルの端末を段剥加工した状態を説明するための図である。
(信号伝送ケーブル)
信号伝送ケーブル1は、図1に示すように、内部導体10と、第1絶縁体層11aと、第2絶縁体層11bと、外部導体としてのめっき層12と、シース13と、を備えて構成される。
信号伝送ケーブル1は、図1に示すように、内部導体10と、第1絶縁体層11aと、第2絶縁体層11bと、外部導体としてのめっき層12と、シース13と、を備えて構成される。
(内部導体)
内部導体10は、1本の金属素線、もしくは複数の金属素線を撚り合わせた撚り線で構成される。信号伝送ケーブル1の可とう性や屈曲特性を向上させる観点からは内部導体10は撚り線であることが好ましい。金属素線としては、特に限定されないが、銅やアルミニウム、もしくはこれらの合金を含む素線を用いることができる。なお、内部導体10の外径は特に限定されず、信号伝送ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、内部導体としては、外径0.254mm(30AWG)などを用いることができる。
内部導体10は、1本の金属素線、もしくは複数の金属素線を撚り合わせた撚り線で構成される。信号伝送ケーブル1の可とう性や屈曲特性を向上させる観点からは内部導体10は撚り線であることが好ましい。金属素線としては、特に限定されないが、銅やアルミニウム、もしくはこれらの合金を含む素線を用いることができる。なお、内部導体10の外径は特に限定されず、信号伝送ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、内部導体としては、外径0.254mm(30AWG)などを用いることができる。
(絶縁体層)
内部導体10の外周には、絶縁体層が設けられる。上述したように、本実施形態では、絶縁体層を、内側の第1絶縁体層11aと、その外側の第2絶縁体層11bとの2層構造で形成している。以下、それぞれの絶縁体層について説明する。
内部導体10の外周には、絶縁体層が設けられる。上述したように、本実施形態では、絶縁体層を、内側の第1絶縁体層11aと、その外側の第2絶縁体層11bとの2層構造で形成している。以下、それぞれの絶縁体層について説明する。
第1絶縁体層11aは、内部導体10の外周を被覆するように設けられる。第1絶縁体層11aは、第1の樹脂材料から形成されて、比誘電率が小さくなるように構成されている。これにより、第1絶縁体層11aは、信号伝送ケーブル1において高周波信号を伝送したときの減衰を抑制することができる。第1絶縁体層の比誘電率は特に限定されないが、信号の減衰をより抑制する観点からは3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。
第2絶縁体層11bは、第1絶縁体層11aの外周に設けられる。第2絶縁体層11bは、第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料から形成され、第1絶縁体層11aと同様に比誘電率が小さくなるように構成される。また、第2絶縁体層11bは、外部導体としてのめっき層12の下地となり、信号伝送ケーブル1の端末を段剥加工する際に、めっき層12とともに第1絶縁体層11aから剥離される。また、第2絶縁体層11bは、第1絶縁体層11aよりも線膨張係数が小さくなるように構成されている。これにより、第2絶縁体層11bは、めっき層12を半田付けして信号伝送ケーブル1の端末を電気的に接続する際に、めっき層12に対して過度に熱膨張することなく、めっき層12の割れを抑制することができる。つまり、第2絶縁体層11bは、めっき層12の剥離を容易にするとともに、信号伝送ケーブル1を接続するときのめっき層12の割れを抑制することができる。
第2絶縁体層11bの線膨張係数は、第1絶縁体層11aよりも小さければ特に限定されないが、めっき層12との間での熱膨張差に起因する割れを抑制する観点からは、めっき層12の線膨張係数との乖離が小さいほど好ましい。具体的には、第2絶縁体層11bの線膨張係数はめっき層12の線膨張係数の2.5倍以下であることが好ましい。このような比率となるように第2絶縁体層11bの線膨張係数を設定することにより、めっき層12との線膨張係数の乖離を小さくすることができる。また、第2絶縁体層11bの線膨張係数は7×10-5/℃以下であることが好ましい。なお、樹脂からなる第2絶縁体層11bの線膨張係数は、金属を含むめっき層12よりも大きくなる。つまり、第1絶縁体層11a、第2絶縁体層11bおよびめっき層12の線膨張係数をそれぞれx1、x2、x3としたとき、x1>x2>x3となる。第2絶縁体層11bの線膨張係数は例えば1.8×10-5/℃以上となる。第1絶縁体層11aおよび第2絶縁体層11bの線膨張係数は、第1試料および第2試料の線膨張係数をJIS K7197に基づき測定することで求められる。なお、第1試料は、第1絶縁体層11aを形成する第1の樹脂材料を用いて、長さ10mm、一辺の長さが5mmの角柱状に作成される。第2試料は、第2絶縁体層11bを形成する第2の樹脂材料を用いて、長さ10mm、一辺の長さが5mmの角柱状に作成される。また、めっき層12の線膨張係数は、第3試料の線膨張係数をJIS Z2285に基づき測定することで求められる。なお、第3試料は、直径3mmのアクリル製樹脂棒をめっき層12の形成に使用するめっき浴に浸漬して100μm厚さのめっき膜を形成し、クロロホルムによりアクリル製樹脂棒を溶解することで円筒状に作成される。
第1および第2の樹脂材料は、第2絶縁体層11bの線膨張係数を第1絶縁体層11aよりも小さく調整できるものを適宜組み合わせるとよい。高周波信号の減衰を抑制する観点からは、第1の樹脂材料は、第2の樹脂材料よりも比誘電率が小さいことが好ましい。つまり、内部導体10の周囲に設ける第1絶縁体層11aの比誘電率を第2絶縁体層11bより小さくすることが好ましい。これにより、信号伝送ケーブル1の高周波特性をより向上させることができる。
具体的には、第1の樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。これらの樹脂によれば、第1絶縁体層11aの比誘電率を所望の高周波特性を得られるような範囲に調整することができる。また、これらの樹脂は融点が比較的高いので、第2絶縁体層11bの上にめっき層12を形成するときに第1絶縁体層11aの溶融変形を抑制することができる。これらの中でも、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂によれば、第1絶縁体層11aの第2絶縁体層11bとの密着性適度な範囲に調整できるため、第2絶縁体層11bを容易に剥離することができる。
第2の樹脂材料は、第1の樹脂材料よりも線膨張係数が小さく、かつ、めっき層12を形成しやすいものであれば特に限定されないが、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、比誘電率が小さく高周波特性に寄与するとともに、樹脂の中でも線膨張係数が小さいため、めっき層12を構成する金属との間で線膨張係数の乖離をより低減することができる。これにより、めっき層12の割れをより確実に抑制することができる。
なお、第1および第2の樹脂材料として列挙した樹脂の線膨張係数は以下のとおりである。ポリイミド樹脂の線膨張係数は2.7×10-5/℃、ポリアミドイミド樹脂の線膨張係数は3×10-5/℃、フッ素樹脂としてPTFEの線膨張係数は10×10-5/℃、FEPの線膨張係数は9×10-5/℃、ポリエチレンの線膨張係数は11×10-5/℃である。
第1絶縁体層11aおよび第2絶縁体層11bの厚さは、特に限定されず、適宜変更することができる。線膨張係数の小さな第2絶縁体層11bは、第1絶縁体層11aよりも比誘電率が高い傾向にあるので、信号伝送ケーブル1の外径を小さく維持しつつ所望の高周波特性を得る観点からは、第1絶縁体層11aを厚くする一方で、第2絶縁体層11bを薄く構成するとよい。具体的には、第1絶縁体層11aと第2絶縁体層11bとの厚さの比率を15:1~3:2とすることが好ましい。また、第2絶縁体層11bは、信号伝送ケーブル1の段剥加工の際に剥離しやすくする観点から、その厚さを0.02mm以上0.2mm以下とすることが好ましい。また、第1絶縁体層11aの厚さは、0.1mm以上0.3mm以下とすることが好ましい。
(めっき層)
めっき層12は、第2絶縁体層11bの周囲に設けられ、外部導体として外部からのノイズの影響を抑制するシールド部材である。めっき層12を構成する金属は特に限定されないが、例えば、銅、銀およびニッケルから選択される。
めっき層12は、第2絶縁体層11bの周囲に設けられ、外部導体として外部からのノイズの影響を抑制するシールド部材である。めっき層12を構成する金属は特に限定されないが、例えば、銅、銀およびニッケルから選択される。
金属を含むめっき層12の線膨張係数は、樹脂から形成される第2絶縁体層11bよりも小さくなる。めっき層12の線膨張係数は、金属の種類によっても異なるが、例えば2×10-5/℃以下となる。具体的には、銅の線膨張係数は1.68×10-5/℃、銀の線膨張係数は1.97×10-5/℃、ニッケルの線膨張係数は1.33×10-5/℃となる。
また、めっき層12の厚さは、特に限定されないが、所望のシールド特性を得る観点からは1μm以上であることが好ましい。また、信号伝送ケーブル1において所望の屈曲性を得る観点からは5μm以下であることが好ましい。
めっき層12は、第2絶縁体層11bに接合して形成される。一方、第2絶縁体層11bは第1絶縁体層11aに密着して形成される。そのため、第1絶縁体層11aと第2絶縁体層11bとの界面接合力は、めっき層12と第2絶縁体層11bとの界面接合力よりも小さくなる。つまり、信号伝送ケーブル1に段剥加工を行う際、めっき層12よりも第2絶縁体層11bを容易に剥離することができる。
(シース)
シース13は、めっき層12の周囲に設けられ、その内部の部材を被覆保護するものである。シース13の形成材料としては、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)やウレタンなど従来公知の材料を用いることができる。シース13の厚さは特に限定されないが、例えば0.2mm以上1mm以下とするとよい。
シース13は、めっき層12の周囲に設けられ、その内部の部材を被覆保護するものである。シース13の形成材料としては、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)やウレタンなど従来公知の材料を用いることができる。シース13の厚さは特に限定されないが、例えば0.2mm以上1mm以下とするとよい。
(信号伝送ケーブルの製造方法)
上述した信号伝送ケーブル1は、例えば以下のように作製することができる。
上述した信号伝送ケーブル1は、例えば以下のように作製することができる。
まず、内部導体10を準備する。続いて、内部導体10の外周に第1の樹脂材料を押出被覆することにより、第1絶縁体層11aを形成する。続いて、第1絶縁体層11aの外周に第2の樹脂材料を押出被覆することにより、第2絶縁体層11bを形成する。続いて、第2絶縁体層11bを形成した線材をめっき浴に浸漬させることにより、第2絶縁体層11bの周囲にめっき層12を形成する。続いて、めっき層12の外周にシース材を押出被覆することにより、シース13を形成する。これにより、本実施形態の信号伝送ケーブル1を得ることができる。
第1絶縁体層11aには、第2絶縁体層11bを形成する前に、プラズマやコロナ放電により表面処理を行い、濡れ性を向上させてもよい。また、第1絶縁体層11aや第2絶縁体層11bの押出成形は2層を同時に行ってもよい。また、めっき層12の形成方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
(端末加工方法)
信号伝送ケーブル1の端末加工は、例えば以下のように行うことができる。まず、信号伝送ケーブル1からシース13の一部を取り除き、めっき層12を露出させる。続いて、図2に示すように、第1絶縁体層11aが露出するように第2絶縁体層11bを取り除く。このとき、第2絶縁体層11bとともにめっき層12も取り除かれることになる。続いて、第1絶縁体層11aの一部を取り除き、内部導体10を露出させる。以上により、信号伝送ケーブル1の段剥加工を行う。
信号伝送ケーブル1の端末加工は、例えば以下のように行うことができる。まず、信号伝送ケーブル1からシース13の一部を取り除き、めっき層12を露出させる。続いて、図2に示すように、第1絶縁体層11aが露出するように第2絶縁体層11bを取り除く。このとき、第2絶縁体層11bとともにめっき層12も取り除かれることになる。続いて、第1絶縁体層11aの一部を取り除き、内部導体10を露出させる。以上により、信号伝送ケーブル1の段剥加工を行う。
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本実施形態の信号伝送ケーブル1は、内部導体10の周囲に第1絶縁体層11a、第1絶縁体層11aよりも線膨張係数が小さな第2絶縁体層11b、および、めっき層12を順に備えて構成される。この信号伝送ケーブル1によれば、めっき層12が設けられた第2絶縁体層11bを第1絶縁体層11aから剥離することで、その端末を容易に段剥加工することができる。また、第2絶縁体層11bの線膨張係数を第1絶縁体層11aよりも小さくし、第2絶縁体層11bとめっき層12との線膨張係数の乖離を小さくしているので、めっき層12に半田付けを行い、信号伝送ケーブル1を接続するときに、めっき層12が第2絶縁体層11bの熱膨張に追従しきれずに割れてしまうことを抑制することができる。
ここで、本実施形態の信号伝送ケーブル1による効果について、比較形態との違いから具体的に説明する。
比較形態1として、例えば、内部導体の外周に、ポリエチレン樹脂からなる絶縁体層、外部導体としてCuを含むめっき層、およびシース13が設けられた信号伝送ケーブルでは、絶縁体層からめっき層を剥離できず、端末を容易に段剥加工できないことが確認された。また、めっき層を半田付けにより電気的に接続する際、絶縁体層が熱膨張し、絶縁体層の表面に配置されるめっき層が割れてしまうことが確認された。めっき層の割れは、銅の線膨張係数が1.68×10-5/℃であり、ポリエチレンの線膨張係数が11×10-5/℃であり、絶縁体層とめっき層の線膨張係数が大きく乖離したためである。
比較形態2として、例えば、内部導体10の外周に、FEPからなる第1絶縁体層、ポリエチレン樹脂からなる第2絶縁体層、外部導体としてCuを含むめっき層、およびシースが設けられた信号伝送ケーブルでは、第2絶縁体層をめっき層とともに剥離することで、端末を容易に段剥加工できることが確認された。しかし、めっき層を半田付けにより電気的に接続する際、絶縁体層が熱膨張し、絶縁体層の表面に配置されるめっき層が割れてしまうことが確認された。めっき層の割れは、比較形態1と同様、第2絶縁体層とめっき層の線膨張係数が大きく乖離したためである。
これに対して、内部導体10の外周に、例えば、FEPからなる第1絶縁体層11a、ポリイミド樹脂からなる第2絶縁体層11b、外部導体としてCuを含むめっき層12、およびシースが設けられた本実施形態の信号伝送ケーブル1では、第2絶縁体層11bをめっき層12とともに剥離することで、端末を容易に段剥加工できることが確認された。しかも、めっき層12を半田付けする際、第2絶縁体層11bの熱膨張を抑制できるため、めっき層12の割れを抑制できることが確認された。これは、第2絶縁体層11bを線膨張係数が3×10-5/℃であるポリイミド樹脂で形成し、線膨張係数が1.68×10-5/℃であるCuを含むめっき層12との線膨張係数の乖離を低減させたためである。
このように、本実施形態の信号伝送ケーブル1によれば、外部導体をめっき層12で形成した場合でも、段剥加工を容易にでき、かつ電気的な接続の際にめっき層12の割れを抑制することができる。
(b)第2絶縁体層11bの線膨張係数は7×10-5/℃以下であることが好ましい。このような線膨張係数となるように第2絶縁体層11bを構成することにより、第2絶縁体層11bとめっき層12との熱膨張の差を低減でき、熱膨張差に起因するめっき層12の割れをより確実に抑制することができる。
(c)また、第1絶縁体層11aと第2絶縁体層11bの厚さの比率を15:1~3:2とすることが好ましい。このような比率とすることにより、信号伝送ケーブル1の端末を容易に段剥加工できるとともに、信号伝送ケーブル1の細径に維持しながらも高い高周波特性を得ることができる。
(d)また、第2絶縁体層11bの厚さを0.02mm以上0.2mm以下とすることにより、第2絶縁体層11bを第1絶縁体層11aから剥離しやすい厚さとすることができる。そのため、信号伝送ケーブル1の段剥加工をより容易にすることができる。
(e)また、第1絶縁体層11aの比誘電率を第2絶縁体層11bよりも小さくすることが好ましい。これにより、信号伝送ケーブル1において、高周波特性をより高くすることができる。
(f)また、第1絶縁体層11aは、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくとも1つを含み、第2絶縁体層11bは、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも1つを含むことが好ましい。第1絶縁体層11aおよび第2絶縁体層11bのそれぞれを形成する樹脂を上記の組み合わせとすることにより、上述した(a)~(e)の効果をより確実に得ることができる。
(g)また、本実施形態の信号伝送ケーブル1によれば、第2絶縁体層11bの線膨張係数を小さくしているので、半田付けの温度を高く設定し、部材の昇温速度が高くなるような場合であっても、例えば昇温速度が60℃/sec以下の場合であっても、めっき層12の割れを抑制することができる。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、第1絶縁体層11aが第1の樹脂材料からなる単層構造の場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。第1絶縁体層11aは、異なる樹脂材料から形成される複数の樹脂層を積層させて形成してもよい。この場合、第2の絶縁体層を、その線膨張係数が複数の樹脂層の線膨張係数よりも小さくなるように構成するとよい。
また、上述の実施形態では、信号伝送ケーブル1が1本の内部導体10を備える同軸ケーブルである場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。信号伝送ケーブル1は、例えば、内部導体10として1対の金属線を被覆するように第1絶縁体層11a、第2絶縁体層11b、めっき層12およびシースを備え、差動信号伝送用ケーブルとして構成されていてもよい。
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
(付記1)
内部導体と、
前記内部導体の外周に設けられる第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の外周に設けられる第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の外周に設けられるめっき層と、を備え、
前記第2絶縁体層の線膨張係数が前記第1絶縁体層よりも小さい、信号伝送ケーブル。
内部導体と、
前記内部導体の外周に設けられる第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の外周に設けられる第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の外周に設けられるめっき層と、を備え、
前記第2絶縁体層の線膨張係数が前記第1絶縁体層よりも小さい、信号伝送ケーブル。
(付記2)
前記第2絶縁体層の線膨張係数が7×10-5/℃以下である、
付記1に記載の信号伝送ケーブル。
前記第2絶縁体層の線膨張係数が7×10-5/℃以下である、
付記1に記載の信号伝送ケーブル。
(付記3)
前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層の厚さの比率が15:1~3:2である、
付記1又は2に記載の信号伝送ケーブル。
前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層の厚さの比率が15:1~3:2である、
付記1又は2に記載の信号伝送ケーブル。
(付記4)
前記第2絶縁体層の厚さは0.02mm以上0.2mm以下である、
付記1~3のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
前記第2絶縁体層の厚さは0.02mm以上0.2mm以下である、
付記1~3のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
(付記5)
前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層との界面接合力は、前記第2絶縁体層と前記めっき層との界面接合力よりも小さい、
付記1~4のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層との界面接合力は、前記第2絶縁体層と前記めっき層との界面接合力よりも小さい、
付記1~4のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
(付記6)
前記第1絶縁体層は、前記第2絶縁体層よりも比誘電率が小さい、
付記1~5のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
前記第1絶縁体層は、前記第2絶縁体層よりも比誘電率が小さい、
付記1~5のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
(付記7)
前記第1絶縁体層は、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくとも1つを含み、
前記第2絶縁体層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも1つを含む、
付記1~6のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
前記第1絶縁体層は、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくとも1つを含み、
前記第2絶縁体層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも1つを含む、
付記1~6のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
1 信号伝送ケーブル
10 内部導体
11a 第1絶縁体層
11b 第2絶縁体層
12 めっき層
13 シース
10 内部導体
11a 第1絶縁体層
11b 第2絶縁体層
12 めっき層
13 シース
Claims (7)
- 内部導体と、
前記内部導体の外周に設けられる第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の外周に設けられる第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の外周に設けられるめっき層と、を備え、
前記第2絶縁体層の線膨張係数が前記第1絶縁体層よりも小さい、信号伝送ケーブル。 - 前記第2絶縁体層の線膨張係数が7×10-5/℃以下である、
請求項1に記載の信号伝送ケーブル。 - 前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層の厚さの比率が15:1~3:2である、
請求項1又は2に記載の信号伝送ケーブル。 - 前記第2絶縁体層の厚さは0.02mm以上0.2mm以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。 - 前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層との界面接合力は、前記第2絶縁体層と前記めっき層との界面接合力よりも小さい、
請求項1~4のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。 - 前記第1絶縁体層は、前記第2絶縁体層よりも比誘電率が小さい、
請求項1~5のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。 - 前記第1絶縁体層は、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくとも1つを含み、
前記第2絶縁体層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも1つを含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の信号伝送ケーブル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021038989A JP2022138873A (ja) | 2021-03-11 | 2021-03-11 | 信号伝送ケーブル |
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