JP2022138189A - 棒状部材の高周波焼入方法 - Google Patents

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靖治 小川
Yasuharu Ogawa
豊 杉山
Yutaka Sugiyama
英幸 小▲崎▼
Hideyuki Ozaki
祥 小▲崎▼
Sho Ozaki
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Neturen Co Ltd
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【課題】棒状部材の背面側の加工性の低下を抑制でき、かつ曲がりも抑制できる棒状部材の高周波焼入方法を提供する。【解決手段】棒状部材Mの高周波焼入方法は、棒状部材Mの歯面M1aをマルテンサイトが形成される温度として、背面M2aをマルテンサイトが形成されない温度として、歯面M1aと背面M2aを同時に高周波加熱する高周波加熱工程と、高周波加熱後の棒状部材Mの歯面M1aに直接的に冷却材を供給すると共に、背面M2aに間接的に冷却材を供給する冷却工程と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、棒状部材の高周波焼入方法に関する。
精度が良く焼入歪の少ないラックシャフトを得ることを目的として、高周波焼入によりラックシャフトの歯部の歯面と背面に同時に焼入層を形成し、歯面側の焼入体積と歯面に対する背面側の焼入体積をほぼ等しくすることを特徴とするラックシャフトの高周波焼入法が提案されている(特許文献1)。
特開平7-268481号公報
しかしながら歯面と背面に同時に焼入層を形成する場合、背面側の加工性が低下する場合があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ラックシャフトなどの棒状部材の背面側の加工性の低下を抑制でき、かつ曲がりも抑制できる棒状部材の高周波焼入方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様の棒状部材の高周波焼入方法は、棒状部材の歯面をマルテンサイトが形成される温度として、背面をマルテンサイトが形成されない温度として、前記歯面と前記背面を同時に高周波加熱する高周波加熱工程と、前記高周波加熱後の棒状部材の前記歯面に直接的に冷却材を供給すると共に、前記背面に間接的に冷却材を供給する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、棒状部材の背面側の加工性の低下を抑制でき、かつ曲がりも抑制できる棒状部材の高周波焼入方法が提供される。
本発明の実施形態を説明するための高周波焼入装置10の概念図である。 実施例における曲がりの評価位置を示す概念図である。 実施例1、2及び比較例における曲がりの評価結果を示す概念図である。
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態を説明するための高周波焼入装置10の概念図である。また、図1(a)は、高周波焼入装置10の側面概念図である。図1(b)は、図1(a)のα領域における棒状部材Mの鳥瞰概念図である。図1(c)は、図1(a)中のA-A線で切った断面概念図である。
以下、説明の便宜上、本明細書においては、XYZ直交座標系を採用する。棒状部材Mの長手方向を「X方向」とし、棒状部材Mの長手方向(X方向)に直交する横方向(図1(a)では紙面方向)である短手方向を「Y方向」とし、棒状部材Mの長手方向(X方向)及び横方向(Y方向)に直交する縦方向(図1(a)では紙面上方向)である短手方向を「Z方向」とする。また、X方向、Y方向及びZ方向ともに、矢印方向をプラス方向、矢印方向と反対の方向をマイナス方向とする。
被加熱部材である棒状部材Mは、図1に示すように、例えば、Y-Z平面の短手方向の断面が矩形形状であり、当該矩形形状が長手方向(X方向)に平行に延在している棒状形状を有している。また、棒状部材Mは、縦方向(Z方向)の一方側(Zプラス方向側)に、凹凸形状を有する歯が複数形成された歯部M1を有し、縦方向(Z方向)の他方側(Zマイナス方向側)には、素地部M2を有している。棒状部材Mは、機械構造用炭素鋼鋼材で構成されている。
本実施形態に係る棒状部材の高周波焼入方法は、最初に、上記のような棒状部材Mの歯部M1側の表面M1a(棒状部材MのZプラス方向におけるX-Y平面:本発明では「歯面」という。)と素地部M2側の表面M2a(棒状部材MのZマイナス方向におけるX-Y平面:本発明では「背面」という。)を同時に高周波加熱する。この際、前記歯面をマルテンサイトが形成される温度として、前記背面をマルテンサイトが形成されない温度で行う(以下、この工程を「高周波加熱工程」という。)。
次に、高周波加熱後の棒状部材Mの歯面M1aに直接的に冷却材を供給すると共に、背面M2aに間接的に冷却材(例えば、水)を供給する(以下、この工程を「冷却工程」という。)。
ここで「同時に」とは、棒状部材Mの歯面M1aを高周波加熱する高周波コイルに通電を開始するタイミングAと棒状部材Mの背面M2aを高周波加熱する高周波コイルに通電を開始するタイミングBとの時間差(A-B)が3秒以内であることを言う。
「マルテンサイトが形成される温度」とは、マルテンサイトが形成される温度であって、棒状部材(機械構造用炭素鋼鋼材)の金属組成や炭素濃度等により適時設定される温度である。
「マルテンサイトが形成されない温度」とは、マルテンサイトが形成されない温度であって、棒状部材(機械構造用炭素鋼鋼材)の金属組成や炭素濃度等により適時設定される温度である。
「歯面に直接的に冷却材を供給する」とは、冷却材供給手段(図1(a)では符号35)から歯面M1a以外の棒状部材Mの箇所に当てずに、直接的に歯面M1aに冷却材を当てることを言う。
「背面に間接的に冷却材を供給する」とは、冷却材供給手段から冷却材が背面M2a以外の棒状部材Mの箇所(例えば、歯面M1a)に当たった後に、当たった冷却材が背面M2aに当たる(例えば、流れて当たるなど)ことを言う。
本実施形態に係る棒状部材の高周波焼入方法は、以上のような高周波加熱工程及び冷却工程を備えているため、棒状部材の背面側の加工性の低下を抑制でき、かつ曲がりも抑制できる。
すなわち、高周波加熱工程では、棒状部材Mの歯面M1aをマルテンサイトが形成される温度として、背面M2aをマルテンサイトが形成されない温度として、高周波加熱するため、背面M2a側には、マルテンサイトが形成されにくくなる。また、前記温度で、歯面M1aと背面M2aを同時に高周波加熱するため、高周波加熱時における歯面M1a及び背面M2の熱バランスが良くなり、棒状部材Mの曲がり(長手方向Xの曲がり:詳細は実施例で後述する)も抑制できる。
また、冷却工程では、高周波加熱後の棒状部材Mの歯面M1aに直接的に冷却材を供給することで、歯面M1aを急冷(マルテンサイトが形成される冷却速度)にすることができる。従って、当該歯面M1aにマルテンサイトを形成することができる。一方、背面M1aには間接的に冷却材を供給するため、背面M1aは徐冷(マルテンサイトが形成されない冷却速度)にすることができる。よって、高周波加熱時に、例えば、背面M2aの横方向(Yプラスマイナス方向)の両端部に熱が集中し、当該両端部だけ、マルテンサイトが形成される温度になってしまった場合でも、当該両端部のマルテンサイトの形成を抑制することができる。
なお、前記「急冷」は、歯面M1aに直接的に供給される冷却材の供給量等で、適時、その冷却速度を調整することができる。また、前記「徐冷」も、背面M2aに間接的に供給される冷却材の供給量等で、適時、その冷却速度を調整することができる。
具体的には、以上のような高周波加熱工程及び冷却工程は、例えば、図1に示すような高周波焼入装置10を用いて行う。
高周波焼入装置10は、例えば、図1に示すように、高周波加熱工程となる加熱部20と、冷却工程となる冷却部30と、棒状部材Mを搬送する図示しない搬送部とを備える。
加熱部20は、棒状部材Mの歯面M1aを上方(Zプラス方向)から加熱する上方高周波コイル25aと、棒状部材Mの背面M2aを下方(Zマイナス方向)から加熱する下方高周波コイル25bを有している。
上方高周波コイル25aは、図1に示すように、加熱部20において、棒状部材Mの歯面M1aの上方(Zプラス方向)に位置し、かつ、搬送方向(Xプラス方向)に延在して設けられている。
下方高周波コイル25bは、図1に示すように、加熱部20において、棒状部材Mの背面M2aの下方に位置し、搬送方向(Xプラス方向)に延在して設けられている。
上方高周波コイル25a及び下方高周波コイル25bは、それぞれに通電する図示しない電源装置に接続されている。
冷却部30は、図示しない搬送部により加熱部20から搬送された高周波加熱後の棒状部材Mの歯面M1aの上方(Zプラス方向)に位置し、当該上方から冷却材(例えば、水)を当該歯面M1a上に直接的に供給する冷却材供給部35を有している。冷却材供給部35は、図示しない冷却材供給源に連通されており、棒状部材Mの歯面M1aの冷却時に当該冷却材供給源から冷却材(例えば、水)が冷却材供給部35に供給され、当該冷却材が冷却材供給部35の複数の供給孔Pから棒状部材Mの歯面M1a上に直接的に供給される。
なお、本実施形態では、高周波加熱後の棒状部材Mの背面M2aの下方(Zマイナス方向)から背面M2aに向かって直接的に冷却材を供給する別の冷却材供給手段は設けられていない。すなわち、本実施形態では、高周波加熱後の棒状部材Mの背面M2aの冷却は、歯面M1a上に直接的に供給されて当該歯面M1aに当たった冷却材が、棒状部材Mの側面M3a(棒状部材MのYプラスマイナス方向におけるX-Z平面)をつたわって当たる(間接的に冷却材が供給される)ことにより行われる。
図示しない搬送部は、例えば、棒状部材Mを加熱部20内に搬入するために、加熱前の棒状部材Mを設置する棒状部材搬入部と、前記棒状部材設置部から棒状部材Mを加熱部20内に搬入させると共に、加熱部20による高周波加熱後、加熱部20から搬出し、次に、冷却部30に搬入させ、更に、冷却部30による冷却後、冷却部30から搬出する搬送手段(例えば、ベルトコンベア等)と、冷却部30から搬出された棒状部材Mを取り出す棒状部材搬出部とを有している。
次に、本実施形態に係る棒状部材の高周波焼入方法の高周波焼入装置10による焼入手順について詳細に説明する。
焼入れ前の機械構造用炭素鋼鋼材で構成された棒状部材Mを高周波焼入装置10の図示しない棒状部材搬入部に、歯面M1aを上面(Zプラス方向)側として、背面M2aを下面(Zマイナス方向)側として設置し、図示しない搬送手段により加熱部20内に棒状部材Mを搬入させる。その後、加熱部20内において、図示しない搬送手段により棒状部材Mを搬送方向(Xプラス方向)に移動させながら、棒状部材Mの搬送方向(Xプラス方向)の端部MAが、上方高周波コイル25aと下方高周波コイル25bとの間の加熱領域βに入り、かつ、棒状部材Mの搬送方向と反対の方向(Xマイナス方向)の端部MBが当該加熱領域βから出るまでの間、上方高周波コイル25a及び下方高周波コイル25bを同時に通電させて、前記温度で同時に高周波加熱する。
次に、高周波加熱後の棒状部材Mを図示しない搬送手段により加熱部20内から搬出し、更に、冷却部30内に搬入させる。その後、冷却部30内において、図示しない搬送手段により棒状部材Mを搬送方向(Xプラス方向)に移動させながら、棒状部材Mの端部MAが、冷却材供給部35の下方の冷却領域γに入り、かつ、棒状部材Mの端部MBが、冷却領域γから出るまでの間、冷却材を歯面M1aに直接的に供給して冷却する。
この際、歯面M1aをマルテンサイトが形成される冷却速度に、背面M2aをマルテンサイトが形成されない冷却速度にそれぞれになるように、歯面M1aに供給する冷却材の供給量等を調整する。
最後に、冷却した棒状部材Mを図示しない搬送手段により冷却部30から搬出し、棒状部材搬出部まで搬送させて回収する。
すなわち、本実施形態に係る棒状部材の高周波焼入方法は、上述したような移動焼入れに好適に適用される。
以下、実験例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、図1に示す高周波焼入装置10を用い、金属組織がフェライト及び球状化セメンタイトであり、長手方向(X方向)の長さが2500mm、横方向(Y方向)の幅が30mm及び縦方向(Z方向)の幅が30mmである棒状部材Mを加熱部20まで搬送させた。
次いで、加熱部20内において、棒状部材Mを搬送方向(Xプラス方向)に所定の送り速度で移動させながら、棒状部材Mの端部MAが、上方高周波コイル25aと下方高周波コイル25bとの間の加熱領域βに入った時に、上方高周波コイル25a及び下方高周波コイル25bを同時に通電させて、歯面M1aの温度を1000℃に、背面M2aの温度を800℃まで高周波加熱し、当該移動によって棒状部材Mの端部MBが加熱領域βから出るまでの間、前記温度を持続させた。
次いで、高周波加熱後の棒状部材Mを加熱部20内から搬出し、冷却部30内に搬入させて、棒状部材Mを搬送方向(Xプラス方向)に所定の送り速度で移動させながら、棒状部材Mの端部MAが、冷却材供給部35の下方の冷却領域γに入り、棒状部材Mの端部MBが、当該冷却領域γから出るまでの間、冷却材を歯面M1aに直接的に所定の水量で冷却材(水)を供給して冷却した。
以上の高周波加熱及び冷却をすることで、棒状部材Mを高周波焼入処理した。
(実施例2)
実施例1で高周波焼入処理した棒状部材Mを焼き戻し処理した。焼き戻し処理は、炉加熱戻しで行い、最高到達温度は200度、最高到達温度の保持時間は1時間30分である。
(比較例)
下方高周波加熱コイル25cを通電させないで、その他は、実施例1と同様な条件で、棒状部材Mを高周波焼入処理した。
[曲がり評価位置及びその結果]
上記の実施例1、2及び比較例で得られた棒状部材Mの曲がりを測定した。
図2は、実施例における曲がりの評価位置を示す概念図である。
曲がりの評価位置は、図2に示すように、平面である定盤を基準として、棒状部材Mの長手方向の両端部MA、MBの隙間A、Cと、両端部MA、MBの中間点である隙間Bと、隙間A、B、Cの間の背面M2aを基準とした背面形状である。
図3は、実施例1、2及び比較例における曲がりの評価結果を示す概念図である。
図3に示すように、比較例における隙間A、Cは約18mmであったが、実施例1における隙間A、Cは約3mmまで低減できた。また、焼き戻し処理を行った実施例2では、隙間A、Cは約1.8mmまで低減されていた。
[マルテンサイトの体積率の評価方法及びその結果]
棒状部材Mの歯面M1aの横方向(Y方向)の一方の端部(図1(c)中のM1a1)において、歯面M1aから少なくとも深さ1mmまでが観察位置になるように実施例1で高周波焼入処理した棒状部材Mのサンプルを採取した(サンプル1)。また、棒状部材Mの背面M2aの横方向(Y方向)の一方の端部(図1(c)中のM2a1)において、背面M2aから少なくとも深さ1mmまでが観察位置になるように実施例1のサンプルを採取した(サンプル2)。
次に、採取したサンプル1及びサンプル2について、観察位置となる表面を鏡面研磨し、さらにナイタール腐食した後、光学顕微鏡を用いて、歯面M1a及び背面M2aから深さ1mmまでの範囲を観察した。次に、観察した歯面M1a及び背面M2aからそれぞれにおけるマルテンサイトの面積分率を求め、その値を本発明におけるマルテンサイトの体積率とした。
その結果、サンプル1(歯面M1a)においては、体積率90%のマルテンサイトが確認された。
また、サンプル2(背面M2a)においては、マルテンサイトが確認されなかった。
10 高周波焼入装置
20 加熱部
25a 上方高周波コイル
25b 下方高周波コイル
30 冷却部
35 冷却材供給部
M 棒状部材
M1a 歯面
M2a 背面
M3a 側面

Claims (2)

  1. 棒状部材の歯面をマルテンサイトが形成される温度として、背面をマルテンサイトが形成されない温度として、前記歯面と前記背面を同時に高周波加熱する高周波加熱工程と、
    前記高周波加熱後の棒状部材の前記歯面に直接的に冷却材を供給すると共に、前記背面に間接的に冷却材を供給する冷却工程と、を備える
    棒状部材の高周波焼入方法。
  2. 前記高周波焼入れは、移動焼入れである請求項1に記載の棒状部材の高周波焼入方法。
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