JPH1096010A - 熱処理部材、熱処理方法および熱処理装置 - Google Patents

熱処理部材、熱処理方法および熱処理装置

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JPH1096010A
JPH1096010A JP27157796A JP27157796A JPH1096010A JP H1096010 A JPH1096010 A JP H1096010A JP 27157796 A JP27157796 A JP 27157796A JP 27157796 A JP27157796 A JP 27157796A JP H1096010 A JPH1096010 A JP H1096010A
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JP
Japan
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heating
pin
surface side
cooling
heat
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JP27157796A
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English (en)
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Shoji Yamaguchi
祥司 山口
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Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面側に圧縮方向の残留応力を生じさせるこ
とにより表面側の割れ等を防止し、疲労寿命等を大幅に
延ばすことができるようにする。 【解決手段】 熱処理すべき部材としてのピン1を予め
決められた形状に成形・加工した後、これを搬送コンベ
ア2Aで加熱炉3内に搬入し、加熱炉3内でピン1を加
熱する。そして、ピン1が全体的にオーステナイト化し
た状態で、ピン1を加熱炉3,4間で周囲の空気に接触
させることにより、ピン1を徐々に冷却しフェライト・
パーライト組織に戻す。次に、加熱炉4内ではピン1の
表面側を高周波加熱機で加熱しつつ、その後段で冷却液
をピン1の表面側に噴射させ、ピン1の表面側がマルテ
ンサイト変態を起こすように、ピン1を外側から急速に
冷却した後に、搬出コンベア2Bで外部に搬出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば建設機械の
足廻り部品等のように耐摩耗性や耐衝撃性が要求される
金属部材に熱処理を施すことによって得られる熱処理部
材、金属部材の熱処理方法および熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、建設機械の足廻り部品として用
いられるトラックリンクのピン、トラックシューまたは
上ローラや下ローラのピン等は、過酷な条件下で使用さ
れることが多いために高い耐摩耗性や耐衝撃性等が要求
される。このため、これらの金属部材はそれぞれ必要と
される形状に成形・加工された後に熱処理が施され、熱
処理部材として製造される。なお、線材等からなる金属
部材の熱処理方法としては、例えば特開昭57−161
037号公報等が挙げられる。
【0003】この種の従来技術による熱処理方法は、熱
処理すべき金属部材を加熱する加熱工程と、加熱された
前記部材を外側から急速に冷却する冷却工程とからな
り、前記部材を加熱した後に急冷してマルテンサイト変
態を起こさせることにより、所望の機械的性質(例えば
耐摩耗性や耐衝撃性等)を得るようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従
来技術による熱処理方法では、熱処理すべき金属部材を
一旦加熱した後に急冷しているに過ぎないために、部材
内の残留応力が熱応力とは逆の傾向を示すことがあり、
熱処理部材の表面側で焼割れが発生したり、疲労強度が
低下する等の問題がある。
【0005】即ち、加熱と冷却の熱サイクルにより熱処
理部材は、内部と表面側(外側)とで温度差による熱応
力が発生するばかりでなく、冷却速度の違いによる変態
応力が加わり、部材の残留応力は複雑に変化する。な
お、熱応力の影響のみを考える限り、残留応力は表面側
で圧縮応力として作用し、部材の内部では引張り応力と
なり、部材の割れや疲労等の面から特に問題はないこと
になる。
【0006】しかし、部材の内部と表面側とでは冷却速
度の違いによって変態応力が加わるために、前記熱応力
の影響とは逆の傾向を示し、部材の内部温度がMs 点
(マルテンサイト化開始温度)以下まで低下すると、部
材の内部で変態膨張が発生することによって、部材の表
面側には引張り応力が作用し、表面側で割れが発生した
り、疲労強度が低下したりするという問題がある。
【0007】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みな
されたもので、本発明は表面側に圧縮方向の残留応力を
生じさせることにより表面側の割れ等を確実に防止で
き、疲労寿命等を大幅に延ばすと共に、耐摩耗性や耐衝
撃性等を向上できるようにした熱処理部材、熱処理方法
および熱処理装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、請求項1の発明が採用する構成は、金属材料か
らなる部材を熱処理するすることによって製造される熱
処理部材であって、表面側がマルテンサイト組織からな
り、内部が一旦オーステナイト化したフェライト・パー
ライト組織からなる構成としている。
【0009】上記構成により、熱処理部材は表面側がマ
ルテンサイト組織となり、内部がフェライト・パーライ
ト組織となるので、表面側に圧縮傾向の残留応力を生じ
させることができる。そして、当該熱処理部材は内部組
織が一旦オーステナイト化したフェライト・パーライト
組織となって再結晶化しているので、均質な内部組織と
することができ、外側が硬く内部は靱性を有する構造と
することができる。
【0010】また、請求項2による熱処理方法の発明
は、熱処理すべき金属部材を加熱する第1の加熱工程
と、加熱された前記部材を外側から徐々に冷却する徐冷
工程と、徐冷された前記部材を再加熱する第2の加熱工
程と、再加熱された前記部材を外側から急速に冷却する
急冷工程とからなる。
【0011】そして、請求項3の発明では、熱処理すべ
き金属部材が全体的にオーステナイト化する温度まで該
部材を加熱する第1の加熱工程と、オーステナイト化し
た前記部材がフェライト・パーライト組織に戻るまで該
部材を外側から徐々に冷却する徐冷工程と、徐冷した前
記部材を外側から再加熱し該部材の表面側をオーステナ
イト化させる第2の加熱工程と、再加熱された前記部材
の表面側がマルテンサイト変態を起こすように該部材を
外側から急速に冷却する急冷工程とからなる熱処理方法
を採用している。
【0012】上記の熱処理方法によれば、第1の加熱工
程で熱処理すべき部材を全体的にオーステナイト化温度
まで加熱した後に、徐冷工程によって前記部材がフェラ
イト・パーライト組織に戻るまで冷却することができ、
その後の急冷工程により前記部材の内部が冷却されて
も、内部組織にまで相変態が及ぶことはなく、部材の内
部は熱応力の影響として熱収縮するにとどまる。そし
て、熱処理部材は内部が熱収縮する間も、外側は急冷工
程により相変態(マルテンサイト変態)を起こし、変態
膨張による圧縮応力が生じると共に、この圧縮応力は冷
却終了時まで保たれるから、熱処理部材の表面側では圧
縮応力が増加する傾向となる。
【0013】また、第1の加熱工程後に徐冷工程を行っ
たときにも、前記部材の内部が比較的高い温度状態に保
たれるから、第2の加熱工程で前記部材を外側から再加
熱したときには、該部材の表面側を比較的深い位置まで
オーステナイト化させることができる。そして、その後
の急冷工程では、オーステナイト化した部材の表面側に
マルテンサイト変態を生起させ、変態膨張による圧縮応
力を表面側に生じさせることができると共に、部材表面
の硬度を確実に高めることができる。
【0014】一方、請求項4による熱処理装置の発明
は、熱処理すべき金属部材を搬送する搬送手段と、該搬
送手段の途中に設けられ前記部材を加熱する第1の加熱
手段と、該第1の加熱手段の下流側に位置して前記搬送
手段の途中に設けられ前記部材を加熱する第2の加熱手
段と、該第2の加熱手段の近傍に設けられ該第2の加熱
手段で加熱された前記部材を外側から冷却する冷却手段
とからなる構成を採用している。
【0015】これにより、熱処理すべき金属部材を搬送
手段で第1の加熱手段の位置まで搬送したときには、該
第1の加熱手段で前記部材を自動的に加熱でき、加熱後
の部材を第1の加熱手段から第2の加熱手段の位置まで
搬送する間には、この部材を周囲の空気等により徐冷す
ることができる。そして、この徐冷した部材を第2の加
熱手段により外側から再び加熱しつつ、その近傍(下流
側)位置でこの部材を外側から急速に冷却し、例えばマ
ルテンサイト変態を部材の表面側に起こさせることがで
きる。
【0016】また、請求項5の発明では、前記第1の加
熱手段は、前記部材を全体的にオーステナイト化温度ま
で加熱する加熱炉からなり、前記搬送手段はオーステナ
イト化した前記部材がフェライト・パーライト組織に戻
るように、前記第1の加熱手段と第2の加熱手段との間
で前記部材を予め決められた冷却時間をもって搬送する
構成としている。
【0017】これにより、熱処理すべき部材は加熱炉内
を搬送される間にオーステナイト化温度まで加熱され
る。そして、この部材は搬送手段により前記加熱炉から
搬出された後、第2の加熱手段に達するまでの間に周囲
の空気等により冷却され、一旦オーステナイト化した前
記部材がフェライト・パーライト組織に戻るように徐冷
される。
【0018】さらに、請求項6の発明では、前記第2の
加熱手段は、フェライト・パーライト組織に一旦戻った
前記部材の表面側をオーステナイト化させるように該部
材を外側から再加熱する高周波加熱機からなり、前記冷
却手段は、表面側がオーステナイト化された前記部材に
外側から冷却媒体を噴射し、該部材の表面側がマルテン
サイト変態を起こすように急速に冷却する構成としてい
る。
【0019】これにより、第2の加熱手段を構成する高
周波加熱機は、フェライト・パーライト組織に一旦戻っ
た前記部材の表面側をオーステナイト化させるように該
部材を外側から再加熱することができる。そして、高周
波加熱機の後段側でその近傍に配設される冷却手段は、
表面側がオーステナイト化された前記部材に外側から冷
却媒体を噴射することにより、該部材の表面側を急速に
冷却でき、オーステナイト化された部材の表面側にマル
テンサイト変態を生じさせることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
図面に従って詳述する。
【0021】ここで、図1ないし図6は本発明の実施例
による熱処理装置を示している。図中、1,1,…は熱
処理すべき金属部材としてのピンで、該各ピン1は履帯
のトラックリンク(図示せず)間を連結する連結ピンと
して、例えば炭素鋼等の鉄鋼材料から丸棒状に形成され
ている。そして、ピン1は後述の如く熱処理されること
により熱処理部材として製造され、高い耐摩耗性や耐衝
撃性等が与えられるものである。
【0022】2は搬送手段としての搬送装置を示し、該
搬送装置2は、各ピン1を後述の加熱炉3よりも上流側
から後述する加熱炉4の入口側まで矢示X方向に搬送す
る搬送コンベア2Aと、加熱炉4の出口側から熱処理後
の各ピン1を下流側へと搬出する搬出コンベア2Bと、
搬送コンベア2Aと搬出コンベア2Bとの間に配設さ
れ、例えば上下方向に加熱炉4内で各ピン1を搬送する
搬送機(図示せず)とから構成されている。
【0023】3は搬送コンベア2Aの途中に設けられた
第1の加熱手段としての加熱炉で、該加熱炉3は細長い
箱形状に形成され、その内部にはバーナ等の加熱源(図
示せず)が設けられている。そして、加熱炉3は搬送コ
ンベア2Aによって矢示X方向に搬送されてくる各ピン
1を、例えば800〜850℃以上の温度(図4中に示
すAs 点のオーステナイト化温度)下で30分〜1時間
程度に亘って加熱し、鉄鋼材料からなる各ピン1を全体
的にオーステナイト化させるものである。
【0024】4は搬送コンベア2Aと搬出コンベア2B
との間に配設された他の加熱炉で、該加熱炉4内には、
例えば図2中の矢示Y(上,下)方向に各ピン1を搬送
する前記搬送機が設けられ、その途中には高周波加熱機
5と後述の冷却装置6とが配設されている。
【0025】ここで、高周波加熱機5は図2に示す如く
高周波コイルからなる加熱リング5A等によって構成さ
れ、該加熱リング5Aの内径はピン1の外径よりも一定
寸法分だけ大径に形成されている。そして、高周波加熱
機5は加熱リング5Aに向けて外部から高周波電流が印
加されることにより、ピン1の表面(外周面)側を図4
中に例示するAs 点のオーステナイト化温度まで加熱す
るものである。なお、加熱リング5Aはピン1(熱処理
すべき部材)に対応してリング形状に形成されたもの
で、熱処理すべき部材の形状に合わせて加熱リング5A
の形状は変更されるものである。
【0026】6は高周波加熱機5の後段でその近傍に配
設された冷却手段としての冷却装置を示し、該冷却装置
6は図2および図3に示す如く、高周波加熱機5の加熱
リング5Aと同軸上で該加熱リング5Aに近い位置に配
設された中空の冷却リング6Aを有し、該冷却リング6
Aには複数の噴射孔6Bが穿設されている。そして、冷
却装置6は外部から冷却リング6A内に供給された冷却
媒体としての冷却液7を、ピン1の表面に向け各噴射孔
6Bを介して噴射させることにより、ピン1の表面側を
図4中のMs 点(例えば300℃程度のマルテンサイト
化開始温度)以下まで急速に冷却するものである。
【0027】即ち、丸棒状のピン1は図2および図3に
示す如く、加熱リング5A内と冷却リング6A内とを矢
示Y方向に移送されることにより、その表面側が全長に
亘って加熱リング5Aで加熱されつつ、冷却リング6A
からの冷却液で急冷される。そして、ピン1の表面側は
加熱時にオーステナイト(A)として相変化し、その後
の急冷によりマルテンサイト組織(M)へと相変態する
ようになる。
【0028】本実施例による熱処理装置は上述の如き構
成を有するもので、次にその熱処理方法について図4な
いし図6を参照して説明する。なお、図4中に実線で示
す特性線8はピン1の表面側における温度変化の特性で
あり、点線で示す特性線9はピン1の内部における温度
変化の特性を表している。
【0029】まず、図5に示す成形工程では、鉄鋼材料
からなるピン1を丸棒状に成形・加工し、この状態(熱
処理前の状態)ではピン1の結晶構造がフェライト
(F)とパーライト(P)とからなるフェライト・パー
ライト組織(F)+(P)として形成されている。
【0030】次に、このピン1を搬送コンベア2Aで加
熱炉3内へと図1中の矢示X方向に搬入し、加熱炉3内
でピン1を図4中に示すAs 点(オーステナイト化温
度)まで加熱する(第1の加熱工程)。そして、第1の
加熱工程は図4中の時間T1 から時間T4 (例えば30
分〜1時間程度)に亘って続行される。
【0031】この場合、例えば図4中の時間T2 から時
間T3 に亘る加熱工程の初期段階では、ピン1の表面側
と内部とに特性線8,9の如く温度差が生じ、ピン1の
内部温度はAs 点まで上昇していないから、ピン1は図
5に示す如く内部がフェライト・パーライト組織(F)
+(P)を保ち、表面側のみがオーステナイト(A)と
して相変化する。そして、時間T3 以降ではピン1の内
部温度がAs 点まで上昇することにより、ピン1は全体
がオーステナイト(A)として相変化するようになる。
【0032】次に、時間T4 から時間T5 に亘る徐冷工
程では、搬送コンベア2Aによりピン1が加熱炉3から
搬出されて加熱炉4の入口側に達するまでの間に、ピン
1を周囲の空気流等に接触させることにより、例えば1
0分程度の冷却時間(T4 〜T5 )をもってピン1を徐
々に冷却する。そして、時間T5 では図4中の特性線9
の如くピン1の内部温度が、例えばB点(B<As )の
温度レベルまで低下することにより、前述の如く一旦結
晶構造がオーステナイト(A)となったピン1は、図5
に示すように徐冷工程で全体的にフェライト・パーライ
ト組織(F)+(P)に戻る。
【0033】次に、時間T5 から時間T6 に亘る第2の
加熱工程では、加熱炉4内でピン1を高周波加熱機5の
加熱リング5A内に導き、該加熱リング5Aによりピン
1の表面(外周)側を、例えば2〜3分程度の時間でA
s 点のオーステナイト化温度まで再加熱する。これによ
り、ピン1の表面側は図6に示すようにオーステナイト
(A)として相変化し、ピン1の内部はフェライト・パ
ーライト組織(F)+(P)に保たれる。
【0034】そして、時間T6 以降の急冷工程では図
2、図3に示す如く高周波加熱機5の加熱リング5Aと
同軸上で該加熱リング5Aに近い位置に配設した中空の
冷却リング6Aから各噴射孔6Bを介して冷却液7を噴
射させることにより、例えば2〜3分程度の時間でピン
1の表面側を図4中のMs 点(マルテンサイト化開始温
度)以下まで急速に冷却する。この結果、結晶構造がオ
ーステナイト(A)となったピン1の表面側は、例えば
300℃程度のMs 点以下まで急冷されることによっ
て、マルテンサイト組織(M)へと相変態するようにな
る。
【0035】そして、丸棒状のピン1は図2および図3
に示す如く、加熱リング5A内と冷却リング6A内とを
矢示Y方向に移送されることにより、その表面側が全長
に亘って加熱リング5Aで加熱されつつ、冷却リング6
Aからの冷却液で急冷されるから、ピン1の表面側は図
6に示すように、熱処理完了時に全長に亘ってマルテン
サイト組織(M)へと相変態し、ピン1の内部はフェラ
イト・パーライト組織(F)+(P)を保つようにな
る。
【0036】かくして、本実施例によれば、熱処理すべ
き部材としてのピン1を予め決められた形状に成形・加
工した後、これを搬送コンベア2Aで加熱炉3内に搬入
して加熱し、ピン1が全体的にオーステナイト化した状
態で、ピン1を加熱炉3,4間で周囲の空気等により徐
冷してフェライト・パーライト組織(F)+(P)に戻
すと共に、加熱炉4内ではピン1の表面側を高周波加熱
機5で加熱しつつ、その後段で冷却装置6により冷却液
をピン1の表面側に噴射させ、該ピン1の表面側がマル
テンサイト変態を起こすようにピン1を外側から急速に
冷却する構成としたから、下記のような作用効果を得る
ことができる。
【0037】即ち、結晶構造が予めフェライト・パーラ
イト組織(F)+(P)からなるピン1は、加熱炉3内
で全体的にオーステナイト化する温度まで加熱されるこ
とにより、ピン1は全体的にオーステナイト(A)とし
て相変化するから、この段階でピン1の元の残留応力を
一旦は全て緩和することができる。
【0038】そして、加熱炉3から搬出されたピン1は
次の加熱炉4に達するまでに空気冷却されることによ
り、一旦はオーステナイト化したピン1の結晶構造がフ
ェライト・パーライト組織(F)+(P)に戻る。そし
て、この段階でピン1には表面側と内部との温度差によ
り熱応力が発生し、ピン1の表面側では内部よりも熱収
縮が大きいために、該ピン1の表面側には引張り応力が
生じる。
【0039】そこで、この状態のピン1を加熱炉4内の
高周波加熱機5で外側から加熱してピン1の表面側をオ
ーステナイト化させつつ、その後段の冷却装置6でピン
1を急冷することにより、該ピン1の表面側にマルテン
サイト変態を起こさせ、その内部をフェライト・パーラ
イト組織(F)+(P)に保つようにしている。この結
果、ピン1の表面側ではマルテンサイト変態による変態
膨張が生じることにより、ピン1の表面側に圧縮傾向の
応力を発生できる。
【0040】また、このときに図4中の時間T7 以降で
は特性線8,9からも明らかなように、ピン1の内部は
表面側よりも高温状態にあり、フェライト・パーライト
組織(F)+(P)であるピン1の内部は時間経過と共
に温度が徐々に低下し、この間にもピン1の内部は熱収
縮を続けるから、該ピン1の表面側に生じる圧縮応力は
これによって促進されるものである。
【0041】さらに、加熱炉3,4間でピン1を徐冷し
たときには、ピン1は図4に例示したB点の温度レベル
に低下するが、この状態でもピン1の内部は比較的高い
温度に保たれているから、高周波コイル等からなる高周
波加熱機5でピン1を外側から再加熱したときに、該ピ
ン1の表面側を比較的深い位置までオーステナイト化さ
せ、熱損失を少なくでき、焼入れ深さを確実に深くする
ことができる。
【0042】そして、その後は冷却装置6でピン1を急
冷することにより、オーステナイト化したピン1の表面
側にマルテンサイト変態を効果的に生起させることがで
き、ピン1の表面側に変態膨張による圧縮傾向の残留応
力を生じさせ、表面の割れ等を防止できると共に、ピン
1の表面側で硬度を確実に高めることができる。
【0043】これにより、熱処理部材としてのピン1は
図6に示す如く、熱処理の完了時に表面側がマルテンサ
イト組織(M)となり、内部が一旦オーステナイト化し
たフェライト・パーライト組織(F)+(P)となって
いるので、ピン1は表面側に圧縮傾向の残留応力を生じ
させ、均質な内部組織とすることができ、外側が硬く内
部は靱性を有する構造とすることができる。
【0044】従って、本実施例によれば、ピン1の表面
側に圧縮方向の残留応力を生じさせることにより表面側
の割れ等を確実に防止でき、疲労寿命等を大幅に延ばす
ことができると共に、ピン1の耐摩耗性や耐衝撃性等を
向上できる。
【0045】そして、熱処理によりピン1の表面側に圧
縮傾向の残留応力を生じさせ、均質な内部組織とするこ
とができるから、例えば軸受部材や転動部材等に適した
部材としてピン1を製造することができる。
【0046】なお、前記実施例では、熱処理部材として
トラックリンク間を連結するピン1を例に挙げて説明し
たが、本発明はこれに限るものではなく、例えば建設機
械の足廻り部品として用いられるトラックシュー、上ロ
ーラや下ローラのピン等に適用してもよい。そして、熱
処理により表面側に圧縮傾向の残留応力を生じさせ、均
質な内部組織とすることができるから、例えば軸受部材
や転動部材等に適した金属部材とし、外側が硬く内部は
靱性を有する構造とすることができる。
【0047】また、前記実施例では、加熱炉3,4間で
ピン1を周囲の空気流等により徐冷するものとして述べ
たが、本発明はこれに限らず、例えば加熱炉3を内部で
2つ炉室に分割し、その前段側よりも後段側の炉室温度
を低くすることにより、後段側の炉室内で空冷と同じ作
用を得るようにしてもよい。
【0048】さらに、前記実施例では、加熱炉4内に高
周波コイル等からなる高周波加熱機5を設ける構成とし
たが、これに替えて、例えば赤外線ランプ等の加熱手段
を用いるようにしてもよいものである。
【0049】
【発明の効果】以上詳述した如く、請求項1に記載の発
明によれば、熱処理部材を表面側がマルテンサイト組織
からなり、内部が一旦オーステナイト化したフェライト
・パーライト組織からなる構成としているから、表面側
に圧縮方向の残留応力を生じさせることができ、表面側
の割れ等を防止できると共に、疲労寿命等を大幅に延ば
すことができる。そして、当該熱処理部材は内部組織が
一旦オーステナイト化したフェライト・パーライト組織
となって再結晶化しているので、均質な内部組織とする
ことができ、外側が硬く内部は靱性を有する構造にでき
ると共に、耐摩耗性や耐衝撃性等を向上でき、当該熱処
理部材を軸受部材や転動部材等として好適に用いること
ができる。
【0050】また、請求項2による熱処理方法の発明で
は、第1の加熱工程で熱処理すべき金属部材を加熱し、
これを徐冷工程で外側から徐々に冷却した後に、第2の
加熱工程では前記部材を再加熱しつつ、急冷工程ではこ
れを外側から急速に冷却するようにしたから、熱処理後
の部材表面側に圧縮方向の残留応力を生じさせることが
でき、表面側の割れ等を防止できると共に、疲労寿命等
を大幅に延ばし、耐摩耗性や耐衝撃性等を向上させるこ
とができる。
【0051】さらに、請求項3の発明では、第1の加熱
工程で熱処理すべき金属部材を全体的にオーステナイト
化温度まで加熱した後に、徐冷工程によって前記部材が
フェライト・パーライト組織に戻るまで冷却し、その後
の第2の加熱工程で前記部材を外側から再加熱すること
により該部材の表面側をオーステナイト化させつつ、急
冷工程で部材を外側から急速に冷却することにより、部
材の表面側でマルテンサイト変態を起こさせるようにし
たから、前記部材の表面側に変態膨張による圧縮応力を
生じさせ、表面側の焼割れ等を確実に防止できると共
に、疲労寿命等を大幅に延ばし、耐摩耗性や耐衝撃性等
を向上させることができる。
【0052】一方、請求項4による熱処理装置の発明で
は、熱処理すべき金属部材を搬送手段で第1の加熱手段
の位置まで搬送したときに、該第1の加熱手段で前記部
材を自動的に加熱でき、加熱後の部材を第1の加熱手段
から第2の加熱手段の位置まで搬送する間に、この部材
を周囲の空気等に接触させることにより徐冷できる。そ
して、この徐冷した部材を第2の加熱手段により外側か
ら再び加熱しつつ、その近傍(下流側)位置でこの部材
を外側から急速に冷却し、例えばマルテンサイト変態を
部材の表面側に起こさせるようにしたから、部材の表面
側に圧縮傾向の残留応力を生じさせ、均質な内部組織と
することができる上に、熱処理作業全体を効率的に行う
ことができる。
【0053】また、請求項5の発明では、熱処理すべき
金属部材を加熱炉内で搬送する間にオーステナイト化温
度まで自動的に加熱できる上に、この部材が搬送手段に
より前記加熱炉から搬出された後、第2の加熱手段に達
するまでの間に周囲の空気等により前記部材を徐々に冷
却でき、一旦オーステナイト化した部材をフェライト・
パーライト組織に確実に戻すことができる。
【0054】さらに、請求項6の発明では、第2の加熱
手段となる高周波加熱機により、フェライト・パーライ
ト組織に一旦戻った部材を外側から再加熱し、その表面
側をオーステナイト化させると共に、表面側がオーステ
ナイト化された前記部材に外側から冷却手段により冷却
媒体を噴射し、部材の表面側がマルテンサイト変態を起
こすように急速に冷却する構成としているから、温度上
昇深さの浅い高周波加熱によっても、熱損失を少なくで
き、従来よりも深い焼入れを行うことができると共に、
表面側に変態膨張による圧縮傾向の残留応力を生じさ
せ、表面の割れ等を防止でき、表面側での硬度を確実に
高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による熱処理装置を示す全体図
である。
【図2】ピン、高周波加熱機および冷却装置を示す斜視
図である。
【図3】ピンの表面側を高周波加熱機で加熱した後に冷
却装置で急冷している状態を示す一部破断の説明図であ
る。
【図4】熱処理時の温度変化特性を示す特性線図であ
る。
【図5】ピンの成形工程、第1の加熱工程および徐冷工
程を示す説明図である。
【図6】第2の加熱工程、急冷工程および熱処理の完了
状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ピン(熱処理部材) 2 搬送装置(搬送手段) 2A 搬送コンベア 2B 搬出コンベア 3 加熱炉(第1の加熱手段) 4 加熱炉 5 高周波加熱機(第2の加熱手段) 5A 加熱リング 6 冷却装置(冷却手段) 6A 冷却リング 7 冷却液 As オーステナイト化温度 Ms マルテンサイト化開始温度

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属材料からなる部材を熱処理すること
    によって製造される熱処理部材であって、表面側がマル
    テンサイト組織からなり、内部が一旦オーステナイト化
    したフェライト・パーライト組織からなる熱処理部材。
  2. 【請求項2】 熱処理すべき金属部材を加熱する第1の
    加熱工程と、加熱された前記部材を外側から徐々に冷却
    する徐冷工程と、徐冷された前記部材を再加熱する第2
    の加熱工程と、再加熱された前記部材を外側から急速に
    冷却する急冷工程とからなる熱処理方法。
  3. 【請求項3】 熱処理すべき金属部材が全体的にオース
    テナイト化する温度まで該部材を加熱する第1の加熱工
    程と、オーステナイト化した前記部材がフェライト・パ
    ーライト組織に戻るまで該部材を外側から徐々に冷却す
    る徐冷工程と、徐冷した前記部材を外側から再加熱し該
    部材の表面側をオーステナイト化させる第2の加熱工程
    と、再加熱された前記部材の表面側がマルテンサイト変
    態を起こすように該部材を外側から急速に冷却する急冷
    工程とからなる熱処理方法。
  4. 【請求項4】 熱処理すべき金属部材を搬送する搬送手
    段と、該搬送手段の途中に設けられ前記部材を加熱する
    第1の加熱手段と、該第1の加熱手段の下流側に位置し
    て前記搬送手段の途中に設けられ前記部材を加熱する第
    2の加熱手段と、該第2の加熱手段の近傍に設けられ該
    第2の加熱手段で加熱された前記部材を外側から冷却す
    る冷却手段とから構成してなる熱処理装置。
  5. 【請求項5】 前記第1の加熱手段は、前記部材を全体
    的にオーステナイト化温度まで加熱する加熱炉からな
    り、前記搬送手段はオーステナイト化した前記部材がフ
    ェライト・パーライト組織に戻るように、前記第1の加
    熱手段と第2の加熱手段との間で前記部材を予め決めら
    れた冷却時間をもって搬送する構成としてなる請求項4
    に記載の熱処理装置。
  6. 【請求項6】 前記第2の加熱手段は、フェライト・パ
    ーライト組織に一旦戻った前記部材の表面側をオーステ
    ナイト化させるように該部材を外側から再加熱する高周
    波加熱機からなり、前記冷却手段は、表面側がオーステ
    ナイト化された前記部材に外側から冷却媒体を噴射し、
    該部材の表面側がマルテンサイト変態を起こすように急
    速に冷却する構成としてなる請求項4または5に記載の
    熱処理装置。
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