JP2022136020A - 超硬合金製切削工具 - Google Patents

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Keisuke Kawahara
龍 市川
Ryo Ichikawa
誠 五十嵐
Makoto Igarashi
一樹 岡田
Kazuki Okada
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Abstract

【課題】ステンレス鋼やNi基合金等の難削材を含む被削材の切削加工に供しても、刃先が欠損することなく、優れた耐塑性変形性を有する超硬合金製切削工具の提供【解決手段】Coを5.0質量%以上、14.0質量%以下、M(ただし、MはTa、Nb、Ti、Zrの1種以上)をMCとして0.1質量%以上、4.0質量%以下、CrをCr3C2として0.1質量%以上、1.4質量%以下、残部がWCおよび不可避的不純物であって、前記Coにつき、表層部の含有量は深部領域の含有量に対して、質量比で70%以上、98%以下少なく、表面部において、接着度が0.70以上であり、前記WCの平均粒径が1.0μm以上、4.0μm以下であり、表面の粗さ(Ra)が1.5μm以下である、ことを特徴とする超硬合金製切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は、超硬合金製切削工具に関するものである。
金属材料の切削加工には、硬度が高く耐摩耗性に優れた超硬合金(WC基超硬合金)製切削工具が使用されている。しかし、切削条件によっては、強度不足が生じることがあり、この強度不足を補うために超硬合金製切削工具の表面部分に処理を行うこと等の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Arボンバード処理を行って圧縮応力を付与した超硬合金製切削工具が記載されており、該切削工具は耐摩耗性が向上するとされている。
また、例えば、特許文献2には、酸洗いをすることにより表面層のCoを脱落させた超硬合金製切削工具が記載され、該切削工具は刃先の切削抵抗が低減できるとされている。
さらに、例えば、特許文献3には、プレス型の表面となる部分に結合相量を減少させた被焼結粉末を充填し、プレス成形、焼結を行った超硬合金焼結体が記載され、この焼結体は優れた靭性と耐摩耗性を有しているとされている。
加えて、特許文献4には、表面に内部よりも結合相量の減少した厚さtdの領域を有し、該領域以外に平均結合相量である厚さtsの領域を有し、ts/tdが1.0~1000である超硬合金成形体が記載され、この成形体は優れた靭性と耐摩耗性を有しているとされている。
そして、特許文献5には、バルクの名目値よりも低いCo含有量である表面層を有する超硬合金製切削工具が記載されている。
特開2013-237120号公報 特開2006-167856号公報 特許第2775810号公報 特開平2-209449号公報 特許第5552125号公報
本発明は、前記状況や提案に鑑みてなされたものであって、ステンレス鋼やNi基合金等の難削材を含む被削材の切削加工に供しても、刃先が欠損することなく、優れた耐塑性変形性を有する超硬合金製切削工具を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る超硬合金製切削工具は、
Coを5.0質量%以上、14.0質量%以下、
M(ただし、MはTa、Nb、Ti、Zrの1種以上)をMCとして0.1質量%以上、4.0質量%以下、
CrをCrとして0.1質量%以上、1.4質量%以下、
残部がWCおよび不可避的不純物であって、
前記Coにつき、表層部の含有量は深部領域の含有量に対して、質量比で70%以上、98%以下少なく、
表面部において、接着度が0.70以上であり、
前記WCの平均粒径が1.0μm以上、4.0μm以下であり、
表面の粗さ(Ra)が1.5μm以下である。
さらに、前記実施形態に係る超硬合金製切削工具は、以下の事項(1)、(1)および(2)、(3)のいずれか、または(1)、(2)、(3)の全てを満足してもよい。
(1)内部領域のマイクロビッカース硬度に比して、ビッカース硬度が80Hv以上高い高硬度層を有すること。
(2)前記高硬度層の厚さが、50μm以下であること。
(3)切刃に硬質被覆層を有すること。
前記超硬合金製切削工具は、ステンレス鋼やNi基合金等の難削材を含む被削材の切削加工に供しても、刃先が欠損することなく、優れた耐塑性変形性を有する。
本発明の実施形態に係る超硬合金製切削工具の表層部の組織の一例を示す模式図である。 表層部のCo含有量を測定するときの測定面の一例を示す模式図である。 表面部の接着度およびマイクロビッカース硬度を測定するときの測定面の一例を示す模式図である。 表面部の接着度を測定するときの測定面の一例を示す模式図である。 高硬度層、および内部領域のマイクロビッカース硬度測定を行うときの測定面の一例を示す模式図である。 切れ刃の逃げ面塑性変形量の一例を示す模式図である。なお、上図(すくい面)は平面図、下図(逃げ面)は側面図である。
本発明者は、前記目的を達成すべく、超硬合金製切削工具として適切な組成、組織構造について鋭意検討を行った。その結果、所定の組成と、Co含有量が表層部と深部領域で所定の関係を満足し、かつ、この表面部の接着度(後述する)が特定の値を満足し、さらに、所定の表面粗さを有し、WC粒子が所定の平均粒径を有するとき、ステンレス鋼やNi基合金等の難削材を含む被削材の切削加工に供しても、刃先が欠損することなく、優れた耐塑性変形性を有する超硬合金製切削工具を得ることを知見した。
以下、本発明の実施形態に係る超硬合金製切削工具について、特に、インサートとして用いられた場合の実施形態について説明する。
なお、本明細書、特許請求の範囲において、数値範囲を「M~N」(M、Nは共に数値)を用いて表現する場合、「M以上、N以下」と同義であって、その範囲は上限(N)および下限(M)の数値を含むものとし、上限値(N)のみに単位が記載されているとき、下限値(M)と上限値(N)の単位は同じである。
1.超硬合金製切削工具の組成
本実施形態に係る超硬合金製切削工具の組成は、
Coを5.0質量%以上、14.0質量%以下、
M(ただし、MはTa、Nb、Ti、Zrの1種以上)をMCとして0.1質量%以上、4.0質量%以下、
CrをCrとして0.1質量%以上、1.4質量%以下、
残部がWCおよび不可避的不純物である。
以下、順に説明する。
(1)Co
Coは結合相の主成分であり、5.0質量%以上、14.0質量%以下含むことが好ましい。結合相中には、硬質相の主成分であるWやC、その他の不可避的不純物が含まれていてもよい。さらに、結合相は、Cr、Ta、Nb、Ti、Zrの1種以上を含んでいてもよい。これら元素が結合相中に存在するときは、結合相に固溶した状態であると推定される。
前記範囲でCoを含有することが好ましい理由は、Co含有量が5.0質量%未満では、後述する硬質相が強固に結合されず、強度不足や欠損が生じやすく、一方、14.0質量%を超えると、硬質相が少なくなって超硬合金製切削工具としての強度が不足し、超硬合金製切削工具の耐塑性変形性が低下してしまうためである。結合相のCo含有量は、6.0質量%以上、12.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、結合相のCoの質量%は、超硬合金製切削工具の任意の表面または断面を、例えば、集束イオンビーム装置(FIB装置)、クロスセクションポリッシャー装置(CP装置)等により鏡面加工し、その加工面をEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により測定することにより求める。
(2)M
M(Mは、Ta、Nb、Ti、Zrの1種以上)は、MCで表される炭化物として0.1質量%以上、4.0質量%以下含有することが好ましい。その理由は、MC含有量が0.1%未満であると耐クレーター摩耗性が不十分であり、一方、4.0質量%を超えると、耐欠損性が不十分になるためである。
このMは炭化物となってγ相を形成する。γ相は、後述するように硬質相の一部と本実施形態では扱っており、化学量論的な原子比で結合した炭化物に限定されず、MとCが結合した複合炭化物を含む炭化物すべてをいうが、M含有量の規定は、MとCが1:1で結合したMCと仮定をして炭化物換算をして、MCで示される化合物の1種以上の含有量である質量%を示している。
(3)Cr
耐塑性変形性の向上を目的としてCrを含有させることが好ましく、その含有量は、超硬合金製切削工具の全体に対してCrをCrであると換算して0.1質量%以上、1.4質量%以下が好ましい。また、その含有量が、Coの含有量に対し10%を超えると、CrとWの複合炭化物として析出し、靭性の低下や、欠損発生の起点となるおそれがあるため、本実施形態において、Cr(質量%)/Co(質量%)≦0.10の範囲を満たすように含有させることがより好ましい。
(4)WC
WCは、超硬合金製切削工具を構成する元素の残部成分である一方で、硬質相の主成分である。硬質相は、WC、γ相の他に製造工程で不可避的に混入する不可避的不純物を含んでもよい。
また、WCの含有量はWとCが1:1で化合したと仮定して炭化物換算をして求める。
ここで、主成分とは、硬質相内にWCが50質量%以上含まれていることをいう。
WCの平均粒径は、1.0μm以上、4.0μm以下が好ましい。WCの平均粒径がこの範囲にあると、本実施形態に係る超硬合金の硬さが適切な範囲となり、かつ、WC同士の粒界すべりを抑制するため、高温クリープ変形の発生を防止し、耐塑性変形性が向上する。WCの平均粒径は、1.6μm以上、3.0μm以下がより好ましい。
WCはヤング率が高い。そのため、超硬合金の硬さ、耐塑性変形性を決定する主たる要因となるから、WCの平均粒径を規定することとした。
WCの平均粒径は、超硬合金製切削工具の任意の表面または断面を鏡面加工し、その加工面を後方散乱電子回折(EBSD)で観察し、画像解析によって、少なくとも4000個の各WC粒子の面積を求め、その面積に等しい円の直径を算出し、各WCの直径と面積を乗算した値の総和を全WCの面積の総和で除した値として求めるものである([数1]を参照)。なお、鏡面加工は、前述の方法による。
Figure 2022136020000002
[数1]において、
N:測定視野内の結晶(WC)の数
:i番目の結晶(WC)の粒径
:i番目の結晶(WC)粒の面積(ΣAiは測定視野中の全WC粒子の面積)
D:平均結晶(WC)粒
である。
(5)不可避不純物
前記のように、硬質相、結合相は製造工程で不可避的に混入する不純物を含んでいてもよく、その量は超硬合金製切削工具全体を100質量%としたとき、外数として0.3質量%以下が好ましい。
2.超硬合金製切削工具の組織
(1)表層部と深部領域のCo含有量
Coの含有量は、超硬合金製切削工具の表層部において、その深部領域に対して、質量比で70%以上少ないことが好ましい。
質量比で70%以上少ないとは、
100×[(切削工具の深部領域のCoの質量%)-(切削工具の表層部のCoの質量%)]/(切削工具の深部領域のCoの質量%)
の値が70以上となることをいい、70%以上のとき、超硬合金製切削工具の耐塑性変形性が向上する。
なお、この質量比の上限は、98%である。その理由は、これ以上Coの含有量が低下してしまうと、超硬合金としての強度が不足し、超硬合金製切削工具の耐欠損性が低下してしまうためである。
この質量比の値をとることにより、超硬合金製切削工具の耐塑性変形性が向上する理由は、定かではない面があるが、超硬合金製切削工具の表面のCo含有量(結合相の存在割合)が低下するため、表面近傍で硬質相がお互いに密に接し合って、図1に模式的に示すように、表面近傍では結合相(2)が少なくなり、あたかも、硬質相(1)が石垣のような積層構造を形成するためではないかと推察している。
ここで、Coの含有量を測定する表層部と深部領域について図2を用いて説明する。
1)表層部とする観察面は、超硬合金製切削工具の表面の微小な凹凸を無視し、表面を平滑として扱った表面に垂直な断面を選定する。ここで、この表面は、逃げ面が好ましいが、逃げ面に限定されることはない。
2)この断面を500倍以上、2000倍以下で観察する観察視野は、長方形であって前記表面と平行な方向(横方向)に70μmの長さを有する。
3)観察視野の両端が、前述の微小な凹凸と交差する点同士を結んだ横方向の線分Z(3)を引く。この線分の長さは、観察視野の一辺の長さと同じ70μmである。
4)この線分Z(3)を超硬合金製切削工具の内部へ平行移動させて、前述の微小な凹凸の中で最も超硬合金製切削工具の内部にある点(最凹部(4))を横切る線分を引き、この線分を定量基準線(5)と定義する。
この定量基準線(5)は、最凹部以外で、前述の微小な凹凸と交差してはならず、仮に交差するときは、観察視野の位置を変更して線分Z(3)を引き直す。
5)定量基準線(5)を超硬合金製切削工具の内部へ向かって0.5μm平行移動させた線分Y(6)を引く。
6)定量基準線(5)を超硬合金製切削工具の表面へ向かって、前述の微小な凹凸の最も工具表面側にある点(最凸部(7))を横切るように平行移動させた線分X(8)を引く。
7)互いに平行な線分X(8)と線分Y(6)を長辺(長さ70μm)とし、観察視野の両端を短辺とする長方形領域(9)を表層部と定義する。なお、短辺の長さは、5μm以上、10μm以下程度である。
8)この表層部におけるCoの含有量の測定を、EDSを備えたSEM(Scanning Election Microscope)を用いて行う。この表層部は、2箇所を設定し、それぞれにおけるCoの含有量を平均して、表層部のCo含有量と扱う。
9)深部領域は、定量基準線(5)から超硬合金製切削工具の内部へ200μm以上入り込んだ領域をいい、深部領域のCo含有量は、測定領域の大きさを、例えば、20μm(縦)×70μm(横)として2箇所選定して、それぞれ、表層部のCoを測定したときと同様の手段により測定し、平均したものである。
(2)接着度
接着度とは、例えば、「Acta Metall. Sin.(Engl. Lett.) Vol.21,No.3(2008)p.211-219」では、
接着度=2NWC-WC/(2NWC-WC+NWC-Co
で定義されている。
しかし、本実施形態では、WC以外にγ相も硬質相として寄与するため、硬質相はWCとγ相をあわせたものと扱い、HPを硬質相、BPを結合相として、
接着度=2×NHP-HP/(2×NHP-HP+NHP-BP
と定義する。
ここで、NHP-HPは、超硬合金製切削工具の組織のSEM像上に後述する方法で線分を引いたとき、その線分上にあるWCまたはγ相粒子と、WCまたはγ相粒子の界面数であり、
HP-BPは、同組織のSEM像上に前述の線分を引いたとき、その線分上にあるWCまたはγ相粒子と、Coを主成分とする結合相の界面数である。
表面部の位置における接着度が0.70以上のとき、耐塑性変形性が向上する。接着度の上限は特段の制約がないが、後述する製造方法の一例によれば、0.90程度が上限となる。
接着度の測定について図3、4を参照して説明する。
1)接着度測定する表面(10)を選定する。この表面は、逃げ面であることが好ましいが、逃げ面に限定されない。
2)図3に示すように、この表面(10)の一部に角度θ(5度以上、20度以下の接着度の測定が容易となる角度(11))で傾斜した研磨部(12)を設ける。この研磨部(12)を設けた表面(10)は、未研磨部(13)を有している。
3)500倍以上、4000倍以下の接着度の測定がしやすい倍率を選定し、観察視野(例えば、60μm(縦)×84μm(横))を設定する。
4)図4に示すように、この観察視野中で、研磨部(12)と未研磨部(13)の境界にある微小な凹凸を観察し、この視野の両端が、それぞれ、この微小な凹凸と交差する点同士を結んだ線分A(14)を引く。
5)この線分A(14)を微小な凹凸の中で最も研磨部(12)の内部となる点(最凹部)を横切るように平行移動させて、これを最表面線分C(15)とする。この最表面線分C(15)は、最凹部以外で、前述の微小な凹凸と交差してはならず、仮に交差するときは、観察視野の位置を変更して線分A(14)を引き直す。
6)最表面線分C(15)を、その垂線方向に研磨部(12)上を移動した箇所に、1/sinθ(μm)を満足する長さだけ、平行移動させた線分B(16)を引く。
7)線分B(16)上で、硬質相同士を10個以上横切っていることを確認し、接着度を測定する。線分B上で硬質層同士が10個以上横切っていない場合は、倍率を低倍率に変更し、線分Aを引き直す。測定は2箇所で行い、これらの測定した接着度を平均する。硬質相の界面が視認しづらいときは、村上試薬などにより硬質相を腐食させる。
(3)表面粗さ
本実施形態に係る超硬合金製切削工具の表面粗さ(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。
その理由は、Raが1.5μmを超える表面粗さとなると、切削中に超硬合金製切削工具表面に被削材が溶着しやすくなり、溶着が脱離する際に、そこを起点とした刃先欠損が発生する可能性があるためである。
表面粗さ(Ra)は、被覆していない超硬合金性切削工具に対してであれば、例えば、レーザマイクロスコープ(株式会社キーエンス製:VK―X200)によって、50倍程度の測定がしやすい倍率を選定して、200μm(縦)×250μm(横)の観察視野を設定し、粗さ測定を行うことで値を求めることができる。
被覆している超硬合金製切削工具に対してであれば、例えば、Co含有量を測定するために得られた図2のような表層部の観察視野に対し、画像解析によって、表面の凹凸を粗さ曲線とみなし、その平均線から粗さ曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値として表面粗さ(Ra)を求めることができる。
(4)高硬度層
高硬度層とは、超硬合金製切削工具の内部領域のマイクロビッカース硬度に比して、ビッカース硬度が80Hv以上高い領域としたものであり、表面に存在することがより好ましい。また、その厚さは50μm以下であることがより好ましい。
高硬度層の厚さを、50μm以下とする理由は、この範囲にあると、耐欠損性を維持しつつ、切削負荷の高い刃先の強度が増し、耐塑性変形性が確実に向上するためである。
内部領域の定義は、次の高硬度層の測定で説明する(後述する8)を参照)。
高硬度層の測定について、図3、5を参照して説明する。
1)硬度測定する表面(10)を選定する。この表面は、逃げ面であることが好ましいが、逃げ面に限定されない。
2)図3に示すように、この表面(10)の一部に角度φ(5度以上、20度以下の高硬度層の測定が容易となる角度(11))で傾斜した研磨部(12)を設ける(図3は、接着度を説明するための図として既に用いており、そのときに角度θを使用した。ここでは、θをφに置き換えて説明する)。この研磨部(12)を設けた表面(10)は、未研磨部(13)を有している。
3)5倍程度の高硬度層の測定がしやすい倍率を選定して、例えば、0.9mm(縦)×(0.9~1.2)mm(横)の観察視野を設定する。
4)図5に示すように、この観察視野中で、研磨部(12)と未研磨部(13)の境界にある微小な凹凸を観察し、この視野の両端が、それぞれ、この微少な凹凸と交差する点同士を結んだ線分D(17)を引く。
5)この線分D(17)を微少な凹凸の中で最も研磨部の内部となる点(最凹部)を横切るように平行移動させて、これを最表面線分(18)とする。この最表面線分(18)は、最凹部以外で、前述の微小な凹凸と交差してはならず、仮に交差するときは、観察視野の位置を変更して線分D(17)を引き直す。
6)最表面線分(18)から、15μmだけその垂線方向に研磨部(12)上を移動した箇所に線分E(19)をとり、各圧痕の中心が線分E(19)上にそれぞれ150μm離れるように7点マイクロビッカース硬度測定a(この硬度aの測定位置は、最表面線分(18)から切削工具の内部へ15×sinφmである)を行い、最大値と最小値を切り捨てた5点の値からその平均値1を求める。この時、7点の圧痕中心は、線分E(19)上にする。なお、図5ではこの5点のマイクロビッカース硬度測定aの測定位置を示している。
7)最表面線分(18)からその垂線方向に、50/sinφμmだけ研磨部(12)上に離れた位置に線分F(20)をとり、各圧痕の中心が線分F(20)上にそれぞれ150μm離れるように7点マイクロビッカース硬度測定b(この硬度bの測定位置は、最表面線分(18)から切削工具の内部へ50/sinφ×sinφ=50μmである)を行い、最大値と最小値を切り捨てた5点の値からその平均値2を求める。なお、図5ではこの5点のマイクロビッカース硬度測定bの測定位置を示している。
8)最表面線分(18)から研磨部(12)上に、100/sinφμm以上入った位置を内部領域と定義し、その領域でのマイクロビッカース硬度の平均値を、内部領域の硬さとしての代表値とする。内部領域の硬さの測定方法は、最表面線分(18)から研磨部(12)上に、100/sinφμm以上入った位置に平行に移動した線分G(21)をとり、各圧痕の中心が線分G(21)上にそれぞれ150μm離れるように7点のマイクロビッカース硬度測定cを行い、最大値と最小値を切り捨てた5点の値からその平均値3を求めることで得られる。なお、図5ではこの5点のマイクロビッカース硬度測定cの測定位置を示している。
そして、前記平均値1、前記平均値2と前記平均値3との差を算出する。すなわち、平均値1-平均値3が、80Hv以上高いとき、高硬度層を有すると判断する。また、同時に平均値2-平均値3≦80Hvを満たすことが望ましく、このとき、高硬度層は、切削工具の断面においてその層厚が50μm以下であると判断する。なお、マイクロビッカース硬度測定のための試験荷重はいずれも5Nである。
ここで、前述の超硬合金製切削工具の表面のマイクロビッカース硬度の測定を行う面は、接着度を測定した断面で行うこともできるが、マイクロビッカース硬度の測定を行った後に接着度を測定することは、正確な値の導出を妨げるおそれがあるため行ってはならない。
傾斜した研磨面を設ける理由は、超硬合金製切削工具の表面から300μmまでの領域でマイクロビッカース硬度を測定すると、特に、表面に近い領域(例えば、1.5μm)では、測定時にWC基超硬合金基体に欠けが生じ正確な測定を行うことができなくなる虞があるためである。
ここで、φの角度をなす傾斜した研磨面と前記表面との交差する位置は、マイクロビッカース硬度の測定にあたり超硬合金製切削工具に欠けが生じない位置とし、垂直断面における表面位置と同じに扱う。
ただし、マイクロビッカース硬度を測定する超硬合金製切削工具の位置は、垂直断面における位置であり、前記傾斜した研磨面でマイクロビッカース硬度を測定するにあたり、測定位置の換算が必要となる。つまり、マイクロビッカース硬度測定bは、傾斜面上では最表面線分から50/sinφμmの位置となるが、同工具の表面から内部に垂直方向には50μmだけ移動した箇所の硬度とみなすことができ、この硬度測定値と内部領域の硬度の差を測定することによって、高硬度層の厚みが50μm以下を満たすかどうかの判別が可能となる。
高硬度層は、本焼結中の圧力、本焼結後の後熱処理によって、焼結中の結合相の液相移動、固相温度域での結合相の揮発の現象を利用することで、表層部近傍の結合相の分布を内部よりも減少させることにより作製する。
5.硬質被覆層
超硬合金製切削工具の切刃を被覆するために、硬質被覆層として、Tiの炭化物または窒化物、TiとAlの複合炭窒化物等の公知の組成のものを1層または2層以上、公知の方法(例えば、CVD法)で形成してもよい(硬質被覆層はなくてもよい)。
また、硬質被覆層は、切刃のみではなく、超硬合金製切削工具の全体にわたって被覆されていてもよい。
本発明の超硬合金製切削工具について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、焼結用の粉末として、WC粉末(4.0μm)、Co粉末(1.0μm)、Cr粉末(1.0μm)、TaC粉末(1.0μm)、NbC粉末(1.0μm)、TiC粉末(1.0μm)、ZrC粉末(1.0μm)を用意した。ここで、各粉末名の後の括弧内の数字は、平均粒径(d50)であって、単位はμmである。
次に、これらの粉末を、表1に示す配合組成となるように配合して、焼結用粉末を作製し、サイクロンミキサーで混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で、ANSI呼び記号CNMG432MAの形状を得るべくプレス成形して圧粉成形体を作製した。
続いて、これらの圧粉成形体を、表2に示す条件(加熱温度1340~1430℃、保持時間60~120分、5.0MPa程度のAr加圧雰囲気)で本焼結を行い、表2に示す冷却速度で冷却した。
次いで、所定の温度で所定時間保持する後熱処理工程を行う。本実施例では、表2に示す条件、すなわち、真空雰囲気で、1150~1300℃の保持温度範囲まで加熱し、該保持温度で300~600分保持を行った。
本焼結、後熱処理工程を行った後には、500℃以下に到達するまで、表2に示すように、50℃/min以上での急冷処理を行う。
次に、機械加工、研削加工を行い、CNMG432MAの形状に整え、表3に示す超硬合製切削工具1~11(以下、実施例1~11という)を作製した。
比較のために、比較例の超硬合金製切削工具1’~7’(以下、比較例1’~7’という)を製造した。
その製造工程は、実施例1~11の製造工程において、前記後熱処理工程を省略したもの(表2では、後熱処理工程条件が「-」で記載されているもの)、あるいは、実施例の製造条件を外れた表2に示す後熱処理工程を行ったもの、もしくは、実施例の製造条件を外れた表2に示す本焼結工程を行ったものである。なお、表2において「-」は該当する処理を行わなかったことを示す。
すなわち、表1に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、サイクロンミキサーで混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で、ANSI呼び記号CNMG432MAの形状を得るべくプレス成形して圧粉成形体を作製した後、表2に示す条件、すなわち、本焼結工程においてAr加圧を行わない条件で焼結し、次いで、後熱処理工程を実施しないか、または、1100℃未満、あるいは1300℃を超える温度で実施し、得られた超硬合金に対して、これを機械加工、研削加工し、CNMG432MAインサート形状に整え、表4に示す比較例1’~7’を作製した。
実施例1~11および比較例1’~7’の超硬合金切削工具の断面について、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により、各元素の含有量を10点で測定し、その平均値を各成分の含有量とした。表3、表4に、それぞれの平均含有量を示す。なお、不可避的不純物の含有量は、前述の好ましい範囲にあったことを確認している。
次に、実施例1~11および比較例1’~7’の断面について、前述した方法により、WCの平均粒径を測定し、接着度、高硬度層の有無、及び高硬度層厚が50μm以下の範囲にあるか、を求め、表3、表4に、それぞれ示す。表3、4において、「〇」は該当することを、「×」は該当しないことを示し、表4において、マイナスの数字は結合相が表面にしみ出していること、「-」は存在しなかったことを示している。
実施例1~11および比較例1’~7’の切刃を含む表面に、表5に示す平均厚さの硬質被覆層をCVD法で被覆形成した。
Figure 2022136020000003
Figure 2022136020000004
Figure 2022136020000005
Figure 2022136020000006
Figure 2022136020000007
次に、以下に示す、切削試験1を実施し、切刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切刃の損耗状態を観察した。結果を表6に示す。
切削試験1:ステンレス鋼の湿式連続加工
被削材:JIS・SUS304(HB170)の丸棒
切削速度:180m/min
切り込み:2.0mm
送り:0.8mm/rev
切削時間:5分
湿式:水溶性切削油使用
また、実施例1~5、比較例1’~5’に対して、硬質被覆層を形成せず、切削試験2を行い、切れ刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。
表7に切削試験2の結果を示す。
切削試験2:低合金鋼の乾式切削試験
被削材:SNCM439の丸棒
切削速度:150m/min
切り込み:1.0mm
送り:0.8mm/rev
切削時間:5分
湿式:水溶性切削油使用。
さらに、実施例1~5および比較例1’~5’の切刃を含む表面に、組成Ti0.5Al0.5Nのターゲットを用いてPVD法により平均厚さ2.0μmの被覆層を設け、切削試験3を行い、切刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。
表8に切削試験3の結果を示す。
切削試験3:Ni基耐熱合金(AMS・5662)丸棒の乾式外径旋削加工(直径200mm)
被削材:Ni基耐熱合金(AMS・5662)
切削速度:60m/min
切り込み:0.5mm
送り:0.10mm/rev
切削時間:3分
湿式:水溶性切削油を使用。
Figure 2022136020000008
Figure 2022136020000009
Figure 2022136020000010
切削試験1~3において、切削時間が1分経過する毎に測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察し、欠損の発生有無の確認をするとともに、逃げ面塑性変形量が0.04mm以上であった時、刃先損耗状態を刃先変形とした。なお、欠損が発生した刃先の逃げ面の塑性変形量の測定は行っていない。
切削試験1~3では、切れ刃の逃げ面塑性変形量として次のものを採用した。すなわち、切削前の変形していない切れ刃稜線を基準とし、切削によって切れ刃稜線が押し込まれて変形した量を切れ刃の逃げ面塑性変形量とした。具体的には、図5に示すように、工具の主切刃側逃げ面(31)について、切刃(32)から十分離れた位置で主切刃側逃げ面(31)とすくい面(30)が交差する稜線上に線分を引き、同線分を切刃部方向に延伸し、延伸した線分(34)と切刃部稜線間の距離(延伸した線分の垂直方向)が最も離れている部分を測定し、これを切れ刃の逃げ面塑性変形量(33)とした。
表6~8に示すように、実施例(実施例被覆工具、実施例工具)は、寿命に影響を及ぼす逃げ面塑性変形量が少なく、偏摩耗や欠損を発生することなく、優れた耐塑性変形性を発揮する。これに対して、比較例(比較例被覆工具、比較例工具)は、所定の切削時間において工具の塑性変形が大きく、所定の被削材寸法を得る加工を行うことが困難である。
1 硬質相(WCとγ相)
2 結合相
3 線分Z
4 最凹部
5 定量基準線
6 線分Y
7 最凸部
8 線分X
9 長方形領域(表層部)
10 逃げ面
11 θまたはφ
12 研磨部
13 未研磨部
14 線分A
15 最表面線分C
16 線分B
17 線分D
18 最表面線分
19 線分E
20 線分F
21 線分G
30 すくい面
31 主切刃側逃げ面
32 切刃
33 逃げ面塑性変形量
34 逃げ面とすくい面の交差する稜線を延伸した線分
a~c ビッカース硬度の測定点(圧痕)

Claims (4)

  1. Coを5.0質量%以上、14.0質量%以下、
    M(ただし、MはTa、Nb、Ti、Zrの1種以上)をMCとして0.1質量%以上、4.0質量%以下、
    CrをCrとして0.1質量%以上、1.4質量%以下、
    残部がWCおよび不可避的不純物であって、
    前記Coにつき、表層部の含有量は深部領域の含有量に対して、質量比で70%以上98%以下少なく、
    表面部において、接着度が0.70以上であり、
    前記WCの平均粒径が1.0μm以上4.0μm以下であり、
    表面の粗さ(Ra)が1.5μm以下である、
    ことを特徴とする超硬合金製切削工具。
  2. 内部領域のマイクロビッカース硬度に比して、ビッカース硬度が80Hv以上高い高硬度層を有することを特徴とする請求項1に記載された超硬合金製切削工具。
  3. 前記高硬度層の厚さが、50μm以下であることを特徴とする請求項2に記載された超硬合金製切削工具。
  4. 切刃に硬質被覆層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載された超硬合金製切削工具。
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