JP2022134470A - 積層不織布およびその製造方法 - Google Patents

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Yoshiharu Usui
渉 京塚
Wataru Kyozuka
遼 森田
Ryo Morita
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Abstract

【課題】柔軟性を有しつつ、セルロース系短繊維の脱落がより抑制された、セルロース系短繊維と基材とを一体化させた積層不織布を提供する。【解決手段】セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、前記積層不織布の剛軟度が5.0cN以上15.0cN以下である、積層不織布。【選択図】なし

Description

本開示は、パルプ等のセルロース系短繊維を特定の構成の基材に一体化させてなる積層不織布に関する。
パルプ等のセルロース系短繊維は吸液性に優れ、触感が良好であること等から、これを用いた不織布が種々提案され、また、ワイパー等として実用に供されている。セルロース系短繊維のみで不織布を構成すると、機械的特性が不十分である、湿潤状態において剛性が低下する、または物理的特性の必要なバランスを得ることが難しいといった問題が生じることがある。そこで、セルロース系短繊維を基材に一体化させることでこれらの問題点を解決することが提案されている(特許文献1ないし3)。
特開平5-285083号公報 特開2002-275752号公報 特表2012-501752号公報
柔軟性を有しつつ、セルロース系短繊維の脱落がより抑制された、セルロース系短繊維と基材とを一体化させた積層不織布を提供する。
本開示は、セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、
前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、
前記積層不織布の剛軟度が5.0cN以上15.0cN以下である、
積層不織布に関する。
本開示はまた、
セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、
前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、
前記メルトブローン不織布として、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体が含まれる、
積層不織布に関する。
本開示はまた、
セルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布の製造方法であって、
長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、かつ二つの表面がいずれも長繊維不織布の表面であり、かつ前記メルトブローン不織布として、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体が含まれる基材の一方の表面に、セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維ウェブを配置すること、
前記セルロース系短繊維ウェブの側から高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させること
を含む、積層不織布の製造方法に関する。
本開示に係る積層不織布は、セルロース系短繊維層と長繊維不織布とメルトブローン不織布との組み合わせから成る基材とが、特定の剛軟度を有するように繊維同士が交絡し一体化することで、より柔軟で、かつセルロース系短繊維の脱落のより少ないものとなる。
また、本開示に係る積層不織布は、セルロース系短繊維層と長繊維不織布とメルトブローン不織布積層体との組み合わせを含む基材とが一体化することで、より柔軟で、かつセルロース系短繊維の脱落のより少ないものとなる。
また、本開示に係る積層不織布は、セルロース系短繊維が一方の表面に露出しているため、当該表面ではセルロース系短繊維の性質(例えば、吸液性)を利用することができ、セルロース系短繊維のみからなる不織布と同様の用途に適用できる。
[本実施形態に至った経緯]
セルロース系短繊維、特にパルプを用いて作製した不織布の問題点としては、柔軟性の低さ、及びセルロース系短繊維の脱落が挙げられる。脱落したセルロース系短繊維は、それがパルプである場合には「紙粉」とも呼ばれる。セルロース系短繊維の脱落(以下、「繊維脱落」)は、不織布を清掃用のワイパーとして用いた場合には、清掃の対象となる面への短繊維の付着を招き、清掃したはずの面が却って汚染される、または汚染された印象を利用者に与えることとなる。不織布を人体用のワイパーとして用いた場合には、皮膚や衣類への短繊維の付着を招き、利用者に不快感を与える。
また、セルロース系短繊維のみを用いてなる不織布は、例えばパルプのみからなるティシューのように、機械的特性(例えば強度)が低い傾向にあり、そのため使用中に破れが生じることがある。
特許文献1ないし3はいずれも、パルプと基材を組み合わせた構成の積層不織布ないしは複合不織布を提案している。具体的には、特許文献1では、パルプ繊維よりなる紙シートと疎水性長繊維が集積されてなる長繊維不織布とが積層されるとともに、パルプ繊維と疎水性長繊維とが相互に絡み合っており、パルプ繊維が長繊維不織布の非当接面に2面積%以上露出している吸水性拭き布が提案されている。特許文献2では、特定範囲の表面粗さを有する紙シートのパルプとスパンボンド不織布(SMSを含む)の連続繊維とを高圧水柱流により交絡させた複合不織布が提案されている。特許文献3では、不連続繊維の少なくとも1つの不織布ウェブ層と、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンドウェブ層とを含む、不透明指数が少なくとも1.3であるワイプが提案されている。
本発明者らの検討によれば、これらの特許文献で提案されている不織布はいずれも、セルロース系短繊維のみを用いてなる不織布と比較して、繊維脱落および柔軟性等の点で向上が見られるものの、なお改良の余地を有するものであった。具体的には、特許文献1ないし3の構成の不織布はいずれも、繊維脱落が十分に抑制されない傾向にあることが分かった。
本発明者らは、セルロース系短繊維層と組み合わせる基材の構成に着目し、基材の構成を種々検討した。その結果、メルトブローン不織布が長繊維不織布の間に位置する構成を有し、かつ二つの表面がともに長繊維不織布の表面である基材であって、セルロース系短繊維と一体化させたときに、特定の範囲の剛軟度を有する不織布を与える基材を用いることで、不織布の柔軟性が損なわれることなく、繊維脱落がより抑制されることを見出し、本実施形態に至った。このような不織布は、これを例えばワイパー等として用いた場合には、使用時の繊維脱落による対象物の汚れ、使用者の不快感をより少なくすることができると考えられる。
(セルロース系短繊維層)
[セルロース系短繊維]
本実施形態の積層不織布において、セルロース系短繊維層を構成するセルロース系短繊維は、繊維長が15mm以下のセルロース系短繊維である。繊維長は、特に10mm以下であってよく、より特には7mm以下であってよく、さらにより特には5mm以下であってよい。繊維長の下限は、例えば0.5mmであり、特に0.6mmであり、より特には0.7mmであり、さらにより特には0.8mmである。繊維長が長すぎると、短繊維を用いることによる特性、例えば、交絡が緻密になることによる適度な柔軟性およびドレープ性が得られにくくなる。繊維長が短すぎると、基材との一体化が不十分となり、繊維脱落が生じやすくなる。また、木材パルプ等のように一定長以上の繊維長を有し得ないセルロース系短繊維も存在する。
セルロース系短繊維の繊度は、例えば0.1dtex以上6dtex以下であってよく、特には0.3dtex以上3.5dtex以下であってよい。セルロース系短繊維の繊維径は、例えば3μm以上75μm以下であってよく、特に5μm以上60μm以下であってよい。
セルロース系短繊維の種類は特に限定されない。セルロース系繊維には、以下のものが含まれる。
(1)綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプ及びカポック等の植物に由来する天然繊維;
(2)ビスコース法で得られるレーヨン及びポリノジックレーヨン、銅アンモニア法で得られるキュプラ、及び溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)及びリヨセル(登録商標)等の再生繊維;
(3)溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;
(4)アセテート繊維等の半合成繊維;及び
(5)機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ
セルロース系繊維は、その多くが繊維製品において長年に亘って使用されてきた実績があり、入手が容易であること、また、親水性を有しており液体を吸収/保持させることが望まれる用途に適していることから、本実施形態で用いられる。液体を吸収/保持させることが望まれる用途の例は、湿潤面を拭き取るワイパー、または湿潤状態で用いるウェットワイパー、おむつなどの衛生用品の表面材および吸収体等である。
本実施形態では、パルプが好ましく用いられる。パルプは不織布および紙(湿式抄紙不織布)の材料として汎用されていることから、入手が容易であることに加え、自然由来であり環境に優しいことによる。また、不織布をワイパーとして用いる場合、パルプは高い拭き取り性能および高い吸水性を示す。
パルプは針葉樹木材または広葉樹木材を用いて常套の方法で製造されたものであってよい。針葉樹木材のパルプは繊維長が長く、不織布の強度を向上させやすいため好ましい。また、パルプは、無漂白のものであっても、漂白されたものであってもよい。パルプを用いる場合、種類の異なる二以上のパルプを用いてよい。一般的に、パルプ繊維の繊度(繊維径)は、1.0dtex以上4.0dtex以下程度(10.0μm以上70.0μm以下程度)、繊維長は0.8mm以上4.5mm以下程度であるが、この範囲外の繊度(繊維径)および/または繊維長を有するパルプ繊維を使用してもよい。
再生繊維、溶剤紡糸法で得られるセルロース繊維または半合成繊維等、繊度(繊維径)および/または繊維長を調整できるセルロース系短繊維を使用する場合、その繊度(繊維径)は、0.1dtex以上6dtex以下程度(3μm以上23μm以下程度)であることが好ましく、0.3dtex以上3.5dtex以下程度(5μm以上17μm以下程度)であることがより好ましく、その繊維長は、1mm以上15mm以下程度であることが好ましく、3mm以上10mm以下程度であることがより好ましい。この範囲内の繊度(繊維径)のセルロース系短繊維は柔軟性を確保するのに適している。再生繊維の繊度(繊維径)が小さすぎると、不織布の嵩密度が高くなり、風合いおよび触感が低下することがある。再生繊維の繊度(繊維径)が大きすぎると、不織布が粗いものとなって、触感が低下することがある。
[他の短繊維]
セルロース系短繊維層はセルロース系短繊維以外の短繊維(以下、「他の短繊維」)を含んでよい。他の短繊維は本実施形態の不織布の機械的特性、触感、および親水性/吸水性等の調整のために用いてよい。
他の短繊維は、例えば、
(1)ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマーから任意に選択される1または複数の熱可塑性樹脂からなる、合成繊維;
(2)羊毛、シルク等の蛋白質を主成分とする動物繊維
等であってよい。
他の短繊維の繊度(繊維径)は特に限定されず、例えば0.1dtex以上6dtex以下程度(3μm以上29μm以下)であってよく、特に0.3dtex以上3.5dtex以下程度(5μm以上22μm以下)であってよい。他の短繊維の繊度(繊維径)が小さすぎると、嵩密度が高くなり、風合いおよび触感が低下することがある。他の短繊維の繊度(繊維径)が大きすぎると、不織布が粗いものとなって、触感が低下することがある。動物繊維等のように繊度(繊維径)を人為的に調節できない繊維の繊度(繊維径)は上記範囲外となることがある。
他の短繊維の繊維長は、例えば16mm以下であってよく、特に14mm以下、より特には12mm以下、さらにより特には10mm以下であってよい。他の短繊維の繊維長の下限は、例えば2mmであり、特に3mmであり、より特には4mmであり、さらにより特には5mmである。繊維長が長すぎると、短繊維を用いることによる特性、例えば、交絡が緻密になることによる適度な柔軟性およびドレープ性が得られにくくなる。繊維長が短すぎると、基材との一体化が不十分となり、繊維脱落が生じやすくなる。
[セルロース系短繊維層の構成]
セルロース系短繊維層(以下、「短繊維層」)においてセルロース系短繊維の占める割合は、例えば40質量%以上であってよく、特に60質量%以上、より特には80質量%以上であってよく、セルロース系短繊維層は実質的にセルロース系短繊維からなるものであってよい。例えば、セルロース系短繊維層がセルロース系短繊維であるパルプのみから実質的になる場合、短繊維層側でパルプ100%の不織布または紙に近い触感および特性(例えば、親水性/吸水性および拭き取り性等)を得ることができる。
他の短繊維が短繊維層に含まれる場合、他の短繊維が短繊維層に占める割合は、例えば60質量%以下であってよく、特に40質量%以下、より特には20質量%以下であってよい。他の短繊維の占める割合が多すぎると、セルロース系短繊維を用いることにより得られる特性および触感が低下することがある。
短繊維層の目付の上限は、例えば90g/mであってよく、特に70g/m、より特には50g/mであってよく、下限は例えば10g/mであってよく、特に20g/m、より特には30g/mであってよい。短繊維層の目付が小さすぎると、得られる積層不織布においてセルロース系短繊維による特性(例えば、親水性/吸水性等)および触感が得られないことがある。短繊維層の目付が大きすぎると、短繊維の基材への交絡が不十分となることがあり、繊維の脱落が生じやすくなる。
本実施形態の不織布においては、短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されている。その結果、短繊維層に基材の繊維の一部が入りこむ、ならびに基材の繊維が短繊維層をおよび貫通して短繊維層の表面に露出することもある。その場合、短繊維層は、厳密にいえば短繊維ではない繊維を含むこととなるが、本実施形態では基材から短繊維層に入り込んだ繊維は短繊維層を構成するものとはみなさない。
基材と一体化させる前の短繊維層の形態は、例えば、湿式抄紙ウェブまたはエアレイドウェブであってよい。
湿式抄紙ウェブを用いると、一体化後の不織布において短繊維層側の形態が紙に近いものとなり、紙が有する特性を発揮し得る。特に、パルプを湿式抄紙したウェブを用い、得られる不織布を対物または対人用ワイパーに適用する場合には、優れた拭き取り性が示される。
エアレイドウェブを用いると、一体化後の不織布は嵩高で厚手感を有するとともに、優れた保液性や柔軟性を示す。
エアレイドウェブはスクリーン法(本州製紙法、クロイヤー法、ダンウェブ法)、ピッカーローター法(J&J法、KC法、スコット法)などの方法により得ることができる。特にダンウェブ法によれば、均一な地合のウェブを得やすいため好ましい。
(基材)
本実施形態において、基材は、長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置し、基材の短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、基材の短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面である構成を有する。すなわち、基材は、少なくとも二つの長繊維不織布でメルトブローン不織布が挟まれており、かつ基材の最外層が長繊維不織布である構成を有する。以下に、長繊維不織布およびメルトブローン不織布をまず説明する。
[長繊維不織布]
長繊維不織布はスパンボンド不織布とも呼ばれる不織布であり、合成樹脂からなる長繊維で構成され、多くの場合、繊維同士が圧着部により一体化された形態を有するが、圧着部を有さず、繊維同士が接触点にて接着することで一体化された形態のものもある。圧着部は繊維が繊維を構成する材料(樹脂)によって互いに接着された、厚さのより薄い部分である。圧着部は後述するとおり、基材を構成する各不織布を一体化させるために形成されるものであってよい。
長繊維不織布の長繊維を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマーから任意に選択される1または複数の熱可塑性樹脂が挙げられる。
長繊維不織布の長繊維はポリオレフィン系樹脂を含むものであってよく、特にポリプロピレンを含むものであってよい。ポリオレフィン系樹脂を含む長繊維からなる不織布は、低比重であり、柔らかく、風合いが良好となる。ポリオレフィン系樹脂を含む長繊維は、ポリオレフィン系樹脂を例えば50質量%以上、特に70質量%以上、より特には90質量%以上含むものであってよく、あるいはポリオレフィン系樹脂からなっていてよい。
長繊維は、1つの樹脂からなる、または複数の樹脂が混合されてなる単一繊維であってよく、あるいは複数の成分からなる複合繊維であってよい。複合繊維である長繊維は、例えば、芯成分と鞘成分とからなる芯鞘型複合繊維であってよい。また、長繊維不織布は、2以上の複数の種類の長繊維で構成されていてよい。
長繊維不織布の長繊維の繊度の上限は、例えば7.0dtexであってよく、特に4.0dtex、より特には2.5dtexであってよい。長繊維の繊度の下限は、例えば0.5dtexであってよく、特に1.0dtex、より特には1.2dtexであってよい。あるいは、長繊維は、例えば32μm以下、特に24μm以下、より特には19μm以下の繊維径を有するものであってよく、また、例えば8μm以上、特に12μm以上、より特には13μm以上の繊維径を有するものであってよい。繊維径は電子顕微鏡等で繊維断面を観察することによって測定することができ、輪郭の任意の二点を結ぶ線分のうち最も長い線分の長さを繊維径とする。
長繊維の繊度ないしは繊維径が小さすぎると、長繊維不織布の耐摩耗性が低くなって、加工性に影響を及ぼすことがある。繊度ないしは繊維径が大きすぎると、最終的に得られる不織布の風合いが低下する、あるいは機械的特性が不十分となることがある。なお、長繊維不織布には、繊維径の異なる繊維が二種以上含まれていてよい。
各長繊維不織布の目付は、例えば、1g/m以上10g/m以下であってよく、特に1.5g/m以上7g/m以下であってよく、より特には2g/m以上4g/m以下であってよい。各長繊維不織布の目付が小さすぎると、最終的に得られる不織布の機械的特性が不十分となることがあり、大きすぎると、短繊維層との交絡性が低下することがある。
基材を構成する長繊維不織布の合計目付は、例えば、2g/m以上20g/m以下であってよく、特に3g/m以上16g/m以下であってよく、より特には4g/m以上12g/m以下であってよい。長繊維不織布の合計目付が小さすぎると、機械的特性が不十分であり、大きすぎると、短繊維層との交絡性が低下してしまう。
長繊維不織布は、例えば、0.05mm以上0.20mm以下の厚さを有してよく、特に0.08mm以上0.17mm以下、より特には0.10mm以上0.15mm以下の厚さを有してよい。
[メルトブローン不織布]
メルトブローン不織布は、溶融した樹脂をノズルより吐出させて繊維を形成し、ノズルの両側から高温の空気流を糸に沿って吹き出させることで繊維をより細くし、この細くした繊維(極細繊維)をシート状に集積する方法で製造される。ノズルに供給する樹脂の量を調節することで、繊維の太さを変化させることができる。メルトブローン不織布において、極細繊維の繊維長は一定ではなく、様々な長さの繊維が不規則に存在する。
メルトブローン不織布の極細繊維を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマーから任意に選択される1または複数の熱可塑性樹脂が挙げられる。
メルトブローン不織布の極細繊維はポリオレフィン系樹脂を含むものであってよく、特にポリプロピレンを含むものであってよい。ポリオレフィン系樹脂を含む極細繊維からなるメルトブローン不織布は、低比重であり、柔らかいので、最終的に得られる不織布の風合いを良好にする。ポリオレフィン系樹脂を含む極細繊維は、ポリオレフィン系樹脂を例えば50質量%以上、特に70質量%以上、より特には90質量%以上含むものであってよく、あるいはポリオレフィン系樹脂からなっていてよい。
メルトブローン不織布(基材に複数のメルトブローン不織布が含まれている場合は各メルトブローン不織布)の目付は、例えば0.5g/m以上10g/m以下であってよく、特に0.8g/m以上8.0g/m以下であってよく、より特には1.0g/m以上6.0g/m以下であってよい。メルトブローン不織布の目付が小さすぎると、短繊維の保持性が低下し、大きすぎると、短繊維の基材側表面への裏抜けを阻害する。
基材を構成するメルトブローン不織布の合計目付は、例えば、1g/m以上10g/m以下であってよく、特に1.5g/m以上9g/m以下であってよく、より特には2g/m以上8g/m以下であってよい。メルトブローン不織布の合計目付が小さすぎると、短繊維層と基材との間で緻密な交絡を得られにくくなって、セルロース系短繊維の脱落が増える傾向となり、大きすぎると、短繊維層と基材との交絡が不十分となることがある。
メルトブローン不織布(基材に複数のメルトブローン不織布が含まれている場合は各メルトブローン不織布)は、例えば0.05mm以上0.20mm以下の厚さを有してよく、特に0.08mm以上0.17mm以下、より特には0.10mm以上0.15mm以下の厚さを有してよい。
極細繊維の繊度の上限は、例えば1.0dtexであってよく、特に0.7dtex、より特には0.4dtexであってよい。極細繊維の繊度の下限は、例えば0.005dtexであってよく、特に0.007dtex、より特には0.010dtexであってよい。あるいは、極細繊維は、例えば12μm以下、特に10μm以下、より特には8μm以下の繊維径を有するものであってよく、また、例えば0.8μm以上、特に1.0μm以上、より特には1.2μm以上の繊維径を有するものであってよい。繊維径は電子顕微鏡等で繊維断面を観察することによって測定することができ、輪郭の任意の二点を結ぶ線分のうち最も長い線分の長さを繊維径とする。
極細繊維の繊度ないしは繊維径が小さすぎると、極細繊維が基材から脱落する場合があり、繊度ないしは繊維径が大きすぎると、短繊維層と基材との間で緻密な交絡を得られにくくなって、セルロース系短繊維の脱落が生じやすくなることがある。なお、メルトブローン不織布には、繊維径の異なる繊維が二種以上含まれていてよい。
長繊維不織布の長繊維の繊度とメルトブローン不織布の極細繊維の繊度との差は0.4dtex以上6dtex以下であってよく、特に0.5dtex以上4dtex以下、より特には0.6dtex以上2dtex以下であってよい。あるいは、長繊維不織布の長繊維の繊維径とメルトブローン不織布の極細繊維の繊度との差は2μm以上30μm以下であってよく、特に2.5μm以上25μm以下、より特には3μm以上20μm以下であってよい。
長繊維と極細繊維との繊度の差ないしは繊維径の差が小さすぎると、基材内部の空隙が少なくなって、短繊維層と基材の交絡に影響が及ぶことがあり、繊度の差ないしは繊維径の差が大きすぎると、基材から極細繊維が脱落する場合がある。
[基材の構成]
本実施形態における基材は、前述のとおり、少なくとも二つの長繊維不織布でメルトブローン不織布が挟まれており、かつ基材の最外層が長繊維不織布である構成を有する。そして、本実施形態においては、セルロース系短繊維層と積層一体化されたときに、5.0cN以上15.0cN以下の剛軟度を積層不織布が有することを可能にする基材が用いられる。そのような基材は、少なくとも二つの長繊維不織布(以下、「SB」と略すことがある)で挟まれるメルトブローン不織布(以下、「MB」と略すことがある)を、空隙を比較的多く有するようなものとすることによって得ることができる。
スパンボンド不織布の間に空隙の比較的多いメルトブローン不織布が位置する構成の基材は、例えば、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体をメルトブローン不織布とするものであってよい。より具体的には、スパンボンド不織布の表面に、複数台のメルトブローン装置を用いて、順次メルトブローン不織布を作製する方法で、メルトブローン不織布積層体を形成し、さらにその上にスパンボンド不織布を配置して製造される不織布を基材として用いてよい。
このようなメルトブローン不織布積層体は、一台のメルトブローン装置で作製される単層構造のメルトブローン不織布と比較して、メルトブローン不織布により多くの空隙が含まれる傾向にある。これは一台のメルトブローン装置で作製されるメルトブローン層と、別のメルトブローン装置で作製されるメルトブローン層との間で空隙が形成されやすくなることによると考えられる。また、メルトブローン不織布が空隙をより多く含むことで、基材の密度はより低くなり、交絡によってセルロース系短繊維層の構造がより破壊されやすく、積層不織布としたときの剛軟度がより低くなる傾向にあり、積層不織布の柔軟性がより高くなる傾向にある。さらに、基材のメルトブローン不織布が空隙をより多く含むことでセルロース系短繊維との交絡性がより向上し、セルロース系短繊維の脱落がより抑制される傾向にある。
本実施形態の積層不織布を構成する基材は、最も簡単にはSB/MB/MB/SBの構造を有する。あるいは、基材は五以上の層を有する構造であってよく、メルトブローン不織布を間に挟む二つの長繊維不織布の一方または両方の長繊維不織布が、連続的に厚さ方向に積層された複数の長繊維不織布からなる長繊維不織布積層体であってよい。そのような基材の積層構造は、例えば、SB/SB/MB/MB/SB、SB/SB/MB/MB/SB/SBである。加えて/あるいは、長繊維不織布で挟まれるメルトブローン不織布は、三以上のメルトブローン不織布が連続的に厚さ方向に積層された積層体であってよい。そのような基材の積層構造は、例えば、SB/MB/MB/MB/SB、SB/SB/MB/MB/MB/MB/SBである。
いずれの積層構造においても、基材に含まれる複数の長繊維不織布は、それぞれ合成繊維の種類および繊度(繊維径)、ならびに目付において異なっていてよい。同様に、基材を構成するメルトブローン不織布積層体において、各メルトブローン不織布はそれぞれ合成繊維の種類および繊度(繊維径)、ならびに目付において異なっていてよい。
また、長繊維不織布が基材両面の最外層以外の層(内層)として含まれる場合、基材は、内層となる長繊維不織布が最外層から連続的に配置され、二つのメルトブローン不織布で挟まれない構成とすることが好ましい。あるいは、基材はSB/MB/MB/SB/MB/SBのように、SBが二つのMBで挟まれた構造を有してよい。
前記SB/MB/MB/SB/MB/SB のように、メルトブローン不織布が三以上含まれる場合には、二以上のメルトブローン不織布が間に長繊維不織布を介在させることなく連続的に積層されて、基材の内層を形成していることが好ましい。この構成の基材は、二以上の連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体がセルロース系短繊維層により近くなるように配置されることが好ましい。連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体とセルロース系繊維とが交絡されやすいようにして、繊維脱落を抑制するためである。
本実施形態の積層不織布を構成する基材において、セルロース系短繊維層と接する側の長繊維不織布が単層構造である場合は、セルロース系短繊維とメルトブローン不織布との交絡がより強固になりやすく、セルロース系短繊維の脱落がより抑制される傾向にある。基材においてセルロース系短繊維層と接する側の長繊維不織布を二以上の長繊維不織布が連続して積層されたものとする場合、メルトブローン不織布と交絡するセルロース系短繊維の脱落がより抑制される傾向にある。これは、複数の長繊維不織布を連続して積層することで、積層不織布に圧力がかかる際に長繊維不織布によってメルトブローン不織布への圧力が軽減されてメルトブローン不織布と交絡しているセルロース系短繊維が脱落しにくくなることによると考えられる。長繊維不織布が連続して積層された長繊維不織布積層体を含む基材を用いる場合、長繊維不織布積層体をセルロース系短繊維層と接するようにすると、基材とセルロース系短繊維とがより交絡し、より繊維脱落を抑制することができる。本実施形態における基材において、セルロース系短繊維層と接する側の長繊維不織布は一層または二層構造であることが、セルロース系短繊維とメルトブローン不織布との交絡やセルロース系短繊維の脱落防止の観点でより好ましい傾向にある。
基材の密度は、0.050g/cm以上0.090g/cm以下であってよく、特に0.055g/cm以上、より特には0.060g/cm以上、さらにより特には0.065cm以上であってよい。また、基材の密度は、特に0.088cm以下、より特には0.084cm以下、さらにより特には0.080cm以下であってよい。上記のとおり、本実施形態で用いる基材は積層不織布の剛軟度が特定範囲内にあるように選択されるところ、剛軟度は基材の密度による影響を受けやすい。具体的には、剛軟度を大きくしようとすれば基材の密度をより大きくし、剛軟度を小さくしようとすれば基材の密度をより小さくすることとなる。本実施形態では、基材全体の密度が上記範囲内にある場合に、積層不織布の剛軟度を5.0cN以上15.0cN以下としやすく、繊維脱落がより抑制された不織布を得やすい。基材の密度が低すぎると、セルロース系短繊維と基材との交絡が不十分となって繊維脱落が生じやすくなる。基材の密度が高すぎると、セルロース系短繊維が基材の繊維間に入り込みにくくなって、基材と交絡することなく基材上方に偏在するセルロース系短繊維の量が増加する。基材と交絡しないセルロース系短繊維は脱落しやすく、繊維脱落の量を増加させる傾向にある。
基材全体の目付は、例えば7g/m以上25g/m以下であってよく、特に9g/m以上20g/m以下であってよく、より特には10g/m以上15g/m以下であってよい。基材の目付が小さすぎると、不織布の機械的特性が不十分となることがあり、大きすぎると、短繊維層との交絡が不十分となることがある。
基材における長繊維不織布の目付の合計とメルトブローン不織布の目付の合計の比は、例えば9:1(SB:MB)~1:9であってよく、特に8:2~2:8、より特には7:3~3:7であってよい。長繊維不織布の割合が大きすぎると、繊維脱落の抑制が不十分であり、メルトブローン不織布の割合が大きすぎると、基材の機械的特性が不十分となることがある。
基材において、長繊維不織布とメルトブローン不織布とは、例えば圧着部により一体化していてよい。圧着部においては繊維同士が接着されており、圧着部では基材の厚さが他の部分よりも一般に小さくなっている。圧着部は、長繊維不織布とメルトブローン不織布とを所定の積層構造となるように重ね合わせた後、熱および圧力を部分的に加える処理に付し、少なくとも一種類の繊維を溶融または軟化させて繊維同士を接着させて形成してよい。圧着部は、例えば、エンボスロールを用いた熱処理により形成されたものであってよい。圧着部で一体化されている基材は、目付が小さい場合でも取り扱いが容易である。
長繊維不織布とメルトブローン不織布とが圧着部により一体化されている場合、圧着部の面積の上限は、例えば0.55mmであってよく、特に0.50mm、より特には0.45mmであってよい。圧着部の面積の下限は、例えば0.10mmであってよく、特に0.15mm、より特には0.20mmであってよい。圧着部の面積が大きすぎると、短繊維層と基材との交絡が不十分となることがある。また、圧着部が基材の表面積に占める割合の上限は、例えば31%であってよく、特に28%、より特には25%であってよく、下限は、例えば4%であってよく、特に7%、より特には10%であってよい。圧着部が基材の表面積に占める割合が大きすぎると、やはり短繊維層と基材との交絡が不十分となることがある。
長繊維不織布とメルトブローン不織布とが圧着部により一体化された基材は市販のものであってよい。市販の基材として、例えば、東レ社製のLIVSEN(商品名)、PGI Nonwovens社製のSEP0552B(商品名)を用いることができる。
あるいは、基材は、後述する方法で本実施形態の不織布を製造する場合に、高圧流体流による繊維交絡処理を付することによって、長繊維不織布とメルトブローン不織布とが一体となったものであってよい。すなわち、基材は、短繊維層とともに高圧流体流処理に付する前には、独立した長繊維不織布およびメルトブローン不織布の形態で別個に存在していてよい。そのような基材を用いる場合には、基材中の繊維の自由度がより高いので、基材とセルロース系短繊維とがより強固に一体化する傾向にある。
基材は、例えば0.05mm以上0.30mm以下の厚さ(1.96kPa荷重時)を有してよく、特に0.06mm以上0.25mm以下、より特には0.07mm以上0.20mm以下の厚さを有してよい。基材は、例えば0.05mm以上0.35mm以下の厚さ(294Pa荷重時)を有してよく、特に0.06mm以上0.30mm以下、より特には0.07mm以上0.25mm以下の厚さを有してよい。
基材は、MD方向において、5N/5cm以上100N/5cm以下の引張強さ、特に10N/5cm以上70N/5cm以下、より特には15N/5cm以上40N/5cm以下の引張強さを有してよい。また、基材は、CD方向において、2N/5cm以上40N/5cm以下の引張強さ、特に3N/5cm以上30N/5cm以下、より特には4N/5cm以上20N/5cm以下の引張強さを有してよい。これらの引張強さはいずれも短繊維層と一体化させる前の基材のものである。
また、基材は、MD方向において、10%以上80%以下の伸び率、特に15%以上70%以下、より特には20%以上60%以下の伸び率を有してよく、CD方向において、20%以上90%以下の伸び率、特に30%以上85%以下、より特には40%以上80%以下の伸び率を有してよい。
また、基材は、MD方向において、5N/5cm以上60N/5cm以下の10%伸長時応力、特に6N/5cm以上50N/5cm以下、より特には7N/5cm以上40N/5cm以下の10%伸長時応力を有してよい。また、基材は、CD方向において、0.5N/5cm以上30N/5cm以下の10%伸長時応力、特に0.8N/5cm以上20N/5cm以下、より特には1.0N/5cm以上10N/5cm以下の10%伸長時応力を有してよい。
基材の引張強さ、伸び率および10%伸長時応力は、長繊維不織布の目付の合計とメルトブローン不織布の目付の合計の比、圧着部における繊維の接着状態、基材の繊維を構成する合成樹脂の種類、および繊維の太さ等により影響を受ける。本実施形態において、基材の引張強さが低すぎると、積層不織布における機械的特性もまた低くなる傾向にあり、基材の引張強さが高すぎると、製品加工にてミシン目を入れた部分を使用時に切り取ることが困難となる場合がある。
また、本実施形態において、基材の伸び率が低すぎても、高すぎても、積層不織布の形態安定性が十分でなくなることがある。また、本実施形態において、基材の10%伸長時応力が低すぎると、積層不織布の形態安定性が十分でなくなることがある。あるいは、基材の10%伸長時応力が低すぎると、使用時に不織布に伸びが生じやすく、使用中に伸びが生じると汚れを拭き取った感覚を利用者が有しにくい(使用実感が低くなる)ことがある。基材の10%伸長時応力が高すぎると、積層不織布の繊維自由度が小さいことにより、対象物と接する際に積層不織布が対象物の形状に沿いにくくなり、その結果、対象物と積層不織布との接触面積が少なくなる場合がある。また、10%伸長時応力が高すぎると、加工時にしわが発生する場合があり、または風合いが不十分となる場合がある。
(積層不織布の構成)
本実施形態の積層不織布は、以上で説明した短繊維層および基材が繊維同士の交絡により一体化された不織布である。繊維は、好ましくは高圧流体流により交絡しているが、他の手段、例えばニードルパンチング処理により交絡されていてもよい。
本実施形態の不織布は、特定範囲の剛軟度を有するように基材等が選択されて構成される。具体的には、本実施形態の不織布の剛軟度は、5.0cN以上15.0cN以下であってよく、特に7.0cN以上14.0cN以下、より特には9.0cN以上13.5cN以下であってよい。本実施形態の不織布は、これらの範囲の剛軟度を有するようにSBとMBとを含む基材を選択することで、柔軟性に優れたものとなる。前述のとおり、不織布の剛軟度は基材の密度による影響を受けやすい。不織布の剛軟度が高すぎると、不織布のドレープ性が悪くなる場合がある。また、不織布の剛軟度が高すぎると、基材に含まれるメルトブローン不織布の密度が高いことによる影響を受けやすいため、セルロース系短繊維と基材を構成する繊維との交絡性、特にメルトブローン不織布を構成する繊維との交絡性が低くなりやすく、基材と交絡できなかった、もしくは、基材との絡み合いが弱かったセルロース系短繊維の脱落が生じやすくなる場合がある。不織布の剛軟度が低すぎると、不織布の剛性が低く、使用時にヨレや丸まりなどの不織布の形状変化が起きやすくなる場合があり、さらにその形状変化により、繊維の脱落が生じやすくなる場合がある。不織布の剛軟度は、後述の方法によって求める。
本実施形態の不織布の単位目付あたりの剛軟度は、0.10cN/(g/m2)以上0.33cN/(g/m2)以下であってよく、特に0.12cN/(g/m2)以上0.30cN/(g/m2)以下、より特には0.15cN/(g/m2)以上0.27cN/(g/m2)以下であってよい。不織布の単位目付あたりの剛軟度が高すぎると、不織布のドレープ性が悪くなる場合があり、低すぎると、不織布の剛性が低く、使用時にヨレや丸まりなどの不織布の形状変化が起きやすくなる場合がある。
本実施形態の積層不織布においては、繊維同士が交絡することにより、短繊維層の繊維の一部が基材に移動し、ならびに/あるいは基材の繊維の一部が短繊維層に移動することがある。その結果、短繊維層のセルロース系短繊維が基材を貫通して、基材の短繊維層から遠い側の表面に露出し、ならびに/あるいは基材の繊維が短繊維層を貫通して、短繊維層の表面に露出することがある。
セルロース系短繊維が基材の表面に露出することで、基材側の表面でもセルロース系短繊維の特性を利用することができ、例えば積層不織布をワイパーとして用いる場合には、基材の側でも優れた拭き取り性を得られることがある。同様に、基材の繊維がセルロース系短繊維層に露出することで、基材の繊維の特性を短繊維層側の表面でも基材の繊維の特性を利用することができる。例えば、基材のメルトブローン不織布の構成繊維が短繊維層の表面に露出している不織布は極細繊維が表面に存在するものとなるから、これをワイパーとして用いれば、極細繊維特有の優れた拭き取り性が発揮される。また、極細繊維が短繊維層の表面に露出することで、極細繊維特有の触感(特に、ぬめり感)を短繊維層表面で得ることができ、セルロース系短繊維特有の触感と相俟って独特の柔らかな触感が得られる。
尤も、本実施形態において、基材は長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が挟まれた構造を有し、短繊維層と直接に接するのは長繊維不織布である。そのため、メルトブローン不織布の微細繊維が短繊維層表面に露出する量は、メルトブローン不織布と長繊維不織布とからなる基材のメルトブローン不織布側に短繊維層を積層して、繊維同士を交絡させてなる不織布におけるそれよりも少なくなる。そのため、本実施形態の不織布は、セルロース系短繊維の特性が一方の表面にてより顕著に表れる不織布となる傾向にある。
また、本実施形態の不織布は、基材の上記構造により、短繊維の脱落がより抑制されたものとなる。メルトブローン不織布は短繊維層の短繊維との間で緻密な交絡をもたらし、メルトブローン不織布の極細繊維に交絡した短繊維は、メルトブローン不織布から脱落しにくくなる。しかしながら、メルトブローン不織布と短繊維層とを直接接触させた状態で交絡させて得られる不織布を拭き取りに用いると、メルトブローン不織布の機械的特性が低いために、拭き取り時に加わる力(対象物との間で生じる摩擦力)にメルトブローン不織布が耐えられず、短繊維が極細繊維に絡みついた状態のままでメルトブローン不織布の極細繊維が脱落しやすくなる。
一方、本実施形態の不織布では、短繊維層に長繊維不織布が接している。そのため、メルトブローン不織布に外力が加わっても、機械的特性の高い長繊維不織布がメルトブローン不織布を保護し、極細繊維の脱落を抑制もしくは低減していると考えられる。そして、その結果、長繊維不織布層を経由して極細繊維と緻密に交絡した短繊維の脱落も抑制されると考えられる。
また、本実施形態の不織布においては、基材が長繊維不織布を含み、かつ長繊維不織布が基材の両面に位置するように配置されているため、長繊維不織布による機械的強度および寸法安定性の向上がより効果的に得られる。また、長繊維不織布には短繊維が侵入/通過可能な空隙が多くあるため、短繊維と直接接することで基材内部へと短繊維が入り込むことを可能にし、繊維脱落の低減効果が高められていると考えられる。
本実施形態の不織布の目付は用途等に応じて適宜選択してよい。例えば、本実施形態の不織布をワイパーとして用いる場合、その目付は30g/m以上100g/m以下であってよく、特に35g/m以上80g/m以下であってよく、より特には40g/m以上60g/m以下であってよい。あるいは、本実施形態の不織布を衛生用品として用いる場合、その目付は20g/m以上70g/m以下であってよく、特に25g/m以上65g/m以下であってよく、より特には30g/m以上60g/m以下であってよい。
本実施形態の不織布の厚さ(1.96kPa荷重時)は、例えば、0.2mm以上1.2mm以下の厚さを有してよく、特に0.25mm以上1.0mm以下、より特には0.3mm以上0.8mm以下の厚さを有してよい。本実施形態の不織布の厚さ(294Pa荷重時)は、例えば、0.2mm以上1.3mm以下の厚さを有してよく、特に0.25mm以上1.1mm以下、より特には0.3mm以上0.9mm以下の厚さを有してよい。
本実施形態の不織布の厚さ変化率は、例えば、5%以上40%以下であってよく、特に8%以上35%以下、より特には10%以上30%以下であってよい。不織布の厚さ変化率が小さすぎると、不織布内に空隙が少なくなる傾向にあり、汚れなどを内部へ取り込むことができない場合があり、大きすぎると、得られた不織布を用いる際に、不織布自体がヨレてしまい、取り扱いにくい場合がある。不織布の厚さ変化率は後述する方法によって求める。
本実施形態の不織布の密度は、例えば、0.040g/cm以上、特に0.050g/cm以上、より特には0.060cm以上であってよい。また、不織布の密度は、例えば0.140cm以下、特に0.130cm以下、より特には0.120cm以下であってよい。不織布の密度は、目付と厚さ(294Pa荷重時)とから求められる。不織布の密度が低すぎると、不織布を用いる際に、不織布自体がヨレてしまい、取り扱いにくい場合があり、高すぎると、得られた不織布内に空隙が少なく、汚れ等を内部へ取り込むことができない場合がある。
本実施形態の不織布は、MD方向において、10N/5cm以上120N/5cm以下の引張強さ、特に15N/5cm以上100N/5cm以下、より特には20N/5cm以上80N/5cm以下の引張強さを有してよい。また、不織布は、CD方向において、5N/5cm以上60N/5cm以下の引張強さ、特に6N/5cm以上50N/5cm以下、より特には7N/5cm以上40N/5cm以下の引張強さを有してよい。MD方向の引張強さおよび/またはCD方向の引張強さが高すぎると、製品に加工する際、ミシン目を入れる等の加工が困難となる場合があり、低すぎると、不織布の形態安定性が十分でなくなることがある。
また、本実施形態の不織布は、MD方向において、10%以上80%以下の伸び率、特に15%以上75%以下、より特には20%以上70%以下の伸び率を有してよく、CD方向において、20%以上120%以下の伸び率、特に30%以上115%以下、より特には40%以上110%以下の伸び率を有してよい。MD方向の伸び率および/またはCD方向の伸び率が高すぎると、伸びが生じやすく不織布の形態安定性が十分でなくなることがあり、低すぎると、不織布に外力が加わったときに伸びずに直ちに破断してしまうためにやはり不織布の形態安定性が十分でなくなることがある。
また、本実施形態の不織布は、MD方向において、5N/5cm以上60N/5cm以下の10%伸長時応力、特に6N/5cm以上50N/5cm以下、より特には7N/5cm以上40N/5cm以下の10%伸長時応力を有してよい。また、不織布は、CD方向において、0.5N/5cm以上30N/5cm以下の10%伸長時応力、特に0.6N/5cm以上20N/5cm以下、より特には0.7N/5cm以上10N/5cm以下の10%伸長時応力を有してよい。MD方向の10%伸長時応力および/またはCD方向の10%伸長時応力が高すぎると、不織布の繊維自由度が小さいことにより、対象物と接する際に不織布が対象物の形状に沿いにくくなり、その結果、対象物と不織布との接触面積が少なくなる場合があり、低すぎると、不織布の形態安定性が十分でなくなる。
本実施形態の不織布のセルロース系短繊維層側の表面における静摩擦係数μsは0.80以上2.00以下であってよく、特に0.85以上1.90以下、より特には0.90以上1.80以下であってよい。また、本実施形態の不織布の基材側の表面における静摩擦係数μsは0.60以上1.80以下であってよく、特に0.65以上1.70以下、より特には0.70以上1.60以下であってよい。不織布の表面における静摩擦係数μsが高すぎると、不織布と接触する対象物を傷つけることがあり、低すぎると、不織布と接触する対象物との密着性が乏しくなる場合がある。
本実施形態の不織布のセルロース系短繊維層側の表面における動摩擦係数μkは0.40以上1.60以下であってよく、特に0.45以上1.50以下、より特には0.50以上1.40以下であってよい。また、本実施形態の不織布の基材側の表面における動摩擦係数μkは0.30以上1.50以下であってよく、特に0.35以上1.40以下、より特には0.40以上1.30以下であってよい。不織布の表面における動摩擦係数μkが高すぎると、不織布と接触する対象物を傷つけることがあり、低すぎると、不織布と接触する対象物上で不織布が上滑りすることがある。
本実施形態の不織布のセルロース系短繊維層側の表面における動摩擦係数μkの変動係数CVは、0.020以上0.090以下であってよく、特に0.025以上0.080以下、より特には0.030以上0.070以下であってよい。本実施形態の不織布の基材側の表面における動摩擦係数μkの変動係数CVは0.020以上0.090以下であってよく、特に0.025以上0.080以下、より特には0.030以上0.070以下であってよい。不織布の表面における動摩擦係数μkの変動係数CVが高すぎると、不織布の表面にて凹凸が多くなる傾向にあり、この凹凸が対象物を傷つけることがあり、低すぎると、不織布の表面にて凹凸が少なる傾向にあり、不織布内部に汚れが取り入れられない場合がある。
不織布のセルロース系短繊維層側および不織布の基材側それぞれの表面における静摩擦係数μs、動摩擦係数μk、および動摩擦係数μkの変動係数CVは、後述の方法によって求める。
本実施形態の不織布において、短繊維層と基材の目付の比は、例えば1:1(短繊維層:基材)以上9:1以下であってよく、特に1.5:1以上8:1以下、より特には2:1以上7:1以下であってよい。基材に対する短繊維層の目付の比が大きすぎると、繊維脱落が生じやすくなる傾向にあり、小さすぎるとセルロース系短繊維による特性および触感が得られないことがある。
(本実施形態の不織布の製造方法)
次に、本実施形態の不織布の製造方法を説明する。
本実施形態の不織布は、すなわちセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布は、
長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、かつ二つの表面がいずれも長繊維不織布の表面である基材の一方の表面に、セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維ウェブを配置すること、
セルロース系短繊維ウェブの側から高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させること
を含む製造方法によって製造される。
基材は、先に説明したとおり、SB/MB/MB/SB、SB/MB/MB/MB/SB、およびSB/SB/MB/MB/MB/MB/SB等の積層構造を有するものを用意する。これらの基材は、メルトブローン不織布が、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体を含むものである。基材は長繊維不織布とメルトブローン不織布とが圧着部によって一体化されたものであってよい。圧着部により一体化された基材は前述したとおり、市販のものであってよい。
あるいは、基材は長繊維不織布とメルトブローン不織布とが一体化されておらず、単に積層された状態のものであってよい。その場合、長繊維不織布とメルトブローン不織布とを所定の積層構造が得られるように順次積層して基材の前駆体を作成し、これを短繊維層との交絡処理に付することで、長繊維不織布とメルトブローン不織布とが一体化されて基材が作製されるとともに、短繊維層と基材とが一体化される。この場合も、メルトブローン不織布は、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体を含むものであってよい。
基材と短繊維層との一体化は、基材の一方の表面にセルロース系短繊維ウェブを配置して、セルロース系短繊維ウェブの側から高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させることにより実施する。高圧流体流、例えば、圧縮空気等の高圧気体、および高圧水等の高圧液体である。不織布の製造においては、高圧流体として高圧水を用いた水流交絡処理を用いることが多く、本実施形態においても、実施の容易性等の点から、水流交絡処理が好ましく用いられる。以下においては、高圧流体として高圧水(以下においては、単に「水流」とも呼ぶ)を用いた場合の交絡工程を説明する。
水流交絡処理は、例えば、孔径0.05mm以上、0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上、1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧0.5MPa以上、20MPa以下の水流を、短繊維ウェブの表面に1~9回噴射することにより実施してよい。水圧は、好ましくは、1MPa以上、10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上、7MPa以下であり、特に好ましくは、1MPa以上、6MPa以下である。1回目の水流噴射と2回目以降の水流噴射は、水圧を変えて実施してよい。回数を重ねるごとに水圧がより大きくなるように水圧を選択すると、短繊維層と基材を良好に交絡させることができる。
水流交絡処理は、短繊維ウェブの表面とノズルとの間の距離が、例えば5mm以上50mm以下、特に10mm以上40mm以下、より特には15mm以上30mm以下となるように実施してよい。短繊維ウェブとノズルとの間の距離が近すぎると、短繊維ウェブがノズルとコンベア間に詰まる可能性があり、遠すぎると、柱状水流が崩れ、十分なエネルギーで水流交絡できなくなる。
水流交絡処理は、支持体に繊維ウェブを載せて、柱状水流を噴射することにより実施してよい。支持体は、不織布表面が平坦で、かつ凹凸を有しないものとするならば、1つあたりの開孔面積が0.2mmを超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていない支持体を用いるとよい。例えば、支持体として、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体を用いるとよい。
水流交絡処理後の不織布は、必要に応じて乾燥処理に付する。乾燥処理は短繊維層および基材に含まれる繊維が溶融または軟化しない温度にて実施してよい。その場合、短繊維層の繊維と基材の繊維との間および/または短繊維層に含まれる繊維同士が接着されず、繊維の自由度が比較的高いため、得られる積層不織布をワイパー等として使用する場合には、より高い拭き取り性能を得やすい。あるいは、乾燥処理は短繊維層および基材に含まれる繊維の少なくとも一種類が溶融または軟化する温度にて実施し、溶融または軟化した繊維によって繊維同士を接着させることを含んでよい。その場合、短繊維層の繊維と基材の繊維との間および/または短繊維層に含まれる繊維同士が接着されるため、機械的特性がより向上した積層不織布を得ることができる。
(ワイパー)
本実施形態の不織布はセルロース系短繊維層と特定の構成の基材とを繊維同士の交絡により一体化させることで、セルロース系短繊維の脱落が生じにくいとともに、セルロース系短繊維による特性を短繊維層側で得やすいものである。したがって、本実施形態の不織布は、対物および対人用のワイパーとして用いてよい。セルロース系短繊維は、拭き取り性に優れ、また、セルロース系短繊維特有の柔軟な触感を有することによる。また、セルロース系短繊維は吸液性(特に吸水性)および保液性(特に保水性)に優れるので、本実施形態の不織布をワイパーとして用いる場合には、濡れた面を拭き取るのにも適している。あるいは、セルロース系短繊維の保液性を利用して、本実施形態の不織布は、液体を含浸させて用いるウェットワイパーとして用いてよい。液体を含浸させるとセルロース系短繊維は不織布により柔軟な触感を示す。
本実施形態の不織布は、短繊維層の繊維と基材の繊維とが交絡しているために、短繊維層の繊維の一部が基材を貫通して基材表面に露出するものとして得られる傾向にある。そのため、本実施形態の不織布は、基材の側でもセルロース系短繊維の特性を発揮することができ、例えばワイパーとして用いる場合には、基材の側も拭き取りに用いることができる。
また、本実施形態の積層不織布の基材側に他の基材を貼り合わせたものをワイパーとして使用してよい。ワイパーは手で把持して雑巾のように使用してよく、あるいは、棒状物の先にワイパー取り付け部が設けられた治具に取り付けて使用してよい。
本実施形態の積層不織布は、セルロース系短繊維層側と基材側とで異なる特性を示すことがあり、所望の拭き取り性能が一方の面においてのみ得られることもあるので、利用者が間違えないように製品において短繊維層側表面および/または基材側表面に目印等を付してよい。
ワイパーは対人用のものであってよく、あるいは対物用のものであってよい。
対人用のワイパーは、人の身体に付着した汚れ、化粧品または薬剤等を拭き取るために使用するものであってよい。対人用ワイパーは、例えば、水、または洗浄成分を含む水性溶液等を不織布100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下の含浸量で含浸させてよい。液体を含浸させた対人用のワイピングシートは、より具体的には、例えば、お手拭き、おしり拭き、経血拭き、化粧落とし用シート、洗顔シート、制汗シート、およびネイルリムーバーとして提供される。
対物用のワイパーは、床、台所、トイレ、浴槽、家具、車両、壁面、網戸および窓ガラス等の拭き掃除に使用するものであってよい。対物用ワイパーは、例えば、水、または洗浄成分を含む水溶液等を、不織布100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下の含浸量で含浸させてよい。
(その他)
本実施形態の不織布は、ワイパー以外にも、例えば、おむつなどの衛生用品の表面シートおよび吸収体として用いることができる。
本実施例で使用するセルロース系短繊維層および基材として以下のものを用意した。
[セルロース系短繊維層]
セルロース系短繊維として木材パルプ(針葉樹100%、繊維径約20~70μm、繊維長約2~5mm)を用い、これをエアレイド装置(ダンウェブ法)によりウェブ化したパルプシート(目付約43g/m、厚さ0.26mm(294Pa荷重時))をセルロース系短繊維層(セルロース系短繊維ウェブ)として使用した。
[基材1]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径16.6μm、平均繊度1.9dtex)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径3.1μm、平均繊度0.07dtex)とがそれぞれSB/SB/MB/MB/SBの順に積層されており、各不織布間が面積0.27mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合14%、目付9.8g/m、厚さ0.11mm(294Pa荷重時))を基材として準備した。
[基材2]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径16.0μm、平均繊度1.8dtex)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径2.4μm、平均繊度0.04dtex)とがそれぞれSB/SB/MB/MB/MB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.33mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合15%、目付10.7g/m、厚さ0.12mm(294Pa荷重時))を基材として準備した。
[基材3]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径16.6μm、平均繊度1.9dtex、目付2.5g/m)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径2.1μm、平均繊度0.03dtex、目付1.7g/m)とがそれぞれSB/SB/MB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.37mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合19%、目付10.9g/m、厚さ0.14mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材4]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径17.2μm、平均繊度2.1dtex)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径2.3μm、平均繊度0.04dtex)とがそれぞれSB/SB/MB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.26mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合15%、目付11.8g/m、厚さ0.15mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材5]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径17.4μm、平均繊度2.1dtex、目付3.0g/m)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径2.4μm、平均繊度0.04dtex、目付2.0g/m)とがそれぞれSB/SB/MB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.37mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合19%、目付13.4g/m、厚さ0.16mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材6]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径17.3μm、平均繊度2.1dtex)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径4.4μm、平均繊度0.14dtex)とがそれぞれSB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.29mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合15%、目付15.4g/m、厚さ0.16mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材7]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径22.8μm、平均繊度3.7dtex)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径1.7μm、平均繊度0.02dtex)とがそれぞれSB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.26mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合14%、目付9.9g/m、厚さ0.10mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材8]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径22.9μm、平均繊度3.8dtex)とポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径2.4μm、平均繊度0.04dtex)とがそれぞれSB/MB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.30mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合14%、目付10.0g/m、厚さ0.10mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材9]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径16.4μm、平均繊度1.9dtex)がそれぞれSB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.24mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合13%、目付12.1g/m、厚さ0.21mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[基材10]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径17.8μm、平均繊度2.2dtex)がそれぞれSB/SB/SBの順に積層されており、各不織布が面積0.30mmの圧着部で一体化された積層不織布(圧着部の表面積に占める割合14%、目付13.0g/m2、厚さ0.19mm(294Pa荷重時))を基材として使用した。
[長繊維不織布10]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなる長繊維不織布(SB)(平均繊維径11.9μm、平均繊度1.0dtex)不織布(目付10.0g/m、厚さ0.10mm(294Pa荷重時))を用意した。
[メルトブローン不織布11]
ポリプロピレン樹脂単一繊維からなるメルトブローン不織布(MB)(平均繊維径1.5μm、平均繊度0.02dtex)不織布(目付7.0g/m、厚さ0.12mm(294Pa荷重時))を用意した。
(実施例1)
基材1の上にセルロース系短繊維層を積層し、これを90メッシュの平織の支持体に載置して、5m/分の速度で搬送しつつ、セルロース系短繊維層の表面の側から1.0MPaの水圧の水流を1回、2.0MPaの水圧の水流を1回、3.0MPaの水圧の水流を2回、計4回噴射する水流交絡処理を行った。水流交絡処理で使用したノズルは、孔径0.13mmのオリフィスが1.0mm間隔で設けられたノズルであり、処理中、ノズルと短繊維ウェブとの間の間隔は20mmとした。なお、積層の順番はSB/SB/MB/MB/SB/セルロース系短繊維層の順とした。
80℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いて乾燥処理を行い、実施例1の積層不織布を得た。
(実施例2)
実施例1において、基材1にかえて、基材2を使用した以外は、実施例1と同様の手順で実施例2の積層不織布を得た。なお、積層の順番はSB/SB/MB/MB/MB/MB/SB/セルロース系短繊維層の順とした。
(実施例3)
実施例1において、基材1にかえて、基材3を使用した以外は、実施例1と同様の手順で実施例3の積層不織布を得た。なお、積層の順番はSB/SB/MB/MB/SB/セルロース系短繊維層の順とした。
(実施例4)
実施例1において、基材1にかえて、基材4を使用した以外は、実施例1と同様の手順で実施例4の積層不織布を得た。なお、積層の順番はSB/SB/MB/MB/SB/セルロース系短繊維層の順とした。
(実施例5)
実施例1において、基材1にかえて、基材5を使用した以外は、実施例1と同様の手順で実施例5の積層不織布を得た。なお、積層の順番はSB/SB/MB/MB/SB/セルロース系短繊維層の順とした。
(比較例1)
実施例1において、基材1にかえて、基材9を使用した以外は、実施例1と同様の手順で比較例1の積層不織布を得た。
(比較例2)
実施例1において、基材1にかえて、基材10を使用した以外は、実施例1と同様の手順で比較例2の積層不織布を得た。
(比較例3)
長繊維不織布9の上にメルトブローン不織布10を積層し、さらにその上にセルロース系短繊維層を積層し、これを90メッシュの平織の支持体に載置して、5m/分の速度で搬送しつつ、セルロース系短繊維層の表面の側から1.0MPaの水圧の水流を1回、2.0MPaの水圧の水流を1回、3.0MPaの水圧の水流を2回、計4回噴射する水流交絡処理を行った。水流交絡処理で使用したノズルは、孔径0.13mmのオリフィスが1.0mm間隔で設けられたノズルであり、処理中、ノズルと短繊維ウェブとの間の間隔は20mmとした。
80℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いて乾燥処理を行い、比較例3の積層不織布を得た。
(比較例4)
実施例1において、基材1にかえて、基材7を使用した以外は、実施例1と同様の手順で比較例4の積層不織布を得た。
(比較例5)
実施例1において、基材1にかえて、基材8を使用した以外は、実施例1と同様の手順で比較例5の積層不織布を得た。
(比較例6)
実施例1において、基材1にかえて、基材6を使用した以外は、実施例1と同様の手順で比較例6の積層不織布を得た。
各基材の物性、ならびに各実施例および比較例で得た積層不織布の物性を評価した。各物性の評価は以下の方法により実施した。
[厚さ、厚さ変化率、密度]
不織布の厚さは、厚み測定機(商品名 THICKNESS GAUGE モデル CR-60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、294Pa及び1.96kPaの荷重を加えた状態で測定した。
厚さ変化率は294Pa荷重時の厚さTaと1.96kPa荷重時の厚さTbとから、以下の式により算出した。
厚さ変化率(%)=(Ta-Tb)×100/Ta
密度は294Pa荷重時の厚さと目付とから算出した。
[引張強さ、伸び率、10%伸長時応力]
JIS L 1913:2010 6.3に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、前記JISに記載の方法で試料片に蒸留水を含浸させた状態で、試料片の幅50mm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、湿潤時(ウェット時)における切断時の荷重値(引張強さ)、伸び率、10%伸長時応力を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)を引張方向として実施した。評価結果はいずれも3点の試料について測定した値の平均で示している。
[静摩擦係数、動摩擦係数、動摩擦係数の変動係数]
静摩擦係数μs、動摩擦係数μkおよび動摩擦係数の変動係数CVは、静・動摩擦測定機(トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティラボ製)を用いて測定した。試料片として5cm×10cmの不織布を用意した。なお試料片はMD方向を長辺とした試料片を3つ、CD方向を長辺とした試料片を3つ、合計6つの試料片を用意した。
測定機の接触端子には触覚接触子(株式会社トリニティラボ製)を使用した。試料片100質量部に250質量部の蒸留水を含浸させた状態で、試料片を基材が接触端子と接するように接触端子に取り付け(接触面積5.0cm×6.5cm)、測定機(テーブル摺動型)の測定テーブルに対して試料片を荷重30gfで接触させ、速度10mm/sec、距離30mmで往復2回移動させ評価した。2往復目の数値を読み取り、往の数値と復の数値との平均値を、1つの試料片の動摩擦力(gf)とした。また、2往復目の往の動き出しの際の数値と、復の動き出しの際の数値との平均値を、1つの試料片の静摩擦力(gf)とした。6つの試験片について測定を行い、6回の測定値の平均値を、各実施例及び比較例の静摩擦力Fs(gf)、動摩擦力Fk(gf)とした。
静摩擦力Fs(gf)及び動摩擦力Fk(gf)と荷重(30gf)より短繊維層側表面の静摩擦係数μs及び動摩擦係数μkを算出した。また、測定の際に得られた動摩擦係数の標準偏差σと上述した動摩擦係数の平均値μkとから、下記の式に従って動摩擦係数の変動係数CVを求めた。
動摩擦係数の変動係数CV=σ/μk
試料片を接触端子に取り付ける際に、セルロース系短繊維層が接触端子と接するようにして上記と同様に測定し、基材側表面の静摩擦係数、動摩擦係数および動摩擦係数の変動係数を求めた。
[剛軟度]
不織布の剛軟度は、JIS L 1913:2010 6.7.5 ハンドルオメータ法に準じて測定した。具体的には、次の手順で測定した。
試料台の上にポリエチレン製シート(縦:23cm、横:23cm、厚み0.06mm)を置き、その上に縦:15cm、横:15cmの試料片(試料片100質量部に250質量部の蒸留水を含浸させたもの)を試料片の測定方向がスロット(隙間幅10mm)と直角になるように置く。
次に、試料台の表面から8mmまで下がるように調整されたペネトレータのブレードを下降させ、試料片を押し込む。測定は、いずれか一方の辺から6.7cm(試料片の幅の1/3)の位置で、縦方向及び横方向それぞれ表裏異なる個所について行い、押し込みに対する抵抗値を読み取る。抵抗値として、マイクロアンメータの示す最高値(cN)を読み取る。4辺の最高値の合計値を求めて3回の平均値を算出して、当該試料の剛軟度(cN)とする。
さらに、求めた剛軟度(cN)を各試料の目付で除した値を算出した。
[繊維脱落]
繊維脱落は静・動摩擦測定機(トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティラボ製)を用いて評価した。測定機の条件は、速度:30mm/sec、移動距離:100mm、3往復、荷重:100gに設定した。Wet状態(試験片100質量%に対し250質量%の蒸留水を含浸)の不織布(5cm×10cm、長辺がそれぞれMD方向およびCD方向となるものを各2枚、計4枚用意した)のセルロース系短繊維層が測定テーブル面に向くように両面テープで測定機の平面接触子に固定した。また測定テーブル上に黒色不織布(5cm×20cm、長辺がMD方向、レーヨン100%、坪量80g/m)を設けた。上記状態で黒色不織布と試験片のセルロース系短繊維層とを接触させ、黒色不織布(測定テーブル側)を移動させた。
移動終了後、セルロース系短繊維が付着した黒色不織布の表面に透明テープを貼り付け、その状態でコピー機(富士ゼロックス社製、DocuCentre-VII C4473(商品名))のスキャン機能を用いて、透明テープ面の画像の取り込みを行った。スキャン条件は、カラーモード:フルカラー、解像度:600dpi、画質:最高画質に設定した。
スキャン画像の画像解析は、画像処理ソフト「Image J」を用いて解析を行った。スキャン画像の2値化画像を作成し、1000×3000pixelsの範囲の画素数を算出し、MD方向、CD方向の各2点ずつ計4回測定した数値の平均値を短繊維層から脱落した繊維量とした。
物性の評価結果を表1~表3に示す。
Figure 2022134470000001
Figure 2022134470000002
Figure 2022134470000003
実施例の積層不織布はいずれも、剛軟度が5.0cN以上15.0cN以下の範囲内にあり、セルロース系短繊維層からの繊維脱落が少ないものであった。基材が長繊維不織布(SB)のみからなる比較例1および2は、基材全体の目付が同程度であってメルトブローン不織布積層体を間に備えた基材を用いた実施例4および5と比較して高い機械的強度を示したものの、いずれの比較例も繊維脱落は実施例よりも多かった。このことから、長繊維不織布が積層不織布の機械的特性を向上させる役割を担い、長繊維不織布の間に挟まれたメルトブローン不織布積層体が繊維脱落の抑制に寄与していることが確認された。
一方、比較例3によれば、メルトブローン不織布と長繊維不織布とからなる二層構造の基材を用いた場合にも、繊維の脱落が生じやすいことがわかる。これは短繊維層と機械的特性が十分でないメルトブローン不織布とが直接交絡させたために、短繊維層表面に摩擦力を作用させたときに、メルトブローン不織布が損傷されて、メルトブローン不織布の極細繊維と短繊維とがともに脱落したことによると考えられる。実施例のように、メルトブローン不織布積層体を長繊維不織布で挟み、長繊維不織布にセルロース系短繊維層を直接配置した基材によれば、短繊維層と直接交絡する層が長繊維不織布となる。すなわち、実施例においては、機械的特性のより高い長繊維不織布がメルトブローン不織布を保護し、短繊維が極細繊維に緊密に交絡した状態を保ち、短繊維の脱落を抑制もしくは低減していると考えられる。
長繊維不織布の間に位置するメルトブローン不織布が単層構造である基材を用いた比較例4~6はいずれも、剛軟度が15.0cNを超えており、実施例と比較して柔軟性に劣り、また、繊維脱落が多かった。この傾向は基材の目付がほぼ同じである、比較例4および5と実施例1との比較においても認められた。メルトブローン不織布が単層であって基材の密度が大きいために、基材中の空隙が少なくなり、セルロース系短繊維と基材、特にメルトブローン不織布との交絡が不十分となったことによると考えられる。
本実施形態には以下の態様のものが含まれる。
(態様1)
セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、
前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、
前記積層不織布の剛軟度が5.0cN以上15.0cN以下である、
積層不織布。
(態様2)
セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、
前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、
前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、
前記メルトブローン不織布として、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体が含まれる、
積層不織布。
(態様3)
前記長繊維不織布のうち、前記メルトブローン不織布の一方の面または両方の面に位置する長繊維不織布が、連続的に厚さ方向に積層された複数の長繊維不織布からなる長繊維不織布積層体である、態様1または2の積層不織布。
(態様4)
前記セルロース系短繊維層がパルプを含む、態様1~3のいずれかの積層不織布。
(態様5)
前記基材において、前記長繊維不織布と前記メルトブローン不織布とが複数の圧着部により一体化されている、態様1~4のいずれかの積層不織布。
(態様6)
前記基材の目付が7g/m~25g/mであり、前記セルロース系短繊維層の目付が10g/m以上90g/m以下であり、前記セルロース系短繊維層と前記基材の目付の比が、1:1~9:1(短繊維層:基材)である、態様1~5のいずれかの積層不織布。
(態様7)
前記セルロース系短繊維の繊維径が3μm以上75μm以下であり、前記長繊維不織布を構成する長繊維の繊維径が8μm以上32μm以下であり、前記メルトブローン不織布を構成する極細繊維の繊維径が0.8μm以上12μm以下であり、前記長繊維の繊維径と前記極細繊維の繊維径との差が2μm以上30μm以下である、態様1~6のいずれかの積層不織布。
(態様8)
セルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布の製造方法であって、
長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、かつ二つの表面がいずれも長繊維不織布の表面であり、かつ前記メルトブローン不織布として、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体が含まれる基材の一方の表面に、セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維ウェブを配置すること、
前記セルロース系短繊維ウェブの側から高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させること
を含む、
積層不織布の製造方法。
(態様9)
前記長繊維不織布のうち、前記メルトブローン不織布の一方の面または両方の面に位置する長繊維不織布が、連続的に厚さ方向に積層された複数の長繊維不織布からなる長繊維不織布積層体である、態様8の積層不織布の製造方法。
(態様10)
セルロース系短繊維層がパルプを含む、態様8または9の積層不織布の製造方法。
(態様11)
態様1~7のいずれかの積層不織布を含む、ワイパー。
本開示の積層不織布は、セルロース系短繊維層と基材との交絡度合いが高いために、セルロース系短繊維の脱落がより抑制されるので、セルロース系短繊維層の特性を活かすにあたり、摩擦力に耐えることが求められる用途、例えばワイパーに適している。

Claims (11)

  1. セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、
    前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、
    前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、
    前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、
    前記積層不織布の剛軟度が5.0cN以上15.0cN以下である、
    積層不織布。
  2. セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布であって、
    前記基材が長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、
    前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面は、長繊維不織布の表面であり、
    前記基材の前記セルロース系短繊維層と接する側の面から最も遠い表面が、長繊維不織布の表面であり、
    前記メルトブローン不織布として、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体が含まれる、
    積層不織布。
  3. 前記長繊維不織布のうち、前記メルトブローン不織布の一方の面または両方の面に位置する長繊維不織布が、連続的に厚さ方向に積層された複数の長繊維不織布からなる長繊維不織布積層体である、請求項1または2に記載の積層不織布。
  4. 前記セルロース系短繊維層がパルプを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層不織布。
  5. 前記基材において、前記長繊維不織布と前記メルトブローン不織布とが複数の圧着部により一体化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層不織布。
  6. 前記基材の目付が7g/m~25g/mであり、前記セルロース系短繊維層の目付が10g/m以上90g/m以下であり、前記セルロース系短繊維層と前記基材の目付の比が、1:1~9:1(短繊維層:基材)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層不織布。
  7. 前記セルロース系短繊維の繊維径が3μm以上75μm以下であり、前記長繊維不織布を構成する長繊維の繊維径が8μm以上32μm以下であり、前記メルトブローン不織布を構成する極細繊維の繊維径が0.8μm以上12μm以下であり、前記長繊維の繊維径と前記極細繊維の繊維径との差が2μm以上30μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層不織布。
  8. セルロース系短繊維層と基材とが繊維同士の交絡により一体化されてなる積層不織布の製造方法であって、
    長繊維不織布の間にメルトブローン不織布が位置する構成を有し、かつ二つの表面がいずれも長繊維不織布の表面であり、かつ前記メルトブローン不織布として、厚さ方向に複数のメルトブローン不織布が連続的に積層されたメルトブローン不織布積層体が含まれる基材の一方の表面に、セルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維ウェブを配置すること、
    前記セルロース系短繊維ウェブの側から高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させること
    を含む、
    積層不織布の製造方法。
  9. 前記長繊維不織布のうち、前記メルトブローン不織布の一方の面または両方の面に位置する長繊維不織布が、連続的に厚さ方向に積層された複数の長繊維不織布からなる長繊維不織布積層体である、請求項8に記載の積層不織布の製造方法。
  10. セルロース系短繊維層がパルプを含む、請求項8または9に記載の積層不織布の製造方法。
  11. 請求項1~7のいずれか1項に記載の積層不織布を含む、ワイパー。
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