JP2022134428A - 溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法、透明な単結晶及び製造装置。 - Google Patents

溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法、透明な単結晶及び製造装置。 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のIR-FZ法では困難であったクラックを低減した状態で透明な単結晶を育成することができる、溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法、透明な単結晶及び製造装置を提供する。【解決手段】赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法であって、赤外線照射装置3による集中加熱により原料棒1と種結晶2との間に溶融帯4を形成して、前記種結晶上に前記透明な単結晶を成長させる成長工程を含み、前記赤外線照射装置3は、前記溶融帯4に光源5から赤外線を照射する装置であり、前記光源と前記溶融帯の集光点8bと結ぶ前記赤外線の照射方向が、鉛直方向と直交する水平面を通る直線7に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向であることを特徴とする、透明な単結晶の製造方法を提供するものである。【選択図】図1

Description

本発明は、溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法、透明な単結晶及び製造装置に関する。
シリコンやサファイアといった市場規模の大きな単結晶材料の多くは、原料のすべてを一旦溶融し、その一部から結晶化させるチョクラルスキー法(Cz法)やブリッジマン-ストックバーガー法(BS法)などで量産されている。これらの手法の特徴は、大量の原料融液を保持するための坩堝が必須であるものの坩堝を大型化することで大口径の単結晶を量産できることにある。
原料のすべてを一旦溶融し、その一部から結晶化させる正規凝固過程であることに起因して偏析制御が困難である。そのため、異種元素を均一に添加した結晶や分解溶融する結晶を育成することが困難となったり、高コストとなったりすることが多い。具体的には偏析係数が1に近い0.8のホウ素を添加したp型シリコン結晶の育成は低コストに育成できるが、偏析係数がせいぜい0.3~0.4程度のリンを添加したn型シリコンの育成では、融液すべてを結晶化させると育成結晶中のリン組成が初期部と終端部で大きく異なる。そのため、リン組成が許容範囲なとなるよう融液を残した状態で結晶育成を終了させる必要があるため、p型シリコンに比べて高コストである。ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムでは、リチウムとニオブもしくはタンタルとの組成比1:1の定比組成の結晶の方が表面弾性波素子としての優れた特性を有することが知られているが、定比組成の融液から結晶をCZ法などで育成すると育成結晶中の組成比が変化してしまう。そのため、ニオブもしくはタンタルが過剰の一致溶融組成の結晶が量産されている。
また、坩堝が必須であることに起因して、坩堝コストや融液とツルボ材との反応が問題となることがある。シリコンの場合、シリコン融液と石英坩堝が反応するため、坩堝は使い捨てである。ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの酸化物結晶の育成には、白金やイリジウムといった貴金属を坩堝として用いる必要がある。地金そのものが高額であるだけでなく、使用に伴って変形したりするため、定期的に改鋳するコストが発生する。
つまり、現在量産されている結晶材料は、融液を保持する適切な坩堝材があり、偏析も問題とならないものに限定されている。融液の反応性が高く、適切な坩堝が見つかっていない物質の単結晶は産業利用することが難しい。
本発明に関わる赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法(IR-FZ法)は、浮遊帯域溶融法の一つで坩堝が不要の育成方法である(特許文献1参照)。そのため、融液の反応性が高くても結晶育成が可能である。原料棒と種結晶の間に形成する溶融帯の組成を必要に応じて原料棒とは異なる組成とすることで均一組成の長尺結晶を原理的に育成可能である。しかし、大口径の結晶育成が困難であったためにこれまで産業利用はほとんどなされておらず、物性研究用に必要な化合物単結晶がこの方法で育成されているに過ぎない。
このIR-FZ法でも育成結晶を改善する試みがなされている。例えば、特許文献2に開示されている回転楕円面鏡をその長径方向に移動させる機能を用いて原料径に合わせて回転楕円面鏡の集光位置を移動させることで育成結晶の大口径化がなされている。また、特許文献3のようにメインの回転楕円面鏡の配置を上方に傾斜させ、サブの回転楕円面鏡の配置を下方に傾斜させ、溶融帯を斜め上方及び斜め下方から集中加熱させる機能を用いて溶融帯と育成結晶の間の凸状の固液界面を平坦に近づけるととともに溶融帯を安定化し、固液界面が凸状を呈する物質の結晶については育成結晶径を拡大することができている。しかしながらこれら従来のIR-FZ法は光学結晶のような透明な単結晶を育成することは考慮されていない。
特開2007-99602 特開2013-224237 国際公開WO2009/081811
光学結晶のような育成結晶が透明となる物質の単結晶を従来のIR-FZ法で育成すると、融液帯と育成結晶との固液界面が凹状になることにより育成結晶に多数のクラックが発生し、そのクラックを低減することが困難であった。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、従来のIR-FZ法では困難であったクラックを低減した状態で透明な単結晶を育成することができる、溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法、透明な単結晶及び製造装置を提供するものである。
本発明によれば、赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法であって、赤外線照射装置による集中加熱により原料棒と種結晶との間に溶融帯を形成して、前記種結晶上に前記透明な単結晶を成長させる成長工程を含み、前記赤外線照射装置は、前記溶融帯に光源から赤外線を照射する装置であり、前記光源と前記溶融帯の集光点とを結ぶ前記赤外線の照射方向が、鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向であることを特徴とする、透明な単結晶の製造方法が提供される。
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、前記光源と前記溶融帯の集光点とを結ぶ前記赤外線の照射方向を鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向とすることにより、溶融帯と育成結晶の固液界面が凹状になることを抑制できるため、育成結晶が透明となる物質をIR-FZ法で育成する場合であっても大口径かつクラックが少ない透明な単結晶を製造できることを見出し本発明の完成に至った。
本発明の別の観点によれば、赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法による透明な単結晶を製造する製造装置であって、赤外線による集中加熱により原料棒と種結晶との間に溶融帯を形成して、前記種結晶上に前記透明な単結晶を成長させる赤外線照射装置を備え、前記赤外線照射装置は光源を備え、前記光源と前記溶融帯の集光点とを結ぶ前記赤外線の照射方向が、鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向であることを特徴とする、製造装置が提供される。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可
能である。
好ましくは、透明な単結晶は光学結晶であってよい。
好ましくは、透明な単結晶の成長工程において、前記種結晶上に成長する前記透明な単結晶と前記溶融帯との界面の界面形状凹度が、前記照射方向を前記水平面方向もしくは前記水平面に対し鉛直方向上方から下方に向けた場合よりも小さいことを特徴とする。
好ましくは、成長工程において、前記種結晶上に成長する前記透明な単結晶と前記溶融帯との界面形状がほぼ平面であることを特徴とする。
好ましくは、赤外線照射装置は、前記照射方向を変更可能であることを特徴とする。
好ましくは、前記照射方向は、前記水平面となす角度が10度以上であることを特徴とする。
好ましくは、前記透明な単結晶はPr:LuAl12であることを特徴とする。
本発明の一実施形態に係るIR-FZ法による製造装置の模式図を示す。 従来のIR-FZ法による製造装置の模式図を示す。 従来のIR-FZ法による結晶育成の様子を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るIR-FZ法による結晶育成の様子を示す模式図である。 従来のIR-FZ法による育成結晶の断面図を示す。 本発明の一実施形態に係るIR-FZ法による育成結晶の断面図を示す。
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
本発明は、溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法及ぶ製造装置に関する。IR-FZ法は、FZ法の一種であり、原料棒と種結晶との間に、前記原料棒とは異なる組成の溶媒を設置し、溶媒を加熱溶融し、かつ、原料棒の一部を溶媒に溶解して溶融帯を形成し、その溶融帯を表面張力によって支えながら原料棒と種結晶に対して相対的に移動させ、目的とする透明な単結晶を育成結晶として種結晶上に成長させる透明な単結晶の製造方法である。以下、本発明に係る溶媒移動浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るIR-FZ法による結晶育成プロセスを実施する透明な単結晶製造装置の模式図である。本発明の一実施形態に係るIR-FZ法による透明な単結晶製造装置では、原料棒1が、図示しない機構によりその上部を支持され、設置されている。また、原料棒1の回転軸6(鉛直方向)の延長線上に、単結晶を成長させる土台となる種結晶2が設置されている。結晶育成プロセス開始前に、原料棒の端部の種結晶側には、溶媒を接着する。原料棒1及び種結晶2を設置した後、加熱手段である赤外線照射装置3によって溶媒を加熱することにより、溶媒が溶解し、さらに溶媒と接触している原料棒の一部が溶解し、溶融帯4が形成される。形成された溶融帯4から種結晶2上に育成結晶2a(単結晶)が析出する。加熱中は、結晶の成長を安定させるために、原料棒1と種結晶2とを相対的に逆方向に回転させて溶融帯4を均一に加熱することができる。
一例として、原料棒1の回転速度を2~30rpm、種結晶2の回転速度を20~40rpmとすることができる。
赤外線照射装置3は、光源5と集光器9を備えていてよい。光源5としては、ハロゲンランプ等を用いることができる。集光器9としては、回転楕円面鏡(以下、単にミラーとも称する)等を用いることができる。このような加熱手段は、光源からの光を、集光器9により溶媒の集光点に赤外線を集光して溶媒を溶解することができる。回転楕円面鏡に用いられる楕円面鏡の2つの焦点の内一方の焦点8aがハロゲンランプの発光中心と一致するように配置し、かつ、他方の焦点8bが溶融帯4の集光点、すなわち溶融帯4の回転軸と一致するように配置するのが好ましい。なお、ハロゲンランプと集光器の代わりに赤外線レーザーを用いても構わない。
また、本発明の一実施形態に係る製造装置では、図示しない機構により、赤外線照射装置3を鉛直方向と直交する水平面に対し、鉛直方向下方へ傾斜させることができる。傾斜角度は変更可能である。図1では、ハロゲンランプのフィラメントと、ミラーの焦点(溶融帯4における赤外線の集光点)とを結ぶ直線を、鉛直方向と直交する水平面を通る直線7に対し、鉛直方向下方に角度α°傾斜させている。すなわち光源と集光器の集光点とを結ぶ赤外線の照射方向は水平面に対し角度α°傾斜している。角度α°は、例えば、2°、4°、6°、8°、10°、12°、14°、16°、18°、20°、22°、24°、26°、28°、30°とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内とすることができる。ハロゲンランプと集光器の代わりに赤外線レーザーを用いる場合も同様に傾斜させることができる。
図2は従来のIR-FZ法による結晶育成プロセスの模式図である。図1と共通する部分は同じ符号が付与してある。図2では赤外線照射装置3の赤外線の照射方向は水平面に沿った方向である。すなわち、傾斜はしていないので角度α°は0°である。
なお、透明な単結晶とは、可視,紫外域、または赤外域の光が透過する単結晶であり、光学結晶が含まれる。光学結晶とは、オプトエレクトロニクス結晶とも称される強い光やコヒーレントな光に対するさまざまな材料物性を有する結晶で、紫外から赤外までの広い透過波長域を有しているものをいう。例えば、医療機器の画像診断装置や放射線測定器に用いられているシンチレータ結晶や、主にレーザー光の波長を1/2,1/3,1/4,などの短い波長に変換するために使用される非線形結晶や、固体レーザーの中でレーザー発振を発生させる用途で使用されるレーザー結晶や、光アイソレータやファラデーローテータに使われる磁気光学結晶や、複屈折結晶等が知られている。
シンチレータ結晶は、例えば、LuAl12(略称:LuAG)、Gd(Al,Ga)12(略称:GAGG)、NaI、Ce:LaCl、BiGe12(略称:BGO)、CsI等が知られている。非線形結晶は、例えば、KHPO(略称:KDP)、KDPO(略称:KD*P)、LiNbO3、LiTaO3、LiB(略称:LBO)、β-BaB(略称:BBO)、BiB(略称:BIBO)、MgO:LiNbO3、CsLiB10(略称:CLBO)、KTiOPO(略称:KTP)、Gray Track Resistance KTiOPO(略称:GTR-KTP)、RbTiOPO(略称:RTP)、KTiOAsO(略称:KTA)、LiNbO3、LiTaO等が知られている。レーザー結晶は、例えば、Nd:YAl12(略称:Nd:YAG)、Nd:Ce:YAl12(略称:Nd:Ce:YAG)、Nd:LiYF(略称:Nd:YLF)、Nd:YVO、Nd:KGd(WO(略称:Nd:KGW)、Nd:GdVO、Yb:KGd(WO(略称:Yb:KGW)、Ti:Al(略称:Ti:サファイア)、Cr:LiStAlF(略称:Cr:LiSAF)、Cr:YAl12(略称:Cr:YAG)、Ho:Cr:Tm:YAl12(略称:Ho:Cr:Tm:YAG)、Er:Cr:Y2.9Sc1.4Ga3.612(略称:Er:Cr:YSGG)、Er:YAl12(略称:Er:YAG)等が知られている。磁気光学結晶は、例えば、TbGa12(略称:TGG)、TbScAl12(略称:TSAG)等が知られている。複屈折結晶は、例えば、α-BaB(略称:α-BBO)、YVO等が知られている
なお、透明な単結晶および光が透過するとは、透過率100%以下の場合も含まれる。上記した単結晶または光学結晶がその機能を満たす透過率であればよい。さらに、溶融帯4の中心部まで赤外線が透過し、中心部の温度が原料棒が溶融する温度まで上昇できる透過率であればよい。
本発明の一実施形態において、大口径かつクラックが少ない透明な単結晶を製造できる原理を説明する。
溶融帯4の中心部において原料棒1と育成結晶2aとが互いに接触しない程度に離れた状態で溶融帯4を形成することが結晶育成には必要である。そのために必要な熱は、光源5から発せられた赤外線(輻射光)が直接、及び、回転楕円面鏡などの集光器9経由で溶融帯4に供給される。すなわち、溶融帯4や原料棒1,育成結晶2aなどが輻射により加熱される。赤外線の一部は溶融帯4の表面で反射・散乱されたりするが、表面で吸収された熱は伝導により中心部8b近傍に向け伝達される。溶融帯4表面においては伝導だけでなく、対流も作用して熱が伝達される。更に育成結晶2aが透明であれば、溶融帯4の表面で吸収されるだけでなく、集光される輻射光の一部が中心部に到達するので溶融帯4の中心部が表面部に比べてより高温になる。光源として、ハロゲンランプと集光器の代わりに赤外線レーザーを用いる場合も同様である。
<従来のIR-FZ法の場合>
図3は図2に示す「従来のIR-FZ法」で透明な単結晶を育成中の原料棒1、種結晶2及び溶融帯4を鉛直方向に沿った断面とした場合の模式図である。鉛直方向上方より、原料棒1、溶液が浸み込んだ原料棒1a(その鉛直方向の長さをλとする)、溶融帯4、育成結晶2a、種結晶2である。溶融帯4の表面における育成結晶2aとの界面位置が4aであり、溶融帯4の中心部における育成結晶2aとの界面位置が4bである。溶融帯4の表面における鉛直方向の長さ(1aの下端と4bとの距離)をL、中心部における鉛直方向の長さ(1aの下端と4cとの距離)をL’、界面位置4aにおける溶融帯4の半径をrとし、界面形状凹度を、界面形状凹度=(L’-L)/rと定義する。
図3に示すように、「従来のIR-FZ法」で透明な単結晶を育成すると、溶融帯4の表面における鉛直方向の長さLよりも、溶融帯4の中心部における鉛直方向の長さL’の方がかなり長くなる。すなわち、育成結晶2aの表面形状が凹面状になってしまうので界面形状凹度は大きくなる。これは、透明な原料には赤外線がよく透過するため、回転楕円面鏡9の他方の焦点8bの部分(溶融帯の中心部)がより高温になるためである。また、固体よりも溶液の方がより赤外線を吸収しやすいことも原因のひとつである。すなわち、溶融帯4の中心部が表面部に比べてより高温になるため、原料棒の降下に伴う結晶化は溶融帯4の界面位置4aの水平断面における周囲部から始まり、徐々に中心部に向けて進行する。従って育成結晶2aは中心部に応力が集中してクラック等が発生しやすい。これは透明な単結晶を育成する場合、特許文献3のように上方及び下方の両方から赤外線を照射した場合でも同様である。
図5に「従来のIR-FZ法」で育成したシンチレータ結晶(Pr:LuAG)を水平方向に薄く切り出したサンプル25の写真を示す。斜めの黒線はサンプル25の置き場所の模様であり、結晶が透明であることを分かりやすくするためのものである。上述したように従来のIR-FZ法では、サンプル25の周囲部から中心部にむけて結晶化が進行するため、中心部に応力が集中し、放射状クラック27やコア状クラック28が発生している。また、中心部が白濁している。
ちなみに、従来のIR-FZ法による「透明でない単結晶」の育成においては(特許技術文献2、3に記載の方法等)、赤外線が溶融部内部まで透過しないため、表面から溶融が始まり、結晶化は中心部から進行する。すなわち、図3とは逆に、育成結晶の表面形状は凸面形状となり、図5に示すようなクラックを生じることは少ない。
<本発明の一実施形態によるIR-FZ法の場合>
図4は図1に示す「本発明の一実施形態によるIR-FZ法」で透明な単結晶を育成中の原料棒1、種結晶2及び溶融帯4を鉛直方向に沿った断面とした場合の模式図である。鉛直方向上方より、原料棒1、溶液が浸み込んだ原料棒1a、溶融帯4、育成結晶2a、種結晶2である。溶融帯4の表面における育成結晶2aとの界面位置が4aであり、溶融帯4の中心部における育成結晶2aとの界面位置が4bである。図4においては4aと4bの鉛直方向の位置はほぼ一致している。溶融帯4の表面における鉛直方向の長さ(1aの下端と4bとの距離)をL、中心部における鉛直方向の長さ(1aの下端と4cとの距離)をL’とする。図4においてはLとL’の長さの差が少ない。すなわち、界面形状凹度は、従来のIR-FZ法を用いた場合より小さな値となる。
図1に示すように「本発明の一実施形態であるIR-FZ法」では、赤外線照射装置の照射方向は鉛直方向下方から上方に向けてである。すなわち、最も高温となる他方の焦点8bの鉛直方向の位置が、図3の場合と比べて上方になる。しかも溶融帯4の表面の鉛直方向下方の部分も図3に比べて赤外線がより強く照射されるので溶融し易い。これらの作用が相まって溶融帯4と育成結晶2aとの界面の界面形状凹度は小さな値となる。すなわち、従来のIR-FZ法のように、周辺部から結晶化が進行しないため、クラック等の発生や白濁化が抑制される。なお、界面形状凹度がほぼ0、すなわち界面がほぼ平面になってもよい。界面がほぼ平面になるとは、多少の凹凸が存在していてもよく、LとL’の差がほとんどないことを意味する。
図6は、「本発明の一実施形態のIR-FZ法」で育成したシンチレータ結晶(Pr:LuAG)を水平方向に薄く切り出したサンプル26の写真を示す。斜めの黒線はサンプル26の置き場所の模様であり、結晶が透明であることを分かりやすくするためのものである。上述したように本発明の一実施形態であるIR-FZ法では、放射状クラック27は見られるもののその数は少なく、コア状クラック28は発生していない。また、白濁も見られない。
本発明の一実施形態によると、赤外線照射装置3による集中加熱により原料棒1と種結晶2との間に溶融帯4を形成し、その上に透明な単結晶である育成結晶2aを成長させる。育成結晶2aの成長過程において、溶融帯4に赤外線を照射する赤外線照射装置3の赤外線照射方向を、鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向とすることで、育成結晶2aと溶融帯4の固液界面における界面形状凹度は、図3に示す従来のIR-FZ法のように赤外線を前記水平面方向もしくは前記水平面に対し鉛直方向上方から下方に向けて照射した場合よりも小さな値となるので、大口径かつクラックが少ない透明な単結晶(育成結晶2a)を製造することができるという格別な効果を本発明は有する。言い換えると、図4に示す本発明の一実施形態では、育成結晶2aと溶融帯4の固液界面が凹面状になることを抑制できる。
なお、赤外線照射装置3に加え、鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方へ傾斜して赤外線を照射する補助的な赤外線照射源(光源及びミラー等)をさらに備えていてもよい。補助的な赤外線照射源をさらに備えていても固液界面形状が凹面状になることを抑制できれば本発明の目的を達成することができる。
図6に示す「本発明の一実施形態のIR-FZ法」で育成したシンチレータ結晶(Pr:LuAG)は、以下の方法で育成した。
<原料棒の調製>
Pr11(純度99.99%)及び、Lu(純度99.99%)、α‐Al(純度99.99%)を出発原料に用いた。組成が(Pr0.01Lu0.99Al12となるようにこれらの出発原料を秤量し、エタノールを用いて湿式混合した。乾燥後,1,200℃で12時間の仮焼を空気中で行った。仮焼後、乾式混合を行って、1,450℃で12時間の焼成を空気中で行った。焼成後、粉砕することで(Pr0.01Lu0.99Al12粉末を得た。 得られた粉末をラバープレス法により円柱状に成形し、1,500℃で5時間の焼結を空気中で行って原料棒とした。典型的な原料棒のサイズは直径が9~11mm、長さが50~70mmであった。
<種結晶の調整>
種結晶として、原料棒として作製した焼結棒の一部を用いた。
<酸化物単結晶の製造>
上記で得られた原料棒を用いて、(Pr0.01Lu0.99Al12結晶の製造を行った。結晶製造には、改造した四楕円面鏡型赤外線集中加熱炉(クリスタルシステム製FZ-T-10000-H-TY-1)を用いた。加熱光源として定格出力が2.5kWのハロゲンランプ4つを装着した。育成雰囲気は、アルゴン雰囲気とし、流量0.2L/minでアルゴンガスを流した。原料供給速度および、結晶育成速度は、それぞれ、7.5mm/h、5.0mm/hとした。原料と結晶の回転速度は、それぞれ、3rpm、40rpmmとし、互いに向かい合う方向に回転させた。ミラーの傾斜角度αは、0°と-10°の2通りの条件で結晶育成を行って、育成中の溶融帯4と育成結晶2との界面形状の変化や育成結晶の変化を調べた。
育成中の溶融帯の温度は、直接計測できないことに加えて、バラツキがあると容易に予想されるが、融点の2043℃以上には保持した。
なお、育成途中で赤外線の照射を止め急冷した物を縦に裁断し、界面形状凹度を測定したところ、0.375であった。
図5に示す「従来のIR-FZ法」で育成したシンチレータ結晶(Pr:LuAG)の製造方法と上述した本発明の一実施形態のIR-FZ法との違いは、ミラーの傾斜角度だけである。本発明の一実施形態がミラーの傾斜角度を鉛直方向下方から上方に向けて10°傾斜して照射したのに対し、従来のIR-FZ法は傾斜角度0°で照射した。同様に育成途中で赤外線の照射を止め急冷した物をに裁断し、界面形状凹度を測定したところ、1.8であった。本発明の一実施形態のIR-FZ法の方があきらかに界面形状凹度が小さく、界面形状が凹面状になることを抑制できていることがわかる。
1…原料棒、1a…溶液が浸み込んだ溶融帯、2…種結晶、2a…育成結晶、3…赤外線照射装置、4…溶融帯、4a…溶融帯4の表面における育成結晶2aとの界面位置、4b…溶融帯4の中心部における育成結晶2aとの界面位置、5…光源、6…回転軸、7…水平軸、8a…楕円面鏡の焦点、8b…楕円面鏡の焦点、9…集光器、25…従来法で育成したサンプル、26…本発明の一実施形態で育成したサンプル、27…放射状クラック、28…コア状クラック

Claims (14)

  1. 赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法による透明な単結晶の製造方法であって、
    赤外線照射装置による集中加熱により原料棒と種結晶との間に溶融帯を形成して、前記種結晶上に前記透明な単結晶を成長させる成長工程を含み、
    前記赤外線照射装置は、前記溶融帯に光源から赤外線を照射する装置であり、前記光源と前記溶融帯の集光点とを結ぶ前記赤外線の照射方向が、鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向であることを特徴とする、
    透明な単結晶の製造方法。
  2. 請求項1に記載の透明な単結晶の製造方法であって、
    前記透明な単結晶とは光学結晶であることを特徴とする、
    透明な単結晶の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の透明な単結晶の製造方法であって、
    前記成長工程において、前記種結晶上に成長する前記透明な単結晶と前記溶融帯との界面の界面形状凹度が、前記照射方向を前記水平面方向もしくは前記水平面に対し鉛直方向上方から下方に向けた場合よりも小さいことを特徴とする、
    透明な単結晶の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の透明な単結晶の製造方法であって、
    前記成長工程において、前記種結晶上に成長する前記透明な単結晶と前記溶融帯との界面形状がほぼ平面であることを特徴とする
    透明な単結晶の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の透明な単結晶の製造方法であって、
    前記赤外線照射装置は、前記照射方向を変更可能であることを特徴とする、
    透明な単結晶の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の透明な単結晶の製造方法であって、
    前記照射方向は、前記水平面となす角度が10度以上であることを特徴とする、
    透明な単結晶の製造方法。
  7. 請求項1乃至6に記載の製造方法により製造された透明な単結晶。
  8. 請求項7に記載の透明な単結晶であって、
    前記透明な単結晶はPr:LuAl12であることを特徴とする
    透明な単結晶。
  9. 赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法による透明な単結晶を製造する製造装置であって、
    赤外線による集中加熱により原料棒と種結晶との間に溶融帯を形成して、前記種結晶上に前記透明な単結晶を成長させる赤外線照射装置を備え、
    前記赤外線照射装置は光源を備え、前記光源と前記集溶融帯の集光点とを結ぶ前記赤外線の照射方向が、鉛直方向と直交する水平面に対し鉛直方向下方から上方に向けての方向であることを特徴とする、
    製造装置。
  10. 請求項9に記載の透明な単結晶の製造装置であって、
    前記透明な単結晶とは光学結晶であることを特徴とする、
    製造装置。
  11. 請求項9または10に記載の製造装置であって、
    前記種結晶上に成長する前記光学結晶と前記溶融帯との界面の界面形状凹度が、前記照射方向を前記水平面方向もしくは前記水平面に対し鉛直方向上方から下方に向けた場合よりも小さいことを特徴とする、
    製造装置。
  12. 請求項9乃至11のいずれか一項に記載の製造装置であって、
    前記種結晶上に成長する前記透明な単結晶と前記溶融帯との界面形状がほぼ平面であることを特徴とする、
    製造装置。
  13. 請求項9乃至12に記載の製造装置であって、
    前記赤外線照射装置は、前記照射方向を変更可能であることを特徴とする、
    製造装置。
  14. 請求項9乃至13のいずれか一項に記載の製造装置であって、
    前記照射方向は、前記水平面となす角度が10度以上であることを特徴とする、
    製造装置。
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