JP2022132058A - 頭髪頭皮のケア方法及び頭髪頭皮のケア装置 - Google Patents

頭髪頭皮のケア方法及び頭髪頭皮のケア装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 頭髪又は頭皮へのダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪頭皮を修復することができ、薬剤を用いる場合には薬剤による効果を高めることができる、頭髪頭皮のケア方法を提供すること。【解決手段】 人体の頭髪又は頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程にて洗浄した頭部対象部位を乾燥する乾燥工程と、頭部対象部位に、大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を付与する微細水粒子付与工程と、を含む、頭髪頭皮のケア方法とする。【選択図】 図4A

Description

本発明は、頭髪又は頭皮をケアするための、頭髪頭皮のケア方法に関する。
頭髪にパーマ、ブリーチ、トリートメント、カラー等の施術を行うことにより頭髪を所望の状態にケアするための頭髪のケア方法を行う場合、各施術に用いられる薬剤が頭髪に塗布される。このとき薬剤が十分に頭髪に浸透せず、また薬剤の反応が十分に進行しない場合があり、そのような場合には、薬剤による効果が低下する虞がある。
特許文献1は、薬剤塗布の際、蒸気を頭髪に与えて頭髪温度を高め且つ頭髪周囲を高湿状態にするように構成されたヘアカラー方法を開示する。頭髪温度を高めることにより頭髪に塗布した薬剤の反応が促進され、頭髪を高湿環境下に置くことにより頭髪を湿潤させて頭髪への薬剤の浸透が促進される。さらに、特許文献1に係るヘアカラー装置は、蒸気発生装置により発生された蒸気を混合室で外気と混合させることにより温度設定し、温度設定時の蒸気冷却により生じる凝縮水を混合室空間内で分離し、設定温度の蒸気のみを送出することができるように構成される。これによれば、蒸気冷却により生じる凝縮水が除去されるので、凝縮水により頭髪に塗布した薬剤が希釈されることが防止される。
特開2000-201731号公報
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載のように頭髪に蒸気を付与すると、頭髪が高温に晒されてダメージを受ける。また、特許文献1によれば凝縮水は除去されるものの、頭髪に付着した蒸気は頭髪表面で結露する。こうして生じた結露水は頭髪表面で成長して大きな水滴となり、頭髪内に浸透していかずに頭髪表面に留まる。頭髪表面に水滴が留まった場合、頭髪内に水分が十分に供給されないため、頭髪のダメージを水分補給により補うこともできない。さらに、薬剤を頭髪に塗布した場合には頭髪表面に留まった水滴が薬剤に混ざって薬剤が希釈される。このため薬剤による効果が低下する虞がある。
本発明は、頭髪へのダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復することができ、また、薬剤を用いる場合には薬剤の効果をより高めることができる、頭髪頭皮のケア方法を提供することを目的とする。
本発明は、人体の頭髪及び頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程にて洗浄した頭部対象部位を乾燥する乾燥工程と、洗浄工程の実行終了後又は乾燥工程の実行終了後に実行され、頭部対象部位に、温度が40℃を超えず、大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を付与する微細水粒子付与工程と、を含む、頭髪頭皮のケア方法を提供する。
本発明によれば、微細水粒子付与工程にて、頭髪又は頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位に、蒸気ではなく温度40℃以下の微細水粒子が付与される。付与される微細水粒子の温度が40℃以下と高温ではないので、頭部対象部位が高温に晒されない。このため微細水粒子付与工程の実行によって頭部対象部位はダメージを受けない。また、頭部対象部位に付与する微細水粒子の径が50ナノメートル以下と非常に小さく、付与された微細水粒子は頭部対象部位に入り込む。この際、微細水粒子が無帯電の粒子であると、プラスに帯電している頭髪の表面に引き付けられず、より頭部対象部位に入り込み易い。このため微細水粒子付与工程の実行により水分が頭部対象部位に供給されて頭部対象部位のダメージを軽減又はダメージを受けた頭部対象部位を修復することができる。さらに、微細水粒子付与工程の実行により頭部対象部位に付与された微細水粒子が頭部対象部位に効率的に浸透するため、微細水粒子付与工程の実行後は、頭部対象部位の表面はほぼ濡れていない状態である。このため、薬剤を用いる場合には、頭部対象部位の表面に残った水分により薬剤が希釈されることもない。また、薬剤が微細水粒子と共に頭髪/頭皮に効率的に浸透するので、薬剤の効果を高めることができる。
また、本発明によれば、微細水粒子付与工程が、洗浄工程の実行終了後、又は、乾燥工程の実行終了後、に実行される。好ましくは、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前、乾燥工程の実行と同時、乾燥工程の実行終了後、の少なくともいずれかのタイミングで実行される。これにより、微細水粒子が頭部対象部位に付与されて、頭部対象部位のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭部対象部位が修復される。また、乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行することにより、濡れた頭部対象部位(例えば頭髪)を乾かしながら微細水粒子が頭部対象部位に付与される。これにより工程時間の短縮を図ることができる。また、乾燥工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実行することにより、乾いた頭部対象部位(例えば頭髪)に微細水粒子が付与される。これにより微細水粒子を効率的に頭部対象部位に浸透させることができ、頭部対象部位のダメージの修復効果を高めることができる。
本発明に係る頭髪頭皮のケア方法は、頭部対象部位に薬剤を塗布する薬剤塗布工程を含まなくても良い。薬剤塗布をしなくても、微細水粒子付与工程により、もともとダメージを受けている頭部対象部位のダメージを軽減し若しくは頭部対象部位を修復できるからである。例えば頭髪に関しては、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪に潤いを与えて頭髪を柔らかくすることができ、さらに、キューティクルの浮きを抑えて頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けている頭髪を修復し、頭髪のツヤを向上させることができる。
また、本発明は、人体の頭髪頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位に薬剤を塗布する薬剤塗布工程と、薬剤塗布工程の実行終了から所定時間経過後に実行され、前記頭部対象部位を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程にて洗浄した頭部対象部位を乾燥する乾燥工程と、頭部対象部位に、温度が40℃を超えず、大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を付与する微細水粒子付与工程と、を含む、頭髪頭皮のケア方法を提供する。ここで、微細水粒子付与工程は、任意のタイミングで実行することができる。
本発明によれば、微細水粒子付与工程にて、頭髪又は頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位に、上記ではなく温度40℃以下の微細水粒子が付与される。付与される微細水粒子の温度が40℃以下と高温ではないので、頭部対象部位が高温に晒されない。このため微細水粒子付与工程の実行によって頭部対象部位はダメージを受けない。また、頭部対象部位に付与する微細水粒子の径が50ナノメートル以下と非常に小さく、付与された微細水粒子は頭部対象部位に入り込む。このため微細水粒子付与工程の実行により水分が頭部対象部位に供給されて頭部対象部位のダメージを軽減又はダメージを受けた頭部対象部位を修復することができる。
また、薬剤塗布を伴う頭髪頭皮のケア方法において、微細水粒子付与工程を所定のタイミングにて実行することにより、薬剤による効果をより一層高めることができる。また、頭髪に関しては、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪に潤いを与えて頭髪を柔らかくすることができ、さらに、キューティクルの浮きを抑えて頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復し、それにより頭髪のツヤを向上させることができる。一方、頭皮に関しては、微細水粒子付与工程の実行により、頭皮のダメージが軽減されるとともに、薬剤による刺激が緩和される。
薬剤塗布工程は、一連の処理の中で複数回実行されても良い。薬剤塗布工程が複数回実行される場合、洗浄工程は、各薬剤塗布工程の実行終了後に実行されても良いし、最後の薬剤塗布工程の実行終了後に1回だけ実行されても良い。さらに、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、微細水粒子付与工程は、いずれかの薬剤塗布工程の実行開始前或いは実行終了後のタイミングで実行することができる。例えば、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、微細水粒子付与工程は、一の薬剤塗布工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に(すなわち薬剤付与と薬剤付与の間に)実行することができる。また、一の薬剤塗布工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に洗浄工程が実行される場合、微細水粒子付与工程は、一の薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前に実行することもできるし、洗浄工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に実行することもできる。
また、薬剤塗布工程が複数回行われる場合、各薬剤塗布工程にて用いられる薬剤は、異なる種類の薬剤でもよいし、同一種類の薬剤でも良い。例えば、ある薬剤塗布工程にて用いる薬剤がパーマ剤であり、別の薬剤塗布工程にて用いる薬剤がブリーチ剤であってもよい。また、薬剤を複数回塗布することにより薬剤塗布が完了する場合においても、薬剤塗布工程が複数回実行されると言うこともできる。例えば、液体状の第一薬剤及び第二薬剤を有する2液用の薬剤を用いる場合、第一薬剤を塗布する薬剤塗布工程と、第二薬剤を塗布する薬剤塗布工程が、それぞれ実行される。また、例えば、複数回の薬剤塗布工程に用いる薬剤が、全て同じ種類の薬剤であってもよい。この場合、各薬剤塗布工程に用いる薬剤の成分を変えても良いし、同一成分の薬剤を用いても良い。
頭部対象部位が頭髪である場合、薬剤塗布工程にて用いる薬剤は、カラー剤であってもよい。これによれば、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪に塗布したカラー剤の発色を高めるとともに、退色を抑制することができる。また、カラー剤を塗布したことによる頭髪のダメージが軽減される。
また、頭部対象部位が頭髪である場合、薬剤塗布工程にて用いる薬剤は、パーマ剤であっても良い。これによれば、パーマ剤を塗布したことによる頭髪のダメージが、微細水粒子の付与により軽減されるとともに、頭髪が所望の形状に形成されやすくなる。
また、薬剤塗布工程にて用いる薬剤は、トリートメント剤、ブリーチ剤、縮毛矯正剤のいずれかであってもよい。薬剤塗布工程にて用いる薬剤がトリートメント剤である場合、微細水粒子付与工程の実行により頭髪をより柔らかくすることができ、且つ、毛先部分について、手に対する馴染みが良くなる。ここで、「手に対する馴染みが良い」状態とは、「頭髪の柔軟性が高く、頭髪を手で触った時の力加減に追従して頭髪の形状が変化し易い」状態であることを意味する。また、薬剤塗布工程にて用いる薬剤がブリーチ剤である場合、微細水粒子付与工程の実行により頭髪の脱色効果を高めることができる。薬剤塗布工程にて用いる薬剤が縮毛矯正剤である場合、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪の形状を所望の形状に変化させやすくする効果、頭髪の形状を所望の形状に保持しやすくする効果、頭髪が柔らかくなり仕上がりの際の質感が向上する効果を得ることができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、微細水粒子付与工程を薬剤塗布工程の実行終了後(好ましくは薬剤塗布工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前、より好ましくは薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前)に実行する場合には、微細水粒子付与工程にて、頭髪に対して微細水粒子を、頭髪の毛先側から毛元側に向かう方向に付与するとよい。これによれば、微細水粒子が、頭髪の毛先側から毛元側に向かって流れることにより頭髪内に効率的に浸透する。これに伴い、頭髪に塗布された薬剤も頭髪内に効率的に浸透する。これにより、薬剤による効果を高めることができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行と同時又は乾燥工程の実行終了後に実行する場合には、微細水粒子付与工程にて、頭髪に対して微細水粒子を、頭髪の毛元側から毛先側に向かう方向に付与するとよい。これによれば、微細水粒子を頭髪内に浸透させるとともに、毛先側に向かって開いているキューティクルを整えて、頭髪のダメージを修復することができる。
また、本発明に係る頭髪頭皮のケア方法は、頭部対象部位が頭髪であり、薬剤が、液体状の第一薬剤と第二薬剤を含むパーマ剤であり、薬剤塗布工程は、第一薬剤を頭髪に塗布する第一薬剤塗布工程と、第一薬剤塗布工程の実行終了後に第二薬剤を頭髪に塗布する第二薬剤塗布工程と、を含み、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程の実行開始前、又は、第一薬剤塗布工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行されるように構成することもできる。これによれば、第一薬剤を頭髪に塗布する前に微細水粒子を頭髪に付与することにより、第一薬剤が有する機能を早期に頭髪に及ぼすことができる。また、第一薬剤を頭髪に塗布した後であって第二薬剤を頭髪に塗布する前に微細水粒子を頭髪に付与することにより、第二薬剤が有する機能を早期に頭髪に及ぼすことができる。
上記発明において、第一薬剤が頭髪の内部組織を切断する機能を有し、第二薬剤が第一薬剤により切断された頭髪の内部組織を結合する機能を有し、頭髪頭皮のケア方法が、第一薬剤塗布工程の実行終了直後に頭髪を第一所定時間放置する第一放置工程と、第二薬剤塗布工程の実行終了直後に頭髪を第二所定時間放置する第二放置工程と、を有する場合、微細水粒子付与工程は、第一放置工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行することができる。
第一薬剤を頭髪に塗布した後に頭髪を第一所定時間放置することにより、頭髪の内部組織が切断されて、頭髪形状を自由に変えることができる。また、第二薬剤を頭髪に塗布した後に頭髪を第二所定時間放置することにより、切断された頭髪の内部組織が再結合する。これにより頭髪を目的のワインディング形状に馴染ませるとともにその形状に頭髪が固定される。そして、第一薬剤の塗布による頭髪の内部組織の切断の後であって第二薬剤の塗布による頭髪の内部組織の再結合の前に、微細水粒子を頭髪に付与することにより、切断されている内部組織が動きやすくなり、それにより頭髪の形状を目的とするワインディング形状に容易に馴染ませることができる。このため、その後の第二薬剤の塗布により頭髪を目的のワインディング形状に固めるために要する時間、すなわち第二所定時間が短縮される。よって、微細水粒子付与工程を含んだパーマの施術時間の短縮化を図ることができる。また、頭髪を第二薬剤に晒す時間(第二所定時間)を短縮することができるので、第二薬剤が頭髪に与えるダメージの大きさを低減することができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、薬剤がブリーチ剤である場合、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に実行することができる。これによれば、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前の頭髪が濡れている状態のときに微細水粒子を頭髪に付与することにより、頭髪のクセを軽減或いは除去することができる。
また、頭部対象部位が頭髪である場合、頭髪頭皮のケア方法は、乾燥工程の実行終了後に実行され、頭髪を整える仕上工程を含んでいても良い。この場合、微細水粒子付与工程は、薬剤塗布工程の実行開始前から仕上げ工程の実行終了後の期間に実行されると良い。これによれば、仕上工程を含む頭髪のケア方法において所定のタイミングで微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪の質感を変化させることができる。また、微細水粒子付与工程を、仕上げ工程の実行開始前、例えば乾燥工程の実行終了後であって仕上げ工程の実行開始前に実行することにより、ふわりとした柔らかな質感の頭髪に仕上げることができる。また、微細水粒子付与工程を仕上工程の実行終了後に実行することにより、しっとりとした質感の頭髪に仕上げることができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、薬剤が種類の異なる複数のトリートメント剤である場合、頭髪頭皮のケア方法は、複数のトリートメント剤をそれぞれ頭髪に付与する複数の薬剤塗布工程を有し、微細水粒子付与工程は、頭髪の状態に応じて、複数の薬剤塗布工程のいずれかの後又は乾燥工程の後に実行することができる。また、頭髪頭皮のケア方法が仕上工程を有している場合、微細水粒子付与工程は、頭髪の状態及び目的とする仕上がり感に応じて、複数の薬剤塗布工程のいずれかの後、乾燥工程の後、仕上工程の後、の少なくともいずれかのタイミングで実行することができる。これによれば、複数のトリートメント剤のいずれかの塗布後、乾燥工程の実行終了後、仕上工程の実行終了後、のいずれかのタイミングで微細水粒子を頭髪に付与することで、その前の工程を実行したことによる効果を高めることができる。そのため、頭髪の状態(例えば頭髪のダメージが大きいか小さいか)、或いは、目的とする頭髪の仕上がり感(例えば、軽めの仕上がり感、重めの仕上がり感、ふわふわとした仕上がり感、等)に応じて、適切なトリートメント施術を行うことができる。
また、頭部対象部位が頭髪である場合、頭髪頭皮のケア方法が、頭髪を熱処理する熱処理工程を有するように構成することができる。この場合、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の実行開始前に実行することができる。さらに、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の実行開始前に実行される第一微細水粒子付与工程と、熱処理工程の実行終了後に実行される第二微細水粒子付与工程を含んでも良い。ここで、熱処理工程とは、頭髪に熱を与えることにより頭髪の形状を所望の形状に維持する工程である。
これによれば、例えば縮毛矯正の施術において頭髪に熱処理を施す前に微細水粒子を頭髪に付与することにより、仕上がり時の頭髪を柔らかくすることができるとともに、熱処理によって頭髪を所定の形状に整える効果を高めることができる。また、熱処理後に再度微細水粒子を頭髪に付与することにより、より一層、仕上がり時の頭髪を柔らかくすることができる。
図1は、微細水粒子放出装置の概略構成を表す図である。 図2は、微細水粒子発生素子の概略構成を示す図である。 図3は、微細水粒子発生素子の断面概略図である。 図4Aは、第一実施形態に係るケア方法の各工程の実行順序を示す図である。 図4Bは、第一実施形態に係り、薬剤塗布工程が2回実行される場合における、工程の実行順序の例を示す図である。 図4Cは、第一実施形態に係り、薬剤塗布工程が2回実行される場合における、工程の実行順序の別の例を示す図である。 図5は、各処理A~Dによりカラーが施術されたサンプルA1,B1,C1,D1についての色差を棒グラフで表した図である。 図6は、各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについての色差S7とS14とを比較した図である。 図7は、ブリーチ施術後にパーマを施術したサンプルA3,B3,C3の外観写真である。 図8は、処理Bによるブリーチ施術後の頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図9は、従来処理によるブリーチ施術後の頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図10は、第二実施形態に係るケア方法の各工程の実行順序を示す図である。 図11は、各サンプルの毛元についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の前後において評価した結果を示すグラフである。 図12は、各毛髪サンプルの毛先についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の前後において評価した結果を示すグラフである。 図13は、各サンプルの硬さの主観評価を示すグラフである。 図14は、各サンプルに対して算出した、水付与前剛性、水付与直後剛性、水付与1日後剛性、の変化を表すグラフである。 図15は、サンプルA5から抜き出した頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図16は、サンプルB5から抜き出した頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図17は、サンプルC5から抜き出した頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図18は、毛髪のキューティクルの向きを示す概略図である。 図19は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6,N6について求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。 図20は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6,N6について求めたヒステリシス変化幅を比較したグラフである。 図21は、実施例10の各サンプルにて実行される微細水粒子付与工程の実行タイミングが示された、トリートメント施術の各工程の実行順序を示す図である。 図22は、実施例10の各薬剤塗布工程に用いる各薬剤の性質の一例を示す図である。 図23は、図21のタイミングC6,D6,E6,F6で微細水粒子付与工程を実行した場合における、トリートメント施術後の頭髪への効果、仕上がり感、及びそのタイミングで微細水粒子を付与するのに向いている髪質、を示す表である。 図24は、サンプルC6,D6,F6,P6のそれぞれについて測定したヒステリシス変化幅と曲げ剛性値変化率との関係を示す図である。 図25Aは、従来から実施されている2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程を示す。 図21Bは、第四実施形態に係る2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程を示す。 図22は、実施例11における従来処理、処理F1、処理F2、処理F3の各工程を示す図である。 図27は、各処理によりパーマ施術が行われた各サンプルA7,B7,C7,D7のウェーブ効率を比較した図である。 図28は、第五実施形態に係るブリーチ施術の各工程を示す図である。 図29Aは、第一比較処理によるブリーチ施術の各工程を示す図である。 図29Bは、第二比較処理によるブリーチ施術の各工程を示す図である。 図30は、各処理(本実施例処理、第一比較処理、第二比較処理)によりブリーチ施術されたそれぞれのサンプルA8、B8、C8を撮影した写真である。 図31は、熱処理を伴う施術の例を示す図である。 図32は、実施例13にて行われた縮毛矯正処理の各工程を示す図である。 図33は、サンプルA9,B9,C9,D9,N9のそれぞれについて求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。
(第一実施形態)
第一実施形態では、薬剤の塗布を伴う頭髪のケア方法、すなわち薬剤塗布工程を含む頭髪のケア方法について説明する。
薬剤の塗布を伴う頭髪のケア方法は、本実施形態では、少なくとも以下の4工程を経て行われる。
(1)薬剤塗布工程
薬剤塗布工程では、頭髪に薬剤が塗布される。例えば、カラーを施術する場合、頭髪にカラー剤が塗布され、トリートメントを施術する場合、頭髪にトリートメント剤が塗布され、パーマを施術する場合、頭髪にパーマ剤が塗布され、ブリーチを施術する場合、頭髪にブリーチ剤が塗布される。塗布方法は、一般的には刷毛塗りであるが、スプレーにより塗布しても良い。
(2)洗浄工程
洗浄工程では、頭髪に塗布した薬剤を除去するために、頭髪が洗浄される。この洗浄は一般的には水洗であるが、薬剤塗布工程にて塗布した薬剤を洗浄するための薬剤(洗浄用薬剤)を用いても良い。この場合、洗浄用薬剤は、水洗いの前に頭髪に塗布しても良いし、洗浄用薬剤を水に混ぜた状態で頭髪を洗浄しても良い。洗浄方法は、一般的にはシャワーによる水洗いを含む。従って、洗浄工程の実行が終了した頭髪は、濡れている。
(3)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄工程にて洗浄して濡れている頭髪を乾燥させる。乾燥方法として、ドライヤーを用いて温風或いは熱風を濡れた頭髪に吹き付けて頭髪から水分を吹き飛ばし或いは蒸発させることによって水分を除去する方法が、一般的である。
(4)微細水粒子付与工程
微細水粒子付与工程では、頭髪に微細水粒子を付与する。この微細水粒子付与工程については後述する。
上記の4つの工程のうち、薬剤塗布工程、洗浄工程、乾燥工程は、この順に実行される。ここで、洗浄工程は、薬剤塗布工程の実行終了から所定時間が経過した後に実行される。つまり、薬剤塗布工程の実行終了後、頭髪をしばらくの間、放置する。従って、薬剤塗布工程の実行終了後、所定時間が経過するまでは、放置工程が実行されている。この所定時間(放置時間)は、塗布する薬剤により異なるが、例えば5分~30分を例示できる。この所定時間の間に、頭髪に塗布した薬剤が頭髪に浸透するとともに反応する。従って、この所定時間(放置時間)の間は、薬剤の浸透・反応が進行中であると言える。すなわち、放置工程は、薬剤の浸透・反応工程であるとも言える。放置工程にて薬剤が頭髪に浸透・反応することにより、頭髪に所定の効果を及ぼす。この効果は、例えばカラーの施術であれば、頭髪を所定の色に染める効果であり、トリートメントの施術であれば、頭髪に栄養を与えるとともに頭髪を柔らかくする効果であり、ブリーチの施術であれば、頭髪の色を脱色する効果であり、パーマの施術であれば、頭髪に適切な形状のウェーブを形成する効果である。なお、薬剤塗布工程の実行前に、毛髪診断等で頭髪がダメージを受けていることが予めわかっているような場合は、本実施形態のケア方法を行う前に、頭髪のダメージを修復するための前処理工程を実行しても良い。
微細水粒子付与工程では、上記したように、微細水粒子が頭髪に付与される。具体的には、微細水粒子付与工程では、40℃を超えない温度(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上であり40℃未満)であり、且つ50nm以下の大きさを有する複数の微細な水粒子が、例えば送風により空気とともに頭髪まで運ばれて頭髪に付与される。本実施形態では、一例として、微細水粒子放出装置を用いて空気とともに頭髪に無帯電の微細水粒子が付与される。
図1は、微細水粒子放出装置の概略構成を表す図である。図1に示すように、微細水粒子放出装置1は、微細水粒子放出ユニット10と、制御ユニット20とを備える。
微細水粒子放出装置1が備える微細水粒子放出ユニット10は、微細水粒子発生素子11と、ファン12と、入口フィルタ13aと、出口フィルタ13bと、ケース14とを備える。
ケース14は、略円筒状に形成され、内部に一方端から他方端に亘って連通する流路14aが形成される。ケース14の一方端側には入口フィルタ13aが取り付けられるとともに他方端側には出口フィルタ13bが取り付けられる。また、ケース14は、第一ケース部141と第二ケース部142とを有し、これらが軸方向に沿ってつながるように形成される。第一ケース部141の開口がケース14の一方端の開口である吸入口14inを形成し、第二ケース部142の開口がケース14の他方端の開口である放出口14outを形成する。
ファン12は、図示しないモータにより回転駆動するプロペラファンであり、ケース14の第一ケース部141内の流路14a内に収容される。なお、ファン12は、シロッコファン等でも良い。ファン12は、モータの回転に連動して回転して、ケース14の吸入口14inから空気を流路14a内に吸入し、吸入した空気をケース14の放出口14outから放出することができるように構成される。
微細水粒子発生素子11は、ファン12とともにケース14の流路14a内に配設される。微細水粒子発生素子11は、ケース14の第二ケース部142内の流路14a内に配設される。図1においては、微細水粒子発生素子11は、ファン12よりも流路14aの下流側(放出口14outに近い側)に配設される。
図2は、第二ケース部142内に配設された微細水粒子発生素子11の概略構成を示す図である。図2に示すように、微細水粒子発生素子11は、第二ケース部142内の流路14aの横断面の全体に広がるように配設される。ただし、微細水粒子発生素子11は、空気が流通可能なように形成される。従って、流路14aを吸入口14inから放出口14outに向かって流れる空気は、微細水粒子発生素子11を通過することになる。
図3は、微細水粒子発生素子11の断面概略図である。微細水粒子発生素子11は、図3に示すように、基材111と、基材111の一表面或いは両表面(図3では一表面)に形成された導電性高分子膜112とを有する。基材111は、ステンレス系金属、銅系金属等の金属材料、炭素材料、導電性セラミックス材料(例えばITO等)、導電性樹脂材料(例えば、金属蒸着された樹脂フィルム、ナノ銀コーティング樹脂、CNT(カーボンナノチューブ)コーティング樹脂)、等の、導電性を有する材料で形成される。本実施形態では、アルミニウムが添加されたステンレス鋼の金属箔が用いられる。基材111は、流路14a内に配設されたときに、流路14a内の空気が流通可能であるような形状に形成される。さらに、基材111は、流路14a内に配設されたときに、流路14a内を流れる空気との接触面積ができるだけ大きくなるように、すなわち表面積ができるだけ大きくなるように、形成される。この場合、基材111は、例えば、複数の平板により形成されていても良い。また、基材111は、流路14aに垂直な断面形状がハニカム形状又は渦巻き形状となるように形成されていてもよい。
導電性高分子膜112は、導電性を有する高分子化合物、例えばチオフェン系の導電性高分子化合物により膜状に形成される。本実施形態では、導電性高分子膜は、チオフェン系の導電性高分子のうち、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸))により形成される。PEDOT/PSSは、水に不溶なPEDOTが集合したコアを親水的なPSS(シェル)が取り囲んだコアシェル構造を呈し、単体のコアシェルの形状は概ね楕円体形状である。このような楕円体形状の粒子(コアシェル粒子)が整列して積層構造をなすことにより、導電性高分子膜112が膜状に形成される。そして、隣接するコアシェル粒子間に2nm程度のナノメートルサイズの隙間が形成され、斯かる隙間が繋がることにより、導電性高分子膜112の表面に開口するナノチャンネルが形成される。また、各コアシェル粒子の中央のコア(PEDOT)が疎水性であるため、シェル(PSS)の外周に親水性のスルホン酸基が多く存在している。このため,コアシェル粒子の外壁に囲まれているナノチャンネルにはスルホン酸基が多く存在している。スルホン酸基は極性官能基であり水素結合可能である。従って、ナノチャンネル内の空気中の水分がスルホン酸基と水素結合して、結合水として、ナノチャンネル内に保持され得る。
導電性高分子膜112の表面の水分量がナノチャンネル内の結合水の水分量よりも多い場合には、両者の水分濃度差を駆動源として表面の水分がナノチャンネル内に移動して、結合水として保持される。これによりナノチャンネル内に吸水される。その反対に、表面の水分量がナノチャンネル内の結合水の水分量よりも少ない場合には、両者の水分濃度差を駆動源としてナノチャンネル内の結合水が表面に向かって移動する。これによりナノチャンネルから放水される。このように、導電性高分子膜112は、水分濃度差により、水を吸収する吸収状態と、水を放出する放出状態が切り替えられるように構成される。
また、導電性高分子膜112の温度を上昇させると、水分濃度差により放水される場合と比べて放水がより促され、導電性高分子膜の温度を低下させると、水分濃度差により吸水される場合と比べて吸水がより促される。このように、導電性高分子膜112は、温度変化により、吸収状態と放出状態が切り替えられるようにも構成される。
また、ナノチャンネルの流路幅は、概ね2nm程度である。従って、ナノチャンネルから放出される水分は、2nm以下の大きさのナノ粒子である。大きさが2nmのナノ粒子(微細水粒子)は、ナノチャンネルの開口付近で凝集(クラスタ化)しても、50nm以下の大きさに留まる。このため導電性高分子膜112から放出される微細水粒子の大きさ(例えば粒径)は、50nm以下である。加えて、ナノチャンネル内に保持されていた結合水は帯電していない。従って、導電性高分子膜112からは、大きさが50nm以下であり、且つ、無帯電の微細水粒子が放出される。
図1に示すように、微細水粒子放出装置1が備える制御ユニット20は、操作部21と、電源回路22と、制御部23とを備える。操作部21は、例えば微細水粒子放出ユニット10を支持する筐体等の表面に設けられた複数の操作ボタンにより構成される。これらの操作ボタンは、電源のオンオフや運転モードの選択等を行うためにユーザにより操作される。
電源回路22には、AC100V等の電力が供給される。電源回路22は、第一電線24によりファン12のモータに電気的に接続され、第二電線25により微細水粒子発生素子11の基材111に電気的に接続される。電源回路22は、供給された電力をファン12のモータの駆動に適した電力に変換し、変換した電力を第一電線24に出力可能に構成される。さらに、電源回路22は、供給された電力を、基材111への供給に適した電力に変換し、変換した電力を第二電線25に出力可能に構成される。
第一電線24には、第一常開型切替スイッチ26が介装され、第二電線25には、第二常開型切替スイッチ27が介装される。第一常開型切替スイッチ26は、開作動することにより第一電線24の導通を遮断し、閉作動することにより第一電線24の導通を許容する。第二常開型切替スイッチ27は、開作動することにより第二電線25の導通を遮断し、閉作動することにより第二電線25の導通を許容する。
制御部23には、操作部21の操作状況が入力される。制御部23は、入力された操作部21の操作状況に応じて、第一常開型切替スイッチ26及び第二常開型切替スイッチ27の切り換え状態を制御する。
上記構成の微細水粒子放出装置1は、「吸水モード」と「放水モード」とのいずれかの動作モードに従って動作することができるように構成される。この場合、頭髪又は頭皮の状態を状況判断して自動で選択するモードの切り換えが行えるようにしても良いし、ユーザが操作部21の操作ボタンを操作することにより、手動で選択するモードの切り換えが行えるようにしても良い。さらに、ユーザの操作に基づいて、吸水モードと放水モードが所定のタイミングで切り替わるように構成することも可能である。なお、吸水モード及び放水モード以外に、他の動作モードが存在していても良い。
放水モードが選択されたとき、制御部23は、第一常開型切替スイッチ26及び第二常開型切替スイッチ27の双方が閉作動するように各切替スイッチを制御する。これにより、電源回路22からファン12のモータ及び微細水粒子発生素子11の基材111の双方に電力が供給される。ファン12のモータに電力が供給されることにより、モータが回転するとともにこれに連動してファン12が回転し、ケース14の吸入口14inから流路14a内に空気が吸入される。流路14aに吸入された空気は、微細水粒子発生素子11を経由した後に、放出口14outから放出される。また、微細水粒子発生素子11の基材111に通電されて導電性の基材111に電流が流れることにより、基材111がジュール熱を発生して発熱する。基材111の発熱は基材111上の導電性高分子膜112に伝熱され、これにより導電性高分子膜112の温度が上昇する。なお、導電性高分子膜112自体に通電して導電性高分子膜112を発熱及び温度上昇させてもよいし、導電性高分子膜112の存在する空間を温めて温度上昇させても良い。こうして導電性高分子膜112が温度上昇することにより導電性高分子膜112からの放水が促される。その結果、導電性高分子膜112から、無帯電且つ50nm以下の大きさの微細水粒子が放出される。放出された微細水粒子は、流路14aを流れる空気に混ざり、空気とともに放出口14outから放出される。また、放水モードであるときには、制御部23は、導電性高分子膜112から放出される微細水粒子の温度が40℃を超えないように(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満となるように)導電性高分子膜112の温度を制御する。具体的には、制御部23は、導電性高分子膜112から放出される微細水粒子の温度が40℃を超えないように(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満となるように)、基材111への通電量を制御する。このため、導電性高分子膜112からは、無帯電且つ50nm以下の大きさでありさらに温度40℃以下(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)の微細水粒子が放出される。なお、放水モードであるとき、制御部23は、ファン12のモータへの通電量を制御して放出口14outから放出される空気流量を調整することができるように構成されていてもよい。
一方、吸水モードが選択されたとき、制御部23は、第一常開型切替スイッチ26が閉作動し、第二常開型切替スイッチ27が開作動するように、各切替スイッチを制御する。第一常開型スイッチ26が閉作動することにより、電源回路22からファン12のモータに電力が供給され、モータが回転するとともにこれに連動してファン12が回転して、ケース14の吸入口14inから空気が流路14a内に流入する。そして、流入した空気は、微細水粒子発生素子11を経由した後に、放出口14outから放出される。また、第二常開型切替スイッチ27が開作動するので、微細水粒子発生素子11の基材111には電力は供給されない。このため基材111は発熱せず、基材111から導電性高分子膜112に熱が伝わることはない。また、ファン12の回転による送風によって導電性高分子膜112が冷却されるため、導電性高分子膜112の温度が低下する。こうして導電性高分子膜112が温度低下することにより導電性高分子膜112への吸水が促される。その結果、微細水粒子発生素子11を通過する空気中の水分が導電性高分子膜112に吸収される。
このように、微細水粒子放出装置1の動作モードが「放水モード」であるとき、微細水粒子放出ユニット10のケース14の放出口14outから、無帯電且つ50nm以下の大きさであり温度が40℃を超えない(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満の)微細水粒子が空気と共に放出される。従って、微細水粒子付与工程を実行するときには、微細水粒子放出装置1の動作モードを放水モードに設定し、頭髪にケース14の放出口14outを向けた状態で、微細水粒子放出装置1を駆動させる。なお、水の単分子の大きさは0.3nm程度であるので、微細水粒子放出装置1から放出される微細水粒子の大きさは、0.3nmより大きく50nm以下である。
本実施形態において、微細水粒子付与工程は、任意のタイミングで実行することができる。特に、微細水粒子付与工程は、以下の4つのタイミングのいずれか一つ又は複数のタイミングで実行することができる。
(A)薬剤塗布工程の実行開始前(前処理工程を実行する場合は、前処理工程の実行開始前または前処理工程の実行終了後であって薬剤塗布工程の実行開始前)
(B)薬剤塗布工程の実行終了後(例えば、薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前)
(C)乾燥工程の実行終了後
(D)乾燥工程の実行と同時
微細水粒子付与工程が上記(A)のタイミングで実行された場合、図4A(a)に示すように、「微細水粒子付与工程→薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行される頭髪のケア方法を、処理Aと呼ぶ。
微細水粒子付与工程が上記(B)のタイミングで実行された場合、例えば図4A(b)に示すように、「薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→乾燥工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行される頭髪のケア方法を、処理Bと呼ぶ。なお、処理Bにおいて、微細水粒子付与工程は、薬剤塗布工程の実行終了から洗浄工程の実行開始までの間であって、薬剤塗布後の放置工程の実行とほぼ同時に(すなわち薬剤塗布後の放置時間内に)行っても良いし、放置工程の実行終了直後(すなわち薬剤塗布後の放置時間の経過直後に)に行っても良い。また、この処理B及び上記の処理Aでは、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行開始前のタイミングに実行される。なお、微細水粒子付与工程が上記(B)のタイミングで実行される場合、各工程は、「薬剤塗布工程→洗浄工程→微細水粒子付与工程→乾燥工程」の順で実行されることもある。
微細水粒子付与工程が上記(C)のタイミングで実行された場合、「薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程→微細水粒子付与工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行され、且つ、微細水粒子付与工程を、乾燥工程の実行終了直後~6時間経過前に実行する頭髪のケア方法を、処理Cと呼ぶ。処理Cの各工程の実行順序を図4A(c)に示す。また、微細水粒子付与工程を、乾燥工程の実行終了後、6~30時間経過後に実行する頭髪のケア方法を、処理Dと呼ぶ。処理Dの各工程の実行順序を図4A(d)に示す。
微細水粒子付与工程が上記(D)のタイミングで実行された場合、「薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥+微細水粒子付与工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行される頭髪のケア方法を、処理Eと呼ぶ。処理Eの各工程の実行順序を図4A(e)に示す。
また、薬剤塗布工程は、一連の処理の中で複数回実行されても良い。薬剤塗布工程が複数回実行される場合、洗浄工程は、各薬剤塗布工程の実行終了後に行われても良いし、最後の薬剤塗布工程の実行終了後に1回だけ行われても良い。さらに、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、微細水粒子付与工程は、いずれかの薬剤塗布工程に対して、上記の(A)又は(B)に示すタイミングで実行することができる。例えば、薬剤塗布工程が2回行われる場合、以下に示す順で、各工程を実行することができる。
・第一薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(a)参照)
・第一薬剤塗布工程→洗浄工程→第二薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(b)参照)
・第一薬剤塗布工程→洗浄工程→微細水粒子付与工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(c)参照)
・微細水粒子付与工程→第一薬剤塗布工程→洗浄工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(d)参照)
・第一薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4C(e)参照)
・第一薬剤塗布工程→第二薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→乾燥工程(図4C(f)参照)
・微細水粒子付与工程→第一薬剤塗布工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4C(g)参照)
図4B(a)、図4B(c)及び図4C(e)に示す工程順によれば、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程(一の薬剤塗布工程)と第二薬剤塗布工程(その次の薬剤塗布工程)との間、すなわち、第一薬剤塗布工程(一の薬剤塗布工程)の実行終了後であって第二薬剤塗布工程(その次の薬剤塗布工程)の実行開始前に実行される。また、図4B(b)及び図4C(f)に示す工程順によれば、微細水粒子付与工程は、第二薬剤塗布工程の実行終了後に実行される。また、図4B(d)及び図4C(g)に示す工程順によれば、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程の実行開始前に実行される。また、図4C(g)に示す工程順によれば、第一薬剤塗布工程と第二薬剤塗布工程が連続的に実行されているので、これらの薬剤塗布工程を一つの薬剤塗布工程とみることができ、この場合、図4C(g)に示す工程順に行われる処理は、図4Aの処理Bと同じになる。尚、上記の例は、複数回の薬剤塗布工程を実行する場合の各工程順を例示したに過ぎず、上記に例示した以外の工程順で微細水粒子付与工程を実行することもできる。
また、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、各薬剤塗布工程にて用いられる薬剤は、異なる種類の薬剤でもよいし、同一種類の薬剤でも良い。例えば、ある薬剤塗布工程にて用いる薬剤がパーマ剤であり、別の薬剤塗布工程にて用いる薬剤がブリーチ剤であってもよい。また、薬剤を複数回塗布することにより薬剤塗布が完了する場合においても、薬剤塗布工程が複数回実行されると言うこともできる。例えば、パーマ剤や縮毛矯正剤のように2液用の薬剤を用いる場合、1剤(第一薬剤)を塗布する薬剤塗布工程(第一薬剤塗布工程)と、2剤(第二薬剤)を塗布する薬剤塗布工程(第二薬剤塗布工程)が、それぞれ実行される。また、例えば、複数回の薬剤塗布工程に用いる薬剤が、全て同じ種類の薬剤であってもよい。この場合、各薬剤塗布工程に用いる薬剤の成分を変えても良いし、同一成分の薬剤を用いても良い。
上記のタイミングで微細水粒子付与工程を実行することにより、無帯電であり、温度が40℃を超えず(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)、大きさが50nm以下の微細水粒子が、頭髪に付与される。頭髪に付与される微細水粒子の温度は40℃以下(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)であるので、この工程の実行により頭髪が高温に晒されてダメージを受けることはない。また、この工程の実行により、大きさ50nm以下の微細水粒子が頭髪内に浸透する。また、頭髪に付与された微細水粒子は無帯電であるので、頭髪の静電気等に引き寄せられることはない。よって、静電気等により頭髪表面に吸着して頭髪内への微細水粒子の浸透が阻害されるといったことも防止することができる。このようにして本実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪内に水分を供給することができ、これにより頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復するとともに、薬剤塗布工程にて塗布された薬剤の効果をより高めることができる。
微細水粒子付与工程にて付与する微細水粒子の温度は、40℃以下であり、好ましくは40℃未満である。さらに、微細水粒子付与工程にて付与する微細水粒子の温度は、25℃以上であると良い。頭髪がダメージを受けている場合、そのダメージは、頭髪を構成する組織の構造変化(以下、頭髪の構造変化)が引き起こされることにより、軽減され、或いはダメージを受けた組織が修復される。そして、本発明に係る微細水粒子付与工程にて微細水粒子が頭髪内に供給された場合、その微細水粒子が頭髪の組織に結合、または組織の隙間に浸透することにより頭髪の構造変化が引き起こされる。また、頭髪の構造変化が起きるか否かは、頭髪の蛋白質構造が変化する温度(ガラス転移点)に関係しており、頭髪の蛋白質構造の温度がガラス転移点以下であると、頭髪の構造変化は起き難い。頭髪内に微細水粒子を付与し、頭髪内の水分量が増えた場合、頭髪の蛋白質構造のガラス転移点は約25℃になると考えられる。それは、微細水粒子の温度が25℃未満であると、頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するという効果が得られ難いためである。そのため、頭髪頭皮に付与する微細水粒子の温度は25℃以上であるのが良い。よって、微細水粒子付与工程にて付与される微細水粒子の温度の最も好ましい範囲は、25℃以上であり且つ40℃未満である。
(実施例1:カラー処理における発色効果の確認)
4束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備した。次いで、準備したサンプルにカラーを施術した。このとき、図4Aの処理A、処理B,処理C、処理Dのそれぞれの処理を、別々のサンプルに施すことにより、処理Aによりカラーが施術されたサンプルA1、処理Bによりカラーが施術されたサンプルB1、処理Cによりカラーが施術されたサンプルC1、処理Dによりカラーが施術されたサンプルD1を、それぞれ作製した。なお、各処理A~Dにおける各工程の手順は同一であり、その概略は以下の通りである。
薬剤塗布工程:市販のカラー剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされる。
洗浄工程:薬剤塗布工程の実行終了から20分経過後、シャワーによりサンプルを水洗いしながら手指で擦ることによってサンプルから薬剤が除去される。その後、シャンプーを用いて1分間洗浄が実行され、次いで、水を用いて1分間のすすぎが実行され、次いで、リンスがサンプルに1分間塗布され、最後に水を用いて1分間のすすぎが実行される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、10秒間のタオルドライが施された後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約3分間吹き付けることにより、サンプル表面から水分が除去される。
微細水粒子付与工程:図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(空気流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
また、処理Aにおいては、微細水粒子付与工程の実行終了直後に薬剤塗布工程が実行され、処理Bにおいては、薬剤塗布工程の実行終了直後に微細水粒子付与工程が実行され、処理Cにおいては、乾燥工程の実行終了直後に微細水粒子付与工程が実行され、処理Dにおいては、乾燥工程の実行終了から24時間(1日)経過後に微細水粒子付与工程が実行された。
また、比較として、1束の頭髪のサンプルを準備し、そのサンプルに従来処理によりカラーを施術して、従来サンプルを作製した。ここで、従来処理とは、上記した手順と同様の薬剤塗布工程、洗浄工程、乾燥工程、を、この順に実行することによりカラーを施術する頭髪のケア方法である。つまり、従来処理は、微細水粒子付与工程を省略した頭髪のケア方法である。
各処理によりカラーを施術した各サンプルA1,B1,C1,D1及び従来サンプルに対し、色差計を用いて、L表色系(CIE1976L色空間)におけるL値、a値、b値が計測された。そして、計測された各値に基づいて、各サンプルA1,B1,C1,D1と従来サンプルとの色の差が、各サンプルについての色差として数値化された。ここで、各サンプルA1,B1,C1,D1についての色差は、各サンプルA1,B1,C1,D1にて計測される値と従来サンプルにて計測される値との、L色空間における距離であり、以下の式(1)により算出される。
色差=√(ΔL+Δa+Δb) (1)
ここで、
ΔL=L-L0、Δa=a-a0、Δb=b-b0
L:サンプルA1,B1,C1,D1のL
L0:従来サンプルのL
a:サンプルA1,B1,C1,D1のa
a0:従来サンプルのa
b:サンプルA1,B1,C1,D1のb
b0:従来サンプルのb
図5は、各処理A,B,C,Dによりカラーが施術された各サンプルA1,B1,C1,D1についての従来サンプルとの色差を棒グラフで表した図である。図5において、棒グラフA1はサンプルA1と従来サンプルとの色差を示し、棒グラフB1はサンプルB1と従来サンプルとの色差を示し、棒グラフC1はサンプルC1と従来サンプルとの色差を示し、棒グラフD1はサンプルD1と従来サンプルとの色差を示す。図5によれば、いずれの処理A~Dによりカラーを施術した場合にも、従来サンプルとの色差が2以上であることがわかる。また、処理A、処理D、処理B、処理C,の順に色差が大きいことがわかる。
また、目視により、従来サンプルの色は最もくすんだ色であること、従来サンプルとの色差が大きいサンプルほど、より明るく、且つ色が濃くなっていること、が観察された。従って、色差が大きいほど、より明るく、濃い色であると言える。つまり、色差が大きいほど、色の付き具合が良く、発色が良好であると言える。このことから、処理A,B,C,Dによりカラーを施術した頭髪は、従来処理によりカラーを施術した頭髪に比べて、発色をより良くすることが可能であることがわかる。つまり、本実施形態に係る頭髪のケア方法により、薬剤の効果をより一層高めることができる。特に、処理A又は処理Dによりカラーを施術することにより、より一層発色を向上させることができる。
処理A,B,C,Dによりカラーを施術した場合に発色が良好である理由を考察する。処理A,B,C,Dにて実行される微細水粒子付与工程では、温度が40℃を超えず、大きさが50nm以下であり且つ無帯電の微細水粒子が頭髪のサンプルに付与される。サンプルに付与された微細水粒子の温度は40℃を超えないので、この微細水粒子の付与により頭髪が高温に晒されない。このため微細水粒子付与工程の実行によって頭髪頭皮はダメージを受けない。また、サンプルに付与された微細水粒子は非常に小さいので、微細水粒子放出装置から放出された後に微細水粒子同士が出会う確率が非常に低く、このため微細水粒子同士が凝集する確率も低い。よって、微細水粒子は、その大きさを維持しながら、すなわち大きさが50nm以下のまま、頭髪に向かって進行する。また、頭髪の表面を構成するキューティクルは多層構造を呈しており、隣接するキューティクル間には細胞膜複合体(Cell Membrane Complex、以下、CMC)が存在する。このCMCが水や薬剤等の通り道の役割を果たす。従って、水や薬剤は、CMCを通って頭髪に浸透する。このCMCの幅は、約50nm程度である。このため、微細水粒子付与工程にて頭髪に付与された微細水粒子は、凝集することもなく50nm以下の大きさのままCMCを通って頭髪内に浸透することができる。また、微細水粒子付与工程にて頭髪に付与された微細水粒子は無帯電であるので、頭髪の静電気等に引き寄せられることはない。そのため微細水粒子付与工程にて付与された微細水粒子のほとんどが頭髪内に入り込み、頭髪表面に留まらない。
このように微細水粒子付与工程の実行により微細水粒子が効率的に頭髪内に入り込むことにより、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復される。また、微細水粒子が効率的に頭髪内に入り込むために、頭髪表面はほぼ濡れていない。このため頭髪に塗布された薬剤が微細水粒子により希釈されることもなく、よって、薬剤の希釈によって薬剤の効果を低下させるといった不具合の発生を効果的に防止することができる。
そして、処理Aの場合、薬剤塗布の前に微細水粒子が頭髪内に浸透し、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復され、頭髪に潤いが与えられる。よって、その後の薬剤塗布にて頭髪が十分に薬剤を吸収することができ、これにより発色が向上すると考えられる。また、処理Bの場合、微細水粒子の付与と薬剤の浸透が同時に行われることにより、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復されるとともに、頭髪への微細水粒子の浸透に伴って薬剤の浸透が促される。このため頭髪に十分に薬剤が浸透し、その結果、発色が向上すると考えられる。また、処理C及びDの場合、頭髪の乾燥後に水分(微細水粒子)を頭髪に供給することにより、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復されて頭髪表面のキューティクルが閉じ、これにより頭髪のツヤが向上して、発色が向上すると考えられる。
また、処理Bの場合、微細水粒子付与工程が、薬剤塗布工程の実行終了後、洗浄工程の開始までの所定時間(本例では20分)の間に実行される。薬剤塗布工程の実行終了から洗浄工程の実行開始までの間の時間には、頭髪に塗布された薬剤を頭髪に浸透させ且つ反応させるための放置工程(浸透・反応工程)が実行されている。そのためこの所定時間(すなわち放置工程)は他の処理A,C,D及び従来処理においても設定しなくてはならない。従って、必然的に設定しなければならない薬剤塗布工程の実行終了後且つ洗浄工程の実行開始前の所定時間内に(すなわち放置工程と同時に)微細水粒子付与工程を実行する処理Bは、別途微細水粒子付与工程を実行する期間を設けなくてはならない処理A,C,Dに比較して、全体的な処理時間の短縮化を図ることができるといったメリットを有する。
(実施例2:カラーの施術後の退色抑制効果の確認)
4束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備し、各サンプルについて、実施例1と同様の手順の各処理A,C,D及び従来処理によりカラーをそれぞれ施術した。これにより、処理Aによりカラーが施術されたサンプルA2、処理Cによりカラーが施術されたサンプルC2、処理Dによりカラーが施術されたサンプルD2、及び、従来処理によりカラーが施術された従来サンプルを、それぞれ作製した。
作製された各サンプルに対し、色差計を用いてL値、a値、b値が、初回値として計測された。次いで、初回値が計測された各サンプルについて、連続して、シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が繰り返された。ここで、シャンプー・リンス工程とは、シャンプーによる洗浄、水洗、リンスの塗布、水洗を、この順に行う工程である。つまり、シャンプー・リンス工程は、一般家庭における洗髪を模擬した工程である。また、乾燥工程では、ドライヤーを用いて、各サンプルが乾燥された。
各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについて繰り返して7回シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が実行された後に、再度、色差計を用いてL値、a値、b値が、7回値として、計測された。その後、7回値を求めた各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについて、連続して更に7回、シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が繰り返された。これにより、各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについて、各処理後に繰り返して14回、シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が実行された。その後、再度、各サンプルについて、色差計を用いてL値、a値、b値が、14回値として計測された。
次に、各サンプルについて、初回値と7回値との色差S7、及び、初回値と14回値との色差S14が、上記式(1)に基づいて算出された。ここで、上記式(1)において、
ΔL=L-L0、Δa=a-a0、Δb=b-b0
L:各サンプルのL値の7回値または14回値
L0:各サンプルのL値の初回値
a:各サンプルのa値の7回値または14回値
a0:各サンプルのa値の初回値
b:各サンプルのb値の7回値または14回値
b0:各サンプルのb値の初回値
である。
図6は、各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについての色差S7と色差S14とを比較した図であり、縦軸が色差である。また、図6中、「A2」で示されるグラフは、サンプルA2についての色差S7から色差S14の変化を、「C2」で示されるグラフがサンプルC2についての色差S7から色差S14の変化を、「D2」で示されるグラフがサンプルD2についての色差S7から色差S14の変化を、「従来」で示されるグラフが従来サンプルについての色差S7から色差S14の変化を、それぞれ示す。
図6によれば、従来サンプルについては、色差S7よりも色差S14の方がかなり大きい。つまり、シャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返し回数が7回から14回まで増加すると、色差が大きくなる。これに対し、サンプルA2,C2,D2については、色差S7と色差S14とはさほど変わらない。つまり、シャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返し回数が7回から14回に増加しても、色差はさほど変化しない。また、カラーを施術した頭髪にシャンプー・リンス工程を繰り返した場合、色落ちするので、色差の変化の大きさは、色落ちの度合いの大きさと捉えることができる。つまり、色差が大きいほど、カラーの施術によりサンプルに着色した色が退色していると考えられる。従って、従来処理によりカラーを施術した場合、その後のシャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返しによる退色が大きいことがわかる。これに対し、処理A、C、Dによりカラーを施術した場合、その後のシャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返しによる退色が小さいと言える。このことから、処理A、処理C、処理Dによるカラーの施術により、退色を抑制する効果が認められた。
処理A,C,Dによるカラーの施術により退色を抑制する効果が認められる理由は、カラー剤の塗布前或いは塗布後に微細水粒子を頭髪に付与して頭髪内に微細水粒子を均一に分布させることにより、頭髪内の構造が整えられて頭髪のダメージが抑えられるためであると考えられる。具体的には、微細水粒子の付与によって頭髪を過度に濡らすことなく頭髪を柔らかくした後にカラー剤を塗布する処理Aの場合には、ダメージが抑えられて柔らかくされている頭髪にカラー剤を塗布することによりカラー剤が薄まることなくより頭髪に浸透し、その結果、退色も抑制されると考えられる。また、カラー剤の塗布後に微細水粒子を頭髪に付与する処理C,Dの場合には、カラー剤塗布後に頭髪のダメージが抑えられるとともに頭髪のキューティクルが閉じてカラー剤の流出が抑えられるため、退色が抑制されると考えられる。
(実施例3:ブリーチ後にパーマを施術する場合のウェーブ形成効果の確認)
3束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備し、各サンプルについて、ブリーチ剤を用いてブリーチを施術し、その後、2液用のパーマ剤(1剤+2剤)を用いてパーマを施術した。これにより、ブリーチ後にパーマを施術したサンプルA3,B3,C3を作製した、ここで、サンプルA3は、図4Aの処理Bによりブリーチを施術後、図4Aの処理Bによりパーマを施術することにより作製し、サンプルB3は、図4Aの処理Bによりブリーチを施術後、従来処理によりパーマを施術することにより作製し、サンプルC3は、従来処理によりブリーチを施術後、従来処理によりパーマを施術することにより作製した。また、本例において、図4Aの処理Bにおけるブリーチの施術及びパーマの施術の各工程の手順の概略は、以下の通りである。また、従来処理は、図4Aの処理Bにおける各工程の手順から微細水粒子付与工程を省略した手順で行われる。
・ブリーチの施術
薬剤(ブリーチ剤)塗布工程:市販のブリーチ剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされる。
微細水粒子付与工程:図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
洗浄工程:薬剤(ブリーチ剤)塗布工程の実行終了から20分経過後、シャワーによるぬるま湯を用いてサンプルを洗いながら手指で擦ることによってサンプルから薬剤が除去される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間吹き付けることにより、サンプル表面から水分が除去される。
・パーマの施術
薬剤(パーマ剤)塗布工程:頭髪のサンプルをワインディング(ロッド巻き)した後、市販のパーマ剤の1剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされ、その後15分間放置される。その後、2剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされる。なお、薬剤塗布工程の実行終了後、20分間放置される。
微細水粒子付与工程:2剤の刷毛塗りの直後に(すなわち20分間の放置の間に)、図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
洗浄工程:薬剤(パーマ剤)塗布工程の実行終了から20分経過後(すなわち微細水粒子付与工程の実行終了後)、シャワーによりサンプルを水洗いしながら手指で擦ることによりサンプルから薬剤が除去される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間分吹き付けることにより、サンプル表面から水分が除去される。
図7は、サンプルA3,B3,C3の写真であり、図7(a)はサンプルA3を、図7(b)はサンプルB3を、図7(c)はサンプルC3を示す。図7(c)に示すように、従来処理によりブリーチ及びパーマを施術した場合、頭髪に十分にウェーブが形成されない。これに対し、図7(a)に示すように、処理Bによりブリーチ及びパーマを施術した場合、頭髪に適切にウェーブが形成される。このことから、処理Bを用いることにより、ブリーチ後にパーマを施術して頭髪にウェーブを形成することが可能となる。
サンプルC3が十分にウェーブを形成できないのは、ブリーチの施術により頭髪が大きなダメージを受けて頭髪の弾力性が損なわれていることが原因であると考えられる。これに対し、サンプルA3では、ブリーチの施術及びパーマの施術の際に、サンプルに、大きさが50nm以下、無帯電であり且つ温度40℃以下の微細水粒子を付与している。この微細水粒子が、上述したようにサンプルの頭髪表面に留まることなく頭髪内に浸透していく。そして、頭髪内に浸透した水分により例えばキューティクルが閉じ、ダメージを受けている頭髪が修復される。このため、ブリーチの施術後の頭髪のダメージは少なく、また弾力性も十分に有する。加えてパーマの施術の際にも微細水粒子が頭髪に付与されることによって、頭髪のダメージが軽減される。このためパーマの施術によって十分に頭髪にウェーブが形成されると考えられる。
(実施例4:ブリーチ施術後の頭髪のキューティクルの状態の確認)
実施例3にて処理Bによりブリーチを施術したサンプル(パーマ施術前のサンプルA3またはサンプルB3)から頭髪を抜き出し、SEMにより表面のキューティクルの状態を確認した。また、実施例3にて従来処理によりブリーチを施術したサンプル(パーマ施術前のサンプルC3)から頭髪を抜き出し、SEMにより表面のキューティクルの状態を確認した。
図8は、処理Bによりブリーチを施術したサンプルから抜き出した2本の頭髪A41,A42のSEM画像(1000倍)、図9は、従来処理によりブリーチを施術したサンプルから抜き出した2本の頭髪N1,N2のSEM画像(1000倍)である。
図8に示すように、処理Bによりブリーチを施術した頭髪A41,A42の表面のキューティクルは閉じていることがわかる。つまりキューティクルの浮きが少ない。これに対し、図9に示すように、従来処理によりブリーチを施術した頭髪N1,N2の表面のキューティクルは開いている。つまりキューティクルの浮きが目立つ。キューティクルの浮きが目立つ場合、頭髪がダメージを受けている可能性がある。一方、キューティクルの浮きが少ない場合、頭髪がダメージを受けていないと考えられる。このことから、処理Bによりブリーチを施術することにより、頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復できることがわかる。
(第二実施形態)
第二実施形態では、薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法、すなわち薬剤塗布工程を含まない頭髪のケア方法について説明する。ここで、薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法とは、薬剤を用いることなしに、頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復し、また頭髪のツヤを高める方法を言う。なお、従来において、頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するために、一般的には、シャンプー等によって頭髪を洗浄した後に頭髪に薬剤としてトリートメント剤が塗布される。このトリートメント剤の塗布により頭髪が保湿されるとともに頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復される。これに対して本実施形態では、トリートメント剤等の薬剤を頭髪に塗布することなく、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復され得る。
薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法は、本実施形態では、少なくとも以下の3工程を経て行われる。
(1)洗浄工程
洗浄工程では、頭髪に付着している汚れ等の汚染物を除去するために、頭髪が洗浄される。洗浄方法として、例えば、シャンプーによる頭髪頭皮の洗浄およびその後の水洗を例示できる。洗浄工程は、水洗のみにより実行されていても良い。
(2)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄工程にて洗浄して濡れている頭髪を乾燥させる。乾燥方法として、ドライヤーを用いて温風或いは熱風を濡れた頭髪に吹き付けることにより頭髪から水分を除去させる方法が、一般的である。
(3)微細水粒子付与工程
微細水粒子付与工程では、頭髪に、無帯電であり、温度40℃を超えず(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)、且つ大きさが50nm以下の微細水粒子が付与される。この場合、第一実施形態で示した微細水粒子放出装置1を用いて頭髪に微細水粒子を付与することができる。
上記3つの工程のうち、洗浄工程、乾燥工程は、この順に実行される。一方、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後または乾燥工程の実行終了後に実行されるか、乾燥工程の実行と同時に実行される。図10は、本実施形態に係る処理に必要な各工程の実行順序を示す図である。図10(a)が、微細水粒子付与工程を洗浄工程の実行終了後(正確には洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前)に実行する場合の各工程の実行順序を、図10(b)が、微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行終了後に実行する場合の各工程の実行順序を、図10(c)が、微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行と同時に実行する場合の各工程の実行順序を、それぞれ示す。
微細水粒子付与工程が実行されることにより、無帯電であり、温度が40℃を超えず(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)、大きさが50nm以下の微細水粒子が、頭髪に付与される。頭髪に付与される微細水粒子の温度は40℃を超えないので、この工程の実行により頭髪が高温に晒されてダメージを受けることはない。また、この工程の実行により、大きさ50nm以下の微細水粒子が頭髪のキューティクル間のCMCを通って頭髪内に浸透する。また、頭髪に付与された微細水粒子は無帯電であるので、頭髪の静電気等に引き寄せられることはない。よって、静電気等により頭髪表面に吸着して頭髪内への微細水粒子の浸透が阻害されるといったことも防止することができる。このようにして本実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪内に水分を供給することができ、これにより頭髪に潤いをもたらし、頭髪表面のキューティクルを閉じて頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復するとともに、頭髪のツヤを向上させ、さらに頭髪を保湿することができる。
また、図10(c)に示すように、乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行して、濡れた頭髪を乾かしながら頭髪に微細水粒子を付与することで、全体の処理時間の短縮化を図ることができる。
(実施例5…頭髪のツヤの有無の主観評価)
8束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備し、準備した各サンプルについて、洗浄工程、乾燥工程をこの順で実行し、その後、乾燥したサンプルに対して微細水粒子付与工程を実施した。各工程の手順の概略は、以下の通りである。
洗浄工程:一定量の市販のシャンプーがサンプルに塗布され、次いで手指でサンプルが擦られる。その後、シャワーにより水洗いしながら手指でサンプルを擦ることによりサンプルに付着した汚染物及びシャンプーの薬液が除去される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約3分間吹き付けることにより、サンプル表面の水分が除去される。
微細水粒子付与工程;図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
次いで、3名の美容師が、微細水粒子付与工程の実行前後における各サンプルの毛元部分と毛先部分のツヤの有無について主観評価を実施した。主観評価は、3名の美容師が各サンプルについて、微細水粒子付与工程の実行前後におけるツヤの有無を、1,2,3,4,5の5段階で評価して、評点を付与することにより行われる。ここで、評点は、1,2,3,4,5のいずれかの整数であり、ツヤがあるほど評点が高く、ツヤが無いほど評点が低くなるように、各美容師が主観により判断して評点を付与する。そして、3名の美容師が付与した評点の平均値が、そのサンプルのツヤの有無に関する評点と決定された。
図11は、各サンプルの毛元部分についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の実行前後において評価した結果を示すグラフであり、図12は、各サンプルの毛先部分についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の実行前後において評価した結果を示すグラフである。図11及び図12のグラフの横軸の数値がサンプルの番号(No.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8)であり、各番号に対応する欄には、微細水粒子付与工程の実行開始前に評価したツヤの有無に関する評点(平均値)の棒グラフ(グラフA)が左側に、微細水粒子付与工程の実行終了後に評価したツヤの有無に関する評点(平均値)の棒グラフ(グラフB)が右側に、それぞれ並べて記載されている。また、各図に記載の棒グラフは、評点3を基準に、評点3よりも多い評点であれば上方に延び、評点3よりも少ない評点であれば下方に延びるように、それぞれ描かれている。
図11及び図12に示すように、頭髪の毛元部分及び毛先部分のいずれにおいても、微細水粒子付与工程の実行前の評点よりも微細水粒子付与工程の実行後の評点の方が高いサンプルの割合が、8サンプル中7サンプルである。つまり、サンプル8束中の7束にて、微細水粒子付与工程の実行により頭髪のツヤが向上したとの効果が認められた。
(実施例6…微細水粒子付与工程の前後における頭髪の硬さの主観評価)
また、上記実験にて用いたサンプルNo.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8について、微細水粒子付与工程の実行前後におけるサンプルの硬さを3名の美容師が手指で確認した。そして、微細水粒子付与工程の実行前後のサンプルの硬さの主観評価を、上記と同様の5段階評価にて行い、その平均値を算出した。ここで、評点は、1,2,3,4,5のいずれかの整数であり、硬いほど評点が高く、柔らかいほど評点が低くなるように、各美容師が主観により判断して評点を付与する。
図13は、各サンプルの硬さを、微細水粒子付与工程の前後において評価した結果を示すグラフである。図13の横軸の数値がサンプルの番号(No.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8)であり、各番号に対応する欄には、微細水粒子付与工程の実行開始前に評価した硬さの評点(平均値)の棒グラフ(グラフC)が左側に、微細水粒子付与工程の実行終了後に評価した硬さの評点(平均値)の棒グラフ(グラフD)が右側に、それぞれ並べて記載されている。また、図13に記載の棒グラフは、評点3を基準に、評点3よりも多い評点であれば上方に延び、評点3よりも少ない評点であれば下方に延びるように、それぞれ描かれている。
図13からわかるように、8サンプル中6サンプルにおいて、微細水粒子付与工程の実行終了後のサンプルの硬さの評点が微細水粒子付与工程の実行開始前のサンプルの硬さの評点よりも低い。このことから、サンプル8束中の6束にて、微細水粒子付与工程の実行により頭髪が柔らかくなる、つまり頭髪の曲げ剛性が低下することが確認された。
(実施例7…微細水粒子付与工程の実行前後における頭髪の曲げ剛性の変化)
2束の頭髪のサンプルNo.9,No.10(長さ約50cm、重量25g)を準備し、準備したサンプルに対してそれぞれ実施例5と同様の手順の洗浄工程及び乾燥工程を実行した。その後、各サンプルを構成する複数の頭髪のそれぞれについて、曲げ試験機の測定部に頭髪の毛元部分を1本1本取り付けた。測定部に取り付けた頭髪を、曲率K=-2.5~+2.5(cm-1)の範囲内で、0.4(cm-1・s-1)の変化速度で曲げていき、そのときの曲げ応力を逐次測定した。測定後、曲率の変化に応じて逐次的に得られる曲げ応力から、曲げ応力と曲率Kとの関係である曲げ応力-曲率曲線を求めた。そして、求めた曲げ応力-曲率曲線から、曲率K=0.5~1.5cm-1の範囲及び曲率K=-1.5~-0.5cm-1の範囲における曲線の傾斜(勾配)の平均を、毛元部分の曲げ剛性(単位:N・m)として、算出した。このようにして、各サンプルを構成する全ての頭髪について曲げ剛性を算出した。そして、算出した曲げ剛性の大きい方から10%~20%(曲げ剛性の大きい上位10%~20%)の範囲の値を抽出し、抽出した値の平均値を、水付与前剛性値として算出した。
次いで、サンプルNo.9に対して、実施例5と同様の手順の微細水粒子付与工程を実行した。一方、サンプルNo.10に対しては、サンプルを水に1時間浸漬する水浸漬工程を実行した。続いて、各サンプルについて微細水粒子付与工程又は水浸漬工程を実行した直後に、再度、各サンプルを構成する複数の頭髪のそれぞれについて、1本1本、曲げ試験機を用いて上記と同様の曲げ試験を行い、その試験結果(曲げ応力-曲率曲線)から上記と同様に毛元部分の曲げ剛性を算出した。そして、曲げ剛性の大きい上位10%~20%の範囲の値を抽出し、抽出した値の平均値を、水付与直後剛性値として算出した。
次いで、各サンプルを1日間(24時間)、温度24~27℃、湿度50~65%RHの雰囲気中に放置し、放置終了後に、再度、各サンプルを構成する複数の頭髪のそれぞれについて、1本1本、曲げ試験機を用いて上記と同様の曲げ試験を行い、その試験結果(曲げ応力-曲率極性)から上記と同様に毛元部分の曲げ剛性を算出した。そして、曲げ剛性の大きい上位10%~20%の範囲の値を抽出し、抽出した値の平均値を、水付与1日後剛性値として算出した。なお、曲げ剛性の上位10%~20%の範囲の値を有する頭髪が、そのサンプル全体の剛性感(硬さ感)に影響するという知見に基づき、上記のように、曲げ剛性の大きい上位10%~20%の範囲の値の平均値を剛性を表す値として算出している。
図14は、各サンプルに対して算出した、水付与前剛性値、水付与直後剛性値、水付与1日後剛性値、の変化を表すグラフである。ここで、図14の縦軸は、各サンプルにおける水付与前剛性値を1とした場合における各サンプルの曲げ剛性値(水付与直後剛性値、水付与1日後剛性値)の変化率である。従って、水付与前剛性値は、全てのサンプルにおいて1である。また、各サンプルのグラフは、各サンプルの番号により示される。
図14に示すように、サンプルNo.9、サンプルNo.10ともに、水付与直後剛性値は水付与前剛性値よりも低い。これは、サンプルを構成する頭髪に水分が供給されたことによって頭髪が柔らかくなったことによる。
また、サンプルNo.9においては、水付与1日後剛性値が水付与前剛性値よりも小さい。一方、サンプルNo.10については、サンプルを水に浸漬するためサンプルを構成する頭髪表面が濡れる。このため水付与直後剛性値がより低くなるが、水付与1日後剛性値は水付与前剛性値と同じ程度に戻る。これは、水に浸漬した後1日経過して、頭髪表面の水分が全て蒸発したからであると考えられる。
上記の結果から、サンプルNo.9においては、微細水粒子付与工程を実行した後1日経過しても、微細水粒子付与工程の実行前よりも頭髪が柔らかいことがわかる。これは、微細水粒子付与工程の実行により頭髪の内部に水分が取り込まれるとともに、取り込まれた水分が1日経過しても保持されているためであると考えられる。これにより、本実施形態の微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪が柔らかくなり、且つ頭髪の保湿効果が高まることが確認された。
(実施例8…キューティクルの状態の比較)
3束の頭髪のサンプルA5,B5,C5(長さ約30cm、重量15g)を準備した。サンプルA5について、実施例5と同様の手順の洗浄工程、乾燥工程をこの順で実行した後、サンプルA5から頭髪a5を抜き出し、抜き出した頭髪a5に対して微細水粒子付与工程を実行した。そして、乾燥工程の実行終了後であり微細水粒子付与工程の実行開始前、微細水粒子付与工程を10分間実行した直後、その後さらに微細水粒子付与工程を20分間実行(計30分間実行)した直後、のそれぞれのタイミングにおいて、頭髪a5の表面をSEMにより観察した。また、サンプルB5について、実施例5と同様の手順の洗浄工程、乾燥工程をこの順で実行した後、サンプルB5から頭髪b5を抜き出し、抜き出した頭髪b5に、気化式加湿器を用いて気化した水分を30分間付与した。また、乾燥工程の実行終了後であり気化式加湿器による気化した水分の付与の前、気化した水分を30分間付与した直後、のそれぞれのタイミングにおいて、頭髪b5の表面をSEMにより観察した。さらに、サンプルC5については、実施例5と同様の手順の洗浄工程、乾燥工程、をこの順で実行した後、サンプルC5から頭髪c5を抜き出し、抜き出した頭髪c5に、微粒子イオンドライヤーを用いてマイナスイオンを包含した微粒子イオンを10分間付与した。また、乾燥工程の実行後であり微粒子イオンドライヤーによる微粒子イオンの付与前、微粒子イオンを10分間付与した直後、のそれぞれのタイミングにおいて、頭髪c5の表面をSEMにより観察した。また、微粒子イオンを10分間付与した頭髪c5に対し、実施例5と同様の手順の微細水粒子付与工程を10分間実行した。そして、微細水粒子付与工程実行後のタイミングで頭髪c5の表面をSEMにより観察した。
図15は、サンプルA5から抜き出した頭髪a5のSEM画像(1000倍)である。図15(a)が、微細水粒子付与工程の実行開始前のタイミングで撮影した頭髪a5のSEM画像、図15(b)が、図15(a)の撮影後に微細水粒子付与工程を10分間実行した直後のタイミングで撮影した頭髪a5のSEM画像、図15(c)が、図15(b)の撮影後に微細水粒子付与工程をさらに20分間(計30分間)実行した直後のタイミングで撮影した頭髪a5のSEM画像である。図15からわかるように、微細水粒子付与工程の実行終了後(図15(b)、図15(c))は、実行開始前(図15(a))と比較して、キューティクルの浮き上がりが少なくなっている。また、図15(b)と図15(c)とを比較すると、微細水粒子工程の実行時間が長くなるほどキューティクルの浮き上がりが少なくなっていることもわかる。これより、本実施形態に係る微細水粒子付与工程の実行により頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復する効果、すなわちキューティクルの浮き上がりを抑えて(キューティクルを閉じて)キューティクルの状態を改善する効果が認められることがわかる。これは、本実施形態に係る微細水粒子付与工程の実行により頭髪に付与される微細水粒子の大きさが50nm以下と微小であり且つ無帯電であるために、頭髪のキューティクル間に存在する水の通り道(CMC)に水粒子が入り込んで毛髪に潤いを与えるからである。
図16は、サンプルB5から抜き出した頭髪b5のSEM画像(1000倍)である。図16(a)が、気化式加湿器を用いて気化した水分を付与する前のタイミングで撮影した頭髪b5のSEM画像、図16(b)が、図16(a)の撮影後に気化式加湿器を用いて気化した水分を30分間付与した直後のタイミングで撮影した頭髪b5のSEM画像である。図16からわかるように、気化した水分の付与の前も後も、キューティクルは大きく浮き上がっている。また、気化した水分の付与の前後において、キューティクルの状態にさほど変化は見られない。従って、気化式加湿器を用いて頭髪に気化した水分を付与しても、頭髪のキューティクルの状態を改善する効果(キューティクルの浮き上がりを抑える効果)は認められないと言える。気化式加湿器により頭髪に付与される気化した水分は、水の単分子(大きさ:0.3ナノメートル程度)であり、頭髪内に入るものの、温度変化等により自由に出入りできる状態(自由水)で存在するため、頭髪内の組織を整えることには寄与していないものと考えられる。これに対し、本実施形態、或いは上記第一実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に付与する微細水粒子は、図14のサンプルNo.9のグラフに示すように、微細水粒子付与工程で微細水粒子を付与した効果が1日後も持続していることから、温度変化等により出入りすることなく頭髪内に留まることができる状態で毛髪内に存在していると言える。このことから、本実施形態或いは上記第一実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に付与される微細水粒子は、頭髪内で、蛋白質等、生体組織と結合した状態(結合水)として存在し、それにより頭髪の組織を整える働きをすると考えられる。
図17は、サンプルC5から抜き出した頭髪c5のSEM画像(1000倍)である。図17(a)が、微粒子イオンドライヤーを用いて微粒子イオンを付与する前のタイミングで撮影した頭髪c5のSEM画像、図17(b)が、図17(a)の撮影後に微粒子イオンドライヤーを用いて微粒子イオンを10分間付与した直後のタイミングで撮影した頭髪c5のSEM画像、図17(c)が、図17(b)の撮影後に本実施形態の微細水粒子付与工程を10分間実行した直後のタイミングで撮影した頭髪c5のSEM画像である。図17からわかるように、微粒子イオンの付与の前も後も、キューティクルは大きく浮き上がっている。また、微粒子イオンの付与の前後において、キューティクルの状態にさほど変化は見られない。従って、微粒子イオンドライヤーを用いて頭髪に微粒子イオンを付与しても、頭髪のキューティクルの状態を改善する効果は認められないと言える。これは、微粒子イオンドライヤーにより頭髪に付与される微粒子イオンは帯電しているので、微粒子イオンが頭髪のキューティクル間に存在する水の通り道(CMC)に入る前に静電気等により頭髪表面に引き寄せられて頭髪内に浸透しないためと考えられる。また、図17(b)と図17(c)とを比較してわかるように、微粒子イオンの付与後に本実施形態に係る微細水粒子付与工程を実行して微細水粒子を付与することにより、頭髪表面のキューティクルの浮き上がりが若干減少していることがわかる。このことからも、本実施形態の微細水粒子付与工程の実行により、キューティクルの浮き上がりが抑えられることがわかる。
(実施例9…微細水粒子の付与方向の検討)
図18は、頭髪表面のキューティクルの向きを示す概略図である。図18に示すように、キューティクルは、先端が毛先側を向くように、タケノコ状に頭髪表面に形成されている。頭髪がダメージを受けてキューティクルが浮き上がっている場合、キューティクルは毛先側に向かって開く。そのため、頭髪に対して微細水粒子を毛元側から毛先側に向かう方向(順方向)に付与することにより、開いているキューティクルが微細水粒子或いは微細水粒子を運ぶ気流によって閉じ、キューティクルが整えられる。一方、頭髪に対して微細水粒子を毛先側から毛元側に向かう方向(逆方向)に付与することにより、毛先側に向いているキューティクル間のCMC内に効果的に微細水粒子を浸透させることができる。このため、キューティクルを整えて仕上がりを良くするためには、微細水粒子を順方向に付与するのが良く、その一方で、薬剤を用いる場合であって薬剤を頭髪に効率的に浸透させるためには、微細水粒子を逆方向に付与するのがよい。例えば、微細水粒子付与工程を、薬剤塗布工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前のタイミングに実行する場合、より好ましくは上記第一実施形態の処理Bのタイミング、すなわち薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前のタイミング、に実行する場合、薬剤の浸透を促進するために、微細水粒子を逆方向に付与すると良い。これによれば、頭髪に塗布された薬剤が、微細水粒子とともに頭髪に効率的に浸透する。また、例えば上記第一実施形態の処理C,D,Eのタイミングで微細水粒子付与工程を実行する場合、或いは第二実施形態の図10の(b)及び(c)に示すタイミングで微細水粒子付与工程を実行する場合、すなわち微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行と同時又は乾燥工程の実行終了後に実行する場合、キューティクルを整えるために微細水粒子を順方向に付与すると良い。これによれば、微細水粒子を頭髪内に浸透させて頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するとともに、手先側に向かって開いているキューティクルを整えることができる。ただし、各例において、微細水粒子の付与方向は、必ずしも限定されない。
(第三実施形態)
第三実施形態では、複数回の薬剤塗布工程を有する頭髪のケア方法について説明する。
(実施例10…複数回の薬剤塗布工程を有するトリートメント施術)
7束の頭髪のサンプルA6,B6,C6,D6,E6,F6,N6(長さ約30cm、重量15g)を準備した。そして、各サンプルについて、下記に示す番号順に従って各工程を実行することにより、トリートメント施術を行った。
1)シャンプーを用いたサンプルの洗浄
2)ぬるま湯を用いたサンプルのすすぎ。その後、サンプルのタオルドライ
3)第一薬剤(使用薬剤:第一薬剤(ケラチン等の栄養成分を含み、シリコーン成分を含まないミスト状のトリートメント剤))のサンプルへの塗布(第一薬剤塗布工程)
4)第二薬剤(使用薬剤:第二薬剤(ケラチン等の栄養成分を含み、シリコーン成分を含まないか又は微量のシリコーン成分を含む(シリコーン成分の少ない)液状のトリートメント剤))のサンプルへの塗布(第二薬剤塗布工程)
5)第三薬剤(使用薬剤:ケラチン等の栄養成分及びシリコーン成分を含む液状のトリートメント剤)のサンプルへの塗布(第三薬剤塗布工程)
6)指の腹を使っての薬剤のサンプルへの練り込み(擦り込み工程)
7)ぬるま湯を用いたサンプルのすすぎ。その後サンプルのタオルドライ(第一洗浄工程)
8)第四薬剤(使用薬剤:ケラチン等の栄養成分及びシリコーン成分を含むトリートメント剤)のサンプルへの塗布(第四薬剤塗布工程)
9)ぬるま湯を用いたサンプルのすすぎ、その後サンプルのタオルドライ(第二洗浄工程)
10)ドライヤー乾燥(乾燥工程)
11)頭髪を所定の形にセット(仕上工程)
また、サンプルA6については、上記の手順2)の後であって手順3)の前(すなわち第一薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行し、サンプルB6については、上記の手順3)の後であって手順4)の前(すなわち第一薬剤塗布工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行した。さらに、サンプルC6については、上記の手順4)の後であって手順5)の前(すなわち第二薬剤塗布工程の実行終了後であって第三薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行し、サンプルD6については、上記の手順6)の後であって手順7)の前(すなわち第三薬剤塗布工程の実行終了後であって第四薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行した。さらに、サンプルE6については、上記の手順10)の後(すなわち乾燥工程の実行終了後であって仕上工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行し、サンプルF6については、上記の手順11)の後(すなわち仕上工程の実行終了後)に微細水粒子付与工程を実行した。それぞれのサンプルについて実行された微細水粒子付与工程の条件は同一であり、微細水粒子の付与時間は150秒である。また、サンプルN6については、微細水粒子付与工程を実行せずに上記手順1)-11)を順に実行した。図21は、本例にて実行される微細水粒子付与工程の実行タイミングが示された、トリートメント施術の各工程の実行順序を示す図である。図21に示されるタイミングA6,B6,C6,D6,E6,F6が、それぞれのタイミングを表す番号に対応するサンプルにおいて微細水粒子付与工程を実行するタイミングである。
全ての手順を実行した各サンプルについて、毛元部分及び毛先部分の状態を、それぞれ確認した。ここで、微細水粒子付与工程を実行することなく手順1)-11)を実行した従来のトリートメント施術(すなわちサンプルN6)では、施術前に比べて毛元部分は柔らかくなるが毛先部分が硬くなってしまう。これに対し、所定のタイミングで微細水粒子付与工程を実行した各サンプルA6,B6,C6,D6,E6については、それぞれ以下のような効果が見られた。
・サンプルA6:手で掬ったときに毛元部分の手に対する馴染みが良い
・サンプルB6:毛先部分が硬くなるのを防止又は抑制できた
・サンプルC6:手で掬ったときに毛元部分の手に対する馴染みが良く、且つ毛先部分が硬くなるのを防止又は抑制できた
・サンプルD6:手で掬ったときに毛先部分の手に対する馴染みが良い
・サンプルE6:手で掬ったときに毛先部分の手に対する馴染みが良く、毛先部分が硬くなるのを防止又は抑制できた
上記のように、いずれのタイミングで微細水粒子を付与した場合であっても、何等かの効果を得ることができた。
特に、シリコーン成分を多く含むトリートメント剤(以下、シリコーン成分含有トリートメント剤)の塗布前(すなわち第三薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子を付与した場合とシリコーン成分含有トリートメント剤の塗布後(すなわち第三薬剤塗布工程の実行終了後)に微細水粒子を付与した場合とでは、効果が表れる部位に違いがある傾向がみられた。具体的には、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布前に微細水粒子付与工程を実行したサンプル(すなわちサンプルA6,B6,C6)では、毛元部分への水分補給効果が得られて、毛元部分の手に対する馴染みが良く、シリコーン成分含有のトリートメント剤塗布後に微細水粒子付与工程を実行したサンプル(すなわちサンプルD6,E6)では、毛先部分への水分補給効果が得られて、毛先部分の手に対する馴染みが良い。これは、元々の頭髪のダメージの差によると考えられる。頭髪のダメージが少なく薬剤の効果がなくても水分が保持できる状態の部位(例えば毛元部分)であれば、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布前に微細水粒子を付与した場合でも頭髪内に水分が留まるため、微細水粒子を付与することによる効果が得られる。一方、元々の頭髪のダメージが大きい状態の部位(例えば毛先部分)では、頭髪そのものに水分を保持する力が欠けているため、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布前の状態では、頭髪内に水分が留まりにくく、微細水粒子を付与することによる効果が表れにくい。この場合は、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布後に微細水粒子を付与して、トリートメント剤に含まれる成分を利用することで毛髪内に水分が留まりやすくなり、微細水粒子を付与することによる効果がより得られる。
次に、各サンプルについて、曲げ剛性低減率を求めた。ここで、曲げ剛性低減率とは、初期状態(トリートメント施術前)の曲げ剛性値G1に対するトリートメント施術後(仕上工程の実行終了後)の曲げ剛性値G2の低減率であり、以下の式
1-G2/G1
により求めることができる。上式より得られる曲げ剛性低減率の値が正方向に大きいほど、初期状態に比べてトリートメント施術後に頭髪が柔らかくなっていることを表し、負方向に大きいほど、初期状態に比べてトリートメント施術後に頭髪が硬くなっていることを表す。なお、曲げ剛性低減率を求めるにあたり、各サンプルからランダムに頭髪を30本ずつ抽出し、抽出した30本について、まず初期状態の曲げ剛性値G1を測定した。そして、曲げ剛性値G1の大きい上位20%の頭髪をさらに抽出し、抽出した頭髪について、トリートメント施術後の曲げ剛性値G2を測定した。こうして求めた曲げ剛性値G1及びG2を用いて曲げ剛性低減率を求めた。つまり、求めた曲げ剛性低減率は、初期状態の曲げ剛性値G1の上位20%の頭髪についての値である。また、曲げ剛性値G1,G2の測定方法は上述した通りであり、曲げ剛性低減率は各サンプルの毛先部分及び毛元部分のそれぞれについて求めた。
図19は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6及びN6について求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。このグラフの横軸にサンプルの種類が示される。そして、各サンプルに対応する欄に、それぞれのサンプルの曲げ剛性低減率を表すグラフが示される。また、各サンプルに対応する欄に示された2つのグラフのうち左側のグラフEは毛元部分の曲げ剛性低減率を表し、右側のグラフFは毛先部分の曲げ剛性低減率を表す。図19からわかるように、微細水粒子付与工程を実行しない従来のトリートメント施術が実行されたサンプルN6においては、トリートメント施術後に毛先部分が非常に硬くなっている。これに対し、サンプルB6、サンプルC6、サンプルE6においては、毛先部分の曲げ剛性低減率が正の値であり、トリートメント施術後に毛先が柔らかくなっていることがわかる。なお、ダメージの無い(又はダメージの少ない)頭髪(例えば毛元部分)は、水を保持する力が高い。そのため、ダメージの無い(又はダメージの少ない)頭髪に対して、薬剤塗布前或いは薬剤のうちシリコーン等で頭髪表面に膜を構成する機能を有する薬剤(例えば第三薬剤及び第四薬剤)の塗布前に微細水粒子を付与した場合であっても頭髪内に微細水粒子が入りやすく、微細水粒子の付与による効果が得られやすいと考えられる。一方、ダメージの大きい頭髪(例えば毛先部分)は、水を保持する力が弱い。そのため、薬剤により頭髪の水分保持力が高められた状態、例えば第三薬剤の塗布後、或いは第四薬剤塗布後に微細水粒子を付与した場合に頭髪内に微細水粒子が保持されやすく、微細水粒子の付与による効果が得られやすいと考えられる。
次に、各サンプルについて、ヒステリシス変化幅を求めた。ここに言う「ヒステリシス変化幅」とは、各サンプルについての曲げ剛性値を測定する際において、頭髪を曲げていくときに測定される曲げ剛性値と曲げを戻していくときに計測される曲げ剛性値との差の大きさの変化量を表す指標である。本例では、ヒステリシス変化幅を求めるにあたり、まず、それぞれのサンプルを構成する30本の頭髪のそれぞれについて、曲率Kが0から+2.5(cm-1)となるまで頭髪を曲げていく過程で曲率K=1のときに測定された曲げ応力αpと、曲率Kが+2.5から0(cm-1)となるまでその頭髪を曲げ戻していく過程で曲率K=1のときに測定された曲げ応力αnとの差Δα(=αp-αn)が求められる。また、それぞれのサンプルを構成する30本の頭髪のそれぞれについて、曲率Kが0から-2.5(cm-1)となるまで頭髪を曲げていく過程で曲率K=-1のときに測定される曲げ応力βpと、曲率が-2.5から0(cm-1)となるまでその頭髪を曲げ戻していく過程で曲率K=-1のときに測定される曲げ応力βnとの差Δβ(=βp-βn)が求められる。そして、求めた差Δα及びΔβの平均値S(=(Δα+Δβ)/2)が、各頭髪のヒステリシスとして計算される。さらに、各サンプルを構成する30本の頭髪について計算された平均値S(ヒステリシス)について、処理後のS値から処理前のS値を引いて差を算出し、30本それぞれの変化量(S値の差)を算出した。そして、その変化量の平均値をヒステリシス変化幅とした。このヒステリシス変化幅が大きいほど、曲げを戻すときの曲げ剛性値が、曲げていく時の曲げ剛性値に比べて低いことを表す。つまり、ヒステリシス変化幅が大きいほど、手で頭髪に触れた際に、頭髪が戻ろうとする力が弱く、手に対する馴染みが良い状態(頭髪の柔軟性が高く、頭髪を手で触った時の力加減に追従して頭髪の形状が変化し易い状態)であると考えられる。従って、ヒステリシス変化幅の大きさにより、頭髪に触れた時にその頭髪が柔らかいと感じる程度の大きさが表される。
図20は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6及びN6について求めたヒステリシス変化幅を比較したグラフである。このグラフの横軸にサンプルの種類が示される。そして、各サンプルに対応する欄に、それぞれのサンプルのヒステリシス変化幅を表すグラフが示される。また、各サンプルに対応する欄に示された2つのグラフのうち左側のグラフGは毛元部分のヒステリシス変化幅を表し、右側のグラフHは毛先部分のヒステリシス変化幅を表す。
図20に示すように、サンプルD6及びサンプルE6において、毛先部分のヒステリシス変化幅が大きい。このことから、シリコン成分含有のトリートメント剤を塗布した後に微細水粒子を付与することにより、毛先部分の柔らかさをより改善できることが確認された。また、サンプルC6においては、毛元部分のヒステリシス変化幅が大きい。これは、微細水粒子を付与する前にトリートメント剤の塗布を2回行っているので、毛元の状態がさらに改善されて、その後の微細水粒子付与により十分に水分を吸収することができたためと考えられる。
図22は、各薬剤塗布工程に用いる各薬剤(第一薬剤、第二薬剤、第三薬剤、第四薬剤)の性質の一例を示す図である。図22によれば、第一薬剤はミスト状の薬剤であり、第二薬剤はシリコーン成分が含有されていないかまたはシリコーン成分の含有量が微量であり且つ質感がゆるいクリーム状の薬剤であり、第三薬剤はシリコーン成分の含有量が多めの質感が硬いクリーム状の薬剤であり、第四薬剤はシリコーン成分・油分の含有量が多く質感がなめらかなクリーム状の薬剤である。
また、本実施形態では、頭髪の状態或いは目的とする仕上がり感に応じて、いずれかの薬剤塗布工程の実行終了後、又は、乾燥工程の実行終了後、又は、仕上工程の実行終了後、の少なくとも一つのタイミングで、微細水粒子付与工程を実行することができる。
第一薬剤塗布工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングB6)にて微細水粒子付与工程を実行したサンプルB6の場合、第一薬剤の効果を高めることができ、第二薬剤塗布工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングC6)にて微細水粒子付与工程を実行した場合には第二薬剤の効果を高めることができる。また、第三薬剤塗布工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングD6)にて微細水粒子付与工程を実行した場合には第三薬剤の効果を高めることができ、第四薬剤塗布工程の実行終了後のタイミングにて微細水粒子付与工程を実行した場合には第四薬剤の効果を高めることができる。さらに、乾燥工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングE6)、仕上工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングF6)にて微細水粒子付与工程を実行した場合には、第四薬剤の効果を高めるとともに仕上がり感を調整することができる。
図23は、図21のタイミングC6,D6,E6,F6で微細水粒子付与工程を実行した場合における、トリートメント施術後の頭髪への効果、仕上がり感、及びそのタイミングで微細水粒子を付与するのに向いている髪質、を示す表である。図23に示すように、タイミングC6にて微細水粒子付与工程を実行した場合、頭髪の柔らかさが向上し、軽めの仕上がり感に頭髪を仕上げることができる。また、低ダメージの頭髪に対し、タイミングC6にて微細水粒子を頭髪に付与すると良い。タイミングC6の時点ではシリコーン成分が含まれていないか若しくはシリコーン成分の含有量が少ないトリートメント剤のみが頭髪に塗布されている。そして、低ダメージの頭髪であれば、この段階で頭髪は十分に修復されているので、微細水粒子を頭髪に付与することにより、頭髪内に水分を留めることができ、それにより質感がゆるいクリーム状の第二薬剤の効果が高められ、その結果、頭髪を柔らかくすることができる。
また、タイミングD6にて微細水粒子付与工程を実行した場合、質感がかたいクリーム状の第三薬剤の効果が高められるため、頭髪のコシ、特に毛元部分のコシが強くなるとともに軽めの仕上がり感に頭髪を仕上げることができる。よって、コシの無い髪質に対しては、タイミングD6にて微細水粒子を付与するのが良い。
また、タイミングE6又はタイミングF6にて微細水粒子付与工程を実行した場合、質感がなめらかなクリーム状の第四薬剤の効果が高められるため、頭髪の柔らかさが向上する。また、タイミングE6又はタイミングF6は、全ての薬剤が塗布された後のタイミングであるので、ダメージの大きい髪質であっても微細水粒子を付与するときには頭髪の補修及び保護が十分になされている。よって、高ダメージの髪質に対しては、タイミングE6若しくタイミングF6にて微細水粒子を付与するのが良い。また、タイミングE6にて乾燥後の頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪全体を膨らませてふわりとした柔らかな質感の頭髪に仕上げることができる。また、タイミングF6にて仕上げ後の頭髪に微細水粒子を付与することにより、つまり施術の最後に水分を頭髪内に含ませることにより、重めであっておさまりが良く、しっとりとした質感の頭髪に仕上げることができる。
図24は、サンプルC6,D6,F6,N6のそれぞれについて測定した、ヒステリシス変化幅と曲げ剛性低減率との関係を示す図である。図24の横軸がヒステリシス変化幅であり、0から正方向に増加するほど頭髪が曲げ戻り難く(すなわち手に対する馴染みやすさが大きく(馴染みやすい))、0から負方向に増加するほど頭髪の曲げ戻りやすい(すなわち手に対する馴染みやすさが小さい(馴染み難い))ことを表す。図24の縦軸が曲げ剛性低減率であり、0から正方向に増加するほど頭髪が曲がりやすく、0から負方向に増加するほど頭髪が曲がり難いことを表す。また、図24中の丸の点が毛元部分のヒステリシス変化幅と曲げ剛性低減率との関係を表し、四角の点が毛先部分のヒステリシス変化幅と曲げ剛性低減率との関係を表す。また、図24の各点の近傍に、その点に対応するサンプルの番号を示す。
図24に示すように、微細水粒子付与工程を実行していないサンプルN6においては、毛先部分が曲がり難く毛元部分が曲がりやすいことがわかる。また、サンプルC6においては、毛元部分が曲げ戻り難い(馴染みやすい)ことがわかる。一般的に、曲がりやすい頭髪及び曲げ戻り難い(馴染みやすい)頭髪は、柔らかい頭髪ということができる。従って、第二薬剤塗布工程の実行終了後であって第三薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングにて微細水粒子付与工程を実行することにより、柔らかい頭髪に仕上げることができる。また、サンプルD6においては、毛先部分も毛元部分も曲がり難い頭髪であることがわかる。特に、サンプルD6の毛元部分は、曲がり難く、且つ曲げ戻りやすい。曲がり難く、且つ曲がった場合には曲げ戻りやすい頭髪は、コシのある頭髪と言える。従って、第三薬剤塗布工程の実行終了後であって第四薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングにて微細水粒子付与工程を実行することにより、毛元部分のコシが強い頭髪に仕上げることができる。また、サンプルF6においては、毛先部分が曲げ戻り難くなっている。よって、仕上工程の実行終了後のタイミングF6にて微細水粒子付与工程を実行することにより、毛先部分が柔らかい頭髪に仕上げることができる。また、仕上げ工程の実行終了後に微細水粒子を頭髪に付与することにより、頭髪にしっとり感が加わり、重めでおさまりの良い頭髪に仕上げることができる。
このように、トリートメント施術において、頭髪の状態(低ダメージ、高ダメージ、コシの有無等)及び、目的とする仕上がり感(軽め、重め、ふんわり感、おさまり等)に応じて、複数の薬剤塗布工程のいずれかの実行終了後、乾燥工程の実行終了後、仕上工程の実行終了後、の少なくともいずれかのタイミングで微細水粒子付与工程を実行することにより、適切なトリートメント施術を行うことができるとともに、トリートメント剤の効果をより一層高めることができる。
(第四実施形態)
第四実施形態では、頭髪に施すパーマ施術において、頭髪のダメージを抑えることができる頭髪のケア方法について説明する。
パーマの施術においては、一般的に、2種類の液体状の薬剤である第一薬剤(1剤)及び第二薬剤(2剤)が用いられる。第一薬剤は、頭髪の内部組織、具体的には頭髪内のシスチン結合を切断して頭髪形状を自由に変化させることができる機能を有する薬剤である。第二薬剤は、第一薬剤の塗布によって切断された頭髪の内部組織を再結合して頭髪を目的の形状に馴染ませるとともに目的の形状に固める機能を有する薬剤である。従って、パーマの施術においては、まず第一薬剤を頭髪に塗布し、その後第二薬剤を頭髪に塗布することになる。
図25Aは、従来から実施されている2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程を示す。図25Aに示すように、従来の2液を用いたパーマ施術においては、ロッド巻き工程(ワインディング工程)、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、洗浄工程(第一洗浄工程)、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、洗浄工程(第二洗浄工程)、乾燥工程、が、この順に実行される。ロッド巻き工程にて頭髪にロッドが巻かれて頭髪が所望のワインディング形状に曲げられる。次いで、第一薬剤塗布工程にて第一薬剤が頭髪に塗布され、その後、第一放置工程にて頭髪が第一所定時間放置される。この第一放置工程の実行により、頭髪内に第一薬剤が浸透し、頭髪内の内部組織が切断されて、頭髪形状を自由に変更できるようになる。第一放置工程の実行終了後、洗浄工程(第一洗浄工程)にて頭髪が洗浄され、第二薬剤塗布工程にて第二薬剤が頭髪に塗布され、その後、第二放置工程にて頭髪が第二所定時間放置される。この第二放置工程の実行により、頭髪内に第二薬剤が浸透し、頭髪内の切断された内部組織が再結合されて、頭髪が目的の形状に馴染むとともに馴染んだ形状に固められる。第一放置工程における第一所定時間及び第二放置工程における第二所定時間は、一般的には、それぞれ15分程度である。第二放置工程の実行終了後、洗浄工程(第二洗浄工程)にて頭髪が洗浄され、次いで、乾燥工程にて頭髪が乾燥される。
図25Bは、本実施形態に係る2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程の実行順序の一例を示す。図25Bに示すように、本実施形態に係る2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術においては、図25Aに示す第一放置工程の実行終了後であり第二薬剤塗布工程の実行開始前(具体的には第一放置工程後の洗浄工程(第一洗浄工程)の実行終了後であり第二薬剤塗布工程の実行開始前)に、微細水粒子付与工程が実行される。それ以外の工程順は、図25Aに示す工程順と同一である。
本実施形態によれば、第一薬剤塗布工程の実行により塗布された第一薬剤によって濡れている頭髪、或いは第一薬剤塗布工程の後の洗浄工程の実行により濡れている頭髪に微細水粒子が付与される。付与された微細水粒子は頭髪内に侵入して、第一薬剤によって切断された頭髪の内部組織に付着する。切断された頭髪の内部組織に微細水粒子が付着すると、その組織が動きやすくなる。こうして頭髪の内部組織が動きやすくされた結果、頭髪の形状が目的とするワインディング形状に馴染みやすくなる。このため、第二薬剤の塗布後に頭髪を目的のワインディング形状に馴染ませるために要する時間が短縮される。これにより第二放置工程における第二所定時間を短縮することができる。例えば、図25Bに示すように、第一放置工程における第一所定時間は15分程度であるものの、第二放置工程における第二所定時間を5分程度に短縮することができる。このとき微細水粒子付与工程にて微細水粒子を付与する時間が10分であれば、図25Aに示すパーマ施術と比較して、施術時間を延ばすことなく微細水粒子付与工程を含む2液用のパーマの施術を行うことができる。そして、パーマ施術中に頭髪に微細水粒子を付与することによりパーマ剤の効果を高めることができる。また、頭髪を第二薬剤に晒す時間(第二所定時間)が短縮されることにより、第二薬剤が頭髪に与えるダメージの大きさを低減することができる。
(実施例11・・・ウェーブ効率の比較)
4束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)A7,B7,C7,N7を用意し、各サンプルについて、2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いてパーマを施術した。ここで、第一薬剤は、頭髪の内部組織を切断する機能を有し、第二薬剤は、第一薬剤により切断された頭髪の内部組織を結合する機能を有する。また、サンプルA7については処理F1によりパーマを施術し、サンプルB7については処理F2によりパーマを施術し、サンプルC7については処理F3によりパーマを施術し、サンプルN7については従来処理によりパーマを施術した。これらの処理については後述する。
図26は、従来処理、処理F1、処理F2、処理F3の各工程を示す図である。図26に示すように、従来処理は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、第一洗浄工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順に実行する処理である。つまり、従来処理には微細水粒子付与工程は含まれない。処理F1は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程+微細水粒子付与工程、第一洗浄工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順に実行する処理である。処理F1によれば、微細水粒子付与工程は、第一放置工程の実行中に実行される。具体的には、第一放置工程の実行時間が15分であり、微細水粒子付与工程は、第一放置工程の実行開始から10分経過するまでの間に、第一放置工程と同時に実行される。従って、微細水粒子付与工程の実行終了後は、第一放置工程のみが5分間実行される。処理F2は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、第一洗浄工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程+微細水粒子付与工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順に行う処理である。処理F2によれば、微細水粒子付与工程は、第二放置工程の実行中に実行される。具体的には、第二放置工程の実行時間が15分であり、微細水粒子付与工程は、第二放置工程の実行開始から10分経過するまでの間に、第二放置工程と同時に実行される。従って、微細水粒子付与工程の実行終了後は、第二放置工程のみが5分間実行される。処理F3は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、第一洗浄工程、微細水粒子付与工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順で行う処理である。処理F3によれば、微細水粒子付与工程は、第一洗浄工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行される。
ロッド巻き工程では、頭髪のサンプルにロッドが巻かれて頭髪が所定のワインディング形状に曲げられる。第一薬剤塗布工程では、ロッド巻きされたサンプルに第一薬剤がまんべんなく塗布される。第一放置工程では、第一薬剤が塗布されたサンプルが15分間放置される。第一洗浄工程では、手指でサンプルを擦りながらシャワーにより水洗いすることにより第一薬剤がサンプルから洗い流される。第二薬剤塗布工程では、サンプルに第二薬剤がまんべんなく塗布される。第二放置工程では、第二薬剤が塗布されたサンプルが所定時間(第二所定時間)放置される。ここで、第二放置工程における第二所定時間は、従来処理、処理F1、処理F2においては15分であり、処理F3においては5分である。第二洗浄工程では、手指でサンプルを擦りながらシャワーにより水洗いすることにより第二薬剤がサンプルから洗い流される。乾燥工程では、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間分吹き付けることにより、サンプル表面の水分が除去される。微細水粒子付与工程では、図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、10分間サンプルに付与される。なお、乾燥工程の実行終了後、サンプルからロッドが外される。
図27は、各処理によりパーマ施術が行われた各サンプルA7,B7,C7,N7のウェーブ効率を比較した図である。ここで、ウェーブ効率とは、ロッド巻き工程にて用いたロッドの直径を、施術後のサンプルに形成されたウェーブの直径で除した値の百分率であり、ウェーブ効率が大きいほどパーマ剤の効果が大きいことを示す。図27に示すように、処理F1、処理F2、処理F3が行われたサンプルA7,B7,C7のウェーブ効率は、従来処理が行われたサンプルN7のウェーブ効率よりも高い。サンプルA7,B7,C7のウェーブ効率が高い原因は、頭髪に微細水粒子が付与されることにより頭髪のダメージが低減されたことによってパーマ剤による効果が高められたことであると考えることができる。
また、処理F1、処理F2、処理F3によりパーマ施術を行ったサンプルA7,B7,C7のうち、サンプルC7のウェーブ効率が最も高い。サンプルC7のウェーブ効率が最も高い原因は、処理F3の第二放置工程における第二所定時間が5分と最も短く、第二薬剤に頭髪が晒されることによる頭髪のダメージが最も少ないために、パーマ剤の効果が高められたためであると考えられる。換言すれば、処理F3によるパーマ施術を行い、第二放置工程における第二所定時間(放置時間)を短くすることにより、頭髪のダメージを抑えて十分にウェーブ効率の高いパーマ施術を行うことができ、且つ微細水粒子付与工程を含んだパーマの施術時間の短縮化を図ることができる。なお、処理F3にて第二放置工程における放置時間(第二所定時間)を短くすることができる理由は、上述したように、第一薬剤の塗布後であって第二薬剤の塗布前に微細水粒子をサンプルに付与することにより、頭髪内で切断されている内部組織が動きやすくなって、頭髪が目的の形状に馴染みやすくなったためであると考えられる。また、処理F1においても処理F3と同様に、第一薬剤の塗布後であって第二薬剤の塗布前に微細水粒子をサンプルに付与している。処理F1と処理F3との違いは、処理F1では第一薬剤の塗布後の第一放置工程と同時に微細水粒子付与工程を実行しているのに対し、処理F3では第一放置工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実施している点にある。第一放置工程の実行中に微細水粒子を付与する処理F1では、微細水粒子の多くが第一薬剤を頭髪内に効率的に浸透させるために用いられるため、頭髪内の内部組織を動きやすくするという効果に対する微細水粒子の寄与度が低下すると考えられる。よって、処理F1において第二放置時間を十分に短縮することはできないと考えられる。一方、第一放置工程の実行終了後に微細水粒子を付与する処理F3では、第一放置工程の実行により第一薬剤が頭髪に浸透した後に微細水粒子が付与されるので、付与された微細水粒子の多くが、第一薬剤により切断された頭髪内の内部組織を動きやすくするために用いられる。従って、処理F3によれば、微細水粒子の付与によって頭髪の内部組織が十分に動きやすくなり、それにより第二薬剤塗布後の放置時間(第二放置工程の実行時間)を十分に短縮することができると考えられる。
なお、実施例11では、第一放置工程の実行終了後に第一洗浄工程を実行する例を示したが、第一洗浄工程は省略してもよい。この場合、第一放置工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程実行開始前に微細水粒子付与工程が実行される。また、第一放置工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングに加え、第一薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングにも微細水粒子付与工程を実行しても良い。これによれば、第一薬剤塗布工程の実行時に既に頭髪内に浸透している微細水粒子が第一薬剤の頭髪への浸透を促し、これにより頭髪の内部組織の切断が促進される。このため第一放置工程における放置時間(第一所定時間)を短縮することができる。加えて、頭髪が第一薬剤に晒されている時間を短縮することによって頭髪へのダメージをより軽減することができる。
(第五実施形態)
第五実施形態では、ブリーチ施術において、頭髪のクセを抑えることができる頭髪のケア方法について説明する。
図28は、本実施形態に係るブリーチ施術の各工程を示す図である。図28に示すように、本実施形態に係るブリーチ施術は、薬剤(ブリーチ剤)塗布工程、放置工程、洗浄工程、微細水粒子付与工程、乾燥工程、が、この順で実行されことによりなされる。微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に実行される。このため、洗浄工程の実行によって濡れている頭髪に微細水粒子が付与されることになる。濡れている頭髪に微細水粒子を付与することにより、ブリーチ施術後の頭髪のクセを低減することができる。
(実施例12・・・ブリーチ施術後の頭髪のクセの低減効果の確認)
同一人物から採取した3束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)A8,B8,C8を用意し、各サンプルについて、市販のブリーチ剤を用いてブリーチ施術を行った。ここで、サンプルA8については図28に示す工程順に従った処理(以下、本実施例処理)によりブリーチ施術を行った。また、サンプルB8については、図29Aに示す工程順に従った処理(以下、第一比較処理)によりブリーチ施術を行い、サンプルC8については、図29Bに示す工程順に従った処理(以下、第二比較処理)によりブリーチ施術を行った。図29Aに示す第一比較処理は、第一微細水粒子付与工程、薬剤(ブリーチ剤)塗布工程、放置工程、洗浄工程、乾燥工程、第二微細水粒子付与工程、をこの順で実行する処理である。また、図29Bに示す第二比較処理は、薬剤(ブリーチ剤)塗布工程、放置工程、洗浄工程、乾燥工程、微細水粒子付与工程、をこの順で実行する処理である。
また、本実施例処理、第一比較処理、第二比較処理において、薬剤塗布工程では、市販のブリーチ剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされた。微細水粒子付与工程、第一微細水粒子付与工程、第二微細水粒子付与工程では、図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)がサンプルに付与された。ここで、本実施例処理及び第二比較処理における微細水粒子付与工程では、微細水粒子をサンプルに付与する時間は10分であり、第二比較処理における第一微細水粒子付与工程及び第二微細水粒子付与工程では、微細水粒子をサンプルに付与する時間はそれぞれ5分である。また、放置工程では、薬剤(ブリーチ剤)の塗布後、20分間頭髪が放置された。洗浄工程では、放置工程の実行終了後、手指でサンプルを擦りながらぬるま湯のシャワーによってサンプルが洗われてサンプルから薬剤が除去された。乾燥工程では、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間吹き付けることにより、サンプル表面の水分が除去された。
図30は、各処理(本実施例処理、第一比較処理、第二比較処理)によりブリーチ施術されたそれぞれのサンプルA8,B8,C8を撮影した写真である。図30において、左側のサンプルが、第一比較処理によりブリーチ施術を行ったサンプルB8であり、右側のサンプルが、第二比較処理によりブリーチ施術を行ったサンプルC8であり、中央のサンプルが、本実施例処理によりブリーチ施術を行ったサンプルA8である。図30に示すように、本実施例処理によりブリーチ施術を行ったサンプルA8は、その他のサンプルB8,C8と比較して、頭髪がまっすぐである。これらのサンプルA8,B8,C8は、同一人物から採取したので、サンプルA8のみ、頭髪のクセが抜けていることになる。また、サンプルA8について行われた本実施例処理では、乾燥前の濡れている頭髪に微細水粒子が付与されている。従って、ブリーチ施術において、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪のクセを低減できることが確認された。
ブリーチ施術において洗浄工程の実行終了後であり乾燥工程の実行開始前の濡れている頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪のクセを低減することができる理由について考察する。ブリーチ剤を頭髪に塗布してブリーチ剤が頭髪内に浸透していくと、ブリーチ剤により頭髪の内部組織が切断される。その後に微細水粒子が頭髪内に入ると、頭髪内の内部組織が頭髪内で動きやすくなる。これにより、頭髪のクセが取れる。また、頭髪が濡れている場合には、頭髪内の組織が移動する上での抵抗が少ない。よって、薬剤塗布後であって頭髪が濡れているタイミング、すなわち洗浄工程後であって乾燥工程前のタイミングで微細水粒子を頭髪に付与して頭髪内部の切断された組織を十分に動きやすくすることで、クセが低減されると考えられる。
(第六実施形態)
第六実施形態では、熱処理を伴う施術中に微細水粒子付与工程を実行する場合について説明する。
縮毛矯正、デジタルパーマ、セットの施術には、熱処理工程が含まれる。この熱処理工程にて頭髪に熱が加えられることにより、頭髪を所望の形状に整えることができる。また、熱処理工程を実行すると、頭髪内の水分が奪われるため、頭髪が乾燥傾向となって硬くなる。
図31は、熱処理を伴う施術の例を示す図である。図31(a)が縮毛矯正の施術の各工程を示し、図31(b)がデジタルパーマの施術の各工程を示し、図31(c)がセットの施術の各工程を示す。図31(a)及び図31(c)のアイロン工程が熱処理工程であり、図31(b)の加温工程が熱処理工程である。
本実施形態では、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の前に実行される。例えば図31(a)に示す縮毛矯正の施術においては、乾燥工程の実行終了後であってアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前のタイミング(図31(a)のタイミングa)に微細水粒子付与工程が実行される。図31(b)に示すデジタルパーマの施術においては、ロッド巻き工程の実行終了後であり加温工程(熱処理工程)の実行開始前(図31(b)のタイミングb)に微細水粒子付与工程が実行される。図31(c)に示すセット処理では、ドライ(乾燥)工程の実行終了後であってアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前(図31(c)のタイミングc)に実行される。
熱処理工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行することにより、熱処理前に頭髪内に水分が供給される。そして、微細水粒子付与工程により頭髪内に供給された水分は、頭髪内で、蛋白質等の生体組織と結合した状態、すなわち結合水として存在するため、その後の熱処理工程にて頭髪から奪われ難い。つまり、熱処理工程を実行しても、頭髪は乾燥しない。そのため、仕上がり時に頭髪内に十分に水分が含まれることによって、頭髪が柔らかくなるという効果を奏することができる。さらに、熱処理工程の前に頭髪内に水分を補うことにより、頭髪内の組織構造が動きやすくなる。このためその後の熱処理工程にて頭髪の形状がより整えやすくされる。
また、あわせて、熱処理工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実行しても良い。つまり、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の実行開始前に実行される第一微細水粒子付与工程と、熱処理工程の実行終了後に実行される第二微細水粒子付与工程を含んでも良い。熱処理工程の実行開始前のみならず熱処理工程の実行終了後にも微細水粒子付与工程を実行することによって、頭髪をさらに柔らかくして、仕上がり時の質感をさらに向上させることができる。
(実施例13・・・アイロン工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行した場合の効果の確認)
図32に示す工程順にて各工程を実行することにより、縮毛矯正の施術を行ったサンプルA9を作製した。図32に示すように、本例における縮毛矯正の施術は、シャンプー工程、タオルドライ工程、第一薬剤(第1剤)塗布工程、第一放置工程、中間水洗工程(洗浄工程)、乾燥工程、微細水粒子付与工程、アイロン工程(熱処理工程)、第二薬剤(第2剤)塗布工程、第二放置工程、水洗工程(洗浄工程)、トリートメント剤の塗布工程、仕上げ工程、を、この順に実行することにより行われる。この工程順によれば、微細水粒子付与工程は、乾燥工程の実行終了後であってアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前に実行される。
なお、縮毛矯正剤は、第一薬剤(第1剤)と第二薬剤(第2剤)とを有する。第一薬剤は、頭髪の内部組織の結合を切断して、頭髪を動きやすくする機能を有する。このため第一薬剤を頭髪に塗布して第一薬剤を頭髪に浸透させることにより、頭髪の形状を例えばまっすぐに矯正することができるようになる。第二薬剤は、第一薬剤により切断された頭髪の内部組織を再結合させる機能を有する。このため第二薬剤を塗布して第二薬剤を頭髪に浸透させることにより、切断されていた内部組織が結合されるとともに、頭髪の形状が矯正した形状に固定される。
また、微細水粒子付与工程の実行タイミングが異なることを除いて、図32に示す各工程の実行により縮毛矯正の施術を行ったサンプルB9,C9,D9を、それぞれ作製した。ここで、サンプルB9の作製にあたっては、微細水粒子付与工程は、アイロン工程(熱処理工程)の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行し、サンプルC9の作製にあたっては、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程と同時に実行し、サンプルD9の作製にあたっては、微細水粒子付与工程は、第二薬剤塗布工程と同時に実行した。また、図32の各工程から微細水粒子付与工程を省略した工程順により縮毛矯正の施術を行ったサンプルN9を作製した。
作製した各サンプルA9,B9,C9,D9,N9のそれぞれについて、毛元部分の曲げ剛性低減率及び毛先部分の曲げ剛性低減率を算出した。この曲げ剛性低減率の算出方法は、上記実施例10にて算出した方法と同一であるのでその説明は省略する。
図33は、各サンプルについて求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。このグラフの横軸にサンプルの種類(A9,B9,C9,D9,N9)を示し、各サンプルに対応する欄に曲げ剛性低減率を表すグラフが示される。また、各サンプルに対応する欄に示された2つのグラフのうち左側のグラフIは毛元部分の曲げ剛性低減率を表し、右側のグラフJは毛先部分の曲げ剛性低減率を表す。
図33に示すように、サンプルA9においては、毛元部分の曲げ剛性低減率及び毛先部分の曲げ剛性低減率の双方が大きい。また、サンプルA9の作製に際し、微細水粒子付与工程はアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前に実行されている。従って、熱処理工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪の曲げ剛性値が低減して頭髪が柔らかくなり、それにより頭髪を整えやすくなることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されて解釈されるべきものではない。例えば、実施例13においては、アイロン工程の前に微細水粒子付与工程を実行することによって、頭髪を柔らかくして整えやすくする例について説明したが、微細水粒子付与工程は、例えば第一薬剤塗布工程の実行終了後であり且つ第二薬剤塗布工程の実行開始前のその他のタイミングで実行しても良い。第一薬剤の塗布後に微細水粒子を付与することで、頭髪内の組織のうち結合によらない部分にも水分が入ることで柔らかくなり、その結果、組織が動きやすくなる効果があると考えられる。従って、微細水粒子付与工程を第一薬剤塗布工程と第二薬剤塗布工程との間に実行することより、頭髪の形状を所望の形状に変化させやすくする効果が得られる。
また、上記のような第一薬剤及び第二薬剤を含む縮毛矯正剤を用いた場合において、微細水粒子付与工程は、例えば第二薬剤塗布工程の実行終了後に実行することができる。第二薬剤の塗布後に微細水粒子を付与して頭髪内に水分を供給することにより、頭髪が柔らかくなる効果、及び、頭髪の形状を固定する際に生じる組織の歪みを緩和できる効果、を奏すると考えられる。従って、このような微細水粒子付与工程を第二薬剤塗布工程の実行終了後に実行することにより、頭髪が柔らかくなり、仕上工程後の頭髪の質感を向上させることができる。
また、上記実施形態では、頭部対象部位としての頭髪に微細水粒子を付与する例について説明したが、頭部対象部位としての頭皮に微細水粒子を付与しても良い。この場合、上記第一実施形態の処理A又は処理Bにより、スカルプ処理を行うことができる。これによれば、頭皮に微細水粒子が浸透することにより、薬液による刺激を緩和することができるとともに、頭髪の状態を整えることができる。また、上記第一実施形態では、図4Aの処理A,B,C,Dを実行した場合について主に説明したが、図4Aの処理Eのように、乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行しても、処理Cとほぼ同様の効果を得ることができる。また、上記第二実施形態では、乾燥工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実行した場合について主に説明したが、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に、或いは乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行しても、同様の効果を得ることができる。また、上記第二実施形態では、薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法について説明したが、微細水粒子の付与とともに、トリートメント等の薬剤を頭髪に塗布しても良い。これによれば、頭髪にさらに潤いを与えるとともに、頭髪をより滑らかに処理することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…微細水粒子放出装置、10…微細水粒子放出ユニット、11…微細水粒子発生素子、111…基材、112…導電性高分子膜、12…ファン、13a…入口フィルタ、13b…出口フィルタ、14…ケース、14a…流路、14in…吸入口、14out…放出口、141…第一ケース部、142…第二ケース部、20…制御ユニット、21…操作部、22…電源回路、23…制御部、24…第一電線、25…第二電線、26…第一常開型切替スイッチ、27…第二常開型切替スイッチ
本発明は、頭髪又は頭皮をケアするための、頭髪頭皮のケア方法及び頭髪頭皮のケア装置に関する。
頭髪にパーマ、ブリーチ、トリートメント、カラー等の施術を行うことにより頭髪を所望の状態にケアするための頭髪のケア方法を行う場合、各施術に用いられる薬剤が頭髪に塗布される。このとき薬剤が十分に頭髪に浸透せず、また薬剤の反応が十分に進行しない場合があり、そのような場合には、薬剤による効果が低下する虞がある。
特許文献1は、薬剤塗布の際、蒸気を頭髪に与えて頭髪温度を高め且つ頭髪周囲を高湿状態にするように構成されたヘアカラー方法を開示する。頭髪温度を高めることにより頭髪に塗布した薬剤の反応が促進され、頭髪を高湿環境下に置くことにより頭髪を湿潤させて頭髪への薬剤の浸透が促進される。さらに、特許文献1に係るヘアカラー装置は、蒸気発生装置により発生された蒸気を混合室で外気と混合させることにより温度設定し、温度設定時の蒸気冷却により生じる凝縮水を混合室空間内で分離し、設定温度の蒸気のみを送出することができるように構成される。これによれば、蒸気冷却により生じる凝縮水が除去されるので、凝縮水により頭髪に塗布した薬剤が希釈されることが防止される。
特開2000-201731号公報
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載のように頭髪に蒸気を付与すると、頭髪が高温に晒されてダメージを受ける。また、特許文献1によれば凝縮水は除去されるものの、頭髪に付着した蒸気は頭髪表面で結露する。こうして生じた結露水は頭髪表面で成長して大きな水滴となり、頭髪内に浸透していかずに頭髪表面に留まる。頭髪表面に水滴が留まった場合、頭髪内に水分が十分に供給されないため、頭髪のダメージを水分補給により補うこともできない。さらに、薬剤を頭髪に塗布した場合には頭髪表面に留まった水滴が薬剤に混ざって薬剤が希釈される。このため薬剤による効果が低下する虞がある。
本発明は、頭髪へのダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復することができ、また、薬剤を用いる場合には薬剤の効果をより高めることができる、頭髪頭皮のケア方法を提供することを目的とする。
開示は、人体の頭髪及び頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程にて洗浄した頭部対象部位を乾燥する乾燥工程と、頭部対象部位に、大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を付与する微細水粒子付与工程と、を含む、頭髪頭皮のケア方法を提供する。
開示によれば、部対象部位に付与する微細水粒子の大きさが50ナノメートル以下と非常に小さく、付与された微細水粒子は頭部対象部位に入り込む。この際、微細水粒子が無帯電の粒子であると、プラスに帯電している頭髪の表面に引き付けられず、より頭部対象部位に入り込み易い。このため微細水粒子付与工程の実行により水分が頭部対象部位に供給されて頭部対象部位のダメージを軽減又はダメージを受けた頭部対象部位を修復することができる。さらに、微細水粒子付与工程の実行により頭部対象部位に付与された微細水粒子が頭部対象部位に効率的に浸透するため、微細水粒子付与工程の実行後は、頭部対象部位の表面はほぼ濡れていない状態である。このため、薬剤を用いる場合には、頭部対象部位の表面に残った水分により薬剤が希釈されることもない。また、薬剤が微細水粒子と共に頭髪/頭皮に効率的に浸透するので、薬剤の効果を高めることができる。
開示に係る頭髪頭皮のケア方法は、頭部対象部位に薬剤を塗布する薬剤塗布工程を含まなくても良い。薬剤塗布をしなくても、微細水粒子付与工程により、もともとダメージを受けている頭部対象部位のダメージを軽減し若しくは頭部対象部位を修復できるからである。例えば頭髪に関しては、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪に潤いを与えて頭髪を柔らかくすることができ、さらに、キューティクルの浮きを抑えて頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けている頭髪を修復し、頭髪のツヤを向上させることができる。
本開示に係る頭髪頭皮のケア方法は、頭部対象部位に薬剤を塗布する薬剤塗布工程を更に含み、洗浄工程が薬剤塗布工程の実行終了から所定時間経過後に実行されるように構成されていても良い。これによれば、薬剤塗布を伴う頭髪頭皮のケア方法において、微細水粒子付与工程を実行することにより、薬剤による効果をより一層高めることができる。また、頭髪に関しては、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪に潤いを与えて頭髪を柔らかくすることができ、さらに、キューティクルの浮きを抑えて頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復し、それにより頭髪のツヤを向上させることができる。一方、頭皮に関しては、微細水粒子付与工程の実行により、頭皮のダメージが軽減されるとともに、薬剤による刺激が緩和される。
薬剤塗布工程は、一連の処理の中で複数回実行されても良い。薬剤塗布工程が複数回実行される場合、洗浄工程は、各薬剤塗布工程の実行終了後に実行されても良いし、最後の薬剤塗布工程の実行終了後に1回だけ実行されても良い。さらに、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、微細水粒子付与工程は、いずれかの薬剤塗布工程の実行開始前或いは実行終了後のタイミングで実行することができる。例えば、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、微細水粒子付与工程は、一の薬剤塗布工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に(すなわち薬剤付与と薬剤付与の間に)実行することができる。また、一の薬剤塗布工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に洗浄工程が実行される場合、微細水粒子付与工程は、一の薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前に実行することもできるし、洗浄工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に実行することもできる。
また、薬剤塗布工程が複数回行われる場合、各薬剤塗布工程にて用いられる薬剤は、異なる種類の薬剤でもよいし、同一種類の薬剤でも良い。例えば、ある薬剤塗布工程にて用いる薬剤がパーマ剤であり、別の薬剤塗布工程にて用いる薬剤がブリーチ剤であってもよい。また、薬剤を複数回塗布することにより薬剤塗布が完了する場合においても、薬剤塗布工程が複数回実行されると言うこともできる。例えば、液体状の第一薬剤及び第二薬剤を有する2液用の薬剤を用いる場合、第一薬剤を塗布する薬剤塗布工程と、第二薬剤を塗布する薬剤塗布工程が、それぞれ実行される。また、例えば、複数回の薬剤塗布工程に用いる薬剤が、全て同じ種類の薬剤であってもよい。この場合、各薬剤塗布工程に用いる薬剤の成分を変えても良いし、同一成分の薬剤を用いても良い。
頭部対象部位が頭髪である場合、薬剤塗布工程にて用いる薬剤は、カラー剤であってもよい。これによれば、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪に塗布したカラー剤の発色を高めるとともに、退色を抑制することができる。また、カラー剤を塗布したことによる頭髪のダメージが軽減される。
また、頭部対象部位が頭髪である場合、薬剤塗布工程にて用いる薬剤は、パーマ剤であっても良い。これによれば、パーマ剤を塗布したことによる頭髪のダメージが、微細水粒子の付与により軽減されるとともに、頭髪が所望の形状に形成されやすくなる。
また、薬剤塗布工程にて用いる薬剤は、トリートメント剤、ブリーチ剤、縮毛矯正剤のいずれかであってもよい。薬剤塗布工程にて用いる薬剤がトリートメント剤である場合、微細水粒子付与工程の実行により頭髪をより柔らかくすることができ、且つ、毛先部分について、手に対する馴染みが良くなる。ここで、「手に対する馴染みが良い」状態とは、「頭髪の柔軟性が高く、頭髪を手で触った時の力加減に追従して頭髪の形状が変化し易い」状態であることを意味する。また、薬剤塗布工程にて用いる薬剤がブリーチ剤である場合、微細水粒子付与工程の実行により頭髪の脱色効果を高めることができる。薬剤塗布工程にて用いる薬剤が縮毛矯正剤である場合、微細水粒子付与工程の実行により、頭髪の形状を所望の形状に変化させやすくする効果、頭髪の形状を所望の形状に保持しやすくする効果、頭髪が柔らかくなり仕上がりの際の質感が向上する効果を得ることができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、微細水粒子付与工程を薬剤塗布工程の実行終了後(好ましくは薬剤塗布工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前、より好ましくは薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前)に実行する場合には、微細水粒子付与工程にて、頭髪に対して微細水粒子を、頭髪の毛先側から毛元側に向かう方向に付与するとよい。これによれば、微細水粒子が、頭髪の毛先側から毛元側に向かって流れることにより頭髪内に効率的に浸透する。これに伴い、頭髪に塗布された薬剤も頭髪内に効率的に浸透する。これにより、薬剤による効果を高めることができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行と同時又は乾燥工程の実行終了後に実行する場合には、微細水粒子付与工程にて、頭髪に対して微細水粒子を、頭髪の毛元側から毛先側に向かう方向に付与するとよい。これによれば、微細水粒子を頭髪内に浸透させるとともに、毛先側に向かって開いているキューティクルを整えて、頭髪のダメージを修復することができる。
また、本開示に係る頭髪頭皮のケア方法は、頭部対象部位が頭髪であり、薬剤が、液体状の第一薬剤と第二薬剤を含むパーマ剤であり、薬剤塗布工程は、第一薬剤を頭髪に塗布する第一薬剤塗布工程と、第一薬剤塗布工程の実行終了後に第二薬剤を頭髪に塗布する第二薬剤塗布工程と、を含み、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程の実行開始前、又は、第一薬剤塗布工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行されるように構成することもできる。これによれば、第一薬剤を頭髪に塗布する前に微細水粒子を頭髪に付与することにより、第一薬剤が有する機能を早期に頭髪に及ぼすことができる。また、第一薬剤を頭髪に塗布した後であって第二薬剤を頭髪に塗布する前に微細水粒子を頭髪に付与することにより、第二薬剤が有する機能を早期に頭髪に及ぼすことができる。
この場合、第一薬剤が頭髪の内部組織を切断する機能を有し、第二薬剤が第一薬剤により切断された頭髪の内部組織を結合する機能を有し、頭髪頭皮のケア方法が、第一薬剤塗布工程の実行終了直後に頭髪を第一所定時間放置する第一放置工程と、第二薬剤塗布工程の実行終了直後に頭髪を第二所定時間放置する第二放置工程と、を有していても良い。そして、微細水粒子付与工程は、第一放置工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行することができる。
第一薬剤を頭髪に塗布した後に頭髪を第一所定時間放置することにより、頭髪の内部組織が切断されて、頭髪形状を自由に変えることができる。また、第二薬剤を頭髪に塗布した後に頭髪を第二所定時間放置することにより、切断された頭髪の内部組織が再結合する。これにより頭髪を目的のワインディング形状に馴染ませるとともにその形状に頭髪が固定される。そして、第一薬剤の塗布による頭髪の内部組織の切断の後であって第二薬剤の塗布による頭髪の内部組織の再結合の前に、微細水粒子を頭髪に付与することにより、切断されている内部組織が動きやすくなり、それにより頭髪の形状を目的とするワインディング形状に容易に馴染ませることができる。このため、その後の第二薬剤の塗布により頭髪を目的のワインディング形状に固めるために要する時間、すなわち第二所定時間が短縮される。よって、微細水粒子付与工程を含んだパーマの施術時間の短縮化を図ることができる。また、頭髪を第二薬剤に晒す時間(第二所定時間)を短縮することができるので、第二薬剤が頭髪に与えるダメージの大きさを低減することができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、薬剤がブリーチ剤である場合、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に実行することができる。これによれば、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前の頭髪が濡れている状態のときに微細水粒子を頭髪に付与することにより、頭髪のクセを軽減或いは除去することができる。
また、頭部対象部位が頭髪である場合、頭髪頭皮のケア方法は、乾燥工程の実行終了後に実行され、頭髪を整える仕上工程を含んでいても良い。この場合、微細水粒子付与工程は、薬剤塗布工程の実行開始前から仕上げ工程の実行終了後の期間に実行されると良い。これによれば、仕上工程を含む頭髪のケア方法において所定のタイミングで微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪の質感を変化させることができる。また、微細水粒子付与工程を、仕上げ工程の実行開始前、例えば乾燥工程の実行終了後であって仕上げ工程の実行開始前に実行することにより、ふわりとした柔らかな質感の頭髪に仕上げることができる。また、微細水粒子付与工程を仕上工程の実行終了後に実行することにより、しっとりとした質感の頭髪に仕上げることができる。
また、頭部対象部位が頭髪であり、薬剤が種類の異なる複数のトリートメント剤である場合、頭髪頭皮のケア方法は、複数のトリートメント剤をそれぞれ頭髪に付与する複数の薬剤塗布工程を有し、微細水粒子付与工程は、頭髪の状態に応じて、複数の薬剤塗布工程のいずれかの後又は乾燥工程の後に実行することができる。また、頭髪頭皮のケア方法が仕上工程を有している場合、微細水粒子付与工程は、頭髪の状態及び目的とする仕上がり感に応じて、複数の薬剤塗布工程のいずれかの後、乾燥工程の後、仕上工程の後、の少なくともいずれかのタイミングで実行することができる。これによれば、複数のトリートメント剤のいずれかの塗布後、乾燥工程の実行終了後、仕上工程の実行終了後、のいずれかのタイミングで微細水粒子を頭髪に付与することで、その前の工程を実行したことによる効果を高めることができる。そのため、頭髪の状態(例えば頭髪のダメージが大きいか小さいか)、或いは、目的とする頭髪の仕上がり感(例えば、軽めの仕上がり感、重めの仕上がり感、ふわふわとした仕上がり感、等)に応じて、適切なトリートメント施術を行うことができる。
また、頭部対象部位が頭髪である場合、頭髪頭皮のケア方法が、頭髪を熱処理する熱処理工程を有するように構成することができる。この場合、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の実行開始前に実行することができる。さらに、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の実行開始前に実行される第一微細水粒子付与工程と、熱処理工程の実行終了後に実行される第二微細水粒子付与工程を含んでも良い。ここで、熱処理工程とは、頭髪に熱を与えることにより頭髪の形状を所望の形状に維持する工程である。
これによれば、例えば縮毛矯正の施術において頭髪に熱処理を施す前に微細水粒子を頭髪に付与することにより、仕上がり時の頭髪を柔らかくすることができるとともに、熱処理によって頭髪を所定の形状に整える効果を高めることができる。また、熱処理後に再度微細水粒子を頭髪に付与することにより、より一層、仕上がり時の頭髪を柔らかくすることができる。
微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後又は乾燥工程の実行終了後に実行されても良い。好ましくは、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前、乾燥工程の実行と同時、乾燥工程の実行終了後、の少なくともいずれかのタイミングで実行されても良い。これにより、微細水粒子が頭部対象部位に付与されて、頭部対象部位のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭部対象部位が修復される。また、乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行することにより、濡れた頭部対象部位(例えば頭髪)を乾かしながら微細水粒子が頭部対象部位に付与される。これにより工程時間の短縮を図ることができる。また、乾燥工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実行することにより、乾いた頭部対象部位(例えば頭髪)に微細水粒子が付与される。これにより微細水粒子を効率的に頭部対象部位に浸透させることができ、頭部対象部位のダメージの修復効果を高めることができる。
また、微細水粒子付与工程において、頭部対象部位に、温度が40℃を超えない微細水粒子を付与すると良い。これによれば、微細水粒子付与工程にて、頭部対象部位に付与される微細水粒子の温度が40℃以下と高温ではないので、頭部対象部位が高温に晒されない。このため微細水粒子付与工程の実行によって頭部対象部位はダメージを受けない。
また、本開示は、温度低下により表面の水分を吸収する吸収状態となり、温度上昇により吸収した水分を大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子として放出する放出状態となる微細水粒子発生素子(11)と、微細水粒子発生素子(11)が放出した微細水粒子を人体の頭髪及び頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位に付与する付与手段(12)と、微細水粒子発生素子(11)と付与手段(12)とを制御する制御手段(23)と、頭部対象部位の洗浄実行前の期間と頭部対象部位の乾燥実行後の期間との間に、微細水粒子を頭部対象部位に付与するために操作される操作部(21)と、を備える、頭髪頭皮のケア装置を提供する。これによれば、放出状態の微細水粒子発生素子から放出された大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を頭部対象部位に付与することにより、頭部対象部位のダメージを軽減若しくはダメージを受けた頭部対象部位を修復することができる。
本開示に係る頭髪頭皮のケア装置は、操作部(21)が、洗浄実行に先立つ頭部対象部位への薬剤塗布実行前の期間と頭部対象部位の乾燥実行後の期間との間に、微細水粒子を前記頭部対象部位に付与するために操作される、ように構成されていても良い。これによれば、薬剤の効果をより一層高めることができる。
本開示に係る頭髪頭皮のケア装置は、制御手段(23)が、頭部対象部位に、温度が40℃を超えない微細水粒子を付与する、ように構成されていても良い。これによれば、細水粒子発生素子から放出されて頭部対象部位に付与される微細水粒子の温度が40℃以下と高温ではないので、頭部対象部位が高温に晒されない。このため微細水粒子付与工程の実行によって頭部対象部位はダメージを受けない。
本開示に係る頭髪頭皮のケア装置は、制御手段(23)が、頭部対象部位に、頭髪の蛋白質構造のガラス転移点以上の温度の微細水粒子を付与する、ように構成されていても良い。これによれば、微細水粒子発生素子から放出されて頭部対象部位に付与された微細水粒子が頭髪に浸透することによって、頭髪の構造変化が起き易くなる。そのため頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するという効果を高めることができる。
本開示に係る頭髪頭皮のケア装置は、付与手段(12)により微細水粒子が付与される頭部対象部位が頭髪を含み、微細水粒子発生素子(11)が水の単分子よりも大きな微細水粒子を放出することにより、微細水粒子が頭髪内に留まり頭髪のキューティクルの状態を改善する、ように構成されていても良い。
本開示に係る頭髪頭皮のケア装置は、付与手段(12)により微細水粒子が付与される頭部対象部位が頭髪を含み、微細水粒子発生素子(11)が無帯電の微細水粒子を放出することにより、微細水粒子が頭髪内に浸透し頭髪のキューティクルの状態を改善する、ように構成されていても良い。
図1は、微細水粒子放出装置の概略構成を表す図である。 図2は、微細水粒子発生素子の概略構成を示す図である。 図3は、微細水粒子発生素子の断面概略図である。 図4Aは、第一実施形態に係るケア方法の各工程の実行順序を示す図である。 図4Bは、第一実施形態に係り、薬剤塗布工程が2回実行される場合における、工程の実行順序の例を示す図である。 図4Cは、第一実施形態に係り、薬剤塗布工程が2回実行される場合における、工程の実行順序の別の例を示す図である。 図5は、各処理A~Dによりカラーが施術されたサンプルA1,B1,C1,D1についての色差を棒グラフで表した図である。 図6は、各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについての色差S7とS14とを比較した図である。 図7は、ブリーチ施術後にパーマを施術したサンプルA3,B3,C3の外観写真である。 図8は、処理Bによるブリーチ施術後の頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図9は、従来処理によるブリーチ施術後の頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図10は、第二実施形態に係るケア方法の各工程の実行順序を示す図である。 図11は、各サンプルの毛元についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の前後において評価した結果を示すグラフである。 図12は、各毛髪サンプルの毛先についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の前後において評価した結果を示すグラフである。 図13は、各サンプルの硬さの主観評価を示すグラフである。 図14は、各サンプルに対して算出した、水付与前剛性、水付与直後剛性、水付与1日後剛性、の変化を表すグラフである。 図15は、サンプルA5から抜き出した頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図16は、サンプルB5から抜き出した頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図17は、サンプルC5から抜き出した頭髪のSEM画像(1000倍)である。 図18は、毛髪のキューティクルの向きを示す概略図である。 図19は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6,N6について求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。 図20は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6,N6について求めたヒステリシス変化幅を比較したグラフである。 図21は、実施例10の各サンプルにて実行される微細水粒子付与工程の実行タイミングが示された、トリートメント施術の各工程の実行順序を示す図である。 図22は、実施例10の各薬剤塗布工程に用いる各薬剤の性質の一例を示す図である。 図23は、図21のタイミングC6,D6,E6,F6で微細水粒子付与工程を実行した場合における、トリートメント施術後の頭髪への効果、仕上がり感、及びそのタイミングで微細水粒子を付与するのに向いている髪質、を示す表である。 図24は、サンプルC6,D6,F6,P6のそれぞれについて測定したヒステリシス変化幅と曲げ剛性値変化率との関係を示す図である。 図25Aは、従来から実施されている2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程を示す。 図21Bは、第四実施形態に係る2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程を示す。 図22は、実施例11における従来処理、処理F1、処理F2、処理F3の各工程を示す図である。 図27は、各処理によりパーマ施術が行われた各サンプルA7,B7,C7,D7のウェーブ効率を比較した図である。 図28は、第五実施形態に係るブリーチ施術の各工程を示す図である。 図29Aは、第一比較処理によるブリーチ施術の各工程を示す図である。 図29Bは、第二比較処理によるブリーチ施術の各工程を示す図である。 図30は、各処理(本実施例処理、第一比較処理、第二比較処理)によりブリーチ施術されたそれぞれのサンプルA8、B8、C8を撮影した写真である。 図31は、熱処理を伴う施術の例を示す図である。 図32は、実施例13にて行われた縮毛矯正処理の各工程を示す図である。 図33は、サンプルA9,B9,C9,D9,N9のそれぞれについて求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。
(第一実施形態)
第一実施形態では、薬剤の塗布を伴う頭髪のケア方法、すなわち薬剤塗布工程を含む頭髪のケア方法について説明する。
薬剤の塗布を伴う頭髪のケア方法は、本実施形態では、少なくとも以下の4工程を経て行われる。
(1)薬剤塗布工程
薬剤塗布工程では、頭髪に薬剤が塗布される。例えば、カラーを施術する場合、頭髪にカラー剤が塗布され、トリートメントを施術する場合、頭髪にトリートメント剤が塗布され、パーマを施術する場合、頭髪にパーマ剤が塗布され、ブリーチを施術する場合、頭髪にブリーチ剤が塗布される。塗布方法は、一般的には刷毛塗りであるが、スプレーにより塗布しても良い。
(2)洗浄工程
洗浄工程では、頭髪に塗布した薬剤を除去するために、頭髪が洗浄される。この洗浄は一般的には水洗であるが、薬剤塗布工程にて塗布した薬剤を洗浄するための薬剤(洗浄用薬剤)を用いても良い。この場合、洗浄用薬剤は、水洗いの前に頭髪に塗布しても良いし、洗浄用薬剤を水に混ぜた状態で頭髪を洗浄しても良い。洗浄方法は、一般的にはシャワーによる水洗いを含む。従って、洗浄工程の実行が終了した頭髪は、濡れている。
(3)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄工程にて洗浄して濡れている頭髪を乾燥させる。乾燥方法として、ドライヤーを用いて温風或いは熱風を濡れた頭髪に吹き付けて頭髪から水分を吹き飛ばし或いは蒸発させることによって水分を除去する方法が、一般的である。
(4)微細水粒子付与工程
微細水粒子付与工程では、頭髪に微細水粒子を付与する。この微細水粒子付与工程については後述する。
上記の4つの工程のうち、薬剤塗布工程、洗浄工程、乾燥工程は、この順に実行される。ここで、洗浄工程は、薬剤塗布工程の実行終了から所定時間が経過した後に実行される。つまり、薬剤塗布工程の実行終了後、頭髪をしばらくの間、放置する。従って、薬剤塗布工程の実行終了後、所定時間が経過するまでは、放置工程が実行されている。この所定時間(放置時間)は、塗布する薬剤により異なるが、例えば5分~30分を例示できる。この所定時間の間に、頭髪に塗布した薬剤が頭髪に浸透するとともに反応する。従って、この所定時間(放置時間)の間は、薬剤の浸透・反応が進行中であると言える。すなわち、放置工程は、薬剤の浸透・反応工程であるとも言える。放置工程にて薬剤が頭髪に浸透・反応することにより、頭髪に所定の効果を及ぼす。この効果は、例えばカラーの施術であれば、頭髪を所定の色に染める効果であり、トリートメントの施術であれば、頭髪に栄養を与えるとともに頭髪を柔らかくする効果であり、ブリーチの施術であれば、頭髪の色を脱色する効果であり、パーマの施術であれば、頭髪に適切な形状のウェーブを形成する効果である。なお、薬剤塗布工程の実行前に、毛髪診断等で頭髪がダメージを受けていることが予めわかっているような場合は、本実施形態のケア方法を行う前に、頭髪のダメージを修復するための前処理工程を実行しても良い。
微細水粒子付与工程では、上記したように、微細水粒子が頭髪に付与される。具体的には、微細水粒子付与工程では、40℃を超えない温度(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上であり40℃未満)であり、且つ50nm以下の大きさを有する複数の微細な水粒子が、例えば送風により空気とともに頭髪まで運ばれて頭髪に付与される。本実施形態では、一例として、微細水粒子放出装置を用いて空気とともに頭髪に無帯電の微細水粒子が付与される。
図1は、微細水粒子放出装置の概略構成を表す図である。図1に示すように、微細水粒子放出装置1は、微細水粒子放出ユニット10と、制御ユニット20とを備える。
微細水粒子放出装置1が備える微細水粒子放出ユニット10は、微細水粒子発生素子11と、ファン12と、入口フィルタ13aと、出口フィルタ13bと、ケース14とを備える。
ケース14は、略円筒状に形成され、内部に一方端から他方端に亘って連通する流路14aが形成される。ケース14の一方端側には入口フィルタ13aが取り付けられるとともに他方端側には出口フィルタ13bが取り付けられる。また、ケース14は、第一ケース部141と第二ケース部142とを有し、これらが軸方向に沿ってつながるように形成される。第一ケース部141の開口がケース14の一方端の開口である吸入口14inを形成し、第二ケース部142の開口がケース14の他方端の開口である放出口14outを形成する。
ファン12は、図示しないモータにより回転駆動するプロペラファンであり、ケース14の第一ケース部141内の流路14a内に収容される。なお、ファン12は、シロッコファン等でも良い。ファン12は、モータの回転に連動して回転して、ケース14の吸入口14inから空気を流路14a内に吸入し、吸入した空気をケース14の放出口14outから放出することができるように構成される。
微細水粒子発生素子11は、ファン12とともにケース14の流路14a内に配設される。微細水粒子発生素子11は、ケース14の第二ケース部142内の流路14a内に配設される。図1においては、微細水粒子発生素子11は、ファン12よりも流路14aの下流側(放出口14outに近い側)に配設される。
図2は、第二ケース部142内に配設された微細水粒子発生素子11の概略構成を示す図である。図2に示すように、微細水粒子発生素子11は、第二ケース部142内の流路14aの横断面の全体に広がるように配設される。ただし、微細水粒子発生素子11は、空気が流通可能なように形成される。従って、流路14aを吸入口14inから放出口14outに向かって流れる空気は、微細水粒子発生素子11を通過することになる。
図3は、微細水粒子発生素子11の断面概略図である。微細水粒子発生素子11は、図3に示すように、基材111と、基材111の一表面或いは両表面(図3では一表面)に形成された導電性高分子膜112とを有する。基材111は、ステンレス系金属、銅系金属等の金属材料、炭素材料、導電性セラミックス材料(例えばITO等)、導電性樹脂材料(例えば、金属蒸着された樹脂フィルム、ナノ銀コーティング樹脂、CNT(カーボンナノチューブ)コーティング樹脂)、等の、導電性を有する材料で形成される。本実施形態では、アルミニウムが添加されたステンレス鋼の金属箔が用いられる。基材111は、流路14a内に配設されたときに、流路14a内の空気が流通可能であるような形状に形成される。さらに、基材111は、流路14a内に配設されたときに、流路14a内を流れる空気との接触面積ができるだけ大きくなるように、すなわち表面積ができるだけ大きくなるように、形成される。この場合、基材111は、例えば、複数の平板により形成されていても良い。また、基材111は、流路14aに垂直な断面形状がハニカム形状又は渦巻き形状となるように形成されていてもよい。
導電性高分子膜112は、導電性を有する高分子化合物、例えばチオフェン系の導電性高分子化合物により膜状に形成される。本実施形態では、導電性高分子膜は、チオフェン系の導電性高分子のうち、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸))により形成される。PEDOT/PSSは、水に不溶なPEDOTが集合したコアを親水的なPSS(シェル)が取り囲んだコアシェル構造を呈し、単体のコアシェルの形状は概ね楕円体形状である。このような楕円体形状の粒子(コアシェル粒子)が整列して積層構造をなすことにより、導電性高分子膜112が膜状に形成される。そして、隣接するコアシェル粒子間に2nm程度のナノメートルサイズの隙間が形成され、斯かる隙間が繋がることにより、導電性高分子膜112の表面に開口するナノチャンネルが形成される。また、各コアシェル粒子の中央のコア(PEDOT)が疎水性であるため、シェル(PSS)の外周に親水性のスルホン酸基が多く存在している。このため,コアシェル粒子の外壁に囲まれているナノチャンネルにはスルホン酸基が多く存在している。スルホン酸基は極性官能基であり水素結合可能である。従って、ナノチャンネル内の空気中の水分がスルホン酸基と水素結合して、結合水として、ナノチャンネル内に保持され得る。
導電性高分子膜112の表面の水分量がナノチャンネル内の結合水の水分量よりも多い場合には、両者の水分濃度差を駆動源として表面の水分がナノチャンネル内に移動して、結合水として保持される。これによりナノチャンネル内に吸水される。その反対に、表面の水分量がナノチャンネル内の結合水の水分量よりも少ない場合には、両者の水分濃度差を駆動源としてナノチャンネル内の結合水が表面に向かって移動する。これによりナノチャンネルから放水される。このように、導電性高分子膜112は、水分濃度差により、水を吸収する吸収状態と、水を放出する放出状態が切り替えられるように構成される。
また、導電性高分子膜112の温度を上昇させると、水分濃度差により放水される場合と比べて放水がより促され、導電性高分子膜の温度を低下させると、水分濃度差により吸水される場合と比べて吸水がより促される。このように、導電性高分子膜112は、温度変化により、吸収状態と放出状態が切り替えられるようにも構成される。
また、ナノチャンネルの流路幅は、概ね2nm程度である。従って、ナノチャンネルから放出される水分は、2nm以下の大きさのナノ粒子である。大きさが2nmのナノ粒子(微細水粒子)は、ナノチャンネルの開口付近で凝集(クラスタ化)しても、50nm以下の大きさに留まる。このため導電性高分子膜112から放出される微細水粒子の大きさ(例えば粒径)は、50nm以下である。加えて、ナノチャンネル内に保持されていた結合水は帯電していない。従って、導電性高分子膜112からは、大きさが50nm以下であり、且つ、無帯電の微細水粒子が放出される。
図1に示すように、微細水粒子放出装置1が備える制御ユニット20は、操作部21と、電源回路22と、制御部23とを備える。操作部21は、例えば微細水粒子放出ユニット10を支持する筐体等の表面に設けられた複数の操作ボタンにより構成される。これらの操作ボタンは、電源のオンオフや運転モードの選択等を行うためにユーザにより操作される。
電源回路22には、AC100V等の電力が供給される。電源回路22は、第一電線24によりファン12のモータに電気的に接続され、第二電線25により微細水粒子発生素子11の基材111に電気的に接続される。電源回路22は、供給された電力をファン12のモータの駆動に適した電力に変換し、変換した電力を第一電線24に出力可能に構成される。さらに、電源回路22は、供給された電力を、基材111への供給に適した電力に変換し、変換した電力を第二電線25に出力可能に構成される。
第一電線24には、第一常開型切替スイッチ26が介装され、第二電線25には、第二常開型切替スイッチ27が介装される。第一常開型切替スイッチ26は、開作動することにより第一電線24の導通を遮断し、閉作動することにより第一電線24の導通を許容する。第二常開型切替スイッチ27は、開作動することにより第二電線25の導通を遮断し、閉作動することにより第二電線25の導通を許容する。
制御部23には、操作部21の操作状況が入力される。制御部23は、入力された操作部21の操作状況に応じて、第一常開型切替スイッチ26及び第二常開型切替スイッチ27の切り換え状態を制御する。
上記構成の微細水粒子放出装置1は、「吸水モード」と「放水モード」とのいずれかの動作モードに従って動作することができるように構成される。この場合、頭髪又は頭皮の状態を状況判断して自動で選択するモードの切り換えが行えるようにしても良いし、ユーザが操作部21の操作ボタンを操作することにより、手動で選択するモードの切り換えが行えるようにしても良い。さらに、ユーザの操作に基づいて、吸水モードと放水モードが所定のタイミングで切り替わるように構成することも可能である。なお、吸水モード及び放水モード以外に、他の動作モードが存在していても良い。
放水モードが選択されたとき、制御部23は、第一常開型切替スイッチ26及び第二常開型切替スイッチ27の双方が閉作動するように各切替スイッチを制御する。これにより、電源回路22からファン12のモータ及び微細水粒子発生素子11の基材111の双方に電力が供給される。ファン12のモータに電力が供給されることにより、モータが回転するとともにこれに連動してファン12が回転し、ケース14の吸入口14inから流路14a内に空気が吸入される。流路14aに吸入された空気は、微細水粒子発生素子11を経由した後に、放出口14outから放出される。また、微細水粒子発生素子11の基材111に通電されて導電性の基材111に電流が流れることにより、基材111がジュール熱を発生して発熱する。基材111の発熱は基材111上の導電性高分子膜112に伝熱され、これにより導電性高分子膜112の温度が上昇する。なお、導電性高分子膜112自体に通電して導電性高分子膜112を発熱及び温度上昇させてもよいし、導電性高分子膜112の存在する空間を温めて温度上昇させても良い。こうして導電性高分子膜112が温度上昇することにより導電性高分子膜112からの放水が促される。その結果、導電性高分子膜112から、無帯電且つ50nm以下の大きさの微細水粒子が放出される。放出された微細水粒子は、流路14aを流れる空気に混ざり、空気とともに放出口14outから放出される。また、放水モードであるときには、制御部23は、導電性高分子膜112から放出される微細水粒子の温度が40℃を超えないように(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満となるように)導電性高分子膜112の温度を制御する。具体的には、制御部23は、導電性高分子膜112から放出される微細水粒子の温度が40℃を超えないように(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満となるように)、基材111への通電量を制御する。このため、導電性高分子膜112からは、無帯電且つ50nm以下の大きさでありさらに温度40℃以下(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)の微細水粒子が放出される。なお、放水モードであるとき、制御部23は、ファン12のモータへの通電量を制御して放出口14outから放出される空気流量を調整することができるように構成されていてもよい。
一方、吸水モードが選択されたとき、制御部23は、第一常開型切替スイッチ26が閉作動し、第二常開型切替スイッチ27が開作動するように、各切替スイッチを制御する。第一常開型スイッチ26が閉作動することにより、電源回路22からファン12のモータに電力が供給され、モータが回転するとともにこれに連動してファン12が回転して、ケース14の吸入口14inから空気が流路14a内に流入する。そして、流入した空気は、微細水粒子発生素子11を経由した後に、放出口14outから放出される。また、第二常開型切替スイッチ27が開作動するので、微細水粒子発生素子11の基材111には電力は供給されない。このため基材111は発熱せず、基材111から導電性高分子膜112に熱が伝わることはない。また、ファン12の回転による送風によって導電性高分子膜112が冷却されるため、導電性高分子膜112の温度が低下する。こうして導電性高分子膜112が温度低下することにより導電性高分子膜112への吸水が促される。その結果、微細水粒子発生素子11を通過する空気中の水分が導電性高分子膜112に吸収される。
このように、微細水粒子放出装置1の動作モードが「放水モード」であるとき、微細水粒子放出ユニット10のケース14の放出口14outから、無帯電且つ50nm以下の大きさであり温度が40℃を超えない(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満の)微細水粒子が空気と共に放出される。従って、微細水粒子付与工程を実行するときには、微細水粒子放出装置1の動作モードを放水モードに設定し、頭髪にケース14の放出口14outを向けた状態で、微細水粒子放出装置1を駆動させる。なお、水の単分子の大きさは0.3nm程度であるので、微細水粒子放出装置1から放出される微細水粒子の大きさは、0.3nmより大きく50nm以下である。
本実施形態において、微細水粒子付与工程は、任意のタイミングで実行することができる。特に、微細水粒子付与工程は、以下の4つのタイミングのいずれか一つ又は複数のタイミングで実行することができる。
(A)薬剤塗布工程の実行開始前(前処理工程を実行する場合は、前処理工程の実行開始前または前処理工程の実行終了後であって薬剤塗布工程の実行開始前)
(B)薬剤塗布工程の実行終了後(例えば、薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前)
(C)乾燥工程の実行終了後
(D)乾燥工程の実行と同時
微細水粒子付与工程が上記(A)のタイミングで実行された場合、図4A(a)に示すように、「微細水粒子付与工程→薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行される頭髪のケア方法を、処理Aと呼ぶ。
微細水粒子付与工程が上記(B)のタイミングで実行された場合、例えば図4A(b)に示すように、「薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→乾燥工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行される頭髪のケア方法を、処理Bと呼ぶ。なお、処理Bにおいて、微細水粒子付与工程は、薬剤塗布工程の実行終了から洗浄工程の実行開始までの間であって、薬剤塗布後の放置工程の実行とほぼ同時に(すなわち薬剤塗布後の放置時間内に)行っても良いし、放置工程の実行終了直後(すなわち薬剤塗布後の放置時間の経過直後に)に行っても良い。また、この処理B及び上記の処理Aでは、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行開始前のタイミングに実行される。なお、微細水粒子付与工程が上記(B)のタイミングで実行される場合、各工程は、「薬剤塗布工程→洗浄工程→微細水粒子付与工程→乾燥工程」の順で実行されることもある。
微細水粒子付与工程が上記(C)のタイミングで実行された場合、「薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程→微細水粒子付与工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行され、且つ、微細水粒子付与工程を、乾燥工程の実行終了直後~6時間経過前に実行する頭髪のケア方法を、処理Cと呼ぶ。処理Cの各工程の実行順序を図4A(c)に示す。また、微細水粒子付与工程を、乾燥工程の実行終了後、6~30時間経過後に実行する頭髪のケア方法を、処理Dと呼ぶ。処理Dの各工程の実行順序を図4A(d)に示す。
微細水粒子付与工程が上記(D)のタイミングで実行された場合、「薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥+微細水粒子付与工程」の順で各工程が実行される。各工程がこの順で実行される頭髪のケア方法を、処理Eと呼ぶ。処理Eの各工程の実行順序を図4A(e)に示す。
また、薬剤塗布工程は、一連の処理の中で複数回実行されても良い。薬剤塗布工程が複数回実行される場合、洗浄工程は、各薬剤塗布工程の実行終了後に行われても良いし、最後の薬剤塗布工程の実行終了後に1回だけ行われても良い。さらに、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、微細水粒子付与工程は、いずれかの薬剤塗布工程に対して、上記の(A)又は(B)に示すタイミングで実行することができる。例えば、薬剤塗布工程が2回行われる場合、以下に示す順で、各工程を実行することができる。
・第一薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(a)参照)
・第一薬剤塗布工程→洗浄工程→第二薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(b)参照)
・第一薬剤塗布工程→洗浄工程→微細水粒子付与工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(c)参照)
・微細水粒子付与工程→第一薬剤塗布工程→洗浄工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4B(d)参照)
・第一薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4C(e)参照)
・第一薬剤塗布工程→第二薬剤塗布工程→微細水粒子付与工程→洗浄工程→乾燥工程(図4C(f)参照)
・微細水粒子付与工程→第一薬剤塗布工程→第二薬剤塗布工程→洗浄工程→乾燥工程(図4C(g)参照)
図4B(a)、図4B(c)及び図4C(e)に示す工程順によれば、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程(一の薬剤塗布工程)と第二薬剤塗布工程(その次の薬剤塗布工程)との間、すなわち、第一薬剤塗布工程(一の薬剤塗布工程)の実行終了後であって第二薬剤塗布工程(その次の薬剤塗布工程)の実行開始前に実行される。また、図4B(b)及び図4C(f)に示す工程順によれば、微細水粒子付与工程は、第二薬剤塗布工程の実行終了後に実行される。また、図4B(d)及び図4C(g)に示す工程順によれば、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程の実行開始前に実行される。また、図4C(g)に示す工程順によれば、第一薬剤塗布工程と第二薬剤塗布工程が連続的に実行されているので、これらの薬剤塗布工程を一つの薬剤塗布工程とみることができ、この場合、図4C(g)に示す工程順に行われる処理は、図4Aの処理Bと同じになる。尚、上記の例は、複数回の薬剤塗布工程を実行する場合の各工程順を例示したに過ぎず、上記に例示した以外の工程順で微細水粒子付与工程を実行することもできる。
また、薬剤塗布工程が複数回実行される場合、各薬剤塗布工程にて用いられる薬剤は、異なる種類の薬剤でもよいし、同一種類の薬剤でも良い。例えば、ある薬剤塗布工程にて用いる薬剤がパーマ剤であり、別の薬剤塗布工程にて用いる薬剤がブリーチ剤であってもよい。また、薬剤を複数回塗布することにより薬剤塗布が完了する場合においても、薬剤塗布工程が複数回実行されると言うこともできる。例えば、パーマ剤や縮毛矯正剤のように2液用の薬剤を用いる場合、1剤(第一薬剤)を塗布する薬剤塗布工程(第一薬剤塗布工程)と、2剤(第二薬剤)を塗布する薬剤塗布工程(第二薬剤塗布工程)が、それぞれ実行される。また、例えば、複数回の薬剤塗布工程に用いる薬剤が、全て同じ種類の薬剤であってもよい。この場合、各薬剤塗布工程に用いる薬剤の成分を変えても良いし、同一成分の薬剤を用いても良い。
上記のタイミングで微細水粒子付与工程を実行することにより、無帯電であり、温度が40℃を超えず(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)、大きさが50nm以下の微細水粒子が、頭髪に付与される。頭髪に付与される微細水粒子の温度は40℃以下(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)であるので、この工程の実行により頭髪が高温に晒されてダメージを受けることはない。また、この工程の実行により、大きさ50nm以下の微細水粒子が頭髪内に浸透する。また、頭髪に付与された微細水粒子は無帯電であるので、頭髪の静電気等に引き寄せられることはない。よって、静電気等により頭髪表面に吸着して頭髪内への微細水粒子の浸透が阻害されるといったことも防止することができる。このようにして本実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪内に水分を供給することができ、これにより頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復するとともに、薬剤塗布工程にて塗布された薬剤の効果をより高めることができる。
微細水粒子付与工程にて付与する微細水粒子の温度は、40℃以下であり、好ましくは40℃未満である。さらに、微細水粒子付与工程にて付与する微細水粒子の温度は、25℃以上であると良い。頭髪がダメージを受けている場合、そのダメージは、頭髪を構成する組織の構造変化(以下、頭髪の構造変化)が引き起こされることにより、軽減され、或いはダメージを受けた組織が修復される。そして、本開示に係る微細水粒子付与工程にて微細水粒子が頭髪内に供給された場合、その微細水粒子が頭髪の組織に結合、または組織の隙間に浸透することにより頭髪の構造変化が引き起こされる。また、頭髪の構造変化が起きるか否かは、頭髪の蛋白質構造が変化する温度(ガラス転移点)に関係しており、頭髪の蛋白質構造の温度がガラス転移点以下であると、頭髪の構造変化は起き難い。頭髪内に微細水粒子を付与し、頭髪内の水分量が増えた場合、頭髪の蛋白質構造のガラス転移点は約25℃になると考えられる。それは、微細水粒子の温度が25℃未満であると、頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するという効果が得られ難いためである。そのため、頭髪頭皮に付与する微細水粒子の温度は25℃以上であるのが良い。よって、微細水粒子付与工程にて付与される微細水粒子の温度の最も好ましい範囲は、25℃以上であり且つ40℃未満である。
(実施例1:カラー処理における発色効果の確認)
4束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備した。次いで、準備したサンプルにカラーを施術した。このとき、図4Aの処理A、処理B,処理C、処理Dのそれぞれの処理を、別々のサンプルに施すことにより、処理Aによりカラーが施術されたサンプルA1、処理Bによりカラーが施術されたサンプルB1、処理Cによりカラーが施術されたサンプルC1、処理Dによりカラーが施術されたサンプルD1を、それぞれ作製した。なお、各処理A~Dにおける各工程の手順は同一であり、その概略は以下の通りである。
薬剤塗布工程:市販のカラー剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされる。
洗浄工程:薬剤塗布工程の実行終了から20分経過後、シャワーによりサンプルを水洗いしながら手指で擦ることによってサンプルから薬剤が除去される。その後、シャンプーを用いて1分間洗浄が実行され、次いで、水を用いて1分間のすすぎが実行され、次いで、リンスがサンプルに1分間塗布され、最後に水を用いて1分間のすすぎが実行される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、10秒間のタオルドライが施された後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約3分間吹き付けることにより、サンプル表面から水分が除去される。
微細水粒子付与工程:図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(空気流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
また、処理Aにおいては、微細水粒子付与工程の実行終了直後に薬剤塗布工程が実行され、処理Bにおいては、薬剤塗布工程の実行終了直後に微細水粒子付与工程が実行され、処理Cにおいては、乾燥工程の実行終了直後に微細水粒子付与工程が実行され、処理Dにおいては、乾燥工程の実行終了から24時間(1日)経過後に微細水粒子付与工程が実行された。
また、比較として、1束の頭髪のサンプルを準備し、そのサンプルに従来処理によりカラーを施術して、従来サンプルを作製した。ここで、従来処理とは、上記した手順と同様の薬剤塗布工程、洗浄工程、乾燥工程、を、この順に実行することによりカラーを施術する頭髪のケア方法である。つまり、従来処理は、微細水粒子付与工程を省略した頭髪のケア方法である。
各処理によりカラーを施術した各サンプルA1,B1,C1,D1及び従来サンプルに対し、色差計を用いて、L表色系(CIE1976L色空間)におけるL値、a値、b値が計測された。そして、計測された各値に基づいて、各サンプルA1,B1,C1,D1と従来サンプルとの色の差が、各サンプルについての色差として数値化された。ここで、各サンプルA1,B1,C1,D1についての色差は、各サンプルA1,B1,C1,D1にて計測される値と従来サンプルにて計測される値との、L色空間における距離であり、以下の式(1)により算出される。
色差=√(ΔL+Δa+Δb) (1)
ここで、
ΔL=L-L0、Δa=a-a0、Δb=b-b0
L:サンプルA1,B1,C1,D1のL
L0:従来サンプルのL
a:サンプルA1,B1,C1,D1のa
a0:従来サンプルのa
b:サンプルA1,B1,C1,D1のb
b0:従来サンプルのb
図5は、各処理A,B,C,Dによりカラーが施術された各サンプルA1,B1,C1,D1についての従来サンプルとの色差を棒グラフで表した図である。図5において、棒グラフA1はサンプルA1と従来サンプルとの色差を示し、棒グラフB1はサンプルB1と従来サンプルとの色差を示し、棒グラフC1はサンプルC1と従来サンプルとの色差を示し、棒グラフD1はサンプルD1と従来サンプルとの色差を示す。図5によれば、いずれの処理A~Dによりカラーを施術した場合にも、従来サンプルとの色差が2以上であることがわかる。また、処理A、処理D、処理B、処理C,の順に色差が大きいことがわかる。
また、目視により、従来サンプルの色は最もくすんだ色であること、従来サンプルとの色差が大きいサンプルほど、より明るく、且つ色が濃くなっていること、が観察された。従って、色差が大きいほど、より明るく、濃い色であると言える。つまり、色差が大きいほど、色の付き具合が良く、発色が良好であると言える。このことから、処理A,B,C,Dによりカラーを施術した頭髪は、従来処理によりカラーを施術した頭髪に比べて、発色をより良くすることが可能であることがわかる。つまり、本実施形態に係る頭髪のケア方法により、薬剤の効果をより一層高めることができる。特に、処理A又は処理Dによりカラーを施術することにより、より一層発色を向上させることができる。
処理A,B,C,Dによりカラーを施術した場合に発色が良好である理由を考察する。処理A,B,C,Dにて実行される微細水粒子付与工程では、温度が40℃を超えず、大きさが50nm以下であり且つ無帯電の微細水粒子が頭髪のサンプルに付与される。サンプルに付与された微細水粒子の温度は40℃を超えないので、この微細水粒子の付与により頭髪が高温に晒されない。このため微細水粒子付与工程の実行によって頭髪頭皮はダメージを受けない。また、サンプルに付与された微細水粒子は非常に小さいので、微細水粒子放出装置から放出された後に微細水粒子同士が出会う確率が非常に低く、このため微細水粒子同士が凝集する確率も低い。よって、微細水粒子は、その大きさを維持しながら、すなわち大きさが50nm以下のまま、頭髪に向かって進行する。また、頭髪の表面を構成するキューティクルは多層構造を呈しており、隣接するキューティクル間には細胞膜複合体(Cell Membrane Complex、以下、CMC)が存在する。このCMCが水や薬剤等の通り道の役割を果たす。従って、水や薬剤は、CMCを通って頭髪に浸透する。このCMCの幅は、約50nm程度である。このため、微細水粒子付与工程にて頭髪に付与された微細水粒子は、凝集することもなく50nm以下の大きさのままCMCを通って頭髪内に浸透することができる。また、微細水粒子付与工程にて頭髪に付与された微細水粒子は無帯電であるので、頭髪の静電気等に引き寄せられることはない。そのため微細水粒子付与工程にて付与された微細水粒子のほとんどが頭髪内に入り込み、頭髪表面に留まらない。
このように微細水粒子付与工程の実行により微細水粒子が効率的に頭髪内に入り込むことにより、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復される。また、微細水粒子が効率的に頭髪内に入り込むために、頭髪表面はほぼ濡れていない。このため頭髪に塗布された薬剤が微細水粒子により希釈されることもなく、よって、薬剤の希釈によって薬剤の効果を低下させるといった不具合の発生を効果的に防止することができる。
そして、処理Aの場合、薬剤塗布の前に微細水粒子が頭髪内に浸透し、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復され、頭髪に潤いが与えられる。よって、その後の薬剤塗布にて頭髪が十分に薬剤を吸収することができ、これにより発色が向上すると考えられる。また、処理Bの場合、微細水粒子の付与と薬剤の浸透が同時に行われることにより、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復されるとともに、頭髪への微細水粒子の浸透に伴って薬剤の浸透が促される。このため頭髪に十分に薬剤が浸透し、その結果、発色が向上すると考えられる。また、処理C及びDの場合、頭髪の乾燥後に水分(微細水粒子)を頭髪に供給することにより、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復されて頭髪表面のキューティクルが閉じ、これにより頭髪のツヤが向上して、発色が向上すると考えられる。
また、処理Bの場合、微細水粒子付与工程が、薬剤塗布工程の実行終了後、洗浄工程の開始までの所定時間(本例では20分)の間に実行される。薬剤塗布工程の実行終了から洗浄工程の実行開始までの間の時間には、頭髪に塗布された薬剤を頭髪に浸透させ且つ反応させるための放置工程(浸透・反応工程)が実行されている。そのためこの所定時間(すなわち放置工程)は他の処理A,C,D及び従来処理においても設定しなくてはならない。従って、必然的に設定しなければならない薬剤塗布工程の実行終了後且つ洗浄工程の実行開始前の所定時間内に(すなわち放置工程と同時に)微細水粒子付与工程を実行する処理Bは、別途微細水粒子付与工程を実行する期間を設けなくてはならない処理A,C,Dに比較して、全体的な処理時間の短縮化を図ることができるといったメリットを有する。
(実施例2:カラーの施術後の退色抑制効果の確認)
4束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備し、各サンプルについて、実施例1と同様の手順の各処理A,C,D及び従来処理によりカラーをそれぞれ施術した。これにより、処理Aによりカラーが施術されたサンプルA2、処理Cによりカラーが施術されたサンプルC2、処理Dによりカラーが施術されたサンプルD2、及び、従来処理によりカラーが施術された従来サンプルを、それぞれ作製した。
作製された各サンプルに対し、色差計を用いてL値、a値、b値が、初回値として計測された。次いで、初回値が計測された各サンプルについて、連続して、シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が繰り返された。ここで、シャンプー・リンス工程とは、シャンプーによる洗浄、水洗、リンスの塗布、水洗を、この順に行う工程である。つまり、シャンプー・リンス工程は、一般家庭における洗髪を模擬した工程である。また、乾燥工程では、ドライヤーを用いて、各サンプルが乾燥された。
各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについて繰り返して7回シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が実行された後に、再度、色差計を用いてL値、a値、b値が、7回値として、計測された。その後、7回値を求めた各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについて、連続して更に7回、シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が繰り返された。これにより、各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについて、各処理後に繰り返して14回、シャンプー・リンス工程及び乾燥工程が実行された。その後、再度、各サンプルについて、色差計を用いてL値、a値、b値が、14回値として計測された。
次に、各サンプルについて、初回値と7回値との色差S7、及び、初回値と14回値との色差S14が、上記式(1)に基づいて算出された。ここで、上記式(1)において、
ΔL=L-L0、Δa=a-a0、Δb=b-b0
L:各サンプルのL値の7回値または14回値
L0:各サンプルのL値の初回値
a:各サンプルのa値の7回値または14回値
a0:各サンプルのa値の初回値
b:各サンプルのb値の7回値または14回値
b0:各サンプルのb値の初回値
である。
図6は、各サンプルA2,C2,D2、及び従来サンプルについての色差S7と色差S14とを比較した図であり、縦軸が色差である。また、図6中、「A2」で示されるグラフは、サンプルA2についての色差S7から色差S14の変化を、「C2」で示されるグラフがサンプルC2についての色差S7から色差S14の変化を、「D2」で示されるグラフがサンプルD2についての色差S7から色差S14の変化を、「従来」で示されるグラフが従来サンプルについての色差S7から色差S14の変化を、それぞれ示す。
図6によれば、従来サンプルについては、色差S7よりも色差S14の方がかなり大きい。つまり、シャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返し回数が7回から14回まで増加すると、色差が大きくなる。これに対し、サンプルA2,C2,D2については、色差S7と色差S14とはさほど変わらない。つまり、シャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返し回数が7回から14回に増加しても、色差はさほど変化しない。また、カラーを施術した頭髪にシャンプー・リンス工程を繰り返した場合、色落ちするので、色差の変化の大きさは、色落ちの度合いの大きさと捉えることができる。つまり、色差が大きいほど、カラーの施術によりサンプルに着色した色が退色していると考えられる。従って、従来処理によりカラーを施術した場合、その後のシャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返しによる退色が大きいことがわかる。これに対し、処理A、C、Dによりカラーを施術した場合、その後のシャンプー・リンス工程および乾燥工程の繰り返しによる退色が小さいと言える。このことから、処理A、処理C、処理Dによるカラーの施術により、退色を抑制する効果が認められた。
処理A,C,Dによるカラーの施術により退色を抑制する効果が認められる理由は、カラー剤の塗布前或いは塗布後に微細水粒子を頭髪に付与して頭髪内に微細水粒子を均一に分布させることにより、頭髪内の構造が整えられて頭髪のダメージが抑えられるためであると考えられる。具体的には、微細水粒子の付与によって頭髪を過度に濡らすことなく頭髪を柔らかくした後にカラー剤を塗布する処理Aの場合には、ダメージが抑えられて柔らかくされている頭髪にカラー剤を塗布することによりカラー剤が薄まることなくより頭髪に浸透し、その結果、退色も抑制されると考えられる。また、カラー剤の塗布後に微細水粒子を頭髪に付与する処理C,Dの場合には、カラー剤塗布後に頭髪のダメージが抑えられるとともに頭髪のキューティクルが閉じてカラー剤の流出が抑えられるため、退色が抑制されると考えられる。
(実施例3:ブリーチ後にパーマを施術する場合のウェーブ形成効果の確認)
3束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備し、各サンプルについて、ブリーチ剤を用いてブリーチを施術し、その後、2液用のパーマ剤(1剤+2剤)を用いてパーマを施術した。これにより、ブリーチ後にパーマを施術したサンプルA3,B3,C3を作製した、ここで、サンプルA3は、図4Aの処理Bによりブリーチを施術後、図4Aの処理Bによりパーマを施術することにより作製し、サンプルB3は、図4Aの処理Bによりブリーチを施術後、従来処理によりパーマを施術することにより作製し、サンプルC3は、従来処理によりブリーチを施術後、従来処理によりパーマを施術することにより作製した。また、本例において、図4Aの処理Bにおけるブリーチの施術及びパーマの施術の各工程の手順の概略は、以下の通りである。また、従来処理は、図4Aの処理Bにおける各工程の手順から微細水粒子付与工程を省略した手順で行われる。
・ブリーチの施術
薬剤(ブリーチ剤)塗布工程:市販のブリーチ剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされる。
微細水粒子付与工程:図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
洗浄工程:薬剤(ブリーチ剤)塗布工程の実行終了から20分経過後、シャワーによるぬるま湯を用いてサンプルを洗いながら手指で擦ることによってサンプルから薬剤が除去される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間吹き付けることにより、サンプル表面から水分が除去される。
・パーマの施術
薬剤(パーマ剤)塗布工程:頭髪のサンプルをワインディング(ロッド巻き)した後、市販のパーマ剤の1剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされ、その後15分間放置される。その後、2剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされる。なお、薬剤塗布工程の実行終了後、20分間放置される。
微細水粒子付与工程:2剤の刷毛塗りの直後に(すなわち20分間の放置の間に)、図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
洗浄工程:薬剤(パーマ剤)塗布工程の実行終了から20分経過後(すなわち微細水粒子付与工程の実行終了後)、シャワーによりサンプルを水洗いしながら手指で擦ることによりサンプルから薬剤が除去される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間分吹き付けることにより、サンプル表面から水分が除去される。
図7は、サンプルA3,B3,C3の写真であり、図7(a)はサンプルA3を、図7(b)はサンプルB3を、図7(c)はサンプルC3を示す。図7(c)に示すように、従来処理によりブリーチ及びパーマを施術した場合、頭髪に十分にウェーブが形成されない。これに対し、図7(a)に示すように、処理Bによりブリーチ及びパーマを施術した場合、頭髪に適切にウェーブが形成される。このことから、処理Bを用いることにより、ブリーチ後にパーマを施術して頭髪にウェーブを形成することが可能となる。
サンプルC3が十分にウェーブを形成できないのは、ブリーチの施術により頭髪が大きなダメージを受けて頭髪の弾力性が損なわれていることが原因であると考えられる。これに対し、サンプルA3では、ブリーチの施術及びパーマの施術の際に、サンプルに、大きさが50nm以下、無帯電であり且つ温度40℃以下の微細水粒子を付与している。この微細水粒子が、上述したようにサンプルの頭髪表面に留まることなく頭髪内に浸透していく。そして、頭髪内に浸透した水分により例えばキューティクルが閉じ、ダメージを受けている頭髪が修復される。このため、ブリーチの施術後の頭髪のダメージは少なく、また弾力性も十分に有する。加えてパーマの施術の際にも微細水粒子が頭髪に付与されることによって、頭髪のダメージが軽減される。このためパーマの施術によって十分に頭髪にウェーブが形成されると考えられる。
(実施例4:ブリーチ施術後の頭髪のキューティクルの状態の確認)
実施例3にて処理Bによりブリーチを施術したサンプル(パーマ施術前のサンプルA3またはサンプルB3)から頭髪を抜き出し、SEMにより表面のキューティクルの状態を確認した。また、実施例3にて従来処理によりブリーチを施術したサンプル(パーマ施術前のサンプルC3)から頭髪を抜き出し、SEMにより表面のキューティクルの状態を確認した。
図8は、処理Bによりブリーチを施術したサンプルから抜き出した2本の頭髪A41,A42のSEM画像(1000倍)、図9は、従来処理によりブリーチを施術したサンプルから抜き出した2本の頭髪N1,N2のSEM画像(1000倍)である。
図8に示すように、処理Bによりブリーチを施術した頭髪A41,A42の表面のキューティクルは閉じていることがわかる。つまりキューティクルの浮きが少ない。これに対し、図9に示すように、従来処理によりブリーチを施術した頭髪N1,N2の表面のキューティクルは開いている。つまりキューティクルの浮きが目立つ。キューティクルの浮きが目立つ場合、頭髪がダメージを受けている可能性がある。一方、キューティクルの浮きが少ない場合、頭髪がダメージを受けていないと考えられる。このことから、処理Bによりブリーチを施術することにより、頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復できることがわかる。
(第二実施形態)
第二実施形態では、薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法、すなわち薬剤塗布工程を含まない頭髪のケア方法について説明する。ここで、薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法とは、薬剤を用いることなしに、頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復し、また頭髪のツヤを高める方法を言う。なお、従来において、頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するために、一般的には、シャンプー等によって頭髪を洗浄した後に頭髪に薬剤としてトリートメント剤が塗布される。このトリートメント剤の塗布により頭髪が保湿されるとともに頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復される。これに対して本実施形態では、トリートメント剤等の薬剤を頭髪に塗布することなく、頭髪のダメージが軽減或いはダメージを受けた頭髪が修復され得る。
薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法は、本実施形態では、少なくとも以下の3工程を経て行われる。
(1)洗浄工程
洗浄工程では、頭髪に付着している汚れ等の汚染物を除去するために、頭髪が洗浄される。洗浄方法として、例えば、シャンプーによる頭髪頭皮の洗浄およびその後の水洗を例示できる。洗浄工程は、水洗のみにより実行されていても良い。
(2)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄工程にて洗浄して濡れている頭髪を乾燥させる。乾燥方法として、ドライヤーを用いて温風或いは熱風を濡れた頭髪に吹き付けることにより頭髪から水分を除去させる方法が、一般的である。
(3)微細水粒子付与工程
微細水粒子付与工程では、頭髪に、無帯電であり、温度40℃を超えず(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)、且つ大きさが50nm以下の微細水粒子が付与される。この場合、第一実施形態で示した微細水粒子放出装置1を用いて頭髪に微細水粒子を付与することができる。
上記3つの工程のうち、洗浄工程、乾燥工程は、この順に実行される。一方、微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後または乾燥工程の実行終了後に実行されるか、乾燥工程の実行と同時に実行される。図10は、本実施形態に係る処理に必要な各工程の実行順序を示す図である。図10(a)が、微細水粒子付与工程を洗浄工程の実行終了後(正確には洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前)に実行する場合の各工程の実行順序を、図10(b)が、微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行終了後に実行する場合の各工程の実行順序を、図10(c)が、微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行と同時に実行する場合の各工程の実行順序を、それぞれ示す。
微細水粒子付与工程が実行されることにより、無帯電であり、温度が40℃を超えず(好ましくは40℃未満、より好ましくは25℃以上40℃未満)、大きさが50nm以下の微細水粒子が、頭髪に付与される。頭髪に付与される微細水粒子の温度は40℃を超えないので、この工程の実行により頭髪が高温に晒されてダメージを受けることはない。また、この工程の実行により、大きさ50nm以下の微細水粒子が頭髪のキューティクル間のCMCを通って頭髪内に浸透する。また、頭髪に付与された微細水粒子は無帯電であるので、頭髪の静電気等に引き寄せられることはない。よって、静電気等により頭髪表面に吸着して頭髪内への微細水粒子の浸透が阻害されるといったことも防止することができる。このようにして本実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪内に水分を供給することができ、これにより頭髪に潤いをもたらし、頭髪表面のキューティクルを閉じて頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復するとともに、頭髪のツヤを向上させ、さらに頭髪を保湿することができる。
また、図10(c)に示すように、乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行して、濡れた頭髪を乾かしながら頭髪に微細水粒子を付与することで、全体の処理時間の短縮化を図ることができる。
(実施例5…頭髪のツヤの有無の主観評価)
8束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)を準備し、準備した各サンプルについて、洗浄工程、乾燥工程をこの順で実行し、その後、乾燥したサンプルに対して微細水粒子付与工程を実施した。各工程の手順の概略は、以下の通りである。
洗浄工程:一定量の市販のシャンプーがサンプルに塗布され、次いで手指でサンプルが擦られる。その後、シャワーにより水洗いしながら手指でサンプルを擦ることによりサンプルに付着した汚染物及びシャンプーの薬液が除去される。
乾燥工程:洗浄工程の実行終了後、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約3分間吹き付けることにより、サンプル表面の水分が除去される。
微細水粒子付与工程;図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、20分間、サンプルに付与される。
次いで、3名の美容師が、微細水粒子付与工程の実行前後における各サンプルの毛元部分と毛先部分のツヤの有無について主観評価を実施した。主観評価は、3名の美容師が各サンプルについて、微細水粒子付与工程の実行前後におけるツヤの有無を、1,2,3,4,5の5段階で評価して、評点を付与することにより行われる。ここで、評点は、1,2,3,4,5のいずれかの整数であり、ツヤがあるほど評点が高く、ツヤが無いほど評点が低くなるように、各美容師が主観により判断して評点を付与する。そして、3名の美容師が付与した評点の平均値が、そのサンプルのツヤの有無に関する評点と決定された。
図11は、各サンプルの毛元部分についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の実行前後において評価した結果を示すグラフであり、図12は、各サンプルの毛先部分についてのツヤの有無を、微細水粒子付与工程の実行前後において評価した結果を示すグラフである。図11及び図12のグラフの横軸の数値がサンプルの番号(No.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8)であり、各番号に対応する欄には、微細水粒子付与工程の実行開始前に評価したツヤの有無に関する評点(平均値)の棒グラフ(グラフA)が左側に、微細水粒子付与工程の実行終了後に評価したツヤの有無に関する評点(平均値)の棒グラフ(グラフB)が右側に、それぞれ並べて記載されている。また、各図に記載の棒グラフは、評点3を基準に、評点3よりも多い評点であれば上方に延び、評点3よりも少ない評点であれば下方に延びるように、それぞれ描かれている。
図11及び図12に示すように、頭髪の毛元部分及び毛先部分のいずれにおいても、微細水粒子付与工程の実行前の評点よりも微細水粒子付与工程の実行後の評点の方が高いサンプルの割合が、8サンプル中7サンプルである。つまり、サンプル8束中の7束にて、微細水粒子付与工程の実行により頭髪のツヤが向上したとの効果が認められた。
(実施例6…微細水粒子付与工程の前後における頭髪の硬さの主観評価)
また、上記実験にて用いたサンプルNo.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8について、微細水粒子付与工程の実行前後におけるサンプルの硬さを3名の美容師が手指で確認した。そして、微細水粒子付与工程の実行前後のサンプルの硬さの主観評価を、上記と同様の5段階評価にて行い、その平均値を算出した。ここで、評点は、1,2,3,4,5のいずれかの整数であり、硬いほど評点が高く、柔らかいほど評点が低くなるように、各美容師が主観により判断して評点を付与する。
図13は、各サンプルの硬さを、微細水粒子付与工程の前後において評価した結果を示すグラフである。図13の横軸の数値がサンプルの番号(No.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8)であり、各番号に対応する欄には、微細水粒子付与工程の実行開始前に評価した硬さの評点(平均値)の棒グラフ(グラフC)が左側に、微細水粒子付与工程の実行終了後に評価した硬さの評点(平均値)の棒グラフ(グラフD)が右側に、それぞれ並べて記載されている。また、図13に記載の棒グラフは、評点3を基準に、評点3よりも多い評点であれば上方に延び、評点3よりも少ない評点であれば下方に延びるように、それぞれ描かれている。
図13からわかるように、8サンプル中6サンプルにおいて、微細水粒子付与工程の実行終了後のサンプルの硬さの評点が微細水粒子付与工程の実行開始前のサンプルの硬さの評点よりも低い。このことから、サンプル8束中の6束にて、微細水粒子付与工程の実行により頭髪が柔らかくなる、つまり頭髪の曲げ剛性が低下することが確認された。
(実施例7…微細水粒子付与工程の実行前後における頭髪の曲げ剛性の変化)
2束の頭髪のサンプルNo.9,No.10(長さ約50cm、重量25g)を準備し、準備したサンプルに対してそれぞれ実施例5と同様の手順の洗浄工程及び乾燥工程を実行した。その後、各サンプルを構成する複数の頭髪のそれぞれについて、曲げ試験機の測定部に頭髪の毛元部分を1本1本取り付けた。測定部に取り付けた頭髪を、曲率K=-2.5~+2.5(cm-1)の範囲内で、0.4(cm-1・s-1)の変化速度で曲げていき、そのときの曲げ応力を逐次測定した。測定後、曲率の変化に応じて逐次的に得られる曲げ応力から、曲げ応力と曲率Kとの関係である曲げ応力-曲率曲線を求めた。そして、求めた曲げ応力-曲率曲線から、曲率K=0.5~1.5cm-1の範囲及び曲率K=-1.5~-0.5cm-1の範囲における曲線の傾斜(勾配)の平均を、毛元部分の曲げ剛性(単位:N・m)として、算出した。このようにして、各サンプルを構成する全ての頭髪について曲げ剛性を算出した。そして、算出した曲げ剛性の大きい方から10%~20%(曲げ剛性の大きい上位10%~20%)の範囲の値を抽出し、抽出した値の平均値を、水付与前剛性値として算出した。
次いで、サンプルNo.9に対して、実施例5と同様の手順の微細水粒子付与工程を実行した。一方、サンプルNo.10に対しては、サンプルを水に1時間浸漬する水浸漬工程を実行した。続いて、各サンプルについて微細水粒子付与工程又は水浸漬工程を実行した直後に、再度、各サンプルを構成する複数の頭髪のそれぞれについて、1本1本、曲げ試験機を用いて上記と同様の曲げ試験を行い、その試験結果(曲げ応力-曲率曲線)から上記と同様に毛元部分の曲げ剛性を算出した。そして、曲げ剛性の大きい上位10%~20%の範囲の値を抽出し、抽出した値の平均値を、水付与直後剛性値として算出した。
次いで、各サンプルを1日間(24時間)、温度24~27℃、湿度50~65%RHの雰囲気中に放置し、放置終了後に、再度、各サンプルを構成する複数の頭髪のそれぞれについて、1本1本、曲げ試験機を用いて上記と同様の曲げ試験を行い、その試験結果(曲げ応力-曲率極性)から上記と同様に毛元部分の曲げ剛性を算出した。そして、曲げ剛性の大きい上位10%~20%の範囲の値を抽出し、抽出した値の平均値を、水付与1日後剛性値として算出した。なお、曲げ剛性の上位10%~20%の範囲の値を有する頭髪が、そのサンプル全体の剛性感(硬さ感)に影響するという知見に基づき、上記のように、曲げ剛性の大きい上位10%~20%の範囲の値の平均値を剛性を表す値として算出している。
図14は、各サンプルに対して算出した、水付与前剛性値、水付与直後剛性値、水付与1日後剛性値、の変化を表すグラフである。ここで、図14の縦軸は、各サンプルにおける水付与前剛性値を1とした場合における各サンプルの曲げ剛性値(水付与直後剛性値、水付与1日後剛性値)の変化率である。従って、水付与前剛性値は、全てのサンプルにおいて1である。また、各サンプルのグラフは、各サンプルの番号により示される。
図14に示すように、サンプルNo.9、サンプルNo.10ともに、水付与直後剛性値は水付与前剛性値よりも低い。これは、サンプルを構成する頭髪に水分が供給されたことによって頭髪が柔らかくなったことによる。
また、サンプルNo.9においては、水付与1日後剛性値が水付与前剛性値よりも小さい。一方、サンプルNo.10については、サンプルを水に浸漬するためサンプルを構成する頭髪表面が濡れる。このため水付与直後剛性値がより低くなるが、水付与1日後剛性値は水付与前剛性値と同じ程度に戻る。これは、水に浸漬した後1日経過して、頭髪表面の水分が全て蒸発したからであると考えられる。
上記の結果から、サンプルNo.9においては、微細水粒子付与工程を実行した後1日経過しても、微細水粒子付与工程の実行前よりも頭髪が柔らかいことがわかる。これは、微細水粒子付与工程の実行により頭髪の内部に水分が取り込まれるとともに、取り込まれた水分が1日経過しても保持されているためであると考えられる。これにより、本実施形態の微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪が柔らかくなり、且つ頭髪の保湿効果が高まることが確認された。
(実施例8…キューティクルの状態の比較)
3束の頭髪のサンプルA5,B5,C5(長さ約30cm、重量15g)を準備した。サンプルA5について、実施例5と同様の手順の洗浄工程、乾燥工程をこの順で実行した後、サンプルA5から頭髪a5を抜き出し、抜き出した頭髪a5に対して微細水粒子付与工程を実行した。そして、乾燥工程の実行終了後であり微細水粒子付与工程の実行開始前、微細水粒子付与工程を10分間実行した直後、その後さらに微細水粒子付与工程を20分間実行(計30分間実行)した直後、のそれぞれのタイミングにおいて、頭髪a5の表面をSEMにより観察した。また、サンプルB5について、実施例5と同様の手順の洗浄工程、乾燥工程をこの順で実行した後、サンプルB5から頭髪b5を抜き出し、抜き出した頭髪b5に、気化式加湿器を用いて気化した水分を30分間付与した。また、乾燥工程の実行終了後であり気化式加湿器による気化した水分の付与の前、気化した水分を30分間付与した直後、のそれぞれのタイミングにおいて、頭髪b5の表面をSEMにより観察した。さらに、サンプルC5については、実施例5と同様の手順の洗浄工程、乾燥工程、をこの順で実行した後、サンプルC5から頭髪c5を抜き出し、抜き出した頭髪c5に、微粒子イオンドライヤーを用いてマイナスイオンを包含した微粒子イオンを10分間付与した。また、乾燥工程の実行後であり微粒子イオンドライヤーによる微粒子イオンの付与前、微粒子イオンを10分間付与した直後、のそれぞれのタイミングにおいて、頭髪c5の表面をSEMにより観察した。また、微粒子イオンを10分間付与した頭髪c5に対し、実施例5と同様の手順の微細水粒子付与工程を10分間実行した。そして、微細水粒子付与工程実行後のタイミングで頭髪c5の表面をSEMにより観察した。
図15は、サンプルA5から抜き出した頭髪a5のSEM画像(1000倍)である。図15(a)が、微細水粒子付与工程の実行開始前のタイミングで撮影した頭髪a5のSEM画像、図15(b)が、図15(a)の撮影後に微細水粒子付与工程を10分間実行した直後のタイミングで撮影した頭髪a5のSEM画像、図15(c)が、図15(b)の撮影後に微細水粒子付与工程をさらに20分間(計30分間)実行した直後のタイミングで撮影した頭髪a5のSEM画像である。図15からわかるように、微細水粒子付与工程の実行終了後(図15(b)、図15(c))は、実行開始前(図15(a))と比較して、キューティクルの浮き上がりが少なくなっている。また、図15(b)と図15(c)とを比較すると、微細水粒子工程の実行時間が長くなるほどキューティクルの浮き上がりが少なくなっていることもわかる。これより、本実施形態に係る微細水粒子付与工程の実行により頭髪のダメージを軽減又はダメージを受けた頭髪を修復する効果、すなわちキューティクルの浮き上がりを抑えて(キューティクルを閉じて)キューティクルの状態を改善する効果が認められることがわかる。これは、本実施形態に係る微細水粒子付与工程の実行により頭髪に付与される微細水粒子の大きさが50nm以下と微小であり且つ無帯電であるために、頭髪のキューティクル間に存在する水の通り道(CMC)に水粒子が入り込んで毛髪に潤いを与えるからである。
図16は、サンプルB5から抜き出した頭髪b5のSEM画像(1000倍)である。図16(a)が、気化式加湿器を用いて気化した水分を付与する前のタイミングで撮影した頭髪b5のSEM画像、図16(b)が、図16(a)の撮影後に気化式加湿器を用いて気化した水分を30分間付与した直後のタイミングで撮影した頭髪b5のSEM画像である。図16からわかるように、気化した水分の付与の前も後も、キューティクルは大きく浮き上がっている。また、気化した水分の付与の前後において、キューティクルの状態にさほど変化は見られない。従って、気化式加湿器を用いて頭髪に気化した水分を付与しても、頭髪のキューティクルの状態を改善する効果(キューティクルの浮き上がりを抑える効果)は認められないと言える。気化式加湿器により頭髪に付与される気化した水分は、水の単分子(大きさ:0.3ナノメートル程度)であり、頭髪内に入るものの、温度変化等により自由に出入りできる状態(自由水)で存在するため、頭髪内の組織を整えることには寄与していないものと考えられる。これに対し、本実施形態、或いは上記第一実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に付与する微細水粒子は、図14のサンプルNo.9のグラフに示すように、微細水粒子付与工程で微細水粒子を付与した効果が1日後も持続していることから、温度変化等により出入りすることなく頭髪内に留まることができる状態で毛髪内に存在していると言える。このことから、本実施形態或いは上記第一実施形態の微細水粒子付与工程にて頭髪に付与される微細水粒子は、頭髪内で、蛋白質等、生体組織と結合した状態(結合水)として存在し、それにより頭髪の組織を整える働きをすると考えられる。
図17は、サンプルC5から抜き出した頭髪c5のSEM画像(1000倍)である。図17(a)が、微粒子イオンドライヤーを用いて微粒子イオンを付与する前のタイミングで撮影した頭髪c5のSEM画像、図17(b)が、図17(a)の撮影後に微粒子イオンドライヤーを用いて微粒子イオンを10分間付与した直後のタイミングで撮影した頭髪c5のSEM画像、図17(c)が、図17(b)の撮影後に本実施形態の微細水粒子付与工程を10分間実行した直後のタイミングで撮影した頭髪c5のSEM画像である。図17からわかるように、微粒子イオンの付与の前も後も、キューティクルは大きく浮き上がっている。また、微粒子イオンの付与の前後において、キューティクルの状態にさほど変化は見られない。従って、微粒子イオンドライヤーを用いて頭髪に微粒子イオンを付与しても、頭髪のキューティクルの状態を改善する効果は認められないと言える。これは、微粒子イオンドライヤーにより頭髪に付与される微粒子イオンは帯電しているので、微粒子イオンが頭髪のキューティクル間に存在する水の通り道(CMC)に入る前に静電気等により頭髪表面に引き寄せられて頭髪内に浸透しないためと考えられる。また、図17(b)と図17(c)とを比較してわかるように、微粒子イオンの付与後に本実施形態に係る微細水粒子付与工程を実行して微細水粒子を付与することにより、頭髪表面のキューティクルの浮き上がりが若干減少していることがわかる。このことからも、本実施形態の微細水粒子付与工程の実行により、キューティクルの浮き上がりが抑えられることがわかる。
(実施例9…微細水粒子の付与方向の検討)
図18は、頭髪表面のキューティクルの向きを示す概略図である。図18に示すように、キューティクルは、先端が毛先側を向くように、タケノコ状に頭髪表面に形成されている。頭髪がダメージを受けてキューティクルが浮き上がっている場合、キューティクルは毛先側に向かって開く。そのため、頭髪に対して微細水粒子を毛元側から毛先側に向かう方向(順方向)に付与することにより、開いているキューティクルが微細水粒子或いは微細水粒子を運ぶ気流によって閉じ、キューティクルが整えられる。一方、頭髪に対して微細水粒子を毛先側から毛元側に向かう方向(逆方向)に付与することにより、毛先側に向いているキューティクル間のCMC内に効果的に微細水粒子を浸透させることができる。このため、キューティクルを整えて仕上がりを良くするためには、微細水粒子を順方向に付与するのが良く、その一方で、薬剤を用いる場合であって薬剤を頭髪に効率的に浸透させるためには、微細水粒子を逆方向に付与するのがよい。例えば、微細水粒子付与工程を、薬剤塗布工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前のタイミングに実行する場合、より好ましくは上記第一実施形態の処理Bのタイミング、すなわち薬剤塗布工程の実行終了後であって洗浄工程の実行開始前のタイミング、に実行する場合、薬剤の浸透を促進するために、微細水粒子を逆方向に付与すると良い。これによれば、頭髪に塗布された薬剤が、微細水粒子とともに頭髪に効率的に浸透する。また、例えば上記第一実施形態の処理C,D,Eのタイミングで微細水粒子付与工程を実行する場合、或いは第二実施形態の図10の(b)及び(c)に示すタイミングで微細水粒子付与工程を実行する場合、すなわち微細水粒子付与工程を乾燥工程の実行と同時又は乾燥工程の実行終了後に実行する場合、キューティクルを整えるために微細水粒子を順方向に付与すると良い。これによれば、微細水粒子を頭髪内に浸透させて頭髪のダメージを軽減或いはダメージを受けた頭髪を修復するとともに、手先側に向かって開いているキューティクルを整えることができる。ただし、各例において、微細水粒子の付与方向は、必ずしも限定されない。
(第三実施形態)
第三実施形態では、複数回の薬剤塗布工程を有する頭髪のケア方法について説明する。
(実施例10…複数回の薬剤塗布工程を有するトリートメント施術)
7束の頭髪のサンプルA6,B6,C6,D6,E6,F6,N6(長さ約30cm、重量15g)を準備した。そして、各サンプルについて、下記に示す番号順に従って各工程を実行することにより、トリートメント施術を行った。
1)シャンプーを用いたサンプルの洗浄
2)ぬるま湯を用いたサンプルのすすぎ。その後、サンプルのタオルドライ
3)第一薬剤(使用薬剤:第一薬剤(ケラチン等の栄養成分を含み、シリコーン成分を含まないミスト状のトリートメント剤))のサンプルへの塗布(第一薬剤塗布工程)
4)第二薬剤(使用薬剤:第二薬剤(ケラチン等の栄養成分を含み、シリコーン成分を含まないか又は微量のシリコーン成分を含む(シリコーン成分の少ない)液状のトリートメント剤))のサンプルへの塗布(第二薬剤塗布工程)
5)第三薬剤(使用薬剤:ケラチン等の栄養成分及びシリコーン成分を含む液状のトリートメント剤)のサンプルへの塗布(第三薬剤塗布工程)
6)指の腹を使っての薬剤のサンプルへの練り込み(擦り込み工程)
7)ぬるま湯を用いたサンプルのすすぎ。その後サンプルのタオルドライ(第一洗浄工程)
8)第四薬剤(使用薬剤:ケラチン等の栄養成分及びシリコーン成分を含むトリートメント剤)のサンプルへの塗布(第四薬剤塗布工程)
9)ぬるま湯を用いたサンプルのすすぎ、その後サンプルのタオルドライ(第二洗浄工程)
10)ドライヤー乾燥(乾燥工程)
11)頭髪を所定の形にセット(仕上工程)
また、サンプルA6については、上記の手順2)の後であって手順3)の前(すなわち第一薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行し、サンプルB6については、上記の手順3)の後であって手順4)の前(すなわち第一薬剤塗布工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行した。さらに、サンプルC6については、上記の手順4)の後であって手順5)の前(すなわち第二薬剤塗布工程の実行終了後であって第三薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行し、サンプルD6については、上記の手順6)の後であって手順7)の前(すなわち第三薬剤塗布工程の実行終了後であって第四薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行した。さらに、サンプルE6については、上記の手順10)の後(すなわち乾燥工程の実行終了後であって仕上工程の実行開始前)に微細水粒子付与工程を実行し、サンプルF6については、上記の手順11)の後(すなわち仕上工程の実行終了後)に微細水粒子付与工程を実行した。それぞれのサンプルについて実行された微細水粒子付与工程の条件は同一であり、微細水粒子の付与時間は150秒である。また、サンプルN6については、微細水粒子付与工程を実行せずに上記手順1)-11)を順に実行した。図21は、本例にて実行される微細水粒子付与工程の実行タイミングが示された、トリートメント施術の各工程の実行順序を示す図である。図21に示されるタイミングA6,B6,C6,D6,E6,F6が、それぞれのタイミングを表す番号に対応するサンプルにおいて微細水粒子付与工程を実行するタイミングである。
全ての手順を実行した各サンプルについて、毛元部分及び毛先部分の状態を、それぞれ確認した。ここで、微細水粒子付与工程を実行することなく手順1)-11)を実行した従来のトリートメント施術(すなわちサンプルN6)では、施術前に比べて毛元部分は柔らかくなるが毛先部分が硬くなってしまう。これに対し、所定のタイミングで微細水粒子付与工程を実行した各サンプルA6,B6,C6,D6,E6については、それぞれ以下のような効果が見られた。
・サンプルA6:手で掬ったときに毛元部分の手に対する馴染みが良い
・サンプルB6:毛先部分が硬くなるのを防止又は抑制できた
・サンプルC6:手で掬ったときに毛元部分の手に対する馴染みが良く、且つ毛先部分が硬くなるのを防止又は抑制できた
・サンプルD6:手で掬ったときに毛先部分の手に対する馴染みが良い
・サンプルE6:手で掬ったときに毛先部分の手に対する馴染みが良く、毛先部分が硬くなるのを防止又は抑制できた
上記のように、いずれのタイミングで微細水粒子を付与した場合であっても、何等かの効果を得ることができた。
特に、シリコーン成分を多く含むトリートメント剤(以下、シリコーン成分含有トリートメント剤)の塗布前(すなわち第三薬剤塗布工程の実行開始前)に微細水粒子を付与した場合とシリコーン成分含有トリートメント剤の塗布後(すなわち第三薬剤塗布工程の実行終了後)に微細水粒子を付与した場合とでは、効果が表れる部位に違いがある傾向がみられた。具体的には、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布前に微細水粒子付与工程を実行したサンプル(すなわちサンプルA6,B6,C6)では、毛元部分への水分補給効果が得られて、毛元部分の手に対する馴染みが良く、シリコーン成分含有のトリートメント剤塗布後に微細水粒子付与工程を実行したサンプル(すなわちサンプルD6,E6)では、毛先部分への水分補給効果が得られて、毛先部分の手に対する馴染みが良い。これは、元々の頭髪のダメージの差によると考えられる。頭髪のダメージが少なく薬剤の効果がなくても水分が保持できる状態の部位(例えば毛元部分)であれば、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布前に微細水粒子を付与した場合でも頭髪内に水分が留まるため、微細水粒子を付与することによる効果が得られる。一方、元々の頭髪のダメージが大きい状態の部位(例えば毛先部分)では、頭髪そのものに水分を保持する力が欠けているため、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布前の状態では、頭髪内に水分が留まりにくく、微細水粒子を付与することによる効果が表れにくい。この場合は、シリコーン成分含有トリートメント剤塗布後に微細水粒子を付与して、トリートメント剤に含まれる成分を利用することで毛髪内に水分が留まりやすくなり、微細水粒子を付与することによる効果がより得られる。
次に、各サンプルについて、曲げ剛性低減率を求めた。ここで、曲げ剛性低減率とは、初期状態(トリートメント施術前)の曲げ剛性値G1に対するトリートメント施術後(仕上工程の実行終了後)の曲げ剛性値G2の低減率であり、以下の式
1-G2/G1
により求めることができる。上式より得られる曲げ剛性低減率の値が正方向に大きいほど、初期状態に比べてトリートメント施術後に頭髪が柔らかくなっていることを表し、負方向に大きいほど、初期状態に比べてトリートメント施術後に頭髪が硬くなっていることを表す。なお、曲げ剛性低減率を求めるにあたり、各サンプルからランダムに頭髪を30本ずつ抽出し、抽出した30本について、まず初期状態の曲げ剛性値G1を測定した。そして、曲げ剛性値G1の大きい上位20%の頭髪をさらに抽出し、抽出した頭髪について、トリートメント施術後の曲げ剛性値G2を測定した。こうして求めた曲げ剛性値G1及びG2を用いて曲げ剛性低減率を求めた。つまり、求めた曲げ剛性低減率は、初期状態の曲げ剛性値G1の上位20%の頭髪についての値である。また、曲げ剛性値G1,G2の測定方法は上述した通りであり、曲げ剛性低減率は各サンプルの毛先部分及び毛元部分のそれぞれについて求めた。
図19は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6及びN6について求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。このグラフの横軸にサンプルの種類が示される。そして、各サンプルに対応する欄に、それぞれのサンプルの曲げ剛性低減率を表すグラフが示される。また、各サンプルに対応する欄に示された2つのグラフのうち左側のグラフEは毛元部分の曲げ剛性低減率を表し、右側のグラフFは毛先部分の曲げ剛性低減率を表す。図19からわかるように、微細水粒子付与工程を実行しない従来のトリートメント施術が実行されたサンプルN6においては、トリートメント施術後に毛先部分が非常に硬くなっている。これに対し、サンプルB6、サンプルC6、サンプルE6においては、毛先部分の曲げ剛性低減率が正の値であり、トリートメント施術後に毛先が柔らかくなっていることがわかる。なお、ダメージの無い(又はダメージの少ない)頭髪(例えば毛元部分)は、水を保持する力が高い。そのため、ダメージの無い(又はダメージの少ない)頭髪に対して、薬剤塗布前或いは薬剤のうちシリコーン等で頭髪表面に膜を構成する機能を有する薬剤(例えば第三薬剤及び第四薬剤)の塗布前に微細水粒子を付与した場合であっても頭髪内に微細水粒子が入りやすく、微細水粒子の付与による効果が得られやすいと考えられる。一方、ダメージの大きい頭髪(例えば毛先部分)は、水を保持する力が弱い。そのため、薬剤により頭髪の水分保持力が高められた状態、例えば第三薬剤の塗布後、或いは第四薬剤塗布後に微細水粒子を付与した場合に頭髪内に微細水粒子が保持されやすく、微細水粒子の付与による効果が得られやすいと考えられる。
次に、各サンプルについて、ヒステリシス変化幅を求めた。ここに言う「ヒステリシス変化幅」とは、各サンプルについての曲げ剛性値を測定する際において、頭髪を曲げていくときに測定される曲げ剛性値と曲げを戻していくときに計測される曲げ剛性値との差の大きさの変化量を表す指標である。本例では、ヒステリシス変化幅を求めるにあたり、まず、それぞれのサンプルを構成する30本の頭髪のそれぞれについて、曲率Kが0から+2.5(cm-1)となるまで頭髪を曲げていく過程で曲率K=1のときに測定された曲げ応力αpと、曲率Kが+2.5から0(cm-1)となるまでその頭髪を曲げ戻していく過程で曲率K=1のときに測定された曲げ応力αnとの差Δα(=αp-αn)が求められる。また、それぞれのサンプルを構成する30本の頭髪のそれぞれについて、曲率Kが0から-2.5(cm-1)となるまで頭髪を曲げていく過程で曲率K=-1のときに測定される曲げ応力βpと、曲率が-2.5から0(cm-1)となるまでその頭髪を曲げ戻していく過程で曲率K=-1のときに測定される曲げ応力βnとの差Δβ(=βp-βn)が求められる。そして、求めた差Δα及びΔβの平均値S(=(Δα+Δβ)/2)が、各頭髪のヒステリシスとして計算される。さらに、各サンプルを構成する30本の頭髪について計算された平均値S(ヒステリシス)について、処理後のS値から処理前のS値を引いて差を算出し、30本それぞれの変化量(S値の差)を算出した。そして、その変化量の平均値をヒステリシス変化幅とした。このヒステリシス変化幅が大きいほど、曲げを戻すときの曲げ剛性値が、曲げていく時の曲げ剛性値に比べて低いことを表す。つまり、ヒステリシス変化幅が大きいほど、手で頭髪に触れた際に、頭髪が戻ろうとする力が弱く、手に対する馴染みが良い状態(頭髪の柔軟性が高く、頭髪を手で触った時の力加減に追従して頭髪の形状が変化し易い状態)であると考えられる。従って、ヒステリシス変化幅の大きさにより、頭髪に触れた時にその頭髪が柔らかいと感じる程度の大きさが表される。
図20は、サンプルA6,B6,C6,D6,E6及びN6について求めたヒステリシス変化幅を比較したグラフである。このグラフの横軸にサンプルの種類が示される。そして、各サンプルに対応する欄に、それぞれのサンプルのヒステリシス変化幅を表すグラフが示される。また、各サンプルに対応する欄に示された2つのグラフのうち左側のグラフGは毛元部分のヒステリシス変化幅を表し、右側のグラフHは毛先部分のヒステリシス変化幅を表す。
図20に示すように、サンプルD6及びサンプルE6において、毛先部分のヒステリシス変化幅が大きい。このことから、シリコン成分含有のトリートメント剤を塗布した後に微細水粒子を付与することにより、毛先部分の柔らかさをより改善できることが確認された。また、サンプルC6においては、毛元部分のヒステリシス変化幅が大きい。これは、微細水粒子を付与する前にトリートメント剤の塗布を2回行っているので、毛元の状態がさらに改善されて、その後の微細水粒子付与により十分に水分を吸収することができたためと考えられる。
図22は、各薬剤塗布工程に用いる各薬剤(第一薬剤、第二薬剤、第三薬剤、第四薬剤)の性質の一例を示す図である。図22によれば、第一薬剤はミスト状の薬剤であり、第二薬剤はシリコーン成分が含有されていないかまたはシリコーン成分の含有量が微量であり且つ質感がゆるいクリーム状の薬剤であり、第三薬剤はシリコーン成分の含有量が多めの質感が硬いクリーム状の薬剤であり、第四薬剤はシリコーン成分・油分の含有量が多く質感がなめらかなクリーム状の薬剤である。
また、本実施形態では、頭髪の状態或いは目的とする仕上がり感に応じて、いずれかの薬剤塗布工程の実行終了後、又は、乾燥工程の実行終了後、又は、仕上工程の実行終了後、の少なくとも一つのタイミングで、微細水粒子付与工程を実行することができる。
第一薬剤塗布工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングB6)にて微細水粒子付与工程を実行したサンプルB6の場合、第一薬剤の効果を高めることができ、第二薬剤塗布工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングC6)にて微細水粒子付与工程を実行した場合には第二薬剤の効果を高めることができる。また、第三薬剤塗布工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングD6)にて微細水粒子付与工程を実行した場合には第三薬剤の効果を高めることができ、第四薬剤塗布工程の実行終了後のタイミングにて微細水粒子付与工程を実行した場合には第四薬剤の効果を高めることができる。さらに、乾燥工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングE6)、仕上工程の実行終了後のタイミング(図21のタイミングF6)にて微細水粒子付与工程を実行した場合には、第四薬剤の効果を高めるとともに仕上がり感を調整することができる。
図23は、図21のタイミングC6,D6,E6,F6で微細水粒子付与工程を実行した場合における、トリートメント施術後の頭髪への効果、仕上がり感、及びそのタイミングで微細水粒子を付与するのに向いている髪質、を示す表である。図23に示すように、タイミングC6にて微細水粒子付与工程を実行した場合、頭髪の柔らかさが向上し、軽めの仕上がり感に頭髪を仕上げることができる。また、低ダメージの頭髪に対し、タイミングC6にて微細水粒子を頭髪に付与すると良い。タイミングC6の時点ではシリコーン成分が含まれていないか若しくはシリコーン成分の含有量が少ないトリートメント剤のみが頭髪に塗布されている。そして、低ダメージの頭髪であれば、この段階で頭髪は十分に修復されているので、微細水粒子を頭髪に付与することにより、頭髪内に水分を留めることができ、それにより質感がゆるいクリーム状の第二薬剤の効果が高められ、その結果、頭髪を柔らかくすることができる。
また、タイミングD6にて微細水粒子付与工程を実行した場合、質感がかたいクリーム状の第三薬剤の効果が高められるため、頭髪のコシ、特に毛元部分のコシが強くなるとともに軽めの仕上がり感に頭髪を仕上げることができる。よって、コシの無い髪質に対しては、タイミングD6にて微細水粒子を付与するのが良い。
また、タイミングE6又はタイミングF6にて微細水粒子付与工程を実行した場合、質感がなめらかなクリーム状の第四薬剤の効果が高められるため、頭髪の柔らかさが向上する。また、タイミングE6又はタイミングF6は、全ての薬剤が塗布された後のタイミングであるので、ダメージの大きい髪質であっても微細水粒子を付与するときには頭髪の補修及び保護が十分になされている。よって、高ダメージの髪質に対しては、タイミングE6若しくタイミングF6にて微細水粒子を付与するのが良い。また、タイミングE6にて乾燥後の頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪全体を膨らませてふわりとした柔らかな質感の頭髪に仕上げることができる。また、タイミングF6にて仕上げ後の頭髪に微細水粒子を付与することにより、つまり施術の最後に水分を頭髪内に含ませることにより、重めであっておさまりが良く、しっとりとした質感の頭髪に仕上げることができる。
図24は、サンプルC6,D6,F6,N6のそれぞれについて測定した、ヒステリシス変化幅と曲げ剛性低減率との関係を示す図である。図24の横軸がヒステリシス変化幅であり、0から正方向に増加するほど頭髪が曲げ戻り難く(すなわち手に対する馴染みやすさが大きく(馴染みやすい))、0から負方向に増加するほど頭髪の曲げ戻りやすい(すなわち手に対する馴染みやすさが小さい(馴染み難い))ことを表す。図24の縦軸が曲げ剛性低減率であり、0から正方向に増加するほど頭髪が曲がりやすく、0から負方向に増加するほど頭髪が曲がり難いことを表す。また、図24中の丸の点が毛元部分のヒステリシス変化幅と曲げ剛性低減率との関係を表し、四角の点が毛先部分のヒステリシス変化幅と曲げ剛性低減率との関係を表す。また、図24の各点の近傍に、その点に対応するサンプルの番号を示す。
図24に示すように、微細水粒子付与工程を実行していないサンプルN6においては、毛先部分が曲がり難く毛元部分が曲がりやすいことがわかる。また、サンプルC6においては、毛元部分が曲げ戻り難い(馴染みやすい)ことがわかる。一般的に、曲がりやすい頭髪及び曲げ戻り難い(馴染みやすい)頭髪は、柔らかい頭髪ということができる。従って、第二薬剤塗布工程の実行終了後であって第三薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングにて微細水粒子付与工程を実行することにより、柔らかい頭髪に仕上げることができる。また、サンプルD6においては、毛先部分も毛元部分も曲がり難い頭髪であることがわかる。特に、サンプルD6の毛元部分は、曲がり難く、且つ曲げ戻りやすい。曲がり難く、且つ曲がった場合には曲げ戻りやすい頭髪は、コシのある頭髪と言える。従って、第三薬剤塗布工程の実行終了後であって第四薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングにて微細水粒子付与工程を実行することにより、毛元部分のコシが強い頭髪に仕上げることができる。また、サンプルF6においては、毛先部分が曲げ戻り難くなっている。よって、仕上工程の実行終了後のタイミングF6にて微細水粒子付与工程を実行することにより、毛先部分が柔らかい頭髪に仕上げることができる。また、仕上げ工程の実行終了後に微細水粒子を頭髪に付与することにより、頭髪にしっとり感が加わり、重めでおさまりの良い頭髪に仕上げることができる。
このように、トリートメント施術において、頭髪の状態(低ダメージ、高ダメージ、コシの有無等)及び、目的とする仕上がり感(軽め、重め、ふんわり感、おさまり等)に応じて、複数の薬剤塗布工程のいずれかの実行終了後、乾燥工程の実行終了後、仕上工程の実行終了後、の少なくともいずれかのタイミングで微細水粒子付与工程を実行することにより、適切なトリートメント施術を行うことができるとともに、トリートメント剤の効果をより一層高めることができる。
(第四実施形態)
第四実施形態では、頭髪に施すパーマ施術において、頭髪のダメージを抑えることができる頭髪のケア方法について説明する。
パーマの施術においては、一般的に、2種類の液体状の薬剤である第一薬剤(1剤)及び第二薬剤(2剤)が用いられる。第一薬剤は、頭髪の内部組織、具体的には頭髪内のシスチン結合を切断して頭髪形状を自由に変化させることができる機能を有する薬剤である。第二薬剤は、第一薬剤の塗布によって切断された頭髪の内部組織を再結合して頭髪を目的の形状に馴染ませるとともに目的の形状に固める機能を有する薬剤である。従って、パーマの施術においては、まず第一薬剤を頭髪に塗布し、その後第二薬剤を頭髪に塗布することになる。
図25Aは、従来から実施されている2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程を示す。図25Aに示すように、従来の2液を用いたパーマ施術においては、ロッド巻き工程(ワインディング工程)、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、洗浄工程(第一洗浄工程)、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、洗浄工程(第二洗浄工程)、乾燥工程、が、この順に実行される。ロッド巻き工程にて頭髪にロッドが巻かれて頭髪が所望のワインディング形状に曲げられる。次いで、第一薬剤塗布工程にて第一薬剤が頭髪に塗布され、その後、第一放置工程にて頭髪が第一所定時間放置される。この第一放置工程の実行により、頭髪内に第一薬剤が浸透し、頭髪内の内部組織が切断されて、頭髪形状を自由に変更できるようになる。第一放置工程の実行終了後、洗浄工程(第一洗浄工程)にて頭髪が洗浄され、第二薬剤塗布工程にて第二薬剤が頭髪に塗布され、その後、第二放置工程にて頭髪が第二所定時間放置される。この第二放置工程の実行により、頭髪内に第二薬剤が浸透し、頭髪内の切断された内部組織が再結合されて、頭髪が目的の形状に馴染むとともに馴染んだ形状に固められる。第一放置工程における第一所定時間及び第二放置工程における第二所定時間は、一般的には、それぞれ15分程度である。第二放置工程の実行終了後、洗浄工程(第二洗浄工程)にて頭髪が洗浄され、次いで、乾燥工程にて頭髪が乾燥される。
図25Bは、本実施形態に係る2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術の各工程の実行順序の一例を示す。図25Bに示すように、本実施形態に係る2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いたパーマ施術においては、図25Aに示す第一放置工程の実行終了後であり第二薬剤塗布工程の実行開始前(具体的には第一放置工程後の洗浄工程(第一洗浄工程)の実行終了後であり第二薬剤塗布工程の実行開始前)に、微細水粒子付与工程が実行される。それ以外の工程順は、図25Aに示す工程順と同一である。
本実施形態によれば、第一薬剤塗布工程の実行により塗布された第一薬剤によって濡れている頭髪、或いは第一薬剤塗布工程の後の洗浄工程の実行により濡れている頭髪に微細水粒子が付与される。付与された微細水粒子は頭髪内に侵入して、第一薬剤によって切断された頭髪の内部組織に付着する。切断された頭髪の内部組織に微細水粒子が付着すると、その組織が動きやすくなる。こうして頭髪の内部組織が動きやすくされた結果、頭髪の形状が目的とするワインディング形状に馴染みやすくなる。このため、第二薬剤の塗布後に頭髪を目的のワインディング形状に馴染ませるために要する時間が短縮される。これにより第二放置工程における第二所定時間を短縮することができる。例えば、図25Bに示すように、第一放置工程における第一所定時間は15分程度であるものの、第二放置工程における第二所定時間を5分程度に短縮することができる。このとき微細水粒子付与工程にて微細水粒子を付与する時間が10分であれば、図25Aに示すパーマ施術と比較して、施術時間を延ばすことなく微細水粒子付与工程を含む2液用のパーマの施術を行うことができる。そして、パーマ施術中に頭髪に微細水粒子を付与することによりパーマ剤の効果を高めることができる。また、頭髪を第二薬剤に晒す時間(第二所定時間)が短縮されることにより、第二薬剤が頭髪に与えるダメージの大きさを低減することができる。
(実施例11・・・ウェーブ効率の比較)
4束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)A7,B7,C7,N7を用意し、各サンプルについて、2液(第一薬剤及び第二薬剤)を用いてパーマを施術した。ここで、第一薬剤は、頭髪の内部組織を切断する機能を有し、第二薬剤は、第一薬剤により切断された頭髪の内部組織を結合する機能を有する。また、サンプルA7については処理F1によりパーマを施術し、サンプルB7については処理F2によりパーマを施術し、サンプルC7については処理F3によりパーマを施術し、サンプルN7については従来処理によりパーマを施術した。これらの処理については後述する。
図26は、従来処理、処理F1、処理F2、処理F3の各工程を示す図である。図26に示すように、従来処理は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、第一洗浄工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順に実行する処理である。つまり、従来処理には微細水粒子付与工程は含まれない。処理F1は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程+微細水粒子付与工程、第一洗浄工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順に実行する処理である。処理F1によれば、微細水粒子付与工程は、第一放置工程の実行中に実行される。具体的には、第一放置工程の実行時間が15分であり、微細水粒子付与工程は、第一放置工程の実行開始から10分経過するまでの間に、第一放置工程と同時に実行される。従って、微細水粒子付与工程の実行終了後は、第一放置工程のみが5分間実行される。処理F2は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、第一洗浄工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程+微細水粒子付与工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順に行う処理である。処理F2によれば、微細水粒子付与工程は、第二放置工程の実行中に実行される。具体的には、第二放置工程の実行時間が15分であり、微細水粒子付与工程は、第二放置工程の実行開始から10分経過するまでの間に、第二放置工程と同時に実行される。従って、微細水粒子付与工程の実行終了後は、第二放置工程のみが5分間実行される。処理F3は、ロッド巻き工程、第一薬剤塗布工程、第一放置工程、第一洗浄工程、微細水粒子付与工程、第二薬剤塗布工程、第二放置工程、第二洗浄工程、乾燥工程を、この順で行う処理である。処理F3によれば、微細水粒子付与工程は、第一洗浄工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行される。
ロッド巻き工程では、頭髪のサンプルにロッドが巻かれて頭髪が所定のワインディング形状に曲げられる。第一薬剤塗布工程では、ロッド巻きされたサンプルに第一薬剤がまんべんなく塗布される。第一放置工程では、第一薬剤が塗布されたサンプルが15分間放置される。第一洗浄工程では、手指でサンプルを擦りながらシャワーにより水洗いすることにより第一薬剤がサンプルから洗い流される。第二薬剤塗布工程では、サンプルに第二薬剤がまんべんなく塗布される。第二放置工程では、第二薬剤が塗布されたサンプルが所定時間(第二所定時間)放置される。ここで、第二放置工程における第二所定時間は、従来処理、処理F1、処理F2においては15分であり、処理F3においては5分である。第二洗浄工程では、手指でサンプルを擦りながらシャワーにより水洗いすることにより第二薬剤がサンプルから洗い流される。乾燥工程では、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間分吹き付けることにより、サンプル表面の水分が除去される。微細水粒子付与工程では、図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)が、10分間サンプルに付与される。なお、乾燥工程の実行終了後、サンプルからロッドが外される。
図27は、各処理によりパーマ施術が行われた各サンプルA7,B7,C7,N7のウェーブ効率を比較した図である。ここで、ウェーブ効率とは、ロッド巻き工程にて用いたロッドの直径を、施術後のサンプルに形成されたウェーブの直径で除した値の百分率であり、ウェーブ効率が大きいほどパーマ剤の効果が大きいことを示す。図27に示すように、処理F1、処理F2、処理F3が行われたサンプルA7,B7,C7のウェーブ効率は、従来処理が行われたサンプルN7のウェーブ効率よりも高い。サンプルA7,B7,C7のウェーブ効率が高い原因は、頭髪に微細水粒子が付与されることにより頭髪のダメージが低減されたことによってパーマ剤による効果が高められたことであると考えることができる。
また、処理F1、処理F2、処理F3によりパーマ施術を行ったサンプルA7,B7,C7のうち、サンプルC7のウェーブ効率が最も高い。サンプルC7のウェーブ効率が最も高い原因は、処理F3の第二放置工程における第二所定時間が5分と最も短く、第二薬剤に頭髪が晒されることによる頭髪のダメージが最も少ないために、パーマ剤の効果が高められたためであると考えられる。換言すれば、処理F3によるパーマ施術を行い、第二放置工程における第二所定時間(放置時間)を短くすることにより、頭髪のダメージを抑えて十分にウェーブ効率の高いパーマ施術を行うことができ、且つ微細水粒子付与工程を含んだパーマの施術時間の短縮化を図ることができる。なお、処理F3にて第二放置工程における放置時間(第二所定時間)を短くすることができる理由は、上述したように、第一薬剤の塗布後であって第二薬剤の塗布前に微細水粒子をサンプルに付与することにより、頭髪内で切断されている内部組織が動きやすくなって、頭髪が目的の形状に馴染みやすくなったためであると考えられる。また、処理F1においても処理F3と同様に、第一薬剤の塗布後であって第二薬剤の塗布前に微細水粒子をサンプルに付与している。処理F1と処理F3との違いは、処理F1では第一薬剤の塗布後の第一放置工程と同時に微細水粒子付与工程を実行しているのに対し、処理F3では第一放置工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実施している点にある。第一放置工程の実行中に微細水粒子を付与する処理F1では、微細水粒子の多くが第一薬剤を頭髪内に効率的に浸透させるために用いられるため、頭髪内の内部組織を動きやすくするという効果に対する微細水粒子の寄与度が低下すると考えられる。よって、処理F1において第二放置時間を十分に短縮することはできないと考えられる。一方、第一放置工程の実行終了後に微細水粒子を付与する処理F3では、第一放置工程の実行により第一薬剤が頭髪に浸透した後に微細水粒子が付与されるので、付与された微細水粒子の多くが、第一薬剤により切断された頭髪内の内部組織を動きやすくするために用いられる。従って、処理F3によれば、微細水粒子の付与によって頭髪の内部組織が十分に動きやすくなり、それにより第二薬剤塗布後の放置時間(第二放置工程の実行時間)を十分に短縮することができると考えられる。
なお、実施例11では、第一放置工程の実行終了後に第一洗浄工程を実行する例を示したが、第一洗浄工程は省略してもよい。この場合、第一放置工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程実行開始前に微細水粒子付与工程が実行される。また、第一放置工程の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングに加え、第一薬剤塗布工程の実行開始前のタイミングにも微細水粒子付与工程を実行しても良い。これによれば、第一薬剤塗布工程の実行時に既に頭髪内に浸透している微細水粒子が第一薬剤の頭髪への浸透を促し、これにより頭髪の内部組織の切断が促進される。このため第一放置工程における放置時間(第一所定時間)を短縮することができる。加えて、頭髪が第一薬剤に晒されている時間を短縮することによって頭髪へのダメージをより軽減することができる。
(第五実施形態)
第五実施形態では、ブリーチ施術において、頭髪のクセを抑えることができる頭髪のケア方法について説明する。
図28は、本実施形態に係るブリーチ施術の各工程を示す図である。図28に示すように、本実施形態に係るブリーチ施術は、薬剤(ブリーチ剤)塗布工程、放置工程、洗浄工程、微細水粒子付与工程、乾燥工程、が、この順で実行されことによりなされる。微細水粒子付与工程は、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に実行される。このため、洗浄工程の実行によって濡れている頭髪に微細水粒子が付与されることになる。濡れている頭髪に微細水粒子を付与することにより、ブリーチ施術後の頭髪のクセを低減することができる。
(実施例12・・・ブリーチ施術後の頭髪のクセの低減効果の確認)
同一人物から採取した3束の頭髪のサンプル(長さ約50cm、重量25g)A8,B8,C8を用意し、各サンプルについて、市販のブリーチ剤を用いてブリーチ施術を行った。ここで、サンプルA8については図28に示す工程順に従った処理(以下、本実施例処理)によりブリーチ施術を行った。また、サンプルB8については、図29Aに示す工程順に従った処理(以下、第一比較処理)によりブリーチ施術を行い、サンプルC8については、図29Bに示す工程順に従った処理(以下、第二比較処理)によりブリーチ施術を行った。図29Aに示す第一比較処理は、第一微細水粒子付与工程、薬剤(ブリーチ剤)塗布工程、放置工程、洗浄工程、乾燥工程、第二微細水粒子付与工程、をこの順で実行する処理である。また、図29Bに示す第二比較処理は、薬剤(ブリーチ剤)塗布工程、放置工程、洗浄工程、乾燥工程、微細水粒子付与工程、をこの順で実行する処理である。
また、本実施例処理、第一比較処理、第二比較処理において、薬剤塗布工程では、市販のブリーチ剤がサンプルにまんべんなく刷毛塗りされた。微細水粒子付与工程、第一微細水粒子付与工程、第二微細水粒子付与工程では、図1に示す微細水粒子放出装置1を用いて、温度約35℃の微細水粒子(流量:0.07m/min.)がサンプルに付与された。ここで、本実施例処理及び第二比較処理における微細水粒子付与工程では、微細水粒子をサンプルに付与する時間は10分であり、第二比較処理における第一微細水粒子付与工程及び第二微細水粒子付与工程では、微細水粒子をサンプルに付与する時間はそれぞれ5分である。また、放置工程では、薬剤(ブリーチ剤)の塗布後、20分間頭髪が放置された。洗浄工程では、放置工程の実行終了後、手指でサンプルを擦りながらぬるま湯のシャワーによってサンプルが洗われてサンプルから薬剤が除去された。乾燥工程では、ドライヤーを用いて温風を濡れたサンプルに約2分間吹き付けることにより、サンプル表面の水分が除去された。
図30は、各処理(本実施例処理、第一比較処理、第二比較処理)によりブリーチ施術されたそれぞれのサンプルA8,B8,C8を撮影した写真である。図30において、左側のサンプルが、第一比較処理によりブリーチ施術を行ったサンプルB8であり、右側のサンプルが、第二比較処理によりブリーチ施術を行ったサンプルC8であり、中央のサンプルが、本実施例処理によりブリーチ施術を行ったサンプルA8である。図30に示すように、本実施例処理によりブリーチ施術を行ったサンプルA8は、その他のサンプルB8,C8と比較して、頭髪がまっすぐである。これらのサンプルA8,B8,C8は、同一人物から採取したので、サンプルA8のみ、頭髪のクセが抜けていることになる。また、サンプルA8について行われた本実施例処理では、乾燥前の濡れている頭髪に微細水粒子が付与されている。従って、ブリーチ施術において、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪のクセを低減できることが確認された。
ブリーチ施術において洗浄工程の実行終了後であり乾燥工程の実行開始前の濡れている頭髪に微細水粒子を付与することにより、頭髪のクセを低減することができる理由について考察する。ブリーチ剤を頭髪に塗布してブリーチ剤が頭髪内に浸透していくと、ブリーチ剤により頭髪の内部組織が切断される。その後に微細水粒子が頭髪内に入ると、頭髪内の内部組織が頭髪内で動きやすくなる。これにより、頭髪のクセが取れる。また、頭髪が濡れている場合には、頭髪内の組織が移動する上での抵抗が少ない。よって、薬剤塗布後であって頭髪が濡れているタイミング、すなわち洗浄工程後であって乾燥工程前のタイミングで微細水粒子を頭髪に付与して頭髪内部の切断された組織を十分に動きやすくすることで、クセが低減されると考えられる。
(第六実施形態)
第六実施形態では、熱処理を伴う施術中に微細水粒子付与工程を実行する場合について説明する。
縮毛矯正、デジタルパーマ、セットの施術には、熱処理工程が含まれる。この熱処理工程にて頭髪に熱が加えられることにより、頭髪を所望の形状に整えることができる。また、熱処理工程を実行すると、頭髪内の水分が奪われるため、頭髪が乾燥傾向となって硬くなる。
図31は、熱処理を伴う施術の例を示す図である。図31(a)が縮毛矯正の施術の各工程を示し、図31(b)がデジタルパーマの施術の各工程を示し、図31(c)がセットの施術の各工程を示す。図31(a)及び図31(c)のアイロン工程が熱処理工程であり、図31(b)の加温工程が熱処理工程である。
本実施形態では、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の前に実行される。例えば図31(a)に示す縮毛矯正の施術においては、乾燥工程の実行終了後であってアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前のタイミング(図31(a)のタイミングa)に微細水粒子付与工程が実行される。図31(b)に示すデジタルパーマの施術においては、ロッド巻き工程の実行終了後であり加温工程(熱処理工程)の実行開始前(図31(b)のタイミングb)に微細水粒子付与工程が実行される。図31(c)に示すセット処理では、ドライ(乾燥)工程の実行終了後であってアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前(図31(c)のタイミングc)に実行される。
熱処理工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行することにより、熱処理前に頭髪内に水分が供給される。そして、微細水粒子付与工程により頭髪内に供給された水分は、頭髪内で、蛋白質等の生体組織と結合した状態、すなわち結合水として存在するため、その後の熱処理工程にて頭髪から奪われ難い。つまり、熱処理工程を実行しても、頭髪は乾燥しない。そのため、仕上がり時に頭髪内に十分に水分が含まれることによって、頭髪が柔らかくなるという効果を奏することができる。さらに、熱処理工程の前に頭髪内に水分を補うことにより、頭髪内の組織構造が動きやすくなる。このためその後の熱処理工程にて頭髪の形状がより整えやすくされる。
また、あわせて、熱処理工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実行しても良い。つまり、微細水粒子付与工程は、熱処理工程の実行開始前に実行される第一微細水粒子付与工程と、熱処理工程の実行終了後に実行される第二微細水粒子付与工程を含んでも良い。熱処理工程の実行開始前のみならず熱処理工程の実行終了後にも微細水粒子付与工程を実行することによって、頭髪をさらに柔らかくして、仕上がり時の質感をさらに向上させることができる。
(実施例13・・・アイロン工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行した場合の効果の確認)
図32に示す工程順にて各工程を実行することにより、縮毛矯正の施術を行ったサンプルA9を作製した。図32に示すように、本例における縮毛矯正の施術は、シャンプー工程、タオルドライ工程、第一薬剤(第1剤)塗布工程、第一放置工程、中間水洗工程(洗浄工程)、乾燥工程、微細水粒子付与工程、アイロン工程(熱処理工程)、第二薬剤(第2剤)塗布工程、第二放置工程、水洗工程(洗浄工程)、トリートメント剤の塗布工程、仕上げ工程、を、この順に実行することにより行われる。この工程順によれば、微細水粒子付与工程は、乾燥工程の実行終了後であってアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前に実行される。
なお、縮毛矯正剤は、第一薬剤(第1剤)と第二薬剤(第2剤)とを有する。第一薬剤は、頭髪の内部組織の結合を切断して、頭髪を動きやすくする機能を有する。このため第一薬剤を頭髪に塗布して第一薬剤を頭髪に浸透させることにより、頭髪の形状を例えばまっすぐに矯正することができるようになる。第二薬剤は、第一薬剤により切断された頭髪の内部組織を再結合させる機能を有する。このため第二薬剤を塗布して第二薬剤を頭髪に浸透させることにより、切断されていた内部組織が結合されるとともに、頭髪の形状が矯正した形状に固定される。
また、微細水粒子付与工程の実行タイミングが異なることを除いて、図32に示す各工程の実行により縮毛矯正の施術を行ったサンプルB9,C9,D9を、それぞれ作製した。ここで、サンプルB9の作製にあたっては、微細水粒子付与工程は、アイロン工程(熱処理工程)の実行終了後であって第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行し、サンプルC9の作製にあたっては、微細水粒子付与工程は、第一薬剤塗布工程と同時に実行し、サンプルD9の作製にあたっては、微細水粒子付与工程は、第二薬剤塗布工程と同時に実行した。また、図32の各工程から微細水粒子付与工程を省略した工程順により縮毛矯正の施術を行ったサンプルN9を作製した。
作製した各サンプルA9,B9,C9,D9,N9のそれぞれについて、毛元部分の曲げ剛性低減率及び毛先部分の曲げ剛性低減率を算出した。この曲げ剛性低減率の算出方法は、上記実施例10にて算出した方法と同一であるのでその説明は省略する。
図33は、各サンプルについて求めた曲げ剛性低減率を比較したグラフである。このグラフの横軸にサンプルの種類(A9,B9,C9,D9,N9)を示し、各サンプルに対応する欄に曲げ剛性低減率を表すグラフが示される。また、各サンプルに対応する欄に示された2つのグラフのうち左側のグラフIは毛元部分の曲げ剛性低減率を表し、右側のグラフJは毛先部分の曲げ剛性低減率を表す。
図33に示すように、サンプルA9においては、毛元部分の曲げ剛性低減率及び毛先部分の曲げ剛性低減率の双方が大きい。また、サンプルA9の作製に際し、微細水粒子付与工程はアイロン工程(熱処理工程)の実行開始前に実行されている。従って、熱処理工程の実行開始前に微細水粒子付与工程を実行することにより、頭髪の曲げ剛性値が低減して頭髪が柔らかくなり、それにより頭髪を整えやすくなることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されて解釈されるべきものではない。例えば、実施例13においては、アイロン工程の前に微細水粒子付与工程を実行することによって、頭髪を柔らかくして整えやすくする例について説明したが、微細水粒子付与工程は、例えば第一薬剤塗布工程の実行終了後であり且つ第二薬剤塗布工程の実行開始前のその他のタイミングで実行しても良い。第一薬剤の塗布後に微細水粒子を付与することで、頭髪内の組織のうち結合によらない部分にも水分が入ることで柔らかくなり、その結果、組織が動きやすくなる効果があると考えられる。従って、微細水粒子付与工程を第一薬剤塗布工程と第二薬剤塗布工程との間に実行することより、頭髪の形状を所望の形状に変化させやすくする効果が得られる。
また、上記のような第一薬剤及び第二薬剤を含む縮毛矯正剤を用いた場合において、微細水粒子付与工程は、例えば第二薬剤塗布工程の実行終了後に実行することができる。第二薬剤の塗布後に微細水粒子を付与して頭髪内に水分を供給することにより、頭髪が柔らかくなる効果、及び、頭髪の形状を固定する際に生じる組織の歪みを緩和できる効果、を奏すると考えられる。従って、このような微細水粒子付与工程を第二薬剤塗布工程の実行終了後に実行することにより、頭髪が柔らかくなり、仕上工程後の頭髪の質感を向上させることができる。
また、上記実施形態では、頭部対象部位としての頭髪に微細水粒子を付与する例について説明したが、頭部対象部位としての頭皮に微細水粒子を付与しても良い。この場合、上記第一実施形態の処理A又は処理Bにより、スカルプ処理を行うことができる。これによれば、頭皮に微細水粒子が浸透することにより、薬液による刺激を緩和することができるとともに、頭髪の状態を整えることができる。また、上記第一実施形態では、図4Aの処理A,B,C,Dを実行した場合について主に説明したが、図4Aの処理Eのように、乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行しても、処理Cとほぼ同様の効果を得ることができる。また、上記第二実施形態では、乾燥工程の実行終了後に微細水粒子付与工程を実行した場合について主に説明したが、洗浄工程の実行終了後であって乾燥工程の実行開始前に、或いは乾燥工程の実行と同時に微細水粒子付与工程を実行しても、同様の効果を得ることができる。また、上記第二実施形態では、薬剤の塗布を伴わない頭髪のケア方法について説明したが、微細水粒子の付与とともに、トリートメント等の薬剤を頭髪に塗布しても良い。これによれば、頭髪にさらに潤いを与えるとともに、頭髪をより滑らかに処理することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…微細水粒子放出装置、10…微細水粒子放出ユニット、11…微細水粒子発生素子、111…基材、112…導電性高分子膜、12…ファン、13a…入口フィルタ、13b…出口フィルタ、14…ケース、14a…流路、14in…吸入口、14out…放出口、141…第一ケース部、142…第二ケース部、20…制御ユニット、21…操作部、22…電源回路、23…制御部、24…第一電線、25…第二電線、26…第一常開型切替スイッチ、27…第二常開型切替スイッチ

Claims (11)

  1. 人体の頭髪及び頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位を洗浄する洗浄工程と、
    前記洗浄工程にて洗浄した前記頭部対象部位を乾燥する乾燥工程と、
    前記洗浄工程の実行終了後又は前記乾燥工程の実行終了後に実行され、前記頭部対象部位に、温度が40℃を超えず、大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を付与する微細水粒子付与工程と、
    を含む、頭髪頭皮のケア方法。
  2. 人体の頭髪頭皮のいずれか又は双方である頭部対象部位に薬剤を塗布する薬剤塗布工程と、
    前記薬剤塗布工程の実行終了から所定時間経過後に実行され、前記頭部対象部位を洗浄する洗浄工程と、
    前記洗浄工程にて洗浄した前記頭部対象部位を乾燥する乾燥工程と、
    前記頭部対象部位に、温度が40℃を超えず、大きさが50ナノメートル以下の微細水粒子を付与する微細水粒子付与工程と、を含む、
    頭髪頭皮のケア方法。
  3. 請求項2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記薬剤塗布工程は複数回実行され、
    前記微細水粒子付与工程は、一の薬剤塗布工程の実行終了後であってその次の薬剤塗布工程の実行開始前に実行される、頭髪頭皮のケア方法。
  4. 請求項2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記頭部対象部位が頭髪であり、
    前記微細水粒子付与工程は、前記薬剤塗布工程の実行終了後であって前記乾燥工程の実行開始前に実行されるとともに、
    前記微細水粒子付与工程にて、前記頭髪に対して前記微細水粒子を、前記頭髪の毛先側から毛元側に向かう方向に付与する、頭髪頭皮のケア方法。
  5. 請求項1又は2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記頭部対象部位が頭髪であり、
    前記微細水粒子付与工程は、前記乾燥工程の実行と同時又は前記乾燥工程の実行終了後に実行され、
    前記微細水粒子付与工程にて、前記頭髪に対して前記微細水粒子を、前記頭髪の毛元側から毛先側に向かう方向に付与する、頭髪頭皮のケア方法。
  6. 請求項2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記頭部対象部位が頭髪であり、
    前記薬剤が、液体状の第一薬剤と第二薬剤を含むパーマ剤であり、
    前記薬剤塗布工程は、前記第一薬剤を前記頭髪に塗布する第一薬剤塗布工程と、
    前記第一薬剤塗布工程の実行終了後に前記第二薬剤を前記頭髪に塗布する第二薬剤塗布工程と、
    を含み、
    前記微細水粒子付与工程は、前記第一薬剤塗布工程の実行開始前、又は、前記第一薬剤塗布工程の実行終了後であって前記第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行される、頭髪頭皮のケア方法。
  7. 請求項6に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記第一薬剤は前記頭髪の内部組織を切断する機能を有し、
    前記第二薬剤は前記第一薬剤により切断された前記頭髪の内部組織を結合する機能を有し、
    前記第一薬剤塗布工程の実行終了直後に前記頭髪を第一所定時間放置する第一放置工程と、
    前記第二薬剤塗布工程の実行終了直後に前記頭髪を第二所定時間放置する第二放置工程と、を有し、
    前記微細水粒子付与工程は、前記第一放置工程の実行終了後であって前記第二薬剤塗布工程の実行開始前に実行される、頭髪頭皮のケア方法。
  8. 請求項2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記頭部対象部位が頭髪であり、
    前記薬剤がブリーチ剤であり、
    前記微細水粒子付与工程は、前記洗浄工程の実行終了後であって前記乾燥工程の実行開始前に実行される、頭髪頭皮のケア方法。
  9. 請求項2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記頭部対象部位が頭髪であり、
    前記乾燥工程の実行終了後に実行され、前記頭髪を整える仕上工程を含み、
    前記微細水粒子付与工程は、前記薬剤塗布工程の実行開始前から前記仕上げ工程の実行終了後の期間に実行される、頭髪頭皮のケア方法。
  10. 請求項2に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記頭部対象部位が頭髪であり、
    前記頭髪を熱処理する熱処理工程を有する、頭髪頭皮のケア方法。
  11. 請求項10に記載の頭髪頭皮のケア方法であって、
    前記微細水粒子付与工程は、前記熱処理工程の実行開始前に実行される、頭髪頭皮のケア方法。
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