以下に、本発明に係る電源装置の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係る電力システムの構成図である。実施形態に係る電力システムは、電気自動車や、ハイブリッド車両、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)やREEV(Range Extended Electric Vehicle)等の電力を利用した走行が可能な電動車両に適用される。
実施形態に係る電力システムは、電源装置10とモータジェネレータ20とDC充電器30などによって構成されている。なお、実施形態に係る電力システムのうち、電源装置10及びモータジェネレータ20は前記電動車両に搭載されており、DC充電器30は前記電動車両の外部に設置された外部充電設備などに設けられている。
電源装置10は、バッテリ12、コンデンサ部16、電力変換器18、充電リレー装置40、及び、ECU(Electronic Control Unit)60などを備えている。電源装置10は、モータジェネレータ20と電気的に接続されている。
バッテリ12は、高電圧バッテリとして充放電可能な蓄電池である。バッテリ12としては、例えば、リチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池の他、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等を用いることができる。
コンデンサ部16は、バッテリ12の正極側端子(正母線22)とバッテリ12の負極側端子(負母線24)との間に、互いに直列に接続された、第1コンデンサであるコンデンサC1と第2コンデンサであるコンデンサC2とによって構成されている。コンデンサC1とコンデンサC2とは、中性点NPで互いに接続されている。つまり、コンデンサC1は、一方側の端子が正母線22に電気的に接続され、他方側の端子が中性点NPに電気的に接続されている。また、コンデンサC2は、一方側の端子が中性点NPに電気的に接続され、他方側の端子が負母線24に電気的に接続されている。したがって、コンデンサC1,C2が同じように充放電を行って常に同じ電荷を蓄積しているとすれば、中性点NPと負母線24との間の電圧である中性点電圧は、バッテリ12の電圧の半分の電圧にクランプされることになる。なお、中性点電圧は、コンデンサC2の端子間電圧である電圧VC2に相当する。また、図1中のVC1は、コンデンサC1の端子間電圧である。また、コンデンサ部16とDC充電器30との間には、コンデンサ部16とDC充電器30との間での電力供給を遮断可能なリレーを設けても良い。
電力変換器18は、正母線22と中性点NPとの間の電圧である正側電圧が供給される上アーム、及び、中性点NPと負母線24との間の電圧である負側電圧が供給される下アームで構成されている。電力変換器18では、上アームと下アームとが、正母線22と負母線24との間に直列に多重化されて配置されており、3レベルの3相AC電圧をモータジェネレータ20に出力することが可能となっている。
また、電力変換器18は、U相電圧をモータジェネレータ20に出力するU相アームと、V相電圧をモータジェネレータ20に出力するV相アームと、W相電圧をモータジェネレータ20に出力するW相アームとを備えている。
U相アームでは、正母線22と負母線24との間に、第1スイッチング素子SU1、第2スイッチング素子SU2、第3スイッチング素子SU3、第4スイッチング素子SU4、及び、第1ダイオードD1が電気的に接続されている。第1スイッチング素子SU1及び第4スイッチング素子SU4は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いており、半導体素子(IGBT)に対して還流ダイオードが逆並列された構成となっている。なお、逆接続とは、例えば、半導体素子のコレクタ側にダイオードのカソード側が電気的に接続され、半導体素子のエミッタ側にダイオードのアノード側が電気的に接続されるものであるまた、第2スイッチング素子SU2及び第3スイッチング素子SU3は、nチャンネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いて構成されている。
第1スイッチング素子SU1における半導体素子のエミッタ(還流ダイオードのアノード)側と、第3スイッチング素子SU3における半導体素子のドレイン(寄生ダイオードのアノード)側と、第4スイッチング素子SU4における半導体素子のコレクタ(還流ダイオードのカソード)側とは、接続点PU1で電気的に接続されている。また、第2スイッチング素子SU2における半導体素子のソース(寄生ダイオードのカソード)側と、第3スイッチング素子SU3における半導体素子のソース(寄生ダイオードのカソード)側とは、接続点PU2で電気的に接続されている。また、第2スイッチング素子SU2における半導体素子のドレイン(寄生ダイオードのアノード)側は、コンデンサC1と中性点PNとの間に電気的に接続されている。また、第1ダイオードD1は、正母線22(バッテリ12の正極側端子)にカソード側が電気的に接続され、接続点PU2にアノード側が電気的に接続されている。
かかる構成において、U相アームでは接続点PU1からモータジェネレータ20にU相電圧が出力される。
V相アームでは、正母線22と負母線24との間に、第1スイッチング素子SV1、第2スイッチング素子SV2、第3スイッチング素子SV3、第4スイッチング素子SV4、及び、第2ダイオードD2が電気的に接続されている。第1スイッチング素子SV1及び第4スイッチング素子SV4は、IGBTを用いており、半導体素子(IGBT)に対して還流ダイオードが逆並列された構成となっている。また、第2スイッチング素子SV2及び第3スイッチング素子SV3は、nチャンネル型のMOSFETを用いて構成されている。
第1スイッチング素子SV1における半導体素子のエミッタ(還流ダイオードのアノード)側と、第3スイッチング素子SV3における半導体素子のドレイン(寄生ダイオードのカソード)側と、第4スイッチング素子SV4における半導体素子のコレクタ(還流ダイオードのカソード)側とは、接続点PV1で電気的に接続されている。また、第2スイッチング素子SV2における半導体素子のソース(寄生ダイオードのアノード)側と、第3スイッチング素子SV3における半導体素子のソース(寄生ダイオードのアノード)側とは、接続点PV2で電気的に接続されている。また、第2スイッチング素子SV2における半導体素子のドレイン(寄生ダイオードのカソード)側は、中性点PNに電気的に接続されている。また、第2ダイオードD2は、接続点PU2にカソード側が電気的に接続され、負母線24(バッテリ12の負極側端子)にアノード側が電気的に接続されている。
かかる構成において、V相アームでは接続点PV1からモータジェネレータ20にV相電圧が出力される。
W相アームでは、正母線22と負母線24との間に、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、第3スイッチング素子SW3、及び、第4スイッチング素子SW4が電気的に接続されている。第1スイッチング素子SW1及び第4スイッチング素子SW4は、IGBTを用いており、半導体素子(IGBT)に対して還流ダイオードが逆並列された構成となっている。また、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3は、nチャンネル型のMOSFETを用いて構成されている。
第1スイッチング素子SW1における半導体素子のエミッタ(還流ダイオードのアノード)側と、第3スイッチング素子SW3における半導体素子のドレイン(寄生ダイオードのカソード)側と、第4スイッチング素子SW4における半導体素子のコレクタ(還流ダイオードのカソード)側とは、接続点PW1で電気的に接続されている。また、第2スイッチング素子SW2における半導体素子のソース(寄生ダイオードのアノード)側と、第3スイッチング素子SW3における半導体素子のソース(寄生ダイオードのアノード)側とは、接続点PW2で電気的に接続されている。また、第2スイッチング素子SW2における半導体素子のドレイン(寄生ダイオードのカソード)側は、コンデンサC2と中性点PNとの間に電気的に接続されている。
かかる構成において、W相アームでは接続点PW1からモータジェネレータ20にW相電圧が出力される。
モータジェネレータ20は、前記電動車両に搭載される回転電機であり、バッテリ12から出力されたDC電圧が、電力変換器18によって三相AC電圧に変換されて供給されるときにモータとして作用し、車両を走行させるための駆動力を発生する。一方、モータジェネレータ20は、車両が制動されるときに発電機として作用し、制動エネルギーを回収して三相AC電圧として出力する。そして、この三相AC電圧が電力変換器18によってDC電圧に変換されてバッテリ12に供給されることにより、バッテリ12が充電される。
DC充電器30は、バッテリ12を充電するために車両外部に設けられた外部充電器である。DC充電器30は、DC充電器30の不図示のプラグと車両側の不図示のコネクタとを電気的に接続するための充電器接続部50にて、電源装置10側と電気的に接続される2つの端子であるP端子(正極端子)32P及びN端子(負極端子)32Nを有している。充電器接続部50と電力変換器18との間には、充電リレー42Pと充電リレー42Nとを有する充電リレー装置40、及び、リアクトル44Pが設けられている。
図1に示すように、DC充電器30のP端子32Pは、充電リレー42P及びリアクトル44Pを介して、U相アームの接続点PU2と電気的に接続されている。また、DC充電器30のN端子32Nは、充電リレー42Nを介して、V相アームの接続点PV2に電気的に接続されている。
なお、実施形態に係る電源装置10では、U相アームとV相アームとW相アームとのうち、いずれか1相の3レベルインバータにおける第2接続点(接続点PU2,PV2,PW2)と、DC充電器30のP端子32Pとを電気的に接続し、他の1相の3レベルインバータにおける他の第2接続点と、DC充電器30のN端子32Nとを電気的に接続すればよい。この際、DC充電器30のP端子32Pと電気的に接続される相の第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子は、残りの2相の第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子とは寄生ダイオードの向きが逆になるように構成する。これにより、DC充電器30のP端子32Pと電気的に接続される相の第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子は、これら第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子がオフ状態のときに、DC充電器30からの電流を遮断する向きに寄生ダイオードを備える。また、DC充電器30のN端子32Nと電気的に接続される相の第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子は、これら第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子がオフ状態のときに、DC充電器30のN端子32Nに流れ込む電流を遮断する向きに寄生ダイオードを備える。
このように、実施形態に係る電源装置10では、U相アームとV相アームとW相アームとのうち、いずれか1相の3レベルインバータにおける第2接続点、例えば図1においてU相アームの接続点PU2が、DC充電器30のP端子32Pと電気的に接続される第1接続端子として用いられている。また、U相アームとV相アームとW相アームとのうち、他の1相の3レベルインバータにおける他の第2接続点、例えば図1においてV相アームの接続点PV2が、DC充電器30のN端子32Nと電気的に接続される第2接続端子として用いられている。これにより、複数の電圧規格に対応して、DC充電器30からのDC電圧(充電器電圧Vchg)によりバッテリ12を充電することができる構成となっている。また、実施形態に係る電源装置10では、モータジェネレータ20と電力変換器18とを電気的に接続する既存の端子(接続点PU2,PV2など)を、電力変換器18にDC充電器30のP端子32P及びN端子32Nを電気的に接続するための第1接続端子及び第2接続端子として用いる構成であるため、DC充電器30を電気的に接続するために電力変換器18の加工や内部配線の追加などを行なう必要が無く、コストを抑えることが可能となる。
図2は、実施形態に係る電力システムの構成を示すブロック図である。ECU60は、電源装置10などの動作を制御する電子制御装置である。ECU60は、充電制御部62及びゲート信号生成部64などを備えている。なお、図2中、「VB」はバッテリ電圧であり、「VH]は充電電圧である。
充電制御部62には、図示されていないシステム制御部から出力された充電電力指令信号、電力変換器18に設けられた不図示の電圧計から出力された電圧位相信号、コンデンサ部16に設けられた不図示の電圧計から出力されたコンデンサC1,C2の電圧VC1,VC2の信号、及び、DC充電器30から出力された充電器情報信号などの各種信号が入力される。また、充電制御部62は、例えば、充電電力指令信号、電圧位相信号、及び、電圧VC1,VC2の信号などに基づいて求めたdutyなどを、ゲート信号生成部64に出力する。ゲート信号生成部64は、電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるためのゲート信号を生成し、その生成したゲート信号を各スイッチング素子に出力する。
実施形態に係る電源装置10においては、ECU60の制御モードとして、DC充電器30によってバッテリ12を充電する際に、DC充電器30の充電器電圧Vchgの最大電圧がバッテリ電圧VB以上の場合に適用する第1の充電モードである直結モードと、DC充電器30の充電器電圧Vchgの最大電圧がバッテリ電圧VBよりも低い場合に適用する第2の充電モードである昇圧モードとを有している。直結モードでは、DC充電器30からの電力を昇圧せずにバッテリ12を充電する。昇圧モードでは、DC充電器30からの電力を昇圧してバッテリ12を充電する。なお、実施形態に係る電源装置10では、直結モードと昇圧モードともに、DC充電器30からモータジェネレータ20に電流を流すことなくバッテリ12の充電を行う。よって、直結モード及び昇圧モードでの充電時には、モータジェネレータ20が回転しないため、電源装置10とモータジェネレータ20との間での電力供給を遮断可能なリレーを設ける必要が無く、電源装置10の低コスト化や小型化を図ることが可能となる。
充電制御部62は、DC充電器30からの充電器情報信号に基づいて、DC充電器30の充電器電圧Vchgの最大電圧とバッテリ電圧VBとを比較する。そして、DC充電器30の充電器電圧Vchgの最大電圧がバッテリ電圧VB以上の場合には、直結モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する。一方、DC充電器30の充電器電圧Vchgの最大電圧がバッテリ電圧VBよりも低い場合には、昇圧モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する。
なお、直結モードと昇圧モードとの選択は、例えば、電源装置10が搭載された前記電動車両に設けられたスイッチなどを、運転手などの作業者が、DC充電器30の仕様(最大電圧)に基づいて操作することにより行うようにしてもよい。
図3は、直結モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する際の回路状態を示した図である。なお、図3では、DC充電器30の充電器電圧Vchgの最大電圧が800[V]であり、バッテリ電圧VBが800[V]である。また、図3において、オンの状態にしているスイッチング素子は、丸で囲んである。
図3に示すように、直結モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する際には、まず、ECU60が、U相アームの第1スイッチング素子SU1及び第3スイッチング素子SU3と、V相アームの第3スイッチング素子SV3及び第4スイッチング素子SV4とをオフからオンに切り替え、その他のスイッチング素子をオフにした状態する。次に、ECU60は、充電リレー装置40の充電リレー42P,42Nをオフからオンに切り替えて、DC充電器30から電力変換器18を介してバッテリ12にDC電圧を供給し、バッテリ12の充電を行う。
なお、第1スイッチング素子SU1と第4スイッチング素子SV4とは、それぞれの還流ダイオードに電流が流れるためオフにしてもよい。これにより、電力変換器18の全てのスイッチング素子がオフの状態となるため、電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるスイッチング動作を行わずに済み、充電効率を高くできるとともに、充電のためのインバータ素子や冷却機構の追加を抑制することができる。一方、第1スイッチング素子SU1と第4スイッチング素子SV4とをオンにすることによって、第1スイッチング素子SU1と第4スイッチング素子SV4とに電流が流れた際の耐久性を確保することが可能となる。
また、直結モードでの充電中には、電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとが固定されるため、スイッチング損失を低減させることができる。
図4は、昇圧モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する際に、コンデンサC1の充電がオンの状態での回路状態を示した図である。図5は、昇圧モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する際に、コンデンサC2の充電がオンの状態での回路状態を示した図である。なお、図4及び図5において、オンの状態にしているスイッチング素子は、丸で囲んである。図6は、コンデンサC1の充電がオンの状態とコンデンサC2の充電がオンの状態との切り替えのタイミングの一例を示した図である。
本実施形態では、図4に示すように、昇圧モードにおいて、DC充電器30からコンデンサC1に電流が流れてコンデンサC1の充電がなされるようにした状態を、「コンデンサC1の充電がオンの状態」という。また、本実施形態では、図5に示すように、昇圧モードにおいて、DC充電器30からコンデンサC2に電流が流れてコンデンサC2の充電がなされるようにした状態を、「コンデンサC2の充電がオンの状態」という。
また、昇圧モードでは、コンデンサC1,C2の電圧VC1,VC2が均等になるように、充電制御部62がフィードバック制御(PI制御)を行う。このフィードバック制御(PI制御)では、図6の矩形パルスで示されるような、コンデンサC1の充電がオンの状態とコンデンサC2の充電がオンの状態とのdutyを、下記数式(1)を用いて算出する。なお、図6中の「T」は、キャリア周期である。また、図6において、矩形パルスのハイレベルは、コンデンサC1の充電がオンの状態を意味し、矩形パルスのローレベルは、コンデンサC2の充電がオンの状態を意味する。また、図6中の「duty」は、コンデンサC1側dutyであって、0より大きく1より小さい値である。
コンデンサC1側duty=Kp(VC2-VC1)+Ki∫(VC2-VC1)dt・・・(1)
なお、上記数式(1)中、「Kp」は比例ゲインであり、「Ki」は積分ゲインである。
このようにして算出された前記dutyの情報は、充電制御部62からゲート信号生成部64に出力される。
ゲート信号生成部64は、昇圧モード時に、前記duty及びキャリア周期Tなどに基づいて、コンデンサC1の充電がオンの状態またはコンデンサC2の充電がオンの状態となるように、電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えるためのゲート信号を生成し、その生成したゲート信号を各スイッチング素子に出力する。
昇圧モードによってDC充電器30によりバッテリ12を充電する際には、まず、コンデンサC1,C2の電圧VC1,VC2を、それぞれバッテリ12からの電力によって充電し、バッテリ電圧VB(800[V])の1/2である400[V]にする。また、DC充電器30の充電器電圧Vchgもバッテリ電圧VB(800[V])の1/2である400[V]にする。なお、DC充電器30の充電器電圧Vchgとしては、バッテリ電圧VBの1/2よりも多少高くても良い。
そして、例えば、図4に示すように、コンデンサC1の充電をオンの状態にする。すなわち、ECU60は、U相アームにおける第1スイッチング素子SU1及び第3スイッチング素子SU3と、V相アームにおける第2スイッチング素子SV2とをオフからオンに切り替えて、その他のスイッチング素子をオフの状態にする。これにより、DC充電器30のP端子32PからU相アームの接続点PU2に出力された電流は、U相アームの第3スイッチング素子SU3及び第1スイッチング素子SU1と、コンデンサC1と、V相アームの第2スイッチング素子SV2とを通って、V相アームの接続点PV2からDC充電器30のN端子32Nに入力される。これにより、コンデンサC1の充電がオンの状態では、DC充電器30からの電力によってコンデンサC1が充電されて電圧VC1が高くなる。そして、DC充電器30によるコンデンサC1の充電は、充電電圧VH(電圧VC1+電圧VC2)がバッテリ電圧VBよりも高い所定電圧まで行う。なお、前記所定電圧としては、例えば、800[V]よりも高い電圧である。そして、充電制御部62は、コンデンサ部16に設けられた電圧計から出力された電圧VC1,VC2の値に基づいて、電圧VC1,VC2の合計が800[V]を超えたと判断したら、DC充電器30によるコンデンサC1の充電を終了する。
なお、第1スイッチング素子SU1は、還流ダイオードに電流が流れるためオフにしてもよい。一方、第1スイッチング素子SU1をオンにすることによって、電流が流れた際の第1スイッチング素子SU1の耐久性を確保することが可能となる。
次に、図5に示すように、コンデンサC1の充電をオンの状態からコンデンサC2の充電をオンの状態に切り替える。すなわち、ECU60は、U相アームにおける第2スイッチング素子SU2と、V相アームにおける第3スイッチング素子SV2及び第4スイッチング素子SV4とをオフからオンに切り替えて、その他のスイッチング素子をオフの状態にする。これにより、充電電圧VHがバッテリ電圧VBよりも高い状態にて、DC充電器30によるコンデンサC1の充電が停止され、コンデンサC1に蓄えられた電力が放電されてバッテリ12に入力されることにより、バッテリ12が充電される。
また、コンデンサC2の充電がオンの状態では、DC充電器30のP端子32PからU相アームの接続点PU2に出力された電流が、U相アームにおける第2スイッチング素子SU2と、コンデンサC2と、V相アームにおける第4スイッチング素子SV4及び第3スイッチング素子SV3とを通って、V相アームの接続点PV2からDC充電器30のN端子32Nに入力される。これにより、コンデンサC2の充電がオンの状態では、DC充電器30からの電力によってコンデンサC2が充電されて電圧VC2が高くなる。そして、DC充電器30によるコンデンサC2の充電は、充電電圧VHがバッテリ電圧VBよりも高い所定電圧まで行う。なお、前記所定電圧としては、例えば、800[V]よりも高い電圧である。そして、充電制御部62は、コンデンサ部16に設けられた電圧計から出力された電圧VC1,VC2の値に基づいて、電圧VC1,VC2の合計が800[V]を超えたと判断したら、DC充電器30によるコンデンサC2の充電を終了する。
なお、第4スイッチング素子SV4は、還流ダイオードに電流が流れるためオフにしてもよい。一方、第4スイッチング素子SV4をオンにすることによって、電流が流れた際の第4スイッチング素子SV4の耐久性を確保することが可能となる。
次に、コンデンサC2の充電をオンの状態からコンデンサC1の充電をオンの状態に切り替える。これにより、充電電圧VHがバッテリ電圧VBよりも高い状態にて、DC充電器30によるコンデンサC2の充電が停止され、コンデンサC2に蓄えられた電力が放電されてバッテリ12に入力されることにより、バッテリ12が充電される。
ここで、実施形態に係る電源装置10においては、ECU60が、昇圧モード時にDC充電器30からの電力によるコンデンサC1とコンデンサC2との充電が交互に行われるように、電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとの切り替えを制御する際、コンデンサC1及びコンデンサC2の電圧変化に基づいて、各スイッチング素子の切り替えタイミングを補正する。これにより、実施形態に係る電源装置10は、昇圧モード時に電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとの切り替えタイミングのずれによって、電力変換器18の各スイッチング素子の全オフ状態または全オン状態が生じて電流が脈動することを抑制することができる。
図7は、昇圧モード時に充電制御部62によるフィードバック制御がある場合でのバッテリ電圧及びコンデンサ電圧を示したグラフである。図8は、昇圧モード時に充電制御部62によるフィードバック制御がない場合でのバッテリ電圧及びコンデンサ電圧を示したグラフである。
本実施形態において充電制御部62は、昇圧モード時に電圧VC1と電圧VC2とが均等になるようにフィードバック制御を行う。図7に示すように、昇圧モード時に充電制御部62によるフィードバック制御を行うことによって、コンデンサC1とコンデンサC2とがそれぞれ充電された際の電圧VC1と電圧VC2とを均等化することができる。一方、図8に示すように、昇圧モード時に充電制御部62によるフィードバック制御を行わないことによって、コンデンサC1とコンデンサC2とがそれぞれ充電された際の電圧VC1と電圧VC2との間に電圧差が発生し、電圧VC1と電圧VC2とを均等化することができない。
本実施形態においてduty補正部63は、インバータスイッチ状態の切替時に電源短絡防止の目的で設定するデッドタイムが、充電動作に与える影響を緩和させるために、フォードバック制御にてdutyを補正する。状態としては、(1)dutyの補正量が小さい状態、(2)dutyの補正量が適切な状態、(3)dutyの補正量が大きい状態、の3つの状態に分けられ、(2)の状態に収束するように制御を行う。
図9は、dutyの補正量が小さい状態を示した図である。図9に示したdutyの補正量が小さい状態は、充電器P端子接続相(U相)において全てのスイッチング素子がオフとなるデッドタイムと、充電器N端子接続相(V相)において全てのスイッチング素子がオフとなるデッドタイムとが、重なる期間がある状態である。そして、このように2相(U相とV相)のデッドタイムが重なる期間では、充電器電流が大きく減少する。
ここで、dutyの補正量が小さい場合には、2相(U相とV相)のデッドタイムが重なることにより、充電器電流が急激に減少する。そのため、2相(U相とV相)のデッドタイムが重なった直後は、電圧VC1または電圧VC2の増加が小さくなるため、電圧VC1または電圧VC2の波形は必ず下に弧を描いて増加する波形となる。そして、dutyの補正量が小さい場合における、例えば、電圧VC2Tのサンプリング時から電圧VC2peakのサンプリング時までの電圧VC2の増加量ΔVC2は、ΔVC2=VC2peak-VC2Tとなる。なお、dutyの補正量が小さい場合における電圧VC1の増加量ΔVC1についても同様であり、「VC2」を「VC1」に読み替えればよい。
duty補正部63は、dutyの補正量が小さい場合、2相(U相とV相)のデッドタイムが重なる期間を小さくするために、充電器P端子接続相(U相)のスイッチング素子SU2のオンタイミングが早くなるように、且つ、充電器N端子接続相(V相)のスイッチング素子SU2のオフタイミングが遅くなるように、dutyを補正する。
図10は、dutyの補正量が適切な状態を示した図である。図10に示したdutyの補正量が適切な状態は、duty補正によって、充電器P端子接続相(U相)において全てのスイッチング素子がオフとなるデッドタイムと、充電器N端子接続相(V相)において全てのスイッチング素子がオフとなるデッドタイムとが、重なる期間がない状態である。
ここで、dutyの補正量が適切な場合には、充電器電流がほぼ一定となるため、電圧VC1または電圧VC2の増加の波形は直線的になる。そして、dutyの補正量が適切な場合における、例えば、電圧VC2Tのサンプリング時から電圧VC2peakのサンプリング時までの電圧VC2の増加量ΔVC2は、ΔVC2=(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期となる。なお、dutyの補正量が小さい場合における電圧VC1の増加量についても同様であり、「VC2」を「VC1」に読み替えればよい。
duty補正部63は、duty補正によってdutyの補正量が適切な状態でduty補正を行う場合には、duty補正値として前回値を引き継いで用いる。
図11は、dutyの補正量が大きい状態を示した図である。図11に示したduty補正量が大きい状態は、duty補正量が適切な値よりも大きく、充電器P端子接続相(U相)においてスイッチング素子SU2のオン期間と、充電器N端子接続相(V相)においてスイッチング素子SV2のオン期間とが、重なる期間が存在する状態である。2相(U相とV相)のスイッチング素子S2(スイッチング素子SU2とスイッチング素子SV2)の同時オン期間が存在すると、DC充電器30のPN端子間で短絡が発生するため電流が大きく増加する。
そのため、duty補正部63は、dutyの補正量が大きい場合、図10に示したdutyの補正量が適切な状態に近づけるため、充電器P端子接続相のスイッチング素子SU2のオンタイミングを遅くするように、且つ、充電器N端子接続相のSV2のオフタイミングを早めるように、dutyの補正量を修正する。
図12は、実施形態においてECU60が実施するduty補正の制御の一例を示したフローチャートである。
まず、ECU60は、ステップS1において、制御周期タイミングで電圧VC1,VC2のサンプリングを行う。なお、制御周期タイミングとは、本制御を行うECU60の制御周期のことであり、設計した時間毎に再計算を行う。また、制御周期タイミングでサンプリングした電圧VC1,VC2の値を電圧VC1T,VC2Tとする。次に、ECU60は、ステップS2において、充電器電流Ichgのピークタイミングで電圧VC1,VC2のサンプリングを行う。なお、この際、サンプリングした電圧VC1,VC2の値を電圧VC1peak,VC2peakとする。
次に、ECU60は、ステップS3において、VC1peak-VC1T>0の関係を満たすか否かを判断する。ここで、電圧VC1は増加と減少とを交互に繰り返しており、電圧VC1peakは充電器電流Ichgが最大値となる時の電圧VC1になる。そして、充電器電流Ichgが最大値の時に電圧VC1は最大値または最小値となる。そのため、本制御では、電圧VC1peakと、制御周期タイミングでサンプリングした電圧VC1Tとを比較することで、電圧VC1が増加中であるか減少中であるかを把握し、それぞれに応じた処理を実施できるようにしている。なお、このことは、電圧VC2Tと電圧VC2peakについても同様である。
ECU60は、VC1peak-VC1T>0の関係を満たすと判断した場合(ステップS3にてYes)、ステップS4において、VC1peak-VC1T>(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすか否かを判断する。なお、C1は、コンデンサC1の静電容量である。
ここで、「VC1peak-VC1T」はdutyの補正量が小さい状態での電圧VC1の増加量を表しており、「(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期」はdutyの補正量が適切な状態での電圧VC1の増加量を表している。そして、VC1peak-VC1T>(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすことによって、dutyの補正量が小さい状態が確定され、dutyの補正量を増やすように処理を行なえばよいことが判断できる。
ECU60は、VC1peak-VC1T>(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすと判断した場合(ステップS4にてYes)、ステップS5において、充電器P端子接続相(U相)のスイッチング素子SU2のオンタイミングを早め、充電器N端子接続相(V相)のスイッチング素子SV2のオンタイミングを遅くするように、dutyを補正する。その後、ECU60は、ステップS14の処理に移行する。
また、ステップS4において、ECU60は、VC1peak-VC1T>(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たさないと判断した場合(ステップS4にてNo)、ステップS6において、VC1peak-VC1T<(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすか否かを判断する。ECU60は、VC1peak-VC1T<(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすと判断した場合(ステップS6にてYes)、ステップS7において、充電器P端子接続相(U相)のスイッチング素子SU2のオンタイミングを遅く、充電器N端子接続相(V相)のスイッチング素子SV2のオフタイミングを早くするように、dutyを補正する。その後、ECU60は、ステップS14の処理に移行する。一方、ECU60は、VC1peak-VC1T<(1/C1)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たさないと判断した場合(ステップS6にてNo)、duty補正値を前回値保持とする。その後、ECU60は、ステップS14の処理に移行する。
また、ステップS3において、ECU60は、VC1peak-VC1T>0の関係を満たさないと判断した場合(ステップS3にてNo)、ステップS9において、VC2peak-VC2T>(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすか否かを判断する。なお、C2は、コンデンサC2の静電容量である。
ここで、「VC2peak-VC2T」はdutyの補正量が小さい状態での電圧VC2の増加量を表しており、「(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期」はdutyの補正量が適切な状態での電圧VC2の増加量を表している。そして、VC2peak-VC2T>(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすことによって、dutyの補正量が小さい状態が確定され、dutyの補正量を増やすように処理を行なえばよいことが判断できる。
ECU60は、VC2peak-VC2T>(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすと判断した場合(ステップS9にてYes)、ステップS10において、充電器P端子接続相(U相)のスイッチング素子SU2のオンタイミングを早め、充電器N端子接続相(V相)のスイッチング素子SV2のオフタイミングを遅くするように、dutyを補正する。その後、ECU60は、ステップS14の処理に移行する。
また、ステップS9において、ECU60は、VC2peak-VC2T>(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たさないと判断した場合(ステップS9にてNo)、ステップS11において、VC2peak-VC2T<(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすか否かを判断する。ECU60は、VC2peak-VC2T<(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たすと判断した場合(ステップS11にてYes)、ステップS12において、充電器P端子接続相(U相)のスイッチング素子SU2のオンタイミングを遅く、充電器N端子接続相(V相)のスイッチング素子SV2のオフタイミングを早くするように、dutyを補正する。その後、ECU60は、ステップS14の処理に移行する。一方、ECU60は、VC2peak-VC2T<(1/C2)×(Ichg/2)×duty×キャリア半周期の関係を満たさないと判断した場合(ステップS11にてNo)、duty補正値を前回値保持とする。その後、ECU60は、ステップS14の処理に移行する。
ECU60は、ステップS14において、充電終了であるか否かを判断する。ECU60は、充電終了ではないと判断した場合(ステップS14にてNo)、ステップS1に移行して、一連の制御を繰り返し行う。一方、ECU60は、充電終了であると判断した場合(ステップS14にてYes)、一連の制御を終了する。
以上のように、実施形態に係る電源装置10においては、ECU60(duty補正部63)が、図12に示したようなduty補正を行うことによって、昇圧モード時に電力変換器18の各スイッチング素子のオンとオフとの切り替えタイミングのずれによって、電力変換器18の各スイッチング素子の全オフ状態または全オン状態が生じて電流が脈動することを抑制することができる。