JP2022160874A - 電動機駆動装置および電動機駆動装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】損失の悪化を抑制しつつ、並列に接続された複数の昇圧コンバータによって生じる共振を抑制する。【解決手段】昇圧コンバータ20が、バッテリ1とインバータ30の間に、並列に複数設けられる。制御装置50は、IGBT素子Q1を閉成し昇圧動作を行わないとき(上アームON駆動時)、MG2の負荷変動周波数が、昇圧コンバータ20の共振周波数と一致する共振領域である場合、上アームON駆動される昇圧コンバータの数を変更し、昇圧コンバータ20の共振周波数を変化させる。【選択図】図1
Description
本開示は、電動機駆動装置および電動機駆動装置の制御方法に関する。
特開2017-131094号公報(特許文献1)には、バッテリとモータとの間に配置された昇圧コンバータ(昇圧回路)を備えるモータ制御装置が開示されている。この特許文献1のモータ制御装置では、モータの動作点が、昇圧コンバータで共振が生じる動作領域である共振領域に該当することを条件に、モータに係る電圧指令とモータに係る電流との位相差に基づいて、矩形波電圧に係る電圧極性が一時的に反転するようにインバータを制御することにより、昇圧コンバータの共振を抑制しつつ、エネルギー効率を向上させることができるとされている。
特許文献1は単一の昇圧コンバータで生じる共振を抑制する技術であり、並列に接続された複数の昇圧コンバータによって生じる共振に関して、考慮されていない。
本開示は、損失の悪化を抑制しつつ、並列に接続された複数の昇圧コンバータによって生じる共振を抑制することが可能な電動機駆動装置を提供することを目的とする。
本開示の電動機駆動装置は、蓄電装置と、蓄電装置の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換し、電動機を駆動するインバータと、制御装置と、を備えた電動機駆動装置である。昇圧コンバータは、蓄電装置の正極に接続する低圧側正極ラインへ一端が接続されたリアクトルと、リアクトルの他端と高圧側正極ラインに接続される第1スイッチング素子と、リアクトルの他端と蓄電装置の負極に接続する負極ラインへ接続される第2スイッチング素子を含み、昇圧コンバータは、蓄電装置とインバータの間に、電気的に並列に複数設けられる。制御装置は、第1スイッチング素子を閉成し昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、電動機の負荷変動周波数が、第1スイッチング素子が閉成された昇圧回路の共振周波数と一致する共振領域である場合、第1スイッチング素子が閉成される昇圧コンバータの数を変更するよう構成されている。
この構成によれば、電動機駆動装置は、並列に接続された複数の昇圧コンバータを備える。昇圧コンバータが昇圧動作を行わないとき、昇圧コンバータの第1スイッチング素子が閉成され、蓄電装置の電圧を昇圧することなく、蓄電装置の直流電力がインバータへ供給される。
並列に接続された昇圧コンバータにおいて、蓄電装置の電圧を昇圧することなく、蓄電装置の直流電力をインバータへ供給する際、第1スイッチング素子が閉成されている昇圧コンバータの数によって、昇圧コンバータの共振周波数が変化し、第1スイッチング素子が閉成されている昇圧コンバータの数が多いほど、共振周波数が高周波側へ変化する。
制御装置は、第1スイッチング素子を閉成し昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、電動機の負荷変動周波数が、第1スイッチング素子が閉成された昇圧コンバータの共振周波数と一致する共振領域である場合、第1スイッチング素子が閉成される昇圧コンバータの数を変更する。第1スイッチング素子が閉成される昇圧コンバータの数が変更されることにより、昇圧コンバータの共振周波数が変化し、共振領域から外れるので、昇圧コンバータによって生じる共振を抑制できる。また、昇圧コンバータの昇圧動作を行うことなく、共振を抑制するので、損失が悪化することも抑制できる。
前記制御装置は、昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、すべての昇圧コンバータの第1スイッチング素子を閉成し、電動機の負荷変動周波数が共振領域である場合、第1スイッチング素子が閉成される前記昇圧コンバータの数を減少するようにしてもよい。
この構成によれば、並列に接続された昇圧コンバータにおいて、蓄電装置の電圧を昇圧することなく、蓄電装置の直流電力をインバータへ供給する際、すべての昇圧コンバータの第1スイッチング素子を閉成する。これにより、並列に接続されたすべての昇圧コンバータの第1スイッチング素子を介してインバータに蓄電装置の電力が供給されるので、昇圧コンバータにおける銅損が最小となり、損失の悪化を抑制できる。
本開示の電動機駆動装置の制御方法は、蓄電装置の正極に接続する低圧側正極ラインへ一端が接続されたリアクトルと、リアクトルの他端と高圧側正極ラインに接続される第1スイッチング素子と、リアクトルの他端と蓄電装置の負極に接続する負極ラインへ接続される第2スイッチング素子を含む昇圧コンバータが、蓄電装置とインバータの間に、電気的に並列に複数設けられ、インバータによって、昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換し電動機を駆動する、電動機駆動装置の制御方法である。電動機駆動装置の制御方法は、電動機の負荷変動周波数と取得するステップと、第1スイッチング素子を閉成し昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、負荷変動周波数が、第1スイッチング素子が閉成された昇圧コンバータの共振周波数と一致する共振領域であるか否かを判定するステップと、負荷変動周波数が共振領域であると判定されたとき、第1スイッチング素子が閉成される昇圧コンバータの数を変更するステップと、を含む。
この構成によれば、第1スイッチング素子を閉成し昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、負荷変動周波数が、第1スイッチング素子が閉成された昇圧コンバータの共振周波数と一致する共振領域であると判定されると、第1スイッチング素子が閉成される昇圧コンバータの数を変更する。したがって、昇圧コンバータの共振周波数が変化し、共振領域から外れるので、昇圧コンバータによって生じる共振を抑制できる。昇圧コンバータの昇圧動作を行うことなく、共振を抑制するので、損失が悪化することも抑制できる。
本開示によれば、損失の悪化を抑制しつつ、並列に接続された複数の昇圧コンバータによって生じる共振を抑制することができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本開示の実施の形態に係る電動機駆動装置100の概略構成を示す図である。本実施の形態において、電動機駆動装置100が電気自動車に搭載されている例を説明するが、電動機駆動装置100は、電動機とエンジンとを車両の駆動に併用するハイブリッド自動車、燃料電池自動車等に対しても適用することができる、また、車両に搭載された電動機駆動装置に限られない。
図1を参照して、電動機駆動装置100は、バッテリ1と、電動機としてのモータジェネレータ(MG)2とを備える。MG2は車両の駆動輪3を駆動するものであり、電動機駆動装置100は、電気自動車に搭載されている。
蓄電装置としてのバッテリ1は、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池であり、図示しない充電設備によって充電可能に構成されている。なお、バッテリ1は、電気二重層キャパシタ等の蓄電装置であってもよい。
バッテリ1には、監視ユニット11が設けられている。監視ユニット11は、図示しない、電圧センサと、電流センサと、温度センサとを含む。電圧センサは、バッテリ1の端子間の電圧(バッテリ電圧)VBを検出する。電流センサは、バッテリ1に入出力される電流IBを検出する。温度センサは、バッテリ1の温度TBを検出する。各センサは、その検出結果を制御装置50に出力する。
MG2は、たとえば埋込構造永久磁石同期電動機(IPMモータ)であって、電動機(モータ)としての機能と発電機(ジェネレータ)としての機能を有する。
電動機駆動装置100は、さらに、バッテリ1の正極に接続する低圧側正極ラインPL1と、高圧側正極ラインPL2と、バッテリ1の負極に接続する負極ラインPNを含む。
コンデンサC1は、図示しないシステムメインリレーが導通しているときにバッテリ1に接続され、バッテリ1の端子間電圧を平滑化する。コンデンサC1は、低圧側正極ラインPL1と負極ラインPNの間に接続される。電圧センサ12は、コンデンサC1の両端間の電圧VLを検知して制御装置50に対して出力する。
電動機駆動装置100は、複数の昇圧コンバータ20A、20B、20C、20Dを備える。これら複数の昇圧コンバータ20A、20B、20C、20Dを、まとめて説明するときは、昇圧コンバータ20とも称する。昇圧コンバータ20は、コンデンサC1の端子間電圧(バッテリ電圧VB)を昇圧する。平滑用コンデンサC2は、高圧側正極ラインPL2と負極ラインPNの間に接続され、昇圧コンバータ20によって昇圧された電圧を平滑化する。電圧センサ13は、平滑用コンデンサC2の端子間電圧VH(システム電圧VHとも称する)を検知して制御装置50に出力する。インバータ30は、昇圧コンバータ20から出力される直流電力を三相交流電力に変換してMG2に出力する。
昇圧コンバータ20Aは、一端が低圧側正極ラインPL1に接続されるリアクトルL1と、高圧側正極ラインPL2と負極ラインPNとの間に直列に接続されるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1、Q2と、IGBT素子Q1、Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1、D2とを含む。IGBT素子Q1は、本開示の「第1スイッチング素子」に相当し、IGBT素子Q2は、本開示の「第2スイッチング素子」に相当する。
リアクトルL1の他端はIGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続される。IGBT素子Q1のコレクタは高圧側正極ラインPL2に接続され、IGBT素子Q2のエミッタは負極ラインPNに接続される。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続される。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続される。
昇圧コンバータ20B、20C、20Dも、昇圧コンバータ20Aと同様に構成されている。そして、昇圧コンバータ20A、20B、20C、20Dは、バッテリ1とインバータ30に間に、電気的に並列に接続されている。昇圧コンバータ20は、同一の部品から構成されているので、入手が容易であるとともに、その特性は部品の公差の範囲内でほぼ同一である。なお、IGBT素子Q1とダイオードD1によって構成される回路を上アームと称し、IGBT素子Q2とダイオードD2によって構成される回路を下アームとも称する。
インバータ30は、高圧側正極ラインPL2と負極ラインPNに接続されている。インバータ30は、駆動輪3を駆動するMG2に対して昇圧コンバータ20の出力する直流電力を三相交流電力に変換して出力する。またインバータ30は、回生制動に伴い、MG2において発電された電力を昇圧コンバータ20に戻す。このとき昇圧コンバータ20は、降圧回路として動作するように制御装置50によって制御される。
インバータ30は、U相アーム31と、V相アーム32と、W相アーム33とを含む。U相アーム31、V相アーム32、およびW相アーム33は、高圧側正極ラインPL2と負極ラインPNとの間に並列に接続される。
U相アーム31は、高圧側正極ラインPL2と負極ラインPNとの間に直列接続されたIGBT素子(スイッチング素子ともいう)Q3、Q4と、IGBT素子Q3、Q4とそれぞれ逆並列に接続されるダイオードD3、D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
IGBT素子Q5、Q6と、IGBT素子Q5、Q6とそれぞれ逆並列に接続されるダイオードD5、D6とを含むV相アーム32、および、IGBT素子Q7、Q8と、IGBT素子Q7、Q8とそれぞれ逆並列に接続されるダイオードD7、D8とを含むW相アーム33の構成は、U相アーム31の構成と同一であるので、詳細な説明は省く。各相のアームの中間点は、MG2の各相のコイルの一端に接続されている。
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、バッファ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。制御装置50は、各センサからの信号の入力ならびにメモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、昇圧コンバータ20、インバータ30を制御する。たとえば、制御装置50は、MG2へのトルク指令TRに基づいて、目標システム電圧VH*を設定するとともに、バッテリ1からの電力が目標システム電圧VH*になるよう、昇圧コンバータ20を制御する。また、制御装置50は、監視ユニット11から受信した、バッテリ1の入出力電流IBおよび/または電圧VBの検出値に基づいてバッテリ1の蓄電量を示すSOCを算出する。SOCは、たとえば、バッテリ1の満充電容量に対する現在の蓄電量を百分率で表される。
MG2の負荷変動周波数が昇圧コンバータ20の共振周波数と一致すると、共振が生じてバッテリ1から出力される電圧、電流が大きく変動し、バッテリ1の劣化の進行や、各種部品の故障が懸念される。本実施の形態では、昇圧コンバータ20は、同一特性の昇圧コンバータ20が4個(昇圧コンバータ20A、20B、20C、20D)並列に接続されている。このため、上アームのIGBT素子Q1が閉成され、高圧側正極ラインPL2を介して平滑用コンデンサC2と電気的に接続している昇圧コンバータ20の数によって、昇圧コンバータ20の共振周波数が変化する。
図2は、昇圧コンバータ20の共振特性を示す図である。たとえば、リアクトルL1のインダクタンスをL、平滑用コンデンサC2の静電容量をCとすると、1個(n=1)の昇圧コンバータ20(たとえば、昇圧コンバータ20A)が接続している場合の共振周波数Rf1は、Rf1=1/2π(L×C)1/2である。2個(n=2)の昇圧コンバータ20(たとえば、昇圧コンバータ20A、20B)が接続している場合の共振周波数Rf2は、Rf2=1/2π((L/2)×C)1/2であり、3個(n=3)の昇圧コンバータ20(たとえば、昇圧コンバータ20A、20B、20C)が接続している場合の共振周波数Rf3は、Rf3=1/2π((L/3)×C)1/2であり、4個(n=4)の昇圧コンバータ20(たとえば、昇圧コンバータ20A、20B、20C、20D)が接続している場合の共振周波数Rf4は、Rf4=1/2π((L/4)×C)1/2である。したがって、図2に示すように、接続される昇圧コンバータ20の数が多くなるほど共振周波数は高周波側に変化する。
目標システム電圧VH*がバッテリ1の電圧と同じであり、昇圧コンバータ20の昇圧動作を停止する場合には、上アームのIGBT素子Q1を常時閉成することにより、バッテリ1の電力をインバータ30に供給する。なお、上アームのIGBT素子Q1を常時閉成することを、上アームON駆動とも称する。この場合、すべての昇圧コンバータ20の上アームON駆動を行うことにより、スイッチング損失がなくなるとともに、銅損が最も小さくなり、エネルギー損失が小さくなる。この状態で、MG2の負荷変動周波数が、昇圧コンバータ20の共振周波数と一致して共振が生じる場合には、昇圧コンバータ20の昇圧動作を行い、システム電圧VHを上昇させ、共振周波数をずらすことが考えられるが、昇圧動作によるスイッチング損失の増加等による損失の悪化が懸念される。本実施の形態では、MG2の負荷変動周波数が、昇圧コンバータ20の共振周波数と一致して共振が生じる場合に、昇圧コンバータ20の昇圧動作を行うことなく、上アームON駆動する昇圧コンバータ20の数を変更することにより、共振周波数を変化させ、共振を抑制する。
図3は、制御装置50で実行されるコンバータ制御ルーチンの概略を示すフローチャートである。このフローチャートは、電動機駆動装置100の作動中(電気自動車の走行中)、所定期間毎に繰り返し処理される。ステップ(以下、ステップをSと略す)30では、MG2へのトルク指令TRの大きさに応じて、目標システム電圧VH*を算出する。たとえば、トルク指令TRが大きくなるほど、目標システム電圧VH*が高くなるよう算出される。目標システム電圧VH*は、バッテリ電圧VB以上の値として算出される。
続く、S31では、目標システム電圧VH*がバッテリ電圧VBであるか否かを判定する。目標システム電圧VH*がバッテリ電圧VBより大きい場合、昇圧コンバータ20による昇圧動作が必要であり、否定判定されS32へ進み、フラグFを0にセットしたあと、S33へ進む。
S33では、MG2の駆動電流の大きさに基づいて、昇圧コンバータ20の駆動数を決定する。たとえば、MG2の駆動電流が大きいほど、昇圧コンバータ20の駆動数が多くなるよう決定する。なお、駆動数は、1~4である。そして、決定された数の昇圧コンバータ20が昇圧チョッパ回路として作動し、システム電圧VHが目標システム電圧VH*になるようにIGBT素子Q1およびIGBT素子Q2を駆動し昇圧を行い、今回のルーチンを終了する。なお、駆動されない(停止する)昇圧コンバータ20のIGBT素子Q1およびIGBT素子Q2は、開成される。
目標システム電圧VH*がバッテリ電圧VBである場合には、昇圧動作は不要であるので、S31で肯定判定されてS34に進み、フラグFを1にセットしたあと、S35へ進む。
S35では、後述する共振抑制処理において決定された上アームON駆動数に応じて、昇圧コンバータ20のIGBT素子Q1を閉成し、今回のルーチンを終了する。上アームON駆動の(IGBT素子Q1が閉成された)昇圧コンバータ20のIGBT素子Q2(下アーム)は、開成される。
図4は、制御装置50で実行される共振抑制処理の概略を示すフローチャートである。このフローチャートは、電動機駆動装置100の作動中(電気自動車の走行中)に所定期間毎に繰り返し処理される。まず、S40において、昇圧コンバータ20が上アームON駆動中であるか否かを判定する。昇圧コンバータ20が上アームON駆動中であるか否かの判定は、フラグFに基づいて行われる。フラグFが0のときには、昇圧コンバータ20は昇圧動作を行っており、上アームON駆動中でないので、否定判定され、今回のルーチンを終了する。フラグFが1であり、昇圧コンバータ20が昇圧動作を行っていない場合には、肯定判定されS41へ進む。
S41では、MG2の負荷変動周波数が、昇圧コンバータ20の共振周波数と一致しているか否かを判定する。MG2の負荷変動周波数は、MG2の回転数(回転速度)と負荷変動周波数との関係を予め調べてマップとして記憶しておき、MG2の回転数を検出しマップから負荷変動周波数を求める。MG2の負荷変動周波数はMG2の回転数に対してリニアに変化する。このため、MG2の回転数に対して負荷変動周波数は一義的に定まる。
昇圧コンバータ20の共振周波数は、上アームON駆動中の昇圧コンバータ20の数(上アームON駆動数)を用いて、たとえば、図2の共振特性を示す図から求めてよい。本実施の形態では、上アームON駆動の開始時(最初にS31で肯定判定されたとき)に、すべて(4個の)昇圧コンバータ20の上アームON駆動を行う。すべての昇圧コンバータ20の上アームON駆動を行うことにより、スイッチング損失がなくなるとともに、銅損が最も小さくなり、エネルギー損失が小さくなる。
したがって、最初にS41が処置される際には、MG2の回転数(負荷変動周波数)が、n=4の共振周波数Rf4の共振領域にあるか否かが判定される。たとえば、MG2の回転数から算出した負荷変動周波数fmが、「Rf4-α<fm<Rf4+α」の範囲内にあるとき、MG2の負荷変動周波数が昇圧コンバータ20の共振周波数と一致していると判定する。(MG2の回転数が昇圧コンバータ20の共振領域にあると判定する。)MG2の負荷変動周波数が昇圧コンバータ20の共振周波数と一致していると判定されると、S42へ進む。なお、αは、たとえば共振周波数Rf4の5%に相当する値であってよい。
S42では、上アームON駆動数(上アームON駆動中の昇圧コンバータ20の数)が4であるか否かを判定する。最初にS42が処理されるときには、上アームON駆動数は4であるので、肯定判定されS43へ進む。S43では、上アームON駆動数を3に設定し、今回のルーチンを終了する。S43で、上アームON駆動数が3に設定されると、図3のS35において、3個の昇圧コンバータ20のIGBT素子Q1が閉成される。IGBT素子Q1が閉成される昇圧コンバータ20の数が変更され、上アームON駆動数が4から3に変更されて、昇圧コンバータ20の共振周波数がRf3となり、共振領域から外れるので、昇圧コンバータ20によって生じる共振が抑制される。
最初にS41が処置された際に、MG2の回転数から算出した負荷変動周波数fmが「Rf4-α<fm<Rf4+α」の範囲内にない場合、否定判定されS44に進む。S44は、上アームON駆動数を4に設定(維持)したあと、今回のルーチンを終了する。
S43で上アームON駆動数が3に設定されたあと、S41が処理される際には、上アームON駆動数は3であるので、MG2の回転数が、n=3の共振周波数Rf3の共振領域にあるか否かが判定される。たとえば、MG2の回転数から算出した負荷変動周波数fmが、「Rf3-β<fm<Rf3+αβ」の範囲内にあるか否かを判定する。なお、βは、たとえば共振周波数Rf3の5%に相当する値であってよい。
MG2の回転数から算出した負荷変動周波数fmが、「Rf3-β<fm<Rf3+β」の範囲内にあり、MG2の負荷変動周波数が昇圧コンバータ20の共振周波数と一致していると判定されると、肯定判定されS42へ進む。
今回のS42の処理では、上アームON駆動数は3であるので、否定判定され、S44へ進み、上アームON駆動数を4に設定したあと、今回のルーチンを終了する。今回のルーチンにおいて、S44で、上アームON駆動数が4に設定されると、図3のS35において、4個の昇圧コンバータ20のIGBT素子Q1が閉成される。IGBT素子Q1が閉成される昇圧コンバータ20の数が変更され、上アームON駆動数が3から4に変更されて、昇圧コンバータ20の共振周波数がRf4となり、共振領域から外れるので、昇圧コンバータ20によって生じる共振が抑制される。
本実施の形態によれば、上アームのIGBT素子Q1を閉成し昇圧コンバータ20の昇圧動作を行わないとき(上アームON駆動時)、MG2の負荷変動周波数が、IGBT素子Q1が閉成された昇圧コンバータ20の共振周波数と一致する共振領域である場合、IGBT素子Q1が閉成される昇圧コンバータ20の数(上アームON駆動数)を変更する。IGBT素子Q1が閉成される昇圧コンバータ20の数が変更されることにより、昇圧コンバータ20の共振周波数が変化し、共振領域から外れるので、昇圧コンバータ20によって生じる共振を抑制できる。また、昇圧コンバータ20の昇圧動作を行うことなく共振を抑制するので、損失が悪化することも抑制できる。
本実施の形態では、IGBT素子Q1が閉成される昇圧コンバータ20の数(上アームON駆動数)を3と4の間で変更していた。しかし、上アームON駆動数の変更は、これに限られない。たとえば、4と2との間で変更してもよく、4から1までの間で適宜変更してもよい。また、昇圧コンバータの数は複数であればよく、4個に限られない。
本実施の形態では、上アームのIGBT素子Q1を閉成し昇圧コンバータ20の昇圧動作を行わないとき(図4のS40で肯定判定されたとき/上アームON駆動時)、昇圧コンバータ20によって生じる共振を抑制している。しかし、昇圧コンバータ20の昇圧動作を行っているときにも、昇圧コンバータ20によって生じる共振を抑制してもよい。たとえば、図3のS33において、昇圧コンバータ20によって昇圧動作を行っているとき、そのときの昇圧コンバータの共振周波数とMG2の負荷変動周波数が一致する場合、目標システム電圧VH*を高くして昇圧比を大きくし、共振を抑制してもよい。
本実施の形態では、上アームのIGBT素子Q1を閉成し昇圧コンバータ20の昇圧動作を行わないとき(上アームON駆動時)における共振を抑制している。昇圧コンバータ20による昇圧を行わないので、システム電圧VHはバッテリ電圧VBであり、比較的低電圧である。電動機駆動装置100のシステム全体の損失を少なくするためには、システム電圧VHが低い領域では、MG2を矩形波電圧制御で制御し、システム電圧VHが高い領域では、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことが望ましい。この場合、矩形波電圧制御を用いてMG2を制御している際に、MG2の負荷変動周波数が昇圧コンバータ20の共振周波数と一致し共振が生じると、特に、バッテリ1から出力される電圧、電流が大きく変動し易い。本実施の形態では、上アームのIGBT素子Q1を閉成し昇圧コンバータ20の昇圧動作を行わないとき(上アームON駆動時)における共振を抑制できるので、矩形波電圧制御を用いてMG2を制御する際に、好適である。また、パルスの形を固定して、電圧位相のみを制御するパルス制御を行う際においても、同様に、本実施の形態の適用が好適である。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 バッテリ、2 モータジェネレータ(MG)、3 駆動輪、11 監視ユニット、12 電圧センサ、13 電圧センサ、20(20A、20B、20C、20D) 昇圧コンバータ、30 インバータ、31 U相アーム、32 V相アーム、33 W相アーム、50 制御装置、100 電動機駆動装置、C1 コンデンサ、C2 平滑コンデンサ、D1~D8 ダイオード、L1 リアクトル、PL1 低圧側正極ライン、PL2 高圧側正極ライン、PN 負極ライン、Q1~Q8 IGBT素子。
Claims (6)
- 蓄電装置と、
前記蓄電装置の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
前記昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換し、電動機を駆動するインバータと、
制御装置と、を備えた電動機駆動装置であって、
前記昇圧コンバータは、前記蓄電装置の正極に接続する低圧側正極ラインへ一端が接続されたリアクトルと、前記リアクトルの他端と高圧側正極ラインに接続される第1スイッチング素子と、前記リアクトルの他端と前記蓄電装置の負極に接続する負極ラインへ接続される第2スイッチング素子を含み、
前記昇圧コンバータは、前記蓄電装置と前記インバータの間に、電気的に並列に複数設けられ、
前記制御装置は、前記第1スイッチング素子を閉成し前記昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、前記電動機の負荷変動周波数が、前記第1スイッチング素子が閉成された前記昇圧コンバータの共振周波数と一致する共振領域である場合、前記第1スイッチング素子が閉成される前記昇圧コンバータの数を変更するよう構成されている、電動機駆動装置。 - 複数の前記昇圧コンバータにおける、前記リアクトル、前記第1スイッチング素子、および、前記第2スイッチング素子は、同一の部品からなり、複数の前記昇圧コンバータの特性が同一である、請求項1に記載の電動機駆動装置。
- 前記高圧側正極ラインと前記負極ラインの間に平滑コンデンサが設けられており、前記平滑コンデンサは、複数の前記昇圧コンバータで昇圧された電圧を平滑化する、請求項1または2に記載の電動機駆動装置。
- 前記制御装置は、前記昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、すべての前記昇圧コンバータの前記第1スイッチング素子を閉成し、前記電動機の負荷変動周波数が前記共振領域である場合、前記第1スイッチング素子が閉成される前記昇圧コンバータの数を減少する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動機駆動装置。
- 蓄電装置の正極に接続する低圧側正極ラインへ一端が接続されたリアクトルと、前記リアクトルの他端と高圧側正極ラインに接続される第1スイッチング素子と、前記リアクトルの他端と前記蓄電装置の負極に接続する負極ラインへ接続される第2スイッチング素子を含む昇圧コンバータが、前記蓄電装置とインバータの間に、電気的に並列に複数設けられ、前記インバータによって、前記昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換し電動機を駆動する、電動機駆動装置の制御方法であって、
前記電動機の負荷変動周波数と取得するステップと、
前記第1スイッチング素子を閉成し前記昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、前記負荷変動周波数が、前記第1スイッチング素子が閉成された前記昇圧コンバータの共振周波数と一致する共振領域であるか否かを判定するステップと、
前記負荷変動周波数が前記共振領域であると判定されたとき、前記第1スイッチング素子が閉成される前記昇圧コンバータの数を変更するステップと、を含む、電動機駆動装置の制御方法。 - 前記昇圧コンバータの昇圧動作を行わないとき、すべての前記昇圧コンバータの前記第1スイッチング素子を閉成するステップを、さらに含み、
前記昇圧コンバータの数を変更するステップでは、前記第1スイッチング素子が閉成される前記昇圧コンバータの数を減少する、請求項5に記載の電動機駆動装置の制御方法。
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JP2021065360A JP2022160874A (ja) | 2021-04-07 | 2021-04-07 | 電動機駆動装置および電動機駆動装置の制御方法 |
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