JP2022124953A - ノイズ対策用環状磁性体及びノイズ対策用部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】Fe基ナノ結晶合金では作製が困難であった分割型のノイズ対策用環状磁性体を提供し、優れたノイズ低減効果を得ること。【解決手段】径方向に沿って積層された軟磁性金属薄帯を含み、内側にケーブルを挿通させて用いる、ノイズ対策用環状磁性体であって、前記ノイズ対策用環状磁性体は、非環状に分割された複数の分割片からなり、該分割片の分割面同士を当接させて環状として用い、前記分割面の平面度FLと前記分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下である、ノイズ対策用環状磁性体。ここで、前記平面度FLは、JIS B 0601:2001に準拠して測定した断面曲線の最大値及び最小値の絶対値の和である。【選択図】図2

Description

本開示は、ノイズ対策用環状磁性体及びノイズ対策用部材に関する。
従来、電子機器に繋がるケーブルに伝播するノイズ電流を低減させるために、環状磁性体と該環状磁性体を収容するコアケースとを備えるノイズ対策部材が知られている。
特許文献1には、円環形状のフェライトコアを半円状に分割して電源ケーブルに直接挟み込むことが可能な分割型フェライトコアの構成が記載されている。このような分割型のノイズ対策用部材では、円環形状のフェライトコアを分割していない非分割型のフェライトコアと比べて、ケーブルを結線した状態で取り付けることが可能なため利便性に優れている。
特許文献2には、Fe基ナノ結晶合金リボンを巻き回したコア及びその製造方法が記載されている。Fe基ナノ結晶合金を用いた非分割型の環状磁性体は、フェライトコアと比べて、幅広い周波数領域でインピーダンス特性が優れているため、ノイズ低減効果が大きい。
特許第2992269号公報 特許第6137408号公報
しかしながら、Fe基ナノ結晶合金は脆性の高い金属薄帯を層にしたものであるため、欠けやすく成形時の形状に制限があった。よって、ナノ結晶合金を用いた分割型のノイズ対策用環状磁性体は存在していない。このため、ナノ結晶合金コアは、分割型フェライトコアのように手軽に使用することができなかった。
そこで本開示は、Fe基ナノ結晶合金では作製が困難であった分割型のノイズ対策用環状磁性体を提供し、優れたノイズ低減効果を得ることを目的とする。
本開示の要旨構成は以下の通りである。
[1] 径方向に沿って積層された軟磁性金属薄帯を含み、内側にケーブルを挿通させて用いる、ノイズ対策用環状磁性体であって、
前記ノイズ対策用環状磁性体は、非環状に分割された複数の分割片からなり、該分割片の分割面同士を当接させて環状として用い、
前記分割面の平面度FLと前記分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下である、ノイズ対策用環状磁性体。
ここで、前記平面度FLは、JIS B 0601:2001に準拠して測定した断面曲線の最大値及び最小値の絶対値の和である。
[2] 前記分割面の算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzが、それぞれRa≦0.7μm、及びRz≦10μmを満たす、前記[1]に記載のノイズ対策用環状磁性体。
[3] 圧環強度が50MPa以上である、前記[1]又は[2]に記載のノイズ対策用環状磁性体。
[4] 周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが6000以上である、前記[1]から[3]のいずれか1項に記載のノイズ対策用環状磁性体。
[5] 前記軟磁性金属薄帯はFe基ナノ結晶合金を含む、前記[1]から[4]のいずれか1項に記載のノイズ対策用環状磁性体。
[6] 前記[1]から[5]のいずれか1項に記載のノイズ対策用環状磁性体と、
筒を非環状に分割した形状のサブケースが筒状に開閉可能に連結されてなり、該サブケースには、前記ノイズ対策用環状磁性体の前記分割片が一つずつ格納される、分割型コアケースと、
を有し、
前記分割型コアケースを閉じたとき、前記分割型コアケース内部で前記分割片の前記分割面同士が当接して前記ノイズ対策用環状磁性体をなし、前記分割面にかかる面圧が0.05MPa以上である、ノイズ対策用部材。
本開示によれば、Fe基ナノ結晶合金では作製が困難であった分割型のノイズ対策用環状磁性体を提供し、優れたノイズ低減効果を得ることができる。
ノイズ対策用環状磁性体の一例の上面図である。 ノイズ対策用環状磁性体の一例の斜視図である。 ノイズ対策用部材の一例を示す図である。 ノイズ対策用部材の一例を開いた状態を示す図である。 ノイズ対策用部材の一例を閉じた状態を示す図である。 ノイズ対策用環状磁性体の圧環強度の測定方法について説明するための図である。 平面度、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzの測定方法について説明するための図である。 平面度、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzの測定箇所について説明するための図である。
以下、本発明を具体的に説明する。なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[ノイズ対策用環状磁性体]
本開示のノイズ対策用環状磁性体は、
径方向に沿って積層された軟磁性金属薄帯を含み、内側にケーブルを挿通させて用いる、ノイズ対策用環状磁性体であって、
前記ノイズ対策用環状磁性体は、非環状に分割された複数の分割片からなり、該分割片の分割面同士を当接させて環状として用い、
前記分割面の平面度FLと前記分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下である、ノイズ対策用環状磁性体である。
ここで、前記平面度FLは、JIS B 0601:2001に準拠して測定した断面曲線の最大値及び最小値の絶対値の和である。
図1に、本開示の一実施形態に係るノイズ対策用環状磁性体100の上面図を示す。図2に、本開示の一実施形態に係るノイズ対策用環状磁性体100の斜視図を示す。これらの図に示すように、ノイズ対策用環状磁性体100は、全体形状が環状であり、径方向に沿って積層された軟磁性金属薄帯を含む。ノイズ対策用環状磁性体100は、非環状に分割された複数の分割片1a及び1bからなる。図1及び図2の例においては、全体形状が円環状のノイズ対策用環状磁性体100が、中心軸方向に沿って半割されている。図1及び図2に示すように、複数の分割片1a及び1bの分割面同士を当接させて環状とし、ノイズ対策用環状磁性体100によって区画される中空部11にケーブルを挿通して用いる。
Fe基ナノ結晶合金は脆性の高い軟磁性薄帯金属の積層体であるため、成形時の形状に制限があり、欠けやすく取り扱いが難しい。そのため、Fe基ナノ結晶合金を用いて分割型のノイズ対策用環状磁性体100を提供することは困難であった。Fe基ナノ結晶合金を用いて分割型のノイズ対策用環状磁性体100を作製しても、その脆性の高さから分割面の管理が不十分となり、十分なノイズ低減効果が得られていなかった。
本発明者らは、独自に鋭意検討を重ね、分割面の平面度FLと分割片1a、1bの保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下となるように、分割面の表面粗さ及び分割片の保磁力を管理することで、周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが6000以上という優れたノイズ低減効果が得られることを知見し、本ノイズ対策用環状磁性体100を発明するに至った。より優れたノイズ低減効果を得るために、分割面の平面度FLと分割片1a、1bの保磁力Hcとの積FL×Hcは、好ましくは6.5μm・A/m以下、より好ましくは2.0μm・A/m以下とする。分割面の平面度FLと分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcの下限は特に限定されないが、後述した平面度及び保磁力の下限値との関係から、0.005μm・A/m以上であることが好ましい。
ここで、「平面度」とは、JIS B 0601:2001に準拠して測定した分割面の断面曲線の最大値及び最小値の絶対値の和を指す。ただし、断面曲線の最大値がノイズピークを含んでいた場合は粗さ曲線の最大山高さRpを最大値とする。また、断面曲線の最小値がノイズピークを含んでいた場合は、そのピークは平面度の計算に含めない。分割片1a、1bの各分割面(図1,2の例においては計4面)について、東京精密社製 SURFCOM,1400G表面粗さ測定機を用いて軟磁性金属薄帯の積層方向(軟磁性金属薄帯の積層体を横切る方向、ノイズ対策用環状磁性体100の径方向)に沿って断面曲線を測定する。測定箇所の詳細について、図7、8を用いて説明する。図7に示すように、各分割片1aの複数の分割面10a及び10a’について、1分割面につき、上部R1、R1’、中部R2、R2’、下部R3、R3’の最低3箇所実施する。図8を用いて、分割面10aが軟磁性金属薄帯の幅(ノイズ対策用環状磁性体100の中心軸方向における高さに相当)L=10mm、軟磁性金属薄帯の積層方向の長さ(ノイズ対策用環状磁性体100の内外径差の半分厚みに相当)e=5mmの面積50mm2である場合における、平面度の測定箇所について説明する。図8に示すように、分割面10aの軟磁性金属薄帯の幅Lが3mm<L<15mmである場合には、(1)分割面10aの軟磁性金属薄帯の幅L方向端部からw1=1mm内側の上部R1、(2)分割面10aの軟磁性金属薄帯の幅L方向における中央部(R1及びR3からの距離w2が等距離)R2、及び(3)分割面10aの軟磁性金属薄帯の幅Lのもう片方の端部からw1=1mm内側の下部R3の合計3箇所について断面曲線を測定し、該断面曲線から平面度を決定する。例外として、軟磁性金属薄帯の幅Lが2mm<L≦3mmである場合には、幅L方向端部からw1=1mm内側の上部R1、R1’、幅Lのもう片方の端部からw1=1mm内側の下部R3、R3’の2箇所において断面曲線の測定を実施し、L=2mmである場合には、軟磁性金属薄帯の幅の中心線の1箇所において断面曲線の測定を実施するものとする。軟磁性金属薄帯の幅Lが15mm以上である場合には、5mm間隔置きに測定箇所を追加する。次に断面曲線の測定長について説明する。分割面10aの軟磁性金属薄帯の積層方向の測定長さy1はJIS B 0601:2001に準拠し4mmとする。断面曲線は分割面10aの軟磁性金属薄帯の積層方向の長さeにおける中央部において測定する。分割面10aの軟磁性金属薄帯の積層方向の長さeが8mm以上である場合は、4mm置きに測定箇所を追加し実施するものとする。4mm置きに測定箇所を追加することができない場合、積層方向の長さeの中央部の4mmを測定する。また、分割面が直線ではなく曲線、又は段差がある場合は、軟磁性金属薄帯の積層方向を測定長とし、軟磁性金属薄帯の面は測定箇所に含まない。ノイズ対策用環状磁性体100が1a及び1bの2つの分割片から構成されている場合、断面曲線の最大値及び最小値の絶対値の和の計12箇所の平均を、分割面10a、10bの平面度とする。なお、ノイズ対策用環状磁性体100の分割面10aの寸法は、後述するノイズ対策用環状磁性体100の寸法の測定方法と同様に測定する。
本願においては、切断面を研磨することによって研磨後に得られる分割面10a、10bの平面度を調整し得る。平面度は、研磨に用いる研磨布紙の番手等によって調整し得る。後述するように分割面10a、10bに対して防錆剤又はフィルムシートなどを用いて保護層を付与する場合、保護層を付与した後に分割面10a、10bの平面度を測定する。
分割片1a、1bの保磁力は、東京特殊鋼製自動計測保磁力計K-HC1000型を用いて測定した3回の測定値の平均値とする。測定の際には、分割片1a、1bの分割面同士を当接させて環状とした状態で載置して、保磁力の測定を行う。分割片1a、1bの保磁力は、軟磁性金属薄帯の材料物性、軟磁性金属薄帯に対する熱処理の温度及び時間、ノイズ対策用環状磁性体100の分割(切断)方法、並びに切断面の研磨加工条件によって調整することができる。
平面度FLは、分割面10a、10bの平面度FLと分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下となるように調整すればよく、特に限定されない。好ましくは、平面度は1.5μm以下、より好ましくは0.7μm以下とする。平面度の下限は特に限定されないが、機械加工による量産性の観点から、0.05μm以上であることが好ましい。
保磁力Hcについても、分割面10a、10bの平面度FLと分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下となるように調整すればよく、特に限定されない。好ましくは、保磁力Hcは7.0A/m以下、より好ましくは5.0A/m以下とする。保磁力の下限は特に限定されないが、保磁力は軟磁性金属薄帯の材料物性と切断面の研磨加工条件とによって値が変化することから、0.1A/m以上であることが好ましい。
ノイズ対策用環状磁性体100は、非環状に分割された複数の分割片1a及び1bからなる。ノイズ対策用環状磁性体100を構成する分割片の数及び大きさは特に限定されない。ノイズ対策用環状磁性体100は、図1、2に示すように、2つの分割片1a及び1bからなってもよく、より多くの分割片により構成されていてもよい。また、ノイズ対策用環状磁性体100は、分割片1a及び1bの全体形状が非環状であればどのように分割されていてもよい。一例においては、ノイズ対策用環状磁性体100は中心軸方向に平行に分割されている。なお、ここで中心軸方向とは、ノイズ対策用環状磁性体100の中心から径方向に対して垂直に伸ばした直線上の方向を指す。例えば、各分割片1a及び1bは、ノイズ対策用環状磁性体100を径方向に沿って分割した形状であり得る。該構成によれば、ケーブルが電子機器及び電子部品等に結線された状態であってもノイズ対策用環状磁性体100をケーブルに挿通させることができるので、ノイズ対策用環状磁性体100のケーブルへの取り付けが容易である。なお、複数の分割片1a及び1bを当接させた後、互いに動かないように、複数の分割片1a及び1b同士を接着してもよく、後述する分割型コアケース又はバンド等で分割片1a及び1b同士を固定してもよい。
ノイズ対策用環状磁性体100を構成する軟磁性金属薄帯は特に限定されない。優れたノイズ低減効果を得る上では、保磁力が小さくインピーダンス比透磁率が大きい軟磁性材料が好ましい。ノイズ対策用環状磁性体100を構成する軟磁性金属薄帯は、特に優れたノイズ低減効果を得る上で、周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが6000以上であることがより好ましく、12000以上であることがさらに好ましい。また、ノイズ対策用環状磁性体100を構成する軟磁性金属薄帯は、特に優れたノイズ低減効果を得る上で、保磁力が7.0A/m以下であることが好ましい。
軟磁性材料としては、例えば、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、及びNi-Zn-Cu系フェライト等のフェライト;Fe-Ni系合金(パーマロイ)、Fe-Si系合金(珪素鋼)等の軟磁性金属;Co基アモルファス合金、Fe基アモルファス合金等のアモルファス合金;並びにFe基ナノ結晶合金等を用いることができる。
ノイズ対策用環状磁性体100を構成する軟磁性金属薄帯は、好ましくはFe基ナノ結晶合金である。ノイズ対策用環状磁性体100を構成する軟磁性金属薄帯がFe基ナノ結晶合金である場合、例えば、一般式:(Fe1-aa100-x-y-z-b-c-dxM’yM”zbSicd(原子%)(式中MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素を、AはCu,Auから選ばれた少なくとも1種の元素、M’はTi,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はCr,Mn,Sn,Zn,Ag,In,白金属元素,Mg,N及びSから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC,Ge,Ga,Al及びPから選ばれた少なくとも1種の元素を示し、a,x,y,z,b,c及びdはそれぞれ0≦a≦0.1、0.1≦x≦3、1≦y≦10、0≦z≦10、0≦b≦10、11≦c≦17、3≦d≦10を満たす数である。)で表される一般式を有するFe基ナノ結晶合金が特に好ましい。また、Fe基ナノ結晶合金の成分組成は特に限定されないが、原子%で、Cu:0.5~2.0%、Nb:1.0~5.0%、Si:11.0~15.0%、B:5.0~10.0%であり、残部が実質的にFeからなる成分組成とすることが好ましい。
優れたノイズ低減効果を得る上で、分割面10a、10bの算術平均粗さRaは、Ra≦0.7μmとすることが好ましく、Ra≦0.35μmとすることがより好ましい。なお、分割面10a、10bの算術平均粗さRaの下限は特に限定されない。分割面10a、10bの算術平均粗さRaは、切断面の研磨によって調整することができる。分割面10a、10bの算術平均粗さRaは、研磨に用いる研磨布紙の番手、研磨懸濁液(研磨用の砥粒を懸濁した液体)中の砥粒の番手及び砥粒の材質等によって調整し得る。
優れたノイズ低減効果を得る上で、分割面10a、10bの最大高さ粗さRzは、Rz≦10μmとすることが好ましく、Rz≦5μmとすることがより好ましい。分割面10a、10bの最大高さ粗さRzの下限は特に限定されない。分割面10a、10bの最大高さ粗さRzは、分割面10a、10bの研磨によって調整することができる。分割面10a、10bの最大高さ粗さRzは、研磨に用いる研磨布紙の番手、研磨懸濁液中の砥粒の番手及び砥粒の材質等によって調整し得る。
ここで、分割面10a、10bの算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzは、分割片1a、1bの各分割面(図1,2の例においては計4面)の各少なくとも3箇所の測定箇所について、東京精密社製 SURFCOM,1400G表面粗さ測定機を用いて測定し、計少なくとも12箇所の平均を、分割面10a、10bの算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzとする。算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzの測定箇所は、上述した平面度の測定箇所と同様である。
ノイズ対策用環状磁性体100の圧環強度は、50MPa以上であることが好ましい。ノイズ対策用環状磁性体100の圧環強度が50MPa以上であることで、分割面10a、10bの研磨の際の取り扱いが容易であり、また分割片1a,1bの分割同士に適切な面圧をかけて当接させることが可能である。ノイズ対策用環状磁性体100の圧環強度は、研磨切断加工が行いやすく形状が維持しやすいという理由から、より好ましくは70MPa以上である。ノイズ対策用環状磁性体100の圧環強度の上限は特に限定されないが、800MPa以下であり得る。
圧環強度は、以下の通り測定する。図6に示すように、ノイズ対策用環状磁性体100の径に合わせた治具5を用いてノイズ対策用環状磁性体100の分割片1a、1bの分割面10a、10b同士が当接するように固定して分割面10a、10bに対して垂直方向に圧縮を行ないながら、SHIMADZU社製オートグラフAGX-20kNBVDを用いて圧環強度を測定する。クラックが発生した最大荷重をFとして、圧環強度K=F(D-e)/Le2を求める。ここで、図2に示すように、D、L、eはそれぞれ、ノイズ対策用環状磁性体100の外径D、高さL、内外径差(外径Dと内径dとの差)の半分厚みeとする。ノイズ対策用環状磁性体100の寸法は、後述する方法によって測定する。
ノイズ対策用環状磁性体100の圧環強度は、ノイズ対策用環状磁性体100を構成する軟磁性金属薄帯の種類の他、ノイズ対策用環状磁性体100の周囲を樹脂コーティングしたり、絶縁テープを巻いたりして調整することができる。ノイズ対策用環状磁性体100に樹脂を含浸させて、圧環強度を高めてもよい。樹脂コーティング剤又は樹脂含浸剤としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、又はこれらの混合物が好ましい。
ノイズ対策用環状磁性体100の周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzは、6000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましく、12000以上であることがさらに好ましい。なお、ノイズ対策用環状磁性体100の周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzの上限は特に限定されない。
従来の分割型フェライトコアの周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzは4000程度である。これに対し、本開示に係るノイズ対策用環状磁性体100においては、従来の1.5倍程度のインピーダンス比透磁率μrz:6000以上、より好ましくは現状の分割型フェライトコアの2.0倍程度のインピーダンス比透磁率μrz:8000以上が得られる。本開示に係るノイズ対策用環状磁性体100においては、現状の分割型フェライトコアよりも遥かにノイズ抑制効果が大きいため、ノイズ対策用環状磁性体100の小型化及び軽量化につながる。自動車に備えられた電子部品、発電装置、電源装置、通信機器等のケーブルは、狭いスペースに配線している。また、産業機械向けのインバータ及びコンバータなどの電子機器も近年小型化していることから、狭いスペース内で配線している場合が多い。従来の分割型フェライトコアにおいて優れたノイズ低減効果を得るためには、ケーブルの巻き数を多くしてノイズ低減効果を高めたり、磁性材料の占める体積を大きくしたりする必要があった。これに対し、本開示に係るノイズ対策用環状磁性体100においては、現状の分割型フェライトコアよりも遥かにノイズ抑制効果が大きく、小型化及び軽量化が可能であるため、自動車に備えられた電子部品、発電装置、電源装置、通信機器等のケーブル、及び産業機械向けのインバータ及びコンバータなどの電子機器のケーブルに装着され、これらの電子部品や電子機器内部で発生し、または外部で発生してケーブル内を伝播するノイズを抑制するノイズ対策用環状磁性体100として特に有効である。
周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率は、以下の通り測定する。インピーダンス比透磁率の測定には、キーサイト株式会社製4294Aインピーダンスアナライザーを用いる。Φ0.5mmの単線リード線(田中電線製のH-PVC)をノイズ対策用環状磁性体100に1ターン通し、リード線用フィクスチャ(キーサイト株式会社製の16047E)を用いて、分割面10a、10bに係る面圧を0.1MPaとして測定する。
ノイズ対策用環状磁性体100の全体形状は環状であれば特に限定されない。ノイズ対策用環状磁性体100は、図1に示したような真円筒状(中心軸方向に垂直な断面の外形状が真円環状)の他、例えば、楕円筒状(中心軸方向に垂直な断面の形状が楕円環状)、四角筒状(中心軸方向に垂直な断面の形状が四角環状)、角丸四角筒状(中心軸方向に垂直な断面の形状が角丸四角環状)であり得る。分割片1a,1bの形状は、ノイズ対策用環状磁性体100の全体形状、及び分割の態様によって決まる。例えば、ノイズ対策用環状磁性体100の全体形状が真円筒状又は楕円筒状であり、かつ該ノイズ対策用環状磁性体100を中心軸方向に沿って対称に半割した場合、分割片1a,1bの形状は、円弧型であり得る。ノイズ対策用環状磁性体100の全体形状が角丸四角筒状であり、かつ該ノイズ対策用環状磁性体100を中心軸方向に沿って対称に半割した場合、分割片1a,1bの形状は、ノイズ対策用環状磁性体100の全体形状に応じて、コ字型、U字型、又は直線型であり得る。
なお、ノイズ対策用環状磁性体100の全体形状が円環状でない場合においては、図6の治具5をノイズ対策用環状磁性体100の側面部の形状に合う形状に変更し、圧環強度の測定を行う。また、ノイズ対策用環状磁性体100が3つ以上の分割片を含む場合は、ノイズ対策用環状磁性体100を中心軸方向に沿って対称に半割した場合の圧環強度を求め、該ノイズ対策用環状磁性体100の圧環強度とする。
ノイズ対策用環状磁性体100の寸法は特に限定されず、用途に応じて設定することができる。一例において、ノイズ対策用環状磁性体100の外径Dは、10mm以上であり得、また300mm以下であり得る。一例において、ノイズ対策用環状磁性体100の内径dは、2mm以上であり得、また200mm以下であり得る。ノイズ対策用環状磁性体100の中心軸方向における高さLは、2mm以上であり得、また100mm以下であり得る。なお、ノイズ対策用環状磁性体100が真円環状ではない場合、外径D及び内径dは、それぞれ円相当外径、円相当内径を指す。ノイズ対策用環状磁性体100の寸法は、ノギス、マイクロメータ、及び顕微鏡画像を用いて測定した3回の測定値の平均値として求める。
図1,2においては、分割片1a,1bの分割面10a,10bが軟磁性金属薄帯の積層方向に対し平行であるストレート型の例を示したが、分割片1a,1bの分割面10a,10bの形状は特に限定されない。分割片1a,1bの分割面10a、10bの形状は、例えば、斜め型、すなわち、分割面10a,10bが軟磁性金属薄帯の積層方向と交差し、軟磁性金属薄帯の積層方向に対し平行ではない形状であってもよい。また、分割面10a,10bは、ノイズ対策用環状磁性体100の中心軸方向と交差し、ノイズ対策用環状磁性体100の中心軸方向に対して平行ではない形状であってもよい。また、分割片1a,1bの分割面10a,10bの形状は平面に限られない。すなわち、分割片1a,1bの分割面10a,10bの形状は、分割始点と終点とで直線には限定されず、分割経路によらない。分割面10a、10bが曲線、又は段差を有する場合には、軟磁性金属薄帯の積層方向を、平面度、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzの測定長とし、軟磁性金属薄帯の積層面は測定箇所に含まないものとする。
分割面10a,10bは防錆剤又はフィルムシートなどによる保護膜などを有していてもよい。また、ノイズ対策用環状磁性体100の分割面10a,10bの外周部と連続した側面(分割側面)は樹脂コーティング又はテープにより保護されていてもよい。分割面10a,10bの外周部(端部)は面取り加工されていてもよい。
ノイズ対策用環状磁性体100は、分割片1a,1bの分割面10a、10b同士を当接させたときに、分割面10a、10bに対してかかる面圧が0.05MPa以上となるように適切な荷重で抑え込んで使用することが好ましい。従来の分割型フェライトコアで、分割面10a、10bに対してかかる面圧は0.025MPa程度であった。しかしながら、上述したようにFe基ナノ結晶合金を用いて分割型のノイズ対策用環状磁性体100を作製する場合、その脆性の高さから分割面10a、10bの管理が不十分となりがちであった。そこで、上述したように分割面10a、10bの表面粗さを調整することに加え、分割面10a、10bに対してかかる面圧が0.05MPa以上と適切な荷重で抑え込んで使用することで、特に優れたノイズ低減効果を得ることができる。分割面10a、10bに対してかかる面圧は、より好ましくは0.10MPa以上とする。分割面10a、10bに対してかかる面圧の上限は特に限定されないが、過荷重により分割面10a、10bの変形及び破壊が生じることを好適に防ぐために、5.0MPa以下とすることが好ましい。
分割片1a,1bの分割面10a、10bに対してかかる面圧は、以下の通り測定する。分割片1a,1bの分割面10a、10bの間に富士フィルム社製プレスケールシートを挟み込んで当接させた状態で2分間の持続面圧測定を行なう。
ノイズ対策用環状磁性体100の分割片1a,1bの分割面10a、10b同士を、分割面10a、10bに対してかかる面圧が0.05MPa以上となるように当接させるには、例えばノイズ対策用環状磁性体100の分割片1a,1bの分割面10a、10b同士を当接させた状態で、ノイズ対策用環状磁性体100の外周にバンド等を巻きつければよい。または、ノイズ対策用環状磁性体100を、筒を非環状に分割した形状のサブケースが筒状に開閉可能に連結されてなる分割型コアケースに格納し、該分割型コアケース内で分割面10a、10bに対してかかる面圧が0.05MPa以上となるように調整して使用することもできる。以下では、上述したノイズ対策用環状磁性体100を備えたノイズ対策用部材について説明する。
[ノイズ対策用部材]
一実施形態に係るノイズ対策用部材は、
ノイズ対策用環状磁性体と、
筒を非環状に分割した形状のサブケースが筒状に開閉可能に連結されてなり、該サブケースには、前記ノイズ対策用環状磁性体の前記分割片が一つずつ格納される、分割型コアケースと、
を有し、
前記分割型コアケースを閉じたとき、前記分割型コアケース内部で前記分割片の前記分割面同士が当接して前記ノイズ対策用環状磁性体をなし、前記分割面にかかる面圧が0.05MPa以上である、ノイズ対策用部材であり得る。
図3~5を用いて、一実施形態に係るノイズ対策用部材について説明する。図3~5は、ノイズ対策用部材の一例を示す図である。図3~5に示すように、ノイズ対策用部材200は、ノイズ対策用環状磁性体100と、該ノイズ対策用環状磁性体100を格納する分割型コアケース60とを有する。分割型コアケース60は、筒を非環状に分割した形状のサブケース6a,6bがヒンジ部等で筒状に開閉可能に連結されてなる。一例において、分割型コアケース60は、筒を中心軸方向に平行に分割した形状のサブケース6a,6bがヒンジ部等で筒状に開閉可能に連結されてなる。図3~5の例においては、円筒を中心軸方向に沿って半割した形態のサブケース6a,6bを示しているが、分割型コアケース60を構成するサブケース6a,6bの個数及び形態は特に限定されない。各サブケース6a,6bには、ノイズ対策用環状磁性体100の分割片1a,1bが一つずつ格納される。
図3~5の例に示すように、サブケース6a,6bは、インナーケース3及びアウターケース4の2重構造で構成されていてもよい。インナーケース3は、ノイズ対策用環状磁性体100の内周穴を保護する内壁部を有する。アウターケース4は、ノイズ対策用環状磁性体100の外周部を保護する外壁部、底面部を保護する底板部、及び上面部を保護する機能を有する上板部を有する。そして、サブケース6a及び6bがヒンジ部によって連結され得る。図3~5の例においては、クッション性のあるアクリルフォームの両面テープ2で、インナーケース3に各分割片1a,1bを固定する。アウターケース4にインナーケース3を挿入する。分割片1a,1bの分割面10a、10bが露出しアウターケースが開いた状態をケーブルへ取り付ける前の開いた状態とする。
分割型コアケース60を閉じたとき、分割型コアケース60内部で分割片1a,1bの分割面10a、10b同士が当接して、上述した環状のノイズ対策用環状磁性体100をなす。このとき、分割面10a、10bにかかる面圧は0.05MPa以上であることが好ましい。上述したように、分割面10a、10bに対してかかる面圧が0.05MPa以上と適切な荷重で抑え込んで使用することで、特に優れたノイズ低減効果を得ることができる。分割型コアケース60を閉じたとき、分割面10a、10bに対してかかる面圧は、より好ましくは0.10MPa以上とする。分割型コアケース60を閉じたとき、分割面10a、10bに対してかかる面圧の上限は特に限定されないが、過荷重により分割面10a、10bの変形及び破壊が生じることを好適に防ぐために、5.0MPa以下とすることが好ましい。
分割型コアケース60を閉じたときに分割片1a,1bの分割面10a、10bに対してかかる面圧は、以下の通り測定する。ヒンジ部を中心に分割型コアケース60を二つ折りに閉じ、分割片1a,1bの分割面10a、10bの間に富士フィルム社製プレスケールシートを挟み込んで当接させる。分割型コアケース60を閉じた状態で2分間の持続面圧測定を行なう。
コアケースが分割型コアケース60であることによって、ケーブルに対する着脱が容易となり、ケーブルを結線した状態でも、分割型コアケース60を後付け及び取り外しすることができる。よって、電子機器等を使用しながらでも、分割型コアケース60を着脱して、ノイズ減衰量を調節することができる。
分割型コアケース60の材料は特に限定されない。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)や;シリコーン樹脂、シリコーン系エラストマー等を用いることができる。また、前記熱可塑性プラスチックに、グラスファイバー(GF)、カーボンファイバー(CF)、グラファイト(GP)等を含有させて強度や耐熱性を向上した材料を用いることもできる。
[製造方法]
本開示に係るノイズ対策用環状磁性体100の製造方法は、特に限定されない。例えば、合金溶湯から単ロール法等によって、厚さ5~50μmの薄帯状のアモルファス合金を得、該薄帯状のアモルファス合金を円筒状に巻回して、300℃以上700℃以下の温度にて、5~20分間の熱処理を施して、Fe基ナノ結晶合金からなる環状磁性体を得る。該環状磁性体を、非環状に切断し、分割片1a,1bを得る。該分割片1a,1bの切断面を、研磨布紙を用いて研磨し、所定の表面粗さの分割面10a、10bを有するノイズ対策用環状磁性体100を得る。
上記環状磁性体を切断する前に、ノイズ対策用環状磁性体100に樹脂を含浸させて、圧環強度を高めてもよい。例えば、エポキシ樹脂、及び硬化剤を規定量比で混合した溶液の中に環状磁性体を浸し、0.1MPa以下で真空引きを行い15分程度保持した後、大気圧開放して、環状磁性体に樹脂を含浸させる。樹脂を含浸させた環状磁性体を大気中で室温にて24時間程度放置し、硬化させる。樹脂含浸後の環状磁性体は、上述した方法に従って、非環状に切断し、分割片1a,1bを得た後、該分割片1a,1bの切断面を、研磨布紙を用いて研磨し、所定の表面粗さの分割面10a、10bを有するノイズ対策用環状磁性体100を得る。
分割面10a,10bの研磨後に、防錆剤又はフィルムシートなどにより、分割面10a,10bに保護膜などを形成してもよい。分割面10a,10bと連続した側面(分割側面)に、樹脂コーティング又はテープによる保護をしてもよい。また、分割面10a,10bの外周部(端部)に面取り加工を行ってもよい。
以下、本開示を実施例に従って説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1_1~7)
図1に示すようなノイズ対策用環状磁性体を作製した。まず、原子%で、Cu:1%、Nb:3%、Si:13.5%、B:9%であり、残部が実質的にFeからなる合金溶湯を単ロール法により急冷して、幅10mm厚さ20μmの薄帯状のFe基アモルファス合金を得た。該Fe基アモルファス合金を巻回して、外径28.5mm、内径18.0mm、高さ10mmの円筒状とした。円筒状のFe基アモルファス合金を、アルゴン雰囲気下にて490℃に保った熱処理炉に挿入し、10分間熱処理を施した。そして、Fe基ナノ結晶合金からなる、環状磁性体を作製した。得られた環状磁性体を、エポキシ樹脂、及び硬化剤を規定量比で混合した溶液の中に浸し、0.1MPa以下で真空引きを行い15分保持した後、大気圧開放して、環状磁性体に樹脂を含浸させた。樹脂を含浸させた環状磁性体を大気中で室温にて24時間放置し、硬化させた。樹脂含浸後の環状磁性体は、図1で示すように径方向に沿って半割し、半円形状にした。研磨紙番手#400から行い徐々に番手を細かくして環状磁性体の切断面の研磨を行った。実施例1_1は0.5μmアルミナフィルムまで、実施例1_2は1.0μmアルミナフィルムまで、実施例1_3は#2500まで、実施例1_4は#2000まで、実施例1_5~7は#800まで、それぞれ切断面の研磨を行ない、所定の表面粗さの分割面を有するノイズ対策用環状磁性体を得た。
得られたノイズ対策用環状磁性体について、上述した方法に従って、インピーダンス比透磁率、保磁力、表面粗さ(平面度、Ra、Rz)、分割面に対してかかる面圧、及び圧環強度を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2_1~3)
実施例1_2と同様に作製したノイズ対策用環状磁性体を、分割片の分割面に対してかかる面圧を変化させて、上述した方法に従ってインピーダンス比透磁率の測定を行った。得られたインピーダンス比透磁率と面圧との関係を表2にまとめた。得られた接触面積は、ノイズ対策用環状磁性体の分割面に対し、0.05MPa以上で着色された部分を有効断面積と扱い、着色率50%以上であることを確認した。
(実施例3_1~5)
環状磁性体に含浸させた樹脂がインピーダンス比透磁率に及ぼす影響を確認するために実施例1_2と同様に作製した環状磁性体について、含浸させる樹脂を、実施例3_1~4については実施例1_2と同様エポキシ系樹脂、実施例3_5については1液タイプのアクリル系樹脂としてノイズ対策用環状磁性体を作製した。実施例3_3~4は、樹脂含浸後、さらに、ノイズ対策用環状磁性体を別途エポキシ樹脂に浸したのち余分なエポキシ樹脂を拭き取り、室温で24時間程度放置してエポキシ樹脂を硬化させ、ノイズ対策用環状磁性体の表面をエポキシ樹脂でコーティングした。樹脂含浸後、あるいはさらに樹脂による表面コーティング後は、実施例1_2と同様の条件でノイズ対策用環状磁性体を作製した。作製したノイズ対策用環状磁性体について、上述した方法に従って、圧環強度とインピーダンス比透磁率とを求めた。結果を表3に示す。
(比較例1_1~7)
分割面の研磨を、比較例1_1~2では研磨違いで#400まで、比較例1_3~4では研磨違いで#220まで研磨を行ない、比較例1_7においては分割面の研磨を行わなかったこと以外は、実施例1_1と同様にしてノイズ対策用環状磁性体を作製した。得られたノイズ対策用環状磁性体について、上述した方法に従って、インピーダンス比透磁率、保磁力、表面粗さ(平面度、Ra、Rz)、分割面に対してかかる面圧、及び圧環強度を評価した。結果を表1に示す。また、比較例1_5は従来のMn-Zn系フェライト、比較例1_6は従来のNi-Zn系フェライトについて、上述した方法に従って、インピーダンス比透磁率、保磁力、表面粗さ(平面度、Ra、Rz)、分割面に対してかかる面圧、及び圧環強度を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2_1~2)
実施例1_2同様の条件で作製したノイズ対策用環状磁性体について、分割片の分割面に対してかかる面圧を変化させて、上述した方法に従って、インピーダンス比透磁率、保磁力、及び平面度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例3_1~4)
樹脂含浸剤としてポリエステル系樹脂を用いたこと以外は実施例1_1~5と同様の条件で作製された環状磁性体について、上述した方法に従って、圧環強度、インピーダンス比透磁率、保磁力、及び平面度を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2022124953000002
Figure 2022124953000003
Figure 2022124953000004
以上より、本開示の条件を満たすことにより、周波数100kHzにおいて、インピーダンス比透磁率μrzが6000以上のノイズ対策用部材を作製できることがわかる。
本ノイズ対策用部材は、自動車に備えられた電子部品、発電装置、電源装置、通信機器、及びOA/FA機器等のケーブルに装着され、これらの電子部品や電子機器内部で発生し、または外部で発生してケーブル内を伝播するノイズを抑制するノイズ対策用環状磁性体として特に有効である。
1、1a,1b 分割片
10、10a,10b 分割面
100 ノイズ対策用環状磁性体
200 ノイズ対策用部材
2 両面テープ
3 インナーケース
4 アウターケース
5 治具
6a,6b サブケース
60 分割型コアケース
11 中空部

Claims (6)

  1. 径方向に沿って積層された軟磁性金属薄帯を含み、内側にケーブルを挿通させて用いる、ノイズ対策用環状磁性体であって、
    前記ノイズ対策用環状磁性体は、非環状に分割された複数の分割片からなり、該分割片の分割面同士を当接させて環状として用い、
    前記分割面の平面度FLと前記分割片の保磁力Hcとの積FL×Hcが7.0μm・A/m以下である、ノイズ対策用環状磁性体。
    ここで、前記平面度FLは、JIS B 0601:2001に準拠して測定した断面曲線の最大値及び最小値の絶対値の和である。
  2. 前記分割面の算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzが、それぞれRa≦0.7μm、及びRz≦10μmを満たす、請求項1に記載のノイズ対策用環状磁性体。
  3. 圧環強度が50MPa以上である、請求項1又は2に記載のノイズ対策用環状磁性体。
  4. 周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが6000以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のノイズ対策用環状磁性体。
  5. 前記軟磁性金属薄帯はFe基ナノ結晶合金を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のノイズ対策用環状磁性体。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のノイズ対策用環状磁性体と、
    筒を非環状に分割した形状のサブケースが筒状に開閉可能に連結されてなり、該サブケースには、前記ノイズ対策用環状磁性体の前記分割片が一つずつ格納される、分割型コアケースと、
    を有し、
    前記分割型コアケースを閉じたとき、前記分割型コアケース内部で前記分割片の前記分割面同士が当接して前記ノイズ対策用環状磁性体をなし、前記分割面にかかる面圧が0.05MPa以上である、ノイズ対策用部材。
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