JP2022070242A - 巻鉄心の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼鈍の有無にかかわらず低鉄損な巻鉄心を製造できる製造方法及び製造装置を提供する。【解決手段】積層される方向性電磁鋼板1のうちの1枚以上の任意の屈曲部5が、ダイス30の略V字型の凹陥部32と、この凹陥部32の形状に対して相補的な形状を成すパンチ40の凸部42との間で、方向性電磁鋼板1の屈曲されるべき部位がその厚さT方向で挟圧されることによって形成される。凸部42はその頂部に所定の曲率を有する円弧部42aを有し、凹陥部32はV字の頂点から両側に斜めに延びる直線部32a,32aを有し、円弧部42aの曲率半径rdは0.2mm≦r≦2.0mmの関係を満たし、屈曲部5の曲げ角度θは10°≦θ≦90°の関係を満たし、方向性電磁鋼板1の厚さTは0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たし、ダイス幅L(mm)は2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たす。【選択図】図7
Description
本発明は、巻鉄心の製造方法及び製造装置に関する。
トランスの鉄心には積鉄心と巻鉄心とがある。そのうち、巻鉄心を製造するには、まず一般に、方向性電磁鋼板の磁化容易軸が配向している圧延方向を長手方向として鋼板をドーナツ状(巻回形状)に巻回し、層状に積み重ねて巻回体を得る。その後、その巻回体の内窓側(ドーナツ状の内穴)に直方体状の金型を挿入すると共に、合わせて外側加圧して略角型に成形することにより製造される(本明細書中では、このようにして製造される巻鉄心をトランココアと称する場合がある)。このとき巻回体の内側は前記の直方体状の金型により直角に近い加工がなされる。一方、巻回体の外側は比較的緩やかな曲率を持った形をとる。この成形工程は巻回体全体を一体として成形するため、巻回体を形成する方向性電磁鋼板全体に機械的な加工歪(塑性変形歪)が入り、その加工歪が方向性電磁鋼板の鉄損を大きく劣化させる要因となるため、通常歪取り焼鈍がなされる。
一方、巻鉄心の別の製造方法として、巻鉄心のコーナー部となる鋼板の部分を曲率半径が3mm以下の比較的小さな屈曲領域が形成されるように予め曲げ加工し、当該曲げ加工された1枚以上の鋼板を巻き回して積層して巻鉄心とする、特許文献1乃至3のような技術が開示されている(本明細書中では、このようにして製造される巻鉄心をユニコア(登録商標)と称する場合がある)。当該製造方法によれば、従来のような上記のトランココアの製造方法に比べて大掛かりな成形工程および複雑な金型が不要で、鋼板は精緻に折り曲げられて鉄心形状が保持され、加工歪も曲げ部(角部)のみに集中するため上記焼鈍工程による歪除去の省略も可能となり、工業的なメリットは大きく適用が進んでいる。
ところで、ユニコアのコーナー部となる鋼板の部分を鋼板折り曲げ加工により曲げ成形する際には、通常、片側自由曲げ工法により曲げ加工が行なわれる。具体的には、例えば、図10に示されるように、ダイス102上に載置された方向性電磁鋼板100の一方側100bを、押え部材130によって押し付けて、一方側100bが固定された状態で拘束しつつ方向性電磁鋼板100の他方側である片側自由端部100aに対してパンチ104を矢印で示されるように下向きに押し付けることにより、この片側自由端部100aをその厚さT方向で加圧して折り曲げ加工している。この場合、方向性電磁鋼板100の厚さT方向に沿う図示の断面(方向性電磁鋼板1の厚さT方向および長手方向の両方向に沿う断面)において、ダイス102は、パンチ104との間で方向性電磁鋼板100を挟持する挟持部位(コーナー部の外表面)に円弧部102aを有している。この円弧部102aは、方向性電磁鋼板100が載置されて固定される直線状の載置部102bと、該載置部102bと略直交するように延びる直線状の直交延在部102cとを接続している。そして、このようなダイス102は、該ダイス102との間で方向性電磁鋼板100を挟持する挟持部位(外表面)に同様の円弧部104aを有して下方に押し込まれるパンチ104との協働により、具体的には方向性電磁鋼板100の片側自由端部100aをパンチ104の円弧部104aによって加圧してダイス102の円弧部102aに沿って折り曲げることにより、方向性電磁鋼板100の片側自由端部100aを所定の曲率を以って折り曲げるようになっている。この時の屈曲部の曲げ角度をθ(°)とする。
このような簡素な金型と単純な工程で曲げ加工を実施することが、現在適用が拡大しているユニコアの一つの特徴となっている。
このような簡素な金型と単純な工程で曲げ加工を実施することが、現在適用が拡大しているユニコアの一つの特徴となっている。
しかしながら、このような片側自由曲げ工法による曲げ加工では、加工時に屈曲部の曲げ角度θだけ鋼板100を曲げても、鋼板100中の残留応力による「スプリングバック」により、屈曲部の曲げ角度θが小さくなる。そのため、オーバーベンド(屈曲部をθよりも大きい角度で曲げること)を行ない、屈曲部の曲げ角度を所定のθに調整することが行なわれている。しかしながら、鋼板100の機械特性は必ずしも各曲げ箇所で全く同じではないため、同じ加工を行なっても各曲げ箇所の残留応力も異なることから、結果的にスプリングバックにばらつきが生じ、屈曲部の曲げ角度θが異なるという現象が起こり得る。すなわち、曲げ箇所により屈曲部の曲げ角度θにばらつきが生じる。一方、鋼板100の曲げ箇所ごとの機械特性とそのバラツキを把握することは困難である。この現象によりコア品質が低下することがある。
このようなスプリングバックに関連する問題は、曲げ加工の精度自体が低く、曲げ加工後の焼鈍を前提としているトランコアでは顧みられることがなかった視点であり、加工精度の影響が顕著に現れやすくなっているユニコア製法が拡大する現状況において認識された課題にもなっている。
また片側自由曲げ工法においては、方向性電磁鋼板100の折り曲げ部に導入される歪が、特に図10において円弧部102aから曲げられる側に広く広範囲にわたることから、鉄心を未焼鈍で使用する際(例えばユニコアの場合など)には、焼鈍により使用される巻鉄心(トランココアなど)と比べて鉄心鉄損が劣位になる問題があった。そのため、より入手し難い低鉄損の方向性電磁鋼板を使用する必要があった。また、方向性電磁鋼板を焼鈍して使用する場合であっても、焼鈍条件によっては導入される歪が完全に解放されないことがあり、やはり鉄心鉄損が劣位になる虞がある。
このようなスプリングバックに関連する問題は、曲げ加工の精度自体が低く、曲げ加工後の焼鈍を前提としているトランコアでは顧みられることがなかった視点であり、加工精度の影響が顕著に現れやすくなっているユニコア製法が拡大する現状況において認識された課題にもなっている。
また片側自由曲げ工法においては、方向性電磁鋼板100の折り曲げ部に導入される歪が、特に図10において円弧部102aから曲げられる側に広く広範囲にわたることから、鉄心を未焼鈍で使用する際(例えばユニコアの場合など)には、焼鈍により使用される巻鉄心(トランココアなど)と比べて鉄心鉄損が劣位になる問題があった。そのため、より入手し難い低鉄損の方向性電磁鋼板を使用する必要があった。また、方向性電磁鋼板を焼鈍して使用する場合であっても、焼鈍条件によっては導入される歪が完全に解放されないことがあり、やはり鉄心鉄損が劣位になる虞がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、焼鈍の有無にかかわらず低鉄損な巻鉄心を製造できる巻鉄心の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、ユニコアの形態を成す巻鉄心、すなわち、中心に矩形の中空部を有し、長手方向に平面部と屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心であって、1枚ずつ折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより形成され、一巻ごとに少なくとも1箇所以上の接合部を介して複数枚の方向性電磁鋼板が互いに接続される巻鉄心の製造方法において、積層される前記方向性電磁鋼板のうち1枚以上における少なくとも1つの前記屈曲部は、ダイスの略V字型の凹陥部と、この凹陥部の形状に対してほぼ相補的な形状を成すパンチの凸部との間で、前記方向性電磁鋼板の屈曲されるべき部位がその厚さ方向で挟圧されることによって形成され、前記方向性電磁鋼板の厚さ方向に沿う断面において、前記凸部はその頂部に所定の曲率を有する円弧部を有し、前記凹陥部はV字の頂点から両側に斜めに延びる直線部を有し、前記パンチの前記凸部における前記円弧部の曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、前記屈曲部の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし、前記方向性電磁鋼板の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たし、前記ダイスの前記凹陥部における前記頂点から両側に延びる前記直線部の延在端部間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たすことを特徴とする。
ユニコアの形態を成す巻鉄心においても、前述した片側自由曲げ工法において屈曲部を形成する場合には、導入される歪が大きく且つ屈曲部周辺に広範囲にわたる。そのため、焼鈍により使用される巻鉄心(トランココアなど)と比べて鉄心鉄損が劣位になり、また、方向性電磁鋼板を焼鈍して使用する場合であっても、導入される歪が完全に解放されない場合には、鉄心鉄損が劣位になる。このような実情を踏まえ、本発明者らは、同様の折り曲げ加工部を形成する場合において、屈曲部周辺で塑性歪の導入範囲を狭小な範囲に制限し、且つ塑性歪の導入量を小さくすれば低鉄損な巻鉄心が得られることに着目し、屈曲部における歪導入量を小さく且つ歪の導入範囲を狭小な範囲とするべく検討した。その結果、従来において汎用としてなされていた片側自由曲げ工法ではなく、V曲げ工法を用いることにより、焼鈍の有無にかかわらず低鉄損な巻鉄心を製造できるという知見を得た。さらに、折り曲げ加工を行なうためのダイス幅をより狭小とすることで、歪をより狭小な範囲に集中させるようにした。
また、V曲げ工法により折り曲げ加工を行う際、複数の鋼板をまとめて加工に供すると、内側の成形体の折曲げ凸部がV曲げパンチにより外側の成形体の折曲げ凹部に局部的に押圧されることで、方向性電磁鋼板の絶縁被膜が破壊され成形体同士の短絡が生じ鉄心の特性が悪くなる場合があった。そのため、積層する鋼板を一枚ずつ折り曲げ加工に供した後に、加工後の複数の鋼板を積層して巻回形状に組み付けることにより、前記の絶縁被膜の破壊が生じにくく、成形体同士の短絡が生じにくいため鉄心の鉄損特性が悪くならないという知見を得た。
また、V曲げ工法により折り曲げ加工を行う際、複数の鋼板をまとめて加工に供すると、内側の成形体の折曲げ凸部がV曲げパンチにより外側の成形体の折曲げ凹部に局部的に押圧されることで、方向性電磁鋼板の絶縁被膜が破壊され成形体同士の短絡が生じ鉄心の特性が悪くなる場合があった。そのため、積層する鋼板を一枚ずつ折り曲げ加工に供した後に、加工後の複数の鋼板を積層して巻回形状に組み付けることにより、前記の絶縁被膜の破壊が生じにくく、成形体同士の短絡が生じにくいため鉄心の鉄損特性が悪くならないという知見を得た。
具体的には、そのようなV曲げ工法において、積層される方向性電磁鋼板のうちの1枚以上の少なくとも1つの屈曲部は、ダイスの略V字型の凹陥部と、この凹陥部の形状に対して相補的な形状を成すパンチの凸部との間で、方向性電磁鋼板の屈曲されるべき部位がその厚さ方向で挟圧されることによって形成される。この場合、方向性電磁鋼板の厚さ方向に沿う断面において、凸部はその頂部に所定の曲率を有する円弧部を有し、凹陥部はV字の頂点から両側に斜めに延びる直線部を有し、パンチの凸部における円弧部の曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、屈曲部の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし、方向性電磁鋼板の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たし、ダイスの凹陥部における頂点から両側に延びる直線部の延在端部間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たす。これにより、屈曲部に導入される歪が小さくなり、焼鈍の有無にかかわらず鉄心鉄損が低減される巻鉄心を製造できる。したがって、より入手し難い低鉄損の方向性電磁鋼板を使用する必要もなくなる。
なお、本開示において、屈曲部の曲げ角度とは、方向性電磁鋼板屈曲部において、折り曲げ方向の後方側の直線部と前方側の直線部との間に生じた角度差を意味し、図6に示されるように、方向性電磁鋼板の外面において、屈曲部5を挟む両側の平面部4,4aの表面である直線部分を延長して得られる2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2がなす角の補角の角度φとして表わされる
また、本発明は、ユニコアの形態を成す巻鉄心の製造装置も提供する。具体的に、そのような製造装置は、方向性電磁鋼板を一枚ずつ折り曲げ加工する折り曲げ加工部と、前記折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に平面部と屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け部とを備え、前記折り曲げ加工部は、略V字型の凹陥部を有するダイスと、前記凹陥部の形状に対してほぼ相補的な形状を成す凸部を有するパンチとを備えるとともに、前記方向性電磁鋼板の屈曲されるべき部位を前記凹陥部と前記凸部との間で厚さ方向に狭圧することによって、積層される前記方向性電磁鋼板のうちの1枚以上の少なくとも1つの前記屈曲部を形成し、前記方向性電磁鋼板の厚さ方向に沿う断面において、前記凸部はその頂部に所定の曲率を有する円弧部を有し、前記凹陥部はV字の頂点から両側に斜めに延びる直線部を有し、前記パンチの前記凸部における前記円弧部の曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、前記屈曲部の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし、前記方向性電磁鋼板の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たし、前記ダイスの前記凹陥部における前記頂点から両側に延びる前記直線部の延在端部間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たすことを特徴とする。
上記構成の巻鉄心の製造装置によれば、屈曲部に導入される歪が小さくなり、焼鈍の有無にかかわらず鉄心鉄損が低減される巻鉄心を製造できる。したがって、より入手し難い低鉄損の方向性電磁鋼板を使用する必要もなくなる。
本発明によれば、巻鉄心の屈曲部における歪導入量を小さく且つ歪導入範囲を狭小な範囲とするべくV曲げ工法を用いるため、焼鈍の有無にかかわらず低鉄損な巻鉄心を製造できる巻鉄心の製造方法及び製造装置を提供できる。
以下、本発明の一実施の形態に係る巻鉄心について順に詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」又は「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。また、化学組成に関する「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」、「直角」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において「方向性電磁鋼板」のことを単に「鋼板」又は「電磁鋼板」と記載し、「巻鉄心」のことを単に「鉄心」と記載する場合もある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」、「直角」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において「方向性電磁鋼板」のことを単に「鋼板」又は「電磁鋼板」と記載し、「巻鉄心」のことを単に「鉄心」と記載する場合もある。
本発明の一実施の形態に係る巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える巻鉄心である。該巻鉄心本体は、長手方向に平面部と屈曲部とが交互に連続した方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略多角形状の積層構造を有する。該巻鉄心本体における前記屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは、例えば、0.2mm以上2.0mm以下である。前記方向性電磁鋼板は、一例として、質量%で、Si:2.0~7.0%、を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、Goss方位に配向する集合組織を有する。
次に、本発明の一実施の形態に係る巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状について具体的に説明する。ここで説明する巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状自体は、特に目新しいものではなく、公知の巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状に準じたものに過ぎない。
図1は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。また、図3は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。
なお、本発明において側面視とは、巻鉄心を構成する長尺状の方向性電磁鋼板の幅方向(図1におけるY軸方向)に視ることをいい、側面図とは側面視により視認される形状を表わした図(図1のY軸方向の図)である。
図1は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。また、図3は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。
なお、本発明において側面視とは、巻鉄心を構成する長尺状の方向性電磁鋼板の幅方向(図1におけるY軸方向)に視ることをいい、側面図とは側面視により視認される形状を表わした図(図1のY軸方向の図)である。
本発明の一実施の形態に係る巻鉄心は、側面視において略多角形状の巻鉄心本体10を備える。当該巻鉄心本体10は、方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられ、側面視において略矩形状の積層構造2を有する。当該巻鉄心本体10を、そのまま巻鉄心として使用してもよいし、必要に応じて積み重ねられた複数の方向性電磁鋼板を一体的に固定するために、結束バンド等、公知の締付具等を備えていてもよい。
本実施の形態において、巻鉄心本体10の鉄心長に特に制限はないが、鉄心において鉄心長が変化しても、屈曲部5の体積は一定であるため屈曲部5で発生する鉄損は一定である。鉄心長が長いほうが巻鉄心本体10に対する屈曲部5の体積率は小さくなるため、鉄損劣化への影響も小さい。よって、巻鉄心本体10の鉄心長は長いほうが好ましい。巻鉄心本体10の鉄心長は、1.5m以上であることが好ましく、1.7m以上であるとより好ましい。なお、本実施形態において、巻鉄心本体10の鉄心長とは、側面視による巻鉄心本体10の積層方向の中心点における周長をいう。
このような本実施形態の巻鉄心は、従来公知のいずれの用途にも好適に用いることができる。
本実施の形態に係る鉄心は、側面視において略多角形状であることを特徴とする。以下の図を用いた説明においては、図示及び説明を単純にするため、一般的な形状でもある略矩形状(四角形)の鉄心で説明するが、屈曲部の角度や数、平面部の長さによって、様々な形状の鉄心が製造可能である。例えば、全ての屈曲部の角度が45°で平面部の長さが等しければ、側面視は八角形になる。また、角度が60°である6個の屈曲部を有し、平面部の長さが等しければ側面視は六角形となる。
図1及び図2に示されるように、巻鉄心本体10は、長手方向に平面部4と屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において中空部15を有する略矩形状の積層構造2を有する。屈曲部5を含むコーナー部3は、側面視において、曲線状の形状を有する屈曲部5を2つ以上有しており、1つのコーナー部3に存在する屈曲5のそれぞれの曲げ角度の合計が例えば90°となっている。コーナー部3は、隣り合う屈曲部5,5間に、側面視した場合の長手方向の長さが前記平面部4の長さよりも短い平面部4aを有している。したがって、コーナー部3は、2以上の屈曲部5と、1つ以上の平面部4aとを有する形態となっている。なお、図2の実施形態は1つのコーナー部3中に2つの屈曲部5を有する場合であって、1つの屈曲部5が45°である。図3の実施形態は1つのコーナー部3中に3つの屈曲部5を有する場合であって、1つの屈曲部5が30°である。
図1及び図2に示されるように、巻鉄心本体10は、長手方向に平面部4と屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において中空部15を有する略矩形状の積層構造2を有する。屈曲部5を含むコーナー部3は、側面視において、曲線状の形状を有する屈曲部5を2つ以上有しており、1つのコーナー部3に存在する屈曲5のそれぞれの曲げ角度の合計が例えば90°となっている。コーナー部3は、隣り合う屈曲部5,5間に、側面視した場合の長手方向の長さが前記平面部4の長さよりも短い平面部4aを有している。したがって、コーナー部3は、2以上の屈曲部5と、1つ以上の平面部4aとを有する形態となっている。なお、図2の実施形態は1つのコーナー部3中に2つの屈曲部5を有する場合であって、1つの屈曲部5が45°である。図3の実施形態は1つのコーナー部3中に3つの屈曲部5を有する場合であって、1つの屈曲部5が30°である。
これらの例に示されるように、本実施の形態の鉄心は、様々な角度を有する屈曲部により構成できるが、加工時の変形による歪み発生を抑制して鉄損を抑える点からは、屈曲部5の曲げ角度φ(φ1、φ2、φ3)は60°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。1つの鉄心が有する屈曲部の曲げ角度φは任意に構成することが可能である。例えば、φ1=60°且つφ2=30°とすることができる。生産効率の点からは折り曲げ角度(曲げ角度)が等しいことが好ましく、ある一定以上の変形箇所を少なくすれば用いる鋼板の鉄損により作成する鉄心の鉄損を小さくできる場合は、異なる角度の組み合わせの加工としてもよい。設計は鉄心加工にて重視するポイントから任意に選択することができる。
図6を参照しながら、屈曲部5について更に詳細に説明する。
図6は、方向性電磁鋼板1の屈曲部(曲線部分)5の一例を模式的に示す図である。屈曲部5の曲げ角度とは、方向性電磁鋼板1の屈曲部5において、折り曲げ方向の後方側の直線部と前方側の直線部との間に生じた角度差を意味し、方向性電磁鋼板1の外面において、屈曲部5を挟む両側の平面部4,4aの表面である直線部分を延長して得られる2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2がなす角の補角の角度φとして表わされる。この際、延長する直線が鋼板表面から離脱する点が、鋼板外面側の表面における平面部と屈曲部の境界であり、図6においては、点F及び点Gである。
図6は、方向性電磁鋼板1の屈曲部(曲線部分)5の一例を模式的に示す図である。屈曲部5の曲げ角度とは、方向性電磁鋼板1の屈曲部5において、折り曲げ方向の後方側の直線部と前方側の直線部との間に生じた角度差を意味し、方向性電磁鋼板1の外面において、屈曲部5を挟む両側の平面部4,4aの表面である直線部分を延長して得られる2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2がなす角の補角の角度φとして表わされる。この際、延長する直線が鋼板表面から離脱する点が、鋼板外面側の表面における平面部と屈曲部の境界であり、図6においては、点F及び点Gである。
さらに、点F及び点Gのそれぞれから鋼板外表面に垂直な直線を延長し、鋼板内面側の表面との交点をそれぞれ点E及び点Dとする。この点E及び点Dが鋼板内面側の表面における平面部4,4aと屈曲部5との境界である。
そして、本実施形態において屈曲部5とは、方向性電磁鋼板1の側面視において、上記点D、点E、点F、点Gにより囲まれる方向性電磁鋼板1の部位である。図6においては、点Dと点Eとの間の鋼板表面、すなわち、屈曲部5の内側表面をLa、点Fと点Gとの間の鋼板表面、すなわち、屈曲部5の外側表面をLbとして示している。
そして、本実施形態において屈曲部5とは、方向性電磁鋼板1の側面視において、上記点D、点E、点F、点Gにより囲まれる方向性電磁鋼板1の部位である。図6においては、点Dと点Eとの間の鋼板表面、すなわち、屈曲部5の内側表面をLa、点Fと点Gとの間の鋼板表面、すなわち、屈曲部5の外側表面をLbとして示している。
また、この図6には、屈曲部5の側面視における内面側曲率半径r(以下、単に曲率半径rとも称する。)が表わされている。上記Laを点E及び点Dを通過する円弧で近似することで、屈曲部5の曲率半径rを得る。曲率半径rが小さいほど屈曲部5の曲線部分の曲がりは急であり、曲率半径rが大きいほど屈曲部5の曲線部分の曲がりは緩やかになる。
本実施形態の巻鉄心では、板厚方向に積層された各方向性電磁鋼板1の各屈曲部5における曲率半径rは、ある程度の変動を有するものであってもよい。この変動は、成形精度に起因する変動であることもあり、積層時の取り扱いなどで意図せぬ変動が発生することも考えられる。このような意図せぬ誤差は、現在の通常の工業的な製造であれば0.2mm程度以下に抑制することが可能である。このような変動が大きい場合は、十分に多数の鋼板について曲率半径を測定し、平均することで代表的な値を得ることができる。また、何らかの理由で意図的に変化させることも考えられるが、本実施形態はそのような形態を除外するものではない。
本実施形態の巻鉄心では、板厚方向に積層された各方向性電磁鋼板1の各屈曲部5における曲率半径rは、ある程度の変動を有するものであってもよい。この変動は、成形精度に起因する変動であることもあり、積層時の取り扱いなどで意図せぬ変動が発生することも考えられる。このような意図せぬ誤差は、現在の通常の工業的な製造であれば0.2mm程度以下に抑制することが可能である。このような変動が大きい場合は、十分に多数の鋼板について曲率半径を測定し、平均することで代表的な値を得ることができる。また、何らかの理由で意図的に変化させることも考えられるが、本実施形態はそのような形態を除外するものではない。
なお、屈曲部5の曲率半径rの測定方法にも特に制限はない。例えば、市販の顕微鏡(Nikon ECLIPSE LV150)を用いて200倍で観察することにより測定することができる。具体的には、観察結果から、図6に示すような曲率中心A点を求めるが、この求め方として、例えば、線分EFと線分DGを点Bとは反対側の内側に延長させた交点をAと規定すれば、曲率半径rの大きさは、線分ACの長さに該当する。本実施形態発明では、屈曲部5の曲率半径rは特に制限されないが、1mm以上5mm以下の範囲としてよい。屈曲部5の曲率半径rは、好ましくは3mm以下である。この場合に、本実施形態発明の効果がより顕著に発揮される。
図4及び図5は巻鉄心本体10における1枚分あるいは1層分の方向性電磁鋼板1の一例を模式的に示す図である。図4及び図5の例で用いられる方向性電磁鋼板1は、ユニコア形態の巻鉄心を実現するべく、折り曲げ加工されたものであって、2つ以上の屈曲部5と、平面部4とを有し、1つ以上の方向性電磁鋼板1の長手方向の端面である接合部(隙間)6を介して側面視において略多角形の環を形成する。
本実施の形態においては、巻鉄心本体10が、全体として側面視が略多角形状の積層構造2を有していればよい。図4の例に示されるように、1つの接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心本体10の1層分を構成する(一巻ごとに1箇所の接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板1が接続される)ものであってもよく、図5の例に示されるように1枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心の約半周分を構成し、2つの接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心本体10の1層分を構成する(一巻ごとに2箇所の接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板1が互いに接続される)ものするものであってもよい。
当然ながら接合部の数が多ければ鉄心の特性に悪影響を及ぼし、また鉄心の形成工程数すなわち巻回体の形成を増加させる。そのため、接合部の数は少ない方がよい。一方、巻鉄心のサイズが大きい場合、前記巻回し作業に際し支障が生じることもある。したがって、接合部数はこれらを勘案して決めればよい。
本実施の形態においては、巻鉄心本体10が、全体として側面視が略多角形状の積層構造2を有していればよい。図4の例に示されるように、1つの接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心本体10の1層分を構成する(一巻ごとに1箇所の接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板1が接続される)ものであってもよく、図5の例に示されるように1枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心の約半周分を構成し、2つの接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心本体10の1層分を構成する(一巻ごとに2箇所の接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板1が互いに接続される)ものするものであってもよい。
当然ながら接合部の数が多ければ鉄心の特性に悪影響を及ぼし、また鉄心の形成工程数すなわち巻回体の形成を増加させる。そのため、接合部の数は少ない方がよい。一方、巻鉄心のサイズが大きい場合、前記巻回し作業に際し支障が生じることもある。したがって、接合部数はこれらを勘案して決めればよい。
本実施の形態において用いられる方向性電磁鋼板1の板厚は、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択すればよいものであるが、通常0.15mm~0.35mmの範囲内であり、好ましくは0.18mm~0.27mmの範囲である。
また、方向性電磁鋼板1を製造する方法は、特に限定されず、従来公知の方向性電磁鋼板の製造方法を適宜選択することができる。製造方法の好ましい具体例としては、例えば、Cを0.04~0.1質量%とし、その他は上記方向性電磁鋼板1の化学組成を有するスラブを1000℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行ない、次いで、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷延により冷延鋼板とし、当該冷延鋼板を、例えば湿水素-不活性ガス雰囲気中で700~900℃に加熱して脱炭焼鈍し、必要に応じて更に窒化焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した上で、1000℃程度で仕上げ焼鈍し、900℃程度で絶縁被膜を形成する方法が挙げられる。さらに、その後、摩擦係数を調整するための塗装などを実施しても良い。なお、上記化学組成においては、Si、C、Feおよび不純物に加え、本発明の効果を阻害しない範囲内で、Mn、Al、N、Cu、Nb、V、Mo、TaおよびWの1種以上を選択元素として含有してもよい。
また、一般的に歪や溝等を用いた「磁区制御」と呼ばれる処理を鋼板の製造工程において公知の方法で施した鋼板であっても本実施形態の効果を享受できる。
また、一般的に歪や溝等を用いた「磁区制御」と呼ばれる処理を鋼板の製造工程において公知の方法で施した鋼板であっても本実施形態の効果を享受できる。
また、本実施の形態において、以上のような形態を備える方向性電磁鋼板1から構成される巻鉄心は、まず、一枚ずつ個別に折り曲げ加工された方向性電磁鋼板1を層状に積み重ねて巻回形状に組み付け、さらに、一巻ごとに少なくとも1箇所以上の接合部6を介して一枚もしくは複数枚の方向性電磁鋼板1が互いに接続されて形成される。
具体的には、一枚ずつ折り曲げ加工する際、積層される方向性電磁鋼板1のうち1枚以上の少なくとも1つの屈曲部5が以下のように製造される。すなわち、屈曲部5は、図7に示されるように、ダイス30の略V字型の凹陥部32と、この凹陥部32の形状に対してほぼ相補的な形状を成すパンチ40の凸部42との間で、方向性電磁鋼板1の屈曲されるべき部位(巻鉄心の屈曲部5に相当する部位)がその厚さT方向で挟圧される(図7の例では、図中に矢印で示されるように、パンチ40がダイス30に対して下方に移動して方向性電磁鋼板1を加圧する)V曲げ工法によって形成される。この場合、方向性電磁鋼板1の厚さT方向に沿う図7の断面(つまり、方向性電磁鋼板1の厚さT方向および長手方向の両方向に沿う断面)において、凸部42はその頂部表面に所定の曲率を有する円弧部42aを有し、ダイス30の凹陥部32はV字の頂点Pから両側に斜めに延びる直線部32a,32aを有する。すなわち、凹陥部32の底面は、V字の頂点Pから両側に斜め上方に延びる直線部32a,32aを有し、また、凸部42の外表面は、所定の曲率を有する円弧部42aと、円弧部42aの両端から延びる直線部42b,42bとを有する。また、内面側曲率半径rを有する屈曲部5を形作るパンチ40の凸部42における円弧部42aの曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、方向性電磁鋼板1の屈曲部5の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし(図7では曲げ角度θ=90°)、方向性電磁鋼板1の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たしている。そして、ダイス30の凹陥部32における頂点Pから両側に延びる直線部32a,32aの延在端部32aa,32ab間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たしている。
なお、積層される方向性電磁鋼板1の全てにおける屈曲部5が、上記方法及び上記条件にて形成されることが望ましい。
具体的には、一枚ずつ折り曲げ加工する際、積層される方向性電磁鋼板1のうち1枚以上の少なくとも1つの屈曲部5が以下のように製造される。すなわち、屈曲部5は、図7に示されるように、ダイス30の略V字型の凹陥部32と、この凹陥部32の形状に対してほぼ相補的な形状を成すパンチ40の凸部42との間で、方向性電磁鋼板1の屈曲されるべき部位(巻鉄心の屈曲部5に相当する部位)がその厚さT方向で挟圧される(図7の例では、図中に矢印で示されるように、パンチ40がダイス30に対して下方に移動して方向性電磁鋼板1を加圧する)V曲げ工法によって形成される。この場合、方向性電磁鋼板1の厚さT方向に沿う図7の断面(つまり、方向性電磁鋼板1の厚さT方向および長手方向の両方向に沿う断面)において、凸部42はその頂部表面に所定の曲率を有する円弧部42aを有し、ダイス30の凹陥部32はV字の頂点Pから両側に斜めに延びる直線部32a,32aを有する。すなわち、凹陥部32の底面は、V字の頂点Pから両側に斜め上方に延びる直線部32a,32aを有し、また、凸部42の外表面は、所定の曲率を有する円弧部42aと、円弧部42aの両端から延びる直線部42b,42bとを有する。また、内面側曲率半径rを有する屈曲部5を形作るパンチ40の凸部42における円弧部42aの曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、方向性電磁鋼板1の屈曲部5の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし(図7では曲げ角度θ=90°)、方向性電磁鋼板1の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たしている。そして、ダイス30の凹陥部32における頂点Pから両側に延びる直線部32a,32aの延在端部32aa,32ab間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たしている。
なお、積層される方向性電磁鋼板1の全てにおける屈曲部5が、上記方法及び上記条件にて形成されることが望ましい。
また、以上のようなV曲げ工法を伴う巻鉄心の製造を可能にする装置が図8にブロック図で概略的に示されている。図8は、ユニコアの形態を成す巻鉄心の製造装置70を概略的に示しており、この製造装置70は、方向性電磁鋼板1を一枚ずつ折り曲げ加工する折り曲げ加工部71と、折り曲げ加工された方向性電磁鋼板1を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に平面部4と屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け部72とを備える。
折り曲げ加工部71には、方向性電磁鋼板1をロール状に巻き回して形成されたフープ材を保持する鋼板供給部50から方向性電磁鋼板1が所定の搬送速度で繰り出されることによって供給される。このようにして供給された方向性電磁鋼板1は、折り曲げ加工部71において、適宜適当なサイズに切断されるとともに、1枚ずつ折り曲げられる、折り曲げ加工を受ける。こうして得られた方向性電磁鋼板1では、折り曲げ加工で生じる屈曲部5の曲率半径rが0.2mmから2.0mmの範囲と極めて小さくなるため、折り曲げ加工によって方向性電磁鋼板1に付与される加工歪はトランココアに比べて極めて小さいものとなる(トランココアの場合コア外側の曲率半径は数十mmにおよぶため内側の曲率半径が小さい場合でも、付与される歪付与部分の大きさはコア外側で極めて大きくなる)。このように、加工歪が大きくなると想定される一方で、加工歪の影響がある体積を小さくすることができれば、焼鈍工程を省くことができる。
また、折り曲げ加工部71は、前述したような、略V字型の凹陥部32を有するダイス30と、凹陥部32の形状に対してほぼ相補的な形状を成す凸部42を有するパンチ40とを備えるとともに、方向性電磁鋼板1の屈曲されるべき部位を凹陥部32と凸部42との間で厚さT方向に狭圧することによって、積層される方向性電磁鋼板1のうちのいずれか1枚以上の少なくとも1つ、好ましくは全ての屈曲部5を形成する。
(実施例)
以下、本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容について更に説明する。以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した条件例であり、本発明は、この条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
この実施例では、表1に示す方向性電磁鋼板(鋼板No.1~8)を用いて、表2に示す鉄心を作成し、鉄心特性を測定した。詳細な製造条件および特性を表3に示す。
以下、本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容について更に説明する。以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した条件例であり、本発明は、この条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
この実施例では、表1に示す方向性電磁鋼板(鋼板No.1~8)を用いて、表2に示す鉄心を作成し、鉄心特性を測定した。詳細な製造条件および特性を表3に示す。
具体的に、表1には方向性電磁鋼板の化学組成(残部はFeおよび不純物;質量%)及び磁気特性が示されている。方向性電磁鋼板の磁気特性は、JIS C 2556:2015に規定された単板磁気特性試験法(Single Sheet Tester:SST)に基づいて測定した。磁気特性として、800A/mで励磁したときの鋼板の圧延方向の磁束密度B8(T)、更に、交流周波数:50Hz、励磁磁束密度:1.7Tでの鉄損(W17/50(W/kg))を測定した。また、表1には、各鋼板No.1~8に関して、鋼板板厚(mm)及びレーザー磁区制御の有無も示されている。
また、本発明者らは、各鋼板No.1~8を素材として、表2および図9に示す形状を有する鉄心コアNo.a~cを製造した。ここで、L1はX軸方向に平行で、中心CLを含む平断面での巻鉄心の最内周にある互いに平行な方向性電磁鋼板1間の距離(内面側平面部間距離)であり、L2はZ軸方向に平行で、中心CLを含む縦断面での巻鉄心の最内周にある互いに平行な方向性電磁鋼板1間の距離(内面側平面部間距離)であり、L3はX軸方向に平行で、中心CLを含む平断面での巻鉄心の積層厚さ(積層方向の厚さ)であり、L4はX軸方向に平行で中心CLを含む平断面での巻鉄心の積層鋼板幅であり、L5は巻鉄心の最内部の互いに隣り合って、かつ、合わせて直角をなすように配置された平面部間距離(屈曲部間の距離)である。言い換えると、L5は、最内周の方向性電磁鋼板の平面部4,4aのうち、最も長さが短い平面部4aの長手方向の長さである。rは巻鉄心の内面側の屈曲部5の曲率半径(mm)、φは巻鉄心の前述した屈曲部5の曲げ角度θ(°)である。表2の略矩形状の鉄心コアNo.a~cは、内面側平面部距離L1である平面部が距離L1のほぼ中央で分割されており、「略コの字」の形状を有する2つの鉄心を結合した構造となっている。
ここで、コアNo.cの鉄心は、従来から一般的な巻鉄心として利用されている、鋼板を筒状に巻き取った後、筒状積層体のままコーナー部を一定曲率になるようにプレスし、略矩形に形成する方法により製造された、いわゆるトランココア形態の巻鉄心である。このため、屈曲部5の曲率半径rは鋼板の積層位置により大きく変動する。一方、コアNo.aの鉄心は、1つのコーナー部3に2つの屈曲部5を有するユニコア形態の巻鉄心であり、コアNo.bの鉄心は、1つのコーナー部3に3つの屈曲部5を有するユニコア形態の巻鉄心である。また、表2中、屈曲部の曲率半径rに関しては、表3において詳細に示されている。
ここで、コアNo.cの鉄心は、従来から一般的な巻鉄心として利用されている、鋼板を筒状に巻き取った後、筒状積層体のままコーナー部を一定曲率になるようにプレスし、略矩形に形成する方法により製造された、いわゆるトランココア形態の巻鉄心である。このため、屈曲部5の曲率半径rは鋼板の積層位置により大きく変動する。一方、コアNo.aの鉄心は、1つのコーナー部3に2つの屈曲部5を有するユニコア形態の巻鉄心であり、コアNo.bの鉄心は、1つのコーナー部3に3つの屈曲部5を有するユニコア形態の巻鉄心である。また、表2中、屈曲部の曲率半径rに関しては、表3において詳細に示されている。
そして、本発明者らは、表3に示されるように、各鋼板No.1~8を素材として製造した鉄心コアNo.a~cにおける47個の試験品に関し、曲げ加工法として片側自由曲げ工法及びV曲げ工法を適用するとともに、巻鉄心の屈曲部5の曲げ角度φ(°)、パンチ40の凸部における曲率半径rd(mm)、及び、ダイス幅L(mm)を様々に変えて、各鋼板を素材とする鉄心について無負荷損失を求め、表1に示す素材鋼板の磁気特性との比を取ることでビルディングファクタ(BF)を求めた。なお、表3中、加工調整における(※1)は、片側自由曲げ工法において、φ=45°となるように金型(パンチ)のストローク調整がなされていることを示し、(※2)は、φ=30°となるようにストローク調整がなされていることを示し、(※3)は、φ=90°となるようにストローク調整がなされていることを示している。
表3から分かるように、試験番号No.2,17,26,37は、ダイス幅Lが小さく、折り曲げ部のスプリングバックが生じφが指定の角度付近に調整できなかったため、鉄心形状が悪く(×)、鉄心に巻線を設置できなかったことから、鉄心特性の測定ができなかった。また試験番号No.8,9,23,24,31,32,36についてはダイス幅Lが大きく、V曲げ工程時に鋼板が曲げおよび曲げ戻しを繰り返されることからV曲げ部およびその周辺に付与される加工歪の影響が大きくなり結果鉄心特性およびBFが大きくなった。
また、試験番号No.33,34は、曲率半径rdが小さく、折り曲げ部のスプリングバックが生じ、鉄心形状が悪く(×)、鉄心に巻線を設置できなかったことから、鉄心特性の測定ができなかった。また、試験番号No.39,40は、曲率半径rdが大きく、加工歪部が大きくなったため、結果、BFが大きくなった。また、試験番号No.41,42は、曲率半径rdが大きいためV曲げ加工によっても折り曲げ形状が凍結できず、スプリングバックが生じφが指定の角度付近に調整できなかったため、鉄心形状が悪く(×)鉄心に巻線を設置できなかったことから、鉄心特性の測定ができなかった。
続いて本発明者らは、鋼板No.1~3を用いて鉄心コアNo.cとほぼ同じ大きさのトランココアを作成した。具体的には板幅150mmの各鋼板フープを用いて、内径180mm、積厚55mmのドーナツ状の巻回体を作成した。次いで、各巻回体の内側に197mm×66mm×150mmの直方体のSKD11製の金型を挿入し、巻回体を略長方形の鉄心に変形させた後、巻回体の外側の4つのコーナーに外側から凹陥部を有するSKD11製の金型を配置し押圧し鉄心を変形・成形した。除荷後、金型を取り除き前記同様の方法で鉄心に巻線を行い各鉄心について無負荷損を測定した。結果は、試験番号No.45~47に示すように巻鉄心の鉄損が大きく測定ができなかった。このことから巻回体を予め作成し巻鉄心(いわゆるトランココア)を成形する方法では、鋼板および鉄心に大きな歪が付与され、鉄損が上昇することが判りこれらを巻鉄心として使用するには歪取り焼鈍が必須であることが判る。
前述した寸法要件、すなわち、0.2mm≦rd≦2.0mm、10°≦θ(φ)≦90°、0.15mm≦T≦0.35mm、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たす実施例と、前記関係を満たさない比較例とを見れば分かるように、実施例においてはビルディングファクタ(BF)が1.12以下に抑えられている(巻鉄心の鉄損が低減されている)。
表3から分かるように、試験番号No.2,17,26,37は、ダイス幅Lが小さく、折り曲げ部のスプリングバックが生じφが指定の角度付近に調整できなかったため、鉄心形状が悪く(×)、鉄心に巻線を設置できなかったことから、鉄心特性の測定ができなかった。また試験番号No.8,9,23,24,31,32,36についてはダイス幅Lが大きく、V曲げ工程時に鋼板が曲げおよび曲げ戻しを繰り返されることからV曲げ部およびその周辺に付与される加工歪の影響が大きくなり結果鉄心特性およびBFが大きくなった。
また、試験番号No.33,34は、曲率半径rdが小さく、折り曲げ部のスプリングバックが生じ、鉄心形状が悪く(×)、鉄心に巻線を設置できなかったことから、鉄心特性の測定ができなかった。また、試験番号No.39,40は、曲率半径rdが大きく、加工歪部が大きくなったため、結果、BFが大きくなった。また、試験番号No.41,42は、曲率半径rdが大きいためV曲げ加工によっても折り曲げ形状が凍結できず、スプリングバックが生じφが指定の角度付近に調整できなかったため、鉄心形状が悪く(×)鉄心に巻線を設置できなかったことから、鉄心特性の測定ができなかった。
続いて本発明者らは、鋼板No.1~3を用いて鉄心コアNo.cとほぼ同じ大きさのトランココアを作成した。具体的には板幅150mmの各鋼板フープを用いて、内径180mm、積厚55mmのドーナツ状の巻回体を作成した。次いで、各巻回体の内側に197mm×66mm×150mmの直方体のSKD11製の金型を挿入し、巻回体を略長方形の鉄心に変形させた後、巻回体の外側の4つのコーナーに外側から凹陥部を有するSKD11製の金型を配置し押圧し鉄心を変形・成形した。除荷後、金型を取り除き前記同様の方法で鉄心に巻線を行い各鉄心について無負荷損を測定した。結果は、試験番号No.45~47に示すように巻鉄心の鉄損が大きく測定ができなかった。このことから巻回体を予め作成し巻鉄心(いわゆるトランココア)を成形する方法では、鋼板および鉄心に大きな歪が付与され、鉄損が上昇することが判りこれらを巻鉄心として使用するには歪取り焼鈍が必須であることが判る。
前述した寸法要件、すなわち、0.2mm≦rd≦2.0mm、10°≦θ(φ)≦90°、0.15mm≦T≦0.35mm、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たす実施例と、前記関係を満たさない比較例とを見れば分かるように、実施例においてはビルディングファクタ(BF)が1.12以下に抑えられている(巻鉄心の鉄損が低減されている)。
1 方向性電磁鋼板
4,4a 平面部
5 屈曲部
10 巻鉄心(巻鉄心本体)
30 ダイス
32 凹陥部
32a 直線部
40 パンチ
42 凸部
42a 円弧部
71 折り曲げ加工部
72 組み付け部
4,4a 平面部
5 屈曲部
10 巻鉄心(巻鉄心本体)
30 ダイス
32 凹陥部
32a 直線部
40 パンチ
42 凸部
42a 円弧部
71 折り曲げ加工部
72 組み付け部
Claims (2)
- 中心に矩形の中空部を有し、長手方向に平面部と屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心であって、一枚ずつ折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより形成され、一巻ごとに少なくとも1箇所以上の接合部を介して複数枚の方向性電磁鋼板が互いに接続される巻鉄心の製造方法において、
積層される前記方向性電磁鋼板のうちの1枚以上における少なくとも1つの前記屈曲部は、ダイスの略V字型の凹陥部と、この凹陥部の形状に対してほぼ相補的な形状を成すパンチの凸部との間で、前記方向性電磁鋼板の屈曲されるべき部位がその厚さ方向で挟圧されることによって形成され、
前記方向性電磁鋼板の厚さ方向に沿う断面において、前記凸部はその頂部に所定の曲率を有する円弧部を有し、前記凹陥部はV字の頂点から両側に斜めに延びる直線部を有し、
前記パンチの前記凸部における前記円弧部の曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、
前記屈曲部の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし、
前記方向性電磁鋼板の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たし、
前記ダイスの前記凹陥部における前記頂点から両側に延びる前記直線部の延在端部間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たす、
ことを特徴とする巻鉄心の製造方法。 - 方向性電磁鋼板を一枚ずつ折り曲げ加工する折り曲げ加工部と、
前記折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に平面部と屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け部と、
を備え、
前記折り曲げ加工部は、略V字型の凹陥部を有するダイスと、前記凹陥部の形状に対してほぼ相補的な形状を成す凸部を有するパンチとを備えるとともに、前記方向性電磁鋼板の屈曲されるべき部位を前記凹陥部と前記凸部との間で厚さ方向に狭圧することによって、積層される前記方向性電磁鋼板のうちの1枚以上の少なくとも1つの前記屈曲部を形成し、
前記方向性電磁鋼板の厚さ方向に沿う断面において、前記凸部はその頂部に所定の曲率を有する円弧部を有し、前記凹陥部はV字の頂点から両側に斜めに延びる直線部を有し、
前記パンチの前記凸部における前記円弧部の曲率半径rd(mm)は、0.20mm≦rd≦2.00mmの関係を満たし、
前記屈曲部の曲げ角度θ(°)は、10°≦θ≦90°の関係を満たし、
前記方向性電磁鋼板の厚さT(mm)は、0.15mm≦T≦0.35mmの関係を満たし、
前記ダイスの前記凹陥部における前記頂点から両側に延びる前記直線部の延在端部間を最短で結ぶ直線の長さであるダイス幅L(mm)は、2(rd+T)/sinθ≦L≦6(rd+T)/sinθの関係を満たす、
ことを特徴とする巻鉄心の製造装置。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020178567 | 2020-10-26 | ||
JP2020178567 | 2020-10-26 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022070242A true JP2022070242A (ja) | 2022-05-12 |
Family
ID=81534245
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021174675A Pending JP2022070242A (ja) | 2020-10-26 | 2021-10-26 | 巻鉄心の製造方法及び製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022070242A (ja) |
-
2021
- 2021-10-26 JP JP2021174675A patent/JP2022070242A/ja active Pending
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