JP2022070250A - 巻鉄心、巻鉄心の製造方法及び巻鉄心製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄心損失を低減でき、方向性電磁鋼板の使用量を低減できるとともに、より入手性が高い高鉄損の方向性電磁鋼板を用いる場合であっても同等又は同一の損失の鉄心が得られる、巻鉄心、巻鉄心の製造方法及び巻鉄心製造装置を提供する。【解決手段】本発明の巻鉄心は、長手方向に第1の屈曲部4と第2の屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が板厚方向に積み重ねられた部分を含む。積層された方向性電磁鋼板1のうちのいずれか1枚以上は、第1の屈曲部4が弾性変形を付与されて成り、第1の屈曲部4の側面視において、弾性変形の付与前後における第1の屈曲部4の高さの差分の指標である|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下である。【選択図】図7

Description

本発明は、巻鉄心、巻鉄心の製造方法及び巻鉄心製造装置に関する。
トランスの鉄心には積鉄心と巻鉄心とがある。そのうち、巻鉄心は、一般に、方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて、ドーナツ状(巻回形状)に巻回し、その後、その巻回体を加圧してほぼ角型に成形することにより製造される(本明細書中では、このようにして製造される巻鉄心をトランココアと称する場合がある)。この成形工程によって方向性電磁鋼板全体に機械的な加工歪(塑性変形歪)が入り、その加工歪が方向性電磁鋼板の鉄損を大きく劣化させる要因となるため、歪取り焼鈍を行なう必要がある。
一方、巻鉄心の別の製造方法として、巻鉄心のコーナー部となる鋼板の部分を曲率半径が3mm以下の比較的小さな屈曲領域が形成されるように予め曲げ加工し、当該曲げ加工された鋼板を積層して巻鉄心とする、特許文献1乃至3のような技術が開示されている(本明細書中では、このようにして製造される巻鉄心をユニコア(登録商標)と称する場合がある)。当該製造方法によれば、従来のような大掛かりな成形工程が不要で、鋼板は精緻に折り曲げられて鉄心形状が保持され、加工歪も曲げ部(角部)のみに集中するため上記焼鈍工程による歪除去の省略も可能となり、工業的なメリットは大きく適用が進んでいる。
また、鉄心を形成する方向性電磁鋼板には、磁化容易軸が圧延方向に揃った電磁鋼板である方向性電磁鋼板が用いられる。そのような方向性電磁鋼板には、方向性電磁鋼板の表面に、圧延方向と交差する方向に周期的に細い複数の歪(磁区制御用の歪)を導入して、その部位に発生する還流磁区を起点に180°磁区を細分化することで鉄損を低減させた、いわゆる歪導入型の磁区制御材がある(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、このような磁区制御用の歪を導入した歪導入型の磁区制御材である方向性電磁鋼板を、巻鉄心に用いた場合には、前述した歪取り焼鈍工程を行なうことによって、(磁区制御用の起点となる歪、及び、加工歪を含む)歪が消失してしまうため、結果として磁区制御効果も消失し、鉄損の低い巻鉄心にならない。したがって、歪導入型の磁区制御材は、一般に、加圧成形や焼鈍工程が不要な積鉄心、あるいは、焼鈍工程を省くことができるユニコアの製造において使用される。
さらに、方向性電磁鋼板には、その表面に、圧延方向と交差する方向に周期的に溝を形成することで、還流磁区と同様の効果により、180°磁区を細分化して鉄損を低減した、鉄損が低減される磁区制御効果を得る、いわゆる溝形成型の磁区制御材もある(例えば、特許文献5参照)。このような溝形成型の磁区制御材は、歪取り焼鈍を行なっても磁区制御効果が消失しないため、巻鉄心の材料として用いることができる。しかしながら、溝形成型の鉄損改善効果(磁区制御効果)は、歪導入型の鉄損改善効果に比べて小さい。
特開2005-286169号公報 特許第6224468号公報 特開2018-148036号公報 特開2003-347128号公報 国際公開第2011/125672号
前述したトランココア及びユニコアの形態のいずれにおいても、歪導入型及び溝形成型の磁区制御材を用いた巻鉄心では、同一材料(方向性電磁鋼板)から鉄心を作成するにあたり、鉄心損失を低減することが求められる。また、鉄心に使用する方向性電磁鋼板の使用量を低減すること、及び、同一の損失の鉄心を得ることも求められる。さらには、より入手性が高い高鉄損の方向性電磁鋼板を用いても同等の損失の鉄心を得られることが望まれる。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、鉄心損失を低減でき、方向性電磁鋼板の使用量を低減できるとともに、より入手性が高い高鉄損の方向性電磁鋼板を用いる場合であっても同等又は同一の損失の鉄心が得られる、巻鉄心、巻鉄心の製造方法及び巻鉄心製造装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の一実施形態の巻鉄心は、長手方向に、曲率の小さい第1の屈曲部(以降、「低屈曲部」と呼称する)と曲率の大きい第2の屈曲部(以降、「高屈曲部」と呼称する)とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心であって、積層された方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上において、低屈曲部の少なくとも1つが弾性変形を付与されて成り、弾性変形によって円弧状に湾曲された低屈曲部の側面視において、低屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、a点とb点を結んだ直線の長さをL、a点からb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、さらに、弾性変形を除荷した状態における側面視において、除荷後の低屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、aa点からbb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、曲線R2上の点のうちh1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下である。
本発明者らは、前述したトランココア及びユニコアの形態のいずれにおいても、歪導入型及び溝形成型の磁区制御材を用いた巻鉄心では、同一材料(方向性電磁鋼板)から鉄心を作成するにあたり、鉄心損失を低減することが求められるという現状を踏まえ、検討した。まず、鉄損評価方法であるエプスタイン試験において、方向性電磁鋼板に一定の曲率の弾性変形を付与することにより鉄損が低下するという事実に着目し、検討を進めた。実際に、巻鉄心内部において積層される方向性電磁鋼板の直線状の任意の平面部に一定の曲率の弾性変形を付与したまま鉄心として固定化する、もしくは積層される方向性電磁鋼板の一部領域において加工やコイルの巻き癖等によって残存している湾曲部(低屈曲部)に平坦となるよう弾性変形を付与したまま鉄心として固定化することにより鉄損低減が発現するという知見を得た。これは、鉄心作成時に鋼板に弾性変形を加えることで、凸側には引張応力が凹側には圧縮応力が付与される。その弾性変形に起因する引張応力付与による磁区細分化効果によって、鉄損低減効果と、圧縮応力付与による鉄損の上昇する効果とが打ち消しあうが、弾性変形を付与した範囲では、前者の効果が後者の効果を上回ることにより結果として鉄損低減の効果が発現するものであると考えられる。
具体的には、そのような弾性変形の付与は、弾性変形が付与される低屈曲部において、上記|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下の関係を満たすように、積層された方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、好ましくは、巻鉄心作成時に巻き回した鋼板から見て鉄心の内側(内窓側)に位置される1枚以上の方向性電磁鋼板に関し、例えば治具に対して方向性電磁鋼板の低屈曲部を押し当てることにより成される。そして、低屈曲部にそのような弾性変形が付与された方向性電磁鋼板は、弾性変形状態を保ったまま、鋼板の巻き回し終了後に治具等により固定化することにより、その変形状態のまま鉄心として固定化される。これにより、同一の方向性電磁鋼板を用いて鉄心を作成した場合、用いた鋼板重量が同一であっても、より鉄心損失を低減せしむることができる。また、鉄心に使用する方向性電磁鋼板の使用量の低減を図った上で、同一の損失の鉄心を得ることができる。さらに、そのようにして使用される方向性電磁鋼板よりも市中にて入手し易い、より鉄損の高い方向性電磁鋼板を用いても、同等の損失の鉄心を得ることができる。
なお、上記構成の巻鉄心は、方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回し、その巻回体を加圧することにより成形される、いわゆるトランココアの形態を成していてもよく、あるいは、個別に折り曲げ加工された方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより形成される、いわゆるユニコアの形態を成していてもよい。
また、本発明は、トランココアの形態を成す上記構成の巻鉄心の製造方法も提供する。具体的には、そのような製造方法は、方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回する積層巻回工程と、前記積層巻回工程による巻回によって得られる前記方向性電磁鋼板の巻回体を加圧することにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、加圧工程と、前記加圧工程により前記方向性電磁鋼に導入される機械的な加工歪を除去する歪取り焼鈍工程と、積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与工程と、を含み、前記歪取り焼鈍工程の後、前記弾性変形付与工程において、前記第1の屈曲部が治具によって押し当てられることにより弾性変形されたまま鉄心として固定され、前記弾性変形付与工程において前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする。
また、本発明は、ユニコアの形態を成す上記構成の巻鉄心の製造方法も提供する。具体的には、そのような製造方法は、方向性電磁鋼板を個別に折り曲げ加工する折り曲げ加工工程と、前記折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け工程と、積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与工程と、を含み、前記折り曲げ加工工程の後、前記弾性変形付与工程において、前記第1の屈曲部が治具に押し当てられることにより弾性変形され、その変形状態のまま鉄心として固定され、前記弾性変形付与工程において前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする。
さらに、本発明は、トランココアの形態を成す上記構成の巻鉄心の製造装置も提供する。具体的には、そのような製造装置は、方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回する積層巻回部と、前記積層巻回部による巻回によって得られる前記方向性電磁鋼板の巻回体を加圧することにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、加圧加工部と、前記加圧加工部により前記方向性電磁鋼に導入される機械的な加工歪を除去する歪取り焼鈍部と、積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与部と、を備え、前記弾性変形付与部は、歪取り焼鈍された前記方向性電磁鋼板の前記第1の屈曲部を、治具に押し当てることにより弾性変形させ、前記弾性変形付与部は、前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする。
また、本発明は、ユニコアの形態を成す上記構成の巻鉄心の製造装置も提供する。具体的には、そのような製造装置は、方向性電磁鋼板を個別に折り曲げ加工する折り曲げ加工部と、前記折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け部と、積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与部と、を備え、前記弾性変形付与部は、折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板の前記第1の屈曲部を、治具に押し当てることにより弾性変形させ、前記弾性変形付与部は、前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする。
上記構成の巻鉄心の製造方法及び製造装置によれば、同一の方向性電磁鋼板を用いて、用いる鋼板重量が同一であっても、鉄心損失がさらに低減した巻鉄心を製造することができる。また、鉄心に使用する方向性電磁鋼板の使用量の低減を図った上で、同一の損失の鉄心を得ることができる。さらに、そのようにして使用される方向性電磁鋼板よりも市中にて入手し易い、より鉄損の高い方向性電磁鋼板を用いても、同等の損失の鉄心を得ることができる。
本発明によれば、鉄心損失を低減でき、方向性電磁鋼板の使用量を低減できるとともに、より入手性が高い高鉄損の方向性電磁鋼板を用いる場合であっても同等又は同一の損失の鉄心が得られる、巻鉄心、巻鉄心の製造方法及び巻鉄心製造装置を提供できる。
本発明の一実施の形態に係る巻鉄心を模式的に示す斜視図である。 図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。 本発明の他の実施の形態に係る巻鉄心を模式的に示す側面図である。 巻鉄心を構成する1層の方向性電磁鋼板の一例を模式的に示す側面図である。 巻鉄心を構成する1層の方向性電磁鋼板の他の一例を模式的に示す側面図である。 本発明の巻鉄心を構成する方向性電磁鋼板の高屈曲部の一例を模式的に示す側面図である。 方向性電磁鋼板の平面部もしくは低屈曲部に付与される弾性変形を説明するための図である。 方向性電磁鋼板の平面部もしくは低屈曲部に弾性変形を付与するための装置及び方法の第1の例(例1)を示す断面図である。 方向性電磁鋼板の平面部もしくは低屈曲部に弾性変形を付与するための装置及び方法の第2の例(例2)を示す断面図である。 平面部もしくは低屈曲部に弾性変形を伴う方向性電磁鋼板を含むトランココアの形態を成す巻鉄心の製造装置の構成を概略的に示すブロック図である。 平面部もしくは低屈曲部に弾性変形を伴う方向性電磁鋼板を含むユニコアの形態を成す巻鉄心の製造装置の構成を概略的に示すブロック図である。 特性評価の際に製造した巻鉄心の寸法を示す模式図である。
以下、本発明の一実施の形態に係る巻鉄心について順に詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」又は「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。また、化学組成に関する「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」、「直角」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において「方向性電磁鋼板」のことを単に「鋼板」又は「電磁鋼板」と記載し、「巻鉄心」のことを単に「鉄心」と記載する場合もある。
本発明の一実施の形態に係る巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える巻鉄心であって、該巻鉄心本体は、長手方向に曲率が比較的小さい低屈曲部(第1の屈曲部)と、曲率が比較的大きい高屈曲部(第2の屈曲部)とが交互に連続した方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略多角形状の積層構造を有する。前記高屈曲部は巻鉄心本体のコーナー部を構成する部位であって、塑性変形を伴い屈曲されている。前記高屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは、例えば、0.2mm以上3mm以下である。前記方向性電磁鋼板は、一例として、質量%で、Si:2.0~7.0%、を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、Goss方位に配向する集合組織を有する。なお本実施形態における「低屈曲部」とは、高屈曲部の曲率よりも小さい曲率を有する部位であって、曲率がゼロ(曲率半径は無限大)であってもよい。すなわち、本実施形態の「低屈曲部」とは、平面部に弾性変形が付与されることで円弧上に湾曲された部位、および、予め曲率の付与された状態の湾曲部(例えば、コイルの巻き癖)に弾性変形が付与されることで略平坦化された部位を含む。すなわち、本実施形態でいう「低屈曲部」は、円弧上に湾曲された湾曲部、または略平坦化された平面部を含む。また、複数の低屈曲部のうち少なくとも1つの低屈曲部に、所定の曲率の弾性変形もしくは平面化を図るための弾性変形が付与されていればよい。
次に、本発明の一実施の形態に係る巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状について具体的に説明する。ここで説明する巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状自体は、特に目新しいものではなく、公知の巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状に準じたものに過ぎない。
図1は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。また、図3は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。
なお、本発明において側面視とは、巻鉄心を構成する長尺状の方向性電磁鋼板の幅方向(図1におけるY軸方向)に視ることをいい、側面図とは側面視により視認される形状を表わした図(図1のY軸方向の図)である。
本発明の一実施の形態に係る巻鉄心は、側面視において略多角形状の巻鉄心本体10を備える。当該巻鉄心本体10は、方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられ、側面視において略矩形状の積層構造2を有する。当該巻鉄心本体10を、そのまま巻鉄心として使用してもよいし、必要に応じて積み重ねられた複数の方向性電磁鋼板を一体的に固定するために、結束バンド等、公知の締付具等を備えていてもよい。
本実施の形態において、巻鉄心本体10の鉄心長に特に制限はないが、鉄心において鉄心長が変化しても、高屈曲部5の体積は一定であるため高屈曲部5で発生する鉄損は一定である。鉄心長が長いほうが巻鉄心本体10に対する高屈曲部5の体積率は小さくなるため、鉄損劣化への影響も小さい。よって、巻鉄心本体10の鉄心長は長いほうが好ましい。巻鉄心本体10の鉄心長は、1.5m以上であることが好ましく、1.7m以上であるとより好ましい。なお、本実施形態において、巻鉄心本体10の鉄心長とは、側面視による巻鉄心本体10の積層方向の中心点における周長をいう。
このような本実施形態の巻鉄心は、従来公知のいずれの用途にも好適に用いることができる。
本実施の形態に係る鉄心は、側面視において略多角形状であることを特徴とする。以下の図を用いた説明においては、図示及び説明を単純にするため、一般的な形状でもある略矩形状(四角形)の鉄心で説明するが、高屈曲部の角度や数、低屈曲部の長さによって、様々な形状の鉄心が製造可能である。例えば、全ての高屈曲部の角度が45°で低屈曲部の長さが等しければ、側面視は八角形になる。また、角度が60°である6個の屈曲部を有し、低屈曲部の長さが等しければ側面視は六角形となる。
図1及び図2に示されるように、巻鉄心本体10は、長手方向に低屈曲部4と、高屈曲部5を含むコーナー部3とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において中空部15を有する略矩形状の積層構造2を有する。高屈曲部5を含むコーナー部3は、側面視において、曲線状の形状を有する高屈曲部5を2つ以上有しており、1つのコーナー部3に存在する高屈曲部5のそれぞれの曲げ角度の合計が例えば約90°となっている。コーナー部3は、隣り合う高屈曲部5,5間に、側面視した場合の長手方向の長さが前記低屈曲部4の長さ(後述する長さL)よりも短い低屈曲部4aを有している。したがって、コーナー部3は、2以上の高屈曲部5と、1つ以上の低屈曲部4aとを有する形態となっている。なお、図2の実施形態は1つのコーナー部3中に2つの高屈曲部5を有する場合であって、1つの高屈曲部5が45°である。図3の実施形態は1つのコーナー部3中に3つの高屈曲部5を有する場合であって、1つの屈曲部5が30°である。
これらの例に示されるように、本実施の形態の鉄心は、様々な角度を有する高屈曲部により構成できるが、加工時の変形を抑制して鉄損を抑える点からは、高屈曲部5の曲げ角度φ(φ1、φ2、φ3)は60°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。1つの鉄心が有する高屈曲部の曲げ角度φは任意に構成することが可能である。例えば、φ1=60°且つφ2=30°とすることができる。生産効率の点からは折り曲げ角度(曲げ角度)が等しいことが好ましく、ある一定以上の変形箇所を少なくすれば用いる鋼板の鉄損により作成する鉄心の鉄損を小さくできる場合は、異なる角度の組み合わせの加工としてもよい。設計は鉄心加工にて重視するポイントから任意に選択することができる。
図6を参照しながら、高屈曲部5および低屈曲部4,4aについて更に詳細に説明する。図6は、方向性電磁鋼板1の形状(曲線部分)の一例を模式的に示す図である。高屈曲部5と低屈曲部4,4aは次のように区分される。
1枚の方向性電磁鋼板1の側面視の形状において、まず鋼板外面Lb上に任意の点Qを設定し、点Qにおいて鋼板外面を表す曲線(以降、この曲線を外面曲線と呼称することがある)に接する仮想直線Yを定める。さらに、直線Yよりも板厚方向内側と外側の両側に、2本の平行直線Y1、Y2を定める。平行直線Y1およびY2と直線Yとの間隔は、それぞれ0.1mmとする。そして、点Qから、鋼板外表面Lbに沿った鋼板長手方向前方および後方の各方向に延伸する2つの曲線Q-S(各1.0mm)を合わせた外面曲線S-Sを考えたとき、この2つの曲線Q-Sがともに、その一部でも平行直線Y1とY2の間の領域から離脱する場合(つまり図6に示すような場合)、点Xが高屈曲部5に存在すると判断する。他方、2つの曲線Q-Sのどちらかの一方でも、平行直線Y1とY2の間の領域内に留まる場合、点Qが低屈曲部4,4aに存在すると判断する。図6においては、点F及び点Gが、鋼板外面側の表面における高屈曲部5と低屈曲部4,4aとの境界となる。なお、高屈曲部5の曲げ角度φとは、方向性電磁鋼板1の高屈曲部5において、折り曲げ方向の後方側の低屈曲部4,4aと前方側の低屈曲部4,4aとの間に生じた角度差を意味し、方向性電磁鋼板1の外面Lbにおいて、境界点F及びGの表面に接するように直線で延長して得られる2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2がなす角の補角の角度φとして表わされる。
さらに、点F及び点Gのそれぞれから鋼板外表面に垂直な直線を延長し、鋼板内面側の表面との交点をそれぞれ点E及び点Dとする。この点E及び点Dが鋼板内面側の表面における低屈曲部4,4aと高屈曲部5との境界である。
そして、本実施形態において高屈曲部5とは、方向性電磁鋼板1の側面視において、上記点D、点E、点F、点Gにより囲まれる方向性電磁鋼板1の部位である。図6においては、点Dと点Eとの間の鋼板表面、すなわち、高屈曲部5の内側表面をLa、点Fと点Gとの間の鋼板表面、すなわち、高屈曲部5の外側表面をLbとして示している。
また、低屈曲部4,4aは、高屈曲部5に隣接しており、中でもコーナー部3内に配置された低屈曲部4aは、その両側に高屈曲部5が配置されているため、高屈曲部5に挟まれた領域であるといえる。なお本実施形態では、巻鉄心本体10を構成する複数の低屈曲部4,4aのうち、少なくとも1つの低屈曲部に所定の曲率(ゼロを含む)の弾性変形が付与されていればよい。例えば、コーナー部3内の低屈曲部4aの曲率はゼロ(つまり平面)とし、隣接するコーナー3間に配置された低屈曲部4には所定の曲率が付与された形状(例えば、湾曲)としてもよい。鉄心損失の低減、および鉄心の素材である鋼板使用量の低減の観点からは、巻鉄心本体10を構成する全ての低屈曲部において、所定の曲率の弾性変形が付与されて湾曲状をされていることが好ましい。
また、この図6には、高屈曲部5の側面視における内面側曲率半径r(以下、単に曲率半径rとも称する。)が表わされている。上記Laを点E及び点Dを通過する円弧で近似することで、高屈曲部5の曲率半径rを得る。曲率半径rが小さいほど高屈曲部5の曲線部分の曲がりは急であり、曲率半径rが大きいほど高屈曲部5の曲線部分の曲がりは緩やかになる。
本実施形態の巻鉄心では、板厚方向に積層された各方向性電磁鋼板1の各高屈曲部5における曲率半径rは、ある程度の変動を有するものであってもよい。この変動は、成形精度に起因する変動であることもあり、積層時の取り扱いなどで意図せぬ変動が発生することも考えられる。このような意図せぬ誤差は、現在の通常の工業的な製造であれば0.2mm程度以下に抑制することが可能である。このような変動が大きい場合は、十分に多数の鋼板について曲率半径を測定し、平均することで代表的な値を得ることができる。また、何らかの理由で意図的に変化させることも考えられるが、本実施形態はそのような形態を除外するものではない。
なお、高屈曲部5の曲率半径rの測定方法にも特に制限はないが、例えば、市販の顕微鏡(Nikon ECLIPSE LV150)を用いて200倍で観察することにより測定することができる。具体的には、観察結果から、図6に示すような曲率中心A点を求めるが、この求め方として、例えば、線分EFと線分DGを点Bとは反対側の内側に延長させた交点をAと規定すれば、曲率半径rの大きさは、線分ACの長さに該当する。本実施形態発明では、高屈曲部5の曲率半径rは特に制限されない、1mm以上5mm以下の範囲としてよい。高屈曲部5の曲率半径rは、好ましくは3mm以下である。この場合に、本実施形態発明の効果がより顕著に発揮される。
図4及び図5は巻鉄心本体10における1層分の方向性電磁鋼板1の一例を模式的に示す図である。図4及び図5の例で用いられる方向性電磁鋼板1は、ユニコア形態の巻鉄心を実現するべく、折り曲げ加工されたものであって、2つ以上の高屈曲部5と、低屈曲部4,4aとを有し、1つ以上の方向性電磁鋼板1の長手方向の端面である接合部6を介して側面視において略多角形の環を形成する。
本実施の形態においては、巻鉄心本体10が、全体として側面視が略多角形状の積層構造を有していればよい。図4の例に示されるように、1つの接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心本体10の1層分を構成する(つまり、一巻ごとに1箇所の接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板1が接続される)ものであってもよく、図5の例に示されるように1枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心の約半周分を構成し、2つの接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板1が巻鉄心本体10の1層分を構成する(つまり、一巻ごとに2箇所の接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板1が互いに接続される)ものであってもよい。
本実施の形態において用いられる方向性電磁鋼板1の板厚は、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択すればよいものであるが、通常0.15mm~0.35mmの範囲内であり、好ましくは0.18mm~0.27mmの範囲である。
また、方向性電磁鋼板1を製造する方法は、特に限定されず、従来公知の方向性電磁鋼板の製造方法を適宜選択することができる。製造方法の好ましい具体例としては、例えば、Cを0.04~0.1質量%とし、その他は上記方向性電磁鋼板1の化学組成を有するスラブを1000℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行ない、次いで、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷延により冷延鋼板とし、当該冷延鋼板を、例えば湿水素-不活性ガス雰囲気中で700~900℃に加熱して脱炭焼鈍し、必要に応じて更に窒化焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した上で、1000℃程度で仕上げ焼鈍し、900℃程度で絶縁皮膜を形成する方法が挙げられる。さらに、その後、摩擦係数を調整するための塗装などを実施してもよい。
また、一般的に「磁区制御」と呼ばれる処理を鋼板の製造工程において公知の方法で施した鋼板であっても本発明効果を享受できる。
このような形態を備える方向性電磁鋼板1から構成される巻鉄心に係る本実施の形態を含む本発明では、積層される方向性電磁鋼板1のうちのいずれか1枚以上に関し、方向性電磁鋼板1の任意の低屈曲部4,4aに一定の曲率の弾性変形が(側面視において長手方向に対して垂直な方向(z方向;鋼板厚さT方向)で)付与されている。
図7に、弾性変形付与前後における方向性電磁鋼板1の形状の変化を示す。なお、図7(a)および(b)では説明の便宜上、積層される方向性電磁鋼板1のうち1枚を抜き出して図示している。また図7(a)では、低屈曲部4に弾性変形付与する前の状態を破線で、弾性変形が付与されている状態を実線で示している。図7(b)は低屈曲部4に付与された弾性変形を除荷した状態を示している。本実施形態の巻鉄心においては、弾性変形の付与前後における低屈曲部4の高さの差分が一定の範囲内に調整される。具体的には、
図7に実線で示されるように、弾性変形によって、例えば円弧状に湾曲された低屈曲部4の側面視において、低屈曲部4の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、a点とb点を結んだ直線の長さをL、a点からb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、さらに、弾性変形を除荷した状態における側面視において、除荷後の低屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、aa点からbb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、曲線R2上の点のうちh1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、|h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下である。これにより、弾性変形を付与しない従来と比べて鉄損を低下させることができる。|h1m-h2m|/Lが0.100超となると、後述するビルディングファクタ(BF)を十分に抑制できない場合がある。その理由は、次のとおりと考えられる。鋼板に弾性変形が付与されると、鋼板には引張応力と圧縮応力の両方が印加される。引張応力によって鋼板中の磁区細分化効果が発現し、結果、鉄損低減が生じる一方、圧縮応力が大きくなると磁区の向きが鋼板の圧延方向から板厚方向に変化するため鉄損増加が生じてしまう。前者の磁区細分化は一定の応力で限界となる。一方で、圧縮応力の影響は応力の増加に伴い大きくなるため、結果的に鉄損が良好となる弾性応力の範囲が定まる。その上限が、0.100以下である。
なお、このような指標値|h1m-h2m|/Lを評価する際は、まず、鉄心を構成する複数の方向性電磁鋼板の少なくとも一部に弾性変形が付与され、かつ拘束された状態で、側面視で低屈曲部4の形状を測定する。その後、拘束を解放して弾性応力を除荷した状態で、側面視で低屈曲部4に相当する部位の形状を測定する。すなわち、方向性電磁鋼板が拘束された状態での側面視から、h1mとLを求め、拘束を解放した状態での側面視からh2mを求める。この際、a点、b点、aa点、bb点および変形の高さ(h1m、h2m)を決定する円弧R1、R2は、鋼板板厚の中心面上に設定するものとする。
また、方向性電磁鋼板1の低屈曲部4,4aをこのように弾性的に変形させる手法としては、特定形状を有する治具を低屈曲部4,4aに押し当てて、湾曲状もしくは平坦に変形させた状態で鋼板を拘束固定することが考えられる。以下では、図8及び図9を参照し、方向性電磁鋼板1の平面状の低屈曲部に弾性変形を付与して湾曲状の低屈曲部を形成するための装置及び方法について具体的に説明する。
図8には、鋼板1の厚さT方向で外力を加えて低屈曲部4に弾性変形を付与するための装置及び方法の第1の例(例1)が示されている。
この例1では、まず、図8の(a)に示されるように、屈曲部5が形成された折り曲げ加工後の方向性電磁鋼板1を弾性変形付与用のブロック治具80に押し当てる。この場合、ブロック治具80は、弾性変形が付与されるべき鋼板1の低屈曲部4が載置される平面部載置面80aと、既に形成された鋼板1の屈曲部5の曲げ角度に対応する角度を平面部載置面80aに対して成すように平面部載置面80aの両側から斜め下方に延びる傾斜面80b,80bとを有しており、屈曲部5を有する方向性電磁鋼板1が平面部載置面80a及び傾斜面80b,80bに沿うように位置決めされる。また、ブロック治具80には、平面部載置面80aの延在方向に対して略直交する方向(鋼板1の厚さT方向)に延びて平面部載置面80aで開口する複数のネジ穴80cが互いに所定の間隔を隔てて設けられており、これらのネジ穴80c内には、該ネジ穴80aに螺合する雄ネジを外周面に有するスライダピン82が、ネジ穴80cの開口に対して突没できるようにスライド可能に設けられている。
図8の(a)に示されるようにして屈曲部5を有する方向性電磁鋼板1を平面部載置面80a及び傾斜面80b,80bに沿うように位置決めしたら、今度は、図8の(b)に示されるように、スライダピン82をスライドさせてネジ穴80cの開口から突出させることにより、鋼板1の低屈曲部4にその厚さT方向で外力を加えて低屈曲部4を弾性変形させる。この場合、前述した0<|h1m-h2m|/L≦0.10の関係が満たされるような曲率を伴う弾性変形が成されるようにスライダピン82のストロークが調整される。そして、そのようにして低屈曲部4に弾性変形を付与したら、その弾性変形状態を維持(凍結)させるべく図8の(c)に示されるように固定具85を用いて鋼板1を固定化する。その後、この固定化状態で、図8の(d)に示されるようにブロック治具80を鋼板1(鉄心)から取り外す。
図9には、鋼板1の厚さT方向で外力を加えて低屈曲部4に弾性変形を付与するための装置及び方法の第2の例(例2)が示されている。
この例2では、まず、図9の(a)に示されるように、屈曲部5が形成された折り曲げ加工後の方向性電磁鋼板1の低屈曲部4(弾性変形が付与されるべき低屈曲部)を、前述した0<|h1m-h2m|/L≦0.10の関係が満たされるような曲率を伴う曲面92aを有する曲率治具92上に載置する。この場合、曲率治具92はブロック治具90と着脱可能に連結されており、ブロック治具90は、曲率治具92が載置される載置面90aと、既に形成された鋼板1の屈曲部5の曲げ角度に対応する角度を載置面90aに対して成すように載置面90aの両側から斜め下方に延びる傾斜面90b,90bとを有している。また、ブロック治具90には、載置面90aの延在方向に対して略直交する方向(鋼板1の厚さT方向)に延びて載置面90aで開口する複数のネジ穴90cが互いに所定の間隔を隔てて設けられており、これらのネジ穴90c内には、該ネジ穴90aに螺合する雄ネジを外周面に有するスライダピン94が、ネジ穴90cの開口に対して突没できるようにスライド可能に設けられている。そして、スライダピン94がネジ穴90cの開口から突出することにより、その突出部位を介して曲率治具92とブロック治具90とが連結されるようになっている。
図9の(a)に示されるようにして鋼板1の低屈曲部4を曲率治具92上に載置したら、今度は、図9の(b)に示されるように、ブロック治具90と共に曲率治具92を鋼板1の低屈曲部4に押し付けることにより、鋼板1の低屈曲部4にその厚さT方向で外力を加えて低屈曲部4を弾性変形させる。このとき、鋼板1は、弾性変形されるべき低屈曲部4が曲率治具92の曲面92aに沿って湾曲するとともに、それ以外の部位がブロック治具90の傾斜面90b,90bに沿うようになる。そして、そのようにして低屈曲部4に弾性変形を付与したら、その弾性変形状態を維持(凍結)させるべく図9の(c)に示されるように固定具95を用いて鋼板1と曲率治具92とを固定化する。その後、この固定化状態で、スライダピン94がネジ穴90c内に完全に没するようにスライダピン94をスライドさせて曲率治具92とブロック治具90との連結状態を解除し、図9の(d)に示されるようにブロック治具90を曲率治具92(したがって鋼板1)から取り外す。
なお、上述の図8、図9のような治具を使用して、|h1m-h2m|/Lが0超、0.100以下となるように弾性変形を付与する場合、付与すべき弾性変形量は「変形の拘束を解除した際の変形量」を知る必要がある。しかし、これは一般的には、治具を一旦押し当ててその後治具を鋼板から離した際の変形量と等しいことから、事前に確認し押し当ての程度を決定することは困難なことではない。また例えば拘束中に弾性変形量が時効等のために変化するような状況が予想される場合でも、通常作業として鋼材の時効挙動を制御している当業者であれば、そのような影響を事前に評価して治具の押し当ての程度を決定することは困難なことではない。
また、以上のような弾性変形は、素材となるロール状の方向性電磁鋼板、巻回された状態での方向性電磁鋼板、歪取り焼鈍された状態での方向性電磁鋼板の形状を考慮して付与される。例えば、平坦な素材を使用し、巻回後に平坦を維持している部位を湾曲させるように弾性変形を付与する状況が考えられる。他方で、素材の状態でコイルの巻き癖がついた方向性電磁鋼板、つまり湾曲した電磁鋼板を平坦に拘束されるように弾性変形を付与する状況も考えられる。さらに巻回に伴い生ずる塑性変形を弾性変形とともに歪取り焼鈍で開放し、その上で弾性変形を付与する状況が考えられる。この場合は、歪取り焼鈍がどのような形状で実施されたかも考慮して、弾性変形付与後の形状を考える必要がある。
以上のような弾性変形を伴う方向性電磁鋼板1を含む巻鉄心の製造を可能にする装置の代表的な例を図10及び図11にブロック図で概略的に示す。
図10は、トランココアの形態を成す巻鉄心の製造装置60を概略的に示している。この製造装置60は、方向性電磁鋼板1を層状に積み重ねて巻回する積層巻回部61と、積層巻回部61による巻回によって得られる方向性電磁鋼板1の巻回体を加圧することにより、長手方向に低屈曲部4と高屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、加圧加工部62と、加圧加工部62により方向性電磁鋼1に導入される機械的な加工歪を除去する歪取り焼鈍部(焼鈍部)64と、積層される方向性電磁鋼板1のうちのいずれか1枚以上に関し、低屈曲部4に対して一定の曲率の弾性変形を付与する弾性変形付与部66を少なくとも備える。なお、上記歪取り焼鈍部64による歪取り焼鈍工程は適宜省略することが可能である。
積層巻回部61には、方向性電磁鋼板1をロール状に巻き回して形成されたフープ材を保持する鋼板供給部50から方向性電磁鋼板1が所定の搬送速度で繰り出されることによって供給される。このようにして供給された方向性電磁鋼板1は、積層巻回部61において層状に積み重ねて巻回される(積層巻回工程)。その後、加圧加工部62において加圧されることにより、例えば図1~図6に関連して前述したような長手方向に低屈曲部4と高屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が板厚方向に積み重ねられた部分を含む略多角形状の巻鉄心が形成される(加圧工程)。このようにして形成された巻鉄心は、その後、歪取り焼鈍部64において焼鈍されることにより、加圧加工部62で方向性電磁鋼板1に導入された機械的な加工歪が除去される(歪取り焼鈍工程)。そして、この製造装置60において、弾性変形が付与されるべき方向性電磁鋼板1は、歪取り焼鈍工程の後、弾性変形付与部66によって、例えば図8及び図9に関連して前述した弾性変形付与態様により(前述したように曲率の指標値|h1m-h2m|/Lが0<|h1m-h2m|/L≦0.100の関係を満たすべく)低屈曲部4が弾性変形され(弾性変形付与工程)、その変形されたまま固定部68で鉄心として固定される(図8及び図9に関連して前述した弾性変形状態を維持するための固定化)。
図11は、ユニコアの形態を成す巻鉄心の製造装置70を概略的に示している。この製造装置70は、方向性電磁鋼板1を個別に折り曲げ加工する折り曲げ加工部71と、折り曲げ加工された方向性電磁鋼板1を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に低屈曲部4と高屈曲部5とが交互に連続する方向性電磁鋼板1が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け部72と、積層される方向性電磁鋼板1のうちのいずれか1枚以上に関し、少なくとも1つの平面部4に対して一定の曲率の弾性変形を付与し、高屈曲部5よりも曲率の小さい低屈曲部4,4aを形成する弾性変形付与部74とを備える。
折り曲げ加工部71には、方向性電磁鋼板1をロール状に巻き回して形成されたフープ材を保持する鋼板供給部50から方向性電磁鋼板1が所定の搬送速度で繰り出されることによって供給される。このようにして供給された方向性電磁鋼板1は、折り曲げ加工部71において、適宜適当なサイズに切断されるとともに、1枚ずつといったように、少数枚毎に個別に折り曲げられる、折り曲げ加工を受ける(折り曲げ加工工程)。こうして得られた方向性電磁鋼板1では、折り曲げ加工で生じる高屈曲部5の曲率半径rが極めて小さくなるため、折り曲げ加工によって方向性電磁鋼板1に付与される加工歪は極めて小さいものとなる。したがって、焼鈍工程を省くことができる。また、このようにして切断されて折り曲げられた方向性電磁鋼板1は、組み付け部72により、層状に積み重ねられて巻回形状に組み付けられることにより、巻鉄心を構成する(組み付け工程)。そして、この製造装置70において、弾性変形が付与されるべき方向性電磁鋼板1は、弾性変形付与部74によって、例えば図8及び図9に関連して前述した弾性変形付与態様により(前述したように曲率の指標値|h1m-h2m|/Lが0<|h1m-h2m|/L≦0.100の関係を満たすべく)低屈曲部4が弾性変形され(弾性変形付与工程)、その変形状態のまま組み付け部72で組み付けられて鉄心として固定され、或いは、固定部76で固定(図8及び図9に関連して前述した弾性変形状態を維持するための固定化)された後に、組み付け部72により巻回形状に組み付けられる。
なお図8および図9に代表されるように、本発明の代表的な実施形態としては、巻鉄心の内窓側(中空部15側)から外側に押圧し、高屈曲部間に配置された低屈曲部(コーナー部の低屈曲部を含む)を大きい曲率半径から小さい曲率半径に湾曲させ、巻鉄心外側に凸となるように低屈曲部を加工することで弾性応力を付与している。一方、上記実施形態とは反対に、巻鉄心の外側から内窓側に押圧することで、巻鉄心内側に凸となる低屈曲部を形成することで弾性応力を付与してもよい。すなわち、巻鉄心外側に凸となる低屈曲部を加工形成する方法、および巻鉄心内側に凸となる低屈曲部を加工形成する方法のいずれに方法においても、巻鉄心に弾性応力を付与することでは本発明の効果を享受することが可能である。
(実施例)
以下、本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容について更に説明する。以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した条件例であり、本発明は、この条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
この実施例では、表1に示す組成(残部はFe及び不純物)を有する方向性電磁鋼板(鋼板No.1~3)を用いて、表2に示す鉄心を作成し、鉄心特性を測定した。詳細な製造条件および特性を表3に示す。
具体的に、表1には方向性電磁鋼板の化学組成(質量%)及び磁気特性が示されている。方向性電磁鋼板の磁気特性は、JIS C 2556:2015に規定された単板磁気特性試験法(Single Sheet Tester:SST)に基づいて測定した。磁気特性として、800A/mで励磁したときの鋼板の圧延方向の磁束密度B8(T)、更に、交流周波数:50Hz、励磁磁束密度:1.7Tでの鉄損(W17/50(W/kg))を測定した。また、表1には、各鋼板No.1~3に関して、鋼板板厚(mm)及び磁区制御におけるレーザ及び溝形成の有無も示されている。
Figure 2022070250000002
また、本発明者らは、各鋼板No.1~3を素材として、表2および図12に示す形状を有する鉄心コアNo.a、bを製造した。ここで、L1はX軸方向に平行で、中心CLを含む平断面での巻鉄心の最内周にある互いに平行な方向性電磁鋼板1間の距離((内面側平面部間距離)であり、L2はZ軸方向に平行で、中心CLを含む縦断面での巻鉄心の最内周にある互いに平行な方向性電磁鋼板1間の距離(内面側平面部間距離)であり、L3はX軸方向に平行で、中心CLを含む平断面での巻鉄心の積層厚さ(積層方向の厚さ)であり、L4はX軸方向に平行で中心CLを含む平断面での巻鉄心の積層鋼板幅であり、L5は巻鉄心の最内部の互いに隣り合って、かつ、合わせて直角をなすように配置された平面部間距離(屈曲部間の距離)である。言い換えると、L5は、最内周の方向性電磁鋼板の平面部4,4aのうち、最も長さが短い平面部4aの長手方向の長さである。φは巻鉄心の前述した屈曲部5の曲げ角度(°)である。表2の略矩形状の鉄心コアNo.a、bは、内面側平面部距離L1である平面部4が距離L1のほぼ中央で分割されており、「略コの字」の形状を有する2つの鉄心を結合した構造となっている。また、図12には、前述したように弾性変形が付与される低屈曲部4が弾性応力付与箇所(イ)として太線で明示されている。このようにして製造される鉄心は、1つのコーナー部3に2つの高屈曲部5を有するユニコア形態の巻鉄心である。
Figure 2022070250000003
そして、本発明者らは、表3に示されるように、各鋼板No.1~3を素材とし、コアNo.aもしくはNo.bの形状を有する34個の鉄心を製造した。曲げ加工法として、曲げ角度φ=45°の鉄心については曲率半径r=1.0mmの金型を用いた片側自由曲げ工法を適用し、曲げ角度φ=90°の鉄心については曲率半径r=15mmを実現する金型を用いた巻回体加圧工法を適用した。巻回体加圧工法による鉄心の曲げ角度は外面側ほど大きくなり、最外面側において曲率半径r=60mmであった。各鉄心の弾性応力付与箇所を前述した例1(図8参照;スライダピン3本による3点曲げ)と例2(図9参照)とで変え、また、前述した弾性変形を伴う円弧状の低屈曲部4の両端間(図6のa点とb点間)の長さLを174mm、125mmもしくは195mmに設定した状態で円弧の高さh1mを様々に変えて拘束した。弾性応力の付与方向における「A」は、鉄心の内窓に治具をあて内窓側から鉄心外側に向けて押圧して弾性応力を付与する場合を意味し、「B」は、鉄心の外側から治具をあて鉄心外側から内窓側に向けて押圧して弾性応力を付与する場合を意味する。
次に、弾性応力付与箇所を拘束した各鉄心について無負荷損失を求め、表1に示す素材鋼板の磁気特性との比を取ることでビルディングファクタ(BF)を求めた。その後、拘束治具を外した状態において高さh2mを測定した。なお、No.26~31については、素材として鋼板No.1を用いているが、鋼板コイル製造時の巻き癖を残した材料を使用している。このため、除荷後の高さh2は必ずしもゼロになるわけではない。ここで、加工方法のうち「片側自由曲げ工法」とは、ダイス上に載置された方向性電磁鋼板の一方側を押え部材によって押し付けて固定状態で拘束しつつ方向性電磁鋼板の他方側である片側自由端部に対してパンチを下向きに押し付けることにより、この片側自由端部をその厚さ方向で加圧して折り曲げる工法のことをいう。「巻回体加圧」とは、一般的なトランココアで適用されている、予めコイル状に巻回した方向性電磁鋼板フープを金型により略矩形に成形する方法のことをいう。なお、表3中、加工調整における(※1)は、曲げ角度が狙いの値となるように金型(パンチ)のストローク調整がなされていることを示している。
鋼板形状(L、h1m、h2m)は、積層された鋼板のうち、積層中央に位置する鋼板を代表として測定している。また、h1およびh2は側面視において、巻回軸の外側に向かう方向を正、巻回軸の内側に向かう方向を負として評価した。
前述した寸法要件、すなわち、0<|h1m-h2m|/L≦0.100の関係を満たす実施例と、前記関係を満たさない比較例とを見れば分かるように、実施例においてはビルディングファクタ(BF)が1.12以下に抑えられている(巻鉄心の鉄損が抑制されている)。
Figure 2022070250000004
1 方向性電磁鋼板
4,4a 低屈曲部
5 高屈曲部
10 巻鉄心(巻鉄心本体)
61 積層巻回部
62 加圧加工部
64 焼鈍部
66,74 弾性変形付与部
71 折り曲げ加工部
72 組み付け部
a,b 両端
P 頂点

Claims (7)

  1. 長手方向に、第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心であって、
    積層された前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上において、前記第1の屈曲部の少なくとも1つが弾性変形を付与されて成り、
    前記弾性変形によって円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、
    前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、
    前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、
    前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、
    直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、
    前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、
    さらに、弾性変形を除荷した状態における側面視において、
    除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、
    前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、
    直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、
    前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、
    |h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下である
    ことを特徴とする巻鉄心。
  2. 前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回し、その巻回体を加圧することにより成形されることを特徴とする請求項1に記載の巻鉄心。
  3. 個別に折り曲げ加工された方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の巻鉄心。
  4. 方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回する積層巻回工程と、
    前記積層巻回工程による巻回によって得られる前記方向性電磁鋼板の巻回体を加圧することにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、加圧工程と、
    前記加圧工程により前記方向性電磁鋼に導入される機械的な加工歪を除去する歪取り焼鈍工程と、
    積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与工程と、
    を含み、
    前記歪取り焼鈍工程の後、前記弾性変形付与工程において、前記第1の屈曲部が治具によって押し当てられることにより弾性変形されたまま鉄心として固定され、
    前記弾性変形付与工程において前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、
    前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、
    前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、
    前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、
    直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、
    前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、
    さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、
    除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、
    前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、
    直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、
    前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、
    |h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする
    ことを特徴とする巻鉄心の製造方法。
  5. 方向性電磁鋼板を個別に折り曲げ加工する折り曲げ加工工程と、
    前記折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け工程と、
    積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与工程と、
    を含み、
    前記折り曲げ加工工程の後、前記弾性変形付与工程において、前記第1の屈曲部が治具に押し当てられることにより弾性変形され、その変形状態のまま鉄心として固定され、
    前記弾性変形付与工程において前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、
    前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、
    前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、
    前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、
    直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、
    前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、
    さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、
    除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、
    前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、
    直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、
    前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、
    |h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする
    ことを特徴とする巻鉄心の製造方法。
  6. 方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回する積層巻回部と、
    前記積層巻回部による巻回によって得られる前記方向性電磁鋼板の巻回体を加圧することにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、加圧加工部と、
    前記加圧加工部により前記方向性電磁鋼に導入される機械的な加工歪を除去する歪取り焼鈍部と、
    積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与部と、
    を備え、
    前記弾性変形付与部は、歪取り焼鈍された前記方向性電磁鋼板の前記第1の屈曲部を、治具に押し当てることにより弾性変形させ、
    前記弾性変形付与部は、前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、
    前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、
    前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、
    前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、
    直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、
    前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、
    さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、
    除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、
    前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、
    直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、
    前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、
    |h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする
    ことを特徴とする巻鉄心の製造装置。
  7. 方向性電磁鋼板を個別に折り曲げ加工する折り曲げ加工部と、
    前記折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板を層状に積み重ねて巻回形状に組み付けることにより、長手方向に第1の屈曲部と前記第1の屈曲部よりも曲率の大きい第2の屈曲部とが交互に連続する方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた部分を含む巻回形状の巻鉄心を形成する、組み付け部と、
    積層される前記方向性電磁鋼板のうちのいずれか1枚以上に関し、前記第1の屈曲部に対して弾性変形を付与する弾性変形付与部と、
    を備え、
    前記弾性変形付与部は、折り曲げ加工された前記方向性電磁鋼板の前記第1の屈曲部を、治具に押し当てることにより弾性変形させ、
    前記弾性変形付与部は、前記第1の屈曲部に弾性変形を付与する際、前記治具を押し当てることにより円弧状に湾曲された前記第1の屈曲部の側面視において、
    前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれa点、b点、
    前記a点と前記b点を結んだ直線の長さをL、
    前記a点から前記b点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R1とし、
    直線abの延伸方向をm1軸、および直線abに垂直な方向をn1軸とした座標において、前記m1軸上での位置座標を点a:0、点b:1と定義し、
    前記曲線R1上の点のうちn1軸方向の座標が最大となる点をh1mとし、
    さらに、押し当てた前記治具を引き離した状態における側面視において、
    除荷後の前記第1の屈曲部の両端における板厚中心点をそれぞれaа点、bb点、
    前記aa点から前記bb点に亘る板厚中心に沿った円弧を曲線R2とし、
    直線aa-bbの延伸方向をm2軸、および直線abに垂直な方向をn2軸とした座標において、前記m2軸上での位置座標を点aa:0、点bb:1と定義し、
    前記曲線R2上の点のうち前記h1のm1軸座標と同じ座標における点のn軸方向の座標をh2mとした時、
    |h1m-h2m|/Lの最大値が、0超、0.100以下とする
    ことを特徴とする巻鉄心の製造装置。
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