JP2022120264A - 射出成形方法及び射出成形装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャビティに供給する溶融樹脂の温度を、大型化が抑制された簡単な構成により調整できる。【解決手段】射出成形方法の高温樹脂供給工程では、溶融樹脂12の供給開始時に、第1温度域の高温樹脂をキャビティ42に供給する。また、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12がせん断発熱により昇温して第1温度域となるように、バルブピン48によりバルブゲート46の開度を調整する。低温樹脂供給工程では、高温樹脂供給後に、第1温度域よりも低い第2温度域の低温樹脂をキャビティ42に供給する。また、高温樹脂供給工程よりもバルブゲート46の開度を大きくすることで、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12を第2温度域にする。【選択図】図3
Description
本発明は、溶融樹脂供給源から供給される溶融樹脂を、金型のキャビティに供給する射出成形方法及び射出成形装置に関する。
溶融樹脂供給源から供給される溶融樹脂を金型のキャビティに供給して射出成形品を得る射出成形装置として、例えば、特許文献1記載のものが知られている。この射出成形装置は、ホットランナユニットを備え、該ホットランナユニットに、溶融樹脂供給源からキャビティに至るまでの流路が形成されている。この流路は、一回の成形でキャビティに供給される1ショット分の溶融樹脂を保持することが可能な長さとなっている。
また、ホットランナユニットには、流路の溶融樹脂供給源側に低温流路部が設けられ、流路のキャビティ側に高温流路部が設けられている。低温流路部は、保温ヒータ等を有し、流路内の溶融樹脂を所定の保温温度に維持する。高温流路部は、昇温ヒータ等を有し、流路内の溶融樹脂を加熱して、保温温度よりも高い加熱温度とする。
上記のように構成された射出成形装置では、1ショット分の溶融樹脂のうち、注入初期にキャビティに供給される分を、高温流路部で加熱した加熱温度とすることができる。また、1ショット分の溶融樹脂のうち、注入初期より後にキャビティに注入される分を、低温流路部で保温した保温温度(注入初期よりも低温)とすることができる。つまり、ホットランナユニットを介することで、供給タイミングに応じて温度が異なる溶融樹脂をキャビティに供給することができる。
この場合、射出成形品の外側の部分である表面層が、注入初期の高温で粘度が低い溶融樹脂から形成されるため、射出成形品の外観不良の発生を抑制することができる。また、射出成形品の内側の部分であるコア層が、注入初期より後の低温の溶融樹脂から形成されるため、キャビティ内の溶融樹脂が固化するまでの時間を短縮して、効率的に射出成形品を得ることができる。
上記のホットランナユニットは、1ショット分の溶融樹脂を保持可能な長さの流路と、保温ヒータ等を有する低温流路部と、昇温ヒータ等を有する高温流路部とを備える必要がある分、大型化したり、構成が複雑化したりし易い。このため、キャビティに供給する溶融樹脂の温度を大型化が抑制された簡単な構成により調整して、外観不良が抑制された射出成形品を効率的に得ることは困難であった。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、キャビティに供給する溶融樹脂の温度を、大型化が抑制された簡単な構成により調整できる射出成形方法及び射出成形装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、溶融樹脂供給源から供給される溶融樹脂を、バルブピンにより開閉されるバルブゲートを介して金型のキャビティに供給する射出成形方法であって、前記キャビティに対する前記溶融樹脂の供給開始時に、第1温度域の前記溶融樹脂である高温樹脂を前記キャビティに供給する高温樹脂供給工程と、
前記キャビティに前記高温樹脂を供給した高温樹脂供給後に、前記第1温度域よりも低い第2温度域の前記溶融樹脂である低温樹脂を前記キャビティに供給する低温樹脂供給工程と、を有し、前記高温樹脂供給工程では、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂がせん断発熱により昇温して前記第1温度域となるように、前記バルブピンにより前記バルブゲートの開度を調整し、前記低温樹脂供給工程では、前記高温樹脂供給工程よりも前記バルブゲートの開度を大きくすることで、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂を第2温度域にする。
前記キャビティに前記高温樹脂を供給した高温樹脂供給後に、前記第1温度域よりも低い第2温度域の前記溶融樹脂である低温樹脂を前記キャビティに供給する低温樹脂供給工程と、を有し、前記高温樹脂供給工程では、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂がせん断発熱により昇温して前記第1温度域となるように、前記バルブピンにより前記バルブゲートの開度を調整し、前記低温樹脂供給工程では、前記高温樹脂供給工程よりも前記バルブゲートの開度を大きくすることで、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂を第2温度域にする。
本発明の別の一態様は、溶融樹脂供給源から供給される溶融樹脂を、金型のキャビティに供給する射出成形装置であって、前記キャビティに連通するバルブゲートと、前記バルブゲートを開閉するバルブピンと、前記バルブゲートを全開する全開位置及び前記バルブゲートを全閉する全閉位置の間で前記バルブピンの位置調整を行うことで、前記バルブゲートの開度を調整可能な調整部と、を備え、前記調整部は、前記キャビティに対する前記溶融樹脂の供給開始時には、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂がせん断発熱により昇温して第1温度域の高温樹脂となるように前記バルブゲートの開度を調整し、前記キャビティに前記高温樹脂を供給した高温樹脂供給後には、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂が前記第1温度域よりも低い第2温度域の低温樹脂となるように前記バルブゲートの開度を大きくする、
バルブゲートを流れる溶融樹脂の速度は、バルブゲートの内壁面に近接する側で遅く、内壁面から離間する側(中心側)で速くなる。このように異なる速度で移動する隣接した層流間の摩擦によって溶融樹脂にはせん断発熱が生じる。せん断発熱は、バルブゲートの開度が小さいほど高くなる。
本発明では、バルブゲートを介してキャビティに溶融樹脂を供給する際、バルブゲートを開閉するバルブピンの位置を調整でき、これによって、バルブゲートの開度を調整できる。バルブゲートを通過する溶融樹脂のせん断発熱量は、バルブゲートの開度に応じた大きさとなる。このため、バルブゲートの開度をバルブピンにより調整するという、大型化が抑制された簡単な構成により、キャビティに供給する溶融樹脂の温度を調整することができる。
従って、キャビティに対する溶融樹脂の供給開始時には、バルブゲートの開度を調整することで、バルブゲートを通過する溶融樹脂をせん断発熱により昇温させて高温樹脂とすることができる。また、キャビティへの高温樹脂供給後には、バルブゲートの開度を大きくして、せん断発熱量を小さくすることで、第1温度域よりも低い第2温度域とした低温樹脂をキャビティに供給することができる。その結果、不良が抑制された射出成形品を効率的に得ることが可能になる。
本発明に係る射出成形方法及び射出成形装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
図1に示す本実施形態に係る射出成形装置10は、例えば、ポリプロピレン等の溶融樹脂12(図2)を射出成形して、自動車車体の外装品であるフロントバンパ等を射出成形品(不図示)として得る場合に好適に適用できる。しかしながら、特にこれには限定されず、射出成形装置10では、射出成形可能な種々の種類の溶融樹脂12から、種々の種類の射出成形品を得ることができる。
図1に示すように、射出成形装置10は、制御部14と、溶融樹脂供給源16と、フレーム18と、固定盤20と、可動盤22と、型締駆動機構24と、金型26とを備える。制御部14は、不図示のCPU等を備えるマイクロコンピュータとして構成され、制御プログラムに従って所定の演算を実行し、射出成形装置10の種々の処理や制御を行う。
溶融樹脂供給源16は、加熱バレル28と、ノズル部30と、射出駆動部32とを有する。加熱バレル28は、ホッパ34を介して供給された樹脂を所定の温度の溶融樹脂12として貯留する。ノズル部30は、加熱バレル28の先端に設けられる。また、ノズル部30は、金型26に設けられたランナー36と、加熱バレル28とを連通させる。
射出駆動部32は、加熱バレル28の内部に移動可能に設けられる不図示の射出プランジャを有し、射出プランジャを移動させることで、加熱バレル28内の溶融樹脂12を、ノズル部30を介して金型26のランナー36(図2)に射出する。また、射出駆動部32は、制御部14の制御によって、ノズル部30から射出される溶融樹脂12の圧力や、流量、流速等を調整することが可能である。
フレーム18は、射出成形装置10の土台である。固定盤20は、フレーム18に固定されている。可動盤22は、不図示のリニアガイド等を介して移動可能にフレーム18に固定されている。型締駆動機構24は、固定盤20に対して接近又は離間する方向に可動盤22を移動させることが可能である。
金型26は、固定金型38及び可動金型40を有する。固定金型38は、固定盤20に取り付けられている。可動金型40は、可動盤22に取り付けられている。このため、型締駆動機構24により可動盤22を移動させることで、可動金型40を固定金型38に対して接近又は離間する方向に移動させることが可能となっている。図2に示すように、固定金型38に対して可動金型40が接近することで型閉じされ、互いの間に射出成形品の形状に応じたキャビティ42が形成される。
本実施形態では、固定金型38に、上記のランナー36と、ゲート機構44とが設けられている。ランナー36は、溶融樹脂供給源16のノズル部30から射出された溶融樹脂12をゲート機構44のバルブゲート46に導く。
ゲート機構44は、バルブゲート46と、バルブピン48と、調整部50とを有している。本実施形態では、バルブゲート46は、キャビティ42の他部位よりも厚さが厚い肉厚部42aに連通するように配設されている。バルブゲート46には、ゲート流路52と、挿通孔54とが設けられている。ゲート流路52は、溶融樹脂供給源16からランナー36を介して供給された溶融樹脂12をキャビティ42へと導く。挿通孔54は、バルブピン48の延在方向に沿って延在し、バルブピン48が移動可能に挿通されている。
ゲート流路52は、挿通孔54との連通が遮断された状態で、基端側(ゲート機構44側、上流側)から先端側(キャビティ42側、下流側)に向かって延在した後、挿通孔54の先端側に向かって延在する。これによって、ゲート流路52と挿通孔54とは、各々の先端側で互いに連通する。また、ゲート流路52及び挿通孔54はともに、バルブゲート46の先端側に設けられたゲート開口56を介してキャビティ42に連通する。
バルブピン48は、バルブゲート46の挿通孔54内を溶融樹脂12の射出方向に移動可能である。図2及び図3Aに示すように、バルブピン48が挿通孔54内をキャビティ42に接近する側に移動して、バルブゲート46のゲート開口56を閉塞することで、ゲート流路52が全閉される。これにより、バルブゲート46のゲート流路52を介したキャビティ42への溶融樹脂12の供給が停止される。
一方、図3B~図3Dに示すように、バルブピン48がバルブゲート46内をキャビティ42から離間する側に移動して、バルブゲート46のゲート開口56を開放することでゲート流路52が開かれる。これにより、バルブゲート46のゲート流路52を介したキャビティ42への溶融樹脂12の供給が開始される。
なお、図2には、ノズル部30とゲート機構44とを連通させる1個のランナー36と、キャビティ42に連通する1個のゲート機構44とが記載されている。しかしながら、ゲート機構44は、キャビティ42の複数箇所に連通するように複数個設けられてもよい。この場合、ノズル部30から射出される溶融樹脂12を各ゲート機構44に導くべく、ランナー36もゲート機構44の個数に応じて複数個設けられる。
調整部50は、図3Aに示す全閉位置と、図3Dに示す全開位置との間でバルブゲート46に対するバルブピン48の位置調整を行う。全閉位置にあるバルブピン48は、ゲート開口56を閉塞する。全開位置にあるバルブピン48は、ゲート開口56から離間することで、バルブゲート46の開度を最大値とする。バルブゲート46の開度は、ゲート開口56近傍に形成される溶融樹脂12の流路の最小断面積である。上記のようにして、調整部50によりバルブピン48の位置調整を行うことで、バルブゲート46の開度を調整することができる。
不図示ではあるが、調整部50は、例えば、アクチュエータ及び駆動ロッドから構成することができる。この場合、バルブピン48は駆動ロッドに取り付けられている。アクチュエータは、電子制御式であり、不図示のモータを用いたボールネジ駆動等により、駆動ロッドを進退させる。アクチュエータが駆動ロッドを繰り出すことにより、バルブピン48は全閉位置に向かって移動する。一方、アクチュエータが駆動ロッドを引き込むことにより、バルブピン48は全開位置に向かって移動する。
また、アクチュエータは、駆動ロッドを進退の途中で停止させることが可能である。駆動ロッドの停止に伴ってバルブピン48も停止する。このため、調整部50は、例えば、図3B、図3Cに示すように、バルブピン48を全閉位置と全開位置の間の任意の位置に停止させることができる。つまり、バルブゲート46の開度を所定の大きさに設定することができる。
制御部14は、キャビティ42に対する溶融樹脂12の供給タイミングに応じて、調整部50を制御する。この制御により調整部50は、キャビティ42に対する溶融樹脂12の供給開始時には、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12がせん断発熱により昇温して第1温度域の高温樹脂となるようにバルブゲート46の開度を調整する。
第1温度域は、溶融樹脂12の種類、キャビティ42の形状、射出圧力、射出速度等に応じて設定され、通常の射出成形時にキャビティ42に供給される溶融樹脂12の温度である。なお、例えば、ポリプロピレンの溶融樹脂12からフロントバンパを射出成形する場合、第1温度域は200℃~300℃とすることが挙げられるが、特にこれには限定されない。バルブゲート46を通過する溶融樹脂12が第1温度域の高温樹脂となるバルブゲート46の開度は、予めの実験やシミュレーション等によって求めることができる。
また、上記のようにしてキャビティ42に所定量の高温樹脂を供給した後である高温樹脂供給後には、調整部50は、制御部14の制御により、バルブゲート46の開度を大きくする。これにより、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12を第1温度域よりも低い第2温度域の低温樹脂とする。
第2温度域は、溶融樹脂12の種類、キャビティ42の形状、射出圧力、射出速度等に応じて設定され、溶融樹脂12の流動可能限界温度以上であって、第1温度域よりも低い温度である。なお、例えば、ポリプロピレンの溶融樹脂12からフロントバンパを射出成形する場合、第2温度域は、第1温度域よりも15℃~20℃低い温度とすることが挙げられるが、特にこれには限定されない。バルブゲート46を通過する溶融樹脂12が第2温度域の低温樹脂となるバルブゲート46の開度は、予めの実験やシミュレーション等によって求めることができる。
本実施形態では、図3Dに示すように、バルブピン48が全開位置にあるとき、該バルブピン48の先端とゲート流路52内の溶融樹脂12との接触面積が最小となる。また、本実施形態では、バルブピン48が全開位置にあるとき、すなわち、バルブゲート46の開度を最大にしたとき、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12が第2温度域となるように設定されている。この設定は、例えば、ゲート開口56の面積との関係において、溶融樹脂供給源16からバルブゲート46に供給される溶融樹脂12の温度、射出圧力、射出速度等を制御部14により制御することにより行うことができる。
また、本実施形態では、キャビティ42への高温樹脂供給後、調整部50は、バルブゲート46の開度を段階的に大きくして、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12が低温樹脂となるバルブゲート46の開度に到達させる。これにより、バルブゲート46を介してキャビティ42に供給される溶融樹脂12は、第1温度域の高温樹脂から段階的に降温して第2温度域の低温樹脂となる。
本実施形態に係る射出成形装置10は、基本的には上記のように構成される。以下、本実施形態に係る射出成形方法について、射出成形装置10を用いて射出成形品を得る場合を例に挙げて説明する。この射出成形方法では、図2に示すように、型締駆動機構24により可動盤22を固定盤20に接近させることで、固定金型38及び可動金型40を型閉じし、互いの間にキャビティ42を形成する。また、ホッパ34を介して加熱バレル28に樹脂を供給し、該加熱バレル28内に所定の温度の溶融樹脂12を貯留しておく。
さらに、射出駆動部32により加熱バレル28内の溶融樹脂12を、ノズル部30を介して金型26のランナー36に射出する。この際、調整部50は、バルブピン48を全閉位置に配置する。これにより、バルブゲート46のゲート開口56は閉塞される。このため、ランナー36からバルブゲート46のゲート流路52に供給された溶融樹脂12は、該ゲート流路52内で留まり、キャビティ42には供給されない。本実施形態では、溶融樹脂供給源16からバルブゲート46のゲート流路52に供給される溶融樹脂12の温度は、第1温度域よりも低温に設定されている。
次に、図3Bに示すように、調整部50によりバルブピン48をキャビティ42から離間する側に移動させて、ゲート開口56を開くことにより、キャビティ42に対する溶融樹脂12の供給を開始する。この供給開始時に、第1温度域の高温樹脂をキャビティ42に供給する高温樹脂供給工程を行う。
ところで、バルブゲート46のゲート流路52を流れる溶融樹脂12の速度は、バルブゲート46の内壁面に近接する側で遅く、内壁面から離間する側(中心側)で速くなる。このように異なる速度で移動する隣接した層流間の摩擦によって溶融樹脂12にはせん断発熱が生じる。せん断発熱は、バルブゲート46の開度が小さいほど高くなる。
高温樹脂供給工程では、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12がせん断発熱により昇温して第1温度域となるように、バルブピン48によりバルブゲート46の開度を調整した状態で、溶融樹脂12の供給を開始する。この際のバルブゲート46の開度は、バルブピン48の先端がゲート開口56に近接して配置されることにより、ゲート開口56の面積よりも小さくなっている。
高温樹脂供給工程では、上記のようにバルブゲート46の開度を小さくする方向に調整することで、ゲート流路52を通過する溶融樹脂12のせん断発熱量を大きくすることができる。このため、溶融樹脂供給源16からバルブゲート46に供給される溶融樹脂12よりも高温の高温樹脂をキャビティ42に供給することができる。高温樹脂供給工程において、キャビティ42に供給される高温樹脂の供給量(高温樹脂供給量)は、溶融樹脂12の種類や、キャビティ42の形状等に応じて設定される。高温樹脂供給量は、後述するように射出成形品の表面層を形成可能な量であることが好ましい。
上記のようにして高温樹脂をキャビティ42に供給した高温樹脂供給後、図3Cに示すように、調整部50によりバルブピン48をキャビティ42から離間する側にさらに移動させて、バルブゲート46の開度を大きくする徐冷工程を行う。徐冷工程では、高温樹脂供給工程におけるバルブピン48の位置よりもキャビティ42から離間する側であって、全開位置よりもキャビティ42に接近する側にバルブピン48を配置する。これによって、第1温度域の高温樹脂よりも低温であって、第2温度域の低温樹脂よりも高温である溶融樹脂12をキャビティ42に供給することができる。
なお、徐冷工程では、図3Cに示すバルブピン48の位置のみではなく、図3Bに示す高温樹脂供給工程におけるバルブピン48の位置と、図3Dに示す全開位置との間の複数の位置にバルブピン48を配置しつつ、溶融樹脂12をキャビティ42に供給することが好ましい。すなわち、バルブピン48を、図3Cの位置から図3Dの位置に向かって徐々に(段階的に)移動させつつ、溶融樹脂12をキャビティ42に供給することが好ましい。この場合、バルブゲート46を介してキャビティ42に供給される溶融樹脂12の温度を第1温度域から第2温度域へと降温する速度を遅くして、溶融樹脂12を効果的に徐冷することが可能になる。
次に、図3Dに示すように、調整部50によりバルブピン48を全開位置に移動させて、バルブゲート46の開度を最大にする。これにより、第2温度域の低温樹脂をキャビティ42に供給する低温樹脂供給工程を行う。つまり、溶融樹脂供給源16からバルブゲート46に供給される溶融樹脂12の温度は、バルブピン48により開度を最大にしたバルブゲート46を通過することで第2温度域となる温度に設定されている。
低温樹脂供給工程によりキャビティ42に供給された低温樹脂は、キャビティ42に先行して供給されていた高温樹脂の内側を、該高温樹脂を押しながら流れる。つまり、高温樹脂は、キャビティ42の内壁に近接する側を流れ、低温樹脂は、キャビティ42の内壁から離間する側を流れる傾向にある。
キャビティ42に対して所定量の低温樹脂を供給した後、調整部50によりバルブピン48を全閉位置に移動させる。これにより、キャビティ42に対する溶融樹脂12の供給を停止する。低温樹脂供給工程においてキャビティ42に供給される低温樹脂の供給量(低温樹脂供給量)は、高温樹脂供給工程における高温樹脂供給量よりも少ない。また、低温樹脂供給量は、溶融樹脂12の種類や、キャビティ42の形状等に応じて設定される。
低温樹脂供給工程の後、キャビティ42内の溶融樹脂12が降温させて固化する固化工程を経て、射出成形品が得られる。この射出成形品は、型締駆動機構24により固定金型38及び可動金型40を型開きした後、不図示の押出機構等によって押圧されることで金型26から取り外される。
射出成形方法及び射出成形装置10では、上記の工程を繰り返し実行可能であり、例えば、射出成形品を1回成形する動作をサイクル動作として繰り返すことが可能である。一連のサイクル動作を実行する時間をサイクルタイムという。
固化工程において、キャビティ42内の高温樹脂が固化することで、射出成形品の外側の部分である表面層が形成される。また、キャビティ42内の低温樹脂が固化することで、射出成形品の内側の部分であるコア層が形成される。
このように、射出成形品の表面層が、せん断発熱により昇温されて粘度が低下した高温樹脂から形成されるため、射出成形品の外観不良の発生を抑制することができる。また、射出成形品のコア層が、高温樹脂より低温の低温樹脂から形成されるため、例えば、射出成形品の全体を高温樹脂から形成する場合よりも、溶融樹脂12が固化する時間を短縮できる。すなわち、射出成形品を効率的に得ることができ、サイクルタイムを短縮することが可能になる。
以上から、本実施形態に係る射出成形方法及び射出成形装置10によれば、バルブゲート46を介してキャビティ42に溶融樹脂12を供給する際、バルブゲート46を開閉するバルブピン48の位置を調整でき、これによって、バルブゲート46の開度を調整できる。バルブゲート46を通過する溶融樹脂12のせん断発熱量は、バルブゲート46の開度に応じた大きさとなる。このため、バルブゲート46の開度をバルブピン48により調整するという、大型化が抑制された簡単な構成により、キャビティ42に供給する溶融樹脂12の温度を調整することができる。
従って、上記の通り、キャビティ42に対する溶融樹脂12の供給開始時には、バルブゲート46の開度を調整することで、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12をせん断発熱により昇温させて高温樹脂とすることができる。また、キャビティ42への高温樹脂供給後には、バルブゲート46の開度を大きくして、せん断発熱量を小さくすることで、第1温度域よりも低い第2温度域とした低温樹脂をキャビティ42に供給することができる。その結果、大型化が抑制された簡単な構成により、外観不良が抑制された射出成形品を効率的に得ることが可能になる。
上記の実施形態に係る射出成形方法では、高温樹脂供給工程と低温樹脂供給工程との間に、徐冷工程を行い、徐冷工程では、バルブゲート46の開度を段階的に大きくして溶融樹脂12を第1温度域から第2温度域へと段階的に降温させつつキャビティ42に供給することとした。
また、上記の実施形態に係る射出成形装置10では、調整部50は、高温樹脂供給後、バルブゲート46の開度を段階的に大きくして、バルブゲート46を通過する溶融樹脂12が低温樹脂となるバルブゲート46の開度に到達させることとした。
これらの場合、溶融樹脂12の温度を第1温度域から第2温度域へと段階的に降温させながらキャビティ42に供給することができる。これにより、最終的に得られる射出成形品にフローマーク等の外観不良が生じることを一層効果的に抑制することが可能になる。
ここで、例えば、特許文献1(特開2020-40293号公報)に記載のホットランナユニット(不図示)では、キャビティに供給する溶融樹脂の温度を、高温流路部での加熱温度と、低温流路部での保温温度との2段階に調整できるのみである。このようなホットランナユニットにおいて、キャビティに供給する溶融樹脂の温度を、加熱温度から保温温度へと段階的に調整するためには、高温流路部と低温流路部との間に、加熱温度と保温温度との間の温度となるように溶融樹脂を加熱するヒータ等をさらに備える必要がある。このため、溶融樹脂の温度を調整するための構成が大型で複雑となる。
一方、本実施形態に係る射出成形方法及び射出成形装置10では、調整部50によりバルブピン48の位置を調整することで溶融樹脂12の温度を調整することが可能である。このため、溶融樹脂12を第1温度域から第2温度域へと徐冷しながらキャビティ42に供給しても、射出成形装置10が大型化や複雑化することを効果的に回避できる。なお、射出成形方法は、徐冷工程を有していなくてもよい。
上記の実施形態に係る射出成形方法では、溶融樹脂供給源16からバルブゲート46に供給される溶融樹脂12は、バルブピン48により開度を最大にしたバルブゲート46を通過して前記第2温度域となる温度であり、低温樹脂供給工程では、バルブゲート46の開度を最大にすることとした。
また、上記の実施形態に係る射出成形装置10では、溶融樹脂供給源16がバルブゲート46に供給する溶融樹脂12は、バルブピン48により開度を最大にしたバルブゲート46を通過することで第2温度域となる温度であり、調整部50は、低温樹脂をキャビティ42に供給する際、バルブゲート46の開度を最大にすることとした。
これらの場合、図3Bに示すバルブゲート46を通過する溶融樹脂12が高温樹脂となるバルブピン48の位置から、図3Dに示す全開位置までの間を有効に利用して、溶融樹脂12の温度を第1温度域と第2温度域との間で容易に調整することが可能になる。
また、キャビティ42に高温樹脂を供給する際、バルブピン48は、高温樹脂の温度に応じて高温になっている。上記の通り、バルブピン48が全開位置にあるとき、該バルブピン48の先端とゲート流路52内の溶融樹脂12との接触面積が最小となる。このため、高温樹脂供給後に、溶融樹脂12がバルブピン48との接触により昇温することを抑制でき、キャビティ42に供給する溶融樹脂12の温度を精度よく調整することが可能になる。
なお、上記には限定されず、溶融樹脂供給源16からバルブゲート46に供給される溶融樹脂12は、バルブピン48により最大開度よりも小さい開度にしたバルブゲート46を通過して第2温度域となる温度であってもよい。
上記の実施形態に係る射出成形方法では、低温樹脂供給工程でキャビティ42に供給される低温樹脂の供給量(低温樹脂供給量)は、高温樹脂供給工程でキャビティ42に供給される高温樹脂の供給量(高温樹脂供給量)よりも少ないこととした。この場合、射出成形品の外観不良の発生を一層効果的に抑制しつつ、射出成形品を効率的に得ることができる。
上記の実施形態に係る射出成形方法では、バルブゲート46は、キャビティ42の他部位よりも厚さが厚い肉厚部42aに連通し、低温樹脂供給工程でキャビティ42に供給された低温樹脂は、バルブゲート46の近傍で固化して射出成形品を形成することとした。
この場合、バルブゲート46の近傍に供給された低温樹脂を、速やかに降温させて固化することができるため、溶融樹脂12の逆流等を抑制でき、射出成形品の外観不良を一層効果的に抑制できる。
また、キャビティ42の肉厚部42aに供給される低温樹脂の割合を大きくすることができる。肉厚部42aは、キャビティ42の他部位に比して体積が大きい分、降温速度が遅くなり易い。このため、上記のように、肉厚部42aに供給される低温樹脂の割合を大きくすることで、肉厚部42aを速やかに降温させ、射出成形品を効率的に得ることが可能になる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
10…射出成形装置 12…溶融樹脂
16…溶融樹脂供給源 26…金型
42…キャビティ 42a…肉厚部
46…バルブゲート 48…バルブピン
50…調整部
16…溶融樹脂供給源 26…金型
42…キャビティ 42a…肉厚部
46…バルブゲート 48…バルブピン
50…調整部
Claims (8)
- 溶融樹脂供給源から供給される溶融樹脂を、バルブピンにより開閉されるバルブゲートを介して金型のキャビティに供給する射出成形方法であって、
前記キャビティに対する前記溶融樹脂の供給開始時に、第1温度域の前記溶融樹脂である高温樹脂を前記キャビティに供給する高温樹脂供給工程と、
前記キャビティに前記高温樹脂を供給した高温樹脂供給後に、前記第1温度域よりも低い第2温度域の前記溶融樹脂である低温樹脂を前記キャビティに供給する低温樹脂供給工程と、
を有し、
前記高温樹脂供給工程では、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂がせん断発熱により昇温して前記第1温度域となるように、前記バルブピンにより前記バルブゲートの開度を調整し、
前記低温樹脂供給工程では、前記高温樹脂供給工程よりも前記バルブゲートの開度を大きくすることで、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂を第2温度域にする、射出成形方法。 - 請求項1記載の射出成形方法において、
前記高温樹脂供給工程と前記低温樹脂供給工程との間に、徐冷工程を行い、
前記徐冷工程では、前記バルブゲートの開度を段階的に大きくして前記溶融樹脂を前記第1温度域から前記第2温度域へと段階的に降温させつつ前記キャビティに供給する、射出成形方法。 - 請求項2記載の射出成形方法において、
前記溶融樹脂供給源から前記バルブゲートに供給される前記溶融樹脂は、前記バルブピンにより開度を最大にした前記バルブゲートを通過して前記第2温度域となる温度であり、
前記低温樹脂供給工程では、前記バルブゲートの開度を最大にする、射出成形方法。 - 請求項1~3の何れか1項に記載の射出成形方法において、
前記低温樹脂供給工程で前記キャビティに供給される前記低温樹脂の供給量は、前記高温樹脂供給工程で前記キャビティに供給される前記高温樹脂の供給量よりも少ない、射出成形方法。 - 請求項1~4の何れか1項に記載の射出成形方法において、
前記バルブゲートは、前記キャビティの他部位よりも厚さが厚い肉厚部に連通し、
前記低温樹脂供給工程で前記キャビティに供給された前記低温樹脂は、前記バルブゲートの近傍で固化して射出成形品を形成する、射出成形方法。 - 溶融樹脂供給源から供給される溶融樹脂を、金型のキャビティに供給する射出成形装置であって、
前記キャビティに連通するバルブゲートと、
前記バルブゲートを開閉するバルブピンと、
前記バルブゲートを全開する全開位置及び前記バルブゲートを全閉する全閉位置の間で前記バルブピンの位置調整を行うことで、前記バルブゲートの開度を調整可能な調整部と、
を備え、
前記調整部は、
前記キャビティに対する前記溶融樹脂の供給開始時には、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂がせん断発熱により昇温して第1温度域の高温樹脂となるように前記バルブゲートの開度を調整し、
前記キャビティに前記高温樹脂を供給した高温樹脂供給後には、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂が前記第1温度域よりも低い第2温度域の低温樹脂となるように前記バルブゲートの開度を大きくする、射出成形装置。 - 請求項6記載の射出成形装置において、
前記調整部は、前記高温樹脂供給後、前記バルブゲートの開度を段階的に大きくして、前記バルブゲートを通過する前記溶融樹脂が前記低温樹脂となる前記バルブゲートの開度に到達させる、射出成形装置。 - 請求項6又は7記載の射出成形装置において、
前記溶融樹脂供給源が前記バルブゲートに供給する前記溶融樹脂は、前記バルブピンにより開度を最大にした前記バルブゲートを通過することで前記第2温度域となる温度であり、
前記調整部は、前記低温樹脂を前記キャビティに供給する際、前記バルブゲートの開度を最大にする、射出成形装置。
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---|---|---|---|
JP2021017047A JP2022120264A (ja) | 2021-02-05 | 2021-02-05 | 射出成形方法及び射出成形装置 |
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