JP2022119073A - 酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去方法および酸性ガス除去装置 - Google Patents

酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去方法および酸性ガス除去装置 Download PDF

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Shinji Murai
康博 加藤
Yasuhiro Kato
大悟 村岡
Daigo Muraoka
己思人 藤田
Kishito Fujita
満 宇田津
Mitsuru Udatsu
昭子 鈴木
Akiko Suzuki
勇人 森垣
Hayato Morigaki
優介 半田
Yusuke Handa
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Abstract

【課題】二酸化炭素等の酸性ガスの回収量が高い酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去装置及び方法を提供する。【解決手段】式(1)又は(2)のジアミン化合物を有する酸性ガス吸収剤。JPEG2022119073000006.jpg49152(R1は、水素原子、水酸基、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基又はアミノアルキル基。R2は、C数1~8の分岐状ヒドロキシアルキル基又は分岐状アミノアルキル基。R3は、水素原子、水酸基、C数1~8の分岐状ヒドロキシアルキル基又は分岐状アミノアルキル基。R3のうち少なくとも一つはC数1~8の分岐状ヒドロキシアルキル基又はアミノアルキル基。pは2~4の整数。qは3~8の整数。)【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、酸性ガス吸収剤およびこれを用いた酸性ガス除去方法ならびに酸性ガス除去装置に関する。
近年、地球の温暖化現象の一因として二酸化炭素(CO)濃度の上昇による温室効果が指摘され、地球規模で環境を守る国際的な対策が急務となっている。COの発生は産業活動によるところが大きく、その排出抑制への機運が高まっている。
COをはじめとする酸性ガスの濃度の上昇を抑制するための技術としては、省エネルギー製品の開発、排出する酸性ガスの分離回収技術、酸性ガスの資源としての利用や隔離貯留させる技術、酸性ガスを排出しない自然エネルギーや原子力エネルギーなどの代替エネルギーへの転換などがある。
現在までに研究されてきた酸性ガス分離技術としては、吸収法、吸着法、膜分離法、深冷法などがある。中でも吸収法は、ガスを大量に処理するのに適しており、工場や発電所への適用が検討されている。
したがって、化石燃料を使用する火力発電所などの設備を対象に、化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)を燃焼する際に発生する排ガスを化学吸収剤と接触させ、燃焼排ガス中のCOを除去して回収する方法、さらに回収されたCOを貯蔵する方法が世界中で行われている。また、化学吸収剤を用いてCO以外に硫化水素(HS)等の酸性ガスを除去することが提案されている。
一般に、吸収法において使用される化学吸収剤としてモノエタノールアミン(MEA)に代表されるアルカノールアミン類が1930年代ころから開発されており、現在も使用されている。この方法は、経済的であり、また除去装置の大型化が容易である。
既存に広く使用されるアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ2-メチルプロパノール、エチルジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノール、2-イソプロピルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール(DMAE)、2-ジエチルアミノエタノール、エチレンジアミンなどがある。
特に、2級アミンのメチルエタノールアミンおよびジエチルエタノールアミンなどは、反応速度が速いため広く使用されてきた。しかし、これらの化合物は、再生に要するエネルギーが高く、腐食性や劣化し易いという課題がある。一方、メチルジエタノールアミンは、腐食性は低く、また再生に要するエネルギーも低いものの、吸収速度が低いという問題点を有する。したがって、これらの点を改善した、新しい吸収剤の開発が要求されている。
近年、酸性ガスの吸収剤として、アミン系化合物の中でも、特に構造的に立体障害を有するアルカノールアミンに対する研究が盛んに試みられている。立体障害を有するアルカノールアミンは、酸性ガスの選択度が非常に高く、また再生に要するエネルギーが少ないという長所を有している。
また、特定構造のジアミン化合物が公知の二酸化炭素吸収剤よりも高い吸収放出性能を有しながら、且つ低い反応熱で二酸化炭素と反応できるという長所を有している。
立体障害を有するアミン系化合物の反応速度は、その立体構造によって決定される反応の障害の程度に依存する。立体障害を有するアミン系化合物の反応速度は、例えばメチルエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの2級アミンよりは低いものの、3級アミンよりは高い反応速度を有している。
一方、アルカノールアミン類とは異なる構造を有するアミン系化合物として、環状アミンを吸収剤として使用する方法も知られている。
特開2008-307519号公報 特許第5039276号公報 特許第2871334号公報 特許第5688335号公報 米国特許4112052号明細書
しかしながら、これらの技術でも、酸性ガス吸収量や酸性ガス吸収速度などの酸性ガス吸収能力に関してはいまだ不十分であり、ガス吸収能力のさらなる向上が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、二酸化炭素等の酸性ガスの回収量が多く、回収エネルギーの小さい酸性ガス吸収剤、並びにこれを用いた酸性ガス除去方法および酸性ガス除去装置を提供することである。
実施形態の酸性ガス吸収剤は、下記一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物を少なくとも1種含有する。
Figure 2022119073000002
(Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~8の、ヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基を表し、
は、炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基または分岐状のアミノアルキル基を表し、
は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基または分岐状のアミノアルキル基を表し、Rのうち少なくともひとつは炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基である。
pは、それぞれ独立に、2~4の整数であり、qは、3~8の整数である。
一般式(1)および(2)中の環状骨格は、構成員として酸素原子を含んでいてもよい。)
また、実施形態の酸性ガス除去方法は、酸性ガスを含有するガスと、前記の酸性ガス吸収剤とを接触させて、前記酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去すること、を特徴とする。
そして、実施形態の酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと前記の酸性ガス吸収剤との接触によって、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより前記の酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、
前記の再生器で再生した前記の酸性ガス吸収剤を前記の吸収器にて再利用する酸性ガス除去装置である。
実施形態の酸性ガス除去装置の概略図。
以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態の酸性ガス吸収剤は、下記一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
Figure 2022119073000003
(Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~8の、ヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基を表し、
は、炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基または分岐状のアミノアルキル基を表し、
は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基または分岐状のアミノアルキル基を表し、Rのうち少なくともひとつは炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基である。
pは、それぞれ独立に、2~4の整数であり、qは、3~8の整数である。
一般式(1)および(2)中の環状骨格は、構成員として酸素を含んでいてもよい。)
従来より、アミノ化合物が有する立体障害は、二酸化炭素吸収時の生成物に対する影響が大きく、低反応熱を示す重炭酸イオンの生成に有利に働くことが知られている。
例えば、分岐構造を有するN-イソプロピルアミノエタノールは、二酸化炭素の吸収反応に対して低反応熱性を示すことが報告されている。
本発明者らは、立体障害の効果をさらに検討した結果、上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物(例えばN-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジン)が、従来の分岐構造を有さないN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンと比較して吸収性は同等でありながら、放出性が大きくなることを見出した。
このように、分岐状のアルコール基あるいは分岐状のアミノアルキル基がそれぞれの窒素原子に直接結合した上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物は、理由が定かではないがCOの放出がしやすくなっていると考えられる。
上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物は、例えば水などの溶媒に溶解させることで、酸性ガスの吸収能力の高い酸性ガス吸収剤を得ることができる。
以下の実施態様では、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明するが、本発明の実施形態に係る酸性ガス吸収剤は、硫化水素等、その他の酸性ガスに関しても同様の効果を得ることができる。
分岐状のヒドロキシアルキル基としては、たとえば、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシペンチル基、3-ヒドロキシペンチル基、4-ヒドロキシペンチル基、2-ヒドロキシヘキシル基、3-ヒドロキシヘキシル基、4-ヒドロキシヘキシル基、5-ヒドロキシヘキシル基、などが挙げられる。なお、溶解性の観点から分岐状ヒドロキシアルキル基として2-ヒドロキシプロピル基が好ましい。
分岐状のアミノアルキル基としては、たとえば、2-アミノプロピル基、2-アミノブチル基、3-アミノブチル基、2-アミノペンチル基、3-アミノペンチル基、4-アミノペンチル基、2-アミノヘキシル基、3-アミノヘキシル基、4-アミノヘキシル基、5-アミノヘキシル基、などが挙げられる。なお、溶解性の観点から分岐状アミノアルキル基として2-アミノプロピル基が好ましい。
のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。なお、上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物との二酸化炭素との反応性の観点からアルキル基としてチル基、エチル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
さらに、Rのアルキル基は、Si、O、N、S等のヘテロ原子を含有していてもよい。
上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシブチル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシブチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシペンチル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシペンチル)ピペラジン、N-(4-ヒドロキシペンチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、N-(4-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、N-(5-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、4-(2-ヒドロキシプロピル)ピペリジン、4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシブチル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシブチル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシペンチル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシペンチル)ピペリジン、4-(4-ヒドロキシペンチル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、4-(4-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、4-(5-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、N-(2-アミノプロピル)ピペラジン、N-(2,3-ジアミノプロピル)ピペラジン、N-(2-アミノブチル)ピペラジン、N-(3-アミノブチル)ピペラジン、N-(2-アミノペンチル)ピペラジン、N-(3-アミノペンチル)ピペラジン、N-(4-アミノペンチル)ピペラジン、N-(2-アミノ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(3-アミノ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(2-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(3-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(4-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(5-アミノヘキシル)ピペラジン、4-(2-アミノプロピル)ピペリジン、4-(2,3-ジアミノプロピル)ピペリジン、4-(2-アミノブチル)ピペリジン、4-(3-アミノブチル)ピペリジン、4-(2-アミノペンチル)ピペリジン、4-(3-アミノペンチル)ピペリジン、4-(4-アミノペンチル)ピペリジン、4-(2-アミノ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(3-アミノ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(2-アミノヘキシル)ピペリジン、4-(3-アミノヘキシル)ピペリジン、N-(4-アミノヘキシル)ピペリジン、4-(5-アミノヘキシル)ピペリジン、などが挙げられる。
特に、一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物において、Rが2-ヒドロキシプロピル基である酸性ガス吸収剤が好ましく、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジンおよび4-(2-ヒドロキシプロピルエチル)ピペリジンからなる群から選ばれたものがさらに好ましい。
なお、上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物としては、上記の群より選択された1種の化合物を用いることができ、または上記の群より選択された2種以上の化合物を混合したものを用いることも可能である。
酸性ガス吸収剤に含まれる上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物の含有量は、10~60質量%であることが好ましい。
一般に、アミン成分の濃度が高い方が単位容量当たりの二酸化炭素の吸収量、脱離量が多く、また二酸化炭素の吸収速度、脱離速度が速いため、エネルギー消費の面やプラント設備の大きさ、処理効率の面においては好ましい。
しかし、アミン成分の濃度が高すぎると、二酸化炭素吸収のための活性剤としての水が充分に機能しないことや、吸収液の粘度が上昇するなどの欠点が無視できなくなる。上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物の含有量が60質量%以下の場合、そのような性能の低下は見られない。また、上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物の含有量を10質量%以上とすることで、十分な二酸化炭素の吸収量、吸収速度を得ることができ、優れた処理効率を得ることができる。
上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物の含有量が10~60質量%の範囲にある酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素回収用として用いた場合、二酸化炭素吸収量および二酸化炭素吸収速度が高いだけでなく、二酸化炭素脱離量および二酸化炭素脱離速度も高いため、二酸化炭素の回収を効率的に行える点で有利である。
上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物の含有量は、より好ましくは20~50質量%である。
上記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物は、アルカノールアミン類と混合して使用することもできる。
アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-ジプロパノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、プロピルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ビス(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)アミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ-1-メチルエタノール、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、2-プロピルアミノエタノール、n-ブチルアミノエタノール、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、3-エチルアミノプロパノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
ピペラジン誘導体は、第2級アミン化合物であり、一般に、第2級アミノ基の窒素原子が二酸化炭素と結合し、カルバメートイオンを形成することで、反応初期段階における吸収速度の向上に寄与する。さらに第2級アミノ基の窒素原子は、これに結合した二酸化炭素を重炭酸イオン(HCO )に転換する役割を担っており、反応後半段階の速度向上に寄与する。
酸性ガス吸収剤に含まれるピペラジンの含有量は、1~20質量%であることが好ましい。酸性ガス吸収剤に含まれるピペラジンの含有量が1質量%未満であると、二酸化炭素吸収速度を向上させる効果を十分に得られないおそれがある。酸性ガス吸収剤に含まれるピペラジンの含有量が20質量%を超えると、ピペラジンが析出し、かえって反応性が低下するおそれがある。ピペラジンの含有量は、より好ましくは2~10質量%である。
酸性ガス吸収剤には、上記のアミン化合物および反応促進剤の他に、プラント設備の腐食を防止するためのリン酸系等の防食剤や、泡立ち防止のためのシリコーン系等の消泡剤や、酸性ガス吸収剤の劣化防止のための酸化防止剤等を含有していてもよい。
本実施形態に係る酸性ガス除去方法は、酸性ガスを含有する排気ガスと、上記の実施形態で説明したアミン化合物を溶媒に溶解させてなる酸性ガス吸収剤とを接触させ、酸性ガスを含む排気ガスから酸性ガスを吸収分離して除去するようにしたものである。
二酸化炭素の吸収分離工程の基本的な構成は、酸性ガス吸収剤に、二酸化炭素を含有する排気ガスを接触させて、酸性ガス吸収剤に二酸化炭素を吸収させる工程(二酸化炭素吸収工程)と、上記二酸化炭素吸収工程で得られた、二酸化炭素が吸収された酸性ガス吸収剤を加熱して、二酸化炭素を脱離して回収する工程(二酸化炭素分離工程)とを含む。
二酸化炭素を含むガスを、上記の酸性ガス吸収剤を含む水溶液に接触させる方法は特に限定されないが、例えば、酸性ガス吸収剤中に二酸化炭素を含むガスをバブリングさせて吸収する方法、二酸化炭素を含むガス気流中に酸性ガス吸収剤を霧状に降らす方法(噴霧ないしスプレー方式)、あるいは磁製や金属網製の充填材の入った吸収塔内で二酸化炭素を含むガスと酸性ガス吸収剤を向流接触させる方法などによって行われる。
二酸化炭素を含むガスを水溶液に吸収させる時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常室温から60℃以下で行われる。好ましくは50℃以下、より好ましくは20~45℃程度で行われる。
低温度で行うほど、酸性ガスの吸収量は増加するが、処理温度の下限値は、プロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定される。二酸化炭素吸収時の圧力は、通常ほぼ大気圧で行われる。吸収性能を高めるためより高い圧力まで加圧することもできるが、圧縮のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧下で行うのが好ましい。
ここで、二酸化炭素飽和吸収量は、酸性ガス吸収剤中の無機炭素量を赤外線式ガス濃度測定装置で測定した値であり、また、二酸化炭素吸収速度は、二酸化炭素の吸収を開始した時点から数分経過した時点において赤外線式二酸化炭素計を用いて測定した値である。
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤から二酸化炭素を分離し、純粋なあるいは高濃度の二酸化炭素を回収する方法としては、蒸留と同じく酸性ガス吸収剤を加熱して釜で泡立てて脱離する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製や金属網製の充填材の入った再生塔内で液界面を広げて加熱する方法などが挙げられる。これにより、カルバミン酸アニオンや重炭酸イオンから二酸化炭素が遊離して放出される。
二酸化炭素分離時の酸性ガス吸収剤温度は、通常70℃以上で行われ、好ましくは80℃以上、より好ましくは90~120℃程度で行うことができる。温度が高いほど酸性ガス回収量は増加するが、温度を上げると吸収液の加熱に要するエネルギーが増すため、その温度はプロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定される。二酸化炭素脱離時の圧力は通常、大気圧から2気圧で行われる。脱離性能を高めるためより低い圧力まで減圧することもできるが、減圧のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧以上で行うのが好ましい。
二酸化炭素を分離した後の酸性ガス吸収剤は、再び二酸化炭素吸収工程に送られ循環使用(リサイクル)される。また、二酸化炭素吸収の際に生じた熱は、一般的には水溶液のリサイクル過程において再生塔に注入される水溶液の予熱のために熱交換器で熱交換されて冷却される。
このようにして回収された二酸化炭素の純度は、通常、95~99体積%程度と極めて純度が高いものである。この純粋な二酸化炭素あるいは高濃度の二酸化炭素は、化学品あるいは高分子物質の合成原料、食品冷凍用の冷剤等として用いられる。その他、回収した二酸化炭素を、現在技術開発されつつある地下等へ隔離貯蔵することも可能である。
上述した工程のうち、酸性ガス吸収剤から二酸化炭素を分離して酸性ガス吸収剤を再生する工程が、最も多量のエネルギーを消費する部分である。従って、酸性ガス吸収剤の再生工程における消費エネルギーを低減することにより、二酸化炭素の吸収分離工程のコストを低減でき、排気ガスからの酸性ガス除去を、経済的に有利に行うことができる。
本実施形態によれば、上記の実施形態の酸性ガス吸収剤を用いることで、二酸化炭素脱離(再生工程)のために必要なエネルギーを低減することができる。このため、二酸化炭素の吸収分離工程を、経済的に有利な条件で行うことができる。
また、上述した実施形態に係るアミン化合物は、従来より酸性ガス吸収剤として用いられてきた2-アミノエタノール等のアルカノールアミン類と比較して、炭素鋼などの金属材料に対し、著しく高い耐腐食性を有している。したがって、このような酸性ガス吸収剤を用いた酸性ガス除去方法とすることで、例えばプラント建設において、高コストの高級耐食鋼を用いる必要がなくなり、コスト面で有利である。
本実施形態に係る酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと酸性ガス吸収剤とを接触させて前記ガスから酸性ガスを除去する吸収塔と、酸性ガスを吸収した前記酸性ガス吸収剤から酸性ガスを除去して再生する再生塔と、を有し、前記再生塔で再生した前記酸性ガス吸収剤を前記吸収塔で再利用する酸性ガス除去装置であって、前記酸性ガス吸収剤として、例えば上記の実施形態に係る酸性ガス吸収剤を用いたものである。
図1は、実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。この酸性ガス除去装置1は、酸性ガスを含むガス(以下、排気ガスと示す)と酸性ガス吸収剤とを接触させ、この排気ガスから酸性ガスを吸収させて除去する吸収塔2と、酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、酸性ガス吸収剤を再生する再生塔3と、を備えている。
以下、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明する。
図1に示すように、火力発電所から排出される燃焼排ガス等の、二酸化炭素を含む排気ガスが、ガス供給口4を通って吸収塔2下部へ導かれる。この排気ガスは、吸収塔2に押し込められ、吸収塔2上部の酸性ガス吸収剤供給口5から供給された酸性ガス吸収剤と接触する。酸性ガス吸収剤としては、上述した実施形態に係る酸性ガス吸収剤を使用する。
酸性ガス吸収剤のpH値は、少なくとも9以上に調整すればよいが、排気ガス中に含まれる有害ガスの種類、濃度、流量等によって、適宜最適条件を選択することがよい。
また、この酸性ガス吸収剤には、上記のアミン系化合物、および水などの溶媒の他に、二酸化炭素の吸収性能を向上させる含窒素化合物、酸化防止剤、pH調整剤等、その他化合物を任意の割合で含有していてもよい。
このように、排気ガスが酸性ガス吸収剤と接触することで、この排気ガス中の二酸化炭素が酸性ガス吸収剤に吸収され除去される。二酸化炭素が除去された後の排気ガスは、ガス排出口6から吸収塔2外部に排出される。
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤は、熱交換器7、加熱器8に送液され、加熱された後、再生塔3に送液される。再生塔3内部に送液された酸性ガス吸収剤は、再生塔3の上部から下部に移動し、この間に、酸性ガス吸収剤中の二酸化炭素が脱離し、酸性ガス吸収剤が再生する。
再生塔3で再生した酸性ガス吸収剤は、ポンプ9によって熱交換器7、吸収液冷却器10に送液され、酸性ガス吸収剤供給口5から吸収塔2に戻される。
一方、酸性ガス吸収剤から分離された二酸化炭素は、再生塔3上部において、還流ドラム11から供給された還流水と接触し、再生塔3外部に排出される。
二酸化炭素が溶解した還流水は、還流冷却器12で冷却された後、還流ドラム11において、二酸化炭素を伴う水蒸気が凝縮した液体成分と分離され、この液体成分は、回収二酸化炭素ライン13により二酸化炭素回収工程に導かれる。一方、二酸化炭素が分離された還流水は、還流水ポンプ14で再生塔3に送液される。
本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、二酸化炭素の吸収特性および脱離特性に優れた酸性ガス吸収剤を用いることで、効率の高い二酸化炭素の吸収除去を行うことが可能となる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明したが、上記の実施例は、本発明の一例として挙げたものであり、本発明を限定するものではない。
また、上記の各実施形態の説明では、酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去装置および酸性ガス除去方法において、本発明の説明に直接必要とされない部分等についての記載を省略したが、これらについて必要とされる各要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、本発明の趣旨に反しない範囲で当業者が適宜設計変更しうる全ての酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去装置および酸性ガス除去方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
以下、本発明について実施例、比較例を参照してさらに詳細な説明を行うが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
N-(3-ヒドロキシブチル)ピペラジン30質量%を水に溶解させ、50mlの水溶液(以下、吸収液と示す。)とした。この吸収液を試験管に充填して40℃に加熱し、二酸化炭素(CO)10体積%、窒素(N)ガス90体積%含む混合ガスを流速500mL/minで通気して、試験管出口でのガス中の二酸化炭素(CO)濃度を赤外線式ガス濃度測定装置(株式会社 島津製作所製、商品名「CGT-700」)を用いて測定し、吸収性能を評価した。試験管内のアミン水溶液へのガス導入口には、1/8インチのテフロン(登録商標)チューブ(内径:1.59mm、外径:3.17mm)を用いて行った。
また、上記のように混合ガスを40℃で吸収させた後の水溶液を70℃に加熱し、前記ガスを流速500mL/minで通気し、吸収液中のCO濃度を赤外線式ガス濃度測定装置を用いて測定して回収性能を評価した。なお、40℃における吸収液の二酸化炭素吸収量と70℃における吸収液の二酸化炭素吸収量の差を回収量と定めた。
<実施例2>
N-(3-ヒドロキシブチル)ピペラジンに代えて、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液(水溶液)を調製し、実施例1と同様の装置を用いて評価した。
<実施例3>
ピペラジン5質量%、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジン45質量%からなる吸収液を用いる以外は、実施例1と同様の装置を用いて評価した。
<比較例1>
N-(3-ヒドロキシブチル)ピペラジンに代えて、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液(水溶液)を調製し、実施例1と同様の装置を用いて評価した。
下記の表1から明らかな通り、実施例1~3では比較例に比べてCO回収量が多く、そして、反応熱が小さいことが認められた。
Figure 2022119073000004
以上述べた実施形態によれば、二酸化炭素等の酸性ガスの回収量を多くすることができる。
1…酸性ガス除去装置、2…吸収塔、3…再生塔、4…ガス供給口、5…酸性ガス吸収剤供給口、6…ガス排出口、7…熱交換器、8…加熱器、9…ポンプ、10…吸収液冷却器、11…還流ドラム、12…還流冷却器、13…回収二酸化炭素ライン、14…還流水ポンプ

Claims (8)

  1. 下記の一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする、酸性ガス吸収剤。
    Figure 2022119073000005

    (Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~8の、ヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基を表し、
    は、炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基または分岐状のアミノアルキル基を表し、
    は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基または分岐状のアミノアルキル基を表し、Rのうち少なくともひとつは炭素数1~8の、分岐状のヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基である。
    pは、それぞれ独立に、2~4の整数であり、qは、3~8の整数である。
    一般式(1)および(2)中の環状骨格は、構成員として酸素原子を含んでいてもよい。)
  2. 前記のヘテロ環状アミン化合物は、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシブチル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシブチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシペンチル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシペンチル)ピペラジン、N-(4-ヒドロキシペンチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、N-(3-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、N-(4-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、N-(5-ヒドロキシヘキシル)ピペラジン、4-(2-ヒドロキシプロピル)ピペリジン、4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシブチル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシブチル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシペンチル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシペンチル)ピペリジン、4-(4-ヒドロキシペンチル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(2-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、4-(3-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、4-(4-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、4-(5-ヒドロキシヘキシル)ピペリジン、N-(2-アミノプロピル)ピペラジン、N-(2,3-ジアミノプロピル)ピペラジン、N-(2-アミノブチル)ピペラジン、N-(3-アミノブチル)ピペラジン、N-(2-アミノペンチル)ピペラジン、N-(3-アミノペンチル)ピペラジン、N-(4-アミノペンチル)ピペラジン、N-(2-アミノ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(3-アミノ-2-メチルブチル)ピペラジン、N-(2-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(3-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(4-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(5-アミノヘキシル)ピペラジン、4-(2-アミノプロピル)ピペリジン、4-(2,3-ジアミノプロピル)ピペリジン、4-(2-アミノブチル)ピペリジン、4-(3-アミノブチル)ピペリジン、4-(2-アミノペンチル)ピペリジン、4-(3-アミノペンチル)ピペリジン、4-(4-アミノペンチル)ピペリジン、4-(2-アミノ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(3-アミノ-2-メチルブチル)ピペリジン、4-(2-アミノヘキシル)ピペリジン、4-(3-アミノヘキシル)ピペリジン、N-(4-アミノヘキシル)ピペリジンおよび4-(5-アミノヘキシル)ピペリジンからなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の酸性ガス吸収剤。
  3. 前記一般式(1)または(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物において、Rが2-ヒドロキシプロピル基である、請求項1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
  4. 前記ヘテロ環状化合物は、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジンおよび4-(2-ヒドロキシプロピルエチル)ピペリジンからなる群から選ばれたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤。
  5. 前記ヘテロ環状アミン化合物の含有量が10~60質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤。
  6. さらにピペラジンを含有してなり、前記ピペラジンの含有量が5~20質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤。
  7. 酸性ガスを含有するガスと、請求項1~6のいずれか1項記載の酸性ガス吸収剤とを接触させて、前記酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去することを特徴とする、酸性ガスの除去方法。
  8. 酸性ガスを含有するガスと請求項1~6のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤との接触によって、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより前記の酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
    この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、
    前記の再生器で再生した前記の酸性ガス吸収剤を前記の吸収器にて再利用する酸性ガス除去装置である、酸性ガス除去装置。
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