JP2022117956A - 非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents

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Kenta Kawai
佳映 宮本
Kae Miyamoto
大河 白石
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泰弘 吉田
Yasuhiro Yoshida
昌宏 村山
Masahiro Murayama
智也 松井
Tomoya Matsui
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Abstract

【課題】非水電解質二次電池を構成した場合に、低SOCでの出力特性を向上させることができる非水電解質二次電池用正極活物質を提供する。【解決手段】層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含む非水電解質二次電池用正極活物質である。二次粒子の平滑度が0.73より大きく、二次粒子の円形度が0.83より大きい。二次粒子は、コバルトを含み、粒子表面からの深さが150nmの第1領域と、粒子表面からの深さが10nm以下の第2領域とを有し、リチウム以外の金属元素の総モル数に対する、コバルトのモル数の比が、第1領域よりも第2領域の方が大きい。【選択図】なし

Description

本開示は、非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法に関する。
電気自動車等の大型動力機器用途の非水電解質二次電池用電極活物質には、高い出力特性が求められている。高い出力特性を得るには、多くの一次粒子が凝集した二次粒子の構造を有する正極活物質が有効とされている。これに関連して、正極活物質として一次粒子が凝集して略球状に形成された二次粒子の粒度分布を狭くする技術が提案され、電池の高容量化が可能とされている(例えば、特許文献1参照)。さらに共沈法により球形水酸化ニッケルコバルトアルミニウム前駆体材料を製造する技術が提案され、サイクル特性が向上するとされている(例えば、特許文献2参照)。
一方、正極活物質の表面にCoを含む被覆層を設ける技術が提案され、電池特性を維持しながら保存安定性(耐候性)が向上するとされている(例えば、特許文献3参照)。
国際公開第2013/183711号 国際公開第2016/180288号 特開2018-14208号公報
本開示の一態様は、非水電解質二次電池を構成した場合に、低充電状態(低SOC)での出力特性を向上させることができる非水電解質二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
第一態様は、層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含む非水電解質二次電池用正極活物質である。非水電解質二次電池用正極活物質は、二次粒子の平滑度が0.73より大きく、二次粒子の円形度が0.83より大きい。二次粒子は、コバルトを含み、粒子表面からの深さが150nmの第1領域と、粒子表面からの深さが10nm以下の第2領域とを有し、リチウム以外の金属元素の総モル数に対する、コバルトのモル数の比が、前記第1領域よりも前記第2領域の方が大きい。
第二態様は、層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含み、二次粒子の平滑度が0.73より大きく、二次粒子の円形度が0.83より大きい正極活物質原料を準備することと、正極活物質原料と、コバルト化合物とを接触させてコバルト付着物を得ることと、コバルト付着物を、500℃以上1100℃未満の温度で熱処理して熱処理物を得ることと、を含む非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法である。
第三態様は、前記非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質リチウムイオン二次電池である。
本開示に係る一態様によれば、非水電解質二次電池を構成した場合に、低SOCでの出力特性を向上させることができる非水電解質二次電池用正極活物質を提供することができる。
正極活物質に含まれる二次粒子の模式断面図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための、非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法を例示するものであって、本開示は、以下に示す非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法に限定されない。
非水電解質二次電池用正極活物質
非水電解質二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」ともいう)は、層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含んで構成される。正極活物質を構成する二次粒子の平滑度は0.73より大きく、二次粒子の円形度は0.83より大きくなっている。二次粒子は組成にコバルトを含み、例えば、その粒子表面にコバルトを含む付着物を有している。コバルトを含む付着物を有する二次粒子は、その粒子表面からの深さが150nmの第1領域と、粒子表面からの深さが10nm以下の第2領域とを有し、組成におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対する、コバルトのモル数の比が、第1領域よりも第2領域の方が大きくなっている。
正極活物質を構成する二次粒子が、平滑度および円形度で特定される特定の形状を有していることで、例えば、正極中において二次粒子と導電助剤などの粒子が接触する面積が大きくなるので、二次粒子と導電助剤間の界面での抵抗が低減すると考えられる。また、二次粒子の表面にコバルトを含む付着物を付着させる場合にも、付着させる化合物が偏りなく付着しやすくなり、抵抗成分を低減することができる。正極活物質における抵抗成分が低減することにより非水電解質二次電池の出力特性を向上させることができる。さらに正極形成時の加圧成形による二次粒子の割れを低減できる。これは、例えば、加圧成形の圧力が粒子全体に均一にかかるためと考えることができる。このような正極活物質を構成する二次粒子の形状に由来する効果は、例えば、国際公開第2021/020531号に具体的に記載されている。
正極活物質を構成するリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子では、粒子の表面近傍においてコバルトが偏在して、その濃度が高くなっている。これにより、かかる正極活物質を用いて電池を構成する場合に出力特性を向上させることができる。特に低SOCにおける出力特性を改善することができる。粒子の表面近傍におけるコバルトの存在形態は明確ではないが、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の表面近傍にコバルトが固溶している形態、コバルトを含む化合物が母材となるリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の表面を被覆している形態等が考えられる。コバルトが二次粒子の表面近傍に偏在することによる低SOCでの出力特性の向上効果は、リチウム遷移金属複合酸化物の組成におけるニッケルの含有比率が高いとより効果的に低SOCでの出力特性が向上する傾向がある。これは例えば、母材となるリチウム遷移金属化合物と表面近傍に存在する化合物との電位差により、低SOCにおいてもリチウムの移動や拡散が阻害されることなく行われることが考えられる。
正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含んで構成される。正極活物質を構成する二次粒子の平滑度は0.73より大きくてよく、且つ二次粒子の円形度は0.83より大きくてよい。二次粒子は、例えば50個以上の一次粒子が集合して形成される。正極活物質は、後述する正極活物質の製造方法で製造されるものであってもよい。
二次粒子の平滑度は、例えば0.73より大きくてよく、好ましくは0.74以上、より好ましくは0.76以上、0.80以上、または0.83以上である。なお、平滑度の上限は1である。ここで平滑度は、二次粒子の輪郭形状における凹凸の程度を表す指数であり、平滑な形状であるほど1に近づき、凹凸の度合いが大きいほど0に近づく。なお、上記の平滑度は以下のようにして求められる。対象の二次粒子の輪郭形状について画像処理ソフトウエアのフィッティング機能を用いて、対象の二次粒子の輪郭形状と面積が等しい近似楕円を求める。その近似楕円の長径aおよび短径bから、Gauss-Kummerの公式を用いて近似楕円の全周長Lが算出される。二次粒子の輪郭形状の全周長をLopとし、近似した楕円の全周長をLとすると、平滑度は、二次粒子の輪郭形状の全周長(Lop)に対する、近似楕円の全周長(L)の比(L/Lop)として定義される。二次粒子の平滑度の算出に用いられる画像の拡大倍率は、二次粒子の粒径に応じて適宜選択すればよい。拡大倍率は、例えば1000倍以上10000倍以下であってよく、好ましくは1000倍以上6000倍以下であり、より好ましくは2000倍以上6000倍以下である。
具体的には、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子像(倍率;4000倍)を撮影し、輪郭が確認できる20個から40個の二次粒子について、それぞれ近似楕円を求めて長径aおよび短径bを得る。また輪郭形状の全周長Lopを測定する。長径aおよび短径bから下記の近似式に基づいて近似した楕円の全周長Lを算出して個々の二次粒子について比(L/Lop)を求め、それらの算術平均値として二次粒子の平滑度が算出される。なお、二次粒子の輪郭が確認できるとは、画像上で二次粒子の輪郭全体をトレースできることを意味する。
Figure 2022117956000001
二次粒子の円形度は、例えば0.83より大きくてよく、好ましくは0.84以上、より好ましくは0.86以上、または0.90以上である。なお、円形度の上限は1である。円形度は、二次粒子の輪郭形状の円らしさを表す指数であり、円に近いほど1に近づく。円形度は、二次粒子の輪郭形状における粒子画像面積と同じ面積を有する円の直径を円相当径とする場合に、二次粒子の輪郭形状の全周長(L)に対する円相当径から算出される円周長(L)の比(L/L)として定義される。
具体的には、乾式粒子画像分析装置(Morphologi G3S:Malvern社;レンズ倍率20倍)を用いて、約10000個の粒子について個々の比(L/L)を算出し、それらの算術平均値として二次粒子の円形度が求められる。
二次粒子の粒度分布は、例えば0.9未満であってよく、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.8以下である。粒度分布は、二次粒子群における個々の二次粒子が有する粒径のばらつきを示す指数であり、値が小さいほど粒径のばらつきが小さいことを表す。二次粒子の粒度分布が前記範囲内であると、二次粒子表面に別元素を付着させる場合に、付着物が均一に付着しやすくなる。本明細書において粒度分布は、以下のように定義される。体積基準の累積粒度分布における小径側からの累積10%、50%および90%に対応する粒径をそれぞれ10%粒径D10、50%粒径D50および90%粒径D90とする場合に、D90とD10の差をD50で除した値を本明細書における粒度分布とする。すなわち、二次粒子の粒度分布は下式で定義される。
粒度分布=(D90-D10)/D50
ここで体積基準の累積粒度分布は、レーザー回折式粒径分布測定装置を用いて湿式条件で測定される。
二次粒子の体積平均粒径は、例えば1μm以上30μm以下であってよく、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また好ましくは12μm以下、より好ましくは8μm以下である。二次粒子の体積平均粒径が前記範囲内であると、流動性が良く、二次電池を構成する際に出力がより向上する場合がある。ここで体積平均粒径は、体積基準の累積粒度分布における小径側からの累積50%に対応する50%粒径D50である。
二次粒子は複数の一次粒子が集合して形成される。一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、例えば0.1μm以上1.5μm以下であってよく、好ましくは0.12μm以上、より好ましくは0.15μm以上、0.2μm以上、または0.3μm以上である。また一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、好ましくは1.2μm以下、より好ましくは1.0μm以下、0.6μm以下、または0.4μm以下である。一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径が前記範囲内であると電池を構成する際に出力が向上する場合がある。ここで一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径は、以下のようにして測定される。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、粒径に応じて1000倍から15000倍の範囲の倍率で、二次粒子を構成する一次粒子を観察する。輪郭が確認できる一次粒子を50個選択し、選択された一次粒子の輪郭から画像処理ソフトウエアを用いて球換算径を算出し、得られた球換算径の算術平均値として一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径が求められる。一態様において、一次粒子は、その表面に一次粒子より小さい平均粒径を有する粒子が付着していてもよい。また一態様において、一次粒子は、一次粒子より小さい平均粒径を有する粒子の集合体であってもよい。前述の一次粒子より小さい平均粒径を有する粒子の平均粒径は、上記と同様に電子顕微鏡観察に基づいて測定されてよい。一次粒子の輪郭が確認できるとは、画像上で一次粒子の輪郭全体をトレースできることを意味する。
二次粒子は、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMに対する比D50/DSEMが例えば、2.5以上であってよい。比D50/DSEMは、例えば2.5以上150以下であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、または15以上である。また比D50/DSEMは、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、30以下、または20以下である。
正極活物質を構成するリチウム遷移金属複合酸化物を含む二次粒子は、その表面近傍に、粒子表面からの深さが150nm近傍である第1領域と粒子表面からの深さが10nm以下である第2領域とを有する。正極活物質では、その組成におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対する、コバルトのモル数の比(以下、単に「コバルト比」ともいう)が、第1領域よりも第2領域において大きくなっている。ここで第2領域の粒子表面からの深さは、例えば10nm以下であるが、10nm近傍であってよい。
二次粒子の断面画像において第1領域及び第2領域を選択する方法を、図面を参照して説明する。図1は二次粒子の模式断面図である。第1領域10は、例えば、以下のようにして選択される。二次粒子100の断面画像において粒子表面30に対する接線を設定し、次いで、その接点を通り、接線に直交する垂線を引き、その垂線上の点であって粒子表面30から粒子内部方向に150nmの距離にある点の近傍を第1領域10とする。同様に第2領域20は、垂線上の点であって粒子表面30から粒子内部方向に10nmの距離にある点の近傍として選択される。ここで、近傍とは、組成分析に要する面積の領域を包含することを意図している。第1領域は粒子表面からの深さが、例えば140nmから160nmであってもよく、第2領域は粒子表面からの深さが、例えば5nmから15nmであってもよい。
第1領域のコバルト比は、例えば0以上であってよく、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.025以上、または0.03以上である。第1領域のコバルト比は、例えば0.5以下であってよく、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下、または0.05以下である。また、第2領域のコバルト比は、例えば0.03以上であってよく、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上である。第2領域のコバルト比は、例えば0.9以下であってよく、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは、0.3以下、または0.2以下である。第2領域のコバルト比から第1領域のコバルト比を差し引いた値は、例えば0.02以上であってよく、好ましくは0.03以上0.85以下または0.05以上0.50以下であってよい。また好ましくは0.03以上、0.05以上、または0.1以上であってよく、0.85以下、0.5以下、0.3以下、または0.2以下であってよい。また、第1領域のコバルト比で第2領域のコバルト比を除した値は、例えば2以上であってよく、好ましくは2.2以上500以下、より好ましくは2.5以上100以下、さらに好ましくは3以上10以下であってよい。特定の組成におけるコバルト比が上述の範囲内であることで、低SOCでの出力特性が改善できる傾向がある。
粒子表面からの深さが150nm近傍である第1領域におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対する、ニッケルのモル数の比(以下、単に「ニッケル比」ともいう)は、例えば0.2以上であってよく、好ましくは0.33以上、より好ましくは0.6以上、0.8以上、または0.9以上である。第1領域のニッケル比は、例えば1以下であってよく、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.95以下である。また、粒子表面からの深さが10nm以下である第2領域におけるニッケル比は、例えば0.06以上であってよく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.33以上、0.5以上、または0.6以上である。第2領域のニッケル比は、例えば0.98以下であってよく、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下、0.85以下、または0.8以下である。さらに、第2領域のニッケル比を第1領域のニッケル比で除した値は、例えば1未満であってよく、好ましくは0.9以下または0.85以下である。また、第2領域のニッケル比を第1領域のニッケル比で除した値は、例えば0.02以上であってよく、好ましくは0.03以上、または0.07以上である。
第1領域及び第2領域におけるニッケル比及びコバルト比は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の断面において、SEM-EDXを測定することで算出することができる。
リチウム遷移金属複合酸化物粒子では、粒子表面から粒子内部にかけてコバルト比が連続的または不連続的に減少していてよい。第1領域及び第2領域におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比の差を、第1領域及び第2領域の表面からの深さの差で除した値の絶対値であるコバルトの濃度傾斜は、例えば、0.0000007(nm-1)より大きく0.005(nm-1)未満であり、好ましくは0.00005(nm-1)以上0.003(nm-1)以下、または0.0001(nm-1)以上0.002(nm-1)以下である。また好ましくは、0.00005(nm-1)以上、0.0001(nm-1)以上、または0.0005(nm-1)以上であってよく、0.004(nm-1)以下、0.003(nm-1)以下、または0.002(nm-1)以下であってよい。コバルトの濃度傾斜が上述の範囲内であることで、低SOCでの出力がより改善される傾向がある。具体的に、コバルトの濃度傾斜は、第2領域におけるコバルト比から第1領域におけるコバルト比を差し引いた値を、第1領域の表面からの深さから第2領域の表面からの深さを差し引いた値で除して求められる。
正極活物質の組成は、後述する製造方法におけるコバルト化合物を付着する前のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に付着させたコバルト化合物を加味した組成と考えることができる。
正極活物質の組成におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、例えば0より大きく1未満であってよく、好ましくは0.3以上1未満であってよい。リチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比の下限は、好ましくは0.33以上であってよく、より好ましくは0.6以上、または0.8以上であってよい。リチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比の上限は、好ましくは0.98以下であってよく、より好ましくは0.95以下であってよい。ニッケルのモル数の比が上述した範囲であると、非水電解質二次電池において、高電圧時の充放電容量とサイクル特性の両立できる傾向がある。
正極活物質の組成におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、例えば0より大きく0.5以下であってよく、充放電容量の点から、好ましくは0.01以上0.4以下であってよく、より好ましくは0.02以上0.3以下であってよく、さらに好ましくは0.03以上0.2以下、特に好ましくは0.04以上0.1以下であってよい。リチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比が上述の範囲にあることで、低SOCでの出力がより改善される傾向がある。
正極活物質の組成は、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の第一金属元素Mを更に含んでいてもよい。正極活物質の組成において、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するMのモル数の比は、例えば0以上0.5以下であってよく、安全性の点から、好ましくは0.01以上0.3以下であってよく、より好ましくは0.02以上0.2以下であってよく、さらに好ましくは0.03以上0.1以下であってよい。
正極活物質の組成は、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、ルテチウム(Lu)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)等からなる群から選択される少なくとも1種の第二金属元素Mを更に含んでいてもよい。また第二金属元素Mは、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。正極活物質の組成において、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するMのモル数の比は、例えば0以上0.1以下であってよく、好ましくは0.001以上0.05以下であってよい。
正極活物質の組成におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するリチウムのモル数の比は、例えば0.95以上1.5以下であってよく、好ましくは1以上1.3以下であってよく、より好ましくは1.03以上1.25以下であってよい。
正極活物質の組成において、ニッケル、コバルト及びマンガンのモル比は、例えば、ニッケル:コバルト:マンガン=(0.3から1未満):(0.01から0.4):(0.01から0.3)であってよく、好ましくは(0.33から0.98):(0.02から0.3):(0.02から0.2)であってよく、より好ましくは、(0.6から0.98):(0.03から0.2):(0.03から0.1)であってよい。
正極活物質の組成は、例えば下記式(1)で表されてよい。
LiNiCo (1)
0.95≦p≦1.5、0<x<1、0<y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦w≦0.1、x+y+z+w≦1を満たす。MはAl及びMnからなる群より選択される少なくとも1種であり、MはB、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Lu、Ta、W及びBiからなる群より選択される少なくとも1種である。x、y、zおよびwは、0.3≦x<1、0.01≦y≦0.4、0.01≦z≦0.3、0≦w≦0.1を満たしてよく、0.33≦x<0.98、0.02≦y≦0.3、0.02≦z≦0.2、0≦w≦0.1、または、0.6≦x≦0.98、0.03≦y≦0.2、0.03≦z≦0.1、0.001≦w≦0.05を満たしてよい。pは、1≦p≦1.3を満たしてよい。
正極活物質に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物は、非水電解質二次電池における初期効率の観点から、X線回折法により求められるニッケル元素のディスオーダーが4.0%以下であることが好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。ここで、ニッケル元素のディスオーダーとは、本来のサイトを占有すべき遷移金属イオン(ニッケルイオン)の化学的配列無秩序(chemical disorder)を意味する。層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物においては、Wyckoff記号で表記した場合に3bで表されるサイト(3bサイト、以下同様)を占有すべきアルカリ金属イオンと3aサイトを占有すべき遷移金属イオンの入れ替わりが代表的である。ニッケル元素のディスオーダーが小さいほど、初期効率が向上するので好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物におけるニッケル元素のディスオーダーは、X線回折法により求めることができる。リチウム遷移金属複合酸化物について、CuKα線によりX線回折スペクトルを測定する。組成モデルを(Li1-dNi)(NiCoMn)O(x+y+z=1)とし、得られたX線回折スペクトルに基づいて、リートベルト解析により構造最適化を行う。構造最適化の結果として算出されるdの百分率をニッケル元素のディスオーダーの値とする。
正極活物質の製造方法
正極活物質の製造方法は、例えば、層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含み、二次粒子の平滑度が0.73より大きく、二次粒子の円形度が0.83より大きい正極活物質原料を準備する正極活物質原料準備工程と、正極活物質原料と、コバルト化合物とを接触させてコバルト付着物を得るコバルト付着工程と、コバルト付着物を、500℃以上1100℃未満の温度で熱処理して熱処理物を得る付着物熱処理工程と、を含んでいてよい。
また、正極活物質の製造方法における正極活物質原料準備工程は、例えば、ニッケルを含む複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含み、二次粒子の平滑度が0.74より大きいニッケル複合酸化物を準備する複合酸化物準備工程と、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得るリチウム混合工程と、リチウム混合物を熱処理して、ニッケルを含み層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を得る合成工程と、を含んでいてよい。準備される正極活物質原料は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含む。二次粒子の平滑度は0.73より大きくてよい。二次粒子の円形度は0.83より大きくてよい。
さらに正極活物質の製造方法における正極活物質原料準備工程は、ニッケルイオンを含む第一溶液を準備することと、錯イオン形成因子を含む第二溶液を準備することと、pHが10以上13.5以下の範囲にある液媒体を準備することと、液媒体に、第一溶液および第二溶液を別々に且つ同時に供給しつつ、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む重合体を供給して、pHが10以上13.5以下の範囲に維持される反応溶液を得ることと、反応溶液からニッケルを含む複合水酸化物を得ることと、複合水酸化物を熱処理して、ニッケルを含む複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含むニッケル複合酸化物を得ることと、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得ることと、リチウム混合物を熱処理することと、を含んでいてよい。
正極活物質原料準備工程
複合酸化物準備工程
複合酸化物準備工程では、ニッケルを含む複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含むニッケル複合酸化物を準備する。ニッケル複合酸化物を含む二次粒子の平滑度は0.74より大きくてよい。ニッケル複合酸化物は、市販品から適宜選択して準備してもよく、後述するニッケル複合酸化物の製造方法によって、製造して準備してもよい。準備されるニッケル複合酸化物の詳細については後述する。
リチウム混合工程
リチウム混合工程では、準備されるニッケル複合酸化物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る。混合方法としては、例えば、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物とを撹拌混合機等で乾式混合する方法、ニッケル複合酸化物のスラリーを調製し、ボールミル等の混合機で湿式混合する方法が挙げられる。リチウム化合物としては、例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、これらの混合物が挙げられる。
リチウム混合物におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するリチウムのモル数の比(リチウム比ともいう)は、例えば0.95以上1.5以下であってよく、好ましくは1.0以上1.30以下である。リチウム比が0.90以上であると副生成物の生成が抑制される傾向がある。またリチウム比が1.5以下であるとリチウム混合物の表面に存在するアルカリ成分量の増加が抑制され、アルカリ成分の潮解性による水分吸着が抑制されて、ハンドリング性が向上する傾向がある。
合成工程
合成工程では、リチウム混合物を熱処理して、ニッケルを含み層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を得る。リチウム遷移金属複合酸化物は一次粒子に含まれ、一次粒子が複数集合してなる二次粒子が正極活物質原料に含まれる。合成工程においては、リチウム化合物に含まれるリチウムがニッケル複合酸化物中に拡散することにより、リチウム遷移金属複合酸化物が得られてよい。
熱処理温度は、例えば600℃以上990℃以下であってよく、好ましくは650℃以上960℃以下である。熱処理温度が600℃以上であると未反応リチウム成分の増加が抑制される傾向がある。熱処理温度が990℃以下であると生成するリチウム遷移金属複合酸化物の分解が抑制される傾向がある。熱処理時間は最高温度を保持する時間として、例えば4時間以上であってよい。熱処理の雰囲気は、酸素存在下であってよく、好ましくは10体積%以上100体積%以下の酸素を含有する雰囲気である。
正極活物質原料準備工程においては、合成工程後、必要に応じて、得られる熱処理物に粗砕、粉砕、乾式篩い等の処理を行ってよい。
正極活物質原料準備工程で得られる正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、組成にニッケルを含み、層状構造を有していてよい。リチウム遷移金属複合酸化物は、少なくともLiとNi等の遷移金属とを含んでいてよく、AlおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の第一金属元素をさらに含んでいてもよい。また、リチウム遷移金属複合酸化物は、これらに加えて、B、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Lu、Ta、W及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の第二金属元素をさらに含んでいてよい。第二金属元素は、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の組成において、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、例えば、0より大きく、好ましくは0.3以上である。リチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、0.33以上、または0.6以上であってよい。またリチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は例えば、1未満であり、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.95以下である。ニッケルのモル数の比が上述した範囲であると、非水電解質二次電池において、高電圧時の充放電容量とサイクル特性の両立できる傾向がある。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の組成において、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上であり、さらに好ましくは0.03以上であり、特に好ましくは0.04以上である。またリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は例えば、0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下、または0.1以下であってよい。コバルトのモル数の比が上述した範囲であると、非水電解質二次電池において、高電圧時において充放電容量がより大きくできる場合がある。またコバルトのモル数の比が上述した範囲であると、低SOCにおける出力をより改善できる傾向がある。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の組成において、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上である。またリチウム以外の金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は例えば、0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、または0.1以下である。マンガンおよびアルミニウムの総モル数の比が上述した範囲内であると、非水電解質二次電池において、充放電容量と安全性の両立ができやすい傾向がある。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の組成における、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するリチウムのモル数の比は、例えば、0.95以上、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.03以上、さらに好ましくは1.05以上である。またリチウム以外の金属元素の総モル数に対するリチウムのモル数の比は例えば、1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.2以下である。リチウムのモル数の比が0.95以上であると、得られるリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質を用いた非水電解質二次電池における正極表面の界面抵抗が抑制されるため、非水電解質二次電池の出力が向上する傾向がある。一方、リチウムのモル数の比が1.5以下であると、正極活物質を非水電解質二次電池の正極に用いる場合の初期放電容量が向上する傾向がある。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の組成において、ニッケル、コバルトおよびマンガンのモル数の比は、例えば、ニッケル:コバルト:マンガン=(0.3から1未満):(0.01から0.4):(0.01から0.3)であってよく、好ましくは(0.33から0.98):(0.02から0.3):(0.02から0.2)であり、より好ましくは(0.6から0.98):(0.03から0.2):(0.03から0.1)である。リチウム遷移金属複合酸化物がニッケルに加えて、コバルト並びにマンガンおよびアルミニウムを含む場合、ニッケル、コバルトおよび(マンガン+アルミニウム)のモル数の比は、例えば、ニッケル:コバルト:(マンガン+アルミニウム)=(0.3から1未満):(0.01から0.4):(0.01から0.4)であり、好ましくは(0.33から0.98):(0.02から0.3):(0.02から0.2)である。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の組成において、リチウム以外の金属元素の総モル数に対する第二金属元素の総モル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.003以上である。またリチウム以外の金属元素の総モル数に対する第二金属元素の総モル数の比は例えば、0.1以下であり、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下である。
正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物を組成式として表すと、例えば下記式(2)で表されてよい。リチウム遷移金属複合酸化物は、層状構造を有していてよく、六方晶系の結晶構造を有するものであってよい。
Lip1Nix1Coy1 z1 w1 (2)
ここで、p1、x1、y1、z1およびw1は、0.95≦p1≦1.5、0.3≦x1<1、0≦y1≦0.5、0≦z1≦0.5、0≦w1≦0.1、x1+y1+z1+w1≦1を満たす。好ましくは、0.33≦x1≦0.98、0.01≦y1≦0.4、0.01≦z1<0.3、0≦w1≦0.1であり、より好ましくは、0.6≦x1≦0.98、0.03≦y1≦0.2、0.03≦z1≦0.1、0.001≦w1≦0.05である。
は、MnおよびAlの少なくとも一方を示してよい。MはB、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Lu、Ta、W及びBiからなる群から選択される少なくとも1種を示してよく、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種を示してよい。
正極活物質原料の50%粒径D50は、例えば1μm以上30μm以下であり、1.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、また出力密度の観点から10μm以下が好ましく、5.5μm以下がより好ましい。
正極活物質原料の体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90の10%粒径D10に対する比は、粒度分布の広がりを示し、値が小さいほど粒子の粒径がそろっていることを示す。D90/D10は、例えば4以下であってよく、出力密度の観点から、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。D90/D10の下限は、例えば1.2以上であってよい。
コバルト付着工程
コバルト付着工程では、準備した正極活物質原料とコバルト化合物とを接触させて、正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にコバルト化合物が付着したコバルト付着物を得る。正極活物質原料とコバルト化合物との接触は、乾式で行っても、湿式で行ってもよい。乾式で行う場合、例えば高速せん断ミキサー等を用いて、正極活物質原料とコバルト化合物とを混合して、これらの接触を行うことができる。コバルト化合物としては、例えば、水酸化コバルト、酸化コバルト、炭酸コバルト等を挙げることができる。
湿式で行う場合、正極活物質原料を、コバルト化合物を含む液媒体と接触させることで正極活物質原料とコバルト化合物との接触を行うことができる。このとき必要に応じて液媒体を撹拌してもよい。コバルト化合物を含む液媒体は、コバルト化合物の溶液であっても、コバルト化合物の分散液であってもよい。また、コバルト化合物の溶液に正極活物質原料を懸濁させ、pH調整、温度調整等によって溶液中にコバルト化合物を析出させ、正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にコバルト化合物を付着させてもよい。
溶液に含まれるコバルト化合物としては、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト等を挙げることができる。分散液に含まれるコバルト化合物としては、例えば水酸化コバルト、酸化コバルト、炭酸コバルト等を挙げることができる。液媒体は、例えば水を含んでいればよく、水に加えてアルコール等の水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。液媒体におけるコバルト化合物の濃度は、例えば1質量%以上8.5質量%以下とすることができる。
正極活物質原料に接触させるコバルト化合物の総量は、正極活物質原料に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物に対して、コバルト基準で例えば、1モル%以上20モル%以下であり、好ましくは3モル%以上15モル%以下である。
正極活物質原料とコバルト化合物の接触温度は、例えば40℃以上80℃以下であり、好ましくは40℃以上60℃以下とすることができる。また、接触温度は、例えば20℃以上80℃以下であってもよい。接触時間は、例えば30分以上180分以下であり、好ましくは30分以上60分以下である。
コバルト化合物を含む液媒体と接触させた後に、必要に応じて、コバルト化合物が付着した正極活物質原料に対して濾別、水洗、乾燥等の処理を行ってもよい。また、付着するコバルト化合物の種類等に応じて、予備的な熱処理を行ってもよい。予備的な熱処理を行う場合、その温度は、例えば100℃以上350℃以下であり、好ましくは120℃以上320℃以下である。また処理時間は、例えば5時間以上20時間以下であり、好ましくは8時間以上15時間以下である。また、予備的な熱処理の雰囲気は、例えば、酸素を含む雰囲気であり、大気雰囲気であってよい。
付着物熱処理工程
付着物熱処理工程では、コバルト付着工程で得られるコバルト付着物を、500℃以上1100℃未満の所定の温度で熱処理して熱処理物を得る。得られる熱処理物は、粒子の表面近傍におけるコバルト濃度が高いリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であり、これを用いて構成される非水電解質二次電池において、低SOCでの出力特性を改善することができる。
熱処理に供されるコバルト付着物は、リチウム化合物との混合物であってもよい。すなわち、製造方法は、付着物熱処理工程の前に、コバルト付着物とリチウム化合物とを混合して混合物を得る混合工程を含んでいてよい。コバルト付着物をリチウム化合物とともに所定の温度で熱処理することで、非水電解質二次電池における出力特性がより向上する場合がある。
コバルト付着物の熱処理の温度は、例えば500℃以上1100℃未満である。熱処理温度の下限は、好ましくは550℃以上、より好ましくは600℃以上、特に好ましくは630℃以上である。また熱処理温度の上限は、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは800℃以下、特に好ましくは750℃以下である。熱処理の時間は、例えば1時間以上20時間以下であり、好ましくは3時間以上10時間以下である。熱処理の雰囲気は、例えば酸素を含む雰囲気であり、大気雰囲気であってよい。
熱処理後の熱処理物には、必要に応じて、解砕、粉砕、分級操作、整粒操作等の処理を行ってもよい。
以上のようにして得られる熱処理物は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含み、二次粒子の平滑度が0.73より大きく、二次粒子の円形度が0.83より大きく、二次粒子の表面近傍においてコバルトの濃度が高くなっている。すなわち、リチウム遷移金属複合酸化物を含む二次粒子においては、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比が、粒子表面からの深さが150nm近傍である第1領域よりも、粒子表面からの深さが10nm近傍である第2領域の方が大きくなっている。
ニッケル複合酸化物の製造方法
正極活物質原料準備工程に供されるニッケル複合酸化物は、例えば、以下のようにして製造することができる。ニッケル複合酸化物の製造方法は、例えば、ニッケルイオンを含む第一溶液を準備する第一溶液準備工程と、錯イオン形成因子を含む第二溶液を準備する第二溶液準備工程と、pHが10以上13.5以下の範囲にある液媒体を準備する液媒体準備工程と、液媒体に、第一溶液および第二溶液を別々に且つ同時に供給しつつ、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む重合体を供給して、pHが10以上13.5以下の範囲に維持される反応溶液を得る晶析工程と、反応溶液からニッケルを含む複合水酸化物を得る複合水酸化物回収工程と、得られる複合水酸化物を熱処理して、ニッケルを含む複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を得る複合水酸化物熱処理工程と、を含む。製造されるニッケル複合酸化物を含む二次粒子の平滑度は0.74より大きい。
第一溶液準備工程
第一溶液準備工程では、ニッケルイオンを含む第一溶液を準備する。第一溶液は、目的のニッケル複合酸化物の組成に応じて、各金属元素を含む塩の所定量を水に溶解して調製される。塩の種類としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などが挙げられる。また、第一溶液を調製する際に、水に酸性物質(例えば硫酸水溶液)を加えてもよい。これにより、各金属元素を含む塩が溶解しやすくなる場合がある。第一溶液の調製においては、塩基性物質をさらに加えてpH調整を行ってもよい。また、第一溶液におけるニッケル等の金属元素の合計モル数は、目的とするニッケル複合酸化物の平均粒径に応じて適宜設定してよい。ここで金属元素の合計モル数は、第一溶液が、ニッケルおよびコバルトを含む場合はニッケルおよびコバルトの合計モル数であり、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む場合はニッケル、コバルトおよびマンガンの合計モル数を意味する。
第一溶液は、ニッケルイオンに加えて、コバルトイオン、アルミニウムイオンおよびマンガンイオンからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。また、第一溶液は、これらに加えて、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、バリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリウム、ルテチウム、タンタル、タングステン、ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種の第二金属元素のイオンをさらに含んでいてよい。第二金属元素は、ジルコニウム、チタン、マグネシウム、タンタル、ニオブ、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
第一溶液のニッケル等の金属イオンの濃度は、各金属イオンの合計で、例えば1.0mol/L以上2.6mol/L以下であってよく、好ましくは1.5mol/L以上2.2mol/L以下である。第一溶液の金属イオン濃度が1.0mol/L以上であると、反応槽当たりの晶析物量が充分に得られるために生産性が向上する。一方、第一溶液の金属イオン濃度が2.6mol/L以下であると、常温での金属塩の飽和濃度を超えることが抑制され、金属塩結晶の析出による溶液中の金属イオン濃度の減少が抑制される。
第二溶液準備工程
第二溶液準備工程では、錯イオン形成因子を含む第二溶液を準備する。第二溶液は、第一溶液に含まれる金属イオンと錯イオンを形成し得る錯イオン形成因子を含むものである。例えば錯イオン形成因子がアンモニアである場合、第二溶液としてはアンモニア水溶液を用いることができる。アンモニア水溶液中に含まれるアンモニアの含有量は、例えば5質量%以上25質量%以下であってよく、好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
液媒体準備工程
液媒体準備工程では、pHが10以上13.5以下の範囲にある液媒体を準備する。液媒体は、例えば反応容器に所定量の水と水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶液を用いてpH10以上13.5以下の溶液として調整される。溶液のpHを10以上13.5以下に調整することで、反応初期における反応溶液のpH変動を抑制することができる。
晶析工程
晶析工程では、形成される反応溶液のpHを10以上13.5以下の範囲に維持しつつ、液媒体に第一溶液および第二溶液を別々に且つ同時に供給する。また併せて(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む重合体を液媒体に供給する。これにより、反応溶液からニッケルを含む複合水酸化物粒子を得ることができる。液媒体には、第一溶液および第二溶液に加えて、塩基性溶液を同時に供給してもよい。これにより反応溶液のpHを10以上13.5以下の範囲に容易に維持することができる。
晶析工程では、反応溶液のpHが10以上13.5以下の範囲を維持するように各溶液を供給することが好ましい。例えば第一溶液の供給量に応じて、第二溶液の供給量を調整することで反応溶液のpHを10以上13.5以下の範囲に維持することができる。反応溶液のpHが10より低い場合は、得られる複合水酸化物に含まれる不純物(例えば、混合溶液に含まれる金属以外の硫酸分や硝酸分)の量が多くなり、最終生産物である二次電池の容量の低下をまねく場合がある。また、pHが13.5より高い場合は、微小の二次粒子が多く生成し、得られる複合水酸化物のハンドリング性が悪くなる場合がある。また反応溶液の温度は、例えば25℃以上80℃以下の範囲になるように制御してよい。
晶析工程では、反応溶液中のニッケルイオンの濃度を、例えば10ppm以上1000ppm以下の範囲になるように維持してよく、好ましくは10ppm以上100ppm以下の範囲になるように維持する。ニッケルイオンの濃度が10ppm以上であれば、複合水酸化物が充分に析出する。ニッケルイオンの濃度が1000ppm以下であれば、溶出するニッケル量が少ないため、目的の組成からずれることが抑制される。ニッケルイオン濃度は、例えば錯イオン形成溶液にアンモニア水溶液を用いた場合、反応溶液中のアンモニウムイオン濃度が、1000ppm以上15000ppm以下となるように、錯イオン形成溶液を供給することで、調整することができる。
第一溶液を供給する時間は、例えば6時間以上60時間以下であってよく、好ましくは8時間以上60時間以下であってよく、より好ましくは10時間以上42時間以下である。6時間以上であれば、複合水酸化物の析出速度が遅くなるため、より平滑度の高いニッケル複合酸化物が得られる傾向がある。また60時間以下であれば、生産性をより向上させることができる。
晶析工程全体をとおして供給される第一溶液のニッケル等の合計モル数を分母とし、一時間あたりに供給される第一溶液のニッケル等の合計モル数を分子とした値は、例えば0.015以上0.125以下であってよく、好ましくは0.020以上0.10以下である。0.015以上であれば、生産性をより向上させることができる。また0.125以下であれば、より平滑度の高いニッケル複合酸化物が得られる傾向がある。
液媒体に供給される(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む重合体は、例えば、界面活性剤、分散剤等として機能し得るカルボキシ基を有するアニオン系重合体であってよい。重合体が(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むことで、反応溶液の泡立ちが抑制され、得られる複合水酸化物の平滑度および円形度の少なくとも一方が向上する。例えば、分散剤として一般的なノニオン系分散剤では、反応溶液に泡立ちが発生して粒径制御が困難になる場合がある。
重合体を構成する(メタ)アクリル酸に由来する構成単位には、アクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸に由来する構成単位、アクリル酸エステルに由来する構成単位、メタクリル酸エステルに由来する構成単位、アクリル酸アミドに由来する構成単位、メタクリル酸アミドに由来する構成単位等が含まれる。重合体は(メタ)アクリル酸に由来する構成単位に加えて、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。他の構成単位としては、例えば、不飽和二塩基酸またはその酸無水物に由来する構成単位を挙げることができる。
重合体の重量平均分子量は、例えば50000以下であってよく、好ましくは40000以下、30000以下、または20000以下である。重合体の重量平均分子量の下限は、例えば1000以上であってよく、好ましくは3000以上、より好ましくは6000以上である。重合体の重量平均分子量が前記範囲内であると、二次粒子の粒径制御がより容易になり、平滑度がより高くなる傾向がある。
重合体は、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン、有機アンモニウムイオン、アンモニウムイオン等の中和塩基で、カルボキシ基の少なくとも一部が中和されたアルカリ金属塩、有機アミン塩、アンモニウム塩等として液媒体に供給されてもよい。また、重合体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の重合体を用いる場合、組成が異なる組み合わせ、重量平均分子量が異なる組み合わせ、中和塩基が異なる組み合わせ、またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
液媒体に供給される重合体には、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む重合体以外のその他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、リン酸基、スルホン酸基等を有するアニオン系界面活性剤、4級アンモニウム基等を有するカチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。その他の界面活性剤の供給量は、例えば(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む重合体の供給量に対して10質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以下である。
重合体の液媒体への供給量は、生成する複合水酸化物の総質量に対して、例えば0.5質量%以上5質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上3質量%以下である。重合体の供給量が生成する複合水酸化物の総質量に対して0.5質量%以上であれば、得られる複合水酸化物の平滑度および円形度の少なくとも一方が向上する傾向がある。また、供給量が5質量%以下であれば、晶析工程における二次粒子の凝集を抑制し、得られる複合水酸化物の平滑度および円形度の少なくとも一方がより向上する傾向がある。
液媒体への重合体の供給は、重合体を含む重合体溶液を第一溶液および第二溶液とは独立させて供給してもよく、第一溶液および第二溶液の少なくとも一方と共に供給してもよい。第一溶液および第二溶液の少なくとも一方と共に供給する場合、第一溶液および第二溶液の少なくとも一方が重合体を含んでいてもよく、第一溶液および第二溶液の少なくとも一方と重合体溶液とを混合してから液媒体に供給してもよい。液媒体への重合体の供給に用いられる溶液における重合体の含有量は、溶液の質量に対して例えば0.05質量%以上3.1質量%以下であってよく、好ましくは0.1質量%以上0.8質量%以下である。
晶析工程は、第一溶液および第二溶液を別々に且つ同時に液媒体に供給することと、第一溶液および第二溶液とは別々に且つ同時に重合体を供給するか、または第一溶液および第二溶液の少なくとも一方とともに重合体を供給することと、をこの順で含んでいてもよい。換言すれば、重合体の供給に先立って、第一溶液および第二溶液の一部を別々に且つ同時に液媒体に供給してもよい。第一溶液と第二溶液とを液媒体に供給することで、液媒体中に生成するニッケルを含む複合水酸化物の粒径を所望の大きさに制御することができる。ここで複合水酸化物は、例えば種晶として生成されてよい。重合体の供給に先立って、液媒体中に所望の粒径を有する複合水酸化物を生成させることで、一次粒子の凝集を抑制し、二次粒子として生成する複合水酸化物の平滑度および円形度の少なくとも一方がより向上する傾向がある。
晶析工程において、重合体の供給に先立って、第一溶液および第二溶液を別々に且つ同時に液媒体に供給することを含む場合、重合体の供給に先立つ第一溶液および第二溶液の供給時間は、全供給時間の2%以上95%以下であってよい。好ましくは3%以上40%以下であり、より好ましくは5%以上20%以下である。重合体の供給に先立つ第一溶液および第二溶液の供給時間をこの範囲とすることで、上述のように、液媒体中に所望の粒径を有する複合水酸化物を生成させることができ、一次粒子の凝集を抑制し、平滑度および円形度の少なくとも一方がより向上する。
ニッケル複合酸化物の製造方法は、晶析工程に先立って種晶生成工程を含んでいてもよい。種晶生成工程では、例えば準備した第一溶液の一部を液媒体に供給することにより、液媒体中にニッケルを含む複合水酸化物を、例えば種晶として生成させる。すなわち、晶析工程に供される液媒体は、複合水酸化物を含む種溶液であってもよい。
晶析工程に先だって、液媒体中に予め複合水酸化物粒子を生成しておくと、予め生成した複合水酸化物の粒子一個が、晶析工程後に得られる複合水酸化物の粒子一個を構成する種晶となる。これにより、予め生成させた複合水酸化物粒子の数によって、晶析工程後に得られる複合水酸化物の二次粒子の総数を制御することができる。例えば、予め第一溶液を多く供給すると生成する複合水酸化物粒子の数が多くなるので、晶析工程後の複合水酸化物の二次粒子の平均粒径が小さくなる傾向がある。また、例えば、当初の液媒体のpHを、得られる反応溶液のpHより高くする場合、複合水酸化物粒子の成長よりも、複合水酸化物粒子の生成が優先される。これにより、より均質な粒径を有する複合水酸化物粒子が生成し、粒度分布のより狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。
晶析工程において、第一溶液、第二溶液および重合体溶液は、それぞれ連続的に液媒体に供給されてもよく、断続的に供給されてもよい。円形度および平滑度向上の観点から、第一溶液は、晶析工程における第一溶液の供給時間の全体に亘って、連続的に供給されていることが好ましい。ここで「供給時間の全体に亘って、連続的に」とは供給時間の全体を通して、供給されない時間がほとんど存在しないことを意味する。また、供給されない時間がほとんど存在しないとは、全体の供給時間に対して供給されない時間が1%未満であることを意味する。
複合水酸化物回収工程
複合水酸化物回収工程では、反応溶液からニッケルを含む複合水酸化物を分離して回収する。反応溶液からの複合水酸化物の回収は、例えば、生成する沈殿物を濾別、遠心分離等の通常用いられる分離手段で行うことができる。得られる沈殿物には、水洗、濾過、乾燥等の処理を行ってもよい。複合水酸化物における金属元素の組成比は、これらを原料として得られるリチウム遷移金属複合酸化物の金属元素の組成比とほぼ一致してよい。
得られる複合水酸化物は、複合水酸化物に含まれる金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比が、例えば0より大きく1未満であってよい。金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、好ましくは0.3以上、または0.33以上である。また金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、0.6以上であってよい。また金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、好ましくは0.98以下、または0.95以下である。
得られる複合水酸化物は、複合水酸化物に含まれる金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比が0以上0.5以下であってよい。金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、好ましくは0.01以上、0.02以上、0.03以上、または0.04以上である。また金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、好ましくは0.4以下である。金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、0.3以下、0.2以下、または0.1以下であってよい。
複合水酸化物は、その組成にマンガンおよびアルミニウムの少なくとも一方を含んでいてよい。複合水酸化物において、金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上である。また金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は例えば、0.5以下である。金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は0.3以下、0.2以下、または0.1以下であってよい。
複合水酸化物は、その組成に少なくとも1種の第二金属元素を含んでいてよい。複合水酸化物において、金属元素の総モル数に対する第二金属元素の総モル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.003以上である。また金属元素の総モル数に対する第二金属元素の総モル数の比は例えば、0.1以下であり、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下である。
複合水酸化物は、例えば下記式(3)で表される組成を有していてよい。
NiCo (OH)2+γ (3)
式(3)中、Mは、MnおよびAlの少なくとも一方を示す。Mは、B、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Lu、Ta、W及びBiからなる群より選択される少なくとも1種を示す。j、k、m、nおよびγは、0.3≦j<1、0≦k≦0.5、0≦m≦0.5、0≦n≦0.1、0≦γ≦1を満たす。好ましくは、0.33≦j≦0.98、0.01≦k≦0.4、0.01≦m≦0.3、0≦n≦0.1、より好ましくは、0.6≦j≦0.98、0.03≦k≦0.2、0.03≦m≦0.1、0.001≦n≦0.05である。また好ましくは、Mは、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種である。
複合水酸化物熱処理工程
複合水酸化物熱処理工程では、得られる複合水酸化物を熱処理して、ニッケルを含む複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含むニッケル複合酸化物を得る。熱処理することにより、複合水酸化物が脱水されてニッケル複合酸化物が生成する。ニッケル複合酸化物は、リチウム遷移金属複合酸化物の前駆体であってよく、正極活物質前駆体であってもよい。
熱処理の温度は、例えば105℃以上900℃以下であってよく、好ましくは300℃以上500℃以下である。熱処理の時間は、例えば5時間以上30時間以下であってよく、好ましくは10時間以上20時間以下である。熱処理の雰囲気は、酸素を含む雰囲気下であってよく、大気雰囲気であってもよい。
得られるニッケル複合酸化物を含む二次粒子の平滑度は、例えば0.74より大きくてよく、好ましくは0.80以上、または0.85以上である。ニッケル複合酸化物を含む二次粒子の円形度は、例えば0.80以上であり、好ましくは0.85以上、または0.87以上である。ここで、ニッケル複合酸化物を含む二次粒子の平滑度および円形度は、正極活物質を構成する二次粒子におけるそれらと同様にして測定される。また、二次粒子の平滑度および円形度の上限は、1以下であり、1未満であってもよい。
ニッケル複合酸化物を含む二次粒子の粒度分布は、体積基準の累積粒度分布における90%粒径D90と10%粒径D10の差を50%粒径D50で除した値((D90-D10)/D50)として、例えば0.8より小さく、好ましくは0.7以下、0.6以下、または0.5以下である。
ニッケル複合酸化物を含む二次粒子の体積平均粒径は、例えば1μm以上30μm以下であり、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、また好ましくは18μm以下、より好ましくは12μm以下であり、さらに好ましくは8μm以下である。二次粒子の体積平均粒径が前記範囲内であると、流動性が良く、二次電池を構成する際に出力がより向上する場合がある。ここで体積平均粒径は、体積基準の累積粒度分布における小径側からの累積50%に対応する50%粒径D50である。
ニッケル複合酸化物を含む二次粒子は複数の一次粒子が集合して形成される。一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、例えば0.1μm以上1.5μm以下であり、好ましくは0.12μm以上、より好ましくは0.15μm以上である。また一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、好ましくは1.2μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径が前記範囲内であると電池を構成する際に出力が向上する場合がある。
ニッケル複合酸化物を含む二次粒子は、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMに対する比D50/DSEMが例えば、2.5以上であってよい。比D50/DSEMは、例えば2.5以上150以下であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。また比D50/DSEMは、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。
ニッケル複合酸化物は、ニッケル複合酸化物に含まれる金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比が、例えば、0より大きく1未満であってよい。金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、好ましくは0.3以上、または0.33以上である。金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、0.6以上であってよい。また金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比は、好ましくは0.98以下、または0.95以下である。
ニッケル複合酸化物は、ニッケル複合酸化物に含まれる金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比が0以上0.5以下であってよい。金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、好ましくは0.01以上、0.02以上、0.03以上、または0.04以上である。また金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、好ましくは0.4以下である。金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比は、0.3以下、0.2以下、または0.1以下であってよい。
ニッケル複合酸化物は、その組成にマンガンおよびアルミニウムの少なくとも一方を含んでいてよい。ニッケル複合酸化物において、金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上である。また金属元素の総モル数に対するマンガンおよびアルミニウムの総モル数の比は、例えば0.5以下であり、0.3以下、0.2以下、または0.1以下であってよい。
ニッケル複合酸化物は、その組成に少なくとも1種の第二金属元素を含んでいてよい。ニッケル複合酸化物において、金属元素の総モル数に対する第二金属元素の総モル数の比は、例えば、0以上、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.003以上である。また金属元素の総モル数に対する第二金属元素の総モル数の比は例えば、0.1以下であり、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下である。
ニッケル複合酸化物は、例えば下記式(4)で表される組成を有していてよい。
NiCo (4)
式(4)中、Mは、MnおよびAlの少なくとも一方を示す。Mは、B、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Lu、Ta、W及びBiからなる群より選択される少なくとも1種を示す。q、r、sおよびtは、0.3≦q<1、0≦r≦0.5、0≦s≦0.5、0≦t≦0.1、q+r+s+t≦1.1を満たす。好ましくは、0.33≦q≦0.98、0.01≦r≦0.4、0.01≦s≦0.3、0≦t≦0.1、より好ましくは、0.6≦q≦0.98、0.03≦r≦0.2、0.03≦s≦0.1、0.001≦t≦0.05である。また好ましくは、Mは、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種である。
[非水電解質二次電池用電極]
非水電解質二次電池用電極は、集電体と、集電体上に配置され、前記製造方法で製造される非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極活物質層とを備える。係る電極を備える非水電解質二次電池は、低SOCにおける出力特性を改善することができる。
集電体の材質としては例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等が挙げられる。正極活物質層は、上記の正極活物質、導電材、結着剤等を溶媒と共に混合して得られる正極合剤を集電体上に塗布し、乾燥処理、加圧処理等を行うことで形成することができる。導電材としては例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。結着剤としては例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドアクリル樹脂等が挙げられる。
[非水電解質リチウムイオン二次電池]
非水電解質リチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える。正極は、集電体と、集電体上に配置され、既述の非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極活物質層とを備える。係る正極を備える非水電解質二次電池は、特に低SOCでの出力特性を改善することができる。
集電体の材質としては例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等が挙げられる。正極活物質層は、上記の正極活物質、導電材、結着剤等を溶媒と共に混合して得られる正極合剤を集電体上に塗布し、乾燥処理、加圧処理等を行うことで形成することができる。導電材としては例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。結着剤としては例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドアクリル樹脂等が挙げられる。
非水電解質二次電池は、正極に加えて、負極、非水電解質、セパレータ等を備えて構成される。非水電解液二次電池における、負極、電解質、セパレータ等については例えば、特開2002-075367号公報、特開2011-146390号公報、特開2006-12433号公報(これらは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)等に記載された、非水電解質二次電池用のためのものを適宜用いることができる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含されることはいうまでもない。
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
一次粒子サイズ、すなわち一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、以下のようにして測定した。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、粒径に応じて1000倍から15000倍の範囲の倍率で、二次粒子を構成する一次粒子を観察した。粒子の輪郭が確認できる一次粒子を50個選択した。画像処理ソフトウエアを用いて選択された一次粒子の輪郭をなぞることで輪郭長を求める。輪郭長から球換算径を算出し、得られた球換算径の算術平均値として一次粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMを求めた。
体積基準の累積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50および90%粒径D90は、レーザー回折式粒径分布測定装置((株)島津製作所製SALD-3100)を用いて、体積基準の累積粒度分布を湿式条件で測定し、小径側からの累積10%、50%および90%にそれぞれ対応する粒径として求めた。また粒度分布は、D90とD10の差をD50で除して算出した。すなわち、二次粒子の粒度分布は下式で求めた。
粒度分布=(D90-D10)/D50
平滑度は、以下のようにして測定した。正極活物質をエポキシに充填して硬化した後、断面加工を行って断面サンプルを作製した。走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズSU8230;加速電圧3kV)を用いて、反射電子像(倍率;4000倍)を撮影した。得られた反射電子像について、粒子の輪郭が確認できる二次粒子を20から40個選択し、それぞれの粒子について画像処理ソフトウエア(ImageJ)を用いて、全周長Lopを測定した。また選択された粒子の輪郭について画像処理ソフトウエア(ImageJ)を用いて、もっともフィットする(近似する)楕円形を求め、それぞれの粒子について近似楕円の長径aおよび短径bを得た。得られた長径aおよび短径bからGauss-Kummerの公式の近似式を用いて近似楕円の全周長Lを求めた。粒子画像の輪郭の全周長(Lop)に対する、近似した楕円の全周長(L)の比(L/Lop)として平滑度を求めた。個々の粒子の平滑度の算術平均として二次粒子の平滑度を算出した。
円形度は、二次粒子の輪郭形状における粒子画像面積と同じ面積を有する円の直径を円相当径とする場合に、二次粒子の輪郭形状の全周長(L)に対する円相当径から算出される円周長(L)の比(L/L)として求めた。具体的には、乾式粒子画像分析装置(Morphologi G3S:Malvern社;レンズ倍率20倍)を用いて、約10000個の粒子について個々の円形度を測定し、それらの算術平均値として二次粒子の円形度を求めた。
タップ密度は以下のようにして測定した。試料20gを20mLのメスシリンダーに投入し、6.5cmの高さから150回タッピングした後に、体積を測定し、求まる密度をタップ密度とした。嵩密度は以下のようにして測定した。容量30mLの容器に篩(目開き0.5mm)を通した試料を山盛りになるまで投入し、へらを用いて試料の山の部分を削り取った。容器に残った試料重量を測定して嵩密度を求めた。
比表面積は、BET比表面積測定装置((株)マウンテック製Macsorb Model-1201)を用いて、窒素ガス吸着法(1点法)により測定した。
実施例1
各溶液の準備
硫酸ニッケル溶液と、硫酸コバルト溶液と、硫酸マンガン溶液と、をそれぞれ金属元素のモル比で9.2:0.4:0.4になるように混合した混合溶液(ニッケル、コバルトおよびマンガンを合わせた濃度で1.7モル/L;第一溶液)を準備した。混合溶液中の金属元素の総モル数を474モルとした。塩基性水溶液として、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を準備した。錯イオン形成溶液として、12.5質量%のアンモニア水溶液(第二溶液)を準備した。重合体溶液として、界面活性剤であるアロンA-30SL(東亜合成社製;ポリアクリル酸アンモニウム40質量%水溶液、重量平均分子量=6000)とアロンA-210(東亜合成社製;ポリアクリル酸ナトリウム43質量%水溶液、重量平均分子量=3000)を質量比1:1でブレンドしたものを準備した。
液媒体の準備
反応容器に水30リットルを準備し、水酸化ナトリウム水溶液をpHが12.5になるように加えた。窒素ガスを投入し反応容器内を窒素で置換して液媒体を準備した。
種晶生成工程
液媒体を撹拌しながら、液媒体に対して第一溶液を金属元素の総モル数として2モル分加えて、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む複合水酸化物を析出させた。
晶析工程
準備した複合水酸化物を含む液媒体を撹拌しながら、残りの第一溶液472モル分と、水酸化ナトリウム水溶液と、アンモニア水溶液(第二溶液)を、塩基性(pH11.3)を維持しながら、それぞれを別々に且つ同時に供給した。重合体溶液は、第一溶液、第二溶液および水酸化ナトリウム水溶液の供給を開始してから3時間後から供給を開始し、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む複合水酸化物を析出させた。重合体溶液の供給量は、生成した複合水酸化物の理論収量に対する重合体の供給量として1質量%となる供給量であった。また、第一溶液の供給は18時間に亘って連続的に供給された。なお、晶析工程において液媒体の温度は50℃程度になるように制御した。
析出物を回収し、続いて水洗、濾過、乾燥を行いニッケル、コバルト、マンガンを含む複合水酸化物(以下、ニッケル複合水酸化物ともいう)を得た。
ニッケル複合酸化物の製造
ニッケル複合水酸化物に対して、大気雰囲気下、320℃で16時間の熱処理を行い、ニッケル、コバルト、マンガンを含む遷移金属複合酸化物(以下、ニッケル複合酸化物ともいう)として回収した。
得られたニッケル複合酸化物を無機酸に溶解した後、ICP発光分光法により化学分析を行ったところ、その組成はNi0.921Co0.040Mn0.039であった。得られたニッケル複合酸化物について、上述したようにして物性を評価したところ、50%粒径D50が6.2μm、円形度が0.89、平滑度が0.76であった。
上記で得られたニッケル複合酸化物に対する水酸化リチウムのモル比が1.10となるように両者を乾式混合してリチウム混合物を得た。得られたリチウム混合物を酸素雰囲気(酸素濃度40体積%)中、740℃で5時間熱処理して合成工程を実施した。その後、分散処理して、正極活物質原料としてのリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
得られたリチウム遷移金属複合酸化物を無機酸に溶解した後、ICP発光分光法により化学分析を行ったところ、その組成はLi1.10Ni0.921Co0.040Mn0.039であった。得られたリチウム遷移金属複合酸化物について、上述したようにして物性を評価したところ、50%粒径D50が6.26μm、円形度が0.86、平滑度が0.76であった。
得られたリチウム遷移金属複合酸化物に対して、酸化コバルトを3モル%の割合で添加し、ミキサー混合することでコバルト付着物を得た。その後、コバルト付着物に対して、酸素雰囲気(酸素濃度40体積%)中、665℃で5時間熱処理を施した。得られた熱処理物を樹脂製ボールミルにて合成工程後の正極活物質原料と同じ体積平均粒径となるように分散処理を行い、乾式篩にかけて、正極活物質としてCoを含む付着物を表面に有するリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
得られた正極活物質を無機酸に溶解した後、ICP発光分光法により化学分析を行ったところ、その組成はLi1.06Ni0.894Co0.068Mn0.038であった。得られたリチウム遷移金属複合酸化物について、上述したようにして物性を評価したところ、50%粒径D50が6.35μm、円形度が0.84、平滑度が0.74であった。
比較例1
実施例1における正極活物質原料としてのリチウム遷移金属複合酸化物を、比較例1の正極活物質とした。
コバルト分布及びニッケル分布の評価
上記で得られた正極活物質について、粒子内部におけるコバルト分布及びニッケル分布を評価した。具体的には、第1領域及び第2領域におけるニッケル含有率及びコバルト含有率を以下のようにして評価した。
組成分析
実施例1及び比較例1で得られた正極活物質をそれぞれエポキシ樹脂に分散させて固化した後、クロスセクションポリッシャ(日本電子製)を用いて、正極活物質の二次粒子の断面出しを行って測定サンプルを作製した。測定サンプルの第1領域(表面から150nmの深さ)および第2領域(表面から10nmの深さ)におけるそれぞれ各1点において、走査型電子顕微鏡(SEM)/エネルギー分散型X線分析(EDX)装置(日立ハイテクノロジーズ社製;加速電圧3kV)により、リチウム以外の金属成分のそれぞれの強度比を求めた。なお、コバルト比(Co比)は、リチウム以外の金属成分の強度比の合計に対するコバルトの強度比とし、ニッケル比(Ni比)は、リチウム以外の金属成分の強度比の合計に対するニッケルの強度比とした。結果を表1に示す。
Figure 2022117956000002
実施例1に係る正極活物質においては、正極活物質を構成する二次粒子の平滑度が0.73より大きく、円形度が0.83より大きくなっている。このことから、コバルトを含む付着物が正極活物質表面に偏りなく付着しており、低SOCでの出力が向上する傾向があると考えられる。
評価用電池の組み立て
実施例1及び比較例1の正極活物質を含む正極を備える評価用電池について、DC-IR(直流内部抵抗)を測定することで出力特性の評価を行った。測定は、以下のようにして評価用電池を組み立て、得られた評価用電池を用いて行った。
正極の作製
96.5質量部の正極活物質、1.5質量部のアセチレンブラック、及び2質量部のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)に分散、溶解し、正極スラリーを調製した。得られた正極スラリーをアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥後、ロールプレス機で正極活物質層の密度が3.5g/cmになるように圧縮成形し、サイズが15cmとなるように裁断して、正極を得た。
負極の作製
97.5質量部の人造黒鉛、1.5質量部のCMC(カルボキシメチルセルロース)、及び1.0質量部のSBR(スチレンブタジエンゴム)を、水に分散させて負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを銅箔に塗布、乾燥し、さらに圧縮成形して負極を得た。
非水電解液の作製
EC(エチレンカーボネイト)とEMC(エチルメチルカーボネイト)を体積比率3:7で混合して、混合溶媒とした。得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)をその濃度が、1mol/Lになるように溶解させて、非水電解液を得た。
評価用電池の作製
正極及び負極の集電体に各々リード電極を取り付けたのち、120℃で真空乾燥を行った。次いで、正極と負極との間にセパレータを配し、袋状のラミネートパックにそれらを収納した。次いで、これを60℃で真空乾燥させて、各部材に吸着した水分を除去した。その後、アルゴン雰囲気下でラミネートパック内に非水電解液を注入し、封止して評価用電池を作製した。
エージング
評価用電池に充電電圧4.2V、充電電流0.1C(1Cは1時間で放電が終了する電流)の定電圧定電流充電(カットオフ電流0.05C)と、放電終止電圧2.5V、放電電流0.1Cの定電流放電とを行って、正極及び負極に非水電解液をなじませた。
直流内部抵抗の測定
エージング後の評価用電池を25℃の環境下に置き、直流内部抵抗(DC-IR)の測定を行った。満充電電圧4.2Vにおける充電状態(SOC)95%まで定電流充電を行った後、SOC95%における解放電位を測定した。その後、特定の電流値iによるパルス放電を30秒間行い、10秒後の電圧Vを測定した。解放電位と10秒後の電圧Vとの差により直流内部抵抗(DC-IR)を算出した。これをSOC95%、80%、50%、20%、10%、5%までそれぞれ定電流放電して、それぞれのSOCにおける直流内部抵抗を測定した。なお、SOC95%、10%、5%のおける電流値iは0.07Aとし、SOC80%、50%、20%における電流値iは0.12Aとした。比較例1のSOC5%での直流内部抵抗を1とした際の各SOCにおける相対抵抗値を表2に示す。
Figure 2022117956000003
表2に示されるように、平滑度および円形度が特定のものにおいて、表面と内部におけるコバルト濃度差が一定以上であることで、低SOCでの出力が改善される。
10 第1領域、20 第2領域、30 粒子表面、100 二次粒子

Claims (9)

  1. 層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含み、
    前記二次粒子の平滑度が0.73より大きく、前記二次粒子の円形度が0.83より大きく、
    前記二次粒子は、コバルトを含み、粒子表面からの深さが150nmの第1領域と、粒子表面からの深さが10nm以下の第2領域とを有し、リチウム以外の金属元素の総モル数に対する、コバルトのモル数の比が、前記第1領域よりも前記第2領域の方が大きい非水電解質二次電池用正極活物質。
  2. 前記第2領域におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比と、前記第1領域におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比との差が、0.02以上である請求項1に記載の正極活物質。
  3. 前記第2領域におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比を、前記第1領域におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比で除した値が、2以上である請求項1または2に記載の正極活物質。
  4. 前記二次粒子は、体積平均粒径が1μm以上30μm以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の正極活物質。
  5. 体積基準の累積粒度分布における90%粒径D90と10%粒径D10との差分を50%粒径のD50で除した値が0.9未満である請求項1から4のいずれか1項に記載の正極活物質。
  6. リチウム以外の金属元素の総モル数に対するニッケルのモル数の比が0より大きく1未満であり、
    リチウム以外の金属元素の総モル数に対するコバルトのモル数の比が0より大きく0.5以下である組成を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の正極活物質。
  7. 下記式(1)で表される組成を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の正極活物質。
    LiNiCo (1)
    0.95≦p≦1.5、0<x<1、0<y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦w≦0.1、x+y+z+w≦1、MはAl及びMnからなる群より選択される少なくとも1種であり、MはB、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Lu、Ta、W及びBiからなる群より選択される少なくとも1種である。
  8. 層状構造を有し、リチウムおよびニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む一次粒子が複数集合してなる二次粒子を含み、前記二次粒子の平滑度が0.73より大きく、前記二次粒子の円形度が0.83より大きい正極活物質原料を準備することと、
    前記正極活物質原料と、コバルト化合物とを接触させてコバルト付着物を得ることと、
    前記コバルト付着物を、500℃以上1100℃未満の温度で熱処理して熱処理物を得ることと、を含む非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 請求項1から7のいずれか1項に記載の正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質リチウムイオン二次電池。
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