JP5943051B2 - ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法 - Google Patents

ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、粒径が均一な非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体として用いられるニッケルコバルト複合水酸化物製造方法に関するものである。
近年、電子技術の進歩に伴い、電子機器の小型化、軽量化が急速に進んでいる。特に、最近の携帯電話やノートパソコンなどのポータブル電子機器の普及と高機能化により、これらに使用されるポータブル用電源として、高いエネルギー密度を有し、小型で、かつ軽量な電池の開発が強く望まれている。
非水系電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池は、小型で高いエネルギーを有することから、ポータブル電子機器の電源としてすでに利用されている。また、かかる用途に限られず、リチウムイオン二次電池について、ハイブリッド自動車や電気自動車などの大型電源としての利用を目指した研究開発も進められている。
リチウムイオン二次電池の正極活物質には、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)が使用されているが、リチウムコバルト複合酸化物の原料には、希産で高価なコバルト化合物が用いられるため、正極活物質のコストアップの原因となっている。正極活物質のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を実現することは、現在普及しているポータブル電子機器の低コスト化や将来の大型電源へのリチウムイオン二次電池の搭載を可能とすることから、工業的に大きな意義を有しているといえる。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質として適用できる他の正極材料としては、コバルトよりも安価なマンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)や、ニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)を挙げることができる。
リチウムマンガン複合酸化物は、原料が安価である上、熱安定性、特に、発火などについての安全性に優れるため、リチウムコバルト複合酸化物の有力な代替材料であるといえる。
しかしながら、理論容量がリチウムコバルト複合酸化物のおよそ半分程度しかないため、年々高まるリチウムイオン二次電池の高容量化の要求に応えるのが難しいという欠点を有している。また、45℃以上では、自己放電が激しく、充放電寿命が低下するという欠点も有している。
一方、リチウムニッケル複合酸化物は、現在主流のリチウムコバルト複合酸化物と比べて、高容量であって、原料であるニッケルがコバルトと比べて安価で、かつ、安定して入手可能であるといった利点を有していることから、次世代の正極材料として期待され、リチウムニッケル複合酸化物について、活発に研究および開発が続けられている。
しかしながら、リチウムニッケル複合酸化物は、ニッケルを他の元素で置換せずに、純粋にニッケルのみで構成したリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いてリチウムイオン二次電池を作製した場合、リチウムコバルト複合酸化物に比べサイクル特性が劣るという問題点がある。リチウムニッケル複合酸化物は、その結晶構造がリチウムを脱離するのに伴って六方晶から単斜晶、さらに再び六方晶へと変化していくが、この結晶構造の変化が可逆性に乏しく、充放電反応を繰り返すうちにLiを挿入・脱離できるサイトが徐々に失われてしまうことが原因と考えられている。
これを解決する方法としては、ニッケルの一部をコバルトで置換することが提案されている(例えば特許文献1〜3参照。)。コバルトによる置換でリチウムの脱離に伴う結晶構造の相転移が抑制され、コバルト置換量が大きくなるほど結晶相がより安定化し、サイクル特性が改善される。
コバルトの添加は、結晶構造内のニッケルを置換することによる結晶相の安定化にその目的があることから、コバルトとニッケルは原子レベルで均一に混合されている必要がある。これを実現する正極活物質の原料としてニッケル源とコバルト源とを連続的に共沈させて作製した水酸化物を用いる方法が有効である。
例えば、特許文献4には、ニッケルコバルト共沈水酸化物の粒子形状、粒子径、比表面積、タップ密度、細孔の空間体積、細孔の占有率を制御することにより、サイクル劣化を防止すると共に、良好な充放電特性を有する電池を得ることができることが記載されており、実際このような方法で一定の特性を得ることができている。
しかしながら、前述したようなニッケル源とコバルト源とを連続的に共沈させて水酸化物を合成するこれまでの方法では、粒子径が均一なニッケルコバルト複合水酸化物を製造するのが難しいという問題点を有していた。これは、連続晶析反応によるニッケルコバルト複合水酸化物の製造が、析出した核生成と、個々の粒子の成長反応が同時に進行することによるためである。
粒度分布が広い正極活物質を使用した場合には、電極内で粒子に印加される電圧が不均一となることに起因して、充放電を繰り返すと微粒子が選択的に劣化し、容量が低下してしまう。したがって、正極活物質には、均一で適度な粒径を有する粒子によって構成されていることが要求される。
粒径の均一化に関して、例えば、特許文献5には、核生成用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃を基準として測定するpH値が10.5〜12.0となるように制御して前記核を成長させる粒子成長工程とからなるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の製造方法が提案されている。
特許文献5では、核生成と粒子成長を分離することにより、小粒径で均一な粒度分布を有するニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子が得られ、これを原料として用いて製造される正極活物質は、粒径の均一性に優れるとされている。
しかしながら、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下とされ、粒度分布が偏った場合には、必ずしも微粒や粗粒の混入が抑制されているとはいえない。また、その製造方法は、バッチ式に限定されるため、生産効率が高いということもいえない。
したがって、更に微粒や粗粒の混入が抑制され、粒径の均一性が高く、高い生産性で製造が可能な正極活物質が求められている。
特開昭63−114063号公報 特開昭63−211565号公報 特開平8−213015号公報 特開平9−270258号公報 特開2011−116580号公報
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、粒度分布が狭く粒径が均一であって、非水系電解質二次電池用正極活物質の原料として用いると粒度分布が狭く粒径の均一性に優れた正極活物質が得られ、高い生産性を有するニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明に係るニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法は、一般式:Ni1−x−yCoMn(OH)(0.05≦x≦0.95、0≦y≦0.55、0≦z≦0.1、x+y+z<1、MはV、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素)で表され、非水系電解質二次電池の正極活物質用であるニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法であって、一般式を構成する金属を含む金属化合物を含有した混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液とからなる反応水溶液を攪拌羽根の吐出ヘッドが50〜100m/sで攪拌しつつ、反応水溶液のニッケルイオン濃度を0.1〜5質量ppmの範囲に維持して種粒子を生成させる種粒子生成工程と、種粒子を含む反応水溶液と、一般式を構成する金属を含む金属化合物を含有した混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニウム水溶液とからなる種粒子成長用水溶液を、ニッケルイオン濃度が5〜300質量ppmの範囲内で、かつ、種粒子生成工程のニッケルイオン濃度より高いニッケルイオン濃度に維持して、攪拌することで種粒子を成長させてニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る種粒子成長工程とを備えることを特徴とする。
本発明では、粒度分布が狭く粒径の均一性が高く、原料として用いた場合に得られる非水系電解質二次電池用の正極活物質が粒径の均一性に優れたものとなるニッケルコバルト複合水酸化物を得ることができる。
また、本発明では、ニッケルコバルト複合水酸化物を容易に大規模で大量生産することができる。更に、本発明は、連続法を適用することが可能であるため、高い生産性を有する。
本発明に係るニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法を示すフローチャートである。
以下に、本発明を適用したニッケルコバルト複合水酸化物及びその製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
本発明に係る実施の形態の説明は、以下の順序で行う。なお、本発明を適用したニッケルコバルト複合水酸化物及びその製造方法の説明に先だって、非水系電解質二次電池の正極活物質、及びニッケルコバルト複合水酸化物の生成と生成条件との関係について説明する。
1.非水系電解質二次電池の正極活物質
2.ニッケルコバルト複合水酸化物の生成と生成条件
3.ニッケルコバルト複合水酸化物
4.ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法
4−1.種粒子生成工程
4−2.種粒子成長工程
4−3.各工程の攪拌強度、ニッケルイオン
4−4.pHの制御、アンモニア濃度、粒径等
<1.非水系電解質二次電池の正極活物質>
非水系電解質二次電池は、例えば、ケース内に収容された正極と、負極と、非水系電解液と、セパレータとを備えた構造を有している。正極は、正極活物質や導電剤等を混合した正極合材によって形成される。なお、負極等のその他の構成については、非水系電解質二次電池において用いられるものと同様である。
正極活物質は、原料にニッケルコバルト複合水酸化物が用いられる。正極活物質の粉体特性は、基本的に原料に用いるニッケルコバルト複合水酸化物の粉体特性に大きく影響される。正極活物質は、粒度分布が狭いと、サイクル特性等の電池特性が優れたものとなる。したがって、電池特性を優れたものとするためには、粒径が揃った正極活物質、即ち、粒径が揃ったリチウムニッケルコバルト複合酸化物が必要となる。即ち、粒度分布が狭く、粒径の均一性に優れた原料のニッケルコバルト水酸化物が必要となる。
ここで、正極活物質粒子個々の充放電について説明する。リチウムニッケル複合酸化物の充放電反応は、Liイオンの挿入と脱離によるものである。大きな粒子を持つLiイオンは小さな粒子の持つLiイオンよりも多いため、大きな粒子と小さな粒子の混合系で充電反応によるLiイオンの脱離を進めた場合、小さな粒子程充電深度が深く、即ちLiが過度に脱離した状態になりやすく、充放電を繰り返すと正極活物質粒子の劣化反応が進みやすくなる。この劣化反応は、充放電を繰り返した時の容量低下の原因となる。
一方で、粒径の揃った正極活物質粒子は、充放電時に各粒子が同じような充電深度を経て利用されるため、各粒子の劣化は同じように進むようになる。電池全体で見た場合の容量低下は、劣化した粒子の割合が大きくなる程進むため、粒径の揃った粒子からなるリチウムニッケル複合酸化物はサイクル利用時の容量低下が小さいことが予想される。
また、正極板を作製する際には、正極活物質と導電剤の混合スラリーを作製し、集電極板上に混合スラリーを塗布した後、乾燥して圧延を行うことで正極板を得る。
電池の体積当たりの充放電容量は、集電極板上に塗布し圧延された正極活物質の密度が大きい程、大きくすることができる。正極活物質の密度は、その粒度分布に大きく左右される。一般に、高密度化するには、種々の粒度分布が考えられるが、正極活物質が狭い粒度分布であるほど高密度化しやすい。即ち、上述したように一粒子ごとの充放電特性を考えても粒度分布は均一であることが望ましく、また電池製造時の極板密度の向上、ひいては電池の充放電容量の向上の面でも粒度分布が狭いことが好ましい。累積粒度分布のD10、D50、D90で見た時に、D10、D90がD50に近い程、粒度分布が狭くなる。即ち、後述するように、原料となるニッケルコバルト複合水酸化物のD10、D90がD50に近い程、粒度分布が狭く粒径が均一となるため、このようなニッケルコバルト複合水酸化物を原料に用いる。
<2.ニッケルコバルト複合水酸化物の生成と生成条件>
上述したように粒度分布が狭く、粒径が均一な正極活物質を得るには、原料となるニッケルコバルト複合水酸化物の粒度分布が狭く、粒径が均一である必要がある。ここで、ニッケルコバルト複合水酸化物の粒径と生成条件の一般的な関係について説明する。
ニッケルコバルト複合水酸化物の結晶を原料溶液の中和反応により生成した場合、単独で核発生を起こすものと、他で発生した核を粒子成長させるものに分けられる。核発生のみで粒子成長が起こらない場合には、目的の粒径を有する粒子は得られず、粒子成長が優勢になる程大きな粒径の粒子が得られる。また、粒子成長のみで核発生が起こらない場合には、連続的に一定の粒子を得ることができなくなる。
例えば、連続的にニッケルコバルト複合水酸化物粒子を製造するには、得られた粒子を連続的に取り出す必要があるので、反応系内の粒子数を一定に保ち連続的に反応を進ませるためには連続的な粒子の生成、即ち、連続的な核発生が必要となる。
しかしながら、核発生が連続的に起こり、なおかつ粒子成長が並行的に進んでいると、粒子成長の進み具合の異なる、即ち、粒径の異なる粒子が得られることになる。そのため、特に連続晶析反応を用いる場合には、粒径が均一なニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得ることは困難である。
更に、同一反応槽内で核発生と粒子成長が並行して起こっている場合、核発生と粒子成長のバランスは、種々の条件、例えば反応液中の各イオン濃度、反応温度、攪拌条件などに左右される。
晶析反応中は、種々の条件が一般に一定に保たれることが望ましい。しかしながら、工業的に晶析反応を行う場合には、微妙な条件変動は避けられず、結果として核発生と粒子成長のバランスは一定の範囲内で変動しつつ連続晶析を行うことになる。この時、核発生が優先的になると反応系内の粒子数が増加して粒度分布は小粒径方向に変化する。一方、粒子成長が優先的になると反応系内の粒子数が減量して粒度分布は大粒径方向に変化する。即ち、連続的に一定な粒度分布のニッケルコバルト複合水酸化物を得るためには、核発生と粒子成長のバランスを一定に保つことが必要になる。
連続晶析反応において、生成するニッケルコバルト複合水酸化物の粒度分布や結晶構造を制御する方法としては、反応液のpH値をコントロールすることが一般的である。
晶析反応では、供給された金属化合物水溶液に含まれる金属濃度が反応系内の金属の溶解度を上回った場合、目的とする金属化合物の析出反応が起こる。反応系内の金属の溶解度を変えることで、様々な結晶形状、粉体物性を持った金属化合物が得られる。一般的には、例えばpHを上昇させることで、金属の溶解度が低下して反応液中の金属イオン濃度が低下する。晶析反応時の形態は、反応液中の溶解度、すなわち、金属イオンの濃度を制御すればよい。したがって、ニッケルコバルト複合水酸化物の晶析反応では、ニッケルだけではなく、コバルトについても同様に溶解度を制御することが好ましい。
しかしながら、単にニッケルやコバルト水溶液を溶解度の低い反応系内に注入すると、そのpHでの溶解度とニッケルやコバルト水溶液中のイオン濃度の差が大きいために、微細な水酸化物粒子が一気に析出し、不定型な水酸化物溶液が得られるに留まることとなる。
そこで、アンモニアを同時に系内に投入すると、アンモニアは、ニッケルイオンやコバルトイオンとアンモニウム錯イオンを形成し、同じpHでの溶解度を大きくして、水酸化物の析出を緩やかに行わせ、かつ、析出−再溶解の過程を繰り返すことで、粒子を球状に成長させることができる。即ち、アンモニウムイオン濃度が大きくなると、錯イオン形成が増加して反応液中のニッケルやコバルト濃度が上昇し、核生成よりも核成長が優先して起こるようになる。また、アンモニウムイオンの存在量によって析出するニッケルコバルト複合水酸化物の結晶形状が変化する。
以上のように、ニッケルコバルト複合水酸化物を晶析反応により生成する場合には、ニッケルやコバルト水溶液にアンモニウムを添加することで、緩やかに水酸化物を析出させ、球状に成長させることができ、アンモニウムイオンの存在量によってニッケルコバルト複合水酸化物の結晶形状を調整することができる。
このような晶析反応を利用してニッケルコバルト複合水酸化物を製造する方法において、後述するように、核、即ち種粒子の生成工程と、種粒子の成長工程とを分離し、各工程の反応液の攪拌条件やニッケルイオン濃度を制御することによって、粒径が均一なニッケルコバルト複合水酸化物を高い生成性で生成することができる。
<3.ニッケルコバルト複合水酸化物>
ニッケルコバルト複合水酸化物(以下、単に複合水酸化物ともいう)は、一般式:Ni1−x−yCoMn(OH)(0.05≦x≦0.95、0≦y≦0.55、0≦z≦0.1、x+y+z<1、MはAl、Mg、Ti、Fe、Cu、Zn、Gaから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素)で表され、複数の板状一次粒子が凝集して形成された球状の二次粒子である。
一般式において、ニッケルとコバルトの割合を示すxは0.05≦x≦0.95であり、0.1〜0.9がより好ましい。即ち、xが0.05未満では、熱安定性や充放電サイクル特性が悪化するため、好ましくない。一方、xが0.95を超える場合には、Coの割合が多いため原料コストが増加するため好ましくない。そこで、十分な電池容量を得るためには、xは0.5以下とすることが好ましく、x+y+zを0.5以下とすることがより好ましい。
マンガンの割合を示すyは0≦y≦0.55である。マンガンは、熱安定性の向上に寄与する添加元素である。yが0.55を越えると、高温環境下における保存持や作動中にマンガンが電解液中に溶出するため特性が劣化してしまう。また、yが0.55を越える場合には、マンガンが多くなり、理論容量が小さくなり、非水系電解質二次電池の高容量化を実現することが難しくなる。
複合水酸化物は、レーザー光回折散乱式粒度測定において10%、50%及び90%の体積積算値となる粒径をD10、D50、D90としたとき、(D50−D10)/D50≦0.25、且つ(D90−D50)/D50≦0.25である。
(D50−D10)/D50は、微粒の混入程度を示し、(D90−D50)/D50は、粗粒の混入程度を示す指標である。これらの指標を個別に制御することで、微粒及び粗粒の混入を適切に抑制することができる。
各指標が0.25を超えた場合には、粒度分布が広くなり、微粒や粗粒が混入しているため、複合水酸化物の粒径が均一とならない。このため、このような複合水酸化物を用いて正極活物質を作製した場合には、得られた正極活物質に微粒や粗粒が存在することとなる。
したがって、(D50−D10)/D50≦0.25、且つ(D90−D50)/D50≦0.25に調整すれば、粒度分布が狭くなり、粒径が均一な複合水酸化物を得ることができる。
更に、D50は、8〜15μmであることが好ましい。D50が8μm未満では、正極活物質とした場合に高い電極密度が得られないことがあり、15μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して電池容量や出力特性が低下することがある。したがって、正極活物質とした場合に、高い電極密度を得て、電池容量及び出力特性の低下を抑制するために、D50は8〜15μmであることが好ましい。
<4.ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法>
上述した特性を有するニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法は、以下の製造方法により製造することができる。
上記複合水酸化物の製造方法は、晶析反応によってニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に複合水酸化物粒子という)を製造する方法であって、種粒子の生成を行う種粒子工程と、種粒子工程で得られた種粒子を成長させる種粒子成長工程とから構成されている。
即ち、本発明の複合水酸化物の製造方法は、従来の連続晶析法のように、種粒子生成反応と種粒子成長反応とを同じ反応槽内において同時に進行させるのではなく、主として種粒子生成反応が生じる時間(種粒子生成工程)と、主として種粒子成長反応が生じる時間(種粒子成長工程)とを明確に分離したことに特徴を有している。これにより、本発明の複合水酸化物の製造方法は、生成される複合水酸化物の粒子形状を制御することができる。上記分離は、ニッケルイオン濃度と攪拌羽根の吐出ヘッドの制御により行うが、後述するように、各工程のpH値を変える方法、種粒子生成工程の反応槽と種粒子成長工程の反応槽を変える方法等をさらに採用することができ、工程を分離することができれば分離方法は限定されるものではない。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法について図1に基づいて説明する。
(4−1.種粒子生成工程)
種粒子生成工程では、図1に示すように、ニッケル、コバルト、更に必要に応じてマンガンを含有する金属化合物を含む混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液と、アルカリ水溶液とを、ニッケルイオン濃度を0.1〜5質量ppm、攪拌羽根の吐出ヘッドを50〜100m/sに制御し、攪拌して混合することにより、種粒子の生成を行う。
混合水溶液は、ニッケルコバルト複合水酸化物を構成する金属のニッケル、コバルト、更に必要に応じてマンガンを含有する複数の金属化合物を所定の割合で水に溶解させて作製する。複合水酸化物の製造方法では、得られる複合水酸化物における各金属の組成比は、混合水溶液における各金属の組成比と同様となる。
したがって、混合水溶液中における各金属の組成比が、目的とする複合水酸化物粒子中における各金属の組成比と同じ組成比となるように、水に溶解させる金属化合物の割合を調節して、混合水溶液を作製する。
種粒子生成工程では、先ず、水酸化物の晶析が可能なように水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液及び水を混合して水溶液(以下、反応前水溶液という)を作製する。
この反応前水溶液は、アルカリ水溶液の供給量を調整して、そのpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH12.0〜14.0の範囲になるように調節することが好ましい。また、反応前水溶液中のアンモニウムイオンの濃度が5〜15g/Lとなるように調節することが好ましい。反応前水溶液の液温は、20〜60℃となるように調節することが好ましい。なお、反応前水溶液のpH、アンモニウムイオンの濃度は、それぞれ一般的なpH計、イオンメーターによって測定可能である。
次に、種粒子生成工程では、反応前水溶液の温度及びpH値を調整した後、反応前水溶液を攪拌しながら、混合水溶液を反応前水溶液に供給する。すると、反応前水溶液と混合水溶液とが混合した水溶液(以下、反応水溶液という)が作製されることから、反応水溶液中に複合水酸化物の微細な種粒子(核)を生成させることができる。このとき、反応水溶液中のニッケルイオン濃度を0.1〜5質量ppm、攪拌羽根の吐出ヘッドを50〜100m/sに制御することで、粒子の生成形態を制御することができ、成長を抑制しながら種粒子を生成させる。さらに、反応水溶液のpH値を好ましくは12.0〜14.0の範囲とすることで、生成した種粒子がほとんど成長せず、種粒子の生成が優先的に起こる状態に、より確実に制御することができる。これにより、種粒子生成工程では、反応水溶液中に種粒子が生成され、種粒子を含有する反応水溶液(以下、種粒子含有スラリーという。)が得られる。
また、種粒子生成工程では、反応前水溶液と混合水溶液とを混合する際の攪拌強度と、ニッケルイオンの濃度を制御することで、単位時間あたりの種粒子発生数を制御することができる。種粒子生成工程では、単位時間あたりの種粒子発生数を制御することによって、核発生の変動を抑えることができ、粒度が均一な複合水酸化物粒子を得ることができる。攪拌強度、ニッケルイオンの濃度については詳細を後述する。
種粒子生成工程では、種粒子の生成に伴って、反応水溶液のpH値及びアンモニウムイオンの濃度が変化するので、反応水溶液には、混合水溶液とともに、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給して、反応水溶液のpH値及びアンモニウムイオンの濃度を所定の値を維持するように制御する。
種粒子生成工程では、反応水溶液に対して、混合水溶液、アルカリ水溶液及びアンモニア水溶液を連続して供給すると反応水溶液中には、連続して新しい核の生成が継続される。したがって、必要な種粒子の量が生成されるまで混合水溶液、アルカリ水溶液及びアンモニア水溶液の供給を継続すればよい。所定量の核が生成したか否かは、予備試験を行い、予備試験により種粒子生成工程において用いられる金属塩の添加量と得られる種粒子の関係を求めておけば、金属塩の添加量から容易に判断できる。
なお、種粒子生成工程では、pH値を調整した反応前水溶液を攪拌しながら混合水溶液を添加して種粒子の生成を行ったが、このことに限定されず、混合水溶液を攪拌しながら反応前水溶液を添加することでpH調整を行い、種粒子の生成を行ってもよい。
(4−2.種粒子成長工程)
種粒子成長工程では、ニッケルイオン濃度を5〜300質量ppmに制御して、先の種粒子生成工程により得られた種粒子を成長させて、ニッケル複合水酸化物粒子を得る。
種粒子成長工程では、先ず、混合水溶液を添加した際のニッケルイオン濃度が5〜300質量ppmに制御されるように種粒子生成工程で作製された種粒子含有スラリーの調整を行うことが好ましい。例えば、図1に示すように、種粒子含有スラリーにアルカリ水溶液を添加して、液温25℃を基準として測定したときのpH値が好ましくは11.5〜13.0となるように調整して、種粒子成長用スラリーを得る。
種粒子成長工程では、ニッケルイオン濃度、好ましくはニッケルイオン濃度と攪拌羽根の吐出ヘッドの制御により粒子成長のみが生じるように制御することができるが、種粒子成長用スラリーのpH値を好ましくは11.5〜13.0にすることで、種粒子成長用スラリー中で種粒子の成長をより優先させ、所定の粒子径を有する複合水酸化物粒子が容易に得られる。なお、種粒子成長用スラリーのpH値を11.5〜12.5とすることで、種粒子の生成反応よりも種粒子の成長反応の方がより優先して生じるようになることから、種粒子成長用スラリー中には新たな種粒子がほとんど生成されない状態にさらに容易に維持することができる。
そして、種粒子成長工程では、種粒子成長用スラリーを攪拌しながら、ニッケル、コバルト、更に必要に応じてマンガンを含有する金属化合物を含む混合水溶液を種粒子成長用スラリーに添加する。即ち、混合水溶液には、ニッケルを含有する金属化合物の他に、所定の組成比のニッケル複合水酸化物が得られるように必要に応じてニッケル、コバルト、マンガン、又は添加元素を含有する金属化合物を含有させる。種粒子成長工程では、成長する金属の組成比は、混合水溶液における各金属の組成比と同様となる。したがって、種粒子生成工程で用いた金属塩と種粒子成長工程で用いた混合水溶液中の金属塩の合計で目的とするニッケルコバルト複合水酸化物の各金属の組成比となるように調節する。
そして、所定の粒径を有する複合水酸化物粒子が生成されるまで、粒子成長工程を継続する。複合水酸化物粒子の粒径は、予備試験を行い、予備試験により種粒子成長工程において用いられる金属塩の添加量と得られる粒子の関係を求めておけば、金属塩の添加量から容易に判断できる。
上述した複合水酸化物の製造方法では、種粒子生成工程においては種粒子の生成が優先して起こり種粒子の成長はほとんど生じず、逆に、種粒子成長工程においては種粒子成長のみが生じ、ほとんど新しい種粒子は生成されない。即ち、複合水酸化物の製造方法では、種粒子生成工程と種粒子成長工程とが分離できる。これにより、種粒子生成工程では、粒度分布の範囲が狭く均一な種粒子を生成することができ、種粒子成長工程では、均質に核を成長させることができるため、粒度分布の範囲が狭く均一なニッケルコバルト複合水酸化物の粒子を得ることができる。
なお、このニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法では、両工程において、金属イオンは種粒子又は複合水酸化物粒子となって晶出するので、種粒子成長用水溶液を排出しないバッチ法の場合、種粒子成長用水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。すると、見かけ上、供給する混合水溶液の濃度が低下したようになり、種粒子成長工程において、複合水酸化物粒子が十分に成長しない可能性がある。
そこで、バッチ法を採用した場合には、液体成分の増加を抑制するため、種粒子生成工程終了後から種粒子成長工程の途中の間で、種粒子成長用スラリー中の液体成分の一部を反応槽外に排出する作業を行うことが好ましい。具体的には、例えば種粒子成長用スラリーに対する無機アルカリ水溶液及び混合水溶液の供給、及び攪拌を一旦停止して、板状結晶核やニッケル複合水酸化物粒子を沈降させて、種粒子成長用スラリーの上澄み液を排出する。これにより、種粒子成長用スラリーにおける混合水溶液の相対的な濃度を高めることができる。そして、混合水溶液の相対的な濃度が高い状態で、ニッケル複合水酸化物粒子を成長させることができるので、ニッケル複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭めることができ、ニッケル複合水酸化物粒子の二次粒子全体としての密度も高めることができる。
上述した種粒子成長工程では、種粒子生成工程が終了した種粒子含有スラリーのニッケルイオン濃度と攪拌羽根の吐出ヘッド、さらに必要に応じてpH値を調整して種粒子成長用スラリーを作製して、種粒子成長工程を行っているので、粒子成長工程への移行を迅速に行うことができるという利点を有する。
また、種粒子成長工程では、図1に示す方法に限定されず、種粒子含有スラリーとは別に、混合水溶液とアルカリ水溶液とアンモニア水溶液とからなり、種粒子成長工程に適した吐出ヘッド、pH値、アンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を準備しておき、この成分調整水溶液に種粒子含有スラリーを添加するとともにニッケルイオン濃度を制御しながら混合水溶液を添加して、粒子成長を行ってもよい。
この場合、種粒子生成工程と種粒子成長工程の分離をより確実に行うことができるので、各工程における反応水溶液の状態を、各工程に最適な条件とすることができる。特に、種粒子成長工程を開始する初期から、反応水溶液のニッケルイオン濃度と吐出ヘッドを最適な条件とすることができる。これにより、種粒子成長工程で形成されるニッケルコバルト複合水酸化物粒子をより粒度分布の範囲が狭くかつ均質なものとすることができる。
さらに、上述の複合水酸化物の製造方法においては、種粒子生成工程から連続的に種粒子含有スラリーを供給して種粒子成長工程で種粒子を成長させる、すなわち、連続晶析法により粒度分布に優れた複合水酸化物粒子を得ることが可能である。pHを制御することにより工程を分離する従来の方法では、種粒子発生数の安定性が十分でなく、連続晶析法を採用した場合には粒度分布が十分に狭いとは言えない状態となる。
一方、上述の複合水酸化物の製造方法では、ニッケルイオン濃度と吐出ヘッドの制御により、種粒子発生数を十分に安定化させ、粒子成長させるため、連続晶析法を用いた場合でも粒度分布を狭い状態に維持することができる。さらに、ニッケルイオン濃度は、溶液のpHやアンモニウムイオン濃度、温度などで制御することができるため、pHのみの制御に比べて適正範囲に制御することが容易であり、連続晶析法においても安定した制御が可能である。
(4−3.各工程の攪拌強度、ニッケルイオン)
次に、種粒子生成工程及び種粒子成長工程における攪拌強度、ニッケルイオン及びコバルトイオンの制御について説明する。
攪拌強度の尺度は、用いる攪拌機の羽根にかかる吐出ヘッドを利用することができる。攪拌機による吐出ヘッドH(m/s)は、攪拌動力数Np、吐出流量数Nq、攪拌機の攪拌羽根の直径D(m)、攪拌回転数n(1/s)から式1により求められる。また吐出流量数Nqは、吐出流量Q(m/s)、攪拌機の攪拌羽根の直径D(m)、攪拌回転数n(1/s)の関係式である式2から求められる。
H=(Np/Nq)・D・n 式1
Q=Nq・D・n 式2
種粒子生成工程では、攪拌羽根の吐出ヘッドが50〜100m/sであり、反応水溶液のニッケルイオン濃度を0.1〜5質量ppmの範囲に維持して種粒子生成を行う。本発明の製造方法においては、コバルトの溶解度は、ニッケルの溶解度を決定する因子により一義的に定まることが確認されており、ニッケルの溶解度、すなわちニッケルイオン濃度を指標として管理することで、コバルトイオン濃度も同時に適正な範囲に制御することができる。
ニッケルイオンやコバルトのイオン濃度が小さいと種粒子発生数は増加し、吐出ヘッドが大きいと核発生数は増加する。また、発生数が比較的小さい領域では、晶析条件のゆらぎによる核発生数の変動が大きくなり、結果として粒径の均一性、安定性が損なわれることがある。即ち、核発生数を安定的に保つためには、ニッケルコバルトのイオン濃度は低い方が、吐出ヘッドは大きい方が好ましい。
吐出ヘッドが50m/s未満になると種粒子の凝集が生じて種粒子発生数の変動や種粒子の粒径のばらつきが生じて得られる複合水酸化物粒子の粒度分布が悪化する。一方、吐出ヘッドが100m/sを超えても種粒子発生数を安定化させる効果の向上はない。
また、ニッケルイオン濃度が0.1質量ppm未満になると、種粒子が過度に微粒化して凝集が生じたり、種粒子含有スラリーがゲル化して反応の制御が困難となる。一方、ニッケルイオン濃度が5質量ppmを超えると、核発生数の変動が大きくなるとともに粒子成長が起こる。
そして、種粒子成長工程では、ニッケルイオン濃度を5〜300質量ppmの範囲に維持し、種粒子生成工程におけるニッケルイオン濃度よりも高くする。更には、種粒子成長工程において、種粒子成長用スラリーを攪拌しながら混合水溶液を添加する際に、攪拌羽根の吐出ヘッドを10〜50m/s、かつ、種粒子生成工程における攪拌羽根の吐出ヘッド以下とすることが好ましい。吐出ヘッドは10〜45m/sとすることがより好ましく、10〜40m/sとすることがさらに好ましい。
ニッケルイオン濃度が5質量ppm未満になると、種粒子成長用スラリー中で種粒子が生成して複合水酸化物粒子の粒度分布が悪化する。一方、ニッケルイオン濃度が300質量ppmを超えると、種粒子の成長速度が著しく低下して、生産性が大幅に悪化する。また、排液中に含まれる金属分が多くなり歩留まりが悪化する。
また、攪拌羽根の吐出ヘッドが10m/s未満になると、粒子間の凝集が生じてニッケルコバルト複合水酸化物の粒度分布が悪化することがある。一方、吐出ヘッドが50m/sを超えると、粒子が解砕されて微粒が発生し、複合水酸化物粒子物の粒度分布が悪化することがある。
このように、種粒子生成工程において、ニッケルイオン濃度を低く、吐出ヘッドを大きく制御することにより、種粒子発生数を安定的に保つことができる。一方、種粒子成長工程において、ニッケルイオン濃度を高く、好ましくはさらに吐出ヘッドを小さく制御することにより、種粒子の発生を抑制しながら種粒子の成長を優先的に進めることができる。また、種粒子発生工程又は種粒子成長工程の各段階において、ニッケル及びコバルトの溶解度が各段階に適した範囲から外れた時間があると、当該時間において種粒子生成段階では粒子成長が、種粒子成長段階では核生成が生じるため、粒径の均一性、安定性が損なわれてしまう。
したがって、種粒子生成工程の晶析条件を、当該工程の全期間に亘ってニッケルイオン濃度を低く、吐出ヘッドを大きく保つことで、核、すなわち、種粒子の発生数を増加させ、晶析中における時間当たりの種粒子発生数を安定させることができる。更に、生成した種粒子を種粒子成長工程に導き、種粒子成長工程の全期間に亘ってニッケルイオン濃度を最適範囲内に維持することで、粒子成長を優先的に行わせることができる。これにより、単独の反応槽で種粒子発生から種粒子成長まで行わせる方法よりも、粒度分布が狭く粒径が均一で、晶析中の粒度分布の変化が小さい晶析反応を行わせることが可能である。
(4−4.pHの制御、アンモニウム濃度、粒径等)
各工程において使用する物質や溶液、反応条件について説明する。
(種粒子生成工程のpH)
種粒子生成工程では、反応水溶液のpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH値が好ましくは12.0〜14.0、より好ましくは12.0〜13.5となるように調整されている。
pH値が14.0より高い場合、ニッケルイオン濃度が低下して生成する種粒子が微細になり過ぎ、反応水溶液がゲル化することがある。一方、pH値が12.0未満では、ニッケルイオン濃度が上昇して種粒子の形成とともに種粒子の成長反応が生じるので、形成される核の粒度分布の範囲が広くなり不均質なものとなることがある。
したがって、種粒子生成工程の反応水溶液のpH値は12.0〜14.0とすることが好ましい。種粒子生成工程では、pH値を12.0〜14.0とすることによって、種粒子の成長を抑制して優先的に核生成を起こさせ、形成される種粒子もより均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとなる。
(種粒子成長工程のpH)
種粒子成長工程では、種粒子含有スラリーのpH値が、液温25℃を基準として測定したときのpH値として、pH値が好ましくは11.5〜13.0、より好ましくは11.5〜12.5となるように調整する。
pH値が13.0より高い場合、新たに生成される種粒子が多くなり粒径分布が狭い複合水酸化物粒子が得られなくなることがある。pH値が11.5未満では、アンモニアイオンによる溶解度が高く、析出せずに液中に残る金属イオンが増えるため好ましくない。したがって、種粒子成長工程の種粒子含有スラリーのpH値を11.5〜13.0とすることが好ましい。種粒子成長工程では、pH値を11.5〜13.0とすることによって、種粒子生成性工程で生成した種粒子の成長を優先的に起こさせ、新たな種粒子形成を抑制することができることから、形成されるニッケルコバルト複合水酸化物粒子をより均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとなる。
(アンモニア濃度)
種粒子生成工程では、反応水溶液中のアンモニア濃度(アンモニウムイオン濃度)を5〜15g/Lに制御し、種粒子成長工程では、種粒子成長用スラリー中のアンモニア濃度を10〜20g/Lに制御することが好ましい。アンモニア濃度を種粒子生成工程および種粒子成長工程でそれぞれ調整することによって、各工程中のニッケルイオン濃度を調整することが容易に可能となる。
種粒子生成工程において、アンモニア濃度が5g/L未満であると、金属(特にニッケルやコバルト)の溶解度を一定に維持することができないため、形状及び粒径が整った種粒子が得られず、ゲル状の種粒子が生成しやすいため粒度分布が広がってしまうことがある。一方、アンモニア濃度が15g/Lを越える濃度では、金属の溶解度が大きくなりすぎ、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれなどが起きてしまうことがある。
種粒子成長工程において、アンモニア濃度が10g/L未満であると、金属の溶解度を一定に維持することができず、種粒子の成長が不均一となり、二次粒子の幅がばらつく原因となる。一方、アンモニア濃度が20g/Lを越える濃度では、金属の溶解度が大きくなりすぎ、種粒子成長用スラリー中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれなどが起きてしまうことがある。
また、アンモニア濃度が変動すると、金属の溶解度が変動し、均一な水酸化物粒子が形成されないため、一定値に維持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度は、上限と下限の幅を5g/L程度として所望の濃度に維持することが好ましい。
アンモニウムイオン供給体は、特に限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを使用することができる。
(種粒子生成量)
種粒子生成工程において生成する種粒子の量は特に限定されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、例えば、バッチ法では、全体量、つまり、複合水酸化物粒子を得るために供給する全金属塩の0.1%から10%とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。また、連続晶析法では、種粒子生成工程と種粒子成長工程のそれぞれの反応槽に供給する金属の供給速度の比で調整することができ、種粒子の量、すなわち、種粒子生成工程における金属の供給速度は、種粒子成長工程における供給速度の5〜20%とすることが好ましい。
(複合水酸化物粒子の粒径制御)
複合水酸化物粒子の粒径は、種粒子成長工程の時間および金属源の供給量により制御できるので、所望の粒径に成長するまで粒子成長工程を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。例えば、連続晶析法を用いた場合には、槽内の滞留時間を成長に必要な時間とすればよく、混合水溶液の濃度と供給量で調整すればよい。
また、複合水酸化物粒子の粒径は、種粒子成長工程のみならず、種粒子生成工程のニッケルイオン濃度および攪拌強度と種粒子生成のために投入した原料の量でも制御することができる。即ち、種粒子の生成工程において、種粒子の数を多くすると、種粒子成長工程を同条件とした場合でも複合水酸化物粒子の粒径を小さくできる。一方、種粒子生成数が少なくするように制御すれば、得られる複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
(他の条件)
以下、金属化合物、反応水溶液中アンモニア濃度、反応温度、雰囲気などの条件を説明するが、種粒子生成工程と種粒子成長工程との相違点は、上述した攪拌強度、ニッケルイオン及びコバルトイオンの濃度、pH値、アンモニア濃度を制御する範囲であり、他の条件については両工程において実質的に同様である。
(金属化合物)
金属化合物としては、目的とする金属を含有する化合物を用いる。使用する化合物は、特に限定されないが、水溶性の化合物を用いることが好ましく、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。例えば、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンが好ましく用いられる。
(添加元素)
添加元素(Ti、V、Cr、Al、Mg、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれる1種以上の元素)は、特に限定されないが、水溶性の化合物を用いることが好ましく、例えば硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム等を用いることができる。
かかる添加元素を複合水酸化物粒子の内部に均一に分散させる場合には、混合水溶液に、添加元素を含有する添加物を添加すればよい。これにより、複合水酸化物粒子の内部に添加元素を均一に分散させた状態で共沈させることできる。
また、添加するために複合水酸化物粒子の表面を添加元素で被覆する場合には、例えば、添加元素を含んだ水溶液で複合水酸化物粒子をスラリー化し、晶析反応により添加元素を複合水酸化物粒子表面に析出させれば、その表面を添加元素で被覆することができる。この場合、添加元素を含んだ水溶液に替えて添加元素のアルコキシド溶液を用いてもよい。さらに、複合水酸化物粒子に対して、添加元素を含んだ水溶液又はスラリーを吹き付けて乾燥させることによっても、複合水酸化物粒子の表面を添加元素で被覆することができる。
なお、表面を添加元素で被覆する場合、混合水溶液中に存在する添加元素イオンの原子数比を被覆する量だけ少なくしておくことで、得られる複合水酸化物粒子の金属イオンの原子数比と一致させることができる。
(混合水溶液の濃度)
混合水溶液の濃度は、金属化合物の合計で1〜2.4mol/Lとすることが好ましい。混合水溶液の濃度が1mol/L未満でも複合水酸化物粒子を晶析反応させることは可能であるが、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるために生産性が低下して好ましくない。
一方、混合水溶液の塩濃度が2.4mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、結晶が再析出して設備の配管を詰まらせるなどの不具合が生じる。
また、金属化合物は、必ずしも混合水溶液として反応槽に供給しなくてもよく、反応水溶液中における金属化合物の合計の濃度が上記範囲となるように、個々の金属化合物の水溶液として所定の割合で反応槽内に供給してもよい。
更に、混合水溶液や個々の金属化合物の水溶液を反応槽に供給する量は、バッチ法では、晶析反応を終えた時点での晶析物濃度が概ね30〜200g/Lになるようにすることが好ましい。晶析物濃度が30g/L未満の場合は、一次粒子の凝集が不十分になることがあり、200g/Lを越える場合は、添加する混合水溶液の反応槽内での拡散が十分でなく粒子成長に偏りが生じることがあるからである。一方、連続晶析法の場合は、種粒子成長工程における晶析物濃度は、供給される全金属の供給速度を種粒子生成工程と種粒子成長工程に供給される混合水溶液、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液の合計の供給速度で除した値を水酸化物に変換した値となる。
(反応水溶液及び種粒子成長スラリーの液温)
反応時の反応水溶液や種粒子成長スラリーの液温は、好ましくは20℃以上、より好ましくは20〜60℃に設定する。液温が20℃未満の場合、温度が低いため種粒子発生が起こりやすく制御が難しくなる。一方、60℃を越えると、アンモニアの揮発が促進されるため所定のアンモニア濃度を保つために過剰のアンモニウムイオン供給体を添加しなければならなくなることがある。
(アルカリ水溶液)
pHを調整するアルカリ水溶液は、特に限定されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。かかるアルカリ金属水酸化物の場合、直接、反応槽に供給する前の混合水溶液に添加してもよいが、反応水溶液のpH値制御の容易さから、水溶液として反応槽内の反応水溶液に添加することが好ましい。
また、アルカリ水溶液を反応槽に添加する方法も特に限定されるものではなく、混合水溶液を十分に攪拌しながら、定量ポンプなど、流量制御が可能なポンプで、反応槽内の水溶液pH値が所定の範囲に維持されるように添加すればよい。
(反応雰囲気)
反応中の雰囲気は、特に制限されるものではないが、安定的に製造するためには、過度の酸化性雰囲気は好ましくない。かかる反応中の雰囲気の制御は、少なくとも種粒子成長工程で行うことが好ましく、例えば、反応槽内空間の酸素濃度を10%以下に制御して晶析反応を行うことで、粒子の不要な酸化を抑制し、粒度の揃った粒子を得ることができる。そして、このような状態に反応槽内空間を保つための手段としては、窒素などの不活性ガスを槽内へ常に流通させることが挙げられる。
(製造設備)
ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法では、反応槽の仕様及びそれぞれの溶液の供給量の調整方法は特に限定されるものではなく、バッチ法、連続晶析法のいずれの方法も用いることができる。しかしながら、反応槽として攪拌機、及び温度制御手段を備える容器を用いて、ニッケル及びコバルト等を含む混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液を定量的に連続供給し、アルカリ水溶液は添加量を調整して供給することによって、該反応槽内の反応水溶液や種粒子成長スラリーを所定のニッケルイオン濃度と攪拌強度で維持しながら反応を行い、生成された複合水酸化物粒子を連続排出する連続晶析法が好ましい。
連続晶析法の製造設備としては、例えば、種粒子生成工程を行う第1の反応槽と、種粒子成長工程を行う第2の反応槽とを備え、第1の反応槽から第2の反応槽へ種粒子含有スラリーを連続的に供給可能なように第1の反応槽と第2の反応槽とが接続されているものを用いることができる。連続的に供給可能とする手段としては、連続的の供給できれば特に限定されず、例えばオーバーフローにより行う。
生成されたニッケルコバルト複合水酸化物を回収する方法としては、特に限定されず、例えば種粒子成長工程を行った反応槽(第2の反応槽)からニッケルコバルト複合水酸化物が含まれた反応液をオーバーフローさせて回収する方法がある。
以上のようなニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法では、種粒子生成工程と種粒子成長工程とを分離して行い、種粒子生成工程において、混合水溶液とアンモニウム溶液とからなる反応水溶液を攪拌羽根の吐出ヘッドが50〜100m/sで攪拌しつつ、反応水溶液のニッケルイオン濃度を0.1〜5質量ppmの範囲に維持して種粒子を生成させ、種粒子成長工程において、ニッケルイオン濃度が5〜300質量ppmの範囲内で、かつ、上記種粒子生成工程のニッケルイオン濃度より高いニッケルイオン濃度に維持して攪拌することによって、種粒子生成工程では種粒子発生が安定し、種粒子成長工程では粒子成長を優先的が行われるようになる。これにより、ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法では、粒度が均一なニッケルコバルト複合水酸化物を得ることができる。
また、ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法では、バッチ式ではなく連続式を適用することができるため、容易に効率良くニッケルコバルト複合水酸化物を製造することができる。したがって、ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法は、工業的価値はきわめて大きい方法である。
更に、このニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法により得られたニッケルコバルト複合水酸化物を熱処理し、リチウム化合物と混合した混合物を焼成することでリチウムニッケルコバルト複合酸化物、即ち非水系電解質二次電池の正極活物質を得ることができる。得られた正極活物質は、粒径が均一で粒度分布が狭いものとなるため、サイクル特性等の電池特性が優れたものとなる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、邪魔板を4枚取り付けた槽容量2Lのオーバーフロー式晶析反応槽Iに工業用水1.5L、25重量%アンモニア水を300ml投入して恒温槽及び加温ジャケットにて50℃に加温し、24%苛性ソーダ溶液を添加して、反応前水溶液のpHを25℃における値として12.8〜12.9を保つように制御した。実際にはpH管理を正確に行うため、反応前水溶液を採取し25℃に冷却してpHを測定し、25℃でのpHが12.8〜12.9になるように50℃でのpHを11.8に調整して反応前水溶液を得た。
晶析反応槽Iの攪拌は、直径3cmの3枚羽根タービン翼を用いて1500rpmで攪拌を行った。吐出ヘッドは、上述の式1及び式2から50m/sである。
晶析反応槽Iでの晶析反応は、50℃に維持した反応前水溶液を攪拌しつつ、定量ポンプを用いて、Niモル濃度1.69mol/Lの硫酸ニッケルとCoモル濃度0.31mol/Lの硫酸コバルトとの複合溶液(以下、混合水溶液)を5ml/minで供給し、併せて25重量%アンモニア水を0.5ml/minで供給しつつ、24%苛性ソーダ溶液を断続的に添加し、25℃でのpHが12.8〜12.9になるように制御して行った。この際の液中ニッケルイオン濃度は1〜2ppmであった。
そして、晶析反応槽Iからオーバーフローにより連続的に排出される晶析物(種粒子)を晶析反応槽IIに導いた。晶析反応槽の構成及び晶析条件は次の通りである。邪魔板を4枚取り付けた槽容量34Lのオーバーフロー式晶析反応槽IIには工業用水32L、25重量%アンモニア水を1300ml投入して恒温槽及び加温ジャケットにて50℃に加温し、24%苛性ソーダ溶液を添加して、槽内pHを25℃における値として12.1〜12.3を保つように制御した。実際にはpH管理を正確に行うため、槽内液を採取し25℃に冷却してpHを測定し、25℃でのpHが12.1〜12.3になるように50℃でのpHを11.2に調整した。
晶析反応槽IIの攪拌は、直径10cmの3枚羽根タービン翼を用いて1000rpmで攪拌を行った。吐出ヘッドは、上述の式1及び式2から10m/sである。
晶析反応槽IIでの晶析反応は、50℃に維持した反応槽内を攪拌しつつ、定量ポンプを用いて、Niモル濃度1.69mol/Lの硫酸ニッケルとCoモル濃度0.31mol/Lの硫酸コバルトとの複合溶液(以下、混合水溶液)を30ml/minで供給し、併せて25重量%アンモニア水を2.5ml/minで供給しつつ、24%苛性ソーダ溶液を断続的に添加し、25℃でのpHが12.2〜12.3になるように制御して行った。この際の液中ニッケル濃度は250〜300ppmであった。
次に、晶析反応槽IIからオーバーフローにより連続的に回収されたニッケルコバルト複合水酸化物は、その後適宜固液分離し、水洗し、乾燥して粉末状のニッケルコバルト複合水酸化物を得た。レーザー回折式粒度分布計(商品名マイクロトラック、日機装製)を用いて粒度分布を測定し、D10、50、90を求めた。(D50−D10)/D50は0.24であり、(D90−D50)/D50は0.21であった。
(実施例2〜6、比較例1〜6)
実施例2〜6及び比較例1〜6は、晶析反応槽I及び晶析反応槽IIの液中のニッケル濃度をpHおよびアンモニア濃度を調整することにより、吐出ヘッドは攪拌機の回転数を調整することにより、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケルコバルト複合水酸化物を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0005943051
表1に示す結果から、実施例1〜6では、ニッケルコバルト複合水酸化物の粒度分布が(D50−D10)/D50≦0.25、かつ(D90−D50)/D50≦0.25を満たしており、粒度分布の狭い粒径が均一な粒子が得られていることがわかる。
実施例6では、種粒子成長工程の攪拌羽根の吐出ヘッドが実施例1〜5に比べて大きいため、実施例1〜5に比べて(D50−D10)/D50と(D90−D50)/D50がややわずかに大きくなっている。このことから、粒子成長工程における吐出ヘッドを小さくすることでより粒度分布が狭く粒径が均一な粒子が得られることがわかる。
一方、比較例1は、種粒子生成工程の吐出ヘッドが小さく、比較例2、3は、ニッケルイオン濃度が大きく、比較例4、5は、種粒子成長工程のニッケルイオン濃度が小さくかつ吐出ヘッドが小さく、比較例6は、ニッケルイオン濃度が小さく、吐出ヘッドが大きくなっているため、粒度分布が広く、微粒や粗粒が混入していることがわかる。
更に、実施例と比較例の複合水酸化物を用いて公知の方法で正極活物質を得たところ、正極活物質の粒度分布は、複合水酸化物の粒度分布と同様になり、本発明により粒径の均一性に優れた正極活物質が得られることが確認された。

Claims (6)

  1. 一般式:Ni1−x−yCoMn(OH)(0.05≦x≦0.95、0≦y≦0.55、0≦z≦0.1、x+y+z<1、MはV、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素)で表され、非水系電解質二次電池の正極活物質用であるニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法であって、
    上記一般式を構成する金属を含む金属化合物を含有した混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液とからなる反応水溶液を攪拌羽根の吐出ヘッドが50〜100m/sで攪拌しつつ、該反応水溶液のニッケルイオン濃度を0.1〜5質量ppmの範囲に維持して種粒子を生成させる種粒子生成工程と、
    上記種粒子を含む反応水溶液と、上記一般式を構成する金属を含む金属化合物を含有した混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニウム水溶液とからなる種粒子成長用水溶液を、ニッケルイオン濃度が5〜300質量ppmの範囲内で、かつ、上記種粒子生成工程のニッケルイオン濃度より高いニッケルイオン濃度に維持して、攪拌することで上記種粒子を成長させてニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る種粒子成長工程とを備えることを特徴とするニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法。
  2. 上記種粒子成長工程では、上記種粒子成長用水溶液を攪拌羽根の吐出ヘッドが10〜50m/s、かつ、上記種粒子生成工程における攪拌羽根の吐出ヘッド以下で攪拌することを特徴とする請求項1記載のニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法。
  3. 上記種粒子生成工程では、上記反応水溶液のpH値を液温25℃基準で12.0〜14.0に制御し、上記種粒子成長工程では、上記種粒子成長用水溶液のpH値を液温25℃基準で11.5〜13.0に制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法。
  4. 上記種粒子生成工程では、上記反応水溶液のアンモニア濃度を5〜15g/Lに制御し、上記種粒子成長工程では、上記種粒子成長用水溶液のアンモニア濃度を10〜20g/Lに制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法。
  5. 上記種粒子生成工程を第1の反応槽で行い、上記種粒子成長工程を第2の反応槽で行い、
    上記種粒子成長工程は、上記種粒子を含有する反応水溶液を、上記第1の反応槽から上記第2の反応槽へ連続的に供給するとともに、該第2の反応槽に上記混合水溶液と上記アンモニウム水溶液を供給することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法。
  6. 上記種粒子成長工程で生成されたニッケルコバルト複合水酸化物粒子を、上記第2の反応槽から上記種粒子成長用水溶液をオーバーフローさせることにより回収することを特徴とする請求項5記載のニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法。
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