JP2022117915A - 負極、蓄電素子、及びそれらの製造方法 - Google Patents

負極、蓄電素子、及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率を高めることができる負極、このような負極を備える蓄電素子、及びこれらの製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一側面に係る負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を有し、上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含み、上記負極活物質層の密度が、1.08g/cm3超1.51g/cm3以下である蓄電素子用の負極である。【選択図】図1

Description

本発明は、負極、蓄電素子、及びそれらの製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。また、非水電解液二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタ、非水電解液以外の電解液が用いられた蓄電素子等も広く普及している。
蓄電素子としては、正極活物質を含む正極と負極活物質を含む負極とがセパレータを介して重ね合わされている電極体を備えるものが一般的である。このような電極体が電解質と共に容器に収納され、蓄電素子を構成している。負極活物質としては、黒鉛を初めとした炭素材料が広く用いられている(特許文献1、2参照)。
特開2005-222933号公報 特開2017-069039号公報
蓄電素子には、充放電を繰り返しても放電容量及び出力が低下しにくいこと、すなわち容量維持率及び出力維持率が高いことが求められる。
本発明の目的は、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率を高めることができる負極、このような負極を備える蓄電素子、及びこれらの製造方法を提供することである。
本発明の一側面に係る負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を有し、上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含み、上記負極活物質層の密度が、1.08g/cm超1.51g/cm以下である蓄電素子用の負極(A)である。
本発明の他の一側面に係る負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を有し、上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上である蓄電素子用の負極(B)である。
本発明の他の一側面に係る蓄電素子は、本発明の一側面に係る負極(A)又は負極(B)を備える蓄電素子である。
本発明の他の一側面に係る負極の製造方法は、負極基材上に直接又は他の層を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、密度が1.08g/cm超1.51g/cm以下である負極活物質層を得ることを備え、上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含む蓄電素子用の負極の製造方法(A)である。
本発明の他の一側面に係る負極の製造方法は、負極基材上に直接又は他の層を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が1.30以上である負極活物質層を得ることを備え、上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下である蓄電素子用の負極の製造方法(B)である。
本発明の他の一側面に係る蓄電素子の製造方法は、本発明の一側面に係る負極(A)若しくは負極(B)又は本発明の一側面に係る負極の製造方法(A)若しくは負極の製造方法(B)で得られた負極を用いて蓄電素子を作製することを備える蓄電素子の製造方法である。
本発明の一側面によれば、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率を高めることができる負極、このような負極を備える蓄電素子、及びこれらの製造方法を提供することができる。
図1は、蓄電素子の一実施形態を示す透視斜視図である。 図2は、蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。
初めに、本明細書によって開示される負極、負極の製造方法、蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法の概要について説明する。
本発明の一側面に係る負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を有し、上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含み、上記負極活物質層の密度が、1.08g/cm超1.51g/cm以下である蓄電素子用の負極(A)である。
本発明の一側面に係る負極(A)は、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率を高めることができる。このような理由は定かではないが、以下の理由が推測される。中実天然黒鉛は、充放電サイクルに伴う体積変化が生じ難い活物質粒子である。このため、本発明の一側面に係る負極(A)においては、充放電を繰り返しても負極活物質層における負極活物質粒子間の導電経路が保持されやすく、高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率が高まると推測される。また、中実黒鉛の中でも、中実天然黒鉛を用いることで、高率充放電後の容量維持率がより高まる。詳細は不明だが、これは、中実天然黒鉛は中実人造黒鉛よりも結晶性が高いことなどに起因するものと推測される。さらに本発明の一側面に係る負極(A)においては、負極活物質層の密度が1.08g/cm超1.51g/cm以下であることにより、負極活物質層内に十分な導電経路が形成されることなどによって、蓄電素子の充放電サイクル後の出力維持率を高めることができると推測される。
中実天然黒鉛における「中実」とは、天然黒鉛の粒子内部が詰まっていて実質的に空隙が存在しないことを意味する。より具体的には、「中実」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて取得されるSEM像において観察される粒子の断面において、粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)が2%以下であることをいう。好ましい一態様では、中実天然黒鉛の上記空隙の面積率は、1%以下であってもよい。
黒鉛粒子における「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)」は、以下の手順で決定することができる。
(1)測定用試料の準備
測定対象とする負極を熱硬化性の樹脂で固定する。樹脂で固定された負極について、クロスセクション・ポリッシャを用いることで、断面を露出させ、測定用試料を作製する。なお、測定対象とする負極は、下記の手順により準備する。蓄電素子を、0.1Cの電流で、通常使用時の放電終止電圧まで定電流放電し、放電された状態とする。この放電された状態の蓄電素子を解体し、負極を取り出して、ジメチルカーボネートにより充分に洗浄した後、室温にて減圧乾燥を行う。蓄電素子の解体から測定対象とする負極の準備までの作業は、露点-40℃以下の乾燥空気雰囲気中で行う。
(2)SEM像の取得
SEM像の取得には、走査型電子顕微鏡としてJSM-7001F(日本電子株式会社製)を用いる。SEM像は、二次電子像を観察するものとする。加速電圧は、15kVとする。観察倍率は、一視野に現れる黒鉛粒子が3個以上15個以内となる倍率に設定する。得られたSEM像は、画像ファイルとして保存する。その他、スポット径、ワーキングディスタンス、照射電流、輝度、フォーカス等の諸条件は、黒鉛粒子の輪郭が明瞭になるように適宜設定する。
(3)黒鉛粒子の輪郭の切り抜き
画像編集ソフトAdobe Photoshop Elements 11の画像切り抜き機能を用いて、取得したSEM像から黒鉛粒子の輪郭を切り抜く。この輪郭の切り抜きは、クイック選択ツールを用いて黒鉛粒子の輪郭より外側を選択し、黒鉛粒子以外を黒背景へと編集して行う。このとき、輪郭を切り抜くことができた黒鉛粒子が3個未満であった場合は、再度、SEM像を取得し、輪郭を切り抜くことができた黒鉛粒子が3個以上になるまで行う。
(4)二値化処理
切り抜いた黒鉛粒子のうち1つ目の黒鉛粒子の画像について、画像解析ソフトPopImaging 6.00を用い、強度が最大となる濃度から20%分小さい濃度を閾値に設定して二値化処理を行う。二値化処理により、濃度の高い側の面積を算出することで「粒子内の空隙の面積S1」とする。
ついで、先ほどと同じ1つ目の黒鉛粒子の画像について、濃度10%を閾値として二値化処理を行う。二値化処理により、黒鉛粒子の外縁を決定し、当該外縁の内側の面積を算出することで、「粒子全体の面積S0」とする。
上記算出したS1及びS0を用いて、S0に対するS1の比(S1/S0)を算出することにより、1つ目の黒鉛粒子における「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率R1」を算出する。
切り抜いた黒鉛粒子のうち2つ目以降の黒鉛粒子の画像についても、それぞれ、上記の二値化処理を行い、面積S1、面積S0を算出する。この算出した面積S1、面積S0に基づいて、それぞれの黒鉛粒子の空隙の面積率R2、R3、・・・を算出する。
(5)空隙の面積率の決定
二値化処理により算出した全ての空隙の面積率R1、R2、R3、・・・の平均値を算出することにより、「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)」を決定する。
なお、上記「SEM像の取得」に用いる走査型電子顕微鏡、「黒鉛粒子の輪郭の切り抜き」に用いる画像編集ソフト、及び「二値化処理」に用いる画像解析ソフトに代えて、これらと同等の測定、画像編集及び画像解析が可能な装置及びソフトウェア等を用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、エックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。炭素材料の「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属リチウム(Li)を対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池における開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
負極活物質層の「密度」(g/cm)とは、負極活物質層の面積当たりの質量及び負極活物質層の平均厚さから算出される値である。すなわち、負極活物質層の「密度」は、見かけ密度である。負極活物質層の平均厚さとは、任意の5ヶ所で測定した厚さの平均値とする。なお、負極活物質層が負極基材の両面に形成されている場合は、負極基材のいずれか片側の面に形成されている負極活物質層の平均厚さとする。
上記負極活物質が、実質的に上記中実天然黒鉛からなることが好ましい。このような場合、負極活物質層における導電経路がより保持されやすくなるため、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率をより高めることができる。なお、「負極活物質が、実質的に中実天然黒鉛からなる」とは、全ての負極活物質に対する中実天然黒鉛の含有割合が99質量%以上であることをいう。
上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下であることが好ましい。負極活物質の平均円形度が低い場合、負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が増える傾向にある。従って、負極活物質の平均円形度が、0.7以下であることで、充放電を繰り返したときの負極活物質層における負極活物質粒子間の導電経路がより保持されやすくなるため、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率がより高まる。
負極活物質の「平均円形度」は、任意の3個の負極活物質の粒子のそれぞれの円形度の平均値である。各粒子の円形度は、負極活物質のSEM像に基づく画像解析から測定する。負極活物質のSEM像は、上記した黒鉛粒子における「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)」を決定する手順の(1)及び(2)に準じて取得する。但し、観察倍率については、一視野に現れる負極活物質の粒子が3個以上15個以下となる倍率に設定する。画像解析は、例えば、上記した黒鉛粒子における「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)」の決定手順で記載した画像解析ソフトPopImaging 6.00を用いて行うことができる。但し、この画像解析ソフトと同等の画像解析が可能な他のソフトウェア等を用いてもよい。画像解析により、SEM像内の任意の3個の負極活物質の粒子の粒子全体の面積と、粒子の外周長を測定する。負極活物質の各粒子の円形度は、下記式により算出し、その平均値を負極活物質の「平均円形度」とする。
円形度=(4π×粒子全体の面積)/(粒子の外周長)
上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上であることが好ましい。このように負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が多い場合、充放電を繰り返したときの負極活物質層における負極活物質粒子間の導電経路がより保持されやすいため、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率がより高まる。
「負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数」は、負極活物質のSEM像に基づく画像解析から測定する。負極活物質のSEM像は、上記した黒鉛粒子における「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)」を決定する手順の(1)及び(2)に準じて取得する。但し、観察倍率については、一視野に現れる負極活物質の粒子が20個以上200個以内となる倍率に設定する。画像解析は、例えば、上記した黒鉛粒子における「粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)」の決定手順で記載した画像解析ソフトPopImaging 6.00を用いて行うことができる。但し、この画像解析ソフトと同等の画像解析が可能な他のソフトウェア等を用いてもよい。画像解析により、SEM像内の全ての負極活物質の粒子の他の粒子との全接点数をカウントする。この全接点数をSEM像内の全ての負極活物質の粒子の数で除した値を「負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数」とする。
本発明の他の一側面に係る負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を有し、上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上である蓄電素子用の負極(B)である。
本発明の一側面に係る負極(B)は、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率を高めることができる。このような理由は定かではないが、負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上であることにより、充放電を繰り返しても負極活物質層における負極活物質粒子間の導電経路が保持されやすいことなどによると推測される。さらに、負極活物質が天然黒鉛を含むことによって、天然黒鉛は人造黒鉛よりも結晶性が高いことなどにより、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率がより高まると考えられる。
本発明の他の一側面に係る蓄電素子は、本発明の一側面に係る負極(A)又は負極(B)を備える。当該蓄電素子は、本発明の一側面に係る負極(A)又は負極(B)を備えるため、高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率が高い。
本発明の他の一側面に係る負極の製造方法は、負極基材上に直接又は他の層を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、密度が1.08g/cm超1.51g/cm以下である負極活物質層を得ることを備え、上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含む蓄電素子用の負極の製造方法(A)である。
本発明の他の一側面に係る負極の製造方法は、負極基材上に直接又は他の層を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が1.30以上である負極活物質層を得ることを備え、上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下である蓄電素子用の負極の製造方法(B)である。
当該負極の製造方法(A)及び負極の製造方法(B)によれば、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率を高めることができる負極を製造することができる。
本発明の他の一側面に係る蓄電素子の製造方法は、本発明の一側面に係る負極(A)若しくは負極(B)又は本発明の一側面に係る負極の製造方法(A)若しくは負極の製造方法(B)で得られた負極を用いて蓄電素子を作製することを備える蓄電素子の製造方法である。当該蓄電素子の製造方法によれば、高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率が高い蓄電素子を製造することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る負極、負極の製造方法、蓄電素子、蓄電装置、蓄電素子の製造方法、及びその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
<負極>
本発明の一実施形態に係る負極(A)は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層とを有する。当該負極(A)は、二次電池等の蓄電素子に用いられる負極である。
負極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cmを閾値として判定する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、炭素質材料等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。負極基材及び後述する正極基材の「平均厚さ」とは、所定の面積の基材を打ち抜いた際の打ち抜き質量を、基材の真密度及び打ち抜き面積で除した値をいう。
中間層は、負極基材と負極活物質層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで負極基材と負極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
負極活物質は、中実天然黒鉛を含む。当該負極(A)の負極活物質が中実天然黒鉛を含むことにより、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率を高めることができ、低温下での直流抵抗も低くなる。天然黒鉛とは、天然の資源から採れる黒鉛の総称である。中実天然黒鉛の形状は特に限定されず、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛(鱗状黒鉛)、土状黒鉛等が例示される。中実天然黒鉛は、鱗片状天然黒鉛等を球状化した球状化天然黒鉛粒子であってもよい。天然黒鉛は、充放電前又は放電状態において測定されるCuKα線を用いたエックス線回折パターンにおいて、回折角2θが40°から50°の範囲に4つのピークが現れるものであってもよい。これらの4つのピークは、六方晶系の構造に由来する2つのピークと、菱面体晶系の構造に由来する2つのピークとであるとされている。人造黒鉛の場合、一般的に、六方晶系の構造に由来する2つのピークのみが現れるとされている。エックス線回折パターンにおいて、(100)面に由来するピーク強度に対する(012)面に由来するピーク強度の比((012)/(100))は0.3以上が好ましく、0.4以上がさらに好ましい。上記ピーク強度の比((012)/(100))は0.6以下が好ましい。ここで、(100)面は六方晶系の構造に由来し、(012)面は菱面体晶系の構造に由来する。
中実天然黒鉛の平均粒径は、例えば、1μm以上100μm以下が好ましく、3μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましく、20μm以下又は10μm以下がよりさらに好ましい。中実天然黒鉛の平均粒径を上記下限以上とすることで、中実天然黒鉛の製造又は取り扱いが容易になる。中実天然黒鉛の平均粒径を上記上限以下とすることで、負極活物質層の電子伝導性が向上する。「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
中実天然黒鉛を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
中実天然黒鉛のアスペクト比としては、1以上5以下が好ましく、1.5以上4以下がより好ましく、2以上3以下がさらに好ましい。中実天然黒鉛のアスペクト比が上記範囲である場合、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率をより高め、直流抵抗をより低くすることができる。アスペクト比とは、SEMを用いて取得されるSEM像において観察される粒子の断面において、粒子の最長となる径Aと、径Aに垂直な方向において最長となる径Bとの比(A/B)を意味する。アスペクト比を求めるときのSEM像は、上記した黒鉛粒子における粒子全体の面積に対する粒子内の空隙の面積率(空隙率)を求める場合と同様の方法で取得することができる。
負極活物質層における中実天然黒鉛の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい場合もある。中実天然黒鉛の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できると共に、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率をより高めることができる。
負極活物質は、中実天然黒鉛以外の他の負極活物質を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;中実天然黒鉛以外の黒鉛、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。但し、全ての負極活物質に対する中実天然黒鉛の含有割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.9質量%以上がよりさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。このように、負極活物質が実質的に中実天然黒鉛のみからなる場合、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率をより高めることができる。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電された状態においてXエックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
負極活物質の平均円形度の上限は、例えば0.8であってもよいが、0.7が好ましく、0.6がより好ましく、0.5がさらに好ましい。負極活物質の平均円形度が上記上限以下であることにより、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率がより高まる。一方、負極活物質の平均円形度の下限としては、0.2が好ましく、0.3がより好ましく、0.4がさらに好ましい。負極活物質の平均円形度は、上記したいずれかの下限以上かつ上記したいずれかの上限以下であってもよい。負極活物質の平均円形度は、負極活物質の種類や製造方法によって調整できる。
負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数の下限は、例えば1.00であってもよいが、1.30が好ましい。負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が上記下限以上である場合、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率がより高まる。一方、負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数の上限は、2.00が好ましく、1.40がより好ましく、1.39又は1.36がさらに好ましい場合もある。負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数を上記上限以下とすることで、蓄電素子の充放電サイクル後の出力維持率が高まる傾向にある。負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は、上記したいずれかの下限以上かつ上記したいずれかの上限以下であってもよい。負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は、負極活物質の形状、負極活物質層を形成するときのプレスの強度等によって調整することができる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい場合もある。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。上記中実天然黒鉛、中実天然黒鉛以外の黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素材料も導電性を有するが、負極活物質層においては導電剤には含まない。上記炭素材料以外の導電剤としては、例えば、他の炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。他の炭素質材料としては、他の非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。他の非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
負極活物質層に導電剤が含有されている場合、負極活物質層における導電剤の含有量は、例えば1質量%以上10質量%以下であってもよい。負極活物質層における導電剤の含有量は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下又は0質量%がより好ましい場合がある。当該負極(A)は、負極活物質層に良好な導電性を有する中実天然黒鉛が含まれており、かつ負極活物質層の密度が比較的高いため、中実天然黒鉛によって十分な導電経路が確保されている。このため、当該負極(A)は、負極活物質層における導電剤の含有量が少ない、又は導電剤が含まれていなくても、負極として良好な性能を発揮することができる。また、負極活物質層に導電剤が含まれていない場合、負極活物質の含有量を増やすことができ、負極活物質層のエネルギー密度を高めることができる。
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
負極活物質層におけるバインダの含有量は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。CMCは、通常、ナトリウム塩等の金属塩、アンモニウム塩等の形態で用いられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。負極活物質層における増粘剤の含有量としては、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。負極活物質層におけるフィラーの含有量としては、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。負極活物質層におけるフィラーの含有量は、1質量%以下又は0.1質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba、等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
負極活物質層の密度は1.08g/cm超1.51g/cm以下である。上記密度の下限は、1.10g/cmが好ましく、1.15g/cmがより好ましく、1.20g/cm、1.25g/cm又は1.30g/cmがさらに好ましいこともある。負極活物質層の密度を上記下限以上とすることで、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率がより高まり、特に高率充放電後の容量維持率が高まる傾向にある。一方、上記密度の上限は、1.45g/cmが好ましく、1.40g/cm又は1.35g/cmがより好ましいこともある。負極活物質層の密度を上記上限以下とすることで、蓄電素子の高率充放電後の容量維持率及び充放電サイクル後の出力維持率がより高まり、特に充放電サイクル後の出力維持率が高まる傾向にある。負極活物質層の密度は、製造過程における負極活物質層に対するプレスの強度等によって調整することができる。
本発明の他の実施形態に係る負極(B)は、負極活物質を含有する負極活物質層を有し、上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上である蓄電素子用の負極である。
当該負極(B)は、負極活物質が、天然黒鉛を含み、負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、かつ負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上であることを必須とする。一方、当該負極(B)は、上記した負極(A)と異なり、負極活物質が、中実天然黒鉛を含み、かつ負極活物質層の密度が、1.08g/cm超1.51g/cm以下であることに限定されない。当該負極(B)のこれらの点以外の具体的形態及び好適形態は、上記した負極(A)の具体的形態及び好適形態と同様であってもよい。
当該負極(B)においては、負極活物質に含まれる天然黒鉛は、中実天然黒鉛及び中空天然黒鉛のいずれであってもよいが、中実天然黒鉛であることが好ましい。当該負極(B)における天然黒鉛の平均粒径、アスペクト比、負極活物質層における含有量、及び全ての負極活物質に対する含有割合の好適形態は、負極(A)における中実天然黒鉛の平均粒径、アスペクト比、負極活物質層における含有量、及び全ての負極活物質に対する含有割合の好適形態と同様であってよい。
<負極の製造方法>
本発明の一実施形態に係る負極の製造方法は、負極基材上に直接又は他の層(中間層)を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、密度が1.08g/cm超1.51g/cm以下である負極活物質層を得ることを備え、上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含む蓄電素子用の負極の製造方法(A)である。
未プレスの負極活物質層は、例えば、負極合剤ペーストの塗布及び乾燥により設けることができる。負極合剤ペーストには、中実天然黒鉛を含む負極活物質、及び任意成分である導電剤、バインダ、増粘剤等、負極活物質層を構成する各成分が含まれる。負極合剤ペーストには、通常さらに分散媒が含まれる。未プレスの負極活物質層へのプレスは、ロールプレス機等の公知のプレス機等を用いて行うことができる。
なお、負極活物質層にプレスがなされているか否かは、負極基材表面の表面粗さの差異によって確認することができる。負極活物質層にプレスがなされていない場合、通常、負極基材表面において、負極活物質層が設けられている領域と設けられていない領域とで表面粗さの差がない。一方、負極活物質層にプレスがなされている場合、負極活物質層が設けられている領域の負極基板の表面粗さは、負極活物質層が設けられていない領域の表面粗さよりも大きい。
本発明の他の一側面に係る負極の製造方法は、負極基材上に直接又は他の層(中間層)を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が1.30以上である負極活物質層を得ることを備え、上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下である蓄電素子用の負極の製造方法(B)である。
当該負極の製造方法(B)は、負極活物質が、天然黒鉛を含み、負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、かつ負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上である負極活物質層を得ることを必須とする。一方、当該負極の製造方法(B)は、負極活物質が、中実天然黒鉛を含み、かつ負極活物質層の密度が、1.08g/cm超1.51g/cm以下である負極活物質層を得ることに限定されない。当該負極の製造方法(B)は、これらの点以外は、上記した負極の製造方法(A)と同様に行うことができる。当該負極の製造方法(B)においては、負極活物質に含まれる天然黒鉛は、中実天然黒鉛及び中空天然黒鉛のいずれであってもよいが、中実天然黒鉛であることが好ましい。
<蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極及びセパレータを有する電極体と、電解質と、上記電極体及び電解質を収容する容器と、を備える。電極体は、通常、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して積層された積層型、又は、正極及び負極がセパレータを介して積層された状態で巻回された巻回型である。電解質は、正極、負極及びセパレータに含浸した状態で存在する。蓄電素子の一例として、電解質として非水電解質が用いられた非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記負極で例示した構成から選択することができる。
正極基材は、導電性を有する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
正極基材の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、必要に応じて、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記負極で例示した材料から選択できる。なお、正極活物質層においては、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素材料も導電剤に含む。
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LiNi(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγCo(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiCo(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγMn(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LiNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LiMn、LiNiγMn(2-γ)等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
正極の作製は、例えば正極基材に直接又は中間層を介して、正極合剤ペーストを塗布し、乾燥させることにより行うことができる。乾燥後、必要に応じてプレス等を行ってもよい。正極合剤ペーストには、正極活物質、及び任意成分である導電剤、バインダ等、正極活物質層を構成する各成分が含まれる。正極合剤ペーストには、通常さらに分散媒が含まれる。
(負極)
当該二次電池に備わる負極は、本発明の一実施形態に係る負極(A)又は負極(B)として上記した負極である。
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形状としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの形状の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、室温から800℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、チタン酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む。
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。
非水電解液における電解質塩の含有量は、20℃1気圧下において、0.1mol/dm以上2.5mol/dm以下であると好ましく、0.3mol/dm以上2.0mol/dm以下であるとより好ましく、0.5mol/dm以上1.7mol/dm以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm以上1.5mol/dm以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
非水電解液は、非水溶媒と電解質塩以外に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃から25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiI-LiS-P、Li10Ge-P12等が挙げられる。
本実施形態の蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
図1に角型電池の一例としての蓄電素子1を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角型の容器3に収納される。正極は正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極は負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
<蓄電装置>
本実施形態の蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の蓄電素子1を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電ユニットに含まれる少なくとも一つの蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図2に、電気的に接続された二以上の蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の蓄電素子1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
<蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の製造方法は、本発明の一実施形態に係る負極(A)若しくは負極(B)又は本発明の一実施形態に係る負極の製造方法(A)若しくは負極の製造方法(B)で得られた負極を用いて蓄電素子を作製することを備える。当該製造方法は、具体的には例えば、電極体を準備することと、非水電解質を準備することと、電極体及び非水電解質を容器に収容することと、を備える。電極体を準備することは、正極及び負極を準備することと、セパレータを介して正極及び負極を積層又は巻回することにより電極体を形成することとを備える。上記負極を準備することとして、上記した本発明の一実施形態に係る負極(A)又は負極(B)を用いるか、本発明の一実施形態に係る負極の製造方法(A)又は負極の製造方法(B)で得られた負極を用いる。
非水電解質を容器に収容することは、公知の方法から適宜選択できる。例えば、非水電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
<その他の実施形態>
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
上記実施形態では、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。また、本発明の蓄電素子は、電解質が非水電解質以外の電解質である蓄電素子、すなわち電解質が水を含む蓄電素子等にも適用できる。
上記実施形態では、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極体について説明したが、電極体は、セパレータを備えなくてもよい。例えば、正極又は負極の活物質層上に導電性を有さない層が形成された状態で、正極及び負極が直接接してもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(負極の作製)
負極活物質である中実天然黒鉛(平均粒径(D50)9.9μm、アスペクト比2.3)、バインダであるスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMC-NH)、及び分散媒である水を混合して負極合剤ペーストを調製した。なお、中実天然黒鉛、SBR及びCMC-NHの質量比率は98:1:1(固形分換算)とした。負極基材としての銅箔の両面に負極合剤ペーストを塗布及び乾燥し、未プレスの負極活物質層を形成した。その後、未プレスの負極活物質層に対してロールプレスを行い、実施例1の負極を得た。上記した方法で求めた得られた負極の負極活物質層中の中実天然黒鉛の空隙率は0.49%であり、負極活物質層の密度は1.41g/cmであった。また、負極活物質である中実天然黒鉛の平均円形度は0.50であり、一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は1.40であった。
[実施例2]
未プレスの負極活物質層に対するロールプレスの強度を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の負極を得た。得られた負極の負極活物質層中の中実天然黒鉛の空隙率は0.49%であり、負極活物質層の密度は1.19g/cmであった。また、負極活物質である中実天然黒鉛の平均円形度は0.50であり、一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は1.34であった。
[比較例1]
中実天然黒鉛に替えて、中空天然黒鉛を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の負極を得た。得られた負極の負極活物質層中の中空天然黒鉛の空隙率は4.44%であり、負極活物質層の密度は1.41g/cmであった。また、負極活物質である中空天然黒鉛の平均円形度は0.82であり、一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は1.18であった。
[比較例2]
ロールプレスを行わず、負極活物質層を未プレスの状態のままとしたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の負極を得た。得られた負極の負極活物質層中の中空天然黒鉛の空隙率は3.68%であり、負極活物質層の密度は0.93g/cmであった。また、負極活物質である中空天然黒鉛の平均円形度は0.82であり、一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は0.90であった。
(評価:充放電試験1)
実施例1、2及び比較例1、2で得られた各負極を用い、金属リチウムを対極とした試験セルをそれぞれ作製した。なお、電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比率30:35:35で混合した溶媒に、1.0mol/dmの濃度でLiPFを溶解させた非水電解液を用いた。セパレータには、ポリオレフィン製微多孔膜を用いた。
各試験セルに対して、25℃において以下の8サイクルの充放電試験を行った。1.0Cの電流で0.02Vまで定電流充電した後、0.02Vで定電圧充電した。充電の終了条件は、定電圧充電時の電流が0.01Cに減衰するまでとした。その後、10分間の休止期間を設けた。次いで、下記の電流で、2.0Vまで定電流放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。これらの充電及び放電の工程を8サイクル実施した。各サイクルの放電における電流は、1サイクル目及び2サイクル目は1.0C、3サイクル目は0.2C、4サイクル目は1.0C、5サイクル目は2.0C、6サイクル目は3.0C、7サイクル目は5.0C、8サイクル目は1.0Cとした。なお、負極活物質にリチウムイオンが吸蔵される還元反応を「充電」、負極活物質からリチウムイオンが放出される酸化反応を「放電」という。
1サイクル目の放電容量に対する8サイクル目の放電容量を高率充放電後の容量維持率として求めた。また、実施例1、2及び比較例1の負極について、充放電試験前後での負極活物質層の厚さの差を充放電試験前の負極活物質層の厚さで除することにより、負極活物質層の膨張率を求めた。求めた高率充放電後の容量維持率及び膨張率を表1に示す。なお、比較例2については、負極活物質層の膨張率を求めていない。
Figure 2022117915000002
比較例1と比較例2との対比から、負極活物質層の密度を高くすることで高率充放電後の容量維持率が向上することがわかるが、中空天然黒鉛を用いた場合、負極活物質層の膨張率が大きいことなどから、高率充放電後の容量維持率は十分に高いものとならない。これに対し、実施例1、2のように、負極活物質層の密度を高くすることに加えて、中実天然黒鉛を用いることで、高率充放電後の容量維持率がさらに高まることがわかる。また、負極活物質の平均円形度が低く、負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が多い場合に、高率充放電後の容量維持率が高いことがわかる。
[実施例3]
未プレスの負極活物質層に対するロールプレスの強度を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の負極を得た。得られた負極の負極活物質層中の中実天然黒鉛の空隙率は0.49%であり、負極活物質層の密度は1.30g/cmであった。
[比較例3]
中実天然黒鉛に替えて、中実人造黒鉛(平均粒径(D50)2.9μm、アスペクト比2.7)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較例3の負極を得た。得られた負極の負極活物質層中の中実人造黒鉛の空隙率は0.90%であり、負極活物質層の密度は1.30g/cmであった。
[比較例4]
中実天然黒鉛に替えて、中空天然黒鉛を用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較例4の負極を得た。得られた負極の負極活物質層中の中空天然黒鉛の空隙率は3.68%であり、負極活物質層の密度は1.30g/cmであった。
(評価:充放電試験2)
実施例3及び比較例3、4で得られた各負極を用い、金属リチウムを対極とした試験セルをそれぞれ作製した。電解液は、充放電試験1と同様に調製した。
各試験セルに対して、25℃において以下の6サイクルの充放電試験を行った。1.0Cの電流で0.02Vまで定電流充電した後、0.02Vで定電圧充電した。充電の終了条件は、定電圧充電時の電流が0.01Cに減衰するまでとした。その後、10分間の休止期間を設けた。次いで、下記の電流で、2.0Vまで定電流放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。これらの充電及び放電の工程を6サイクル実施した。各サイクルの放電における電流は、1サイクル目及び2サイクル目は1.0C、3サイクル目は2.0C、4サイクル目は4.0C、5サイクル目は5.0C、6サイクル目は1.0Cとした。
1サイクル目の放電容量に対する6サイクル目の放電容量を高率充放電後の容量維持率として求めた。1サイクル目と6サイクル目の試験セルの放電容量を負極に含有される負極活物質の質量で除した放電容量、及び求めた高率充放電後の容量維持率を表2に示す。
(評価:直流抵抗)
実施例3及び比較例3、4で得られた各負極、正極、非水電解液及びセパレータを用い、蓄電素子をそれぞれ作製した。
正極には、以下の手順で作製したものを用いた。正極活物質であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3、導電剤であるアセチレンブラック(AB)、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び分散媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を用いて正極合剤ペーストを調製した。なお、正極活物質、AB及びPVDFの質量比率は93:4:3(固形分換算)とした。正極基材としてのアルミニウム箔の両面に正極合剤ペーストを塗布し、乾燥した。その後、ロールプレスを行い、正極を得た。
電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比率30:70で混合した溶媒に、1.2mol/dmの濃度でLiPFを溶解させた非水電解液を用いた。セパレータには、ポリオレフィン製微多孔膜を用いた。
得られた各蓄電素子について、25℃にて、1.0Cの電流で定電流充電を行い、SOCを50%にした。-10℃の恒温槽に4時間保管した後、0.2C、0.5C、又は1.0Cの電流で、それぞれ30秒間放電した。各放電終了後には、1.0Cの電流で定電流充電を行い、SOCを50%にした。各放電における電流と放電開始後10秒目の電圧との関係をプロットし、3点のプロットから得られた直線の傾きから直流抵抗を求めた。求めた直流抵抗を表2に示す。
Figure 2022117915000003
表2に示されるように、中実黒鉛の中でも、中実天然黒鉛を用いることで高率充放電後の容量維持率がより高まることがわかる。また、特に表2の6サイクル目の放電容量の比較から、中実天然黒鉛を用いることで、高率充放電後も大きな放電容量が維持できることがわかる。さらに、中実天然黒鉛を用いることで、蓄電素子の低温下での直流抵抗も低くなることがわかる。
[実施例4]
実施例1と同様にして、中実天然黒鉛を用い、負極活物質層の密度が1.41g/cmの負極を得た。負極活物質である中実天然黒鉛の平均円形度は0.50であり、一粒子あたりの他の粒子との平均接点数は1.40であった。また、上記した直流抵抗の評価と同様にして、この負極を備える実施例4の蓄電素子を得た。
[実施例5、6及び比較例5]
負極活物質層の密度を表3に記載の値となるようにしたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5、6及び比較例5の各蓄電素子を得た。表3には、各実施例及び比較例における、負極活物質である中実天然黒鉛の平均円形度、及び一粒子あたりの他の粒子との平均接点数をあわせて示す。なお、実施例5においては、上記平均接点数を測定していない。
(評価:充放電試験3)
実施例4から6及び比較例5の各蓄電素子について、25℃にて、1.0Cの電流で定電流充電を行い、SOCを50%にした。続いて、0.2C、0.5C、又は1.0Cの電流で、それぞれ30秒間放電した。各放電終了後には、1.0Cの電流で定電流充電を行い、SOCを50%にした。各放電における電流と放電開始後10秒目の電圧との関係をプロットし、3点のプロットから得られた直線の傾きから直流抵抗を求めた。求めた直流抵抗から放電開始後10秒後の出力を算出し、初期の出力とした。ついで、25℃にて、1.0Cの電流で定電流充電を行い、SOCを20%にした。続いて、60℃の恒温槽に4時間保管した後、8Cの電流にて、SOC80%に相当する電圧まで定電流充電を行った後、8Cの電流にて、SOC20%に相当する電圧まで定電流放電を行った。上記充電及び放電のサイクルを、上記充電及び放電の後には休止時間を設けずに、2,000時間繰り返した。その後、初期の出力を求めた手順と同様の手順により、充放電サイクル試験後の出力を求めた。初期の出力に対する充放電サイクル試験後の出力を出力維持率として求めた。求めた出力維持率を表3に示す。
Figure 2022117915000004
表3に示されるように、負極活物質層の密度を1.08g/cm超1.51g/cm以下の範囲とすること、あるいは負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数を1.30以上とすることで、充放電サイクル後の出力維持率が高くなることがわかる。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される蓄電素子などに適用できる。
1 蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (9)

  1. 負極活物質を含有する負極活物質層を有し、
    上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含み、
    上記負極活物質層の密度が、1.08g/cm超1.51g/cm以下である蓄電素子用の負極。
  2. 上記負極活物質が、実質的に上記中実天然黒鉛からなる請求項1に記載の負極。
  3. 上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下である請求項1又は請求項2に記載の負極。
  4. 上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の負極。
  5. 負極活物質を含有する負極活物質層を有し、
    上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、
    上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下であり、
    上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が、1.30以上である蓄電素子用の負極。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の負極を備える蓄電素子。
  7. 負極基材上に直接又は他の層を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び
    上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、密度が1.08g/cm超1.51g/cm以下である負極活物質層を得ること
    を備え、
    上記負極活物質が、中実天然黒鉛を含む蓄電素子用の負極の製造方法。
  8. 負極基材上に直接又は他の層を介して、負極活物質を含有する未プレスの負極活物質層を設けること、及び
    上記未プレスの負極活物質層をプレスすることにより、上記負極活物質の一粒子あたりの他の粒子との平均接点数が1.30以上である負極活物質層を得ること
    を備え、
    上記負極活物質が、天然黒鉛を含み、
    上記負極活物質の平均円形度が、0.7以下である蓄電素子用の負極の製造方法。
  9. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の負極又は請求項7若しくは請求項8に記載の負極の製造方法で得られた負極を用いて蓄電素子を作製することを備える蓄電素子の製造方法。
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