JP2022117879A - カバー及び屋根構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】雨水の浸入を抑制できる、屋根材を覆うカバー及び屋根構造を提供すること。【解決手段】カバー150は、野地板110に緊結される屋根材130の上面の少なくとも一部を覆う天板151と、天板151と一体に形成され、屋根材130の軒先12側の側面を覆うとともに、天板151の面方向に沿った面、及び、天板151の面方向に直交する方向に対する傾斜角度が鋭角に設定された側板152と、側板152と一体に形成され、屋根材130の下面の少なくとも一部を覆う底板153と、を備える。【選択図】 図5
Description
本発明は、屋根材を覆うカバー及び屋根構造に関する。
住居等に用いられる建築物として、例えば、木造軸組、木造枠組、鉄筋造、RC造等の建築構造が用いられる技術が知られている。また、このような建築物は、屋根形状として、屋根面が平面である屋根により形成された屋根構造が知られている。このような屋根構造として、例えば、複数の板状の屋根材が野地板に緊結釘によって緊結される技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上述した屋根材は、経年劣化によって外観美が低下する。例えば、外観美を向上させる化粧カバーであるカバーによって屋根材を覆うことで、外観美を向上させる技術も知られている。このようなカバーは、屋根材の上面、端面及び底面を覆う為の天板、側板、底板を有する。そして、上下方向に隣り合う屋根材のそれぞれにカバーが設けられるため、圧力水頭や毛細管作用等によって上下に隣り合うカバーの間隙に雨水が浸入する虞がある。
また、カバーには、浸入した雨水を排出する水抜き孔が形成されているが、この水抜き孔からカバー内に水が浸入する虞がある。そして、カバー内に浸入した雨水は、圧力水頭や毛細管作用等によってカバーと屋根材との間隙を移動する。
そこで本発明は、雨水の浸入を抑制できる、屋根材を覆うカバー及び屋根構造を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、カバーは、野地板に緊結される屋根材の上面の少なくとも一部を覆う天板と、前記天板と一体に形成され、前記屋根材の軒先側の側面を覆うとともに、前記天板の面方向に沿った面、及び、前記天板の面方向に直交する方向に対する傾斜角度が鋭角に設定された側板と、前記側板と一体に形成され、前記屋根材の下面の少なくとも一部を覆う底板と、を備える。
本発明の一態様によれば、屋根構造は、野地板と、前記野地板に緊結され、前記野地板の棟から軒先に向かって複数配置されるとともに、前記棟から前記軒先に向かう方向と直交する方向に沿って複数配置される屋根材と、前記屋根材の上面の少なくとも一部を覆う天板、前記天板と一体に形成され、前記屋根材の軒先側の側面を覆うとともに、前記天板の面方向に沿った面及び前記天板の面方向に直交する方向に対する傾斜角度が鋭角に設定された側板、並びに、前記側板と一体に形成され、前記屋根材の下面の少なくとも一部を覆う底板を有し、単数の前記屋根材又は複数の前記屋根材に渡って設けられる、複数のカバーと、を備える。
本発明によれば、雨水の浸入を抑制できる、屋根材を覆うカバー及び屋根構造を提供することができる。
以下に、一実施形態に係るカバー150を用いた屋根構造1の構成について、図1乃至図10を参照して説明する。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小又は省略して示す。
図1は、本発明の一実施形態に係る屋根構造1の構成を示す斜視図である。図2は屋根構造1の構成であって、カバー150の一部及び継手160の一部を一部省略して示す斜視図であり、図3は、屋根構造1の構成であって、カバー150及び継手160の一部を省略して示す斜視図である。図4は、屋根構造1の構成を示す断面図である。図5は、屋根構造1の構成を拡大して示す断面図である。
図6は、屋根構造1の屋根材130、カバー150及び継手160の構成を示す斜視図であって、一枚の屋根材130に一つの継手160を設け、二つのカバー150を配置した例を示す。図7は、屋根材130及びカバー150の構成を示す斜視図であって、一枚の屋根材130に一枚のカバー150を配置した例を示す。図8は、カバー150及び継手160の構成を拡大して一部断面で示す斜視図である。図9は、カバー150の構成を示す斜視図であり、図10は、継手160の構成を示す斜視図である。
次に、図1乃至図5を用いて屋根構造1について説明する。なお、屋根構造1は、棟11から軒先12に向かって傾斜する。なお、屋根構造1は、建築物の形状によって、適宜、けらば13、差棟、本谷を有する。なお、図1乃至図3においては、一例として、けらば13を有する屋根構造1の構成を示す。
図1乃至図5に示すように屋根構造1は、野地板110と、下葺き材120と、複数の屋根材130と、複数の緊結釘140と、複数のカバー150と、継手160と、軒先水切170と、けらば水切180と、端部カバー200と、棟包220と、を備える。なお、図1乃至図3において、下葺き材120を省略して示す。
なお、屋根構造1は、野地板110と屋根材130との間に下葺き材120以外の遮熱シートや通風用の部材等の他の部材を有していてもよい。
野地板110は、釘等によって垂木に留め付けられる。野地板110は、例えば、構造用合板により形成される。なお、野地板110は、MDF(Medium Density Fiberboard)、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)であってもよく、また、杉ムク材等の一枚の板材であってもよい。
下葺き材120は、防水性を有する所謂ルーフィングシートである。例えば、下葺き材120は、基材にアスファルトを含浸及び/又は塗布させることで形成される。下葺き材120は、例えば、野地板110に留め付けられる。具体例として、下葺き材120は、野地板110の表板上に設けられる。
複数の屋根材130は、棟11から軒先12に向かう野地板110の傾斜方向(縦方向)である第1方向と、第1方向に直交又は交差する幅方向(横方向)である第2方向と、においてそれぞれ複数列配列される。例えば横方向において隣り合う屋根材130の間には、継手160が配置される。なお、部位によっては傾斜していない場合もある。
複数の屋根材130は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向で、一部が積層されて、下葺き材120が留め付けされた野地板110上に緊結釘140により緊結される。
屋根材130は、板状や瓦状に形成される。屋根材130は、例えば、野地板110の傾斜方向で中央側に、該傾斜方向と直交する方向に複数の下穴131を有する。下穴131は、緊結釘140の頭部141の外径よりも小径であって、且つ、緊結釘140の釘部142の外径よりも大径に形成される。即ち、下穴131は、緊結釘140の釘部142を挿通させる開口である。
緊結釘140は、図4に示すように、屋根構造1において、例えば、屋根材130を野地板110に緊結するために用いられる。
緊結釘140は、例えば、野地板110の厚さ方向、換言すると、野地板110の主面の面方向に直交する方向で、野地板110に打ち込まれる。なお、緊結釘140の打ち込み方向は、野地板110の厚さ方向に限定されない。
緊結釘140は、例えば、頭部141と、釘部142と、を備える。
頭部141は、円板状に形成される。
釘部142は、頭部141の一方の主面に一体に成形される。釘部142は、円柱状に形成される。また、釘部142は、例えば、釘部142の軸方向(長手方向)に等間隔に複数形成されたリング状の突起142aを複数有する。
複数の突起142aは、緊結釘140を野地板110に打ち込んだときに、屋根材130を野地板110に緊結する緊結力を向上させる。換言すると、複数の突起142aは、野地板110に打ち付けられたときに、野地板110から緊結釘140が抜ける方向の保持力である引張強度を向上させる。複数の突起142aは、例えば、野地板110及び屋根材130の緊結力を向上可能に、野地板110内に配置される部位に少なくとも設けられる。なお、突起142aの数及び形状は、緊結力を向上可能であれば適宜設定できる。
図4及び図5に示すように、カバー150は、同じ高さ位置にある複数の屋根材130(幅方向に複数配置された屋根材130)のうち単数又は複数の屋根材130を覆う。例えば、カバー150は、屋根材130が経年劣化等によって外観美が低下したときに、屋根材130を覆うことで外観美を向上させる化粧カバーである。なお、本実施形態において、カバー150は、軒先12に位置する屋根材130は覆わず、図4に示すように、軒先12に位置する屋根材130を端部カバー200が覆う構成を説明する。
図5乃至図9に示すように、カバー150は、天板151と、側板152と、底板153と、を備える。カバー150は、例えば、鋼板を曲げ加工することで、天板151、側板152及び底板153が一体に形成される。また、カバー150は、側板152及び底板153との稜部、又は、側板152の底板153側に、矩形状の水抜き孔154が複数形成される。カバー150は、耐水性や耐候性を有するとともに、外観美を得るために、塗装等が施される。カバー150は、例えば、単数又は複数の屋根材130に接着剤により接着される。なお、上下方向に隣り合うカバー150同士が接着剤で接着される構成であってもよい。
天板151は、屋根材130の上面の少なくとも外部に露出する領域を覆う。天板151の幅寸法は、一つの屋根材130の幅寸法よりも大きく設定される。また、天板151の奥行き寸法は、一つの屋根材130の奥行き寸法と同じか、又は、若干小さく設定される。具体的には、天板151の奥行き寸法は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向において積層される屋根材130のうち、下方の屋根材130にカバー150が配置されたときに、天板151の棟側の端部が上方の屋根材130に覆われる長さであれば適宜設定できる。なお、ここで、奥行きとは、屋根構造1における水下(軒先12)側から水上(棟11)側に向かう方向を意味する。
側板152は、天板151及び底板153と一体に連続する。側板152は、屋根材130の軒先12側の側面を覆う。側板152の幅寸法は、例えば、天板151の幅寸法と同一寸法に設定される。側板152は、天板151の軒先12側に配置される。側板152は、天板151側よりも底板153側が軒先12側となるべく、天板151の面方向に沿った面及び天板151に直交する方向に対して鋭角に、例えば、45°に傾斜する。
換言すると、側板152は、天板151の下面(カバー150の内側の主面)に対する角度が鈍角、例えば135°に傾斜する。なお、ここで、天板151の面方向に沿った面とは、図5に示すように、天板151の側板152側の端部から、天板151の面方向に沿って延びる仮想平面Fである。
底板153は、天板151と平行又はほぼ平行に設定される。よって、側板152の底板153に対する傾斜角度は、鋭角に、一例として45°に設定される。底板153は、屋根材130の少なくとも軒先12側の下面を覆う。なお、天板151及び底板153の間隔は、屋根材130が配置可能な間隔に設定される。底板153の幅寸法は、天板151の幅寸法と同じ寸法に設定される。底板153の奥行き寸法は、天板151の奥行き寸法よりも短く設定される。より具体的には、底板153の奥行き寸法は、下方の屋根材130に取り付けられるカバー150の天板151の棟側の端部よりも軒側となる寸法に設定される。底板153は、側板152とは反対側の端縁において、板材が折り返されて二重構造を成す返し部を有していてもよい。
水抜き孔154は、カバー150の幅方向で複数箇所に設けられる。水抜き孔154は、カバー150内に浸入した水を抜く水抜き穴である。
図6に示すように、継手160は、幅方向で隣り合うカバー150間に設けられる。図2、図3及び図6乃至図8、図10に示すように、継手160は、屋根材130の上方であって、且つ、カバー150の下方に配置される。図8及び図10に示すように、継手160は、例えば、天板161と、側板162と、を備える。天板161は、幅方向で隣り合うカバー150の天板151の端部と対向する。側板162は、隣り合うカバー150の側板152の端部と対向する。
側板162の幅方向に直交する方向の寸法は、カバー150の側板152の同寸法よりも小さく設定される。好ましくは、側板162は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向において、カバー150の水抜き孔154と重ならない寸法に設定される。
継手160は、例えば、天板161に対する側板162の角度がカバー150の天板151に対する側板152の角度と異なる角度に設定される。本実施形態において、カバー150の天板151に対する側板152の角度が135°(天板151の面方向に沿った仮想平面Fに対する側板152の角度が45°)である場合は、例えば、継手160の天板161に対する側板162の角度は、90°に設定される。
軒先水切170は、例えば、軒先12の幅方向(第2方向)に沿って設けられる。軒先水切170は、例えば、軒先12における野地板110及び下葺き材120の間に配置される基部171と、基部171の軒先12側の端部から下方に垂下する水切板172と、を有する。水切板172は、下端の野地板110側に返し部を有する。
けらば水切180は、例えば、各けらば13に配置される。けらば水切180は、例えば、笠木を介して野地板110に緊結される。けらば水切180は、けらば13から下方に垂下する水切板を有する。
図4に示すように、端部カバー200は、軒先12に配置された屋根材130を覆う。例えば、図4に示すように、軒先12において屋根材130は二枚積層されて配置されることから、端部カバー200は、二枚の屋根材130を覆う。また、端部カバー200は、軒先12において幅方向に複数配置された積層された屋根材130のうち、一組の又は複数組の積層された屋根材130を覆う。
例えば、端部カバー200は、屋根材130が経年劣化等によって外観美が低下したときに、屋根材130を覆うことで外観美を向上させる化粧カバーである。
図4に示すように、端部カバー200は、天板201と、側板202と、底板203と、を備える。端部カバー200は、例えば、鋼板を曲げ加工することで、天板151、側板202及び底板203が一体に形成される。また、端部カバー200は、側板202及び底板203との稜部、又は、側板202の底板203側に、矩形状の水抜き孔が単数又は複数形成されていてもよい。端部カバー200は、耐水性や耐候性を有するとともに、外観美を得るために、塗装等が施される。端部カバー200は、例えば、単数又は複数の屋根材130に接着剤により接着される。なお、上下方向に隣り合うカバー150及び端部カバー200が接着剤で接着される構成であってもよい。
棟包220は、棟11に設けられる。棟包220は、例えば、棟11及び棟11に配置された屋根材130の棟11側の端部を覆う。例えば、棟包220は、笠木を介して野地板110に緊結される。
このように構成されたカバー150及びカバー150を用いた屋根構造1によれば、屋根材130が経年変化等によって劣化や外観の低下が生じた場合に、カバー150により屋根材130を覆うことで、外観を向上させることができる。
また、側板152は、天板151側よりも底板153側が軒先12側となるべく、天板151の面方向に沿った面及び天板151に直交する方向に対して鋭角に傾斜する。このため、カバー150上の雨水は、カバー150の天板151の傾斜方向に沿った方向に流れるとともに、側板152の傾斜方向に沿って流れる。
また、天板151及び天板151の面方向に直交する方向に対して側板152が軒先側に向かって下方に傾斜する。即ち、側板152は、天板151の面方向に沿った面(仮想平面F、底板153)に対して鋭角に傾斜する。よって、カバー150は、天板151の側板152側の縁にエッジビードが生じることを抑制できる。特に、底板153に対する側板152の傾斜角度を45°とすることで、エッジビードの発生を防止できる。このため、雨水が、積層される屋根材130のカバー150間内に浸入すること、及び、積層されたカバー150の天板151及び底板153の間を上方に逆流することを抑制できる。
次に、このような本実施形態のカバー150の効果を、比較例のカバー150Aと比較して詳細に説明する。なお、比較例のカバー150Aは、図11に示すように、天板151の面方向に対して側板152Aが直交する方向に延設される構成であるが、その他の構成については、本実施形態のカバー150と同様の構成である。
先ず、比較例のカバー150Aに雨水500が流れた場合の例について説明する。図11に示すように、降雨時において雨水500がカバー150A上を流れると、カバー150Aの天板151の側板152A側の縁(屋根材130の端部側の縁)において、流れる雨水500にエッジビード510が発生する。そして、天板151の側板152A側の縁においてエッジビード510が一定量たまると下方へ流れ落ちるため、天板151から流れ落ちる雨水500には、圧力水頭がかかり、隣り合うカバー150Aの天板151及び底板153間において、毛細管作用で吸いあがった水量にエッジビード510を含む圧力水頭による水量が加えられた水によって、底板153及び屋根材130の下面間で水が押し上げられる。
また、側板152Aに沿って雨水500が移動すると、下方のカバー150Aの天板151に雨水が移動したときに、図11中に矢印で示すように、天板151の面方向に広がるように水が分流して移動するため、一部の雨水500は、下段のカバー150Aの天板151上を流れるが、他の一部の雨水500は、上下方向で重なるカバー150Aの天板151及び底板153との間に水が入り込む。また、水抜き孔154においては、毛細管作用で吸いあがった水量にエッジビード510を含む圧力水頭による水量が加えられた水によって、底板153及び屋根材130の下面間で水が押し上げられる。
この点について、図12乃至図14より具体的に説明する。なお、図12及び図13は、屋根材130やカバー150A等と同様に、上下方向に隣り合い、且つ、傾斜する二枚の板材600と雨水500の関係を示す説明図である。図12に示す、傾斜する二枚の板材600の間隙を浸入する雨水500の浸入距離LTは、以下の数式(1)により表される。
ここで、Lsは、流層の圧力水頭による雨水500の浸入距離であり、Lcは、間隙の毛細管作用による雨水500の浸入距離であり、Lwは、風圧の作用による雨水500の浸入距離である。
そして、Lsは数式(2)により表される。
ここで、Hsは、上下に隣り合う傾斜する二枚の板材600の間隙開口部の圧力水頭であり、数式(3)により表される。なお、図13に示すように、板材600の上面の下端側の縁における雨水500の上端位置である点1における圧力をP1、速度をv1、位置をh1とする。また、上下に隣り合う二枚の板材600の間隙開口部の高さ方向で中央位置の点2における圧力をP2、速度をv2、位置をh2とする。また、水の密度をρ、重力加速度をgとする。
また、この数式(3)からも明らかなように、上段の板材600の縁部にエッジビード510が形成されと、点2における圧力水頭Hsが大きくなる。
Lcは数式(4)により表される。
ここで、Hcは、図14に示すように、二枚の板材600を垂直に配置し、間隙を設けた場合における、垂直間隙の毛管水位である。
Lwは数式(5)により表される。
ここで、ΔPは、図12に示すように、大気圧をP0、板材600内の圧力、換言すると、例えば屋根構造1内としての屋根材130内の圧力をPiとしたときに、P0=Pi+ΔPから求められる。
上述した数式(1)乃至数式(5)は、屋根材130及びカバー150A等のように、上下に隣り合う板材600間隙の雨水の浸入距離を求めることに用いることができる。そして、これらの数式からも明らかなように、上下方向に隣り合い、且つ、傾斜し、そして、間隙が生じる屋根材130やカバー150A等の二枚の部材の間隙において雨水の浸入距離を求めることに適用することができる。
上述の数式からも明らかなように、上下に隣り合うカバー150Aの天板151及び底板153の間、及び、屋根材130の下面及びカバー150Aの底板153の間においては、雨水500が毛細管作用や圧力水頭等によって押し上げられることが解る。よって、上述したように、比較例のカバー150Aを用いた場合には、毛細管作用で吸いあがった水量にエッジビード510を含む圧力水頭による水量が加えられた水によって、底板153及び屋根材130の下面間で水が押し上げられる。
これに対し、本実施形態のカバー150のように、側板152を天板151の面方向に沿った面に対して及び天板151に対して直交する方向に対して鋭角に、換言すると、天板151に平行な底板153に対して鋭角に傾斜する。また、側板152の側板152を天板151の面方向に沿った面に対して及び天板151に対して直交する方向に対する(底板153に対する)傾斜角度は、好ましくは45°程度に設定される。
このようなカバー150とすることで、エッジビード510が生じることを防止できるため、圧力水頭が小さくなる。加えて、側板152において流速が増しながら下方へ流れる。しかも、雨水500の流れ方向は、側板152の傾斜によって、下方への流れとなるように案内される。
よって、カバー150を流れ、隣り合うカバー150の天板151及び底板153の間隙開口部や水抜き孔154の近傍における雨水500には、上方への圧力水頭がかからないか、又は、圧力水頭が小さいため、該間隙開口部や水抜き孔154から雨水500が浸入しにくい。また水抜き孔154から雨水500が浸入したとしても、浸入した雨水500は、下方に流れる雨水500に引っ張られ、水抜き孔154より排出される。加えて、該間隙開口部や水抜き孔154から雨水が浸入したとしても、エッジビード510が生じないことから、流層の圧力水頭による浸入距離Lsが小さい。
これらのように、本実施形態のカバー150を用いることで、比較例のカバー150Aと比べても、雨水500が圧力水頭や毛細管作用によって、上下に隣り合うカバー150間や、水抜き孔154から屋根材130及びカバー150の底板153の間に雨水500が浸入することを防止できる。
上述したように、本実施形態に係るカバー150及び屋根構造1によれば、側板152を天板151の面方向及び面方向に直交する方向に対して傾斜させることで、雨水の浸入を抑制できる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、カバー150の側板152の天板151に対する傾斜角度を135°(天板151の面方向に延びる仮想平面Fに対する傾斜角度を45°)とする例を説明したがこれに限定されない。例えば、天板151の面方向に延びる仮想平面Fに対する傾斜角度は成形による誤差が含まれるだけでなく、例えば、30°や60°等に設定することもできる。
即ち、カバー150の天板151に対する側板152の傾斜角度は、エッジビード510が天板151の側板152側の縁部に生じないか若しくは生じたとしても小さいものとすることができる傾斜角度であること、及び/又は、流れた雨水500が下方へ案内され、そして、上方へ移動しないか若しくは移動が抑制できるものとすることができる傾斜角度であれば、適宜設定可能である。
これは、雨水500の流れを下方へ案内することに加え、エッジビード510を低減できれば、圧力水頭を低減させることができ、また、雨水500が上方へ移動することを抑制できれば、カバー150間や、屋根材130及びカバー150間の間隙に雨水が浸入することを抑制できるため、結果として、間隙への雨水500の浸入距離LTを低減できるためである。
また、上述した例では、カバー150に水抜き孔154を設ける例を説明したが、水抜き孔154の数、大きさ及び位置等は適宜設定できる。
また、上述した例では、継手160は、天板161に対する側板162の角度が90°に設定される例を示したがこれに限定されない。例えば、図15に示すように、継手160は、天板161に対する側板162の角度が鈍角に形成される構成であってもよい。また、図16に示すように、継手160は、波板により形成され、幅方向に凹凸状となるように形成されていてもよい。例えば、このように凹凸状の継手160とすることで、雨水500の排出を促すとともに、屋根材130及びカバー150との間に空間が生じることから、雨水500の蒸発を促すことができる。
また、上述した例では、水抜き孔154は、側板152及び底板153に渡って設けられる構成を説明したがこれに限定されず、側板152又は底板153の一方に設けられる構成としてもよい。なお、このような構成とする場合には、水抜き孔154は、カバー150を屋根材130に設けたときに、側板152又は底板153の最も下方に位置する部位に設けられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…屋根構造、11…棟、12…軒先、13…けらば、110…野地板、120…下葺き材、130…屋根材、131…下穴、140…緊結釘、141…頭部、142…釘部、142a…突起、150…カバー(実施形態)、150A…カバー(比較例)、151…天板、152…側板、153…底板、154…水抜き孔、160…継手、161…天板、162…側板、170…軒先水切、171…基部、172…水切板、180…けらば水切、200…端部カバー、220…棟包、500…雨水、510…エッジビード、600…板材、F…仮想平面。
Claims (6)
- 野地板に緊結される屋根材の上面の少なくとも一部を覆う天板と、
前記天板と一体に形成され、前記屋根材の軒先側の側面を覆うとともに、前記天板の面方向に沿った面、及び、前記天板の面方向に直交する方向に対する傾斜角度が鋭角に設定された側板と、
前記側板と一体に形成され、前記屋根材の下面の少なくとも一部を覆う底板と、
を備えるカバー。 - 前記カバーは、前記側板の一部に形成された水抜き孔を有する、請求項1に記載のカバー。
- 前記天板の面方向に沿った面、及び、前記天板の面方向に直交する方向に対する前記側板の前記傾斜角度が45°に設定される、請求項1又は請求項2に記載のカバー。
- 野地板と、
前記野地板に緊結され、前記野地板の棟から軒先に向かって複数配置されるとともに、前記棟から前記軒先に向かう方向と直交する方向に沿って複数配置される屋根材と、
前記屋根材の上面の少なくとも一部を覆う天板、前記天板と一体に形成され、前記屋根材の軒先側の側面を覆うとともに、前記天板の面方向に沿った面及び前記天板の面方向に直交する方向に対する傾斜角度が鋭角に設定された側板、並びに、前記側板と一体に形成され、前記屋根材の下面の少なくとも一部を覆う底板を有し、単数の前記屋根材又は複数の前記屋根材に渡って設けられる、複数のカバーと、
を備える屋根構造。 - 前記カバーは、前記側板の一部に形成された水抜き孔を有する、請求項4に記載の屋根構造。
- 前記天板の面方向に沿った面、及び、前記天板の面方向に直交する方向に対する前記側板の前記傾斜角度が45°に設定される、請求項4又は請求項5に記載の屋根構造。
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- 2021-02-01 JP JP2021014644A patent/JP2022117879A/ja active Pending
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